JP2016069473A - ポリエステル樹脂発泡成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱収縮率が小さく、耐熱性が優れたポリエステル樹脂発泡成形体を提供する。
【解決手段】ポリエステル樹脂組成物を発泡成形してなるポリエステル樹脂発泡成形体であって、複数の気泡を含む内部発泡層と、気泡を含まない非発泡層からなる表層とを有し、前記非発泡層の結晶化度が30%以上であるポリエステル樹脂発泡成形体。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ポリエステル樹脂発泡成形体に関する。
ポリエステル樹脂、特にポリエチレンテレフタレート(以下PETという)樹脂は、機械的特性、耐薬品性、耐候性、ガスバリア性、寸法安定性に優れた樹脂であり、ボトルやフィルム等の用途に用いられている。
また、我が国では、平成12年4月から「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」が施行され、膨大な量のペットボトルがリサイクルされている。再生PET樹脂は比較的廉価に入手することができ、更に環境保全の見地からも有用性の高い樹脂として注目されている。
しかし、PET樹脂等のポリエステル樹脂は比重や耐熱性の点で、その用途は、主に、繊維、フィルム及びボトル製品に限定されており、それ以外の製品にはほとんど展開されていない。すなわち、ポリプロピレン等の汎用樹脂に比べて比重が重い。そのため、軽量性が求められる用途では利用できない。また、ガラス転移温度が80℃程度と低く、結晶化が十分でない場合は熱変形しやすい。そのため、結晶化が十分でない場合は耐熱性が要求される用途には使用できない。
ポリエステル樹脂を繊維等以外の用途に用いた例として、特許文献1が挙げられる。特許文献1は、ポリエステル樹脂を自動車用部品であるバンパー用芯材に用いたものである。特許文献1には、「熱可塑性ポリエステル系樹脂の予備発泡粒子を型内発泡成形した発泡成形体にて形成されており、その結晶化度が20〜40%、融着率が40%以上であるバンパー用芯材」が記載されている(特許文献1の請求項3)。
特開2001−18247号公報
しかし、特許文献1のバンパー用芯材は、加熱した際に気泡の熱収縮が起こり、耐熱性はいまだ十分とはいえない。したがって、用途が限定されていた。
また、特許文献1のバンパー用芯材は、予備発泡粒子を融着させてなる、所謂「ビーズ発泡成形体」である。しかも、このバンパー用芯材は、予備発泡粒子を型内発泡させるとともに粒子同士を融着せしめて発泡成形体に成形される(特許文献1の[0055]及び実施例等参照。)。すなわち、このバンパー用芯材は、固相の状態で加熱により金型キャビティ形状に成形したものである。このようにして発泡成形されたバンパー用芯材は、寸法精度が求められる用途には、不適であった。
本発明は、熱収縮率が小さく、耐熱性に優れたポリエステル樹脂発泡成形体を提供することを課題とする。
本発明者は、ポリエステル樹脂組成物を発泡成形してポリエステル樹脂発泡成形体を製造する場合に、気泡を有する発泡層の表面に形成される非発泡層の結晶化度が発泡層の熱収縮率との関係において重要であることを見出した。さらに検討を進めたところ、ポリエステル樹脂に発泡剤、好ましくは二酸化炭素(炭酸ガス)を含浸させ、さらに好ましくは結晶核剤を含有させたポリエステル樹脂組成物を金型内に射出することにより、金型内においてポリエステル樹脂組成物を発泡させ、しかもポリエステル樹脂の結晶化を促進させることができ、その結果、気泡を含有する発泡層を結晶化度が30%以上の非発泡層で被包した発泡成形体を得ることができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成された。
(1)ポリエステル樹脂組成物を発泡成形してなるポリエステル樹脂発泡成形体であって、複数の気泡を含む内部発泡層と、気泡を含まない非発泡層からなる表層とを有し、前記非発泡層の結晶化度が30%以上であるポリエステル樹脂発泡成形体。
(2)前記ポリエステル樹脂組成物が、再生ポリエステル樹脂を含む(1)に記載のポリエステル樹脂発泡成形体。
(3)前記ポリエステル樹脂発泡成形体が、前記ポリエステル樹脂組成物を物理発泡剤によって発泡成形してなる(1)又は(2)に記載のポリエステル樹脂発泡成形体。
