以下、この発明による内燃機関の制御装置の好適な実施の形態について、図面を用いて説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、及び実施の形態4による内燃機関の制御装置の構成を示す構成図である。図1に於いて、内燃機関1は、第1気筒♯1、第2気筒♯2、第3気筒♯3、及び第4気筒♯4の4つの気筒を備えた4気筒の内燃機関であり、第1気筒♯1、第2気筒♯2、第3気筒♯3、及び第4気筒♯4のそれぞれの気筒で発生した燃焼ガスの圧力は、ピストン20の上面で受けとめられ、コンロッド21を介して一つのクランクシャフト2を回転させる動力としてクランクシャフト2に伝達される。クランクシャフト2の出力側端部から出力される出力トルクに基づいて車輛が駆動される。
第1のクランク角度センサ3は、クランクシャフト2の軸方向の前端部である反出力側端部に取り付けられた第1の第1のシグナルロータの周面に近接して配置されている。第1のシグナルロータ22は、その周面に所定の角度間隔を介して配設された複数個の突起物を備えている。第1のクランク角度センサ3は、第1の第1のシグナルロータの回転に伴って第1のクランク角度センサ3用の第1のシグナルロータ22の各突起物が第1のクランク角度センサ3に順次、接近と離脱を行なうことに対応して、パルス状の第1のクランク角度信号を発生し、制御装置7に入力する。制御装置7は、第1のクランク角度センサ3から入力される第1のクランク角度信号に基づいて、クランクシャフト2の反出力側端部の角度位置を検出する。
第2のクランク角度センサ4は、第2のクランク角度センサ4用の第2のシグナルロータ23の周面に近接して配置されている。そして、第2の第2のシグナルロータは、その周面に所定の角度間隔を介して配設された複数個の突起物を備えている。第2のクランク角度センサ4は、第2のシグナルロータ23の回転に伴って第2の第2のシグナルロータの各突起物が第2のクランク角度センサ4に順次、接近と離脱を行なうことに対応してパルス状の第2のクランク角度信号を発生し、制御装置7に入力する。制御装置7は、第2のクランク角度センサ4から入力される第2のクランク角度信号に基づいて、クランクシャフト2の出力側端部の角度位置を検出する。
クランクシャフト2の反出力側端部に取り付けられた第1のシグナルロータ22と、クランクシャフト2の出力側端部に取り付けられた第2のシグナルロータ23は、それぞれ、フライホイールと一体に構成されている。第1のシグナルロータ22と第2のシグナルロータ23にそれぞれに配設された突起物の数、つまり内燃機関の1回転で発生する信号数は、同一の数でも良く、或いはレイアウトの都合等により異なる数であっても良い。
カムシャフト5は、クランクシャフト2とチェーン24で連結されており、クランクシャフト2が2回転する間にカムシャフト5は1回転する。カム角度センサ6は、カムシャフト5に取り付けられたカム角度センサ用の第3のシグナルロータ25の周面に近接して配置されている。第3のシグナルロータ25は、その周面に所定の角度間隔を介して配設された複数個の突起物を備えている。カム角度センサ6は、第3のシグナルロータ25の回転に伴ってその各突起物がカム角度センサ6に順次、接近と離脱を行なうことに対応してパルス状のカム角度信号を発生し、制御装置7に入力する。制御装置7は、カム角度センサ6から入力されるカム角度信号に基づいて、カムシャフト5のカム角度位置を検出する。
制御装置7は、ECU(Electronic Control Unit)により構成されている。前述のように、第1のクランク角度センサ3からの第1のクランク角信号と、第2のクランク角度センサ4からの第2のクランク角度信号と、カム角度センサ6からのカム角度信号のそれぞれの角度情報に基づいて、第1気筒♯1、第2気筒♯2、第3気筒♯3、及び第4気筒♯4に於ける気筒内圧力を推定する。尚、ここでは詳細な説明は割愛するが、制御装置7は、内燃機関1に供給する燃料量や点火タイミングを制御する機能を有しており、推定した気筒内圧力に基づいて内燃機関1の第1気筒♯1、第2気筒♯2、第3気筒♯3、及び第4気筒♯4に於ける燃焼状態を推定して、理想の燃焼状態になる様に、燃料量や点火タイミングを制御することにより、燃費性能とエミッション性能の向上を実現する。
次に、制御装置7に設けられている燃焼気筒内圧力推定処理部の構成について説明する。図2は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、燃焼気筒内圧力推定処理部の基本的構成を示すブロック図である。図2に於いて、制御装置7に設けられた燃焼気筒内圧力推定処理部7Aは、クランク角度信号入力時刻記憶手段8と、クランク角加速度算出手段9と、クランク角度情報推定手段10と、燃焼気筒判別手段11と、クランク角度情報推定手段10に含まれる非燃焼気筒トルク設定手段12と、燃焼気筒トルク推定手段13と、燃焼気筒内圧力推定手段14とを備えている。
燃焼気筒判別手段11は、カム角度センサ6からのカム角度信号と、第1のクランク角度センサ3からの第1のクランク角度信号若しくは第2のクランク角度センサ4からの第2のクランク角度信号に基づいて、燃焼気筒を特定する。ここで、燃焼気筒とは、4サイクルエンジンに於ける圧縮行程の後半から膨張行程の前半にある気筒であると定義する。尚、燃焼気筒の特定の方法については、一般的な内燃機関の点火タイミング制御と同じであるため、詳細な説明はここでは割愛する。
クランク角度信号入力時刻記憶手段8は、燃焼気筒判別手段11によって識別された燃焼気筒に対応して、第1のクランク角度センサ3から入力された第1のクランク角度信号に基づくクランクシャフト2の反出力側端部のクランク角度位置が検出された時刻と、第2のクランク角度センサ4から入力された第2のクランク角度信号に基づくクランクシャフト2の出力側端部のクランク角度位置が検出された時刻とからなる時刻データを所定期間だけ蓄積しておく。
ここで所定の期間とは、少なくとも燃焼状態を推定するのに必要な気筒内圧力の検出区間、即ち、燃焼気筒の圧縮工程の後半から燃焼気筒の膨張行程の前半の区間を含むものとするが、これより長く蓄積しても良い。クランク角度位置が検出された時刻を気筒内圧力の検出区間より長い期間蓄積した場合は、最新の気筒の膨張行程の前半までの時刻データを蓄積する前に、最も古い気筒の膨張行程の後半までの時刻データを蓄積部から消去しておく。
角加速度算出手段9は、クランク角度信号入力時刻記憶手段8で蓄積した時刻データに基づいて、第1のシグナルロータ22、第2のシグナルロータ23にそれぞれ配設された前述の突起物の角度位置に応じてクランクシャフト2のクランク角加速度を算出する。即ち、第1のクランク角度センサ3からの第1のクランク角度信号に基づく第1のクランク角加速度と、第2のクランク角度センサ4からの第2のクランク角度信号に基づく第2のクランク角加速度を算出する。
