JP2016060685A - 立方晶型サイアロン、焼結体、焼結体を備える工具、立方晶型サイアロンの製造方法および焼結体の製造方法 - Google Patents

立方晶型サイアロン、焼結体、焼結体を備える工具、立方晶型サイアロンの製造方法および焼結体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】焼結体の材料として用いた場合に焼結体の耐摩耗性および耐欠損性を向上することのできる立方晶型サイアロン、立方晶型サイアロンを含む焼結体、焼結体を備える工具、立方晶型サイアロンの製造方法および焼結体の製造方法を提供する。【解決手段】立方晶型サイアロンは、下記式(1)MxSi(6−x−y)AlyOyN(8−y)・・・(1)(式(1)中、Mはカルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属であり、0.01≦x≦2、0.01≦y≦4.2および1.79≦(6−x−y)≦5.98の関係を満たす)で表わされる。【選択図】なし

Description

本発明は、立方晶型サイアロン、焼結体、焼結体を備える工具、立方晶型サイアロンの製造方法および焼結体の製造方法に関する。
サイアロン(以下、SiAlONともいう)は、窒化珪素にアルミニウムと酸素が固溶した構造を有している。サイアロンは結晶構造により、六方晶系に属するα型サイアロンおよびβ型サイアロンに分類される。さらに、β型サイアロンを衝撃波によって瞬間的に加圧することによって、立方晶系に属する立方晶型サイアロンを合成できることが知られている。立方晶型サイアロンはβ型サイアロンの高圧相であることから、β型サイアロンよりも密度が増加し、硬度が高くなっている。
サイアロンを用いた焼結体は、被加工材との反応性が低いという特性を有するため、切削工具用材料としての研究が進められている。
たとえば、特許文献1(特開2011−256067号公報)には、立方晶型サイアロンと、β型サイアロンと、第1化合物および第2化合物の少なくともいずれかとを含む焼結体であって、前記第1化合物は、鉄、コバルト、ニッケル、周期律表の第4a族元素、第5a族元素、および第6a族元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、前記第2化合物は、第4a族元素、第5a族元素、および第6a族元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素および硼素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる少なくとも1種の化合物である焼結体が開示されている。
特許文献2(特開2013−234093号公報)には、α型サイアロンおよびβ型サイアロンの少なくともいずれかと、立方晶型サイアロン(γ型サイアロン)とを含むサイアロン基粒子を含む焼結体が開示されている。
特開2011−256067号公報 特開2013−234093号公報
特許文献1および特許文献2の技術は、高硬度の立方晶型サイアロンとともに、立方晶型サイアロンよりも硬度の低いα型サイアロン、β型サイアロン、第1化合物、第2化合物などを含むため、焼結体の耐摩耗性が低下するという問題がある。
そこで、本目的は、焼結体の材料として用いた場合に焼結体の耐摩耗性および耐欠損性を向上することのできる立方晶型サイアロン、立方晶型サイアロンを含む焼結体、焼結体を備える工具、立方晶型サイアロンの製造方法および焼結体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る立方晶型サイアロンは、下記式(1)
Si(6−x−y)Al(8−y)・・・(1)
(式(1)中、Mはカルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属であり、0.01≦x≦2、0.01≦y≦4.2および1.79≦(6−x−y)≦5.98の関係を満たす)
で表わされる、立方晶型サイアロンである。
本発明の一態様に係る焼結体は、上記の立方晶型サイアロンを20体積%以上100体積%以下含む、焼結体である。
本発明の一態様に係る切削工具は、上記の焼結体を備える切削工具である。
本発明の一態様に係る立方晶型サイアロンの製造方法は、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属、珪素およびアルミニウムを含む第1粒子群を準備する工程と、第1粒子群を熱処理して、第1金属、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含む第2粒子群を作製する工程と、第2粒子群を衝撃圧縮法または静圧合成法により処理して、立方晶型サイアロンを作製する工程とを備え、立方晶型サイアロンは、下記式(1)
Si(6−x−y)Al(8−y)・・・(1)
(式(1)中、Mはカルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属であり、0.01≦y≦4.2および1.79≦(6−x−y)≦5.98の関係を満たす)で表わされる、立方晶型サイアロンの製造方法である。
本発明の一態様に係る焼結体の製造方法は、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属、珪素およびアルミニウムを含む第1粒子群を準備する工程と第1粒子群を熱処理して、第1金属、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含む第2粒子群を作製する工程と、第2粒子群を衝撃圧縮法または静圧合成法により処理して、立方晶型サイアロンを作製する工程と、立方晶型サイアロンを20体積%以上100体積%以下含む第3粒子群を準備する工程と、第3粒子群を焼結して焼結体を得る工程とを備え、立方晶型サイアロンは、下記式(1)
Si(6−x−y)Al(8−y)・・・(1)
(式(1)中、Mはカルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属であり、0.01≦y≦4.2および1.79≦(6−x−y)≦5.98の関係を満たす)で表わされる、焼結体の製造方法である。
上記態様によれば、焼結体の材料として用いた場合に焼結体の耐摩耗性および耐欠損性を向上することのできる立方晶型サイアロン、立方晶型サイアロンを含む焼結体、焼結体を備える工具、立方晶型サイアロンの製造方法および焼結体の製造方法を提供することができる。
本発明の一態様に係る立方晶型サイアロンの製造方法を示すフロー図である。 本発明の一態様に係る焼結体の製造方法を示すフロー図である。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係る立方晶型サイアロンは、下記式(1)
Si(6−x−y)Al(8−y)・・・(1)
(式(1)中、Mはカルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属であり、0.01≦x≦2、0.01≦y≦4.2および1.79≦(6−x−y)≦5.98の関係を満たす)
で表わされる、立方晶型サイアロンである。
本発明の一態様に係る立方晶型サイアロンは、焼結体の材料として用いた場合に焼結体の耐摩耗性を向上することができる。この理由については、以下の通り推察される。前記式(1)で表される立方晶型サイアロンは、立方晶型サイアロンにカルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属を固溶して得られるため、立方晶型サイアロンの粒子内に残留応力が付与されている。したがって、本発明の一態様に係る立方晶型サイアロンは、第1金属が固溶されていない従来の立方晶型サイアロン以上の硬度を有し、更に亀裂伝播抵抗性が向上する。よって、本発明の一態様に係る立方晶型サイアロンを焼結体の材料として用いた場合、焼結体は機械的な擦過に対して優れた耐摩耗性および耐欠損性を示すと考えられる。
