第1の発明は、洗浄水を噴出するノズル装置と、前記ノズル装置に洗浄水を供給する洗浄水供給流路と、制御部と、前記制御部を操作する操作部と、を含み、前記洗浄水供給流路は、前記ノズル装置に洗浄水を送給する水ポンプと、前記水ポンプの上流側にあって洗浄水を加熱する熱交換器と、前記熱交換器の上流側にあって前記洗浄水供給流路の一部を大気に開放するサブタンクと、前記サブタンクの上流側にあって洗浄水の供給および停止を制御する止水電磁弁と、を備え、前記サブタンクは、満水状態において、天面の一部と貯溜された洗浄水の水面とで形成され、洗浄水が浸水しない密閉空間を備え、前記サブタンクは、前記サブタンク内に貯溜された洗浄水の上限水位を検知する上限電極と下限水位を検知する下限電極とを前記密閉空間を形成する前記天面に備え、前記制御部は、初期使用時において、前記止水電磁弁が洗浄水の供給を開始した後、第1の所定時間の間に、前記上限電極が上限水位を検知できない場合は、前記止水電磁弁を停止するとともに前記水ポンプを駆動する修整動作を第2の所定時間に亘り実施し、前記修整動作の終了後、前記止水電磁弁を制御して洗浄水の供給を再開することを特徴とする衛生洗浄装置である。
これにより、初期使用時に大量の空気がサブタンク600に送給され、密閉空間より突出して空気溜が形成された場合、修整動作を実施することにより、空気溜を正常状態に修整させ、上限電極が水位を検知することが可能な状態にすることができるので、サブタンクの不本意な不具合を解消することができ、衛生洗浄装置の信頼性を向上することができる。
第2の発明は、特に第1の発明において、前記修整動作は、前記止水電磁弁が洗浄水の供給を開始した後の第3の所定時間に複数回実施されることを特徴とするものである。
これにより、空気溜をより確実に修整することが可能となるので、信頼性をより向上することができる。
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、前記修整動作を複数回実施し、前記止水電磁弁が洗浄水の供給を開始した後、第3の所定時間内に前記水位電極が上限水位を検知できない場合、前記制御部は異常と判定することを特徴とするものである。
これにより、不本意な不具合を解消するとともに、異常も検知することができるので、安全性と信頼性をより向上することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本実施の形態における衛生洗浄装置を便器上に設置した状態の外観の斜視図を示し、図2は衛生洗浄装置の本体の前本体ケースを取り外した状態の斜視図を示し、図3は衛生洗浄装置の本体の前本体ケースと制御部を取り外した状態の斜視図を示し、図4は衛生洗浄装置の操作部上面の斜視図を示し、図5はリモートコントローラの外観の斜視図を示すものである。
<1>衛生洗浄装置の全体構成
図1に示すように、衛生洗浄装置100は、本体200、便座300、便蓋320、リモートコントローラ400、人体検知センサ450を主構成部材として構成され、本体200と便座300と便蓋320は一体で構成され、便器110の上面に設置される。
なお、本実施の形態においては衛生洗浄装置100の本体200の設置側を後方、便座300の設置側を前方とし、前方に向かって右側を右方、前方に向かって左側を左方として各構成要素の配置を説明する。
本体200の側部には突出して操作部210が一体に設けられ、本体200の前部には、便座300および便蓋320が便座便蓋回動機構360を介して開閉自在に取り付けられている。便座便蓋回動機構360は直流モータと複数のギアで構成されており、便座300と便蓋320を個別または同時に開閉することができる。
図1に示すように便蓋320を開放した状態においては、便蓋320は衛生洗浄装置100の最後部に位置するように起立する。また、便蓋320を閉成すると便座300の上面を隠蔽する。便蓋320は樹脂材料の成型による部材で構成されており、二重構造と断熱材による断熱構造となっている。
便座300は着座面を加熱する便座ヒータ(図示せず)を内蔵しており、便座の着座面が快適な温度になるように加熱する。
また、便座300の回動軸を支持する本体200内の軸受け部分には便座300に着座した人体を検知する着座センサ(図示せず)が設置されている。この着座センサは重量式の着座センサであり、便座300に使用者が着座することによる重量変化でスイッチを開閉させることにより、便座300の着座面に使用者が着座していることを検知するものである。
本体200の内部には、サブタンク600、熱交換器700、ノズル装置800等で構成され、人体の局部を洗浄する洗浄手段500と、排便時の臭気を脱臭する脱臭装置120と、衛生洗浄装置100の各機能を制御する制御部130等が内蔵されている(洗浄手段500の詳細については後述する)。
図2に示すように、本体200の内部の中央部には、洗浄手段500の主構成部材であるノズル装置800が設置されており、ノズル装置800の左側には、脱臭装置120が設置されている。また左側部には便座300と便蓋320を開閉駆動する便座便蓋回動機構360が設置されている。
図3に示すように、ノズル装置800の右側には、前方に洗浄手段500の止水電磁弁514、サブタンク600等が設置されており、その後方には熱交換器700が設置されており、熱交換器700の後方には水ポンプ516が設置されている。また、図2に示すように洗浄手段500の上方には制御部130が設置されている。
本体200の右側部には前方に突出するように操作部210が一体に設けられており、図4に示すように、衛生洗浄装置100の各機能を操作および設定する複数のスイッチと表示灯240が設置されている。
操作部210の内部には操作基板(図示せず)が設置されている。操作基板には複数のタクトスイッチと複数のLEDが設置されており、操作部210の上面に貼付されたスイッチ銘板を介してタクトスイッチの押圧操作とLEDの視認が可能となっている。
また、操作部210の上面後方には、リモートコントローラ400と人体検知センサ450から送信される赤外線信号を受信する赤外線受信部211が配置されている。
操作部210に設置されたスイッチは、洗浄動作を操作する複数の操作スイッチ220
と各種機能を設定する複数の設定スイッチ230が設置されている。また、表示灯240としては設定状態を表示する複数のLEDが設置されている。
操作スイッチ220としては、リモートコントローラ400の電池切れや、故障の場合に補助的に使用するお尻洗浄スイッチ221と、ノズルの掃除を行うときに操作するノズル掃除スイッチ222が設けられている。
設定スイッチ230としては、洗浄水の温度を設定する温水温度スイッチ231と、便座の温度を設定する便座温度スイッチ232と、設定されてから8時間に亘り便座300の保温を停止する8時間切りスイッチ233と、衛生洗浄装置100が使用されない時間帯を自動的に学習して、使用されない時間帯に便座300の保温温度を下げることにより節電を行う節電スイッチ234と、便座300および便蓋320の自動開閉動作を設定する便蓋自動開閉スイッチ235等が設置されている。
衛生洗浄装置100の多くの操作は、本体200とは別体で構成されたリモートコントローラ400で行われる。リモートコントローラ400は便座300に着座した使用者が操作のしやすいトイレルームの壁面等に取り付けられる。