クランク角度情報推定手段10は、角加速度算出手段9により算出した、第1のクランク角加速度と、第2のクランク角加速度とに基づいて、予め設定されている運動方程式を用いて、第1気筒♯1、第2気筒♯2、第3気筒♯3、及び第4気筒♯4のそれぞれのクランク角度位置とクランク角速度とクランク角加速度を推定する。
クランク角度情報推定手段10に含まれている非燃焼気筒トルク設定手段12は、燃焼気筒判別手段11で特定した現在燃焼中の気筒情報から、現在燃焼中以外の気筒を特定する。そして、第1気筒♯1、第2気筒♯2、第3気筒♯3、及び第4気筒♯4の各気筒のそれぞれのクランク角度位置とクランク角加速度を推定するために利用する運動方程式に対して、燃焼中以外の非燃焼気筒の出力トルクを「0」若しくは「0」に近い十分小さな値に設定する。
燃焼気筒トルク推定手段13は、燃焼気筒のトルクの推定に必要なクランク角度位置とクランク角加速度をクランク角度情報推定手段10から入力し、燃焼気筒のクランク角度位置毎のトルクの推定値を算出する。
燃焼気筒内圧力推定手段14は、燃焼気筒トルク推定手段13により算出した燃焼気筒のクランク角度位置毎のトルクの推定値を用いて、燃焼気筒のピストン20の上面が受けるガス圧、即ち気筒内圧力を推定する。
次に、前述した制御装置7に於ける燃焼気筒内圧力推定処理部7Aの処理の流れを詳細に説明する。図3は、この発明の実施の形態1、及び後述する実施の形態2、実施の形態3、実施の形態4による内燃機関の制御装置に於ける、燃焼気筒内圧力推定の処理の流れを示すフローチャートである。図3に於いて、ステップS301では、第1のクランク角度センサ3が検出した第1のクランク角度位置と、第2のクランク角度センサ4が検出した第2のクランク角度位置を、その検出した時刻と共にクランク角度信号入力時刻記憶手段8に蓄積、即ち記憶する。
具体的には、燃焼気筒判別手段11により判別された燃焼気筒に対して、この燃焼気筒の圧縮上死点(以下、TDCと称する)を基準とした第1のクランク角度位置θ1を検出した時刻と第2のクランク角度位置θfを検出した時刻とを蓄積する。図4は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、クランク角度位置検出時刻の蓄積状態を示す説明図であって、(a)は第1のクランク角度位置、(b)は第2のクランク角度位置を示す。
この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置では、第1のクランク角度センサ3用の第1のシグナルロータ22に配設された突起物と第2のクランク角度センサ4用の第2のシグナルロータ23に配設された突起物とは、同一のクランクシャフト2の同一のクランク角度位置に配設されており、基準気筒(例えば第1気筒♯1)のTDCから6[deg]間隔でそれぞれ「60」個配設されている。従って、第1のシグナルロータ22に基づく第1のクランク角度位置θ1と、第2のシグナルロータ23に基づく第2のクランク角度位置θfは、それぞれ基準気筒(例えば第1気筒♯1)のTDCから6[deg]間隔で「60」個のクランク角度位置を備えることになる。
クランク角度信号入力時刻記憶手段8は、第1のクランク角度位置θ1と第2のクランク角度位置θfの何れも、燃焼気筒の圧縮工程の後半から燃焼気筒の膨張行程の前半の区間として、TDC前90[deg]からTDC後90[deg]のクランク角度位置を格納している。それぞれのクランク角度信号の検出時刻t1、tfは、燃焼気筒の圧縮上死点前90[deg]の信号が検出された時刻を起点(「0」[msec])として、その起点のクランク角度位置以降のクランク角度信号が検出される毎に、起点である圧縮上死点前90[deg]のクランク角度信号の検出からの経過時間として格納番号「1」から「31」に記憶していく。
図5は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、クランク角度位置検出時刻の推移を示すグラフであって、図4で示したクランク角度信号入力時刻記憶手段8に記憶している第の1クランク角度位置の検出時刻t1と第2のクランク角度位置の検出時刻tfを各々プロットしたものである。図5に示すグラフから明らかなように、同一のクランク角度位置であるにもかかわらず、第1のクランク角度位置θ1と第2のクランク角度位置θfのそれぞれの検出時刻t1、tfに差が生じていることが判る。この現象がクランクシャフト2に捩り振動が生じた状態を示している。
即ち、弾性体であるクランクシャフト2が捩れることにより、クランクシャフト2の反出力側端部と出力側端部端が同じクランク角度位置に到達するまでの時刻に差が生じるのである。このため、第1のクランク角度センサ3が検出する第1のクランク角度位置θ1のみを観測していていても、第1のクランク角度センサ3に近接する第1気筒♯1以外の第2気筒♯2、第3気筒♯3、第4気筒♯4の実際のクランク角度位置は、第1のクランク角度センサ3により検出された角度位置θと異なるため、正確な筒内圧力の推定ができないことになる。
図3に戻り、ステップS302では、クランク角度信号入力時刻記憶手段8に蓄積された時刻データを用いて、クランク角加速度算出手段9により、第1のクランク角度位置θ1に対する第1のクランク角加速度AA1と第2のクランク角度位置θfに対する第2のクランク角加速度AAFをそれぞれ算出する。次に、ステップS302での処理の詳細を説明する。図6は、この発明の実施の形態1、及び後述する実施の形態2、実施の形態3、実施の形態4による内燃機関の制御装置に於ける、クランク角加速度算出手段での処理の流れを示すフローチャートである。
図6に於いて、先ず、ステップS601に於いて第1のクランク角度位置θ1に対する第1のクランク角速度AV1を算出し、続いてステップS602に於いて第1のクランク角速度AV1を用いて第1のクランク角度位置θ1に対する第1のクランク角加速度AA1を算出する。次に、ステップS603に於いて第2のクランク角度位置に対する第2のクランク角速度AVFを算出し、続いてステップS604に於いて第2のクランク角速度AVFを用いて第2のクランク角度位置θfに対する第2のクランク角加速度AAFを算出する。
図7は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、第1のクランク角度位置に対する角速度を演算する処理の流れを示すフローチャートであって、図6に於けるステップS601での処理の詳細を示している。図7に於いて、先ず、ステップS701に於いて、第1のクランク角度位置θ1に対する格納番号に対応する値を示すカウンタCNTをリセットする。具体的には、図4に示した第1のクランク角度位置θ1の格納番号を示すカウンタCNTに「2」を代入する。次にステップS702に於いて、第1のクランク角度位置θ1の終端に達したか否かを判断する。ここで、[P_NUM1]は、第1のクランク角度位置θ1の格納番号の最大値であり、処理の終端に対応するクランク角度位置の格納番号は[P_NUM1−1]とする。