(4)前記ポリエステル樹脂組成物が、結晶核剤を含有する(1)〜(3)のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂発泡成形体。
(5)前記ポリエステル樹脂発泡成形体が、射出成形体である(1)〜(4)のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂発泡成形体。
本発明のポリエステル樹脂発泡成形体は、発泡層の熱収縮が小さく、しかも高温下でも変形にしにくい。したがって、本発明により、熱収縮率が小さく、耐熱性に優れたポリエステル樹脂発泡成形体を提供できる。
図1は本発明のポリエステル樹脂発泡成形体の好ましい形態の断面を示す模式断面図である。
本発明のポリエステル樹脂発泡成形体(以下、発泡成形体ということがある。)は、内部発泡層と非発泡層からなる表層(表皮ともいう)とを有している。これにより、耐熱性が優れたものとなり、後述する用途に好適に用いられる。本発明の発泡成形体は、後述する用途等に応じて適宜の形状及び寸法を有していればよく、形状及び寸法は特に限定されない。
以下に本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して、詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
本発明の好ましい発泡成形体として、シート状に成形された発泡成形体1が挙げられる(図1参照)。なお、図1に示される発泡成形体は、本発明の理解のための模式断面図である。したがって、図1において、各部材のサイズ、相対的な大小関係等を説明の便宜上変えている場合があり、実際の関係をそのまま示すものではない。また、本発明で規定する事項以外は図面に示された外形又は形状に限定されるものでもない。
この発泡成形体1は、図1に示されるように、内部発泡層2と内部発泡層2を被包する表層3とを有している。この発泡成形体1において内部発泡層2及び表層3は同一のポリエステル樹脂組成物を発泡成形してなる。すなわち、内部発泡層2及び表層3は同一のポリエステル樹脂で形成されている。
ここで、「同一のポリエステル樹脂組成物」とは、組成物に含有される成分が同じであり、かつ各成分の含有量も同じである態様、及び、組成物に含有される成分が同じであるが、各成分の含有量が異なる態様、の両態様を含む意味である。
また、「同一のポリエステル樹脂」とは、同じ種類の重縮合体を含むポリエステル樹脂であることを意味し、上記重縮合体以外に異なる重縮合体又は共重合体を含むポリエステル樹脂、並びに、添加剤の種類及び組成(含有量)が異なるポリエステル樹脂をも包含する。
本発明において、表層3は、発泡成形体1の外表面に設けられていればよく、外表面の一部に設けられていても、全面に設けられていてもよい。発泡成形体1においては、発泡成形体1の外表面の全面に表層3が設けられ、内部発泡層2は表層3により被覆されている。内部発泡層2は発泡成形体1の表面に露出していない。内部発泡体層2の表面に複数の表層3が設けられる場合、表層3の厚さは同一でも異なっていてもよい。発泡成形体1を射出成形する場合、内部発泡体2のいずれの表面に設けられても、ほぼ同一の厚さt3となることがある。
発泡成形体1の表層3は、非発泡層で形成されている。
ここで、表層3は、発泡成形体1の断面を、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率30倍で観察し、観察領域全体において表層3の表面に最も近い気泡までの深さ領域をいう。内部発泡層2は表層3で覆われる内部領域をいう。
発泡成形体1は、特に限定されないが、発泡倍率が1.1〜3.0倍であることが好ましく、1.5〜2.0倍であることがさらに好ましい。発泡倍率が上記範囲内にあると、発泡成形体1において、ポリプロピレンからなる成形体と同等程度の強度が保持され、しかも軽量化もできる。例えば、ポリエステル樹脂としてPET樹脂を用いた場合に発泡倍率が上記範囲内にあると、ポリプロピレンからなる成形体と同等程度の強度を確保できる。さらには、ポリプロピレンからなる成形体と同等程度の比重にまで軽量化できる。
ここで、発泡倍率は、発泡成形体1を形成するポリエステル樹脂組成物の発泡前の密度を、JIS K 7112に規定のA法(水中置換法)に従って電子天秤(例えば、メトラートレド社製 形式:AG204)で測定した発泡成形体1の密度で割って、求めた値である。