図5に示すように、リモートコントローラ400の全体形状は薄い直方体に形成されており、樹脂材料で成形された箱状のリモコン本体401の上面と前面に複数のスイッチと表示灯が設置されている。また、リモコン本体401に上部角にはリモートコントローラ400の操作信号を本体200に赤外線で送信する送信部402が配置されている。
リモコン本体401の内部にはリモートコントローラ400の制御機能を構成する制御基板(図示せず)と、リモートコントローラ400の電源である電池(図示せず)が内蔵されている。
リモコン本体401の前面中央部には、お尻洗浄を開始するお尻洗浄スイッチ410と、女性の局部洗浄を洗浄するビデ洗浄を開始するビデ洗浄スイッチ411と、お尻洗浄とビデ洗浄を停止する停止スイッチ412と、お尻洗浄およびビデ洗浄時に洗浄位置を前後に周期的に移動させて広い範囲の洗浄が可能とするムーブ洗浄スイッチ413と、お尻洗浄時に洗浄強さを周期的に変化させるリズム洗浄スイッチ414が配置されている。
前面上部には、お尻洗浄およびビデ洗浄時の洗浄強さを2個のスイッチで調節する洗浄強さスイッチ415と、お尻洗浄およびビデ洗浄時の洗浄位置を2個のスイッチで調整する洗浄位置スイッチ416と、ノズルを40℃の温水で約1分間洗浄するノズル除菌スイッチ417が配置されている。
また、洗浄強さスイッチ415の上方には、洗浄強さを5段階で表示するLEDの強さ表示灯421と、洗浄位置スイッチ416の上方には、洗浄位置を5段階で表示する位置表示灯422が配置されている。
リモコン本体401の上面には、便蓋を電動で開閉する便蓋スイッチ418と、便座を電動で開閉する便座スイッチ419が設置されており、スイッチ操作により使用者が任意に便座300と便蓋320を開閉できる構成となっている。
人体検知センサ450は本体200とは別体で構成されており、トイレルームの壁面等に取り付けられる。人体検知センサ450は、人体から放出される赤外線を受光する焦電センサ(図示せず)と、焦電センサの信号で人体の検出を判定するセンサ制御部(図示せず)と、センサ制御部からの人体検知信号を本体200の制御部に赤外線で送信する赤外
線送信部(図示せず)と、人体検知センサ450の電源である電池(図示せず)等で構成されている。
<2>洗浄手段の構成
図6は衛生洗浄装置の洗浄手段の水回路の構成を示す模式図である。
本体200の内部には使用者の局部を洗浄する洗浄手段500が内蔵されている。洗浄手段500は洗浄水を噴出するノズル装置800と、給水接続口510からノズル装置800に洗浄水を供給する一連の洗浄水供給流路とで形成されている。
図6に示すように、洗浄水供給流路は、給水接続口510と、ストレーナ511と、逆止弁512と、定流量弁513と、止水電磁弁514と、リリーフ弁515と、サブタンク600と、熱交換器700と、バッファータンク750と、水ポンプ516と、流調弁517と、が順次設置され、ノズル装置800に接続されている。
本体200の右側下方に水道管が接続される給水接続口510が配置されており、給水接続口510の内部には水道水に含まれるごみの流入を防止するストレーナ511と、サブタンク600内に貯溜された水が水道配管に逆流することを防止する逆止弁512が組み込まれている。
逆止弁512の下流には、流路に流れる洗浄水の量を一定に保つ定流量弁513と、流路を電動で開閉する止水電磁弁514と、リリーフ弁515とが一体に構成されている。
止水電磁弁514の下流には、大気解放口を備えたサブタンク600と、洗浄水を瞬時に加熱する熱交換器700と、熱交換器700で加熱された温水の温度を均一にするバッファータンク750が接続されている。
バッファータンク750の下流には、水ポンプ516が接続されている。水ポンプ516の下流には、流調弁517を介してノズル装置800が接続されており、流調弁517のそれぞれのポートにはノズル装置800のお尻洗浄部831、ビデ洗浄部832、ノズルクリーニング部833が接続されている。
図7および図8に示すように、洗浄手段500を構成する部材のうち、給水接続口510、ストレーナ511、逆止弁512、定流量弁513、止水電磁弁514、リリーフ弁515、サブタンク600、熱交換器700、バッファータンク750、水ポンプ516は樹脂材料で成型されたシャーシ501に組み込まれ一体的に構成され、本体200の後本体ケース201に組みつけられている。
図7に示すように、ストレーナ511と逆止弁512は給水接続口510に一体に組み込まれており、定流量弁513とリリーフ弁515とは止水電磁弁514に一体に組み込まれている。また、バッファータンク750は熱交換器700と一体に構成されている。
給水接続口510と止水電磁弁514、止水電磁弁514とサブタンク600、サブタンク600と熱交換器700、とは接続チューブ等を介さず、相互の接続口をパッキンであるOリングを介して直接接続する構成となっている。また、これらの水回路を構成する部材はシャーシ501の所定の位置に設置固定されている。
このような構成を採用することにより、水密構造を向上することが可能になるとともに、相互の部材の配置精度を向上することができる。特にサブタンク600と熱交換器700の配置精度が向上することにより、洗浄水の流量の制御精度を向上することが可能とな
り、洗浄手段500の性能の向上と制御精度を向上することができる。
水ポンプ516は容積形ポンプであるピストンポンプであり、図18、図19に示すように、外形は略L字状をなしており、略円筒形のモータ部516aと、モータの回転運動を往復運動に変換するリンク機構部516bと、リンク機構部516bの往復運動で駆動されるピストン部516cで構成されている。ピストン部516cの外面には、接続口として吸水口516dと吐出口516eが設けられている。
上記構成の水ポンプ516を駆動させた場合、往復運動を伴うリンク機構部516bとピストン部516cに比べ、回転運動のみのモータ部516aでは発生する振動が少ない構成となっている。
モータ部516aを駆動することにより、ピストン部516cが往復運動を開始し、吸水口516dから洗浄水を吸引して、吐出口516eから洗浄水吐出する構成であり、吐出する洗浄水はピストン部516cの往復運動に伴い適度の脈動を伴った水流となる。
上記構成の水ポンプ516の略円柱形のモータ部516aの外周を、弾性を備えた発泡樹脂製の緩衝部材(図示せず)で包囲し、シャーシ501の後部に設けられた略円筒形の水ポンプ設置部501aに挿入することにより支持され、リンク機構部516bとピストン部516cは下方に垂れ下がるように懸架される。
水ポンプ設置部501aは薄い肉厚で形成されており、シャーシ501の底面から起立したリブ状の脚部501bの上部に形成されている。薄い肉厚で形成したことにより樹脂の弾性により水ポンプ516の振動を吸収する効果を得ることができる。
また、バッファータンク750が一体に形成された熱交換器700の接続口である出湯口712と水ポンプ516の接続口である吸水口516dとは軟質樹脂製の接続チューブで接続される。
