JP2016044724A - 構造体の免震方法および免震装置ならびに免震装置に用いるボルト取り付け用積層ゴム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】内側鋼管30と、薄肉の筒状のゴムシート3202と薄肉の鋼管3204とが交互に積層された筒状積層ゴム32と、筒状積層ゴム32の外周面に取着された外側鋼管34とを備え、内側鋼管30の内側の空間はアンカーボルト24の軸部を挿通させるボルト挿通孔26とされたボルト取り付け用積層ゴム20が設けられている。アンカーボルト24を介して下部フランジプレート16が下部構造体12に取着された状態で、外側鋼管34は下部フランジプレート16に対して下部構造体12から離れる方向に対して一体に変位するように結合され、内側鋼管30はアンカーボルト24に対して鉛直方向に変位不能に結合され、筒状積層ゴム32はその軸方向にせん断変形可能な状態となっている。筒状積層ゴム32の上方ヘの変形量の上限を規制する規制手段22が設けられている。
【選択図】図1
Description
積層ゴムは、圧縮荷重に対しては強く、大きな圧縮荷重を支持して水平方向に小さな剛性で大きく変位できるが、引張り荷重に対しては弱いので、過大な引張り荷重が作用すると、免震装置としての特性が発揮できなくなり、最悪の場合破断してしまう可能性がある。対策としては、(1)引張り荷重が作用しないように設計するか、(2)引張り荷重が作用しても抵抗できる免震装置を使用するか、(3)積層ゴムに引張り荷重が作用しないような工夫をする、の3種類が考えられる。(1)の方法が一般に採用されるが、建物の形状から(1)の対策を採れない場合もある。そこで(2)、(3)の方法を採用することになるが、(2)の代表的な従来技術は、リニアガイドを用いた装置のみである。(3)の技術はいくつかあり公知となっている(例えば、特許文献1:特開2006−226387、特許文献2:特開平11−153191、特許文献3:特開2003−194146、特許文献4:特許4330171)。(3)の従来技術について以下に少し説明をする。
特許文献2〜4は、いずれも積層ゴム下部フランジプレートを下部構造に固定するアンカーボルトに工夫をしたもので、アンカーボルトとフランジプレートの間に弾性体を設置し、積層ゴムに引っ張り力が作用したときに、弾性体が変形し、積層ゴムが下部構造から離れて浮き上がり、積層ゴムに引っ張り力が作用しないようにしたものである。特許文献2は弾性体としてゴムシート、特許文献3は弾性体として皿ばね、特許文献4は弾性体としてリング状ゴム等を使用したものである。
積層ゴムタイプの免震装置で引抜きに対応するため積層ゴムを下部構造から浮上させ積層ゴムに引張力をさせないような従来技術がいくつかあるが、それぞれ欠点がある。
特許文献1は、積層ゴム周辺に大きなスペースが必要となること、鋼板を大量のアンカーボルトで固定しなければならず施工が大変である、鋼板なので錆等の耐久性対策が必要であることなどが欠点として挙げられる。
特許文献2は、ゴムシートを入れているだけなので、積層ゴムの浮上量が小さい。引抜き力が大きくなると、ゴムシートの圧縮変形が大きくなり破損してしまう可能性があるなどの欠点が挙げられる。
特許文献4は、アンカーボルトに比べ冶具が大きい、アンカーボルトと積層ゴム下部フランジレートとは水平方向に隙間があり、せん断力伝達のための機構が別途必要であることなどの欠点が挙げられる。
本発明の目的は、簡単な構造で、大きなスペースが必要とせず、設置が簡単で、積層ゴムにせん断力は伝達するが引っ張り力はできるだけ伝達しないような構造体の免震方法および免震装置ならびに免震装置に用いるボルト取り付け用積層ゴムを提供することにある。
また、請求項2記載の発明は、前記筒状積層ゴムの内周部は前記アンカーボルトの軸部に接合され、前記筒状積層ゴムと前記アンカーボルトとは一体化されていることを特徴とする。
また、請求項3記載の発明は、前記筒状積層ゴムの外周部は前記フランジプレートに形成された孔の内周面に接合され、前記筒状積層ゴムと前記フランジプレートとは一体化されていることを特徴とする。