発泡成形体1において、発泡成形体1の総厚Tは、上記のように用途等に応じて一義的に決定されない。例えば、発泡成形体1を自動車内装部品に用いる場合、総厚Tは0.5〜5.0mmが好ましく、1.0〜3.0mmがさらに好ましい。
発泡成形体1において、非発泡層3の厚さに対する、発泡成形体1の総厚Tの比は、発泡成形体1の用途等に応じて適宜に設定される。ここで、非発泡層3の厚さは、発泡成形体1の厚さ方向に垂直な表面それぞれに形成された非発泡層3の合計厚さとする。図1に示されるように、発泡成形体1の厚さ方向に垂直な両表面に非発泡層3を有する場合、非発泡層3の厚さは非発泡層3の合計厚さ(t3+t3)とする。なお、発泡成形体1の厚さ方向に垂直な両表面のうち一方の表面のみに非発泡層3を有する場合は、他方の非発泡層3の厚さt3は「ゼロ」とする。
非発泡層3の厚さt3に対する、発泡成形体1の総厚Tの比(T/(t3+t3))は、発泡成形体1の用途等に応じて適宜に設定される。厚さの比(T/(t3+t3))は、2〜20であることが好ましく、2〜10であることがより好ましい。厚さの比(T/(t3+t3))が上記範囲内にあると、発泡成形体1の比重が適切な範囲となり、ポリプロピレンに対する軽量化の効果が大きくなる。また、発泡成形体1の強度が高くなり、後述する種々の用途、特に自動車部品に好適に用いることができる。
内部発泡層2は、ポリエステル樹脂組成物を発泡成形することにより、内部に気泡を形成させ、含有させた層である。
図1は発泡成形体1の断面を示すものであり、図1の円Aは発泡成形体1の内部発泡層2の断面領域aを拡大して示す概略拡大断面図である。発泡成形体1において、内部発泡層2は断面領域a以外も同様に円Aに示す発泡構造を有している。
内部発泡層2は、複数の気泡2aを有している。気泡2aは、隣接する他の気泡2aと連続しない独立性気泡である。本発明において、内部発泡層は、独立性気泡の他に、隣接する他の気泡と連続した連続性気泡を有していてもよい。
本発明において、内部発泡層2は、気泡2aを含有していればよく、気泡2aの気泡径は、発泡成形体1の用途、求められる強度等によって一義的に決定されるものではない。気泡2aの気泡径は、特に限定されないが、例えば、200μm以下であることが好ましい。この気泡径は、発泡成形体1の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、円相当径の平均により、測定できる。
内部発泡層2は、非発泡層3よりも結晶化度が大きいことが好ましい。内部発泡層2が非発泡層3よりも結晶化度が大きいと、内部発泡層2、ひいては発泡成形体1の熱収縮が抑えられ、しかも耐熱性に優れたものとなる。一方で、内部発泡層2の結晶化度が大きくなりすぎると、耐衝撃性が低下する。したがって、本発明においては、内部発泡層2の結晶化度は、耐熱性等及び耐衝撃性、並びに、非発泡層3の結晶化度等を考慮して、適宜に決定される。内部発泡層2の結晶化度は非発泡層3と同様にして求めることができる。
内部発泡層2の厚さt2は、発泡成形体1の用途等に応じて一義的ではなく、発泡成形体1の総厚T及び非発泡層3の厚さt3によって適宜に決定される。厚さt2は、上記厚さの比(T/(t3+t3))を満たす厚さであることが好ましい。
発泡成形体1は、表層3として気泡を含まない非発泡層を有している。ここで、気泡を含まないとは、非発泡層3に気泡がまったく存在しない場合に加えて、本発明の目的を損なわない範囲であれば気泡が存在している場合も包含する。
このような非発泡層3が内部発泡層2を被包することにより、発泡成形体1の高温下での変形を防止して、耐熱性に優れたものとなる。
非発泡層3は、結晶化度が30%以上である。非発泡層3の結晶化度が30%未満であると、耐熱性が不十分なものとなる。すなわち、非発泡層3の結晶化度が30%以上であると、非発泡層3自体の耐熱性が向上し、内部発泡層2を被包することと相まって、発泡成形体1の耐熱性をさらに向上させることができる。
結晶化度の上限は、特に限定されなるものではないが、一般的に100%になることはなく、現実的には50%程度である。耐熱性の向上効果の点で、結晶化度は、30〜50%が好ましく、33〜50%がより好ましい。
結晶化度は、後述する方法によって、調整できる。