即ち、第1のクランク角度位置θ1に対する第1のクランク角速度AV1を算出する格納番号を示すカウンタCNTは、「2」から[P_NUM1−1]である。このように、格納番号の先頭部分と後端部分を処理しないのは、後述する中心差分法により角速度を求めるからである。ステップS702で判断の結果、格納番号を示すカウンタCNTの値が第1のクランク角度位置θ1の終端に達していないと判断した場合(NO)は、未だ算出すべきクランク角速度が残っていると判断して、ステップS703で第1のクランク角度位置θ1に対する第1のクランク角速度AV1を算出する。一方、ステップS702で判断の結果、格納番号を示すカウンタCNTのカウント値が第1のクランク角度位置θ1に対する終端に達したと判断した場合(YES)の場合は、第1のクランク角度位置θ1に対する第1のクランク角速度AV1の算出は終了したと判断して処理を終了する。
ステップS703では、中心差分法を用いて次に次に示す式(1)により第1のクランク角度位置θ1に対する第1のクランク角速度AV1を算出する。
ここでθ1(CNT)とt1(CNT)は、それぞれ、格納番号に蓄積されたクランク角度位置θ1と時刻t1を示す。その後、ステップS704で格納番号を示すカウンタCNTをインクリメントしてステップS702に戻る。
次に、ステップS703にて算出した第1の角速度AV1を用いて、第1のクランク角度位置θ1に対する第1のクランク角加速度AA1を算出する。この処理は、前述したように図6に於けるステップS602にて行われる。以下、ステップS602での処理の詳細を説明する。図8は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、第1のクランク角度位置に対する第1のクランク角加速度を演算する処理の流れを示すフローチャートである。前述したように図6に於けるステップS601の処理が第1のクランク角度位置θ1の中心差分からクランク角速度を算出したことに対して、ステップS602では、ステップS601で算出した第1のクランク角速度AV1を用いて、第1の角加速度AA1を第1のクランク角度位置θ1に対応させて中心差分法で算出する。
即ち、図8に於いて、先ず、ステップS801で処理するクランク角度位置の格納番号を示すカウンタCNTをリセットする。ここでは、格納番号を示すカウンタCNTに「3」を代入する。次にステップS802で処理する第1のクランク角度位置θ1の終端に達したか否かを判断する。ここでは、処理の終端に対応する第1のクランク角度位置θ1のカウンタCNTは[P_NUM1−2]とする。即ち、第1のクランク角度位置θ1に対する第1のクランク角加速度AA1を算出するカウンタCNTは「3」から[P_NUM1−2]であり、格納番号の先頭部分と後端部分を処理しないのは、第1のクランク角加速度AA1を算出するために利用する第1のクランク角速度AV1の格納番号が「2」から[P_NUM1−1]しか存在しないからである。
ステップS802での判断の結果、格納番号を示すカウンタCNTの値が第1のクランク角度位置θ1の終端に達していないと判断した場合(NO)は、未だ算出すべきクランク角加速度が残っていると判断して、ステップS803で第1のクランク角加速度AA1を算出する。一方、ステップS802で判断の結果、格納番号を示すカウンタCNTのカウント値が第1のクランク角度位置θ1に対する終端に達したと判断した場合(YES)の場合は、第1のクランク角度位置θ1に対する第1のクランク角加速度AA1の算出は終了したと判断して処理を終了する。
次に、ステップS803では、中心差分法を用いて次に示す式(2)により第1のクランク角度位置θ1に対する第1のクランク角加速度AA1を算出する。
その後、ステップS804でカウンタCNTを示すカウンタをインクリメントしてステップS802に戻る。
次に、図6に於けるステップS603での第2のクランク角度位置θfに対する第2のクランク角速度AVFを算出する処理の詳細について説明する。図9は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、第2のクランク角度位置に対するクランク角速度を演算する処理の流れを示すフローチャートである。図9に於いて、先ず、ステップS901により、第2のクランク角度位置θfに対する格納番号を示すカウンタCNTをリセットする。具体的には、図4に示した第2のクランク角度位置θfの格納番号を示すカウンタCNTに値「2」を代入する。次にステップS902に於いて、第2のクランク角度位置θfの終端に達したか否かを判断する。ここで、[P_NUM2]は、第2のクランク角度位置θfの格納番号の最大値であり、処理の終端に対応するクランク角度位置の格納番号は[P_NUM2−1]とする。
即ち、第2のクランク角度位置θfに対する第2のクランク角速度AVFを算出する格納番号を示すカウンタCNTは、「2」から[P_NUM2−1]である。このように、格納番号の先頭部分と後端部分を処理しないのは、後述する中心差分法によりクランク角速度を求めるからである。ステップS902で判断の結果、格納番号を示すカウンタCNTの値が第2のクランク角度位置θfの終端に達していないと判断した場合(NO)は、まだ算出すべきクランク角速度が残っていると判断して、ステップS903で第2のクランク角度位置θfに対する第2のクランク角速度AVFを算出する。一方、ステップS902で判断の結果、格納番号を示すカウンタCNTのカウント値が第2のクランク角度位置θfに対する終端に達したと判断した場合(YES)は、第2のクランク角度位置θfに対する第2のクランク角速度AVFの算出は終了したと判断して処理を終了する。
ステップS903では、中心差分法を用いて次に示す式(3)により第2のクランク角度位置θfに対する第2のクランク角速度AVFを算出する。
ここでθf(CNT)とtf(CNT)は、それぞれ、格納番号に蓄積された第2のクランク角度位置θfと時刻tfを示す。その後、ステップS904で格納番号を示すカウンタCNTをインクリメントしてステップS902に戻る。
次に、ステップS903で算出した第2の角速度AVFを用いて、第2のクランク角度位置θfに対する第2の角加速度AAFを算出する。この処理は、前述したように図6に於けるステップS604にて行われる。以下、ステップS604での処理の詳細を説明する。図10は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、第2のクランク角度位置に対する第2のクランク角加速度を演算する処理の流れを示すフローチャートである。前述したように図6に於けるステップS603の処理が第2のクランク角度位置θfの中心差分からクランク角速度を算出したことに対して、ステップS604では、ステップS603で算出した第2のクランク角速度AVFを用いて、第2の角加速度AAFを第2のクランク角度位置θfに対応させて中心差分法で算出する。
