第1の発明の衛生洗浄装置は、便器に起倒自在に設置された便座と、便座を起倒自在に支持する本体と、本体に設けられ洗浄水を加熱する熱交換器と、本体に設けられ洗浄水を吐出する吐水部と、吐水部への水路を開閉する開閉弁と、制御部とを備え、制御部は、吐水部の吐出終了からの経過時間が、便器溜め水の蒸発量推定部による推定蒸発量が所定蒸発量に到達したと判定した際に、特定時間前記開閉弁を開け、吐水部から便器内に洗浄水を流す制御をするものである。
これによって、制御部は、便器溜め水の蒸発量を、吐水部の吐出終了時点から演算し、所定蒸発量に到達したと判定すると開閉弁を特定時間だけ開けるように作用し、吐水部から便器内に所定量の洗浄水が流入するので、便器ボール内の水がトラップ部の封水切れとなる低水位の溜水量に至らずに、下水配管からの臭いの逆流を防止することできる。
第2の発明は、特に第1の発明の制御部はトイレ室内の室温を検出する室温検出手段を備え、制御部の蒸発量推定部による推定蒸発量は、室温検出手段で検出される平均温度から春夏秋冬の季節を判断して推定されるものであってもよい。これにより、便器内の水の蒸発量が温度だけでなく季節に応じて変化する他の要素も含んで、より的確に推定できるので、電力や水の無駄使いを少なく、下水配管からの臭いの逆流を防止することできる。
第3の発明は、特に第1の発明の制御部は便座に便座温度センサを備え、制御部の蒸発量推定部による推定蒸発量は、便座温度センサの温度から春夏秋冬の季節を判断して推定されるものであってもよい。これにより、便器内の水の蒸発量が温度だけでなく季節に応じて変化する他の要素も含んで、より的確に推定できるので、電力や水の無駄使いを少なく、下水配管からの臭いの逆流を防止することできる。
第4の発明は、特に第1の発明の制御部は熱交換器に洗浄水温度センサを備え、制御部の蒸発量推定部による推定蒸発量は、洗浄水温度センサの温度から春夏秋冬の季節を判断して推定されるものであってもよい。これにより、便器内の水の蒸発量が温度だけでなく季節に応じて変化する他の要素も含んで、より的確に推定できるので、電力や水の無駄使いを少なく、下水配管からの臭いの逆流を防止することできる。
第5の発明は、特に第1の発明の制御部はトイレ室内の室温および湿度を検出する室温検出手段および湿度検出手段を備え、前記制御部の蒸発量推定部による推定蒸発量は、前記室温検出手段および湿度検出手段の検出値から推定されるものであってもよい。これにより、便器内の水の蒸発量が温度だけでなく温湿度に応じて変化する要素を含んで推定できるので、使用される国や地域、時期にかかわらず、電力や水の無駄使いを少なく、下水配管からの臭いの逆流を防止することできる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本実施の形態における衛生洗浄装置を便器上に設置した状態の外観の斜視図を示し、図2は衛生洗浄装置の本体の前本体ケースを取り外した状態の斜視図を示し、図3は衛生洗浄装置の本体の前本体ケースと制御部を取り外した状態の斜視図を示し、図4は衛生洗浄装置の操作部上面の斜視図を示し、図5はリモートコントローラの外観の斜視図を示すものである。
<1>衛生洗浄装置の全体構成
図1に示すように、衛生洗浄装置100は、本体200、便座300、便蓋320、リモートコントローラ400、人体検知センサ450を主構成部材として構成され、本体2
00と便座300と便蓋320は一体で構成され、便器110の上面に設置される。
なお、本実施の形態においては衛生洗浄装置100の本体200の設置側を後方、便座300の設置側を前方とし、前方に向かって右側を右方、前方に向かって左側を左方として各構成要素の配置を説明する。
本体200の側部には突出して操作部210が一体に設けられ、本体200の前部には、便座300および便蓋320が便座便蓋回動機構360を介して開閉自在に取り付けられている。便座便蓋回動機構360は直流モータと複数のギアで構成されており、便座300と便蓋320を個別または同時に開閉することができる。
図1に示すように便蓋320を開放した状態においては、便蓋320は衛生洗浄装置100の最後部に位置するように起立する。また、便蓋320を閉成すると便座300の上面を隠蔽する。便蓋320は樹脂材料の成型による部材で構成されており、二重構造と断熱材による断熱構造となっている。
便座300は着座面を加熱する便座ヒータ(図示せず)を備えており、便座の着座面が快適な温度になるように加熱する。また、便座300に備えられたサーミスタにてなる便座温度センサ(図示せず)からの信号によって、便座温度が快適に制御される。
また、便座300の回動軸を支持する本体200内の軸受け部分には便座300に着座した人体を検知する着座センサ330が設置されている。この着座センサは重量式の着座センサであり、便座300に使用者が着座することによる重量変化でスイッチを開閉させることにより、便座300の着座面に使用者が着座していることを検知するものである。
本体200には、サブタンク600、熱交換器700、ノズル装置800等が構成され、人体の局部を洗浄する洗浄ノズルであるお尻洗浄ノズル831と、便器内面に洗浄水を散布する吐水部550と、排便時の臭気を脱臭する脱臭装置120と、衛生洗浄装置100の各機能を制御する制御部130等が備えられている。
図2に示すように、本体200の内部の中央部には、洗浄手段500の主構成部材であるノズル装置800が設置されており、ノズル装置800の右側には吐水部550、ノズル装置800の左側には、脱臭装置120が設置されている。また左側部には便座300と便蓋320を開閉駆動する便座便蓋回動機構360が設置されている。
図3に示すように、ノズル装置800の右側には、前方に洗浄手段500の止水電磁弁514、サブタンク600等が設置されており、その後方には熱交換器700が設置されており、熱交換器700の後方には水ポンプ516が設置されている。また、図2に示すように洗浄手段500の上方には制御部130が設置されている。
本体200の右側部には前方に突出するように操作部210が一体に設けられており、図4に示すように、衛生洗浄装置100の各機能を操作および設定する複数のスイッチと表示灯240が設置されている。
操作部210の内部には操作基板(図示せず)が設置されている。操作基板には複数のタクトスイッチと複数のLEDが設置されており、操作部210の上面に貼付されたスイッチ銘板を介してタクトスイッチの押圧操作とLEDの視認が可能となっている。
また、操作部210の上面後方には、リモートコントローラ400と人体検知センサ450から送信される赤外線信号を受信する赤外線受信部211が配置されている。
