以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態)
<1>衛生洗浄装置の全体構成
以下に、本実施の形態における衛生洗浄装置の全体構成について、図1から図5を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態における衛生洗浄装置を便器上に設置した状態の斜視図である。図2は、同衛生洗浄装置の本体の前本体ケースを取り外した状態の斜視図である。図3は、同衛生洗浄装置の本体の前本体ケースと制御部を取り外した状態の斜視図である。図4は、同衛生洗浄装置の操作部上面を示す斜視図である。図5は、リモートコントローラの外観を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施の形態の衛生洗浄装置100は、少なくとも本体200、便座300、便蓋320、リモートコントローラ400、人体検知センサ450などを主構成要素として構成される。本体200と便座300と便蓋320は一体で構成され、便器110の上面に設置される。
なお、以降では、衛生洗浄装置100の本体200の設置側を後方、便座300の設置側を前方とし、前方に向かって右側を右方、前方に向かって左側を左方として、各構成要素の配置を説明する。
操作部210は、本体200の側部に突出して、一体的に設けられている。便座便蓋回動機構360は、本体200の前部側に設けられ、便座300および便蓋320を開閉自在に駆動する。なお、便座便蓋回動機構360は、例えば直流モータと複数のギアで構成され、便座300と便蓋320を個別または同時に開閉する。
そして、図1に示すように、便蓋320を開放した場合、便蓋320は衛生洗浄装置100の最後部に位置するように起立する。一方、便蓋320を閉成した場合、便座300の上面を隠す。
便蓋320は、例えばPP(ポリプロピレン)やABSなどの樹脂材料の成型による部材で構成され、二重構造と断熱材による断熱構造を備えている。
便座300は、着座面を加熱する便座ヒータ(図示せず)を内蔵している。便座ヒータは、便座300の着座面が快適な温度になるように加熱する。
また、着座センサ(図示せず)は、便座300の回動軸を支持する本体200内の軸受部分に設置され、便座300に着座した人体を検知する。着座センサは、例えば重量式のセンサで構成され、便座300に使用者が着座することによる重量変化でスイッチを開閉させる。これにより、着座センサは、便座300の着座面に使用者が着座していることを検知する。
また、図2および図3に示すように、本体200の内部には、サブタンク600、熱交換器700、人体の局部を洗浄するノズル装置800を備える洗浄部500と、排便時の臭気を脱臭する脱臭装置120と、衛生洗浄装置100の各機能を制御する制御部130などが内蔵されている。なお、洗浄部500の詳細については、後述する。
このとき、洗浄部500の主構成要素であるノズル装置800は、本体200の内部の中央部に設置され、ノズル装置800の左側に脱臭装置120が設置されている。さらに、ノズル装置800の左側部に、便座300と便蓋320を開閉駆動する便座便蓋回動機構360が設置されている。
ノズル装置800の右側には、前方に洗浄部500の止水電磁弁514、サブタンク600などが設置されている。ノズル装置800の後方には、熱交換器700が設置されている。熱交換器700の後方には、水ポンプ516が設置されている。制御部130は、洗浄部500の上方に設置されている。
また、図4に示すように、操作部210には、衛生洗浄装置100の各機能を操作および設定する複数のスイッチと表示灯240が設置されている。操作部210の内部には、操作基板(図示せず)が設置されている。操作基板には、複数のタクトスイッチと複数のLEDが設置されている。これにより、操作部210の上面に貼付されたスイッチ銘板を介して、タクトスイッチの押圧操作とLEDの視認が可能となっている。
また、操作部210は、赤外線受信部211を備えている。赤外線受信部211は、操作部210の上面後方に配置される、図1に示すリモートコントローラ400および人体検知センサ450から送信される赤外線信号を受信する。
操作部210のスイッチは、洗浄動作を操作する複数の操作スイッチ220と各種機能を設定する複数の設定スイッチ230などから構成されている。また、表示灯240は、設定状態を表示する複数のLEDから構成されている。
操作部210の操作スイッチ220は、リモートコントローラ400の電池切れや故障の場合に補助的に使用するお尻洗浄スイッチ221と、ノズルの掃除を行う時に操作するノズル掃除スイッチ222から構成されている。
操作部210の設定スイッチ230は、例えば温水温度スイッチ231、便座温度スイッチ232、8時間切りスイッチ233、節電スイッチ234、便蓋自動開閉スイッチ235などで構成されている。各スイッチは、押圧操作により、以下に示す動作を行う。つまり、温水温度スイッチ231は、洗浄水の温度を設定する。便座温度スイッチ232は、便座300の温度を設定する。8時間切りスイッチ233は、設定すると便座300の保温を停止して8時間後に便座300の保温を再開する。節電スイッチ234は、衛生洗浄装置100が使用されない時間帯を自動的に学習して、使用されない時間帯に便座300の保温温度を下げて、節電を行う。便蓋自動開閉スイッチ235は、便座300および便蓋320の自動開閉動作を設定する。
なお、衛生洗浄装置100の多くの操作は、本体200とは別体で構成されたリモートコントローラ400で行われる。そのため、リモートコントローラ400は、便座300に着座した使用者が操作のしやすいトイレルームの壁面などに取り付けられる。
リモートコントローラ400の全体形状は、図5に示すように、薄い直方体で形成されている。リモートコントローラ400は、例えばPPやABSなどの樹脂材料で成型された箱状のリモコン本体401の上面と前面に、複数のスイッチと表示灯を備えている。リモコン本体401の上部角部近傍には、リモートコントローラ400の操作信号を本体200に赤外線で送信する送信部402が配置されている。
リモコン本体401の内部にはリモートコントローラ400の制御機能部を構成する制御基板(図示せず)と、リモートコントローラ400の電源である電池(図示せず)などが内蔵されている。
リモコン本体401の前面中央部には、例えばお尻洗浄スイッチ410、ビデ洗浄スイッチ411、停止スイッチ412、ムーブ洗浄スイッチ413、リズム洗浄スイッチ414などが配置されている。各スイッチは、押圧操作などにより、以下に示す動作を行う。お尻洗浄スイッチ410は、お尻洗浄を開始する。ビデ洗浄スイッチ411は、女性の局部をする洗浄するビデ洗浄を開始する。停止スイッチ412は、お尻洗浄とビデ洗浄を停止する。ムーブ洗浄スイッチ413は、お尻洗浄およびビデ洗浄時に洗浄位置を前後に周期的に移動させて広い範囲の洗浄を可能とする。リズム洗浄スイッチ414は、お尻洗浄時に洗浄水による洗浄強さを周期的に変化させて洗浄する。
さらに、リモコン本体401の前面上部には、例えば洗浄強さスイッチ415、洗浄位置スイッチ416、ノズル除菌スイッチ417などが配置されている。洗浄強さスイッチ415は、お尻洗浄およびビデ洗浄時の洗浄強さを2個のスイッチで調節する。洗浄位置スイッチ416は、お尻洗浄およびビデ洗浄時の洗浄位置を2個のスイッチで調整する。ノズル除菌スイッチ417は、ノズルを、例えば40℃の温水で約1分間洗浄して除菌する。
洗浄強さスイッチ415の上方には、洗浄強さを5段階で表示するLEDの強さ表示灯421が配置されている。さらに、洗浄位置スイッチ416の上方には、洗浄位置を5段階で表示する位置表示灯422が配置されている。
リモコン本体401の上面には、便蓋320を電動で開閉する便蓋スイッチ418と、便座300を電動で開閉する便座スイッチ419が設置されている。そして、各スイッチを操作することにより、使用者が任意に便座300と便蓋320を開閉できるように構成されている。
また、図1に示す人体検知センサ450は、本体200とは別体で構成され、例えばトイレルームの壁面などに取り付けられる。人体検知センサ450は、図示しない、例えば焦電センサ、センサ制御部、赤外線送信部、人体検知センサ450の電源である電池などで構成されている。焦電センサは、人体から放出される赤外線を受光する。センサ制御部は、焦電センサの信号で人体を検知する。赤外線送信部は、センサ制御部からの人体検知信号を本体200の制御部に赤外線で送信する。
以上のように、本実施の形態の衛生洗浄装置が構成されている。
<2>洗浄部の構成
以下に、本実施の形態における衛生洗浄装置の洗浄部の構成について、図6から図8を用いて説明する。
