JP2016059234A - 発電装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】単純な構造で小型化が容易であり、優れた発電効率を備えた発電装置を提供する。【解決手段】所定形状の金属層を表面に有する第1の電極部材と所定形状の帯電層を表面に有する第2の電極部材とを有しており、金属層と帯電層とは所定の距離で離間して、双方が対向するように2つの電極部材は配置されている。第2の電極部材は、第1の電極部材と第2の電極部材とが相対移動する方向と直交する方向でその膜厚が異なる構成である。これにより、帯電層と金属層との重なり面積の変化量が増え、発電量が増加して優れた発電効率を備えた発電装置を提供できる。【選択図】図3

Description

本発明は、静電誘導を利用した発電装置に関し、特に誘電性を有する絶縁体を用いた発電装置に関する。
従来から、携帯型電子機器等の電源は小型軽量であることが求められ、小型の二次電池等が用いられているが、近年、小型電源として静電誘導を利用した発電装置が提案されている。
静電誘導を利用した発電装置は、エレクトレットを用いた例が広く知られている。エレクトレットとは、強い電場により誘電性を有する絶縁体が電気分極して帯電が保たれるようにしてなった物質のことである。強い磁場により強磁性体が磁化してなる磁石(マグネット)に対して、電石とも呼ばれる場合がある。
エレクトレットを用いた発電装置は、誘電性を有する絶縁体で形成された帯電層に電荷を保持させておき(エレクトレット化)、その帯電層に導電性の電極(例えば、金属層)を対向配置しておく。そして、発電装置に掛かる外力などを利用して双方を相対移動させる(無論、一方を移動させてもよい。)。
帯電層と金属層との相対移動に応じて帯電層と金属層との重なり面積が変化する。帯電層と金属層とが重なり合うと、金属層には、帯電層に保持された電荷とは反対極性の電荷が静電誘導により生じる。金属層に発生したこの電荷は、分極電荷や誘導電荷などと呼ばれるが、以下単に電荷と称することにする。
この帯電層と金属層との重なり面積の変化は、すなわち金属層に発生する電荷の変化であるから、その電荷の変化を電気エネルギとして取り出すのである。
このような発電装置は、磁石を用いた発電機による発電装置に比して、優れた発電効率を有しながら小型、軽量化できるというメリットがある。そして、周囲に磁界の影響を及ぼさないから、金属部品を用いる機器の発電装置として好しいという側面もある。
このように、省スペースで、且つ、優れた発電効率を有するエレクトレットを用いた発電装置は多くの提案を見るものである。近年の携帯型電子機器の高機能化に伴い、組み込まれる発電装置も、より発電効率を向上させる要求が出てきた。
そのような要求に対しては、帯電層と金属層との重なり面積の変化量を大きくすること、帯電層と金属層とのギャップ、相対移動速度などを適する値にすることなどが重要である。
一般に、帯電層と金属層とのギャップを狭くすると得られる電圧が高くなる。また、双方の相対移動速度を高くするとより多くの電荷の変化を取り出せる。これらは発電装置から得られる電力の仕様に鑑みて設計されるのである。
もちろん、帯電層や金属層をどのような構成にするかも重要であって、例えば、帯電層の面積や、帯電層と金属層との対向面積を増加させるという提案がある。また、帯電層と金属層との対を複数設け、一定の間隔で配置させることで、帯電層と金属層とが対向する機会を多くするという提案もある。
しかしながら、このような大きさや数を増やすという考え方は、発電装置としてサイズに制約があるため、おのずと上限が決まってしまう。特に発電装置を携帯型電子機器等の電源に用いることに鑑みれば、より小型であることが好ましいため、そのサイズの増加は好ましくない。
その解決策として、発電装置に掛かる外力を有効に用いる提案もなされた。
すなわち、発電装置にバネ等の弾性体を設け、その伸縮による運動を利用し、わずかな外力であっても相対移動が発生することができると共に、外力が途切れてもある一定時間であれば相対移動を継続するようにした技術である。
そのような技術の一例として、電極となる金属層を有する回動体と、その金属層に対向配置された帯電層を有する基体とを備え、回動体は渦巻きバネ等の弾性体を介して支持され、基体に対して往復周期回動することで、金属層と帯電層の間で電荷の移動が行われて発電する発電装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この特許文献1の発電装置は、回動体が回動するので、基体に対する移動距離が大きく、水平移動する場合と比べて発電量が大きくなる特徴がある。また、回動体が渦巻きバネ等の弾性体によって支持されることで、わずかな外力でも回動体を共振させることができることで、金属層と帯電層の重なり面積の変化量も大きくなり、その結果、発電量が増えて発電効率が向上することが示されている。
特開2013−059149号公報(第6頁、図1)
しかしながら、特許文献1に示した従来技術は、渦巻きバネ等でなる弾性体が不可欠な構成であるので、発電装置として部品点数が増えて小型化することに制約が生じる問題がある。
また、搭載されている渦巻きバネは形状が小さく、且つ、損傷しやすいので、慎重な取り扱いが必要であり、発電装置の組み立て性や機器への組み込み性が悪いという課題がある。
さらに、渦巻きバネはその小さい形状から、発電装置を組み込んだ携帯型電子機器等が落下するなどして大きな衝撃が加わると、容易に破壊されてしまうことがある。
本発明の目的は上記課題を解決し、単純な構造で小型化が容易であり、優れた発電効率を備えた発電装置を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明の発電装置は下記記載の構成を採用する。
本発明の発電装置は、所定形状の金属層を表面に有する第1の電極部材と、所定形状の帯電層を表面に有する第2の電極部材と、金属層と帯電層とが所定の距離で離間して対向するように第1の電極部材と第2の電極部材とを配置し、第1の電極部材と第2の電極部材とが相対移動し、金属層と帯電層との平面的な重なり面積の変化に伴う金属層に生じる電荷の変化を電気エネルギとして取り出す発電装置において、第2の電極部材又は帯電層
は、相対移動方向と直交する方向でその厚みが異なることを特徴とする。
これにより、第2の電極部材又は帯電層の厚みが相対移動方向と直交する方向で異なることによって、帯電層の表面積を増やすことができる。この結果、第2の電極部材の表面に形成された帯電層と、この帯電層に対向する第1の電極部材の表面に形成された金属層との重なり面積の変化量が増えるので、発電量が増加して優れた発電効率を備えた発電装置を提供することができる。
また、第1の電極部材又は金属層は、相対移動方向と直交する方向でその厚みが異なるようにしてもよい。