操作部210に設置されたスイッチは、洗浄動作を操作する複数の操作スイッチ220と各種機能を設定する複数の設定スイッチ230が設置されている。また、表示灯240としては設定状態を表示する複数のLEDが設置されている。
操作スイッチ220としては、リモートコントローラ400の電池切れや、故障の場合に補助的に使用するお尻洗浄スイッチ221と、ノズルの掃除を行うときに操作するノズル掃除スイッチ222が設けられている。
設定スイッチ230としては、洗浄水の温度を設定する温水温度スイッチ231と、便座の温度を設定する便座温度スイッチ232と、設定されてから8時間に亘り便座300の保温を停止する8時間切りスイッチ233と、衛生洗浄装置100が使用されない時間帯を自動的に学習して、使用されない時間帯に便座300の保温温度を下げることにより節電を行う節電スイッチ234と、便座300および便蓋320の自動開閉動作を設定する便蓋自動開閉スイッチ235等が設置されている。
衛生洗浄装置100の多くの操作は、本体200とは別体で構成されたリモートコントローラ400で行われる。リモートコントローラ400は便座300に着座した使用者が操作のしやすいトイレルームの壁面等に取り付けられる。
図5に示すように、リモートコントローラ400の全体形状は薄い直方体に形成されており、樹脂材料で成形された箱状のリモコン本体401の上面と前面に複数のスイッチと表示灯が設置されている。また、リモコン本体401に上部角にはリモートコントローラ400の操作信号を本体200に赤外線で送信する送信部402が配置されている。
リモコン本体401の内部にはリモートコントローラ400の制御機能を構成する制御基板(図示せず)と、リモートコントローラ400の電源である電池(図示せず)が内蔵されている。
リモコン本体401の前面中央部には、お尻洗浄を開始するお尻洗浄スイッチ410と、女性の局部洗浄を洗浄するビデ洗浄を開始するビデ洗浄スイッチ411と、お尻洗浄とビデ洗浄を停止する停止スイッチ412と、お尻洗浄およびビデ洗浄時に洗浄位置を前後に周期的に移動させて広い範囲の洗浄が可能とするムーブ洗浄スイッチ413と、お尻洗浄時に洗浄強さを周期的に変化させるリズム洗浄スイッチ414が配置されている。
前面上部には、お尻洗浄およびビデ洗浄時の洗浄強さを2個のスイッチで調節する洗浄強さスイッチ415と、お尻洗浄およびビデ洗浄時の洗浄位置を2個のスイッチで調整する洗浄位置スイッチ416と、吐水部550から洗浄水を吐出して便器内面に散布する散布スイッチ417が配置されている。
また、洗浄強さスイッチ415の上方には、洗浄強さを5段階で表示するLEDの強さ表示灯421と、洗浄位置スイッチ416の上方には、洗浄位置を5段階で表示する位置表示灯422が配置されている。
リモコン本体401の上面には、便蓋を電動で開閉する便蓋スイッチ418と、便座を電動で開閉する便座スイッチ419が設置されており、スイッチ操作により使用者が任意に便座300と便蓋320を開閉できる構成となっている。
人体検知センサ450は本体200とは別体で構成されており、トイレルームの壁面等に取り付けられる。人体検知センサ450は、人体から放出される赤外線を受光する焦電
センサ(図示せず)と、焦電センサの信号で人体の検出を判定するセンサ制御部(図示せず)と、センサ制御部からの人体検知信号を本体200の制御部に赤外線で送信する赤外線送信部(図示せず)と、人体検知センサ450の電源である電池(図示せず)等で構成されている。
<2>衛生洗浄装置の水回路構成
図6は衛生洗浄装置の水回路構成を示す模式図である。
本体200の内部には使用者の局部を洗浄する洗浄手段500を有する。洗浄手段500は洗浄水を噴出するノズル装置800と、給水接続口510からノズル装置800に洗浄水を供給する一連の洗浄水供給流路とで形成されている。
図6に示すように、洗浄水供給流路は、給水接続口510と、ストレーナ511と、逆止弁512と、定流量弁513と、止水電磁弁514と、リリーフ弁515と、サブタンク600と、熱交換器700と、バッファタンク750と、水ポンプ516と、流調弁517と、が順次設置され、ノズル装置800に接続されている。
本体200の右側下方に水道管が接続される給水接続口510が配置されており、給水接続口510の内部には水道水に含まれるごみの流入を防止するストレーナ511と、サブタンク600内に貯溜された水が水道配管に逆流することを防止する逆止弁512が組み込まれている。
逆止弁512の下流には、流路に流れる洗浄水の量を一定に保つ定流量弁513と、流路を電動で開閉する止水電磁弁514と、リリーフ弁515とが一体に構成されている。
止水電磁弁514の下流には、大気解放口を備えたサブタンク600と、洗浄水を瞬時に加熱する熱交換器700と、熱交換器700で加熱された温水の温度を均一にするバッファタンク750が接続されている。
バッファタンク750の下流には、水ポンプ516が接続されている。水ポンプ516の下流には、流調弁517を介してノズル装置800が接続されており、流調弁517のそれぞれのポートにはノズル装置800のお尻洗浄ノズル831、ビデ洗浄ノズル832、ノズルクリーニング部833が接続されている。
洗浄水供給流路690の、水ポンプ516と流調弁517との間で分岐された分岐流路530は、逆止弁531を介して吐水部550が接続されている。
なお、図6の破線は、制御部130と電気接続されていることを示したものである。
図7および図8に示すように、洗浄手段500を構成する部材のうち、給水接続口510、ストレーナ511、逆止弁512、定流量弁513、止水電磁弁514、リリーフ弁515、サブタンク600、熱交換器700、バッファタンク750、水ポンプ516は樹脂材料で成型されたシャーシ501に組み込まれ一体的に構成され、本体200の後本体ケース201に組みつけられている。
図7に示すように、ストレーナ511と逆止弁512は給水接続口510に一体に組み込まれており、定流量弁513とリリーフ弁515とは止水電磁弁514に一体に組み込まれている。また、バッファタンク750は熱交換器700と一体に構成されている。
給水接続口510と止水電磁弁514、止水電磁弁514とサブタンク600、サブタ
ンク600と熱交換器700、とは接続チューブ等を介さず、相互の接続口をパッキンであるOリングを介して直接接続する構成となっている。また、これらの水回路を構成する部材はシャーシ501の所定の位置に設置固定されている。