また、請求項4記載の発明は、前記筒状積層ゴムの鉛直方向の変形量の上限を規制手段により規制するようにしたことを特徴とする。
また、請求項5記載の発明は、免震用積層ゴムと、前記免震積層用ゴムの上部に設けられ上部の構造体に取着される上部のフランジプレートと、前記免震積層用ゴムの下部に設けられアンカーボルトを介して下部の構造体に取着される下部のフランジプレートとを備える免震装置であって、内側鋼管と、前記内側鋼管の外周面に薄肉の筒状のゴムシートと薄肉の鋼管とが前記内側鋼管の半径方向外側に交互に積層されて構成された筒状積層ゴムと、前記筒状積層ゴムの外周面に取着された外側鋼管とを備え、前記内側鋼管の内側の空間は前記アンカーボルトの軸部を挿通させるボルト挿通孔とされたボルト取り付け用積層ゴムが設けられ、前記ボルト挿通孔に挿通された前記アンカーボルトを介して前記フランジプレートが前記構造体に取着された状態で、前記外側鋼管は前記フランジプレートが前記構造体から離れる方向に対して一体に変位するように前記フランジプレートに結合され、前記内側鋼管は前記アンカーボルトに対して前記フランジプレートが前記構造体から離れる方向に対して変位不能に結合され、前記筒状積層ゴムは鉛直方向にせん断変形可能な状態となっており、前記筒状積層ゴムの鉛直方向の変形量の上限を規制する規制手段が設けられていることを特徴とする。
また、請求項6記載の発明は、前記外側鋼管が前記フランジプレートに鉛直方向に変位不能に取着されることで前記ボルト取り付け用積層ゴムが予め前記フランジプレートに組み込まれており、前記アンカーボルトの頭部寄りの軸部の箇所に、前記内側鋼管の外径以下の寸法の外径を有し前記内側鋼管の軸方向の端面に当接可能な当接部が設けられ、前記ボルト挿通孔に挿通された前記アンカーボルトを介して前記フランジプレートが前記構造体に取着された状態で、前記当接部と前記内側鋼管の軸方向の端面とが当接していることを特徴とする。
また、請求項7記載の発明は、前記筒状積層ゴムの前記ボルト挿通孔の軸方向に沿った長さと、前記フランジプレートの厚さとは等しく、前記筒状積層ゴムの軸方向の両端面は、前記フランジプレートの上面、下面と同一面上に位置していることを特徴とする。
また、請求項9記載の発明は、前記アンカーボルトの頭部下面は、前記外側鋼管の前記構造体から離れた側の軸方向の端面に当接可能に形成され、前記アンカーボルトの頭部寄りの軸部の箇所に、前記内側鋼管の外径以下の寸法の外径を有し前記内側鋼管に当接可能な当接部が設けられ、前記フランジプレートにボルト挿通孔が形成されると共に、前記構造体から離れた側の前記ボルト挿通孔の箇所に、前記フランジプレートが前記外側鋼管と共に前記構造体から離れる方向で鉛直方向に変位した際に前記内側鋼管および前記筒状積層ゴムの収容を可能とした収容凹部が設けられ、前記ボルト挿通孔に挿通された前記アンカーボルトを介して前記フランジプレートが前記構造体に取着された状態で、前記当接部と前記内側鋼管とが当接し、前記外側鋼管の前記構造体側の軸方向の端面が前記収容凹部の周囲の前記下部フランジプレートの箇所に当接し、前記外側鋼管の前記構造体から離れた側の軸方向の端面が前記アンカーボルトの頭部下面から離れた箇所に位置していることを特徴とする。
また、請求項10記載の発明は、前記アンカーボルトの頭部下面は、前記内側鋼管の外径以下の寸法の外径を有し前記内側鋼管の軸方向の一方の端面に当接可能に形成され、前記フランジプレートにボルト挿通孔が形成されると共に、前記構造体から離れた側の前記ボルト挿通孔の箇所に、前記フランジプレートが前記外側鋼管と共に前記構造体から離れる方向で鉛直方向に変位した際に前記内側鋼管および前記筒状積層ゴムの収容を可能とし、かつ、前記内側鋼管の軸方向の他方の端面に当接可能な底面を有する収容凹部が設けられ、前記ボルト挿通孔に挿通された前記アンカーボルトを介して前記フランジプレートが前記構造体に取着された状態で、前記アンカーボルトの頭部下面と前記内側鋼管の軸方向の一方の端面とが当接すると共に前記外側鋼管の軸方向の一方の端面が前記下部フランジプレートに当接し、前記内側鋼管および前記筒状積層ゴムが鉛直方向において前記フランジが前記構造体から離れる方向で前記収容凹部の外部の箇所に位置していることを特徴とする。
