JP2016056255A - アルミニウム合金用プライマー組成物、および接着部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】厳しい環境下でも十分な防食性を発揮し得る接着部材、特に強固に接着したアルミニウム合金と(メタ)アクリル樹脂膜との複合材料の製造に有用なアルミニウム合金用プライマー組成物の提供。【解決手段】メチルトリメトキシシランと3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートからなる加水分解縮合体(A)100重量部に対し、水(B)0.5〜20重量部、および、親水性有機溶剤(C)1〜2000重量部を配合して成り、アルミニウム合金表面に対する接触角が30度以下であるプライマー組成物を提供する。【選択図】なし

Description

本発明はプライマー組成物に関するものであり、特にアルミニウム合金に(メタ)アクリル樹脂膜を積層、密着させ、防食する際に、アルミニウム合金と(メタ)アクリル樹脂膜の間に塗布されるプライマー組成物に関するものである。
アルミニウム合金は防食を目的として、その表面をポリシラザンやシランカップリング剤などを用いてシリカ層を形成するコーティング法や単独またはアルマイト加工された後、電着塗装法などが施され、建築、自動車等の分野で広く用いられている(例えば、特許文献1,2を参照)。しかし、シリカ層を形成するコーティング法では、欠陥のないシリカ膜を得るため膜厚をおよそ3μm以上にする必要があり、塗布と硬化を数回は繰り返す必要があり、煩雑であるだけでなく、欠陥の有無を確認する必要があった。また、電着塗装の場合では大きな設備を必要とし、容易に導入することが難しい。そこで、簡単でしかも大きな設備を必要としない防食法が求められていた。
特開平5−117553号公報 特開平2−182898号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、大きな設備や煩雑な操作を必要とせず、厳しい環境下でも十分な防食性を発揮し得るアルミニウム合金用プライマー組成物、および接着部材を提供することにあり、より具体的には強固に接着したアルミニウム合金と(メタ)アクリル樹脂との複合材料を製造するために有用なアルミニウム合金用プライマー組成物、および接着部材を提供することにある。
すなわち、本発明のアルミニウム合金用プライマー組成物は、アルミニウム合金と(メタ)アクリル樹脂膜の間に塗布され、メチルトリメトキシシランと3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートから成る加水分解縮合体(A)と、水(B)と、親水性有機溶剤(C)とを配合して成ることを特徴とする。
また、本発明のアルミニウム合金用プライマー組成物は、さらに、加水分解縮合体(A)を構成する3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートの割合が10モル%以上であることを特徴とする。
また、本発明のアルミニウム合金用プライマー組成物は、さらに、加水分解縮合体(A)100重量部に対し、水(B)0.5〜20重量部、親水性有機溶剤(C)1〜2000重量部、および硬化触媒(D)0.1〜10重量部を配合して成ることを特徴とする。
また、本発明のアルミニウム合金用プライマー組成物は、さらに、アルミニウム合金表面に対する接触角が30度以下であることを特徴とする。
また、本発明の接着部材は、アルミニウム合金用プライマー組成物とアルミニウム合金とからなり、アルミニウム合金表面に塗布されたアルミニウム合金用プライマー組成物は、加熱により硬化被膜が形成されることを特徴とする。
本発明のプライマー組成物でアルミニウム合金を処理することにより、環境試験(耐水性、耐塩水性)で良好な性能を発揮する。
アルミニウム合金は軽量であることから構造材として広く利用が進んでいるが、水中や塩水中では容易に腐蝕し、耐水性にかけている。本発明は、この腐蝕を抑えるために(メタ)アクリル樹脂をコーティングし、過酷な使用環境下でも長期にわたり耐水性を維持できるアルミニウム合金と(メタ)アクリル樹脂積層材料に用いられるプライマー組成物に関するものである。
メチルトリメトキシシランと3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートからなる加水分解縮合体(A)はアルミニウム合金と(メタ)アクリル樹脂膜の間に層を形成し、アルミニウム合金と(メタ)アクリル樹脂膜とからなる複合材料の耐温水性、耐塩水性を大きく向上するのに寄与する。
該加水分解縮合体(A)を構成する3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートの割合が10モル%以上である時、より耐温水性、耐塩水性、接着性が向上するため好ましい。
