JP2016068505A - 熱可塑性樹脂積層フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】良好に延伸されており、引張破断強度が高い熱可塑性樹脂積層フィルムを提供する。
【解決手段】本発明に係る熱可塑性樹脂積層フィルムは、アミノカルボン酸ユニットを有するポリアミド樹脂を含む複数の第1の熱可塑性樹脂層と、ジアミンとジカルボン酸との縮合ユニットを有するポリアミド樹脂を含む複数の第2の熱可塑性樹脂層とを備え、前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層とが、厚み方向に交互に積層された多層構造を有し、前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層との厚み方向の積層数の合計が20層以上であり、前記第2の熱可塑性樹脂層の合計の厚みAの、前記第1の熱可塑性樹脂層の合計の厚みBに対する比A/Bが、50/50以上、95/5以下であり、熱可塑性樹脂積層フィルムは、少なくとも一方向に延伸されている。
【選択図】図1
【解決手段】本発明に係る熱可塑性樹脂積層フィルムは、アミノカルボン酸ユニットを有するポリアミド樹脂を含む複数の第1の熱可塑性樹脂層と、ジアミンとジカルボン酸との縮合ユニットを有するポリアミド樹脂を含む複数の第2の熱可塑性樹脂層とを備え、前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層とが、厚み方向に交互に積層された多層構造を有し、前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層との厚み方向の積層数の合計が20層以上であり、前記第2の熱可塑性樹脂層の合計の厚みAの、前記第1の熱可塑性樹脂層の合計の厚みBに対する比A/Bが、50/50以上、95/5以下であり、熱可塑性樹脂積層フィルムは、少なくとも一方向に延伸されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、ポリアミド樹脂を含む層が複数積層されている熱可塑性樹脂積層フィルムに関する。
ポリアミド樹脂フィルムは、機械的特性、光学的特性、熱的特性及びガスバリア性などの基本物性に加え、実用品質である耐摩耗性、耐衝撃性及び耐ピンホール性に優れている。ポリアミド樹脂フィルムは、包装材料として極めて有用な特徴を有することから、食品包装分野を中心に幅広く使用されている。ポリアミド樹脂フィルムは、延伸により力学特性及びガスバリア性等が著しく向上する。一方で、ポリアミド樹脂の種別によっては、成形性に問題があり、延伸することが不可能であるという問題がある。
ポリアミド樹脂フィルムの構成樹脂として、従来、重縮合反応により得られるポリ−ε(イプシロン)−カプラミド(以下適宜「ナイロン6」と称す)樹脂が広く利用されている。
また、共縮合反応により得られるポリアミド樹脂があり、その代表例として、ポリヘキサメチレンアジパミド(以下適宜「ナイロン66」と称す)樹脂がある。共縮合反応により得られるポリアミド樹脂は、優れた樹脂特性を有することが知られている。しかし、共縮合反応により得られるポリアミド樹脂では、高い結晶性や高い結晶性に伴うモルフォロジーにより、二軸延伸を実施する際の延伸張力が過大きくなり、実質的に延伸することが困難である。このため、ポリアミド樹脂フィルムでは、延伸加工により、潜在的機能を発揮及び強化することが困難であるという状況がある。
異なる特長を有するポリアミド樹脂を積層成形することで、互いの物性を補完したフィルムを得ることが試みられている。例えば、特許文献1では、強靭性とガスバリア性とを発現させるために、ナイロン6樹脂又はナイロン66樹脂と芳香族ポリアミド樹脂とを共押出により成形し、複数のポリアミド樹脂よりなる積層フィルムを得ている。しかしながら、特許文献1では、ナイロン66樹脂を対象とした実施例が示されているが、延伸性については特段記載されていない。
また、特許文献2では、ナイロン66樹脂を用い、変性ポリエチレン等を更に用いた樹脂層を有し、延伸されているポリアミド樹脂積層フィルムが例示されている。第三成分を添加することにより、延伸性や脆性に関しては、多少は改善される。しかし、このようなアロイフィルムでは、ナイロン66樹脂単体のフィルムと比べて、不均一な延伸となるため、ナイロン66樹脂分子の配向効果は不十分となり、引張強度や弾性率の不足、及び透明性の悪化等が生じる。結果として、単体のポリアミド樹脂が有する本来の優れた機能が損なわれる。
特許文献1,2に記載のような従来のポリアミド樹脂フィルムでは、力学特性及びガスバリア性等を高めるための良好な延伸状態と、高い引張破断伸度とを達成することは困難であるという問題がある。
本発明の目的は、良好に延伸されており、引張破断強度が高い熱可塑性樹脂積層フィルムを提供することである。
本発明の広い局面によれば、熱可塑性樹脂を含む複数の第1の熱可塑性樹脂層と、熱可塑性樹脂を含む複数の第2の熱可塑性樹脂層とを備え、前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層とが、厚み方向に交互に積層された多層構造を有し、前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層との厚み方向の積層数の合計が20層以上であり、前記第2の熱可塑性樹脂層の合計の厚みAの、前記第1の熱可塑性樹脂層の合計の厚みBに対する比A/Bが、50/50以上、95/5以下であり、前記第1の熱可塑性樹脂層中の前記熱可塑性樹脂が、アミノカルボン酸ユニットを有するポリアミド樹脂であり、前記第2の熱可塑性樹脂層中の前記熱可塑性樹脂が、ジアミンとジカルボン酸との縮合ユニットを有するポリアミド樹脂であり、熱可塑性樹脂積層フィルムは、少なくとも一方向に延伸されている、熱可塑性樹脂積層フィルムが提供される。
本発明に係る熱可塑性樹脂積層フィルムのある特定の局面では、23℃での引張破断強度が300MPa以上であり、23℃での引張弾性率が2000MPa以上であり、かつ23℃での突刺強力が20N以上である。
本発明に係る熱可塑性樹脂積層フィルムは、熱可塑性樹脂を含む複数の第1の熱可塑性樹脂層と、熱可塑性樹脂を含む複数の第2の熱可塑性樹脂層とを備え、上記第1の熱可塑性樹脂層と上記第2の熱可塑性樹脂層とが、厚み方向に交互に積層された多層構造を有し、上記第1の熱可塑性樹脂層と上記第2の熱可塑性樹脂層との厚み方向の積層数の合計が20層以上であり、上記第2の熱可塑性樹脂層の合計の厚みAの、上記第1の熱可塑性樹脂層の合計の厚みBに対する比A/Bが、50/50以上、95/5以下であり、上記第1の熱可塑性樹脂層中の上記熱可塑性樹脂が、アミノカルボン酸ユニットを有するポリアミド樹脂であり、上記第2の熱可塑性樹脂層中の上記熱可塑性樹脂が、ジアミンとジカルボン酸との縮合ユニットを有するポリアミド樹脂であり、熱可塑性樹脂積層フィルムは、少なくとも一方向に延伸されているので、良好に延伸されており、引張破断強度を高めることができる。
