JP2016058258A - リチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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繁成 柳
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Abstract

【課題】高容量で急速に充放電できるリチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池を提供する。【解決手段】本発明のリチウムイオン二次電池用負極2は、集電体5と、集電体5に担持された活物質とを含む負極2であって、集電体5が多孔質金属で形成され、負極2が、複数の穴6が表面に形成されており、活物質密度が活物質の真密度の50〜80%であるので、活物質を高密度に担持した電極であり、複数の穴6が負極2の表面に形成されているため、リチウムイオン二次電池に用いると、負極2の表面に加え、負極2の表面から厚さ方向に深い位置においても、電子の授受や、リチウムイオンの挿入、脱離が生じ、活物質から離脱したリチウムイオンが穴6に存在する電解液中を移動できるので、負極2の表面から厚さ方向に深い位置の活物質を有効に利用でき、高容量で電池反応が早く急速に充放電できるリチウムイオン二次電池を提供できる。【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池に関する。
高容量の二次電池としてリチウムイオン二次電池が注目されており、リチウムイオン二次電池の性能を向上させるための様々な開発がなされている(特許文献1〜6等参照)。
特許文献1には、電極の表面の凸部に担持され、ジグザグ形状をした柱状粒子と、空隙とからなり、厚さが5〜100μmである活物質層が開示されている。特許文献1には、リチウムイオン二次電池の負極に当該活物質層を有することで電極反応が向上することが開示されている。
特許文献2には、金属箔製の集電体と、活物質、導電材及び結着剤を混合した正極合材を片面当たり15mg/cmの塗工量で集電体表面に塗工して作製され、正極合材密度が2.5g/cmである活物質層とからなるリチウムイオン二次電池用電極が開示されている。特許文献2に開示されるリチウムイオン二次電池用電極は、集電体及び活物質層を貫通する小孔及び/又はスリットが設けられている。特許文献2には、リチウムイオン二次電池用電極に形成された小孔等により、電極シートの活物質層等に蓄積されるガスが電極体外部に放出され、リチウムイオン二次電池の安全性が向上することが開示されている。
特許文献3には、金属繊維の不織布からなるシート状の集電体と、集電体に担持された活物質層とを備え、パンチング法により形成され、電極の厚さ方向に集電体と活物質層とを挿通する貫通孔を有するリチウムイオン二次電池用電極が開示されている。特許文献3には、当該リチウムイオン二次電池用電極を用いることで、電極内へ電解液を十分に含浸でき、イオン電導性が向上するので、リチウムイオン二次電池の負荷特性等の電池特性が向上することが開示されている。
特許文献4には、シート状の集電体と、集電体の両面に正極スラリーを塗布して乾燥させることで形成された活物質層とを有し、少なくとも一方の活物質層の表面に高低差5〜100μmの凹凸構造が設けられたリチウムイオン二次電池用電極が開示されている。特許文献4には、当該リチウムイオン二次電池用電極を用いることで、電極内の電解液の量が増加して電池反応がスムーズになり、リチウムイオン二次電池の出力が向上することが開示されている。
特許文献5には、空隙率の低い第1の合材層領域と空隙率の高い第2の合材層領域とが電極の表面に交互に形成され、電極の表面に沿う方向の位置に応じて空隙率が異なる活物質層が開示されている。特許文献5には、空隙率の高い第2の合材層領域をリチウムイオンが移動するので、リチウムイオンの移動抵抗が減少し、当該活物質層を備える電極を用いることで、電池の内部抵抗が低下し、リチウムイオン二次電池の入出力特性が向上することが開示されている。
特許文献6には、活物質塗布厚さを80μm以下とし、集電体側の活物質層の空隙率を30〜50%とし、セパレータ側の空隙率を50〜60%としたリチウムイオン二次電池用電極が開示されている。特許文献6には、当該リチウムイオン二次電池用電極を用いることにより、電極内の電解液量が増え、膜厚方向の電極内電解液中のリチウムイオン輸送力が増し、より出力密度を向上させることができることが開示されている。
特開2008−181835号公報(段落0013、段落0033参照) 特開2001−6749号公報(段落0010、段落0023、段落0026、段落0057参照) 特開2012−195182号公報(段落0008、段落0013、段落0019参照) 特開2008−10253号公報(段落0008、段落0009、段落0023参照) 特開2013−8523号公報(段落0010参照) 特開2002−151055号公報(請求項1〜5)
しかしながら、特許文献1に開示される活物質層は、活物質層の厚さが100μmを超えると形成が困難になり、また、活物質層が破損しやすくなるので、活物質層をさらに厚くして電極が有する活物質の量を増やすことができない。そのため、当該活物質層を有する電極を用いたリチウムイオン二次電池は容量を向上させ難い。
特許文献2に開示されるリチウムイオン二次電池用電極は、集電体に貫通穴が形成されているため、電極の製造工程において集電体を形成する金属箔が破れることに繋がり易く、製造した電極の歩留まりが低下し易い。また、集電体の抵抗が高い。そのため、当該電極を用いたリチウムイオン二次電池は、内部抵抗が高く、電池反応が遅いため、充放電速度が遅い。
特許文献3に開示されるリチウムイオン二次電池用電極は、集電体が金属繊維の不織布で形成されているため、集電体の導電性が低い。そのため、当該電極を用いたリチウムイオン二次電池は、内部抵抗が高くなり、出力特性を十分に向上させることができない恐れがある。また、当該電極を用いたリチウムイオン二次電池は、パンチング法により貫通穴が集電体と活物質層とに形成されているため、パンチングにより打ち抜かれた分だけ、集電体が担持する活物質の量が減少し、電池の容量が低下してしまう。
特許文献4に開示されるリチウムイオン二次電池用電極は、凹凸構造の高低差が100μmを超えると活物質層が破壊されやすくなるので、電極が有する活物質の量を増やすために活物質層をさらに厚くしても、凹凸構造の高低差を大きくできない。そのため、電解液が届き難い活物質が増え、当該電極を用いたリチウムイオン二次電池は容量を向上させ難い。
特許文献5に開示される活物質層は、リチウムイオンが優先的に移動する空隙率の高い第2の合材層領域がスリット状に形成されている。当該活物質層では、第2の合材層領域の活物質密度が低いため、全体の平均活物質密度が低下してしまう不具合が生じる。そのため、当該活物質層を用いたリチウムイオン二次電池は、体積当たりのエネルギー密度(充放電容量)を高めることができない。
特許文献6に開示されるリチウムイオン二次電池用電極は、活物質層の厚さが20〜80μmであり、セパレータ側の空隙率が50%以上、60%以下であるために、活物質密度が低い。そのため、当該電極を用いたリチウムイオン二次電池は、体積当たりのエネルギー密度(充放電容量)が低いという不具合がある。
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、高容量で急速に充放電できるリチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
本発明の第1の観点は、集電体と、前記集電体に担持された活物質とを含む負極であって、前記集電体が多孔質金属で形成され、前記負極は、複数の穴が表面に形成されており、活物質密度が前記活物質の真密度の50〜80%であることを特徴とする。
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、前記負極は、厚さが100〜3000μmであることを特徴とする。
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、前記負極は、前記活物質として黒鉛を50.0〜98.9wt%、前記多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、前記活物質密度が1.10〜1.76g/cmであることを特徴とする。
本発明の第4の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、前記負極は、前記活物質としてSiを50.0〜98.9wt%、前記多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、前記活物質密度が1.15〜1.84g/cmであることを特徴とする。
本発明の第5の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、前記負極は、前記活物質としてSiOを50.0〜98.9wt%、前記多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、前記活物質密度が1.05〜1.68g/cmであることを特徴とする。
本発明の第6の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、前記負極は、前記活物質としてSnを50.0〜98.9wt%、前記多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、前記活物質密度が3.70〜5.92g/cmであることを特徴とする。
本発明の第7の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、前記負極は、前記活物質としてLiTi12を50.0〜98.9wt%、前記多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、前記活物質密度が1.65〜2.64g/cmであることを特徴とする。
本発明の第8の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、前記負極は、前記活物質として難黒鉛化炭素を50.0〜98.9wt%、前記多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、前記活物質密度が0.90〜1.44g/cmであることを特徴とする。
