以下、添付図面を参照して、本願の開示する剥離システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
(第1の実施形態)
<1.剥離システム>
まず、第1の実施形態に係る剥離システムの構成について、図1〜3を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る剥離システムの構成を示す模式平面図である。また、図2および図3は、ダイシングフレームに保持された重合基板の模式側面図および摸式平面図である。なお、以下においては、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
図1に示す第1の実施形態に係る剥離システム1は、被処理基板Wと支持基板Sとが接着剤Gで接合された重合基板T(図2参照)を、被処理基板Wと支持基板Sとに剥離する。
以下では、図2に示すように、被処理基板Wの板面のうち、接着剤Gを介して支持基板Sと接合される側の板面を「接合面Wj」といい、接合面Wjとは反対側の板面を「非接合面Wn」という。また、支持基板Sの板面のうち、接着剤Gを介して被処理基板Wと接合される側の板面を「接合面Sj」といい、接合面Sjとは反対側の板面を「非接合面Sn」という。
被処理基板Wは、たとえば、シリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板であり、電子回路が形成される側の板面を接合面Wjとしている。また、被処理基板Wは、たとえば非接合面Wnが研磨処理されることによって薄型化されている。具体的には、被処理基板Wの厚さは、約20〜100μmである。
一方、支持基板Sは、被処理基板Wと略同径の基板であり、被処理基板Wを支持する。支持基板Sの厚みは、約650〜750μmである。かかる支持基板Sとしては、シリコンウェハの他、ガラス基板などを用いることができる。また、これら被処理基板Wおよび支持基板Sを接合する接着剤Gの厚みは、約40〜150μmである。
上記のように被処理基板Wは非常に薄く、破損し易いため、ダイシングフレームFによってより確実に保護される。ダイシングフレームFは、図3に示すように、重合基板Tよりも大径の開口部Faを中央に有する略矩形状の部材であり、ステンレス鋼の金属で形成される。かかるダイシングフレームFに対して、開口部Faを裏面から塞ぐようにダイシングテープPを貼り付けることで、ダイシングフレームFと重合基板Tとを接合する。
具体的には、ダイシングフレームFの開口部Faに重合基板Tを配置し、被処理基板Wの非接合面WnおよびダイシングフレームFにダイシングテープPを貼り付ける。これにより、重合基板TはダイシングフレームFに保持された状態となる。なお、重合基板Tは、被処理基板Wが下面に位置し、支持基板Sが上面に位置した状態で、ダイシングフレームFに保持される(図2参照)。
第1の実施形態に係る剥離システム1は、図1に示すように、第1処理ブロック10と第2処理ブロック20とを備える。第1処理ブロック10と第2処理ブロック20とは、第2処理ブロック20および第1処理ブロック10の順にX軸方向に並べて配置される。
第1処理ブロック10は、ダイシングフレームFによって保持される基板、具体的には、重合基板Tまたは剥離後の被処理基板Wに対する処理を行うブロックである。かかる第1処理ブロック10は、搬入出ステーション11と、第1搬送領域12と、待機ステーション13と、エッジカットステーション14と、剥離ステーション15と、第1洗浄ステーション16とを備える。
また、第2処理ブロック20は、ダイシングフレームFによって保持されない基板、具体的には、剥離後の支持基板Sに対する処理を行うブロックである。かかる第2処理ブロック20は、受渡ステーション21と、第2洗浄ステーション22と、第2搬送領域23と、搬出ステーション24とを備える。
第1処理ブロック10の第1搬送領域12と、第2処理ブロック20の第2搬送領域23とは、X軸方向に並べて配置される。また、第1搬送領域12のY軸負方向側には、搬入出ステーション11および待機ステーション13が、搬入出ステーション11および待機ステーション13の順でX軸方向に並べて配置され、第2搬送領域23のY軸負方向側には、搬出ステーション24が配置される。
また、第1搬送領域12を挟んで搬入出ステーション11および待機ステーション13の反対側には、剥離ステーション15および第1洗浄ステーション16が、剥離ステーション15および第1洗浄ステーション16の順でX軸方向に並べて配置される。また、第2搬送領域23を挟んで搬出ステーション24の反対側には、受渡ステーション21および第2洗浄ステーション22が、第2洗浄ステーション22および受渡ステーション21の順にX軸方向に並べて配置される。そして、第1搬送領域12のX軸正方向側には、エッジカットステーション14が配置される。
まず、第1処理ブロック10の構成について説明する。搬入出ステーション11では、ダイシングフレームFに保持された重合基板T(以下、「DF付重合基板T」と記載する)が収容されるカセットCtおよび剥離後の被処理基板Wが収容されるカセットCwが外部との間で搬入出される。かかる搬入出ステーション11には、カセット載置台が設けられており、このカセット載置台に、カセットCt,Cwのそれぞれが載置される複数のカセット載置板110a,110bが設けられる。
第1搬送領域12では、DF付重合基板Tまたは剥離後の被処理基板Wの搬送が行われる。第1搬送領域12には、DF付重合基板Tまたは剥離後の被処理基板Wの搬送を行う第1搬送装置30が設置される。
第1搬送装置30は、水平方向への移動、鉛直方向への昇降および鉛直方向を中心とする旋回が可能な搬送アーム部と、この搬送アーム部の先端に取り付けられた基板保持部とを備える基板搬送装置である。かかる第1搬送装置30は、基板保持部を用いて基板を保持するとともに、基板保持部によって保持された基板を搬送アーム部によって所望の場所まで搬送する。
なお、第1搬送装置30が備える基板保持部は、吸着あるいは把持等によりダイシングフレームFを保持することによって、DF付重合基板Tまたは剥離後の被処理基板Wを略水平に保持する。
待機ステーション13には、ダイシングフレームFのID(Identification)の読み取りを行うID読取装置が配置され、かかるID読取装置によって、処理中のDF付重合基板Tを識別することができる。
この待機ステーション13では、上記のID読取り処理に加え、処理待ちのDF付重合基板Tを一時的に待機させておく待機処理が必要に応じて行われる。かかる待機ステーション13には、第1搬送装置30によって搬送されたDF付重合基板Tが載置される載置台が設けられており、かかる載置台に、ID読取装置と一時待機部とが載置される。
エッジカットステーション14では、接着剤G(図2参照)の周縁部を溶剤によって溶解させて除去するエッジカット処理が行われる。かかるエッジカット処理によって接着剤Gの周縁部が除去されることで、後述する剥離処理において被処理基板Wと支持基板Sとを剥離させ易くすることができる。かかるエッジカットステーション14には、接着剤Gの溶剤に重合基板Tを浸漬させることによって、接着剤Gの周縁部を溶剤によって溶解させるエッジカット装置が設置される。
剥離ステーション15では、第1搬送装置30によって搬送されたDF付重合基板Tを被処理基板Wと支持基板Sとに剥離する剥離処理が行われる。かかる剥離ステーション15には、剥離処理を行う剥離装置が設置される。かかる剥離装置の具体的な構成および動作については、後述する。
第1洗浄ステーション16では、剥離後の被処理基板Wの洗浄処理が行われる。第1洗浄ステーション16には、剥離後の被処理基板WをダイシングフレームFに保持された状態で洗浄する第1洗浄装置が設置される。かかる第1洗浄装置の具体的な構成については、後述する。
かかる第1処理ブロック10では、待機ステーション13においてダイシングフレームFのID読取処理を行い、エッジカットステーション14においてDF付重合基板Tのエッジカット処理を行った後で、剥離ステーション15においてDF付重合基板Tの剥離処理を行う。また、第1処理ブロック10では、第1洗浄ステーション16において剥離後の被処理基板Wを洗浄した後、洗浄後の被処理基板Wを搬入出ステーション11へ搬送する。その後、洗浄後の被処理基板Wは、搬入出ステーション11から外部へ搬出される。
つづいて、第2処理ブロック20の構成について説明する。受渡ステーション21では、剥離後の支持基板Sを剥離ステーション15から受け取って第2洗浄ステーション22へ渡す受渡処理が行われる。受渡ステーション21には、剥離後の支持基板Sを非接触で保持して搬送する第3搬送装置50が設置され、かかる第3搬送装置50によって上記の受渡処理が行われる。第3搬送装置50の具体的な構成については、後述する。
第2洗浄ステーション22では、剥離後の支持基板Sを洗浄する第2洗浄処理が行われる。かかる第2洗浄ステーション22には、剥離後の支持基板Sを洗浄する第2洗浄装置が設置される。かかる第2洗浄装置の具体的な構成については、後述する。
第2搬送領域23では、第2洗浄装置によって洗浄された支持基板Sの搬送が行われる。第2搬送領域23には、支持基板Sの搬送を行う第2搬送装置40が設置される。
