JP2016053557A - 評価装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】接合性をin‐situで定量的に評価することができる評価装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る装置100は、第1部材52の表面に第2部材54が積層された積層体50について、第1部材52と第2部材54との接合性を評価する装置である。この装置100は、チャンバ10に設けられた窓部12の外部から積層体50を撮像する撮像部30と、撮像部30で撮像した画像を解析して、第1部材52に対する第2部材54の接触角を計測する演算部40とを備える。撮像部30は、300℃以上の温度域において加熱処理されている過程の積層体50を経時的に撮像するように構成されている。演算部40は、加熱処理されている過程の第1部材52に対する第2部材54の接触角の経時変化を連続的に計測するように構成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、接合性を評価する評価装置に関する。
近年、金属やセラミックス等により構成される電子デバイスおよび電池部材等が、例えば300℃以上の比較的高温となる環境下で使用される機会が増えてきている。また、固体酸化物形燃料電池(SOFC)のように、使用温度域が600℃〜1000℃という高温の燃料電池の普及も進みつつある。加えて、かかる高温でも使用可能な電子デバイス、例えば、SiC半導体デバイス等の要求が高まってきている。
電子デバイスおよび電池部材等を互いに接合する接合材料としては樹脂材料が一般的であるが、かかる樹脂材料はこのような高温環境下では用いることができない。そのため、金属やセラミックスからなる電子デバイスおよび電池部材等を例えば300℃以上の高温で接合できたり、接合後に例えば300℃以上の高温で使用できたりするガラス接合材料が注目されている。なお、この種の材料を接合する焼成炉に関する従来技術として、特許文献1、2が挙げられる。
特許第5452189号公報 特許第5449690号公報
ところで、SOFCや電子デバイス分野に用いられるガラス接合材料としては、300℃以上の高温環境下で接合または使用されるため、そのような高温で長時間保持しても接合劣化が小さいように、高温で長時間保持した後の接合性(以下、単に「高温接合性」という。)が良いことが求められている。かかる高温接合性は、ガラス接合材料の組成や結晶状態、ガラス接合材料を製造するときの製造条件や製造方法によって容易に変わるため、ガラス接合材料と、これに接合される部材との高温接合性を事前に検査しておくことが望ましい。また、ガラス接合材料に限らず、近年、セラミックスや金属等の複数の異なる部材を積層焼成して、各部材を接合(典型的には一体焼結)する用途も増えてきている。このように、高温で積層焼成して接合するような各部材についても、高温接合性を事前に把握しておくことが望ましい。
従来、この種の高温接合性の良否をin‐situで定量的に評価する方法はなく、実際に焼成炉内で高温に長時間晒した後、常温に冷却して接合状態を目視にて確認するか、あるいは高温顕微鏡で疑似的に再現したミクロな接合状態のものを観察して評価していた。高温接合性の定量的な評価をin‐situでより簡易的に実施できれば大変有用であるが、そのような評価方法は十分に確立されていなかった。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、上述したような各部材の積層体について、高温接合性をin‐situで定量的に評価することができる評価装置を提供することである。
本発明に係る装置は、第1部材の表面に第2部材が積層された積層体について、該第1部材と該第2部材との接合性を評価するための装置である。この装置は、内部を300℃以上の温度域に保持可能に構成されたチャンバと、前記チャンバ内に配置され、前記積層体を保持するホルダと、前記ホルダに保持された前記積層体を前記チャンバに設けられた窓部の外部から撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像した前記積層体の画像を解析して、前記第1部材に対する前記第2部材の接触角を計測する演算部とを備える。また、前記撮像部は、前記300℃以上の温度域において加熱処理されている過程の前記積層体を経時的に撮像するように構成されている。そして、前記演算部は、前記加熱処理されている過程の前記第1部材に対する前記第2部材の接触角の経時変化を連続的に計測するように構成されている。
