JP2016045526A - 油圧圧下制御装置、油圧圧下制御装置の調整方法及び制御プログラム - Google Patents

油圧圧下制御装置、油圧圧下制御装置の調整方法及び制御プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】油圧圧下制御装置において、油圧シリンダーの制御ゲインを圧側と開放側とで調整する調整値を高精度に取得すること。
【解決手段】圧延機の作業ロール間の間隔を調整する油圧シリンダーのピストンの位置を制御する油圧圧下制御装置であって、前記油圧シリンダーにおけるピストンの位置の実測値を取得する実測値取得部と、前記油圧シリンダーへの油流入量を制御する油圧制御部が油圧シリンダーへの油流入量を制御する際の制御ゲインをピストンの位置の指令値及びピストンの位置の実測値に基づいて調整する制御ゲイン調整部とを含み、所定の周波数で位置指令値が振動する調整用信号を油圧制御部に対して出力し、油圧シリンダーのピストンの位置を作業ロール間の間隔を狭める方向に動かす場合と作業ロール間の間隔を広げる方向に動かす場合とで制御ゲインを調整するための差圧補償値を、調整用信号に対する実測値に基づいて決定することを特徴とする。
【選択図】図11

Description

本発明は、油圧圧下制御装置、油圧圧下制御装置の調整方法及び制御プログラムに関し、特に、圧延機の上下作業ロール間隔を制御する油圧圧下制御装置の自動調整方法に関する。
圧延機においては、被圧延材の製品品質に直結する板厚制御や操業の安定性に不可欠な張力制御等の自動制御が行われている。一般的な圧延機及び油圧圧下制御装置の全体構成を図17に示す。図17に示すように、圧延機の自動制御の操作端としては、圧延機の作業ロール速度や上下作業ロール間隔が用いられている。作業ロール速度は専用のロール速度制御装置により制御される。また、上下作業ロール間隔は専用の油圧圧下制御装置により制御される。
作業ロール間隔を制御する油圧圧下制御装置2は、油圧を調整することで油圧シリンダー11におけるピストンの位置を調整しロールギャップを制御する。そのため、油圧圧下制御装置2は、位置制御ループにおいて、油圧シリンダー11のピストン位置を検出する位置検出器13によって検出された位置実績値が、圧延機制御装置3から出力される位置指令値と一致するように、油圧シリンダー11にかかる油圧を調整するための油圧調整装置12を制御する。油圧圧下制御装置2における制御応答は、図17の油圧圧下制御装置2において“G”で示す制御ゲインによって決定される。油圧圧下制御装置2の位置制御応答は、油圧シリンダー11の油柱長さや、油圧の発生に用いる油の温度等の外部条件により変化する。
油圧圧下制御装置2が十分な位置制御応答を発揮できないと、圧延機で圧延する被圧延材の品質にとって重要な板厚精度が悪化する。また、油圧シリンダーに振動が発生することにより、被圧延材表面の品質が悪化することも起こり得る。
そのため、圧延機の試運転調整時には油圧圧下制御装置の調整を位置制御ループのステップ応答や周波数応答をとったりして十分に実施する(例えば、特許文献1参照)。この周波数応答による調整作業は、FFT(Fast Fourier Transform)アナライザといった検出器を油圧圧下制御装置に接続する必要等が有るため調整に要する時間が長い。そのため、従来は試運転調整時に調整した後、異常が発生した場合は、制御ゲインGを下げることのみで対応していた。そのため、せっかく試運転調整時に調整した油圧圧下制御装置の応答が維持できないという問題があった。
特開2009−282609号公報
圧延機における油圧シリンダーは、通常圧延機の下側に設置されており、下側から油圧をかけて作業ロールを押し上げることにより、作業ロール間隔を小さくする方向にシリンダーのピストン位置を調整する構造となっている。他方、押し下げ側は、常に一定の油圧をかけた状態となっており、それに圧延荷重の反力が加わって押し下げ側の圧力となる。押し下げ側と押し上げ側の圧力の釣り合いを崩すことで圧下シリンダーを上下に移動させることが可能となる。即ち、油圧シリンダーにおいては、押し上げ側の油圧を油圧調整装
置で調整するようになっている。
このように、圧下シリンダーは押し上げ側と押し下げ側の力の釣り合いにより動作し、油圧圧下制御装置は押し上げ側の油圧を変更することによりシリンダーのピストン位置を変化させて圧下位置を制御する。そのため、押し下げ側にかかる力である機械重量と圧延反力との合計によって動作応答が異なる。結果的に、圧下側と開放側の応答が異なることになり、圧下位置実績が指令値に追従しない現象が発生する。
そのような課題を解決するため、圧下位置制御装置においては、圧下側と開放側で位置制御ループのゲインを変更する制御(以下、「差圧補償」と略記する)が行われている。これに対して、特許文献1に開示された技術においては、差圧補償について考慮されていない。
上述したステップ状の波形を入力信号として用いることにより、圧下側、開放側、夫々のゲインを調整することは可能である。しかしながら、測定時のばらつきの大きいステップ応答による測定方法では、充分に調整する事が困難であり、機械構造からの計算値を設定していた。そのため、計算値と実際の油圧圧下制御装置の動作状態が合わず、圧下側と開放側で制御応答が異なる状態となっている場合も多く見られる。その場合、板厚制御がロールギャップを操作しても指令値と実績値の波形が異なる事となり、板厚制御精度が悪化するという問題が有る。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、油圧圧下制御装置において、油圧シリンダーの制御ゲインを圧下側と開放側とで調整する調整値を高精度に取得することを目的とする。
本発明の一態様は、圧延機の作業ロール間の間隔を調整する油圧シリンダーのピストンの位置を制御する油圧圧下制御装置であって、前記油圧シリンダーにおけるピストンの位置の実測値を取得する実測値取得部と、前記油圧シリンダーへの油流入量を制御する油圧制御部が油圧シリンダーへの油流入量を制御する際の制御ゲインをピストンの位置の指令値及びピストンの位置の実測値に基づいて調整する制御ゲイン調整部とを含み、所定の周波数で位置指令値が振動する調整用信号を油圧制御部に対して出力し、油圧シリンダーのピストンの位置を作業ロール間の間隔を狭める方向に動かす場合と作業ロール間の間隔を広げる方向に動かす場合とで制御ゲインを調整するための差圧補償値を、調整用信号に対する実測値に基づいて決定することを特徴とする。
