JP2016074258A - プリテンショナー、シートベルトリトラクタ、およびこれを備えるシートベルト装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】容易且つ的確に組み立て製造することが可能なプリテンショナー、シートベルトリトラクタ、およびこれを備えたシートベルト装置を提供する。
【解決手段】プリテンショナーは、緊急時にガスを発生するガスジェネレータ19と、ケースと、ケースに取り付けられるパイプ17と、パイプ17内に移動可能に設けられるとともにガスの圧力で移動してスプールをシートベルト巻き取り方向に回転させるための力を伝達する所定数の駆動伝達部材と、パイプ17内に移動可能に設けられるとともにガスの圧力で移動して駆動伝達部材を押圧するピストン21と、ケース内に少なくとも回転可能に設けられるとともに、外周に駆動伝達部材によって押圧される複数の被押圧部を有し、その押圧によってスプールを回転させるリングギアと、ピストン21のガスジェネレータ19側に取り付けられる弾性部材41と、を少なくとも有する
【選択図】図8
【解決手段】プリテンショナーは、緊急時にガスを発生するガスジェネレータ19と、ケースと、ケースに取り付けられるパイプ17と、パイプ17内に移動可能に設けられるとともにガスの圧力で移動してスプールをシートベルト巻き取り方向に回転させるための力を伝達する所定数の駆動伝達部材と、パイプ17内に移動可能に設けられるとともにガスの圧力で移動して駆動伝達部材を押圧するピストン21と、ケース内に少なくとも回転可能に設けられるとともに、外周に駆動伝達部材によって押圧される複数の被押圧部を有し、その押圧によってスプールを回転させるリングギアと、ピストン21のガスジェネレータ19側に取り付けられる弾性部材41と、を少なくとも有する
【選択図】図8
Description
本発明は、プリテンショナーおよびエネルギ吸収(EA)機構を備えるシートベルトリトラクタの技術分野、および車両のシートベルト装置の技術分野に属するものである。
従来、自動車等の車両に装備されるシートベルト装置においては、プリテンショナーを備えたシートベルトリトラクタが種々開発されている。このプリテンショナーは、車両の衝突時等の通常の減速度より大きな減速度が車両に加えられた緊急時の初期に、ガスジェネレータで発生した反応ガスによりシートベルトリトラクタのスプールをシートベルト巻き取り方向に回転させて、このスプールによりシートベルトを巻き取る。これにより、シートベルトのたるみを迅速に除去するとともにシートベルトに張力を付与して、乗員の拘束力を高めるようになっている。
従来のプリテンショナーの一例として、パイプ内に力伝達部材である複数のボールとピストンが収容され、ピストンが緊急時にガスジェネレータが発生した反応ガスのガス圧を受けてこれらのボールを押圧することで各ボールがパイプ内に沿って移動してリングギアの複数の被押圧部を押圧し、これらのボールの押圧によりリングギアが回転することでスプールがシートベルト巻取り方向に回転してシートベルトを巻き取るプリテンショナーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載されているプリテンショナーでは、ボール間に隙間が生じた場合でも、ボール間及びボールとピストン間のガタつきの発生を防止するように、ピストンとボールの間に、スプリングが設けられている。
しかしながら、従来のプリテンショナーでは、組み立て時にピストンとスプリングを別々に設置するため、ガスジェネレータを設置する前に、スプリングが自身の付勢力によってパイプ外に外れてしまうおそれがあった。スプリングが外れた場合、該スプリングをパイプ内に戻さなくてはならず、製造工程に影響を与える可能性があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、容易且つ的確に組み立て製造することが可能なプリテンショナー、シートベルトリトラクタ、およびこれを備えたシートベルト装置を提供することである。
前述の課題を解決するために、本発明のプリテンショナーは、
緊急時にガスを発生するガスジェネレータと、
ケースと、
前記ケースに取り付けられるパイプと、
前記パイプ内に移動可能に設けられるとともに前記ガスの圧力で移動してスプールをシートベルト巻き取り方向に回転させるための力を伝達する所定数の駆動伝達部材と、
前記パイプ内に移動可能に設けられるとともに前記ガスの圧力で移動して前記駆動伝達部材を押圧するピストンと、
前記ケース内に少なくとも回転可能に設けられるとともに、外周に前記駆動伝達部材によって押圧される複数の被押圧部を有し、その押圧によってスプールを回転させるリングギアと、
前記ピストンの前記ガスジェネレータ側に取り付けられる弾性部材と、
を少なくとも有する
ことを特徴とする。
緊急時にガスを発生するガスジェネレータと、
ケースと、
前記ケースに取り付けられるパイプと、
前記パイプ内に移動可能に設けられるとともに前記ガスの圧力で移動してスプールをシートベルト巻き取り方向に回転させるための力を伝達する所定数の駆動伝達部材と、
前記パイプ内に移動可能に設けられるとともに前記ガスの圧力で移動して前記駆動伝達部材を押圧するピストンと、
前記ケース内に少なくとも回転可能に設けられるとともに、外周に前記駆動伝達部材によって押圧される複数の被押圧部を有し、その押圧によってスプールを回転させるリングギアと、
前記ピストンの前記ガスジェネレータ側に取り付けられる弾性部材と、
を少なくとも有する
ことを特徴とする。
また、本発明のプリテンショナーでは、
前記ピストンは、ピストン本体と、前記ピストン本体に嵌合されたピストンリングと、を有し、
前記ピストン本体は、前記ガスジェネレータ側に形成された軸部を有し、
前記弾性部材は、前記軸部に取り付けられる
ことを特徴とする。
前記ピストンは、ピストン本体と、前記ピストン本体に嵌合されたピストンリングと、を有し、
前記ピストン本体は、前記ガスジェネレータ側に形成された軸部を有し、
前記弾性部材は、前記軸部に取り付けられる
ことを特徴とする。
また、本発明のプリテンショナーでは、
前記ピストン本体は、前記駆動伝達部材側から前記ガスジェネレータ側へ軸方向に貫通する排気通路を有する
ことを特徴とする。
前記ピストン本体は、前記駆動伝達部材側から前記ガスジェネレータ側へ軸方向に貫通する排気通路を有する
ことを特徴とする。
また、本発明のプリテンショナーでは、
前記軸部は、前記弾性部材が掛止される凸部が形成される
ことを特徴とする。
前記軸部は、前記弾性部材が掛止される凸部が形成される
ことを特徴とする。
また、本発明のプリテンショナーでは、
前記ピストンは、前記弾性部材が掛止される掛止部材を有し、
前記掛止部材は、前記軸部に嵌合する筒部と、前記筒部の一端から少なくとも一部が突出するフランジ部と、を有する
ことを特徴とする。
前記ピストンは、前記弾性部材が掛止される掛止部材を有し、
前記掛止部材は、前記軸部に嵌合する筒部と、前記筒部の一端から少なくとも一部が突出するフランジ部と、を有する
ことを特徴とする。
また、本発明のシートベルトリトラクタは、
シートベルトと、
前記シートベルトを巻き取るスプールと、