かかる評価装置によると、300℃以上の温度域で加熱処理されている過程の第1部材に対する第2部材の接触角の経時変化を解析することにより、高温で長時間保持した後における第1部材と第2部材との接合性(高温接合性)を定量的に評価することができる。また、実際に積層体を加熱しながらin‐situで計測するので、実際の使用環境に近い条件で、しかも高い精度をもって上記評価を行うことが可能となる。
ここに開示される評価装置の好ましい一態様では、前記演算部は、前記連続的に計測された前記接触角の経時変化データから、ラーソンミラーパラメータを用いて接触角の長時間挙動を推定するように構成されている。かかる構成によると、比較的短期間の接触角の経時変化データから、例えば10万時間というような高温で長時間保持した後の接合劣化(高温接合性)を加速的に評価することができる。
ここに開示される評価装置の好ましい一態様では、前記第1部材は金属またはセラミックスからなり、前記第2部材はガラスからなる。ガラス材料は、比較的高温となる環境下で金属またはセラミックス部材を接合する用途で利用され得る。上記構成によれば、実際の使用環境に近い条件でガラス接合材料と金属またはセラミックス部材との高温接合性を評価できるので、上記接合の用途に適したガラス接合材料の設計等を好適に行うことができる。第1部材を構成する金属またはセラミックス材料としては、例えば、固体酸化物形燃料電池(SOFC)の固体電解質や支持体等に用いられるイットリア安定化ジルコニアに代表されるジルコニア系材料や、太陽電池およびSOFC等のインターコネクタ等に用いられるステンレスに代表される鉄系合金、クロム系合金またはランタンクロマイト等が例示される。
ここに開示される評価装置の好ましい一態様では、前記チャンバは、内部を300℃〜1500℃の温度域に保持し得るように構成されている。このような温度範囲とすることにより、上述したSOFCなどの用途に用いられる各種材料からなる積層体をin‐situで精度よく評価することができる。
ここに開示される評価装置の好ましい一態様では、前記チャンバは、内部を所定のガス雰囲気に調整し得るように構成されている。このようにすれば、大気雰囲気以外のガス雰囲気に曝される用途に利用される積層体について、実際の使用環境に近い条件で、より高い精度をもって評価を行うことが可能となる。また、好ましい一態様では、前記チャンバは、内部を減圧し得るように構成されている。このようにすれば、減圧雰囲気に曝される用途に利用される積層体について、実際の使用環境に近い条件で、より高い精度をもって評価を行うことが可能となる。
ここに開示される装置の好ましい一態様では、前記チャンバの窓部は、冷却用媒体を流すための流路を有する。かかる構成によると、窓部の流路に冷却用媒体を流通させることによって、チャンバの窓部を冷却することができる。これにより、チャンバ内の熱が窓部を通して撮像部に伝わるのを抑制することが可能となり、例えば撮像部の熱による損傷を防止することができる。
ここに開示される装置の好ましい一態様では、前記チャンバの窓部と前記撮像部との間に遮熱板を備える。このように遮熱板で窓部と撮像部との間を隔離することによって、チャンバの窓部から撮像部に向かう熱を遮ることができる。そのため、チャンバ内の熱が撮像部に伝わるのを一層抑制することができる。
ここに開示される装置の好ましい一態様では、前記チャンバの窓部の外部からチャンバ内を照射するライトを備える。このようにすれば、チャンバ内が薄暗い場合でも、ライトにより積層体を照射して、撮像部による撮像を適切に行うことができる。
本発明の一実施形態に係る評価装置を模式的に示す図である。 1000℃で保持を開始したときの画像データである。 1100℃で保持を開始したときの画像データである。 1200℃で保持を開始したときの画像データである。 1200℃で2時間保持したときの画像データである。 接触角の経時変化を示すグラフである。 ラーソンミラーパラメータ(LMP)を用いて推定した接触角の長時間挙動を示すグラフである。 接合性評価を行う際の積層体(試験片)を示す画像である。
以下、図面を参照しながら、本発明による実施の形態を説明する。以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。なお、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
