JP2016069079A - 塗装具、及び鉄塔の一部を塗装する塗装方法 - Google Patents

塗装具、及び鉄塔の一部を塗装する塗装方法 Download PDF

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Abstract

【課題】塗装材の飛散防止対策が不要で、かつ、それ一つで塗装作業を実施可能な、高所の塗装作業用の塗装具、及び該塗装具を用いた、鉄塔の一部を塗装する塗装方法を提供することである。
【解決手段】塗装具1は、塗装材である固形塗料10と、この固形塗料を収容する収容空間32と該固形塗料の一部を露出する開口部34とを有するケース20と、を備えている。そして、固形塗料は、開口部を通じてケースの外部へ移動可能に収容空間に収容されており、ケースには、その開口部と対向する個所に、収容空間と外部とを連通する押出し孔36が設けられている。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば送電鉄塔のような高所の塗装作業用の塗装具、及びこの塗装具を用いた、鉄塔の一部を塗装する塗装方法に関する。
架空電線は左右上下の複数列にて送電鉄塔間に渡され、各送電鉄塔でがいしによって支持されている。各送電鉄塔においてこれらの架空電線、がいしを補修等する場合、特定の架空電線の回線が停止され、その停止回線の架空電線、がいしを含む空間が作業範囲とされる。なお、各送電鉄塔における各架空電線の近傍付近には、各架空電線の回線に対応させて色分けした30cm程度の回線識別用の塗装が予め施されている。この回線識別用塗装に基づいて、架空電線、がいしの補修を行う作業員は停止回線を識別できる。
回線識別用塗装は風雨等に曝されて退色するため、定期的な補修作業が必要である。この補修作業においては作業員が手作業で塗装を施しており、塗装材には液体塗料が使用されている。回線識別用塗装は架空電線の位置に対応して送電鉄塔の高所に施されるため、その塗装に際して液体塗料が滴下すると飛散する。そこで、回線識別用塗装の実施においては種々の飛散防止対策がとられている。例えば特許文献1に開示された飛散防止対策の技術においては、送電鉄塔100(図13参照)にて塗装対象とされる鉄塔アーム120(図13参照)に対して、その下方及び側方を覆うようにして飛散防止ネット130(図14参照)を張り巡らせている。この飛散防止ネット130によって、液体塗料の飛散を防止できる。なお、塗装作業に際しては、液体塗料を入れた容器と刷毛とが高所に持ち運ばれる。
特開2008−50838号公報
液体塗料を用いた送電鉄塔の塗装作業においては、液体塗料の飛散防止対策が必須であり、上述した飛散防止ネットを高所の塗装個所の周囲に張り巡らせなければならない。そのためには、体積が大きく場所をとる飛散防止ネットを高所へ運び、さらに、その飛散防止ネットを足場の悪い高所での展開する必要があり、作業者の負担が大きい。また、これら飛散防止ネットの運搬や展開に際しては、送電中の回線に接触して作業員が感電する恐れがある。これら飛散防止対策に関わる問題点に加え、液体塗料を用いた送電鉄塔の塗装作業においては、飛散防止ネットに加えて液体塗料を入れた容器と刷毛とを塗装作業に要するため、必要な用具が複数あって管理が煩わしい。
本発明は、このような課題を解決しようとするものであって、その目的は、塗装材の飛散防止対策が不要で、かつ、それ一つで塗装作業を実施可能な、高所の塗装作業用の塗装具、及び該塗装具を用いた、鉄塔の一部を塗装する塗装方法を提供することである。
本発明は、上述の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
本発明の塗装具は、高所の塗装作業に使用する塗装具である。この塗装具は、塗装材である固形塗料と、この固形塗料を収容する収容空間と該固形塗料の一部を露出する開口部とを有するケースと、を備えている。そして、固形塗料は、開口部を通じてケースの外部へ移動可能に収容空間に収容されており、ケースには、その開口部と対向する個所に、収容空間と外部とを連通する押出し孔が設けられている。
より好ましくは、固形塗料が、ケースの収容空間において押出し孔と開口部との間を往復移動可能に設けられた送り体に対して固定されていることである。