非発泡層3の結晶化度は次のようにして求めることができる。
ポリエチレンテレフタレート樹脂で製造された発泡成形体1の場合について説明する。結晶化度Xc(PET)[%]は、発泡成形体1の非発泡層3から採取した試験片を示差走査熱量分析によって求めることができる。具体的には、試験片の示差走査熱量分析によって得られた結晶融解熱ΔH[J/g]を、PET樹脂の完全結晶の融解熱[J/g]で割って100を乗じて、求める。ここで、PET樹脂の完全結晶の融解熱は117.6[J/g]であることから、結晶化度Xc(PET)[%]は下記式(1)にて求めることができる。
式(1) Xc(PET)=(ΔH/117.6)×100[%]
ポリエチレンテレフタレート樹脂以外のポリエステル樹脂で製造された発泡成形体1の場合は、上記式(1)の融解熱117.6[J/g]を、他のポリエステル樹脂の完全結晶の融解熱に置き換えて、求めることができる。
なお、ポリエチレンテレフタレート樹脂以外のポリエステル樹脂の完全結晶の融解熱は、例えば、Groennickxらによる測定値を用いることができる。
非発泡層3の厚さt3は、発泡成形体1の用途等に応じて一義的ではなく、発泡成形体1の総厚T及び非発泡層3の厚さt3によって適宜に決定される。厚さt3は、上記厚さの比(T/(t3+t3))を満たす厚さであることが好ましい。
発泡成形体1は、ポリエステル樹脂組成物を発泡成形して、形成される。
ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂を含有し、本発明の趣旨を損なわない範囲内で、各種添加剤、ポリエステル樹脂以外の他の樹脂等を含有していてもよい。ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂を主成分として含有していることが好ましく、特にPET樹脂を主成分として含有しているのが好ましい。ここで、「主成分として含有している」とは、発泡成形体1の骨格を成形する成分のうち、最も含有量が多い成分をいう。また、「添加剤を含有する」とは、添加剤の形態のまま含有することに加えて、添加剤の分解物、ポリエステル樹脂等との反応物等として含有することを包含する。
本発明に用いるポリエステル樹脂としては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸又はそのエステルとの重縮合体からなる樹脂が挙げられる。
多価アルコールとしては、脂肪族多価アルコールが好ましい。脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。多価カルボン酸又はそのエステルとしては、芳香族ジカルボン酸又はそのエステルが好ましい。芳香族ジカルボン酸又はそのエステルとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルカルボン酸、メチルテレフタル酸、メチルイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びこれらのアルキルエステル等が挙げられる。
重縮合体は、上記多価アルコールと多価カルボン酸又はそのエステルを適宜に組み合わせてなる重縮合体であればよい。なかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等の各重縮合体が好ましく、ポリエチレンテレフタレートがさらに好ましい。
また、ポリエステル樹脂としては、ε−カプロラクタム等の環状アミド、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロパン酸、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸もしくはそのアルキルエステルの単独重縮合体又は共重縮合体等からなる樹脂も挙げられる。このような単独重縮合体からなるポリエステル樹脂として、例えば、ポリ乳酸からなる樹脂が好ましい。
本発明において、ポリエステル樹脂は、少なくとも一部に、使用済みのポリエステル樹脂製品を回収し、再生したポリエステル樹脂(再生ポリエステル樹脂という)を用いることができる。再生ポリエステル樹脂として、例えば、回収した使用済みペットボトルを再生した再生ポリエチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。再生ポリエステル樹脂を用いると廉価な発泡成形体1となる。
