JP2016040385A - シール部材、同部材を用いる物品、およびスティクションを低減する方法 - Google Patents

シール部材、同部材を用いる物品、およびスティクションを低減する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、密封状態で医療用具のチャンバーの内側表面に係合するように適合された外側表面を有するゴム製シール部材を提供しようとするものである。
【解決手段】このシール部材の外側表面は(a)少なくとも2つのアルケニル基を有する第1のオルガノポリシロキサンと、(b)少なくとも2つの水素ペンダント基を有し第1のオルガノポリシロキサンとは異なる第2のオルガノポリシロキサンとを含む硬化性組成物から調製されるコーティングをその上に有し、硬化性組成物の第1のオルガノポリシロキサン、第2のオルガノポリシロキサン、または任意追加の第3のオルガノポリシロキサンのうち少なくとも1つがフルオロ基を含む。
【選択図】図1

Description

本出願は、2006年3月30日に出願された仮出願第60/787,327号明細書の優先権を主張するものである。
本発明は、硬化性オルガノポリシロキサンを含む組成物をコーティングした、注射器組立体などの医療用具のためのゴム製シール部材、スライド可能な表面間の静止摩擦および動摩擦を低減する方法、およびそれによって調製される低摩擦物品に関する。
ある種のデバイスは、1つの表面が別の表面上でする滑り運動のゆっくりとした制御された開始および持続を必要とする。スライドする関係にある2つの静止した表面は、多くの場合運動の開始に対する十分な抵抗を示し、一方の表面に加えられる徐々に増加する圧力は、突然に表面のスライド分離が起こる点である、閾値圧力に達するまで運動を引き起こさないことがよく知られている。静止表面からスライドする関係への突然の分離は、本明細書において「ブレイクアウト(breakout)」と呼ばれる。
あまり知られていないが重要な摩擦力は「解放力(breakloose force)」であり、これは、オートクレーブ処理を受け、注射器組立体の接触表面の1つまたは両方(例えば注射筒)がわずかに変形していてもよい注射器組立体の表面間の静止摩擦に打ち勝つのに必要な力のことを表す。オートクレーブ処理に加えて、組立体のパーキング(parking)は解放力をさらに増大させることができる。
ブレイクアウト力および解放力は、一方の表面が目盛りを付けた第2の表面上で一定増分の線から線へなめらかに進むことによって、少量の正確に量られた量の液体を供給するのに用いられる、注射器などの液体分注デバイスにおいて特に厄介である。この問題は、流量の慎重な滴下制御が望まれる、ビュレット、ピペット、添加漏斗などの、コックを用いるデバイスにおいても直面する。
過度のブレイクアウト力および解放力の問題は、摩擦に関係する。摩擦は一般に、一方の物体の表面が、それ自身または別の物体の隣接する表面上で滑る、あるいは滑ろうとするときに生じる抵抗力と定義される。接触している固体の表面間では、2種類の摩擦が存在してもよい。すなわち、(1)静止摩擦として従来から知られる、一方の表面を他方の上で移動させ始めるのに必要な力に対抗する抵抗、および(2)動摩擦として従来から知られる、可変、固定、または所定の速度において一方の表面を他方の上で移動させるのに必要な力に対抗する抵抗である。
静止摩擦に打ち勝ちブレイクアウトを引き起こすのに必要な力は、「ブレイクアウト力」と呼ばれ、ブレイクアウトまたは解放の後に一方の表面が他方の上で安定して滑るのを維持するのに必要な力を「持続力」と呼ぶ。2つの主要な要素が静止摩擦に寄与し、したがってブレイクアウト力または解放力に寄与する。本明細書で用いられる用語「貼り付き」とは、静的に接触している2つの表面がある程度の相互の接着性を生じる傾向のことを意味する。「慣性」という用語は従来、ある質量を動かすために打ち勝たなければならない、運動への非積極性と定義される。本発明の文脈において、慣性は接着を伴わないブレイクアウト力の成分を意味すると理解される。
ブレイクアウト力または解放力、特に貼り付きの程度は、表面の組成に応じて異なる。