これにより、第1の電極部材の表面の金属層と第2の電極部材の表面の帯電層との隙間を均一にできるので、発電量が増加して発電効率に優れた発電装置を提供することができる。
また、帯電層又は金属層は、相対移動方向と直交する方向でその表面が曲面又は斜面を有するようにしてもよい。
これにより、帯電層の表面状態を様々に構成することで、帯電層と金属層との重なり面積を増やして、発電効率を向上させることができる。
また、第1の電極部材と第2の電極部材とは回転可能に軸支されており、金属層と帯電層とは、回転中心から放射状に形成されてもよい。
これにより、第1の電極部材と第2の電極部材とは回転によって相対移動することで、狭いスペースであっても、金属層と帯電層との重なり面積の変化量が大きくなり、スペース効率と発電効率に優れた発電装置を提供できる。
また、帯電層は、回転中心より外周部の方がその膜厚が厚いように構成してもよい。
これにより、帯電層の表面が所定の角度で傾くので、帯電層の表面積が増えることになる。また、第2の電極部材又は帯電層の回転中心より外周部の膜厚を厚くすることで、外周部の質量が増加して、第2の電極部材が回転しやすくなる。この結果、第2の電極部材の帯電層と、第1の電極部材の金属層との重なり面積の変化量が増えるので、発電量が増加して優れた発電効率を備えた発電装置を提供することができる。
また、第1の電極部材と第2の電極部材とは直線状の前後方向に移動可能な直方体であり、金属層と帯電層とは、それぞれが対向するように第1の電極部材と第2の電極部材とに形成されていてもよい。
このようにすれば、第1の電極部材と第2の電極部材との相対移動方向を直線的にできる。組み込む携帯型電子機器等の仕様により発電装置の構成を変更できる。
金属層及び帯電層は、相対移動方向に沿って所定の間隔を空けて複数配置されているようにしてもよい。
これにより、金属層と帯電層とが重なる面積がさらに増えるので、発電量もさらに増加させることができる。
本発明の発電装置によれば、第2の電極部材の膜厚が相対移動方向と直交する方向で異なることによって、第2の電極部材の表面が所定の角度で傾くので、発電装置のサイズを増大させることなく、第2の電極部材の表面に形成された帯電層と、これに対向する第1の電極部材の表面に形成された金属層との重なり面積を増やすことができる。これにより、発電量を増加させることができる。
この結果、発電量を増加させるために従来例のような弾性体を配置する必要がなく、部品点数が少なく、単純な構成で小型化が容易であり、優れた発電効率を備えた発電装置を提供することができる。
本発明の第1の実施形態に係わる発電装置の分解斜視図である。 本発明の第1の実施形態に係わる発電装置の正面図である。 本発明の第1の実施形態に係わる発電装置の断面図である。 本発明の第1の実施形態に係わる発電装置の回路図である。 本発明の第1の実施形態に係わる発電装置の発電原理を説明する説明図である。 本発明の第1の実施形態の変形例1に係わる発電装置の断面図である。 本発明の第1の実施形態の変形例2に係わる発電装置の断面図である。 本発明の第2の実施形態に係わる発電装置の断面図である。 本発明の第3の実施形態に係わる発電装置の斜視図と断面図である。 本発明の第4の実施形態に係わる発電装置の斜視図と断面図である。 本発明の第4の実施形態の変形例に係わる発電装置の斜視図と断面図である。
本発明の発電装置は、金属層を表面に有する第1の電極部材と帯電層を表面に有する第2の電極部材とを備えている。発電装置に掛る外力等により、第1の電極部材と第2の電極部材とは相対移動する。
第2の電極部材は、この相対移動方向と直交する方向でその膜厚が異なっている。このようにすることで、帯電層と金属層との重なり面積を増やすことができる。
帯電層と金属層との重なり面積が変化することで、金属層に発生する電荷の変化が起き、その電荷の変化を電気エネルギとして取り出すから、帯電層と金属層との対向面積が増えれば、より多くの電荷を取り出すことができるのである。
以下、図面に基づいて発電装置の具体的な実施形態を詳述する。なお、説明にあっては発明とは関係のない構成は省略している。例えば、電気的な配線や各部材を固定する係止機構、また、発電装置に掛る外力を、第1の電極部材と第2の電極部材とが相対移動するように変換する機構などである。また、同一の構成については同一の番号を付与するものとする。
[各実施形態の説明]
第1の実施形態は、第1及び第2の電極部材が回転可能に軸支され、双方が相対移動する例である。
第2の電極部材の表面に設ける帯電層が、相対移動方向と直交する方向でその膜厚が異なるようにしており、これにより第2の電極部材の膜厚が異なるようにしている。
第2の実施形態は、第1及び第2の電極部材が回転可能に軸支され、双方が相対移動する例である。
第2の電極部材の表面に設ける帯電層の膜厚は均一であり、第2の電極部材自体が、相対移動方向と直交する方向でその膜厚が異なるようにしている。
第3の実施形態は、第1及び第2電極部材が直方体で構成し、移動方向が直線的に相対移動する例である。
第2の電極部材の表面に設ける帯電層は、相対移動方向と直交する方向でその膜厚が異なるようにしている。
第4の実施形態は、第1及び第2電極部材が直方体で構成し、移動方向が直線的に相対移動する例である。
第2の電極部材の表面に設ける帯電層は、相対移動方向と直交する方向で曲面又は斜面を有する形状となっている。
[第1の実施形態の発電装置の構成説明:図1、図2]
初めに第1の実施形態の発電装置の構成を図1と図2とを用いて説明する。
図1は第1の実施形態の分解斜視図であり、図2は正面図である。図1、図2において、符号1は第1の実施形態の発電装置である。発電装置1は、円板状の第1の電極部材10と、円板状の第2の電極部材20、及び、第1の電極部材10と第2の電極部材20の回転中心を通り軸支する軸2などによって構成される。
軸2の一端2aは第1の電極部材10の回転中心に形成される貫通孔12に嵌め込まれている。また、軸2の他方の一端2bは、第2の電極部材20の回転中心に形成される貫通孔23に嵌め込まれる。この構成によって、第1の電極部材10と第2の電極部材20とは、軸2によって軸支され、双方が独立して回転可能となる。
図2は、このように第1の電極部材10と第2の電極部材20とを軸2により嵌合させたときに第1の電極部材10の側から見た平面図となっている。なお、図2に示す切断線A−A´、B−B´については後述する。
第1の電極部材10と第2の電極部材20とは絶縁材でなり、例えば、シリコン、セラミックス等で構成される。第1の電極部材10が第2の電極部材20と対向する面には、アルミニウム等によってなる複数の導電性の金属層11が、回転中心から放射状に形成されている。この金属層11は発生する電荷を取り出す電極として機能する。