本発明の第9の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、前記負極は、前記活物質として易黒鉛化炭素を50.0〜98.9wt%、前記多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、前記活物質密度が0.90〜1.44g/cmであることを特徴とする。
本発明の第10の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、前記負極は、前記活物質として黒鉛、Si、SiO、Sn、LiTi12、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素から選択される2種以上を50.0〜98.9wt%、前記多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、前記活物質密度が0.90g/cm超5.92g/cm未満であることを特徴とする。
本発明の第11の観点は、第1〜第10の観点のいずれか1つに基づく発明であって、前記複数の穴の最大径が5〜3000μmであることを特徴とする。
本発明の第12の観点は、第1〜第11の観点のいずれか1つに基づく発明であって、前記複数の穴の中心間隔が500〜8000μmであることを特徴とする。
本発明の第13の観点は、第1〜第12の観点のいずれか1つに基づく発明であって、前記複数の穴の表面形状が、丸形、三角形、四角形又は五角形以上の多角形から選ばれる1つ以上であることを特徴とする。
本発明の第14の観点は、第1〜第13の観点のいずれか1つに基づく発明であって、前記複数の穴は、底部を有していることを特徴とする。
本発明の第15の観点は、第1〜第14の観点のいずれか1つに基づく発明であって、前記複数の穴の深さが前記負極の厚さの5%以上であることを特徴とする。
本発明の第16の観点は、第1〜第15の観点のいずれか1つに基づくリチウムイオン二次電池用負極を備えることを特徴とする。
本発明の第1の観点のリチウムイオン二次電池用負極は、多孔質金属の集電体を有し、この集電体に活物質を高密度に担持した電極であり、複数の穴が負極の表面に形成されているため、リチウムイオン二次電池に用いると、負極の表面に加え、負極の表面から厚さ方向に深い位置においても、電子の授受や、リチウムイオンの挿入、脱離が生じ、負極の表面から厚さ方向に深い位置の活物質を有効に利用でき、高容量のリチウムイオン二次電池を提供できる。また、リチウムイオン二次電池用負極は、リチウムイオン二次電池に用いると、負極の表面から厚さ方向に深い位置において活物質から離脱したリチウムイオンが穴に存在する電解液中を移動できるので、電池反応が早く急速に充放電でき、また、電池の内部抵抗が低く高出力のリチウムイオン二次電池を提供できる。
本発明の第2の観点のリチウムイオン二次電池用負極は、厚さが100〜3000μmであるので、多量の活物質を担持でき、そして、負極内でのリチウムイオンの移動距離が長くなりすぎずに有効に活物質を利用できるため、高容量のリチウムイオン二次電池を提供できる。
本発明の第3の観点のリチウムイオン二次電池用負極は、活物質として黒鉛を50.0〜98.9wt%、多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、活物質密度が1.10〜1.76g/cmであるので、活物質を高密度で担持する電極になり、高容量のリチウムイオン二次電池を提供できる。
本発明の第4の観点のリチウムイオン二次電池用負極は、活物質としてSiを50.0〜98.9wt%、多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、活物質密度が1.15〜1.84g/cmであるので、活物質を高密度で担持する電極になり、高容量のリチウムイオン二次電池を提供できる。
本発明の第5の観点のリチウムイオン二次電池用負極は、活物質としてSiOを50.0〜98.9wt%、多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、活物質密度が1.05〜1.68g/cmであるので、活物質を高密度で担持する電極になり、高容量のリチウムイオン二次電池を提供できる。
本発明の第6の観点のリチウムイオン二次電池用負極は、活物質としてSnを50.0〜98.9wt%、多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、活物質密度が3.70〜5.92g/cmであるので、活物質を高密度で担持する電極になり、高容量のリチウムイオン二次電池を提供できる。
本発明の第7の観点のリチウムイオン二次電池用負極は、活物質としてLiTi12を50.0〜98.9wt%、多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、活物質密度が1.65〜2.64g/cmであるので、活物質を高密度で担持する電極になり、高容量のリチウムイオン二次電池を提供できる。
本発明の第8の観点のリチウムイオン二次電池用負極は、活物質として難黒鉛化炭素を50.0〜98.9wt%、多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、活物質密度が0.90〜1.44g/cmであるので、活物質を高密度で担持する電極になり、高容量のリチウムイオン二次電池を提供できる。
本発明の第9の観点のリチウムイオン二次電池用負極は、活物質として易黒鉛化炭素を50.0〜98.9wt%、多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、活物質密度が0.90〜1.44g/cmであるので、活物質を高密度で担持する電極になり、高容量のリチウムイオン二次電池を提供できる。
本発明の第10の観点のリチウムイオン二次電池用負極は、活物質として黒鉛、Si、SiO、Sn、LiTi12、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素から選択される2種以上を50.0〜98.9wt%、多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、活物質密度が0.99g/cm超4.64g/cm未満であるので、活物質を高密度で担持する電極になり、高容量のリチウムイオン二次電池を提供できる。
本発明の第11の観点のリチウムイオン二次電池用負極は、複数の穴の最大径が5〜3000μmであるので、当該負極を用いたリチウムイオン二次電池では、穴の径がリチウムイオンが移動をするのに適したものとなり、より高容量で急速に充放電できるリチウムイオン二次電池を提供できる。
本発明の第12の観点のリチウムイオン二次電池用負極は、複数の穴の中心間隔が500〜8000μmであるので、穴の数及び穴の間隔がより適したものとなり、より高容量で急速に充放電できるリチウムイオン二次電池を提供できる。
本発明の第13の観点のリチウムイオン二次電池用負極は、穴の表面形状が、丸形、三角形、四角形又は五角形以上の多角形から選ばれる1つ以上であるので、穴の形状が電池反応に適したものになり、より高容量で急速に充放電できるリチウムイオン二次電池を提供できる。
本発明の第14の観点のリチウムイオン二次電池用負極は、複数の穴が底部を有しているので、穴の保液性が良い。よって、リチウムイオン二次電池用負極は、電池が傾いて電解液が一方に偏った場合も、穴に電解液が保持され、性能の低下が起こりにくいリチウムイオン二次電池を提供できる。
本発明の第15の観点のリチウムイオン二次電池用負極は、複数の穴の深さが電極の厚さの5%以上であるので、穴の深さが電池反応に適したものになり、電極の表面から厚さ方向に深い位置の活物質も有効に利用でき、より高容量で急速に充放電できるリチウムイオン二次電池を提供できる。
本発明の第16の観点のリチウムイオン二次電池は、第1〜第15の観点のいずれか1つに基づくリチウムイオン二次電池用負極を備えるので、高容量で急速に充放電できる。
本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池の電極構造の縦断面を示す概略端面図である。 本発明の実施形態に係る負極表面の穴の配置を示す平面図である。 本発明の変形例の負極の縦断面を示す概略端面図であり、図3Aは穴が両面に形成されている、図3Bは開口が上面にある穴と底面にある穴とが交互に配置されている、図3Cは穴の縦断面形状が三角形である、図3Dは穴の断面形状がU字型である、図3Eは穴の断面形状が五角形である、図3Fは貫通穴を有する負極を示す。 本発明の変形例の負極表面の穴の配置を示す平面図である。 本発明の変形例の負極の穴の表面形状を示す平面図であり、図5Aは穴の表面形状が三角形、図5Bは穴の表面形状が四角形、図5Cは穴の表面形状が六角形である負極を示す。 本発明の変形例の負極に形成された穴の表面形状を示す平面図であり、図6Aは頂点の数が3個、図6Bは頂点の数が4個、図6Cは頂点の数が5個、図6Dは頂点の数が6個、図6Eは頂点の数が7個、図6Fは頂点の数が8個、図6Gは頂点の数が10個の星形をした穴の表面形状を示す。 本発明の変形例のリチウムイオン二次電池の電極構造の縦断面を示す概略端面図であり、図7Aは穴が両面に形成されている電極を、図7Bは開口が上面にある穴と底面にある穴とが交互に配置されている電極を複数積層したリチウムイオン二次電池の電極構造を示す。 本発明の変形例の負極の縦断面を示す概略端面図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
1.本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池の構成
図1に示すように、リチウムイオン二次電池1は、リチウムイオン二次電池用負極(以下、負極という。)2と正極3とセパレータ4とを備えている。負極2、正極3及びセパレータ4は、例えば、EC(エチレンカーボネート)やDEC(ジエチルカーボネート)、MEC(メチルエチルカーボーネート)、DMC(ジメチルカーボネート)等を含む非水溶媒にLiPFやLiBF、LiClO等のリチウム塩を混合した電解液に浸されている。負極2は、負極2の表面に開口を有する穴6が形成されている。負極2は、穴6の開口がセパレータ4と向き合うように配置されている。