再生ポリエステル樹脂は、上記した重縮合体、単独重縮合体及び共重縮合体等(これらをまとめてポリエステル重縮合体ということがある)の少なくとも1種を含む樹脂であれば特に限定されない。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の各ポリエステル重縮合体を含む樹脂である。
再生ポリエステル樹脂は、IV値(固有粘度)が0.65〜0.73であることが好ましい。IV値が0.65以上であると、発泡成形時に気泡が粗大化することを防止でき、発泡成形体1の強度を確保できる。また、気泡の成長又は粗大化による破泡を防止でき、高い発泡倍率で発泡させることができる。IV値が0.73以下であると、金型内への充填性が高くなり、薄肉形状の発泡成形体を製造できる。また、発泡倍率も高くすることができる。
ここで、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂のIV値は、JIS K 7390:2003に記載の方法により、測定できる。なお、再生ポリエステル樹脂のIV値は、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂のIV値の測定方法(JIS K 7390:2003)に準拠して測定できる。
再生ポリエステル樹脂は、ポリエステル重縮合体以外の成分を含有していてもよい。このような成分としては、特に限定されず、例えば、再生される前のポリエステル樹脂の成形体の用途に用いられる種々の樹脂、添加剤等が挙げられる。例えば、PETボトルから再生された再生ポリエチレンテレフタレート樹脂はポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂を含有していてもよい。ポリエステル重縮合体以外の成分は、環境保護の点から、塩化ビニル等のハロゲン原子含有樹脂、フタル酸エステル等の可塑剤を含有しないことが好ましい。
ポリエステル重縮合体は、1種単独で、又は2種以上を併用することができる。
ポリエステル樹脂組成物に含有されてもよい他の樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等が挙げられる。他の樹脂の含有量は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂100質量部に対して0〜5質量部が好ましく、0〜1質量部がより好ましい。
添加剤としては、ポリエステル樹脂に用いられるものであれば特に限定されない。例えば、結晶核剤、物理発泡剤、架橋剤、充填剤、老化防止剤(酸化防止剤)、帯電防止剤、滑剤、紫外線防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、顔料、染料、加工助剤、衝撃改質剤等が挙げられる。
結晶核剤としては、無機結晶核剤及び有機結晶核剤のいずれも使用することができ、特に限定されない。結晶核剤は、離型剤としても機能するものが好ましく、例えば、脂肪酸金属塩等が挙げられる。脂肪酸金属塩としては、具体的には、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カリウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸アルミニウム、モンタン酸バリウム、モンタン酸リチウム、ベヘン酸ナトリウム、ベヘン酸カリウム、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸マグネシウム、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸アルミニウム、ベヘン酸バリウム、ベヘン酸リチウム等が挙げられる。結晶核剤の含有量は後述する。
物理発泡剤としては、成形時にポリエステル樹脂組成物を発泡させることができるものであれば特に限定されず、有機ガス又は無機ガスが挙げられる。無機ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素、空気、アルゴン、ヘリウム、希ガス、代替フロン等が挙げられる。有機ガスとしては、例えば、ブタン、ペンタン等が挙げられる。製造時の安全性、環境負荷が小さいこと等を考慮すると、無機ガスが好ましく、二酸化炭素がさらに好ましい。物理発泡剤は、上記の各ガスを単独で、又は、2種以上を併用することができる。