ここで開示される評価装置は、第1部材の表面に第2部材が積層された積層体について、高温で長時間保持した後の第1部材と第2部材との接合性(高温接合性)を評価する装置である。本発明の実施にあたって高温接合性を評価する対象となる積層体は、複数の異なる部材を高温(例えば300℃以上)で積層焼成して各部材を接合(例えば一体焼結)したり、あるいは接合後に高温(例えば300℃以上)で使用したりする用途で利用される積層体であれば特に制限されない。高温接合性を評価する対象となる積層体は、そのような高温で積層焼成して接合したり、あるいは接合後に高温で使用したりする用途で利用される第1部材および第2部材を含むものであればよい。かかる第1部材および第2部材は、互いに接合される前の第1部材および第2部材であってもよいし、既に接合された第1部材および第2部材であってもよい。
第1部材および第2部材を構成する材料としては、例えば、ガラス材料や、セラミックス、半導体材料に代表される無機材料、ならびに各種の金属およびその合金あるいは金属間化合物等に代表される金属材料などが例示される。具体的には、SOFC、太陽電池、リチウム二次電池、自動車インバータ素子に代表されるインバータ部材、パワーエレクトロニクス半導体素子に代表されるパワーエレクトロニクス部材を構成する各種の材料(典型的にはガラス材料、セラミックス材料および金属材料など)が例示される。ここで開示される評価装置は、そのような高温環境下で接合したり、接合後に高温で使用したりする用途で利用される積層体に対して好適に使用することができる。
ここに開示される評価装置は、高温で長時間保持したときの第1部材に対する第2部材の接触角の経時変化を測定して、第1部材と第2部材との高温接合性をin‐situで定量的に評価する装置に関するものである。以下、図1を参照しながら、SOFCの固体電解質に用いられるイットリア安定化ジルコニア(YSZ)と封止ガラスとが積層された積層体50について、各部材間の高温接合性を評価する手順につき説明するが、本発明の適用対象を限定する意図ではない。図1は、その評価を行うための評価装置100を模式的に示す図である。本実施形態の評価装置100は、チャンバ10と、ホルダ20と、撮像部30と、演算部40とを備えている。
<チャンバ>
ここで開示される評価装置100に用いられるチャンバ10は、内部を300℃以上の高温度域に保持可能に構成されている。チャンバ10の加熱手段としては従来公知のものを特に制限なく使用することができる。チャンバ10内の加熱温度としては、積層体50の評価したい温度に応じて適宜設定すればよく、概ね300℃以上(例えば300℃〜1500℃)にすることが適当であり、好ましくは500℃以上(例えば500℃〜1500℃)であり、特に好ましくは700℃以上(例えば800℃〜1500℃)である。ここで開示される評価装置100は、そのような高温環境下で接合したり、接合後に高温で使用したりする用途で利用される積層体50に対して好適に利用することができる。好ましい一態様では、上記積層体50の近傍に温度センサ(例えば熱電対)18を備えている。このように積層体50の近傍に温度センサ18を備えることによって、積層体50の温度を正確に把握して演算部40にフィードバックすることができる。これにより、チャンバ10内の温度を積層体50の評価したい温度に正確にコントロールでき、より精度の高い評価を行うことが可能になる。
チャンバ10は、内部を任意のガス雰囲気に調整可能に構成されており、積層体50の実際の使用時に近いガス雰囲気をチャンバ10内に形成し得るようになっている。チャンバ10内に形成し得るガス雰囲気のガスとしては、水素ガスもしくは水素ガスやアンモニアガスを含む混合ガスの他にメタン(CH)ガス、炭酸(CO)ガス等の還元性ガスを用いることができる。あるいは、窒素(N)やアルゴン(Ar)等の不活性ガスであってもよい。これらのガスの1種または2種以上を用いてもよい。2種以上の混合ガスを用いる場合には、2種以上のガスを同一のノズルからチャンバ10内に導入してもよいし、別々のノズルから導入してもよい。このように、チャンバ10の内部を任意のガス雰囲気に調整可能に構成することにより、大気雰囲気以外のガス雰囲気に曝される用途に利用される積層体50についても、実際の使用環境に近い条件で、より高い精度をもって評価を行うことが可能となる。
また、チャンバ10は、チャンバ内部の圧力を任意に調整可能に構成されており、積層体50の実際の使用時に近い圧力雰囲気をチャンバ10内に形成し得るようになっている。例えば、チャンバ10は、内部の圧力を100Pa以下(好ましくは0.1Pa以下、より好ましくは10−5Pa以下)に調整可能に構成されているとよい。このように、チャンバ10の内部圧力を任意に調整可能に構成することにより、大気圧以外の減圧雰囲気に曝される用途に利用される積層体50についても、実際の使用環境に近い条件で、より高い精度をもって評価を行うことが可能となる。