本発明の一態様に係る立方晶型サイアロンは、焼結体の材料として用いた場合に焼結体の耐欠損性を向上することができる。この理由については、以下の通り推察される。前記第1金属が立方晶サイアロン粒子内に均一に分散することにより、粒子内の亀裂伝播の抵抗を高めることが出来る。したがって、本発明の一態様に係る立方晶型サイアロンは、第1金属が分散されていない従来の立方晶型サイアロン以上の亀裂伝播抵抗を有する。よって、本発明の一態様に係る立方晶型サイアロンを焼結体の材料として用いた場合、焼結体は断続切削に対し優れた耐欠損性を示すと考えられる。
(2)前記立方晶型サイアロンは、前記第1金属単体を0.01質量%以上5質量%以下含むことが好ましい。これによると、立方晶サイアロン粒子内に均一に分散した前記第1金属により、耐欠損性の向上効果を得ることができる。
(3)本発明の一態様に係る焼結体は、上記(1)または(2)に記載の立方晶型サイアロンを20体積%以上100体積%以下含む。前記焼結体は、機械的な擦過に対して優れた耐摩耗性および耐欠損性を有することができる。
(4)前記焼結体は、上記(1)または(2)に記載の立方晶型サイアロンと、第2金属および第1化合物のいずれか一方または両方とを含む焼結体であって、前記第2金属は、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、前記第1化合物は、アルミニウム、硼素、珪素、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、カルシウム、イットリウム、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の第1元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の第2元素とからなる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
第2金属および第1化合物は、焼結体において結合相の役割を果たす。したがって、焼結体が第2金属および第1化合物のいずれか一方または両方を含むと、機械的な擦過に対して優れた耐摩耗性および耐欠損性を有することができる。
(5)本発明の一態様に係る切削工具は、上記(3)または(4)に記載の焼結体を備える切削工具である。
前記焼結体は、耐摩耗性および耐欠損性が優れているため、これを用いた切削工具もまた、耐摩耗性および耐欠損性が優れている。したがって、本発明の一態様に係る切削工具は、従来と比して長寿命を有することができる。
(6)カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属、珪素、およびアルミニウムを含む第1粒子群を準備する工程と、前記第1粒子群を熱処理して、前記第1金属、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含む第2粒子群を作製する工程と、前記第2粒子群を衝撃圧縮法または静圧合成法により処理して、立方晶型サイアロンを作製する工程とを備え、前記立方晶型サイアロンは、下記式(1)
Si(6−x−y)Al(8−y)・・・(1)
(式(1)中、Mはカルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属であり、0.01≦y≦4.2および1.79≦(6−x−y)≦5.98の関係を満たす)で表わされる、立方晶型サイアロンの製造方法である。
これにより得られた立方晶型サイアロンは、焼結体の材料として用いた場合、焼結体の耐摩耗性および耐欠損性を向上することができる。
(7)本発明の一態様に係る焼結体の製造方法は、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属、珪素およびアルミニウムを含む第1粒子群を準備する工程と、前記第1粒子群を熱処理して、前記第1金属、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含む第2粒子群を作製する工程と、前記第2粒子群を衝撃圧縮法または静圧合成法により処理して、立方晶型サイアロンを作製する工程と、前記立方晶型サイアロンを20体積%以上100体積%以下含む第3粒子群を準備する工程と、前記第3粒子群を焼結して焼結体を得る工程とを備え、前記立方晶型サイアロンは、下記式(1)
Si(6−x−y)Al(8−y)・・・(1)
(式(1)中、Mはカルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属であり、0.01≦y≦4.2および1.79≦(6−x−y)≦5.98の関係を満たす)で表わされる、焼結体の製造方法である。
これにより得られた焼結体は、機械的な擦過に対して優れた耐摩耗性および耐欠損性を示すことができる。
(8)前記焼結体の製造方法において、前記第3粒子群は、前記立方晶型サイアロンと、第2金属および第1化合物のいずれか一方または両方とを含み、前記第2金属は、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、前記第1化合物は、アルミニウム、硼素、珪素、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、カルシウム、イットリウム、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の第1元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の第2元素とからなる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
第2金属および第1化合物は、焼結体において結合相の役割を果たす。したがって、第2金属および第1化合物のいずれか一方または両方を用いて焼結体を作製することにより、得られた焼結体は、機械的な擦過に対して優れた耐摩耗性および耐欠損性を有することができる。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態について、以下に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本明細書において「金属」とは、特に説明がない限り、1種の金属元素からなる単体金属に限定されるものではなく、2種以上の金属元素からなる合金を含む。また、本明細書において「化合物」とは、1種以上の金属元素と1種以上の非金属元素とからなる化合物を示す。なお、非金属元素としては、炭素、窒素、酸素および硼素が挙げられる。
本明細書において記載される化学式において特に原子比が規定されない場合は、各元素の原子比は必ずしも等比となるものではなく、従来公知の原子比が全て含まれるものとする。たとえばTiNと記す場合、TiとNとの原子比は1:1が含まれる他、2:1、1:0.95、1:0.9などが含まれる。
<第1の実施形態>
第1の実施形態に係る立方晶型サイアロンは、下記式(1)
Si(6−x−y)Al(8−y)・・・(1)
(式(1)中、Mはカルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属であり、0.01≦x≦2、0.01≦y≦4.2および1.79≦(6−x−y)≦5.98の関係を満たす)
で表わされる。
前記式(1)で表わされる立方晶型サイアロンは、従来の立方晶型サイアロンとは構成が大きく異なる。