第2搬送装置40は、水平方向への移動、鉛直方向への昇降および鉛直方向を中心とする旋回が可能な搬送アーム部と、この搬送アーム部の先端に取り付けられた基板保持部とを備える基板搬送装置である。かかる第2搬送装置40は、基板保持部を用いて基板を保持するとともに、基板保持部によって保持された基板を搬送アーム部によって搬出ステーション24まで搬送する。なお、第2搬送装置40が備える基板保持部は、たとえば支持基板Sを下方から支持することによって支持基板Sを略水平に保持するフォーク等である。
搬出ステーション24では、支持基板Sが収容されるカセットCsが外部との間で搬入出される。かかる搬出ステーション24には、カセット載置台が設けられており、このカセット載置台に、カセットCsが載置される複数のカセット載置板240a,240bが設けられる。
かかる第2処理ブロック20では、剥離後の支持基板Sが剥離ステーション15から受渡ステーション21を介して第2洗浄ステーション22へ搬送され、第2洗浄ステーション22において洗浄される。その後、第2処理ブロック20では、洗浄後の支持基板Sを搬出ステーション24へ搬送し、洗浄後の支持基板Sは、搬出ステーション24から外部へ搬出される。
また、剥離システム1は、制御装置60を備える。制御装置60は、剥離システム1の動作を制御する装置である。かかる制御装置60は、たとえばコンピュータであり、図示しない制御部と記憶部とを備える。記憶部には、剥離処理等の各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部は記憶部に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって剥離システム1の動作を制御する。
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されていたものであって、その記録媒体から制御装置60の記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記録媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
次に、上述した剥離システム1の動作について図4および図5A,5Bを参照して説明する。図4は、剥離システム1によって実行される基板処理の処理手順を示すフローチャートである。また、図5Aは、DF付重合基板Tの搬送順路を示す模式図であり、図5Bは、被処理基板Wおよび支持基板Sの搬送順路を示す模式図である。なお、剥離システム1は、制御装置60の制御に基づき、図4に示す各処理手順を実行する。
まず、第1処理ブロック10の第1搬送領域12に配置される第1搬送装置30(図1参照)は、制御装置60の制御に基づき、DF付重合基板Tを待機ステーション13へ搬入する処理を行う(図4のステップS101、図5AのT1参照)。
具体的には、第1搬送装置30は、基板保持部を搬入出ステーション11へ進入させ、カセットCtに収容されたDF付重合基板Tを保持してカセットCtから取り出す。このとき、DF付重合基板Tは、被処理基板Wが下面に位置し、支持基板Sが上面に位置した状態で、第1搬送装置30の基板保持部に上方から保持される。そして、第1搬送装置30は、カセットCtから取り出したDF付重合基板Tを待機ステーション13へ搬入する。
つづいて、待機ステーション13では、ID読取装置が、制御装置60の制御に基づき、ダイシングフレームFのIDを読み取るID読取処理を行う(図4のステップS102)。ID読取装置によって読み取られたIDは、制御装置60へ送信される。
つづいて、第1搬送装置30は、制御装置60の制御に基づき、DF付重合基板Tを待機ステーション13から搬出し、エッジカットステーション14へ搬送する(図5AのT2参照)。そして、エッジカットステーション14では、エッジカット装置が、制御装置60の制御に基づき、エッジカット処理を行う(図4のステップS103)。かかるエッジカット処理により接着剤Gの周縁部が除去され、後段の剥離処理において被処理基板Wと支持基板Sとが剥離し易くなる。これにより、剥離処理に要する時間を短縮させることができる。
第1の実施形態にかかる剥離システム1では、エッジカットステーション14が第1処理ブロック10に組み込まれているため、第1処理ブロック10へ搬入されたDF付重合基板Tを第1搬送装置30を用いてエッジカットステーション14へ直接搬入することができる。このため、剥離システム1によれば、一連の基板処理のスループットを向上させることができる。また、エッジカット処理から剥離処理までの時間を容易に管理することができ、剥離性能を安定化させることができる。
また、たとえば装置間の処理時間差等により処理待ちのDF付重合基板Tが生じる場合には、待機ステーション13に設けられた一時待機部を用いてDF付重合基板Tを一時的に待機させておくことができ、一連の工程間でのロス時間を短縮することができる。
つづいて、第1搬送装置30は、制御装置60の制御に基づき、エッジカット処理後のDF付重合基板Tをエッジカットステーション14から搬出して、剥離ステーション15へ搬送する(図5AのT3参照)。そして、剥離ステーション15では、剥離装置が、制御装置60の制御に基づいて剥離処理を行う(図4のステップS104)。
その後、剥離システム1では、剥離後の被処理基板Wについての処理が第1処理ブロック10で行われ、剥離後の支持基板Sについての処理が第2処理ブロック20で行われる。なお、剥離後の被処理基板Wは、ダイシングフレームFによって保持されている。
まず、第1処理ブロック10では、第1搬送装置30が、制御装置60の制御に基づき、剥離後の被処理基板Wを剥離装置から搬出して、第1洗浄ステーション16へ搬送する(図5BのW1参照)。
そして、第1洗浄装置は、制御装置60の制御に基づき、剥離後の被処理基板Wの接合面Wjを洗浄する被処理基板洗浄処理を行う(図4のステップS105)。かかる被処理基板洗浄処理によって、被処理基板Wの接合面Wjに残存する接着剤Gが除去される。
つづいて、第1搬送装置30は、制御装置60の制御に基づき、洗浄後の被処理基板Wを第1洗浄装置から搬出して、搬入出ステーション11へ搬送する被処理基板搬出処理を行う(図4のステップS106、図5BのW2参照)。その後、被処理基板Wは、搬入出ステーション11から外部へ搬出されて回収される。こうして、被処理基板Wについての処理が終了する。
一方、第2処理ブロック20では、ステップS105およびステップS106の処理と並行して、ステップS107〜S109の処理が行われる。
まず、第2処理ブロック20では、受渡ステーション21に設置された第3搬送装置50が、制御装置60の制御に基づいて、剥離後の支持基板Sの受渡処理を行う(図4のステップS107)。
このステップS107において、第3搬送装置50は、剥離後の支持基板Sを剥離装置から受け取り(図5BのS1参照)、受け取った支持基板Sを第2洗浄ステーション22の第2洗浄装置へ載置する(図5BのS2参照)。
ここで、剥離後の支持基板Sは、剥離装置によって上面側すなわち非接合面Sn側が保持された状態となっており、第3搬送装置50は、支持基板Sの接合面Sj側を下方から非接触で保持する。そして、第3搬送装置50は、保持した支持基板Sを第2洗浄ステーション22へ搬入した後、支持基板Sを反転させて、第2洗浄装置へ載置する。これにより、支持基板Sは、接合面Sjが上方を向いた状態で第2洗浄装置に載置される。そして、第2洗浄装置は、制御装置60の制御に基づき、支持基板Sの接合面Sjを洗浄する支持基板洗浄処理を行う(図4のステップS108)。かかる支持基板洗浄処理によって、支持基板Sの接合面Sjに残存する接着剤Gが除去される。
つづいて、第2搬送装置40は、制御装置60の制御に基づき、洗浄後の支持基板Sを第2洗浄装置から搬出して、搬出ステーション24へ搬送する支持基板搬出処理を行う(図4のステップS109、図5BのS3参照)。その後、支持基板Sは、搬出ステーション24から外部へ搬出されて回収される。こうして、支持基板Sについての処理が終了する。
このように、第1の実施形態に係る剥離システム1は、ダイシングフレームFに保持された基板用のフロントエンド(搬入出ステーション11および第1搬送装置30)と、ダイシングフレームFに保持されない基板用のフロントエンド(搬出ステーション24および第2搬送装置40)とを備える構成とした。これにより、洗浄後の被処理基板Wを搬入出ステーション11へ搬送する処理と、洗浄後の支持基板Sを搬出ステーション24へ搬送する処理とを並列に行うことが可能となるため、一連の基板処理を効率的に行うことができる。
また、第1の実施形態に係る剥離システム1は、第1処理ブロック10と第2処理ブロック20とが、受渡ステーション21によって接続される。これにより、剥離後の支持基板Sを剥離ステーション15から直接取り出して第2処理ブロック20へ搬入することが可能となるため、剥離後の支持基板Sを第2洗浄装置へスムーズに搬送することができる。
したがって、第1の実施形態に係る剥離システム1によれば、一連の基板処理のスループットを向上させることができる。
<2.各装置の構成>
<2−1.剥離装置>
次に、剥離システム1が備える各装置の構成について具体的に説明する。まず、剥離ステーション15に設置される剥離装置の構成および剥離装置を用いて行われるDF付重合基板Tの剥離動作について説明する。図6は、第1の実施形態に係る剥離装置の構成を示す模式側面図である。