一般に、弾性を有する材料は、特に表面が類似しない組成である場合、非弾性材料よりも顕著な貼り付きを示す。表面が互いに静的に接触していた時間の長さも、ブレイクアウト力および/または解放力に影響する。注射器技術において「パーキング」という用語は、貯蔵時間、保管時間、または充填と排出の間の間隔を意味する。パーキングは一般に、特に注射器がパーキングの間冷凍されていた場合、ブレイクアウト力または解放力を増大させる。
ブレイクアウトの克服への従来のアプローチは、表面と表面の接触面に潤滑剤を施用することであった。一般的に使用される潤滑剤は、鉱油、ピーナッツ油、植物油などの炭化水素油である。そのような製品は、種々の流体、例えば薬剤を調剤するのに一般に使用される溶剤などに可溶であるという欠点を有する。加えて、これらの潤滑剤は粘性変化および好ましくない着色を引き起こす空気酸化を受ける。さらに、それらは特に表面と表面の接触面から移動しやすい。そのような潤滑剤の移動は一般に、パーキングの時間と共にブレイクアウト力が増加することの原因であると考えられる。
シリコーンオイル類も潤滑剤として一般に用いられる。それらは貧溶媒であり酸化を受けないが、移動と貼り付きは起こり、高いブレイクアウト力が問題である。ポリテトラフルオロエチレンの表面はブレイクアウト力のいくらかの低減をもたらすが、この材料は非常に高価であり、このアプローチは全体としては効果的ではなかった。
米国特許第4,959,402号明細書 米国特許第4,994,552号明細書
したがって、高いブレイクアウト力および解放力に打ち勝ち、それによって静的接触から滑り接触への、2つの表面のなめらかな移行を達成することができる、より優れたシステムが必要とされている。
いくつかの実施形態において、本発明は医療用具のためのゴム製シール部材を提供し、このシール部材は密封状態で医療用具のチャンバーの内側表面に係合するように適合された外側表面を有し、このシール部材の外側表面は、
(a)少なくとも2つのアルケニル基を含む第1のオルガノポリシロキサンと、
(b)少なくとも2つの水素ペンダント基を含み、第1のオルガノポリシロキサンとは異なる第2のオルガノポリシロキサンと
を含む硬化性組成物から調製されるコーティングをその上に有する。
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明のゴム製シール部材を含む医療用具などの製造物を提供する。
いくつかの実施形態において、本発明は医療用具のチャンバーの内側表面とゴム製シール部材の外側表面との間の接触表面を潤滑化させる方法を提供し、これには
(a)(i)少なくとも2つのアルケニル基を含む第1のオルガノポリシロキサンと、
(ii)少なくとも2つの水素ペンダント基を含み、第1のオルガノポリシロキサンとは異なる第2のオルガノポリシロキサンと
を含む硬化性組成物から調製されるコーティングをゴム製シール部材の外側表面に塗布するステップと、
(b)ステップ(a)のコーティングを少なくとも部分的に架橋させるステップと、
が含まれる。
他の実施形態において、本発明は医療用具のチャンバーの内側表面とゴム製シール部材の外側表面との間のブレイクアウト力または解放力を低減する方法を提供し、これには
(a)(i)少なくとも2つのアルケニル基を含む第1のオルガノポリシロキサンと、(ii)少なくとも2つの水素ペンダント基を含み、第1のオルガノポリシロキサンとは異なる第2のオルガノポリシロキサンとを含む硬化性組成物から調製されるコーティングをゴム製シール部材の外側表面に塗布するステップと、
(b)ステップ(a)のコーティングを少なくとも部分的に架橋させるステップと
が含まれる。
他の実施形態において、本発明は医療用具のチャンバーの内側表面とゴム製シール部材の外側表面との間の持続力を低減する方法を提供し、これには
(a)(i)少なくとも2つのアルケニル基を含む第1のオルガノポリシロキサンと、(ii)少なくとも2つの水素ペンダント基を含み、第1のオルガノポリシロキサンとは異なる第2のオルガノポリシロキサンとを含む硬化性組成物から調製されるコーティングをゴム製シール部材の外側表面に塗布するステップと、