通常時前記スプールとともに回転しかつ緊急時にシートベルト引出し方向の回転が阻止されて前記スプールと相対回転を生じるロッキング部材と、
前記緊急時に前記ロッキング部材のシートベルト引出し方向の回転をロックするロック機構と、
前記スプールと前記ロッキング部材との間に設けられて前記スプールと前記ロッキング部材との相対回転時に前記シートベルトにかかる荷重を制限するエネルギ吸収機構と、
前記緊急時に作動して前記スプールをシートベルト巻取り方向に回転する前記プリテンショナーと、
を少なくとも備える
ことを特徴とする。
シートベルトと、
前記シートベルトを巻き取るスプールと、
通常時前記スプールとともに回転しかつ緊急時にシートベルト引出し方向の回転が阻止されて前記スプールと相対回転を生じるロッキング部材と、
前記緊急時に前記ロッキング部材のシートベルト引出し方向の回転をロックするロック機構と、
前記スプールと前記ロッキング部材との間に設けられて前記スプールと前記ロッキング部材との相対回転時に前記シートベルトにかかる荷重を制限するエネルギ吸収機構と、
前記緊急時に作動して前記スプールをシートベルト巻取り方向に回転する前記プリテンショナーと、
を少なくとも備える
ことを特徴とする。
また、本発明のシートベルト装置は、
シートベルトを巻き取る前記シートベルトリトラクタと、
前記シートベルトリトラクタから引き出されたシートベルトに摺動自在に支持されたタングと、
前記タングが係脱可能に係合されるバックルと、
を少なくとも備え、
緊急時にシートベルトリトラクタによって前記シートベルトの引出しが阻止されることで乗員を拘束する
ことを特徴とする。
シートベルトを巻き取る前記シートベルトリトラクタと、
前記シートベルトリトラクタから引き出されたシートベルトに摺動自在に支持されたタングと、
前記タングが係脱可能に係合されるバックルと、
を少なくとも備え、
緊急時にシートベルトリトラクタによって前記シートベルトの引出しが阻止されることで乗員を拘束する
ことを特徴とする。
このような構成をした本発明のプリテンショナーによれば、
緊急時にガスを発生するガスジェネレータと、
ケースと、
前記ケースに取り付けられるパイプと、
前記パイプ内に移動可能に設けられるとともに前記ガスの圧力で移動してスプールをシートベルト巻き取り方向に回転させるための力を伝達する所定数の駆動伝達部材と、
前記パイプ内に移動可能に設けられるとともに前記ガスの圧力で移動して前記駆動伝達部材を押圧するピストンと、
前記ケース内に少なくとも回転可能に設けられるとともに、外周に前記駆動伝達部材によって押圧される複数の被押圧部を有するリングギアと、
前記ピストンの前記ガスジェネレータ側に取り付けられる弾性部材と、
を少なくとも有し、その押圧によってスプールを回転させるので、
ピストンと弾性部材とを組立時に一体に扱うことができ、容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
緊急時にガスを発生するガスジェネレータと、
ケースと、
前記ケースに取り付けられるパイプと、
前記パイプ内に移動可能に設けられるとともに前記ガスの圧力で移動してスプールをシートベルト巻き取り方向に回転させるための力を伝達する所定数の駆動伝達部材と、
前記パイプ内に移動可能に設けられるとともに前記ガスの圧力で移動して前記駆動伝達部材を押圧するピストンと、
前記ケース内に少なくとも回転可能に設けられるとともに、外周に前記駆動伝達部材によって押圧される複数の被押圧部を有するリングギアと、
前記ピストンの前記ガスジェネレータ側に取り付けられる弾性部材と、
を少なくとも有し、その押圧によってスプールを回転させるので、
ピストンと弾性部材とを組立時に一体に扱うことができ、容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
また、本発明のプリテンショナーによれば、
前記ピストンは、ピストン本体と、前記ピストン本体に嵌合されたピストンリングと、を有し、
前記ピストン本体は、前記ガスジェネレータ側に形成された軸部を有し、
前記弾性部材は、前記軸部に取り付けられるので、
より容易且つ的確に組み立て製造することができ、的確に作動させることが可能となる。
前記ピストンは、ピストン本体と、前記ピストン本体に嵌合されたピストンリングと、を有し、
前記ピストン本体は、前記ガスジェネレータ側に形成された軸部を有し、
前記弾性部材は、前記軸部に取り付けられるので、
より容易且つ的確に組み立て製造することができ、的確に作動させることが可能となる。
また、本発明のプリテンショナーによれば、
前記ピストン本体は、前記ボール側から前記ガスジェネレータ側へ軸方向に貫通する排気通路を有するので、
ガスジェネレータ側のパイプ内のガスを、ピストンのボール側に流動させ、ピストンをより一層スムーズに移動させることが可能となる。
前記ピストン本体は、前記ボール側から前記ガスジェネレータ側へ軸方向に貫通する排気通路を有するので、
ガスジェネレータ側のパイプ内のガスを、ピストンのボール側に流動させ、ピストンをより一層スムーズに移動させることが可能となる。
また、本発明のプリテンショナーによれば、
前記軸部は、前記弾性部材が掛止される凸部が形成されるので、
弾性部材を凸部に掛止することができ、より容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
前記軸部は、前記弾性部材が掛止される凸部が形成されるので、
弾性部材を凸部に掛止することができ、より容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
また、本発明のプリテンショナーによれば、
前記ピストンは、前記弾性部材が掛止される掛止部材を有し、
前記掛止部材は、前記軸部に嵌合する筒部と、前記筒部の一端から少なくとも一部が突出するフランジ部と、を有するので、
弾性部材を掛止部材に掛止することができ、より容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
前記ピストンは、前記弾性部材が掛止される掛止部材を有し、
前記掛止部材は、前記軸部に嵌合する筒部と、前記筒部の一端から少なくとも一部が突出するフランジ部と、を有するので、
弾性部材を掛止部材に掛止することができ、より容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
また、本発明のシートベルトリトラクタによれば、
シートベルトと、
前記シートベルトを巻き取るスプールと、
通常時前記スプールとともに回転しかつ緊急時にシートベルト引出し方向の回転が阻止されて前記スプールと相対回転を生じるロッキング部材と、
前記緊急時に前記ロッキング部材のシートベルト引出し方向の回転をロックするロック機構と、
前記スプールと前記ロッキング部材との間に設けられて前記スプールと前記ロッキング部材との相対回転時に前記シートベルトにかかる荷重を制限するエネルギ吸収機構と、
前記緊急時に作動して前記スプールをシートベルト巻取り方向に回転する前記プリテンショナーと、
を少なくとも備えるので、
プリテンショナーのピストンと弾性部材とを組立時に一体に扱うことができ、容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