図6に示すように、剥離装置5は、処理部100を備える。処理部100の側面には、搬入出口(図示せず)が形成され、この搬入出口を介して、DF付重合基板Tの処理部100への搬入や、剥離後の被処理基板Wおよび支持基板Sの処理部100からの搬出が行われる。搬入出口には、たとえば開閉シャッタが設けられ、この開閉シャッタによって処理部100の内部と他の領域とが仕切られ、パーティクルの進入が防止される。なお、搬入出口は、第1搬送領域12に隣接する側面と受渡ステーション21に隣接する側面とにそれぞれ設けられる。
剥離装置5は、第1保持部110と、上側ベース部120と、局所移動部130と、移動機構140とを備える。また、剥離装置5は、第2保持部150と、フレーム保持部160と、下側ベース部170と、回転機構180とを備える。これらは、処理部100の内部に配置される。
第1保持部110は、上側ベース部120によって上方から支持される。上側ベース部120は移動機構140に支持されており、移動機構140が上側ベース部120を鉛直方向に移動させることによって、第1保持部110は鉛直方向に昇降する。
第2保持部150は、第1保持部110の下方に配置され、フレーム保持部160は、第2保持部150の外方に配置される。これら第2保持部150およびフレーム保持部160は、下側ベース部170によって下方から支持される。下側ベース部170は回転機構180に支持されており、回転機構180が下側ベース部170を鉛直軸回りに回転させることによって、第2保持部150およびフレーム保持部160は、鉛直軸回りに回転する。
かかる剥離装置5では、第1保持部110がDF付重合基板Tを上方から保持するとともに、第2保持部150がDF付重合基板Tを下方から保持し、局所移動部130が、第1保持部110の外周部の一部を第2保持部150から離す方向へ移動させる。これにより、剥離装置5は、支持基板Sを、その外周部から中心部へ向けて被処理基板Wから連続的に剥離させることができる。以下、各構成要素について具体的に説明する。
第1保持部110は、DF付重合基板Tを構成する支持基板Sを吸着保持する保持部である。かかる第1保持部110は、後述する局所移動部130によって引っ張られた際に、その形状を柔軟に変化させることができるように、柔軟性を有する部材で形成される。ここで、第1保持部110の具体的な構成について図7Aおよび図7Bを参照して説明する。図7Aは、第1保持部110の構成を示す摸式斜視図であり、図7Bは、吸着パッドの構成を示す摸式平面図である。
図7Aに示すように、第1保持部110は、薄板状の本体部111と、本体部111の表面に貼り付けられた吸着パッド112とを備える。本体部111は、たとえば板バネなどの弾性部材で形成され、吸着パッド112は、樹脂部材で形成される。
本体部111は、DF付重合基板Tと略同径の円盤部111aを有し、かかる円盤部111aの下面に吸着パッド112が貼り付けられる。
円盤部111aの外周部には、引張部111bが設けられており、かかる引張部111bの先端に、後述する局所移動部130のシリンダ132を取り付けるための取付部111b1が形成される。
また、円盤部111aの外周部には、複数の固定部111cが設けられる。固定部111cは、後述する上側ベース部120に設けられる支持部材121に対応する位置に設けられており、かかる支持部材121に固定される。第1保持部110は、固定部111cが上側ベース部120の支持部材121に固定されることによって、上側ベース部120に支持される。
なお、ここでは、円盤部111aに対して固定部111cが5個設けられる場合の例を示したが、円盤部111aに設けられる固定部111cの個数は、5個に限定されない。
吸着パッド112は、DF付重合基板Tの吸着領域が形成された円盤状の樹脂部材である。吸着パッド112の吸着領域は、図7Bに示すように、中心から径方向に伸びる複数の直線L1,L2と複数の円弧a1〜a3とによって、複数の個別領域R1〜R4に分割される。
各個別領域R1〜R4には、吸気口113a〜113dがそれぞれ形成されており、各吸気口113a〜113dは、図6に示す吸気管113を介して真空ポンプなどの吸気装置114と接続される。第1保持部110は、吸気装置114の吸気によって各吸気口113a〜113dからDF付重合基板Tを構成する支持基板Sを吸引することによって、支持基板Sを個別領域R1〜R4ごとに吸着保持する。
このように、吸着パッド112の吸着領域を複数の個別領域R1〜R4に分割し、個別領域R1〜R4ごとに支持基板Sを吸着保持することにより、たとえば一部の個別領域で空気漏れ等が生じた場合であっても、他の個別領域によって支持基板Sを適切に保持しておくことができる。
また、各個別領域R1〜R4は、剥離の進行方向dの基端側に設けられる個別領域よりも進行方向dの先端側に設けられる個別領域が大きく形成される。たとえば、個別領域R1〜R3は、剥離の進行方向dに沿って個別領域R1、個別領域R2、個別領域R3の順に配置されており、個別領域R1よりも個別領域R2が大きく、個別領域R2よりも個別領域R3が大きく形成される。
吸着領域が小さくなるほど、その吸着領域における吸着力は大きくなるため、上記のように構成することにより、剥離の進行方向dの基端側に配置される個別領域R1の吸着力を他の個別領域R2〜R4と比較して大きくすることができる。これにより、また、剥離の進行方向dの基端側の領域は、被処理基板Wと支持基板Sとを剥離する際に最も大きな力が必要となる領域である。したがって、かかる領域の吸着力を高めることにより、被処理基板Wと支持基板Sとを確実に剥離させることができる。
また、各個別領域R1〜R4の吸気口113a〜113dを、剥離の進行方向dに沿って並べて形成することで、剥離動作中に支持基板Sをより確実に保持しておくことができる。
なお、ここでは、線L1,L2を直線としたが、線L1,L2は必ずしも直線であることを要しない。また、ここでは、各吸気口113a〜113dに対して1つの吸気装置114が接続される場合の例を示したが、吸気口113a〜113dごとに吸気装置を設けてもよい。
図6に戻り、剥離装置5の構成についての説明を続ける。第1保持部110の上方には、上側ベース部120が第1保持部110と空隙を介して対向配置される。上側ベース部120の下面には複数の支持部材121が第1保持部110へ向けて突設される。かかる支持部材121と第1保持部110の固定部111cとが固定されることによって、第1保持部110は、上側ベース部120に支持された状態となる。
局所移動部130は、第1保持部110の外周部の一部を第2保持部150から離す方向へ移動させる。具体的には、局所移動部130は、上側ベース部120に固定された本体部131と、基端部が本体部131に固定され、本体部131によって鉛直方向に沿って昇降するシリンダ132とを備える。シリンダ132の先端部は、第1保持部110の本体部111に設けられた引張部111bの取付部111b1(図7A参照)に固定される。
かかる局所移動部130は、本体部131を用いてシリンダ132を鉛直上方に移動させることにより、シリンダ132に固定された引張部111bを鉛直上方へ移動させる。これにより、第1保持部110に保持された支持基板Sの外周部の一部が鉛直上方へ移動し、第2保持部150に保持された被処理基板Wから剥離される。
また、局所移動部130には、ロードセル133が設けられており、局所移動部130は、シリンダ132にかかる負荷をロードセル133によって検出することができる。局所移動部130は、ロードセル133による検出結果に基づいて、支持基板Sにかかる鉛直上向きの力を制御しながら、第1保持部110を引っ張ることができる。
ところで、第1の実施形態に係る剥離装置5では、第1保持部110の本体部111に形成される複数の固定部111cのうち全てを支持部材121に固定したり、あるいは、一部のみを固定したりすることにより、局所移動部130による第1保持部110の移動量を調整することができる。かかる点について、図8Aおよび図8Bを参照して説明する。図8Aおよび図8Bは、第1保持部110の本体部111の摸式平面図である。
たとえば、図8Aに示すように、第1保持部110の本体部111に設けられた5個の固定部111cの全てを支持部材121に固定した場合、第1保持部110が局所移動部130によって移動可能な領域Rは、剥離の進行方向dの基端からこの基端に最も近い2つの固定部111cまでの領域に制限される。これに対し、図8Bに示すように、剥離の進行方向dの基端側に設けられた2つの固定部111cから支持部材121を取り外すことにより、第1保持部110が局所移動部130によって移動可能な領域Rを図8Aに示す場合よりも大きくすることができる。
このように、固定部111cは、第1保持部110を上側ベース部120に固定する機能だけでなく、本体部111の外周部の周方向に沿って複数設けられ、支持部材121に固定されることによって局所移動部130による第1保持部110の移動を制限する機能も有する。
図6に戻り、剥離装置5の構成についての説明を続ける。上側ベース部120の上方には、移動機構140が配置される。移動機構140は、処理部100の天井部に固定された本体部141と、基端部が本体部141に固定されて鉛直方向に沿って昇降する駆動手段142とを備える。駆動手段142としては、たとえばモータやシリンダ等を用いることができる。駆動手段142の先端部は、上側ベース部120に固定される。