(b)ステップ(a)のコーティングを少なくとも部分的に架橋させるステップと
が含まれる。
他の実施形態において、本発明は医療用具のチャンバーの内側表面とゴム製シール部材の外側表面との間の解放力および持続力を低減する方法を提供し、これには
(a)(i)少なくとも2つのアルケニル基を含む第1のオルガノポリシロキサンと、
(ii)少なくとも2つの水素ペンダント基を含み、第1のオルガノポリシロキサンとは異なる第2のオルガノポリシロキサンと
を含む硬化性組成物から調製されるコーティングをゴム製シール部材の外側表面に塗布するステップと、
(b)ステップ(a)のコーティングを少なくとも部分的に架橋させるステップと
が含まれる。
本発明は、付随の図面と併せて下記の具体的な実施形態の説明を読めば、最もよく理解されるであろう。
従来技術の注射器組立体の、0.1ml/時間の供給速度における、注入ポンプ作動力の試験結果のグラフである。 従来技術の注射器組立体の、1.0ml/時間の供給速度における、注入ポンプ作動力の試験結果のグラフである。 従来技術の注射器組立体の、10ml/時間の供給速度における、注入ポンプ作動力の試験結果のグラフである。 本発明による注射器組立体の、0.1ml/時間の供給速度における、注入ポンプ作動力の試験結果のグラフである。 本発明による注射器組立体の、1.0ml/時間の供給速度における、注入ポンプ作動力の試験結果のグラフである。 本発明による注射器組立体の、10ml/時間の供給速度における、注入ポンプ作動力の試験結果のグラフである。 本発明による注射器組立体の、10ml/時間の供給速度における、注入ポンプ作動力の試験結果のグラフである。
扱っている実施例以外で、または別途示している場合では、明細書および特許請求の範囲で用いられる、成分、反応条件などの数量を表すすべての数は、用語「約」によってすべての例において修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、下記の明細書および添付の特許請求の範囲に明記される数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて異なっていてもよい概算値である。最低限でも、また特許請求の範囲に同等なものの原則を適用することを制限しようとするのではなく、各々の数値パラメータは少なくとも、報告される有効数字に照らして、また通常の丸めの手法を適用することによって解釈されるべきである。
本発明の幅広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは概算値であるものの、具体的な実施例に明記される数値は可能な限り正確に報告されている。しかしいかなる数値も、それぞれの実験の測定に見出される標準偏差から必然的に生じるある程度の誤差を内在的に含む。さらに、可変の範囲の数値範囲が本明細書において明記される場合、列挙される値を含めたこれらの数値のいかなる組合せも用いてよいことが意図される。
また、本明細書に列挙されるいかなる数値範囲も、その中に包括されるすべての部分範囲を含むことを意図することを理解されたい。例えば、「1から10」という範囲は、列挙される最小値の1と列挙される最大値の10の間およびそれらを含める、すなわち1以上の最小値と10以下の最大値を有する、すべての部分範囲を含むことを意図する。
本発明は、医療用具のチャンバーの内側表面に密封状態で係合するように適合された外側表面を有する、ゴム製シール部材を提供する。それぞれの表面は摩擦係合することができる。医療用具で用いられる場合、本発明のゴム製シール部材は、ブレイクアウト、解放力、および/または持続力を達成するのに必要な力を低減することができ、それによって表面が静止接触から滑り接触へ突然急発進することなく移行する。ブレイクアウトまたは解放が完了すると表面は滑り接触の状態になり、非常に低い持続力を加えた状態でなめらかに滑る。実質的に必要とされる潤滑剤を少なくすることができ、潤滑剤の移動は低減または排除される。本発明のシール部材および方法によって得られる効果は長期間持続することができ、注射器などの物品は任意のパーキング期間を通して、低いブレイクアウト、低い解放力および持続力という利点を保持することができる。シール部材が液体分注デバイスの一部である場合、少量の高精度な増分の液体を、突然の急発進なく繰り返し分注入することができる。したがって、本発明に従って処理されるゴム製シール部材を含む注射器を用いて、急発進の危険なく患者に薬剤を投与することができ、それによって投薬を正確に制御することおよび患者の安全を大いに増進することが実現される。
