以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態における回路基板は、例えば、タッチスイッチやタッチパネルなどにおいて指やペンなどでタッチされた位置を検出する位置検出部として用いられる。
図1は、本実施形態における回路基板の構成を示す平面図であり、図2は、本発明における回路基板の電極部の構成を示す平面図であり、図1におけるII部の拡大図である。
本実施形態における回路基板1は、図1に示すように、基板2と、配線部3と、を有している。この回路基板1は、グラビアオフセット印刷法を用いて基板2に導電性インク106(後述)を印刷することで、当該基板2の主面に所定の配線部3が形成されている。
基板2を構成する材料としては、電気絶縁性を有する材料であればよいが、透明性を有していることがより好ましい。このような基板2を構成する材料としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ビニル系樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等の樹脂材料を例示することができる。なお、樹脂材料に代えて、例えばガラスで基板2を構成してもよい。
配線部3は、基板2の主面に設けられており、電極部4と、引出配線51と、を有している。電極部4は、図1及び図2に示すように、第1の領域41と、第2の領域42と、を有している。
電極部4の第1の領域41は、相互に平行になるよう配設された複数の第1の細線411aと、相互に平行になるよう配設された複数の第2の細線411bとが交差することで、全体として第1の空隙412が繰り返される網目状を有している。
具体的には、複数の第1の細線411aは、電極部4の長手方向(図中Y方向)に沿って延設されており、これらが電極部4の短手方向(図中X方向)に等ピッチD11に並べられている。また、複数の第2の細線411bは、電極部4の短手方向に沿って延設されており、これらが電極部4の長手方向に等ピッチD12に並べられている。
この細線411a,411bが相互に直交することで、矩形形状を有する第1の空隙412が形成されている。この第1の空隙412は、細線411a,411bによって包囲されており、基板2の主面に形成されている。このような第1の空隙412が基板2の主面に複数形成され、これらがマトリクス状に配設されていることで、網目状の電極部4の第1の領域41が形成されている。
なお、本実施形態では、第1の細線411aの幅L11と、第2の細線411bの幅L12とを実質的に同一の幅としているが(L11=L12)、これらを異ならせてもよい(L11≠L12)。また、本実施形態では、第1の空隙412の電極部4の短手方向の幅S11と、第1の空隙412の電極部4の長手方向の幅S12とを実質的に同一の幅としているが(S11=S12)、これらを異ならせてもよい(S11≠S12)。つまり、本実施形態では、複数の第1の細線411a間のピッチD11と、複数の第2の細線411b間のピッチD12とを実質的に同一としているが(D11=D12)、これらを異ならせてもよい(D11≠D12)。
このような細線411a,411bの幅L11,L12(以下単に、「細線411の幅L1」とも称する)は、特に限定しないが、例えば、50[μm]〜70[μm]で形成されていることが好ましい。また、細線411a,411bの厚み(以下単に、「細線411の厚み」とも称する)は、特に限定しないが、例えば、2[μm]〜3[μm]で形成されていることが好ましい。また、第1の空隙412の幅S11,S12(以下単に、「第1の空隙412の幅S1」とも称する)は、特に限定しないが、例えば、20[μm]〜30[μm]で形成されていることが好ましい。
電極部4の第2の領域42は、相互に平行になるよう配設された複数の第3の細線421aと、相互に平行になるよう配設された複数の第4の細線421bとが交差することで、全体として第2の空隙422が繰り返される網目状を有している。
具体的には、複数の第3の細線421aは、電極部4の長手方向に沿って延設されており、これらが電極部4の短手方向に等ピッチD21に並べられている。また、複数の第4の細線421bは、電極部4の短手方向に沿って延設されており、これらが電極部4の長手方向に等ピッチD22に並べられている。