また、請求項11記載の発明は、前記アンカーボルトは、頭部と、前記頭部から突設された軸部と、前記軸部の先部に雄ねじが形成され構造体側に結合される雄ねじ部と、前記頭部の直下の前記軸部の箇所に雄ねじが形成された第2の雄ねじ部とを有し、前記当接部は、前記第2の雄ねじ部に螺合されたナットで構成されていることを特徴とする。
また、請求項12記載の発明は、前記アンカーボルトの頭部下面は、前記アンカーボルトの軸方向において前記外側鋼管に当接可能に形成され、前記規制手段は、前記アンカーボルトの頭部下面と前記外側鋼管とで構成されていることを特徴とする。
また、請求項13記載の発明は、内側鋼管と、前記内側鋼管の外周面に薄肉の筒状のゴムシートと薄肉の鋼管とが前記内側鋼管の半径方向外側に交互に積層されて構成された筒状積層ゴムと、前記筒状積層ゴムの外周面に取着された外側鋼管とを備え、前記内側鋼管の内側の空間はボルトの軸部を挿通させるボルト挿通孔とされていることを特徴とする。
また、請求項14記載の発明は、前記ボルト挿通孔の軸方向に沿った前記内側鋼管、前記筒状積層ゴム、前記外側鋼管の長さは同一の寸法で形成され、前記軸方向の両端に位置する前記内側鋼管、前記筒状積層ゴム、前記外側鋼管の端面は同一面上に位置していることを特徴とする。
請求項2、3記載の発明によれば、部品点数の削減化、施工の簡単化を図れ、免震装置のコンパクト化を図る上で有利となる。
請求項4記載の発明によれば、筒状積層ゴムの鉛直方向のせん断変形を、筒状積層ゴムの特性が変化しない範囲に収まるように設定でき、筒状積層ゴムの耐久性を確保する上で有利となる。
請求項5記載の発明によれば、免震用積層ゴムに軸方向の引っ張り力が作用したとき、筒状積層ゴムが上下方向にせん断変形し、免震装置は下部構造体から浮き上がり、免震用積層ゴムの引張り変形を小さく抑えることができる。したがって、何らスペースを確保することなく、しかも簡単に施工でき、ボルト取り付け用積層ゴムは破損することもなく、免震用積層ゴムに作用する引張り荷重を低減でき、免震用積層ゴムの破断、損傷を防止する上で有利となる。
請求項6記載の発明によれば、部品点数の削減化、施工の簡単化を図れ、免震装置のコンパクト化を図る上で有利となる。
請求項7記載の発明によれば、ボルト取り付け用積層ゴムを予め下部フランジプレートに取り付けておくことで、従来と同様な施工手順で免震装置を設置でき、施工の簡単化、免震装置のコンパクト化を図る上で有利となる。
請求項8記載の発明によれば、前記筒状積層ゴムに予め掛ける荷重の値を適宜設定することで、免震装置が浮上する引抜き力を任意に設定できる。
請求項11記載の発明によれば、アンカーボルトとナットを利用して当接部を簡単に得ることができる。
請求項12記載の発明によれば、アンカーボルトと外側鋼管を利用して規制手段を簡単に得ることができる。
請求項13記載の発明によれば、免震装置に用いられ免震用積層ゴムの破断、損傷を防止する上で有利となる。
請求項14記載の発明によれば、ボルト取り付け用積層ゴムの取り扱い性や保管性を向上できる。
図1、図2を参照して、まず、第1の実施の形態から説明すると、免震装置10は、上部構造体(不図示)と下部構造体12との間に設けられ、下部構造体12上において上部構造体を免震支持するものである。
ここで下部構造体12とは、例えば、基礎や建物であり、上部構造体とは、建物や柱、床などであり、免震装置10はこのような上部構造体と下部構造体12との間に複数設けられる。
免震装置10は、免震用積層ゴム14と、免震用積層ゴム14の上部に接合された上部フランジプレート(不図示)と、免震用積層ゴム14の下部に接合された下部フランジプレート16と、下部フランジプレート16に設けられたボルト取り付け用積層ゴム20と、規制手段22とを備えている。
上部フランジプレートは、免震用積層ゴム14の上部をアンカーボルトを介して上部構造体に取り付けるものであり、下部フランジプレート16は、免震用積層ゴム14の下部をアンカーボルト24を介して下部構造体12に取り付けるものである。