より好ましくは、ケースにおいて、開口部を通じて送り体が収容空間から抜け出ることを防止する抜出防止手段が設けられていることである。
より好ましくは、ケースが周壁部を備えていることである。周壁部は、開口部が形成された面と押出し孔が形成された面とを除いた面であって、開口部と押出し孔との間で固形塗料を囲む面である。そして、周壁部には、押出し孔と開口部との間を往復移動可能な固形塗料の往復移動方向を回るようにミシン目状の切取線が形成されている。
より好ましくは、ケースに、作業者が切取線に沿って周壁部の一部を固形塗料の往復移動方向回りに切取ることを支援するつまみ片が設けられていることである。つまみ片は、切取線に沿って切り離される周壁部である切取領域に対応して設けられ、かつ、周壁部から外方へ突出するように設けられている。
より好ましくは、切取領域が、固形塗料の往復移動方向に沿って段階的に複数設けられていることである。
より好ましくは、ケースと塗装作業者とを繋ぐ紐状の落下防止部材を備えていることである。
本発明の塗装方法は、上述の塗装具を用いた、鉄塔の一部を塗装する塗装方法である。この塗装方法においては、まず、固形塗料が収容された塗装具を、高所である鉄塔の塗装個所まで、塗装材である固形塗料を飛散させることなく持ち運ぶ。そして、塗装具の押出し孔を介して固形塗料を開口部から押出して所定量だけ開口部から露出させる。そして、鉄塔の塗装個所の周囲に塗装材の飛散を防止する飛散防止ネットを張り巡らせることなく、塗装個所に開口部から露出させた固形塗料を押し付けながら、塗装材である固形塗料を飛散させることなく塗装個所を塗装する。
本発明においては、固形塗料を塗装材としていることから、液体塗料によって高所を塗装作業した場合に生じる塗装材の飛散がない。そのため、塗装材の飛散防止対策が不要であり、その飛散防止対策のための飛散防止ネットの高所への運搬、及びその飛散防止ネットを塗装個所の周囲に張り巡らせるための高所作業といった作業者の負担がなくなる。また、固形塗料を収容するケースには、該固形塗料を露出する開口部と、この開口部と対向する押出し孔とが設けられていることから、押出し孔を通じて固形塗料を開口部側に押し出すことで該固形塗料を塗装可能な状態にできる。そのため、塗装作業の用具としてこの塗装具一つで足り、作業者は用具の管理が容易である。
本発明の塗装具においては、送り体が開口部から抜け出ることを防止する抜出防止手段が設けられていることから、この送り体及び該送り体に対して固定された固形塗料が開口部を通じてケースから離脱することがない。そのため、この離脱による送り体及び固形塗料の落下を防止できる。
本発明の塗装具においては、開口部と押出し孔との間で固形塗料を取り囲む周壁部に、該固形塗料の往復移動方向回りの切取線が形成されている。そのため、この切取線によって周壁部の一部をケースから切り離すことができ、かつ、この切り離しによって、固形塗料をその往復移動方向にケースから所定量露出させることができる。
本発明の塗装具においては、切取線に沿って周壁部の一部を取ることを支援するつまみ片が設けられている。そのため、このつまみ片を引っ張ることで、周壁部の一部を容易にケースから切り離すことができる。
本発明の塗装具においては、切取領域が、固形塗料の往復移動方向に沿って段階的に複数設けられている。そのため、固形塗料の使用に応じて切取領域を段階的にケースから切り離すことで、固形塗料を段階的にケースから露出させることができ、使い勝手がよい。
本発明の塗装具においては、ケースと作業者とを繋ぐ落下防止部材を備えていることから、塗装具の落下を防止できる。
本発明の鉄塔の一部を塗装する塗装方法においては、鉄塔の塗装個所に塗装する際、固形塗料を用いて塗装するので塗装材の飛散が無く、飛散防止ネットを必要としない。そのため、高所の塗装個所に持ち運ぶものは、固形塗料を収容した塗装具のみでよく、飛散防止ネットを高所へ運ぶ必要がない。また、塗装材は液体塗料でなく固形塗料であり、しかも固形塗料はケースに収容されているので、高所に持ち運ぶ際に塗料が飛散することも無い。