この細線421a,421bが相互に直交することで、矩形形状を有する第2の空隙422が形成されている。この第2の空隙422は、細線421a,421bによって包囲されており、基板2の主面に形成されている。このような第2の空隙422が基板2の主面に複数形成され、これらがマトリクス状に配設されていることで、網目状の電極部4の第2の領域42が形成されている。
なお、本実施形態では、第3の細線421aの幅L21と、第4の細線421bの幅L22とを実質的に同一の幅としているが(L21=L22)、これらを異ならせてもよい(L21≠L22)。また、本実施形態では、第2の空隙422の電極部4の短手方向の幅S21と、第2の空隙422の電極部4の長手方向の幅S22とを実質的に同一の幅としているが(S21=S22)、これらを異ならせてもよい(S21≠S22)。つまり、本実施形態では、複数の第3の細線421a間のピッチD21と、複数の第4の細線421b間のピッチD22とを実質的に同一としているが(D21=D22)、これらを異ならせてもよい(D21≠D22)。
このような細線421a,421bの幅L11,L12(以下単に、「細線421の幅L2」とも称する)は、細線411の幅L1に対して相対的に狭いことが好ましい。また、細線421a,421bの厚み(以下単に、「細線421の厚み」とも称する)は、細線411の厚みと同様の厚みであることが好ましい。また、第2の空隙422の幅S21,S22(以下単に、「第1の空隙422の幅S2」とも称する)は、第1の空隙412の幅S1に対して相対的に広いことが好ましい。
この第2の領域42は、図1及び図2に示すように、電極部4の一方の端部(図中Y方向上側)に設けられている。なお、第2の領域42は、電極部4の輪郭に接している限り、電極部4のいずれの箇所に設けられていてもよい。
また、第2の領域42の長手方向の全長は、第1の領域41の長手方向の全長に対して相対的に短くなるように形成されていることが好ましい。具体的には、特に限定しないが、第2の領域42の長手方向の全長と、第1の領域41の長手方向の全長と、の比が、1:30〜1:1で形成されていることが好ましい。この場合、電極部4の全面積の中、高い配線密度で形成されている第1の領域41の面積の占める割合を高くすることができるので、電極部4における電気抵抗値の上昇の抑制を図ることができると共に、電極部4での断線の発生を抑制することができる。
電極部4は、図1に示すように、基板2の主面に複数(本実施形態では、4つ)併設されている。このとき、電極部4の形状について、相互に隣り合う電極部4は、一方の側の電極部4の長手方向の全長が、引出配線が導出される側(図中左側)の電極部4の長手方向の全長に対して相対的に長くなるよう形成されていてもよい。
例えば、図1に示すように、電極部4Bの長手方向の全長は、電極部4Aの長手方向の全長に対して相対的に長くなるように形成されていてもよい。また、電極部4Cの長手方向の全長は、電極部4Bの長手方向の全長に対して相対的に長くなるように形成されていてもよく、電極部4Dの長手方向の全長は、電極部4Cの長手方向の全長に対して相対的に長くなるように形成されていてもよい。なお、電極部4は、上述の電極部4Aと、電極部4Bと、電極部4Cと、電極部4Dと、を総称する。
これにより、それぞれの電極部4に引出配線51を接続する場合、引出配線51を直線的に配設することができるので、基板2の主面に形成される配線部3を高密度に実装することができる。
なお、電極部4の形状は、上記に限定されない。特に限定しないが、例えば、複数の電極部4の長手方向の全長は、実質的に同一の長さを有していてもよい。
このような電極部4を構成する材料としては、特に限定しないが、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)、カーボン(C)等の導電材を含有した導電性ペーストを例示することができる。
図3は、本発明における回路基板の電極部の構成の変形例を示す平面図であり、図4は、本発明における回路基板の電極部の構成の変形例を示す平面図である。
本実施形態において、電極部4の空隙412,422は、矩形形状を有することに限定されない。例えば、図3に示すように、電極部4の空隙412,422が菱型形状を有するように形成されていてもよい。この場合には、空隙412,422は、細線411,421を電極部4の長手方向に対して実質的に+45度の角度をなす方向に傾斜させることで形成される。また、特に図示しないが、電極部4の空隙412,422が上記以外の形状を有していてもよい。具体的には、三角形、六角形等のn角形、円、楕円、星形等の形状を電極部の空隙412,422が有していてもよい。