従来の立方晶型サイアロンは、たとえば、アルミン酸マグネシウム(MgAl)からなる立方晶系に属する鉱物であるスピネルと同様の結晶構造を有し、一般式Si(6−x)Al(8−x)(0<x≦4.2)で表わされる。
一方、第1の実施形態に係る立方晶型サイアロンは、従来の立方晶型サイアロンに、さらに、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属が固溶した構造を有している。
本明細書において、ランタノイドは、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)およびルテチウム(Lu)を含む。本明細書において、周期表の第4族元素は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)を含み、第5族元素はバナジウム(V)、ニオブ(Nb)およびタンタル(Ta)を含み、第6族元素はクロム(Cr)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)を含む。
第1金属は、珪素およびアルミニウムよりも原子半径が大きい。本実施形態の立方晶型サイアロンは、珪素およびアルミニウムと異なる原子半径を有する第1金属が固溶しているため、粒子内に残留応力が付与されている。したがって、立方晶型サイアロンは、立方晶型サイアロン以上の硬度有し、更に、亀裂伝播抵抗性が向上する。よって、前記立方晶型サイアロンを焼結体の材料として用いた場合、焼結体は機械的な擦過に対して優れた耐摩耗性および耐欠損性を示すと考えられる。
本実施形態の立方晶型サイアロンは、下記式(1)中、
Si(6−x−y)Al(8−y)・・・(1)
0.01≦x≦2、0.01≦y≦4.2および1.79≦(6−x−y)≦5.98の関係を満たす。
前記式(1)中、xが0.01未満であると、立方晶型サイアロン中の残存応力が不足するため、耐摩耗性の向上効果が得られにくい。また、x=2は第1金属の固溶限界値を示している。xの範囲は、0.1≦x≦1.5が好ましく、0.5≦x≦1がさらに好ましい。
yが0.01未満であると、切削に適する化学的安定性や機械的強度が劣る。また、yが4.2はAlの固溶限界値を示している。yの範囲は、0.1≦y≦4が好ましく、0.5≦y≦3がさらに好ましい。
(6−x−y)=1.79は、Siの置換上限である。(6−x−y)の値が5.98を超えると、切削に適する化学的安定性や機械的強度が劣る。(6−x−y)の値の範囲は、2≦(6−x−y)≦5.5が好ましく、3≦(6−x−y)≦5がさらに好ましい。
前記立方晶型サイアロンは、前記第1金属単体を0.01質量%以上5質量%以下含むことが好ましい。立方晶サイアロン粒子内に均一に分散した前記第1金属が0.01質量%未満であった場合、耐欠損性の上昇効果はほぼ見られない。また5質量%以上であった場合、サイアロン粒子の硬度が低下するため機械的な擦過に対する耐摩耗性は下がる。立方晶型サイアロン中の分散した第1金属単体の量は0.05質量%以上4質量%以下が好ましく、0.1質量%以上、3質量%以下がより好ましい。
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る焼結体は、第1の実施形態の立方晶型サイアロンを20体積%以上100体積%以下含む。前記焼結体は、機械的な擦過に対して優れた耐摩耗性および耐欠損性を有することができる。
焼結体中の立方晶型サイアロンの含有量が20体積%以上であると、焼結体の耐摩耗性および耐欠損性が向上する。焼結体中の立方晶型サイアロンの含有量は、50体積%以上100体積%以下が好ましく、50体積%以上90体積%以下がさらに好ましく、50体積%以上80体積%以下がさらに好ましい。
前記焼結体は、立方晶型サイアロンと、第2金属および第1化合物のいずれか一方または両方とを含む焼結体であって、前記第2金属は、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、前記第1化合物は、アルミニウム、硼素、珪素、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、カルシウム、イットリウム、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の第1元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の第2元素とからなる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
焼結体中の第2金属および第1化合物は、隣り合う立方晶型サイアロン同士の界面に存在し、結合相の役割を果たす。結合相は、立方晶型サイアロン同士を強固に結合することができるため、焼結体はさらに優れた耐摩耗性および耐欠損性を有することができる。
また、焼結体に結合相が含まれることにより、焼結体は立方晶型サイアロンの特性に起因する特性に加え、さらに結合相に起因する特性を有することができる。したがって、結合相の組成を適宜調整することにより、焼結体は、様々な切削条件に必要とされる各ニーズに柔軟に対応することができる。たとえば、結合相が立方晶窒化ホウ素を含む場合、立方晶窒化ホウ素は極めて高い硬度を有するため、立方晶窒化ホウ素を含む結合相を有する焼結体は、高い硬度を有することができる。
第2金属として、たとえば、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅などの1種類からなる金属や、これらの金属を含む合金を用いることができる。第2金属は1種類を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第1化合物として、たとえば、第1元素の炭化物、窒化物、酸化物、硼化物を用いることができる。
第1元素の炭化物として、たとえば、炭化ケイ素(SiC)、炭化チタン(TiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化ハフニウム(HfC)、炭化バナジウム(VC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化タンタル(TaC)、炭化クロム(Cr)、炭化モリブデン(MoC)、および炭化タングステン(WC)などを用いることができる。
第1元素の窒化物として、たとえば、窒化硼素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si)、窒化チタン(TiN)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化ハフニウム(HfN)、窒化バナジウム(VN)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タンタル(TaN)、窒化クロム(CrN)、窒化モリブデン(MoN)、および窒化タングステン(WN)、窒化チタンジルコニウム(TiZrN)、窒化チタンハフニウム(TiHfN)、窒化チタンバナジウム(TiVN)、窒化チタンニオブ(TiNbN)、窒化チタンタンタル(TiTaN)、窒化チタンクロム(TiCrN)、窒化チタンモリブデン(TiMoN)、窒化チタンタングステン(TiWN)、窒化ジルコニウムハフニウム(ZrHfN)、窒化ジルコニウムバナジウム(ZrVN)、窒化ジルコニウムニオブ(ZrNbN)、窒化ジルコニウムタンタル(ZrTaN)、窒化ジルコニウムクロム(ZrCrN)、窒化ジルコニウムモリブデン(ZrMoN)、窒化ジルコニウムタングステン(ZrWN)、窒化ハフニウムバナジウム(HfVN)、窒化ハフニウムニオブ(HfNbN)、窒化ハフニウムタンタル(HfTaN)、窒化ハフニウムクロム(HfCrN)、窒化ハフニウムモリブデン(HfMoN)、窒化ハフニウムタングステン(HfWN)、窒化バナジウムニオブ(VNbN)、窒化バナジウムタンタル(VTaN)、窒化バナジウムクロム(VCrN)、窒化バナジウムモリブデン(VMoN)、窒化バナジウムタングステン(VWN)、窒化ニオブタンタル(NbTaN)、窒化ニオブクロム(NbCrN)、窒化ニオブモリブデン(NbMoN)、窒化ニオブタングステン(NbWN)、窒化タンタルクロム(TaCrN)、窒化タンタルモリブデン(TaMoN)、窒化タンタルタングステン(TaWN)、窒化クロムモリブデン(CrMoN)、窒化クロムタングステン(CrWN)、および窒化モリブデンクロム(MoWN)を用いることができる。