シートベルトと、
前記シートベルトを巻き取るスプールと、
通常時前記スプールとともに回転しかつ緊急時にシートベルト引出し方向の回転が阻止されて前記スプールと相対回転を生じるロッキング部材と、
前記緊急時に前記ロッキング部材のシートベルト引出し方向の回転をロックするロック機構と、
前記スプールと前記ロッキング部材との間に設けられて前記スプールと前記ロッキング部材との相対回転時に前記シートベルトにかかる荷重を制限するエネルギ吸収機構と、
前記緊急時に作動して前記スプールをシートベルト巻取り方向に回転する前記プリテンショナーと、
を少なくとも備えるので、
プリテンショナーのピストンと弾性部材とを組立時に一体に扱うことができ、容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
また、本発明のシートベルト装置によれば、
シートベルトを巻き取る前記シートベルトリトラクタと、
前記シートベルトリトラクタから引き出されたシートベルトに摺動自在に支持されたタングと、
前記タングが係脱可能に係合されるバックルと、
を少なくとも備え、
緊急時にシートベルトリトラクタによって前記シートベルトの引出しが阻止されることで乗員を拘束するので、
ピストンと弾性部材とを組立時に一体に扱うことができ、容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
シートベルトを巻き取る前記シートベルトリトラクタと、
前記シートベルトリトラクタから引き出されたシートベルトに摺動自在に支持されたタングと、
前記タングが係脱可能に係合されるバックルと、
を少なくとも備え、
緊急時にシートベルトリトラクタによって前記シートベルトの引出しが阻止されることで乗員を拘束するので、
ピストンと弾性部材とを組立時に一体に扱うことができ、容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明にかかるシートベルトリトラクタの実施形態の一例を備えるシートベルト装置を模式的に示す図である。
図1に示すように、この例のシートベルト装置1は、基本的には従来公知の三点式シートベルト装置と同じである。図中、1はシートベルト装置、2は車両シート、3は車両シート2の近傍に配設されたシートベルトリトラクタ、4はシートベルトリトラクタ4に引き出し可能に巻き取られかつ先端のベルトアンカー4aが車体の床あるいは車両シート2に固定されるシートベルト、5はシートベルトリトラクタ3から引き出されたシートベルト4を乗員のショルダーの方へガイドするガイドアンカー、6はこのガイドアンカー5からガイドされてきたシートベルト4に摺動自在に支持されたタング、7は車体の床あるいは車両シートに固定されかつタング6が係脱可能に挿入係合されるバックルである。このシートベルト装置1におけるシートベルト4の装着操作および装着解除操作も、従来公知のシートベルト装置と同じである。
この例のシートベルトリトラクタ3は従来公知の緊急ロック式シートベルトリトラクタ(ELR)または従来公知の自動ロック式シートベルトリトラクタ(ALR)として構成される。このシートベルトリトラクタ3はプリテンショナーおよびエネルギ吸収(EA)機構を備えている。
図2(a)および(b)は、この例のプリテンショナーおよびEA機構を備えるシートベルトリトラクタを示す図である。
図2(a)および(b)に示すようにシートベルトリトラクタ3は、両側壁8a,8bを有するコ字状のフレーム8、シートベルト4を巻き取るスプール9、EA機構のトーションバー10、本発明のロッキング部材であるロッキングベース11、ロック機構12、減速度感知機構13、筒状の連結部材14、所定数の駆動伝達部材としてのボールを用いたプリテンショナー15、およびスプール9を常時シートベルト巻取り方向に付勢するスプリング手段16を備えている。
そして、減速度感知機構13およびプリテンショナー15が作動しない通常時は、シートベルト4を引き出すとスプール9がシートベルト引出し方向に回転してシートベルト4が引き出される。この通常のシートベルト4の引出し時には、減速度感知機構13が作動しないのでロック機構12が作動しなく、スプール9が連結部材14、トーションバー10、およびロッキングベース11とともに回転する。したがって、シートベルト4は容易に引き出される。
また、シートベルト4を引き出した後、シートベルト4から手を離すと、スプリング手段16の付勢力で、連結部材14を介してスプール9がシートベルト巻取り方向に回転する。すると、スプール9は、引き出された全量またはほぼ全量のシートベルト4を巻き取る。この通常のシートベルト4の巻取り時には、スプール9が連結部材14、トーションバー10、およびロッキングベース11とともに回転する。したがって、シートベルト4は容易に巻き取られる。
走行中の車両に減速度感知機構13が作動する大きさの減速度が加えられると、減速度感知機構13が作動してロック機構12が作動する。すると、ロッキングベース11に設けられた図示しないパウルが回動して、側壁8aに形成された図示しないロック歯に係合する。これにより、ロッキングベース11のシートベルト引出し方向の回転がロックされる。一方、乗員の慣性でシートベルト4が引き出されようとし、スプール9がロッキングベース11に対して相対的にシートベルト引出し方向に回転しようとする。その結果、トーションバー10がねじられる。このトーションバー10がねじり変形による抵抗でスプール9のシートベルト引出し方向の回転が抑制される。こうして、乗員はシートベルト4により拘束される。このとき、乗員の運動エネルギがトーションバー10のねじり変形により部分的に吸収されるので、シートベルト4から乗員に加えられる力が制限される。
次に、この例のプリテンショナー15について説明する。
図3は、図2(a)におけるシートベルトリトラクタのプリテンショナーを、そのカバー、ボール、およびスプリング手段をとって示す図、図4は、この例のプリテンショナーのパイプ内の一部を示す図である。
図3および図4に示すように、プリテンショナー15はパイプ17を有しており、このパイプ17の一端部17aは開放されている。また、この一端部17aには、パイプ17の開放端からパイプ17の軸方向に延びる切欠部17bおよび取付フランジ部17cがそれぞれ形成されている。そして、パイプ17の一端部17aはガイド部材18に取り付けられる。その場合、取付フランジ部17cがガイド部材18に形成された取付溝18aに嵌合されるとともに、ガイド部材18に形成された図2(b)に示した係止部18bに係止されて取り付けられる。また、パイプ17の一端部17aがガイド部材18に取り付けられ、かつガイド部材18がケース基材22を介してフレームの側壁8bに取り付けられた状態では、図示しないが取付フランジ部17cの一部が側壁8bに設けられた矩形状の小開口に上方に向かって係止するとともに、取付フランジ部17cの他の一部17がガイド部材18の係止部18bに上方に向かって係止することにより、パイプ17がガイド部材18から上方へ抜けるのを防止されている。