本発明を用いることにより、油圧圧下制御装置において、油圧シリンダーの制御ゲインを圧側と開放側とで調整する調整値を高精度に取得することができる。
本発明の実施形態に係る油圧圧下制御装置の自動調整全体を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係る圧延機の制御全体を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係る圧延機の操業動作例を示す図である。 本発明の実施形態に係るロール組替処理動作を示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係る油圧シリンダーの構成を示す図である。 本発明の他の実施形態に係る開放側補正ゲインと圧下側補正ゲインとの関係を示す図である。 本発明の実施形態に係る制御ゲイン調整装置の機能構成を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係る油圧圧下制御装置の周波数応答測定による調整方法を示す図である。 本発明の実施形態に係る油圧圧下制御装置の周波数応答測定による調整方法において、差圧補償ゲインが不適切である場合の例を示す図である。 本発明の実施形態に係る周波数応答測定による油圧圧下制御装置の調整動作を示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係る簡易入力波形による応答測定方法における入力波形を示す図である。 本発明の実施形態に係る簡易入力波形による応答測定方法において、差圧補償ゲインが適切である場合と不適切である場合との例を示す図である。 本発明の実施形態に係る簡易入力波形による油圧圧下制御装置の調整動作を示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係る簡易入力波形での応答調整実施タイミングを示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係る差圧補償ゲインの調整動作を示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係る制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。 従来技術に係る油圧圧下制御装置の自動調整全体を示すブロック図である。
本実施例では、図1に示すような1台の圧延機スタンド1と左リール101および右リール102より構成されるシングルスタンド圧延機を例に、油圧圧下制御装置2の調整方法について説明する。
シングルスタンド圧延機は、1台の圧延機スタンドと、圧延機スタンドの左右に、コイル状に巻き取った被圧延材を払い出し、若しくは巻き取るための左リール101及び右リール102を含む。圧延方向を右行きとすると、被圧延材は左リール101より巻き出されて、圧延機スタンド1にて圧延された後、右リール102にて巻き取られる。
シングルスタンド圧延機の場合、リバース圧延が一般的に行われており、右リール102にて巻き取られた被圧延材は、左行きの圧延方向では右リール102より巻きだされて、圧延機スタンド1にて再度圧延加工されて左リール101に巻き取られる。この工程を被圧延材毎に予め決められた製品仕様を満足するまで実施することで製品となる被圧延材を生産する。
圧延機スタンド1は複数のロールより構成されるが、被圧延材103を上下から挟み込む上下の作業ロール104から被圧延材にかけられる圧延圧力と、左右リールを駆動する電動機により被圧延材にかけられる張力により、被圧延材がつぶされ、延ばされることで圧延加工は実施される。
圧延機の制御方法の概要を図2に示す。圧延機で生産される被圧延材製品にとって最も重要となるのが長手方向(圧延方向)の板厚精度である。図2に示すように、圧延機スタンド1の左右には入側板厚計111及び出側板厚計112が設けられている。入側板厚計111及び出側板厚計112の出力は、圧延機制御装置3内のFF AGC(Feed Forward Automatic gauge Control)116およびFB
AGC(Feed Back Automatic Gauge Control)117に夫々入力される。FF AGC116及びFB AGC117は、入力された被圧
延材の板厚に基づき、圧延機制御装置3内の圧延機制御部118が出力する位置指令値を修正する。このような制御により作業ロール間隔(ロールギャップ)が制御され、長手方向の板厚精度が保たれる。
圧延操業は、圧延機制御部118が、左リール制御装置114、右リール制御装置115およびミル速度制御装置113に対して、夫々左リール101、右リール102および圧延機スタンド1のロール速度を制御するための信号を出力することにより実施される。圧延機制御部118は、圧延機のオペレータが操作盤110を操作して入力した各種指令に従って圧延機スタンド1を動作させる。
図3に圧延機の操業動作例を示す。図3に示すように、本実施形態においては、圧延機制御装置3に設けられた操業モード選択SW150にて、圧延機の操業モードを選択する。本実施形態においては、操業モードとして、通常の「圧延」操業、圧延操業を停止する「操業停止」および「ロール組替」がある。「ロール組替」は、圧延操業により作業ロールや中間ロール、バックアップロール等が磨耗するため、定期的またはロール表面状態の悪化が著しい場合に各ロールを交換するモードである。
「ロール組替」が選択されると、圧延機制御部118は、圧延機を停止して圧下を開放する。その状態でオペレータは、ロール交換(必要に応じて、作業ロール、中間ロール、バックアップロールを交換する)を実施する。その後、「零調処理開始」SWをオペレータが押す事で、圧延機制御部118が零調処理を実施する。各ロールは圧延により表面が磨耗すると、表面を研磨して再度使用するため、ロール径がまちまちとなる。そのため、ロール組替前後で、ロール径の組合せが異なる事になる。