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明に係る熱可塑性樹脂積層フィルムは、熱可塑性樹脂を含む複数の第1の熱可塑性樹脂層と、熱可塑性樹脂を含む複数の第2の熱可塑性樹脂層とを備える。本発明に係る熱可塑性樹脂積層フィルムは、上記第1の熱可塑性樹脂層と上記第2の熱可塑性樹脂層とが、厚み方向に交互に積層された多層構造を有する。上記第1の熱可塑性樹脂層と上記第2の熱可塑性樹脂層との厚み方向の積層数の合計は20層以上である。本発明に係る熱可塑性樹脂積層フィルムでは、上記第2の熱可塑性樹脂層の合計の厚みAの、上記第1の熱可塑性樹脂層の合計の厚みBに対する比A/Bが、50/50以上、95/5以下である。上記第1の熱可塑性樹脂層中の上記熱可塑性樹脂は、アミノカルボン酸ユニットを有するポリアミド樹脂である。上記第2の熱可塑性樹脂層中の上記熱可塑性樹脂は、ジアミンとジカルボン酸との縮合ユニットを有するポリアミド樹脂である。上記熱可塑性樹脂積層フィルムは、少なくとも一方向に延伸されている。
本発明では、上記の構成が備えられているので、良好に延伸されており、引張破断強度を高めることができる。良好に延伸されている結果として、力学特性及びガスバリア性等が高くなる。本発明では、ポリアミド樹脂が本来有する強靭性が発現する。
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
図1(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂積層フィルム1を模式的に示す断面図である。図1(b)は、図1(a)に示す破線で囲まれた領域を拡大して示す断面図である。
図1(a)及び(b)に示す熱可塑性樹脂積層フィルム1は、積層フィルムである。熱可塑性樹脂積層フィルム1は、複数の熱可塑性樹脂層11を有する。熱可塑性樹脂積層フィルム1は、複数の第1の熱可塑性樹脂層11Aと、複数の第2の熱可塑性樹脂層11Bとを有する。第1の熱可塑性樹脂層11Aと、第2の熱可塑性樹脂層11Bとは交互に、熱可塑性樹脂積層フィルム1の厚み方向に積層されている。熱可塑性樹脂積層フィルム1は、多層構造を有する。
第1の熱可塑性樹脂層11Aと第2の熱可塑性樹脂層11Bとの厚み方向の積層数の合計は20層以上である。第2の熱可塑性樹脂層11Bの合計の厚みAの、第1の熱可塑性樹脂層11Aの合計の厚みBに対する比A/Bが、50/50以上、95/5以下である。
熱可塑性樹脂積層フィルム1では、複数の第1の熱可塑性樹脂層11Aと、複数の第2の熱可塑性樹脂層11Bとは、厚み方向に交互に積層されている。熱可塑性樹脂積層フィルム1は、第1の熱可塑性樹脂層11Aが第2の熱可塑性樹脂層11Bに挟み込まれた部分を有する。熱可塑性樹脂積層フィルム1は、第2の熱可塑性樹脂層11Bが第1の熱可塑性樹脂層11Aに挟み込まれた部分を有する。このように、第1の熱可塑性樹脂層11Aと第2の熱可塑性樹脂層11Bとが、厚み方向に交互に積層された多層構造を有することによって、また、上記の特定のポリアミド樹脂を用いることによって、良好な延伸状態とすることができ、引張破断強度を高めることができる。
ポリアミド樹脂は、ラクタム化合物の開環重合又はラクタム化合物の誘導体の重縮合反応により形成される重合体、又はジアミン化合物又はその誘導体とジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体との共縮合反応により形成される重合体である。ポリアミド樹脂は、アミド結合を複数有する。
ラクタム化合物及びその誘導体としては、ε−カプロラクタム、ω−ウンデカノラクタム、ω−ラウロラクタム、6−アミノカルボン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、及びパラアミノメチル安息香酸等が挙げられる。ラクタム化合物及びその誘導体は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
ジアミン化合物及びその誘導体としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,4−ジメチルオクタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、及びアミノエチルピペラジン等が挙げられる。ジアミン化合物及びその誘導体は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体は、特に限定されない。上記芳香族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、オルトフタル酸ジメチル、ナフタリンジカルボン酸ジメチル、パラフェニレンジカルボン酸ジメチル、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、オルトフタル酸ジクロライド、ナフタリンジカルボン酸ジクロライド、パラフェニレンジカルボン酸ジクロライド、ジグリコール酸、並びにこれらの変性物等が挙げられる。ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記第1の熱可塑性樹脂層に用いられる熱可塑性樹脂は、アミノカルボン酸ユニットを有するポリアミド樹脂である。アミノカルボン酸ユニットは、下記式(1)で表されるユニットであることが好ましい。下記式(1)で表されるユニットを有するポリアミド樹脂は、主にラクタム化合物の開環重合又はラクタム化合物の誘導体の重縮合反応により形成される。
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、メチレン基の連成単位である脂肪族基を表す。上記式(1)中、R1及びR2は、アルキレン基を表す好ましく、炭素数2〜10のアルキレン基を表すことがより好ましい。上記アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。上記ポリアミノカルボン酸ユニットは、上記式(1)で表されるユニットを任意の数で連続して有することが好ましい。
上記第1の熱可塑性樹脂層に用いられるポリアミド樹脂は、融点及びガラス転移温度が高く、剛直性、強靭性及び接着性に優れ、かつ延伸加工性が良いという特徴を有する。これらの樹脂特性は、強靭性、表面加工性及び耐久性を必要とする樹脂フィルムの構成材料として特に有利に作用する。本発明では、延伸により上記の機能を高めることができる。
上記第1の熱可塑性樹脂層に用いられるポリアミド樹脂としては、例えば、ポリ−ε−カプラミド(ナイロン6)、ポリ−ω−ウンデカミド(ナイロン11)、ポリ−ω−ラウラミド(ナイロン12)、これらの混合物、並びにこれらの共重合体等が挙げられる。特に、ナイロン6が好ましい。
上記第2の熱可塑性樹脂層に用いられる熱可塑性樹脂は、ジアミンとジカルボン酸との縮合ユニットを有するポリアミド樹脂である。ジアミンとジカルボン酸との縮合ユニットは、下記式(2)で表されるユニットであることが好ましい。下記式(2)で表されるユニットを有するポリアミド樹脂は、主にジアミン化合物又はその誘導体とジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体との共縮合反応により形成される。
上記式(2)中、R3及びR4はそれぞれ、脂肪族基、脂環基、芳香環基又は複素環基を表す。上記ジアミンとジカルボン酸との縮合ユニットは、上記式(2)で表されるユニットを任意の数で連続して有することが好ましい。