この金属層11は、第1の電極部材10の表面に、例えば、知られているエッチング加工技術などによって形成することができる。なお、金属層11は、図示した例では、説明をわかりやすく示すために8個としているが、この数は限定されず、隙間を狭めて金属層11の数を増やしてもよい。また、第1の電極部材10は、金属層11を図示するために透視図として示している。
第2の電極部材20には、第1の電極部材10と対向する面には、複数の帯電層21が、回転中心から放射状に形成されている。すなわち、帯電層21は、後述する交流発電を行うために、周回状に所定の間隔を空けて形成されている。
第1の電極部材10に設ける金属層11と第2の電極部材20に設ける帯電層21との数は、一例として8個としているが、第1の電極部材10と第2の電極部材20とをどのような速度で回転させるか(相対移動する速度)により決まるものであって、発電装置1の仕様により決定される。
帯電層21は、絶縁体で構成する。この絶縁体は帯電しやすい材料を用い、例えばマイ
ナスに帯電する材料としてはシリコン酸化物(SiO2)や、フッ素樹脂材料などを用いるとよい。具体的には一例として、マイナスに帯電する材料として旭硝子製のフッ素樹脂材料であるCYTOP(登録商標)などがある。
帯電層21にフッ素樹脂材料を用いる場合、液状のフッ素樹脂材料を第2の電極部材20の表面にディップ方式やポッティング方式などによって塗布した後、型押しによって所定の形状や膜厚に形成することができる。
また、帯電層21に電荷を持たせる方法として、コロナ放電を用いることができる。このコロナ放電は、図示しないが、帯電層21に対して数mm離した距離に固定したコロナ放電用ニードルに、例えば、−2000Vから−8000V程度の電圧を印加し、帯電層21に対してマイナスの電荷を打ち込むことで帯電させる。なお、以下の実施形態では、帯電層はマイナスに帯電されているものとして説明を行う。
また、第2の電極部材20の外周部には、錘22が配置されている。この錘22は、銅や鉛などの重い金属材料を用いて構成するとよい。第2の電極部材20をシリコンなどで形成する場合は、錘22と嵌合する溝などを設けておき、そこに錘2を嵌め込むなどすればよく、接着剤等で固定すればなおよい。
この錘22によって第2の電極部材20全体の重量バランスが偏るため、外部からの振動(外力)を受けることで、回転可能な第2の電極部材20は、矢印Cの方向に軸2を中心として揺動運動が発生し、第1の電極部材10と第2の電極部材20とが相対移動する。
また、錘22は第2の電極部材20の外周部の外側に配置された構成となっているが、図示しないが第2の電極部材20の外周部の内側に取り付けてもよい。例えば、第2の電極部材20の第1の電極部材10と対向する面とは反対側の面に設ける例、第2の電極部材20の内部に組み込む例などがある。この場合、錘22の分だけ第2の電極部材20が占める平面積を大きくできる。
このように錘22をどのように設けるか、どのような形状の錘22を設けるなどは、第1の電極部材10と第2の電極部材20とをどのような速度で回転させるか(相対移動する速度)により決まるものであって、発電装置1の仕様により決定される。
以上の構成によって、第1の電極部材10と第2の電極部材20とは、軸2によって回転可能に軸支され、金属層11と帯電層21とが所定の距離で離間して対向するように配置される。そして、第1の電極部材10と第2の電極部材20とが矢印Cの方向に相対移動することで、金属層11と帯電層21との平面的な重なり面積の変化に伴う金属層11に生じる電荷の変化を電気エネルギとして取り出すことができる。
以上の説明では、第2の電極部材20に錘22を設けて外力により回転させることで第1の電極部材10との相対移動をする構成を説明した。もちろん、錘を第1の電極部材10に設けて回転させてもよいが、後述する回路や配線により第1の電極部材10の金属層11から発生した電荷を取り出す必要があるため、そのような電気的な信号の取出しの必要がない第2の電極部材20を回転させる方が都合がよいのである。
[第1の実施形態の帯電層と金属層の説明:図1、図3]
次に、図3を用いて第1の電極部材10の金属層11と第2の電極部材20の帯電層21の詳細を説明する。
ここで、図3(a)は図2で示す回転中心を通る切断線A−A´で切断された断面図で
あり、図3(b)は、図3(a)の破線で示す帯電層21周辺の拡大断面図である。また、図3(c)は、比較のために用いる従来の発電装置の帯電層周辺の拡大断面図である。なお、図3の縦方向の縮尺は、説明をわかりやすくするために拡大している。
図3(a)において、発電装置1は、前述したように、第1の電極部材10と第2の電極部材20、及び、軸2などによって構成される。そして、第1の電極部材10が第2の電極部材20と対向する表面には金属層11が形成され、第2の電極部材20が第1の電極部材10と対向する表面には帯電層21が形成されている。
第2の電極部材20の表面に形成されている帯電層21の膜厚は、回転中心に位置する軸2の近傍の厚みより、第2の電極部材20の外周部近傍の厚みの方が厚くなるように形成されている。
なお、帯電層21の膜厚を回転中心近傍から外周部近傍にかけて変化させるには、前述したように、帯電材料にフッ素樹脂材料を用いる場合、液状のフッ素樹脂材料を第2の電極部材20の所定の部分(つまり、帯電層21を形成する部分)の表面に塗布した後、一例として型押しによって所定の膜厚に形成する方法を用いることができる。
第2の電極部材20と帯電層21とは、同材料で形成してもよい。その場合は、第2の電極部材20と帯電層21とが一体であるので、第2の電極部材20全体の厚みが、回転中心近傍より外周部近傍の方が厚くなっている。
なお、第2の電極部材20と帯電層21とを同材料で形成する場合、帯電層21の膜厚を厚くし、第2の電極部材20の表面より帯電層21をより突出させる形状が好ましい。
その理由は、すでに説明したように、帯電層21に電荷を持たせる方法として、コロナ放電を用いると、帯電層21がない第2の電極部材20の表面にも電荷が帯電してしまうからである。
帯電層21の膜厚が厚く、第2の電極部材20の表面と帯電層21の表面とで高さに差があれば、第2の電極部材20の表面にも帯電が生じても、第1の電極部材10との相対移動時に、第1の電極部材10の金属層11には、その高さの差に応じた電荷が生じるため、その電荷を電気エネルギとして発電に用いることができ、問題なく発電させることができる。
第2の電極部材20の膜厚が異なる方向(膜厚が厚くなる方向)は、回転中心から外周部に向かう方向であり、この方向を図1の矢印Dで示している。すなわち、第2の電極部材20の膜厚が異なる方向Dは、図1における相対移動方向Cと直交する方向である。
図3(a)に示す例では、第1の電極部材10の表面に形成されている金属層11の膜厚は、前述した第2の電極部材20の帯電層21の膜厚の変化(傾き)に沿って、回転中心に位置する軸2の近傍の厚みより、第1の電極部材10の外周部近傍の厚みの方が薄くなるように形成されている。