第1元素の酸化物として、たとえば、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化カルシウム(CaO)酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化バナジウム(V)、酸化ニオブ(Nb)、酸化タンタル(Ta)、酸化クロム(Cr)、酸化モリブデン(MoO)、および酸化タングステン(WO)を用いることができる。
第1元素の硼化物として、たとえば、硼化珪素(SiB)、硼化アルミニウム(AlB12)、硼化チタン(TiB)、硼化ジルコニウム(ZrB)、硼化ハフニウム(HfB)、硼化バナジウム(VB)、硼化ニオブ(NbB)、硼化タンタル(TaB)、硼化クロム(CrB)、硼化モリブデン(MoB)および硼化タングステン(WB)を用いることができる。
第1化合物は1種類を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
焼結体中の第2金属および第1化合物の合計の含有量は0体積%を超え、かつ50体積%以下が好ましく、10体積%以上50体積%以下がさらに好ましく、20体積%以上50体積%以下がさらに好ましい。焼結体中の第2金属および第1化合物の合計の含有量が0体積%を超え、かつ50体積%以下であると、焼結体の耐摩耗性および耐欠損性が向上する。
<第3の実施形態>
第3の実施形態に係る切削工具は、第2の実施形態に係る焼結体を用いた工具である。上述のように、上記式(1)で示される立方晶型サイアロンを含む焼結体は、耐摩耗性および耐欠損性に優れるため、これを用いた工具もまた、これらの特性に優れることとなる。
第3の実施形態に係る切削工具としては、たとえば、ドリル、エンドミル、フライス加工用刃先交換型切削チップ、旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切り工具、リーマまたはタップを例示することができる。また、切削工具は、その全体が上記焼結体により構成されていてもよく、その一部(たとえば、刃先部分)が上記焼結体により構成されていてもよい。
切削工具の全体が上記焼結体からなる場合、焼結体を所望の形状に加工することにより、切削工具を作製することができる。焼結体の加工は、たとえば、レーザーまたはワイヤー放電によって行うことができる。また、切削工具の一部が上記焼結体からなる場合、工具を構成する基体の所望の位置に焼結体を接合することにより、切削工具を作製することができる。なお、焼結体の接合方法は特に制限されないが、基体から焼結体が離脱することを抑制する観点から、基体と焼結体との間に、基体と焼結とを強固に結合させるための接合層を介在させることが好ましい。
<第4の実施形態>
第4の実施形態に係る立方晶型サイアロンの製造方法について、図1を用いて説明する。
立方晶型サイアロンの製造方法は、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属、珪素、およびアルミニウムを含む第1粒子群を準備する工程(図1中、S1で示される。以下、「第1粒子群準備工程」ともいう)と、前記第1粒子群を熱処理して、前記第1金属、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含む第2粒子群を作製する工程(図1中、S2で示される。以下、「第2粒子群作製工程」ともいう)と、前記第2粒子群を衝撃圧縮法または静圧合成法により処理して、立方晶型サイアロンを作製する工程(図1中、S3で示される。以下、「立方晶型サイアロン作製工程」ともいう)とを備える。前記立方晶型サイアロンは、下記式(1)
Si(6−x−y)Al(8−y)・・・(1)
(式(1)中、Mはカルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属であり、0.01≦y≦4.2および1.79≦(6−x−y)≦5.98の関係を満たす)で表わされる。
(第1粒子群準備工程)
図1を参照し、第1粒子群準備工程(S1)において、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属、珪素、およびアルミニウムを含む第1粒子群を準備する。
第1粒子群は、立方晶型サイアロンの原料となる原料粒子群である。立方晶型サイアロンを構成する第1金属、珪素、アルミニウム、酸素および窒素のうち、第1金属、珪素およびアルミニウムは、第1粒子群のみから供給される。このため、第1粒子群中の第1金属、珪素およびアルミニウムの含有比率は、目的とする立方晶型サイアロン中の第1金属、珪素およびアルミニウムの含有比率と同一とする必要がある。一方、立方晶型サイアロン中の酸素および窒素は、第1粒子群から供給されるとともに、後続の工程での雰囲気(酸素雰囲気、窒素雰囲気など)から供給され得る。このため、第1粒子群中の酸素および窒素の含有比率は、立方晶型サイアロン中の酸素および窒素の含有比率と同一である必要はない。
第1粒子群には、第1金属を含む粒子、珪素を含む粒子およびアルミニウムを含む粒子が含まれる。
第1金属を含む粒子として、第1金属を構成する1種類の元素からなる粒子および第1金属を構成する2種類以上の元素からなる粒子を用いることができる。具体的には、たとえば、カルシウム粒子、ストロンチウム粒子、バリウム粒子、スカンジウム粒子、イットリウム粒子、マンガン粒子、鉄粒子、コバルト粒子、ニッケル粒子、銅粒子、ランタン粒子、セリウム粒子、プラセオジム粒子、ネオジム粒子、プロメチウム粒子、サマリウム粒子、ユウロピウム粒子、ガドリニウム粒子、テルビウム粒子、ジスプロシウム粒子、ホルミウム粒子、エルビウム粒子、ツリウム粒子、イッテルビウム粒子、ルテチウム粒子、チタン粒子、ジルコニウム粒子、ハフニウム粒子、バナジウム粒子、ニオブ粒子、タンタル粒子、クロム粒子、モリブデン粒子、タングステン粒子、チタンジルコニウム(TiZr)粒子、チタンハフニウム(TiHf)粒子、チタンバナジウム(TiV)粒子、チタンニオブ(TiNb)粒子、チタンタンタル(TiTa)粒子、チタンクロム(TiCr)粒子、チタンモリブデン(TiMo)粒子、チタンタングステン(TiW)粒子、ジルコニウムハフニウム(ZrHf)粒子、ジルコニウムバナジウム(ZrV)粒子、ジルコニウムニオブ(ZrNb)粒子、ジルコニウムタンタル(ZrTa)粒子、ジルコニウムクロム(ZrCr)粒子、ジルコニウムモリブデン(ZrMo)粒子、ジルコニウムタングステン(ZrW)粒子、ハフニウムバナジウム(HfV)粒子、ハフニウムニオブ(HfNb)粒子、ハフニウムタンタル(HfTa粒子)、ハフニウムクロム(HfCr)粒子、ハフニウムモリブデン(HfMo)粒子、ハフニウムタングステン(HfW)粒子、バナジウムニオブ(VNb)粒子、バナジウムタンタル(VTa)粒子、バナジウムクロム(VCr)粒子、バナジウムモリブデン(VMo)粒子、バナジウムタングステン(VW)粒子、ニオブタンタル(NbTa)粒子、ニオブクロム(NbCr)粒子、ニオブモリブデン(NbMo)粒子、ニオブタングステン(NbW)粒子、タンタルクロム(TaCr)粒子、タンタルモリブデン(TaMo)粒子、タンタルタングステン(TaW)粒子、クロムモリブデン(CrMo)粒子、クロムタングステン(CrW)粒子、モリブデンクロム(MoW)粒子を用いることができる。
