JP2016067964A - 酸化触媒組成物、およびこれを用いた燃料電池 - Google Patents

酸化触媒組成物、およびこれを用いた燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、アルカリ性雰囲気下、特に含アンモニア雰囲気下での酸化反応活性に優れる酸化触媒組成物を提供する。また、本発明は、アンモニアを含む燃料を用いたアニオン交換膜型直接アンモニア燃料電池において高い電流値を取り出すことのできる触媒電極膜、およびそれを用いた膜接合体ならびに燃料電池を提供する。【解決手段】触媒金属成分、金属酸化物および導電材を含む、アルカリ性雰囲気下で用いる酸化触媒組成物、前記酸化触媒組成物を含む触媒電極膜、前記触媒電極膜とアニオン交換膜とを接合した膜接合体を備えてなるアニオン交換膜型燃料電池。【選択図】なし

Description

本発明は、アルカリ性雰囲気下で用いる酸化触媒組成物、これを用いた触媒電極膜、およびこの触媒電極膜を有する燃料電池に関する。
燃料電池は、燃料の化学エネルギーを電力として取り出す発電システムであり、アルカリ型、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型、固体高分子型など、幾つかの形式の燃料電池が提案、検討されている。これらの中でも、固体高分子型燃料電池は、特に作動温度が低いため、定置型電源や車載用途などの中小型の低温作動型燃料電池として期待されている。
この固体高分子型燃料電池は、イオン交換樹脂等の固体高分子を電解質として用いた燃料電池である。該固体高分子型燃料電池は、図1に示されるように、それぞれ外部と連通する燃料流通孔2および酸化剤ガス流通孔3を有する電池隔壁1内の空間を、固体高分子電解質膜6の両面にそれぞれ燃料室側触媒電極層4および酸化剤室側触媒電極層5が接合した接合体で仕切って、燃料流通孔2を通して外部と連通する燃料室7、および酸化剤ガス流通孔3を通して外部と連通する酸化剤室8が形成された基本構造を有している。そして、このような基本構造の固体高分子型燃料電池では、前記燃料室7に燃料流通孔2を通して水素ガスなどの燃料を供給すると共に酸化剤室8に酸化剤ガス流通孔3を通して酸化剤となる純酸素や空気等の酸素含有ガスを供給し、更に燃料室側触媒電極層と酸化剤室側触媒電極層間に外部負荷回路を接続する。
固体高分子電解質膜6としては、反応場がアルカリ性となり貴金属以外の金属が使用できるという点で、アニオン交換膜を用いることが検討されている。アニオン交換膜を用いたアニオン交換膜型燃料電池では、次のような機構により電気エネルギーを発生させている。燃料室に水素を供給し、酸化剤室に酸素および水を供給することにより、酸化剤室側触媒電極層5において該電極内に含まれる触媒と該酸素および水とが接触して水酸化物イオンが生成する。この水酸化物イオンは、上記アニオン交換膜からなる固体高分子電解質膜6内を伝導して燃料室7に移動し、燃料室側触媒電極層4で燃料である水素と反応して水を生成することになるが、これに伴って該燃料室側触媒電極層4で生成した電子を、外部負荷回路を通じて酸化剤室側触媒電極層5へと移動させて、この反応のエネルギーを電気エネルギーとして利用する。
従来、燃料電池用の燃料としては、上記の通り、水素ガスが使用されているが、水素は、液化するのに多大なエネルギーを要し、また耐圧性の高い容器を必要とするために効率的な製造、運搬、貯蔵が難しい。また体積あたりのエネルギー密度が低いという問題もある。このような問題を解決するために、アルコール、NaBH、アンモニアなど、水酸化物イオンと反応してより多くの電子を生成し得る化合物を、水素ガスの代替燃料として用いることが検討されている。中でも、アンモニアは、低コストでの製造が可能で、室温で液化でき、さらにエネルギー密度も高いため、燃料電池用の次世代燃料として注目されている。
しかしながら、燃料にアンモニアを使用した燃料電池(直接アンモニア燃料電池)では、アンモニアに対する触媒の酸化反応活性が低く、またアンモニアの分解物による被毒のため触媒活性が低下しやすいという問題がある。非特許文献1では、アニオン交換膜型直接アンモニア燃料電池用電極の触媒として白金/カーボン、白金−ルテニウム/カーボン、ルテニウム/カーボンを用いることが開示されている。しかし、反応副生成物である窒素原子吸着種(Nad)によりアンモニアに対する触媒の酸化反応活性が低下することが報告され、さらなる活性の向上が望まれている。