正極3は、負極2と同様に正極3の表面に開口を有する穴9が形成されている。正極3に形成された穴9は、セパレータ4を挟んで負極2の穴6の開口と向き合うように配置されている。負極2に形成された穴6と正極3に形成された穴9とは、開口が必ずしも向き合っている必要はないが、少なくとも1つの開口が向き合っている方が望ましい。負極2の穴6及び正極3の穴9の開口が向き合っている場合には、その間にセパレータが存在していても、負極2の穴6と正極3の穴6の間を電解液中のリチウムイオン、カウンターイオン(例えば、PF イオン)がスムーズに移動でき、より電池反応が早くなる。
なお正極3は、特に限定されず、公知のリチウムイオン二次電池用正極を用いることができる。正極3は、例えば、活物質を含む合材で形成された活物質層をアルミで形成された箔状の集電体の表面に有し、活物質層に穴が形成されていない従来の合材電極であってもよい。
2.本発明の実施形態に係る負極の構成
図1に示すように、負極2は、複数の穴6が表面に形成されている。負極2は、多孔質金属で形成された骨格を有する集電体5と、集電体5に担持された活物質(図示しない)を含んでいる。集電体5は3次元網目構造をしており、無数の細孔を有している。当該3次元網目構造の大部分は金属の網目同士が継ぎ目なく接続されて形成されている。多孔質金属を形成する金属は、電池の充放電時に生じる化学反応に対して安定的であれば特に限定されず、例えば、銅、ニッケル、ステンレス、アルミニウムなどを用いることができる。多孔質金属としては、例えば、発泡金属、銅などの金属粉末を原料としてスラリー発泡法で作製された焼結粉末の3次元構造体などを用いることができる。本実施形態の場合、集電体5は多孔質金属として発泡銅を用いて形成されている。このように負極2は、表面に形成された複数の穴6と、無数の細孔を有している。
負極2は、活物質、導電助剤、バインダー、及び増粘剤を含む混合物を、集電体5の細孔に収容して活物質を担持している。細孔が混合物で完全に満たされているわけではなく、細孔の一部には空隙が存在する。リチウムイオン二次電池に負極2を用いたとき、当該空隙に電解液が収容される。活物質としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛、難黒鉛化炭素(以下、ハードカーボンという。)、易黒鉛化炭素(以下、ソフトカーボンという。)、Si、SiO、Sn、LiTi12(以下、LTOという。)などから選ばれる1種以上を用いることができる。
このような負極2には、負極2の単位体積に含まれる活物質の重量を表す活物質密度が当該活物質の真密度の50〜80%で、活物質が含まれている。
例えば、活物質として黒鉛を用いる場合、黒鉛の真密度は2.2g/cmであるので、活物質密度は、1.10〜1.76g/cmである。
活物質としてSiを用いる場合、Siの真密度は2.3g/cmであるので、活物質密度は、1.15〜1.84g/cmである。
活物質としてSiOを用いる場合、SiOの真密度は2.1g/cmであるので、活物質密度は、1.05〜1.68g/cmである。
活物質としてSnを用いる場合、Snの真密度は7.4g/cmであるので、活物質密度は、3.70〜5.92g/cmである。
活物質としてLTOを用いる場合、LTOの真密度は3.3g/cmであるので、活物質密度は、1.65〜2.64g/cmである。
活物質としてハードカーボンを用いる場合、ハードカーボンの真密度は1.8g/cmであるので、活物質密度は、0.90〜1.44g/cmである。
活物質としてソフトカーボンを用いる場合、ソフトカーボンの真密度は1.8g/cmであるので、活物質密度は、0.90〜1.44g/cmである。
2種類以上の活物質を用いる場合、真密度は、少なくとも、最も真密度が低いハードカーボン又はソフトカーボンが100%の場合の真密度1.8g/cmより大きく、最も真密度が高いSnが100%の場合の真密度7.4g/cmより小さい。活物質密度は、0.90g/cm超5.92g/cm未満の範囲内である。
このような負極2は、活物質、導電助剤、バインダー、増粘剤、及び多孔質金属の重量の合計を100wt%としたとき、活物質を50.0〜98.9wt%、導電助剤を0〜3.0wt%、バインダー及び増粘剤を0.1〜3.0wt%、多孔質金属を1.0〜50.0wt%含んでいる。負極2は、多孔質金属で形成された集電体5が高い導電性を有しているので、導電助剤を含んでいなくてもよい。また、負極2は増粘剤を含んでいなくてもよい。
負極2に形成された複数の穴6は、負極2の表面に開口が形成され、中心軸が負極2の厚さ方向に沿って形成されている。本実施形態の場合、穴6は、負極2の一側表面に形成された開口と、他側表面に形成された底部7とを有し、円柱状に形成されている。したがって穴6は、縦断面形状が四角形をしている。また底部7は、負極2によって形成されている。
負極2の厚さは、特に限定されないが、100〜3000μmであることが望ましい。負極2の厚さが100〜3000μmであると、負極2は、集電体5を形成する多孔質金属として発泡金属を用いても十分強固な電極を形成できる。さらに負極2は、十分な活物質を担持でき、電池容量の大きいリチウムイオン二次電池を提供できる。そして、負極2は、リチウムイオン二次電池に用いた場合、リチウムイオンの移動距離が長くなりすぎず、リチウムイオン二次電池の充放電特性を向上できる。なお、ここでいう負極2の厚さは、集電体5を形成する多孔質金属の細孔中に活物質が担持され、負極2の穴6が形成された状態での厚さである。
さらに、負極2の厚さは、300〜3000μmであることが望ましい。負極2の厚さが300〜3000μmであると、負極2はより確実に、高容量で急速に充放電できるリチウムイオン二次電池を提供できる。
図2は、負極2について、穴6の開口が形成された一側表面を示す図である。穴6は、負極2の表面に開口が縦横等間隔に並ぶように形成されている。また、穴6は表面形状が丸形をしている。
なお、穴6の最大径は特に限定されないが、5〜3000μmであることが望ましい。穴6の最大径が5〜3000μmであると、負極2は、リチウムイオン二次電池に用いると穴6に存在する電解液中をリチウムイオンがスムーズに移動できるので、電池反応の速度を向上できる。さらに、負極2は、穴6を形成するときの圧縮により減少する負極2の空隙が少なく、穴6を形成することで有効に利用できる活物質が増加する。
さらに、穴6の最大径は50〜2000μmであることが特に望ましい。穴6の最大径が50〜2000μmであると、負極2は穴6の径が大きくなったことで、リチウムイオン二次電池に用いると穴6に存在する電解液中をリチウムイオンがよりスムーズに移動できるようになり、電池反応の速度がさらに向上する。
また、隣接する穴6同士の中心間の長さ(穴の中心間隔)は特に限定されないが、500〜8000μmであることが望ましい。穴の中心間隔が500〜8000μmであると、負極2は、1つの穴6から電解液中のリチウムイオンが届く範囲が重複せず、負極2において電解液中のリチウムイオンが届き難い領域が減少するので、穴6を形成することで有効に利用できる活物質が増加する。
さらに、穴6の中心間隔は、1000〜4000μmであることが特に望ましい。穴6の中心間隔が1000〜4000μmであると、負極2は、電極全体にさらに電解液中のリチウムイオンがいきわたりやすくなり、有効に利用できる活物質が増加する。
また、穴6の深さは特に限定されないが、電極2の厚さの5%以上であることが望ましい。穴6の深さが5%以上であると、負極2の深さ方向において深い位置まで電解液中のリチウムイオンが届きやすくなり、有効に利用できる活物質が増加する。
さらに、穴6の深さは、負極2の厚さの50%以上であることが特に望ましい。負極2の厚さに対する穴の深さの割合が50%以上であると、負極2の深さ方向において深い位置まで電解液中のリチウムイオンがさらに届きやすくなり、有効に利用できる活物質がより増加する。
3.発泡金属の作製方法
本発明の実施形態で多孔質金属として用いた発泡金属の作製方法を説明する。まず、金属の微粉末を水溶性の界面活性剤と混ぜてスラリーを作製する。次に、ドクターブレード法により、ペットフィルム上に薄く塗布しシート成型する。このとき、同時に、所定の温度に加熱して、シートに泡を形成しつつ、乾燥する。その後、所定温度の不揮発性雰囲気下で焼結することにより、発泡金属を得る。
なお、発泡金属の作製方法はこれに限らず、例えばめっき法などの他の方法により発泡金属を作製することができる。ここでは、発泡ニッケルを例にして、めっき法による発泡金属の形成方法を説明する。まず、発泡ウレタンを骨格として用い、発泡ウレタンに、無電解ニッケルめっきを所定の時間実施し、発泡ウレタンの骨格表面を導電化処理する。次に、電解ニッケルめっきを所定の時間実施することにより、発泡ウレタン上にニッケルによるめっきを施し、ニッケルの骨格を形成する。続いて、500℃〜700℃の酸化雰囲気中でニッケル骨格内のウレタン樹脂を酸化させて除去する。最後に、1000℃程度の還元雰囲気中で、ウレタン樹脂の酸化過程で形成された酸化ニッケルを金属ニッケルに還元して、発泡ニッケルを得る。
ちなみに、本発明に用いた発泡金属の空隙率は以下のように求める。まず、発泡金属の体積と重量を測定し、単位体積当たりの重量を算出する。次いで、単位体積に全て金属が詰まった場合の単位体積当たりの重量、すなわち、金属の真密度を金属占有率100%として、発泡金属の単位体積当たりの重量を換算する。その値を100から引くことで空隙率を算出する。例えば、単位体積当たりの金属の重量が、真密度の50%の場合には、金属占有率50%、空隙率50%となる。発泡金属の空隙率は、特に限定されないが、65〜98%であることが望ましい。空隙率が65%未満であると、多孔質金属で形成された骨格は、十分に活物質を担持することができない。また、空隙率が98%より大きいと、多孔質金属で形成された骨格は脆い。
また、発泡金属の平均細孔径は、特に材質に限定されず、発泡銅の場合は平均細孔径が100〜400μm前後が望ましい。なお、発泡金属の平均細孔径は光学顕微鏡により発泡金属の細孔の直径を30カ所で測定し、その平均値を求めることで算出した。
4.本発明の実施形態に係る負極の製造方法
製造方法は、(1)負極スラリーを作製する工程、(2)集電体に活物質を担持する工程、(3)負極を所定形状に成形する工程からなる。
(1)負極スラリーを作製する工程について説明する。負極スラリーは、負極2に活物質を担持するために用いる液である。ちなみに、負極スラリーは一般に合材スラリーと呼ばれている。