第1の実施形態に係る塗装具を上方から視た斜視図。 第1の実施形態に係る塗装具を下方から視た斜視図。 第1の実施形態に係る塗装具を、蓋体を閉じた状態で表した斜視図。 第1の実施形態に係る塗装具を分解状態で表した斜視図。 図1のV-V矢視方向の断面図。 図1のVI-VI矢視方向の断面図。 固形塗料をケースにセットする様子を図6に対応する断面によって表した説明図。 固形塗料をケースにセットする様子に関して、図7につづく様子を表した説明図。 固形塗料をケースにセットする様子に関して、図8につづく様子を表した説明図。 第1の実施形態に係る塗装具の設計変更例を表した斜視図。 図10のXI-XI矢視方向の断面図。 送り体の設計変更例を表した斜視図。 送電鉄塔の概観図。 従来の塗装方法(液体塗料を刷毛で塗装)にて鉄塔の一部を塗装する場合に、図13の仮想線Aの領域に飛散防止ネットを張り巡らせた状態の例を説明する図。 第2の実施形態に係る塗装具を上方から視た斜視図。 第2の実施形態に係る塗装具を下方から視た斜視図。 第2の実施形態に係る塗装具を分解状態で表した斜視図。 切取領域の切り離し開始の様子を表した斜視図。 切取領域の切り離し途中の様子を表した斜視図。 切取領域を切り離した状態を表した斜視図。
[第1の実施形態]
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。まず、第1の実施形態を説明する。図1〜6に示す塗装具1は、送電鉄塔等の高所の塗装作業に使用される。この塗装具1は、塗装材である固形塗料10と、この固形塗料10を収容する収容空間32と該固形塗料10の一部を露出する開口部34とを有するケース20と、を備えている。
固形塗料10は、例えばウレタン樹脂を素材としており、金属に対しても塗装可能である。塗装された固形塗料10は、10年程度の対候性を有する。なお、固形塗料10の形状は例えば略直方体状である(図4参照)。
ケース20は、例えば硬質の樹脂製で、かつ、手の平に収まる寸法であり、固形塗料10を覆う壁部30を外殻としている(図1〜6参照)。この壁部30は、固形塗料10の形状に倣った直方体状に設けられ、その内面においては固形塗料10を収容するための収容空間32を形成している。なお、壁部30は、その前後左右および底の各部を前壁部30A、後壁部30B、左右の側壁部30C、および底壁部30Dによって構成されている。壁部30のうち、前壁部30A、後壁部30B、及び左右の側壁部30Cは、周壁部30Sを構成している。周壁部30Sは、開口部34が形成された面である壁部30上面、および後述の押出し孔36が形成された面である底壁部30Dを除いた面であり、開口部34と押出し孔36との間で固形塗料10を囲む面である。
壁部30の上面には、固形塗料10を露出するための開口部34が設けられている(図1,4,5,6参照)。この開口部34を通じて、収容空間32に収容された固形塗料10の一部が外部に突出した状態に露出されている。なお後述するように、固形塗料10は、この開口部34を通じてケース20の外部へ移動可能となるように収容空間32に収容されている。開口部34および固形塗料10は、上方からの平面視で略長方形状である。
壁部30で囲まれた収容空間32には、底壁部30Dと対向して送り体50が設けられている(図1〜6参照)。この送り体50は、収容空間32と略同程度の外周寸法を有する板状に構成され、上面に凹部52を備えている(図4〜6参照)。そして、この凹部52に対して固形塗料10が例えば接着剤あるいは固形塗料10が有する粘着力等にて固定されている。送り体50は、収容空間32において底壁部30Dと平行に配置されるとともに、固形塗料10が自身に固定された状態で底壁部30Dと開口部34との間を往復移動できる。この送り体50の往復移動に合わせて固形塗料10が開口部34を通じてケース20の内外へ移動する。なお、送り体50及び固形塗料10は、開口部34側から収容空間32の内部に挿入されることで、図1〜3及び図5,6に示す状態にケース20にセットされる。
壁部30において底壁部30D(開口部34と対向する個所)には、収容空間32と外部とを連通する押出し孔36が設けられている(図1〜6参照)。そして、この押出し孔36に作業者が自身の指等を挿入することで、送り体50を開口部34側に押し出すことができる。そのため、塗装具1においては、この押出し孔36を通じた簡単な押し出し操作によって、固形塗料10の開口部34からの突出量を増やして該固形塗料10を塗装に適した状態にできる。