上記のように、振動の少ないモータ部516aが緩衝部材を介して、シャーシ501の薄い肉厚で形成された水ポンプ設置部501aに設置され、振動を多く発生するリンク機構部516bとピストン部516cとはフリーな状態で懸架され、しかもバッファータンク750とは軟質樹脂製の接続チューブ502で接続されることにより、水ポンプ516の駆動時に発生する振動をシャーシ501や他の部材、また本体200に伝わること抑制することが可能となり、衛生洗浄装置の快適性と耐久性を向上する効果を得ることができる。
特に水ポンプ516は、発泡樹脂製の緩衝部材と水ポンプ設置部501aを形成する弾性を備えた樹脂との2つの異なる材質を介して支持されることにより、広い範囲の周波数の振動が吸収され、本体への振動の伝達を効果的に抑制することができる。
次に、衛生洗浄装置の洗浄手段500の基本的な制御について説明する。
水道配管を流れる水道水が、洗浄水として給水接続口510から供給され、止水電磁弁514が開放されることによりサブタンク600へ洗浄水が供給される。流路内を流れる洗浄水の流量は定流量弁513により一定に維持される。止水電磁弁514の駆動は、リモートコントローラ400および操作部210の操作に基づき制御部130により制御される。
サブタンク600に貯溜された洗浄水は、水ポンプ516が駆動されることにより熱交
換器700に供給される。水ポンプ516の駆動はリモートコントローラ400および操作部210の操作に基づき制御部130により制御される。制御部130は水ポンプ516を駆動するとともに、熱交換器700の平板状ヒータ702への通電を開始し、洗浄水の加熱を開始する。
制御部130は入水温度センサ630と出湯温度センサ730の検知情報により、平板状ヒータ702への通電を制御し、洗浄水を操作部210の温水温度スイッチ231で設定された温度を維持する。
続いて、熱交換器700で加熱された洗浄水が流調弁517に供給される。制御部130は操作部210およびリモートコントローラ400の操作情報に基づき流調弁517を制御して、ノズル装置800のお尻洗浄部831、ビデ洗浄部832、ノズルクリーニング部833のいずれかに洗浄水を供給する。これにより、お尻洗浄噴出口834、ビデ洗浄噴出口836、ノズルクリーニング噴出口838のいずれかの噴出口から洗浄水が噴出する。
<3>サブタンクの構成
図9はサブタンクの外観を示す斜視図を示すものであり、図10はサブタンクの横方向の断面図を示し、図11はサブタンクの前後方向の断面図を示し、図12はサブタンクの正常な満水状態を示す天面部の模式図を示し、図13はサブタンクの異常な満水状態を示す天面部の模式図を示すものである。
図9に示すように、サブタンク600は樹脂材料により成型されたタンク本体610と、タンク本体610に貯溜された洗浄水の水位を検知する水位検知センサ620と、タンク本体610内に供給される洗浄水の温度を検知するサーミスタからなる入水温度センサ630とで構成されている。
タンク本体610はタンクの前壁、両側壁、底面、天面を構成する前部タンク611と、タンクの後壁を構成する後部タンク612と、の2個の部材で構成されている。タンク本体610の全体的な形状は、前壁、後壁、両側壁、底面、天面からなる複数の平面で形成されており、平面視形状は略四角形である。前壁は途中から後退する傾斜部を備え、側面視形状は下部より上部が細くなった略台形形状に形成されており、タンク本体610の上部の断面積は下部より小さい断面積となっている。
タンク本体610の一方の側壁下部には入水口601が、タンク本体610の後壁下部には出水口602が設けられており、タンク本体610の側壁上部にはタンク本体610の内部と外部を連通する大気開放口603が設けられている。大気開放口603を設けることにより、タンク本体610内に溜まった空気を外部に放出するとともに、タンク本体610の内部圧力を常時大気圧に維持することができる。
サブタンク600の内部が常時大気圧に維持されることにより、サブタンク600の下流から水ポンプ516の吸水口516dまでの流路も大気圧に維持されるため、水ポンプ516は水圧変動の影響を受けずに吸水することができるため、安定したポンプ機能を発揮することができる。
タンク本体610の入水口601の内部には、入水口601に対向する位置に底面より起立する仕切壁613と仕切壁613を覆うように側壁より略L字状に延出した整流リブ614で構成された整流部615と、整流部615を通過した洗浄水を貯溜する貯溜部650が形成されている。貯溜部650の後壁下部には出水口602が設けられている。
入水口601より流入した洗浄水は、整流部615の下部に流入し、整流部615内を上昇し、仕切壁613と整流リブ614との間隙を通過して貯溜部650内に流入する。
この間、入水口601から流入する洗浄水の圧力が高い場合、あるいは大量の空気を含んで流れが乱れている場合でも、洗浄水は整流部615内で流れが整流化され、貯溜部650内には整流化された洗浄水が流入して貯溜される。洗浄水に含まれる空気は貯溜中に分離され、大気開放口603よりタンク本体610外に放出される。
上記のように、入水口601から流入した洗浄水はサブタンク600内に貯溜中に洗浄水に含まれる空気が分離され、分離された空気は大気開放口603よりタンク本体610外に放出され、空気を含まない洗浄水が出水口602より熱交換器700に供給される。
サブタンク600より熱交換器700に供給される洗浄水に空気が混入していた場合、熱交換器700の内部に気泡が発生することにより熱交換器700の内部の温度が異常上昇し、熱交換器700が損傷することがあり、サブタンク600内で洗浄水に含まれる空気を分離および放出することにより、熱交換器700の損傷を防止する効果を得ることができる。
水位検知センサ620は、共通の電極となるコモン電極621と、水位毎に設置された複数の水位電極622で構成されており、1個のコモン電極621と2個の水位電極622で構成されている。コモン電極621と水位電極622はいずれもステンレス材料で形成されている。
タンク本体610の前壁下部の内面にはコモン電極621が配置されており、タンク本体610の天面の内面には水位電極622が配置されている。水位電極622は天面より垂下して設置されており、電極の長さが短く、先端が高い位置に配置された上限電極623と、電極の長さが長く、先端が低い位置に配置された下限電極624で構成されている。コモン電極621は下限電極624の先端より低い位置に設置されており、コモン電極621は通常の使用状態では常に浸水状態となっている。
図10、図12、図13に示すように、タンク本体610の天面には2枚の垂下するリブ616により、上方に凹陥した2個の凹陥部617が形成されている。タンク本体610内の水位が上昇し、リブ616の下端より上昇した場合、凹陥部617は水面651により密閉されることにより、空気が貯溜された空間が形成され、サブタンク600の満水状態においても凹陥部617の少なくとも一部には洗浄水で浸水されない密閉空間618が形成される。
上限電極623と下限電極624は、それぞれ凹陥部617の最も高い位置である天面に設置されており、上限電極623と下限電極624の基部は、水位が上昇した場合に形成される密閉空間618内に配置されている。