ガイド部材18にはガイド面18cが形成されている。このガイド面18cは直線ガイド面18dと、この直線ガイド面18dに接するとともにスプール9の回転軸と同心円またはほぼ同心円の円弧状ガイド面18eとを含んでいる。図3に示すように、パイプ17の一端部17aがガイド部材18bに取り付けられた状態では、直線ガイド面18dは、パイプ17の径方向の中心を通る軸方向の平面に沿う断面のパイプ17の内周面17dの延長線上に位置されている。
図4に示すように、パイプ17の他端部17e内には、反応ガスを発生するガスジェネレータ19が設けられている。また、パイプ17内には、本発明の力伝達部材である鉄あるいはアルミニウム等の金属製の所定数のボール20およびガスジェネレータ19からのガス圧を受けてボール20を押圧するピストン21が移動可能に配設されている。
プリテンショナー15はケース基材22を有し、このケース基材22は側壁8bに取り付けられている。また、ガイド部材18はケース基材22を介して同じくフレーム8の側壁8bに取り付けられる。更に、ケース基材22およびガイド部材18にはカバー23が取り付けられる。そして、ケース基材22、ガイド部材18、およびカバー23により内部空間24aを有するプリテンショナー15のケース24が形成される。
図2(b)および図3に示すように、ケース24の内部空間24a内には、リングギア25が回転可能にかつ図3において右方へ移動可能に配設されている(なお、図3には、リングギア25が右方へ移動した後の状態が示されている)。このリングギア25は内周面に形成された複数の内歯25aを有している。
このリングギア25の外周面には、本発明の被押圧部である複数(図示例では、7個)のレバー25bが突設されている。そして、プリテンショナー15が非作動である通常時に、第1のボール20が最初に当接するレバー25bとこれに時計回りに隣接するレバー25bとの間の周方向の間隔は、1個のボール20の一部が収容可能な大きさに設定されている。また、互いに隣接する2個のレバー25b間の他の周方向の間隔は、互いに接触する2個のボール20が順に収容可能な大きさに設定されている。そして、リングギア25のレバー25bはパイプ17の一端部17aの切欠部17bからパイプ17内に侵入可能になっている。
シートベルトリトラクタ3の連結部材14には、環状のピニオン26がこの連結部材14と一体回転可能に取り付けられている(なお、ピニオン26は、図示しないがスプール9と連結部材14とを一体に形成するとともに、この連結部材14に一体に設けることもできる。)。
ピニオン26は複数の外歯26aを有している。このピニオン26の外歯26aにリングギア25の内歯25aが噛合可能となっている。そして、プリテンショナー15の作動時に、各ボール20は、パイプ17の切欠部17bからパイプ17内に進入している各レバー25bにリングギア25の押圧力を加えるとともに、リングギア25にピニオン26の方へ直進移動力を加えるようになっている。
この例のプリテンショナー15では、パイプ17の配管の取り回し(パイピング)は、プリテンショナー15が車体に取り付けられた状態で、その一端部17aの端が図3に示す最下位置とされている。その場合、一端部17aの端の位置は、ピニオン26の回転中心(つまり、スプール9の回転中心)より若干上方に位置している。これにより、各ボール20は力をリングギア25の各レバー25bにリングギア25の略接線方向に沿ってシートベルト巻き取り方向に伝達する。その結果、各ボール20は力をリングギア25に最も効率よくリングギア25に伝達するようになる。
更に、パイプ17はフレーム9の上方で略直角に曲げられて車室外側に向かって直線状にかつ略水平に延設されるとともに、側壁8bの自由端近傍で略直角に曲げられて車両前後方向に直線状にかつ略水平に延設され、更に、側壁8aの近傍で略直角に曲げられて車室内側に向かって直線状にかつ略水平方向に延設される。したがって、ガスジェネレータ19がフレーム8の側壁8aの固定端側の上方で車室内側に向かって略水平に配設されている。
ケース基材22には、ボール20をガイドするケース基材側ガイド溝27が形成されている。その場合、ケース基材側ガイド溝27は、リングギア25が右方へ移動してその内歯25aがピニオン26の外歯26aに噛合した図3に示す状態におけるリングギア25の中心と略同心の円の略円弧状に形成されている。そして、ケース基材側ガイド溝27は、図3に示すリングギア25の位置における各レバー25bの先端より外側に配設されている。したがって、各レバー25bがケース基材側ガイド溝27内に侵入することはない。このケース基材側ガイド溝27は、一対のケース基材外周側ガイド壁28とケース基材内周側ガイド壁29とによって形成されている。これらの外、内周側ガイド壁28,29は、ピニオン26の回転中心と略同心の円の略円弧状に形成されている。
更に、ボール20が移動するケース基材内周側ガイド壁29の上流側端には、ボール20をケース基材側ガイド溝27に誘導するケース基材側溝誘導部29aが設けられている。このケース基材側溝誘導部29aは、ケース基材内周側ガイド壁29の上流側端における円弧の接線より内側に傾斜する傾斜面として形成されている。ケース基材22には、このケース基材側溝誘導部29aにより、ボール20をケース基材側ガイド溝27に誘導するケース基材側ボール誘導溝27aが形成される。
図5は、この例のプリテンショナーのカバーの内部側を示す図である。
図5に示すようにカバー23には、ボール20をガイドするカバー側ガイド溝30が形成されている。このカバー側ガイド溝30は、一対のカバー外周側ガイド壁31とカバー内周側ガイド壁32とによって形成されている。その場合、カバー外周側ガイド壁31は、円弧状のケース基材外周側ガイド壁28とほぼ同径の同心円の円弧状に形成されているとともに、カバー外周側ガイド壁31の周方向の長さはケース基材外周側ガイド壁28の周方向の長さと同じかまたはほぼ同じに設定されている。また、カバー内周側ガイド壁32は、円弧状のケース基材内周側ガイド壁29とほぼ同径の同心円の円弧状に形成されているとともに、カバー内周側ガイド壁32の周方向の長さはケース基材内周側ガイド壁29の周方向の長さと同じかまたはほぼ同じに設定されている。
更に、ボール20が移動するカバー内周側ガイド壁32の上流側端には、ボール20をカバー側ガイド溝30に誘導するカバー側溝誘導部32aが設けられている。このカバー側溝誘導部32aは、カバー内周側ガイド壁32の上流側端における円弧の接線より内側に傾斜する傾斜面として形成されている。その場合、円弧の接線に対するカバー側溝誘導部32aの傾斜角およびカバー側溝誘導部32aの長さは、それぞれ、円弧の接線に対するケース基材側溝誘導部29aの傾斜角およびケース基材側溝誘導部29aの長さと同じかまたはほぼ同じに設定されている。カバー23には、このカバー側溝誘導部32aによ
り、ボール20をカバー側ガイド溝30に誘導するカバー側ボール誘導溝30aが形成される。
り、ボール20をカバー側ガイド溝30に誘導するカバー側ボール誘導溝30aが形成される。
ケース基材22にカバー23が取り付けられて合体された状態では、ケース基材外周側ガイド壁28とカバー外周側ガイド壁31とがほぼ重なるとともに、ケース基材内周側ガイド壁29とカバー内周側ガイド壁32とがほぼ重なる。これにより、これらのケース基材側ガイド溝27とカバー側ガイド溝30とにより、ボール20が移動する円弧状通路33が形成される。また、ケース基材側溝誘導部29aとカバー側ボール誘導溝30aとがほぼ重なる。これにより、これらのケース基材側溝誘導部29aとカバー側ボール誘導溝30aとにより、パイプ17から飛び出してリングギア25を回転させた後のボール20を前述の円弧状通路33に誘導する誘導通路34が形成される。