壁部30において両側壁部30Cの内面には、開口部34を通じて送り体50が収容空間32から抜け出ることを防止する防止体38が設けられている(図4,6参照)。この防止体38は、開口部34の近傍に設けられ、側壁部30Cから収容空間32の内方下向きに突出するとともに、下端部分においては側壁部30C側へ湾曲する湾曲部38aを備えている。そして、湾曲部38aは、送り体50が開口部34側へ押し出された際、該送り体50の上面に接触して該送り体50の移動を規制する。この防止体38の機能によって、送り体50及びそれに固定された固形塗料10がケース20から離脱することが防止され、この離脱による送り体50及び固形塗料10の落下が防止される。この防止体38が本発明の「抜出防止手段」に相当する。
なお、防止体38は所定の剛性を有する弾性部材である。そのため、固形塗料10のケース20へのセットに際して送り体50が開口部34側から挿入され(図7参照)該送り体50が両側壁部30Cの防止体38の間を通過するとき(図8参照)、防止体38はその湾曲部38aが側壁部30C側へ潰れた状態となって送り体50の通過を許容する。そして、送り体50の通過後、湾曲部38aは収容空間32の内方へ戻る(図9参照)。内方へ戻った湾曲部38aは、固形塗料10の側面に対して押し付けられた状態にある。この押し付ける力がケース20にセットされた固形塗料10に対する適度な摩擦抵抗となって、固形塗料10をそのセットした位置に位置規制する。
固形塗料10がケース20にセットされた状態において、防止体38の湾曲部38aを適宜の工具等で人為的に側壁部30C側へ潰した状態にすれば、送り体50及び固形塗料10をケース20から取り出すことができる。また、押出し孔36を通じて送り体50を開口部34の側に押出し、それによって防止体38の湾曲部38aを側壁部30C側へ潰した状態にしても、送り体50及び固形塗料10をケース20から取り出すことができる。
図1〜5に示すように、ケース20は、開口部34を開閉できる蓋体40を備えている。この蓋体40は、開口部34から突出した固形塗料10を収容できる蓋側収容空間42を備えている。蓋体40は、例えば後壁部30Bに設けられたヒンジHによって、壁部30に対して回転可能に支持されている。なお、図6においては蓋体40の図示を省略している。
図1,2,6に示すように、塗装具1は、ケース20と作業者とを繋ぐ紐状の落下防止部材70を備えている。この落下防止部材70は、ケーブル等の紐体72の両端に、外れ止め機能を有するフック74(いわゆるカラビナ)を備えている。両フック74のうちの一方は、ケース20の底壁部30Dに固定されたリング状の留め具T(例えばヒートン)に掛けられている。他方のフック74は、作業者のベルト通し等に掛けられる。このようにしてケース20が作業者に繋がれることで、塗装作業中に塗装具1が落下することが防止される。なお、落下防止部材70は例えばセーフティコードやウォレットコードである。
つづいて、塗装具1(図1〜6参照)を用いた塗装作業方法について、送電鉄塔での回線識別用塗装を例として説明する。既に述べたように、回線識別用塗装は架空電線近傍の鉄柱に施されるものであり、架空電線の位置に対応して送電鉄塔の高所に施される。なお、送り体50はケース20の外部に取り出してあり、この送り体50に対して、予め所定寸法にて用意された固形塗料10が固定されているものとする。
まず、作業者はケース20に固形塗料10をセットして蓋体40を閉じる(図3参照)。つぎに、作業者は落下防止用部材70で自身と塗装具1とを繋ぎ、かつ、塗装具1を例えば腰袋に容れる。そして、送電鉄塔を登って回線識別用塗装を実施する個所(塗装個所)まで移動する。作業者は、高所である送電鉄塔の塗装個所まで、塗装材である固形塗料を飛散させることなく持ち運ぶことができる。なお、場合によっては個々に異なる色の固形塗料10をセットした複数個の塗装具1を腰袋に容れていく。