上部フランジプレートと下部フランジプレート16は、免震用積層ゴム14よりも大きい断面で形成され、上部フランジプレートと下部フランジプレート16の中心と免震用積層ゴム14の軸心とは合致し、それらプレートの周方向に間隔をおいた複数箇所に、アンカーボルト24を挿通させるボルト挿通孔26が形成されている。
内側鋼管30の内側の空間は、アンカーボルト24の軸部を挿通させるボルト挿通孔26となっている。
筒状積層ゴム32は、内側鋼管30の外周面に薄肉の筒状のゴムシート3202と薄肉の鋼管3204とが内側鋼管30と同軸上で内側鋼管30の半径方向外側に交互に重ね合わされ接合されて構成されている。
外側鋼管34は、その内周面が筒状積層ゴム32の外周面に取着され、外側鋼管34の外周面に雄ねじ3402が形成されている。
内側鋼管30、筒状積層ゴム32、外側鋼管34は同軸上に位置し、ボルト挿通孔26の軸方向に沿った内側鋼管30、筒状積層ゴム32、外側鋼管34の長さは同一の寸法で形成され、軸方向の両端に位置する内側鋼管30、筒状積層ゴム32、外側鋼管34の端面は同一面上に位置している。ボルト取り付け用積層ゴム20をこのように構成することで、取り扱い性や保管性の向上が図られている。
また、ボルト挿通孔26の軸方向に沿ったボルト取り付け用積層ゴム20の長さは、下部フランジプレート16の厚さと同一の寸法で形成され、後述するようにボルト取り付け用積層ゴム20が下部フランジプレート16に取り付けられた状態で、ボルト取り付け用積層ゴム20の軸方向の両端の端面は、下部フランジプレート16の上面、下面と同一面上に位置し、免震装置10の取り扱い性や保管性の向上が図られている。
ボルト取り付け用積層ゴム20の特性(剛性、強度)は、ゴムの材料、ゴムの形状(1層あたりの厚さ、断面積)、鋼管の厚さ、積層数などで調整可能である。
このようにボルト取り付け用積層ゴム20が下部フランジプレート16に取り付けられた状態で、ボルト取り付け用積層ゴム20の軸方向が上下方向となる。
本実施の形態では、ねじ結合によりボルト取り付け用積層ゴム20が下部フランジプレート16に予め取着され、免震装置10の施工の簡易化が図られている。
アンカーボルト24の頭部2402寄りの軸部2404の箇所に、内側鋼管30の外径以下の寸法の外径を有し内側鋼管30の上端面に当接可能な当接部2406が設けられている。
詳細には、アンカーボルト24は、頭部2402と、頭部2402から突設された軸部2404と、軸部2404の先部に雄ねじが形成された雄ねじ部2408と、頭部2402の直下の軸部2404の箇所に軸部2404の外径よりも大きい外径でかつ内側鋼管30の外径以下の寸法の大径部が設けられ、この大径部が当接部2406を構成している。
このように免震装置10が設置された状態で、内側鋼管30は、当接部2406と取り付けプレート36とにより挟持され、内側鋼管30はアンカーボルト24に対して下部フランジプレート16が下部構造体12から離れる方向に対して変位不能に結合されている。言い換えると、アンカーボルト24は下部構造体12に螺合され鉛直方向に移動不能であるため、内側鋼管30は鉛直方向に移動不能に結合されている。
また、外側鋼管34は、下部フランジプレート16に対して下方への移動が不能に結合されている。言い換えると、下部フランジプレート16が上方に変位した際に外側鋼管34は下部フランジプレート16と一体に上方に変位するように結合されている。
また、筒状積層ゴム32はその軸方向にせん断変形可能な状態となっている。言い換えると、筒状積層ゴム32は、下部フランジプレート16が上方に変位した際に、外側鋼管34が下部フランジプレート16と一体に上方に変位し、上方にせん断変形できる状態となっている。
したがって、免震用積層ゴム14に引抜き力が作用しても、筒状積層ゴム32のみがせん断変形するので、引抜き未対応の通常の免震装置10に比べ、免震用積層ゴム14の性能の劣化は生じにくい。
また、筒状積層ゴム32は、軸方向が上下方向になるように設置されるので、免震用積層ゴム14に水平方向にせん断力が作用したとき、筒状積層ゴム32はほとんど変形せず、免震用積層ゴム14の位置を保持し、下部構造体12へせん断力を伝達することができる。
