以下図面に基づいて本発明の発電装置の具体的な実施形態を詳述する。
なお、説明にあっては発明とは関係のない構成は省略している。例えば、電気的な配線や各部材を固定する係止機構、また、発電装置に掛る外力を第1の電極部材と第2の電極
部材とが相対移動するように変換する機構などである。また、同一の構成については同一の番号を付与するものとする。
[各実施形態の特徴]
第1の実施形態の特徴は、第1及び第2の電極部材が一方向に回転可能に軸支されており、第2の電極部材又は帯電層は、相対移動時に相対移動方向に直交する方向に揚力を発生するようにその断面が翼形状であることである。
第2の実施形態の特徴は、第1及び第2の電極部材が揺動回転可能に軸支されており、第2の電極部材の相対移動方向が、所謂時計回り及び反時計回りとなる例であり、どちらの方向に回転しても揚力が発生するような翼形状を有することである。
第3の実施形態の特徴は、第2の電極部材が相対移動方向に対して所定の角度で傾斜することで翼形状を形成していることである。
[第1の実施形態の発電装置の構成説明:図1、図2]
初めに第1の実施形態の発電装置の構成を図1と図2とを用いて説明する。
図1は第1の実施形態の分解斜視図であり、図2は正面図である。図1、図2において、符号1は第1の実施形態の発電装置である。発電装置1は、円板状の第1の電極部材10と、円板状の第2の電極部材20、及び、第1の電極部材10と第2の電極部材20の回転中心を通り軸支する軸2などによって構成される。
軸2の一方の一端2aは、第1の電極部材10の回転中心に形成される貫通孔12に嵌め込まれている。また、軸2の他方の一端2bは、第2の電極部材20の回転中心に形成される貫通孔23に嵌め込まれる。また、第1の電極部材10と第2の電極部材20との間には、軸2に填め込まれて固定されるリング状の上押さえ3が配置されている。また、第2の電極部材20を挟んだ図面上の下部には、軸2の一端2bに填め込まれて固定されるリング状の下押さえ4が配置されている。
この構成によって、第1の電極部材10と第2の電極部材20は、軸2によって軸支され、双方が独立して回転可能となる。
第2の電極部材20は、上押さえ3と下押さえ4とによって上下方向が規制されている。特に第1の電極部材10までの位置を規定する上押さえ3の位置は、第2の電極部材20が第1の電極部材10に対して適正な距離で配置されるような位置となっている。
第2の電極部材20が上押さえ3と下押さえ4との間で自由になり、軸2に対して回転可能となるために、上押さえ3と下押さえ4は、第2の電極部材20に対して僅かな隙間を設けている。この隙間があがきである。このあがきの詳細は後述する。
図2は、このように第1の電極部材10と第2の電極部材20とを軸2により嵌合させたときに第1の電極部材10の側から見た平面図となっている。なお、図1に示す切断線A−A´、図2に示す切断線B−B´、C−C´については後述する。
第1の電極部材10と第2の電極部材20とは絶縁材でなり、例えば、シリコン、セラミックス等で構成される。第1の電極部材10が第2の電極部材20と対向する面には、アルミニウムなどによってなる複数の導電性の金属層11が、回転中心から放射状に形成されている。この金属層11は発生する電荷を取り出す電極として機能する。
この金属層11は、第1の電極部材10の表面に、例えば、知られているエッチング加
工技術などによって形成することができる。また、第1の電極部材10は、金属層11を図示するために透視図として示している。
第2の電極部材20が第1の電極部材10と対向する面には、複数の帯電層21が、回転中心から放射状に形成されている。すなわち、帯電層21は、後述する交流発電を行うために、周回状に所定の間隔を空けて形成されている。
第1の電極部材10に設ける金属層11と第2の電極部材20に設ける帯電層21との数は、一例として8個としているが、第1の電極部材10と第2の電極部材20とをどのような速度で回転させるか(相対移動する速度)により決まるものであって、発電装置1の仕様により決定される。
帯電層21は、絶縁体で構成する。この絶縁体は帯電しやすい材料を用い、例えばマイナスに帯電する材料としてはシリコン酸化物(SiO2)や、フッ素樹脂材料などを用いるとよい。具体的には一例として、マイナスに帯電する材料として旭硝子製のフッ素樹脂材料であるCYTOP(登録商標)などがある。