図6は、同衛生洗浄装置の洗浄部の水回路の構成を示す模式図である。図7は、同衛生洗浄装置の水回路の分解状態を示す斜視図である。図8は、同衛生洗浄装置の水回路の組立状態を示す斜視図である。
なお、図6に示す洗浄部500は、本体200に内蔵され、使用者の局部を洗浄する。
図6に示すように、洗浄部500は、少なくとも洗浄水を噴出するノズル装置800と、給水接続口510からノズル装置800に洗浄水を供給する一連の洗浄水供給流路900などから構成されている。
洗浄水供給流路900には、給水接続口510、ストレーナ511、逆止弁512、定流量弁513、止水電磁弁514、リリーフ弁515、サブタンク600、熱交換器700、バッファータンク750、水ポンプ516、流調弁870が順次設置されている。そして、最終的に、洗浄水供給流路900は、ノズル装置800に接続される。
給水接続口510は、本体200の右側下方に配置され、水道配管と接続される。ストレーナ511は、給水接続口510の内部に配置され、水道水に含まれるごみの流入を防止する。逆止弁512は、サブタンク600内に貯溜された水が水道配管に逆流することを防止する。
定流量弁513は、洗浄水供給流路900に流れる洗浄水の量を一定に保つ。止水電磁弁514は、洗浄水供給流路900を電動で開閉する。そして、定流量弁513と止水電磁弁514およびリリーフ弁515は、図7に示すように、一体に構成されている。
サブタンク600は、止水電磁弁514の下流に設けられ、大気開放口603を備えている。熱交換器700は、洗浄水を瞬時に加熱する。バッファータンク750は、熱交換器700で加熱された温水の温度を均一にする。
水ポンプ516は、バッファータンク750の下流に接続されている。ノズル装置800は、流調弁870を介して水ポンプ516と接続されている。そして、流調弁870のそれぞれのポートには、ノズル装置800のお尻洗浄部831、ビデ洗浄部832、ノズルクリーニング部833などが接続されている。
また、図7および図8に示すように、洗浄部500を構成する部材のうち、給水接続口510、ストレーナ511、逆止弁512、定流量弁513、止水電磁弁514、リリーフ弁515、サブタンク600、熱交換器700、バッファータンク750、水ポンプ516は、例えばABSなどの樹脂材料で成型されたシャーシ501に組み込まれ、一体的に構成されている。そして、シャーシ501に組み込まれた状態で、本体200の後本体ケース201に組み付けられている。
ストレーナ511と逆止弁512は給水接続口510に一体に組み込まれ、定流量弁513とリリーフ弁515は止水電磁弁514に一体に組み込まれている。バッファータンク750は、熱交換器700と一体に構成されている。
そして、給水接続口510と止水電磁弁514、止水電磁弁514とサブタンク600およびサブタンク600と熱交換器700とは、接続チューブなどを介さず、相互の接続口をパッキンである、例えばOリングを介して直接接続されている。また、これらの水回路を構成する部材はシャーシ501の所定の位置に設置固定されている。
上記構成を水回路に採用することにより、水密構造が向上するとともに、相互の部材の配置精度を向上することができる。特にサブタンク600と熱交換器700の配置精度が向上する。これにより、洗浄水の流量の制御精度が向上する。その結果、洗浄部500の性能の向上と、流量の制御精度が向上する。
つぎに、上述した水ポンプ516の構成について、図7を参照しながら、図16および図17を用いて説明する。
図16は、水ポンプの外観を示す斜視図である。図17は、水ポンプの断面図である。
図16および図17に示すように、水ポンプ516は、例えば外形が略L字状(L字状を含む)の容積形ポンプであるピストンポンプで構成される。具体的には、水ポンプ516は、略円筒形(円筒形を含む)のモータ部516aと、モータの回転運動を往復運動に変換するリンク機構部516bと、リンク機構部516bの往復運動で駆動されるピストン部516cで構成されている。そして、ピストン部516cの外面には、接続口として吸水口516dと吐出口516eが設けられている。
なお、本実施の形態の水ポンプ516の場合、駆動時において、往復運動を伴うリンク機構部516bとピストン部516cに比べ、回転運動のみであるモータ部516aで発生する振動が少ない構成となっている。
具体的な水ポンプ516の動作は、まず、モータ部516aを駆動すると、ピストン部516cが往復運動を開始する。そして、ピストン部516cの吸水口516dから洗浄水を吸引して、吐出口516eから洗浄水を吐出する。このとき、吐出口516eから吐出する洗浄水は、ピストン部516cの往復運動に伴い適度の脈動を伴った水流で吐出される。
さらに、上記構成の水ポンプ516の略円柱形(円柱形を含む)のモータ部516aの外周は、弾性を備えた発泡樹脂製の緩衝部材(図示せず)で包囲されている。そして、シャーシ501の後部に設けられた略円筒形(円筒形を含む)の水ポンプ設置部501aにモータ部516aを挿入することにより、水ポンプ設置部501aでモータ部516aが支持される。このとき、リンク機構部516bとピストン部516cは、下方に垂れ下がるように懸架された状態で設置される。
なお、図7に示すように、水ポンプ設置部501aは薄い肉厚で形成され、シャーシ501の底面から起立したリブ状の脚部501bの上部に形成されている。つまり、薄い肉厚で形成することにより、水ポンプ設置部501aを構成する樹脂の弾性により水ポンプ516の振動を効果的に吸収することができる。
また、バッファータンク750が一体に形成された熱交換器700の接続口である出湯口712と、水ポンプ516の接続口である吸水口516dとは、軟質樹脂製の接続チューブで接続されている。
上述したように、本実施の形態の水ポンプ516は、振動の少ないモータ部516aを緩衝部材を介して、シャーシ501の薄い肉厚で形成された水ポンプ設置部501aに設置する。一方、振動が多く発生するリンク機構部516bとピストン部516cとは、フリーな状態で懸架される。さらに、ピストン部516cなどは、バッファータンク750と軟質樹脂製の接続チューブ502(図8参照)を介して接続される。これにより、水ポンプ516の駆動時に発生する振動がシャーシ501、他の部材や本体200に伝わること抑制する。その結果、衛生洗浄装置の快適性と耐久性を向上することができる。
特に、水ポンプ516は、発泡樹脂製の緩衝部材と、水ポンプ設置部501aを形成する弾性を備えた樹脂との2つの異なる材質を介して支持される。そのため、広い範囲の周波数の振動を吸収できる。これにより、本体200への振動の伝達を、さらに効果的に抑制できる。
<3>サブタンクの構成
以下に、本実施の形態における衛生洗浄装置のサブタンクの構成について、図9から図11を用いて説明する。
図9は、サブタンクの外観を示す斜視図である。図10は、サブタンクの横方向の断面図である。図11は、サブタンクの前後方向の断面図である。
まず、図9に示すように、サブタンク600は、少なくとも、例えばABSなどの樹脂材料により成型されたタンク本体610と、水位検知センサ620と、入水温度センサ630などから構成されている。水位検知センサ620は、タンク本体610に貯溜された洗浄水の水位を検知する。入水温度センサ630は、例えばサーミスタなどで構成され、タンク本体610内に供給される洗浄水の温度を検知する。
タンク本体610は、タンクの前壁、両側壁、底面、天面を構成する前部タンク611と、タンクの後壁を構成する後部タンク612と、タンク本体610の天面に配置された大気開放部613などの3個の部材で構成されている。タンク本体610の全体的な形状は、前壁、後壁、両側壁、底面、天面からなる複数の平面で形成され、図10に示すように平面視で見た場合の形状は、略四角形(四角形を含む)で形成されている。前部タンク611の前壁は、途中から後退する傾斜部を備える。つまり、図11に示すように側面視で見た場合の形状においては、下部より上部が細くなった略台形形状(台形形状を含む)で形成されている。これにより、タンク本体610の上部の断面積が下部より小さい断面積となっている。
また、タンク本体610の一方の側壁下部には入水口601が、タンク本体610後壁下部には出水口602が設けられている。
さらに、タンク本体610の天面に配置された大気開放部613には、タンク本体610の内部と外部を連通する大気開放口603が設けられている。大気開放口603は、タンク本体610内に溜まった空気を外部に放出し、タンク本体610の内部圧力を、常時、大気圧に維持する。これにより、サブタンク600の内部が、常時、大気圧に維持され、サブタンク600の下流から水ポンプ516の吸水口516dまでの洗浄水供給流路900も大気圧に維持される。そのため、水ポンプ516は、水圧変動の影響を受けずに吸水することができる。その結果、水ポンプ516は、安定したポンプ機能を発揮できる。