上記第2の熱可塑性樹脂層に用いられるポリアミド樹脂は、アミド結合の構造に特徴があり、上記式(1)に示されるユニットを有するポリアミド樹脂よりも、分子間距離が小さくかつ分子間力が大きくなる。従って、上記第2の熱可塑性樹脂層に用いられるポリアミド樹脂は、融点及びガラス転移温度が比較的高く、更には強靭性、耐熱性、耐摩耗性及び耐薬品性に優れているという特徴を有する。これらの樹脂特性は、上記ポリアミド樹脂と複合して使用される際、特に強靭性を必要とする樹脂フィルムの構成材料として特に有利に作用する。一方、結晶性が高いことから、延伸加工性が悪いという特徴を有する。しかし、上記第1の熱可塑性樹脂層によって、延伸加工性を確保できる。
上記第2の熱可塑性樹脂層に用いられるポリアミド樹脂としては、例えば、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリヘキサメチレンテレフタル/イソフタルアミド(ナイロン6T/6I)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、これらの混合物、並びに、これらの共重合体等が挙げられる。特に、ナイロン66が好ましい。
上記熱可塑性樹脂積層フィルムは、多層構造を有する積層フィルム(延伸前フィルム)の成形工程と、積層フィルムを延伸する延伸工程を経て得ることができる。上記積層フィルムの製造方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、原料樹脂を押出機に供給して溶融混練し、押出機の先端に取り付けられた金型からフィルム状に押出した後、静電印荷キャスト法、タッチロール法、又はエアーナイフキャスト法により、冷却ロール上で冷却固化し、長尺状のフィルムに成膜する溶融押出法、並びに上記熱可塑性樹脂を有機溶媒に溶解した溶液を、ドラム、若しくは無端ベルト等の上に流延した後、有機溶媒を蒸発させて、長尺状のフィルムに成膜する溶液流延法等の成形法を用いることができる。製造が容易であり、製造コストが低い点で、溶融押出法が好ましい。
上記溶融押出法では、上記積層フィルムは、熱可塑性樹脂を、溶融押出法により溶融混練、及び積層拡張してフィルム状に成形し、溶融樹脂積層体を得る工程(1)と、上記溶融樹脂積層体をダイ開口部から吐出して、冷却ロールにより冷却して、積層フィルムを得る工程(2)とを経て得ることができる。
上記工程(1)は、熱可塑性樹脂を溶融押出法により溶融混練した後、積層してから拡張する、又は拡張してから積層するなどによりフィルム状に成形し、溶融樹脂積層体を得る工程である。
上記溶融押出法に関しては、平面状のフィルムを成形するために、ダイリップ開口部を細長い形状とする必要があるので、Tダイ成形法が好ましい。上記Tダイ成形法において、上記Tダイには、樹脂流入部およびマニホールドが設けられる。マニホールドは樹脂流入部よりも幅方向に長く、樹脂流入部に接続した構造となっている。上記、樹脂流入部から供給された樹脂はマニホールド内で幅方向に拡大するように流れた後、ダイ開口部のリップランドへと輸送される。
複数の熱可塑性樹脂組成物をフィルム状に成形して積層し、樹脂積層体を形成する溶融押出方法としては、共押出法が挙げられる。上記共押出法は、複数の熱可塑性樹脂組成物を個別の成形機より溶融状態で押出した後、金型に導入し、金型内外で溶融状態のまま積層する方法である。上記共押出は、押出された熱可塑性樹脂組成物を積層するタイミングによって、フィードブロック方式、及びマルチマニホールド方式などの数種類の方式に大別される。
上記フィードブロック方式は、樹脂流入部で2種類以上の熱可塑性樹脂組成物を積層状態としてマニホールドに供給し、マニホールド内で積層状態を維持しながら幅方向を拡大させて、ダイリップ開口部から積層状態で吐出する方式である。上記フィードブロック方式は、積層される熱可塑性樹脂組成物ごとにマニホールドを設ける必要が無いので、他の方式に比べてフラットダイの構造を簡単にすることが可能であり、従って操業性やメンテナンス性に優れる。
上記マルチマニホールド方式は、それぞれの熱可塑性樹脂組成物に対して樹脂流入部およびマニホールドを設け、各熱可塑性樹脂組成物が幅方向に拡がった状態で、ダイリップ開口部手前で積層する方式である。上記マルチマニホールド方式は、各層を形成する熱可塑性樹脂組成物が合流積層する前に、個別にマニホールド内を幅方向へ流動し、拡幅した後に積層されるため、フィルム厚み分布の幅方向不均一や、廻り込み現象の発生を抑制し、厚み分布を所望の分布とすることができ、熱可塑性樹脂組成物の流動特性の影響を抑えることが可能である。
上記第2の熱可塑性樹脂層の合計の厚みAの、上記第1の熱可塑性樹脂層の合計の厚みBに対する比A/Bは、50/50以上、95/5以下である。上記比A/Bはより好ましくは65/35以上、好ましくは90/10以下、より好ましくは85/15以下、更に好ましくは80/20以下である。上記比A/Bが上記下限以上及び上記上限以下であると、延伸状態に優れ、かつ引張破断強度及び引張弾性率が高く、強靭性に優れる熱可塑性樹脂積層フィルムが得られる。
上記第1の熱可塑性樹脂層と上記第2の熱可塑性樹脂層との厚み方向の積層数の合計は20層以上である。上記積層数を20層以上にする方法としては、樹脂積層体を厚み方向に積層する手法であれば特に限定されないが、例えば多層用ブロックを用いる方法が挙げられる。上記多層用ブロックとしては、上記共押出法により得られた樹脂積層体を、その表面と垂直方向であり、かつ、製造時の樹脂積層体の流れ方向と平行方向に分割し、分割された樹脂積層体を厚み方向に再び積層し、これを繰り返すことにより多層樹脂積層体を得る、多層用ブロックを用いることができる。
上記共押出成形を実施する際には、熱可塑性樹脂組成物に含まれる樹脂の種類や組成等、目的とする層厚み及びフィルム幅並びに成形環境や操業性等を考慮して、適宜その設備仕様、手法及び条件を選択できる。
上記工程(1)において、熱可塑性樹脂組成物を溶融混練する温度は、上記熱可塑性樹脂が結晶性を有する場合、熱可塑性樹脂の融点をTm℃としたときに、好ましくは(Tm+20)℃以上、好ましくは(Tm+200)℃以下である。上記熱可塑性樹脂が非晶性樹脂である場合、熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg℃としたときに、好ましくは(Tg+50)℃以上、好ましくは(Tg+200)℃以下である。上記温度で溶融混練することにより、フィルム押出成形時の樹脂流動性に優れ、厚みや長さなどの寸法精度に優れたフィルムを得ることが可能となる。なお、上記の温度範囲及び以下の温度範囲は、第1の熱可塑性樹脂層中の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂層中の熱可塑性樹脂のそれぞれが満足することが好ましい。
上記Tg及びTmは、示差走査熱量計(TA Instruments社製「DSC2920 Modulated DSC」)を用い、下記の温度プログラムの順の条件において、温度−吸発熱曲線を作成し、最終昇温時のガラス転移温度がTgであり、また温度−吸発熱曲線の最終昇温時の形状からTmが求まる。
(温度プログラム条件)