また、燃料電池用電極における触媒として主に用いられるのは白金であるが、その触媒活性を向上させるために酸化スズを併用することが検討されている。非特許文献2では、固体高分子電解質膜としてカチオン交換膜を用いた直接アルコール燃料電池において、アルコールとしてエタノールを用いた場合に酸性雰囲気下で白金/酸化スズ/カーボンブラックからなる触媒組成物を用いることで、エタノールに対する触媒の酸化反応活性が顕著に改善することが開示されている。しかしながら、直接アンモニア燃料電池用電極の触媒として酸化スズおよびその他の金属酸化物を含む触媒組成物を用いた場合の報告はない。
Journal of Power Sources 208(2012)257-262 Journal of Power Sources 196(2011)1730-1737
本発明は、アルカリ性雰囲気下、特に含アンモニア雰囲気下での酸化反応活性に優れる酸化触媒組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、アンモニアを含む燃料を用いたアニオン交換膜型直接アンモニア燃料電池において高い電流値を取り出すことのできる触媒電極膜、およびそれを用いた膜接合体ならびに燃料電池を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は、以下の要旨を含む。
(1)触媒金属成分、金属酸化物および導電材を含む、アルカリ性雰囲気下で用いる酸化触媒組成物。
(2)アルカリ性雰囲気がアンモニアを含む雰囲気である(1)に記載の酸化触媒組成物。
(3)上記触媒金属成分が、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウムからなる群から選択される少なくとも1つを含む、(1)または(2)に記載の酸化触媒組成物。
(4)上記触媒金属成分が、白金である、(1)または(2)に記載の酸化触媒組成物。
(5)上記金属酸化物が、酸化スズまたは希土類酸化物である(1)〜(4)の何れかに記載の酸化触媒組成物。
(6)上記希土類酸化物が、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化サマリウムからなる群から選択される少なくとも1つを含む、(5)に記載の酸化触媒組成物。
(7)上記導電材が、炭素材料である(1)〜(6)のいずれかに記載の酸化触媒組成物。
(8)上記炭素材料が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイトからなる群から選択される少なくとも1つを含む、(7)に記載の酸化触媒組成物。
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の酸化触媒組成物を含む触媒電極膜。
(10)上記(9)に記載の触媒電極膜とアニオン交換膜とを接合した膜接合体。
(11)上記(10)に記載の膜接合体を備えてなるアニオン交換膜型燃料電池。
(12)上記(10)に記載の膜接合体を備えてなるアニオン交換膜型直接アンモニア燃料電池。
本発明の酸化触媒組成物は、アルカリ性雰囲気下、特に含アンモニア雰囲気下において、金属酸化物を含まない場合と比較して、高い酸化反応活性を示す。このため、上記酸化触媒組成物を電極材料として用いることにより、アニオン交換膜型直接アンモニア燃料電池において高い電流値を取り出すことができる。
固体高分子型燃料電池の基本構造を示す概念図(固体高分子型電解質膜から電池隔壁を離した状態図)である。 希土類酸化物を含む酸化触媒組成物を用いた場合のリニアスイープボルタンメトリーを示す。 酸化スズを含む酸化触媒組成物を用いた場合のリニアスイープボルタンメトリー示す。 酸化セリウム(IV)を含む酸化触媒組成物を用いた場合の燃料電池セルの電流密度と電圧との関係を示す。
本発明の酸化触媒組成物は、アルカリ性雰囲気下において酸化反応を活性化させる。アルカリ性雰囲気下とは、特に限定はされないが、たとえばアンモニアを含む燃料を用いたアニオン交換膜型燃料電池内の雰囲気を意味する。また、酸化反応は、たとえば水酸化物イオンによるアンモニアの分解反応などを意味するが、これに限定はされず、種々のアルカリ性雰囲気下における酸化反応に本発明の酸化触媒組成物を好適に用いることができる。
以下、本発明の酸化触媒組成物を構成する触媒金属成分、金属酸化物および導電材、その他の成分を説明する。
(触媒金属成分)
触媒金属成分としては、酸化触媒として用いられる各種の金属、合金があげられるが、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウムを好ましく用いることができる。触媒金属成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、白金を用いることが好ましい。