また、図10に示すように、水ポンプ516内で大気開放部613の大気開放口603と連通する流路には、流路の断面積が大きいバッファ部613aが形成されている。バッファ部613aは、大気開放口603から気泡を伴って洗浄水が衝撃的に流出しようとした場合などに、洗浄水を、一旦貯溜する。これにより、大気開放口603から洗浄水が流出することを抑制する。
さらに、タンク本体610の内部には、仕切壁614が設けられている。仕切壁614は、タンク本体610の内部を入水槽615と貯溜槽616の2つの槽に分割している。そして、入水槽615の側面の底面近傍には入水口601が、貯溜槽616の後壁の底面近傍には出水口602が設けられている。
つまり、仕切壁614で入水槽615と貯溜槽616を形成することにより、入水口601から流入した洗浄水に空気が含まれている場合、空気は、入水槽615の上部より大気開放口603を通過して外部に放出される。そのため、貯溜槽616に空気を含まない洗浄水のみを流入させることができる。
また、タンク本体610の入水槽615の上方には、入水槽615の上面開口部615aと大気開放部613の間に介在する障壁617が、タンク本体610の側壁より略水平方向(水平方向を含む)に突出して設けられている。障壁617は、入水槽615の上面開口部615aの全面を覆う大きさを備えている。
また、入水槽615の内部には、複数の整流リブ618が、タンク本体610の側壁と仕切壁614に略水平方向(水平方向を含む)に交互に突出して形成されている。
以下に、サブタンク600内の洗浄水の流れについて、説明する。
サブタンク600の入水口601から流入した洗浄水は、まず、入水槽615の下部に流入する。そして、整流リブ618で流れの方向を変化させながら入水槽615内を上昇する。このとき、入水口601から流入する洗浄水の圧力が高い場合、あるいは大量の空気を含んで著しく流れが乱れている場合、整流リブ618は、流れを適度に整流化する。さらに、整流リブ618は、整流リブ618の下流側で発生する渦により洗浄水内に含まれる空気を分離する。
また、入水槽615内を上昇した空気が分離された洗浄水は、仕切壁614の上端を乗り越えて貯溜槽616に流入して貯溜される。このとき、入水口601から流入する洗浄水の圧力が高い場合、あるいは大量の空気を含んで著しく流れが乱れている場合でも、洗浄水は障壁617により上方への流れが抑制される。そのため、洗浄水が、大気開放部613に当たり、大気開放口603よりサブタンク600の外部への、直接の流出が防止される。
上述したように、サブタンク600の入水口601から流入した洗浄水は、入水槽615内を上昇する間に、整流リブ618などにより、洗浄水に含まれる空気が分離される。分離された空気は、大気開放口603よりタンク本体610外に放出される。これにより、貯溜槽616に空気を含まない洗浄水が貯溜され、サブタンク600の出水口602より熱交換器700に供給される。
なお、サブタンク600より熱交換器700に供給される洗浄水に空気が混入していた場合、熱交換器700の内部で気泡が発生する。これにより、熱交換器700の内部の温度が異常に上昇して、熱交換器700が損傷する場合がある。そこで、本実施の形態のサブタンク600は、内部に仕切壁614を設け、空気の混入を防止する。これにより、熱交換器700の損傷を効果的に防止できる。
また、図10および図11に示すように、サブタンク600は、内部にステンレス材料で形成された、共通の電極となるコモン電極621と、水位ごとに設置された複数の水位電極622で構成される水位検知センサ620を備えている。なお、本実施の形態では、1個のコモン電極621と2個の水位電極622で構成した例で示している。
コモン電極621はタンク本体610の前壁下部の内面に配置され、水位電極622はタンク本体610の後壁の内面に配置されている。さらに、水位電極622は、上部に設けられた上限電極623と、下部に設けられた下限電極624で構成されている。このとき、コモン電極621は、水位電極622の下限電極624より低い位置で、かつ通常の使用状態においては、常に浸水した状態で配置されている。
つまり、コモン電極621と、水位電極622である上限電極623および下限電極624とを異なる面に設置することにより、タンク本体610の内面に付着した残水を、貯溜水として誤検知することを抑制できる。
ここで、水位電極622による洗浄水の水位の検知は、つぎのように行う。まず、コモン電極621と水位電極622との間に直流電流を印加する。そして、水位電極622が浸水しているか否かを、電圧の変化により検知する。これにより、洗浄水の水位を検知する。つまり、貯溜槽616内の水位が上昇すると、下限電極624および上限電極623が浸水する。このとき、コモン電極621と下限電極624および上限電極623間の電圧が低下する。これにより、制御部130は、電圧の低下から洗浄水の水位を検知する。
また、水位電極622の上限電極623は上限水位の検知に、下限電極624は下限水位の検知に使用される。そして、上限電極623は、大気開放口603より低い位置に設置されている。これにより、大気開放口603から洗浄水が流出することを防止できる。また、下限電極624は、熱交換器700へ通流する出水口602より上方に設置されている。これにより、熱交換器700に空気が流入することを防止できる。
また、制御部130は、コモン電極621と水位電極622との間に印加する直流電流の極性を周期的に反転させながら印加する構成となっている。これは、洗浄水を介してコモン電極621と水位電極622と間に直流電流を印加した場合に発生する電気分解の作用により、電極を形成する金属の酸化およびイオン化による溶出を防止するためである。つまり、直流電流を印加すると、水位電極622が短期間に劣化することがある。そこで、電流の極性を周期的に反転することにより、水位電極622の電気分解による劣化を抑制している。
なお、本実施の形態では、極性の反転の間隔は、衛生洗浄装置の電源として供給される交流電源に対応した時間設定としている。つまり、供給される交流電源が50Hzの場合は1/50秒、供給される交流電源が60Hzの場合は1/60秒としている。これにより、極性を反転するために、新たな制御回路の追加を不要にし、小型化、低コスト化を実現している。
上述したように、本実施の形態の衛生洗浄装置100は、止水電磁弁514が開放されてサブタンク600に洗浄水が供給される。そして、水位電極622で上限水位を検知すると、止水電磁弁514を閉止して給水を停止する。このとき、サブタンク600内は満水状態となる。
さらに、サブタンク600の満水状態から、通常の洗浄動作を実施すると水位が低下する。そして、水位電極622で下限水位が検知されると、止水電磁弁514を再び開放してサブタンク600に洗浄水を供給する。これにより、水位電極622で上限水位が検知されるまで給水が継続される。
なお、通常、サブタンク600に貯溜される洗浄水の最大量は、100ccである。そこで、本実施の形態のサブタンク600の上限水位から下限水位までの水量を65ccに設定している。しかし、これは一例であり、これに限られないことはいうまでもない。
また、通常、洗浄に使用される洗浄水の流量は、最も強い洗浄力で洗浄した場合450cc/minで、最も弱い洗浄力洗浄した場合260cc/minに設定されている。そのため、洗浄水が上限水位から下限水位に到達するまでの時間は、最も強い洗浄力で洗浄した場合8.7秒間で、最も弱い洗浄力で洗浄した場合15秒間となる。
なお、一般的に、使用者が局部の洗浄に要する時間は、30秒以上である。そのため、最も弱い洗浄力で洗浄した場合でも130ccの洗浄水を使用する。つまり、1回の洗浄動作において、最低1回は上限水位から下限水位への変化を水位電極622で検知することが可能となる。
そこで、制御部130は、上限水位から下限水位までの経過時間を計測し、計測した時間と上限水位から下限水位までの水量(65cc)とを演算する。そして、洗浄水の流量を算出する。このとき、洗浄強さごとに設定された流量と、算出された流量に差がある場合、制御部130は水ポンプ516の出力を調整して、洗浄水の流量を補正する。
なお、本実施の形態では、サブタンク600の底面の形状が略四角形を例に説明としたが、これに限られない。例えば、他の多角形状でもよく、周囲の部品との兼ね合いや設置場所の状況に応じて変形してもよい。
また、本実施の形態では、コモン電極621と水位電極622を対向する壁面である前壁と後壁に設置した例で説明したが、これに限られない。例えば、前壁と側壁などの隣接する壁面など、上記と異なる面に設置してもよい。さらに、コモン電極621を前壁に設置し、水位電極622を天面に設置してもよい。この場合、下限電極624と上限電極623の先端を、それぞれ下限水位、上限水位の位置になるように長さを変える。