塗装個所に移動した後、作業者は、塗装具1を腰袋から取り出して蓋体40を開ける(図1参照)。そして、ケース20を手に収め、開口部34から外部に露出した固形塗料10を塗装個所に押し付けながら該塗装個所を塗装する。なお、塗装材が固形塗料10であることから、液体塗料のように塗料が飛散することがなく、飛散防止ネット等の飛散防止対策は不要である。塗装作業に際して固形塗料10の露出量が十分でない場合には、固形塗料10が固定された送り体50を、押出し孔36を介して開口部34側に押出す。それによって固形塗料10を所定量だけ開口部34から露出させることができる。
この後、作業者は、必要に応じて塗装個所を移動して、塗装対象となる個所に塗装を施す。そして、塗装作業の終了後、塗装具1を腰袋に容れて送電鉄塔を降りる。
第1の実施形態は以上のように構成される。塗装具1においては、固形塗料10を塗装材としていることから、液体塗料によって高所を塗装作業した場合に生じる塗装材の飛散がない。そのため、塗装材の飛散防止対策が不要であり、その飛散防止対策のための用具の高所への運搬、及びその飛散防止対策を施すための高所作業といった作業者の負担がなくなる。また、塗装具1においてはケース20が樹脂製で尚且つ手の平サイズであることから、ケース20そのものはもちろん、塗装材の素材上、該塗装具1全体が軽く尚且つ小さくて持ちやすい。これに加えて、塗装具1においては固形塗料10がケース20から露出していることから、この軽くて持ちやすい塗装具1においてケース20から露出した固形塗料10を塗装対象に塗りつけるだけでよく、片手で簡単に塗装作業できる。そのため、作業性が向上し、かつ、片手が空くため作業者の安全性も向上する。また、塗装具1においては、塗装作業の用具としてこの軽くて持ちやすい該塗装具1一つで足りるため、高所までの持ち運びも容易で尚且つ用具が一つなので用具の管理が容易である。
さらに、塗装具1においては、固形塗料10の上方からの平面視形状が長方形型であることから、この長方形の長辺と短辺とで塗り幅を変更することができる。また、このようにして平面視形状を長方形とした場合、該平面視形状を例えばこの長方形の長辺を一辺とした正方形や、該長辺を直径とした円形とする場合に比べて、該平面視形状の面積を小さくできる。そのため、この塗装具1では、該平面視形状を正方形や円形にした場合と同じ塗り幅を確保しつつも、それらの場合に比べて固形塗料10およびそれを覆うケース20のサイズを小さくできる。
以上に説明した第1の実施形態は、図10〜12に示す例のように変更可能である。なお、図10〜12において、上述の実施形態と同一もしくは均等な構成・機能を有すると考えられる部分には、図1〜9と同一の符号を付すことで重複する説明は省略する。
抜出防止手段は上述の防止体38(図4,6参照)に限定されるものではなく、同様の機能を奏するものであればどのようなものであってもよい。例えば、図10,11に示す塗装具1aが有する嵌め込み部材39を採用してもよい。この嵌め込み部材39は、個々の側壁部30Cの上端部分において、該側壁部30Cの内面と外面とを上方から覆うよう側壁部30Cに対して嵌め込まれている。嵌め込み部材39の内方部39aは、送り体50が開口部34側へ押し出された際、該送り体50の上面に接触して該送り体50の移動を規制する。この嵌め込み部材39の機能によって、送り体50及びそれに固定された固形塗料10がケース20aから離脱することが防止され、この離脱による送り体50及び固形塗料10の落下が防止される。
なお、この嵌め込み部材39は、側壁部30Cに対して着脱可能であり、送り体50及びこれに固定された固形塗料10がケース20aにセットされた後に側壁部30Cに装着される。装着された嵌め込み部材39の内方部39aは、固形塗料10の側面に対して押し付けられた状態にある。この押し付ける力がケース20aにセットされた固形塗料10に対する適度な摩擦抵抗となって、固形塗料10をそのセットした位置に位置規制する。
図12に示すように、送り体50の両側に、上方へ立ち上る補助板54を設けてもよい。この補助板54によって固形塗料10を両側から挟み込むことができ、固形塗料10のケース20からの離脱防止が強化される。なお、補助板54の立ち上がりの寸法は、自在に変更可能である。図12に示すように、送り体50において図4に示す凹部52を省略してもよい。