触媒金属成分は粒子状とすることが好ましい。触媒金属成分の数平均粒子径は好ましくは1〜1000nm、さらに好ましくは1〜100nm、特に好ましくは1〜10nmである。粒子径は電子顕微鏡により測定される。
触媒金属成分は、後述する金属酸化物または導電材に担持させて用いることができる。
触媒金属成分の配合量は、触媒金属成分の粒径や後述する導電材の密度などを勘案して適宜決定することができ、酸化触媒組成物全量100質量部に対して、1〜95質量部、好ましくは10〜80質量部とすることができる。
また、例えば導電材として炭素材料を用いる場合、炭素材料に触媒金属成分を担持させるためには、触媒金属成分の配合量を、炭素材料100質量部に対して、1〜120質量部、好ましくは5〜90質量部、さらに好ましくは20〜80質量部とすることができる。
(金属酸化物)
金属酸化物としては、後述するOH吸着種を表面に保持しうるものであれば特に限定はされないが、酸化スズ、希土類酸化物を好ましく用いることができる。希土類酸化物としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムおよびルテチウムなどの酸化物を用いることができる。この中でも、酸化スズ、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化サマリウムを用いることが好ましい。金属酸化物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、電子伝導性の乏しい金属酸化物を用いると、酸化触媒組成物を触媒電極膜として用いる場合に電気抵抗が大きくなりやすい。
金属酸化物は微粒子状であることが好ましい。金属酸化物の数平均粒子径は、1〜2000nm、好ましくは5〜1000nm、さらに好ましくは10〜500nmである。粒子径は電子顕微鏡により測定される。
また、上記触媒金属成分を金属酸化物に担持させて用いることもできる。
金属酸化物の配合量は、金属酸化物の密度、酸化触媒組成物中での金属酸化物と触媒金属成分との接触面積、距離、および触媒金属成分を担持させる場合にはその担持体の形状などを勘案して適宜決定することができ、後述する導電材100質量部に対して、1〜2000質量部、好ましくは10〜1000質量部とすることができる。
(導電材)
導電材は、導電性を有する材料であれば特に限定されない。導電材としては、炭素材料、金属材料、導電性高分子などを用いることができ、汎用性、安定性などの観点から炭素材料が好ましく用いられる。炭素材料としては特に限定されないが、カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、メソポーラスカーボン、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイトなどを用いることができる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなど種々用いることができる。導電材は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
導電材の形状は特に限定はされず、粉末状、繊維状、鱗片状であってもよい。粉末形態の場合、導電材の数平均粒子径は、10〜1000nm、好ましくは10〜100nmである。粒子径は電子顕微鏡により測定される。また繊維状の場合、長軸径は通常1〜100nmであり、アスペクト比(長軸/短軸)は5〜100であることが好ましい。
また、上記触媒金属成分を導電材に担持させて用いることもできる。
(バインダー)
本発明の酸化触媒組成物には、上記成分を保持、固定するためにバインダーを含めることができる。バインダーとしては、SBRなどの汎用ラテックスを使用することもできるが、イオン伝導性を有するバインダーを好ましく用いることができる。特にアニオン伝導型燃料電池の触媒電極膜に用いる場合には、イオン伝導性の観点から、バインダーとしてアニオン交換樹脂を用いることが好ましい。