また、本実施の形態では、水位電極622を上限電極623と下限電極624の2個で構成した例で説明したが、これに限られない。例えば、3個以上の水位電極622を配置するなど、水位検知の間隔を細分化して設けてもよい。これにより、水位検知と流量検知の精度をさらに向上できる。
以上のように、本実施の形態のサブタンクが構成されている。
<4>水位検知の閾値の補正
以下に、本実施の形態における衛生洗浄装置の水位検知の閾値の補正について、図12および図13を用いて説明する。
図12は、上限電極とコモン電極との出力電圧の変化と上限電極の浸水状態と非浸水状態を判定する閾値を示すグラフである。図13は、下限電極とコモン電極との出力電圧の変化と下限電極の浸水状態と非浸水状態を判定する閾値を示すグラフである。
上述したように、本実施の形態におけるサブタンクの水位検知センサ620で検知した検知データは、単に水位の検知のみに使用されるものではなく、演算処理により流量検知にも使用される。そのため、高い検知精度でサブタンクの水位を検知することが要求される。
通常、水位検知センサ620は、2つの電極間の出力電圧の変化により水位を検知する。そして、水位電極622と洗浄水の水面との接触および離脱により変化する出力電圧を、閾値と比較して水位を判定する。しかし、水位検知センサ620の出力電圧は、洗浄水の導電率や温度などによりバラツキが発生する。
つまり、衛生洗浄装置の場合、使用される洗浄水を限定して導電率を一定にすることは難しい。また、使用時の洗浄水の導電率を検知して、補正するには、専用の検知センサを採用する必要があるが、コストアップになる。そこで、本実施の形態では、サブタンク600に設置した入水温度センサ630の検知データを使用して温度的な補正を行う。これにより、広い範囲の導電率の洗浄水に対応できるように構成している。
具体的には、図12の破線で示すように、上限電極623とコモン電極621との間の出力電圧は、上限電極623が浸水していない場合、洗浄水の入水温度が5℃の場合は約4.7Vで、40℃の場合は約4.4Vである。そして、上限電極623とコモン電極621との間の出力電圧は、温度変化に対して略直線的に変化している。
また、上限電極623が浸水した状態の場合、洗浄水の入水温度が5℃の場合は約2Vで、40℃の場合は約1.4Vである。そして、上限電極623とコモン電極621との間の出力電圧は、温度変化に対して略直線的に変化している。
つまり、上記のように出力電圧は、入水温度により変化する。そのため、上限電極623の浸水状態と非浸水状態とを判定する閾値を一定にした場合、導電率の異なる洗浄水を使用された場合に誤検知する可能性がある。そこで、洗浄水の入水温度に対応して、閾値を補正することが有効となる。
そこで、本実施の形態では、図12の実線で示すように、例えば0℃〜5℃の間の閾値を3.9V、35℃〜40℃の間の閾値を3.3Vとし、0℃〜40℃の間において、例えば5℃毎に段階的に閾値を変えて設定している。
また、図13の破線で示すように、下限電極624とコモン電極621との間の出力電圧は、下限電極624が浸水していない場合、洗浄水の入水温度が5℃の場合は約4.5Vで、40℃の場合は約4.0Vである。そして、下限電極624とコモン電極621との間の出力電圧は、温度変化に対して略直線的に変化している。
また、下限電極624が浸水した状態の場合、洗浄水の入水温度が5℃の場合は約1.5Vで、40℃の場合は約1Vである。そして、下限電極624とコモン電極621との間の出力電圧は、温度変化に対して略直線的に変化している。
つまり、上記のように上限電極623の場合と同様に、出力電圧は入水温度により変化する。そのため、下限電極624の浸水状態と非浸水状態とを判定する閾値を一定にした場合、導電率の異なる洗浄水を使用された場合に誤検知する可能性がある。そこで、洗浄水の入水温度に対応して、閾値を補正することが有効となる。
そこで、本実施の形態では、図13の実線で示すように、例えば0℃〜5℃の間の閾値を3.5V、35℃〜40℃の間の閾値を2.9Vとし、0℃〜40℃の間において、例えば5℃毎に段階的に閾値を変えて設定している。
そして、制御部130は、入水温度センサ630の洗浄水の温度の検知データに基づいて、上限電極623と下限電極624に対応する水位検知の閾値を上記のように補正する。これにより、広い範囲の導電率の洗浄水の水位を正確に検知することができる。
<5>熱交換器の構成
以下に、本実施の形態における衛生洗浄装置の熱交換器の構成について、図14および図15を用いて説明する。
図14は、熱交換器の外観を示す斜視図である。図15は、熱交換器の断面図である。
なお、本実施の形態の熱交換器700は、バッファータンク750が一体に形成され、熱交換器700の上部にバッファータンク750が設置されている。
まず、熱交換器700は、正面視(図15参照)で略長方形(長方形を含む)の平板状で形成されている。熱交換器700は、少なくとも、例えばABS樹脂にガラス繊維をコンパウンドした強化ABS樹脂で成型されたケーシング701と、セラミック製の平板状ヒータ702と、出湯部材703などから構成されている。
ケーシング701は、前面部を構成する前面部材710と、背面部を構成する背面部材720で構成されている。平板状ヒータ702は、前面部材710と背面部材720との間に形成される空間に設置される。また、加熱流路715は、前面部材710と平板状ヒータ702との対向部と、背面部材720と平板状ヒータ702との対向部との隙間で形成されている。以上のように構成された熱交換器700は、加熱流路715を流れる洗浄水を平板状ヒータ702で瞬時に昇温させる。
また、熱交換器700は、前面部材710の前面下端の右側に接続口である入水口711を備え、前面部材710の右側面上端に設置された出湯部材703に接続口である出湯口712を備えている。
さらに、図15に示すように、図14に示す入水口711に連なる入水流路713が、ケーシング701の下端部の略全幅に亘り設けられている。入水流路713の上面には全幅に亘り複数のスリット714が設けられ、入水流路713に流入した洗浄水がスリット714を通過して加熱流路715へ流入する構成となっている。なお、スリット714は、洗浄水を加熱流路715の全幅に亘り均等に流入させる機能を有する。
また、加熱流路715の上端部には仕切リブ716が設けられ、仕切リブ716より上方がバッファータンク750となっている。仕切リブ716には、略全幅(全幅を含む)に亘り複数の通水孔717が設けられている。これにより、加熱流路715で加熱された洗浄水が、通水孔717を通過してバッファータンク750内に流入する。
さらに、バッファータンク750内には、例えば断面形状が略半円形(半円形を含む)の突起718が、略全幅(全幅を含む)に亘り間隔をあけて設けられている。突起718は、バッファータンク750内を出湯口712に向かって流れる洗浄水の流れを乱す。これにより、洗浄水が混ざり合って洗浄水の温度むらが解消され、均一な温度の洗浄水が出湯口712より出湯される。
出湯部材703には、出湯温度センサ730と、過昇温度センサ731の2個のサーミスタが設置されている。出湯温度センサ730は、洗浄水の出湯温度を検知する。過昇温度センサ731は、熱交換器700の過昇温度を検知する。これにより、制御部130は、熱交換器700から出湯する洗浄水の温度を制御する。
<6>ノズル装置の構成
以下に、本実施の形態における衛生洗浄装置のノズル装置の構成について、図18から図30を用いて説明する。
図18は、本実施の形態におけるノズル装置の収納状態を示す斜視図である。図19は、図18に示す19−19線断面図である。図20は、ノズル装置の収納状態を示す縦断面図である。図21は、図20に示すB部の詳細断面図である。図22は、図21に示す22−22線断面図である。図23は、ノズル装置の収納状態を示す横断面図である。図24は、図23に示すC部の詳細断面図である。図25は、ノズル装置のお尻洗浄状態を示す縦断面図である。図26は、図25に示すD部の詳細断面図である。図27は、ノズル装置のビデ洗浄状態を示す縦断面図である。図28は、図27に示すE部の詳細断面図である。図29は、ノズル装置のビデ洗浄状態を示すノズル部の横断面図である。図30は、図29に示すG部の詳細断面図である。
図18に示すように、ノズル装置800は、少なくとも支持部810と、ノズル部820と、ノズル駆動部860と、流調弁870などで構成されている。支持部810は、例えばPOM(ポリオキシメチレン:polyoxymethylene)やABSなどの樹脂材料で成型した、側面視において略三角形(三角形を含む)の枠状で形成されている。ノズル部820は、支持部810に沿って進退移動する。ノズル駆動部860は、ノズル部820を駆動して進退移動させる。流調弁870は、ノズル部820への洗浄水の供給を切り替える。