医療用具の非制限的な例には、注射器組立体、注射器ポンプ、薬剤カートリッジ、無針注入器、液体分注デバイス、および液体計量装置が挙げられる。いくつかの実施形態において、医療用具は、シール部材である第1の構成要素と注射筒である第2の構成要素とを含む注射器組立体である。
ゴム製シール部材は、任意のエラストマー材料から形成することができる。エラストマーは医療用具および医薬包装において多くの重要で重大な用途に用いられる。ある部類の材料として、その独特の特性、例えば可撓性、弾力性、伸長性、およびシール性などが、カテーテル、注射器チップ、薬剤バイアル物品、注入部、チューブ、手袋、およびホースなどの製品に特によく適することが分かっている。3つの主要な合成熱硬化エラストマー、すなわちポリイソプレンゴム、シリコーンゴム、およびブチルゴムが医療用途で典型的に用いられる。この3つのゴムのうち、ブチルゴムはその高い清浄度と、ゴムが酸素感受性および水分感受性の薬剤を保護するのを可能にする耐透過性のために、物品における最も一般的な選択である。
本発明の方法に有用な好適なブチルゴムには、イソブチレン(約97〜98%)およびイソプレン(約2〜3%)のコポリマーが含まれる。ブチルゴムは塩素または臭素でハロゲン化することができる。好適なブチルゴム加硫物は、良好な耐摩耗性、優れたガス不透過性、高い誘電率、優れた耐老化性および耐日光性、ならびに優れた衝撃吸収および振動減衰の特質を、そのブチルゴム加硫物から形成される物品にもたらすことができる。
他の有用なエラストマーコポリマーには、制限はされないが、スチレン−ブタジエン(SBRまたはSBS)コポリマー、スチレン−イソプレン(SIS)ブロックポリマー、またはスチレン−イソプレン/ブタジエン(SIBS)などのスチレンコポリマーが含まれ、スチレンブロックコポリマー中のスチレンの含有量は約10%から約70%、好ましくは約20%から約50%の範囲である。ゴム組成物は、制限はされないが、ゴム組成物の安定性を維持するための酸化防止剤および/または無機強化剤を含むことができる。
いくつかの実施形態において、シール部材は、例えば栓、O−リング、プランジャーチップ、またはピストンであってもよい。注射器のプランジャーチップまたはピストンは、加硫ゴムがプランジャーと注射器の内側のハウジングとの間に密封性を与えることができるため、典型的にはブチルゴムなどの圧縮性の弾性材料でできている。注射器のプランジャーは、患者の介護および治療に用いられる他の用具のように、プランジャーと注射筒との間に厳密な密封性を与える能力などの、高性能の基準を満たさなければならない。
別の構成要素の対向面と摩擦係合して配置されることになるゴム性シール部材の少なくとも一表面の少なくとも一部に、コーティングを施す。他方の医療用具の構成要素、例えば注射筒に、所望により、下記に説明されるようなシール部材用のコーティング、ポリジメチルシロキサンコーティングを塗布するか、または塗布しなくてもよい。表面をコーティングする方法は下記に詳細に論じる。
本発明のゴム製シール部材に、少なくとも2つのアルケニル基を含む第1のオルガノポリシロキサンと、(b)少なくとも2つの水素ペンダント基を含み第1のオルガノポリシロキサンとは異なる第2のオルガノポリシロキサンとを含む組成物から調製される硬化したコーティングをコートする。本明細書で用いられる、組成物と関連して用いられる「硬化」という用語、例えば「硬化組成物」または「硬化コーティング」とは、組成物を構成する架橋性成分の少なくとも一部が少なくとも部分的に架橋していることを意味することになる。本明細書で用いられる、組成物の成分と関連して用いられる「硬化性の」という用語は、その成分が架橋することができる官能基(例えばビニル基などのアルケニル基)を有していることを意味する。