なお、固形塗料10の形状は直方体状に限定されるものではなく、例えば立方体状や円柱状に構成されてもよい。また、固形塗料10の上方からの平面視形状は長方形に限定されるものではなく、例えば正方形や円形でもよい。固形塗料10の形状が変更された場合、ケース20の壁部30は該固形塗料10の形状に倣って該固形塗料10を収容可能な形状に変更してよい。
ケース20の開口部は傾斜して設けても(図1参照)水平に設けてもよい(図11参照)。また、蓋体40は、嵌め込み部材39に対応して切り欠いた切欠部K(図10参照)を有する構成としてもよい。この切欠部Kを設けることによって、壁部30に対して嵌め込み部材39を嵌め込んだ状態においても、蓋体40を閉じることができる。蓋体40は廃止してもよい。
塗装具1を使用した高所の塗装作業は、送電鉄塔における回線識別用塗装に限定されるものではなく、例えば送電鉄塔の存在をヘリコプター等の操縦者に認識させるための表示塗装でもよい。また、塗装具1を使用した高所の塗装作業は送電鉄塔に限定されるものではなく、他の鉄塔(例えば、無線通信用の基地局)や、ビル、煙突等の高所の塗装作業でもよい。
[第2の実施形態]
つづいて、本発明の第2の実施形態を、主として図面の図15〜20を用いて説明する。なお、以下では、第1の実施形態と異なる部分を主に説明する。図15〜20において、第1の実施形態と同一もしくは均等な構成・機能を有すると考えられる部分には、図1〜12と同一の符号を付すことで重複する説明は省略する。
図15〜17に示すように、塗装具1bは、固形塗料10とケース20bと落下防止部材70とを備えている。ケース20bは、例えば厚紙で形成されている。ケース20bは、例えば樹脂で形成されていてもよい。ケース20bは、手の平に収まる寸法である。ケース20bの外殻である壁部30は、固形塗料10の形状に倣った直方体状に構成されている。既に説明したとおり、壁部30は、前壁部30A、後壁部30B、左右の側壁部30C、及び底壁部30Dを備えている。壁部30のうち、前壁部30A、後壁部30B、及び左右の側壁部30Cは、周壁部30Sを構成している。
底壁部30Dは、後壁部30B及び、左右の側壁部30Cの底辺により取り囲まれて形成される壁部30底面よりもケース20bの内方(収容空間32の側)へ凹んだ位置にある(図16,17参照)。図16,17に示す例では、底壁部30Dに押出し孔36が設けられているが、押出し孔36は無くてもよい。
前壁部30Aは、壁部30の底面よりも下方へ延長された延長部30tを備えている。この延長部30tには、該延長部30tを厚み方向に貫通した貫通孔SLが設けられている。貫通孔SLは、左右方向に延びている。この貫通孔SLに、落下防止部材70の一方のフック74が掛けられている。フック74が貫通孔SLに掛けられることで、落下防止部材70がケース20bに取付けられている。なお、前壁部30Aの上縁中央には、半円弧状の前壁切欠部CTが設けられている(図15,17参照)。
後壁部30Bは、該後壁部30Bの上縁から延長された蓋体40を備えている(図15〜17参照)。蓋体40は、壁部30の上面に設けられた開口部34を開閉可能である。開口部34を閉じた際の蓋体40は、その先端部である蓋先端部40aが固形塗料10と前壁部30Aとの間に挟み込まれる(図15参照)。後で説明するように、壁部30で囲まれて形成される収容空間32(図17参照)は、固形塗料10と略同等の大きさに構成されている。そのため、固形塗料10と壁部30との間には隙間がほとんどない。したがって、蓋先端部40aが固形塗料10と前壁部30Aとの間に挟まれると、該蓋体40は開口部34を閉じた状態のまま保持される。作業者は、前壁切欠部CTを通じて蓋先端部40aを起こし上げることで、蓋体40を開くことができる。
収容空間32(図15〜17参照)は、固形塗料10と略同等の大きさに構成されている。そのため、固形塗料10は、収容空間32に配置されると(ケース20bにセットされると)、周壁部30Sの内壁との摩擦によって収容空間32から抜け落ちないようになっている。なお、固形塗料10は開口部34を通じて収容空間32に配置される。収容空間32に配置された固形塗料10は、開口部34と、押出し孔36が形成された底壁部30Dと、の間を往復移動可能である。ただし、この往復移動は、固形塗料10の周壁部30Sとの摩擦に抗した作業者の操作力に応ずるものである。なお、固形塗料10を開口部34側に移動させる場合には、第1の実施形態で説明したとおり、押出し孔36に作業者が自身の指等を挿入し、固形塗料10を開口部34側に押し出す。固形塗料10を開口部34側に移動させることで、固形塗料10をケース20bから露出させることができる。固形塗料10の往復移動方向である塗料往復方向MDは、図面において上下方向に対応している。