帯電層21にフッ素樹脂材料を用いる場合、液状のフッ素樹脂材料を第2の電極部材20の表面に、ディップ方式やポッティング方式などによって塗布した後、型押しによって所定の形状や膜厚に形成することができる。
また帯電層21に電荷を持たせる方法として、コロナ放電を用いることができる。このコロナ放電は、図示しないが、帯電層21に対して数mm離した距離に固定したコロナ放電用ニードルに、例えば、−2000Vから−8000V程度の電圧を印加し、帯電層21に対してマイナスの電荷を打ち込むことで帯電させる。なお、以下の実施形態では、帯電層はマイナスに帯電されているものとして説明を行う。
また、第2の電極部材20に形成されている帯電層21は、第1の電極部材10と第2の電極部材20とを相対運動させたとき、相対移動方向に直交する方向に揚力を発生するようにその断面が翼形状となっている。
図1に示す例では、帯電層21の断面が翼形状となるには、帯電層21の膜厚を相対移動方向に平行する方向で変えることでなしている。つまり、帯電層21の表面を相対移動方向に対して傾斜させている。
帯電層21の断面を翼形状とする目的は、前述の通り相対移動方向に直交する方向に揚力を発生させるためであるが、第2の電極部材20の翼形状の詳細と揚力の作用については後述する。
また、第2の電極部材20の表面で帯電層21が形成されていない複数の領域は、第2の電極部材20を軽量化し、また、揚力を効率よく発生させるために、空洞域24が形成されている。なお、空洞域24は隣接する帯電層21の間に貫通孔のように、例えば円形のように開口させてもよく、もちろん設けなくてもよい。
第2の電極部材20の外周部には、錘22が配置されている。この錘22は、銅や鉛などの重い金属材料を用いて構成するとよい。第2の電極部材20をシリコンなどで形成する場合は、錘22と嵌合する溝などを設けておき、そこに錘22を嵌め込むなどすればよく、接着剤等で固定すればなおよい。
この錘22によって第2の電極部材20全体の重量バランスが偏るため、外部からの振
動(外力)を受けることで、第2の電極部材20は、矢印Mの方向に軸2を中心として回転し、第1の電極部材10と第2の電極部材20が相対移動する。この矢印Mの方向が相対移動方向である。なお、矢印Mは図1においては、時計回り(右回転)である。
また、錘22は第2の電極部材20の外周部の外側に配置された構成となっているが、図示しないが第2の電極部材20の外周部の内側に取り付けてもよい。例えば、第2の電極部材20の第1の電極部材10と対向する面とは反対側の面に設ける例、第2の電極部材20の内部に組み込む例などがある。この場合、錘22の分だけ第2の電極部材20が占める平面積を大きくできる。
このように錘22をどのように設けるか、どのような形状の錘22を設けるなどは、第1の電極部材10と第2の電極部材20とをどのような速度で回転させるか(相対移動する速度)により決まるものであって、発電装置1の仕様により決定される。
以上の構成によって、第1の電極部材10と第2の電極部材20とは、軸2によって回転可能に軸支され、金属層11と帯電層21とは、所定の距離で離間して対向するように配置される。そして、第1の電極部材10と第2の電極部材20とが、矢印Mで示す相対移動方向に回転運動することで、金属層11と帯電層21との平面的な重なり面積の変化に伴う金属層11に生じる電荷の変化を電気エネルギとして取り出すことができる。
以上の説明では、第2の電極部材20に錘22を設けて外力により回転させることで第1の電極部材10との相対移動をする構成を説明した。もちろん、錘を第1の電極部材10に設けて回転させてもよいが、後述する回路や配線により第1の電極部材10の金属層11から発生した電荷を取り出す必要があるため、そのような電気的な信号の取出しの必要がない第2の電極部材20を回転させる方が都合がよいのである。
[第1の実施形態の翼形状の説明:図3]
次に、図3を用いて第2の電極部材20の翼形状の構成と作用を説明する。
ここで、図3(a)は、図2に示す回転中心を通る切断線B−B´で切断された発電装置1の断面図であり、図3(b)は、図1で示す切断線A−A´で切断された第2の電極部材20の拡大断面図である。
図3において、発電装置1は、前述したように、第1の電極部材10と第2の電極部材20、及び軸2などによって構成される。そして、第1の電極部材10が第2の電極部材20と対向する表面には金属層11が形成され、第2の電極部材20が第1の電極部材10と対向する表面には帯電層21が形成されている。