即ち、図10に於いて、先ず、ステップS1001により、処理する角度位置の格納番号を示すカウンタCNTをリセットする。ここでは、格納番号を示すカウンタCNTに「3」を代入する。次にステップS1002で処理する第2のクランク角度位置θfの終端に達したか否かを判断する。ここでは、処理の終端に対応する第2のクランク角度位置θfのカウンタCNTは[P_NUM2−2]とする。即ち、第2のクランク角度位置θfに対する第2のクランク角加速度AAFを算出するカウンタCNTは「3」から[P_NUM2−2]であり、格納番号の先頭部分と後端部分を処理しないのは、第2のクランク角加速度AAFを算出するために利用する第2のクランク角速度AVFの格納番号が「2」から[P_NUM2−1]しか存在しないからである。
ステップS1002での判断の結果、格納番号を示すカウンタCNTの値が第2のクランク角度位置θfの終端に達していないと判断した場合(NO)は、まだ算出すべき角加速度が残っていると判断して、ステップS1003で第2のクランク角加速度AAFを算出する。一方、ステップS1002で判断の結果、格納番号を示すカウンタCNTのカウント値が第2のクランク角度位置θfに対する終端に達したと判断した場合(YES)は、第2のクランク角度位置θfに対する第2のクランク角加速度AAFの算出は終了したと判断して処理を終了する。
次に、ステップS1003では、中心差分法を用いて次に示す式(4)により第2のクランク角度位置θfに対する第2のクランク角加速度AAFを算出する。
その後、ステップS1004で格納番号を示すカウンタCNTをインクリメントしてステップS1002に戻る。
図3に戻って、燃焼気筒内圧力推定処理部7Aの処理につての説明を続ける。図3に於いて、ステップS303では、クランク角加速度算出手段9で算出した角加速度を用いてクランク角度情報推定手段10により第1気筒♯1以外の各気筒♯2、♯3、♯4に対応するクランク角度位置、クランク角加速度を推定する。クランクシャフト2は弾性体であるため、図1で示した内燃機関1のクランクシャフト2は図11に示すモデルで表すことができる。即ち、図11は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置を説明するための、クランクシャフトモデルの説明図である。
図11に於いて、Ij(j=1、2、3、4)は第j気筒の慣性モーメント、Ifはフライホイールの慣性モーメント、kin(i=1、2、3;n=2、3、4)は、それぞれ第i気筒と第n気筒の連結部のバネ定数、k4fは、第4気筒とフライホイールの連結部のバネ定数であり、これらは設計時に決まる定数である。更に各気筒で発生するトルクをTj(j=1、2、3、4)、第i気筒のクランク角度位置をθi(i=1、2、3、4)、第i気筒の角加速度を
(i=1、2、3、4)、内燃機関1に掛かる負荷値をTLとすると、このクランクシャフト2の弾性体モデルは次の関係式で示される。
クランク角度情報推定手段10は、前述の式(4)をクランク角加速度算出手段9で算出した第2の角加速度AAFを用いて式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、及び式(9)を順次解くことにより、第1気筒♯1以外の気筒である第2気筒♯2、第3気筒♯3、及び第4気筒♯4のクランク角度位置θp(p=2、3、4)に対するクランク角加速度
(p=2、3、4)を推定する。
非燃焼気筒トルク設定手段12は、燃焼気筒判別手段11で判別した燃焼気筒の情報に基づいて、非燃焼気筒を判定する。例えば、燃焼気筒が第2気筒♯2であれば、非燃焼気筒を第2気筒♯2以外の気筒、即ち第1気筒♯1、第3気筒♯3、第4気筒♯4を非燃焼気筒と判定する。続いて、前述したクランクシャフト2の弾性体モデルの関係式である式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)の非燃焼気筒のトルクを「0」に設定する。具体的には[T1=T3=T4=0]と設定する。こうすることにより、式(5)は下記の式(10)に変形することができる。
第2気筒♯2のクランク角度位置θ2は、第1のクランク角度センサ3とクランク角加速度算出手段9で得られたクランク角度位置θ1及びクランク角加速度
から算出される。ここで、この第2気筒♯2のクランク角度位置θ2を、燃焼気筒トルク推定手段側から、即ち、クランクシャフト2の反出力側端部から推定したということを示すようにθ2e1と記述することとする。
次に、式(9)を下記の式(11)に変形する。
第4気筒♯4の角度位置θ4は、第2のクランク角度センサ4とクランク角加速度算出手段9で得られた第2のクランク角度位置θf及び第2のクランク角加速度
から算出される。尚、TLは前述したように内燃機関1に掛かる負荷値であり、例えば
、どの気筒も燃焼していないタイミングのクランクシャフト2の減速度を基に算出できる値である。この第4気筒♯4のクランク角度位置θ4を、第2のクランク角度センサ4側から、即ち、クランクシャフト2の出力側端部から、推定したということを示すようにθ4efと記述することとする。
次に、前述の式(8)を下記の式(12)に変形する。
従って、第3気筒♯3のクランク角度位置θ3は、式(12)にθ4、
、θfを与えて解くことができる。
は式(11)で求めた第4気筒♯4のクランク角度位置θ4を用いて、下記の式(13)、式(14)から算出される。
ここで、CNTは、第2のクランク角度センサ4で検出した第2のクランク角度位置の格納番号である。この様にして算出した第3気筒♯のクランク角度位置θ3の推定値をθ3efと記述する。
次に、前述の式(7)を下記の式(15)に変形する。
従って、第2気筒♯2のクランク角度位置θ2は、式(15)にθ3、
、θ4を与えて解くことができる。
は、
と同様に、下記の式(16)、式(17)の差分法から算出することができる。
ここで、式(16)により得られた第2気筒♯2のクランク角度位置θ2の推定値をθ2efと記述する。このように、第2気筒♯2のクランク角度位置θ2の推定値に関しては、前述の式(10)、及び式(15)から得られたθ2e1とθ2efの2種類が存在する事がわかる。
最後に、第2気筒♯2のクランク角度位置θ2の2種類の推定値θ2e1とθ2efを、下記の式(18)、式(19)のθ2に代入して
を算出する。
このように、燃焼気筒のトルクT2を算出するための関係式である式(6)に代入するべきパラメータ群は、第1のクランク角度センサ3で検出した第1のクランク角度位置θ1と、燃焼気筒に対してクランクシャフト2の反出力側端部からと、出力側端部からの2方向から式(5)から式(9)を順次解いていくことで求めた
、θ2、θ3により、全て求めることができる。