アニオン交換樹脂としては、アニオン伝導性を有し、バインダーとして用いることができる樹脂であれば特に制限されるものではなく、公知の樹脂を使用することができる。具体的には、炭化水素系樹脂が好適に採用できる。炭化水素系樹脂としては、具体的には、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレンなどのスチレン系樹脂;ポリ2−ビニルピリジンやポリ4−ビニルピリジンなどのポリビニルピリジン系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリオキサゾール、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルフィドなどのエンジニアリングプラスチック;スチレン系エラストマーなどが例示される。上記の中でも、第4級窒素原子を含むアニオン交換基を導入し得る官能基を導入し易く、アニオン交換樹脂として良好な性能を示すことなどから、スチレン系樹脂やスチレン系エラストマー、ポリビニルピリジン系樹脂が好適に採用できる。このようなアニオン交換樹脂は、たとえば特開平11−273695号公報等に記載されている。
アニオン交換樹脂の役割は、燃料電池の両極の反応に関与するアニオン(通常、水酸化物イオン)を効率よく移動させることにあり、酸化剤室で発生したアニオンを電解質膜方向に移動させ、また燃料室側ではアニオンを効率良く触媒表面に運搬するとともに、後述する触媒電極膜の形状を維持することである。アニオン交換樹脂の分子量、イオン交換容量等は、これらの役割を果たし得る範囲で適宜決定できる。
バインダーの配合量は、目的とする用途に応じて適宜決定すればよく、上記導電材100質量部に対して、10〜100質量部、好ましくは20〜60質量部とすることができる。
(その他の添加物)
本発明の酸化触媒組成物には、その酸化触媒作用を妨げない範囲で、導電補助材やその他の添加物を含めることができる。
(酸化触媒組成物)
本発明の酸化触媒組成物の製造方法は、各成分を十分に混合できる方法であれば限定はされないが、以下に説明するように分散媒を利用してスラリー化する方法が好ましい。すなわち、上記触媒金属成分、導電材、金属酸化物および所望により添加されるバインダーや添加材を、分散媒中で激しく混合してこれらを分散中に分散し、酸化触媒組成物のスラリーを得る。このスラリーを基材に塗布、乾燥させることにより膜状の酸化触媒組成物が得られる。
スラリーは、触媒金属成分を担持させた導電材、金属酸化物および必要に応じバインダー等を、分散媒中で激しく混合して分散させることにより得ることもできる。また、上記スラリーは、触媒金属成分を担持させた金属酸化物、導電材および必要に応じバインダー等を分散媒中で激しく混合して分散させることにより得ることもできる。
また、あらかじめ触媒金属成分、導電材およびバインダーからなる混合物膜を準備しておき、その混合物膜に金属酸化物を添加して酸化触媒組成物を作製することもできる。例えば、触媒金属成分、導電材、およびバインダーを、バインダーが溶解または分散できる媒体中で混合しスラリーを得る。このスラリーを基材に塗布、乾燥させて媒体を除去して混合物膜を得る。ここに金属酸化物を分散媒に分散させたスラリーを滴下し、乾燥させて金属酸化物を含む膜状の酸化触媒組成物を得る。
本発明の酸化触媒組成物は、金属酸化物を含むことにより、アルカリ性雰囲気下における酸化反応をさらに促進させる。何ら限定的に解釈されるものではないが、その酸化反応促進のメカニズムは以下のように推測される。
OH伝導型燃料電池のように、水酸化物イオン(OH)が連続的に供給されるアルカリ性雰囲気下でアンモニアを酸化分解する場合を例に説明する。アンモニアが酸化され分解される際には、水酸化物イオンが消費される。アンモニアは、複数回の酸化反応を起こすことにより、アンモニア分解中間体を経て、段階的に分解される。すなわち、アンモニアあるいはアンモニア分解中間体の酸化反応速度は、水酸化物イオン(OH)の供給速度に依存する。
触媒金属成分の表面では、その触媒作用によりアンモニアの酸化反応が起こる。触媒が触媒金属成分のみからなる場合、触媒金属成分の表面には、触媒金属成分の表面に接触する溶媒から、あるいはアニオン交換樹脂をバインダーとして用いている場合にはアニオン交換樹脂から、水酸化物イオン(OH)が供給される。
ここで、本発明の酸化触媒組成物は、金属酸化物を含む。アルカリ性雰囲気下において、金属酸化物の表面には水酸化物イオン(OH)が吸着しており、これをOH吸着種とよぶ。金属酸化物の表面はOH吸着種で覆われている。この金属酸化物は、触媒金属成分と均一に混合され、触媒金属成分の近傍には金属酸化物が存在している。