そして、この例のプリテンショナー15では、円弧状通路33、誘導通路34、およびガイド部材18のガイド面18cとリングギア25との間に形成されるガイド通路35により、リングギア25の外周に沿ってほぼ円弧状のボール収納室が形成される。その場合、円弧状通路33および誘導通路34によって形成されるボール収納室の部分には、リングギア25の各レバー25bは侵入しない。また、図3に示すようにガイド部材18にはストッパ部18fが形成されており、このストッパ部18fは円弧状通路33の下流側端をほぼ閉塞している。更に、誘導通路34に隣接するガイド通路35の部分の下方に、リングギア25の各レバー25bが当接しない程度にボール20が収容される小さなボール収容部36が設けられている。そして、円弧状通路33、誘導通路34、ガイド通路35、およびボール収容部36は、すべてケース24内に設けられている。
このように構成されたこの例のシートベルトリトラクタ3の作動について説明する。
図6は、プリテンショナーの作動を説明し、(a)は非作動状態を示す図、(b)は作動開始直後の状態を示す図、(c)は作動終了状態を示す図である。
図6は、プリテンショナーの作動を説明し、(a)は非作動状態を示す図、(b)は作動開始直後の状態を示す図、(c)は作動終了状態を示す図である。
図6(a)に示すように、プリテンショナー15の非作動時には、リングギア25がピニオン26とほぼ同心に、および回転不能かつ右方へ移動不能に保持されている。したがって、リングギア25はその内歯25aがピニオン26の外歯26aに噛合しない状態に保持されている。また、最初の第1のボール20が、1つのレバー25bに当接した状態に保持される。その場合、第1のボール20は、間隔の狭い隣接するレバー25b間に進入可能とされている。更に、第1のボール20以後の各ボール20はパイプ17内で、順次互いに隣接するボール20どうしが当接した状態にされている。このとき、ガスジェネレータ19がガスを発生しなく、ボール20はレバー25bを実質的に押圧しない。
前述の緊急時には、従来と同様に減速度感知機構13およびロック機構12が作動してロッキングベース11のシートベルト引出し方向の回転がロックされるとともに、ガスジェネレータ19が作動してガスを発生する。発生したガスによってピストン21が押圧されるので、ピストン21はこれに当接するボール20に大きな押圧力を加える。そして、ピストン21は各ボール20を押圧しながらパイプ17内に沿って各ボール20とともにパイプ17の一端部17aの方へ前進移動する。このとき、ピストン21の頭部21dが略半球状に形成されているとともに力伝達部材がボール20であることから、湾曲したパイプ17内を比較的スムーズにかつ急速に移動する。
ピストン21の押圧力は各ボール20を介してレバー25に当接している第1のボール20に上方から下方に向かって伝達される。すると、第1のボール20は移動しながらこの押圧力で図2(a)においてリングギア25を右方へ移動させるとともに反時計回りに回転させる。そして、図6(b)に示すようにリングギア25の内歯25aがピニオン26の外歯26aに噛合し、ピニオン26がリングギア25と同方向に回転開始する。このピニオン26の回転開始により、ピニオン26および連結部材14を介してスプール9がシートベルト巻取り方向に回転開始し、乗員に装着されているシートベルト4が巻き取り開始される。このとき、ボール17によりリングギア25が下方に押圧されることで、ピニオン26を介してスプール9の下方に押圧される。このとき、スプール9はシートベルト4により上方に引っ張られているので、リングギア25がピニオン26およびスプール9を回転する際の回転抵抗が比較的小さい。
第1のボール20が間隔の狭いレバー25b間に収容されるとともに、次の第2のボール20が、第1のボール20が当接していたレバー25bと時計回りに隣接するレバー25bに当接すると、この第2のボール20を介するレバー25bへの押圧力で、リングギア25およびピニオン26がともに反時計回りに更に回転する。このとき、第1のボール20によるレバー25bへの押圧力は、実質的に消滅している。レバー25bとこのレバー25bに時計回りに隣接する次のレバー25bとの間に2個の第2および第3のボール20がレバー25bを押圧しながら収容される。更に、第3のボール20の次の第4のボール20が次のレバー25bに当接すると、この第4のボール20を介する次のレバー25bへの押圧力で、リングギア25およびピニオン26がともに反時計回りに更に回転する。このとき、第2及び第3のボール20によるレバー25bへの押圧力は、実質的に消滅している。以後、順次各ボール20によってレバー25bを押圧することによりリングギア25およびピニオン26が反時計回りに回転する。すなわち、スプール9がシートベルト巻取り方向に回転し、シートベルト4がスプール9に巻き取られる。
図6(b)に示すように、レバー25bへの押圧力が実質的に消滅した第1のボール20は、リングギア25の回転でレバー25bによりガイド通路35にガイドされて移動する。そして、図6(c)に示すように第1のボール20は誘導通路34に進入すると、レバー25bから離間するとともにこの誘導通路34にガイドされて円弧状通路33に移動する。同様に、レバー25bへの押圧力が実質的に消滅した第2のボール20以降の各ボール20が、順次誘導通路34にガイドされて円弧状通路33に移動する。各ボール20は誘導通路34および円弧状通路33を移動しているときは、リングギア25のレバー25bに当接しない。換言すると、リングギア25の回転は、誘導通路34および円弧状通路33に位置する各ボール20によって影響されなく、レバー25bへのボール20の押圧力がリングギア25の回転に効率よく利用される。
なお、ガスジェネレータ19で発生されたガスの一部は、ピストン21の排気孔21eおよび排気溝21fを通ってピストン21のボール20側に流動するので、ピストン21のガスジェネレータ19側の圧力が過大となることが抑制される。
すなわち、ガスジェネレータ19側のパイプ17内のガスを、ピストン21のボール20側に流動させ、ピストン21の戻りに対するガスの抵抗を抑制することができ、ピストン21をより一層スムーズに移動させることが可能となる。したがって、リングギア25をシートベルト引出し方向に一層スムーズに回転させることができ、EA機構を効果的に作動させることが可能となる。
そして、第1のボール20がストッパ部18fに当接したとき、あるいはスプール9をシートベルト引出し方向に回転させようとするシートベルト4の張力がスプール9をシートベルト巻取り方向に回転させようとするボール20と等しくなったとき、各ボール20の移動が停止する。これにより、リングギア25およびピニオン26の回転が停止して、プリテンショナー15の作動が停止する。したがって、プリテンショナー15の作動によるスプール9のシートベルト4の巻取りが終了する。その結果、シートベルト4により乗員はより一層堅固に拘束される。