また、細線411,421は、直線以外の形状としてもよい。特に図示しないが、例えば、曲線、波線、ジグザグ線等としてもよい。
また、複数の空隙412,422は、相互にマトリクス状に配設されていることに限定されない。特に図示しないが、例えば、複数の空隙412,422が列ごとに互い違いとなるよう(所謂、千鳥状)に配設されていてもよい。
また、本実施形態では、第1の領域41と第2の領域42との関係において、第2の領域42の配線密度P2(後述)が第1の領域の配線密度P1(後述)に対して相対的に低くなるよう形成される限り、相互に異なる網目状の電極部4を形成してもよい。例えば、図4に示すように、第1の領域41では、第1の空隙412が矩形形状を有しているのに対し、第2の領域42では、第2の空隙423が菱型形状を有していてもよい。
なお、本実施形態において、「電極部4」が本発明における「電極部」の一例に相当し、「第1の領域41」が本発明における「第1の領域」の一例に相当し、「第2の領域42」が本発明における「第2の領域」の一例に相当し、「細線411a」と、「細線411b」と、「細線421a」と、「細線421b」と、が本発明における「細線」の一例に相当する。
図5は、本発明における回路基板の配線集合部の構成を示す平面図であり、図1におけるV部の拡大図である。
引出配線51は、図5に示すように、接続部6で電極部4の第2の領域42に接続されている。また、この引出配線51は、電極部4と一対となるよう設けられており、電極部4が複数形成されている場合、形成された電極部4と同じ数だけ引出配線51が形成される。
このような複数の引出配線51は、相互に平行になるよう配設されている。また、この複数の引出配線51は、隣り合う他の引出配線51との間に第3の空隙52をそれぞれ有している。この複数の引出配線51(本実施形態では、4本)と、複数の第3の空隙52(本実施形態では、3箇所)と、から配線集合部5が構成されている。
第3の空隙52は、引出配線51に沿って延在し形成されている。この第3の空隙52は、複数の引出配線51同士が互いに絶縁されるために設けられている。この第3の空隙52の幅が短いと、電界の影響により、引出配線51の金属成分が基板2上を横切り移動するおそれがある(以下単に、「マイグレーション」とも称する)。このように、マイグレーションが発生することで、引出配線51に断線が生じるおそれや、複数の引出配線51同士が電気的に接続されてしまい、短絡が生じるおそれがある。これにより、回路基板1の品質が低下するおそれがある。
このような、引出配線51の幅L3は、特に限定しないが、例えば、30[μm]〜500[μm]で形成されていることが好ましい。また、引出配線51の厚みは、特に限定しないが、例えば、1[μm]〜3[μm]で形成されていることが好ましい。また、第3の空隙52の幅S3は、特に限定しないが、例えば、30[μm]〜500[μm]で形成されていることが好ましい。また、このような引出配線51を構成する材料としては、電極部4と同様の材料を例示することができる。
なお、本実施形態において、「引出配線51」が本発明における「引出配線」の一例に相当し、「配線集合部5」が本発明における「配線集合部」の一例に相当する。
図6は、本発明における電極部の第1の領域の構成を示す平面図であり、図2におけるVI部の拡大図であり、図7は、本発明における電極部の第2の領域の構成を示す平面図であり、図2におけるVII部の拡大図である。
本実施形態では、第2の領域42における配線密度P2は、第1の領域41における配線密度P1に対して相対的に低くなるよう形成する。以下、本実施形態における第1の領域41と第2の領域42の配線密度P1,P2の算出手法について説明する。
図6に基づいて、第1の領域41における配線密度P1の算出手法を説明する。本実施形態では、第1の領域41における所定の単位格子の全面積、つまり細線411a,411bの部分の面積と第1の空隙412の面積との合計に対して、細線411a,411bの部分の面積が占める面積の割合を配線密度P1とする。この単位格子は、細線411a,411bの中心線により包囲された領域とする(図中一点鎖線により囲まれた領域)。
具体的に、本実施形態では、第1の領域41の配線密度P1は、下記(2)により求める。
P1={(L1+S1)2−S2}/(L1+S1)2・・・(2)
ただし、上記の(2)において、P1は第1の領域41の配線密度であり、L1は細線411の幅であり、S1は第1の空隙412の幅である。