室温(23℃)から50℃までを10℃/分で昇温して5分間保持、50℃から300℃までを10℃/分で昇温して300℃で5分間保持、300℃から−50℃までを10℃/分で降温して−50℃で5分間保持、−50℃から300℃までを10℃/分で昇温して300℃で5分間保持。
室温(23℃)から50℃までを10℃/分で昇温して5分間保持、50℃から300℃までを10℃/分で昇温して300℃で5分間保持、300℃から−50℃までを10℃/分で降温して−50℃で5分間保持、−50℃から300℃までを10℃/分で昇温して300℃で5分間保持。
以上に説明した工程(1)により、溶融樹脂積層体が形成される。
上記工程(2)は、上記溶融樹脂積層体をダイ開口部から吐出し、冷却ロールにより冷却して積層フィルムを得る工程である。上記溶融樹脂積層体を上記冷却ロールにより冷却する方法としては、特に限定されないが、静電印荷キャスト法、タッチロール法、エアーチャンバーキャスト法及びエアーナイフキャスト法が挙げられる。上記工程(2)では、上記溶融樹脂積層体が冷却ロール上で冷却固化され、長尺状の積層構造フィルムに成形される。
上記工程(2)では、上記溶融樹脂積層体を急冷することにより、積層フィルムが成形され、実質的に分子が未配向で、かつ多層構造を有する熱可塑性樹脂積層フィルムが得られる。上記冷却ロールの表面温度は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg℃としたときに、好ましくは(Tg−50)℃以上、好ましくは(Tg)℃以下である。
以上に説明した工程(2)により、未配向(延伸前)熱可塑性樹脂積層フィルムが形成される。
次に得られた未配向熱可塑性樹脂積層フィルムを、少なくとも一方向に延伸し(一軸又は二軸方向へ延伸し)、分子配向性を有する熱可塑性樹脂積層フィルムを得る。上記積層フィルムを延伸する工程は、上記工程(2)の後に、更に、上記未配向熱可塑性樹脂積層フィルムを延伸する工程(3)を設けることが好ましい。上記工程(3)は、例えば、上記未配向熱可塑性樹脂積層フィルムを加熱しながら、長手方向及び幅方向の内の少なくとも一方向に延伸する工程である。上記未配向熱可塑性樹脂積層フィルムを加熱延伸することで、フィルムの分子配向を向上させることが可能となり、力学的特性を向上させ、強靭性に優れたフィルムを得ることができる。なお、長手方向及び幅方向に延伸する二軸延伸を実施する手法は、逐次二軸延伸及び同時二軸延伸のいずれも選択可能である。
上記工程(3)における延伸手法について具体的に説明する。上記工程(3)は、積層フィルムを延伸可能なフィルム温度まで加熱する予熱工程、積層フィルムを長手方向に延伸する延伸工程、延伸された積層フィルムの変形歪みを除去低減するためにアニール処理し、配向を揃える熱緩和工程、及び熱可塑性樹脂の配向を固定する冷却工程を有することが好ましい。
長手方向への一軸延伸方法としては、従来公知の方法を採用すればよく、例えばロ−ル間延伸法、クリップテンター法等の縦一軸延伸方法が挙げられる。操作性や設備費に鑑みて、ロール間延伸法がより好ましい。ロール間延伸法は、上流側設置ロールを低速度、下流側設置ロールを高速度として、異なる回転速度をとる複数のロールが長手方向に任意の間隔で配置され、当該ロール間隔を介して加熱下フィルムを搬送しながら、ロール速度差に応じてフィルムが延伸される手法である。当該ロールの配置距離により事実上定義される延伸距離は、フィルム幅より短いと長手方向への分子配向は不十分となり、フィルム幅より長いとフィルムの折れしわや加熱炉内部材等への接触キズ等が発生しやすくなる傾向がある。上記延伸距離は、フィルムの走行性に応じて適宜設定することができる。上記ロールには、ロールに対するフィルムの保持力を高めグリップを良くし、さらに延伸工程における応力の影響を、前後工程に波及させないことを目的として、ニップ機構が備えられることが好ましい。
幅方向への横一軸延伸方法として、従来公知の任意のテンター延伸法を採用できる。横一軸延伸方法としては、例えば、未配向フィルムの幅方向の両端部をテンタークリップで把持し、テンタークリップの幅方向の間隔を次第に離間させ、フィルムを幅方向に拡幅し、延伸する方法が挙げられる。
上記長手方向及び幅方向に延伸させる方法としては、二軸延伸法が挙げられる。上記二軸延伸法としては、積層フィルムを長手方向又は幅方向に延伸した後、前段の延伸方向と直交する方向に延伸する逐次二軸延伸法、又は長手方向及び幅方向に同時に延伸する同時二軸延伸法が挙げられる。二軸延伸法は、上記積層フィルムの延伸性や、二軸延伸後に得られる積層フィルムの強靭性を勘案して、適宜選択できる。設備費を低くし、かつ操作性及び力学性能を高める観点からは、逐次二軸延伸法が好ましく、積層フィルム面内物性の等方性を高める観点からは、同時二軸延伸法が好ましい。
上記二軸延伸方法として、従来公知の任意のテンター延伸法を採用できる。例えば、上記同時二軸延伸方法としては、無配向の積層フィルムの幅方向の両端部をテンタークリップで把持し、テンタークリップの幅方向の間隔を次第に離間させ、積層フィルムを幅方向に拡幅し、延伸する方法が挙げられる。また、上記幅方向延伸手法に加え、パンタグラフ構造、スクリュー構造又はリニアモータ方式によるクリップリンク機構を利用して、長手方向に互いに隣接するクリップを次第に離間させ、積層フィルムを長手方向に延伸する方法も挙げられる。
上記工程(3)における予熱工程は、熱可塑性樹脂積層フィルムを延伸可能な温度付近まで上記未配向積層フィルムを加熱する工程であり、延伸工程で設定された延伸温度付近まで加熱すればよい。これにより、テンタークリップ方式の延伸形態において発生する分子配向の湾曲パターン(いわゆるボーイング)を低減し、分子配向を揃えることができる。上記予熱工程では、未配向の積層フィルムが延伸可能な温度付近まで加熱される。予熱工程における上記積層フィルムの予熱温度は、フィルムを構成する熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂の融点をTm℃としたとき、好ましくは(Tm−50)℃以上、好ましくは(Tm)℃以下である。予熱温度が低すぎると、延伸工程において延伸応力が大きくなりすぎて、フィルムが切断し易くなるおそれがある。予熱温度が高すぎると、フィルムの延伸応力が不足し、延伸効果を十分に得ることができないおそれがあり、また、結晶化が進行することで、延伸切断の原因となるおそれがある。
上記工程(3)における延伸工程は、熱可塑性樹脂積層フィルムを加熱しながらテンターにより外力を加えて積層フィルムを伸長し、樹脂分子に分子配向を付与する工程である。上記延伸工程では、無配向の積層フィルムが延伸可能な温度付近まで加熱される。この加熱温度は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg℃、熱可塑性樹脂の融点をTm℃としたときに、好ましくは(Tg)℃以上、より好ましくは(Tg+5)℃以上、好ましくは(Tm)℃以下、より好ましくは(Tm−10)℃以下である。加熱温度が低いと、延伸時にフィルムが切断したり、不均一に変形したりすることがあり加熱温度が高すぎると、配向緩和が優先して所望の強靭性を発揮する分子配向が得られなくなることがある。
