JP2016075816A - 光学反射フィルムの製造方法、ならびに光学反射フィルム、およびそれを用いる光学反射体 - Google Patents

光学反射フィルムの製造方法、ならびに光学反射フィルム、およびそれを用いる光学反射体 Download PDF

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Abstract

【課題】層間剥離が抑制された光学反射フィルムの製造方法を提供する。【解決手段】高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液とを基材上に塗布し、高屈折率層と低屈折率層との積層体を形成する工程を含む、光学反射フィルムの製造方法であって、最も基材側の屈折率層の形成に用いる塗布液がナノファイバーを含む、光学反射フィルムの製造方法によって上記課題が解決される。【選択図】図1

Description

本発明は、光学反射フィルムの製造方法に関する。また、光学反射フィルム、およびこれを用いた光学反射体に関するものである。
近年、省エネルギー対策への関心が高まり、冷房設備にかかる負荷を減らすなどの観点から、建物や車両の窓ガラスに装着させて、太陽光の熱線の透過を遮断する光学反射フィルムの要望が高まってきている。
光学反射フィルムの形成方法としては、主には、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層させた構成からなる積層膜を、蒸着法、スパッタ法などのドライ成膜法を用いて形成する方法が提案されている。しかし、ドライ成膜法は、形成に用いる真空装置等が大型になり、製造コストが高く、大面積化が困難であり、しかも、基材として耐熱性素材に限定される等の課題を抱えている。
上記のような課題を有しているドライ成膜法に代えて、湿式塗布法を用いて光学反射フィルムを形成する方法が知られている。
例えば、金属酸化物や金属化合物微粒子を含む熱硬化型シリコーン樹脂や紫外線硬化型アクリル樹脂を有機溶媒中に分散させた高屈折率層用塗布液と無機酸化物粒子を添加しない樹脂だけの低屈折率層用塗布液とを、バーコーターを用いた湿式塗布方式により基材上に塗布して透明積層体を形成する方法(例えば、特許文献1参照)、酸化チタン、紫外線硬化型バインダおよび有機溶剤から構成される高屈折率塗膜形成用組成物とヒドロキシエチルセルロースの低屈折率層塗布液とを、スピンコーターを用いた湿式塗布方式により基材上に塗布して透明積層体を形成する方法(例えば、特許文献2参照)などが開示されている。
一方、球状ルチル型酸化チタン粒子のメタノール分散スラリーと、メタノールシリカゾルを用いて交互積層する方法(例えば、特許文献3参照)も開示されている。
特開平8−110401号公報 特開2009−86659号公報 特開2003−266577号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載の技術では、層間の密着性が不十分で、長期間使用すると含水や熱膨張により層間での剥離が生じるという問題があった。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、層間剥離が抑制された光学反射フィルムとその製造方法、および該光学反射フィルムを設けた光学反射体を提供することにある。
本発明者は、高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液とを基材上に塗布し、高屈折率層と低屈折率層との積層体を形成する工程を含む、光学反射フィルムの製造方法において、最も基材側の屈折率層の形成に用いる塗布液がナノファイバーを含むことにより上記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明によれば、層間密着性の高い光学反射フィルムを製造する方法が提供される。また、本発明によれば層間密着性の高い光学反射フィルムおよび該光学反射フィルムを用いた光学反射体が提供される。
本発明の一実施形態に係る光学反射フィルムを模式的に表した断面図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液とを基材上に塗布し、高屈折率層と低屈折率層との積層体を形成する工程を含む、光学反射フィルムの製造方法であって、最も基材側の屈折率層の形成に用いる塗布液がナノファイバーを含む、光学反射フィルムの製造方法によって得られた光学反射フィルムは層間密着性に優れることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明の技術的範囲を制限するものではないが、これは以下のメカニズムによるものと推測される。第一に、セルロースナノファイバーのような機械的強度に優れた材料を屈折率層(高屈折率層および/または低屈折率層を、本明細書では、一括して「屈折率層」とも称する。)が含むことで、屈折率層の機械的強度が強化されるものと考えられる。これにより、含水や熱膨張に起因するクラックの発生が防止され、層間剥離を生じにくくなると推測される。第二に、屈折率層と基材との伸縮性が関係しているものと推測される。光学反射フィルムの基材として一般に用いられるPET等の伸縮性のある樹脂基材に比べて、屈折率層は弾性に乏しく伸縮性が低い。これは、基材および屈折率層それぞれの厚さや用いる材料の違いに起因するものと考えられる。例えば、屈折率層形成時にバインダーとして用いられることが多いポリビニルアルコールは、側鎖に存在するヒドロキシル基を介して鎖間で水素結合を形成すると考えられるため、屈折率層の伸縮性が低くなる一因となりえる。伸縮性の高い基材上に伸縮性が乏しい屈折率層を形成すると、基材の伸縮に屈折率層が追従できず、結果としてクラックを生じてしまうと考えられる。一方、例えば、セルロースナノファイバーのような強度に優れた繊維状構造物を屈折率層に用いた場合、屈折率層の弾性が向上すると考えられる。これにより、基材の伸縮に屈折率層が追従できるようになり、クラックの発生が抑制され、層間密着性が改善されるものと推測される。
本発明の一実施形態では、高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液とを基材上に塗布し、高屈折率層と低屈折率層との積層体を形成する工程を含む、光学反射フィルムの製造方法であって、最も基材側の屈折率層(本明細書では、最も基材側の屈折率層を、「最下層」とも称する。)の形成に用いる塗布液がナノファイバーを含む、光学反射フィルムの製造方法が提供される。本発明の別の実施形態では、基材上に、低屈折率層と高屈折率層との積層体を含む光学反射フィルムであって、最も基材側の屈折率層がナノファイバーを含む、光学反射フィルムが提供される。
ナノファイバーが過度に屈折率層に含まれると、光学反射フィルムのヘイズが上昇してしまう恐れがある。従って、本発明に係る光学反射フィルムの製造方法においては、高屈折率層と低屈折率層との積層体を層厚方向に三分割した領域を基材側から領域(A)、領域(B)および領域(C)としたとき、領域(A)を構成する屈折率層の形成に用いる塗布液のみがナノファイバーを含むことが好ましい。かような構成をとることにより、ヘイズの上昇を抑制しつつ、基材側の屈折率層がナノファイバーを含むことにより基材の構造変化に屈折率層が追従できるようになると推測される。また、本発明に係る光学反射フィルムにおいては、高屈折率層と低屈折率層との積層体を層厚方向に三分割した領域を基材側から領域(A)、領域(B)および領域(C)としたとき、領域(A)を構成する屈折率層のみがナノファイバーを含むことが好ましい。
以下、本発明を実施するための形態についてより詳細な説明をする。
《光学反射フィルム》
以下、図1を参照しながら本形態について説明する。図1は、本発明に係る光学反射フィルムのうち、窓ガラスの室内側に光学反射フィルムを貼る(内貼り)態様を模式的に表した断面図である。図1に示す光学反射フィルム10において、光は矢印で示すように基材13の反対側から接着層12、積層体11へと入射する。
光学反射フィルム10において、積層体11は低屈折率層111および高屈折率層112が積層されたユニット113を有する。このように異なる屈折率を有する層を積層させることにより、その境界面で光の反射が起こり、光学反射機能が発現される。なお、図1では、積層体11として、光入射方向から順に低屈折率層・高屈折率層の3ユニットが積層されているが、積層体は低屈折率層および高屈折率層が積層された少なくとも1つのユニットを有していればよく、低屈折率層および高屈折率層の層数や積層順は特に制限されない。
光学反射フィルム10は、積層体11の光が入射する面側に、接着層12を備える。光学反射フィルム10は、接着層12を介して図示しない支持基材(基体)へ貼付される。なお、光学反射フィルム10は積層体11上に接着層12を備えるが、接着層12を備えていなくても良い。また、積層体が形成されたのとは反対側の基材面に接着層が設けられても良い。
本発明の光学反射フィルムは、基材上に、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットを少なくとも1つ含む積層体を有し、特定波長の光を反射する。
特定波長領域の反射率は、隣接する2層の屈折率差と積層数で決まり、屈折率の差が大きいほど、少ない層数で同じ反射率が得られる。この屈折率差と必要な層数については、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。例えば、赤外反射率90%以上を得るためには、屈折率差が0.1より小さいと、20層以上の積層が必要になり、生産性が低下するだけでなく、積層界面での散乱が大きくなり、透明性が低下し、また故障なく製造することも非常に困難になる。反射率の向上と層数を少なくする観点からは、屈折率差に上限はないが、実質的には1.40程度が限界である。
本発明の光学反射フィルムの1つの用途である赤外光反射フィルムの場合、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が50%以上であり、かつ、波長900nm〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。一般に、光学反射フィルムにおいては、高屈折率層と低屈折率層の屈折率の差を大きく設計することが、少ない層数で赤外光反射率を高くすることができるので好ましい。本発明では、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットの少なくとも1つにおいて、隣接する該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が少なくとも0.1以上であること、好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.4以上であることが望ましい。
次いで、本発明の光学反射フィルムにおける高屈折率層と低屈折率層の基本的な構成概要について説明する。
本発明の光学反射フィルムにおける低屈折率層と高屈折率層との積層体の好ましい層数としては、上記の観点から、総層数の範囲としては、2層(1ユニット)〜100層(50ユニット)がよく、より好ましくは2層(1ユニット)〜50層(25ユニット)であり、さらに好ましくは10層(5ユニット)〜40層(20ユニット)である。
積層膜の最下層および最表層は、高屈折率層および低屈折率層のいずれであってもよい。しかしながら、低屈折率層が最下層および最表層に位置する層構成とすることにより、最下層の隣接層(例えば、基材、熱線吸収層)への密着性、最上層の吹かれ耐性の観点から、最下層および最表層が低屈折率層である層構成が好ましい。
また、本発明の光学反射フィルムにおいては、隣接する該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であること、高屈折率層と低屈折率層を上記のようにそれぞれ複数層有する場合には、全ての屈折率層が本発明で規定する要件を満たすことが好ましい。