また、図7に基づいて、第2の領域42における配線密度P2の算出手法を説明する。本実施形態では、所定の単位格子の全面積、つまり細線421a,421bの部分の面積と第2の空隙422の面積との合計に対して、細線421a,421bの部分の面積が占める面積の割合を配線密度P2とする。この単位格子は、細線421a,421bの中心線により包囲された領域とする(図中一点鎖線により囲まれた領域)。
具体的に、本実施形態では、第2の領域42の配線密度P2は、下記(3)により求める。
P2={(L2+S2)2−S2}/(L2+S2)2・・・(3)
ただし、上記の(3)において、P2は第2の領域42の配線密度であり、L2は細線421の幅であり、S2は第2の空隙422の幅である。
このように、本実施形態では、第1の領域41については、細線411の幅L1と、第1の空隙412の幅S1と、により第1の領域41の配線密度P1を定義する。また、第2の領域42については、細線421の幅L2と、第2の空隙422の幅S2と、により第2の領域42の配線密度P2を定義する。なお、網目状の規則的なパターニングで電極部4を形成することにより、配線密度の予測を容易に行うことができる。
本実施形態では、細線411の幅L1は、細線421の幅L2に対して相対的に広くする。また、第1の空隙412の幅S1は、第2の空隙422の幅S2に対して相対的に狭くする。
このように、電極部4は、第2の領域42における配線密度P2が第1の領域41における配線密度P1に対して相対的に低くなるように形成されている。これにより、グラビアオフセット法により基板2の主面に電極部4と引出配線51を同時に形成する場合において、転写ロール107(後述)の膨潤の過剰な進行が抑制されるので、インクの離型性の低下による引出配線の断線の発生を抑制することができる。また、第2の領域42と引出配線51とが接続されることで、第1の領域41と引出配線51とが直接接続される場合と比較して、折り曲げ等による断線を抑制することができる。
次に、本実施形態では、配線集合部5における配線密度P3は、第1の領域41における配線密度P1に対して相対的に低い。以下、本実施形態における配線集合部5の配線密度P3の算出手法について説明する。
図5に基づいて、配線集合部5の配線密度P3の算出手法を説明する。本実施形態では、配線集合部5における引出配線51の幅L3と第3の空隙52の幅S3との合計に対して、引出配線51の幅L3が占める長さの割合を配線密度P3とする。
具体的に、本実施形態では、配線集合部5の配線密度P3は、下記(4)により求める。
P3=L3/(L3+S3)・・・(4)
ただし、上記の(4)において、P3は配線集合部5の配線密度であり、L3は引出配線51の幅であり、S3は第3の空隙52の幅である。
このように、本実施形態では、引出配線51の幅L3と、第3の空隙52の幅S3とにより配線集合部5の配線密度P3を定義する。本実施形態では、細線411の幅L1は、引出配線51の幅L3に対して相対的に広くする。また、第1の空隙412の幅S1は、第3の空隙52の幅S3に対して相対的に狭くする。
このように、配線部3は、配線集合部5における配線密度P3が第1の領域41における配線密度P1に対して相対的に低くなるように形成されている。この場合、引出配線5と、当該引出配線5が接続されている第2の領域42との関係において、配線集合部5における配線密度P3と、第1の領域における配線密度P1に対して相対的に低い第2の領域における配線密度P2と、の差を小さくすることができる。これにより、グラビアオフセット法により基板2の主面に電極部4と引出配線51を同時に形成する場合において、転写ロール107(後述)の膨潤の過剰な進行がさらに抑制されるので、インクの離型性の低下による引出配線の断線の発生を抑制することができる。
図8は、本発明における回路基板の電極部の構成の変形例を示す平面図であり、図9は、本発明における回路基板の電極部の構成の変形例を示す平面図である。
本実施形態において、細線411の幅L1は、細線421の幅L2に対して相対的に広くすると共に、第1の空隙412の幅S1は、第2の空隙422の幅S2に対して相対的に狭くするように形成されているが、特にこれに限定されない。
例えば、図8に示すように、例えば、細線411の幅L1を細線421の幅L2に対して相対的に広くすると共に、第1の空隙412の幅S1と、第2の空隙422の幅S2とを実質的に同一の幅としてもよい。