水(B)は通常の飲料水、工業用水でよいが、25℃における電導度が500μs/cm以下のイオン交換水であるとき、耐温水性、耐塩水性、接着性が向上する傾向にあり好ましい。
水(B)はメチルトリメトキシシランと3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートからなる加水分解縮合体(A)100重量部に対して0.5〜20重量部配合される。0.5重量部未満の場合には、アルミニウム合金に対する濡れ性が不足し、均一に塗布することができない場合がある。20重量部を超えて使用する場合にはアルミニウム合金と(メタ)アクリル樹脂膜との間に水がいつまでも残存し、耐温水性、耐塩水性がむしろ悪化する傾向にある。水(B)は好ましくは1〜10重量部使用する。このとき、接着性、耐塩水性が一段と優れるものとなる。
親水性有機溶剤(C)としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等のグリコールエーテル類、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン等、水と任意の割合で混合できるものを指す。該化合物はプライマー組成物の表面張力を下げ、アルミニウム合金に対する濡れ性を向上し、アルミニウム合金表面にプライマー組成物層が均一に形成されるのを推進する。
親水性有機溶剤(C)はメチルトリメトキシシランと3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートとからなる加水分解縮合体(A)100重量部に対して1〜2000重量部使用する。1重量部未満ではプライマー組成物の表面張力を十分に下げることができず、アルミニウム合金への濡れ性が悪くなり接着力が低下する傾向にある。2000重量部を超えて使用する場合にはプライマー組成物塗布時に排出溶剤量が多くなり、作業環境上好ましくない。また、プライマー組成物を乾燥、硬化した後にも溶剤が残りやすく接着強度が低下する場合がある。
また、さらに、本発明においてはプライマー組成物の硬化を促進するためにアルミニウム系触媒やスズ系触媒を用いることができる。該アルミニウム系触媒としては、例えば、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムイソプロピレートビス(オレイルアセトアセテート)等が挙げられる。該スズ系触媒としては、例えば、ジブチルスズジアセテート、ビス(アセトキシジブチルスズ)オキサイド、ビス(ラウロキシジブチルスズ)オキサイド、ジブチルスズビスアセチルアセトナート、ジブチルスズビスマレイン酸モノブチルエステル、ジオクチルビスマレイン酸モノブチルエステル等が挙げられる。
上記触媒の使用量としては、上記加水分解縮合体(A)の質量に対して、1000ppm〜10%であることが好ましい。即ち、加水分解縮合体(A)100重量部に対して硬化触媒(D)0.1〜10重量部である。より好ましい上限値は5%である。
本発明のプライマー組成物はアルミニウム合金表面に対する接触角が30度以下であることが必要である。接触角が30度を超える場合には、プライマー組成物をアルミニウム合金に塗布した際、ハジキが生じ均一な被膜を形成することができない場合がある。アルミニウム合金に対する接触角は25度以下であることがより好ましく、20度以下であることが更に好ましい。このとき接着強度、耐塩水性、耐温水性がより向上する。
プライマー組成物のアルミニウム合金に対する接触角は接触角計(協和界面化学(株)製接触角計”FACECA−D型”)により、常法に従って測定する。
基材(例えばアルミニウム合金)の保護(塩水浸漬などでの接着破壊を防止する)のために、プライマー組成物は(メタ)アクリル樹脂膜を塗布する前工程で使用されるのが好ましい。すなわち、基材表面にプライマー組成物を塗布した後、(メタ)アクリル樹脂膜を塗布することが望ましい。
プライマー組成物はメチルトリメトキシシランと3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートからなる加水分解縮合体(A)、水(B)、親水性有機溶剤(C)を均一に混合できればどのような手段でも製造できる。すなわち、撹拌装置の付いた容器に上記加水分解縮合体(A)、水(B)、親水性有機溶剤(C)を仕込み、均一になるまで撹拌、混合すればよい。プライマー組成物をアルミニウム合金表面に塗布し、加熱することによってアルミニウム合金表面に硬化被膜を形成する。基材(アルミニウム合金)と、基材の表面に塗布されるプライマー組成物とにより接着部材が構成される。