続いて、乗員の慣性によりシートベルト4が引き出されようとし、スプール9がシートベルト引出し方向に回転しようとする。このとき、ロッキングベース11のシートベルト引出し方向の回転がロックされているので、トーションバー10が捩り変形する。このトーションバー10の捩り変形によりスプール9がシートベルト引出し方向に回転するので、シートベルト4からの乗員に加えられる力が制限される。すなわち、トーションバー10はEA作動を行う。
トーションバー10のEA作動中はスプール9がシートベルト引出し方向に回転するため、リングギア25も同方向に回転する。そして、図6(c)においてリングギア25の回転で、終端側の3個のボール20がリングギア25の対応するレバー25bによってパイプ17の方へ戻される。しかし、終端から4個目のボール20から始端側(第1のボール20側)の各ボール20は、リングギア25の各レバー25bに当接しないのでパイプ17の方へは戻されない。なお、このとき、終端から4個目のボール20は図6(c)に二点鎖線で示すようにボール収容部36に収容される。そして、4個目のボール20より始端側に存在する各ボール20は、4個目のボール20に始端側に隣接する5個目のボール20が4個目のボール20に当接することで、終端から4個目のボール20から始端側の各ボール20はパイプ17の方へ移動不能となり、これらのボールの逆流が防止される。すなわち、EA作動時にはボール20の一部、つまり終端側の3個のボール20が部分的にリングギア25によって戻されることになる。したがって、リングギア25のシートベルト引出し方向の回転に対するボール20の影響は抑制される。このように、トーションバー10のEA作動時に、リングギア25のシートベルト引出し方向の回転に対してボール20の影響が抑制されることから、リングギア25はよりスムーズに回転する。その結果、トーションバー10によるEA作動は効果的に行われる。
更に、図6(c)には図示省略されているが、パイプ17の方へ移動するボール20によりピストン21もガスジェネレータ19の方へ戻される。このピストン21の移動により、ピストン21のガスジェネレータ19側のパイプ19内の圧力が高くなるが、ガスジェネレータ19側のパイプ19内のガスが、ピストン21の排気孔21eおよび排気溝21fを通ってピストン21のボール20側に流動するので、ピストン21の移動に対するガスの抵抗が抑制される。これにより、ピストン21がよりスムーズに移動するので、リングギア25のシートベルト引出し方向の回転もよりスムーズになる。したがって、トーションバー10によるEA作動が更に一層効果的に行われる。
図7は、この例のプリテンショナーの第1実施形態のピストンを示す断面図である。
このピストン21は、ボール20と同様の金属製のピストン本体21aとシリコンあるいは樹脂等の非金属製のピストンリング21bとを有している。
図7に示すように、ピストン本体21aは、ガスジェネレータ19側に位置する円柱状の軸部21cと、ボール20側に位置する略半球状(つまり、略球面状)の頭部21dとを有する。その場合、略半球状の頭部21dの径方向の中心側が外周側より、ボール20側に突出している。これらの軸部21cおよび頭部21dは一体に形成されるとともに、軸部21cおよび頭部21dを軸方向に貫通する排気孔21eが穿設されている。また、頭部21dには、4個の排気溝21fが排気孔21eに連通するようにして十字形に形成されている。これらの排気溝21fはそれらの幅が一定になるように設定されている。
これらの排気溝21fにより、ピストン21aの頭部21dがボール20に当接した状態で、排気孔21eがボール20によって塞がれることが防止されている。したがって、ピストン21aの頭部21dがボール20に当接した状態でも、ピストン21のガスジェネレータ19側とボール20側との間が排気孔21eおよび排気溝21fによって常時連通している。これらの排気孔21eおよび排気溝21fにより、ガスが流動する排気通路が形成される。
ピストンリング21bは円筒状に形成されているとともにピストン本体21aの軸部21cに嵌合されている。このピストンリング21bは、軸部21cの外周面とパイプ17の内周面との間を気密にまたはほぼ気密にシール可能にかつパイプ17の内周面に対して摺動可能に配設されている。
そして、ガスジェネレータ19で発生されたガスはピストン21を図4において左方へ押圧する。これにより、ピストン21はボール20を同方向に押圧する。また、ガスジェネレータ19からのガスは、排気孔21eおよび各排気溝21fを通って、ピストン21のガスジェネレータ19側からボール側に所定量流動可能となっている。その場合、ピストン21の頭部21dがボール20に当接した状態でも、ガスの一部は各排気溝21fを通してピストン21のボール20側に流動可能である。
なお、各排気溝21fは、中心の幅が最も大きいとともに、中心から先端に向かって次第に小さくなるように形成することもできる。また、ピストン21の排気溝21fは4個に限定されることはなく、任意の数だけ設けることができる。そして、排気溝21fは複数個設けられる場合には、各溝21fは円周方向に等間隔に設けることが望ましい。
ピストン21の軸部21cの外周には、バネ41が取り付けられる。図7に示すように、バネ41の一端は、軸部21cの外周を締め付けるようにピストン21に嵌合される。バネ41の他端は、ガスジェネレータ19に当接する。したがって、ピストン21は、バネ41の付勢力によってボール20に押しつけられる。
本実施形態のプリテンショナーは、バネ41の一端がピストン21に取り付けられるので、バネ41がパイプ17外に外れることが抑制され、容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
図8は、この例のプリテンショナーのパイプ内に第1実施形態のピストン及びガスジェネレータを設置する手順を示す部分断面図である。
ピストン21は、図8(a)の矢印に示すように、パイプ17内に収納される。パイプ17内に挿入する際には、ピストン21の頭部21d側から挿入する。この時、ピストンリング21bとバネ41は、軸部21cの外周に嵌められているので、ピストン21からほとんど外れることがない。
パイプ17内にピストン21を収納した後、図8(b)に示すように、ガスジェネレータ19をパイプ17内に収納する。この時、ガスジェネレータ19は、バネ41の付勢力に対抗して、バネ41を縮めるように押し込みながら収納する。
パイプ17内にガスジェネレータ19を収納した後、図8(c)に示すように、パイプ17の一端部17aの先端17fを内周側に加締めることで、パイプ17内へのピストン21及びガスジェネレータ19の設置を完了する。
本実施形態のプリテンショナーは、このような手順によりパイプ内にピストン及びガスジェネレータを設置するので、バネ41がパイプ17外に外れることが抑制され、容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
図9は、この例のプリテンショナーの第2実施形態のピストンを示す断面図である。