図3に示すように、軸2によって軸支されている第2の電極部材20は、上押さえ3と下押さえ4とによって上下が規制されており、第2の電極部材20が自由に回転可能となるために、上押さえ3と下押さえ4とは、第2の電極部材20に対してあがきDを設けて固定されている。すなわち、図示するように、上押さえ3と下押さえ4との間隔をSとして、第2の電極部材20の厚みをhとすると、あがきDは、D=S−hとなる。
第2の電極部材20が規制される上押さえ3と下押さえ4との間隔Sは、加工ばらつき等によって変動するので、あがきDがゼロ以下とならないように、あがきDに対してばらつき幅に応じたある程度のマージンを持たせる必要がある。
また、発電装置1が落下するなどして不測の衝撃が加わるとき、上押さえ3と下押さえ4との間隔Sが適正でないと、例えば、第2の電極部材20がその衝撃で他の部材(例えば、第1の電極部材10)と衝突し、破壊を生じてしまう。
したがって、上押さえ3及び下押さえ4は、あがきDがゼロ以下にならない位置や、第2の電極部材20が他の部材と衝突しない位置となるように、予め設計された適正な位置で設けている。
上押さえ3と下押さえ4との間隔Sが存在すると、第2の電極部材20は、発電装置1の姿勢の変化によって軸2を上下するから、例えば、第2の電極部材20が下押さえ4に当接することもあれば、上押さえ3に当接することもある。
図3(a)で示す例では、第2の電極部材20が上押さえ3に当接しており、あがきDは、図示するように下押さえ4側にできる。この場合は、第2の電極部材20が第1の電極部材10に近くなるので、金属層11と帯電層21とのギャップgは小さくなる。
一方、図示しないが、第2の電極部材20が下押さえ4に当接して、あがきDが上押さえ3側にできる場合は、ギャップgは大きくなる。
このように、第1の電極部材10の金属層11と第2の電極部材20の帯電層21との間のギャップgは、発電装置1の姿勢の変化により変動するのである。そして、金属層11と帯電層21との間のギャップgが変化すると、前述の図11で示したように、発電装置1の発電量Pもギャップgに反比例して変動する。
そうすると、金属層11と帯電層21との重なり面積の変化量と相対移動速度とが一定であっても、発電装置1の姿勢差によって発電量が大きく変動するのである。
しかしながら、本発明は、このような姿勢差による発電量の変動を、第2の電極部材20の断面を翼形状とすることで解消している。すなわち、矢印Mで示す方向に相対移動したときに、その相対移動方向に直交する方向に揚力を発生させてギャップgの変動を減少させるからである。
図3(b)は、第2の電極部材20の翼形状とその作用を示しており、第2の電極部材20の断面は、矢印Mで示す相対移動方向に対して、一部が傾斜しており、所謂、翼形状となっている。すなわち、第2の電極部材20は、矢印Mで示す相対移動方向に回転することで周囲の空気とぶつかる側(図面上の左側)の厚みh1が厚く、その反対方向で空気が通り過ぎる側(図面上の右側)の厚みh2が薄く形成されている。
図3(b)に示す符号Kは空気の流れを示している。このような形状により、翼形状の第2の電極部材20の下側を通る空気の流れに対して、第2の電極部材20の上側(帯電層21を設けている側)を通る空気の流れの方がその速度が速くなり、これによって、第2の電極部材20に対して矢印Mで示す相対移動方向に直交する上向き方向に揚力Fが発生する。
この第2の電極部材20の断面の翼形状は、本実施形態においては、図3(b)に示すように、第2の電極部材20の表面に形成する帯電層21の膜厚を変えることで実現している。すなわち、第2の電極部材20が空気にぶつかる側(図面上の左側)の帯電層21の膜厚を厚くし、その反対方向(図面上の右側)の帯電層21の膜厚を薄く形成することで帯電層21の表面を傾斜させている。
なお、図3(b)に示すような帯電層21の形状に形成するには知られている手法を用いることができる。一例をあげると、帯電材料を第2の電極部材20の表面に塗布するなどした後、所定の形状を有する型を押し当てるなどすればよい。
このように、帯電層21の膜厚を変えることで第2の電極部材20の断面を翼形状にしているので、シリコンやセラミックス等でなる第2の電極部材20自体は、平板状でよく、第2の電極部材20の形成加工は簡単になる。