なお、以降のノズル装置の説明では、ノズル部の収納方向を後方とし、ノズル部の進出方向を前方とし、後方より前方に向かって右側を右方、左側を左方として、各構成要素の配置を説明する。
支持部810は、略水平(水平を含む)な底辺部811に対して、後部より前部に向かって降下した傾斜部812と、底辺部811と傾斜部812の後端を接合する縦辺部813からなる枠状に形成されている。傾斜部812には、ノズル部820の進退移動を案内するガイドレール814と、ノズル駆動部860の可撓ラック861(図19参照)を案内するラックガイド815(図19参照)が略全長(全長を含む)に亘って形成されている。そして、傾斜部812の前端下方には、ノズル部820を包囲するように支持する略円筒形(円筒形)の抱持部816が一体に形成されている。
また、図19に示すように、ノズル部820を案内するガイドレール814は断面が略T字状(T字状を含む)に形成されている。可撓ラック861を案内するラックガイド815は、断面視において、一方の側面が開放された略コの字状(コの字状を含む)を有し、可撓ラック861の上下面と一方の側面を規制して案内する構成を備えている。
ラックガイド815は、傾斜部812から支持部810の後部の縦辺部813と底辺部811にも連続して形成されている。このとき、ラックガイド815の傾斜部812と縦辺部813、および縦辺部813と底辺部811とのコーナは、例えば円弧形状で接続されている。なお、縦辺部813と底辺部811に形成されたラックガイド815の断面形状は、略コの字状(コの字状を含む)で形成されている。一方、ラックガイド815の開放された側面は、傾斜部812では左側面が開放され、縦辺部813と底辺部811では反対の右側面が開放されている。そして、ラックガイド815の縦辺部813と底辺部811の開放面は、例えば別部材の支持部蓋などにより閉塞される。
また、ノズル駆動部860は、ノズル部820に結合された可撓ラック861と、可撓ラック861と噛合するピニオンギア862と、ピニオンギア862を回転駆動する駆動モータ863で構成されている。ノズル駆動部860は、ノズル部820をガイドレール814に沿って進退移動させる。
駆動モータ863は、例えばステッピングモータで構成され、パルス信号により回転角度が制御される。そして、駆動モータ863の回転によりピニオンギア862を介して可撓ラック861が駆動される。
支持部810の抱持部816の内周面とノズル部820の外周面との間には、間隙が設けられている。そして、ノズル部820から噴出した洗浄水が、間隙に流入してノズル部820外周面を洗浄するように構成されている。
また、ノズル蓋801は、抱持部816の前方に開閉自在に設けられ、ノズル部820の進退により開閉する。そして、ノズル部820が収納されている状態でノズル蓋801を閉塞することにより、ノズル部820が便などで汚染されることを防止する。
支持部810の底辺部811には、洗浄水供給部に接続する給水チューブ(図示せず)と支持部810から流調弁870に洗浄水を供給する接続チューブ802とを相互に接続する給水継手817が形成されている。
図23に示すように、ノズル部820は、少なくとも、例えばABSなどの樹脂材料で成型された棒状のノズル本体830と、ノズルカバー840と、連結部850などで構成されている。ノズルカバー840は、筒状で形成され、ノズル本体830の略全体(全体を含む)を覆う。連結部850は、ノズル本体830でノズルカバー840を牽引する。
さらに、ノズル部820のノズル本体830は、図6に示すように、局部を洗浄するお尻洗浄部831と、女性の局部を洗浄するビデ洗浄部832と、ノズル部820をクリーニングするノズルクリーニング部833などを備えている。
図25および図26に示すように、お尻洗浄部831は、ノズル本体830の先端部に上方に開口したお尻洗浄噴出口834と、ノズル本体830の後端よりお尻洗浄噴出口834に連通するお尻洗浄流路835で構成されている。そして、お尻洗浄流路835は、ノズル本体830の下部側に設置され、お尻洗浄噴出口834の下方で上方に向かって屈曲する屈曲部が設けられている。さらに、屈曲部には洗浄水の流れを整流する整流板835aが設置されている。これにより、お尻洗浄噴出口834から噴出した洗浄水は、ノズルカバー840の噴出開口844を通過して上方に向かって噴出される。
また、図27および図28に示すように、ビデ洗浄部832は、お尻洗浄噴出口834の後方に配置されたビデ洗浄噴出口836と、ノズル本体830の後端よりビデ洗浄噴出口836に連通するビデ洗浄流路837で構成されている。そして、ビデ洗浄噴出口836から噴出した洗浄水は、ノズルカバー840の噴出開口844を通過して上方に向かって噴出される。
また、ノズルクリーニング部833は、図29に示すように、ノズル本体830の側面に配置されたノズルクリーニング噴出口838と、ノズル本体830の後端よりノズルクリーニング噴出口838に連通するノズルクリーニング流路839で構成されている。そして、ノズルクリーニング噴出口838から噴出した洗浄水は、ノズルカバー840の内部に噴出され、ノズルカバー840の排水口845からノズルカバー840の外部に放出される。なお、ノズルクリーニング噴出口838から噴出した洗浄水は、ノズル部820とその周辺の清掃に使用される。
さらに、ノズル部820の前方は支持部810の抱持部816に挿入した状態で支持され、ノズル部820の後部はガイドレール814に懸架された状態で摺動自在に設置されている。そして、ノズル部820は、図18に示すノズル部820を抱持部816より後方に収容された収納位置と、図25に示すノズル部820が抱持部816より突出したお尻洗浄位置と、図27に示すビデ洗浄位置との間を進退可能に構成されている。
また、ノズルカバー840は、ノズルカバー本体841と連結部材842から構成されている。ノズルカバー本体841は、例えばステンレスの薄板を円筒状にして形成され、先端面は閉塞面で、後端面は開放面となっている。連結部材842は、例えばABSなどの樹脂材料で成型された略円筒状(円筒形を含む)で形成され、両側部にノズル本体830と係合する連結片843を備えている。
また、連結部材842の後端右側には、ノズルカバー840の摺動範囲を規制するノズルカバーストッパ(図示せず)が一体に形成されている。そして、支持部810に形成された前ストッパ受部(図示せず)と後ストッパ受部(図示せず)に当接することにより、ノズルカバー840の摺動範囲が規制されるように構成されている。
さらに、連結部材842の一部は、ノズルカバー本体841の後端の開口よりノズルカバー本体841内に挿入された状態で固定され一体化されている。
また、ノズルカバー本体841の前方上面には、ノズル本体830のお尻洗浄噴出口834とビデ洗浄噴出口836が対向可能な噴出開口844が、1個設けられている。ノズルカバー本体841の前方下面には、ノズルカバー本体841内に流出した洗浄水を外部に排出する排水口845が設けられている。
なお、ノズルカバー840の内径は、ノズル本体830の外径より僅かに大きい寸法を有する。これにより、ノズルカバー840にノズル本体830を挿入した状態で、ノズル本体830とノズルカバー840が互いにスムーズに摺動可能に構成されている。
また、ノズル本体830の後端面には流調弁870が設置されている。流調弁870の外面には、流調弁870に洗浄水を供給する給水口(図示せず)が設置され、給水口は支持部810の給水継手817と接続チューブ802で接合されて連通する。
以下に、本実施の形態におけるノズルカバー840の連結部材842とノズル本体830の連結受部851で構成される連結部850について、図24および図30を用いて説明する。
図24および図30に示すように、ノズル本体830の後端部の外周右側には、連結受部851が形成されている。連結受部851は、2本の略V字型(V字型を含む)の、前方の前凹陥部851aと後方の後凹陥部851bの溝が形成され、前後に間隔をあけて配置されている。なお、前凹陥部851aと後凹陥部851bの間隔は、お尻洗浄噴出口834とビデ洗浄噴出口836の間隔と等しい寸法で設けられている。
一方、ノズルカバー840の連結部材842は、略円筒状(円筒状を含む)の、例えばABSやPOMなどの樹脂材料で成型され、後部両側部は後方に突出した連結片843を備えている。連結片843の後端部には、内方に突出した略V字形状(V字形状を含む)の連結突起843aが形成されている。