このような構成を採用することにより、水密構造を向上することが可能になるとともに、相互の部材の配置精度を向上することができる。特にサブタンク600と熱交換器700の配置精度が向上することにより、洗浄水の流量の制御精度を向上することが可能となり、洗浄手段500の性能の向上と制御精度を向上することができる。
水ポンプ516は容積形ポンプであるピストンポンプであり、図14、図12に示すように、外形は略L字状をなしており、略円筒形のモータ部516aと、モータの回転運動を往復運動に変換するリンク機構部516bと、リンク機構部516bの往復運動で駆動されるピストン部516cで構成されている。ピストン部516cの外面には、接続口として吸水口516dと吐出口516eが設けられている。
上記構成の水ポンプ516を駆動させた場合、往復運動を伴うリンク機構部516bとピストン部516cに比べ、回転運動のみのモータ部516aでは発生する振動が少ない構成となっている。
モータ部516aを駆動することにより、ピストン部516cが往復運動を開始し、吸水口516dから洗浄水を吸引して、吐出口516eから洗浄水吐出する構成であり、吐出する洗浄水はピストン部516cの往復運動に伴い適度の脈動を伴った水流となる。
上記構成の水ポンプ516の略円柱形のモータ部516aの外周を、弾性を備えた発泡樹脂製の緩衝部材(図示せず)で包囲し、シャーシ501の後部に設けられた略円筒形の水ポンプ設置部501aに挿入することにより支持され、リンク機構部516bとピストン部516cは下方に垂れ下がるように懸架される。
水ポンプ設置部501aは薄い肉厚で形成されており、シャーシ501の底面から起立したリブ状の脚部501bの上部に形成されている。薄い肉厚で形成したことにより樹脂の弾性により水ポンプ516の振動を吸収する効果を得ることができる。
また、バッファタンク750が一体に形成された熱交換器700の接続口である出湯口712と水ポンプ516の接続口である吸水口516dとは軟質樹脂製の接続チューブで接続される。
上記のように、振動の少ないモータ部516aが緩衝部材を介して、シャーシ501の薄い肉厚で形成された水ポンプ設置部501aに設置され、振動を多く発生するリンク機構部516bとピストン部516cとはフリーな状態で懸架され、しかもバッファタンク750とは軟質樹脂製の接続チューブ502で接続されることにより、水ポンプ516の駆動時に発生する振動をシャーシ501や他の部材、また本体200に伝わること抑制することが可能となり、衛生洗浄装置の快適性と耐久性を向上する効果を得ることができる。
特に水ポンプ516は、発泡樹脂製の緩衝部材と水ポンプ設置部501aを形成する弾性を備えた樹脂との2つの異なる材質を介して支持されることにより、広い範囲の周波数の振動が吸収され、本体への振動の伝達を効果的に抑制することができる。
<3>サブタンクの構成
図9はサブタンクの外観を示す斜視図を示すものであり、図10はサブタンクの横方向
の断面図を示し、図11はサブタンクの前後方向の断面図を示すものである。
図9に示すように、サブタンク600は樹脂材料により成型されたタンク本体610と、タンク本体610に貯溜された洗浄水の水位を検知する水位検知センサ620と、タンク本体610内に供給される洗浄水の温度を検知する水温検知手段であるサーミスタからなる入水温度センサ630とで構成されている。
タンク本体610はタンクの前壁、両側壁、底面、天面を構成する前部タンク611と、タンクの後壁を構成する後部タンク612と、タンク本体610の天面に配置された大気開放部613と、の3個の部材で構成されている。タンク本体610の全体的な形状は、前壁、後壁、両側壁、底面、天面からなる複数の平面で形成されており、平面視形状は略四角形である。前壁は途中から後退する傾斜部を備え、側面視形状は下部より上部が細くなった略台形形状に形成されており、タンク本体610の上部の断面積は下部より小さい断面積となっている。
タンク本体610の一方の側壁下部には入水口601が、タンク本体610後壁下部には出水口602が設けられており、タンク本体610の天面に配置された大気開放部613にはタンク本体610の内部と外部を連通する大気開放口603が設けられている。大気開放口603を設けることにより、タンク本体610内に溜まった空気を外部に放出するとともに、タンク本体610の内部圧力を常時大気圧に維持することができる。
サブタンク600の内部が常時大気圧に維持されることにより、サブタンク600の下流から水ポンプ516の吸水口516dまでの流路も大気圧に維持されるため、水ポンプ516は水圧変動の影響を受けずに給水することができるため、安定したポンプ機能を発揮することができる。
大気開放部613の大気開放口603に連通する流路には、流路の断面積が大きいバッファ部613aが形成されており、大気開放口603から気泡に伴って洗浄水が衝撃的に流出しようとした場合等に、洗浄水が一旦、バッファ部613aに貯溜されることにより、大気開放口603からの流出を抑制する機能を備えている。
タンク本体610の内部には仕切壁614が設けられており、仕切壁614によりタンク本体610の内部は入水槽615と貯溜槽616の2つの槽に分割されている。入水槽615の側面の底面近傍には入水口601が、貯溜槽616の後壁の底面近傍には出水口602が設けられている。
仕切壁614を設け、入水槽615と貯溜槽616を形成することにより、入水口601から流入した洗浄水に空気が含まれている場合、空気は入水槽615の上部より、大気開放口603を通過して外部に放出されるため、貯溜槽616には空気を含まない洗浄水のみを流入させることができる。
入水槽615の上方には、入水槽615の上面開口部615aと大気開放部613の間に介在し、タンク本体610の側壁より略水平方向に突出した障壁617が設けられている。障壁617は入水槽615の上面開口部の全面を覆う大きさとなっている。
また、入水槽615の内部には、タンク本体610の側壁と仕切壁614には、略水平方向に交互に突出した複数の整流リブ618が形成されている。
入水口601から流入した洗浄水は、まず入水槽615の下部に流入し、整流リブ618で流れの方向を変化させながら入水槽615内を上昇する。このとき入水口601から
流入する洗浄水の圧力が高い場合、あるいは大量の空気を含んで著しく流れが乱れている場合は整流リブ618により、流れが適度に整流化されるとともに、整流リブ618の下流側で発生する渦により洗浄水内に含まれる空気が分離される。
入水槽615内を上昇した空気が分離された洗浄水は、仕切壁614の上端を乗り越えて貯溜槽616に流入して貯溜される。
このとき、入水口601から流入する洗浄水の圧力が高い場合、あるいは大量の空気を含んで著しく流れが乱れている場合でも、洗浄水は障壁617により上方への流れが抑制され、洗浄水が大気開放部613に直接当たり、大気開放口603よりサブタンク600の外部に流出することが防止される。