架橋剤は、発泡成形体1の耐加水分解性や機械強度の向上に資するものが好ましく、例えば、カルボジイミド化合物、オキサゾリンジン化合物、エポキシ化合物等挙げられる。
架橋剤の含有量は、特に限定されず、ポリエステル樹脂に通常用いられる含有量であればよい。
充填剤としては、特に限定されないが、例えば、タルク、炭酸カルシウム、ガラスフィラー等が挙げられる。充填剤の含有量は、特に限定されないが、発泡成形体1の軽量化に資する点で少量であるのが好ましく、軽量化を目的とする場合は充填剤を無含有とするのが特に好ましい。
老化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
発泡成形体1は、例えば120℃程度の高温下でも、熱収縮率が小さく、また膨れや熱収縮による変形も発生しにくく、高い耐熱性を有する。さらに好ましくは軽量化されている。また、後述するように射出成形により成形された射出成形体である場合、後述するように離型時の変形も防止でき、寸法精度にも優れる。
したがって、発泡成形体1は、従来のポリエステル樹脂からなる成形体が用いられなかった用途にも好適に用いることができる。例えば、発泡成形体1の用途として、好ましくは、耐熱性が要求される用途、また、軽量であることを活かして軽量性が求められる用途、特に耐熱性と軽量性とが求められる用途が挙げられる。さらには、寸法精度が要求される用途も好ましく挙げられる。
このような用途として、例えば、ワイヤハーネスプロテクタ等の、耐熱性と軽量化が求められる自動車部品、電装部品、電子機器部品、工業用機器部品等が挙げられる。なかでも、自動車部品が好ましく、自動車内装部品がさらに好ましい。自動車内装部品としては、高い寸法精度も要求されるワイヤハーネスプロテクタが特に好ましい。
本発明のポリエステル樹脂発泡成形体は、非発泡層3の結晶化度を上記範囲内に調整できれば、その製造方法は特に限定されない。例えば、後述する「結晶化度を調整する方法」以外は公知の各種発泡成形体の製造方法を適用できる。
本発明の発泡成形体を製造する方法を、発泡成形体1を製造する場合を例にして、説明する。
発泡成形体1は、ポリエステル樹脂組成物を発泡、成形して製造することができる。
本発明に用いるポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂の結晶化を促進し、加えて射出成形による離型時の変形等を防止できる点で、結晶核剤を含有することが好ましい。さらに、ポリエステル樹脂の発泡を促進し、しかも発泡成形体中に残存しない点で、物理発泡剤を含有することが好ましい。
結晶核剤を用いる場合、結晶核剤の混合量(含有量)は、ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましく、0.05〜1質量部がより好ましく、0.05〜0.5質量部が特に好ましい。結晶核剤の混合量が上記範囲内にあると、結晶化度を上記範囲に調整でき、耐熱性が優れたものとなる。また、ポリエステル樹脂組成物の成形性が向上し、形状及び寸法を損なうことなく発泡成形体1を成形できる。
物理発泡剤を用いる場合、物理発泡剤の含浸量は、発泡倍率、結晶化度等に応じて、適宜に調整される。
上記製造方法においては、まず、ポリエステル樹脂組成物、好ましくは結晶核剤を含有するポリエステル樹脂組成物を調製する。調製方法は特に限定されない。
さらに好ましくは、物理発泡剤を含浸したポリエステル樹脂組成物を調製する。物理発泡剤を含浸させる方法は特に限定されない。例えば、ポリエステル樹脂組成物を構成する各成分(物理発泡剤を除く)のペレット、又は物理発泡剤を含有していないポリエステル樹脂組成物のフレーク等を圧力容器内に投入し、そこへ室温程度の温度(例えば10〜25℃)下において物理発泡剤を充填し、圧力容器内を加圧する。このようにして物理発泡剤をポリエステル樹脂組成物(ペレット又はフレーク等)に含浸させることができる。その後に、圧力容器内の圧力を開放する。
次いで、調製したポリエステル樹脂組成物を発泡成形する。発泡成形は、成形体の寸法精度に優れる点で、射出成形が好ましい。