油圧シリンダー11におけるピストンの位置は、位置検出器13で測定可能であるが、同じ位置でもロールギャップの大きさはロール径の組合せにより異なるため、ロール交換を実施する毎にロールギャップをある基準値にあわせる必要が有る。通常は、圧下を閉して、圧延荷重が例えば5000kNとなるピストン位置をロールギャップ=0と定義し、零調処理を実施する。
図4を参照して、本実施形態に係る零調処理について説明する。零調処理においては(S401)、上下作業ロールが接触するまで圧下を締込む処理(S402、S403)、その後、ロールを空転(被圧延材が上下作業ロール間に無い状態で圧延機を低速で運転する)させ(S404)、圧延荷重が5000kNとなるまで再度圧下を締込む処理(S405、S406)、圧延荷重が5000kNとなった状態で、ロールギャップを0とする処理(ロールギャップ零調)(S407)が実行される。その後、ロールを開放してロール空転を停止させる(S408)ことにより、零調処理が終了する。
圧延操業を実施する「圧延」モード選択時、オペレータは、「徐動」、「加速」、「保持」、「停止」のSWを用いて、圧延機の圧延速度を操作して圧延操業を実施する。これらのSWは、操業モード選択SW150と同様に、圧延機制御装置3に設けられている。図3に示すように、「徐動」が選択されることにより、圧延機は徐動速度まで加速してその速度で運転する。次に、「加速」が選択されることにより、圧延速度は加速される。そして、「保持」が選択されることにより、その時点での圧延速度で運転が継続される。この状態において、圧延が実行される。その後、「徐動」が選択されることにより、圧延速度は徐動速度へ減速され、「停止」が選択されることにより圧延速度が0となって圧延機が停止可能な状態となる。
以上述べたように、圧延機制御装置3は、圧延機のオペレータからの指令を受けて、圧延機を動作させているため、現状圧延機がどのような状態にあるか(圧延中なのか、ロー
ル組替中なのか等)を認識することが可能である。従って、本実施形態に係る圧延機の制御系統においては、圧延機の状態に応じて、油圧圧下制御装置の調整方法を変更することが可能となる。
図5に油圧シリンダー11の詳細を示す。図5に示すように、油圧シリンダー11においては、背圧側と圧下側が押し合った状態でつりあっている。背圧側は、常に一定の固定圧力が加えられていると共に、圧延機の圧延荷重の反力が加わっている。圧下側は、油圧発生装置14から加えられる油圧が油圧調整装置12によって調整されている。
圧下する場合は、油圧圧下制御装置2が、圧下側の油圧を背圧側より大きくするよう油圧調整装置12を操作し、油圧シリンダー11への油流入量を増やす。他方、開放する場合は、圧下側の油圧を背圧側の油圧より小さくするように油圧調整装置12を操作する。そのため、背圧側にかかる圧力である圧延機の圧延荷重と固定圧力との合計によって、圧下または開放するのに必要な圧下側の圧力が変化し、制御応答が変化する。
圧下側と開放側で制御応答が異なると、AGC等の制御に悪影響を与えるため、制御応答を同じくするよう差圧補償ゲインを設定する。例えば、圧延荷重が大きく、圧下側が動作しづらい場合は、圧下側の差圧補償ゲインを大きくし、開放側の差圧補償ゲインを小さくする。つまり、図6のような圧下側補正ゲイン、開放側補正ゲインを設定する。この差圧補償ゲインが差圧補償値として用いられる。
油圧圧下制御装置2内においては、位置検出器13によって検出された位置実績値と、圧延機制御装置3が出力する位置指令値との差分である位置偏差に制御ゲインG及び差圧補償ゲインGdiffを積算することによって、油圧調整装置への制御出力を決定する。ここで、“位置偏差=位置指令値−位置実績値”である。差圧補償ゲインGdiffは、差圧補償ゲイン設定部21により、位置偏差に基づいて求められる。差圧補償ゲイン設定部21は、位置偏差の符号に応じて圧下側補正ゲインを用いるか開放側補正ゲインを用いるか決定する。
図6上部は、圧延荷重の値に応じた開放側補正ゲイン及び圧下側補正ゲインの値の変化を示すグラフであり、図6下部は実際に設定される値を示すテーブルである。図6下部に示すように、差圧補償ゲインは開放側補正ゲイン及び圧下側補正ゲイン夫々の値のセットである。
位置指令値に対する応答性は制御ゲインGによって調整されるため、差圧補償ゲインGdiffは圧下側と開放側との応答性の差異を調整するための係数である。そして、制御ゲインGによって調整される全体の応答性を維持するため、開放側補正ゲインと圧下側補正ゲインとのセットは、圧下側補正ゲインと開放側補正ゲインとの積が1となるように値が選択される。
例えば、シリンダーのピストン位置が大きい方が圧下側、小さいほうが開放側と考えると、差圧補償ゲイン設定部21は、位置偏差がマイナス側の場合は開放側に動作するため開放側補正ゲインを選択する。逆にプラス側の場合は圧下側に動作するため圧下側補正ゲインを選択する。
この圧下側、開放側の補正ゲインも、外気温や油圧シリンダー11のピストン位置によって変化するため、圧下側と開放側の応答を確認し、差が大きい場合は、制御補正ゲインを変更する必要が有る。圧下側と開放側の応答を測定する必要が有るため、ステップ入力を用いて確認することになる。しかしながら、ステップ波形では圧下側開放側で応答に差があっても明確な応答さとして現れない場合が多いため、調整は困難である。
ステップ入力を用いた場合、制御補正ゲインの調整においては、圧下側と開放側につき波形の立ち上がり時間を測定して差が大きい場合に、差が小さくなるように圧下側または開放側の制御補正ゲインを修正する。それにより、制御応答も変化するため、周波数応答を再度測定する必要があり、調整に時間を要する。
油圧圧下制御装置の調整は、図7に示すような制御ゲイン調整装置4を用いて実施する。測定方法設定装置404は、圧延機の状態に応じて調整方法選択装置6から、どのような方法で測定するかの指示を受け、測定方法を選択する。そして、測定方法設定装置404は、決定した測定方法を信号発生装置401に通知する。これにより、信号発生装置401が、測定方法に応じた入力波形を発生させる。