筒状積層ゴム32の上方ヘの変形量の上限、すなわち、アンカーボルト24の頭部2402の下面と下部フランジプレート16(または外側鋼管34)の間の隙間は、地震時の引抜きによる免震用積層ゴム14の浮上量以上で、かつ筒状積層ゴム32の特性が変化しない範囲、たとえば、ゴムのせん断変形100%程度に収まるように(例えば、おおよそ20〜30mmの範囲に)設定する。
図7において点Bは、下部フランジプレート16が浮き上がってアンカーボルト24の頭部2402の下面と下部フランジプレート16(または外側鋼管34)とが当接した状態を示しており、直線Cは、以後、免震用積層ゴム14が引っ張り変形する状態を示している。また、点線Dは、筒状積層ゴム32を有さない従来の免震装置10の免震積層用ゴムの変位を示し、想像線Eは免震用積層ゴムにボイドなどが発生して損傷する際の引っ張り荷重を示している。
本実施の形態の免震装置10は簡単な構造なので、下部フランジプレート16及び下部構造体12の取り付けプレート36等の寸法の増大を抑えることができる。
なお、以後の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同様な箇所に同一の符号を付してその説明を省略し、異なる点を重点的に説明する。
第2の実施の形態は、当接部2406の構成が第1の実施の形態と異なっている。
すなわち、アンカーボルト24は、頭部2402と、頭部2402から突設された軸部2404と、軸部2404の先部に雄ねじが形成された雄ねじ部2408と、頭部2402の直下の軸部2404の箇所に雄ねじが形成された第2の雄ねじ部2410とを有している。
そして、当接部2406が、第2の雄ねじ部に螺合されたナットNで構成されている。
このような第2の実施の形態によれば、市販品であるボルト、ナットを用いて当接部2406を簡単に構成でき、コスト削減を図る上で有利となる。
第3の実施の形態は、免震装置10の設置状態で筒状積層ゴム32に予め荷重を掛けている点が第1の実施の形態と異なっている。
すなわち、ボルト挿通孔26の軸方向に沿った内側鋼管30、筒状積層ゴム32、外側鋼管34の長さは、下部フランジプレート16の厚さよりも小さい同一の寸法で形成されている。
ボルト挿通孔26に挿通されたアンカーボルト24を介して下部フランジプレート16が下部構造体12に取着され、免震装置10が設置された状態で、内側鋼管30の下面は、下部フランジプレート16の下面と同一面上に位置し、外側鋼管34の上面は、下部フランジプレート16の上面と同一面上に位置している。すなわち、免震装置10が設置された状態で、筒状積層ゴム32に予めせん断荷重が掛けられ、筒状積層ゴム32は、内周部よりも外周部が上方に位置するように予めせん断変形し、これにより下部フランジプレート16が下部構造体12に押し付けられ、引っ張り力がこの荷重以下の状態では免震装置10は浮上しない。
また、図8において点Cは、下部フランジプレート16が浮き上がってアンカーボルト24の頭部2402の下面と下部フランジプレート16とが当接した状態を示しており、直線Fは、以後、免震用積層ゴム14が引っ張り変形する状態を示し、点線D、想像線Eは図7と同様である。
したがって、第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な効果が奏される他、免震装置10が浮上する引抜き力を任意に設定できる利点がある。
第4の実施の形態は、下部フランジプレート16の上面に、筒状積層ゴム32がせん断変形した際に内側鋼管30および筒状積層ゴム32が収容される収容凹部40が設けられている点、および、規制手段22が、アンカーボルト24の頭部2402の下面と外側鋼管34とで構成されている点が第1の実施の形態と異なっている。
すなわち、アンカーボルト24の頭部2402の下面は、外側鋼管34の上面に当接可能に形成され、規制手段22は、アンカーボルト24の頭部2402の下面と外側鋼管34とで構成されている。
また、アンカーボルト24の頭部2402寄りの軸部2404の箇所に、内側鋼管30の外径以下の寸法の外径を有し内側鋼管30の上面に当接可能な当接部2406が設けられている。