この揚力Fによって、第2の電極部材20は、第1の電極部材10に近づこうとするので、図3(a)で示すように、第2の電極部材20は第1の電極部材10に近い上押さえ3に当接して、あがきDが下押さえ4側にできるようになるのである。この結果、ギャップgは上押さえ3に規制されて狭められ適正な距離で安定するので、発電量の変動が減り、大きな発電量を安定して出力することができる。
例えば、揚力Fによって第2の電極部材20が上押さえ3に当接したときに、金属層11と帯電層21のギャップgが適正な値(例えば約20μm)となるように、上押さえ3を位置決めすれば、図11のグラフで示したように、大きな発電量を得ることができる。
揚力Fは、第2の電極部材20が相対移動時に発生する力であるので、発電装置1が相対移動中であれば、姿勢差によって第2の電極部材20のあがきDがどのような状態であっても、ギャップgは適正な状態が維持される。例えば、発電装置1の姿勢によって、第2の電極部材20が下押さえ4に当接してギャップgが広がるような場合であっても、揚力Fの働きで第2の電極部材20は上押さえ3側に移動し、ギャップgは狭められて適正なギャップgが維持されるのである。
もちろん、上押さえ3を設ける位置は、発電装置1に加わる万有引力や落下などの衝撃がどの方向から印加しても、第2の電極部材20が第1の電極部材10と当接してしまうことはないような位置に設けている。
下押さえ4を設ける適正も同様である。発電装置1に外力が印加されず、第1の電極部材10と第2の電極部材20とが相対移動していないときは、第2の電極部材20は揚力Fを発生していないから上押さえ3の方向に力が働いていないフリーな状態になっている。そのような状態のとき、第2の電極部材20が下押さえ4に当接している場合がある。
そのとき、下押さえ4の位置は、発電装置1に加わる万有引力や落下などの衝撃がどの方向から印加しても、第2の電極部材20がフレームやシャシーといった図示しない他の部材と当接してしまうことはないような位置に設けている。
つまり、発電装置1は、上押さえ3と下押さえ4との間隔Sがどのような値になっても、第1の電極部材10と第2の電極部材20とが相対移動している限り、双方のギャップgは適正に保たれ、最も効率よく発電がなされるのである。
以上の説明のように、第1の実施形態は、上押さえ3と下押さえ4との間隔Sにより第2の電極部材20の位置によりあがきDが生まれ、よってギャップgが変動するが、第2の電極部材20の断面を翼形状にすることで揚力Fを発生させ、この揚力Fによってギャップgの変動を抑え、発電装置の姿勢がどのように変化しても安定した発電を効率よく継続できる。
[第1の実施形態の発電装置を含む発電機器の回路構成の説明:図1、図4]
次に、第1の実施形態の発電装置を含む発電機器の回路構成の概略を、図4を用いて説明する。図4において、符号60は発電装置1を含む発電機器である。発電機器60は、発電装置1と整流回路30、及び、平滑回路40などによって構成される。
発電装置1の第1の電極部材10の表面には、前述したように、回転中心から放射状に複数の金属層11が形成されている。この金属層11は、図1と同様に一例として8個で構成され、隣接する金属層11同士が電気的に分離されるように、配線によって1つずつ飛び飛びに電気的に接続されている。
すなわち、4個の金属層11が配線13aによって1つずつ飛び飛びに接続され、他の4個の金属層11が配線13bによって1つずつ飛び飛びに接続される。この2本の配線13a、13bは整流回路30に接続している。この構成によって、金属層11に誘起される電荷は、整流回路30に交流電圧(例えば、数10V)として入力されることになる。
整流回路30は、4つのダイオードによって構成される全波整流回路である。この整流回路30は、一組の入力端子30a、30bと、一組の出力端子30c、30dとを有している。前述の金属層11に接続された一方の配線13aは、整流回路30の入力端子30aに接続され、他方の配線13bは、整流回路30の入力端子30bに接続される。この接続により配線13a、13bからの交流電圧は、整流回路30によって全波整流され、出力端子30c、30dから整流電圧Vrが出力される。
平滑回路40は、整流電圧Vrを入力して平滑化する平滑回路ブロックと、平滑化した電圧を所定の電圧に降圧する降圧回路ブロックとを有する、よく知られた回路である。
この平滑回路40は、一組の入力端子41a、41bと、一組の出力端子41c、41dとを有している。入力端子41a、41bは、整流回路30の出力端子30c、30dが接続されて、全波整流された整流電圧Vrを入力する。