金属層11の膜厚を回転中心近傍から外周部近傍にかけて変化させるには、公知の加工技術を用いることができる。例えば、エッチング加工などによって金属層11をパターン化した後、精密な研削作業などによる膜厚調整工程によって実施することができる。また、金属層11の元となる金属膜を均一な膜厚で形成した後、複数回のエッチング加工により微細な階段状の傾斜面を形成し、ウェットエッチング等を施して傾斜面を滑らかにすればよい。
第1の電極部材10の表面に形成された膜厚が異なる金属層11は、第1の電極部材10と一体であるので、第1の電極部材10の膜厚が、回転中心近傍より外周部近傍の方が薄くなっている。
第1の電極部材10の膜厚が異なる方向(膜厚が薄くなる方向)は、回転中心から外周部に向かう方向であり、この方向は前述した第2の電極部材20の膜厚が変化している方向(図1:矢印D)と同一である。すなわち、第1の電極部材10の膜厚が異なる方向Dは、図1における相対移動方向Cと直交する方向である。
このように、帯電層21の膜厚も金属層11の膜厚も、図3(a)に示すように、回転中心近傍から外周部近傍まで直線的に変化しており、且つ、帯電層21も金属層11も、その膜厚の変化の傾きが略等しいように形成されているので、帯電層21と金属層11とのギャップt0(回転中心近傍から外周部近傍までのギャップ)は略均一である。
帯電層21周辺の拡大断面図である図3(b)に示すように、前述したように、帯電層21の膜厚は、回転中心近傍の厚みt1より、第2の電極部材20の外周部近傍の厚みt2の方が厚く、この膜厚の変化は外周部に向かって直線的に厚くなるように形成されている。すなわち、帯電層21の表面21sは、第2の電極部材20の表面20sを基準にして、図示するように傾きθを有しており、この傾きθに沿って帯電層21の膜厚が増加している。
比較のために用いる従来の発電装置の帯電層周辺の拡大断面図である図3(c)に示すように、その帯電層21´の膜厚は回転中心近傍と外周部近傍が同一である。したがって、帯電層21´の傾きθはゼロである。
従来の帯電層21´の長さをL0とすると、第1の実施形態の帯電層21の表面21sが傾きθを有している場合の帯電層21の長さL1(図3(b)参照)は、以下に示すようになる。
L1=√(L02+(t2−t1)2)=L0/cosθ
一例として、帯電層21の表面21sの傾きθを25度とすれば、帯電層21の長さL1は、従来の帯電層21´の長さL0より約1割長くなる。
このように、第2の電極部材20の表面に形成する帯電層21の膜厚を回転中心近傍から外周部近傍にかけて変化させて、帯電層21の表面21sを第2の電極部材20の表面20sに対して所定の角度で傾けることにより、第2の電極部材20の外形寸法(直径)を変えることなく、帯電層21の回転中心近傍から外周部近傍までの長さL1を長くすることができるのである。
帯電層21の個々のパターン形状は、前述したように、回転中心から放射状に形成されているので(図1参照)、回転中心近傍から外周部近傍までの長さL1が長くなると、その帯電層21の個々の表面積も増加する。つまり、帯電層21と金属層11との対向面積も増える。
これにより、第1の電極部材10と第2の電極部材20との相対移動に応じて金属層11に発生する電荷の変化量も増えるから、発電装置1の外形寸法を増やすことなく、電気エネルギとしてより多くを取り出すことができるようになる。
ギャップt0は所定の距離を有するものであるが、一概にその距離を決めることはできない。
帯電層21に蓄積した電荷に応じて金属層11に発生する電荷が決まるため、このギャップt0の値が小さいほど金属層11に発生する電荷が多くなる。すると、後述する整流回路30や平滑回路40(図4参照)に掛る電圧も高くなる。この電圧が高すぎると損失も大きくなるから、その電圧の値は整流回路30や平滑回路40の動作や仕様により決まる値となる。したがって、このギャップt0も、発電装置1の仕様により決めることができる。
図3に示す例では、第1の電極部材10の金属層11もまた第2の電極部材20の帯電層21と同様に双方の電極部材の相対移動方向と直交する方向でその膜厚が異なるようになっており、金属層11と帯電層21とのギャップt0が略均一となるような形状である。
このギャップt0が均一であるほど金属層11に発生する電荷の粗密が減り均一になるから、より効率よく電荷を取り出すことができる。このため、ギャップt0は、できるだけ均一にすることが好ましい。
また、図3に示すように、第2の電極部材20の表面の帯電層21の膜厚が、回転中心近傍より外周部近傍の方が厚くなるような構成にすれば、第2の電極部材20の外周部の質量が帯電層21によって増加し、第2の電極部材20が回転しやすくなるという効果も有している。
以上の説明のように、第1の実施形態は、第1の電極部材10と第2の電極部材20との膜厚を回転中心近傍から外周部近傍にかけて変化させ、その傾きよって金属層11と帯電層21との表面積を増やして発電効率を向上させることが大きな特徴である。
[第1の実施形態の発電装置の回路構成の説明:図1、図4]
次に、第1の実施形態の発電装置の回路構成の概略を、図4を用いて説明する。
図4において、符号15は、発電装置1を含む発電機器である。発電装置1の第1の電極部材10の表面には、前述したように、回転中心から放射状に複数の金属層11が形成されている。この金属層11は、図1と同様に一例として8個で構成され、隣接する金属層11同士が電気的に分離されるように、配線によって1つずつ飛び飛びに電気的に接続されている。
すなわち、4個の金属層11が配線13aによって1つずつ飛び飛びに接続され、他の4個の金属層11が配線13bによって1つずつ飛び飛びに接続される。この2本の配線13a、13bは後述する整流回路30に接続している。これにより、金属層11に誘起される電荷は、整流回路30に交流電圧(例えば、数10V)として入力されることになる。
符号30は全波整流を行う整流回路であり、4つのダイオードによって構成される。
この整流回路30は、一組の入力端子30a、30bと、一組の出力端子30c、30dとを有している。前述の金属層11に接続された一方の配線13aは、整流回路30の入力端子30aに接続され、他方の配線13bは、整流回路30の入力端子30bに接続される。この接続により配線13a、13bからの交流電圧は、整流回路30によって全波整流される。
符号40は平滑回路であり、信号を入力して平滑化する平滑回路ブロックと平滑化した電圧を所定の電圧に降圧する降圧回路ブロックとを有する、よく知られた回路である。
この平滑回路40は、一組の入力端子41a、41bと、一組の出力端子41c、41dとを有している。入力端子41a、41bは、整流回路30の出力端子30c、30dが接続されて、整流回路30からの全波整流された整流電圧を入力する。