なお、図15〜17に示す例では収容空間32に図1〜12で示した送り体50を設けていない。しかし、第1の実施形態と同様にして収容空間32に送り体50を設け、該送り体50に固形塗料10を固定してもよい。この場合、図1〜9に示す防止体38、もしくは図10,11に示す嵌め込み部材39を両側壁部30Cに設けてもよい。
周壁部30Sには、塗料往復方向MDを回るように設けられたミシン目状の切取線CLが形成されている(図15〜17参照)。切取線CLは、無端であり、周壁部30Sを厚み方向に貫通した複数の切れ目を所定間隔で有する。作業者は、この切取線CLに沿って、周壁部30Sを塗料往復方向MD回りに切取り可能である。なお、切取線CLに沿って切り離される周壁部30S部分は、切取領域ARとして設定されている。切取領域ARは塗料往復方向MDに所定幅を有する。
切取線CLは、塗料往復方向MDに沿って、複数設けられている。図15〜図17に示す例においては、切取線CLは、4つ設けられている。これらの各切取線CLに対応して、周壁部30Sには、切取領域ARが塗料往復方向MDに沿って段階的に4つ設けられている。なお、最上段の切取領域ARは、蓋体40を含んでいる。
周壁部30Sには、各切取領域ARに対応してつまみ片Pが設けられている。各つまみ片Pは、作業者が各切取線CLに沿って周壁部30Sを塗料往復方向MD回りに切取ることを支援する。各つまみ片Pは、右側の側壁部30Cから周壁部30Sの外方へ突出するように設けられている。各つまみ片Pは、詳細には、周壁部30Sに結合されている部分以外は周壁部30Sから浮き上がっている。なお、各つまみ片Pは、周壁部30Sのいずれの部分に設けられていてもよい。
各切取領域ARを切り離す手順を説明する。ここでは、例として、最上段の切取領域ARを切り離す手順を図18〜20によって説明する。まず、作業者は、図18においてハッチングにて表した最上段の切取領域ARに対応するつまみ片Pをつまむ。そして、そのつまみ片Pを、塗料往復方向MD回りの一方向である切取回転方向(図18の矢印の方向)へ引っ張る。すると、右側の側壁部30C(図17参照)に対応する切取側壁部30CA(図19参照)が切取線CLに沿って壁部30(ケース20b)から切り離される。つづいて、後壁部30B(図17参照)に対応する切取後壁部30BA(図19参照)が切取線CLに沿って壁部30(ケース20b)から切り離される。
この後、図19に示すようにして、さらにつまみ片Pを切取回転方向(図19の矢印の方向)へ引っ張る。すると、左側の側壁部30Cに対応する切取側壁部30CA(図20参照)が切取線CLに沿って壁部30(ケース20b)から切り離される。さらに、前壁部30Aに対応する切取前壁部30AA(図20参照)が切取線CLに沿って壁部30(ケース20b)から切り離される。こうして、図20に示すように、最上段の切取領域ARが完全に壁部30(ケース20b)から切り離される。この結果、固形塗料10が壁部30(ケース20b)から露出する。なお、図19,20においては、切り離された切取領域ARに対応する周壁部30S部分を、統一の符号30SAで示している。
以上に説明した最上段の切取領域ARの切取り操作と同様にして、2段目から4段面までの各切取領域ARを、対応する切取線CLに沿って壁部30(ケース20b)から切り離すことができる。
第2の実施形態は以上のように構成される。塗装具1bにおいては、開口部34と底壁部30Dとの間で固形塗料10を取り囲む周壁部30Sに、塗料往復方向MD回りの切取線CLが形成されている。そのため、作業者は、この切取線CLによって周壁部30Sの一部、つまり切取領域ARを、壁部30(ケース20b)から切り離すことができ、かつ、この切り離しによって、固形塗料10をその塗料往復方向MDに壁部30(ケース20b)から所定量露出させることができる。