第2実施形態では、ピストン21の軸部21cの外周にバネ41が取り付けられ、さらにバネ41の外側にピストンリング21bが取り付けられる。バネ41の一端は、軸部21cの外周を締め付けるようにピストン21に嵌合される。そして、バネ41の一端の外側には、ピストンリング21bがバネ41の一端を締め付けるように嵌合される。バネ41の他端は、ガスジェネレータ19に当接する。したがって、ピストン21は、バネ41の付勢力によってボール20に押しつけられる。
第2実施形態のプリテンショナーは、ピストン21の軸部21cの外周にバネ41が取り付けられ、バネ41の一端の外側にピストンリング21bが取り付けられる。したがって、ピストン21の軸部21cにバネ41の締め付け力とピストンリング21bの締め付け力が働き、より強くバネ41がピストン21に取り付けられる。すなわち、バネ41がパイプ17外に外れることがより抑制され、容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
図10は、この例のプリテンショナーの第3実施形態のピストンを示す断面図である。
第3実施形態のピストン21は、軸部21cの外周に環状の凸部21gが形成される。そして、ピストン21の軸部21cの外周にバネ41を取り付ける際に凸部21gにバネ41を引っ掛けることで、バネ41がピストン21に取り付けられる。バネ41の他端は、ガスジェネレータ19に当接する。したがって、ピストン21は、バネ41の付勢力によってボール20に押しつけられる。
第3実施形態のプリテンショナーは、ピストン21の軸部21cの外周にバネ41が取り付けられる際に、軸部21cの環状凸部21gにバネ41を引っ掛ける。したがって、ピストン21の軸部21cにバネ41の締め付け力が働くと共に環状凸部21gにバネ41が引っ掛かるので、より強くバネ41がピストン21に取り付けられ、バネ41がパイプ17外に外れることがより抑制され、容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
なお、第3実施形態では、凸部21gは、軸部21cの外周に環状に形成されたが、軸部21cの外周の所定の位置に少なくとも1つ形成すればよい。
図11は、この例のプリテンショナーの第4実施形態のピストンを示す断面図である。
第4実施形態のピストン21は、軸部21cの内周に所定の間隔で凸部21hが形成される。そして、ピストン21の軸部21cの内周にバネ41を取り付ける際に凸部21hにバネ41を引っ掛けることで、バネ41がピストン21に取り付けられる。バネ41の他端は、ガスジェネレータ19に当接する。したがって、ピストン21は、バネ41の付勢力によってボール20に押しつけられる。
第4実施形態のプリテンショナーは、ピストン21の軸部21cの内周にバネ41が取り付けられる際に、軸部21cの凸部21hにバネ41を引っ掛ける。したがって、ピストン21の軸部21cにバネ41の広がり力が働くと共に環状凸部21gにバネ41が引っ掛かるので、より強くバネ41がピストン21に取り付けられ、バネ41がパイプ17外に外れることがより抑制され、容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
なお、第4実施形態では、凸部21gは、軸部21cの内周に所定の間隔で形成されたが、軸部21cの内周の所定の位置に少なくとも1つ形成すればよい。また、凸部21gは、軸部21cの内周に環状に形成してもよい。
図12は、この例のプリテンショナーの第5実施形態のピストンを示す断面図である。
第5実施形態では、ピストン21にバネ41を取り付けるためのバネ掛止部材42を有する。バネ掛止部材42は、筒部42aと、筒部42aの一端から外周側に少なくとも一部が突出するフランジ部42bと、を有する。そして、ピストン21の軸部21cの内側にバネ掛止部材42の筒部42aを嵌め込み固定し、バネ掛止部材42のフランジ部42bにバネ41を引っ掛けることで、バネ41がピストン21に取り付けられる。バネ41の他端は、ガスジェネレータ19に当接する。したがって、ピストン21は、バネ41の付勢力によってボール20に押しつけられる。
このように、第5実施形態のプリテンショナーは、ピストン21の軸部21cの内側にバネ掛止部材42の筒部42aが嵌め込み固定され、軸部21cの外周にバネ41が取り付けられる際に、フランジ部42bにバネ41を引っ掛ける。したがって、ピストン21の軸部21cにバネ41の締め付け力が働くと共にフランジ部42bにバネ41が引っ掛かるので、より強くバネ41がピストン21に取り付けられ、バネ41がパイプ17外に外れることがより抑制され、容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
図13は、この例のプリテンショナーの第6実施形態のピストンを示す断面図である。
第6実施形態では、ピストン21にバネ41を取り付けるためのバネ掛止部材43を有する。バネ掛止部材43は、筒部43aと、筒部43aの一端から内周側に少なくとも一部が突出するフランジ部43bと、を有する。そして、ピストン21の軸部21cの内側にバネ掛止部材43の筒部43aを嵌め込み固定し、バネ掛止部材43のフランジ部43bにバネ41を引っ掛けることで、バネ41がピストン21に取り付けられる。バネ41の他端は、ガスジェネレータ19に当接する。したがって、ピストン21は、バネ41の付勢力によってボール20に押しつけられる。
このように、第6実施形態のプリテンショナーは、ピストン21の軸部21cの内側にバネ掛止部材43の筒部43aが嵌め込み固定され、軸部21cの内周にバネ41が取り付けられる際に、フランジ部43bにバネ41を引っ掛ける。したがって、ピストン21の軸部21cにバネ41の広がり力が働くと共にフランジ部43bにバネ41が引っ掛かるので、より強くバネ41がピストン21に取り付けられ、バネ41がパイプ17外に外れることがより抑制され、容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
以上、本実施形態のプリテンショナー15によれば、緊急時にガスを発生するガスジェネレータ19と、ケース24と、ケース24に取り付けられるパイプ17と、パイプ17内に移動可能に設けられるとともにガスの圧力で移動してスプール9をシートベルト巻き取り方向に回転させるための力を伝達する所定数のボール20と、パイプ17内に移動可能に設けられるとともにガスの圧力で移動してボール20を押圧するピストン21と、ケース24内に少なくとも回転可能に設けられるとともに、外周にボール20によって押圧される複数のレバー25bを有し、その押圧によってスプールを回転させるリングギア25と、ピストン21のガスジェネレータ19側に取り付けられるバネ41と、を少なくとも有するので、ピストン21とバネ41とを組立時に一体に扱うことができ、容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
また、本実施形態のプリテンショナー15によれば、ピストン21は、ピストン本体21aと、ピストン本体21aに嵌合されたピストンリング21bと、を有し、ピストン本体21aは、ガスジェネレータ19側に形成された軸部21cを有し、バネ41は、軸部21cに取り付けられるので、より容易且つ的確に組み立て製造することができ、的確に作動させることが可能となる。