また、本発明の光学反射フィルムにおいては、高屈折率層の好ましい屈折率としては1.80〜2.50であり、より好ましくは1.90〜2.20である。また、低屈折率層の好ましい屈折率としては1.10〜1.60であり、より好ましくは1.30〜1.50である。
本発明において、高屈折率層、低屈折率層の屈折率は、下記の方法に従って求めることができる。
基材上に屈折率を測定する各屈折率層を単層で塗設したサンプルを作製し、このサンプルを10cm×10cmに断裁した後、下記の方法に従って屈折率を求める。分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定面とは反対側の面(裏面)を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率を25点測定して平均値を求め、その測定結果より平均屈折率を求める。
なお、本明細書において、「高屈折率層」および「低屈折率層」なる用語は、隣接した2層の屈折率差を比較した場合に、屈折率が高い方の屈折率層を高屈折率層とし、低い方の屈折率層を低屈折率層とすることを意味する。したがって、屈折率層が高屈折率層であるか低屈折率層であるかは、隣接層が有する屈折率との関係で定まる相対的なものである。「高屈折率層」および「低屈折率層」なる用語は、光学反射フィルムを構成する各屈折率層において、隣接する2つの屈折率層に着目した場合に、各屈折率層が同じ屈折率を有する形態以外のあらゆる形態を含むものである。
本発明の光学反射フィルムの低屈折率層と高屈折率層との積層体の総厚(高屈折率層と低屈折率層との全体の厚さ)は、例えば0.1〜100μmであり、好ましくは1〜50μmである。各屈折率層(1層)の層厚は、例えば10〜1000nmであり、好ましくは100〜300nmである。
<低屈折率層>
光学反射フィルムは、高屈折率層よりも低い低屈折率層を有する。本発明において、低屈折率層は、低屈折率層塗布液の塗布によって形成される。低屈折率層塗布液は下記の水溶性ポリマーのみで構成されても良いが、屈折率の観点から無機酸化物粒子を含むことが好ましい。一実施形態では、低屈折率層塗布液は、ナノファイバーをさらに含む。
(低屈折率層中に使用される無機酸化物粒子)
低屈折率層に用いる無機酸化物粒子としては、例えばシリカ(二酸化ケイ素)(例えば、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ)、酸化亜鉛、アルミナ、コロイダルアルミナ等が挙げられる。これらのうち、コロイダルシリカゾル、特に酸性のコロイダルシリカゾルを用いることがより好ましく、有機溶媒に分散させたコロイダルシリカを用いることが特に好ましい。また、屈折率をより低減させるために、低屈折率層の無機酸化物粒子として、粒子の内部に空孔を有する中空微粒子を用いてもよく、特にシリカ(二酸化ケイ素)の中空微粒子が好ましい。また、シリカ以外の公知の無機酸化物粒子も使用することができる。屈折率を調整するために、低屈折率層には無機酸化物粒子は、1種であっても2種以上を併用してもよい。
低屈折率層に含まれる無機酸化物粒子(好ましくは二酸化ケイ素)は、その平均粒径(体積平均粒径)が2〜100nmであることが好ましい。無機酸化物粒子の体積平均粒径は、例えばゼータサイザー(登録商標)ナノS(マルバーン社製)などを用いた動的光散乱法により測定できる。
低屈折率層に用いられるコロイダルシリカは、珪酸ナトリウムの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通過させて得られるシリカゾルを加熱熟成して得られるものであり、例えば、特開昭57−14091号公報、特開昭60−219083号公報、特開昭60−219084号公報、特開昭61−188183号公報、特開平4−93284号公報、特開平5−278324号公報、特開平6−92011号公報、特開平6−183134号公報、特開平6−297830号公報、特開平7−81214号公報、特開平7−101142号公報、特開平7−179029号公報、特開平7−137431号公報、および国際公開第94/26530号(欧州特許出願公開第0655346号明細書に相当)などに記載されているものである。
このようなコロイダルシリカは合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、日産化学工業株式会社から販売されているスノーテックスシリーズ(スノーテックス(登録商標)OS、OXS、S、OS、20、30、40、O、N、C等)が挙げられる。
コロイダルシリカは、その表面がカチオン変性されたものであってもよく、また、Al、Ca、MgまたはBa等で処理された物であってもよい。コロイダルシリカは、シラノール変性ポリビニルアルコールが吸着したものであることが、塗布液の安定性の観点からより好ましい。シラノール変性ポリビニルアルコールが吸着したコロイダルシリカについては、国際公開第2014/069507が参酌される。
また、低屈折率層の無機酸化物粒子として、中空粒子を用いることもできる。中空微粒子を用いる場合には、平均粒子空孔径が、3〜70nmであるのが好ましく、5〜50nmがより好ましく、5〜45nmがさらに好ましい。なお、中空微粒子の平均粒子空孔径とは、中空微粒子の内径の平均値である。中空微粒子の平均粒子空孔径は、上記範囲であれば、十分に低屈折率層の屈折率が低屈折率化される。平均粒子空孔径は、電子顕微鏡観察で、円形、楕円形または実質的に円形は楕円形として観察できる空孔径を、ランダムに50個以上観察し、各粒子の空孔径を求め、その数平均値を求めることにより得られる。なお、平均粒子空孔径は、円形、楕円形または実質的に円形もしくは楕円形として観察できる空孔径の外縁を、2本の平行線で挟んだ距離のうち、最小の距離を意味する。
低屈折率層における無機酸化物粒子の含有量は、低屈折率層の全固形分に対して、10〜90質量%であることが好ましく、15〜60質量%であることがより好ましい。
上記低屈折率層の無機酸化物粒子は、複数存在する低屈折率層の少なくとも1層に含まれていればよい。
低屈折率層は、必要により、後述する水溶性ポリマー、硬化剤、界面活性剤、および各種添加剤等を含んでもよい。また、最下層が低屈折率層である場合、少なくとも当該屈折率層はナノファイバーを含む。
<高屈折率層>
高屈折率層としては、上記低屈折率層よりも屈折率が高い層であれば特に限定されない。本発明において、高屈折率層は、高屈折率層塗布液の塗布によって形成される。高屈折率層塗布液は下記の水溶性ポリマーのみで構成されても良いが、屈折率の観点から無機酸化物粒子を含むことが好ましい。一実施形態では、高屈折率層塗布液は、ナノファイバーをさらに含む。
(高屈折率層中に使用される無機酸化物粒子)
高屈折率層に用いられる無機酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、アルミナ、コロイダルアルミナ、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、ジルコン、を挙げることができる。屈折率を調整するために、無機酸化物粒子は1種であっても2種以上を併用してもよい。
透明でより屈折率の高い高屈折率層を形成するために、高屈折率層は、高屈折率を有する酸化チタンまたは酸化ジルコニウムを含むことが好ましい。すなわち、本発明の好適な一実施形態は、高屈折率層が酸化チタンおよび酸化ジルコニウムの少なくとも一方を含む。赤外反射率を一層向上させることができることから、高屈折率層が少なくとも酸化チタンを含むことがより好ましい。また、体積平均粒径が100nm以下のルチル型(正方晶形)酸化チタン粒子を含有することがさらに好ましい。また、複数種の酸化チタン粒子を混合してもよい。
また、低屈折率層に含まれる無機酸化物粒子と高屈折率層に含まれる無機酸化物粒子とは、イオン性をそろえた状態(すなわち、電荷が同符号)にしてもよい。例えば、同時重層塗布する場合にはイオン性が異なると、界面で反応し凝集物ができヘイズが悪くなるためである。イオン性をそろえる手段としては、例えば、後述するように、酸化チタンを含ケイ素の水和酸化物で処理してアニオン化したりすることが可能である。
高屈折率層に含まれる無機酸化物粒子は、その平均粒径(体積平均粒径)が3〜100nmであることが好ましく、3〜50nmであることがより好ましい。無機酸化物粒子の体積平均粒径は、上述の動的光散乱法により測定できる。
高屈折率層における無機酸化物粒子の含有量としては、高屈折率層の全固形分に対して、20〜95質量%であることが好ましく、40〜85質量%であることがより好ましい。上記範囲とすることで、赤外遮蔽性が良好なものとなる。
酸化チタン粒子としては、水系の酸化チタンゾルの表面を変性して有機溶剤等に分散可能な状態にしたものを用いることが好ましい。
水系の酸化チタンゾルの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報、特開昭63−17221号公報等に記載された事項を参照にすることができる。
無機酸化物粒子として酸化チタン粒子を用いる場合、酸化チタン粒子のその他の製造方法については、例えば、「酸化チタン−物性と応用技術」清野学 p255〜258(2000年)技報堂出版株式会社、またはWO2007/039953号明細書の段落番号0011〜0023に記載の工程(2)の方法を参考にすることができる。
上記工程(2)による製造方法とは、二酸化チタン水和物をアルカリ金属の水酸物またはアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選択される、少なくとも1種の塩基性化合物で処理する工程(1)の後に、得られた二酸化チタン分散物を、カルボン酸基含有化合物および無機酸で処理する工程(2)からなる。
さらに、酸化チタン粒子は、単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下をいう。更に好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%となる粒子である。
また、高屈折率層に含まれる無機酸化物粒子としては、公知の方法で製造されたコアシェル粒子を用いることもできる。コアシェル粒子は、コアである酸化チタン粒子の表面全体を含ケイ素の水和酸化物で被覆したものでもよく、また、コアである酸化チタン粒子の表面の一部を含ケイ素の水和酸化物で被覆したものでもよい。
高屈折率層は、必要により、水溶性ポリマー、硬化剤、界面活性剤、および各種添加剤等を含んでもよい。また、最下層が高屈折率層である場合、少なくとも当該屈折率層はナノファイバーを含む。
以下、低屈折率層および高屈折率層に場合により含まれる水溶性ポリマー、硬化剤、界面活性剤、および各種添加剤について説明する。
<水溶性ポリマー>
本発明で用いられる水溶性ポリマーは、重量平均分子量が1,000〜200,000(好ましくは3,000〜60,000)の水溶性高分子化合物である。ここで重量平均分子量は、公知の方法によって測定することができ、例えば、静的光散乱法、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC)、質量分析法(例えば、TOF/MS)などによって測定することができる。水溶性ポリマーを含有することでウェット塗布が可能となり、生産性を向上させることができる。水溶性ポリマーは、無機酸化物粒子等の被分散物の分散媒体(バインダー)としても機能する。
水溶性ポリマーは、屈折率層の全固形分に対し、5〜85質量%の範囲で含有させることが好ましく、15〜75質量%の範囲で含有させることがより好ましい。水溶性ポリマーが少ないと、屈折率層を塗工した後の乾燥時に、膜面が乱れて透明性が劣化する傾向が大きくなる。一方、含有量が85質量%以下であれば、相対的な無機酸化物の含有量が適切となり、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易になる。