上記加熱延伸工程における長手方向および幅方向の延伸倍率は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.5倍以上、更に好ましくは2.5倍以上、好ましくは15倍以下、より好ましくは10倍以下、更に好ましくは5倍以下である。上記延伸倍率が低すぎると、所望の分子配向効果が得られないおそれある。また、上記延伸倍率が高すぎると、過大な延伸応力により延伸時に積層フィルムが切断するおそれがあり、テンター式延伸機を利用した場合には、テンタークリップが外れたりするなどして、加熱延伸工程におけるフィルムの走行安定性を損なうおそれがある。延伸倍率を上記範囲に設定することにより、フィルムが切断されることなく延伸を実施することが可能となり、更に破断強度をはじめ、優れた強靭性を得ることができる。上記延伸倍率は、分子配向の度合いに影響し、延伸効果を量的に制御するものであり、積層フィルムの強靭性、光学特性および接着性などを得るために適宜決定できる。
延伸開始から延伸終了までの延伸時間は、好ましくは3秒以上、より好ましくは5秒以上、好ましくは150秒以下、より好ましくは100秒以下である。延伸時間を上記範囲内に設定することにより、短い炉長で高い延伸歪みを確保することが可能になり、結果として高い強靭性が発現する。延伸時間が短すぎると、積層フィルムが切断したり、過大な負荷により延伸設備が損傷するなどして、安定した延伸が実施できなくなったりする。
上記延伸工程における延伸歪み速度は、小さくすると熱緩和により強靭性が低下し、逆に大きくすると積層フィルムが切断したり、あるいは過大な負荷により延伸設備が損傷したりするなどして、安定した延伸が実施できなくなる。従って、延伸歪み速度は、好ましくは100%/分以上、好ましくは10000%/分以下である。
上記熱緩和工程は、延伸された積層フィルムの変形歪みを低減し、延伸後の分子配向が湾曲するいわゆるボーイング現象による配向異方性を修正し、配向を揃えるための工程であり、分子配向と密接に関係する。上記熱緩和工程により、力学物性の異方性を低減し、かつ寸法安定性を付与し、厚みを揃えることができる。上記熱処理工程における加熱温度は、熱可塑性樹脂の融点をTm℃としたときに、好ましくは(Tm−100)℃以上、好ましくは(Tm−5)℃以下である。上記加熱温度を上記範囲内とすることにより、ボーイングを制御し、分子配向精度を高めることが可能となり、更に結晶性を高めることによって、積層フィルムの剛直性及び強靭性を向上させることができる。なお、上記積層フィルムに熱収縮性を付与し、シュリンク性フィルムとする場合には、所定の収縮性能に合わせた熱緩和温度を設定することも可能である。上記熱緩和工程における加熱時間は、連続生産性に基づいて決定されるフィルム走行速度に応じて適宜設定できる。上記加熱時間は、好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上、好ましくは60秒以下、より好ましくは30秒以下である。上記加熱時間を上記範囲とすることにより、ボーイングを抑制し、分子配向精度を高めることが可能となる。上記加熱時間が短すぎると、十分なアニール効果が得られず、結果として積層フィルム流れの下流側に配向がせり出し、逆ボーイングを助長するおそれがある。上記加熱時間が長すぎると、フィルム流れの上流側に配向がせり出し、正ボーイングを助長するおそれがあり、機械強度や寸法安定性に異方性が生じるおそれがある。
上記冷却工程は、延伸された積層フィルムを急冷することにより、延伸フィルムに形成されたポリマー分子の配向を固定するための工程である。この工程での温度は好ましくは(Tg+10)℃以上、好ましくは(Tg−50)℃以下である。
上記延伸方法における各工程のフィルム加熱手法には、熱ロール接触加熱法やエアーフローティング加熱方式を利用した空気対流加熱法等が例示できる。これらの方法の両者を併用することも可能であり、ポリアミド樹脂の材質や延伸形態などに応じて適宜選択される。
以上に説明した工程(3)により、上記熱可塑性樹脂積層フィルムが形成される。
上記第1の熱可塑性樹脂層と上記第2の熱可塑性樹脂層との厚み方向の積層数の合計は20層以上であり、好ましくは100層以上である。上記積層数が少なすぎると、互いに層が接する界面の数が少なくなり、層間の界面数が少なくなると、延伸において層界面により分子配向が拘束されなくなり、自由幅一軸延伸によって二軸配向性を得ることができず、所望の光学異方性が劣るおそれがある。
上記熱可塑性樹脂積層フィルムの全体厚みは、積層される層数及び1層当たりの厚みに応じて設定され、特に限定されないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは20μm以上、好ましくは200μm以下、より好ましくは50μm以下である。全体厚みが上記下限以上であると、破断強力が高くなって、耐久性が高くなり、強靭性が高くなる。全体厚みが上記上限以下であると、更に1層当りの厚みが厚くなりすぎず、延伸張力か過大とならず、延伸破断が起こり難く、分子配向が不均一になりにくく、更に透明性が良好になり、接着性が高くなる。
上記熱可塑性樹脂積層フィルムの23℃での引張破断強度は、好ましくは300MPa以上、より好ましくは400MPa以上である。引張破断強度が上記下限以上であると、外力に対する変形耐性及び破壊耐性が高いことから、塗工、表面処理、及びラミネートなどの加工性が安定し、包装材料として特に重量物の包装に耐えることができ、利用価値が高くなる。
上記熱可塑性樹脂積層フィルムの23℃での引張弾性率は、好ましくは2000MPa以上、より好ましくは3000MPa以上である。引張弾性率が上記下限以上であると、剛性に優れ、このため、外力に対する変形耐性が高く、塗工、表面処理及びラミネートなどの加工性が安定する。また他の部材と積層し複合材として使用する場合には、反りなどの変形が起こり難く、寸法安定性に優れる。
上記熱可塑性樹脂積層フィルムの23℃での突刺強力は、好ましくは20N以上、より好ましくは22N以上である。突刺強力が上記下限以上であると、剛性に優れ、このため、外力に対する変形耐性が高く、包装材料として使用した場合のフィルム破断やピンホール発生を防止できる。
上記熱可塑性樹脂積層フィルムには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、酸素バリアー性、水蒸気バリアー性、易滑性、静電気防止性、防曇性などの性能を付与してもよい。
上記熱可塑性樹脂積層フィルムは、他のフィルムとラミネートすることができる。ラミネートフィルムの構成としては、本発明のポリアミド樹脂フィルムをNY、ポリエチレン系のフィルムをPE、ポリプロピレン系のフィルムをPPとした場合、NY/PE、PE/NY/PE、NY/PP、PP/NY/PP等が挙げられる。ラミネート方法については、特に限定されない。ラミネートフィルムのラミネート強力は、好ましくは2.0N/cm以上である。ラミネート強力が2.0N/cm以上であると、積層フィルムである包装袋は、耐圧強度や落袋強度が十分であり、破袋や熱水殺菌処理中のデラミネーションを防止することができる。