水酸化物イオン(OH)が連続的に供給される系では、金属酸化物表面から、OH吸着種に由来する水酸化物イオン(OH)が消費されると、即座にOH吸着種が供給される。そのため、金属酸化物表面には常に十分な量の水酸化物イオン(OH)が存在すると考えられる。したがって、触媒金属成分の近くに金属酸化物が存在すると、触媒金属成分の表面には金属酸化物のOH吸着種に由来する十分な量の水酸化物イオン(OH)が供給されるため、触媒金属成分の表面にあるアンモニアあるいはアンモニア分解中間体は、即座にさらなる酸化反応を起こすことができる。さらに、金属酸化物と触媒金属成分とが接する界面が多いほど、酸化反応促進効果は向上する。一方、金属酸化物が存在しない系では、触媒金属成分の表面においてアンモニアとの反応により水酸化物イオンが消費されても、水酸化物イオンの供給が遅れ、酸化反応が遅延することがある。
(触媒電極膜)
本発明の触媒電極膜は、触媒金属成分、金属酸化物、導電材および必要に応じバインダー等を混合した混合組成物を用いて成膜することで得られる。
本発明の触媒電極膜は、上記酸化触媒組成物のスラリーを基材に塗布、滴下あるいは流涎し、乾燥させて製造することができる。また、上記酸化触媒組成物のスラリーを工程フィルムに塗布、乾燥し、触媒電極膜を形成した後、これを基材に転写させることもできる。工程フィルムは、上記スラリーを塗布等できるものであれば制限されない。触媒電極膜は、自立性のある膜であってもよく、また他の基材上に設けられていても良い。たとえば、触媒電極膜について電気化学測定をする場合にはグラッシーカーボン上に形成することができ、また燃料電池に適用する場合にはアニオン交換膜やガス拡散電極上に形成することができる。
触媒電極膜の厚みは、使用目的により適宜決定することができるが、通常2μm〜50μmであり、好ましくは5μm〜30μmである。
(膜接合体)
本発明の膜接合体は、上記触媒電極膜とアニオン交換膜とを接合したものである。
(アニオン交換膜)
本発明の膜接合体に使用するアニオン交換膜は、正の荷電を帯びた官能基(通常は4級アンモニウム)が固定された固体高分子膜であり、公知のものを使用することができる。なお、アニオン交換膜型燃料電池に用いる際には、主たる伝導イオンは、水酸化物イオン(OH)であることが望ましい。
アニオン交換膜は、一般にアニオン交換樹脂を膜状に成型したものである。アニオン交換樹脂としては4級アンモニウム塩をイオン交換基として有する高分子化合物を用いるのが一般的である。その機械的強度を増すために不織布や多孔性フィルムを基材として含有させることもある。アニオン交換膜の膜厚としては、電気抵抗を低く抑える観点及び支持膜として必要な機械的強度を付与する観点から、通常5〜200μmの厚みを有するものが好ましく、より好ましくは20〜150μmの厚みを有するものが好ましい。
アニオン交換膜の物性は、本発明を実施するために特別限定されるものではなく、燃料電池の使用用途に応じて適宜調整すればよい。例えば、特開2010−13625号公報、特開2004−171994号公報に記載のアニオン交換膜を使用することができる。また、市販のアニオン交換膜を用いてもよい。これらの中でも特に水酸化物イオン伝導性の高いものを選択することが望ましい。
(膜接合体の製造方法)
触媒電極膜とアニオン交換膜との接合方法は、公知の方法が採用できる。例えば、触媒電極膜そのもの、また酸化触媒組成物そのものをアニオン交換膜に圧着させて膜接合体とすることができる。
触媒電極膜とアニオン交換膜との接合性を考慮すると、触媒電極膜は、アニオン交換樹脂を含む酸化触媒組成物を用いて成形することが好ましい。
アニオン交換樹脂を含む酸化触媒組成物を使用して膜接合体を製造する方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、アニオン交換膜上にアニオン交換樹脂を含む酸化触媒組成物を延展し、熱圧着により酸化触媒組成物よりなる触媒電極膜とアニオン交換膜とを接合し、膜接合体を製造することができる。また、酸化触媒組成物にさらにバインダー樹脂を溶解する溶媒を加え、アニオン交換膜上に塗布し、溶媒を乾燥することにより、アニオン交換膜上に触媒電極膜が積層された膜接合体を製造することもできる。この触媒電極膜の厚みは、燃料電池の目的とする用途に応じて適宜決定すればよい。
(アニオン交換膜型燃料電池)
また、本発明は、上記膜接合体を備えてなる、アニオン交換型燃料電池を提供する。本発明のアニオン交換型燃料電池は、図1で示すような構成を採用することができ、その場合、本発明の触媒電極膜は燃料室側触媒電極層4に相当し、アニオン交換膜は固体高分子電解質膜6に相当する。この際、酸化室側触媒電極層5は、本発明の触媒電極膜で構成してもよく、他の組成物からなる触媒電極膜であってもよい。その他の構成部も、図1に示すような公知のものを採用することができる。また、燃料電池として作用する機構も、背景技術で説明したとおりである。