下部フランジプレート16にボルト挿通孔1604が形成されると共に、ボルト挿通孔1604の上部に、外側鋼管34が内側鋼管30に対して上方に変位した際に内側鋼管30および筒状積層ゴム32の収容を可能とした収容凹部40が設けられている。
このような第4の実施の形態によれば、免震用積層ゴム14に軸方向の引っ張り力が作用したとき、筒状積層ゴム32が主に軸方向にせん断変形し、免震装置10は下部構造体12から浮き上がり、免震用積層ゴム14の引張り変形を小さく抑えることができるので、第1の実施の形態と同様な効果が奏される。また、この実施の形態では、外側鋼管34の外周部および下部フランジプレート16にねじ加工をする必要がなく、加工、設置が容易であるという利点がある。
第5の実施の形態は、下部フランジプレート16の上面に、筒状積層ゴム32がせん断変形した際に内側鋼管30および筒状積層ゴム32が収容される収容凹部40が設けられている点、および、規制手段22が、内側鋼管30と収容凹部40の底面4002とで構成されている点が第1の実施の形態と異なっている。
すなわち、アンカーボルト24の頭部2402の下面は、内側鋼管30の外径以下の寸法の外径を有し内側鋼管30に当接可能に形成されている。
下部フランジプレート16にボルト挿通孔1604が形成されると共に、ボルト挿通孔1604の上部に、外側鋼管34が内側鋼管30に対して上方に変位した際に内側鋼管30および筒状積層ゴム32の収容を可能とし、かつ、内側鋼管30の下面に当接可能な底面4002を有する収容凹部40が設けられている。
ボルト挿通孔26,1604,3602に挿通されたアンカーボルト24を介して下部フランジプレート16が下部構造体12に締結された状態で、アンカーボルト24の頭部2402の下面と内側鋼管30の上面とが当接すると共に外側鋼管34の下面が下部フランジプレート16の上面に当接し、内側鋼管30および筒状積層ゴム32が収容凹部40の上方に位置している。すなわち、外側鋼管34は下部フランジプレート16が下部構造体12から離れる方向に対して一体に変位するように下部フランジプレート16に結合されている。また、内側鋼管30はアンカーボルト24に対して下部フランジプレート16が下部構造体12から離れる方向に対して変位不能に結合されている。
例えば、図5、図6に示す実施の形態では、内側鋼管30がアンカーボルト24に一体化されていてもよい。この場合には、図9(A)に示すように、内側鋼管30が省略され、アンカーボルト24の軸部2420に筒状積層ゴム32の内周面が接合され、アンカーボルト24と筒状積層ゴム32とが一体化されている。また、図9(B)に示すように、アンカーボルト24の大径部2422に筒状積層ゴム32の内周面が接合され、アンカーボルト24と筒状積層ゴム32とが一体化されている。
また、図1、図3、図4に示す実施の形態では、外側鋼管32が下部フランジプレート16(または上部フランジプレート)に一体化されていてもよい。この場合には、図10(A)、(B)に示すように、外側鋼管32が省略され、下部フランジプレート16(または上部フランジプレート)の孔1620の内周面に筒状積層ゴム32の外周面が接合され、下部フランジプレート16(または上部フランジプレート)と筒状積層ゴム32とが一体化されている。
例えば、図1〜図4に示す実施の形態では、内側鋼管30、筒状積層ゴム32を多角形断面の筒状とし、外側鋼管34の内周部を多角形断面としてもよい。さらに、ねじ結合以外の手段で外側鋼管34を下部フランジプレート16に取り付ける場合、例えば、接着材を用いて外側鋼管34を下部フランジプレート16に取り付ける場合には、外側鋼管34の形状は多角形断面の筒状としてもよく、あるいは、大径部と小径部とを設けそれらの間に段差を設けるなど外側鋼管34の外周部の形状は種々考えられる。
また、図5〜図6に示す実施の形態では、内側鋼管30、筒状積層ゴム32、外側鋼管34、ボルト取り付け用積層ゴム20を多角形断面の筒状としてもよい。さらに、外側鋼管34の外周部は任意の形状にしてもよい。
また、図9に示す実施の形態では、軸部2420を多角形断面とし、筒状積層ゴム32を多角形断面の筒状とし、外側鋼管34の内周部を多角形断面とし、外側鋼管34の外周部を任意の形状にしてもよく、図10に示す実施の形態では、内側鋼管30、筒状積層ゴム32を多角形断面の筒状としてもよい。