上記のように、入水口601から流入した洗浄水は入水槽615内を上昇する間に洗浄水に含まれる空気が分離され、分離された空気は大気開放口603よりタンク本体610外に放出される。貯溜槽616には空気を含まない洗浄水が貯溜され、出水口602より熱交換器700に供給される。
サブタンク600より熱交換器700に供給される洗浄水に空気が混入していた場合、熱交換器700の内部に気泡が発生することにより熱交換器700の内部の温度が異常上昇し、熱交換器700が損傷することがあり、仕切壁614を設け、空気の混入を防止することにより、熱交換器700の損傷を防止する効果を得ることができる。
水位検知センサ620は、共通の電極となるコモン電極621と、水位毎に設置された複数の水位電極622で構成されており、本実施の形態においては1個のコモン電極621と2個の水位電極622で構成されている。
タンク本体610の前壁下部の内面にはコモン電極621が配置されており、タンク本体610の後壁の内面には水位電極622が配置されている。水位電極622は上部に設けられた上限電極623と、下部に設けられた下限電極624で構成されている。コモン電極621は下限電極624より低い位置に設置されており、コモン電極621は通常の使用状態では常に浸水状態となっている。
コモン電極621と、水位電極622である上限電極623および下限電極624とを異なる面に設置したことにより、タンク本体610の内面に付着した残水を貯溜水として誤検知することを抑制する効果を得ることができる。
水位の検知は、コモン電極621と水位電極622との間に直流電圧を印加し、水位電極622が浸水しているか否かにより電圧が変化することにより水位を検知する。すなわち、貯溜槽616に洗浄水が流入して水位が上昇し、下限電極624および上限電極623が浸水すると、コモン電極621と下限電極624および上限電極623間の電圧が低下することにより制御部130は水位を検知する。
上限電極623は上限水位の検知に使用され、下限電極624は下限水位の検知に使用される。上限電極623は大気開放口603より低い位置に設置されており、これにより、大気開放口603から洗浄水が流出することを防止することができる。また、下限電極624は出水口602より上方に設置されており、これにより、熱交換器700に空気が流入することを防止することができる。
<4>熱交換器の構成
図12は熱交換器の外観を示す斜視図であり、図13は熱交換器の断面図を示すもので
ある。
本実施の形態における熱交換器700はバッファタンク750が一体に形成されており、熱交換器700の上部にバッファタンク750が設置されている。
図12に示すように、熱交換器700は正面視で略長方形の平板状をなし、ABS樹脂にガラス繊維をコンパウンドした強化ABS樹脂で成型されたケーシング701とセラミック製の平板状ヒータ702と出湯部材703とを主構成部材としている。
ケーシング701は前面部を構成する前面部材710と、背面部構成する背面部材720で構成されており、前面部材710と背面部材720との間に形成される空間に平板状ヒータ702が設置されている。前面部材710と平板状ヒータ702との対向部と、背面部材720と平板状ヒータ702との対向部に形成された隙間を加熱流路715とし、加熱流路715を流れる洗浄水を平板状ヒータ702で瞬時に昇温させるものである。
熱交換器700は、前面部材710の前面下端の右側に接続口である入水口711を備えており、前面部材710の右側面上端に設置された出湯部材703には接続口である出湯口712を備えている。
図13に示すように、入水口711に連なる入水流路713がケーシング701の下端部の略全幅に亘り設けられている。入水流路713の上面には全幅に亘り複数のスリット714が設けられており、入水流路713に流入した洗浄水はスリット714を通過して加熱流路715へ流入する構成となっている。スリット714は洗浄水を加熱流路715の全幅に亘り均等に流入させるものである。
加熱流路715の上端部には仕切リブ716が設けられており、仕切リブ716より上方がバッファタンク750となっている。仕切リブ716には略全幅に亘り複数の通水孔717が設けられており、加熱流路715で加熱された洗浄水は通水孔717を通過してバッファタンク750内に流入する構成となっている。
バッファタンク750内には断面形状が略半円形の突起718が略全幅に亘り間隔をあけて設けられている。バッファタンク750内を出湯口712に向かって流れる洗浄水は、突起718による流れが乱されることにより、洗浄水が混ざり合って洗浄水の温度斑が解消され、均一な温度の洗浄水が出湯口712より出湯される。
出湯部材703には2個のサーミスタが設置されており、一方は洗浄水の出湯温度を検知する出湯温度センサ730であり、他方は熱交換器700の過昇温度を検知する過昇温度センサ731である。
<5>ノズル装置の構成
図16は本実施の形態におけるノズル装置の収納状態を示す斜視図であり、図17は図16に示すAA断面図であり、図18はノズル装置の収納状態を示す縦断面図であり、図19は図18に示すB部の詳細断面図であり、図20は図19に示すCC断面図であり、図21はノズル装置の収納状態の横断面図であり、図22は図21に示すC部の詳細断面図であり、図23はノズル装置のお尻洗浄状態を示す縦断面図であり、図24は図23に示すD部の詳細断面図であり、図25はノズル装置のビデ洗浄状態を示す縦断面図であり、図26は図25に示すE部の詳細断面図であり、図27はノズル装置のビデ洗浄状態を示すノズル部の横断面図であり、図28は図27に示すG部の詳細断面図である。
ノズル装置800は、図16に示すように、樹脂材料で成型した略三角形の枠状の支持
部810と、支持部810に沿って進退移動するノズル部820と、ノズル部820の進退移動を駆動する駆動部860と、ノズル部820への洗浄水の供給を切り替える流調弁517で構成されている。
なお、本実施の形態においてはノズル部の収納方向を後方とし、ノズル部820の進出方向を前方とし、後方より前方に向かって右側を右方、左側を左方として各構成要素の配置を説明する。
支持部810は側面視略三角形の枠状に形成されており、略水平な底辺部811に対し、後部より前部に向かって降下した傾斜部812と、底辺部811と傾斜部812の後端を接合する縦辺部813が形成されている。傾斜部812にはノズル部820の進退移動を案内するガイドレール814と駆動部860の可撓ラック861を案内するラックガイド815が略全長に亘って形成されている。また傾斜部812の前端下方にはノズル部820を抱囲するように支持する略円筒形の抱持部816が一体に形成されている。