最初に、活物質、バインダー、増粘剤、及び導電助剤を所定の重量比となるように量る。計量後、増粘剤を水に溶かした溶液に、活物質を投入して撹拌する。続いて、導電助剤を投入し、撹拌する。次いでバインダーを投入し、撹拌する。その後、多少の水を加えさらに攪拌することにより粘度を調整して負極スラリーを得る。なお、増粘剤を用いない場合は、計量後、バインダーを溶媒に添加して攪拌し、さらに活物質及び導電助剤を添加して攪拌し、粘度を調整して負極スラリーを得る。
なお、導電助剤としては、アセチレンブラック(以下、ABという。)、ケッチェンブラック(以下、KBという。)、カーボンナノチューブ(以下、CNTという。)等をバインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFという。)、スチレンブタジエンラバー(以下、SBRという。)等を、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(以下、CMCという。)等を用いることができる。
(2)集電体に活物質を担持する工程について説明する。最初に、多孔質金属を所定の形状に成形し、集電体5を作製する。その後、集電体5を負極スラリーに所定時間浸す。その後、集電体5を所定時間、所定温度で乾燥させて、活物質を担持した集電体5を得る。
(3)負極を所定形状に成形する工程について説明する。本工程では、活物質を担持した集電体5をロールプレス機に通し、集電体5を所定の厚さに成形する。その後、数多くの針が付いた剣山のような治具を、集電体5の表面に突き刺し、穴6を形成して、負極2を得る。負極2の担持する活物質の量は、負極スラリーの粘度を変えることで調整することができ、負極2の活物質密度は、ロールプレス機のロール間のギャップの間隔を調整して集電体5の厚さを変えることで、調整することができる。
なお、直径500μm以下の小さな穴6は、レーザー加工によって形成することもできる。この方法では、照射するレーザー光の口径を変えることにより形成する穴の大きさを調整でき、入射角度を変えることによりくさび状の穴を形成することもできる。
以上の工程を経て、リチウムイオン二次電池用負極2を得る。ちなみに、本方法により負極スラリーを用いて作製された電極は一般に合材電極と呼ばれるものに相当する。
5.作用及び効果
本発明の実施形態に係る負極2を用いたリチウムイオン二次電池1の動作を説明する。リチウムイオン二次電池1では、負極2及び正極3が電解液に浸されており、負極2に形成された穴6及び負極2の活物質間の空隙に電解液が存在する。負極2には穴6が形成されているため、電解液は、負極2の表面から厚さ方向に深い位置にある空隙にも存在する。
まず、リチウムイオン二次電池1の充電時の動作について説明する。図示しない外部回路を通じて負極2及び正極3間に電圧を印加する。そうすると正極3の活物質内のリチウムがリチウムイオンとして電解液中に放出される。そして活物質から電子が放出される。
活物質から放出された電子は外部回路を通って負極2へ移動する。一方、リチウムイオンは電解液中を通って負極2へ移動し、活物質内に挿入される。負極2には穴6が形成されているため、負極2の表面に加え、負極2の表面から厚さ方向に深い位置においても、リチウムイオンが活物質内に挿入される。このように負極2では、穴6に存在する電解液中をリチウムイオンが移動できるので、リチウムイオンは正極3から負極2までの長い距離を容易に移動できる。以上のようにしてリチウムイオン二次電池1は充電される。
次いで、リチウムイオン二次電池1の放電時の動作について説明する。図示しない外部負荷に負極2及び正極3を接続する。そうすると負極2の活物質内のリチウムがリチウムイオンとして電解液中に放出される。そして活物質から電子が放出される。上記したように負極2には穴6が形成されているため、負極2の表面に加え、負極2の表面から厚さ方向に深い位置においてもこの反応が進行する。
活物質から放出された電子は負極2から外部負荷を通って正極3へ移動する。リチウムイオンは、電解液中を通って正極3へ移動する。リチウムイオンは、正極3で活物質内に挿入され電子を受け取る。このようにしてリチウムイオン二次電池1は放電される。
以上の構成において、本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極2は、多孔質金属で形成された集電体5と、集電体5に担持された活物質とを含み、複数の穴6が負極2の表面に形成されており、負極2の活物質密度が活物質の真密度の50〜80%であるように構成した。
よって、本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極2は、高密度に活物質を担持し、複数の穴6が負極2の表面に形成されているため、リチウムイオン二次電池1に用いると、リチウムイオンの移動がスムーズになるために、負極2の表面に加え、負極2の表面から厚さ方向に深い位置においても、電子の授受や、リチウムイオンの挿入、脱離が生じ得る。よって、負極2を用いたリチウムイオン二次電池1は、負極2の表面から厚さ方向に深い位置において活物質から離脱したリチウムイオンが穴6に存在する電解液中を移動できるので、電池反応が早く急速に充放電でき、また、電池の内部抵抗が低く高出力にできる。
また、本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極2は、厚さが100〜3000μmであるようにすることで、さらに多くの活物質を担持することができ、そして、負極2内でのリチウムイオンの移動距離が長くなりすぎずに有効に活物質を利用できるため、より高容量のリチウムイオン二次電池を提供することができる。
リチウムイオンはイオン半径が非常に小さいため、電解液中では、数多くの溶媒と溶媒和していると考えられている。そして、溶媒和されたリチウムイオンは移動抵抗が大きい。また、合材スラリーを乾燥させて形成された表面が平坦な従来の合材電極の場合、リチウムイオンと、例えばリチウム塩としてLiPFを電解液に添加した場合のカウンターイオンであるPF イオンとが電極中の活物質間に形成された微細孔に含浸された電解液中を通って移動していた。このように、従来の合材電極を用いたリチウムイオン二次電池では、溶媒和されたリチウムイオンとPF イオンとが微細孔に含浸された電解液中を通るため、リチウムイオンやPF イオンは、活物質間の微細孔に引っ掛かり易く、さらに移動抵抗が高かった。
これに対して本実施形態の場合、負極2に穴6が形成されているため、穴6に存在する電解液中をリチウムイオンやPF イオンが優先的に通り、穴6はイオンが素早く移動できる優先経路となり、負極2中をリチウムイオンが阻害されることなく移動することが可能である。
さらに、負極2は多孔質金属で形成された集電体5を有しているので、負極2全体に金属の骨格が存在している。従来から導電助剤として利用されているアセチレンブラック等のカーボンブラックと比較して、銅やニッケル、ステンレスなどの金属単体の体積抵抗は、1/1000程度と小さい。そのため、負極2は、抵抗の低い金属の骨格を電子が移動できるため、電極中での電子抵抗がほぼ無視できる程である。
従って、本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極2は、穴6と金属の骨格構造との組合せにより、負極2に高密度に活物質を充填しても、電池反応が早く、さらに負極2を厚く形成した場合も、電池反応が早い。よって、負極2は急速に充放電可能なリチウムイオン二次電池を提供できる。
また、従来はリチウムイオンの移動距離が長いことが電池反応の最大の律速と考えられており、市場で販売されている電池においては、実用上、電極厚さが100μm以上のものが殆ど存在していなかった。しかし実際には、上記の様に、溶媒和したリチウムイオンやPF イオンが合材電極中の活物質粒子間に形成された微細孔を通過する際の移動抵抗が電池反応の最大の律速であると考えられる。そのため、負極2の表面に穴6を形成することにより、当該穴6に存在する電解液中をリチウムイオンやPF イオンがスムーズに移動できるようになるので、電池反応の速度を速めることができる。
因みに、表面に穴が形成されていない平坦な従来の合材電極の場合、電極の厚さ方向に深い位置には電解液中のリチウムイオンが届き難く、有効に利用することができる活物質は、表面から100μm程度の範囲にあるものに限られていた。そして、電極中の活物質密度を高くすると、合材内の空隙が減少し、合材内に電解液が流通し難くなるので、有効に利用することができる活物質は、さらに浅い位置にある活物質に限られた。
これに対し本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極2は、活物質密度が活物質の真密度の50〜80%であり、厚さが100〜3000μmであるような高密度に活物質を担持した厚い電極である場合も、リチウムイオン二次電池1に用いると、穴6に存在する電解液中をリチウムイオンが移動できるので、電極の厚さ方向に深い位置にもリチウムイオンが移動でき、厚さ方向に深い位置にある活物質も有効に利用できる。
以上より、本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極2を用いたリチウムイオン二次電池1は、高容量で急速に充放電できる。
また従来の技術では、リチウムイオン二次電池の容量を増やすためには、セパレータを介して複数の正極及び負極を積層する必要があった。しかし、本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極2では、負極2を厚く、活物質密度を高く形成して電池の容量を増加できるので、リチウムイオン二次電池1に用いると、1層の負極2で高容量の電池を実現でき、セパレータ4の数を減らすことができる。
さらに、本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極2は、集電体5が多孔質金属で形成された骨格を有しているので、金属で形成された骨格を電子が導電するため導電性が高く、負極2に含まれる導電助剤の量を減らすことができる。また、負極2は、多孔質金属による金属骨格を有し、金属骨格の有する細孔に活物質が収容されて保持されるので、結着剤としてのバインダーを減らすことができる効果がある。よって、負極2は、さらに多くの活物質を担持できる。