上記ラミネートフィルムは、包装袋として利用することができる。包装袋の包装形態は、特に限定されないが、例えば、三方袋、四方袋、自立袋、ピロー袋、ガセット袋、スティック袋、ロケット包装袋及び絞り容器やカップにフタ材を施した袋等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(実施例1)
ナイロン6樹脂(ユニチカ社製「A1030BRL」、ガラス転移温度Tg=47℃、融点Tm=226℃)を、シリンダー径90mmの単軸押出機I(フルフライト型スクリュー、L/D=28、圧縮比2.5)に供給し、シリンダー温度260℃の条件下で溶融混練し、同時に、ナイロン66樹脂(宇部興産社製「UBEナイロン2015B」、ガラス転移温度Tg=49℃、融点Tm=264℃)を、上記押出機Iに併設したシリンダー径50mmの単軸押出機II(フルフライト型スクリュー、L/D=35、圧縮比2.3)に供給し、シリンダー温度300℃の条件下で溶融混練し、それぞれの溶融樹脂を、フィードパイプを介して固定ベイン式フィードブロック(以下適宜「FB」と称す)に輸送した。この際、上記押出機Iより溶融押出されたフィルム状のナイロン6樹脂を20層とし、上記押出機IIより溶融押出されたフィルム状のナイロン66樹脂を同じ20層とし、かつ1層当たりの溶融樹脂の体積流量は、ナイロン6樹脂を溶融押出する上記押出機I側を80、かつナイロン66樹脂を溶融押出する上記押出機II側を20の比率となるように、それぞれの押出樹脂量を調整した。ナイロン6樹脂及びナイロン66樹脂が交互に積層されるように、FB内で合流させて40層の溶融樹脂積層体を得た。
ナイロン6樹脂(ユニチカ社製「A1030BRL」、ガラス転移温度Tg=47℃、融点Tm=226℃)を、シリンダー径90mmの単軸押出機I(フルフライト型スクリュー、L/D=28、圧縮比2.5)に供給し、シリンダー温度260℃の条件下で溶融混練し、同時に、ナイロン66樹脂(宇部興産社製「UBEナイロン2015B」、ガラス転移温度Tg=49℃、融点Tm=264℃)を、上記押出機Iに併設したシリンダー径50mmの単軸押出機II(フルフライト型スクリュー、L/D=35、圧縮比2.3)に供給し、シリンダー温度300℃の条件下で溶融混練し、それぞれの溶融樹脂を、フィードパイプを介して固定ベイン式フィードブロック(以下適宜「FB」と称す)に輸送した。この際、上記押出機Iより溶融押出されたフィルム状のナイロン6樹脂を20層とし、上記押出機IIより溶融押出されたフィルム状のナイロン66樹脂を同じ20層とし、かつ1層当たりの溶融樹脂の体積流量は、ナイロン6樹脂を溶融押出する上記押出機I側を80、かつナイロン66樹脂を溶融押出する上記押出機II側を20の比率となるように、それぞれの押出樹脂量を調整した。ナイロン6樹脂及びナイロン66樹脂が交互に積層されるように、FB内で合流させて40層の溶融樹脂積層体を得た。
さらに、上記FBの下流部に、2分割して積層可能な多層用ブロックを合計2セット取付け、上記40層の樹脂積層体を、厚み方向に4個積層することにより積層数の合計を160層として、Tダイに導入して拡幅し、ダイリップ開口部から吐出させて溶融樹脂積層体を得た。Tダイは、ストレート型マニホールドを備え、かつ、ダイリップ開口部が長方形であり、その長手幅が500mmであり、かつ長手方向に対する垂直方向の幅が0.8mmであった。上記溶融樹脂積層体を、Tダイのダイリップ開口部から、クロムメッキを施し20℃に温度調整された冷却ロール上に、引取速度10m/分で溶融押出し、冷却固化させてシート状に連続成膜した。幅が440mmかつ幅方向での平均厚みが200μmである未配向フィルム(延伸前熱可塑性樹脂積層フィルム)を得た。
上記未配向フィルムを、予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱処理ゾーン及び冷却ゾーンを有し、さらに熱処理ゾーンにおいてパンタグラフ式クリップリンク機構を有する同時二軸延伸機に、予熱ゾーン入口においてフィルム搬送速度10m/分で供給した。フィルム端部をテンタークリップで把持し、予熱ゾーンで無配向フィルムを90℃に加温した後、長手方向の延伸倍率2.8、幅方向の延伸倍率3.0で、125℃に加熱しながら長手方向及び幅方向に同時に延伸した。続く熱処理ゾーンにおいて、長手方向及び幅方向の弛緩率で、加熱温度205℃でアニール処理し、更に冷却ゾーンで50℃に冷却して配向固定した。続く延伸機出口において、フィルム端部をクリップ把持より解放した。その後、スリット工程でクリップ掴み痕の残存するフィルム端部を、フィルム中心から左右対称に設置したシェア刃でスリットして除去した。最後の巻取工程では巻取張力100N/mで塩化ビニル樹脂製コアにロール状に巻取った。このようにして、ポリアミド樹脂フィルム(熱可塑性樹脂積層フィルム)を得た。
得られたポリアミド樹脂フィルムについては、幅が650mmかつ幅方向での平均厚みが25μmであった。
(実施例2)
実施例1で用いたナイロン66樹脂を、ナイロン46樹脂(DSM社製「StanylTW300」、ガラス転移温度Tg=73℃、融点Tm=292℃)に変更したこと、並びに上記押出機IIのシリンダー温度を330℃に変更し、予熱ゾーン温度を100℃、延伸ゾーン温度を135℃、熱処理ゾーン温度を218℃にそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂積層フィルムを得た。
実施例1で用いたナイロン66樹脂を、ナイロン46樹脂(DSM社製「StanylTW300」、ガラス転移温度Tg=73℃、融点Tm=292℃)に変更したこと、並びに上記押出機IIのシリンダー温度を330℃に変更し、予熱ゾーン温度を100℃、延伸ゾーン温度を135℃、熱処理ゾーン温度を218℃にそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂積層フィルムを得た。
(実施例3)
1層当たりの溶融樹脂の体積流量を、ナイロン6樹脂を溶融押出する上記押出機I側を65、かつナイロン66樹脂を溶融押出する上記押出機II側を35の比率となるように、それぞれの押出樹脂量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂積層フィルムを得た。
1層当たりの溶融樹脂の体積流量を、ナイロン6樹脂を溶融押出する上記押出機I側を65、かつナイロン66樹脂を溶融押出する上記押出機II側を35の比率となるように、それぞれの押出樹脂量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂積層フィルムを得た。
(実施例4)
多層用ブロックを使用せず、上記FBのみで積層し、積層数の合計を40とした溶融樹脂積層体を得たこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂積層フィルムを得た。
多層用ブロックを使用せず、上記FBのみで積層し、積層数の合計を40とした溶融樹脂積層体を得たこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂積層フィルムを得た。
(実施例5)
上記FBの下流部に、2分割して積層可能な多層用ブロックを合計4セット取付け、上記40層の樹脂積層体を、厚み方向に16個積層することにより積層数の合計を640層とした溶融樹脂積層体を得たこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂積層フィルムを得た。