また、ボルト取り付け用積層ゴム20の用途は免震装置10に限定されず、せん断力は伝達するが引っ張り力はできるだけ伝達しないような箇所に広く適用される。
12……下部構造体
14……免震用積層ゴム
16……下部フランジプレート
20……ボルト取り付け用積層ゴム
22……規制手段
24……アンカーボルト
2402……頭部
2406……当接部
26,1604,3602……ボルト挿通孔
30……内側鋼管
32……筒状積層ゴム
34……外側鋼管
40……収容凹部
Claims (14)
- 免震用積層ゴムの上部に設けられた上部のフランジプレートをアンカーボルトを介して上部の構造体に取着し、前記免震積層用ゴムの下部に設けられた下部のフランジプレートをアンカーボルトを介して下部の構造体に取着し、前記下部の構造体上において前記上部の構造体を免震支持する免震方法であって、
薄肉の筒状のゴムシートと薄肉の鋼管とが半径方向に交互に積層されて構成された筒状積層ゴムを設け、
前記筒状積層ゴムの軸心を鉛直方向に向け前記筒状ゴムの外周部を前記フランジプレートが前記構造体から離れる方向に対して一体に変位するように前記フランジプレートに結合させ、
前記筒状積層ゴムの中心に前記アンカーボルトを挿通させて前記フランジプレートを前記筒状積層ゴムと共に前記構造体に取着し、前記筒状積層ゴムの内周部を前記アンカーボルトに対して前記フランジプレートが前記構造体から離れる方向に対して変位不能に結合させ、
前記免震積層用ゴムに引っ張り力が作用した際に前記筒状積層ゴムを鉛直方向にせん断変形させて前記フランジプレートと前記構造体とを離間させ、前記免震積層用ゴムに作用する引っ張り力を低減するようにした、
ことを特徴とする構造体の免震方法。 - 前記筒状積層ゴムの内周部は前記アンカーボルトの軸部に接合され、前記筒状積層ゴムと前記アンカーボルトとは一体化されている、
ことを特徴とする請求項1記載の免震方法。 - 前記筒状積層ゴムの外周部は前記フランジプレートに形成された孔の内周面に接合され、前記筒状積層ゴムと前記フランジプレートとは一体化されている、
ことを特徴とする請求項1記載の免震方法。 - 前記筒状積層ゴムの鉛直方向の変形量の上限を規制手段により規制するようにした、
ことを特徴とする請求項1〜3に何れか1項記載の構造体の免震方法。 - 免震用積層ゴムと、前記免震積層用ゴムの上部に設けられ上部の構造体に取着される上部のフランジプレートと、前記免震積層用ゴムの下部に設けられアンカーボルトを介して下部の構造体に取着される下部のフランジプレートとを備える免震装置であって、
内側鋼管と、前記内側鋼管の外周面に薄肉の筒状のゴムシートと薄肉の鋼管とが前記内側鋼管の半径方向外側に交互に積層されて構成された筒状積層ゴムと、前記筒状積層ゴムの外周面に取着された外側鋼管とを備え、前記内側鋼管の内側の空間は前記アンカーボルトの軸部を挿通させるボルト挿通孔とされたボルト取り付け用積層ゴムが設けられ、
前記ボルト挿通孔に挿通された前記アンカーボルトを介して前記フランジプレートが前記構造体に取着された状態で、前記外側鋼管は前記フランジプレートが前記構造体から離れる方向に対して一体に変位するように前記フランジプレートに結合され、前記内側鋼管は前記アンカーボルトに対して前記フランジプレートが前記構造体から離れる方向に対して変位不能に結合され、前記筒状積層ゴムは鉛直方向にせん断変形可能な状態となっており、
前記筒状積層ゴムの鉛直方向の変形量の上限を規制する規制手段が設けられている、
ことを特徴とする免震装置。 - 前記外側鋼管が前記フランジプレートに鉛直方向に変位不能に取着されることで前記ボルト取り付け用積層ゴムが予め前記フランジプレートに組み込まれており、
前記アンカーボルトの頭部寄りの軸部の箇所に、前記内側鋼管の外径以下の寸法の外径を有し前記内側鋼管の軸方向の端面に当接可能な当接部が設けられ、
前記ボルト挿通孔に挿通された前記アンカーボルトを介して前記フランジプレートが前記構造体に取着された状態で、前記当接部と前記内側鋼管の軸方向の端面とが当接している、