かかる移動機構140は、本体部141を用いて駆動手段142を鉛直上方に移動させることにより、駆動手段142に固定された上側ベース部120を鉛直方向に沿って移動させる。これにより、上側ベース部120に支持された第1保持部110および局所移動部130が昇降する。
第1保持部110の下方には、第2保持部150が対向配置される。第2保持部150は、DF付重合基板Tを構成する被処理基板WをダイシングテープPを介して吸着保持する。
第2保持部150は、円盤状の本体部151と、本体部151を支持する支柱部材152とを備える。支柱部材152は、下側ベース部170に支持される。
本体部151は、たとえばアルミニウムなどの金属部材で構成される。かかる本体部151の上面には、吸着面151aが設けられる。吸着面151aは、DF付重合基板Tと略同径であり、DF付重合基板Tの下面、すなわち、被処理基板Wの非接合面Wnと当接する。この吸着面151aは、たとえば炭化ケイ素等の多孔質体や多孔質セラミックで形成される。
本体部151の内部には、吸着面151aを介して外部と連通する吸引空間151bが形成される。吸引空間151bは、吸気管153を介して真空ポンプなどの吸気装置154と接続される。
第2保持部150は、吸気装置154の吸気によって発生する負圧を利用し、被処理基板Wの非接合面WnをダイシングテープPを介して吸着面151aに吸着させることによって、被処理基板Wを保持する。なお、第2保持部150として、ポーラスチャックを用いる例を示したが、これに限定されるものではない。たとえば、第2保持部150として、静電チャックを用いるようにしてもよい。
第2保持部150の外方には、フレーム保持部160が配置される。フレーム保持部160は、ダイシングフレームFを下方から保持する。かかるフレーム保持部160は、ダイシングフレームFを吸着保持する複数の吸着部161と、吸着部161を支持する支持部材162と、下側ベース部170に固定され、支持部材162を鉛直方向に沿って移動させる移動機構163とを備える。
吸着部161は、ゴムなどの弾性部材によって形成され、たとえば図3に示すダイシングフレームFの前後左右の4箇所に対応する位置にそれぞれ設けられる。この吸着部161には、吸気口(図示せず)が形成され、この吸気口には支持部材162および吸気管164を介して真空ポンプなどの吸気装置165が接続される。
フレーム保持部160は、吸気装置165の吸気によって発生する負圧を利用し、ダイシングフレームFを吸着することによって、ダイシングフレームFを保持する。また、フレーム保持部160は、ダイシングフレームFを保持した状態で、移動機構163によって支持部材162および吸着部161を鉛直方向に沿って移動させることで、ダイシングフレームFを鉛直方向に沿って移動させる。
下側ベース部170は、第2保持部150およびフレーム保持部160の下方に配置され、第2保持部150およびフレーム保持部160を支持する。下側ベース部170は、たとえば処理部100の床面に固定された回転機構180によって支持される。かかる回転機構180によって下側ベース部170が鉛直軸回りに回転することにより、下側ベース部170に支持された第2保持部150およびフレーム保持部160が鉛直軸回りに回転する。
次に、剥離装置5の動作について図9および図10A〜10Eを参照して説明する。図9は、剥離処理の処理手順を示すフローチャートである。また、図10A〜10Eは、剥離装置5による剥離動作の説明図である。なお、剥離装置5は、制御装置60の制御に基づき、図9に示す各処理手順を実行する。
まず、剥離装置5は、第1搬送装置30によって剥離ステーション15へ搬入されたDF付重合基板TのダイシングフレームFをフレーム保持部160を用いて下方から吸着保持する(ステップS201)。このとき、DF付重合基板Tは、フレーム保持部160によってのみ保持された状態である(図10A参照)。
つづいて、剥離装置5は、移動機構163(図6参照)を用いてフレーム保持部160を降下させる(ステップS202)。これにより、DF付重合基板Tのうちの被処理基板Wが、ダイシングテープPを介して第2保持部150に当接する(図10B参照)。その後、剥離装置5は、第2保持部150を用いてDF付重合基板Tを吸着保持する(ステップS203)。これにより、DF付重合基板Tは、第2保持部150によって被処理基板Wが保持され、フレーム保持部160によってダイシングフレームFが保持された状態となる。
つづいて、剥離装置5は、移動機構140を用いて第1保持部110を降下させる(ステップS204)。これにより、DF付重合基板Tのうちの支持基板Sが、ダイシングテープPを介して第1保持部110に当接する(図10C参照)。その後、剥離装置5は、第1保持部110を用いてDF付重合基板Tを構成する支持基板Sを吸着保持する(ステップS205)。
つづいて、剥離装置5は、局所移動部130を用いて第1保持部110の外周部の一部を引っ張る(ステップS206)。具体的には、局所移動部130は、第1保持部110の本体部111に設けられた引張部111bをシリンダ132の動作によって鉛直上向きに移動させる。これにより、DF付重合基板Tの外周部が鉛直上向きに引っ張られて、支持基板Sが、その外周部から中心部へ向けて被処理基板Wから連続的に剥離し始める(図10D参照)。
ここで、上述したように、第1保持部110は、柔軟性を有する部材で形成されるため、局所移動部130が第1保持部110の引張部111bを鉛直上向きに引っ張った際に、かかる引っ張りに伴って柔軟に変形する。これにより、剥離装置5は、被処理基板Wに対して大きな負荷をかけることなく、支持基板Sを被処理基板Wから剥離させることができる。
そして、剥離装置5は、移動機構140を用いて第1保持部110を上昇させる(ステップS207)。これにより、支持基板Sが被処理基板Wから剥離する。その後、剥離装置5は、剥離処理を終了する。
なお、剥離装置5は、被処理基板Wと支持基板Sとが剥離した後、回転機構180を用いて第2保持部150およびフレーム保持部160を回転させてもよい。これにより、仮に、支持基板Sと被処理基板Wとに跨って貼り付いた接着剤Gが存在する場合に、かかる接着剤Gをねじ切ることができる。
剥離装置5が剥離処理を終えると、第1搬送装置30は、剥離後の被処理基板Wを剥離装置5から搬出して、第1洗浄ステーション16へ搬送する。このとき、剥離後の被処理基板Wは、図10Eに示すように、洗浄すべき接合面Wjが上面に位置した状態で、第2保持部150に保持されている。このため、第1搬送装置30は、剥離後の被処理基板Wを剥離装置5から搬出した後、かかる被処理基板Wを反転させることなくそのまま第1洗浄ステーション16へ搬送することができる。
このように、第1の実施形態に係る剥離装置5では、第1保持部110が、DF付重合基板Tのうち支持基板Sを上方から保持し、第2保持部150が、DF付重合基板Tのうち被処理基板WをダイシングテープPを介して下方から保持することとした。したがって、剥離装置5によれば、剥離後の被処理基板Wを反転させる必要がないため、剥離処理の効率化を図ることができる。
また、第1の実施形態に係る剥離装置5は、第1保持部110を柔軟性を有する部材で形成することにより、被処理基板Wに対して大きな負荷をかけることなく、支持基板Sを被処理基板Wから剥離させることができる。このため、支持基板Sと被処理基板Wとの剥離を効率よく行うことができる。
<2−2.第1洗浄装置の構成>
次に、第1洗浄装置の構成について図11A〜11Cを参照して説明する。図11Aおよび図11Bは、第1洗浄装置の構成を示す摸式側面図である。また、図11Cは、洗浄治具の構成を示す摸式平面図である。
図11Aに示すように、第1洗浄装置70は、処理容器71を有する。処理容器71の側面には、被処理基板Wの搬入出口(図示せず)が形成され、かかる搬入出口には開閉シャッタ(図示せず)が設けられる。なお、処理容器71内には内部の雰囲気を清浄化するためのフィルタ(図示せず)が設けられる。
処理容器71内の中央部には、基板保持部72が配置される。基板保持部72は、ダイシングフレームFおよび被処理基板Wを保持して回転させるスピンチャック721を有する。
スピンチャック721は水平な上面を有し、かかる上面には例えばダイシングテープPを吸引する吸引口(図示せず)が設けられている。そして吸引口からの吸引により、ダイシングテープPを介して被処理基板Wをスピンチャック721上に吸着保持する。このとき、被処理基板Wは、その接合面Wjが上方を向くようにスピンチャック721に吸着保持される。
スピンチャック721の下方には、たとえばモータなどを備えたチャック駆動部722が配置される。スピンチャック721は、チャック駆動部722により所定の速度で回転する。また、チャック駆動部722は、たとえばシリンダなどの昇降駆動源を備えており、かかる昇降駆動源によってスピンチャック721を昇降させる。
基板保持部72の周囲には、被処理基板Wから飛散又は落下する液体を受け止め、回収するカップ723が配置される。かかるカップ723の下面には、回収した液体を排出する排出管724と、カップ723内の雰囲気を排気する排気管725が接続される。
基板保持部72の上方には、被処理基板Wの接合面Wjを洗浄するための洗浄治具73が配置される。洗浄治具73は、基板保持部72に保持された被処理基板Wに対向して配置されている。ここで、洗浄治具73の構成について図11Bおよび図11Cを参照して説明する。