ここで開示される評価装置100に用いられるチャンバ10は、該チャンバ10の壁面に窓部12が設けられている。チャンバ10の壁面に設けられた窓部12を通して、チャンバ10内の積層体50を視認できるようになっている。また、チャンバ10の壁面に設けられた窓部12を通して、前記撮像部30がチャンバ10内の積層体50を撮像し得るようになっている。この実施形態では、チャンバ10の窓部12は、冷却用媒体を流すための流路14を有している。かかる構成によると、窓部12の流路14に冷却用媒体を流通させることによって、チャンバ10の窓部12を冷却することができる。これにより、チャンバ10内の熱が窓部12を通して撮像部30に伝わるのを抑制することが可能となり、例えば撮像部30の熱による損傷を防止することができる。好ましい一態様では、窓部12の周囲に上記流路14を有する水冷ジャケット16が装着されている。このようにすれば、窓部12を水冷ジャケット16で保護するとともに、窓部12を効率的に冷却し得る。
<ホルダ>
ホルダ20は、チャンバ10内に配置され、当該チャンバ10内において積層体50を保持するように構成されている。この実施形態では、ホルダ20は、積層体50を保持する台(ステージ)であり、その上面に積層体50を載置し得るようになっている。ホルダ20は、例えば、保持された積層体50の姿勢や向きを変える機能(例えば3方向に移動可能なXYZ軸ステージ)が備えられていてもよい。このようにすれば、種々の角度から積層体50を撮像することができる。また、ホルダ20は、積層体50の設置や交換等が容易となるように、チャンバ10内を移動する機能が備えられていてもよい。
上記ホルダ20に保持される積層体50の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、板状、円柱状、円筒状、棒状、直方体、段差を有する形状など、様々な形状を有するものが挙げられる。この実施形態では、積層体50は、板状の第1部材52上に円柱状の第2部材54が積層された試験片の形態であり得る。板状の第1部材52は、平板状のものを用いてもよいし、例えば、目的に応じて所望の加工が施されたものを用いてもよい。板状の第1部材52については、表面形状が平滑なものであってもよいし、例えば表面の所定の位置に窪み等が設けられていてもよい。また、円柱状の第2部材54については、その直径が本発明の目的である接触角の計測が可能な範囲であればよく、通常は30mm〜100mmであり、好ましくは40mm〜60mm程度である。本実施形態において好ましい第1部材52として、YSZ等のセラミックス材料や金属材料が挙げられる。また、好ましい第2部材54としてガラス材料が挙げられる。
<撮像部>
撮像部30は、上記ホルダ20に保持された積層体50をチャンバ10に設けられた窓部12の外部から撮像するものとして構成されている。撮像部30としては、窓部12の外部(典型的にはチャンバ10の外部)から積層体50を高解像度で撮像できるものであれば特に限定することなく使用することができる。例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどを用いた公知の撮像装置(カメラ)を使用することができる。撮像部30は、第1部材52と第2部材54との接触状態を撮像データとして取り込み、この撮像データを演算部40に送信する。好ましい一態様では、撮像部30は、積層体50を第1部材52の表面に沿う方向から撮像するように構成されている。このようにすれば、第1部材52と第2部材54との接触状態をより正確に撮像することができる。また、撮像部30は、300℃以上の高温度域において加熱処理されている過程の積層体50を経時的に撮像するように構成されている。撮像部30は、第1部材52と第2部材54との接触状態を撮像データとして経時的に取り込み、この撮像データを演算部40に経時的に送信する。なお、ここでいう「継続的に」とは、撮像が途切れることなく行われる態様の他、撮像が一定時間(例えば1分〜100時間)毎に断続的に継続して行われることを包含する。
好ましい一態様では、チャンバ10の窓部12と撮像部30との間に遮熱板32を備えている。一実施形態として好適な遮熱板32は、結晶化ガラスやホウ珪酸ガラス等で形成されて高い耐熱性を有しており、撮像部30の前側に取り付けられている。遮熱板32は、透光性の観点からは1枚であることが好ましいが、遮熱性能の観点からは2枚以上の遮熱板32を使用してもよい。このように遮熱板32で窓部12と撮像部30との間を隔離することによって、チャンバ10の窓部12から撮像部30に向かう熱を遮ることができる。そのため、チャンバ10内の熱が撮像部30に伝わるのをより効果的に抑制することができる。