平滑回路40は、図示しない平滑回路ブロックに整流電圧が入力されると、内部の図示しないコンデンサなどにより整流電圧を平滑化し、安定した直流電圧に変換する。さらに、内部の図示しない降圧回路ブロックによって所定の低電圧(例えば、3V)に変換し、出力端子41c、41dから、出力電圧Voutを出力する。
符号100は、発電装置1からの出力電圧Voutの供給を受けて動作する外部の負荷回路である。負荷回路100は、発電機器15(発電装置1)が搭載される携帯型電子機器等の内部回路に相当する。例えば、携帯型電子機器等を腕時計とすると、負荷回路100は、腕時計の発振回路や分周回路等で構成される電子回路に相当する。
発電機器15(発電装置1)が腕時計に組み込まれている場合、腕時計の使用者(図示せず)が、歩いたりすることで腕が動き、それが外力になり発電装置1の第2の電極部材20(図1参照)が、錘22による重量バランスの偏りで揺動運動を行う。その結果、第1の電極部材10の金属層11に電荷が発生し、その電荷が交流電圧となり、整流回路30及び平滑回路40を経て低電圧の出力電圧Voutとして出力され、腕時計の電子回路を動作させるのである。
[第1の実施形態の発電装置の動作原理の説明:図2、図5]
次に、第1の実施形態の発電装置の金属層に発生した電荷が電気エネルギとして取り出される様子を、図5を用いて詳述する。
ここで、図5(a)、図5(b)は共に、図2の円弧状の切断線B−B´で切断した第1の電極部材10と第2の電極部材20との模式的な部分断面図と、前述した整流回路30と平滑回路40との接続を示している。
図5(a)では、発電機器15には外力が印加されておらず、第2の電極部材20は揺動運動をせず、第1の電極部材10と第2の電極部材20とが相対移動していない場合を示している。図5(b)では、発電機器15に外力が印加され、第2の電極部材20が揺動運動し矢印Cの方向に相対移動して、帯電層21が対向する金属層11の1つ分だけ移動した場合の様子を示している。
図5(a)に示す状態では、帯電層21aと帯電層21bとは、常にマイナスに帯電しているので、帯電層21aに対向している金属層11aと、帯電層21bに対向している金属層11cとには、プラス電荷が発生している。一方、金属層11aと金属層11cとの間に位置する金属層11bは、帯電層21と対向していないので電荷の発生はない。
図5(b)に示す状態では、プラス電荷が誘導されている金属層11aと金属層11cとは、相対移動により対向する帯電層21がなくなったため、このプラス電荷は解放されて、配線13aを通って整流回路30へ流れ込む。これにより、平滑回路40から出力電圧Voutが出力される。またこの状態では、新たに金属層11bが帯電層21aと対向するので、この金属層11bに新たにプラス電荷が発生する。
次に、第2の電極部材20がさらに矢印Cの方向に相対移動すると、金属層11と帯電層21との位置関係は、図5(a)と同様になり、図示はしないが、プラス電荷が発生している金属層11bは、対向する帯電層21がないために、プラス電荷は解放されて、配線13bを通って整流回路30へ流れ込み、平滑回路40からVoutが出力される。
このとき、図5(a)と同様に、金属層11aと金属層11cとは、帯電層21に対向
するのでプラス電荷が誘導される。
このように、第2の電極部材20が揺動運動によって相対移動すると、第1の電極部材10の金属層11と第2の電極部材20の帯電層21との位置関係が順次変化するので、金属層11は交互に電荷の発生と解放とが起き、整流回路30へ交流電圧が伝達されて、平滑回路40から出力電圧Voutが継続的に出力される。
以上のように、第1の実施形態の発電装置は、第1の電極部材10と第2の電極部材20が回転可能に軸支されて回転方向に相対移動すると共に、回転中心から放射状に形成された金属層11と帯電層21は、相対移動方向と直交する方向でその膜厚が異なるように形成されるので、金属層11と帯電層21の表面積が増加して、狭いスペースであっても金属層11と帯電層21との重なり面積の変化量が大きくなり、発電量を増加させることができる。
また、金属層11と帯電層21とのギャップt0が均一であるので、金属層11と帯電層21との重なり面積全体のギャップを均一に狭くでき、これによって、発電効率がさらに向上する効果も備えている。この結果、部品点数が少なく、単純な構造で小型化が容易であり、スペース効率と発電効率に優れた発電装置を提供できる。
[第1の実施形態の変形例1の構成説明:図3、図6]
次に、第1の実施形態の変形例1の発電装置の構成を、図6を用いて説明する。
図6は図2で示す切断線A−A´で切断された断面図である。第1の実施形態の変形例1は、第1の実施形態と比較して金属層11aの膜厚の状態が異なるだけである。
図6に示すように、第2の電極部材20の表面に形成されている帯電層21の膜厚は、第1の実施形態と同様に、回転中心近傍の厚みより、第2の電極部材20の外周部近傍の厚みの方が厚くなるように形成されている。また、第1の電極部材10の表面に形成されている金属層11aの膜厚は、回転中心近傍の厚みも、第1の電極部材10の外周部近傍の厚みも等しい。すなわち、金属層11aは所定の厚みの膜厚で形成されている。
このように、第1の実施形態の変形例1は、帯電層21の膜厚は回転中心近傍が薄く、外周部近傍が厚く形成されて所定の傾きを有しているが、対向する金属層11aの膜厚は一定であることが特徴である。
このような構造であっても、帯電層21の長さを従来技術に比して長くすることができるため、発電量を増加させることができる。
すでに説明したように金属層と帯電層とのギャップが均一であるほど金属層に発生する電荷の粗密が減り、より効率よく電荷を取り出すことができる。図6に示す変形例1の場合、帯電層21と金属層11aとのギャップt0´が均一ではないから、第1の実施形態と比べると若干発電の効率は低下する。
しかし、金属層11aと帯電層21とが最も接近する部分のギャップt0aを第1の実施形態における金属層11と帯電層21とのギャップt0よりも小さくすれば、金属層11aから取り出してなる電圧が高くなるから、結果として第1の実施形態と遜色のない発電効率にすることができる。
また、金属層11aの膜厚が均一であるので、膜厚を変えるための膜厚調整工程が不要となり、発電装置の製造工程を簡略化できるという利点もある。
[第1の実施形態の変形例2の構成説明:図7]
次に、第1の実施形態の変形例2の発電装置の構成を、図7を用いて説明する。
図7は図2で示す切断線A−A´で切断された側断面図である。第1の実施形態の変形例2は、金属層11と帯電層21の膜厚の傾き方向が第1の実施形態と異なるだけである。
第1の電極部材10の表面に形成されている金属層11bの膜厚は、回転中心近傍の厚みが薄く、外周部近傍の厚みが厚くなるように形成されている。また、第2の電極部材20の表面に形成されている帯電層21aの膜厚は、回転中心近傍の厚みが厚く、外周部近傍の厚みが薄くなるように形成されている。すなわち、変形例2の金属層11bと帯電層21aの膜厚の傾きの方向が、第1の実施形態と反対であり、そのギャップt0´´は、第1の実施形態のギャップt0と同様に均一である。