図16に示すように、ノズル部820を案内するガイドレール814は断面が略T字状に形成されている。また、可撓ラック861を案内するラックガイド815は断面が一方の側面が開放された略コの字状を成しており、可撓ラック861の上下面と一方の側面を規制して案内する構成となっている。
ラックガイド815は傾斜部812に続いて支持部810の後部の縦辺部813と底辺部811にも連続して形成されており、傾斜部812と縦辺部813および縦辺部813と底辺部811とのコーナは円弧形状で接続されている。縦辺部813と底辺部811に形成されたラックガイド815の断面形状も略コの字状であるが、開放された側面は傾斜部においては左側であるのに対し、縦辺部813と底辺部811とは反対の右側面となっている。縦辺部813と底辺部811のラックガイド815の開放面は別部材の支持部蓋により閉塞されている。
ノズル部820をガイドレール814に沿って進退移動させる駆動部860は、ノズル部820に結合された可撓ラック861と、可撓ラック861と噛合するピニオンギア862と、ピニオンギア862を回転駆動する駆動モータ863で構成されている。
駆動モータ863はステッピングモータであり、パルス信号により回転角度が制御される。駆動モータ863が回転することによりピニオンギア862を介して可撓ラック861が駆動される構成となっている。
支持部810の抱持部816の内周面とノズル部820の外周面との間には間隙が設けられており、ノズル部820から噴出した洗浄水が抱持部816の内周面とノズル部820の外周面との間に形成される間隙に流入してノズル部820外周面を洗浄する構成となっている。
また、抱持部816の前方にはノズル部820の進退により開閉するノズル蓋801が開閉自在に設けられており、ノズル部820が収納されている状態で閉塞することにより、ノズル部820が便等で汚染されることを防止する構成となっている。
支持部810の底辺部811には、洗浄水供給手段に接続する給水チューブ(図示せず)と支持部810から流調弁517に洗浄水を供給する接続チューブ802とを相互に接続する給水継手817が形成されている。
ノズル部820は、樹脂材料で成型された棒状のノズル本体830と、ノズル本体83
0の略全体を覆う筒状のノズルカバー840と、ノズル本体830でノズルカバー840を牽引する連結手段850とで構成されている。
ノズル本体830は、局部を洗浄するお尻洗浄ノズル831と、女性の局部を洗浄するビデ洗浄ノズル832と、ノズル部820をクリーニングするノズルクリーニング部833を備えている。
お尻洗浄ノズル831は、ノズル本体830の先端部に上方に開口したお尻洗浄噴出口834と、ノズル本体830の後端よりお尻洗浄噴出口834に連通するお尻洗浄流路835で構成されている。お尻洗浄流路835はノズル本体830の下部に設置されており、お尻洗浄噴出口834の下方で上方に向かって屈曲しており、屈曲部には洗浄水の流れを整流する整流板835aが設置されている。お尻洗浄噴出口834から噴出した洗浄水はノズルカバー840の噴出開口844を通過して上方に向かって噴出される。
ビデ洗浄ノズル832は、お尻洗浄噴出口834の後方に配置されたビデ洗浄噴出口836と、ノズル本体830の後端よりビデ洗浄噴出口836に連通するビデ洗浄流路837で構成されている。ビデ洗浄噴出口836から噴出した洗浄水はノズルカバー840の噴出開口844を通過して上方に向かって噴出される。
ノズルクリーニング部833は、ノズル本体830の側面に配置されたノズルクリーニング噴出口838と、ノズル本体830の後端よりノズルクリーニング噴出口838に連通するノズルクリーニング流路839で構成されている。ノズルクリーニング噴出口838から噴出した洗浄水はノズルカバー840の内部に噴出され、ノズルカバー840排水口845からノズルカバー840の外部に放出される。ノズルクリーニング噴出口838から噴出した洗浄水はノズル部820とその周辺の清掃に使用される。
ノズル部820は、前方を支持部810の抱持部816に挿入した状態で支持され、後部をガイドレール814に懸架された状態で摺動自在に設置されており、図16に示すように、ノズル部820を抱持部816より後方に収容された収納位置と、図23に示すように、ノズル部820が抱持部816より突出したお尻洗浄位置と、図25に示すビデ洗浄位置との間を進退可能となっている。
ノズルカバー840はノズルカバー本体841と連結部材842とで構成されている。ノズルカバー本体841はステンレスの薄板を円筒状に形成したものであり、先端面は閉塞面をなし、後端面は開放面となっている。連結部材842は樹脂材料で成型された略円筒状であり、両側部にはノズル本体830と係合する連結片843が形成されている。
また、連結部材842の後端右側には、ノズルカバー840の摺動範囲を規制するノズルカバーストッパが一体に形成されており、支持部810に形成された前ストッパ受部と後ストッパ受部に当接することにより摺動範囲が規制される構成となっている。
連結部材842の一部はノズルカバー本体841の後端の開口よりノズルカバー本体841内に挿入された状態で固定され一体化された構成となっている。ノズルカバー本体841の前方上面には、ノズル本体830のお尻洗浄噴出口834とビデ洗浄噴出口836が対向可能な噴出開口844が1個設けられている。また、ノズルカバー本体841の前方下面にはノズルカバー本体841内に流出した洗浄水を外部に排出する排水口845が設けられている。
ノズルカバー840の内径はノズル本体830の外径より僅かに大きい寸法であり、ノズルカバー840にノズル本体830を挿入した状態で、ノズル本体830とノズルカバ
ー840が互いにスムーズに摺動可能な寸法関係となっている。
ノズル本体830の後端面には流調弁517が設置されている。流調弁517はディスクタイプの弁本体517aと切り替え動作を駆動するステッピングモータ517bで構成されている。流調弁517はお尻洗浄流路835と、ビデ洗浄流路837と、ノズルクリーニング流路839に選択的に洗浄水を供給するものである。
また、流調弁517の弁本体517aの外面には流調弁517に洗浄水を供給する給水口517c設置されており、給水口517cには支持部810の給水継手817と連通する接続チューブ802が接合されている。
次に、ノズルカバー840の連結部材842とノズル本体830の連結受部851で構成される連結手段850について説明する。