平滑回路40は、図示しない平滑回路ブロックに整流電圧Vrが入力されると、内部のコンデンサなどにより整流電圧Vrを平滑化し、安定した直流電圧に変換する。さらに、内部の図示しない降圧回路ブロックによって所定の低電圧(例えば、3V)に変換し、出力端子41c、41dから、出力電圧Voutを出力する。
符号100は、発電機器60からの出力電圧Voutの供給を受けて動作する外部の負荷回路である。負荷回路100は、発電機器60(発電装置1)が搭載される携帯型電子機器等の内部回路に相当する。例えば、携帯型電子機器等を腕時計とすると、負荷回路100は、腕時計の発振回路や分周回路等で構成される電子回路に相当する。
発電機器60(発電装置1)が腕時計に組み込まれている場合、腕時計の使用者(図示せず)が、歩いたりすることで腕が動き、それが外力になり発電装置1の第2の電極部材20(図1参照)が、錘22による重量バランスの偏りで回転運動を行う。その結果、第1の電極部材10の金属層11に電荷が発生し、その電荷が交流電圧となり、整流回路30及び平滑回路40を経て低電圧の出力電圧Voutとして出力され、腕時計の電子回路を動作させるのである。
[第1の実施形態の発電装置の発電原理の説明:図2、図5]
次に、第1の実施形態の発電装置1の金属層11に発生した電荷が電気エネルギとして取り出される様子を、図5を用いて詳述する。
ここで、図5(a)、図5(b)は共に、図2の円弧状の切断線C−C´で切断した第1の電極部材10と第2の電極部材20との模式的な部分断面図と、前述した整流回路30と平滑回路40との接続を示している。
図5(a)では、発電装置1には外力が印加されておらず、第2の電極部材20は回転運動をせず、第1の電極部材10と第2の電極部材20とが相対移動していない場合を示
している。図5(b)では、発電装置1に外力が印加され、第2の電極部材20が回転運動し矢印Mの方向に相対移動して、帯電層21が対向する金属層11の1つ分だけ移動した場合の様子を示している。
図5(a)に示す状態では、帯電層21aと帯電層21bとは、常にマイナスに帯電しているので、帯電層21aに対向している金属層11aと、帯電層21bに対向している金属層11cとには、プラス電荷が発生している。一方、金属層11aと金属層11cとの間に位置する金属層11bは、帯電層21と対向していないので電荷の発生はない。
図5(b)に示す状態では、プラス電荷が誘導されている金属層11aと金属層11cとは、相対移動により対向する帯電層21がなくなったため、このプラス電荷は解放されて、配線13aを通って整流回路30へ流れ込む。これにより、平滑回路40から出力電圧Voutが出力される。またこの状態では、新たに金属層11bが帯電層21aと対向するので、この金属層11bに新たにプラス電荷が発生する。
次に、第2の電極部材20がさらに矢印Mの方向に相対移動すると、金属層11と帯電層21との位置関係は、図5(a)と同様になり、図示はしないが、プラス電荷が発生している金属層11bは、対向する帯電層21がないために、プラス電荷は解放されて、配線13bを通って整流回路30へ流れ込み、平滑回路40からVoutが出力される。
このとき、図5(a)と同様に、金属層11aと金属層11cとは、帯電層21に対向するのでプラス電荷が誘導される。
このように、第2の電極部材20が回転運動によって相対移動すると、第1の電極部材10の金属層11と第2の電極部材20の帯電層21との位置関係が順次変化するので、金属層11は交互に電荷の発生と解放とが起き、整流回路30へ交流電圧が伝達されて、平滑回路40から出力電圧Voutが継続的に出力される。
以上のように、第1の実施形態の発電装置は、第1の電極部材10と第2の電極部材20が回転可能に軸支されて回転方向に相対移動するので、狭いスペースであっても金属層11と帯電層21との重なり面積の変化量が大きく、発電効率に優れた発電装置を提供できる。
また、金属層11と帯電層21とのギャップgは、前述したように、第2の電極部材20の断面が翼形状であるので、回転による相対移動によって揚力Fが発生し、ギャップgを発電装置1の姿勢に関わりなく安定して適正に維持できる。この結果、姿勢差の影響を受けることなく安定した発電を効率よく継続する発電装置を提供できる。
[第1の実施形態の変形例1の構成説明:図1、図6]