このように、第1の実施形態の変形例2は、金属層11bと帯電層21aとの膜厚の傾きの方向が逆ではあるが、その効果は、第1の実施形態と同様である。
すでに説明したように第2の電極部材の表面の帯電層の膜厚が、回転中心近傍より外周部近傍の方が厚くなるような構成にすれば、第2の電極部材の外周部の質量が帯電層によって増加し、第2の電極部材20が回転しやすくなる。図7に示す変形例2の場合、回転中心近傍より外周部近傍の質量が少ないから、第1の実施形態と比べると若干第2の電極部材20の回転はしにくくなる。
しかし、錘22´を第1の実施形態の錘22よりも重くするなどすれば、第2の電極部材20が回転しやすくなりこともあるので、結果として第1の実施形態と遜色のない発電効率にすることができる。
[第1の実施形態の電池ケースへの組み込み説明:図4]
なお、第1の実施形態の発電装置1をボタン電池型ケースに組み込んで、発電装置をパッケージ化することができる。
このように、発電装置1をボタン電池型ケースに組み込むことで、見かけ上はボタン電池と同様だが、自己発電する発電機器とすることができる。したがって、1次電池のボタン電池等を使用する携帯型電子機器等に使用できるようになる。
すなわち、出力電圧Voutを、搭載する携帯型電子機器等が欲する電源電圧と同等にしておけば、その携帯型電子機器等が使用していた1次電池と取り替えるだけで、容易に、振動で発電して駆動する自己発電駆動型の携帯型電子機器等を実現できる。
なお、ボタン電池型ケースに組み込む発電装置は、前述の第1の実施形態の変形例1、2でもよく、また、後述する第2の実施形態の発電装置を組み込んでもよい。
[第2の実施形態の発電装置の説明:図8]
次に、第2の実施形態の発電装置の構成を、図8を用いて説明する。
図8(a)は図2で示す切断線A−A´と同様の切断線で切断された第2の実施形態の断面図であり、図8(b)は、図8(a)の破線で示す領域の拡大断面図である。第2の実施形態は、第1の実施形態と基本構成や材質等は同一であるので、重複する説明は省略し、第2の実施形態の特徴的な要素を中心に説明する。
図8(a)において、符号60は第2の実施形態の発電装置である。発電装置60は、第1の実施形態と同様に、円板状の第1の電極部材10と、円板状の第2の電極部材61
、及び第1の電極部材10と第2の電極部材61の回転中心を通り軸支する軸2などによって構成される。この構成によって、第1の電極部材10と第2の電極部材61は、軸2によって軸支され、双方が独立して回転可能となる。
第1の電極部材10が第2の電極部材61と対向する表面には、複数の金属層11が回転中心から放射状に形成され、第2の電極部材61が第1の電極部材10と対向する表面には、複数の帯電層62が回転中心から放射状に形成されている。
第1の電極部材10の表面に形成されている金属層11の膜厚は、第1の実施形態と同様に、回転中心近傍の厚みより、第1の電極部材10の外周部近傍の厚みの方が薄くなるように形成されている。すなわち、金属層11の表面は、後述する第2の電極部材61の傾きに沿って所定の傾きを有している。
図8(b)に示すように、第2の電極部材61は、回転中心近傍は厚みが薄く(h1)、外周部近傍は厚みが厚い(h2)構成である。これにより、第2の電極部材61の表面、すなわち、帯電層62が形成される表面61aは、第2の電極部材61の裏面61bに対して所定の傾きθを有することになり、帯電層62の表面61aの長さL2´は、第1の実施形態と同様に傾きθに応じて長くなるので、その表面積も傾きθに応じて広くなる。
第2の電極部材61の表面に設ける帯電層62は、その膜厚が均一である。前述のように、第2の電極部材61の厚さが相対移動方向と直交する方向でその膜厚が異なるようになっているため、第1の実施形態と同様に、金属層11と帯電層62の重なり面積の変化量が増えるので発電効率に優れた発電装置を実現できる。
すなわち、第2の実施形態は、帯電層62の表面積を増やすために、帯電層62の膜厚を変えて傾きを得るのではなく、帯電層62が形成される第2の電極部材61自体の厚さを変えて、帯電層62の表面の傾きを得ていることが大きな特徴である。そして、第2の電極部材61の厚さが変化している(膜厚が異なる)方向は、第1の実施形態と同様に、第2の電極部材61の相対移動方向と直交する方向である(図1の矢印CとD参照)。
なお、第2の電極部材61の厚さを変えるには、精密研削加工や階段状エッチングなどによって実現でき、これは、薄い帯電層の膜厚を変えるよりも加工が容易となる利点がある。
また、第2の実施形態では、前述したように、金属層11の膜厚を変えて、その表面の傾きを帯電層62の傾きに合わせ、第1の電極部材10と第2の電極部材61とのギャップt0が均一になるように構成しているので、金属層11と帯電層62との重なり面積全体のギャップを均一に狭くでき、これによって、発電効率がさらに向上する効果も備えている。なお、金属層11の加工を簡略化するために、第1の実施形態の変形例1のように、金属層11の膜厚を一定にしてもよい。
以上のように、第2の実施形態の発電装置60は、第2の電極部材61自体の厚さを変えることで、帯電層62の表面積を増やすことができ、この結果、第1の実施形態と同様の優れた効果を得ることができる。
[第3の実施形態の説明:図9]
次に、第3の実施形態の発電装置の構成を、図9を用いて説明する。
図9(a)は第3の実施形態の斜視図であり、図9(b)は、図9(a)の切断線E−E´による断面図である。図9において、符号70は第3の実施形態の発電装置である。
発電装置70は、それぞれ直方体形状の第1の電極部材71と第2の電極部材75が対向して配置されている。
第1の電極部材71と第2の電極部材75とは絶縁材でなり、例えば、シリコン、セラミックス等で構成される。第1の電極部材71が第2の電極部材75と対向する面には、アルミニウムなどによって成る導電性の金属層72が、後述する直線状の相対移動方向に沿ってそれぞれ所定の距離を離間して複数形成されている。
この金属層72は、すでに説明した第1の実施形態と同様に、第1の電極部材71の表面に、例えば、エッチング加工などによって形成し、その後、膜厚を研削工程などによって調整する。なお、図9の金属層72は2列であるが、要求される発電量に応じて任意に形成してよい。
第2の電極部材75が第1の電極部材71の金属層72と対向する面には、帯電層76が後述する直線状の相対移動方向に沿ってそれぞれ所定の距離を離間して複数形成されている。
この帯電層76は、すでに説明した第1の実施形態と同様に、帯電しやすい材料を用い、例えばマイナスに帯電する材料としてはシリコン酸化物(SiO2)や、フッ素樹脂材料などを用いるとよい。なお、図9での帯電層76は2列であるが、要求される発電量に応じて任意に形成してよい。