また、測定方法設定装置404は、信号解析装置402に対して、入力信号と出力信号をどのような方法で解析するかを通知する。制御ゲイン変更装置403は、信号解析装置402での解析結果を基に、制御ゲインの調整を行って油圧圧下制御装置に通知する。
上述した調整方法選択装置6が選択する油圧圧下制御装置の調整方法として、本実施形態においては、周波数応答測定によるもの、簡易入力波形によるものの2種類の方法がある。以下、周波数応答測定によるものを「調整方法1」、簡易入力波形によるものを「調整方法2」として説明する。
先ず、調整方法1について、図8を参照して説明する。図8上段の図は、調整方法1の調整を実行する際に、信号発生装置401が出力する掃引周波数波形である。また、図8下段の図は、上段の入力波形に対する応答波形、即ち、位置検出器13による検出信号の波形のボード線図である。調整方法1においては、圧延機の機械装置ごとに設定される目標周波数における目標位相余裕より位相余裕が良くなるように制御ゲインを調整する。
たとえば、制御ゲインAの場合の周波数応答のボード線図が、図8下段における破線で示される場合、“目標周波数”において“目標位相余裕”を満たしていない。この場合、油圧圧下制御装置2が制御ゲインを大きくして制御ゲインBとすることで、実線のようなボード線図が得られたとすると、“目標周波数”において“目標位相余裕”を満たしているので、油圧圧下制御装置2は、制御ゲインBを選択する。
尚、上記“目標周波数”とは、圧延機の運用において、油圧圧下制御装置2が油圧調整装置12を制御する際の制御信号の変化頻度として考えられ得る最大の変化頻度に対応する周波数である。また、上記“目標位相余裕”とは、上述した制御信号の最大の変化頻度に対する実測値に求められる追従性を示す値であり、例えば、−90°の位相遅れである。尚、“目標周波数”を最大の変化頻度に対応する周波数とする理由は、フィードバック制御において、一般的には、周波数が大きくなるほど追従性が悪くなるためである。
図8上部に示すように、入力波形として周波数が変化する正弦波が用いられるが、信号発生装置401は、図8上部に示す波形を順波形とし、振幅を反転させた逆波形も入力する。順波形及び逆波形は正弦波であるため、油圧圧下制御装置が圧下側に動作している周波数帯と、開放側に動作している周波数帯とに分かれる。そのため、圧下側と開放側で油圧圧下の制御応答が異なると、図9(a)に示すように順波形を入力した場合と、図9(b)に示すように振幅の符号を逆転した逆波形を入力した場合では、周波数応答が異なる。
図9(a)、(b)は、圧下側と開放側の制御応答が異なる状態での周波数測定結果であるが、破線の丸印で囲った部分で、位相遅れが異なっているのが分かる。ボード線図の
横軸の位置において圧下側の制御が行われた結果か開放側の制御が行われた結果かは、図8の上段に示す入力波形に基づき、周波数によって判断することが可能である。従って、位相遅れが順波形と逆波形で異なる周波数領域が分かれば、差圧補償ゲインセットの値が圧下側、開放側のいずれに偏っているかを判断することが出来る。
図9(a)、(b)において、圧下側及び開放側のゲインが理想的な状態の場合のグラフが破線で示されている。この理想値のグラフは、例えば図9(a)、(b)に実線で示す夫々のグラフの平均値をとることによって求めることが出来る。そして、圧下側補正ゲインと開放側補正ゲインとの偏り量は、実線のグラフと破線のグラフとの差分値によって求めることが可能である。
従って、信号解析装置402は、計算により求めた圧下側補正ゲインと開放側補正ゲインとの偏り量に基づき、差圧補償ゲインセットを変更することにより、差圧補償ゲインを調整する。
次に、調整方法1の調整を自動的に実施する場合の処理について、図10を参照して説明する。図10の例においては、位相遅れ−90度における入力信号周波数を設定周波数となるように調整する場合を考える。図10に示すように、調整開始すると、まず、制御ゲイン調整装置4は、適当な制御ゲイン=Xと制御ゲイン=Yを用いて、周波数応答の測定を実施する(S1001、S1002)。
S1001及びS1002の処理を実行した後、制御ゲイン調整装置4は、測定結果をチェックし(S1003)、制御ゲインX及び制御ゲインYにおける−90°位相遅れの周波数XR及びYRを取得する。そして、制御ゲイン調整装置4は、ゲイン設定X、Yおよび目標周波数xrefより、制御ゲインを以下の式(1)に従って、直線近似によりxに変更する(S1004)。そして、制御ゲイン調整装置4は、再度掃引波形を用いて周波数応答を測定する(S1005)。

S1005の処理を実行した後、制御ゲイン調整装置4は、その結果をチェックし(S1006)、設定周波数にならない場合は(S1007/NO)、今回の制御ゲインxと−90度位相遅れの周波数xRを夫々Y、YRに置き換えて、再度制御ゲインを変更して測定を実施する(S1004、S1005)。
他方、S1006のチェックの結果、設定周波数になっている場合(S1007/YES)、制御ゲイン調整装置4は、差圧補償ゲインの調整動作を実行する。差圧補償ゲインの調整動作については後に詳述する。
このように、本実施形態に係る調整方法1の調整においては、制御ゲイン調整装置4が、制御ゲイン変更と周波数応答測定を繰り返す事により、−90度位相遅れの周波数を目標周波数とすることができた制御ゲインxを制御ゲイン設定値とする。目標周波数には許容範囲を設け、ある範囲内に−90度位相遅れ周波数が入った場合は結果チェックOKとすることが好ましい。
また、制御ゲイン調整が適正に行われた上で、差圧補償ゲインセットの変更と周波数応答測定を繰り返すことにより、圧下側補正ゲインと開放側補正ゲインとに偏りのない差圧補償ゲインセットが選択される。尚、理想的には、順波形を入力した場合と逆波形を入力
した場合との出力結果が同一となる差圧補償ゲインセットを選択することが好ましいが、ある程度の許容範囲を設け、圧下側補正ゲインと開放側補正ゲインとの偏り量が所定の範囲内となった場合にチェックOKとしても良い。