図11Bおよび図11Cに示すように、洗浄治具73は、略円板形状を有している。洗浄治具73の下面には、少なくとも被処理基板Wの接合面Wjを覆うように供給面731が形成されている。なお、本実施形態において、供給面731は、被処理基板Wの接合面Wjとほぼ同じ大きさに形成される。
洗浄治具73の中央部には、供給面731および接合面Wj間に接着剤Gの溶剤、たとえばシンナーを供給する溶剤供給部74と、溶剤のリンス液を供給するリンス液供給部75と、不活性ガス、たとえば窒素ガスを供給する不活性ガス供給部76とが設けられている。溶剤供給部74、リンス液供給部75、不活性ガス供給部76は、洗浄治具73の内部において合流し、洗浄治具73の供給面731に形成された供給口732に連通している。すなわち、溶剤供給部74から供給口732までの溶剤の流路、リンス液供給部75から供給口732までのリンス液の流路、不活性ガス供給部76から供給口732までの不活性ガスの流路は、それぞれ洗浄治具73の厚み方向に貫通している。なお、リンス液には接着剤Gの主溶媒の成分に応じて種々の液が用いられ、たとえば純水やIPA(イソプロピルアルコール)が用いられる。また、リンス液の乾燥を促進させるため、リンス液には揮発性の高い液を用いるのが好ましい。
溶剤供給部74には、内部に溶剤を貯留する溶剤供給源741に連通する供給管742が接続されている。供給管742には、溶剤の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群743が設けられている。リンス液供給部75には、内部にリンス液を貯留するリンス液供給源751に連通する供給管752が接続されている。供給管752には、リンス液の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群753が設けられている。不活性ガス供給部76には、内部に不活性ガスを貯留する不活性ガス供給源761に連通する供給管762が接続されている。供給管762には、溶剤の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群763が設けられている。
洗浄治具73の外周部には、供給面731と接合面Wjとの間の隙間の溶剤やリンス液を吸引するための吸引部77が設けられている。吸引部77は、洗浄治具73の厚み方向に貫通して設けられている。また吸引部77は、洗浄治具73と同一円周上に等間隔に複数、例えば8箇所に配置されている(図11C参照)。各吸引部77には、例えば真空ポンプなどの負圧発生装置771に連通する吸気管772が接続されている。
図11Aに示すように、処理容器71の天井面であって、洗浄治具73の上方には、洗浄治具73を鉛直方向及び水平方向に移動させる移動機構78が設けられている。移動機構78は、洗浄治具73を支持する支持部材781と、支持部材781を支持し、洗浄治具73を鉛直方向及び水平方向に移動させるための治具駆動部782とを有している。
第1搬送装置30は、保持した被処理基板Wを第1洗浄装置70のスピンチャック721上に載置する。これにより、剥離後の被処理基板Wは、接合面Wjが上面に位置した状態でスピンチャック721上に載置される。
そして、第1洗浄装置70は、制御装置60の制御に基づき、基板保持部72上に載置された被処理基板Wの洗浄処理(第1洗浄処理)を行う。
第1洗浄装置70は、まず、スピンチャック721を用い、ダイシングテープPを介して被処理基板WおよびダイシングフレームFを吸着保持する。つづいて、第1洗浄装置70は、移動機構78によって洗浄治具73の水平方向の位置を調整した後、洗浄治具73を所定の位置まで下降させる。このとき、洗浄治具73の供給面731と被処理基板Wの接合面Wjとの間の距離は、後述するように供給面731および接合面Wj間において、接着剤Gの溶剤が表面張力によって拡散することができる距離に設定される。
その後、第1洗浄装置70は、スピンチャック721によって被処理基板Wを回転させながら、溶剤供給源741から溶剤供給部74に溶剤を供給する。かかる溶剤は、供給口732から供給面731および接合面Wj間の空間に供給され、この空間において溶剤の表面張力と被処理基板Wの回転による遠心力により、被処理基板Wの接合面Wj上を拡散する。このとき、第1洗浄装置70は、吸引部77によって溶剤を適宜吸引することにより、溶剤がダイシングテープP上に流入しないようにする。これにより、ダイシングテープPの強度が溶剤によって弱まることを防ぐことができる。このようにして、被処理基板Wの接合面Wjの全面に溶剤が供給される。
その後、第1洗浄装置70は、被処理基板Wの接合面Wjを溶剤に浸した状態を所定の時間、たとえば数分間維持する。そうすると、接合面Wjに残存していた接着剤G等の不純物が溶剤によって除去される。
その後、第1洗浄装置70は、スピンチャック721による被処理基板Wの回転と、吸引部77による溶剤の吸引を引き続き行った状態で、洗浄治具73を所定の位置まで上昇させる。つづいて、第1洗浄装置70は、リンス液供給源751からリンス液供給部75にリンス液を供給する。リンス液は、溶剤と混合されつつ、表面張力と遠心力によって被処理基板Wの接合面Wj上を拡散する。これにより、溶剤とリンス液との混合液が、被処理基板Wの接合面Wjの全面に供給される。
その後、スピンチャック721による被処理基板Wの回転と、吸引部77による吸引を引き続き行った状態で、洗浄治具73を所定の位置まで下降させる。そして、不活性ガス供給源761から不活性ガス供給部76および供給口732を介して不活性ガスが供給される。不活性ガスは、溶剤とリンス液の混合液を被処理基板Wの外方へ押し流す。これにより、溶剤とリンス液の混合液は、吸引部77から吸引され、被処理基板Wの接合面Wjから混合液が除去される。
その後、第1洗浄装置70は、スピンチャック721による被処理基板Wの回転と、不活性ガスの供給を引き続き行うことにより、被処理基板Wを乾燥させる。これにより、被処理基板Wの洗浄処理(第1洗浄処理)が完了する。洗浄後の被処理基板Wは、第1搬送装置30によって第1洗浄装置70から搬出され、搬入出ステーション11のカセットCwへ搬送される。
<2−3.第3搬送装置の構成>
次に、受渡ステーション21に設置される第3搬送装置50の構成について図12を参照して説明する。図12は、第3搬送装置50の構成を示す摸式側面図である。
図12に示すように、第3搬送装置50は、被処理基板Wを保持するベルヌーイチャック51を備える。ベルヌーイチャック51は、吸着面に設けられた噴射口から被処理基板Wの板面へ向けて気体を噴射させ、吸着面と被処理基板Wの板面との間隔に応じて気体の流速が変化することに伴う負圧の変化を利用して被処理基板Wを非接触状態で保持する。
また、第3搬送装置50は、第1アーム52と第2アーム53と基部54とを備える。第1アーム52は、水平方向に延在し、先端部においてベルヌーイチャック51を支持する。第2アーム53は、鉛直方向に延在し、先端部において第1アーム52の基端部を支持する。かかる第2アーム53の先端部には、第1アーム52を水平軸回りに回転させる駆動機構が設けられており、かかる駆動機構を用いて第1アーム52を水平軸回りに回転させることにより、ベルヌーイチャック51を反転させることができる。
第2アーム53の基端部は、基部54によって支持される。基部54には、第2アーム53を回転および昇降させる駆動機構が設けられている。かかる駆動機構を用いて第2アーム53を回転または昇降させることにより、ベルヌーイチャック51を鉛直軸回りに旋回または昇降させることができる。
第3搬送装置50は、上記のように構成されており、制御装置60の制御に基づき、剥離後の支持基板Sを剥離装置5から受け取って第2洗浄装置80へ渡す受渡処理を行う。
具体的には、第3搬送装置50は、ベルヌーイチャック51を用い、剥離装置5の第1保持部110によって上方から保持された支持基板Sを下方から保持する。これにより、支持基板Sは、非接合面Snが上方を向いた状態で、ベルヌーイチャック51に保持される。つづいて、第3搬送装置50は、第2アーム53を鉛直軸回りに回転させることによってベルヌーイチャック51を旋回させる。これにより、ベルヌーイチャック51に保持された支持基板Sが剥離ステーション15から受渡ステーション21を経由して第2洗浄ステーション22へ移動する。
つづいて、第3搬送装置50は、第1アーム52を水平軸回りに回転させることによって、ベルヌーイチャック51を反転させる。これにより、支持基板Sは、非接合面Snが下方を向いた状態となる。そして、第3搬送装置50は、第2アーム53を降下させることによりベルヌーイチャック51を降下させて、ベルヌーイチャック51に保持された支持基板Sを第2洗浄装置へ載置する。これにより、支持基板Sは、接合面Sjが上方を向いた状態で第2洗浄装置へ載置され、第2洗浄装置によって接合面Sjが洗浄される。
<2−4.第2洗浄装置の構成>
次に、第2洗浄ステーション22に設置される第2洗浄装置の構成について図13Aおよび図13Bを参照して説明する。図13Aは、第2洗浄装置の構成を示す摸式側面図であり、図13Bは、第2洗浄装置の構成を示す摸式平面図である。
図13Aに示すように、第2洗浄装置80は、処理容器81を有している。処理容器81の側面には、支持基板Sの搬入出口(図示せず)が形成され、当該搬入出口には開閉シャッタ(図示せず)が設けられている。