水溶性ポリマーとしては、水溶性高分子を含むことが好ましい。なお、水溶性高分子とは、該水溶性高分子が最も溶解する温度で、0.5質量%の濃度に水に溶解させた際、G2グラスフィルタ(最大細孔40〜50μm)で濾過した場合に濾別される不溶物の質量が、加えた該水溶性高分子の50質量%以内であるものを言う。
水溶性高分子としては、例えば、反応性官能基を有するポリマー、ゼラチン、または増粘多糖類などが挙げられる。これらの水溶性高分子は、単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、水溶性高分子は合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
反応性官能基を有するポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、もしくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、もしくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。
これらの中でも、光学反射特性の観点から、ポリビニルアルコールが特に好ましく用いられる。以下では、ポリビニルアルコールについて説明する。
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールであっても、各種の変性ポリビニルアルコールも含まれる。また、ポリビニルアルコールは市販品であってもよい。市販品としては、クラレポバール(登録商標)PVAシリーズ、エクセバール(登録商標)(以上、株式会社クラレ製)、J−ポバール(登録商標)Jシリーズ(日本酢ビ・ポバール株式会社製)などが使用できる。
ポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。平均重合度が1,000以上のポリビニルアルコールと、平均重合度が1,000未満のポリビニルアルコールとを組み合わせて用いても良い。また、ケン化度は、70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものが特に好ましい。
変性ポリビニルアルコールとしては、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、ノニオン変性ポリビニルアルコール、ビニルアルコール系ポリマーが挙げられる。
これらのうち、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、特に制限されないが、例えば、特開昭61−10483号公報に記載されるような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
アニオン変性ポリビニルアルコールとしては、特に制限されないが、例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号公報および同63−307979号公報に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、特に制限されないが、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、シラノール基を有するシラノール変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基やカルボニル基、カルボキシル基などの反応性基を有する反応性基変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
上記ポリビニルアルコールは、単独で使用されてもあるいは平均重合度や変性の種類違いなど2種類以上を併用することもできる。
ゼラチンとしては、従来、ハロゲン化銀写真感光材料分野で広く用いられてきた各種ゼラチンを適用することができ、例えば、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンの他に、ゼラチンの製造過程で酵素処理をする酵素処理ゼラチンおよびゼラチン誘導体、すなわち分子中に官能基としてのアミノ基、イミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基を有し、それと反応して得る基を持った試薬で処理し改質したものでもよい。
ゼラチンを用いる場合、必要に応じてゼラチンの硬膜剤を添加することもできる。使用できる硬膜剤としては、通常の写真乳剤層の硬膜剤として使用されている公知の化合物を使用でき、例えば、ビニルスルホン化合物、尿素−ホルマリン縮合物、メラニン−ホルマリン縮合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、活性オレフィン類、イソシアネート系化合物などの有機硬膜剤、クロム、アルミニウム、ジルコニウムなどの無機多価金属塩類などを挙げることができる。
増粘多糖類としては、例えば、ガラクタン(例えば、アガロース、アガロペクチン等)、ガラクトマンノグリカン(例えば、ローカストビーンガム、グアラン等)、キシログルカン(例えば、タマリンドガム等)、グルコマンノグリカン(例えば、蒟蒻マンナン、木材由来グルコマンナン、キサンタンガム等)、ガラクトグルコマンノグリカン(例えば、針葉樹材由来グリカン)、アラビノガラクトグリカン(例えば、大豆由来グリカン、微生物由来グリカン等)、グルコラムノグリカン(例えば、ジェランガム等)、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸等)、アルギン酸及びアルギン酸塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ファーセレランなどの紅藻類に由来する天然高分子多糖類などが挙げられる。塗布液中に共存する無機酸化物粒子の分散安定性を低下させない観点から、好ましくは、その構成単位がカルボン酸基やスルホン酸基を有しないものが好ましい。その様な増粘多糖類としては、例えば、L−アラビトース、D−リボース、2−デオキシリボース、D−キシロースなどのペントース、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、D−ガラクトースなどのヘキソースのみからなる多糖類であることが好ましい。具体的には、主鎖がグルコースであり、側鎖もグルコースであるキシログルカンとして知られるタマリンドシードガムや、主鎖がマンノースで側鎖がグルコースであるガラクトマンナンとして知られるグアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ローカストビーンガム、タラガムや、主鎖がガラクトースで側鎖がアラビノースであるアラビノガラクタンを好ましく使用することができる。本発明においては、特には、タマリンド、グアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムが好ましい。
<硬化剤>
水溶性高分子を硬化させるため、硬化剤を使用することもできる。硬化剤としては、当該水溶性高分子と硬化反応を起こすものであれば特に制限はない。例えば、ポリビニルアルコールを用いる場合では、硬化剤として、ホウ酸及びその塩が好ましい。ホウ酸及びその塩以外にも公知のものが使用でき、一般的には、ポリビニルアルコールと反応し得る基を有する化合物あるいはポリビニルアルコールが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5,−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬、ホウ砂等が挙げられる。
ホウ酸またはその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸および八ホウ酸およびそれらの塩が挙げられる。
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸およびその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用しても良い。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
ホウ酸とホウ砂との水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することが出来ないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることが出来、塗布液を濃縮化する事が出来る。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることが出来る利点がある。
硬化剤としては、ホウ酸およびその塩並びにホウ砂の少なくとも一方を用いることが好ましい。ホウ酸およびその塩並びにホウ砂の少なくとも一方を用いた場合には、無機酸化物粒子と水溶性高分子であるポリビニルアルコールのOH基と水素結合ネットワークがより形成しやすく、その結果として高屈折率層と低屈折率層との層間混合が抑制され、好ましい赤外遮蔽特性が達成されると考えられる。特に、高屈折率層と低屈折率層の多層重層をコーターで塗布後、一旦塗膜の膜面温度を15℃程度に冷やした後、膜面を乾燥させるセット系塗布プロセスを用いた場合には、より好ましく効果を発現することができる。
屈折率層における硬化剤の含有量は、屈折率層の全固形分に対して、1〜10質量%であることが好ましく、2〜6質量%であることがより好ましい。
特に、水溶性高分子としてポリビニルアルコールを使用する場合の上記硬化剤の総使用量は、ポリビニルアルコール1g当たり1〜600mgが好ましく、ポリビニルアルコール1g当たり10〜300mgがより好ましい。
<界面活性剤>
各屈折率層には、塗布性の観点から界面活性剤を含有することが好ましい。
塗布時の表面張力調整のため用いられる界面活性剤としてアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非オン界面活性剤などを用いることができる。
各屈折率層における界面活性剤の含有量は、屈折率層の塗布液の全質量を100質量%として、0.001〜0.03質量%であることが好ましく、0.003〜0.015質量%であることがより好ましい。
<その他の添加剤>
高屈折率層または低屈折率層には、例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報および同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
<ナノファイバー>
本明細書において「ナノファイバー」は、アスペクト比が1:4〜1:5000であり、平均繊維径が1nm以上1000nm未満の構造を有する。
屈折率層がナノファイバーを含むことにより、屈折率層の強度が高くなるものと考えられる。また、セルロースナノファイバーのような柔軟で強度のある材料をナノファイバーとして屈折率層に用いることで、屈折率層に伸縮性が付与され、層間剥離が防止されうるものと考えられる。ナノファイバーは平均繊維径が1000nm未満と細く、表面積が大きい。このため、屈折率層を形成するバインダーとの接触面積が大きく、膜強度が効果的に強化され、剥離が防止されるものと推測される。なお、上記メカニズムは推測であり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。また、ナノファイバーの使用により、フィルムの変色が抑制され得る。本発明の技術的範囲を制限するものではないが、これは、積層体の膜厚変動がフィルムの変色に影響すると考えられるところ、ナノファイバー添加により膜の収縮が抑えられるためであると考えられる。
本発明に係る光学反射フィルムにおいては、少なくとも、最も基材側の屈折率層はナノファイバーを含む。ナノファイバーは高屈折率層、または低屈折率層のいずれか一方のみに含まれていても良く、高屈折率層および低屈折率層の両方に含まれていても良い。この場合、全ての高屈折率層、または全ての低屈折率層にナノファイバーが含まれていても良い。または、ナノファイバーを含まない高屈折率層、またはナノファイバーを含まない低屈折率層が存在しても良い。