周波数応答測定による調整を行う場合、図8上段に示すような掃引波形を入力する必要があるため、1回の測定に時間がかかるという問題が有る。掃引波形としては、例えば1Hzから50Hzまでの周波数成分を入れる必要が有り、1回の掃引について大体30秒程度の測定時間を要する。そのため、測定に時間がかかり圧延操業の合間にロール組替を実施している場合、早急に圧延操業を再開するために長時間の測定が不可能である場合は、調整方法1に係る調整方法は用いることができない。
次に、調整方法2について図11を参照して説明する。短時間で周波数応答を確認し、制御ゲインを設定するためには、目標周波数における迅速な測定を行う必要が有る。そのため、調整方法2においては、信号発生装置401が、単一の周波数成分からなる波形を出力し、その応答信号に基づいて調整を実行する。
図11上段の図は、調整方法2の調整を実行する際に信号発生装置401が出力する波形の例として、25Hzの周波数成分を示す図である。また、図11下段の図は、調整方法2の原理を説明するために、実際よりも低い10Hzの周波数で、信号発生装置401の出力波形及びそれに対する位置検出器13の実測値による出力波形を示した図である。
図11に示すように、調整方法2において信号発生装置401は、目標周波数のみからなる波形を、振幅0から設定最大振幅まで増大させ、定められた最大振幅値まで達した後、振幅0まで減衰させてから測定終了させる。この様な波形とするのは、設定最大振幅で目標周波数成分を入れると圧延機機械やロールに損傷を与える事が考えられためである。即ち、図11上段に示すような波形を用いることにより、圧延機機械やロールに損傷を与えることを回避することができる。
図11の下段に示すように、単一周波数成分であれば、入力波形と出力波形を比較する事により、振幅の大きさおよび位相遅れを容易に測定することができる。位相遅れの値については、サンプリング可能な最小分解能で入力波形と出力波形をずらして相関係数をとり、相関係数が最小となる時に、入力波形と出力波形とをずらしている値を用いる。その場合、周波数応答測定、即ち、調整方法1の実行結果による測定結果から目標周波数における位相ズレが予測できるため、予測ズレの前後で入力波形と出力波形をずらすことで探索範囲を狭める事が可能である。
図11上部に示すような波形を、測定用入力波形として用いる場合、約5秒間で1回の測定が可能となる。また、周波数応答測定時は、FFT演算が必要なため多大な計算時間を要したが、簡易波形での測定の場合相関係数を取るだけであるので演算量を少なくでき、制御ゲイン調整装置4の計算能力でも迅速に処理可能となる利点がある。
図12(a)、(b)に簡易入力波形を用いた場合の、油圧圧下制御装置の差圧補償ゲインの調整方法を示す。圧下側と開放側で油圧圧下制御の応答に差が無い場合は、図12(a)に示すように、実績波形は圧下側、開放側に均等に分布する。それに対して、例えば圧下側の応答が開放側に比べて良好な場合は、図12(b)に示すように、入力波形の振動の中心に対して圧下側に偏って分布するようになる。
このことから、位置指令値として簡易測定波形を入力した場合に、位置実績値の出力波形がどちら側に偏ったかを判定できれば、差圧補償ゲインの調整が可能となる。どちら側に偏ったかの判定指数(以降、「応答差指数」とする)PINDEXは、例えば、以下の
式(2)に示すように、出力波形を構成する各値fb(i)の平均値を用いることが可能となる。ここで、nは出力波形を構成する各値の総数である。

図12(a)の状態のように、圧下側と開放側とで油圧圧下制御の応答に差が無く、実績波形が圧下側、開放側に均等に分布している場合、判定指数PINDEXはゼロ、若しくはゼロに近い値となる。他方、図12(b)の状態のように圧下側に偏って分布している場合、判定指数PINDEXはプラスの値となる。逆に、開放側に偏って分布している場合、判定指数PINDEXはマイナスの値となる。
従って、出力波形に基づいて上記式(2)の計算により求めた判定指数PINDEXがプラスである場合、信号解析装置402は、現在の差圧補償ゲインのセットよりも圧下側補正ゲインが小さく、開放側補正ゲインが大きいセットを選択する。他方、判定指数PINDEXがマイナスである場合、信号解析装置402は、現在の差圧補償ゲインのセットよりも圧下側補正ゲインが大きく、開放側補正ゲインが小さいセットを選択する。
次に、調整方法2の調整を自動的に実施する場合の処理について、図13を参照して説明する。図13に示すように、調整開始すると、まず、制御ゲイン調整装置4は、適当な制御ゲイン=Xと制御ゲイン=Yを用いて、周波数応答の測定を実施する(S1301、S1302)。
S1301及びS1302の処理を実行した後、制御ゲイン調整装置4は、測定結果をチェックし(S1303)、制御ゲインX及び制御ゲインYにおける位相遅れ値XD及びYDを取得する。そして、制御ゲイン調整装置4は、ゲイン設定X、Y及び上記位相遅れ値XD、YDに基づき、位相遅れ値が−90°となるゲイン設定値xを、以下の式(3)を用いて直線近似により求める(S1304)。尚、式(3)における“xref”は、目標の位相遅れ値、即ち、−90°である。

そして、制御ゲイン調整装置4は、S1304において求めた制御ゲイン設定値xを用いて、再度簡易波形で応答測定を行う(S1305)。S1305の処理を実行した後、制御ゲイン調整装置4は、その結果をチェックして(S1306)、制御ゲインxにおける位相遅れ値xDを求め、位相遅れ値xDが−90°の位相遅れを満たしていなければ(S1307/NO)、今回の制御ゲインx及び位相遅れ値xDを夫々Y、YRに置き換えて、再度制御ゲインを変更して測定を実施する(S1304.S1305)。
他方、S1306のチェックの結果、位相遅れ値xDが−90°の位相遅れを満たしていれば(S1307/YES)、制御ゲイン調整装置4は、次に差圧補償ゲインの調整動作を実行する(S1308)。差圧補償ゲインの調整動作については後に詳述する。
圧延機が操業停止している状態では、上記で述べた周波数応答測定および簡易入力波形による応答調整が可能であるが、圧延機が操業状態の場合、図8や図11に示すような測定用入力波形を油圧圧下制御装置に対して与える事は、板厚精度の悪化や操業の外乱を招