第2の電極部材75は、発電装置70に掛る外力を受け、図示しない手段によって、矢印Fで示す直線状の前後方向に第1の電極部材71に対して相対移動するように構成されている。この相対移動によって、第1の電極部材71の金属層72と、第2の電極部材75の帯電層76との平面的な重なり面積が変化し、それによって金属層72に生じる電荷の変化から電気エネルギが発生し、発電することができる。
図9(b)に示す例では、第2の電極部材75の表面に形成されている帯電層76の膜厚は、第2の電極部材75の中心近傍が薄く、第2の電極部材75の外周部近傍が厚くなるように形成されている。すなわち、帯電層76は、第2の電極部材75の相対移動方向(矢印F)と直交する方向でその膜厚が異なっており、第1の実施形態の帯電層21と同様に、第2の電極部材75の表面に対して所定の傾きを有している。
また、第1の電極部材71の表面に形成されている金属層72の膜厚は、第1の電極部材71の中心近傍が厚く、第1の電極部材71の外周部近傍が薄くなるように形成されている。すなわち、金属層72は、第2の電極部材75の相対移動方向(矢印F)と直交する方向でその膜厚が異なっており、金属層72の表面は、対向する帯電層76の表面の傾きに沿って傾いている。
このように、帯電層76と金属層72との表面が、第2の電極部材75と第1の電極部材71との表面に対して所定の角度で傾いているので、第1の実施形態と同様に、帯電層76と金属層72とのそれぞれの表面積を広くすることができる。この結果、帯電層76と金属層72との重なり面積の変化量が増えるので発電効率に優れた発電装置を実現できる。
また、第3の実施形態は、帯電層76に対向して配置される金属層72の膜厚を帯電層76の表面に沿って形成することで、帯電層76と金属層72とのギャップt0を均一に保つことができる。この結果、帯電層76と金属層72との重なり面積全体のギャップを均一に狭くでき、これによって、さらに発電効率に優れた発電装置を実現できる。
以上のように、第3の実施形態の発電装置70は、第1の電極部材71と第2の電極部材75とが直方体であり、相対移動方向が直線という特徴を有しており、金属層72と帯電層76との膜厚を相対移動方向と直交する方向で変えることにより、金属層72と帯電層76との表面積を増やし、発電効率を向上させることができる。
なお、金属層72に発生する交流電圧を整流、平滑、降圧させる回路の基本構成は、第1の実施形態の回路構成(図4参照)と同様であるので、説明は省略する。
また、第3の実施形態は、第1の電極部材71と第2の電極部材75とが板状の直方体であり、また、相対移動方向が直線状であるので、第1の実施形態で示したボタン電池型ケース等に組み込むことは不向きであるが、携帯電話など外形が直方体やそれに近い形状の携帯型電子機器等に組み込む場合は、内部のスペースを有効に用いることができるので、スペース効率に優れた発電装置を実現できる。
[第4の実施形態の説明:図10]
次に、第4の実施形態の発電装置の構成を、図10を用いて説明する。
図10(a)は第4の実施形態の斜視図であり、図10(b)は、図10(a)の切断線G−G´による断面図である。図10において、符号80は第4の実施形態の発電装置である。発電装置80は、それぞれ直方体形状の第1の電極部材81と第2の電極部材85が対向して配置されている。
第4の実施形態の特徴は、帯電層と金属層の形状である。その他の部分は図9に示す第3の実施形態と同様であるから、説明は省略する。
図10に示すように、第2の電極部材85の表面に形成されている帯電層86の膜厚は、図示するように、両端部が薄く、中心付近が厚くなっており、帯電層86の表面は凸曲面であり、所謂ドーム形状やかまぼこ形状と呼ばれる形状である。すなわち、帯電層86は、第2の電極部材85の相対移動方向(矢印F)と直交する方向でその膜厚が異なっており、凸曲面である。
また、第1の電極部材81の表面に形成されている金属層82の膜厚は、図示するように、両端部が厚く、中心部が薄くなっており、金属層82の表面は凹曲面であり、所謂すりばち形状や反かまぼこ形状などと呼ばれる形状である。すなわち、金属層82は、第2の電極部材85の相対移動方向(矢印F)と直交する方向でその膜厚が異なっており、金属層82の表面は、対向する帯電層86の表面の凸曲面に沿って凹曲面である。
このように、第4の実施形態の帯電層86と金属層82との表面が曲面形状になっているので、表面が平面である場合と比較して帯電層86と金属層82とのそれぞれの表面積を広くすることができる。この結果、第1の実施形態と同様に、帯電層86と金属層82との重なり面積の変化量が増えるので発電効率に優れた発電装置を実現できる。
また、帯電層86に対向して配置される金属層82の膜厚も、帯電層86の凸曲面に沿って変化させて凹曲面としているので、帯電層86と金属層82との全体のギャップt0を均一に保つことができる。この結果、帯電層86と金属層82との重なり面積全体のギャップを均一に狭くでき、これによって、さらに発電効率に優れた発電装置を実現できる。
以上のように、第4の実施形態の発電装置80は、第1の電極部材81と第2の電極部材85とが直方体であり、相対移動方向が直線という特徴を有しており、金属層82及び
帯電層86の表面を曲面にして、その膜厚を相対移動方向と直交する方向で変えることにより、金属層82と帯電層86との表面積を増やし、発電効率を向上させることができる。なお、金属層82に発生する交流電圧を整流、平滑、降圧させる回路の基本構成は、第1の実施形態の回路構成(図4参照)と同様であるので、説明は省略する。
また、第4の実施形態は、第3の実施形態と同様に各電極部材が板状の直方体であり、また、相対移動方向が直線状であるので、携帯電話など外形が直方体やそれに近い形状の携帯型電子機器等に組み込む場合は、内部のスペースを有効に用いることができ、スペース効率に優れた発電装置を実現できる。
金属層82と帯電層86とは、図10に示す例に限定しない。例えば、金属層82が凸曲面で、帯電層86が凹曲面としてもよい。
[第4の実施形態の変形例の説明:図11]
次に、第4の実施形態の変形例の発電装置の構成を、図11を用いて説明する。
図11(a)は第4の実施形態の変形例の斜視図であり、図11(b)は、図11(a)の切断線H−H´による断面図である。図11において、符号90は第4の実施形態の変形例の発電装置である。発電装置90は、それぞれ直方体形状の第1の電極部材91と第2の電極部材95が対向して配置されている。
第4の実施形態の変形例の特徴は、帯電層と金属層の形状である。その他の部分は図9に示す第3の実施形態、図10に示す第4の実施形態と同様であるから、説明は省略する。
図11(b)に示すように、第2の電極部材95の表面に形成されている帯電層96の膜厚は、図示するように、帯電層96の両端部が薄く、中心付近が厚くなった山形状である。すなわち、帯電層96は、第2の電極部材95の相対移動方向(矢印F)と直交する方向でその膜厚が異なっており、斜面を有する山形状である。