第1金属を含む粒子として、第1金属を構成する元素の酸化物、窒化物、酸窒化物の粒子を用いることもできる。
第1金属を構成する元素の酸化物としては、たとえば、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化スカンジウム(Sc)、酸化イットリウム(Y)、酸化ランタン(La)、酸化セリウム(CeO)、酸化プラセオジム(Pr)、酸化ネオジム(Nd)、酸化プロメチウム(Pm)、酸化サマリウム(Sm)、酸化ユウロピウム(Eu)、酸化ガドリニウム(Gd)、酸化テルビウム(Tb)、酸化ジスプロシウム(Dy)、酸化ホルミウム(Ho)、酸化エルビウム(Er)、酸化ツリウム(Tm)、酸化イッテルビウム(Yb)、酸化ルテチウム(Lu)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化バナジウム(V)、酸化ニオブ(NbO)、酸化タンタル(Ta)、酸化クロム(Cr)、酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO、WO)が挙げられる。
第1金属を構成する元素の窒化物としては、たとえば、窒化カルシウム(Ca)、窒化ストロンチウム(Sr)、窒化バリウム(Ba)、窒化スカンジウム(ScN)、窒化イットリウム(YN)、窒化ランタン(LaN)、窒化セリウム(CeN)、窒化プラセオジム(PrN)、窒化ネオジム(NdN)、窒化チタン(TiN)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化ハフニウム(HfN)、窒化バナジウム(VN)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タンタル(TaN)、窒化クロム(CrN、CrN)、窒化モリブデン(MoN、MoN)、窒化タングステン(WN、WN、W)、窒化チタンジルコニウム(TiZrN)、窒化チタンハフニウム(TiHfN)、窒化チタンバナジウム(TiVN)、窒化チタンニオブ(TiNbN)、窒化チタンタンタル(TiTaN)、窒化チタンクロム(TiCrN)、窒化チタンモリブデン(TiMoN)、窒化チタンタングステン(TiWN)、窒化ジルコニウムハフニウム(ZrHfN)、窒化ジルコニウムバナジウム(ZrVN)、窒化ジルコニウムニオブ(ZrNbN)、窒化ジルコニウムタンタル(ZrTaN)、窒化ジルコニウムクロム(ZrCrN)、窒化ジルコニウムモリブデン(ZrMoN)、窒化ジルコニウムタングステン(ZrWN)、窒化ハフニウムバナジウム(HfVN)、窒化ハフニウムニオブ(HfNbN)、窒化ハフニウムタンタル(HfTaN)、窒化ハフニウムクロム(HfCrN)、窒化ハフニウムモリブデン(HfMoN)、窒化ハフニウムタングステン(HfWN)、窒化バナジウムニオブ(VNbN)、窒化バナジウムタンタル(VTaN)、窒化バナジウムクロム(VCrN)、窒化バナジウムモリブデン(VMoN)、窒化バナジウムタングステン(VWN)、窒化ニオブタンタル(NbTaN)、窒化ニオブクロム(NbCrN)、窒化ニオブモリブデン(NbMoN)、窒化ニオブタングステン(NbWN)、窒化タンタルクロム(TaCrN)、窒化タンタルモリブデン(TaMoN)、窒化タンタルタングステン(TaWN)、窒化クロムモリブデン(CrMoN)、窒化クロムタングステン(CrWN)、窒化モリブデンクロム(MoWN)が挙げられる。
第1金属を構成する元素の酸窒化物としては、たとえば、酸窒化チタン(TiON)、酸窒化ジルコニウム(ZrON)、酸窒化ハフニウム(HfON)、酸窒化バナジウム(VON)、酸窒化ニオブ(NbON)、酸窒化タンタル(TaON)、酸窒化クロム(CrON)、酸窒化モリブデン(MoON)、酸窒化タングステン(WON)、酸窒化珪素(SiON)、酸窒化ホウ素(BON)が挙げられる。
珪素を含む粒子としては、たとえば、珪素のみからなる珪素粒子および、窒化珪素(Si)、酸化珪素(SiO)、酸窒化珪素(SiON)などの珪素化合物の粒子が挙げられる。
アルミニウムを含む粒子としては、たとえば、アルミニウムのみからなるアルミニウム粒子および、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al)、酸窒化アルミニウム(AlON)、YAG(YAl12)などのアルミニウム化合物の粒子が挙げられる。
また、珪素とアルミニウムを同時に含む粒子を用いてもよい。たとえば、サイアロン粒子(SiAlON)などが挙げられる。
第1金属を含む粒子、珪素を含む粒子およびアルミニウムを含む粒子を、第1金属、珪素およびアルミニウムの比率が所望の比率になるように計量した後、これらの粒子をボールミルやジェットミルで混合する。混合後の第1粒子群に含まれる粒子の平均粒径は10μm以下であることが好ましい。このような平均粒径の第1粒子群を用いた場合、後述する第2粒子群作製工程において、第1粒子群に対する窒素および酸素の付与をより均一化することができるため、目的とする組成の第2粒子群を歩留まり良く作製することができる。なお、本明細書において、粒子の平均粒径とは、レーザー回折法などの公知の粒度分布測定法により測定された粒子の粒度分布に基づくメディアン径をいう。
得られた第1粒子群は、後述する第2粒子群作製工程に供するために加圧成形されることが好ましい。加圧成形の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。たとえば、第1粒子群を1MPa以上150MPa以下に加圧して加圧成形体を得ることができる。
(第2粒子群作製工程)
次に、図1を参照し、第2粒子群作製工程(S2)において、前記第1粒子群を熱処理して、前記第1金属、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含む第2粒子群を作製する。熱処理により、第1粒子群に不足分の窒素および酸素の一方または両方が付与され、目的とする立方晶型サイアロンと同一の組成比の第2粒子群を得ることができる。なお、「不足分の窒素および酸素」とは、第1粒子群中の窒素および酸素の含有比率と、目的とする立方晶型サイアロン中の窒素および酸素の含有比率との差に相当する。
熱処理は、第1粒子群に外部から熱を加える方法(以下、外部加熱法ともいう)や、第1粒子群の自己発熱による反応を利用する方法(以下、燃焼合成法ともいう)を用いることができる。
外部加熱法では、たとえば、第1粒子群からなる粉体、または第1粒子群が加圧成形されることによって形成された成形体を、真空雰囲気下、またはアルゴンガス、窒素ガスおよび酸素ガスからなる群より選択される1種以上のガスを含む雰囲気下に配置して、カーボンヒーターなどを用いて外部から加熱する。第1粒子群が置かれる雰囲気をいずれの雰囲気下とするかは、第1粒子群の組成により適宜選択される。
たとえば、第1粒子群が第1金属、珪素およびアルミニウムの各元素から構成され、窒素および酸素のいずれの元素も含まない場合、第1粒子群は、窒素ガスおよび酸素ガスを含む雰囲気下に置かれることになる。目的とする立方晶型サイアロン中の窒素および酸素の両元素の全量が、外部加熱法で用いられる原料ガスから付与される必要があるためである。また、たとえば、第1粒子群が、目的とする立方晶型サイアロンと同一の比率で第1金属、アルミニウム、珪素および窒素を含み、酸素を含まない場合は、第1粒子群は、窒素ガスを含まず、酸素ガスを含む雰囲気下に置かれることになる。また、たとえば、第1粒子群が、目的とする立方晶型サイアロンと同一の比率で第1金属、アルミニウム、珪素、窒素および酸素を含む場合は、第1粒子群は、アルゴンガスのみからなる雰囲気下または真空雰囲気下に置くことができる。