また、好ましい一態様では、チャンバ10の窓部12の外部からチャンバ10内を照射するライト34を備えている。この実施形態では、ライト34は、窓部を通してチャンバ10内に向けられ、積層体50を照らすようになっている。このようにすれば、チャンバ10内が薄暗い場合でも、ライト34により積層体50を照射して、撮像部30による撮像を適切に行うことができる。
<演算部>
演算部40は、撮像部30で撮像した積層体50の画像を解析して、第1部材52に対する第2部材54の接触角を計測するように構成されている。この実施形態では、演算部40は、撮像部30から取りこまれた積層体50の画像から自動的に第2部材54/第1部材52間の境界を決定し、第2部材54の外表面を検出する。そして、θ/2法、接線法あるいはカーブフィッティング法に基づき、第1部材52に対する第2部材54の接触角(すなわち第2部材54の接線と第1部材52の表面との成す角度)を計測する。かかる演算部40としては、所定の処理機能を備えるコンピュータ、パーソナルコンピュータ(PC)等を好適に用いることができる。かかるコンピュータには、少なくとも、上記処理を行うためのプログラムを記憶したROM(Read Only Memory)と、そのプログラムを実行可能なCPU(Central Processing Unit)と、入出力ポートとが含まれる。該コンピュータには、チャンバ10の温度センサ(例えば熱電対)18等からの各種信号、および撮像部30からの信号(出力)などが入力ポートを介して入力される。また、該コンピュータからは、撮像部30やチャンバ10への駆動信号などが出力ポートを介して出力される。
演算部40は、撮像部30から取りこまれた積層体50の画像から、加熱処理されている過程の第1部材52に対する第2部材54の接触角の経時変化を連続的に計測するように構成されている。また、演算部40は、連続的に計測された接触角の経時変化データから、温度と時間の関数で表されるラーソンミラーパラメータ(LMP)を用いて、接触角の長時間挙動を推定する。なお、ここでいう「連続的に」とは、計測が途切れることなく行われる態様の他、計測が一定時間(例えば1分〜100時間)毎に断続的に継続して行われることを包含する。
ここで、図2〜図5は、第1部材52の表面に第2部材54が積層された積層体50について、本実施形態に係る評価装置100を用いて、チャンバ10内を1000℃、1100℃、1200℃で保持したときの積層体50の画像の一例である。図2は1000℃で保持を開始したときに得られる画像を、図3は1100℃で保持を開始したときに得られる画像を、図4は1200℃で保持を開始したときに得られる画像を、図5は1200℃で2時間保持したときに得られる画像を、それぞれ示している。また、図6は、1000℃、1100℃、1200℃で保持したときの第1部材52に対する第2部材54の接触角の経時変化を示すグラフである。かかる接触角の値は、上記画像のカーブフィッティング法に基づく自動解析により得られたものである。
図2〜図4および図6に示すように、第1部材52に対する第2部材54の接触角は、加熱温度が大きくなるに従い、減少傾向を示す。例えば、図2は加熱温度が1000℃の場合に対応する画像データであり、ここでは第1部材52の表面上で第2部材54は殆ど流動しておらず、接触角は略90℃を保っている。一方、図4は加熱温度が1200℃の場合に対応する画像データであり、ここでは第1部材52の表面上で第2部材54が濡れ広がるため、接触角は減少している。また、図4、図5および図6に示すように、第1部材52に対する第2部材54の接触角は、同一の温度でも保持時間が大きくなるに従い、減少傾向を示す。例えば、図5は1200℃で2時間保持した場合に対応する画像データであり、ここでは第1部材52の表面上で第2部材54が大きく濡れ広がるため、図4よりも接触角はさらに減少している。このような接触角の減少は、加熱温度および保持時間が大きくなるに従い、接合劣化と共に進行する。すなわち、接触角が減れば減るほど、その温度およびその保持時間における第1部材52と第2部材54との接合劣化が大きいことを示している。
ここで開示される評価装置100では、このような接触角の経時変化データから、温度と時間の関数で表されるラーソンミラーパラメータ(LMP)を用いて、接触角の長時間挙動を推定する。ここでLMPは、加熱温度をT(℃)、保持時間をt、材料によって決まる固有の定数をCとすると、下記式(1)にて算出され得る。なお、上記定数Cは一般的に20とされるが、必ずしも20である必要はない。