また、本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極2は、複数の穴6が底部7を有しているようにすることで、穴6の保液性が良くなり、リチウムイオン二次電池1に用いると、リチウムイオン二次電池1が傾いて電解液が一方に偏った場合も、穴6に電解液が保持され、リチウムイオン二次電池1の性能の低下を抑制できる。
6.変形例
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、活物質、バインダー、導電助剤、電解液、多孔質金属、セパレータの材質等については、適宜変更することが可能である。
また、上記の実施形態では、穴6の表面形状が丸形で、縦断面形状が四角形である場合について説明してきたが、本発明はこれに限られず、穴6の縦断面形状を適宜変更することができる。例えば、図3Aに示すように、穴6Aを、縦断面形状が四角形をし、負極2Aの一側及び他側表面に開口を有し、負極2Aの厚さ方向略中央に底部7Aを形成してもよい。また、図3Bに示すように、負極2Bの一側表面に開口を有し他側表面に底部7Bを有する穴6Bと、一側表面に底部7Bを有し他側表面に開口を有する穴6Bとを交互に形成してもよい。さらに、図3Cに示すように、穴6Cを、縦断面形状が三角形をし、三角形の頂点部分が底部7Cとなるように形成してもよい。また、図3Dに示すように、穴6Dを、先端部の縦断面形状を半円形状とし、半円の頂点が底部7Dとなるように形成してもよい。本変形例の場合、穴6Dの縦断面形状はU字型となる。さらに、図3Eに示すように、穴6Eを、先端部の縦断面形状を三角形とし、三角形の頂点が底部7Eとなるように形成してもよい。本変形例の場合、穴6Eの縦断面形状は五角形となる。また、図3Aに示した負極2Aに形成された穴6Aと、図3Bに示した負極2Bに形成された穴6Bとは、縦断面形状が四角形をしているが、縦断面形状が三角形であってもよく、穴6A、6Bの先端部の縦断面形状が半円形及び三角形であってもよい。
さらに、上記の実施形態及び変形例では、穴6が底部7を有する場合について説明してきたが、本発明はこれに限られず、穴6が底部7を有していなくてもよい。例えば、図3Fに示すように、穴6Fは、負極2Fの一側表面から他側表面へと貫通する穴であってもよい。貫通穴の断面形状は図3Fに示す四角形に限られず、例えば、台形をしていてもよく、U字型の先端部分が貫通している形状をしていてもよい。そして、負極2に形成された穴6は、全ての穴6の縦断面形状が同じ形状をしている必要はなく、異なる縦断面形状をした穴6が混在していってもよく、貫通穴と底部7を有する穴6とが混在していてもよい。
加えて、上記の実施形態では、穴6を負極2の表面に縦横等間隔に並ぶように配置した場合について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、図4に示すように、負極2Gの表面に所定の間隔を空けて対角線と平行な軸に沿って等間隔に並ぶように穴6Gを配置してもよい。さらに、負極2の中心を中心とする同心円に沿って所定の間隔を空けて並ぶように穴を配置してもよい。
また、上記の実施形態では、穴6の表面形状が丸形で、縦断面形状が四角形である場合について説明してきたが、本発明はこれに限られず、穴6の表面形状を適宜変更することができる。例えば、図5Aに示す穴6Hの様に表面形状が三角形であってもよく、図5Bに示す穴6Iの様に表面形状が四角形であってもよく、図5Cに示す穴6Jの様に六角形であってもよい。
同様に、穴6の表面形状は五角形であってもよく、七角形以上の多角形であってもよい。例えば、図6A〜図6Gに示すように、穴6の表面形状は頂点の数が3〜10程度の星形であってもよい。そして、負極2に形成された穴6の表面形状は、全ての穴6の表面形状が同じ形をしている必要はなく、異なる表面形状をした穴6が混在していてもよい。
さらに、上記変形例で説明した穴6の表面形状と、穴6の断面形状及び穴6の先端部の縦断面形状とを適宜組み合わせて、例えば、表面形状を四角形とし、縦断面形状を三角形とした穴を形成してもよい。
上記の実施形態では、負極2及び正極3がセパレータ4を挟んで1つずつ積層された1層構造のリチウムイオン二次電池1について説明したが、本発明はこれに限られず、セパレータ4を介してさらに負極2及び正極3を積層した多層構造のリチウムイオン二次電池とすることができる。例えば、図7Aに示すように、集電体5Aを備える負極2Aと、集電体5Aと同様に形成された集電体8Aを備える正極3Aとを用いて多層構造のリチウムイオン二次電池1Aを作製してもよい。リチウムイオン二次電池1Aは、負極2A及び正極3Aがセパレータ4を介して交互に積層された構造をしている。さらに、図7Bに示すように、集電体5Bを備える負極2Bと、集電体5Bと同様に形成された集電体8Bを備える正極3Bとを用いて、リチウムイオン二次電池1Aと同様の多層構造のリチウムイオン二次電池1Bを作製してもよい。
これらの場合、リチウムイオン二次電池1Aは、負極2Aの穴の開口と正極3Aの穴の開口とが、すべてのセパレータにおいて向き合っているので、負極2A及び正極3A間をリチウムイオンが移動しやすく、より効率的に充放電できる。リチウムイオン二次電池1Bも同様に、全てのセパレータにおいて、開口がセパレータと向かい合っている穴が存在するので、より効率的に充放電できる。
上記実施形態では、負極2が多孔質金属で形成された集電体5の細孔に活物質、導電助剤、増粘剤、及びバインダーを含む混合物を収容して活物質を担持している場合について説明してきたが、本発明はこれに限られない。図8に示すように負極2Kは、細孔に加えて、集電体5Kの最表面に、活物質、導電助剤、増粘剤、及びバインダーを含む混合物によって形成された活物質層9をさらに備えることで、活物質を担持していてもよい。このような活物質層9は、集電体5Kを負極スラリーに浸し、乾燥させて集電体に活物質を担持する工程で、集電体5Kの表面に残った負極スラリーが乾燥することで形成される。なお、活物質層9は集電体5Kを負極スラリーに浸した後、集電体5Kの表面に負極スラリーを塗布して、集電体5Kを乾燥することで形成してもよい。集電体5K表面上の両面の活物質層9の厚さの合計は、集電体5Kの厚さの40%以下であることが望ましい。この集電体5K上の活物質層9の厚さが集電体5Kの厚さの40%以上(片面、20%以上)であると、この活物質層9には金属骨格がなく、電子伝導性が乏しいため、負極2Kの内部抵抗が増加する。
(実施例I)
(1)電気化学セルの作製
実施例1〜6では、人造黒鉛(黒鉛)を担持させた本発明のリチウムイオン二次電池用負極を作製し、電気化学セルの負極に適用した。実施例1〜6の電気化学セルは、負極に形成した穴の深さが異なるが、他の構成は同じであるので、実施例1を例として電気化学セルの作製方法を説明する。
最初に、活物質としての人造黒鉛、バインダーとしてのPVDF、導電助剤としてのABの重量比が98:1:1となるようにそれぞれ計量した。その後、計量したPVDFを溶媒N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に添加し、自転公転ハイブリッドミキサー((株)シンキー製、モデル:ARE−310)に投入して20分攪拌した。さらに人造黒鉛及びABを添加して攪拌し、粘度4Pa・sに調整した負極スラリーを得た。
次に、ニッケルの微粉末(アルドリッチ社製、平均粒径10μm)200gを水溶性の界面活性剤(花王社製、製品名:エマール、品番20T)6gと水500mLとを混ぜてスラリーを作製した。ドクターブレード法により、作製したスラリーをペットフィルム(東レ社製、製品名:トレファン、品番2500T)上に薄く塗布してシート成型した。このとき、同時に、50℃に加熱して成型したシートに泡を形成しつつ、乾燥した。その後、500℃程度のアルゴン雰囲気下で焼結して空隙率96%、厚さ2200μmの発泡ニッケルを形成した。形成した発泡ニッケルを3x3cmに切断し、集電体を形成した。当該集電体を上記の負極スラリーに5分間浸した後、表面に付着している余分な負極スラリーをヘラで落とし、120℃で5時間乾燥させた。
次いで、乾燥させた集電体をロールプレス機(サンクメタル社製、製品名:5トンエアーハイドロプレス)にかけて、集電体の厚さを2000μmに圧縮した。圧縮した集電体表面に表1に示すパラメータの穴を、剣山状の針を集電体の表面から突き刺して形成し、活物質密度が1.76g/cm(真密度の80%)である負極を作製した。作製した負極は、人造黒鉛を93wt%、PVDFを1wt%、ABを1wt%、発泡ニッケルを5%含んでいた。
続いて、作製した負極と同じサイズに金属リチウムを打ち抜いて対極を作製した。負極と対極の間に無数の微細孔を有するポリエチレン製のセパレータを挟み、エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とジメチルカーボネート(DMC)とを体積比1:1:1の割合で混合した溶媒に1MのLiPFを添加した電解液と共に、アルミラミネートパックに挿入し、真空パックをしてラミネートセルを作製した。当該ラミネートセルを実施例1の電気化学セルとした。電極の有効面積は9cmである。
実施例2〜6の電気化学セルも実施例1と同様の方法により作製した。実施例2〜6の電気化学セルの負極に形成された穴の各パラメータは表1に示すとおりである。作製した負極は、いずれも実施例1と活物質密度及び組成が同じである。
Figure 2016058258
実施例7〜14では、天然黒鉛(黒鉛)を集電体に担持させたリチウムイオン二次電池用電極を作製し、電気化学セルの負極に適用した。実施例7〜14の電気化学セルは、負極に形成した穴の最大径及び中心間隔距離が異なるが、他の構成は同じであるので、実施例7を例として電気化学セルの作製方法を説明する。
最初に、活物質としての天然黒鉛、バインダーとしてのSBR、増粘剤としてのCMCの重量比が98:1:1となるように計量した。計量後、水にCMCを溶解させ濃度1%の水溶液を作製し、当該水溶液と天然黒鉛とを自転公転ハイブリッドミキサーに投入して10分撹拌した。さらに、SBRを分散させた溶液を投入して10分撹拌した。その後、適宜水を加えさらに攪拌し、粘度500mPa・sに調整した負極スラリーを得た。