次にクランク角度情報推定手段10による処理の流れを説明する。図12は、この発明の実施の形態1、及び後述する実施の形態2、実施の形態3、実施の形態4による内燃機関の制御装置に於ける、クランク角度情報推定手段での処理の流れを示すフローチャートである。図12に於いて、先ず、ステップS1201で燃焼気筒判別手段11から得た燃焼気筒の番号CBが「1」、即ち、燃焼気筒は第1気筒♯1か否かを判断し、燃焼気筒が第1気筒♯1であれば(YES)、第1のクランク角度センサ3からクランクシャフト2の出力側端部の方向へのクランク角度位置、クランク角速度、クランク角加速度の推定は不要と判断して、ステップS1208へ進む。
一方、ステップS1201での判断の結果、燃焼気筒が第1気筒♯1でなければ(NO)、ステップS1202に進み、クランク角度位置、クランク角速度、クランク角加速度を推定する対象となる気筒番号CQに「2」を設定する。次に、ステップS1203に進んで、クランク角度位置θCQを推定する。次に、このステップS1203での処理を詳細に説明する。図13は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、第1のクランク角度センサ3に対応する燃焼気筒のクランク角度位置を推定する処理の流れを示すフローチャートであって、図12に於けるステップS1203での処理の詳細を示している。
図13に於いて、先ず、ステップS1301で第1のクランク角度センサ3で検出したクランク角度位置の格納番号を示すカウンタCNTを「1」に設定する。次にステップS1302に於いて、処理するクランク角度位置の終端に達したか否かを判断する。ここでは、処理の終端に対応する角度位置の格納番号は[P_NUM1]とする。ステップS1302での判断の結果、処理する角度位置の終端に達していないと判断した場合(NO)は、ステップS1303に進み処理を継続し、処理するクランク角度位置の終端に達していると判断した場合(YES)は、処理を終了する。
ステップS1303では、第CQ気筒の格納番号を示すカウンタCNTの値に対応するクランク角度位置を推定する。ここで、[CQ=2]の場合は下記の式(20)を用い、[CQ>2]の場合は下記の式(21)を用いる。そして、ステップS1304で格納番号を示すカウンタCNTをインクリメントしてステップS1302に戻る。
次に図12に於けるステップS1204で、角速度
を推定する。この処理の詳細は図14に示される。即ち、図14は、この発明の実施の
形態1による内燃機関の制御装置に於ける、第1のクランク角度センサに対応する燃焼気筒のクランク角速度を推定する処理の流れを示すフローチャートである。図14に於いて、先ず、ステップS1401に於いて、第1のクランク角度センサ3により検出したクランク角度位置の格納番号に対応するカウンタCNTを「2」に設定する。次にステップS1402に於いて処理するクランク角度位置の終端に達したか否かを判断する。ここでは、処理の終端に対応するクランク角度位置の格納番号はP_NUM1−1とする。
ステップS1402での判定の結果、処理の終端に対応するクランク角度位置の格納番号P_NUM1−1に達していないと判断した場合(NO)は、ステップS1403に進んで処理を継続し、処理の終端に対応するクランク角度位置の格納番号[P_NUM1−1]に達していると判断した場合(YES)は、処理を終了する。ステップS1403では、第CQ気筒の格納番号を示すカウンタCNTの値に対応するクランク角速度を下記の式(22)により推定する。
次に、図12のステップS1205では、クランク角加速度
を推定する。この処理の詳細は図15に示される。即ち、図15は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、第1のクランク角度センサに対応する燃焼気筒のクランク角加速度を推定する処理の流れを示すフローチャートである。図15に於いて、先ず、ステップS1501で第1のクランク角度センサ3により検出した第1のクランク角度位置の格納番号を示すカウンタCNTに「3」を設定する。次にステップS1502に於いて処理するクランク角度位置の終端に達したか否かを判断する。ここでは、処理の終端に対応するクランク角度位置の格納番号は[P_NUM1−2]とする。
ステップS1502での判定の結果、処理の終端に対応するクランク角度位置の格納番号[P_NUM1−2]に達していないと判断した場合(NO)は、ステップS1503に進んで処理を継続し、処理の終端に対応するクランク角度位置の格納番号[P_NUM1−2]に達していると判断した場合(YES)は、処理を終了する。ステップS1503では、第CQ気筒の格納番号を示すカウンタCNTの値に対応するクランク角加速度を下記の式(23)により推定する。
次に、図12のステップS1206では、気筒番号CQをインクリメントする。ステップS1207では、気筒番号CQが燃焼気筒CBに達したか否かを判断し、気筒番号CQが燃焼気筒CBに達していれば(YES)、第1のクランク角度センサ3からクランクシャフト2の出力側端部の方向へのクランク角度位置、クランク角速度、クランク角加速度の推定は終了と判断して、ステップS1208へ進み、気筒番号CQが燃焼気筒CBに達していなければ(NO)、ステップS1203に戻る。
次に、第2のクランク角度センサ4からクランクシャフト2の反出力側端部の方向へのクランク角度位置、クランク角速度、クランク角加速度の推定を行う。図12に於いて、ステップS1208では、クランク角度位置、クランク角速度、クランク角加速度を推定する対象となる気筒番号CQにmを設定する。ここで、mは、内燃機関1の総気筒数である。
次に、ステップS1209にてクランク角度位置θCQを推定する。この処理の詳細は、図16に示される。即ち、図16は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、第2のクランク角度センサに対応する燃焼気筒のクランク角度位置を推定する処理の流れを示すフローチャートである。図16に於いて、先ず、ステップS1601に於いて、第2のクランク角度センサ4で検出した第2のクランク角度位置の格納番号を示すカウンタCNTを「1」に設定する。
次にステップS1602に於いて、処理するクランク角度位置の終端に達したか否かを判断する。ここでは、処理の終端に対応するクランク角度位置の格納番号は[P_NUM2]とする。テップS1602で処理するクランク角度位置の終端に対応するクランク角度位置の格納番号[P_NUM2]に達していないと判断すれば(NO)、ステップS1603に進み処理を継続し、処理するクランク角度位置の終端に対応するクランク角度位置の格納番号[P_NUM2]に達していると判断した場合(YES)は、処理を終了する。
ステップS1603では、第CQ気筒の格納番号を示すカウンタCNTの値に対応するクランク角度位置を推定する。ここで、そのクランク角度位置の推定には、[CQ=m]の場合は下記の式(24)を用い、[CQ=m−1]の場合は下記の式(25)、[CQ<m−1]の場合は下記の式(26)を用いる。