基材と屈折率層との伸縮性の違いが層間剥離に影響すると考えられるため、ナノファイバーは基材側の屈折率層に含まれることが好ましい。本発明に係る光学反射フィルムにおいては、高屈折率層と低屈折率層との積層体を層厚方向に三分割した領域を基材側から領域(A)、領域(B)および領域(C)としたとき、領域(A)を構成する屈折率層のみがナノファイバーを含むことが好ましい。かような構成をとることにより、層間剥離を有効に防止しつつ、ヘイズの上昇も抑えることができる。このとき、領域(B)および領域(C)は実質的にナノファイバーを含まない。「実質的にナノファイバーを含まない」とは、屈折率層の全固形分に対し、ナノファイバーの量が0.001質量%以下であることをいう。また、領域(A)において、ナノファイバーは一部の層に含まれていても良く、全層に含まれていても良いが、好ましくは領域(A)の全層に含まれる。
各屈折率層に含まれるナノファイバーの量は、屈折率層の全固形分に対し、層間剥離防止の観点から好ましくは0.01質量%以上である。また、ヘイズ上昇防止の観点から、各屈折率層に含まれるナノファイバーの量は、屈折率層の全固形分に対し、好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下である。
ナノファイバーのアスペクト比が1:4〜1:5000であり平均繊維径が1nm以上1000nm未満の構造であれば、長軸方向における長さは特に制限されないが、層間剥離防止の観点から比較的短いものが好ましい。ナノファイバーの長軸方向における長さは、例えば20nm〜10μmであり、好ましくは200nm〜2μmであり、より好ましくは200nm〜1μmである。ナノファイバーの長軸方向における長さが200nm以上であることにより、塗膜に分散された際に強靭化する効果が得られ、ナノファイバーの長軸方向における長さが2μm以下であることにより、塗膜中での分散不良を抑制することができる。
ナノファイバーのアスペクト比は1:4〜1:5000であればよいが、好ましくは1:10〜1:100である。ナノファイバーのアスペクト比が1:10〜1:100であることにより、ヘイズ上昇させずに塗膜強度を上げるという効果がある。
本発明において、「平均繊維径」、「平均繊維長」は、ナノファイバーを透過型電子顕微鏡(TEM)(例えば、H−1700FA型(日立製作所社製))を用いて10000倍の倍率で観察した画像から無作為に繊維を100本選び、画像処理ソフト(例えば、WinROOF)を用いて一本毎の繊維径(直径)および繊維長を解析し、これらの単純な数平均値として算出される。
本発明において用いられるナノファイバーは、例えば、セルロースナノファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ(例えば、単層ナノチューブ、二層ナノチューブ、または多層ナノチューブ)、フラーレンナノウィスカー、金属ナノワイヤ(例えば、Ag、Ni、Cu、Si、Au、Co)、金属酸化物ナノファイバー(例えば、SiO、ZnO、TiO、Al、ZrO)等が例示できる。これらのナノファイバーを1種単独で、または2種以上を組み合わせて利用することができる。上記のナノファイバーのうち、セルロースナノファイバーまたはカーボンナノチューブが好ましく、セルロースナノファイバーは層間剥離防止効果が特に高いためより好ましい。以下、セルロースナノファイバー、およびカーボンナノチューブを例に、ナノファイバーについてより詳細に説明する。
(セルロースナノファイバー)
従来、セルロースのアルキルエーテル化合物を含有する光学反射フィルム(特開2013−44916号公報)や、カルボキシメチルセルロースやセルロースアセテート等のセルロース誘導体をバインダー樹脂として含む光学反射フィルム(国際公開第2014/069507号)が知られている。本発明においては、平均繊維径が1nm以上1000nm未満のセルロースナノファイバーを用いることを特徴とする点において、バインダーとしてセルロース類を用いている上記の従来技術とは相違する。
セルロースナノファイバーは、植物の細胞壁等を平均繊維径が1nm以上1000nm未満のナノサイズまで解繊することによって得られる。セルロースナノファイバーは機械的強度に優れ、また、屈折率層に伸縮性を付与することにより基材の変形に追従できるようになるため、層間分離が防止され得る。さらに、セルロースナノファイバーは熱膨張率が低く熱による変形を起こしにくいため、高温多湿環境下においても高い層間剥離防止効果を維持することができる。ただし、上記メカニズムは推定であり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。
本発明に用いるセルロースナノファイバーは、所望の効果が得られる限りにおいて、エステル化等の化学修飾がされたものであっても良い。化学修飾は、セルロースナノファイバーの水酸基を、酸、アルコール類、ハロゲン化試薬、酸無水物、イソシアナート類、シランカップリング剤等の修飾剤を用いて行う。化学修飾する方法は公知の方法に従って行うことができ、例えば、解繊処理したセルロースナノファイバーを水、または適当な溶媒に添加して分散させた後、これに化学修飾剤を添加して適当な反応条件下で反応させれば良い。化学修飾によりセルロース繊維に導入する官能基としては、例えば、アセチル基、メタクリロイル基、プロパノイル基、ブタノイル基、iso−ブタノイル基、 ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(TEMPO)の存在下、次亜塩素酸のような酸化剤を作用させて酸化反応を進行させる方法など、表面修飾は解繊処理と同時に行っても良い。
本発明に用いる原料セルロース繊維としては、植物由来のパルプ、木材、コットン、麻、竹、綿、ケナフ、ヘンプ、ジュート、バナナ、ココナツ、海草、茶葉等の植物繊維から分離したセルロース繊維、海藻から分離したセルロース繊維、海産動物であるホヤが産生するセルロース繊維、または酢酸菌等の微生物に産生させたセルロース等が挙げられる。これらの中で、植物繊維から分離したセルロース繊維を好ましく用いることができる。セルロース繊維は、パルプの製造工程において一般的に行われるような脱脂処理、脱リグニン処理、漂白処理等の加工が施されたものであっても良い。また、セルロース繊維を硫酸等の酸によって処理し、非結晶部分を加水分解したナノ結晶を用いても良い。
本発明においては、これらの原料セルロース繊維をホモジナイザーやグラインダー等を用いて解繊処理し、微細化したミクロフィブリル状のセルロースナノファイバーとする。含有されるセルロースが繊維状態を保持している限りにおいて、解繊維処理方法については制限されない。また木材のような硬いものは、ホモジナイザーで直接処理できない場合、プレ解砕として乾式粉砕機等で粉体化してもよい。
具体例をあげると、パルプ等のセルロース繊維を水に入れた分散容器に0.1〜3質量%となるように投入し、これをホモジナイザーで解繊処理し、水分散液を得る。更に、必要に応じてグラインダー等で繰り返し磨砕処理することで、平均繊維径1nm以上1000nm未満のナノオーダーのセルロース繊維を得ることができる。
上記磨砕処理に用いられるグラインダーとしては、例えば、ピュアファインミル(栗田機械製作所社製)等が挙げられる。また、別の方法として、セルロース繊維の分散液を一対のノズルから250MPa程度の高圧でそれぞれ噴射させ、その噴射流を互いに高速で衝突させることによってセルロース繊維を粉砕する、高圧式ホモジナイザーを用いる方法が知られている。用いられる装置としては、例えば、三和機械社製の「ホモジナイザー」、スギノマシン株式会社製の「アルテマイザーシステム」、等が挙げられる。
このようにして解繊処理して得られるセルロースナノファイバーの平均繊維径としては、好ましくは1.5nm〜500nmであり、より好ましくは2nm〜300nm、更に好ましくは3nm〜100nmである。
(カーボンナノチューブ)
本発明に用いることができるカーボンナノチューブ(CNT)は特に限定されず、単層ナノチューブ、二層ナノチューブ、または多層ナノチューブのいずれであっても良く、これらを2種類以上組み合わせて用いてもよいが、分散安定性の観点から好ましくは多層カーボンナノチューブである。
カーボンナノチューブの平均繊維径としては、好ましくは1.5nm〜100nmであり、より好ましくは2nm〜50nmである。
本発明で使用されるカーボンナノチューブの製造方法は特に限定されるものではなく、二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法、気相成長法、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒と共に反応させて気相で成長させるHiPco法等の公知の手段を用いることができる。また、副生成物や触媒金属等の残留物を除去するために、洗浄法、遠心分離法、ろ過法、酸化法、クロマトグラフ法等の種々の方法によって生成されたカーボンナノチューブを用いても良い。
また、市販のカーボンナノチューブを用いてもよい。市販のカーボンナノチューブとしては、例えば、MW−1(株式会社名城ナノカーボン)、KH SWCNT(KH Chemicals社)等が例示できる。
<基材>
光学反射フィルムの支持体である基材の厚みは、5〜200μmであることが好ましく、より好ましくは15〜150μmである。また、本発明に係る基材は、2枚を重ねたものであっても良く、この場合、その種類が同じでも異なってもよい。
光学反射フィルムに適用する基材としては、透明であれば特に制限されることはなく、種々の樹脂フィルムを用いることができ、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、3酢酸セルロース等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルムである。ポリエステルフィルム(以降ポリエステルと称す。)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性などの点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、およびこれらのポリエステルの二種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
また、基材は、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が85%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。基材が上記透過率以上であることにより、光学反射フィルムとしたときのJIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が50%以上となるという点で有利であり、好ましい。
また、上記樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。
基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
また、基材は、寸法安定性の点で弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は前記ポリエステルフィルムの延伸製膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内、またはテンターを出た後の巻き取りまでの工程で行われるのが好ましい。弛緩処理は処理温度が80〜200℃で行われることが好ましく、より好ましくは処理温度が100〜180℃である。また長手方向、幅手方向ともに、弛緩率が0.1〜10%の範囲で行われることが好ましく、より好ましくは弛緩率が2〜6%で処理されることである。弛緩処理された基材は、下記のオフライン熱処理を施すことにより耐熱性が向上し、さらに、寸法安定性が良好になる。