処理容器81内の中央部には、支持基板Sを保持して回転させるスピンチャック82が配置される。スピンチャック82は、水平な上面を有しており、かかる上面には支持基板Sを吸引する吸引口(図示せず)が設けられている。この吸引口からの吸引により、支持基板Sは、スピンチャック82上で吸着保持される。
スピンチャック82の下方には、たとえばモータなどを備えたチャック駆動部83が配置される。チャック駆動部83は、スピンチャック82を所定の速度で回転させる。また、チャック駆動部83には、たとえばシリンダなどの昇降駆動源が設けられており、スピンチャック82は昇降自在になっている。
スピンチャック82の周囲には、支持基板Sから飛散又は落下する液体を受け止め、回収するカップ84が配置される。カップ84の下面には、回収した液体を排出する排出管841と、カップ84内の雰囲気を真空引きして排気する排気管842とが接続される。
図13Bに示すように、処理容器81にはレール85が設けられており、かかるレール85には、アーム86の基端部が取り付けられる。また、アーム86の先端部には、支持基板Sに洗浄液、たとえば有機溶剤を供給する洗浄液ノズル87が支持される。
アーム86は、ノズル駆動部861により、レール85上を移動自在である。これにより、洗浄液ノズル87は、カップ84の側方に設置された待機部88からカップ84内の支持基板Sの中心部上方まで移動することができ、さらに支持基板S上を支持基板Sの径方向に移動することができる。また、アーム86は、ノズル駆動部861によって昇降自在であり、これにより、洗浄液ノズル87の高さを調節することができる。
洗浄液ノズル87には、図13Aに示すように、洗浄液ノズル87に洗浄液を供給する供給管891が接続される。供給管891は、内部に洗浄液を貯留する洗浄液供給源892に連通している。供給管891には、洗浄液の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群893が設けられている。
第2洗浄装置80は、上記のように構成されており、制御装置60の制御に基づき、第3搬送装置50によって搬送された支持基板Sの洗浄処理(第2洗浄処理)を行う。
具体的には、剥離後の支持基板Sは、第3搬送装置50によって接合面Sjを上方に向けた状態で第2洗浄装置80のスピンチャック82に載置される。第2洗浄装置80は、スピンチャック82を用いて支持基板Sを吸着保持した後、スピンチャック82を所定の位置まで下降させる。つづいて、アーム86によって待機部88の洗浄液ノズル87を支持基板Sの中心部の上方まで移動させる。その後、スピンチャック82によって支持基板Sを回転させながら、洗浄液ノズル87から支持基板Sの接合面Sjに洗浄液を供給する。供給された洗浄液は遠心力により支持基板Sの接合面Sjの全面に拡散されて、接合面Sjが洗浄される。
洗浄後の支持基板Sは、第2搬送装置40によって第2洗浄装置80から搬出され、搬出ステーション24のカセットCsに収容される。
なお、スピンチャック82の下方には、支持基板Sを下方から支持し昇降させるための昇降ピン(図示せず)が設けられていてもよい。かかる場合、昇降ピンはスピンチャック82に形成された貫通孔(図示せず)を挿通し、スピンチャック82の上面から突出可能になっている。そして、スピンチャック82を昇降させる代わりに昇降ピンを昇降させて、スピンチャック82との間で支持基板Sの受け渡しが行われる。
また、第2洗浄装置80において、スピンチャック82の下方には、支持基板Sの裏面、すなわち非接合面Sn(図2参照)に向けて洗浄液を噴射するバックリンスノズル(図示せず)が設けられていてもよい。このバックリンスノズルから噴射される洗浄液によって、支持基板Sの非接合面Snと支持基板Sの外周部が洗浄される。
上述してきたように、第1の実施形態に係る剥離システム1は、DF付重合基板Tまたは剥離後の被処理基板Wに対する処理を行う第1処理ブロック10と、剥離後の支持基板Sに対する処理を行う第2処理ブロック20とを備える。
第1処理ブロック10は、搬入出ステーション11と、第1搬送装置30と、剥離ステーション15と、第1洗浄ステーション16とを備える。搬入出ステーション11には、ダイシングフレームFに保持されたDF付重合基板Tまたは剥離後の被処理基板Wが載置される。第1搬送装置30は、剥離後の被処理基板Wまたは搬入出ステーション11に載置されたDF付重合基板Tを搬送する。剥離ステーション15には、第1搬送装置30によって搬送されたDF付重合基板Tを被処理基板Wと支持基板Sとに剥離する剥離装置5が設置される。第1洗浄ステーション16には、第1搬送装置30によって搬送された剥離後の被処理基板WをダイシングフレームFに保持された状態で洗浄する第1洗浄装置70が設置される。
また、第2処理ブロック20は、第2洗浄ステーション22と、受渡ステーション21と、第2搬送装置40と、搬出ステーション24とを備える。第2洗浄ステーション22には、剥離後の支持基板Sを洗浄する第2洗浄装置80が設置される。受渡ステーション21は、第2洗浄ステーション22と剥離ステーション15との間に配置され、剥離後の支持基板Sを剥離ステーション15から受け取って第2洗浄ステーション22へ渡す。第2搬送装置40は、第2洗浄装置80によって洗浄された支持基板Sを搬送する。搬出ステーション24には、第2搬送装置40によって搬送された支持基板Sが載置される。
そして、剥離システム1は、第1処理ブロック10および第2処理ブロック20が、受渡ステーション21によって接続される。したがって、第1の実施形態に係る剥離システム1によれば、剥離処理および洗浄処理を含む一連の基板処理のスループットを向上させることができる。
また、第1の実施形態に係る剥離装置5は、第1保持部110と、第2保持部150と、移動機構140とを備える。第1保持部110は、DF付重合基板Tのうち支持基板Sを上方から保持する。第2保持部150は、DF付重合基板Tのうち被処理基板WをダイシングテープPを介して下方から保持する。移動機構140は、第1保持部110を第2保持部150から離す方向へ移動させる。したがって、剥離装置5によれば、剥離後の被処理基板Wを反転させる必要がないため、剥離処理の効率化を図ることができる。
また、第1の実施形態に係る剥離装置5は、第1保持部110と、第2保持部150と、局所移動部130とを備える。第1保持部110は、支持基板Sと被処理基板Wとが接合されたDF付重合基板Tのうち支持基板Sを保持する。第2保持部150は、DF付重合基板Tのうち被処理基板Wを保持する。局所移動部130は、第1保持部110の外周部の一部を第2保持部150から離す方向へ移動させる。そして、第1保持部110は、柔軟性を有する部材で形成される。したがって、剥離装置5によれば、支持基板Sと被処理基板Wとの剥離を効率よく行うことができる。
(第2の実施形態)
上述した剥離装置において、さらにDF付重合基板Tの剥離を促すために、たとえば刃物等の鋭利部材を用いてDF付重合基板Tの側面に切り込みを入れてもよい。以下では、鋭利部材を用いてDF付重合基板Tの側面に切り込みを入れる場合の例について説明する。
図14は、第2の実施形態に係る剥離装置の構成を示す摸式側面図である。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同様の部分については、既に説明した部分と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図14に示すように、第2の実施形態に係る剥離装置5Aは、第1の実施形態に係る剥離装置5の構成に加え、計測部210と、切込部220と、位置調整部230とをさらに備える。計測部210および位置調整部230は、たとえば上側ベース部120に設けられ、切込部220は、DF付重合基板Tの側方において位置調整部230によって支持される。
計測部210は、たとえばレーザ変位計であり、所定の測定基準位置から第2保持部150の保持面までの距離または測定基準位置と第2保持部150の保持面との間に介在する物体までの距離を計測する。計測部210による計測結果は、制御装置60(図1参照)へ送信される。
切込部220は、被処理基板Wと支持基板Sとの接合部分、つまり、接着剤Gの部分に対して切り込みを入れる。ここで、切込部220の構成について図15を参照して説明する。図15は、切込部220の構成を示す摸式斜視図である。
図15に示すように、切込部220は、本体部221と、鋭利部材222と、気体噴出部223とを備える。
本体部221は、重合基板T等の基板の側面に合わせて弓なりに形成される。かかる本体部221の右側部221Rには固定部224を介して鋭利部材222が取り付けられ、中央部221Cには気体噴出部223が取り付けられる。
鋭利部材222は、たとえば刃物であり、先端がDF付重合基板Tへ向けて突出するように位置調整部230に支持される。かかる鋭利部材222を被処理基板Wと支持基板Sとの接合部分である接着剤Gへ進入させ、接着剤Gに切り込みを入れることにより、DF付重合基板Tの剥離の起点を生成することができる。
第2の実施形態において、鋭利部材222は片刃の刃物であり、刃先角を形成する傾斜面が上面側、すなわち、支持基板S側に設けられる。このように、支持基板S側に鋭利部材222の傾斜面を向ける、言い換えれば、被処理基板W側に鋭利部材222の平坦面を向けることにより、鋭利部材222を接着剤Gへ進入させた場合に、製品基板である被処理基板Wへのダメージを抑えることができる。