そして、ノズル本体830をノズルカバー840に挿入すると、弾性により、ノズルカバー840の連結部材842の連結突起843aが、ノズル本体830の連結受部851に、常時、押し当てられる。このとき、連結突起843aが前凹陥部851aまたは後凹陥部851bに係合されると、ノズル本体830とノズルカバー840が連結された状態となる。これにより、ノズルカバー840は、ノズル本体830に牽引されて移動することが可能となる。
なお、図24に示すように、連結突起843aが前凹陥部851aに入り込んでいる状態では、図28に示すように、ノズル本体830のビデ洗浄噴出口836とノズルカバー840の噴出開口844が対向した状態となる。一方、図30に示すように、連結突起843aが後凹陥部851bに入り込んでいる状態では、図21および図26に示すように、お尻洗浄噴出口834と噴出開口844が対向した状態となる。これにより、所定の噴出口から洗浄水を噴出させることができる。
<7>流調弁の構成
まず、本実施の形態における衛生洗浄装置の流調弁の構成について、図31および図32を用いて説明する。
図31は、流調弁の固定ディスクの平面図である。図32は、流調弁の可動ディスクの平面図である。
図24および図30に示すように、流調弁870は、ノズル本体830と一体に形成されたケーシング872に固定され、少なくとも固定ディスク873と、可動ディスク874と、ステッピングモータ875などから構成されている。固定ディスク873は、ノズル本体830の各洗浄流路に連通するポートを備えている。可動ディスク874は、洗浄水を供給するポートを切り替える。ステッピングモータ875は、可動ディスク874を回転駆動する。
また、固定ディスク873は、図31に示すように、少なくとも停止ポート876と、ノズルクリーニングポート877と、お尻洗浄ポート878と、ビデ洗浄ポート879を備えている。停止ポート876は、洗浄水の供給を停止する。ノズルクリーニングポート877は、ノズルクリーニング流路839に洗浄水を供給する。お尻洗浄ポート878は、お尻洗浄流路835に洗浄水を供給する。ビデ洗浄ポート879は、ビデ洗浄流路837に洗浄水を供給する。
そして、停止ポート876は流路を閉鎖する平面で形成され、ノズルクリーニングポート877は略台形(台形を含む)の貫通孔で形成されている。
また、お尻洗浄ポート878は、全体としては幅の広い円弧形状に形成され、一部は貫通した通水部878aと、一部は貫通せずに凹陥した絞部878bとを備えている。絞部878bは、ノズルクリーニングポート877と隣接する側に設けられている。そして、絞部878bの目的は、通過する洗浄水の水量を抑制するものである。
また、ビデ洗浄ポート879は、お尻洗浄ポート878と同様に、通水部879aと絞部879bを備えている。
一方、可動ディスク874は、図32に示すように、略台形状(台形形状を含む)に貫通した通水孔874aが形成されている。さらに、可動ディスク874中央には、ステッピングモータ875の回転軸が挿入される軸受穴874bが形成されている。
なお、流調弁870の組立状態においては、固定ディスク873と可動ディスク874とは密接状態で回動可能に構成されている。そして、可動ディスク874は、ステッピングモータ875の駆動により所定角度の回転および停止が行われる。
以下に、本実施の形態の流調弁の動作について、図33を用いて説明する。
図33は、流調弁870の操作状態ごとの固定ディスク873と可動ディスク874との相対位置の関係を示す模式図である。なお、図33の左側と中央の列は固定ディスク873と可動ディスク874の各操作状態における個別の配置状態を示し、図33の右側の列はセット状態の相対位置を示している。
まず、停止状態においては、可動ディスク874の通水孔874aは固定ディスク873の停止ポート876に配置されている。これにより、通水孔874aは停止ポート876により閉鎖された状態となる。その結果、ノズル本体830のいずれの流路にも洗浄水が供給されない状態となる。
そして、ノズルクリーニング状態においては、可動ディスク874の通水孔874aは固定ディスク873のノズルクリーニングポート877に配置されている。これにより、洗浄水は通水孔874aとノズルクリーニングポート877を通過して、ノズル本体830のノズルクリーニング流路839に供給される。
つぎに、ノズルクリーニング状態からお尻洗浄状態に切り替える場合、図33に示す切り替え途中の状態を通過してお尻洗浄の状態へと移動する。このとき、切り替え動作を開始した直後は、図33の切り替え途中のセット状態で示すように、可動ディスク874の通水孔874aはノズルクリーニングポート877とお尻洗浄ポート878の絞部878bの両方に跨って配置されている。そのため、この状態の場合、ノズル本体830のノズルクリーニング流路839とお尻洗浄流路835の両方の流路に洗浄水が併給される。これにより、洗浄水はお尻洗浄ポート878の絞部878bを通過して送給される。その結果、流調弁870全体に流れる洗浄水の量が極端に変化することを抑制できる。
そして、図33に示すように、切り替え途中の状態を通過後、可動ディスク874はお尻洗浄ポート878の通水部878aに対向する位置に停止する。これにより、ノズル本体830のお尻洗浄流路835にのみ洗浄水を供給することができる。
上述したように、本実施の形態の流調弁870は、ノズルクリーニング状態からお尻洗浄状態に切り替える場合に、ノズル本体830のノズルクリーニング流路839とお尻洗浄流路835の両方の流路に洗浄水を併給する併給機能を備えている。そのため、切り替え時に洗浄水の流れが停止されることがない。これにより、水ポンプ516や熱交換器700に加わる負荷の急激な変化を抑制できる。その結果、洗浄水の温度を安定して維持できる。さらに、水ポンプ516や熱交換器700などの流路部材の損傷を抑制できる。
また、洗浄水が併給される間、お尻洗浄ポート878を流れる洗浄水は絞部878bにより送給される。これにより、切り替え時の流量をより安定させることができる。そのため、洗浄水の温度を安定させるとともに、流路部材の損傷をより確実に抑制できる。
また、熱交換器700の平板状ヒータ702は、通常、洗浄水の温度が一定値となるように電気入力が制御されている。そのため、洗浄水の流量が変化すると洗浄水の温度も変化する。つまり、洗浄水の流量は、ノズルクリーニング流路839からお尻洗浄流路835に切り替える際もできるだけ一定の流量であることが望ましい。そこで、上述したように切り替え時の流量を安定させることにより、洗浄水の湯温変化を抑制することができる。
また、水ポンプ516の駆動デューティーを一定に制御する場合、ノズルクリーニング流路839とお尻洗浄流路835の圧力損失は、できる限り同等であることが望ましい。また、ノズルクリーニング流路839とお尻洗浄流路835の圧力損失が同等に設定できない場合、流路を切り替える流調弁870の動作と連動させて、水ポンプ516のデューティーを調整することが望ましい。
なお、上記実施の形態では、図33を用いて、ノズルクリーニング状態からお尻洗浄状態へ切り替える場合を例に説明したが、ノズルクリーニング状態からビデ洗浄状態へ切り替える場合も同様である。つまり、まず、可動ディスク874の通水孔874aは、ノズルクリーニングポート877とビデ洗浄ポート879の絞部879bの両方に跨って配置される切り替え途中の状態を通過する。そして、ビデ洗浄ポート879の通水部879aで停止するように構成されている。これにより、お尻洗浄の場合と同様の作用効果を得ることができる。
<8>洗浄部の制御と作用動作
以下に、本実施の形態における衛生洗浄装置の洗浄部の制御と作用動作について、説明する。
はじめに、洗浄部500の基本的な作用動作について、図6を参照しながら、以下に説明する。
まず、水道配管を流れる水道水が、洗浄水として給水接続口510から供給される。そして、止水電磁弁514が開放されることにより、サブタンク600へ洗浄水が送給される。このとき、流路内を流れる洗浄水の流量は、定流量弁513により一定に維持される。なお、止水電磁弁514の駆動は、リモートコントローラ400および操作部210の操作に基づいて、制御部130により制御される。
つぎに、サブタンク600に送給された洗浄水は、サブタンク600内に貯溜されるとともに、熱交換器700および水ポンプ516に送給される。そして、水ポンプ516を駆動することにより、洗浄水は流調弁870を介してノズル装置800に送給される。なお、水ポンプ516の駆動は、リモートコントローラ400および操作部210の操作に基づいて、制御部130により制御される。
つぎに、制御部130は、水ポンプ516の駆動を開始し、水ポンプ516の正常な稼働を確認する。その後、制御部130は、熱交換器700の平板状ヒータ702に通電して、洗浄水の加熱を開始する。このとき、制御部130は、入水温度センサ630と出湯温度センサ730の検知情報により、平板状ヒータ702への通電を制御する。そして、洗浄水を操作部210の温水温度スイッチ231で設定された温度を維持するように制御する。