図22、図28に示すように、ノズル本体830の後端部の外周右側には連結受部851が形成されている。連結受部851は2本の略V字型の溝が形成されており、前方の前凹陥部851aと後方の後凹陥部851bが前後に間隔をあけて2本配置されている。前凹陥部851aと後凹陥部851bの間隔はお尻洗浄噴出口834とビデ洗浄噴出口836の間隔と等しい寸法となっている。
一方、ノズルカバー840の連結部材842は、略円筒状の樹脂材料で成型され、後部両側部は後方に突出した連結片843が形成されており、連結片843の後端部には内方に突出した略V字形状の連結突起843aが形成されている。
ノズル本体830をノズルカバー840に挿入した状態においては、ノズルカバー840の連結部材842の弾性により、連結突起843aがノズル本体830の連結受部851に常時押し当てられた状態となり、連結突起843aが前凹陥部851a内または後凹陥部851bに係合した状態では、ノズル本体830とノズルカバー840が連結された状態となり、ノズルカバー840はノズル本体830に牽引されて移動することが可能となる。
図22に示すように、連結突起843aが前凹陥部851aに入り込んでいる状態では、図26に示すように、ノズル本体830のビデ洗浄噴出口836とノズルカバー840の噴出開口844が対向した状態となり、図28に示すように、連結突起843aが後凹陥部851bに入り込んでいる状態では、図19、図24に示すように、お尻洗浄噴出口834と噴出開口844が対向した状態となる。
<6>洗浄手段の制御と作用動作
図29は初期使用時における洗浄手段のタイムチャートを示し、図30は通常使用時における洗浄手段のタイムチャートを示すものである。
洗浄手段500の基本的な作用動作としては、水道配管を流れる水道水が、洗浄水として給水接続口510から供給され、止水電磁弁514が開放されることによりサブタンク600へ洗浄水が送給される。流路内を流れる洗浄水の流量は定流量弁513により一定に維持される。止水電磁弁514の駆動は、リモートコントローラ400および操作部210の操作に基づき制御部130により制御される。
サブタンク600に送給された洗浄水はサブタンク600内に貯溜されるとともに、熱交換器700および水ポンプ516に送給される。水ポンプ516が駆動されることにより洗浄水は流調弁517を介してノズル装置800に送給される。水ポンプ516の駆動
はリモートコントローラ400および操作部210の操作に基づき制御部130により制御される。制御部130は水ポンプ516を駆動するとともに、熱交換器700の平板状ヒータ702への通電を開始し、洗浄水の加熱を開始する。
制御部130は入水温度センサ630と出湯温度センサ730の検知情報により、平板状ヒータ702への通電を制御し、洗浄水を操作部210の温水温度スイッチ231で設定された温度を維持する。
制御部130は操作部210およびリモートコントローラ400の操作情報に基づき流調弁517を制御して、ノズル装置800のお尻洗浄ノズル831、ビデ洗浄ノズル832、ノズルクリーニング部833のいずれかに洗浄水を供給する。これにより、お尻洗浄噴出口834、ビデ洗浄噴出口836、ノズルクリーニング噴出口838のいずれかの噴出口から洗浄水が噴出する。
次に、本実施の形態の特徴的な構成であるサブタンク600に関わる制御、特に水位検知と流量検知について詳細を説明する。
図29は衛生洗浄装置の設置後に初めて使用する場合、あるいは凍結防止のため水抜き操作を実施した後の再使用の場合等、洗浄手段に洗浄水が貯溜されておらない初期使用時における洗浄手段の各機能のタイムチャートを示すものである。
操作部210またはリモートコントローラ400の洗浄スイッチ(例えば、お尻洗浄スイッチ221または410)が操作された時点P1で、制御部130は止水電磁弁514に通電を開始して洗浄水の供給を開始する、これと同時に水位検知センサ620の駆動を開始する。水位検知センサ620の駆動はお尻洗浄の停止P7まで継続される。
水位検知センサ620が上限水位をP2で検知すると、制御部は時間計測を開始し、所定時間経過した時点P3に止水電磁弁514の通電を停止して洗浄水の供給を停止する。本実施の形態においては、上限水位検知の2秒後に通電を停止する。
上限水位を検知した時点P2で、基本的にはサブタンク600と熱交換器700は満水状態になっているが、2秒間余分に送給を継続することにより、熱交換器700と水ポンプ516により確実に洗浄水を充満させる。
これにより、熱交換器700内の空気の排除と洗浄水を確実に満水状態とすることができるので、熱交換器700の空焚きを確実に防止することができ、安全性と耐久性を向上することができる。また、水ポンプ516へ洗浄水を確実に送給して満水状態とすることにより、水ポンプ516の送水機能を確実に起動させることができる。
制御部130は、止水電磁弁514の通電を停止した時点P3で、水ポンプ516の駆動を開始するとともに、流調弁517を作動させてノズル部820のお尻洗浄流路835に洗浄水の供給を開始する。
水ポンプ516を駆動することにより、サブタンク600の水位は低下し、水位検知センサ620が上限水位の検知が解消した時点P4で、制御部130は熱交換器700の駆動を開始する。水位の低下を検知することにより、水ポンプ516が正常に作動していることを確認し、熱交換器700の異常温度上昇等を防止することができる。
お尻洗浄流路835に供給された洗浄水はお尻洗浄噴出口834より噴出する。噴出した洗浄水は噴出開口844を通過して支持部810の先端に設けられた抱持部816の内
面にあたって反射しノズルカバー840の外面をクリーニングする。このクリーニング動作を前洗浄と称する。前洗浄は熱交換器700の出湯温度が25℃に到達してから2秒後の時点P5まで継続される。
時点P5で前洗浄が終了すると、制御部130はノズル装置800の駆動部860の駆動を開始し、ノズル部820を収納位置からお尻洗浄位置へと進出させる。収納位置からお尻洗浄位置への移動の間は、流調弁517を切替えて、ノズルクリーニング流路839に洗浄水を供給する。ノズルクリーニング流路839に供給された洗浄水はノズルクリーニング噴出口838よりノズルカバー840の内部に噴出し、噴出した洗浄水はノズルカバー840の内面を洗浄した後に排水口845よりノズルカバー840の外部に流出する。その間、ノズル部820は洗浄水により温められ、後に実施されるお尻洗浄時に冷水が噴出して不快を感じることを抑制することができる。
ノズル部820がお尻洗浄位置に到達した時点P6で、制御部130は流調弁517を切替えてお尻洗浄流路835に洗浄水の供給を開始する。お尻洗浄流路835に供給された洗浄水はお尻洗浄噴出口834より噴出し、噴出開口844を通過して使用者の局部を洗浄する。お尻洗浄の動作は洗浄停止の操作が行われる時点P11まで継続される。