また、本発明の酸化触媒組成物は、上述したように特にアンモニアの酸化分解に好適に用いられるため、かかる酸化触媒組成物からなる触媒電極膜を備えた本発明のアニオン交換膜型燃料電池は、アンモニアを燃料とする、アニオン交換膜型直接アンモニア燃料電池として好適に採用できる。上記酸化触媒組成物をアニオン交換膜型直接アンモニア燃料電池用電極として用いることにより、高い電流値を安定して取り出すことができる。
以上、本発明について、主にアンモニアを燃料とするアニオン交換膜型燃料電池に適用する場合を例にとり説明したが、本発明の酸化触媒組成物の用途はこれに限定されない。たとえば、アンモニアの臭気を低減するためのアンモニア分解触媒、水素製造を目的としたアンモニア分解触媒等にも好適に用いられる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
(実施例1)
<白金担持カーボンナノチューブの作製>
市販のマルチウォールカーボンナノチューブ(以下、MWNTと記す)500mgとポリベンズイミダゾール(以下、PBIと記す)500mgとをN−N−ジメチルアセトアミド50ml中に入れ攪拌し、ポリベンズイミダゾールを溶解した。その溶液に、超音波バス中で60分間超音波を照射して、MWNTを分散させた。さらに、60%エチレングリコール水溶液250ml、および25%となるように調製した塩化白金酸のエチレングリコール溶液50mlを加え、140℃で16時間還流した。ろ過し、得られた黒色固体を超純水で洗浄後、減圧下で100℃、4時間乾燥し、白金担持カーボンナノチューブを作製した。
<希土類酸化物を含む酸化触媒組成物スラリーの作製>
酸化セリウム(IV)6.75mgに超純水1.5mlを加えた後、120分間超音波照射をして分散液とした。この分散液0.75mlに、上記白金担持カーボンナノチューブ10mg、および1質量%となるようにエタノールで希釈したアニオン交換樹脂溶液0.7mlを混合し、超音波バス中で60分間超音波を照射して、酸化触媒組成物のスラリーを得た。
(実施例2)
実施例1において、酸化セリウム(IV)を酸化イットリウム(III)とした以外は実施例1と同様にして、酸化触媒組成物のスラリーを得た。
(実施例3)
実施例1において、酸化セリウム(IV)を酸化ランタン(III)とした以外は実施例1と同様にして、酸化触媒組成物のスラリーを得た。
(実施例4)
実施例1において、酸化セリウム(IV)を酸化サマリウム(III)とした以外は実施例1と同様にして、酸化触媒組成物のスラリーを得た。
(比較例1)
実施例1において、酸化セリウム(IV)を添加しないこと以外は実施例1と同様にして、酸化触媒組成物のスラリーを得た。
<触媒活性評価測定>
上記実施例1〜4および比較例1で得られたスラリー6μlを、電気化学的測定用グラッシーカーボン電極(0.196cm)の表面に塗布、乾燥させて、厚さ1μmの触媒電極膜を形成した。得られた触媒電極膜の組成を表1に示す。この触媒電極膜を作用極としてリニアスイープボルタンメトリー(LSV)を行った。
対極には白金線を用い、参照極には可逆水素電極を用いた。セル内の電解質溶液には1mol/lのKOH水溶液を用い、ここに燃料種として0.1mol/lのNHを加えた。セル内にはアルゴンガスを流通させ、溶存酸素の影響を除いて測定を行った。測定温度は25℃とした。また、リニアスイープボルタンメトリーの、電位掃引の速度は20mV/secとした。電極に担持した触媒金属成分量と電極の面積を用いて、電流密度を得た。測定結果を図2に示す。また、0.7Vにおける電流密度を表1に示す。
Figure 2016067964
図2および表1より、金属酸化物を含む酸化触媒組成物を用いた実施例1〜4は、金属酸化物を含まない比較例1と比較して、電流密度が高いことが示された。このことから、金属酸化物を含む酸化触媒組成物を電極に用いることにより、電流密度は増大することがわかった。
(実施例5)
<白金担持酸化スズの作製>
市販の酸化スズ0.9gに、白金質量比率4.553質量%のジニトロジアンミン白金硝酸溶液2.1964gと超純水5mlとを加え、80℃のスチーム上で蒸発乾固させた後、空気中で400℃、30分間焼成させることにより、10質量%の白金担持酸化スズ(Pt/SnO)を作製した。
<酸化スズを含む酸化触媒組成物スラリーの作製>
上記白金担持酸化スズ7.5mgおよびケッチェンブラック0.75mgに超純水1.5mlを加えて、120分間超音波照射して、酸化触媒組成物のスラリーを得た。