なお、刃物としては、たとえば、カミソリ刃やローラ刃あるいは超音波カッター等を用いることができる。また、セラミック樹脂系の刃物あるいはフッ素コーティングされた刃物を用いることで、DF付重合基板Tに対して切り込みを入れた際のパーティクルの発生を抑えることができる。固定部224は、右側部221Rに対して着脱自在であり、切込部220は、固定部224を取り替えることにより、鋭利部材222の交換を容易に行うことができる。
なお、ここでは、本体部221の右側部221Rにのみ鋭利部材222を取り付けた場合の例を示したが、切込部220は、本体部221の左側部221Lにも鋭利部材222を備えていてもよい。切込部220は、右側部221Rと左側部221Lとで、異なる種類の鋭利部材222を備えていてもよい。
気体噴出部223は、鋭利部材222によって切り込みが入れられた接合部分の切り込み箇所へ向けて空気や不活性ガス等の気体を噴出する。すなわち、気体噴出部223は、鋭利部材222による切り込み箇所からDF付重合基板Tの内部へ気体を注入することにより、DF付重合基板Tの剥離をさらに促進させる。
図14に戻り、位置調整部230について説明する。位置調整部230は、駆動装置231とロードセル232とを備える。駆動装置231は、切込部220を鉛直方向または水平方向に沿って移動させる。位置調整部230は、かかる駆動装置231を用いて切込部220を鉛直方向へ移動させることにより、切込部220の接着剤Gへの切り込み位置を調整する。また、位置調整部230は、駆動装置231を用いて切込部220を水平方向へ移動させることにより、鋭利部材222の先端を接着剤Gへ進入させる。また、ロードセル232は、切込部220にかかる負荷を検知する。
鋭利部材222の接着剤Gへの進入は、上記駆動装置231およびロードセル232を用いて制御されるが、かかる点については、後述する。
また、第2の実施形態に係る制御装置60(図1参照)は、図示しない記憶部に、外部装置によって予め取得されたDF付重合基板Tの厚みに関する情報(以下、「事前厚み情報」と記載する)を記憶する。かかる事前厚み情報には、DF付重合基板Tの厚み、被処理基板Wの厚み、支持基板Sの厚み、接着剤Gの厚みおよびダイシングテープPの厚みが含まれる。
制御装置60は、計測部210から取得した計測結果と、記憶部に記憶された事前厚み情報とに基づき、接着剤Gの厚み範囲内に収まるように切込部220の切り込み位置を決定する。そして、制御装置60は、決定した切り込み位置に鋭利部材222の先端が位置するように位置調整部230を制御して切込部220を移動させる。かかる位置調整処理の具体的な内容については、後述する。
フレーム保持部160は、図14に示すように、第2保持部150よりも低い位置でダイシングフレームFを保持する。これにより、第2保持部150に保持されたDF付重合基板Tへ向けて切込部220が移動するためのスペースを確保することができる。
次に、第2の実施形態に係る剥離装置5Aが実行する切込部220の位置調整処理について図16および図17A,17Bを参照して説明する。図16は、切込部220の位置調整処理の処理手順を示すフローチャートである。また、図17Aおよび図17Bは、剥離装置5Aの動作説明図である。なお、剥離装置5Aは、制御装置60の制御に基づき、図16に示す各処理手順を実行する。
図16に示すように、剥離装置5Aは、まず、切込部診断処理を行う(ステップS301)。かかる切込部診断処理では、計測部210を用い、鋭利部材222の損傷(たとえば、刃こぼれ等)の有無が診断される。
具体的には、図17Aに示すように、剥離装置5Aは、位置調整部230を用いて切込部220を水平方向へ移動させながら、計測部210を用いて鋭利部材222の上面までの距離D1を計測し、計測結果を制御装置60へ送信する。そして、制御装置60は、たとえば距離D1の変化率が所定の範囲を超える場合、あるいは、新品の鋭利部材222を用いて予め計測しておいた基準距離と距離D1との誤差が所定の範囲を超える場合に、鋭利部材222が損傷していると判定する。
ステップS301の切込部診断処理において鋭利部材222が損傷していると判定された場合(ステップS302,Yes)、剥離装置5Aは、その後の処理を中止する(ステップS303)。このように、剥離装置5Aは、切込部220を水平移動させた場合における、測定基準位置から切込部220までの距離D1の変化に基づいて鋭利部材222の損傷を検出する。これにより、損傷した鋭利部材222を用いてDF付重合基板Tへの切り込みを行うことで、被処理基板Wにダメージを与えてしまうことを未然に防ぐことができる。
一方、ステップS301の切込部診断処理において鋭利部材222の損傷が検出されなかった場合(ステップS302,No)、剥離装置5Aは、計測部210を用いて第2保持部150の保持面までの距離D2(図17B参照)を計測する(ステップS304)。このとき、剥離装置5Aには、DF付重合基板Tが未だ搬入されていない状態である。
なお、図17Bに示すDF付重合基板Tの厚みD4、被処理基板Wの厚みD4w、接着剤Gの厚みD4g、支持基板Sの厚みD4sおよびダイシングテープPの厚みD4pは、事前厚み情報として制御装置60の記憶部に記憶された情報である。
つづいて、剥離装置5Aは、第1搬送装置30によって剥離ステーション15へ搬入されたDF付重合基板TのダイシングフレームFをフレーム保持部160を用いて下方から吸着保持する(ステップS305)。さらに、剥離装置5Aは、移動機構163(図6参照)を用いてフレーム保持部160を降下させる(ステップS306)。これにより、DF付重合基板Tのうちの被処理基板Wが、ダイシングテープPを介して第2保持部150に当接する。その後、剥離装置5Aは、第2保持部150を用いてDF付重合基板TをダイシングテープPを介して吸着保持する(ステップS307)。これにより、DF付重合基板Tは、第2保持部150によって被処理基板Wが保持され、フレーム保持部160によってダイシングフレームFが保持された状態となる。
その後、剥離装置5Aは、第2保持部150によって吸着保持されたDF付重合基板Tの上面、すなわち、支持基板Sの非接合面Snまでの距離D3(図17B参照)を計測する(ステップS308)。かかる計測結果は、制御装置60へ送信される。制御装置60は、計測部210の計測結果より算出されるDF付重合基板Tの厚み(D2−D3)と、事前厚み情報に含まれるDF付重合基板Tの厚み(D4)との差が所定範囲内であるか否かを判定する。
ここで、計測部210の計測結果より算出されるDF付重合基板Tの厚み(D2−D3)と、事前厚み情報(D4)との誤差が所定範囲を超える場合には、たとえば本来搬入されるべきDF付重合基板Tとは異なるDF付重合基板Tが誤って搬入された可能性がある。このような場合には、事前厚み情報に基づき算出される接着剤Gの厚み範囲が実際の厚み範囲からずれ、鋭利部材222の先端が被処理基板Wや支持基板Sに接触して被処理基板Wや支持基板Sが損傷するおそれがある。このため、計測部210の計測結果を用いて算出されるDF付重合基板Tの厚みと、事前厚み情報に含まれるDF付重合基板Tの厚みとの誤差が所定範囲内を超える場合には(ステップS309,No)、剥離装置5Aは、その後の処理を中止する(ステップS303)。
一方、事前厚み情報との誤差が所定範囲内である場合(ステップS309,Yes)、制御装置60は、被処理基板Wと支持基板Sとの接合部分である接着剤Gの厚み範囲を事前厚み情報に基づいて算出する。
たとえば、図17Bに示すように、計測部210の測定基準位置から第1保持部110の保持面、すなわち、吸着パッド112の下面までの距離をD5とすると、第1保持部110によってDF付重合基板Tが吸着保持された場合における接着剤Gの厚み範囲は、D5+D4w〜D5+D4w+D4gとなる。そして、制御装置60は、かかる厚み範囲内に切込部220の切り込み位置を決定する。たとえば、制御装置60は、上記厚み範囲の中央であるD5+D4w+D4g/2を切り込み位置として決定する。なお、測定基準位置から本体部111の下面までの距離D5は、図示しない記憶部に予め記憶されているものとする。
制御装置60によって切込部220の切り込み位置が決定されると、剥離装置5Aは、制御装置60の制御に基づき、位置調整部230を用いて切込部220を移動させることによって、接着剤Gの厚み範囲内に切込部220の切り込み位置を調整する(ステップS310)。すなわち、剥離装置5Aは、制御装置60によって決定された切り込み位置に鋭利部材222の先端が位置するように、位置調整部230を用いて切込部220を鉛直方向に移動させる。
その後、剥離装置5Aは、図9のステップS204以降の処理を行う。そして、剥離装置5Aは、ステップS206において局所移動部130を用いて第1保持部110の外周部の一部を引っ張る際に、位置調整部230を用いて切込部220を水平移動させることによって鋭利部材222を接着剤Gへ進入させる。これにより、被処理基板Wと支持基板Sとの接合部分である接着剤Gに切り込みが入り、局所移動部130によるDF付重合基板Tの剥離が促進される。