次に、第1の実施形態の変形例1の発電装置の構成を図6を用いて説明する。
図6は、図1で示す切断線A−A´で切断された第2の電極部材20dの拡大断面図である。この変形例1は、第2の電極部材20dの表面に形成される帯電層21dの膜厚を階段状にして翼形状を形成することが特徴である。
図6に示すように、変形例1の第2の電極部材20dは、前述の第1の実施形態の第2の電極部材20(図3(b)参照)と同様に、その断面が翼形状である。そして、変形例1では、第2の電極部材20dの表面に形成する帯電層21dの膜厚を階段状に変えることで翼形状を実現している。
すなわち、第2の電極部材20dが矢印Mで示す相対移動方向に回転することで周囲の空気とぶつかる側(図面上の左側)の帯電層21dの膜厚を最も厚く形成し、空気の流れ
に沿って膜厚を階段状に薄く形成することで、第2の電極部材20dの断面を翼形状としている。
このように第2の電極部材20dの断面を階段状に形成して翼形状にすることで、第1の実施形態と同様に、第2の電極部材20dが矢印Mで示す相対移動方向に回転すると、周囲の空気の流れKが変えられる。帯電層21dの膜厚が階段状に変化していても、それに沿って空気は流れるので、第2の電極部材20dの上面と下面との間で空気の流れKの速度に差が生じる。よって、第2の電極部材20dには矢印Mで示す相対移動方向に直交する方向に揚力Fが発生する。
この揚力Fの発生によって第1の実施形態と同様に、第2の電極部材20dは、上押さえ3に当接して、あがきDが下押さえ4側にできるようになる(図3(a)参照)。この結果、ギャップgは上押さえ3に規制されて狭められ適正な距離で安定するので、発電量の変動が減り、大きな発電量を安定して出力することができる。
なお、帯電層21dの膜厚を階段状に変化させるには、第1の実施形態と同様に、帯電材料を第2の電極部材20dの表面に塗布した後、一例として帯電層21dの形状に対応した型を型押しすることによって所定の膜厚に形成する方法を用いることができる。
また、帯電層21dをシリコン酸化膜などで構成するときは、そのシリコン酸化膜を均等な膜厚で形成し、その後に帯電層21dが階段状になるように、例えば、エッチングガスに四フッ化メタン(CF4)等を用いてマスクをずらして複数回エッチングする、良く知られた手法を用いることで容易に構成できる。
なお、図6に示す例では、図面を見やすくするために階段状の段差を大きくしているが、もちろん図示する形状に限定はされない。階段の数やその段差の大きさを変えてもよいことは無論である。
このように、この変形例1は、帯電層21dの膜厚を階段状に形成して翼形状を得ているので、翼形状を形成しやすい利点がある。
[第1の実施形態の変形例2の構成説明:図1、図7]
次に、第1の実施形態の変形例2の発電装置の構成を図7を用いて説明する。
図7は、図1で示す切断線A−A´で切断された第2の電極部材20eの拡大断面図である。この変形例2は、第2の電極部材20eに形成される帯電層21eが滑らかな曲面によって翼形状を形成することが特徴である。
図7に示すように、変形例2の第2の電極部材20eは、前述の第1の実施形態の第2の電極部材20(図3(b)参照)と同様に、その断面が翼形状である。そして、変形例2では、第2の電極部材20eの帯電層21eを曲面に形成して膜厚を変え翼形状としている。
すなわち、第2の電極部材20eが矢印Mで示す相対移動方向に回転することで周辺の空気とぶつかる側(図面上の左側)の帯電層21eを曲面によって大きく盛り上げ、空気の流れKに沿って膜厚を滑らかに徐々に薄く形成することで、第2の電極部材20eの断面を翼形状としている。
また、この変形例2は、帯電層21eを曲面によって翼形状としているが、この曲面の形状を微調整することで、空気の流れKを最適化し、相対移動速度が遅くても大きな揚力Fを得ることができる利点がある。
なお、帯電層21eを曲面によって翼形状にさせるには、第1の実施形態と同様に、帯電材料を第2の電極部材20eの表面に塗布した後、一例として帯電層21eの形状に対応した型を型押しすることによって所定の曲面に形成する方法を用いることができる。
また、帯電層21eをシリコン酸化膜などで構成するときは、そのシリコン酸化膜を均等な膜厚で形成し、その後に帯電層21eが階段状になるように、例えば、エッチングガスに四フッ化メタン(CF4)等を用いてマスクをずらして複数回ドライエッチングし、さらにその表面の段差が少なくなるように、例えば、フッ酸(HF)を用いた水溶液などでウェットエッチングする、良く知られた手法で容易に構成できる。