上限電極623と下限電極624が密閉空間618内に配置されたことにより、上限電極623と下限電極624の基部は常に洗浄水と直接接触しない構成であり、上限電極623と下限電極624の先端が水面651より離間した状態においては、上限電極623と下限電極624の基部とタンク本体610の内面に付着した残水とは、確実に離間した状態となり、タンク本体610の内面に付着した残水を貯溜水として誤検知することを防止する効果を得ることができる。
また、制御部130は、電極に印加する直流電流の極性を周期的に反転させながら印加する構成となっている。洗浄水を介してコモン電極621と水位電極622と間に直流電
流を印加した場合、電気分解の作用により電極を形成する金属が酸化およびイオン化による溶出することにより、電極が短期間に劣化することがあり、電流の極性を周期的に反転することにより電極の劣化を抑制することができる。
本実施の形態においては、極性の反転の間隔は、衛生洗浄装置の電源として供給される交流電源に対応した時間設定となっており、供給される交流電源が50Hzの場合は1/50秒、供給される交流電源が60Hzの場合は1/60秒としている。
本実施の形態における衛生洗浄装置100においては、止水電磁弁514が開放されてサブタンク600に洗浄水が供給され、上限水位が検知されると、止水電磁弁514は閉止され給水が停止し、サブタンク600内は満水状態となる。サブタンク600の満水状態から、通常の洗浄動作を実施すると水位が低下し、下限水位が検知されると止水電磁弁514が再び開放されてサブタンク600に洗浄水が供給され、上限水位が検知されるまで給水が継続される。
サブタンク600に貯溜される洗浄水の最大量は100ccであり、上限水位から下限水位までの水量は65ccである。
洗浄に使用される洗浄水の流量は最も強い洗浄力で洗浄した場合は450cc/minであり、最も弱い洗浄力洗浄した場合は260cc/minに設定されている。この場合、洗浄水が上限水位から下限水位に到達するまでの時間は、最も強い洗浄力で洗浄した場合8.7秒間となり、最も弱い洗浄力で洗浄した場合15秒間となる。
一般的に使用者が局部の洗浄に要する時間は30秒以上であるので、最も弱い洗浄力で洗浄した場合でも130ccの洗浄水を使用することとなり、1回の洗浄動作で、最低1回は上限水位から下限水位への変化を検知することが可能となる。
制御部130は、上限水位から下限水位までの経過時間を計測し、計測した時間と上限水位から下限水位までの水量(65cc)とを演算することにより流量を算出し、洗浄強さ毎に設定された流量と差がある場合は、水ポンプ516の出力を調整することにより、洗浄水の流量を補正する。
なお、本実施の形態のサブタンク600は底面が略四角形の形状としたが、これに限るものではなく、他の多角形状でもよい。
また、本実施の形態においては、水位電極622としては上限電極623と下限電極624の2個を設置したがこれに限るものではなく、3個以上の水位電極622を配置することにより、水位検知の間隔を細分化することにより、水位検知と流量検知の精度を向上することができる。
<4>水位検知の閾値の補正
図14は上限電極とコモン電極との出力電圧の変化と上限電極の浸水状態と非浸水状態を判定する閾値を示すグラフであり、図15は下限電極624とコモン電極との出力電圧の変化と下限電極の浸水状態と非浸水状態を判定する閾値を示すグラフである。
上記のように、本実施の形態におけるサブタンクの水位検知センサ620で検知した検知データは単に水位の検知のみに使用されるものではなく、演算処理により流量検知に使用されるものであり、高い検知精度が要求されるものである。
2つの電極間の出力電圧の変化により水位を検知する場合、水位電極622と洗浄水の
水面との接触および離脱により変化する出力電圧を閾値と比較して判定するものであるが、出力電圧は洗浄水の導電率と温度によりバラツキが発生する。
衛生洗浄装置の場合、使用される洗浄水を限定して導電率を一定にすることは難しく、また、使用時の導電率を検知して、補正するためには専用の検知センサを採用することによりコストアップにつながるため、本実施の形態においては、サブタンク600に設置した入水温度センサ630の検知データを使用して温度的な補正を行うことにより広い範囲の導電率の洗浄水に対応できるようにしている。
図14に示すように、上限電極623とコモン電極621との間の出力電圧は、上限電極623が浸水していない状態においては、グラフの破線で示すように、洗浄水の入水温度が5℃の場合は約4.7Vであり、40℃の場合は約4.4Vであり、温度変化に対して略直線的に変化している。また、上限電極623が浸水した状態においては、洗浄水の入水温度が5℃の場合は約2Vであり、40℃の場合は約1.4Vであり、温度変化に対して略直線的に変化している。
上記のように出力電圧が入水温度により変化するため、上限電極623の浸水状態と非浸水状態を判定する閾値を一定にした場合、導電率の異なる洗浄水を使用された場合に誤検知する可能性があり、洗浄水の入水温度に対応して補正することが有効である。
図14のグラフにおいて実線で示すように、0℃〜5℃の間は閾値を3.9V、35℃〜40℃の間は閾値を3.3Vとし、0℃〜40℃の間は5℃毎に段階的に閾値を設定している。
図15に示すように、下限電極624とコモン電極621との間の出力電圧は、下限電極624が浸水していない状態においては、グラフの破線で示すように、洗浄水の入水温度が5℃の場合は約3.5Vであり、40℃の場合は約2.9Vであり、温度変化に対して略直線的に変化している。また、下限電極624が浸水した状態においては、洗浄水の入水温度が5℃の場合は約1.5Vであり、40℃の場合は約1Vであり、温度変化に対して略直線的に変化している。
上記のように上限電極623の場合と同様に、出力電圧が入水温度により変化するため、閾値を一定にした場合、導電率の異なる洗浄水を使用された場合に誤検知する可能性があり、洗浄水の入水温度に対応して閾値を補正している。
図15のグラフにおいて実線で示すように、0℃〜5℃の間は閾値を3.5V、35℃〜40℃の間は閾値を2.9Vとし、0℃〜40℃の間は5℃毎に段階的に閾値を設定している。
制御部130は、入水温度センサ630の温度検知データに基づき、上限電極623と下限電極624に対応する水位検知の閾値を上記の補正することにより、広い範囲の導電率の洗浄水の水位を正確に検知することができる。
<5>熱交換器の構成
図16は熱交換器の外観を示す斜視図であり、図17は熱交換器の断面図を示すものである。
本実施の形態における熱交換器700はバッファータンク750が一体に形成されており、熱交換器700の上部にバッファータンク750が設置されている。
図16に示すように、熱交換器700は正面視で略長方形の平板状をなし、ABS樹脂にガラス繊維をコンパウンドした強化ABS樹脂で成型されたケーシング701とセラミック製の平板状ヒータ702と出湯部材703とを主構成部材としている。
ケーシング701は前面部を構成する前面部材710と、背面部構成する背面部材720で構成されており、前面部材710と背面部材720との間に形成される空間に平板状ヒータ702が設置されている。前面部材710と平板状ヒータ702との対向部と、背面部材720と平板状ヒータ702との対向部に形成された隙間を加熱流路715とし、加熱流路715を流れる洗浄水を平板状ヒータ702で瞬時に昇温させるものである。