また、例えば、図9に示すように、細線411の幅L1と、細線421の幅L2とを実質的に同一の幅にすると共に、第1の空隙412の幅S1を第2の空隙423の幅S2に対して相対的に狭くしてもよい。
また、第1の領域41、第2の領域42、及び、配線集合部5は、それぞれの配線密度P1,P2,P3が下記(1)式を満たすよう形成することが好ましい。
(P1+P3)/2>P2・・・(1)
この場合、引出配線5と、当該引出配線5が接続されている第2の領域42との関係において、配線集合部5における配線密度P3と、第2の領域における配線密度P2との差をさらに小さくすることができる。これにより、グラビアオフセット法により基板2の主面に電極部4と引出配線51を同時に形成する場合において、転写ロール107の膨潤の過剰な進行がさらに抑制されるので、インクの離型性の低下による引出配線の断線の発生を抑制することができる。
なお、本実施形態において、「細線411の幅」が本発明における「第1の領域における細線の幅」の一例に相当し、「細線421の幅」が本発明における「第2の領域における細線の幅」の一例に相当し、「第1の空隙412の幅」が本発明における「第1の領域における細線の間隔」の一例に相当し、「第2の空隙422の幅」が本発明における「第2の領域における細線の間隔」の一例に相当する。
次に、本実施形態における回路基板1の製造方法について説明する。
図10は、本発明における回路基板の製造方法を示すフローチャートであり、図11は、本発明における回路基板を製造するグラビアオフセット印刷装置の概略構成図であり、図12(a)〜図12(c)は、本発明における回路基板を製造するグラビアオフセット印刷装置の概略構成図を用いた基板に回路を形成する印刷工程の一例を示す図である。
本実施形態における回路基板1の製造方法は、図10に示すように、印刷工程と、乾燥工程S14と、を備えている。また、印刷工程は、充填工程S11と、受理工程S12と、転写工程S13と、を備えている。
本実施形態における回路基板1の製造方法では、グラビアオフセット印刷装置10を用いて回路基板1の製造を行う。このグラビアオフセット印刷装置10は、グラビアオフセット印刷法によって基板2に導電性インク106を印刷することにより、回路基板の配線パターンを形成する装置であり、図11に示すように、グラビアロール101と、ドクターブレード104と、インク貯蔵部105と、転写ロール107と、を備えている。
グラビアロール101は、版胴102と、グラビア版103と、を有している。版胴102は、円筒形状を有すると共に、特に図示しないモータ等によってその軸心を中心として回転駆動することが可能となっている。グラビア版103は、この版胴102の外周に巻回されている。このグラビア版103の表面には、基板2に印刷する配線部3の印刷パターンに対応した凹パターン103aが形成されている。
このグラビアロール101の周囲には、ドクターブレード104と、インク貯蔵部105と、が設けられている。ドクターブレード104は、グラビア版103上を先端が摺接するように設けられている。また、インク貯蔵部105は、グラビア版103の表面に導電性インク106が付着するように設けられている。この導電性インク106の材料としては、電極部4と同様のものにトルエンや酢酸エチルといった溶剤を含有させたものを例示することができる。
転写ロール107は、ブランケット胴108と、粘着層109と、ブランケット110と、を有している。ブランケット胴108は、円筒形状を有しており、特に図示しないモータ等によってその軸心を中心として回転駆動することが可能となっている。このような転写ロール107は、グラビアロール101に対向するように配置されている。
粘着層109は、図11に示すように、ブランケット胴108とブランケット110との間に形成されており、当該粘着層109によってブランケット110がブランケット胴108の周面上に固定されている。この粘着層109は、両面に表面粘着性を有する樹脂フィルムや金属シート等を、ブランケット胴108とブランケット110との間に介装することによって形成される。なお、粘着層を形成する方法や材料は特に限定されず、例えば、一方の面に表面粘着性を有するブランケット110をブランケット胴108の外周に直接巻回させることで、粘着層を形成しても良い。