基材は、製膜過程で片面または両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。本発明においては、製膜工程中での下引塗布をインライン下引という。下引層塗布液に使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂及びゼラチン等が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。これらの下引層には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記の下引層は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法によりコーティングすることができる。上記の下引層の塗布量としては、0.01〜2g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
<光学反射フィルムの製造方法>
本発明の一実施形態では、高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液とを基材上に塗布し、高屈折率層と低屈折率層との積層体を形成する工程を含む、光学反射フィルムの製造方法であって、最も基材側の屈折率層の形成に用いる塗布液がナノファイバーを含む、光学反射フィルムの製造方法が提供される。
本発明の光学反射フィルムの製造方法では、基材上に高屈折率層と低屈折率層との積層体を形成する。
具体的には高屈折率層と低屈折率層とを交互に塗布、乾燥して積層体を形成することが好ましい。具体的には以下の形態が挙げられる;(1)基材上に、高屈折率層塗布液を塗布し乾燥して高屈折率層を形成した後、低屈折率層塗布液を塗布し乾燥して低屈折率層を形成し、光学反射フィルムを形成する方法;(2)基材上に、低屈折率層塗布液を塗布し乾燥して低屈折率層を形成した後、高屈折率層塗布液を塗布し乾燥して高屈折率層を形成し、光学反射フィルムを形成する方法;(3)基材上に、高屈折率層塗布液と、低屈折率層塗布液とを交互に逐次重層塗布した後乾燥して、高屈折率層、および低屈折率層を含む光学反射フィルムを形成する方法;(4)基材上に、高屈折率層塗布液と、低屈折率層塗布液とを同時重層塗布し、乾燥して、高屈折率層、および低屈折率層を含む光学反射フィルムを形成する方法;などが挙げられる。なかでも、より簡便な製造プロセスとなる上記(4)の方法が好ましい。すなわち、本発明の光学反射フィルムの製造方法は、水系同時重層塗布法により前記高屈折率層と前記低屈折率層とを積層することを含むことが好ましい。
本発明に係る製造方法に用いられる塗布液のうち、高屈折率層または低屈折率層のいずれの層の形成に用いられる塗布液にナノファイバーが含まれても良く、両方の塗布液に含まれていてもよい。少なくとも、最も基材側の屈折率層(最下層)の形成に用いる塗布液はナノファイバーを含む。これにより、屈折率層と基材との柔軟性の差が小さくなり、層間剥離が抑制されうる。塗布液に用いられるナノファイバーとしては、セルロースナノファイバーが好ましい。なお、最も基材側の屈折率層は高屈折率層および低屈折率層のいずれでもよいが、基材との密着性の観点から低屈折率層であることが好ましい。
ナノファイバーは、光学反射フィルムの製造に用いられる全ての塗布液に含まれていても良いが、ナノファイバーを含む塗布液によって形成された屈折率層はヘイズが上昇する場合がある。このため、高屈折率層と低屈折率層との積層体を層厚方向に三分割した領域を基材側から領域(A)、領域(B)および領域(C)としたとき、領域(A)を構成する屈折率層の形成に用いる塗布液のみがナノファイバーを含むことが好ましい。かような基材側に近い屈折率層のみがナノファイバーを含む態様をとることにより、屈折率層と基材との伸縮性の差を小さくしつつ、層間剥離を抑制できる。基材側に近い屈折率層のみがナノファイバーを含む態様は、積層体の総層数(領域(A)、領域(B)および領域(C)の全体の層数)が15層以上、または総厚(領域(A)、領域(B)および領域(C)の全体の厚さ)が2μm以上のような、ヘイズが上昇しやすい光学反射フィルムの製造において特に効果を期待し得る。
高屈折率層と低屈折率層との積層体を層厚方向に三分割した領域を基材側から領域(A)、領域(B)および領域(C)としたとき、領域(A)を構成する屈折率層の形成に用いる塗布液のみがナノファイバーを含む態様について、具体例を挙げて説明する。例えば、各屈折率層の厚さが同一であり、かつ屈折率層の層数が12であった場合、基材側の4つの屈折率層が領域(A)であり、領域(A)に隣接する4つの屈折率層が領域(B)であり、領域(B)に隣接し基材から最も離れた4つの屈折率層が領域(C)である。また、屈折率層の層数が3で割り切れない値、例えば層数14の場合、基材側の4つの屈折率層の形成に用いられる塗布液にはナノファイバーが含まれ、残り10の屈折率層の形成に用いられる塗布液にはナノファイバーが含まれないことが好ましい。
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液を調製するための溶媒は、特に制限されないが、水、有機溶媒、またはその混合溶媒が好ましい。バインダーとしてポリビニルアルコールを主に用いることにより、水系溶媒を採用することができる。水系溶媒は、有機溶媒を用いる場合と比較して、大規模な生産設備を必要とすることがないため、生産性の点で好ましく、また環境保全の点でも好ましい。
前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類、ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などが挙げられる。これら有機溶媒は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。環境面、操作の簡便性などから、塗布液の溶媒としては、水系溶媒が好ましく、水、または水とメタノール、エタノール、もしくは酢酸エチルとの混合溶媒がより好ましく、水が特に好ましい。
高屈折率層塗布液中の水溶性ポリマーの濃度は、0.5〜10質量%であることが好ましい。高屈折率層塗布液中の無機酸化物粒子の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。高屈折率層塗布液にナノファイバーが含まれる場合、ナノファイバーの濃度は、0.001〜1質量%であることが好ましく、0.001〜0.1質量%であることがより好ましい。
低屈折率層塗布液中の水溶性ポリマーの濃度は、0.5〜10質量%であることが好ましい。低屈折率層塗布液中の無機酸化物粒子の濃度は、0.5〜50質量%であることが好ましい。低屈折率層塗布液にナノファイバーが含まれる場合、ナノファイバーの濃度は、0.001〜1質量%であることが好ましく、0.005〜0.5質量%であることがより好ましい。
高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液の調製方法は、特に制限されず、例えば、水溶性ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール)、無機酸化物粒子、ナノファイバー、さらに必要に応じて添加されるその他の添加剤を添加し、攪拌混合する方法が挙げられる。この際、各成分の添加順も特に制限されず、攪拌しながら各成分を順次添加し混合してもよいし、攪拌しながら一度に添加し混合してもよい。
同時重層塗布を行う際の高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液の温度は、スライドビード塗布方式を用いる場合は、25〜60℃の温度範囲が好ましく、30〜45℃の温度範囲がより好ましい。また、カーテン塗布方式を用いる場合は、25〜60℃の温度範囲が好ましく、30〜45℃の温度範囲がより好ましい。
同時重層塗布を行う際の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液の粘度は、特に制限されない。しかしながら、スライドビード塗布方式を用いる場合には、上記の塗布液の好ましい温度の範囲において、5〜160mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは60〜140mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、上記の塗布液の好ましい温度の範囲において、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。このような粘度の範囲であれば、効率よく同時重層塗布を行うことができる。
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは2,500〜30,000mPa・sである。
塗布および乾燥方法の条件は、特に制限されないが、例えば、逐次塗布法の場合は、まず、30〜60℃に加温した高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液のいずれか一方を基材上に塗布、乾燥して層を形成した後、もう一方の塗布液をこの層上に塗布、乾燥して積層膜前駆体を形成する。次に、所望の遮蔽性能を発現するために必要なユニット数を、前記方法にて逐次塗布、乾燥して積層させて積層膜前駆体を得る。乾燥する際は、形成した塗膜を、30℃以上で乾燥することが好ましい。例えば、湿球温度5〜50℃、膜面温度5〜100℃(好ましくは10〜50℃)の範囲で乾燥するのが好ましく、例えば、40〜60℃の温風を1〜5秒吹き付けて乾燥する。乾燥方法としては、温風乾燥、赤外乾燥、マイクロ波乾燥が用いられる。また単一プロセスでの乾燥よりも多段プロセスの乾燥が好ましく、恒率乾燥部の温度<減率乾燥部の温度にするのがより好ましい。この場合の恒率乾燥部の温度範囲は30〜60℃、減率乾燥部の温度範囲は50〜100℃にするのが好ましい。
また、同時重層塗布を行う場合の塗布および乾燥方法の条件は、高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液を30〜60℃に加温して、基材上に高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液の同時重層塗布を行った後、形成した塗膜の温度を好ましくは1〜15℃にいったん冷却し(セット)、その後10℃以上で乾燥することが好ましい。より好ましい乾燥条件は、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件である。例えば、40〜80℃の温風を1〜5秒吹き付けて乾燥する。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜の均一性向上の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
ここで、前記セットとは、冷風等を塗膜に当てて温度を下げるなどの手段により、塗膜組成物の粘度を高め、各層間および各層内の物質の流動性を低下させたり、またゲル化させたりする工程のことを意味する。冷風を塗布膜に表面から当てて、塗布膜の表面に指を押し付けたときに指に何もつかなくなった状態を、セット完了の状態と定義する。
塗布した時点から、冷風を当ててセットが完了するまでの時間(セット時間)は、5分以内であることが好ましく、2分以内であることがより好ましい。また、下限の時間は特に制限されないが、45秒以上の時間をとることが好ましい。セット時間が短すぎると、層中の成分の混合が不十分となる虞がある。一方、セット時間が長すぎると、無機酸化物粒子の層間拡散が進み、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が不十分となるおそれがある。なお、高屈折率層と低屈折率層との間の中間層の高弾性化が素早く起こるのであれば、セットさせる工程は設けなくてもよい。