熱交換器700は、前面部材710の前面下端の右側に接続口である入水口711を備えており、前面部材710の右側面上端に設置された出湯部材703には接続口である出湯口712を備えている。
図17に示すように、入水口711に連なる入水流路713がケーシング701の下端部の略全幅に亘り設けられている。入水流路713の上面には全幅に亘り複数のスリット714が設けられており、入水流路713に流入した洗浄水はスリット714を通過して加熱流路715へ流入する構成となっている。スリット714は洗浄水を加熱流路715の全幅に亘り均等に流入させるものである。
加熱流路715の上端部には仕切リブ716が設けられており、仕切リブ716より上方がバッファータンク750となっている。仕切リブ716には略全幅に亘り複数の通水孔717が設けられており、加熱流路715で加熱された洗浄水は通水孔717を通過してバッファータンク750内に流入する構成となっている。
バッファータンク750内には断面形状が略半円形の突起718が略全幅に亘り間隔をあけて設けられている。バッファータンク750内を出湯口712に向かって流れる洗浄水は、突起718による流れが乱されることにより、洗浄水が混ざり合って洗浄水の温度斑が解消され、均一な温度の洗浄水が出湯口712より出湯される。
出湯部材703には2個のサーミスタが設置されており、一方は洗浄水の出湯温度を検知する出湯温度センサ730であり、他方は熱交換器700の過昇温度を検知する過昇温度センサ731である。
<6>ノズル装置の構成
図20は本実施の形態におけるノズル装置の収納状態を示す斜視図であり、図21は図20に示すAA断面図であり、図22はノズル装置の収納状態を示す縦断面図であり、図23は図22に示すB部の詳細断面図であり、図24は図23に示すCC断面図であり、図25はノズル装置の収納状態の横断面図であり、図26は図25に示すD部の詳細断面図であり、図27はノズル装置のお尻洗浄状態を示す縦断面図であり、図28は図27に示すE部の詳細断面図であり、図29はノズル装置のビデ洗浄状態を示す縦断面図であり、図30は図29に示すF部の詳細断面図であり、図31はノズル装置のビデ洗浄状態を示すノズル部の横断面図であり、図32は図31に示すG部の詳細断面図である。
ノズル装置800は、図20に示すように、樹脂材料で成型した略三角形の枠状の支持部810と、支持部810に沿って進退移動するノズル部820と、ノズル部820の進退移動を駆動する駆動部860と、ノズル部820への洗浄水の供給を切り替える流調弁517で構成されている。
なお、本実施の形態においてはノズル部の収納方向を後方とし、ノズル部820の進出
方向を前方とし、後方より前方に向かって右側を右方、左側を左方として各構成要素の配置を説明する。
支持部810は側面視略三角形の枠状に形成されており、略水平な底辺部811に対し、後部より前部に向かって降下した傾斜部812と、底辺部811と傾斜部812の後端を接合する縦辺部813が形成されている。傾斜部812にはノズル部820の進退移動を案内するガイドレール814と駆動部860の可撓ラック861を案内するラックガイド815が略全長に亘って形成されている。また傾斜部812の前端下方にはノズル部820を抱囲するように支持する略円筒形の抱持部816が一体に形成されている。
図21に示すように、ノズル部820を案内するガイドレール814は断面が略T字状に形成されている。また、可撓ラック861を案内するラックガイド815は断面が一方の側面が開放された略コの字状を成しており、可撓ラック861の上下面と一方の側面を規制して案内する構成となっている。
ラックガイド815は傾斜部812に続いて支持部810の後部の縦辺部813と底辺部811にも連続して形成されており、傾斜部812と縦辺部813および縦辺部813と底辺部811とのコーナは円弧形状で接続されている。縦辺部813と底辺部811に形成されたラックガイド815の断面形状も略コの字状であるが、開放された側面は傾斜部においては左側であるのに対し、縦辺部813と底辺部811とは反対の右側面となっている。縦辺部813と底辺部811のラックガイド815の開放面は別部材の支持部蓋により閉塞されている。
ノズル部820をガイドレール814に沿って進退移動させる駆動部860は、ノズル部820に結合された可撓ラック861と、可撓ラック861と噛合するピニオンギア862と、ピニオンギア862を回転駆動する駆動モータ863で構成されている。
駆動モータ863はステッピングモータであり、パルス信号により回転角度が制御される。駆動モータ863が回転することによりピニオンギア862を介して可撓ラック861が駆動される構成となっている。
支持部810の抱持部816の内周面とノズル部820の外周面との間には間隙が設けられており、ノズル部820から噴出した洗浄水が抱持部816の内周面とノズル部820の外周面との間に形成される間隙に流入してノズル部820外周面を洗浄する構成となっている。
また、抱持部816の前方にはノズル部820の進退により開閉するノズル蓋801が開閉自在に設けられており、ノズル部820が収納されている状態で閉塞することにより、ノズル部820が便等で汚染されることを防止する構成となっている。
支持部810の底辺部811には、洗浄水供給手段に接続する給水チューブ(図示せず)と支持部810から流調弁517に洗浄水を供給する接続チューブ802とを相互に接続する給水継手817が形成されている。
ノズル部820は、樹脂材料で成型された棒状のノズル本体830と、ノズル本体830の略全体を覆う筒状のノズルカバー840と、ノズル本体830でノズルカバー840を牽引する連結手段850とで構成されている。
ノズル本体830は、局部を洗浄するお尻洗浄部831と、女性の局部を洗浄するビデ洗浄部832と、ノズル部820をクリーニングするノズルクリーニング部833を備え
ている。
お尻洗浄部831は、ノズル本体830の先端部に上方に開口したお尻洗浄噴出口834と、ノズル本体830の後端よりお尻洗浄噴出口834に連通するお尻洗浄流路835で構成されている。お尻洗浄流路835はノズル本体830の下部に設置されており、お尻洗浄噴出口834の下方で上方に向かって屈曲しており、屈曲部には洗浄水の流れを整流する整流板835aが設置されている。お尻洗浄噴出口834から噴出した洗浄水はノズルカバー840の噴出開口844を通過して上方に向かって噴出される。
ビデ洗浄部832は、お尻洗浄噴出口834の後方に配置されたビデ洗浄噴出口836と、ノズル本体830の後端よりビデ洗浄噴出口836に連通するビデ洗浄流路837で構成されている。ビデ洗浄噴出口836から噴出した洗浄水はノズルカバー840の噴出開口844を通過して上方に向かって噴出される。
ノズルクリーニング部833は、ノズル本体830の側面に配置されたノズルクリーニング噴出口838と、ノズル本体830の後端よりノズルクリーニング噴出口838に連通するノズルクリーニング流路839で構成されている。ノズルクリーニング噴出口838から噴出した洗浄水はノズルカバー840の内部に噴出され、ノズルカバー840排水口845からノズルカバー840の外部に放出される。ノズルクリーニング噴出口838から噴出した洗浄水はノズル部820とその周辺の清掃に使用される。