つぎに、制御部130は、操作部210およびリモートコントローラ400の操作情報に基づいて、流調弁870を制御する。そして、流調弁870は、ノズル装置800のお尻洗浄部831、ビデ洗浄部832、ノズルクリーニング部833のいずれかに切り替えて、洗浄水を供給する。これにより、お尻洗浄噴出口834、ビデ洗浄噴出口836、ノズルクリーニング噴出口838のいずれかの噴出口から洗浄水を噴出させる。
以下に、本実施の形態のサブタンク600と熱交換器700と水ポンプ516などに関わる制御について、説明する。
まず、本実施の形態の衛生洗浄装置の初期使用時における洗浄部の制御について、図34を用いて説明する。
図34は、同衛生洗浄装置の初期使用時における洗浄部のタイミングチャートである。なお、図34は、衛生洗浄装置の設置後に初めて使用する場合、あるいは凍結防止のため水抜き操作を実施した後の再使用の場合など、洗浄部に洗浄水が貯溜されていない初期使用時における洗浄部の各機能のタイミングチャートである。
図34に示すように、時点P1で、操作部210またはリモートコントローラ400の洗浄スイッチ(例えば、お尻洗浄スイッチ221または410)が操作される。これにより、制御部130は、止水電磁弁514に通電して洗浄水の供給を開始する。同時に、水位検知センサ620の駆動を開始する。なお、水位検知センサ620の駆動は、後洗浄が終了して、サブタンク600が満水状態となる上限水位を検知する時点P14まで継続される。
つぎに、時点P2で、水位検知センサ620が上限水位を検知すると、制御部130は時間計測を開始する。そして、所定時間経過した時点P3において、止水電磁弁514の通電を停止して洗浄水の供給を停止する。
なお、本実施の形態では、上限水位検知の2秒後に通電を停止する。この理由は、上限水位を検知した時点P2では、基本的にサブタンク600と熱交換器700は満水状態になっている。ここで、さらに2秒間送給を継続する。これにより、水圧を高め、水ポンプ516への洗浄水の送給および熱交換器700内の空気の排除などを確実に実施できる。その結果、熱交換器700の空焚きを確実に防止して、安全性と耐久性を確保できる。
つぎに、制御部130は、止水電磁弁514の通電を停止した時点P3で、水ポンプ516の駆動を開始する。同時に、流調弁870を作動して、ノズル部820のお尻洗浄流路835に洗浄水の供給を開始する。このとき、水ポンプ516の駆動により、サブタンク600の水位が低下し、時点P4で、水位検知センサ620の上限水位の検知が解消する。そこで、時点P4において、制御部130は、熱交換器700の駆動を開始する。つまり、水位の低下の検知により、水ポンプ516が正常に作動していることが確認できる。これにより、熱交換器700の異常な温度上昇などを防止できる。
そして、お尻洗浄流路835に供給された洗浄水は、お尻洗浄噴出口834より噴出する。噴出した洗浄水は、噴出開口844を通過して支持部810の先端に設けられた抱持部816の内面にあたって反射する。これにより、ノズルカバー840の外面がクリーニングされる。ここで、このクリーニング動作を、以降では「前洗浄」と称する。なお、前洗浄は、熱交換器700の出湯温度が25℃に到達してから、例えば2秒後の時点P5まで継続される。
つぎに、時点P5で前洗浄が終了すると、制御部130はノズル装置800のノズル駆動部860の駆動を開始し、ノズル部820を収納位置からお尻洗浄位置へと進出させる。このとき、制御部130は、ノズル駆動部860の駆動を開始すると同時に、流調弁870を切り替えて、ノズルクリーニング流路839への洗浄水の供給を開始する。ノズルクリーニング流路839に供給された洗浄水は、ノズルクリーニング噴出口838よりノズルカバー840の内部に噴出する。噴出した洗浄水は、ノズルカバー840の内面を洗浄した後に、排水口845よりノズルカバー840の外部に流出する。その間、ノズル部820は、洗浄水により温められる。これにより、その後に実施されるお尻洗浄時に冷水が噴出して不快を感じることを抑制できる。
つぎに、ノズル部820がお尻洗浄位置に到達した時点P6で、制御部130は、ノズルクリーニング流路839からお尻洗浄流路835に流調弁870を切り替える。そして、お尻洗浄流路835に洗浄水の供給を開始する。このとき、<7>流調弁の構成で説明した流調弁870の併給機能により、ノズルクリーニング流路839からお尻洗浄流路835への切り替えの途中において、ノズルクリーニング流路839とお尻洗浄流路835の両方に同時に洗浄水が供給される。そのため、切り替えの途中において、洗浄水の供給が中断されることがない。
お尻洗浄流路835に供給された洗浄水は、お尻洗浄噴出口834より噴出し、噴出開口844を通過して使用者の局部を洗浄する。そして、お尻洗浄の動作は、洗浄停止の操作が行われる時点P11まで継続される。
なお、一般的に、熱交換器700の出湯立ち上がりは、制御条件により、出湯温度がオーバーシュートあるいはアンダーシュートが発生する可能性がある。そこで、本実施の形態では、上記現象により、特に洗浄動作の初期に不安定な温度の洗浄水が人体に当たることを抑制するように洗浄部を制御するように構成している。具体的には、洗浄動作開始時の温度が不安定な洗浄水を捨て水として、ノズルクリーニング噴出口838からノズルの下方に排出する。
つまり、本実施の形態では、特に、ノズルカバー840の外面をクリーニングする前洗浄と、ノズル部820を収納位置からお尻洗浄位置へと進出させる間に、ノズルクリーニング噴出口838よりノズルカバー840の内部に、洗浄水を噴出させる。これにより、出湯温度が不安定な熱交換器の通電直後の洗浄水を意図的に人体に当てずにノズル部820のクリーニング用の洗浄水として排出する。その結果、洗浄位置において、お尻洗浄噴出口またはビデ洗浄噴出口から噴出される洗浄水は、噴出当初から十分に加熱された安定した湯温で噴出される。
なお、制御部130は、熱交換器700の駆動中、入水温度センサ630と出湯温度センサ730の検知データにより、洗浄水を設定された温度に制御する。
上述したように、水ポンプ516と熱交換器700は、「前洗浄」の開始からお尻洗浄が終了するまで連続して駆動される。そして、その間、洗浄水は安定した温度で供給される。
つぎに、水ポンプ516の駆動の継続により、サブタンク600の水位は低下する。そして、水位検知センサ620が下限水位を検知した時点P7で、制御部130は止水電磁弁514へ通電を開始する。その後、水位検知センサ620が上限水位を検知する時点P8まで通電を継続する。
上限水位を検知した時点P8で、制御部130は止水電磁弁514の通電を停止するとともに、時間計測を開始する。そして、つぎに水位検知センサ620が下限水位を検知する時点P9までの経過時間を計測する。
つぎに、下限水位を検知した時点P9で、制御部130は、計測した経過時間と上限水位から下限水位までの水量(65cc)とを演算して、流量を算出する。流量演算処理による演算が終了した時点P10で、洗浄強さごとに設定された流量と、噴出した流量とに差がある場合、制御部130は水ポンプ516の出力を調整して、洗浄水の流量を補正する。
つぎに、操作部210またはリモートコントローラ400の洗浄停止の操作が行われた時点P11で、制御部130は水ポンプ516と熱交換器700の通電を停止する。同時に、制御部130は、ノズル装置800のノズル駆動部860を駆動して、ノズル部820をお尻洗浄位置から収納位置へと後退させる。
そして、ノズル部820が収納位置に後退した時点P12で、制御部130はノズル装置800のノズル駆動部860の駆動を停止する。同時に、制御部130は水ポンプ516と熱交換器700を再度、駆動して、ノズル部820をクリーニングする「後洗浄」を開始する。そして、所定時間が経過した時点P13で、制御部130は水ポンプ516と熱交換器700の駆動を停止する。これにより、「後洗浄」が終了する。
つぎに、ノズル部820の後洗浄が終了した時点P13で、制御部130は止水電磁弁514に再度通電して、サブタンク600に洗浄水を供給する。そして、上限水位が検知された時点P14で、制御部130は止水電磁弁514への通電を停止し、お尻洗浄の一連の制御が終了する。これにより、サブタンク600が満水の状態で、洗浄部は待機状態となる。
以上により、本実施の形態の衛生洗浄装置の初期使用時における洗浄部の制御が実行される。
以下に、本実施の形態の衛生洗浄装置の通常使用時における洗浄部の制御について、図35を用いて説明する。
図35は、同衛生洗浄装置の通常使用時における洗浄部のタイミングチャートである。なお、図35は、初期使用を以前に実施した待機状態にある衛生洗浄装置で、洗浄動作を実施する場合のタイミングチャートを示している。