上記FBの下流部に、2分割して積層可能な多層用ブロックを合計4セット取付け、上記40層の樹脂積層体を、厚み方向に16個積層することにより積層数の合計を640層とした溶融樹脂積層体を得たこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂積層フィルムを得た。
(比較例1)
上記押出機II、FB及び多層用ブロックを使用せず、上記押出機Iのみで、ナイロン6樹脂の単層フィルムを得たこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂フィルムを得た。
上記押出機II、FB及び多層用ブロックを使用せず、上記押出機Iのみで、ナイロン6樹脂の単層フィルムを得たこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂フィルムを得た。
(比較例2)
上記押出機I、FB及び多層用ブロックを使用せず、上記押出機IIのみで、ナイロン66樹脂の単層フィルムを得たこと以外は、実施例1と同様にして、未配向熱可塑性樹脂積層フィルムを得た。続く二軸延伸では、フィルムが破断し、熱可塑性樹脂フィルムを得ることはできなかった。
上記押出機I、FB及び多層用ブロックを使用せず、上記押出機IIのみで、ナイロン66樹脂の単層フィルムを得たこと以外は、実施例1と同様にして、未配向熱可塑性樹脂積層フィルムを得た。続く二軸延伸では、フィルムが破断し、熱可塑性樹脂フィルムを得ることはできなかった。
(比較例3)
実施例1で用いたナイロン66樹脂を、実施例1〜5で用いたナイロン6樹脂に変更し、上記押出機IIのシリンダー温度を260℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂積層フィルムを得た。
実施例1で用いたナイロン66樹脂を、実施例1〜5で用いたナイロン6樹脂に変更し、上記押出機IIのシリンダー温度を260℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂積層フィルムを得た。
(比較例4)
実施例1で用いたナイロン6樹脂を、実施例1,3〜5で用いたナイロン66樹脂に変更したこと、並びに上記押出機Iのシリンダー温度を300℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、未配向熱可塑性樹脂積層フィルムを得た。続く二軸延伸では、フィルムが破断し、熱可塑性樹脂積層フィルムを得ることはできなかった。
実施例1で用いたナイロン6樹脂を、実施例1,3〜5で用いたナイロン66樹脂に変更したこと、並びに上記押出機Iのシリンダー温度を300℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、未配向熱可塑性樹脂積層フィルムを得た。続く二軸延伸では、フィルムが破断し、熱可塑性樹脂積層フィルムを得ることはできなかった。
(比較例5)
上記押出機Iより溶融押出されたフィルム状のナイロン6樹脂を5層とし、上記押出機IIより溶融押出されたフィルム状のナイロン66樹脂を同じ5層とし、FB内で合流させて10層となるように流路設計されたFBを使用し、かつ多層用ブロックを使用せず溶融樹脂積層体を得たこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂積層フィルムを得た。
上記押出機Iより溶融押出されたフィルム状のナイロン6樹脂を5層とし、上記押出機IIより溶融押出されたフィルム状のナイロン66樹脂を同じ5層とし、FB内で合流させて10層となるように流路設計されたFBを使用し、かつ多層用ブロックを使用せず溶融樹脂積層体を得たこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂積層フィルムを得た。
(比較例6)
1層当たりの溶融樹脂の体積流量を、ナイロン6樹脂を溶融押出する上記押出機I側を40、かつナイロン66樹脂を溶融押出する上記押出機II側を60の比率となるように、それぞれの押出樹脂量を調整変更したこと以外は、実施例1と同様にして、未配向熱可塑性樹脂積層フィルムを得た。続く二軸延伸では、主に長手方向にフィルムが破断し、熱可塑性樹脂積層フィルムを得ることはできなかった。
1層当たりの溶融樹脂の体積流量を、ナイロン6樹脂を溶融押出する上記押出機I側を40、かつナイロン66樹脂を溶融押出する上記押出機II側を60の比率となるように、それぞれの押出樹脂量を調整変更したこと以外は、実施例1と同様にして、未配向熱可塑性樹脂積層フィルムを得た。続く二軸延伸では、主に長手方向にフィルムが破断し、熱可塑性樹脂積層フィルムを得ることはできなかった。
(比較例7)
比較例1で用いたナイロン6樹脂を、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂(相対粘度1.37(測定条件:20℃、フェノール/テトラクロロエタン=50/50、0.5g/dl)、ガラス転移温度Tg=68℃、融点Tm=264℃)に変更し、上記押出機IIのシリンダー温度を282℃に変更し、予熱ゾーン温度を90℃、延伸ゾーン温度を125℃、熱処理ゾーン温度を222℃にそれぞれ変更したこと以外は、比較例1と同様にして熱可塑性樹脂フィルムを得た。
比較例1で用いたナイロン6樹脂を、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂(相対粘度1.37(測定条件:20℃、フェノール/テトラクロロエタン=50/50、0.5g/dl)、ガラス転移温度Tg=68℃、融点Tm=264℃)に変更し、上記押出機IIのシリンダー温度を282℃に変更し、予熱ゾーン温度を90℃、延伸ゾーン温度を125℃、熱処理ゾーン温度を222℃にそれぞれ変更したこと以外は、比較例1と同様にして熱可塑性樹脂フィルムを得た。
(1)未配向熱可塑性樹脂積層フィルムの延伸性
上記未配向熱可塑性樹脂積層フィルムを長手方向及び幅方向に延伸する際、所定の延伸倍率に到達する以前において、フィルム切断の発生及び延伸装置からのフィルム離脱の有無を観察した。延伸性を下記の基準で判定した。
上記未配向熱可塑性樹脂積層フィルムを長手方向及び幅方向に延伸する際、所定の延伸倍率に到達する以前において、フィルム切断の発生及び延伸装置からのフィルム離脱の有無を観察した。延伸性を下記の基準で判定した。
[延伸性の判定基準]
○:長手方向延伸及び幅方向延伸が、共に切断や離脱無く延伸完了した
△:長手方向延伸のみ、切断や離脱無く延伸完了した
×:長手方向延伸が、切断又は離脱し延伸完了しなかった
○:長手方向延伸及び幅方向延伸が、共に切断や離脱無く延伸完了した
△:長手方向延伸のみ、切断や離脱無く延伸完了した
×:長手方向延伸が、切断又は離脱し延伸完了しなかった
(2)熱可塑性樹脂積層フィルムの厚み構成比率