ノズル部820は、前方を支持部810の抱持部816に挿入した状態で支持され、後部をガイドレール814に懸架された状態で摺動自在に設置されており、図20に示すように、ノズル部820を抱持部816より後方に収容された収納位置と、図27に示すように、ノズル部820が抱持部816より突出したお尻洗浄位置と、図29に示すビデ洗浄位置との間を進退可能となっている。
ノズルカバー840はノズルカバー本体841と連結部材842とで構成されている。ノズルカバー本体841はステンレスの薄板を円筒状に形成したものであり、先端面は閉塞面をなし、後端面は開放面となっている。連結部材842は樹脂材料で成型された略円筒状であり、両側部にはノズル本体830と係合する連結片843が形成されている。
また、連結部材842の後端右側には、ノズルカバー840の摺動範囲を規制するノズルカバーストッパが一体に形成されており、支持部810に形成された前ストッパ受部と後ストッパ受部に当接することにより摺動範囲が規制される構成となっている。
連結部材842の一部はノズルカバー本体841の後端の開口よりノズルカバー本体841内に挿入された状態で固定され一体化された構成となっている。ノズルカバー本体841の前方上面には、ノズル本体830のお尻洗浄噴出口834とビデ洗浄噴出口836が対向可能な噴出開口844が1個設けられている。また、ノズルカバー本体841の前方下面にはノズルカバー本体841内に流出した洗浄水を外部に排出する排水口845が設けられている。
ノズルカバー840の内径はノズル本体830の外径より僅かに大きい寸法であり、ノズルカバー840にノズル本体830を挿入した状態で、ノズル本体830とノズルカバー840が互いにスムーズに摺動可能な寸法関係となっている。
ノズル本体830の後端面には流調弁517が設置されている。流調弁517はディスクタイプの弁本体517aと切り替え動作を駆動するステッピングモータ517bで構成されている。流調弁517はお尻洗浄流路835と、ビデ洗浄流路837と、ノズルクリ
ーニング流路839に選択的に洗浄水を供給するものである。
また、流調弁517の弁本体517aの外面には流調弁517に洗浄水を供給する給水口517c設置されており、給水口517cには支持部810の給水継手817と連通する接続チューブ802が接合されている。
次に、ノズルカバー840の連結部材842とノズル本体830の連結受部851で構成される連結手段850について説明する。
図26、図32に示すように、ノズル本体830の後端部の外周右側には連結受部851が形成されている。連結受部851は2本の略V字型の溝が形成されており、前方の前凹陥部851aと後方の後凹陥部851bが前後に間隔をあけて2本配置されている。前凹陥部851aと後凹陥部851bの間隔はお尻洗浄噴出口834とビデ洗浄噴出口836の間隔と等しい寸法となっている。
一方、ノズルカバー840の連結部材842は、略円筒状の樹脂材料で成型され、後部両側部は後方に突出した連結片843が形成されており、連結片843の後端部には内方に突出した略V字形状の連結突起843aが形成されている。
ノズル本体830をノズルカバー840に挿入した状態においては、ノズルカバー840の連結部材842の弾性により、連結突起843aがノズル本体830の連結受部851に常時押し当てられた状態となり、連結突起843aが前凹陥部851a内または後凹陥部851bに係合した状態では、ノズル本体830とノズルカバー840が連結された状態となり、ノズルカバー840はノズル本体830に牽引されて移動することが可能となる。
図26に示すように、連結突起843aが前凹陥部851aに入り込んでいる状態では、図30に示すように、ノズル本体830のビデ洗浄噴出口836とノズルカバー840の噴出開口844が対向した状態となり、図32に示すように、連結突起843aが後凹陥部851bに入り込んでいる状態では、図23、図28に示すように、お尻洗浄噴出口834と噴出開口844が対向した状態となる。
<7>洗浄手段の制御と作用動作
図33は初期使用時における洗浄手段のタイムチャートを示し、図34は通常使用時における洗浄手段のタイムチャートを示すものである。
洗浄手段500の基本的な作用動作としては、水道配管を流れる水道水が、洗浄水として給水接続口510から供給され、止水電磁弁514が開放されることによりサブタンク600へ洗浄水が送給される。流路内を流れる洗浄水の流量は定流量弁513により一定に維持される。止水電磁弁514の駆動は、リモートコントローラ400および操作部210の操作に基づき制御部130により制御される。
サブタンク600に送給された洗浄水はサブタンク600内に貯溜されるとともに、熱交換器700および水ポンプ516に送給される。水ポンプ516が駆動されることにより洗浄水は流調弁517を介してノズル装置800に送給される。水ポンプ516の駆動はリモートコントローラ400および操作部210の操作に基づき制御部130により制御される。制御部130は水ポンプ516を駆動するとともに、熱交換器700の平板状ヒータ702への通電を開始し、洗浄水の加熱を開始する。
制御部130は入水温度センサ630と出湯温度センサ730の検知情報により、平板
状ヒータ702への通電を制御し、洗浄水を操作部210の温水温度スイッチ231で設定された温度を維持する。
制御部130は操作部210およびリモートコントローラ400の操作情報に基づき流調弁517を制御して、ノズル装置800のお尻洗浄部831、ビデ洗浄部832、ノズルクリーニング部833のいずれかに洗浄水を供給する。これにより、お尻洗浄噴出口834、ビデ洗浄噴出口836、ノズルクリーニング噴出口838のいずれかの噴出口から洗浄水が噴出する。
次に、本実施の形態の特徴的な構成であるサブタンク600を使用した洗浄手段の各ステップにおける機能ごとの制御について詳細を説明する。
図33は衛生洗浄装置を設置後に初めて使用する場合、あるいは凍結防止のため水抜き操作を実施した後の再使用の場合等、洗浄手段に洗浄水が貯溜されていない初期使用時における洗浄手段の各機能のタイムチャートを示すものである。
まず、使用者が便座300に着座すると、プレヒート動作を開始する。プレヒート動作は、着座した使用者が用便後に洗浄操作を行うことを予測して、洗浄手段が確実に使用できる状態に準備する動作であり、熱交換器700やノズル部820等を予め予熱して、洗浄動作の開始直後から快適な洗浄が実施できるようにするものである。
着座センサが着座を検知した時点P1で、制御部130は止水電磁弁514に通電を開始して洗浄水の供給を開始する。これと同時に、流調便517を作動させてノズル部820のお尻洗浄流路835を開放するとともに水位検知センサ620の駆動を開始する。水位検知センサ620の駆動はお尻洗浄の一連の動作が終了する時点P18まで継続される。初期使用時においては、サブタンク600内は空の状態であり、水位は下限水位以下となっている。