ブランケット110は、グラビア版103から導電性インク106を受理し、基板2へ転写する機能を有しており、ブランケット胴108の外周に巻回されている。ここで、ブランケット110を構成する材料としては、一般的に、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フロロシリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、フッ素ゴム、アクリルゴム、またはクロロプレンゴム等の材料を用いているが、インクの離型性に優れているという観点から、シリコーンゴムを用いるのが好ましい。
本実施形態における回路基板1の製造方法としては、図10に示すように、まず、印刷工程として、基板2の表面に配線部3を印刷する。この印刷工程では、まず、図12(a)に示すように、充填工程S11として、グラビア版103の凹パターン103a内に導電性インク106を充填する。
このとき、グラビアロール101が軸中心に回転することで、導電性インク106がグラビア版103の表面に連続的に付着する。次に、ドクターブレード104によって、グラビア版103の凹パターン103a内に導電性インク106を充填しつつ、グラビア版103の表面に付着した余分な導電性インク106をグラビア版103上から掻き取る。本実施形態における「充填工程S11」が本発明における「第1の工程」の一例に相当する。
次に、図12(b)に示すように、受理工程S12として、転写ロール107をグラビアロール101に接近させ、グラビア版103とブランケット110を接触させた状態で、グラビアロール101と転写ロール107を共に回転させる。これにより、グラビア版103に充填されていた導電性インク106がブランケット110に受理される。本実施形態における「受理工程S12」が本発明における「第2の工程」の一例に相当する。
なお、グラビアロール101から転写ロール107へ導電性インク106の受理を停止させる場合は、転写ロール107をグラビアロール101から離反させることにより行う。
次に、図12(c)に示すように、転写工程S13として、転写ロール107を基板2に接近させ、ブランケット110を基板2に押し付けることで、転写ロール107から基板2へ導電性インク106を転写させる。このように、基板2に導電性インク106が印刷されることで、当該基板2の主面に所定の配線パターンが所定ピッチで繰り返し形成される。本実施形態における「転写工程S13」が本発明における「第3の工程」の一例に相当する。
このとき、従来では、電極部4と、電極部4の配線密度に対して相対的に低い配線密度を有する配線集合部5と、を同時に形成する場合、転写ロール107の中、電極部4を形成する部分と近接している引出配線51の部分を形成する領域では、吸収された溶剤が拡散し膨潤が過剰に進行する。このため、当該引出配線51の部分を形成する領域において、導電性インク106に対する転写ロール107の表面の濡れ性が高くなりインクの離型性が低下する。これにより、転写ロール107から基板2へ導電性インク106が転写されない場合があり、引出配線5に断線が生じるおそれがあった。
これに対し、本実施形態では、第2の領域42の配線密度P2は、第1の領域41の配線密度P1に対して相対的に低くなるよう形成されている。これにより、転写ロール107の膨潤の過剰な進行が抑制されるので、導電性インク106の離型性の低下による引出配線51の断線の発生を抑制することができる。
また、第2の領域42と引出配線51とが接続されることで、第1の領域41と引出配線51とが直接接続される場合と比較して、折り曲げ等による断線を抑制することができる。
さらに、本実施形態では、配線集合部5の配線密度P3は、第1の領域41の配線密度P1に対して相対的に低い。この場合、引出配線5と、当該引出配線5が接続されている第2の領域42と、の関係において、配線集合部5における配線密度P3と、第1の領域における配線密度P1に対して相対的に低い第2の領域における配線密度P2と、の差を小さくすることができる。これにより、グラビアオフセット法により基板2の主面に電極部4と引出配線51を同時に形成する場合において、転写ロール107(後述)の膨潤の過剰な進行がさらに抑制されるので、インクの離型性の低下による引出配線の断線の発生を抑制することができる。
また、本実施形態では、第1の領域41、第2の領域42、及び、配線集合部5は、それぞれの配線密度P1,P2,P3が下記(1)式を満たすよう形成されている。
(P1+P3)/2>P2・・・(1)