セット時間の調整は、水溶性ポリマーの濃度や無機酸化物粒子の濃度を調整したり、ゼラチン、ペクチン、寒天、カラギ−ナン、ゲランガム等の各種公知のゲル化剤など、他の成分を添加したりすることにより調整することができる。
冷風の温度は、0〜25℃であることが好ましく、5〜10℃であることがより好ましい。また、塗膜が冷風に晒される時間は、塗膜の搬送速度にもよるが、好ましくは10〜360秒、より好ましくは10〜300秒、さらに好ましくは10〜120秒である。
高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液の塗布厚は、上記で示したような好ましい乾燥時の厚みとなるように塗布すればよい。
<膜設計>
本発明においては、少なくとも隣接した2層(高屈折率層及び低屈折率層)の屈折率差が0.2以上であることが好ましく、より好ましくは0.3以上である。また、上限には特に制限はないが通常1.4以下である。
隣接した層界面での反射は、層間の屈折率比に依存するのでこの屈折率比が大きいほど、反射率が高まる。また、単層膜でみたとき層表面における反射光と、層底部における反射光の光路差を、n・d=波長/4、で表される関係にすると位相差により反射光を強めあうよう制御でき、反射率を上げることができる。ここで、nは屈折率、dは層の物理膜厚、n・dは光学膜厚である。この光路差を利用することで、反射を制御できる。この関係を利用して、各層の屈折率と膜厚を制御して、可視光や、近赤外光の反射を制御する。即ち、各層の屈折率、各層の膜厚、各層の積層のさせ方で、特定波長領域の反射率をアップさせることができる。
本発明の光学反射フィルムは反射率をアップさせる特定波長領域を変えることにより、可視光反射フィルムや近赤外光反射フィルムとすることができる。即ち、反射率をアップさせる特定波長領域を可視光領域に設定すれば可視光反射フィルムとなり、近赤外領域に設定すれば近赤外光反射フィルムとなる。
本発明の光学反射フィルムを遮熱フィルムに用いる場合は、近赤外光反射フィルムとすればよい。高分子フィルムに互いに屈折率が異なる膜を積層させた多層膜を形成し、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が50%以上で、かつ、波長900〜1400nmの領域に反射率40%を超える領域を有するように光学膜厚とユニットを設計することが好ましい。
太陽直達光の入射スペクトルのうち赤外域が室内温度上昇に関係し、これを遮蔽することで室内温度の上昇を抑えることができる。日本工業規格JIS R3106に記載された重価係数をもとに赤外の最短波長(760nm)から最長波長3200nmまでの累積エネルギー比率をみると、波長760nmから最長波長3200nmまでの赤外全域の総エネルギーを100としたときの、760nmから各波長までの累積エネルギーをみると、760から1300nmのエネルギー合計が赤外域全体の約75%を占めている。従って、1300nmまでの波長領域を遮蔽することが熱線遮蔽による省エネルギー効果の効率がよい。
この近赤外光域(760〜1300nm)の反射率を最大ピーク値で約80%以上にすると、体感温度の低下が官能評価により得られる。たとえば8月の午前中の南東方法を向く窓際での体感温度が近赤外光域の反射率を最大ピーク値で約80%にまで遮蔽したとき明確な差がでた。
このような機能を発現するのに必要となる多層膜構造を光学シミュレーション(FTG Software Associates Film DESIGN Version 2.23.3700)で求めた結果、屈折率は1.9以上、望ましくは2.0以上の高屈折率層を利用し、6層以上積層した場合に優れた特性が得られることがわかっている。例えば、高屈折率層と低屈折率層(屈折率=1.35)を交互に8層積層したモデルのシミュレーション結果をみると、高屈折率層の屈折率が1.8では反射率が70%にも達しないが、1.9になると約80%の反射率が得られる。また、高屈折率層(屈折率=2.2)と低屈折率層(屈折率=1.35)を交互に積層したモデルでは、積層数が4では反射率が60%にも達していないが、6層になると約80%の反射率が得られる。
<光学反射フィルムの層構成>
光学反射フィルムは、基材上に高屈折率層と低屈折率層とを積層したユニットを少なくとも1つ含む。該ユニットは、基材の片面にのみ形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。特定波長の反射率が向上することから、該ユニットが基材の両面に形成されてなることが好ましい。
光学反射フィルムは、基材の下または基材と反対側の最表面層の上に、さらなる機能の付加を目的として、導電性層、帯電防止層、ガスバリア層、防汚層、消臭層、流滴層、易滑層、ハードコート層、耐摩耗性層、反射防止層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、印刷層、蛍光発光層、ホログラム層、剥離層、接着層(粘着層)、上記高屈折率層および低屈折率層以外の赤外線カット層(金属層、液晶層)、着色層(可視光線吸収層)、合わせガラスに利用される中間膜層などの機能層の1つ以上を有していてもよい。
反射フィルムにおける上述の各種の機能層の積層順は、特に制限されない。
例えば、窓ガラスの室内側に光学反射フィルムを貼る(内貼り)仕様では、基材表面に、上記高屈折率層および低屈折率層を積層したユニットを少なくとも1つ含む反射層、接着層の順に積層し、さらにこれらの層が積層されている側とは逆の側の基材表面にハードコート層を塗設する形態が好ましい一例として挙げられる。また、接着層、基材、反射層、ハードコート層の順であってもよく、さらに他の機能層、基材、または赤外吸収剤などを有していてもよい。また、窓ガラスの室外側に本発明の光学反射フィルムを貼る(外貼り)仕様でも好ましい一例を挙げると、基材表面に反射層、接着層の順に積層し、さらにこれらの層が積層されている側とは逆の側の基材表面にハードコート層が塗設する構成である。内貼りの場合と同様に、接着層、基材、反射層、ハードコート層の順であってもよく、さらに他の機能層基材、または赤外吸収剤などを有していてもよい。
(接着層)
本発明において、高屈折率層と低屈折率層の積層体上に接着層が形成された形で好ましく使用される。接着層の形成方法としては、前記積層体上に直接塗設しても良いが、セパレータに塗設された接着層と前記積層体とを貼り合わせることにより、本発明の効果を有効に発現することができる。
セパレータに塗設された接着層は、セパレータに接着層塗布液を塗布することによって得られる。接着層塗布液のセパレータへの塗布方法は特に限定されるものではなく、ワイヤーバーによるコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング等によりハードコート層用塗布液を、基材上に塗布し製膜する方法が挙げられる。また、ダイコーター、グラビアコーター、コンマコーターなどの連続塗布装置でも塗布・製膜することが可能である。
セパレータとしては、特に限定されるものではないが、基材および剥離剤層(離型層)を有することが好ましい。剥離剤層には、任意の適切な樹脂を用いることができる。例えば、シリコーン樹脂(有機珪素系高分子化合物)、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、又はこれら樹脂と適宜の他の樹脂(アクリル樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル樹脂等)との混合物を適用することができる。剥離剤としては、好ましくはシリコーン系剥離剤が用いられる。剥離剤に含まれるシリコーンは、1官能性シリコーン(有機置換基を3個有する構成単位)、2官能性シリコーン(有機置換基を2個有する構成単位)、3官能性シリコーン(有機置換基を1個有する構成単位)および4官能性シリコーン(有機置換基を有さない構成単位)を含むことが好ましい。
上記剥離剤層は、上記剥離調整剤以外の任意の他の添加剤を含んでいてもよく、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤等が挙げられる。
セパレータの基材としては、任意の適切な基材を用いることができ、例えば、プラスチックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン)、不織布または紙などが挙げられる。セパレータの基材は、好ましくはプライマー処理が施された基材である。プライマー処理が施された基材を用いることにより、よりハンドリング性に優れた粘着シートが得られる。上記プライマー処理は、任意の適切な手段により行われ得る。具体的には、プライマー処理された基材として、シランカップリング剤処理された基材を用いることができる。
セパレータとしては、市販品を用いてもよく、具体的には東山フイルム社製のクリーンセパ(登録商標)HYシリーズ等を好適に用いることができる。
接着層を構成する接着剤(粘着剤)としては、特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルブチラール系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤などを例示することができる。中でも、水貼りする際に、粘着力が弱く位置調整しやすく、位置調整後すぐに粘着力が発現することから、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
アクリル系粘着剤は、溶剤系およびエマルジョン系どちらでもよいが、粘着力等を高め易いことから、溶剤系粘着剤が好ましく、その中でも溶液重合で得られたものが好ましい。このような溶剤系アクリル系粘着剤を溶液重合で製造する場合の原料としては、例えば、骨格となる主モノマーとして、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル、凝集力を向上させるためのコモノマーとして、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、メチルメタクリレート等、さらに架橋を促進し、安定した粘着力を付与させるために官能基含有モノマーとして、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
モノマーを重合する際に使用される溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族または脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物等が挙げられる。なお、上記溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
塗布液中の溶媒量は特に限定されるものではないが、塗布液全体に対して、20〜80質量%であることが好ましい。
モノマーを重合する際に使用される重合開始剤としては、光重合開始剤、熱重合開始剤のいずれも使用することができる。光重合開始剤としては、上記ハードコート層用塗布液の欄で述べた光重合開始剤を用いることができる。また、熱重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート等のアゾ系化合物(アゾ系開始剤);過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジベンゾイルパーオキサイド(過酸化ベンゾイル)、tert−ブチルペルマレエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物(過酸化物系開始剤);フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの混合剤、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの混合剤等のレドックス系開始剤などが挙げられる。