くため不可である。
図14は、調整方法2による調整を実行するタイミングの一例を示すフローチャートであり、図4において説明したロール交換及びロールギャップの調整処理において実行する場合を示している。図14に示すように、S1401〜S1407までは、図4のS401〜S407と同様に処理が実行される。ロールギャップ零調処理を実行した後、上述した調整方法2による調整が実行される(S1408)。その後、図4のS408と同様にロールを開放してロール空転を停止させる(S1409)ことにより、零調処理が完了する。
ロール組替の後、ロールギャップ零調の完了後は、圧延機に荷重がかかった状態であり、圧下位置の基準値を決める条件が整った状態であるため、ロール組替の実施毎に一定の条件下での測定が可能となる。このため、このタイミングで調整方法2による調整を行うことにより、装置の効率的な運用が可能となる。
尚、調整方法2の調整を実行するためには、少なくとも、図11に示すような波形を生成するための周波数、即ち、目標周波数の情報が必要である。この情報は、オペレータによって信号発生装置401内に設けられている記憶媒体に予め記憶されており、信号発生装置401は、その情報に基づいて図11に示すような波形を生成して出力する。
次に、本実施形態に係る差圧補償ゲインの調整動作について図15を参照して説明する。図13に示すように、差圧補償ゲインの調整を開始すると、まず、制御ゲイン調整装置4は、適当な差圧補償ゲインセット=Xと差圧補償ゲインセット=Yを用いて、周波数応答の測定を実施する(S1501、S1502)。
S1501、S1502の処理において、制御ゲイン調整装置4は、調整方法1の調整中である場合には、図8上段に示す出力波形を用い、調整方法2の調整中である場合には図11上段に示す出力波形を用いる。
S1501及びS1502の処理を実行した後、制御ゲイン調整装置4は、測定結果をチェックし(S1503)、差圧補償ゲインセットX及び差圧補償ゲインセットYにおける圧側及び開放側の制御ゲインの偏りを取得する。この際、調整方法2の場合には、上述した応答差指数を取得する。
そして、制御ゲイン調整装置4は、差圧補償ゲインセットX、Y及び圧側及び開放側の制御ゲインの偏りに基づき、制御ゲインの偏りが無くなるような差圧補償ゲインセットxを求める(S1504)。S1504において、制御ゲイン調整装置4は、上述した式(1)、(2)と同様に、直線近似を行い、その結果に最も近い差圧補償ゲインセットを、図6下段に示すようなテーブルから取得する。
そして、制御ゲイン調整装置4は、S1504において求めた差圧補償ゲインセットxを用いて、再度応答測定を行う(S1505)。S1505の処理を実行した後、制御ゲイン調整装置4は、その結果をチェックして(S1506)、差圧補償ゲインセットxにおける圧側及び開放側の制御ゲインの偏りを求め、その結果が許容範囲から外れていれば(S1507/NO)、今回の差圧補償ゲインセットxをYに置き換えて、再度差圧補償ゲインセットを変更して測定を実施する(S1504、S1505)。他方、S1506のチェックの結果、許容範囲内であれば(S1507/YES)、制御ゲイン調整装置4は処理を終了する。
本実施例の動作を、図1を用いて説明する。圧延機状態判別装置5は、圧延機制御装置
3からの、圧延状態、ロール組替状態、操業停止状態の情報を基に、圧延機の状態を判別する。調整方法選択装置6は、上記圧延機状態判別装置5による判別結果に基づき、ロール組替状態であれば調整方法2、操業停止状態であれば調整方法1を選択する。
調整方法選択装置6は、圧延機状態判別装置5による判別結果と、それに応じて選択すべき調整方法との対応を示すテーブル(以降、調整方法選択テーブルとする)を内部の記憶媒体に記憶しており、圧延機状態判別装置5による判別結果に対応する調整方法を上記テーブルに基づいて選択する。
制御ゲイン調整装置4は、調整方法選択装置6によって選択された調整方法に応じた応答調整を実施する。図7に示すように、調整方法選択装置6からの調整方法1、2の選択情報に基づき、測定法設定装置404が信号発生装置401に入力信号を発生させると共に、信号解析装置402に対して、入力信号と出力信号を取込むタイミング及び信号の解析方法を設定する。
信号解析装置402では、調整方法1、2のそれぞれに応じて、FFTやパターンマッチング等の信号処理を実施して制御ゲインの適否を判定し、制御ゲインをどのように変化するかを制御ゲイン変更装置403に出力する。制御ゲイン変更装置403は、信号解析装置402から入力される信号に基づき、油圧圧下制御装置の制御ゲインG及び差圧補償ゲインGdiffを変更する。このような処理により、圧延機状態に応じて、最適な調整方法を選択して油圧圧下制御装置の調整を実施する事ができ、常に最適な状態で油圧圧下制御装置を使用することが可能となる。
ここで、油圧圧下制御装置2、圧延機制御装置3、制御ゲイン調整装置4、圧延機状態判別装置5及び調整方法選択装置6(以降、総じて制御装置とする)を構成するハードウェアについて、図16を参照して説明する。図16は、本実施形態に係る制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図16に示すように、本実施形態に係る制御装置は、一般的なサーバやPC(Personal Computer)等の情報処理端末と同様の構成を有する。
即ち、本実施形態に係る制御装置は、CPU(Central Processing
Unit)201、RAM(Random Access Memory)202、ROM(Read Only Memory)203、HDD(Hard Disk Drive)204及びI/F205がバス208を介して接続されている。また、I/F205にはLCD(Liquid Crystal Display)206及び操作部207が接続されている。