次に、ステップS1604に進んで、カウンタCNTをインクリメントしてステップS1602に戻る。
図12に戻り、ステップS1210では、クランク角速度
を推定する。この処理の詳細は、図17に示される。図17は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、第2のクランク角度センサに対応する燃焼気筒のクランク角速度を推定する処理の流れを示すフローチャートである。図17に於いて、先ず、ステップS1701では、第2のクランク角度センサ4で検出した第2のクランク角度位置θf格納番号に対応するカウンタCNTを「2」に設定する。
次に、ステップS1702で処理するクランク角度位置の終端に達したか否かを判断する。ここでは、処理の終端に対応するクランク角度位置の格納番号は[P_NUM1−1]とする。ステップS1702で処理するクランク角度位置の終端に達していないと判断した場合(NO)は、ステップS1703に進んで処理を継続し、処理するクランク角度位置の終端に達していると判断した場合(YE)は処理を終了する。
ステップS1703では、第CQ気筒の格納番号を示すカウンタCNTの値に対応するクランク角速度を、下記の式(27)に基づいて推定する。
図12に戻り、ステップS1211に於いて、クランク角加速度
を推定する。この処理の詳細は、図18に示される。図18は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、第2のクランク角度センサに対応する燃焼気筒のクランク角加速度を推定する処理の流れを示すフローチャートである。図18に於いて、先ず、ステップS1801に於いて、第2のクランク角度センサ4で検出したクランク角度位置θfの格納番号に対応するカウンタCNTの値を「3」に設定する。
次にステップS1802に於いて、処理するクランク角度位置の終端に達したか否かを判断する。ここでは、処理の終端に対応するクランク角度位置の格納番号は[P_NUM2−2]とする。ステップS1802にて、処理するクランク角度位置の終端に達していないと判断した場合(NO)場合は、ステップS1803に進み処理を継続し、処理するクランク角度位置の終端に達していると判断した場合(YES)は処理を終了する。
ステップS1803では、第CQ気筒の格納番号を示すカウンタCNTの値に対応するクランク角加速度を、下記の式(28)に基づいて推定する。
図12に戻り、ステップS1212に於いて気筒番号CQをデクリメントする。次に、ステップS1213に於いて気筒番号CQが[CB−1]に達したか否かを判断し、気筒番号CQが[CB−1]に達していると判断すれば(YES)、第2のクランク角度センサ4からクランクシャフト2の反出力側端部の方向へのクランク角度位置、クランク角速度、クランク角加速度の推定は終了と判断して処理を終了する。
図3のフローチャート図3に戻って、燃焼気筒内圧力推定の処理の流れの説明を続ける。図3に於いて、ステップS304では燃焼気筒トルク推定手段13により算出した燃焼気筒のクランク角度位置毎のトルクの推定値を用いて、燃焼気筒の発生トルクを推定する。
例えば、前述のとおり、燃焼気筒が第2気筒♯2であれば、燃焼気筒のトルクT2を算出するための関係式である前述の式(6)に代入するべきパラメータθ1、
、θ2、θ3は、第1のクランク角度センサ3で直接検出、あるいは、クランクシャフト2の反出力側端部からと、出力側端部からの2方向から前述の式(5)〜式(9)の関係式を順次解いていくことで求められている。そこで、第1のクランク角度センサ3で検出した第1のクランク角度位置θ1の格納番号を示すカウンタCNTの値毎に式(6)にこれらのパラメータ値を代入することでカウンタCNTの値毎の燃焼気筒のトルクT2を得ることができる。
次に、燃焼気筒トルク推定手段13に於ける燃焼気筒のトルクを推定する処理の流れを説明する。図19は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、燃焼気筒のトルクを推定する処理の流れを示すフローチャートである。図19に於いて、先ず、ステップS1901で燃焼気筒のトルクを算出する式を選択する。燃焼気筒のトルクを算出する式は、前述の式(5)〜式(9)で示したように予め準備されている。燃焼気筒判別手段11から得た燃焼気筒CBを基に、次に示す算出式群から燃焼トルク算出用の式が選択される。ここで、[CB=1]の場合は下記の式(29)、[CB=m]の場合は下記の式(30)、それ以外の場合は下記の式(31)が選択される。
次に、ステップS1902で第1のクランク角度センサ3で検出した第1のクランク角度位置θ1の格納番号を示すカウンタCNTに「3」を設定する。次にステップS1903に於いて、処理するクランク角度位置の終端に達したか否かを判断する。ここでは、処理の終端に対応するクランク角度位置の格納番号は[P_NUM1−2]とする。ステップS1903での判断の結果、カウンタの値が処理するクランク角度位置の終端に達していないと判断した場合(NO)は、ステップS1904に進み処理を継続し、処理するクランク角度位置の終端に達したと判断した場合(YES)は処理を終了する。
ステップS1904では、燃焼気筒CBが[CB=1]の場合を除いて、燃焼気筒のクランク角度位置θCB及びクランク角加速度
は、第1のクランク角度センサ3及び第2のクランク角度センサ4の両方から推定される。この実施の形態1では、第1のクランク角度センサ3からの出力に基づいて推定された値を利用する。ステップS1905でカウンタCNTをインクリメントしてステップS1903に戻る。
図3に戻って説明を続ける。図3に於いて、ステップS305では燃焼気筒トルク推定手段13で算出した推定トルクを用いて、燃焼気筒の気筒内圧力を推定する。図20は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、ピストン・クランク系の力学的な関係を示す説明図であって、ピストンからクランクシャフトに作用する力の関係を示している。図20に於いて、Pcylは気筒内圧力、Fはピストンからクランクシャフトに掛かる力、θはピストンの上死点TDCからのクランクシャフトの変位角、rはクランクシャフトの半径、λrはコンロッドの長さを示している。ここで、クランクシャフトがピストンから受けるトルクをTとすると、Tは次の式(32)で示される。
又、燃焼ガスによる力をFg、ピストンの慣性力による力をFi(iは気筒番号)とすると、ピストンからクランクシャフトに掛かる力Fは、下記の式(33)により示される。
ここでピストンの上面の面積をSとすると、燃焼ガスによる力Fgは、[Fg=Pcyl・S]で示され、ピストン慣性力による力Fiは下記の式(34)で表される。
尚、Mpはピストンの往復質量である。従って、推定すべき気筒内圧力Pcylは前述の式(32)〜式(34)から、下記の式(35)により求められる。