また、本実施形態のプリテンショナー15によれば、ピストン本体21aは、ボール20側からガスジェネレータ19側へ軸方向に貫通する排気通路21e,21fを有するので、ガスジェネレータ19側のパイプ17内のガスを、ピストン21のボール20側に流動させ、ピストン21をより一層スムーズに移動させることが可能となる。
また、本実施形態のプリテンショナー15によれば、軸部2cは、バネ41が掛止される凸部21g,21hが形成されるので、バネ41を凸部21g,21hに掛止することができ、より容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
また、本実施形態のプリテンショナー15によれば、ピストン21は、バネ41が掛止される掛止部材42,43を有し、掛止部材42,43は、軸部21cに嵌合する筒部42a,43aと、筒部42a,43aの一端から突出するフランジ部42b,43bと、を有するので、バネ41を掛止部材42,43に掛止することができ、より容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
また、本実施形態のシートベルトリトラクタ3は、シートベルト4と、シートベルト4を巻き取るスプール9と、通常時スプール9とともに回転しかつ緊急時にシートベルト引出し方向の回転が阻止されてスプール9と相対回転を生じるロッキングベース11と、緊急時にロッキングベース11のシートベルト引出し方向の回転をロックするロック機構12と、スプール9とロッキングベース11との間に設けられてスプール9とロッキング部材との相対回転時にシートベルト4にかかる荷重を制限するエネルギ吸収機構10と、緊急時に作動してスプール9をシートベルト巻取り方向に回転するプリテンショナー15と、を少なくとも備えるので、プリテンショナー15のピストン21とバネ41とを組立時に一体に扱うことができ、容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
また、本実施形態のシートベルト装置1によれば、シートベルト4を巻き取るシートベルトリトラクタ3と、シートベルトリトラクタ3から引き出されたシートベルト4に摺動自在に支持されたタング6と、タング6が係脱可能に係合されるバックル7と、を少なくとも備え、緊急時にシートベルトリトラクタ3によってシートベルト4の引出しが阻止されることで乗員を拘束すると共に、ピストン21とバネ41とを組立時に一体に扱うことができ、容易且つ的確に組み立て製造することが可能となる。
本発明のシートベルトリトラクタおよびシートベルト装置は、力伝達部材として複数のボールを用いたプリテンショナーおよびEA機構を備えるシートベルトリトラクタ、およびこのシートベルトリトラクタを備えた車両のシートベルト装置に好適に利用することができる。
1…シートベルト装置、3…シートベルトリトラクタ、4…シートベルト、6…タング、7…バックル、8…フレーム、9…スプール、10…トーションバー(エネルギ吸収(EA)機構)、11…ロッキングベース(ロッキング部材)、12…ロック機構、13…減速度感知機構、14…連結部材、15…プリテンショナー、17…パイプ、18…ガイド部材、18b…係止部、18c…ガイド面、19…ガスジェネレータ、20…ボール(駆動伝達部材)、21…ピストン、21a…ピストン本体、21b…ピストンリング、21c…軸部、21d…頭部、21e…排気孔(排気通路)、21f…排気溝(排気通路)、21g,21h…凸部、22…ケース基材、23…カバー、24…ケース、25…リングギア、25a…内歯、25b…レバー(被押圧部)、26…ピニオン、26a…外歯、27…ケース基材側ガイド溝、27a…ケース基材側ボール誘導溝、28…ケース基材外周側ガイド壁、29…ケース基材内周側ガイド壁、29a…ケース基材側溝誘導部、30…カバー側ガイド溝、30a…カバー側ボール誘導溝、31…カバー外周側ガイド壁、32…カバー内周側ガイド壁、32a…カバー側溝誘導部、33…円弧状通路、34…誘導通路、35…ガイド通路、36…ボール収容部、41…バネ(弾性部材)42,43…掛止部材、42a,43a…筒部、42a,43a…フランジ部
Claims (7)
- 緊急時にガスを発生するガスジェネレータと、
ケースと、
前記ケースに取り付けられるパイプと、
前記パイプ内に移動可能に設けられるとともに前記ガスの圧力で移動してスプールをシートベルト巻き取り方向に回転させるための力を伝達する駆動伝達部材と、
前記パイプ内に移動可能に設けられるとともに前記ガスの圧力で移動して前記駆動伝達部材を押圧するピストンと、
前記ケース内に少なくとも回転可能に設けられるとともに、外周に前記駆動伝達部材によって押圧される複数の被押圧部を有し、その押圧によってスプールを回転させるリングギアと、
前記ピストンの前記ガスジェネレータ側に取り付けられる弾性部材と、
を少なくとも有する
ことを特徴とするプリテンショナー。 - 前記ピストンは、ピストン本体と、前記ピストン本体に嵌合されたピストンリングと、を有し、
前記ピストン本体は、前記ガスジェネレータ側に形成された軸部を有し、
前記弾性部材は、前記軸部に取り付けられる
ことを特徴とする請求項1に記載のプリテンショナー。 - 前記ピストン本体は、前記駆動伝達部材側から前記ガスジェネレータ側へ軸方向に貫通する排気通路を有する
ことを特徴とする請求項2に記載のプリテンショナー。 - 前記軸部は、前記弾性部材が掛止される凸部が形成される
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のプリテンショナー。 - 前記ピストンは、前記弾性部材が掛止される掛止部材を有し、
前記掛止部材は、前記軸部に嵌合する筒部と、前記筒部の一端から少なくとも一部が突出するフランジ部と、を有する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のプリテンショナー。 - シートベルトと、
前記シートベルトを巻き取るスプールと、
通常時前記スプールとともに回転しかつ緊急時にシートベルト引出し方向の回転が阻止されて前記スプールと相対回転を生じるロッキング部材と、
前記緊急時に前記ロッキング部材のシートベルト引出し方向の回転をロックするロック機構と、
前記スプールと前記ロッキング部材との間に設けられて前記スプールと前記ロッキング部材との相対回転時に前記シートベルトにかかる荷重を制限するエネルギ吸収機構と、
前記緊急時に作動して前記スプールをシートベルト巻取り方向に回転する請求項1乃至5のいずれか1つに記載のプリテンショナーと、
を少なくとも備える
ことを特徴とするシートベルトリトラクタ。 - シートベルトを巻き取る請求項1乃至6のいずれか1つに記載のシートベルトリトラクタと、
前記シートベルトリトラクタから引き出されたシートベルトに摺動自在に支持されたタングと、
前記タングが係脱可能に係合されるバックルと、
を少なくとも備え、
緊急時にシートベルトリトラクタによって前記シートベルトの引出しが阻止されることで乗員を拘束する
ことを特徴とするシートベルト装置。
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