熱交換器700の駆動中は、制御部130は入水温度センサ630と出湯温度センサ730の検知データにより、洗浄水を設定された温度に制御する。
水ポンプ516の駆動が継続されることにより、サブタンク600の水位は低下し、水位検知センサ620が下限水位を検知した時点P7で制御部130は止水電磁弁514に通電を開始し、水位検知センサ620が上限水位を検知する時点P8まで通電を継続する。
上限水位を検知した時点P8で、制御部130は止水電磁弁514の通電を停止するとともに時間計測を開始し、次に水位検知センサ620が下限水位を検知する時点P9までの経過時間を計測する。下限水位を検知した時点P9で、制御部130は計測した経過時間と上限水位から下限水位までの水量(65cc)とを演算することにより流量を算出する。演算終了時点P10で、洗浄強さ毎に設定された流量と差がある場合は、水ポンプ516の出力を調整し、洗浄水の流量を補正する。
操作部210またはリモートコントローラ400の洗浄停止の操作が行われた時点P11で、水ポンプ516と熱交換器700の通電は停止されるとともに、ノズル装置800が駆動部860の駆動が開始され、ノズル部820がお尻洗浄位置から収納位置へと後退する。
ノズル部820が収納位置に後退した時点P12でノズル装置800の駆動部860の駆動が停止するとともに、水ポンプ516と熱交換器700が再度駆動され、ノズル部820をクリーニングする後洗浄が開始され、所定時間経過した時点P13で水ポンプ516と熱交換器700の駆動が停止され、後洗浄が終了する。
ノズル部820の後洗浄が終了した時点P13で止水電磁弁514が再度通電され、サブタンク600に洗浄水が供給され、上限水位が検知された時点P14で止水電磁弁514の通電が停止され、お尻洗浄の一連の制御が終了し、サブタンク600が上限水位の状態で洗浄手段は待機状態となる。
図30は初期使用を以前に実施した待機状態にある衛生洗浄装置で、洗浄動作を実施した場合の通常使用時のタイムチャートを示すものである。
図29に示す初期使用の場合と大きく異なるのは、洗浄操作がなされた時点P20でサブタンク600は既に満水状態である点と、制御部130が初期使用を実施したことを記憶している点である。
図30に示すように、サブタンク600が満水状態の待機状態で、操作部210またはリモートコントローラ400の洗浄スイッチ(例えば、お尻洗浄スイッチ221または410)が操作された時点P20において、制御部130は、止水電磁弁514の通電を開始して洗浄水の供給を開始するとともに、初期操作の制御を既に実施した記憶データに基づき熱交換器700の通電を同時に開始する。また、ノズル装置800の前洗浄動作を同時に開始する。また、水位検知センサ620の駆動を同時に開始する。
前述した初期使用の場合とは、洗浄操作をした時点から熱交換器700の通電開始の時点までの制御が異なっており、ノズル装置800の駆動が開始される時点P5以降の制御および作用動作は同様である。
上記のように、本実施の形態における衛生洗浄装置は、洗浄手段の構成において、流量を検知する専用の流量センサを別途設けることなく、サブタンクに設けた水位検知センサにより水位の変化を検知し、流量を演算により検出する構成としたことにより、洗浄手段の構成を簡素化することができるとともに、コスト削減を図ることができる。
また、水位検知における電極間の出力電圧変化を判定する閾値を温度により補正することにより、水位検知と流量検知の精度を向上することができるとともに、広い範囲に導電率の異なる水を衛生洗浄装置の洗浄水として使用することが可能となることにより、衛生洗浄装置の使用範囲と使い勝手を向上することができる。
また、衛生洗浄装置の初期使用時において、サブタンクの満水状態検知後に所定時間通水を継続するとともに、水ポンプ駆動後に水位検知センサが上限水位の検知が解消された後に熱交換器の通電を開始することにより熱交換器の空焚きを防止することができ、一般的に実施されている流量センサを使用した空焚きを防止の手段より、シンプルな構成で低コストであり、安全性と信頼性を確保することができる。
<7>吐水部の制御と作用動作
図31、図32は本実施の形態1における衛生洗浄装置を便器に設置した状態の縦断面図を模式的に示したもので、排便後に便器ボール(便鉢)に水が流され便器洗浄されると、便器ボール内の水面いわゆる喫水面60は図31のように、トラップ部の封水水位以上に溜水がある状態となる。
もしも長期間不在等で、便器ボールに全く水が補充されなかった場合、便器ボール内の水が徐々に自然蒸発して、図32のように喫水面60がトラップ部の封水水位以下に下がり、下水配管内の臭いが排水接続管16側からトイレに逆流して悪臭がすることになる。
図33は、本実施の形態1の衛生洗浄装置の制御部における制御動作の一例を示すフローチャートであり、図34は、便器溜め水の蒸発量の一例を示すグラフである。
本実施の形態1における衛生洗浄装置は、トイレ室内の室温を検出する室温検出手段(サーミスタ203)を備えており、制御部130は、図33のフローチャートに示すようにS1〜S6において室温データをサンプリングし、S7で春夏秋冬の季節が判定される。
S7での季節判定に応じて、S8、S9、S10において便器溜め水の蒸発量が演算される。そしてS11において、制御部130の蒸発量推定部(図示せず)によって、吐水部550の吐出終了からの経過時間による推定蒸発量が、所定蒸発量に到達したと判定されるとS12に進み、便器ボール(便鉢)に水を落とす処理すなわち開閉弁である止水電磁弁514を開け、便器ボール内の喫水面60が図31のようにトラップ部の封水水位以上に溜水がある状態となる特定時間、吐水部550から便器内に洗浄水を流す制御が行われる。この吐水部550からの吐出が終了するとS2〜S11において蓄積された経過時間,平均室温,蒸発量などの各データはクリアされてS2に戻る。
したがって、長期不在等で再び便器内の水が蒸発してS11で所定蒸発量に到達したと判定されると、再びS12に進み、便器ボール(便鉢)に水を落とす処理すなわち開閉弁である止水電磁弁514を開け、便器ボール内の喫水面60が図31のようにトラップ部の封水水位以上に溜水がある状態となる特定時間、吐水部550から便器内に洗浄水を流す制御が行われる。
なお、この特定時間は、吐水部550から便器内に吐出する単位時間当りの吐出流量の設定によるが、便器に補充される水量が便器ボール内の喫水面60が図31のようにトラップ部の封水水位以上に溜水されるのに十分な時間を意味する。