また、第1の電極部材91の表面に形成されている金属層92の膜厚は、図示するように、金属層92の両端部が厚く、中心部が薄くなった谷形状である。すなわち、金属層92は、第2の電極部材95の相対移動方向(矢印F)と直交する方向でその膜厚が異なっており、金属層92の表面は、対向する帯電層96の表面の山形状に沿って谷形状である。
このように、第4の実施形態の変形例の帯電層96と金属層92との表面が山形状と谷形状になっているので、表面が平面である場合と比較して帯電層96と金属層92とのそれぞれの表面積を広くすることができる。この結果、第1の実施形態と同様に、帯電層96と金属層92との重なり面積の変化量が増えるので発電効率に優れた発電装置を実現できる。
また、帯電層96に対向して配置される金属層92の膜厚を、帯電層96の山形状に沿って変化させて谷形状としているので、帯電層96と金属層92との全体のギャップt0を均一に保つことができる。この結果、帯電層96と金属層92との重なり面積全体のギャップを均一に狭くでき、これによって、さらに発電効率に優れた発電装置を実現できる。
以上のように、第4の実施形態の変形例の発電装置90は、第1の電極部材91と第2の電極部材95とが直方体であり、相対移動方向が直線という特徴を有しており、金属層92と帯電層96との表面をそれぞれ谷形状、山形状にして、その膜厚を相対移動方向と
直交する方向で変えることにより、金属層92と帯電層96の表面積を増やし、発電効率を向上させることができる。
また、金属層92に発生する交流電圧を整流、平滑、降圧させる回路の基本構成は、第1の実施形態の回路構成(図4参照)と同様であるので、説明は省略する。
金属層92と帯電層96とは、図11に示す例に限定しない。例えば、金属層92が山形状で、帯電層96が谷形状としてもよい。
このように第4の実施形態とその変形例では、帯電層と金属層の表面状態を様々に構成することで、帯電層と金属層との重なり面積を増やして、発電効率を向上させることができる。
以上、本発明の発電装置について4つの実施形態及びその変形例を説明した。もちろんその説明に際して用いた斜視図や断面図等は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を満たすものであれば、任意に変更してよい。
例えば、図3に示す第1の実施形態における、帯電膜21及び金属層11は、図示した例では、その膜厚を回転中心近傍から外周部近傍にかけて滑らかな傾斜面を有するように変化させる例を示したが、これに限定せず、階段形状を有するようにしてもよい。
例えば、図9に示す第3の実施形態の発電装置70において、第1の電極部材71又は第2の電極部材75を、図8に示す第2の実施形態の発電装置60を構成する第2の電極部材61のような構成にしてもかまわない。すなわち、金属層72や帯電層76の膜厚を一定とし、その基台となる第1の電極部材71や第2の電極部材75の厚さを、相対移動方向と直交する方向で異なるようにしてもよいのである。
もちろん、そのような構成は、図10に示す第4の実施形態及び図11に示す第4の実施形態の変形例にも用いることができ、金属層82、92や帯電層86、96の膜厚を一定とし、基台となる第1の電極部材81、91や第2の電極部材85、95の厚さを、相対移動方向と直交する方向で異なるようにしてもよい。
説明した実施形態では、金属層及び帯電層は、相対移動方向に沿って所定の間隔を空けて複数配置されている例であったが、もちろん、発電装置は、金属層と帯電層との対が1つであってもよい。その場合の帯電層や金属層の面積などは、発電装置の仕様により自由に決めることができる。
また、本発明の発電装置を、特許文献1に示した従来技術のような、発電装置にバネ等の弾性体を設け、その伸縮による運動を2つの電極部材の相対移動に用いる構成と組み合わせてもよいことは無論である。
本発明の発電装置は、単純な構成で小型化が容易であり、優れた発電効率を有しているので、携帯型電子機器の電源装置として、幅広く利用することができる。特に、腕時計の電源装置として好適である。
1、60、70、80、90 発電装置
2 軸
10、71、81、91 第1の電極部材
11、72、82、92 金属層
12、23 貫通孔
15 発電機器
20、61、75、85、95 第2の電極部材
21、62、76、86、96 帯電層
22 錘
30 整流回路
40 平滑回路
100 負荷回路

Claims (7)

  1. 所定形状の金属層を表面に有する第1の電極部材と、
    所定形状の帯電層を表面に有する第2の電極部材と、
    前記金属層と前記帯電層とが所定の距離で離間して対向するように前記第1の電極部材と前記第2の電極部材とを配置し、
    前記第1の電極部材と前記第2の電極部材とが相対移動し、前記金属層と前記帯電層との平面的な重なり面積の変化に伴う前記金属層に生じる電荷の変化を電気エネルギとして取り出す発電装置において、
    前記第2の電極部材又は前記帯電層は、前記相対移動方向と直交する方向で、その厚みが異なる
    ことを特徴とする発電装置。
  2. 前記第1の電極部材又は前記金属層は、前記相対移動方向と直交する方向でその厚みが異なる
    ことを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
  3. 前記帯電層又は前記金属層は、前記相対移動方向と直交する方向でその表面が曲面又は斜面を有する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の発電装置。
  4. 前記第1の電極部材と前記第2の電極部材とは回転可能に軸支されており、
    前記金属層と前記帯電層とは、回転中心から放射状に形成されている
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の発電装置。
  5. 前記第2の電極部材又は前記帯電層は、前記回転中心より外周部の方がその膜厚が厚い
    ことを特徴とする請求項4に記載の発電装置。
  6. 前記第1の電極部材と前記第2の電極部材とは直線状の前後方向に移動可能な直方体であり、
    前記金属層と前記帯電層とは、それぞれが対向するように前記第1の電極部材と前記第2の電極部材とに形成されている
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の発電装置。
  7. 前記金属層及び前記帯電層は、前記相対移動方向に沿って所定の間隔を空けて複数配置されている
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の発電装置。
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