なお、鋭利部材222の接着剤Gへの進入距離は、たとえば2mm程度である。また、鋭利部材222を接着剤Gへ進入させるタイミングは、ステップS205とステップS206との間でもよいし、ステップS206とステップS207との間でもよし、ステップS206と同時でもよい。
また、上述したように、鋭利部材222の接着剤Gへの進入は、上記駆動装置231およびロードセル232を用いて制御される。具体的には、鋭利部材222は、駆動装置231によって所定の速度で接着剤Gへ進入する。また、切り込み開始位置(鋭利部材222の先端が接着剤Gに接触した位置)がロードセル232によって検知され、かかる切り込み開始位置から予めプログラムされた量だけ、駆動装置231を用いて鋭利部材222を進入させる。
このように、第2の実施形態に係る剥離装置5Aは、切込部220による接着剤Gへの切り込みを行うことにより、DF付重合基板Tの剥離の起点を生成することができる。
また、第2の実施形態に係る剥離装置5Aは、計測部210の計測結果と事前厚み情報とに基づいて切込部220の位置を調整することとしたため、鋭利部材222の先端を接着剤Gへより確実に進入させることができる。
すなわち、被処理基板W、支持基板Sおよび接着剤Gは非常に薄いため、切込部220の位置合わせを肉眼で行うことは困難である。これに対し、計測部210を用いることとすれば、接着剤Gの位置を容易に且つ正確に検出して切込部220の切り込み位置を合わせることができる。また、カメラ等による画像認識によって切り込み位置を確認することも考えられるが、重合基板T等の基板の側面部は曲面であるため焦点が合い難く、基板からの反射があり、接着剤Gも透明であるため、画像認識により接着剤Gの位置を確認することは難しい。これに対し、計測部210を用いることとすれば、上記のような問題点を生じることなく、接着剤Gの位置を容易に確認することができる。
また、切込部220は、測定基準位置から第2保持部150の保持面までの距離D2と測定基準位置から第1保持部110に保持されたDF付重合基板Tまでの距離D3とを用いて算出されるDF付重合基板Tの厚みと、予め取得されたDF付重合基板Tの厚みとの差が所定の範囲内である場合に、接着剤Gへの切り込みを行う。これにより、鋭利部材222による被処理基板Wや支持基板Sの損傷を未然に防ぐことができる。
なお、ここでは、鋭利部材222が片刃の刃物である場合の例について説明したが、鋭利部材は両刃の刃物であってもよい。また、必ずしも刃物である必要はなく、皮下針等の管状の針体やワイヤー等であってもよい。
ところで、第2の実施形態に係る剥離装置5Aは、計測部210を用いて、第2保持部150の傾きを検出することもできる。具体的には、剥離装置5Aは、第2保持部150を回転機構180によって回転させながら、測定基準位置から第2保持部150の保持面までの距離D2(図17B参照)を計測する。そして、剥離装置5Aは、かかる距離D2の変化量が所定以上である場合、たとえば20μm以上である場合には、第2保持部150の保持面が傾斜していると判定し、その後の処理を中止する。
このように、剥離装置5Aは、第2保持部150を回転させた場合における、測定基準位置から第2保持部150の保持面までの距離D2の変化に基づいて第2保持部150の保持面の傾斜を検出することもできる。
第2保持部150の保持面が傾斜している場合、事前厚み情報を用いて算出される接着剤Gの厚み範囲と実際の接着剤Gの厚み範囲とに誤差が生じ、鋭利部材222を接着剤Gに対して適切に進入させることができない可能性がある。そこで、第2保持部150の保持面が傾斜している場合に、その後の処理を中止することで、鋭利部材222による被処理基板Wや支持基板Sの損傷を未然に防ぐことができる。なお、第2保持部150の傾きを検出する処理は、DF付重合基板Tが剥離装置5Aへ搬入される前に行えばよい。
(第3の実施形態)
ところで、上述してきた剥離装置は、第1保持部が、中心から径方向に伸びる複数の線と、複数の円弧とによって吸着領域が分割された吸着パッド112(図7B参照)を備える場合の例について説明した。しかし、第1保持部が備える吸着パッドの構成は、これに限ったものではない。そこで、以下では、第1保持部が備える吸着パッドの他の構成例について図18A〜18Cを参照して説明する。図18A〜18Cは、吸着パッドの他の構成例を示す摸式平面図である。
図18Aに示すように、吸着パッド112Aの吸着領域は、剥離の進行方向dに対して直交する線で分割されてもよい。図18Aに示す例では、吸着パッド112Aの吸着領域が、剥離の進行方向dに対して直交する2つの直線L3,L4によって個別領域R5〜R7に分割される。
このように、吸着パッドの吸着領域は、剥離の進行方向に対して直交する線で分割されてもよい。なお、かかる構成の吸着パッドは、一方向から剥離する場合に好適である。
なお、図7Bに示す吸着パッド112と同様、吸着パッド112Aの各個別領域R5〜R7には、吸気口114a〜114cがそれぞれ形成され、各吸気口114a〜114cは、吸気管を介して吸気装置へ接続される。これにより、図7Bに示す吸着パッド112同様、支持基板Sを適切に保持しておくことができる。
また、図7Bに示す吸着パッド112と同様、各個別領域R5〜R7は、剥離の進行方向dの基端側に設けられる個別領域R5よりも進行方向dの先端側に設けられる個別領域R7が大きく形成される。これにより、図7Bに示す吸着パッド112と同様、剥離動作中における支持基板Sの第1保持部110からの剥がれ落ちを防止することができる。
ここでは、吸着パッド112Aの吸着領域を3つの個別領域R5〜R7に分割する場合の例を示したが、吸着領域の分割数は、3つに限定されない。
また、図18Bに示すように、吸着パッド112Bの吸着領域は、格子状に分割されてもよい。図18Bでは、吸着パッド112Bの吸着領域が9つの個別領域R8〜R15に分割される場合の例を示している。図7Bに示す吸着パッド112と同様、各個別領域R8〜R15には、吸気口115a〜115iがそれぞれ形成され、各吸気口115a〜115iは、吸気管を介して吸気装置へ接続される。
このように、吸着パッドの吸着領域は、格子状に分割されてもよい。なお、ここでは、吸着パッド112Bの吸着領域を分割する直線が、剥離の進行方向dに対して斜めである場合の例を示したが、吸着パッドは、剥離の進行方向dに対して平行な直線と、剥離の進行方向dに直行する直線とによって格子状に分割されてもよい。
また、上述してきた各実施形態では、剥離の進行方向が1方向である場合の例について説明したが、局所移動部130を複数設けることによって複数の方向から剥離を行なってもよい。
かかる場合には、図18Cに示すように、中心から径方向に伸びる複数の線によって吸着パッドの吸着領域を剥離の進行方向d1〜d3ごとに分割し、さらに、進行方向ごとに分割された各吸着領域を円弧によってさらに複数の個別領域に分割してもよい。たとえば、図18Cに示す吸着パッド112Cの吸着領域は、剥離の進行方向d1〜d3ごとに3つに分割され、さらに、各進行方向に対応する吸着領域が円弧によって3つの分割領域に分割されている。
具体的には、進行方向d1に対応する吸着領域は、個別領域R17〜R19に分割され、進行方向d2に対応する吸着領域は、個別領域R20〜R22に分割され、進行方向d3に対応する吸着領域は、個別領域R23〜R25に分割される。各個別領域R17〜R25には、吸気口116a〜116c、117a〜117c、118a〜118cがそれぞれ形成され、各吸気口116a〜116c、117a〜117c、118a〜118cは、吸気管を介して吸気装置へ接続される。なお、吸気口116a〜116c、117a〜117c、118a〜118cは、単一の吸気装置に接続されてもよいし、剥離の進行方向d1〜d3ごとに設けられた吸気装置にそれぞれ接続されてもよい。
ところで、重合基板Tには、結晶方向、反り方向、パターン等によって最適な切り込み方向がある。そこで、第2の実施形態では、重合基板Tの種類に応じて鋭利部材222の周方向の位置を変更することとしてもよい。かかる場合、たとえば、ダイシングフレームFをフレーム保持部160(図14参照)で保持した後、回転機構180を所定の位置に回転させることによって鋭利部材222の周方向における切り込み位置を調整し、その後、鋭利部材222を進入させればよい。これにより、鋭利部材222を周方向の任意の位置に設定することができるため、いかなる種類の重合基板Tであっても、その重合基板Tに応じた最適な位置で切り込みを入れることができる。なお、重合基板Tの剥離後は、再び回転機構180を回転させて元の回転位置に戻す。
また、第1の回転位置において剥離不能の場合、回転機構180を第2の回転位置に回転させて剥離をトライすることも可能である。剥離不能か否かは、たとえば、第1保持部110および第2保持部150による吸着保持が外れた場合や、回転機構180の駆動部にモータを用いた場合にはモータの過負荷などで判定することができる。このようなリトライ機能を設けることで、接着剤Gの部分的変質や第1保持部110・第2保持部150による剥離不能状態が生じた場合であっても、剥離処理を中断することなく完遂させることができる。
上述した実施形態では、被処理基板Wと支持基板Sとを接着剤Gを用いて接合する場合の例について説明したが、接合面Wj,Sjを複数の領域に分け、領域ごとに異なる接着力の接着剤を塗布してもよい。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。