また、(メタ)アクリル樹脂膜の接着強度を向上させる意味でプライマー組成物を(メタ)アクリル樹脂コーティング組成物に混合使用することも可能である。このとき、プライマー組成物と(メタ)アクリル樹脂コーティング組成物との間に良好ななじみ性が生じ、アルミニウム合金との接着強度と(メタ)アクリル樹脂膜の基材への保護機能が向上する。
実施例
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、特に明記しない限り、実施例における重量部および%は質量基準である。
製造例1 3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートの加水分解縮合体の製造
3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート49.67重量部を2−プロパノール60重量部に溶解した。ここに、0.1mol/L塩酸10.80重量部を添加して、40℃で1時間攪拌し、さらに75℃で1時間攪拌を行った後、濃縮して3−(トリメトキシシリル)プロピルトリメトキシシランの加水分解縮合体を得た。
製造例2 メチルトリメトキシシランと3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(モル比1:1)からなる加水分解縮合体の製造
メチルトリメトキシシラン13.62重量部と3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート24.84重量部を2−プロパノール60重量部に溶解した。ここに、0.1mol/L塩酸10.80重量部を添加して、40℃で45分間攪拌し、さらに70℃で45分間攪拌を行った後、濃縮してメチルトリメトキシシランと3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(モル比1:1)からなる加水分解縮合体を得た。即ち、加水分解縮合体を構成する3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートの割合が50モル%である。
製造例3 メチルトリメトキシシランと3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(モル比9:1)からなる加水分解縮合体の製造
メチルトリメトキシシラン24.52重量部と3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート4.91重量部を2−プロパノール60重量部に溶解した。ここに、0.1mol/L塩酸10.80重量部を添加して、40℃で45分間攪拌し、さらに70℃で45分間攪拌を行った後、濃縮してメチルトリメトキシシランと3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(モル比9:1)からなる加水分解縮合体を得た。即ち、加水分解縮合体を構成する3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートの割合が10モル%である。
製造例4 メチルトリメトキシシランと3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(モル比19:1)からなる加水分解縮合体の製造
メチルトリメトキシシラン25.88重量部と3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート2.48重量部を2−プロパノール60重量部に溶解した。ここに、0.1mol/L塩酸10.80重量部を添加して、40℃で45分間攪拌し、さらに70℃で45分間攪拌を行った後、濃縮してメチルトリメトキシシランと3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(モル比19:1)からなる加水分解縮合体を得た。即ち、加水分解縮合体を構成する3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートの割合が5モル%である。
製造例5 メチルトリメトキシシランの加水分解縮合体の製造
メチルトリメトキシシラン27.24重量部を2−プロパノール60重量部に溶解した。ここに、0.1mol/L塩酸10.80重量部を添加して、40℃で45分間攪拌し、さらに70℃で45分間攪拌を行った後、濃縮してメチルトリメトキシシランの加水分解縮合体を得た。
実施例1〜3、比較例1〜2
製造例1の加水分解縮合体100重量部を2−プロパノール900重量部に溶解後、さらに水10重量部とスズ系硬化触媒としてジブチルスズジアセテート5重量部を添加して、プライマーAを調製した。このプライマーのアルミニウムに対する接触角は20度であった。
以下同様に、製造例2〜5の加水分解縮合体を用いて表1に示した化合物組成のプライマーB〜Eを調製した。
Figure 2016056255