[第1の実施形態の変形例3の構成説明:図1、図8]
次に、第1の実施形態の変形例3の発電装置の構成を図8を用いて説明する。
図8は、図1で示す切断線A−A´で切断された第2の電極部材20fの拡大断面図である。この変形例3は、第2の電極部材20f自体の厚みを変えることで翼形状を形成していることが特徴である。
図8に示すように、変形例3の第2の電極部材20fは、前述の第1の実施形態の第2の電極部材20(図3(b)参照)と同様に、その断面が翼形状である。そして、変形例3では、第2の電極部材20f自体の厚みを変えて傾斜させることで、その断面を翼形状としている。
すなわち、第2の電極部材20fが矢印Mで示す相対移動方向に回転することで周辺の空気とぶつかる側(図面上の左側)の第2の電極部材20fの厚みを厚くし、空気の流れKに沿って厚みを直線的に薄く形成することで、断面を翼形状としている。なお、第2の電極部材20fの表面に形成される帯電層21fの膜厚は均一でよい。
このように第2の電極部材20fの断面を第2の電極部材20f自体の厚みを変えて翼形状にすることで、第1の実施形態と同様に、第2の電極部材20fが矢印Mで示す相対移動方向に回転すると、周囲の空気の流れKが変えられて翼形状に沿って流れるので、第2の電極部材20fには矢印Mで示す相対移動方向Mに直交する方向に揚力Fが発生する。
なお、第2の電極部材20fの厚さを変えるには、精密研削加工技術を用いることができる。例えば円柱状の母材から削り出すなどして形成する。
また、第2の電極部材20fは、所謂、三次元造形法(積層造形法)を用いて形成してもよい。このような手法は複雑な形状も一体造形が可能であるから、第2の電極部材20fを構成する材質が造形可能な材料(例えば、樹脂)とするときには、良い選択肢である。
また、第2の電極部材20fをシリコンで構成する場合には、そのシリコンを均等な膜厚で形成し、その後に帯電層21fを形成する表面が微細な階段状になるように、例えば、エッチングガスに六フッ化硫黄(SF6)等を用いてマスクをずらして複数回ドライエッチングし、さらにその表面の段差が少なくなるように、例えば、硝酸(HNO3)を用いた水溶液などでウェットエッチングする、良く知られた手法で容易に構成できる。
このように、表面に傾斜面を有する第2の電極部材20fを形成することは、薄い膜厚の帯電層21fの膜厚を変えるよりも加工が容易となる利点がある。
[第1の実施形態の電池ケースへの組み込み説明]
なお、第1の実施形態の発電装置1をボタン電池型ケースに組み込んで、発電装置をパッケージ化することができる。
このように、発電装置1をボタン電池型ケースに組み込むことで、見かけ上はボタン電池と同様だが、自己発電する発電機器とすることができる。このボタン電池型ケースの外形寸法とプラス及びマイナスの端子位置とを、良く知られた一次電池のボタン電池と同じにしておけば、本来その一次電池のボタン電池等を使用する携帯型電子機器等に使用できるようになる。
もちろん、発電機器50の出力電圧Voutを、そのボタン電池と同じにしておけば(つまり、搭載する携帯型電子機器等が欲する電源電圧と同等にしておけば)、その携帯型電子機器等が使用していた一次電池と取り替えるだけで、容易に、振動で発電して駆動する自己発電駆動型の携帯型電子機器等を実現できる。
なお、ボタン電池型ケースに組み込む発電装置は、前述の第1の実施形態の変形例1、2、3でもよく、また、後述する第2及び第3の実施形態の発電装置を組み込んでもよい。
[第2の実施形態の発電装置の説明:図1、図9]
次に、第2の実施形態の発電装置の構成を、図9を用いて説明する。
すでに説明した第1の実施形態では、第1及び第2の電極部材は一方向(説明した例では、時計回り)に回転する例であった。この第2の実施形態は、第1及び第2の電極部材が揺動回転可能に軸支されており、第2の電極部材の相対移動方向が、時計回り、又は反時計回りとなる例である。そして、回転方向が異なっても揚力が発生するような翼形状を有することが特徴である。
図9は、図1で示す切断線A−A´で切断された第2の電極部材20gの拡大断面図である。この第2の実施形態の基本構成は、第1の実施形態と同様であり、第2の電極部材20gの構成のみが異なる。すなわち、第2の電極部材20gは、その相対移動方向が時計回り、又は反時計回りのどちらに回転しても揚力が発生する翼形状を有している。