第1粒子群が置かれる雰囲気の加熱温度、各ガスの分圧を適宜調整することにより、第1粒子群に付与する酸素の量および窒素の量を制御することができる。また、加熱工程の処理時間によっても、第1粒子群に付与する酸素の量および窒素の量を制御することができる。
外部加熱法における加熱温度、各ガスの分圧、加熱時間は、適宜調整される。たとえば、加熱温度は1500℃以上2000℃以下が好ましく、1700℃以上1900℃以下がさらに好ましい。各ガスの分圧は0.1MPa以上が好ましく、0.3MPa以上がさらに好ましい。加熱時間は6時間以上が好ましい。
燃焼合成法とは、目的とする化合物を合成する際に放出される高い化学反応熱を利用する粉末合成法である。燃焼合成法によると、秒単位の短時間で目的とする化合物を得ることができる。燃焼合成法は外部からのエネルギ供給が不要であり、合成のコストが低減する等の利点を有する。
燃焼合成法では、たとえば、第1粒子群を加圧成形することによって得られた成形体を炉内に投入し、炉内を窒素ガス雰囲気とする。次に、炉内の窒素ガスの分圧を1MPa以上15MPa以下に設定した後、成形体の端部を加熱して第1粒子群の窒化反応を誘起する。この窒化反応により生じた化学反応熱が、隣接部分の反応を誘起することで、化学反応が成形体全体に伝播して、第2粒子群を得ることができる。
第1粒子群が置かれる炉内の雰囲気ガスの分圧を適宜調整することにより、第1粒子群に付与する窒素の量を制御することができる。また、加熱工程の処理時間によっても、第1粒子群に付与する窒素の量を制御することができる。
燃焼合成法を用いる場合は、第1粒子群が窒化可能成分を20重量%以上含むことが必要である。ここで窒化可能成分とは、第1金属を構成する1種類の金属元素からなる粒子、第1金属を構成する2種類以上の金属元素を含む合金からなる粒子、窒素量が不十分である窒化物(たとえば、TiN、CaNなど)などを意味する。
得られた第2粒子群は、後述する立方晶型サイアロン作製工程に供するために粉体化されることが好ましい。粉体化の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。たとえば、第2粒子群を超硬製の棒を用いて粗く砕き、150μmメッシュに通した後に、ボールミルまたはジェットミルなどを用いて細粉化する。第2粒子群の平均粒径は、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.5μm以上3μm以下がさらに好ましい。
(立方晶型サイアロン作製工程)
次に、図1を参照し、立方晶型サイアロン作製工程(S3)において、前記第2粒子群を衝撃圧縮法または静圧合成法により処理して、立方晶型サイアロンを作製する。
衝撃圧縮法では、たとえば、第2粒子群をヒートシンクおよび圧力媒体としての銅粉と混合して鋼製容器に充填し、15GPa以上の圧力で、加圧時間50マイクロ秒以下の衝撃波によって瞬間的に加圧することによって、第2粒子群を立方晶型サイアロンに変換させることができる。衝撃加圧の圧力は、15GPa以上50GPa以下が好ましく、20GPa以上がさらに好ましい。衝撃加圧時の加圧時間は1マイクロ秒以上50マイクロ秒以下が好ましく、3マイクロ秒以上40マイクロ秒以下がさらに好ましい。衝撃加圧時の温度は1200℃以上3000℃以下が好ましく、1500℃以上2500℃以下がさらに好ましい。
静圧合成法では、たとえば、第2粒子群をマルチアンビルプレスなどを用いて、圧力0.1GPa以上20PGa以下、温度1000℃以上2000℃以下の条件で、5分以上180分以下処理することによって、第2粒子群を立方晶型サイアロンに変換させることができる。
第2粒子群を衝撃圧縮法または静圧合成法で処理すると、第2粒子群の一部は、立方晶型サイアロンに変換されずに不可避不純物になる。不可避不純物としては、たとえば、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる元素の酸化物、窒化物、酸窒化物、窒化珪素、酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化タングステン、非晶質物質が挙げられる。これらの不可避不純物の合計量は、立方晶型サイアロンと不可避不純物との合計100質量%中、10質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がさらに好ましい。
不可避不純物を除去するために、衝撃圧縮法または静圧合成法で処理後の粉末から立方晶型サイアロンを精製することが好ましい。
立方晶型サイアロンの精製は、たとえば以下の方法で行うことができる。初めに、衝撃圧縮法または静圧合成法で処理後の粉末を、ボールミルやジェットミルを用いて細かく粉砕する。得られた粉砕粉を、フッ酸などの酸性溶液で洗浄する。非晶質物質は酸性溶液に溶解するため、前記粉末を酸性溶液で洗浄すると、非晶質物質を除去することができる。次に、洗浄後の粉末に含まれる立方晶型サイアロンと不可避不純物とを、遠心分離などを用いて分離して、精製された立方晶型サイアロンを得ることができる。
<第5の実施形態>
第5の実施形態に係る焼結体の製造方法について、図2を用いて説明する。
焼結体の製造方法は、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属、珪素およびアルミニウムを含む第1粒子群を準備する工程(図2中、S21で示される。以下、「第1粒子群準備工程」ともいう)と、前記第1粒子群を熱処理して、前記第1金属、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含む第2粒子群を作製する工程(図2中、S22で示される。以下、「第2粒子群作製工程」ともいう)と、前記第2粒子群を衝撃圧縮法または静圧合成法により処理して、立方晶型サイアロンを作製する工程(図2中、S23で示される。以下、「立方晶型サイアロン作製工程」ともいう)と、立方晶型サイアロンを20体積%以上100体積%以下含む第3粒子群を準備する工程(図2中、S24で示される。以下、「第3粒子群準備工程」ともいう)と、第3粒子群を焼結して焼結体を作製する工程(図2中、S25で示される。「焼結体作製工程」ともいう)とを備える。前記立方晶型サイアロンは、下記式(1)
Si(6−x−y)Al(8−y)・・・(1)
(式(1)中、Mはカルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属であり、0.01≦y≦4.2および1.79≦(6−x−y)≦5.98の関係を満たす)で表わされる。
第1粒子群作製工程(S21)、第2粒子群作製工程(S22)および立方晶型サイアロン作製工程(S23)は、それぞれ第4の実施形態の第1粒子群作製工程(S1)、第2粒子群作製工程(S2)および立方晶型サイアロン作製工程(S3)と同様であるため、その説明は繰り返さない。
(第3粒子群準備工程)
図2を参照し、第3粒子群準備工程(S24)において、立方晶型サイアロン作製工程(S23)で作製した立方晶型サイアロンを20体積%以上100体積%以下含む第3粒子群を準備する。
第3粒子群は、焼結体の原料となる原料粒子群である。第3粒子群は、立方晶型サイアロンのみを含んでいてもよいし、立方晶型サイアロンとともに結合相の原料となる物質を含んでいてもよい。
結合相の原料となる物質としては、たとえば、第2の実施形態に記載の第2金属および第1化合物を用いることができる。なお、第2金属および第1化合物は、第2の実施形態と同様であるため、その説明は繰り返さない。
第3粒子群中の立方晶型サイアロンの含有量は、20体積%以上100体積%以下である。第3粒子群中の立方晶型サイアロンの含有量が20体積%以上であると、第3粒子群を焼結して得られた焼結体の耐摩耗性および耐欠損性が向上する。第3粒子群中の立方晶型サイアロンの含有量は、50体積%以上100体積%以下が好ましく、50体積%以上90体積%以下がさらに好ましく、50体積%以上80体積%以下がさらに好ましい。