(比較例2)
市販の50質量%白金担持ケッチェンブラック(Pt/C)に超純水1.5mlを加えた後、120分間超音波照射して、酸化触媒組成物のスラリーを得た。
<触媒活性評価測定>
上記実施例5および比較例2で得られたスラリー11μlを、電気化学的測定用グラッシーカーボン電極(0.196cm)の表面に塗布、乾燥した後、1質量%となるようエタノール希釈したアニオン交換樹脂溶液10μlを同電極上に滴下、乾燥することにより、触媒電極膜を形成した。この後の実験手順は、上記希土類酸化物を含む酸化触媒組成物スラリー用いた場合と同様である。測定結果を図3に示す。また、0.7Vにおける電流密度を表2に示す。
Figure 2016067964
図3および表2より、酸化スズを含む酸化触媒組成物を用いた実施例5は、酸化スズを含まない比較例2と比較して、電流密度が高いことが示された。このことから、金属酸化物を含む酸化触媒組成物を電極に用いることにより、電流密度は増大することがわかった。
(実施例6)
実施例1で得られたスラリーを、アニオン交換膜(トクヤマ製、A201)の片面に塗布、乾燥させ燃料室側触媒電極層とした。また、比較例1で得られたスラリーを、その反対面に塗布し乾燥し酸化剤室側触媒電極層とし、膜接合体を作製した。これを燃料電池セルに組み込んで、燃料電池セルを作製した。
(比較例3)
比較例1で得られたスラリーを、アニオン交換膜の両面に塗布、乾燥させ、膜接合体を作製した。これを燃料電池セルに組み込んで、アニオン交換膜型直接アンモニア燃料電池を作製した。
<燃料電池セルの評価測定>
上記実施例6および比較例3で得られた燃料電池セルについて、セル温度50℃で、カソード側に酸素ガス(湿度95%)、アノード側に50%アンモニアガス/50%窒素(湿度95%)を流通させて、電圧を掃引したときの電流密度を測定した。電圧掃引速度は10mV/secとした。この測定を3回繰り返したときの結果を図4に示した。
図4より、酸化セリウム(IV)を含む酸化触媒組成物を用いた実施例6は、酸化セリウム(IV)を含まない比較例3と比較して、電流密度が高いことが示された。このことから、金属酸化物を含む酸化触媒組成物を電極に用いることにより、測定を複数回行った場合の特定電圧における電流密度は増大することが分かった。
1;電池隔壁
2;燃料流通孔
3;酸化剤ガス流通孔
4;燃料室側触媒電極層
5;酸化剤室側触媒電極層
6;固体高分子電解質膜
7;燃料室
8;酸化剤室

Claims (12)

  1. 触媒金属成分、金属酸化物および導電材を含む、アルカリ性雰囲気下で用いる酸化触媒組成物。
  2. アルカリ性雰囲気がアンモニアを含む雰囲気である請求項1に記載の酸化触媒組成物。
  3. 上記触媒金属成分が、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウムからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の酸化触媒組成物。
  4. 上記触媒金属成分が、白金である、請求項1または2に記載の酸化触媒組成物。
  5. 上記金属酸化物が、酸化スズまたは希土類酸化物である請求項1〜4の何れかに記載の酸化触媒組成物。
  6. 上記希土類酸化物が、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化サマリウムからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項5に記載の酸化触媒組成物。
  7. 上記導電材が、炭素材料である請求項1〜6のいずれかに記載の酸化触媒組成物。
  8. 上記炭素材料が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイトからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項7に記載の酸化触媒組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の酸化触媒組成物を含む触媒電極膜。
  10. 請求項9に記載の触媒電極膜とアニオン交換膜とを接合した膜接合体。
  11. 請求項10に記載の膜接合体を備えてなるアニオン交換膜型燃料電池。
  12. 請求項10に記載の膜接合体を備えてなるアニオン交換膜型直接アンモニア燃料電池。
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