サブタンク600に洗浄水が供給されると、水位は下限水位を通過して上昇を続け、水位検知センサ620が上限水位を検知した時点P2で、水ポンプ516の駆動を開始するとともに、制御部130は時間計測を開始し、所定時間経過した時点P3に止水電磁弁514の通電を停止して洗浄水の供給を停止する。本実施の形態においては、上限水位検知の2秒後の時点P3で通電を停止する。
上限水位を検知した時点P2で、基本的にはサブタンク600と熱交換器700と、水ポンプ516は満水状態になっているが、2秒間余分に送給を継続することにより、熱交換器700と水ポンプ516により確実に洗浄水を充満させる。
これにより、熱交換器700内の空気の排除と洗浄水を確実に満水状態とすることができるので、熱交換器700の空焚きを確実に防止することができ、安全性と耐久性を向上することができる。また、水ポンプ516へ洗浄水を送給して確実に満水状態とすることにより、水ポンプ516の送水機能を確実に起動させることができる。
制御部130が、時点P3で止水電磁弁514の通電を停止することにより、サブタンク600の水位は低下を開始し、水位検知センサ620が上限水位の検知が解消した時点P4で、制御部130は熱交換器700の駆動を開始する。水位の低下を検知することにより、水ポンプ516が正常に作動していることを確認し、熱交換器700の異常温度上昇等を防止することができる。
プレヒート動作の開始後、出湯温度センサ730が設定温度を検知して時点P6で、制
御部130は、水ポンプ516と熱交換器700への通電を停止し、プレヒート動作は終了する。
プレヒート動作を実施している時点P3〜P6の間、サブタンク600の水位は低下し、水位検知センサ620が下限水位を検知した時点P5で、制御部130は止水電磁弁514の通電を開始してサブタンク600への給水を再開し、水位検知センサ620が上限水位を検知した時点P7で通電を停止する。
サブタンク600が満水状態となった時点P7で待機状態となり、使用者が洗浄操作を実施するまで洗浄手段の動作は停止される。
使用者が操作部210またはリモートコントローラ400の洗浄スイッチ(例えば、お尻洗浄スイッチ221または410)が操作された時点P8で、制御部130は、水ポンプ516と熱交換器700の駆動を開始するとともに、流調弁517を作動させてノズル部820のお尻洗浄流路835に洗浄水の供給を開始する。
お尻洗浄流路835に供給された洗浄水はお尻洗浄噴出口834より噴出する。噴出した洗浄水は噴出開口844を通過して支持部810の先端に設けられた抱持部816の内面にあたって反射しノズルカバー840の外面をクリーニングする。このクリーニング動作を前洗浄と称する。前洗浄は熱交換器700の出湯温度が25℃に到達してから2秒後の時点P9まで継続される。
時点P9で前洗浄が終了すると、制御部130はノズル装置800の駆動部860の駆動を開始し、ノズル部820を収納位置からお尻洗浄位置へと進出させる。収納位置からお尻洗浄位置への移動の間は、流調弁517を切替えて、ノズルクリーニング流路839に洗浄水を供給する。ノズルクリーニング流路839に供給された洗浄水はノズルクリーニング噴出口838よりノズルカバー840の内部に噴出し、噴出した洗浄水はノズルカバー840の内面を洗浄した後に排水口845よりノズルカバー840の外部に流出する。その間ノズル部820は洗浄水により温められ、後に実施されるお尻洗浄の開始直後に冷水が噴出して不快を感じることを抑制することができる。
ノズル部820がお尻洗浄位置に到達した時点P10で、制御部130は流調弁517を切替えてお尻洗浄流路835に洗浄水の供給を開始する。お尻洗浄流路835に供給された洗浄水はお尻洗浄噴出口834より噴出し、噴出開口844を通過して使用者の局部を洗浄する。お尻洗浄の動作は洗浄停止の操作が行われる時点P15まで継続される。
熱交換器700の駆動中は、制御部130は入水温度センサ630と出湯温度センサ730の検知データにより、洗浄水を設定された温度に制御する。
水ポンプ516の駆動が継続されることにより、サブタンク600の水位は低下し、水位検知センサ620が下限水位を検知した時点P11で制御部130は止水電磁弁514に通電を開始し、水位検知センサ620が上限水位を検知する時点P12まで通電を継続する。
上限水位を検知した時点P12で、制御部130は止水電磁弁514の通電を停止するとともに時間計測を開始し、次に水位検知センサ620が下限水位を検知する時点P13までの経過時間を計測する。下限水位を検知した時点P13で、制御部130は計測した経過時間と上限水位から下限水位までの水量(65cc)とを演算することにより流量を算出する。演算終了時点P14で、洗浄強さ毎に設定された流量と差がある場合は、水ポンプ516の出力を調整し、洗浄水の流量を補正する。
操作部210またはリモートコントローラ400の洗浄停止の操作が行われた時点P15で、水ポンプ516と熱交換器700の通電は停止されるとともに、ノズル装置800の駆動部860の駆動が開始され、ノズル部820がお尻洗浄位置から収納位置へと後退する。
ノズル部820が収納位置に後退した時点P16でノズル装置800の駆動部860の駆動が停止するとともに、水ポンプ516と熱交換器700が再度駆動され、ノズル部820をクリーニングする後洗浄が開始され、所定時間経過した時点P17で水ポンプ516と熱交換器700の駆動が停止され、後洗浄が終了する。
ノズル部820の後洗浄が終了した時点P17で止水電磁弁514が再度通電され、サブタンク600に洗浄水が供給され、上限水位が検知された時点P18で止水電磁弁514の通電が停止され、お尻洗浄の一連の制御が終了し、サブタンク600が満水の状態で洗浄手段は待機状態となる。
図34は初期使用を既に実施し、サブタンク600が満水状態である衛生洗浄装置で、使用者が便座300に着座して洗浄動作を実施した場合の通常使用時のタイムチャートを示すものである。
図33に示す初期使用の場合と大きく異なるのは、使用者が便座300に着座した時点P20でサブタンク600は既に満水状態である点と、制御部130が初期使用を実施したことを記憶している点である。
図34に示すように、使用者が便座300に着座した時点P20ではサブタンク600が満水状態で既に待機状態である。制御部130は、初期使用の制御を既に実施した記憶データに基づき、着座検知センサが着座を検知した時点P20で、プレヒート動作の水ポンプの516の駆動を開始するものである。すなわち、図33の時点P3以降のプレヒート動作を即座に実施するものであり、それ以降の制御は図33に示す初期使用時と同様である。
<8>初期使用時の異常状態における制御と作用動作
図13はサブタンクの異常な満水状態を示す天面部の模式図を示し、図35は初期使用時における異常状態における洗浄手段のタイムチャートを示すものである。
本実施の形態のサブタンク600は、タンク本体610の上部に凹陥部617を形成し、凹陥部617の天面に上限電極623と下限電極624設置することにより、上限電極623と下限電極624の基部が常に洗浄水と直接接触しない構成を特徴とするものである。
しかしながら、上記構成を採用した場合、初期使用時においては水道配管や洗浄水供給流路に滞留した空気がサブタンク600に大量に送給されることがあり、空気が大量に送給された場合、図13に示すように、タンク本体610の凹陥部617より突出して空気溜が形成されることがある。この場合、上限電極623は浸水しないため水位を検知することができず、止水電磁弁514は解放されたままとなり、サブタンク600に供給された洗浄水は正規の上限水位以上に上昇し、大気開放口603より外部に流出するとともに、洗浄動作が開始されない状態となる。