重合開始剤の添加量は重合が進行する量であれば特に限定されないが、モノマー全体に対して、0.5〜20質量%であることが好ましい。
モノマーの溶液重合を行う際の重合条件はモノマーの重合が進行する条件であれば特に限定されず、重合温度としては60〜90℃であることが好ましく、重合時間としては、0.5〜6時間であることが好ましい。
モノマーを重合することによって得られたポリマー溶液には、添加剤を添加してもよい。該添加剤としては、例えば安定剤、界面活性剤、特開昭62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、抗酸化剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を含有させることもできる。特に、窓貼用として使用する場合は、紫外線による誘導体多層膜フィルムの劣化を抑制するためにも、紫外線吸収剤の添加は有効である。紫外線吸収剤の含有量は特に限定されるものではないが、粘着塗布液100質量部中に、紫外線吸収剤0.1〜4質量部であることが好ましい。
また、ポリマー溶液には架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、脂肪族イソシアネート化合物、脂環式イソシアネート化合物、エポキシ化合物、または金属キレート化合物などが挙げられる。脂肪族イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、また、脂環式イソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。エポキシ化合物としては、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。また、金属キレート化合物としては、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタンなどが挙げられる。架橋剤としては、市販品を用いてもよく、市販品としては、チタンジプロポキシジアセチルアセトネート(マツモトファインケミカル株式会社、オルガチックス(登録商標)TC−100)、チタンテトラアセチルアセトネート(マツモトファインケミカル株式会社、オルガチックス(登録商標)TC−401)、チタンジオクトキシジオクチレングリコレート(マツモトファインケミカル株式会社、オルガチックス(登録商標)TC−200)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセテート)(マツモトファインケミカル株式会社、オルガチックス(登録商標)TC−750)等が挙げられる。
架橋剤の含有量は特に限定されるものではないが、粘着塗布液100質量部中に、0.5〜15質量部であることが好ましい。
準備された接着層塗布液は、塗布液塗布装置によってセパレータ上に塗布される。塗布液塗布装置としては、例えば、ダイコーター、グラビアコーター、コンマコーターなどが挙げられる。
接着層塗布液が塗布されたセパレータは、加熱により塗布液中の溶媒を乾燥させる。乾燥手段としては特に限定されず、温風乾燥、赤外乾燥、マイクロ波乾燥が用いられる。
形成される接着層の膜厚は、1〜100μmが好ましく、3〜50μmがより好ましく、5〜20μmが特に好ましい。
上記のように、セパレータに塗設された接着層は、基材上に形成された積層体と貼り合わされる。この際、積層体は、接着層と、屈折率層とが貼り合わされるように、圧接により連続的に接着層および屈折率層を貼り合わせることができる。
また、上記では屈折率層上に直接接着層を貼り合わせる形態を記載したが、かような形態に限定されず、中間層を形成した屈折率層を用いてもよい。すなわち、本明細書において、「接着層を屈折率層上に貼り合わせる」とは、屈折率層上に直接接着層を貼り合わせる形態のみならず、屈折率層上に他の中間層が設けられ、該中間層と接着層とを貼り合わせる形態も含む。ただし、かような中間層の形成において、屈折率層が加熱工程に暴露される工程を含まないことが好ましい。
《光学反射フィルムの応用:光学反射体》
本発明の光学反射フィルムは、幅広い分野に応用することができる。すなわち、本発明の好適な一実施形態は、上記光学反射フィルムが基体の少なくとも一方の面に設けられた、光学反射体である。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等、長期間太陽光に晒らされる設備(基体)に貼り合せ、熱線反射効果を付与する熱線反射フィルム等の窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。特に、本発明に係る光学反射フィルムが直接または接着剤を介してガラスまたはガラス代替樹脂等の基体に貼合されている部材には好適である。
基体の具体的な例としては、例えば、ガラス、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフィド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、金属板、セラミック等が挙げられる。樹脂の種類は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂のいずれでも良く、これらを2種以上組み合わせて用いても良い。基体は、押出成形、カレンダー成形、射出成形、中空成形、圧縮成形等、公知の方法で製造することができる。基体の厚みは特に制限されないが、通常0.1mm〜5cmである。
光学反射フィルムと基体とを貼り合わせる接着層または粘着層は、窓ガラスなどに貼り合わせたとき、光学反射フィルムが日光(熱線)入射面側にあるように設置することが好ましい。また光学反射フィルムを窓ガラスと基材との間に挟持すると、水分等周囲ガスから封止でき耐久性に好ましい。本発明の光学反射フィルムを屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
また、合わせガラスの中間層として用いられるポリビニルブチラール系樹脂、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いてもよい。具体的には可塑性ポリビニルブチラール〔積水化学工業社製、三菱モンサント社製等〕、エチレン−酢酸ビニル共重合体〔デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン〕、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体〔東ソー社製、メルセンG〕等である。なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
光学反射フィルムまたは光学反射体(赤外遮蔽体)の断熱性能、日射熱遮へい性能は、一般的にJIS R 3209(1998)(複層ガラス)、JIS R 3106(1998)(板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法)、JIS R 3107(1998)(板ガラス類の熱抵抗および建築における熱貫流率の算定方法)に準拠した方法により求めることができる。
日射透過率、日射反射率、放射率、可視光透過率の測定は、(1)波長(300〜2500nm)の分光測光器を用い、各種単板ガラスの分光透過率、分光反射率を測定する。また、波長5.5〜50μmの分光測定器を用いて放射率を測定する。なお、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、熱線吸収板ガラスの放射率は既定値を用いる。(2)日射透過率、日射反射率、日射吸収率、修正放射率の算出は、JIS R 3106(1998)に従い、日射透過率、日射反射率、日射吸収率、垂直放射率を算出する。修正放射率に関しては、JIS R 3107(1998)に示されている係数を、垂直放射率に乗ずることにより求める。断熱性、日射熱遮へい性の算出は、(1)厚さの測定値、修正放射率を用いJIS R 3209(1998)に従って複層ガラスの熱抵抗を算出する。ただし中空層が2mmを超える場合はJIS R 3107(1998)に従って中空層の気体熱コンダクタンスを求める。(2)断熱性は、複層ガラスの熱抵抗に熱伝達抵抗を加えて熱貫流抵抗で求める。(3)日射熱遮蔽性はJIS R 3106(1998)により日射熱取得率を求め、1から差し引いて算出する。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
<製造例>
1.セルロースナノファイバーの調製
(セルロースナノファイバー水分散液1の調製)
針葉樹から得られた亜硫酸漂白パルプ(セルロース繊維)に対し、濃度が1.0質量%となるように純水を添加した。エクセルオートホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製)を用い、3000回転/分、15分の条件で得られた溶液を撹拌し、解繊されたセルロース繊維を含む水分散液Aを得た。
得られた水分散液の乾燥質量1g相当分に対し、0.0125gのTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル)および0.125gの臭化ナトリウムを水100mLに分散させた。次いで、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(次亜塩素酸ナトリウムの量が2.5mmolとなる量)を添加して反応を開始した。
反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10.5に保った。pH変化が確認されなくなった時点で反応が終了したと判断した。反応物をガラスフィルターにてろ過した後、十分な量の水による水洗およびろ過を5回繰り返し、その後、セルロースナノファイバーの濃度が0.1質量%となるよう水で希釈した。さらに超音波分散機にて1時間処理をしてセルロースナノファイバー水分散液1を得た。セルロースナノファイバーをTEMPOと反応させることにより、セルロース単位の第一級水酸基を有するC6位は、酸化反応によりカルボキシ基に変換されている。
セルロースナノファイバー水分散液1の一部を取り出し、水を蒸発させた後、当該セルロースナノファイバーの平均繊維径および平均繊維長を、透過型電子顕微鏡(TEM)であるH−1700FA型(株式会社日立製作所製)を用いて測定したところ、平均繊維径は4nmであり、平均繊維長は200nm(アスペクト比1:50)であった。
(セルロースナノファイバー水分散液2の調製)
上記セルロース繊維を含む水分散液Aをグラインダー(増幸産業株式会社製)で1回処理した。セルロースナノファイバーが1質量%となるように水で調整し、セルロースナノファイバー水分散液2を得た。
この一部を取り出し、水を蒸発させた後、調製例1と同様の方法でセルロースナノファイバーの平均繊維径および平均繊維長を算出したところ、平均繊維径は150nmであり、平均繊維長は750nm(アスペクト比1:5)であった。
(セルロースナノファイバー水分散液3の調製)
上記セルロース繊維を含む水分散液Aをグラインダー(増幸産業株式会社製)で2回処理したことを除いては、調製例2と同様の方法でセルロースナノファイバー水分散液3を調製した。
この一部を取り出し、水を蒸発させた後、調製例1と同様の方法でセルロースナノファイバーの平均繊維径および平均繊維長を算出したところ、平均繊維径は50nmであり、平均繊維長は500nm(アスペクト比1:10)であった。
2.屈折率層塗布液の調製
(低屈折率層塗布液L1の調製)
以下の手順で、シラノール変性ポリビニルアルコールを吸着したシリカ微粒子Aを作製した。
コロイダルシリカの10質量%水溶液(粒径(体積平均)4〜6nm、スノーテックスOXS 日産化学工業株式会社製)80質量部を撹拌しながら50℃に加温した後、シラノール変性ポリビニルアルコール(PVA−R1130、クラレ社製)の4.0質量%水溶液15質量部と、純水5質量部を添加した。その後、液温を50℃に維持しながら2時間撹拌した後、25℃に冷却し、得られたものをシリカ微粒子A液とした。