塗装具1bにおいては、切取線CLに沿って周壁部30Sを切取ることを支援するつまみ片Pが設けられている。そのため、作業者は、このつまみ片Pを引っ張ることで、切取領域ARを壁部30(ケース20b)から容易に切り離すことができる。
塗装具1bにおいては、切取領域ARが塗料往復方向MDに沿って段階的に複数設けられている。そのため、固形塗料10の使用に応じて切取領域ARを段階的に壁部30(ケース20b)から切り離すことで、固形塗料10を段階的に壁部30(ケース20b)から露出させることができ、使い勝手がよい。
なお、塗装具1bは、第1の実施形態で説明した塗装作業方法と同様にして、送電鉄塔等に塗装可能である。
1,1a,1b 塗装具
10 固形塗料
20,20a,20b ケース
30 壁部
30S 周壁部
32 収容空間
34 開口部
36 押出し孔
38 防止体(抜出防止手段)
39 嵌め込み部材(抜出防止手段)
50 送り体
70 落下防止部材
130 飛散防止ネット
AR 切取領域
CL 切取線
MD 塗料往復方向(往復移動方向)
P つまみ片

Claims (8)

  1. 高所の塗装作業に使用する塗装具であって、
    塗装材である固形塗料と、前記固形塗料を収容する収容空間と前記固形塗料の一部を露出する開口部とを有するケースと、を備え、
    前記固形塗料は、前記開口部を通じて前記ケースの外部へ移動可能に前記収容空間に収容されており、
    前記ケースには、前記開口部と対向する個所に、前記収容空間と外部とを連通する押出し孔が設けられている、
    塗装具。
  2. 請求項1に記載された塗装具であって、
    前記固形塗料は、前記収容空間において前記押出し孔と前記開口部との間を往復移動可能に設けられた送り体に対して固定されている、
    塗装具。
  3. 請求項2に記載された塗装具であって、
    前記ケースには、前記開口部を通じて前記送り体が前記収容空間から抜け出ることを防止する抜出防止手段が設けられている、
    塗装具。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載された塗装具であって、
    前記ケースは、前記開口部が形成された面と前記押出し孔が形成された面とを除いた面であって、前記開口部と前記押出し孔との間で前記固形塗料を囲む面である周壁部を備え、
    前記周壁部には、前記押出し孔と前記開口部との間を往復移動可能な前記固形塗料の往復移動方向を回るようにミシン目状の切取線が形成されている、
    塗装具。
  5. 請求項4に記載された塗装具であって、
    前記ケースには、作業者が前記切取線に沿って前記周壁部の一部を前記往復移動方向回りに切取ることを支援するつまみ片が設けられており、
    前記つまみ片は、前記切取線に沿って切り離される前記周壁部である切取領域に対応して設けられ、かつ、前記周壁部から外方へ突出するように設けられている、
    塗装具。
  6. 請求項5に記載された塗装具であって、
    前記切取領域は、前記往復移動方向に沿って段階的に複数設けられている、
    塗装具。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載された塗装具であって、
    前記ケースと作業者とを繋ぐ紐状の落下防止部材を備えている、
    塗装具。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の塗装具を用いた、鉄塔の一部を塗装する塗装方法であって、
    前記固形塗料が収容された前記塗装具を、高所である鉄塔の塗装個所まで、塗装材である前記固形塗料を飛散させることなく持ち運び、
    前記塗装具の前記押出し孔を介して前記固形塗料を前記開口部から押出して所定量だけ前記開口部から露出させ、
    鉄塔の前記塗装個所の周囲に塗装材の飛散を防止する飛散防止ネットを張り巡らせることなく、前記塗装個所に前記開口部から露出させた前記固形塗料を押し付けながら、塗装材である前記固形塗料を飛散させることなく前記塗装個所を塗装する、
    鉄塔の一部を塗装する塗装方法。


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