CPU201は演算手段であり、制御装置全体の動作を制御する。RAM202は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU201が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM203は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。
HDD204は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納されている。I/F205は、バス208と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。LCD206は、ユーザが制御装置の状態を確認するための視覚的ユーザインタフェースである。操作部207は、キーボードやマウス等、ユーザが制御装置に情報を入力するためのユーザインタフェースである。
このようなハードウェア構成において、ROM203やHDD204若しくは図示しな
い光学ディスク等の記録媒体に格納されたプログラムがRAM202に読み出され、CPU201の制御に従って動作することにより、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係る制御装置の機能が実現される。
尚、図1に示す各制御装置は、夫々が図16に示す構成を有する単体の装置として構成されても良いし、図16に示す構成一組の情報処理装置において、図1に示す各制御装置の複数の機能を実現することも可能である。
また、図1においては、油圧調整装置12を制御する装置を、狭義の油圧圧下制御装置2として説明したが、油圧圧下制御装置2が油圧調整装置12を制御するためには、上述したように、圧延機制御装置3、制御ゲイン調整装置4、圧延機状態判別装置5及び調整方法選択装置6が連動して機能している。即ち、これらの装置全体として、広義の油圧圧下制御装置が構成される。この場合、制御ゲイン調整装置4が、実測値取得部、制御ゲイン調整部及び動作状態判断結果取得部として機能する。また、油圧圧下制御装置2が、油圧制御部として機能する。
以上説明したように、本実施形態に係る油圧圧下制御装置2の制御ゲインを調整する制御ゲイン調整装置4によれば、図11に示すように、所定の周波数で油圧シリンダー11の位置指令値が振動する調整用信号を出力し、調整用信号に対する実測値に基づいて制御ゲインを調整する。その際、実測値の振幅における振動の中心の偏りに基づいて差圧補償ゲインを決定する。
このような処理であれば、測定時のバラつきによる調整誤差の少ない、高精度な調整を行うことが可能であり、油圧圧下制御装置において、油圧シリンダーの制御ゲインを圧側と開放側とで調整する調整値を高精度に取得することが可能となる。
尚、図1において、油圧圧下制御装置2、圧延機制御装置3、制御ゲイン調整装置4、圧延機状態判別装置5及び調整方法選択装置6を、別々のブロックの装置として説明しているが、上述したように、これらの装置が連動して圧延機を制御する。即ち、これらの装置が連動して圧延機の制御システムが構成される。
また、上記実施形態においては、調整方法2の調整を実行する際の条件として、ロール組替え状態であることを例として説明した。この他にも、調整方法2の調整を実行すべき条件が考えられ得る。例えば、ロールシフト位置変更、被圧延材の変更、圧延条件の変更、圧延機スタンド1のパスライン調整等である。
ロールシフト位置変更とは、ロールの回転軸方向にロールをずらす場合等である。この場合、作業ロール104にかかる荷重が変わるため、制御ゲインに対する制御応答も変わることになる。ロールシフト位置変更する際は、圧延動作は停止しているため、ロールシフト位置変更を行った場合は、調整方法2の調整を行う場合として適している。
被圧延材の変更とは、作業ロール104によって圧延される材料を変更する場合である。この場合も、材料が変更されることにより、作業ロール104にかかる荷重が変わることが考えられる。また、被圧延材を変更する際は、圧延動作は停止しているため、被圧延材を変更した場合も、調整方法2の調整を行う場合として適している。
圧延条件の変更とは、被圧延材を圧延する厚さ等、主として作業ロール104に加わる荷重が変化するような条件の変更を行う場合である。この場合も、被圧延材の板厚精度や表面品質を保つために圧延動作を停止するため、圧延条件を変更した場合も、調整方法2
の調整を行う場合として適している。
圧延機スタンド1のパスライン調整とは、作業ロール104が被圧延材を圧延する位置を、左リール101及び右リール102の位置に合わせるために、圧延機スタンド1が作業ロール104を支持する位置を調整する場合である。この場合も、作業ロール104にかかる荷重が変わることが考えられる。また、圧延機スタンド1の調整は、圧延動作を停止して行うため、圧延機スタンド1を調整した場合も調整方法2の調整を行う場合として適している。
このように、調整方法2による調整は、圧延機の操業を完全に停止するわけではないが、圧延動作を一度停止した上で、圧延動作の実行条件を変更し、再度圧延を再開する場合に特に適している。即ち、調整方法選択装置6は、圧延機状態判別装置5によって判断された圧延機の状態が、圧延動作の実行条件を変更するために、圧延動作が一時的に停止された状態である場合に、調整方法2による調整方法を選択することが好ましい。
また、このように調整方法2の調整を実行する場合の条件を拡張する場合、調整方法選択装置6が記憶している調整方法選択テーブルに、ロールシフト位置変更、被圧延材の変更、圧延条件の変更、圧延機スタンド1のパスライン調整等の状態と調整方法2の対応関係を記憶させ、圧延機状態判別装置5が、ロールシフト位置変更、被圧延材の変更、圧延条件の変更、圧延機スタンド1のパスライン調整等の状態を判別することにより可能である。
また、上記実施形態においては、図15に示すように、測定波形を入力して差圧補償ゲインセットを調整する方法について述べたが、測定波形を入力して結果をチェックし、応答測定結果が許容範囲であれば調整を実施せずに処理を終了し、許容範囲を超えた場合は調整を実施するようにすることも可能である。このような処理により、不要な処理を省略し、調整動作をより迅速に終了することができる。
1 圧延機スタンド、
2 油圧圧下制御装置、