次に、燃焼気筒内圧力推定手段14の処理の流れを説明する。図21は、この発明の実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、及び実施の形態4による内燃機関の制御装置に於ける、燃焼気筒内圧力を推定する処理の流れを示すフローチャートである。図21に於いて、先ず、ステップS2101では、第1のクランク角度センサ3で検出した第1のクランク角度位置θ1の格納番号を示すカウンタCNTに「3」を設定する。次にステップS2102に於いて、処理するクランク角度位置の終端に達したか否かを判断する。ここでは、処理の終端に対応するクランク角度位置の格納番号は[P_NUM1−2]とする。
ステップS2102での判定の結果、処理するクランク角度位置の終端に達していないと判断した場合(NO)には、ステップS2103に進み処理を継続し、処理するクランク角度位置の終端に達していると判断した場合(YES)は処理を終了する。ステップS2103での処理により、燃焼気筒トルク推定手段13で推定した燃焼気筒のトルクTCB(CNT)、クランク角度情報推定手段10で推定した燃焼気筒のクランク角度位置θ(CNT)、クランク角速度
をそれぞれ(式35)に代入することにより、気筒内圧力Pcyl(CNT)を算出する。ステップS2104でカウンタCNTをインクリメントしてステップS2102に戻る。ここで(CNT)は、処理するクランク角度位置の格納番号を示すカウンタCNTの値に対応することを意味する。
以上のように、実施の形態1による内燃機関の制御装置によれば、クランクシャフト2の反出力側端部と出力側端部に設けられた2つのクランク角度センサにより、クランクシャフト2に捩り振動が生じる場合に於いても、各気筒のクランク角度位置、クランク角速度、クランク角加速度を推定することができる。このため、燃焼気筒の気筒内圧力を正確に推定することができる。
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2による内燃機関の制御装置について説明する。前述の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於いて、燃焼気筒が第1気筒である場合を除いて、燃焼気筒のクランク角度位置は、第1のクランク角度センサ3と第2のクランク角度センサ4の両方から求めることができた。例えば、実施の形態1による内燃機関の制御装置に於いて、燃焼気筒が第2気筒♯2である場合、この第2気筒♯2のクランク角度位置は前述のとおり、θ2e1とθ2efの2種類が求められることを示した。
しかし、各気筒のクランク角度位置は、例えば中心差分法を利用して2階微分の数値解を得ることにより推定するため、微小な誤差が含まれることがある。従って、クランク角度センサでの計測位置から離れる方向のクランク角度位置を推定する際に、この微小な誤差を累積していくことになり、燃焼気筒から遠い位置にあるクランク角度センサで検出した値を基に燃焼気筒のクランク角度位置を推定すると推定精度が低下する場合がある。ひいては、燃焼気筒の気筒内圧力の推定値の精度が低下することになる。
実施の形態2による内燃機関の制御装置は、実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける前述のような課題を解決するものである。以下、実施の形態2による内燃機関の制御装置について説明する。尚、内燃機関と、クランク角加速度算出処理、クランク角度情報推定処理、燃焼気筒内圧力推定処理は、それぞれ、前述の実施の形態1による内燃機関の制御装置で説明した図1、図3、図6、図12、図21と同一であるため、それらの説明は省略する。
図22は、この発明の実施の形態2による内燃機関の制御装置に於ける、気筒内圧力の推定の基本的概念構成を示すブロック図である。実施の形態2による内燃機関の制御装置では、前述の実施の形態1による内燃機関の制御装置の場合の図2の燃焼気筒トルク推定手段13の構成を変更している。図22に於いて、燃焼気筒トルク推定手段13は、クランク角度情報推定手段10で算出された燃焼気筒のクランク角度位置及びクランク角加速度を選択するクランク角度情報選択手段15を有している。
図23は、この発明の実施の形態2、及び後述の実施の形態3によるによる内燃機関の制御装置に於ける、燃焼気筒のトルクを推定する処理の流れを示すフローチャートであって、燃焼気筒トルク推定手段13の処理の内容を示しており、実施の形態1の場合の図19の処理の内容の一部分を変更している。具体的には、実施の形態2による図23のフローチャートでは、実施の形態1による図19のステップS1901とステップS1902の間に、ステップS2301の処理を追加している。
即ち、図23に於いて、ステップS2301では、燃焼気筒判別手段11により得た燃焼気筒CBに近い方のクランク角度センサからの検出信号に基づいて逐次求めた燃焼気筒のクランク角度位置、及びクランク角加速度をクランク角度情報選択手段15により選択する。そして、ステップS1904での燃焼気筒のトルクTCB(CNT)の算出には、これらの選択したクランク角度位置ならびにクランク角加速度が使用される。
以上のように、実施の形態2による内燃機関の制御装置によれば、実施の形態1と同様の効果が得られ、更に、燃焼気筒に近いクランク角度センサから逐次求めた燃焼気筒のクランク角度位置、及びクランク角加速度を燃焼気筒のトルクの推定に使用するので、燃焼気筒のクランク角度位置及びクランク角加速度の誤差を低減することができる。このため、より精度の高い燃焼気筒の気筒内圧力の推定値を得ることができる。
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3による内燃機関の制御装置について説明する。前述の実施の形態1に於いて、燃焼気筒が第1気筒である場合を除いて、燃焼気筒のクランク角度位置は第1のクランク角度センサ3と第2のクランク角度センサ4の両方から求めることができることを示した。しかしながら、各気筒のクランク角度位置は、例えば中心差分法を利用して2階微分の数値解を得ることにより推定するため、微小な誤差が含まれることがある。
具体的にはクランクシャフト2の回転速度の変化の速さに対して検出されるクランク角度位置の角度間隔が大きい場合に、この誤差が大きくなる。即ち、クランク角度センサのシグナルロータの突起物の数が少ない方が、突起物の数が多い方より誤差が大きくなる。従って、シグナルロータの突起物が少ない方のクランク角度センサで検出した値を基に燃焼気筒のクランク角度位置を推定すると推定精度が低下する場合がある。ひいては、燃焼気筒の気筒内圧力の推定値の精度が低下することになる。
この発明の実施の形態3による内燃機関の制御装置は、前述のような課題を解決するものである。図23は、この発明の前述の実施の形態2及び実施の形態3による内燃機関の制御装置に於ける、気筒内圧力推定処理部の基本的概念構成を示すブロック図である。尚、内燃機関と、気筒内圧力推定処理部の基本的処理、クランク角加速度算出処理、クランク角度情報推定処理、燃焼気筒内圧力推定処理は、それぞれ、実施の形態1で説明した図1、図3、図6、図12、図21と同一であり、又、実施の形態2に於ける図22も同一であるため、それらの詳細な説明は省略する。