ことを特徴とする請求項5記載の免震装置。 - 前記筒状積層ゴムの前記ボルト挿通孔の軸方向に沿った長さと、前記フランジプレートの厚さとは等しく、
前記筒状積層ゴムの軸方向の両端面は、前記フランジプレートの上面、下面と同一面上に位置している、
ことを特徴とする請求項5または6記載の免震装置。 - 前記ボルト挿通孔に挿通された前記アンカーボルトを介して前記フランジプレートが前記構造体に取着された状態で、前記筒状積層ゴムに、前記免震用積層ゴムを鉛直方向に引っ張る方向と反対の方向に予め荷重が掛けられている、
ことを特徴とする請求項5または6記載の免震装置。 - 前記アンカーボルトの頭部下面は、前記外側鋼管の前記構造体から離れた側の軸方向の端面に当接可能に形成され、
前記アンカーボルトの頭部寄りの軸部の箇所に、前記内側鋼管の外径以下の寸法の外径を有し前記内側鋼管に当接可能な当接部が設けられ、
前記フランジプレートにボルト挿通孔が形成されると共に、前記構造体から離れた側の前記ボルト挿通孔の箇所に、前記フランジプレートが前記外側鋼管と共に前記構造体から離れる方向で鉛直方向に変位した際に前記内側鋼管および前記筒状積層ゴムの収容を可能とした収容凹部が設けられ、
前記ボルト挿通孔に挿通された前記アンカーボルトを介して前記フランジプレートが前記構造体に取着された状態で、前記当接部と前記内側鋼管とが当接し、前記外側鋼管の前記構造体側の軸方向の端面が前記収容凹部の周囲の前記下部フランジプレートの箇所に当接し、前記外側鋼管の前記構造体から離れた側の軸方向の端面が前記アンカーボルトの頭部下面から離れた箇所に位置している、
ことを特徴とする請求項5または6記載の免震装置。 - 前記アンカーボルトの頭部下面は、前記内側鋼管の外径以下の寸法の外径を有し前記内側鋼管の軸方向の一方の端面に当接可能に形成され、
前記フランジプレートにボルト挿通孔が形成されると共に、前記構造体から離れた側の前記ボルト挿通孔の箇所に、前記フランジプレートが前記外側鋼管と共に前記構造体から離れる方向で鉛直方向に変位した際に前記内側鋼管および前記筒状積層ゴムの収容を可能とし、かつ、前記内側鋼管の軸方向の他方の端面に当接可能な底面を有する収容凹部が設けられ、
前記ボルト挿通孔に挿通された前記アンカーボルトを介して前記フランジプレートが前記構造体に取着された状態で、前記アンカーボルトの頭部下面と前記内側鋼管の軸方向の一方の端面とが当接すると共に前記外側鋼管の軸方向の一方の端面が前記下部フランジプレートに当接し、前記内側鋼管および前記筒状積層ゴムが鉛直方向において前記フランジが前記構造体から離れる方向で前記収容凹部の外部の箇所に位置している、
ことを特徴とする請求項5または6記載の免震装置。 - 前記アンカーボルトは、頭部と、前記頭部から突設された軸部と、前記軸部の先部に雄ねじが形成され構造体側に結合される雄ねじ部と、前記頭部の直下の前記軸部の箇所に雄ねじが形成された第2の雄ねじ部とを有し、
前記当接部は、前記第2の雄ねじ部に螺合されたナットで構成されている、
ことを特徴とする請求項6または9記載の免震装置。 - 前記アンカーボルトの頭部下面は、前記アンカーボルトの軸方向において前記外側鋼管に当接可能に形成され、
前記規制手段は、前記アンカーボルトの頭部下面と前記外側鋼管とで構成されている、
ことを特徴とする請求項5〜9の何れか1項記載の免震装置。 - 内側鋼管と、
前記内側鋼管の外周面に薄肉の筒状のゴムシートと薄肉の鋼管とが前記内側鋼管の半径方向外側に交互に積層されて構成された筒状積層ゴムと、
前記筒状積層ゴムの外周面に取着された外側鋼管とを備え、
前記内側鋼管の内側の空間はボルトの軸部を挿通させるボルト挿通孔とされている、
ことを特徴とするボルト取り付け用積層ゴム。 - 前記ボルト挿通孔の軸方向に沿った前記内側鋼管、前記筒状積層ゴム、前記外側鋼管の長さは同一の寸法で形成され、
前記軸方向の両端に位置する前記内側鋼管、前記筒状積層ゴム、前記外側鋼管の端面は同一面上に位置している、
ことを特徴とする請求項13記載のボルト取り付け用積層ゴム。
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