次に、銅の微粉末(アルドリッチ社製、平均粒径10μm)200gを水溶性の界面活性剤(花王社製、製品名:エマール、品番20T)6gと水500mLとを混ぜてスラリーを作製した。ドクターブレード法により、作製したスラリーをペットフィルム(東レ社製、製品名:トレファン、品番2500T)上に薄く塗布してシート成型した。このとき、同時に、50℃に加熱して成型したシートに泡を形成しつつ、乾燥した。その後、500℃程度のアルゴン雰囲気下で焼結して空隙率95%、厚さ770μmの発泡銅を形成した。形成した発泡銅を3x3cmに切断し、集電体を形成した。当該集電体を上記の負極スラリーに5分間浸した後、表面に付着している余分な負極スラリーをヘラで落とし、110℃で5時間乾燥させた。
次いで、乾燥させた集電体をロールプレス機にかけて、集電体の厚さを700μmに圧縮した。圧縮した集電体表面に、表2に示すパラメータの貫通穴を、レーザー加工機(三菱電機社製:製品名ML605GTF2)を用いて口径が5μmのレーザー光を照射することで形成し、活物質密度が1.76g/cm(真密度の80%)である負極を作製した。作製した負極は、天然黒鉛を87wt%、SBRを1wt%、CMCをwt1%、発泡銅を11wt%含んでいた。作製した負極を用いて、実施例1と同様の方法で、実施例7の電気化学セルを作製した。
実施例8〜10の電気化学セルは実施例7と同様の方法により作製した。実施例11〜14の電気化学セルは、剣山状の針を集電体の表面から突き刺して貫通穴を有する負極を形成した点以外は、実施例7と同様の方法により作製した。実施例8〜14の電気化学セルの負極に形成された穴の各パラメータは表2に示すとおりである。作製した負極は、いずれも実施例7と活物質密度及び組成が同じである。
Figure 2016058258
実施例15〜19では、LTOを集電体に担持させた本発明のリチウムイオン二次電池用負極を作製し、電気化学セルの負極に適用した。実施例15〜19の電気化学セルは、負極に形成した穴の中心間隔が異なるが、他の構成は同じであるので、実施例15を例として電気化学セルの作製方法を説明する。
最初に、活物質としてのLTO、バインダーとしてのPVDF、導電助剤としてのABの重量比が95:3:2となるようにそれぞれ計量した。その後、計量したPVDFをNMPに添加し、自転公転ハイブリッドミキサーに投入して20分攪拌した。さらにLTO及びABを添加して攪拌し、粘度4Pa・sに調整した負極スラリーを得た。
次に、アルミニウムの微粉末(アルドリッチ社製、平均粒径5μm)200gを水溶性の界面活性剤(花王社製、製品名:エマール、品番20T)6gと水500mLとを混ぜてスラリーを作製した。ドクターブレード法により、作製したスラリーをペットフィルム(東レ社製、製品名:トレファン、品番2500T)上に薄く塗布してシート成型した。このとき、同時に、40℃に加熱して成型したシートに泡を形成しつつ、乾燥した。その後、500℃程度のアルゴン雰囲気下で焼結し、空隙率97%、厚さ1800μmの発泡アルミを得た。形成した発泡アルミを3x3cmのサイズに切断し、集電体を形成した。当該集電体を上記の負極スラリーに5分間浸した後、表面に付着している余分な負極スラリーをヘラで落とし、120℃で5時間乾燥させた。
次いで、乾燥させた集電体をロールプレス機にかけて、集電体の厚さを1500μmに圧縮した。圧縮した集電体表面に表3に示すパラメータの穴を、剣山状の針を集電体の表面から突き刺して形成し、活物質密度が2.30g/cm(真密度の70%)である負極を作製した。作製した負極は、LTOを90wt%、PVDFを3wt%、ABをwt2%、発泡アルミを5wt%含んでいた。作製した負極を用いて、実施例1と同様の方法で、実施例15の電気化学セルを作製した。
実施例16〜19の電気化学セルも実施例15と同様の方法により作製した。実施例16〜19の電気化学セルの負極に形成された穴の各パラメータは表3に示す通りである。作製した負極は、いずれも実施例15と活物質密度及び組成が同じである。
Figure 2016058258
実施例20〜24では、天然黒鉛を集電体に担持させた本発明のリチウムイオン二次電池用負極を作製し、リチウムイオン二次電池の負極に適用した。実施例20〜24の電気化学セルは、負極に形成した穴の表面形状が異なるが、他の構成は同じであるので、実施例20を例として電気化学セルの作製方法を説明する。
最初に、活物質としての天然黒鉛、バインダーとしてのPVDFの重量比が97:3となるようにそれぞれ計量した。その後、計量したPVDFをNMPに添加し、自転公転ハイブリッドミキサーに投入して20分攪拌した。さらに天然黒鉛を添加して攪拌し、粘度4Pa・sに調整した負極スラリーを得た。
次に、実施例7の発泡銅とは製造条件の発泡・乾燥温度を50℃に変た点以外は同じ条件で空隙率95%、厚さ350μmの発泡銅を形成した。形成した発泡アルミを3x3cmに切断し、集電体を形成した。当該集電体を上記の負極スラリーに5分間浸した後、表面に付着している余分な負極スラリーをヘラで落とし、120℃で5時間乾燥させた。
次いで、乾燥させた集電体をロールプレス機にかけて、集電体の厚さを300μmに圧縮した。圧縮した集電体表面に表4に示すパラメータの穴を、剣山状の針を集電体の表面から突き刺して形成し、活物質密度が1.65g/cm(真密度の75%)である負極を作製した。作製した負極は、天然黒鉛を91wt%、PVDFを3wt%、発泡銅を6wt%含んでいた。作製した負極を用いて、実施例1と同様の方法で、実施例20の電気化学セルを作製した。
実施例21〜24の電気化学セルも実施例20と同様の方法により作製した。実施例21〜24の電気化学セルの負極に形成された穴の各パラメータは表4に示すとおりである。作製した負極は、いずれも実施例20と同じ活物質密度と組成である。
Figure 2016058258
本実施例で用いた発泡ニッケルの平均細孔径は150μm前後、発泡銅の平均細孔径は400μm前後、発泡アルミの平均細孔径は300μm前後であった。
なお、本実施形態では負極に形成された穴の最大径、穴の中心間隔、穴の深さは、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、製品名:VK-X100)によって測定した。これらの値は、30カ所についてそれぞれ測定し、その平均値を求めることで算出した。負極の厚さは、負極に穴を形成した後、マイクロメータで測定した。以下で議論する負極の厚さは、この厚さである。
ここで、活物質密度の定義は、活物質密度(g/cm)=負極中の活物質の重量(g)/多孔質金属を含む負極の体積(cm)である。このとき、多孔質金属を含む負極の体積は、例えば負極が幅がa、奥行がb、高さがcの直方体の場合、多孔質金属を含む負極の体積(cm)=a(幅cm)×b(奥行cm)×c(高さcm)で求めることができる。また、負極中の活物質の重量は、負極中の多孔質金属を除く合材部分の重量に活物質の含有割合を掛けること、すなわち、活物質の重量(g)=合材部分の重量(g)×活物質の含有割合で求めることができる。負極中の多孔質金属を除く合材部分の重量は、電子天秤により測定した負極の重量から多孔質金属の重量を減じることで、すなわち、多孔質金属を除く合材部分の重量(g)=負極全体の重量(g)−多孔質金属の重量(g)で求めることができる。以上より活物質密度は、算出した活物質の重量を、多孔質金属を含む負極の体積で割ることで求めた。また、単位面積当たりの活物質量は、当該活物質の重量を負極の一表面の面積(本実施例では9cm)で割ることで求めた。
(2)電気化学セルの特性評価方法
放電容量を測定して電気化学セルの特性を評価した。放電容量は、充放電試験装置(アスカ電子(株)製、モデル:ACD−R1APS)を用い、温度25±1℃において測定した。
実施例1〜6の電気化学セルは、2mA/cmの定電流(CC:コンスタントカーレント)、0.005Vvs.Li/Liの定電圧(CV:コンスタントボルテージ)で充電電流値が0.1mA/cmに低下するまで充電した。実施例7〜14及び実施例20〜24の電気化学セルは、1mA/cmの定電流、0.005Vvs.Li/Liの定電圧で充電電流値が0.1mA/cmに低下するまで充電した。これらの電気化学セルは、充電後、カットオフ電圧を1.0Vvs.Li/Liとして10mA/cmの定電流で放電したときに電気容量を測定し、当該電気容量を放電容量とした。実施例15〜19の電気化学セルは、5mA/cmの定電流、1.4Vvs.Li/Liの定電圧で充電電流値が0.1mA/cmに低下するまで充電した後、カットオフ電圧を2.0Vvs.Li/Liとして10mA/cmの定電流で放電したときに得られた電気容量を放電容量とした。
実施例1〜24の電気化学セルの放電容量の値は、比較する電気化学セルの内、最も放電容量の大きかった電気化学セルの放電容量の値を100%として規格化して比較した。
(3)電気化学セルの評価結果
(3−1)負極の穴の深さと電気化学セルの特性の関係について
実施例1〜6の電気化学セルの放電容量の測定結果を表1に示す。また、比較のために、比較例1として負極に穴が形成されていない点以外実施例1と同じ構成である電気化学セルを作製した。比較例1の放電容量の測定結果も併せて表1に示す。表1の放電容量は、実施例5の放電容量の値を100%として規格化したものである。活物質が人造黒鉛である実施例5の放電容量は360mAh/gであった。
表1に示す通り、実施例1〜6の電気化学セルは、比較例1の電気化学セルと比較して、放電容量が高く、本発明のリチウムイオン二次電池用負極を用いることで放電容量が向上することが確認できた。また、穴の深さが深くなるほど電気化学セルの放電容量が高くなっており、負極の厚さに対する穴の深さの割合が5%以上であると放電容量が64%以上であり、特に、負極の厚さに対する穴の深さの割合が50%以上であると放電容量が86%以上とさらに高い。これは、穴が深くなることで、電極の厚さ方向に対して、さらにリチウムイオンが移動し易くなり、電池反応に寄与する活物質が増えたためである。以上から、負極の厚さに対する穴の深さの割合が5%以上であることが好ましく、さらには50%以上であることが特に好ましいことがわかる。
(3−2)負極の穴の最大径と電気化学セルの特性の関係について
実施例7〜14の電気化学セルの放電容量の測定結果を表2に示す。実施例7〜14の電気化学セルは、負極に形成された穴の最大径と穴の中心間隔以外は同じ構成である。実施例7〜14の電気化学セルは、穴の最大径に合わせて穴の中心間隔を変えることで、穴の面積の総和がほぼ等しくなるようにしている。表2の放電容量は、実施例12の放電容量の値を100%として規格化したものである。活物質が天然黒鉛である実施例12の放電容量は360mAh/gであった。