3 圧延機制御装置、
4 制御ゲイン調整装置、
5 圧延機状態判別装置、
6 調整方法選択装置、
21 差圧補償ゲイン設定装置
11 油圧シリンダー、
12 油圧調整装置、
13 位置検出器、
14 油圧発生装置、
101 左リール、
102 右リール、
103 被圧延材、
104 作業ロール、
110 操作盤、
111 入側板厚計、
112 出側板厚計、
113 ミル速度制御装置、
114 左リール制御装置、
115 右リール制御装置、
116 FF AGC、
117 FB AGC、
118 圧延機制御部、
150 操業モード選択SW、
201 CPU、
202 RAM、
203 ROM、
204 HDD、
205 I/F、
206 LCD、
207 操作部、
208 バス、
401 信号発生装置、
402 信号解析装置、
403 制御ゲイン変更装置、
404 測定方法設定装置

Claims (8)

  1. 圧延機の作業ロール間の間隔を調整する油圧シリンダーのピストンの位置を制御する油圧圧下制御装置であって、
    前記油圧シリンダーにおけるピストンの位置の実測値を取得する実測値取得部と、
    前記油圧シリンダーへの油流入量を制御する油圧制御部が前記油圧シリンダーへの油流入量を制御する際の制御ゲインを前記ピストンの位置の指令値及び前記ピストンの位置の実測値に基づいて調整する制御ゲイン調整部とを含み、
    前記制御ゲイン調整部は、
    記憶されている周波数で前記位置指令値が振動する調整用信号を前記油圧制御部に対して出力し、前記調整用信号及び前記調整用信号に対する前記実測値に基づいて前記制御ゲインを調整し、
    前記油圧シリンダーのピストンの位置を前記作業ロール間の間隔を狭める方向に動かす場合と前記作業ロール間の間隔を広げる方向に動かす場合とで前記制御ゲインを調整するための差圧補償値を、前記実測値の振幅における前記調整用信号の振動の中心に対する偏りに基づいて決定することを特徴とする油圧圧下制御装置。
  2. 前記制御ゲイン調整部は、前記調整用信号として、前記記憶されている周波数で振幅ゼロから徐々に増大し、所定の振幅に達した後に徐々に減衰して振幅ゼロとなる信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の油圧圧下制御装置。
  3. 前記制御ゲイン調整部は、異なる複数の周波数による前記調整用信号前記油圧制御部に対して出力し、前記調整用信号に対する前記実測値の合計に基づく値を前記調整用信号の周波数に応じた判定指数として取得することを特徴とする請求項1に記載の油圧圧下制御装置。
  4. 前記差圧補償値は、前記油圧シリンダーのピストンの位置を前記作業ロール間の間隔を狭める方向に動かす場合及び前記作業ロール間の間隔を広げる方向に動かす場合夫々の場合において前記制御ゲインに乗ずる係数であり、
    前記制御ゲイン調整部は、前記作業ロール間隔を狭める方向に動かす場合の係数と、前記作業ロール間の間隔を広げる方向に動かす場合の係数との積が1となるように前記差圧補償値を決定することを特徴とする請求項1に記載の油圧圧下制御装置。
  5. 前記制御ゲイン調整部は、
    前記制御ゲインを調整するための調整方法として複数の調整方法を実行可能であり、
    前記制御ゲインの調整を実行する際、前記圧延機の動作状態を判断した結果が、前記圧延機が予め定められた所定の状態であることを示している場合、記憶されている周波数で前記位置指令値が振動する調整用信号を前記油圧制御部に対して出力することを特徴とする請求項1に記載の油圧圧下制御装置。
  6. 前記制御ゲイン調整部は、前記制御ゲインの調整を実行する際、前記圧延機の動作状態を判断した結果が、前記位置指令値が振動する調整用信号を前記油圧制御部に対して出力する場合とは異なる状態であることを示している場合、掃引周波数波形を用いた調整用信号であって、振幅を反転させた2つの信号を夫々前記油圧制御部に対して出力し、前記振幅を反転させた2つの信号に対する前記実測値の際に基づいて前記制御ゲインを調整することを特徴とする請求項5に記載の油圧圧下制御装置。
  7. 圧延機の作業ロール間の間隔を調整する油圧シリンダーの油圧を前記油圧シリンダーへの油流入量を調整することにより制御する油圧圧下制御装置の制御ゲインを、前記油圧シリンダーにおけるピストンの位置の実測値を取得し、前記ピストンの位置の指令値及び前
    記ピストンの位置の実測値に基づいて調整する油圧圧下制御装置の調整方法であって、
    記憶されている周波数で前記位置指令値が振動する調整用信号を前記油圧制御部に対して出力し、
    前記調整用信号に対する前記実測値を取得し、
    前記油圧シリンダーのピストンの位置を前記作業ロール間の間隔を狭める方向に動かす場合と前記作業ロール間の間隔を広げる方向に動かす場合とで前記制御ゲインを調整するための差圧補償値を、前記実測値の振幅における前記調整用信号の振動の中心に対する偏りに基づいて決定することを特徴とする油圧圧下制御装置の調整方法。
  8. 圧延機の作業ロール間の間隔を調整する油圧シリンダーの油圧を前記油圧シリンダーへの油流入量を調整することにより制御する油圧圧下制御装置の制御ゲインを、前記油圧シリンダーにおけるピストンの位置の実測値を取得し、前記ピストンの位置の指令値及び前記ピストンの位置の実測値に基づいて調整する油圧圧下制御装置の制御プログラムであって、
    記憶されている周波数で前記位置指令値が振動する調整用信号を前記油圧制御部に対して出力するステップと、
    前記調整用信号に対する前記実測値を取得するステップと、
    前記油圧シリンダーのピストンの位置を前記作業ロール間の間隔を狭める方向に動かす場合と前記作業ロール間の間隔を広げる方向に動かす場合とで前記制御ゲインを調整するための差圧補償値を、前記実測値の振幅における前記調整用信号の振動の中心に対する偏りに基づいて決定するステップとを情報処理装置に実行させることを特徴とする油圧圧下制御装置の制御プログラム。
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