更に、実施の形態3に於ける燃焼気筒トルク推定処理の基本フローも、実施の形態3に於ける図23の基本フローと同様であるが、実施の形態3では、図23のステップS2301の処理内容のみが実施の形態3の場合とは異なる。即ち、図23に於いて、ステップS2301は、図1に示す第1のシグナルロータ22と第2のシグナルロータ23の突起物の数が異なる場合に、その突起物の数が多い方のシグナルロータに対応するクランク角度センサからの出力に基づいて、逐次求めた燃焼気筒の角度位置、及び角加速度を選択する。
尚、第1のシグナルロータ22と第2のシグナルロータ23の突起物の数が同一であれば、何れか一方のクランク角度センサの出力に基づいて逐次求めた燃焼気筒のクランク角度位置、及びクランク角加速度を選択する。ステップS1904での燃焼気筒のトルクTCB(CNT)の算出には、これらのクランク角度位置ならびにクランク角加速度が使用される。
以上のように、実施の形態3による内燃機関の制御装置によれば、実施の形態1の場合と同様の効果が得られ、更に、第1のシグナルロータ22と第2のシグナルロータ23の突起物の数が異なる場合に、シグナルロータの突起物の数が多い方のクランク角度センサの出力に基づいて逐次求めた燃焼気筒のクランク角度位置、及びクランク角加速度を燃焼気筒のトルクの推定に使用するので、燃焼気筒のクランク角度位置及びクランク角加速度の誤差を低減することができる。このため、より精度の高い燃焼気筒の筒内圧力の推定値を得ることができる。
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4による内燃機関の制御装置について説明する。実施の形態1による内燃機関の制御装置に於いて、燃焼気筒が第1気筒である場合除いて、燃焼気筒のクランク角度位置は第1のクランク角度センサ3と第2のクランク角度センサ4の両方から求めることができることを示したが、実施の形態2、3では、第1のクランク角度センサ3と第2のクランク角度センサ4のうちの一方からの出力による燃焼気筒のクランク角度位置のみを利用して燃焼気筒の筒内圧力の推定を行っていた。しかし、一方のクランク角度センサとそれに対応するシグナルロータの組み付け時に誤差が生じていたり、クランク角度センサの出力信号にノイズが重畳した場合、これらの影響を受けたクランク角度センサで検出した値のみを基に燃焼気筒のクランク角度位置を推定すると推定精度が低下する場合があり、ひいては、燃焼気筒の筒内圧力の推定値の精度が低下することになる。
実施の形態4による内燃機関の制御装置は、前述のような課題を解決するものであり、以下、その実施の形態4による内燃機関の制御装置について説明する。尚、内燃機関と、クランク角加速度算出処理、クランク角度情報推定処理、燃焼気筒内圧力推定処理は、それぞれ、実施の形態1で説明した図1、図3、図6、図12、図21と同一であるため、詳細な説明は省略する。
図24は、この発明の実施の形態4による内燃機関の制御装置に於ける、気筒内圧力推定処理部の基本的概念構成を示すブロック図である。図24では、実施の形態1の図2の燃焼気筒トルク推定手段13の構成が変更されている。即ち、図24に於いて、燃焼気筒トルク推定手段13は、クランク角度情報補正手段16を有しており、クランク角度情報推定手段10で算出された2種類の燃焼気筒のクランク角度位置、クランク角加速度の双方を用いて、燃焼気筒のトルク推定に使用する燃焼気筒のクランク角度位置、クランク角加速度を算出する。
図25は、この発明の実施の形態4による内燃機関の制御装置に於ける、燃焼気筒のトルクを推定する処理の流れを示すフローチャートであって、燃焼気筒トルク推定手段13の処理の内容を示している。図25では、実施の形態2、3で説明した図23のステップS2301の処理内容がステップS2501に変更されている。図25に於いて、ステップS2501では、第1のクランク角度センサ3及び第2のクランク角度センサ4の双方からの出力信号を用いて燃焼気筒のクランク角度位置、及びクランク角加速度を算出する。具体的には、下記の式(36)、式(37)で算出するクランク角度位置、クランク角加速度を用いてステップS1904で燃焼気筒のトルクTCB(CNT)を算出する。
ここで、
は、それぞれ第1のクランク角度センサ3の出力信号に基づいて算出したクランク角度位置、クランク角加速度であり、
は、それぞれ第2のクランク角度センサ4の出力信号に基づいて算出したクランク角度位置、クランク角加速度である。又、
は、調整係数であり、
の範囲を取る。
調整係数
は、燃焼気筒判別手段11により得た燃焼気筒CBに近い方のクランク角度センサから逐次求めた燃焼気筒のクランク角度位置、及びクランク角加速度が、前述の式(36)、式(37)での寄与度が大きくなるように設定する。例えば、燃焼気筒が、第2のクランク角度センサ4よりも第1のクランク角度センサ3に近ければ、
の範囲で設定することにより、正確なクランク角度位置、クランク角加速度が得られる
ことになる。尚、
は、2つのクランク角度センサとの距離に応じて可変的に設定しても良い。
又、別の設定方法として、調整係数
を、第1のクランク角度センサ3用の第1のシグナルロータ22と第2のクランク角度センサ4用の第2のシグナルロータ23との突起物の数の差が大きい場合に、式(36)と式(37)で示すクランク角度位置、クランク角加速度の算出で突起物の数の多い方の寄与度が大きくなるように設定する。例えば、第1のクランク角度センサ3用の第1のシグナルロータ22の突起物の数が第2のクランク角度センサ4用の第2のシグナルロータ23の突起物の数より多い場合は、
の範囲で設定することにより、正確なクランク角度位置、クランク角加速度が得られることになる。
以上のように、この発明の実施の形態4による内燃機関の制御装置によれば、実施の形態1の場合と同様の効果が得られ、更に、第1のクランク角度センサ3及び第2のクランク角度センサ4の両方を用いて燃焼気筒のクランク角度位置、及びクランク角加速度を算出するので、一方のクランク角度センサに大きな出力誤差を持つ場合でも、もう一方のセンサの出力でその影響を抑制することができるので、燃焼気筒のクランク角度位置及びクランク角加速度の誤差を低減することができる。このため、より精度の高い燃焼気筒の筒内圧力の推定値を得ることができる。
以上、この発明の実施の形態1から実施の形態4について説明したが、この発明は、その発明の範囲内に於いて、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。例えば、弾性体のモデルの関係式群の数値解を得るために差分法を用いて角速度や角加速度を算出したが、これをフーリエ変換を用いて求めても良い。