この場合、引出配線5と、当該引出配線5が接続されている第2の領域42との関係において、配線集合部5における配線密度P3と、第1の領域における配線密度P1に対して相対的に低い第2の領域における配線密度P2との差をさらに小さくすることができる。これにより、グラビアオフセット法により基板2の主面に電極部4と引出配線51を同時に形成する場合において、転写ロール107の膨潤の過剰な進行がさらに抑制されるので、インクの離型性の低下による引出配線の断線の発生を抑制することができる。
なお、転写ロール107から基板2への導電性インク106の転写を停止する場合は、転写ロール107を基板2から離反させることにより行う。
次に、乾燥工程S14として、特に図示しない乾燥炉内に基板2を載置する。このとき、基板2は、当該乾燥炉内でおよそ150[℃]、4分間の条件で加熱される。この間に導電性インク106は順次乾燥し、硬化する。これにより、基板2の主面に配線部3が形成される。なお、乾燥炉の具体例としては、例えば赤外線乾燥炉(以下単に、IR炉とも称する)や熱風乾燥炉等を例示することができる。
なお、本実施形態において、「グラビア版103」が本発明における「グラビア版」の一例に相当し、「導電性インク106」が本発明における「インク」の一例に相当し、「転写ロール107」が本発明における「転写体」の一例に相当する。
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態では、第2の領域42の配線密度P2は、第1の領域41の配線密度P1に対して相対的に低い。これにより、転写ロール107の膨潤の過剰な進行が抑制されるので、導電性インク106の離型性の低下による引出配線51の断線の発生を抑制することができる。
また、本実施形態では、第2の領域42と引出配線51とが接続されることで、第1の領域41と引出配線51とが直接接続される場合と比較して、折り曲げ等による断線を抑制することができる。
さらに、本実施形態では、配線部3は、配線集合部5における配線密度P3が第1の領域41における配線密度P1に対して相対的に低くなるように形成されている。この場合、引出配線5と、当該引出配線5が接続されている第2の領域42との関係において、配線集合部5における配線密度P3と、第1の領域における配線密度P1に対して相対的に低い第2の領域における配線密度P2と、の差をさらに小さくすることができる。これにより、グラビアオフセット法により基板2の主面に電極部4と引出配線51を同時に形成する場合において、転写ロール107(後述)の膨潤の過剰な進行がさらに抑制されるので、インクの離型性の低下による引出配線の断線の発生を抑制することができる。
また、本実施形態では、第1の領域41、第2の領域42、及び、配線集合部5は、それぞれの配線密度P1,P2,P3が下記(1)式を満たすよう形成されている。
(P1+P3)/2>P2・・・(1)
この場合、引出配線5と、当該引出配線5が接続されている第2の領域42との関係において、配線集合部5における配線密度P3と、第2の領域における配線密度P2との差をさらに小さくすることができる。これにより、グラビアオフセット法により基板2の主面に電極部4と引出配線51を同時に形成する場合において、転写ロール107の膨潤の過剰な進行がさらに抑制されるので、導電性インク106の離型性の低下による引出配線51の断線の発生を抑制することができる。
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
また、例えば、グラビア印刷法の代わりに、凸版印刷法や平版印刷法を用いて基板に回路を形成してもよい。つまり、転写体を用いて印刷を行うオフセット印刷法である限り、インクが充填される版の種類は凸版や平版であってもよい。
以下に、本発明をさらに具体化した実施例及び比較例により本発明の効果を確認した。以下の実施例及び比較例は、上述した実施形態における回路基板への断線発生の抑制効果を確認するためものである。
<実施例1>
以下、本実施形態の回路基板に係る実施例を説明する。
実施例1では、厚さ100[μm]のPETの主面に、グラビアオフセット印刷法を用いて厚さ2[μm]の配線を形成し、配線板を準備した。このとき、電極部は、網目状となるよう形成した。次に、配線板をIR炉内に載置し、およそ150[℃]、4分間の条件で加熱し、配線を硬化させることで、回路基板を作製した。