本実施の形態における制御ステップにおいては、上記不具合を解消するステップを備えており、以下図35を参照して詳細を説明する。
図35に示すように、着座センサが着座を検知した時点P1で、制御部130は止水電磁弁514に通電を開始して洗浄水の供給を開始する。これと同時に水位検知センサ620の駆動を開始する。
異常な空気溜が形成されている場合、サブタンク600内の水位が上昇し正規の上限水位に到達したP2時点において、水位検知センサ620は上限水位を検知することができず、洗浄水の供給が継続され、正規の上限水位以上に上昇する。
通常の洗浄水の供給状態においては、P1からP2の間は、通常は15秒以内で完了するものであるあるため、止水電磁弁514に通電を開始したP1時点から第1の所定時間である30秒経過した時点E1で、止水電磁弁514の通電を停止するとともに水ポンプ516の駆動を開始する修整動作を開始する。修整動作は開始時点E1から第2の所定時間である3秒経過時点E2まで継続される。修整動作の終了時点E2で止水電磁弁514に通電を再開するとともに水ポンプ516の駆動は停止される。
E1からE2までの修整操作を実施することにより、サブタンク600内の水位は一旦下がることとなり、この間に凹陥部617に溜まりすぎた不要な空気が大気開放口603より外部に放出され、正常な状態に修整される。
空気溜が正常な状態に修整された時点E2において、止水電磁弁514が解放されると洗浄水の供給が再開され、順次水位が上昇して数秒後の時点E3でサブタンク600内の水位は正規の上限水位に到達する。この時点E3で上限電極623が上限水位を検知した場合は、図35の時点P2に到達したこととなり、以降のステップが実施される。
一方、空気溜が正常な状態に修整されない場合は、時点E3においてサブタンク600内の水位は上限水位に到達するが止水電磁弁514は閉塞されずに洗浄水の供給が継続され、正規の上限水位以上に上昇する。このような状態が発生した場合、1回目の修整動作の開始時点E1から30秒経過した時点E4で2回目の修整動作が開始され、3秒経過した時点E5で2回目の修整動作が終了する。2回目の修整動作により空気溜が正常な状態に修整され、洗浄水の供給が再開されて数秒後にサブタンク600内の水位は正規の上限水位に到達する。この時点で上限電極623が上限水位検知した場合は、図35に示すように時点P2に到達したこととなり、以降のステップが実施される。図35は2回目の修整動作で修整が完了した状態を示すタイムチャートである。
また、2回目の修整動作を実施後に空気溜が正常な状態に修整しない場合、2回目の修整動作の開始時点E4から30秒経過後に制御部130はサブタンクが異常であると判定し、衛生洗浄装置100の制御を停止し、表示灯240を点滅させて異常表示を行う。すなわち、着座センサが着座を検知した時点P1から第3の所定時間である90秒経過するまでに上限電極623が上限水位を検知できない場合は異常と判定するものである。
なお、止水電磁弁514に通電を開始したP1時点から30秒以内に、上限電極623が上限水位を検知した場合は、正常状態であり、図33に示すステップにより制御が実施される。
上記のような制御ステップを実施することにより、初期使用時に大量の空気がサブタンク600に送給された場合に、タンク本体610の凹陥部617で形成される密閉空間より突出して空気溜が形成され、上限電極623が水位を検知できない状態が発生した場合、修整動作の制御を実施することで、空気溜を正常状態に修整させ、上限電極623が水位を検知することが可能な状態にすることができるので、衛生洗浄装置の不本意な不具合
を解消することができ、信頼性を向上することができる。
上記のように、本実施の形態における衛生洗浄装置は、洗浄手段の構成において、流量を検知する専用の流量センサを別途設けることなく、サブタンクに設けた水位検知センサにより水位の変化を検知し、流量を演算により検出する構成としたことにより、洗浄手段の構成を簡素化することができるとともに、コスト削減を図ることができる。
また、水位検知における電極間の出力電圧変化を判定する閾値を温度により補正することにより、水位検知と流量検知の精度を向上することができるとともに、広い範囲に導電率の異なる水を衛生洗浄装置の洗浄水として使用することが可能となることにより、衛生洗浄装置の使用範囲と使い勝手を向上することができる。
また、衛生洗浄装置の初期使用時において、サブタンクの満水状態検知後に所定時間通水を継続することにより、熱交換器内の空気を排除して洗浄水を確実に満水状態とするこすることができるので、熱交換器の空焚きを確実に防止することができ、安全性と耐久性を向上することができる。また、水ポンプへ洗浄水を送給して確実に満水状態とすることにより、水ポンプの送水機能を確実に起動させることができる。
また、水ポンプ駆動後に水位検知センサが上限水位の検知が解消された後に熱交換器の通電を開始することにより、水ポンプが正常に作動していることが確認できるので、熱交換器の空焚きを防止することができ、一般的に実施されている流量センサを使用した空焚きを防止の手段より、シンプルな構成と低コストで同様な効果を得ることができ、安全性と信頼性を確保することができる。
また、サブタンクの上限電極と下限電極が密閉空間内に配置されたことにより、上限電極と下限電極の基部は常に洗浄水と直接接触しない構成であり、上限電極と下限電極の先端が水面より離間した状態においては、上限電極と下限電極の基部とタンク本体の内面に付着した残水とは、確実に離間した状態となり、タンク本体の内面に付着した残水を貯溜水として誤検知することを防止する効果を得ることができる。
また、初期使用時に大量の空気がサブタンクに送給された場合に、タンク本体の凹陥部で形成される密閉空間より突出して空気溜が形成され、上限電極が水位を検知できない状態が発生した場合、修整動作の制御を実施することで、空気溜を正常状態に修整させ、上限電極が水位を検知することが可能な状態にすることができるので、衛生洗浄装置の不本意な不具合を解消することができ、信頼性を向上することができる。
なお、本実施の形態においては、タンク本体の天面に凹陥部を2個設け、2個の密閉空間が形成される構成とし、上限電極と下限電極を個別の密閉空間に設置したが、この構成に限るものではなく、1個の密閉空間を形成し、上限電極と下限電極を同一の密閉空間に設置してもよい。
また、本実施の形態においては、コモン電極をタンク本体の前壁に設置し、2個の水位電極のみを天面の密閉空間に設置したが、これに限るものではなく、全ての電極を天面の密閉空間に設置した構成としてもよく、このような構成とした場合は、残水による誤検知をより確実に防止することができる。
また、本実施の形態においては、第1の所定時間を30秒間、第2の所定時間を3秒間、第3の所定時間を90秒間と設定されているが、これに限るものではなく、サブタンクの大きさや、洗浄手段を構成する部材の容量や性能により最適な所定時間を設定することにより、最良の効果を得ることができる。