この液中のシリカ微粒子Aの粒径を、ゼータサイザー(登録商標)ナノ−S(マルバーン社)を用いて測定したところ、体積平均粒径80nmであった。
次いで、40℃に加温した68質量部の8.6質量%シリカ微粒子A液に、3質量%ホウ酸水溶液20質量部を撹拌しながら加えた後、5質量%ポリビニルアルコール(PVA−235、重量平均分子量15万、重合度3500、鹸化度88モル%、クラレ社製)水溶液280質量部と純水240質量部とを添加して10分間攪拌した後、5質量%界面活性剤水溶液(ソフタゾリン(登録商標)LSB−R、川研ファインケミカル社製)0.64質量部を添加して低屈折率層塗布液L1を調製した。
(セルロースナノファイバーを含有した低屈折率層塗布液L2の調製)
低屈折率層塗布液L1の調製において、純水240質量部に代えて、セルロースナノファイバー水分散液1を50質量部と純水190質量部とを使用した以外は同様の方法で、低屈折率層塗布液L2を調製した。
(セルロースナノファイバーを含有した低屈折率層塗布液L3の調製)
低屈折率層塗布液L2の調製において、セルロースナノファイバー水分散液1に代えて、セルロースナノファイバー水分散液2を使用した以外は同様の方法で、低屈折率層塗布液L3を調製した。
(セルロースナノファイバーを含有した低屈折率層塗布液L4の調製)
低屈折率層塗布液L2の調製において、セルロースナノファイバー水分散液1に代えて、セルロースナノファイバー水分散液3を使用した以外は同様の方法で、低屈折率層塗布液L4を調製した。
(カーボンナノチューブを含有した低屈折率層塗布液L5の調製)
低屈折率層塗布液L2の調製において、セルロースナノファイバー水分散液1に代えて、多層カーボンナノチューブ水分散液(MW−I、株式会社名城ナノカーボン製、平均繊維径10nm、平均繊維長1.5μm(アスペクト比1:150))を使用した以外は同様の方法で、低屈折率層塗布液L5を調製した。
(高屈折率層用塗布液H1の調製)
・酸化チタンゾル水系分散液の調製
二酸化チタン水和物を水に懸濁させた水性懸濁液(TiO濃度100g/L)10Lに、水酸化ナトリウム水溶液(濃度10モル/L)30Lを撹拌下で添加した。反応液を90℃に昇温し、5時間熟成した後、塩酸で中和、濾過、水洗した。なお、上記反応(処理)において、二酸化チタン水和物は公知の手法に従い、硫酸チタン水溶液を熱加水分解して得られたものを用いた。
水酸化ナトリウム処理チタン化合物をTiO濃度20g/Lになるよう純水に懸濁させ、撹拌下クエン酸をTiO量に対し0.4モル%加え昇温した。液温が95℃になったところで、濃塩酸を塩酸濃度30g/Lになるように加え、液温を維持しつつ3時間撹拌した。
得られた酸化チタンゾル水系分散液のpHおよびゼータ電位を測定したところ、pHは1.4、ゼータ電位は+40mVであった。さらに、マルバーン社製ゼータサイザー(登録商標)ナノにより粒径測定を行ったところ、体積平均粒径は35nm、単分散度は16%であった。
上記のように調製した体積平均粒径35nmのルチル型酸化チタン粒子を含む20.0質量%酸化チタンゾル水系分散液1kgに純水1kgを添加した。
・ケイ酸水溶液の調製
SiO濃度が2.0質量%のケイ酸水溶液を調製した。
・シリカ変性酸化チタン粒子の調製
上記の10.0質量%酸化チタンゾル水系分散液0.5kgに、純水2kgを加えた後、90℃に加熱した。その後、2.0質量%のケイ酸水溶液1.3kgを徐々に添加し、次いで、得られた分散液をオートクレーブ中、175℃で18時間加熱処理を行い、さらに濃縮して、ルチル型構造を有する酸化チタンで、被覆層がSiOである、20質量%のシリカ変性酸化チタン粒子のゾル水分散液を得た。
・高屈折率層用塗布液の調製
以下に挙げる材料を45℃で上から順に添加して塗布液を調製した。
シリカ変性酸化チタン粒子のゾル水分散液(20.0質量%) 320質量部
クエン酸水溶液(1.92質量%) 120質量部
ポリビニルアルコール(10質量%) 20質量部
(PVA−103、重合度300、鹸化度99モル%、クラレ社製)
ほう酸水溶液(3質量%) 100質量部
ポリビニルアルコール(4質量%) 350質量部
(クラレ社製、PVA−124、重合度2400、鹸化度99モル%)
界面活性剤(5質量%) 1質量部
(ソフタゾリン(登録商標)LSB−R、川研ファインケミカル社製)
上記の塗布液に純水89質量部を加え、高屈折率層用塗布液H1を調製した。
(セルロースナノファイバーを含有した高屈折率層用塗布液H2の調製)
高屈折率層用塗布液H1の調製において、ポリビニルアルコールPVA−124水溶液の添加後に、セルロースナノファイバー水分散液1を50質量部添加すること以外は同様の方法で、高屈折率層用塗布液H2を調製した。
3.光学反射フィルムの作製
(高屈折率層と低屈折率層とを積層した積層体の作製)
15層重層塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用い、上記で得られた低屈折率層用塗布液L1〜L5、および高屈折率層用塗布液H1、H2を45℃に保温しながら、PET基材(A4300、東洋紡績株式会社製、厚さ:50μm)上に、最下層と最上層は低屈折率層とし、それ以外はそれぞれ交互に、乾燥時の膜厚が低屈折率層は各層150nm、高屈折率層は各層130nmになるように計15層の同時重層塗布を行った。各層に用いた塗布液を表1に示す。
塗布直後、5℃の冷風を吹き付けてセットさせた。セット完了後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、基材上に積層体を作製した。
(接着層の形成)
メタクリル酸2−エチルヘキシル78質量部、アクリル酸ブチル12質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル7質量部およびアクリル酸3質量部をトルエン中に溶解し(固形分濃度:33質量%)、重合開始剤として過酸化ベンゾイル(モノマーに対して5質量%)を用いて、83℃で240分間のラジカル重合をさせることにより、固形分濃度33質量%(重量平均分子量55万)のポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液100質量部中に、チタンキレート(オルガチックス(登録商標)TC−401:マツモトファインケミカル株式会社)0.5質量部とUV吸収剤(Tinuvin(登録商標)477、チバガイギ社製)3質量部とを添加し、接着層形成用塗布液を調製した。
上記で調製した接着層形成用塗布液を、セパレータ(HY−S30:東山フィルム社製)に乾燥膜厚が15μmとなるように塗布し、温風乾燥により85℃で乾燥させて、セパレータ上に接着層を形成させた。セパレータに塗設された接着層と前記積層体とを貼り合わせることにより、光学反射フィルムNo.1〜13を作製した。
<評価>
(層間剥離)
厚さ3mmの白色ガラスに、光学反射フィルム1〜13のそれぞれを接着層を介して貼り付けた。JIS K5600−5−6:1999のクロスカット法に従い、各光学反射フィルムについて、フィルム最表面に片刃のカミソリの刃を面に対して90°の角度で、2mm間隔でクロスカットし、10mm角の碁盤目を作製した。日東電工(株)製のセロファンテープNo.29をクロスカットしたフィルムに貼り付けて、テープをはがし、積層体の剥離状態を調べた。
クロスカットしたマス目の数をn、テープ剥離後に積層体の全層が残っているマス目の数をn1とした時に、F=(n1/n)×100(%)を計算し、以下の基準で評価した。結果を表2に示す
◎:Fが100%、
○:Fが80%以上100%未満、
△:Fが50%以上80%未満、
×:Fが50%未満。
(ヘイズ)
各光学反射フィルムをヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH2000)により測定した。なお、ヘイズメーターの光源は、5V9Wのハロゲン球とし、受光部は、シリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)を使用した。結果を表2に示す。
(SWOM変色)
各光学反射フィルムを白板ガラスに貼り付け、JIS K5400:1990規定条件で稼働したサンシャインウェザーメーター(SWOM)(スガ試験機社製)中で1000時間保存した。保存前後の光学反射フィルムのL値、a値、b値を分光光度計(機種名:U−4100型、日立製作所社製)で測定した。保存前後におけるL値の差をΔL、a値の差をΔa、b値の差をΔbとして、以下の式によってΔEを算出した。ΔEが小さいほど変色が小さいことを示す。結果を表2に示す。
(キセノン耐光性(耐候性)試験)
厚さ3mmの青色ガラスに、光学反射フィルム1〜13のそれぞれを接着層を介して貼り付けた。このサンプルを30℃60%RHの条件でキセノンウェザーメーター(スガ試験機社製;太陽光に極めて近似した光を発する)を用いて150W/mの強度のキセノン光に100時間曝露した。そして、曝露後にフィルムに膜割れが発生したかどうかを目視にて確認し、以下の評価基準に従って評価した。結果を表2に示す。
・耐候性試験による膜割れ(ひび割れ)の評価基準
A:膜割れが発生していない;
B:わずかに膜割れが発生している;
C:目視で十分わかる膜割れが発生している;
D:フィルム全体に明らかに膜割れが発生している。
10 光学反射フィルム、
11 積層体、
12 接着層、
13 基材、
111 低屈折率層、
112 高屈折率層、
113 ユニット。

Claims (11)

  1. 高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液とを基材上に塗布し、高屈折率層と低屈折率層との積層体を形成する工程を含む、光学反射フィルムの製造方法であって、
    最も基材側の屈折率層の形成に用いる塗布液がナノファイバーを含む、光学反射フィルムの製造方法。
  2. 前記ナノファイバーの長軸方向における長さが、200nm〜2μmである、請求項1に記載の光学反射フィルムの製造方法。
  3. 前記ナノファイバーがセルロースナノファイバーである、請求項1または2に記載の光学反射フィルムの製造方法。
  4. 前記積層体を層厚方向に三分割した領域を前記基材側から領域(A)、領域(B)および領域(C)とし、該領域(A)を構成する屈折率層の形成に用いる塗布液のみが前記ナノファイバーを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学反射フィルムの製造方法。
  5. 前記ナノファイバーのアスペクト比が1:10〜1:100である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学反射フィルムの製造方法。
  6. 基材上に、低屈折率層と高屈折率層との積層体を含む光学反射フィルムであって、
    最も基材側の屈折率層がナノファイバーを含む、光学反射フィルム。
  7. 前記ナノファイバーがセルロースナノファイバーである、請求項6に記載の光学反射フィルム。
  8. 接着層をさらに有する、請求項6または7に記載の光学反射フィルム。
  9. 前記積層体の総厚が1〜50μmである、請求項6〜8のいずれか1項に記載の光学反射フィルム。
  10. 前記積層体の層数が10〜40である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の光学反射フィルム。
  11. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された光学反射フィルム、または請求項6〜10のいずれか1項に記載の光学反射フィルムが、基体の少なくとも一方の面に設けられてなる光学反射体。
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