つまり、図35に示す通常使用時の洗浄部の制御は、洗浄操作が行なわれた時点P20でサブタンク600は既に満水状態である点と、制御部130が初期使用を実施したことを記憶している点で、図34に示す初期使用の洗浄部の制御の場合とは異なる。
つまり、図35に示すように、時点P20で、サブタンク600が満水状態の待機状態で、操作部210またはリモートコントローラ400の洗浄スイッチ(例えば、お尻洗浄スイッチ221または410)が操作される。これにより、制御部130は、止水電磁弁514に通電して洗浄水の供給を開始する。同時に、初期操作の制御を既に実施した記憶データに基づいて、熱交換器700の通電を開始する。そして、ノズル装置800の「前洗浄」動作を、同時に開始する。さらに、水位検知センサ620の駆動を、同時に開始する。
つまり、図34で説明した初期使用の場合と、通常使用の場合とは、洗浄操作をした時点から熱交換器700の通電開始の時点までの制御が異なる。しかし、ノズル装置800の駆動が開始される時点P5以降の制御および作用動作は同様であるので、説明を省略する。
上述したように、本実施の形態の衛生洗浄装置は、洗浄操作が行われてノズル部が収納位置にある状態で、水ポンプと熱交換器の駆動が開始される。その後、ノズル部を洗浄位置に進出移動して局部洗浄動作が実施される。その間、水ポンプと熱交換器とは連続して駆動される。そのため、ノズル部の移動中に、ノズル部および洗浄水の温度が低下することを抑制できる。これにより、洗浄位置において、お尻洗浄噴出口またはビデ洗浄噴出口から噴出される洗浄水を、噴出当初から十分に加熱して噴出することができる。その結果、快適な洗浄が得られる衛生洗浄装置を実現できる。
また、本実施の形態の衛生洗浄装置は、ノズルクリーニング流路からお尻洗浄流路またはビデ洗浄流路への切り替え時において、ノズルクリーニング流路とお尻洗浄流路またはビデ洗浄流路の両方の流路に洗浄水が併給される。そのため、切り替え時に洗浄水の流れを停止することがない。これにより、水ポンプや熱交換器に加わる負荷の急激な変化を抑制できる。その結果、洗浄水を安定した温度で維持できる。さらに、水ポンプや熱交換器などの流路部材の損傷を抑制できる。
また、洗浄水が併給される間、お尻洗浄ポートを流れる洗浄水は、絞部により送給される。これにより、切り替え時の流量を、より安定させることができる。その結果、洗浄水の温度を安定させるとともに、流路部材の損傷を、より確実に抑制できる。
また、本実施の形態の衛生洗浄装置は、サブタンクに設けた水位検知センサにより水位の変化を検知し、流量を演算により検出する。これにより、洗浄部に、流量を検知する専用の流量センサを別途設ける必要がない、その結果、洗浄部の構成を簡素化して、コスト削減を図ることができる。
また、本実施の形態の衛生洗浄装置は、水位検知における電極間の出力電圧の変化を判定する閾値を温度により補正する。これにより、水位検知と流量検知の精度を向上させ、広い範囲に導電率の異なる水を衛生洗浄装置の洗浄水として使用することが可能となる。その結果、衛生洗浄装置の使用範囲と使い勝手を、さらに向上することができる。
また、本実施の形態の衛生洗浄装置は、衛生洗浄装置の初期使用時において、サブタンクの満水状態を検知した後、所定時間通水を継続する。同時に、水ポンプの駆動後に、さらに水位検知センサが上限水位の検知が解消された後に熱交換器の通電を開始する。これにより、熱交換器の空焚きを防止できる。そのため、一般的に実施されている流量センサを使用した空焚きを防止する構成に比べて、シンプルな構成にできる。これにより、低コストで、高い安全性と信頼性を確保した衛生洗浄装置を実現できる。
なお、本実施の形態では、ノズル部はお尻洗浄噴出口とビデ洗浄噴出口とノズルクリーニング噴出口の3個の噴出口を備える構成を例に説明したが、これに限られない。例えば、4個以上の噴出口または2個以下の噴出口を備えた構成としてもよい。これにより、多くの洗浄機能を備えたノズル部、または専用の洗浄機能を備えたノズル部においても、同様な効果が得られる。その場合、それぞれの噴出口に連通する流路を備えればよい。
また、本実施の形態では、お尻洗浄噴出口とビデ洗浄噴出口とノズルクリーニング噴出口ごとに連通する流路をそれぞれ1本備える構成を例に説明したが、これに限られない。例えば、1個の噴出口に複数の流路が連通する構成としてもよい。これにより、洗浄水の噴出形態を変化させることが可能となり、洗浄効果を向上することができる。具体的には、お尻洗浄噴出口に直噴流路と旋回流路の2本の流路が連通する構成などを設けてもよい。
また、本実施の形態では、流調弁は停止ポートと、お尻洗浄流路に対応するお尻洗浄ポートと、ビデ洗浄流路に対応するビデ洗浄ポートと、ノズル洗浄流路に対応するノズルクリーニングポートとを備える構成を例に説明したが、これに限られない。例えば、上記のように流路の数が異なる場合、流路ごとに対応するポートを備える構成としてもよい。これにより、ノズル部が備える機能に適切に対応することができる。
また、本実施の形態では、流調弁のお尻洗浄ポートとビデ洗浄ポートにそれぞれ1個の絞部を備えた構成を例に説明したが、これに限られない。例えば、1個のポートのみ、または全てのポートに絞部を備えた構成としてもよい。また、1個のポートに対して1個の絞部を備える構成ではなく、1個のポートに2個の絞部を備える構成としてもよい。これにより、洗浄部を構成する部材の特性に応じて最適な効果を得ることができる。具体的には、ノズルクリーニングポートに2個の絞部を備えた構成などが考えられる。
以上で説明したように、本発明の衛生洗浄装置は、洗浄水を噴出する複数の噴出口と、噴出口に連通する複数の流路を備えたノズル部と、ノズル部を収納位置と複数の洗浄位置間を進退移動させるノズル駆動部と、複数の流路に選択的に洗浄水を供給する流調弁と、ノズル部に洗浄水を送給する水ポンプと、水ポンプの上流側にあって洗浄水を加熱する熱交換器と、操作部と、制御部と、を含む。複数の流路は、少なくとも、お尻洗浄噴出口に連通するお尻洗浄流路と、ビデ洗浄噴出口に連通するビデ洗浄流路と、ノズルクリーニング噴出口に連通するノズルクリーニング流路と、を備える。制御部は、操作部でお尻洗浄またはビデ洗浄の洗浄操作がなされた場合、水ポンプと熱交換器を駆動するとともに、流調弁でお尻洗浄流路とビデ洗浄流路とのいずれか一方を選択するように切り替え、選択した流路に熱交換器で加熱した温水を所定時間供給する。そして、所定時間経過後に、流調弁の選択をノズルクリーニング流路に切り替えるとともに、ノズル駆動部を駆動して、ノズル部を収納位置から洗浄位置に進出移動させる。さらに、制御部は、ノズル部が洗浄位置に到達した時点で、流調弁で、操作部で選択された洗浄操作に対応するお尻洗浄流路またはビデ洗浄流路に切り替える構成を備えてもよい。
この構成によれば、まず、洗浄操作がなされると、ノズル部が収納位置にある状態で水ポンプと熱交換器の駆動を開始する。そして、ノズル部が洗浄位置に進出移動して局部洗浄動作が実施される間、水ポンプと熱交換器を連続して駆動する。そのため、ノズル部の移動中にノズル部および洗浄水の温度の低下を抑制できる。同時に、出湯温度が不安定な熱交換器の通電直後の洗浄水を意図的に人体に当てず、ノズル部のクリーニング用の洗浄水として排出する。これにより、洗浄位置において、お尻洗浄噴出口またはビデ洗浄噴出口から噴出される洗浄水を、噴出当初から十分に加熱された安定した湯温で噴出できる。その結果、快適な洗浄を行える衛生洗浄装置を実現できる。
また、本発明の衛生洗浄装置の流調弁は、ノズルクリーニング流路と、お尻洗浄流路またはビデ洗浄流路との切り替え動作の途中において、ノズルクリーニング流路と、お尻洗浄流路またはビデ洗浄流路の両方に、同時に洗浄水を供給する併給機能を備えてもよい。
この構成によれば、流路の切り替え時において、流路抵抗の変化を緩和することができる。これにより、連続駆動する水ポンプおよび熱交換器に不用意な負荷が加わることを抑制して、流路の切り替えをスムーズに実施できる。その結果、洗浄水の加熱および送給を安定して実施できる。
また、本発明の衛生洗浄装置の流調弁は、少なくとも、お尻洗浄流路に洗浄水を供給するお尻洗浄ポートと、ビデ洗浄流路に洗浄水を供給するビデ洗浄ポートと、ノズルクリーニング流路に洗浄水を供給するノズルクリーニングポートと、洗浄水の供給を停止する停止ポートと、を含み。そして、少なくとも、お尻洗浄ポートと、ビデ洗浄ポートと、ノズルクリーニングポートの1つは、供給する洗浄水の流量を抑制する絞部を備えてもよい。
この構成によれば、ポートの切り替え時において、流調弁の流路抵抗の変化を緩和することができる。これにより、切り替え時の流量を、より安定させることができる。そのため、洗浄水の温度を安定させるとともに、流路部材の損傷を、より確実に抑制できる。