射出成形においては、所望の金型温度に保たれた金型にポリエステル樹脂組成物を射出して成形する。ポリエステル樹脂が物理発泡剤を含有する場合、金型内にポリエステル樹脂組成物を射出すると、ポリエステル樹脂組成物が物理発泡剤等によって発泡成形される。具体的には、金型内に射出されたポリエステル樹脂組成物が発泡して気泡が形成される。このとき、金型の内面に接触するポリエステル樹脂組成物は、結晶化するものの、急冷されて粘度が高くなる。そのため、気泡が形成されない。このような発泡成形により、内部発泡層2とこれを被包する表層としての非発泡層3とを有する発泡成形体1が得られる。
射出成形において、ポリエステル樹脂組成物が射出される金型の温度(金型温度)は、用いるポリエステル樹脂の種類によって一義的ではなく、適宜に決定される。例えば、110℃以上が好ましく、120〜140℃がより好ましい。この金型温度はポリエステル樹脂としてPET樹脂を用いる場合に特に好適である。また、発泡成形時間(金型内での保持時間)も適宜に決定される。例えば、30〜60秒が好ましい。
また、上記発泡成形において、ポリエステル樹脂が成形中又は後に結晶化する。内部発泡層2は、余熱により、非発泡層3よりも結晶化が進行する。
本発明において、結晶化度、特に非発泡層3の結晶化度を調整する方法は、特に限定されないが、例えば、金型内での加熱温度及び加熱時間を変化させる方法が挙げられる。例えば、結晶化度を高くするには、金型温度を高くし、又は金型から離型するまでの成形時間を長くする。一方、結晶化度を低くするには、金型温度を低くし、又は成形時間を短くする。
発泡成形時の発泡倍率は、上記範囲に設定するのが好ましい。
このようにしてポリエステル樹脂組成物を発泡成形した後に、金型から成形物を離型して、発泡成形体1を製造できる。
ここで、結晶化度を調整するため金型温度を高くすると、成形後に発泡成形体1をエジェクトする際(離型時)に変形することがある。特に、発泡成形体1は、未発泡成形体に比べると強度が小さく、変形しやすく、また変形量も大きくなる。しかし、本発明によれば、好ましくは離型時の変形も防止できる。すなわち、本発明のポリエステル樹脂組成物は、好ましくは結晶核剤を含有している。この結晶核剤が滑材効果を発揮し、発泡成形体1をエジェクトする際に、離型剤としても機能する。これにより、ポリエステル樹脂組成物及び発泡成形体1は成形性が良好となる。したがって、発泡成形体1の形状及び寸法を損なうことなく発泡成形体1を金型からエジェクトすることができ、所望の発泡成形体1が得られる。
以下に、本発明を実施例に基づきより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
(実施例1)
図1に示す発泡成形体1を以下のようにして製造した。
回収した使用済みペットボトルを再生した再生PETフレーク(協栄産業社製、IV値0.68)1000gと、結晶核剤としてモンタン酸ナトリウム0.5gとをドライブレンドした。得られたブレンド物に、密閉容器内で物理発泡剤として炭酸ガスを含有させて、ポリエステル樹脂組成物を調製した。このポリエステル樹脂組成物を270℃に加熱して溶融させ、130℃に温調した金型に射出して、発泡成形体1を製造した(発泡倍率は1.5倍であった)。
得られた発泡成形体1の総厚Tは1.5mmであった。内部発泡層2は厚さt2が0.8mmであり、図1の円Aに示される上記構造を有していた。非発泡層3の厚さt3は0.35mmであった。非発泡層3の合計厚さ(t3+t3)に対する、発泡成形体1の総厚Tの比(T/(t3+t3))は2.1であった。
(実施例2)
結晶核剤として、モンタン酸ナトリウムに代えてモンタン酸カルシウムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、発泡倍率1.5倍の発泡成形体1を製造した。
実施例2で製造した発泡成形体1は、実施例1で製造した発泡成形体1と同じ寸法を有しており、内部発泡層2は図1の円Aに示される上記構造を有していた。
(比較例1)
特許文献1の実施例1に基づいて、発泡倍率1.5倍の発泡成形体を製造した。すなわち、特許文献1の実施例1において、「回収ペットボトルを再生したポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット」に代えて、回収した使用済みペットボトルを再生した再生PETフレーク(協栄産業社製、IV値0.68)を用いたこと以外は特許文献1の実施例1と同様にして、予備発泡粒子を型内発泡成形した発泡成形体を製造した。