表2に示す通り、実施例7〜14の電気化学セルは、穴の最大径が5〜3000μmの範囲で放電容量が75%以上であり、特に、穴の最大径が50〜2000μmの範囲では放電容量が90%以上とさらに高い。以上から、穴の最大径が5〜3000μmであることが好ましく、さらには穴の最大径が50〜2000μmであることが特に好ましいことがわかる。
なお、実施例7〜14の内では、穴の最大径が1000μmの実施例12が最も放電容量が大きい。穴の最大径が1000μmよりも小さくなるにつれて、穴に存在する電解液中を移動するリチウムイオンが穴から影響を受け易くなり、その結果、電解液中のリチウムイオンの移動が律速となるため、放電容量の値が徐々に低下すると考えられる。また、穴の最大径が1000μmよりも大きくなるにつれて、電極に穴を開ける際に多孔質金属の骨格が崩れてしまう可能性が高くなるため、放電容量の値が徐々に低下すると考えられる。
(3−3)負極の穴の中心間隔と電気化学セルの特性の関係について
実施例15〜19の電気化学セルの放電容量の測定結果を表3に示す。実施例15〜19のリチウムイオン二次電池は、負極に形成された穴の中心間隔以外同じ構成である。また、表3の放電容量は、実施例17の放電容量の値を100%として規格化した値である。活物質がLTOである実施例17の放電容量は160mAh/gであった。
表3に示す通り、実施例15〜19の電気化学セルは、穴の中心間隔が500〜8000μmの範囲で放電容量が73%以上であり、特に、穴の中心間隔が1000〜4000μmの範囲では放電容量が89%以上とさらに高い。以上から、穴の中心間隔が500〜8000μmであることが好ましく、さらには穴の中心間隔が1000〜4000μmであることが特に好ましいことがわかる。
(3−4)負極の穴の表面形状と電気化学セルの特性の関係について
実施例20〜24の電気化学セルの放電容量の測定結果を表4に示す。実施例20〜24の電気化学セルは、穴の表面形状以外同じ構成である。また、比較のために、比較例2として、負極に穴が形成されていない点以外実施例20の電気化学セルと同じ構成である電気化学セルを作製し、その放電容量の測定結果も表4に示す。表4の放電容量は、実施例20の放電容量の値を100%として規格化したものである。活物質が天然黒鉛である実施例20の放電容量は360mAh/gであった。
表4に示す通り、実施例20〜24の電気化学セルの放電容量は97%以上であり、比較例2の電気化学セルより高い。以上から、負極に形成された穴の表面形状によらず、放電容量が向上することがわかる。
(3−5)活物質の種類と電気化学セルの特性の関係について
続いて、活物質を天然黒鉛(95%)+Si(5%)(合算真密度2.2g/cm)、天然黒鉛(95%)+Sn(5%)(合算真密度2.46g/cm)、天然黒鉛(90%)+SiO(10%)(合算真密度2.2g/cm)、ハードカーボン(真密度1.8g/cm)、人造黒鉛(真密度2.2g/cm)、LiTi12(真密度3.3g/cm)にそれぞれ変え、負極の厚さを400μm、穴の深さを400μmとした以外は実施例12と同じ条件で作製した電気化学セルを作製し、それぞれの放電容量を測定した。上記の電気化学セルに用いた負極の活物質密度は、活物質の真密度の80%である。また、比較のために、穴が形成されていないこと以外は上記と同様の電気化学セルをそれぞれ作成し、放電容量を測定した。その結果を表5に示す。放電容量の値は、穴が形成されている電気化学セルの放電容量をそれぞれ100%として規格化して示している。放電容量は、1C放電で測定した。
Figure 2016058258
表5に示すように、本発明は、上記の何れの活物質を用いても、電極に穴を形成することで、放電容量が増加することが確認できた。また、活物質が天然黒鉛(95%)+Si(5%)の穴あり電気化学セルの放電容量は490mAh/g、活物質が天然黒鉛(95%)+Sn(5%)の穴あり電気化学セルの放電容量は400mAh/g、活物質が天然黒鉛(90%)+SiO(10%)の穴あり電気化学セルの放電容量は430mAh/gであった。さらに、活物質がハードカーボンの穴あり電気化学セルの放電容量は150mAh/g、活物質が人造黒鉛の穴あり電気化学セルの放電容量は330mAh/g、活物質がLiTi12の穴あり電気化学セルの放電容量は135mAh/gであった。
(実施例II)
負極の活物質密度と電気化学セルの放電容量の関係を調べるために、実施例25〜48として活物質密度を真密度の50〜80%の範囲で変化させて本発明の負極を作製し、当該負極を用いて上記と同様の電気化学セルを作製した。負極に形成された穴は、表面形状が丸形、縦断面形状が五角形、穴の中心間隔が4000μm、穴の最大径500μmの貫通穴で統一した。この穴は、断面形状において先端部が三角形をしており、当該三角形の頂点部分が貫通している。また比較のために、比較例3、7、11、15、19、23として活物質密度が真密度の45%、比較例4、8、12、16、20、24として活物質密度が真密度の85%の上記穴が形成された穴あり負極を作製し、電気化学セルを作製した。さらに、比較例5、9、13、17、21、25として活物質密度が真密度の50%、比較例6、18として活物質密度が真密度の70%、比較例10、14、22、26として活物質密度が真密度の80%の穴なし負極を作製し、電気化学セルを作製した。電気化学セルは、実施例1と同様の方法で作製した。実施例25〜48及び比較例3〜26の負極の担持する活物質の種類及び活物質密度は表6、7に示すとおりである。
Figure 2016058258
Figure 2016058258
また、実施例25〜48及び比較例3〜26の電気化学セルの放電容量は1C放電で測定した。実施例25〜44及び比較例3〜22の電気化学セルの放電容量は表6及び表7に示す充電電流、0.005Vvs.Li/Liの定電圧で充電電流値が0.1mA/cmに低下するまで充電した後、カットオフ電圧を1.0Vvs.Li/Liとして表6及び表7に示す放電電流で放電したときに得られた電気容量を放電容量とした。実施例45〜48及び比較例23〜26の電気化学セルは、表6及び表7に示す充電電流、1.4Vvs.Li/Liの定電圧で充電電流値が0.1mA/cmに低下するまで充電した後、カットオフ電圧を2.0Vvs.Li/Liとして表6及び表7に示す放電電流で放電したときに得られた電気容量を放電容量とした。実施例25〜48の電気化学セルの負極のデータと放電容量の測定結果とを表6に、比較例3〜26の電気化学セルの負極のデータと放電容量の測定結果とを表7に示す。
穴を形成した効果を確認するため、活物質密度が50%である実施例25、29、33、37、41、45と、負極に穴が形成されていない点のみこれらの実施例と異なる比較例5、9、13、17、21、25をそれぞれ比較した。いずれの場合も、実施例の電気化学セルは、質量当たりの放電容量及び面積当たりの放電容量が比較例の電気化学セルより高い。また実施例の電気化学セルは、穴を形成することで比較例の電気化学セルに比べて質量当たりの放電容量が約1.1倍に増加している。このように本発明の負極は穴を形成することで、当該負極を用いた燃料電池の放電容量が増加することがわかる。
上記の比較例5、9、13、17、21、25の負極は穴が形成されていないため、リチウムイオンが、負極の空隙、すなわち、活物質間に存在する微細孔を通過する必要があり、負極内を移動し難く、活物質に届き難い。そのため当該負極を用いた電気化学セルは、負極の表面から厚さ方向に深い位置にある活物質を有効に利用できず、電池反応に寄与する活物質が少ないために放電容量の値が低いと考えられる。一方で穴が形成された実施例25、29、33、37、41、45の負極は、リチウムイオンが穴に存在する電解液中を優先的に通り、負極の表面から厚さ方向に深い位置にある活物質にも届きやすく、有効に利用でき、電池反応に寄与する活物質が多いので、同じ活物質密度の比較例の電気化学セルと比較して放電容量が高いと考えられる。
活物質密度が70%又は80%実施例の電気化学セルと、当該電気化学セルと穴が形成されていない点のみ異なる電気化学セルとを、すなわち、実施例27と比較例6、実施例32と比較例10、実施例36と比較例14、実施例39と比較例18、実施例44と比較例22、実施例48と比較例26の電気化学セルをそれぞれ比較した。いずれの場合も、実施例の電気化学セルは、質量当たりの放電容量及び面積当たりの放電容量が比較例の電気化学セルより高い。そして実施例の電気化学セルの質量当たりの放電容量は、比較例の電気化学セルと比較して、それぞれ、約1.4倍、約1.5倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.5倍、約1.9倍となっている。このように、活物質密度が高い方が負極に穴を形成したことによる放電容量の増加量が多いことがわかる。
上記の比較例6、10、14、18、22、26の負極は、活物質密度が真密度の70%又は80%と高いため、活物質密度が50%である場合と比較して、負極に存在する空隙が少なく、その大きさも小さい。そのため比較例の負極は、リチウムイオンが移動し難く、活物質に届き難いので、有効に利用できていない活物質が多い。その結果、比較例の負極は質量当たりの放電容量が低いと考えられる。このように活物質密度が高い方が有効に利用できていない活物質が多いので、活物質密度が高い負極は、穴を形成したことで有効に利用できるようになった活物質が多く、穴を形成したことによる放電容量の増加量が多いと考えられる。
活物質密度が80%である実施例28、32、36、40、44、48の電気化学セルと、活物質密度が85%である比較例4、8、12、16、20、24の電気化学セルを比較すると、活物質密度が真密度の80%から85%になった結果、いずれの活物質においても、質量当たりの放電容量が急激に低下し、面積当たりの放電容量も低下している。
比較例4、8、12、16、20、24の負極は、活物質密度が85%と極めて高いため、負極中の活物質間に存在する空隙が少ない上、その大きさも小さい。そのためこれら比較例の負極は、負極中の電解液量が少なく、さらに空隙が小さいためにリチウムイオンの移動抵抗が極めて大きくなっていると考えられる。そのため負極に穴を形成しても、穴の内部空間に露出した部分の活物質しか利用できず、負極の内部の活物質まで有効に利用できないため、放電容量の値が低下したと考えられる。このように、活物質密度が80%よりも大きいと、活物質の担持量を増加させても、質量当たりの放電容量が急激に低下し、面積当たりの放電容量が増えず、結果として電池の容量が増えない。