図9に示すように、第2の実施形態の第2の電極部材20gは、前述の第1の実施形態の第2の電極部材20(図3(b)参照)と同様に、その断面が翼形状であるが、揺動回転に対応するために、第2の電極部材20gの表面に形成する帯電層21gの表面を凸曲面、所謂、ドーム形状やかまぼこ形状と呼ばれる形状にしている。
このように第2の電極部材20gの断面を凸曲面の翼形状にすることで、第2の電極部材20gの矢印M´で示す相対移動方向が、時計回り、又は反時計回りのどちらの方向でも(図面上では、左方向または右方向)、周囲の空気の流れKが変えられて翼形状に沿って流れるので、第2の電極部材20gには矢印M´で示す相対移動方向に直交する方向に揚力Fが発生する。
この揚力Fによって、第2の電極部材20gは、図示しない上押さえに当接し、その結果、第1の電極部材の金属層とのギャップが規制され、適正な距離で安定するので、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
この第2の実施形態の発電装置は、回転方向を問わず相対移動方向に直交する方向に揚力を発生させることができる。このため、発電装置にかかる外力の影響により第1及び第2の電極部材の回転方向が一方向とはならない場合、意図的に時計回りと反時計回りとを
させたい場合などに適している。
なお、第1及び第2の電極部材の揺動回転は、図示はしないが、例えば、第2の電極部材20gの一部とフレームやシャシーとの間をコイルバネ等の弾性手段で係止するなどすればよい。
そのような構成にすれば、発電装置にかかる外部からの外力が少なくても、弾性手段の伸縮により第2の電極部材20gを揺動回転させることができる。また、外部からの外力が途絶えても、弾性手段の伸縮により第2の電極部材20gを一定時間揺動回転させることもできるので、より大きな発電量を得ることができる。
以上のように第2の実施形態は、第2の電極部材20gの矢印M´で示す相対移動方向が、時計回り、又は反時計回りのどちらの方向でも揚力Fを発生するので、相対移動の方向が限定されずに、安定した発電が維持される利点がある。
[第3の実施形態の発電装置の説明:図10]
次に、第3の実施形態の発電装置の構成を、図10を用いて説明する。
図10は、図1で示す切断線A−A´で切断された第2の電極部材20hの拡大断面図である。この第3の実施形態の基本構成は、第1の実施形態と同様であり、第2の電極部材20hの構成のみが異なる。すなわち、第2の電極部材20hは、相対移動方向に対して所定の角度で傾斜することで翼形状を形成している。
図10に示すように、第3の実施形態の第2の電極部材20hの断面は平板状であり、且つ、帯電層21hも第2の電極部材20hの表面に均一に形成されている。そして、この第2の電極部材20hは、図示するように、矢印Mで示す相対移動方向に対して所定の角度θで傾斜することによって翼形状を形成している。すなわち、第2の電極部材20hは、タービンや航空機のターボファンエンジンを構成する羽根(ファン)のように、回転方向に対して所定の角度θで傾斜して、回転中心から放射状に形成されている。
このように第2の電極部材20hが傾斜によって翼形状を形成していることで、第2の電極部材20hが矢印Mで示す相対移動方向に回転すると、周囲の空気の流れKが変えられて傾斜した第2の電極部材20hに沿って流れるので、第2の電極部材20hには矢印Mで示す相対移動方向に直交する方向に揚力Fが発生する。
以上のように第3の実施形態は、平板状の第2の電極部材20hを傾斜させることで揚力Fを得ることができ、翼形状を実現するために、第2の電極部材20hの厚みや帯電層21hの膜厚を変える加工等が不要となり、加工工程を簡略化できる利点がある。
以上、本発明の発電装置について3つの実施形態及びその変形例を説明した。もちろんその説明に際して用いた斜視図や断面図等は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を満たすものであれば、任意に変更してよい。
説明した実施形態では、金属層及び帯電層は、矢印Mで示す相対移動方向に沿って所定の間隔を空けて複数配置されている例であったが、もちろん、発電装置は、金属層と帯電層との対が1つであってもよい。その場合の帯電層や金属層の面積などは、発電装置の仕様により自由に決めることができる。