また特定時間は、洗浄水供給流路690を流れる洗浄水の流量を検出できる流量検出手段(例えば流量センサ)を備えている衛生洗浄装置の場合、便器に補充される水量が便器ボール内の喫水面60が図31のようにトラップ部の封水水位以上に溜水されるのに十分な流量である特定流量にしてもよい。
このように、長期間、不在にする場合があっても、便器ボール内の水が蒸発してトラップ部の封水切れとなる低水位の溜水量になる前に、本体200から便器ボール内に水を供給することができるので、下水配管からの臭いの逆流を防止することができる。
なお、本実施の形態においては、トイレ室内の室温を検出する室温検出手段であるサーミスタ203によって室温をサンプリングして、S5に示したように24時間毎に平均室温を算出し、その平均室温が夏に相当する温度なのか、または春秋に相当する温度か、あるいは冬に相当する温度なのかの3種類に判別して、実験値によって得た図34に示すような各季節を代表する経過時間と蒸発量のグラフデータに基づいて、S8、S9、S10において便器溜め水の蒸発量が演算される。図34は、便器ボール内の水が蒸発してトラップ部の封水切れにならないように設定された所定蒸発量(Le)に到達する経過時間が、夏に相当する温度ではTs、春秋に相当する温度ではTm、冬に相当する温度ではTwであることを表している。
本実施の形態では、平均室温を算出するのを24時間毎としたが、これに限られるものではなく、例えば48時間毎,72時間毎などであってもよい。
また、本実施の形態では、蒸発量を演算する際に平均室温を3種類に判別したが、必ずしも3種類に判別することに限られるものではなく、例えば平均温度領域を6種類や12種類などに判別して、蒸発量を演算するものであってもよい。
また、本実施の形態では、トイレ室内の室温を検出する室温検出手段として、サーミスタ203を本体200に設けたが、便座300の温度を検出する便座温度センサ(図示せず)の温度信号から春夏秋冬の季節を判断して、便器ボール内の水の蒸発量を演算してもよい。例えば、衛生洗浄装置100が使用されない時間帯を自動的に学習して、使用されない時間帯に便座300の便座ヒータ(図示せず)に通電しないことが可能であり、このように便座ヒータ(図示せず)に通電していないときに、便座温度センサ(図示せず)の
温度信号から、図33で説明したのと同様に平均室温として算出して、春夏秋冬の季節を判断して便器ボール内の水の蒸発量を演算することができる。これにより、トイレ室内の室温を検出する室温検出手段として、サーミスタ203を本体200に特別に設けなくてもよい。
また、本実施の形態では、トイレ室内の室温を検出する室温検出手段として、サーミスタ203を本体200に設けたが、洗浄水の温度を検知する洗浄水温度センサである入水温度センサ630または、同じく洗浄水の温度を検知する洗浄水温度センサである熱交換器700出湯温度を検知する出湯温度センサ730の温度信号から春夏秋冬の季節を判断して、便器ボール内の水の蒸発量を演算してもよい。例えば、衛生洗浄装置100が使用されない時間帯は、洗浄水温度センサである入水温度センサ630または出湯温度センサ730は室温に近い温度になるので、使用されない時間帯に洗浄水温度センサである入水温度センサ630または出湯温度センサ730の温度信号から、図33で説明したのと同様に平均室温として算出して、春夏秋冬の季節を判断して便器ボール内の水の蒸発量を演算することができる。これにより、トイレ室内の室温を検出する室温検出手段として、サーミスタ203を本体200に特別に設けなくてもよい。
以上のように、実施の形態1における衛生洗浄装置は、便器110に起倒自在に設置された便座300と、便座300を起倒自在に支持する本体200と、本体200に設けられ洗浄水を加熱する熱交換器700と、本体200に設けられ洗浄水を吐出する吐水部550と、吐水部550への水路を開閉する開閉弁514と、制御部130とを備え、制御部130は、吐水部550の吐出終了からの経過時間が、便器溜め水の蒸発量推定部による推定蒸発量が所定蒸発量に到達したと判定した際に、特定時間、前記開閉弁514を開け、吐水部550から便器内に洗浄水を流す制御をすることによって、制御部130は、便器溜め水の蒸発量を、吐水部550の吐出終了時点から演算し、所定蒸発量に到達したと判定すると開閉弁514を特定時間だけ開けるように作用し、吐水部550から便器内に所定量の洗浄水が流入するので、長期間、不在にする場合があっても、便器ボール内の水がトラップ部の封水切れとなる低水位の溜水量に至らずに、下水配管からの臭いの逆流を防止することできる。
なお、吐水部550は便器に洗浄水を散布する散布ノズルとすることで、長期不在時等に、便器ボール内の水がトラップ部の封水切れとなる低水位の溜水量に至らずに、下水配管からの臭いの逆流を防止することできるというだけでなく、便器内に単に吐水されるのではなく広く散布することができ、汚れのこびりつきを防止することができる。
また、衛生洗浄装置を設置する便器の種類によっては、便器ボール内の喫水面60が図31のようにトラップ部の封水水位以上に溜水がある状態から、トラップ部の封水水位以下に至るまでの水位差に大小があるため、便器ボール内の水が蒸発してトラップ部の封水切れにならないように設定される所定蒸発量(Le)を、たとえば大・小の2段階や大・中・小と3段階など、選択設定できるように本体200またはリモートコントローラ400の操作部に操作スイッチを設けてもよい。
このように、便器ボール内の水が蒸発してトラップ部の封水切れにならないように設定される所定蒸発量(Le)の水位レベルを選択設定できる構成にすることで、衛生洗浄装置を設置する便器の種類に応じて、より的確な時期に吐水部550から便器内に水の補充ができるため、水や電気の無駄を少なく、下水配管からの臭いの逆流を防止できる。
(実施の形態2)
図35は実施の形態2における衛生洗浄装置を便器上に設置した状態の外観の斜視図を示すものである。前記の実施の形態1と異なるのは、本体200に湿度センサ204をさ
らに備えたことで、それ以外は実施の形態1と同じであり重複説明を省略する。
前記実施の形態1では、便器内の水の蒸発量をトイレ室内の温度情報によって演算して推定するものであったのに対し、実施の形態2の衛生洗浄装置は、湿度センサ204をさらに備えたことによって、便器内の水の蒸発量が温度だけでなく温湿度に応じて変化する要素を含んで推定できる。したがって、衛生洗浄装置が使用される国や地域、時期にかかわらず、蒸発量をより的確に推定することができるので、国や地域、時期にかかわらず、電力や水の無駄使いがより少なく、下水配管からの臭いの逆流を防止することできる。