活物質密度が低い負極、特に活物質密度が50%よりも小さい負極は、負極の内部に空隙が多い。そのため負極は、電解液が負極内に十分に存在し、リチウムイオンが負極内をスムーズに移動でき、負極が担持するほとんどの活物質を有効に利用できていると考えられる。その結果、このような負極に穴を形成しても、有効に利用できる活物質が増えず、放電容量が増加しないと考えられる。よって活物質密度が真密度の45%である比較例3、7、11、15、19、23の負極は、負極に穴を形成することによって放電容量が増加するという効果を得られていないと考えられる。
(実施例III)
負極の厚さと電気化学セルの放電容量の関係を調べるために、実施例49〜55として集電体の厚さを50〜4000μmの範囲で変化させて本発明の負極を作製し、当該負極を用いて電気化学セルを作製した。負極に形成された穴は、表面形状が丸形、縦断面形状が五角形、穴の中心間隔が4000μm、穴の最大径1000μmの貫通穴で統一した。この穴は、断面形状において先端部が三角形をしており、当該三角形の頂点部分が貫通している。また、比較のために、比較例27〜33として穴が形成されていない点以外、実施例49〜55の負極と同様の負極を作製し、電気化学セルを作製した。電気化学セルは、実施例1と同様の方法で作製した。これらの電気化学セルの放電容量は、5mA/cmの定電流、0.005Vvs.Li/Liの定電圧で充電電流値が0.1mA/cmに低下するまで充電した後、カットオフ電圧を1.0Vvs.Li/Liとして、10mA/cmの定電流で放電して測定した。第1回目の放電では10mAh/cmの放電を行った。作製した実施例及び比較例の負極のパラメータと測定した放電容量の値とを表8に示す。
Figure 2016058258
実施例49〜55の電気化学セルは、各実施例と厚さが同じ穴なし負極を有する比較例27〜33の電気化学セルとそれぞれ比較して、質量当たりの放電容量、面積当たりの放電容量が共に高く、穴を形成することで放電容量が増加していることがわかる。
また、負極が厚い場合に放電容量の増加量が多い。厚く、穴が形成されていない負極は、リチウムイオンが負極の空隙を長距離移動するのでリチウムイオンの移動抵抗が高い。さらに当該負極を用いた電気化学セルは、厚いので負極の表面から厚さ方向に深い位置の活物質を有効に利用できず、放電容量が特に小さいと考えられる。このような電気化学セルは、負極に穴を形成した場合、リチウムイオンが穴に存在する電解液中を優先的に通り、リチウムイオンの移動がスムーズになって移動抵抗が下がり、かつ、負極の表面から厚さ方向に深い位置にある活物質も有効に利用できるようになるので、放電容量が高いと考えられる。
実施例49の電気化学セルは、厚さが同じ穴なし負極を有する比較例27の電気化学セルと比較して、質量当たりの放電容量及び面積当たりの放電容量も増加しているが、その増加量は小さい。負極の厚さが50μmのように比較的薄い場合は、負極に穴を形成したことによる放電容量の増加量が小さい。負極の厚さが薄い場合、電解液中のリチウムイオンが負極内部の活物質にも届きやすく、穴が形成されていなくても多くの活物質を有効に利用できていると考えられる。そのため、厚さが薄い負極は、負極に穴を形成しても、有効に利用できるようになった活物質が少なく、放電容量の増加も小さかったと考えられる。これに対して、負極の厚さが100μmである実施例50の電気化学セルは、穴を形成することで質量当たりの放電容量が約1.06倍に増加している。
また負極の厚さが3000μmの実施例54と負極の厚さが4000μmの実施例55を比較すると、負極の厚さが厚くなることで実施例55の電気化学セルは質量あたりの放電容量が大幅に減少しており、さらに、面積当たりの放電容量の増加量も極めて小さい。実施例55の負極は、負極の厚さが厚いため、リチウムイオンが負極の穴に収容された電解液中を移動していても、リチウムイオンの移動距離が長い。そのため、実施例55の電気化学セルは効率的に電池反応を行うことができず、実施例54の電気化学セルと比較して、質量あたりの放電容量が急激に低下し、その結果、面積当たりの放電容量もほとんど増加していないと考えられる。このように、負極の厚さが100〜3000μmであることが望ましいことがわかる。
1 リチウムイオン二次電池
2 リチウムイオン二次電池用負極
3 正極
4 セパレータ
5、8 集電体
6 穴
7 底部

Claims (16)

  1. 集電体と、前記集電体に担持された活物質とを含む負極であって、
    前記集電体が多孔質金属で形成され、
    前記負極は、複数の穴が表面に形成されており、
    活物質密度が前記活物質の真密度の50〜80%である
    ことを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極。
  2. 前記負極は、厚さが100〜3000μmであることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
  3. 前記負極は、前記活物質として黒鉛を50.0〜98.9wt%、前記多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、前記活物質密度が1.10〜1.76g/cmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
  4. 前記負極は、前記活物質としてSiを50.0〜98.9wt%、前記多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、前記活物質密度が1.15〜1.84g/cmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
  5. 前記負極は、前記活物質としてSiOを50.0〜98.9wt%、前記多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、前記活物質密度が1.05〜1.68g/cmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
  6. 前記負極は、前記活物質としてSnを50.0〜98.9wt%、前記多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、前記活物質密度が3.70〜5.92g/cmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
  7. 前記負極は、前記活物質としてLiTi12を50.0〜98.9wt%、前記多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、前記活物質密度が1.65〜2.64g/cmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
  8. 前記負極は、前記活物質として難黒鉛化炭素を50.0〜98.9wt%、前記多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、前記活物質密度が0.90〜1.44g/cmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
  9. 前記負極は、前記活物質として易黒鉛化炭素を50.0〜98.9wt%、前記多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、前記活物質密度が0.90〜1.44g/cmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
  10. 前記負極は、前記活物質として黒鉛、Si、SiO、Sn、LiTi12、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素から選択される2種以上を50.0〜98.9wt%、前記多孔質金属を1.0〜50.0wt%含み、前記活物質密度が0.90g/cm超5.92g/cm未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
  11. 前記複数の穴の最大径が5〜3000μmであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
  12. 前記複数の穴の中心間隔が500〜8000μmであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
  13. 前記複数の穴の表面形状が、丸形、三角形、四角形又は五角形以上の多角形から選ばれる1つ以上であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
  14. 前記複数の穴は、底部を有していることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
  15. 前記複数の穴の深さが前記負極の厚さの5%以上であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
  16. 請求項1〜15のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極を備えることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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CN108511787A (zh) * 2017-02-23 2018-09-07 松下知识产权经营株式会社 锂离子二次电池及其制造方法
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US11799073B2 (en) 2018-11-05 2023-10-24 Samsung Electronics Co., Ltd. Electrode structure, method of manufacturing the electrode structure, and secondary battery including the electrode structure
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