電極部の第1の領域について、配線の幅は50[μm]、空隙の幅は30[μm]であった。また、電極部の第2の領域について、配線の幅は30[μm]、空隙の幅は100[μm]であった。また、配線集合部について、引出配線の幅は50[μm]、空隙の幅は50[μm]であった。これにより、電極部の第1の領域の配線密度が83.9[%]であり、電極部の第2の領域の配線密度が41.8[%]であり、配線集合部の配線密度が50[%]である回路基板を得た。なお、第1の電極部、第2の電極部、配線集合部の配線密度は、上記(2),(3),及び,(4)式を用いて算出した。
以上に説明した構成の本実施例の試験サンプルに対して、以下の導通試験を行った。
具体的には、まず、基板上に配線部を印刷し、回路形成を行った。この作業を10回繰り返し、10枚の回路基板を作製した。次に、第1の電極部と引出配線間の抵抗値を測定し、当該配線部の導通を確認した。次に、導通した配線部の数量を求め、回路基板の良品数を求めた。
上記の導通試験の結果、良品数が10枚である場合には、回路基板への断線発生の抑制効果が優良であるとして「◎」とし、良品数が5〜9枚である場合には、回路基板への断線発生の抑制効果があるとして「○」とし、良品数が5枚未満である場合には、回路基板への断線発生の抑制効果が劣るとして「×」として評価を行った。
<実施例2>
実施例2では、本実施形態で説明した電極部の第2の領域について、空隙の幅が異なること以外は、実施例1と同様にして回路基板を作製した。このとき、電極部の第2の領域について、空隙の幅は70[μm]であった。これにより、電極部の第2の領域の配線密度が51[%]である回路基板を得た。
この回路基板についても、実施例1と同様にして導通試験を行った。
<実施例3>
実施例3では、実施例2と同様、本実施形態で説明した電極部の第2の領域について、空隙の幅が異なること以外は、実施例1と同様にして回路基板を作製した。このとき、電極部の第2の領域について、空隙の幅は50[μm]であった。これにより、電極部の第2の領域の配線密度が60.9[%]である回路基板を得た。
この回路基板についても、実施例1と同様にして導通試験を行った。
<実施例4>
実施例4では、実施例2と同様、本実施形態で説明した電極部の第2の領域について、空隙の幅が異なること以外は、実施例1と同様にして回路基板を作製した。このとき、電極部の第2の領域について、空隙の幅は30[μm]であった。これにより、電極部の第2の領域の配線密度が75[%]である回路基板を得た。
この回路基板についても、実施例1と同様にして導通試験を行った。
<比較例1>
比較例1では、本実施形態で説明した電極部の第2の領域について、配線の幅及び空隙の幅が異なること以外は、実施例1と同様にして回路基板を作製した。このとき、電極部の第2の領域について、配線の幅は50[μm]、空隙の幅は30[μm]であった。これにより、電極部の第2の領域の配線密度が83.9[%]である回路基板を得た。
この回路基板についても、実施例1と同様にして導通試験を行った。
実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、及び比較例1の試験結果を表1に示す。
表1に示す結果によると、本実施例の中、実施例1〜実施例3については、回路基板への断線発生の抑制効果が優良「◎」であることが分かった。また、実施例4については、回路基板への断線発生の抑制効果がある(「○」である)ことが分かった。一方、比較例1については、回路基板への断線発生の抑制効果が劣る(「×」である)ことが分かった。
以上のように、第2の領域の配線密度が第1の領域の配線密度に対して相対的に低い実施例1〜実施例4は、回路基板への断線発生の抑制効果を有していることが確認された。また、実施例1〜実施例3及び実施例4の結果から、上記(1)式を満たすことで、回路基板への断線発生の抑制効果が優れていることが確認された。
これは、第2の領域の配線密度と配線集合部の配線密度との差が小さいほど、転写ロールの膨潤の過剰な進行が抑制されるので、導電性インクの離型性の低下による引出配線の断線の発生が抑制されたと考えられる。
[1]本発明に係る回路基板は、基板と、前記基板の主面に設けられていると共に、複数の細線から構成される網目状の配線パターンを有する少なくとも1つの電極部と、前記基板の主面に形成されていると共に前記配線パターンに接続された少なくとも1つの引出配線と、を備えており、前記電極部は、第1の領域と、前記第1の領域における配線密度に対して相対的に低い配線密度を有する第2の領域と、を有しており、前記引出配線は、前記第2の領域で前記電極部に直接接続されていることを特徴とする。