LMP=(T+273)×(C+logt) (1)
上記式(1)に示されるように、LMPは、加熱温度Tと保持時間tとから一義的に算出される。そして、加熱温度Tのみを変化させた場合、LMPは一定であるので、高温かつ短時間の接触角の経時変化データから、低温かつ長時間の接触角の挙動を推定することができる。例えば、1200℃で1000時間保持したときの接触角は、1082℃で10万時間保持したときの接触角に相当する。したがって、1200℃で1000時間保持したときの接触角の経時変化データから、1082℃で10万時間保持したときの接触角の長時間挙動を推定することが可能になる。そして、このように推定された接触角の長時間挙動から、高温で長時間(例えば10万時間)保持した後における第1部材52と第2部材54との接合性(接合劣化)を加速的に評価することができる。
演算部40は、図7に示すように、上記推定した接触角の長時間挙動をグラフ形式で表示部(図示せず)に出力してもよい。図7は、図6の1200℃における接触角の経時変化データから、LMPを用いて換算した800℃における接触角の長時間挙動を示すグラフである。表示部では、上記推定した接触角の長時間挙動がグラフ形式で表示され得る。これにより、上記推定した接触角の長時間挙動を視覚的に把握することができる。
また、演算部40は、上記推定した接触角の長時間挙動に基づいて、高温接合性の良否を判定するように構成してもよい。好ましい一態様では、良否の判定基準となる接触角の値をコンピュータ(HDD等)に予め記憶させておき、これを閾値として上記推定した接触角の長時間挙動(例えば所定の耐久時間(例えば10万時間)経過時における接触角)と比較することにより、高温接合性が良いか否かを判定する。例えば、接触角の閾値を20°に設定した場合、上記推定した接触角の長時間挙動が20°を上回る場合に「○」と判定し、20°以下の場合に「×」と判定してもよい。また、このとき、上記高温接合性の判定基準(閾値)を複数用意することにより、良否を段階的に判定してもよい。この判定結果を表示部に出力してもよい。本実施形態によれば、LMPを用いて10万時間を超えるような接触角の長時間挙動を短時間で取得できるので、高温接合性を迅速に評価することができる。
以上のように、本実施形態に係る評価装置100によれば、300℃以上の高温度域で加熱処理されている過程の第1部材52に対する第2部材54の接触角の経時変化から、第1部材52と第2部材54との高温接合性を定量的に評価することができる。また、実際に積層体50を加熱しながらin‐situで自動的に計測するので、実際の使用環境に近い条件で、しかも高い精度をもって上記評価を行うことが可能となる。
また、この実施形態では、連続的に計測された接触角の経時変化データから、LMPを用いて接触角の長時間挙動を推定するので、比較的短時間の接触角の経時変化データから、例えば10万時間というような長時間の高温耐久性を加速的に評価することが可能になる。そのため、SOFCや太陽電池など、10万時間というような耐久性のデータが求められる用途において、本実施形態の評価装置100は好適に利用され得る。
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明を以下の実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
図1に示す評価装置100を用いて、SOFCの固体電解質に用いられるYSZと封止ガラスとの高温接合性を評価した。具体的には、図8に示すように、板状のYSZからなる第1部材52の表面に円柱形状の封止ガラスからなる第2部材54を積層した。この段階では、第1部材52に対する第2部材54の接触角は90℃である。
次いで、かかる積層体50をチャンバ10のホルダ20にセットし、1000℃で240分(4時間)保持した。チャンバ内の雰囲気は大気雰囲気とした。その際、保持開始から20分ごとに撮像部30で第1部材52と第2部材54との接触状態を撮像し、取り込んだ撮像データから第1部材52に対する第2部材54の接触角をカーブフィッティング法に基づき計測した。また、加熱温度を1100℃、1200℃に変更して加熱試験を同じ手順で実施した。そして、同様の手順で第1部材52に対する第2部材54の接触角を20分ごとに計測した。各温度における接触角の径時変化を図6に示す。