第3粒子群が立方晶型サイアロンとともに結合相の原料物質を含む場合、第3粒子群をボールミルやジェットミルを用いて混合することが好ましい。
(焼結体作製工程)
次に、図2を参照し、焼結体作製工程(S25)において、第3粒子群を焼結して焼結体を作製する。
第3粒子群の焼結は、第3粒子群を加圧成形した後に行うことが好ましい。また、加圧成形と同時に行ってもよい。加圧成形と焼結とを同時に行う方法としては、ホットプレス(HP)法、放電プラズマ焼結(SPS)法、超高圧焼結法が挙げられる。また、冷間静水圧加圧(CIP)法で成形した後、さらに熱間静水圧加圧(HIP)法を用いて焼結することもできる。なお、上記のような加圧焼結法の代わりに常圧焼結法を用いてもよい。
焼結体作製工程は、焼結体の組成が第3粒子群の組成から大きく変化することを抑制するために、非酸化性および非窒化性の雰囲気下で実行されることが好ましい。
焼結時の圧力は0.1GPa以上20GPa以下が好ましく、1GPa以上がさらに好ましい。焼結時の温度は1000℃以上2000℃以下が好ましく、1300℃以上1700℃以下がさらに好ましい。焼結に要する時間は第3粒子群の量(体積)、温度等によって異なるが、たとえば、1000℃以上2000℃以下の焼結温度の際には、3分以上180分以下とすることができる。
上記焼結体作製工程が行われることにより、上記式(1)で示される立方晶型サイアロンを含む焼結体を得ることができる。
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
[試料1−1〜試料1−50,1−52,1−53]
<立方晶型サイアロンの作製>
(第1粒子群準備工程)
表1の原料および混合比にしたがって、原料粒子が混合された第1粒子群を準備した。たとえば、試料1−1では、Si粒子と、Al粒子と、MgO粒子とを、混合比(質量比)で、67:18:15となるように計量した後、ボールミルで混合して、第1粒子群を準備した。なお、試料1−1〜試料1−50,1−52,1−53において準備された各第1粒子群の平均粒径は、全て10μm以下であった。得られた第1粒子群を圧力10MPaで加圧成形して成形体を得た。
(第2粒子群作製工程)
次に、第1粒子群の成形体を熱処理して、第2粒子群を作製した。各試料で用いた熱処理法を表1に示す。表1中、「外部加熱」は外部加熱法を意味し、「燃焼合成」は燃焼合成法を意味する。
外部加熱法では、まず窒素ガスが充填された坩堝内に第1粒子群を配置した。そして、坩堝の周囲に配置されたカーボンヒータにより坩堝内を1700℃に加熱した。このときの坩堝内のガス圧は0.3MPaであった。坩堝内が1700℃に達してからの加熱時間は6時間であった。これにより、第2粒子群が得られた。
燃焼合成法では、まず、ガス供給部およびガス排出部を有する圧力容器内に第1粒子群を配置した。そして、圧力容器内に窒素ガスを供給し3MPaまで昇圧させ、1500℃の熱源を用いて第1粒子群の一部を着火させることにより、第1粒子群を燃焼合成させた第1粒子群の一部を着火してからの燃焼時間は1分間であった。これにより、第2粒子群が得られた。
得られた第2粒子群を超硬製の棒を用いて粗く叩き、150μmメッシュに通した後、ボールミルを用いて粉砕化した。粉砕化後の第2粒子群の平均粒径は1μmであった。
(立方晶型サイアロン作製工程)
次に、得られた第2粒子群を衝撃圧縮法または静圧合成法により処理して、立方晶型サイアロンを作製した。各試料で用いた合成法を表1に示す。表1中、「衝撃圧縮」は衝撃圧縮法を意味し、「静圧合成」は静圧合成法を意味する。
衝撃圧縮法では、初めに、第2粒子群をヒートシンクおよび銅粉と混合して鋼製容器に充填した。その後、爆薬の爆発により、第2粒子群を圧力15GPaおよび温度2000℃で5マイクロ秒間処理して、立方晶型サイアロンを含む試料を得た。
静圧合成法では、第2粒子群を超硬製のアンビルを用いて圧力15GPaおよび温度2000℃で15分間処理して、立方晶型サイアロンを含む試料を得た。
得られた立方晶型サイアロンを含む試料をボールミルで粉砕した。粉砕した試料を硝酸で処理して、不純物を除去した。さらに、遠心分離により立方晶サイアロンを精製し、水簸により分級した。
<立方晶型サイアロンの測定>
得られた立方晶型サイアロンについて、X線回折測定を行い、生成相を同定した。結果を表1の「生成物」の欄に示す。
さらに、高周波誘導結合プラズマ発光分析法を行い、立方晶型サイアロン中の金属元素の割合を調べた。また、不活性ガス融解赤外線吸収法により、立方晶型サイアロン中の酸素元素および窒素元素の割合を調べた。また得られた粉末の断面が観察できるように加工を行い、走査型電子顕微鏡(以下SEMと記す)で粉末の断面を観察し、粉末中の色の濃淡で固溶している金属元素とサイアロン粒子中に分散している金属元素を区別した。その際、予め元素分析により、各化合物を特性した。更にその視野に対し二値化を行い分散している金属元素量を定量化した。これらの結果から、立方晶型サイアロンを示す上記式(1)中のx、y、分散している金属成分の値を算出した。結果を表1の「x」、「y」の欄に示す。また、EDXでなお、表1の生成物の欄に記載した「c−」とは、「立方晶型」を意味する。
<焼結体の作製>
得られた立方晶型サイアロンを、表1に示す圧力、温度および焼結時間で焼結処理を行い焼結体を得た。焼結前の立方晶型サイアロンと、得られた焼結体のそれぞれを、走査電子顕微鏡に付属のEPMA(Electron Probe X-ray Micro Analyzer:試料に電子線を照射した際に発生する特性X線を検出し、構成元素を分析する装置)により分析した結果、両者は同様の構成元素比率となっていた。すなわち、立方晶型サイアロンは、焼結の前後で構成元素比率がほとんど変化しないことが確認された。
<焼結体の評価>
得られた焼結体をレーザーを用いて加工し、ISO型番CNGA120408形状のチップ形状、刃先処理が−25°の角度で、幅0.15mmのチャンファー形状の切削工具を作製した。以下の切削条件で切削試験を行い、連続切削時の平均逃げ面摩耗量が200μmに達するまでの切削長さ(km)および断続切削時の欠損までの切削長さ(km)を測定した。
(連続切削条件および評価内容)
被削材:インコネル718(登録商標)の丸棒の外径加工
被削材硬度:HRC40
切削速度:V=150m/min
切込み量:d=0.25m/min
送り速度:f=0.1mm/rev
クーラント:エマルジョン20倍希釈
評価内容:平均逃げ面摩耗量が200μmに達するまでの切削長さ(km)
(断続切削条件および評価内容)
被削材:外周4箇所に溝を有するインコネル718(登録商標)の棒の外径加工
被削材硬度:HRC40
切削速度:V=150m/min
切込み量:d=0.25m/min
送り速度:f=0.1mm/rev
クーラント:なし
評価内容:欠損までの切削長さ(km)
結果を表1に示す。連続切削時の平均逃げ面摩耗量が200μmに達するまでの切削長さ(km)が長いほど、耐摩耗性が優れている。断続切削時の欠損までの切削長さ(km)が長いほど、耐欠損性が優れている。
[試料1−51]
試料1−51では、従来の立方晶型サイアロン(Si(6−x)Al(8−x)(0<x≦4.2))を用いて焼結体を作製した。得られた焼結体を用いて試料1−1と同一形状の切削工具を作製し、試料1−1と同一の評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2016060685
<評価結果>
試料1−1〜試料1−50の焼結体は、上記式(1)で表わされる立方晶型サイアロンを用いて作製された焼結体である。従来の立方晶型サイアロンを用いて作製された試料1−51の焼結体よりも、耐摩耗性および耐欠損性が優れていた。