得られた熱可塑性樹脂積層フィルムの幅方向中央部分を、鋭利なレザー刃で長手方向平行に切断し、フィルムの断面を得た。該フィルムの断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立製作所社製「S−4800」)又はデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製「VHX−200」)を用いて観察し、ランダムに30箇所で画像撮影し、断面拡大画像を得た。該画像から、上記デジタルマイクロスコープ付属の計測機能を用いて、1層当たりの厚みを全ての層で測定し、全層、第1の熱可塑性樹脂層及び第2の熱可塑性樹脂層のそれぞれについて厚みの総和を算出した。全層の厚み総和に対する第1の熱可塑性樹脂層及び第2の熱可塑性樹脂層の比率を百分率として算出し、厚み構成比率とした。断面観察には、実施例1〜5及び比較例3ではSEMを用い、比較例1,2,4,5,6,7ではマイクロスコープを用いた。なお、二軸延伸に成功しなかった比較例2,4,6に関しては、上記未配向熱可塑性樹脂積層フィルムの断面観察及び計測により厚み構成比率を算出した。
得られた熱可塑性樹脂積層フィルムの幅方向中央部分を、鋭利なレザー刃で長手方向平行に切断し、フィルムの断面を得た。該フィルムの断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立製作所社製「S−4800」)又はデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製「VHX−200」)を用いて観察し、ランダムに30箇所で画像撮影し、断面拡大画像を得た。該画像から、上記デジタルマイクロスコープ付属の計測機能を用いて、1層当たりの厚みを全ての層で測定し、全層、第1の熱可塑性樹脂層及び第2の熱可塑性樹脂層のそれぞれについて厚みの総和を算出した。全層の厚み総和に対する第1の熱可塑性樹脂層及び第2の熱可塑性樹脂層の比率を百分率として算出し、厚み構成比率とした。断面観察には、実施例1〜5及び比較例3ではSEMを用い、比較例1,2,4,5,6,7ではマイクロスコープを用いた。なお、二軸延伸に成功しなかった比較例2,4,6に関しては、上記未配向熱可塑性樹脂積層フィルムの断面観察及び計測により厚み構成比率を算出した。
(3)熱可塑性樹脂積層フィルムの引張破断強度の測定方法
JIS K7127およびJIS K7161記載の引張試験方法に準拠して測定を行った。測定は、上記熱可塑性樹脂積層フィルムの長手方向及び幅方向にて実施し、2つの方向での測定値の平均値を引張破断強度とした。測定は、温度23℃及び相対湿度50%RHの環境条件下で実施した。
JIS K7127およびJIS K7161記載の引張試験方法に準拠して測定を行った。測定は、上記熱可塑性樹脂積層フィルムの長手方向及び幅方向にて実施し、2つの方向での測定値の平均値を引張破断強度とした。測定は、温度23℃及び相対湿度50%RHの環境条件下で実施した。
(4)熱可塑性樹脂積層フィルムの引張弾性率の測定方法
JIS K7127およびJIS K7161記載の引張試験方法に準拠して測定した。測定は、上記積層フィルムの長手方向お及び幅方向にて実施し、2つの方向での測定値の平均値を引張弾性率とした。測定は、温度23℃及び相対湿度50%RHの環境条件下で実施した。
JIS K7127およびJIS K7161記載の引張試験方法に準拠して測定した。測定は、上記積層フィルムの長手方向お及び幅方向にて実施し、2つの方向での測定値の平均値を引張弾性率とした。測定は、温度23℃及び相対湿度50%RHの環境条件下で実施した。
(5)熱可塑性樹脂積層フィルムの突刺強力の測定方法
JIS Z1707記載の突刺強さ試験方法に準拠して測定した。また測定は、温度23℃、相対湿度50%RHの環境条件下で実施した。
JIS Z1707記載の突刺強さ試験方法に準拠して測定した。また測定は、温度23℃、相対湿度50%RHの環境条件下で実施した。
結果を下記の表1に示す。
実施例1〜5の熱可塑性樹脂積層フィルムでは、第1の熱可塑性樹脂層と第2の熱可塑性樹脂層との厚み構成比率がA/B=50/50以上、95/5以下の範囲であり、かつ積層数は20層以上である。また長手方向及び幅方向共に延伸に成功し、二軸延伸フィルムが得られた。実施例1〜5では、フィルムの強靭性を示す引張破断強度は何れも300MPa以上であり、フィルムの強靭性を示す引張弾性率は2000MPa以上であり、実用に耐える優れた強靭性を有する積層フィルムが得られた。比較例1の熱可塑性樹脂フィルムは、強靭性が十分でないナイロン6樹脂の単層フィルムであるため、引張破断強度、引張弾性率及び突刺強力を十分に得ることができず、強靭性は不十分であった。比較例2の熱可塑性樹脂フィルムは、延伸性が十分でないナイロン66樹脂の単層フィルムであるため、前段延伸工程における長手方向への延伸が成功せず延伸性に劣り、従って、強靭性を評価できなかった。比較例3の熱可塑性樹脂積層フィルムは、強靭性が十分でないナイロン6樹脂のみを積層した積層フィルムであるため、引張破断強度、引張弾性率及び突刺強力を十分に得ることができず、強靭性は不十分であった。比較例4の熱可塑性樹脂積層フィルムは、延伸性が十分でないナイロン66樹脂のみを積層した積層フィルムであるため、前段延伸工程における長手方向への延伸が成功せず、したがって、強靭性を評価できなかった。比較例5の熱可塑性樹脂積層フィルムでは、積層数が少ないため、引張破断強度、引張弾性率及び突刺強力を十分に得ることができず、強靭性は不十分であった。比較例6の熱可塑性樹脂積層フィルムは、第1の熱可塑性樹脂層と第2の熱可塑性樹脂層との厚み構成比率が本発明の範囲を逸脱しているため、幅方向への延伸が成功せず延伸性に劣り、従って、強靭性を評価できなかった。比較例7の熱可塑性樹脂フィルムは、強靭性が十分でないPET樹脂の単層フィルムであるため、十分な引張破断強度及び突刺強力を得ることができず、強靭性は不十分であった。
1…熱可塑性樹脂積層フィルム
11…熱可塑性樹脂層
11A…第1の熱可塑性樹脂層
11B…第2の熱可塑性樹脂層
11…熱可塑性樹脂層
11A…第1の熱可塑性樹脂層
11B…第2の熱可塑性樹脂層
Claims (2)
- 熱可塑性樹脂を含む複数の第1の熱可塑性樹脂層と、熱可塑性樹脂を含む複数の第2の熱可塑性樹脂層とを備え、
前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層とが、厚み方向に交互に積層された多層構造を有し、
前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層との厚み方向の積層数の合計が20層以上であり、
前記第2の熱可塑性樹脂層の合計の厚みAの、前記第1の熱可塑性樹脂層の合計の厚みBに対する比A/Bが、50/50以上、95/5以下であり、
前記第1の熱可塑性樹脂層中の前記熱可塑性樹脂が、アミノカルボン酸ユニットを有するポリアミド樹脂であり、
前記第2の熱可塑性樹脂層中の前記熱可塑性樹脂が、ジアミンとジカルボン酸との縮合ユニットを有するポリアミド樹脂であり、
熱可塑性樹脂積層フィルムは、少なくとも一方向に延伸されている、熱可塑性樹脂積層フィルム。 - 23℃での引張破断強度が300MPa以上であり、23℃での引張弾性率が2000MPa以上であり、かつ23℃での突刺強力が20N以上である、熱可塑性樹脂積層フィルム。
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