以上のプライマーを使用し、試験を行った。試験項目、試験方法、結果の評価方法を次に示す。また、試験結果を表2に示す。
アルミニウム接合部材:サンディング、トルエン脱脂した厚さ5mmのアルミニウム板材(6063系(JIS))の片面に実施例1〜3で得られたプライマーA〜Cおよび比較例1〜2で得られた比較用のプライマーD〜Eを皮膜厚が0.5μmになるよう塗布、40℃で4時間、80℃で2時間、120℃で1時間、加熱硬化を行い作製した。
(メタ)アクリル樹脂膜:多官能性(メタ)アクリル樹脂モノマーとしてペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート100重量部、溶媒として2−プロパノール100重量部、紫外光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3重量部を混合し、メタクリル樹脂コーティング組成物を調製した。このコーティング組成物を膜厚30〜50μmになるように上記アルミニウム接合部材に塗布し、80℃で1分間乾燥後、紫外光(メタルハライドランプ出力80W/cm、積算光量1600mJ/cm2)を照射し硬化させた。これを試験片とした。
耐水性:試験片を電導度が1.0μs/cmのイオン交換水(60℃)に240時間浸漬し、アルミニウムの腐食および(メタ)アクリル樹脂膜の剥離が生じない場合を良好とし、その腐食または剥離が発生する場合を不良とする。
耐塩水性:試験片を5%塩水(60℃)に240時間浸漬し、アルミニウムの腐食および(メタ)アクリル樹脂膜の剥離が生じない場合を良好とし、その腐食または剥離が発生する場合を不良とする。
Figure 2016056255
本発明の実施例のプライマーA〜C、すなわち、加水分解縮合体の3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート含有率(加水分解縮合体を構成する3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートの割合)が10モル%以上のプライマーを用いたアルミニウムと(メタ)アクリル樹脂膜の接合材料では、耐水性、耐塩水性ともに良好であった。
これに対して、比較例のプライマーD〜Eを用いた接合材料では、(メタ)アクリル樹脂膜との間で剥離が発生するとともにアルミニウム表面に腐食も発生し、耐水性、耐塩水性に著しい低下がみられた。これは、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートの含有率が5モル%以下では、得られた接合材料の(メタ)アクリル樹脂膜との接合強度が低いことを示している。
本発明のプライマー組成物でアルミニウム合金を処理することにより、環境試験(耐水性、耐塩水性)で良好な性能を発揮する。すなわち、水による腐蝕のため使用分野に大きな制限があったアルミニウム合金は、本発明のプライマー組成物を使用することにより、従来の建築や自動車等の分野だけでなく、水が主成分である水性塗料に関わるディスプレイ材料や塗装及び印刷装置材料分野等でも好適に用いることができ、実用性に優れたアルミニウム接合部材が得られる。

Claims (5)

  1. アルミニウム合金と(メタ)アクリル樹脂膜の間に塗布され、メチルトリメトキシシランと3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートから成る加水分解縮合体(A)と、水(B)と、親水性有機溶剤(C)とを配合して成るアルミニウム合金用プライマー組成物。
  2. 前記加水分解縮合体(A)を構成する3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートの割合が10モル%以上である請求項1記載のアルミニウム合金用プライマー組成物。
  3. 前記加水分解縮合体(A)100重量部に対し、前記水(B)0.5〜20重量部、前記親水性有機溶剤(C)1〜2000重量部、および硬化触媒(D)0.1〜10重量部を配合して成る請求項1または2記載のアルミニウム合金用プライマー組成物。
  4. 前記アルミニウム合金表面に対する接触角が30度以下である請求項1から3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金用プライマー組成物。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金用プライマー組成物と、アルミニウム合金とからなる接着部材であって、
    前記アルミニウム合金表面に塗布された前記アルミニウム合金用プライマー組成物は、加熱により硬化被膜が形成される接着部材。
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