また、図6の1200℃における接触角の経時変化データから、LMPを用いてシミュレーションを行い、800℃における接触角の長時間挙動に換算した。結果を図7のグラフに示す。図7に示すように、1200℃で4時間保持した場合の接触角の経時変化データから、800℃で18万時間保持した場合の接触角の長時間挙動に換算して、高温で長時間保持した後の接合性を予想することができた。
以上、本発明を詳細に説明したが、上記実施形態は例示にすぎず、ここで開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、上述した実施例では、第1部材52にYSZが用いられ、第2部材54に封止ガラスが用いられている。第1部材52および第2部材54の構成材料は、これに限定されない。第1部材52および第2部材54は、焼成により相互に接合可能な材料であればよい。例えば、第1部材52に金属が用いられ、第2部材54にガラスが用いられてもよい。また、第1部材52に金属が用いられ、第2部材54にセラミクッスが用いられてもよい。本評価装置100によれば、積層体50の構成材料にかかわらず、異なる部材間の高温接合性をin‐situで定量的に評価することができる。
また、上述した実施形態では、演算部40は、連続的に計測された接触角の経時変化データから、ラーソンミラーパラメータ(LMP)を用いて、接触角の長時間挙動を推定するように構成されているが、これに限定されない。例えば、連続的に計測された接触角の経時変化データ(実測値)から、直接的に高温接合性を評価してもよい。ただし、上述した実施形態の如く、LMPを用いて接触角の長時間挙動を推定した方が、例えば10万時間というような接触角の長時間挙動をより短時間で取得できる点で好ましい。
また、上述した実施形態では、積層体50は、板状の第1部材52上に円柱状の第2部材54が積層された試験片の形態である。積層体50の形態はこれに限定されるものではない。例えば、積層体50は、製品として実際に使用される形態であってもよい。例えば、SOFCの単セルまたは該単セルを複数搭載したスタックをチャンバ10内に配置し、そのまま評価対象としてもよい。この場合、SOFCを実際の使用環境下で発電しながら、各部材の高温接合性を評価してもよい。このようにすれば、実際の使用環境にさらに近い条件で、より高い精度をもって評価を行うことが可能である。
10 チャンバ
12 窓部
14 流路
20 ホルダ
30 撮像部
32 遮熱板
34 ライト
40 演算部
50 積層体
52 第1部材
54 第2部材
100 評価装置

Claims (9)

  1. 第1部材の表面に第2部材が積層された積層体について、該第1部材と該第2部材との接合性を評価するための装置であって、
    内部を300℃以上の温度域に保持可能に構成されたチャンバと、
    前記チャンバ内に配置され、前記積層体を保持するホルダと、
    前記ホルダに保持された前記積層体を前記チャンバに設けられた窓部の外部から撮像する撮像部と、
    前記撮像部で撮像した前記積層体の画像を解析して、前記第1部材に対する前記第2部材の接触角を計測する演算部と
    を備え、
    前記撮像部は、前記300℃以上の温度域において加熱処理されている過程の前記積層体を経時的に撮像するように構成されており、
    前記演算部は、前記加熱処理されている過程の前記第1部材に対する前記第2部材の接触角の経時変化を連続的に計測するように構成されている、評価装置。
  2. 前記演算部は、前記連続的に計測された前記接触角の経時変化データから、ラーソンミラーパラメータを用いて接触角の長時間挙動を推定するように構成されている、請求項1に記載の評価装置。
  3. 前記第1部材は、金属またはセラミックスからなり、
    前記第2部材は、ガラスからなる、請求項1または2に記載の評価装置。
  4. 前記チャンバは、内部を300℃〜1500℃の温度域に保持し得るように構成されている、請求項1〜3の何れか一つに記載の評価装置。
  5. 前記チャンバは、内部を所定のガス雰囲気に調整し得るように構成されている、請求項1〜4の何れか一つに記載の評価装置。
  6. 前記チャンバは、内部を減圧し得るように構成されている、請求項1〜5の何れか一つに記載の評価装置。
  7. 前記チャンバの窓部は、冷却用媒体を流すための流路を有する、請求項1〜6の何れか一つに記載の評価装置。
  8. 前記チャンバの窓部と前記撮像部との間に遮熱板を備える、請求項1〜7の何れか一つに記載の評価装置。
  9. 前記チャンバの窓部の外部からチャンバ内を照射するライトを備える、請求項1〜8の何れか一つに記載の評価装置。





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