[試料2−1〜試料2−35、試料2−39、試料2−40]
<焼結体の作製>
試料1−1、試料1−15、試料1−29または試料1−38の立方晶型サイアロンと、第2金属または第1化合物とを表2に示す割合で混合して第3粒子群を作製した。該第3粒子群を表2に示す圧力、温度および焼結時間でHP法による焼結処理を行い焼結体を得た。得られた焼結体をX線回折した結果、第3粒子群中の立方晶型サイアロンの質量割合と、焼結体中の立方晶型サイアロンの質量割合は、ほとんど変化しないことが確認された。また、第3粒子群と得られた焼結体のそれぞれを、走査電子顕微鏡に付属のEPMA(Electron Probe X-ray Micro Analyzer:試料に電子線を照射した際に発生する特性X線を検出し、構成元素を分析する装置)により分析した結果、両者は同様の構成元素比率となっていた。すなわち、第3粒子群とその焼結体とでは、構成元素比率がほとんど変化しないことが確認された。
<焼結体の評価>
得られた焼結体用いて試料1−1と同一形状の切削工具を作製し、試料1−1と同一の評価を行った。結果を表2に示す。
[試料2−36〜試料2−38]
試料2−36では、従来の立方晶型サイアロン(Si(6−x)Al(8−x)(0<x≦4.2))を用いて焼結体を作製した。
試料2−37では、従来の立方晶型サイアロン(Si(6−x)Al(8−x)(0<x≦4.2))およびβ型サイアロンを用いて焼結体を作製した。
試料2−38では、従来の立方晶型サイアロン(Si(6−x)Al(8−x)(0<x≦4.2))およびコバルトを用いて焼結体を作製した。
<焼結体の評価>
得られた焼結体用いて試料1−1と同一形状の切削工具を作製し、試料1−1と同一の評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2016060685
<評価結果>
試料2−1〜試料2−35の焼結体は、上記式(1)で表わされる立方晶型サイアロンを用いて作製された焼結体であり、焼結体中の立方晶型サイアロンの含有量は20体積%以上80体積%以下である。
試料2−36〜試料2−38の焼結体は、従来の立方晶型サイアロンを用いて作製された焼結体である。
試料2−39〜試料2−40の焼結体は、上記式(1)で表わされる立方晶型サイアロンを用いて作製された焼結体であり、焼結体中の立方晶型サイアロンの含有量は15体積%である。
試料2−1〜試料2−35の焼結体は、試料2−36〜試料2−40の焼結体に比べて、耐摩耗性および耐欠損性が優れていた。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の一実施形態に係る立方晶型サイアロンを含む焼結体は、切削工具に広く用いることができる。たとえば、ドリル、エンドミル、フライス加工用刃先交換型切削チップ、旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切り工具、リーマまたはタップに用いることができる。

Claims (8)

  1. 下記式(1)
    Si(6−x−y)Al(8−y)・・・(1)
    (式(1)中、Mはカルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属であり、0.01≦x≦2、0.01≦y≦4.2および1.79≦(6−x−y)≦5.98の関係を満たす)
    で表わされる、立方晶型サイアロン。
  2. 前記立方晶型サイアロンは、前記第1金属単体を0.01質量%以上5質量%以下含む、請求項1に記載の立方晶型サイアロン。
  3. 請求項1または請求項2に記載の立方晶型サイアロンを20体積%以上100体積%以下含む、焼結体。
  4. 請求項1または請求項2に記載の立方晶型サイアロンと、第2金属および第1化合物のいずれか一方または両方とを含む焼結体であって、
    前記第2金属は、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
    前記第1化合物は、アルミニウム、硼素、珪素、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、カルシウム、イットリウム、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の第1元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の第2元素とからなる少なくとも1種の化合物を含む、請求項3に記載の焼結体。
  5. 請求項3または請求項4に記載の焼結体を備える切削工具。
  6. カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属、珪素、およびアルミニウムを含む第1粒子群を準備する工程と、
    前記第1粒子群を熱処理して、前記第1金属、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含む第2粒子群を作製する工程と、
    前記第2粒子群を衝撃圧縮法または静圧合成法により処理して、立方晶型サイアロンを作製する工程とを備え、
    前記立方晶型サイアロンは、下記式(1)
    Si(6−x−y)Al(8−y)・・・(1)
    (式(1)中、Mはカルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属であり、0.01≦y≦4.2および1.79≦(6−x−y)≦5.98の関係を満たす)
    で表わされる、立方晶型サイアロンの製造方法。
  7. カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属、珪素およびアルミニウムを含む第1粒子群を準備する工程と、
    前記第1粒子群を熱処理して、前記第1金属、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含む第2粒子群を作製する工程と、
    前記第2粒子群を衝撃圧縮法または静圧合成法により処理して、立方晶型サイアロンを作製する工程と、
    前記立方晶型サイアロンを20体積%以上100体積%以下含む第3粒子群を準備する工程と、
    前記第3粒子群を焼結して焼結体を得る工程とを備え、
    前記立方晶型サイアロンは、下記式(1)
    Si(6−x−y)Al(8−y)・・・(1)
    (式(1)中、Mはカルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1金属であり、0.01≦y≦4.2および1.79≦(6−x−y)≦5.98の関係を満たす)
    で表わされる、焼結体の製造方法。
  8. 前記第3粒子群は、前記立方晶型サイアロンと、第2金属および第1化合物のいずれか一方または両方とを含み、
    前記第2金属は、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
    前記第1化合物は、アルミニウム、硼素、珪素、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、カルシウム、イットリウム、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の第1元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の第2元素とからなる少なくとも1種の化合物を含む、請求項7に記載の焼結体の製造方法。
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