比較例1で製造した発泡成形体は、いわゆるビーズ発泡体であり、個々のフレークを発泡させ、これを金型内で成形したものである。そのため、実施例1及び2の成形体で確認される、成形体の内部と表層における発泡状態の差異は確認されなかった。
(比較例2)
金型温度を40℃に設定したこと以外は実施例1と同様にして、発泡倍率1.5倍の発泡成形体を製造した。
(比較例3)
結晶核剤を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、発泡倍率1.5倍の発泡成形体を製造した。
比較例3で製造した発泡成形体は、金型からのエジェクト時に変形した。
製造した各発泡成形体につき、下記評価をした。結果を表1に示す。
(結晶化度の測定)
製造した各発泡成形体につき、内部発泡層と非発泡層の結晶化度を、上記式(1)を用いる方法に従って、測定した。
なお、比較例1で製造した発泡成形体は、本発明でいう「表層(非発泡層)」を有していない。したがって、比較例1で製造した発泡成形体の表面付近の発泡層を採取し、この発泡層の結晶化度を測定した。測定された結晶化度を比較例1で製造した発泡成形体の結晶化度とした。なお、結晶化度を複数回測定したところ、測定値が大きく変動した。したがって、比較例1の結晶化度は数値範囲で示した。
(耐熱性)
各発泡成形体を、120℃に設定した恒温槽「小型環境試験機SH−240」(ESPEC社製)内で24時間加熱し、加熱前後の外観状態の変化を観察した。
発泡成形体が膨れも変形もしていなかった場合を「良好」とし、膨れた場合を「膨れ」、変形した場合を「変形」とした。
本発明において、耐熱性は「良好」であることが合格レベルである。
(熱収縮率の測定)
各発泡成形体の熱収縮率を、JIS K 6767に記載の方法に準じて120℃に24時間加熱したときの、各発泡成形体の長さ100mm当たりの収縮量(mm)を熱収縮率(%)として、測定した。
本発明において、熱収縮率は0.3%以下であることが合格レベルである。
Figure 2016069473
表1に示す結果から以下のことが分かる。
実施例1及び2で製造した発泡成形体は、いずれも、内部発泡層2と結晶化度が30%以上である非発泡層3とを有している。これらの発泡成形体は、120℃の環境下に24時間おかれても熱収縮率が小さく、しかも同環境下に24時間おかれても変形しなかった。このように、両発泡成形体は優れた耐熱性を有していた。したがって、これらの発泡成形体をワイヤハーネスプロテクタ等の耐熱性が求められる自動車部品として好ましく用いることができる。
これに対して、比較例1で製造した発泡成形体は、非発泡層を有していない。このため、結晶化度が30%を超えていても、120℃で変形し、十分な耐熱性を有していなかった。また、加熱した際に気泡の熱収縮が起こり、120℃での熱収縮が0.5%と大きかった。
比較例2で製造した発泡成形体は、非発泡層の結晶化度が18%であった。このため、120℃で変形し、十分な耐熱性を有していなかった。また、120℃での熱収縮も0.5%と大きかった。
1 発泡成形体
2 内部発泡層
2a 気泡
3 表層(非発泡層)

Claims (5)

  1. ポリエステル樹脂組成物を発泡成形してなるポリエステル樹脂発泡成形体であって、複数の気泡を含む内部発泡層と、気泡を含まない非発泡層からなる表層とを有し、前記非発泡層の結晶化度が30%以上であるポリエステル樹脂発泡成形体。
  2. 前記ポリエステル樹脂組成物が、再生ポリエステル樹脂を含む請求項1に記載のポリエステル樹脂発泡成形体。
  3. 前記ポリエステル樹脂発泡成形体が、前記ポリエステル樹脂組成物を物理発泡剤によって発泡成形してなる請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂発泡成形体。
  4. 前記ポリエステル樹脂組成物が、結晶核剤を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂発泡成形体。
  5. 前記ポリエステル樹脂発泡成形体が、射出成形体である請求項1〜4のいずれ1項に記載のポリエステル樹脂発泡成形体。
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