本発明のある実施形態において、架橋性成分の架橋密度、すなわち架橋の度合いは完全な架橋の5%から100%の範囲である。当業者は、架橋の存在および度合い(すなわち架橋密度)が、TA Instruments DMA2980 DMTA分析計を用いて窒素下で行われる動的機械熱分析(DMTA)などの、様々な方法で決定できることを理解するであろう。この方法は、コーティングまたはポリマーの自由膜のガラス転移温度および架橋密度を決定する。硬化材料のこれらの物理特性は、架橋網目の構造に関連する。
上記で論じたように、コーティング組成物は、少なくとも2つのアルケニル基を含む1つまたは複数の第1の硬化性オルガノポリシロキサンを含む。第1のオルガノポリシロキサン(a)の各アルケニル基は、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、およびデセニルからなる群から独立に選択することができる。当業者であれば、第1のオルガノポリシロキサン(a)が1つまたは複数の任意の上記の種類のアルケニル基およびそれらの混合物を含むことができることを理解するであろう。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのアルケニル基はビニルである。アルケニルまたはビニルの含有量が高いほど、より効率的な架橋がもたらされる。
いくつかの実施形態において、第1のオルガノポリシロキサン(a)は下記の構造式(I)または(II)
Figure 2016040385
または
Figure 2016040385
によって表すことができ、式中、Rはアルキル、アリール、シクロアルキル、シラシクロペンチル、アラルキル、およびそれらの混合物であり、Xは約60から約1000、好ましくは約200から約320であり、yは約3から約25である。コポリマーおよびこれらのポリマーの混合物もまた意図される。
有用な第1のオルガノポリシロキサン(a)の非制限的な例には、ビニルジメチル末端ポリジメチルシロキサンと、ビニルメチル、ジメチルポリシロキサンのコポリマーと、ビニルジメチル末端ビニルメチル、ジメチルポリシロキサンのコポリマーと、ジビニルメチル末端ポリジメチルシロキサンと、ポリジメチルシロキサン、モノビニル、モノn−ブチルジメチル末端と、ビニルフェニルメチル末端ポリジメチルシロキサンとが含まれる。
いくつかの実施形態において、式Iおよび/またはIIのポリマーから選択されるシロキサンポリマーの混合物を用いることができる。例えば、その混合物は2つの異なる分子量のビニルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサンポリマーを含むことができ、そのポリマーの一方は約5,000から約25,000、好ましくは約16,000の平均分子量を有し、他方のポリマーは約30,000から約75,000、好ましくは約38,000の平均分子量を有する。
一般に、低いほうの分子量のシロキサンは重量でこの混合物の約20%から約80%、例えば約60%の量で存在することができ、高いほうの分子量のシロキサンは重量でこの混合物の約80%から約20%、例えば約40%の量で存在することができる。
好適な第1のオルガノポリシロキサン(a)の別の非制限的な例は、トリメチルシロキシ末端の(7.0〜8.0%ビニルメチルシロキサン)−ジメチルシロキサンのコポリマー、例えばMorrisville,PAのGelest,Inc.より市販されているVDT−731ビニルメチルシロキサンのコポリマーである。
いくつかの実施形態において、第1のオルガノポリシロキサン(a)は1つまたは複数のアルキルおよび/または1つまたは複数のアリール基、例えばそれぞれメチル基、エチル基、またはフェニル基をさらに含むことができる。
一般に、アルケニル置換のシロキサンの粘度は約200から約1,000,000cstの範囲であり得る。
いくつかの実施形態において、第1のオルガノポリシロキサン(a)は組成物の約5から約50重量パーセントを構成する。他の実施形態において、第1のオルガノポリシロキサン(a)は組成物の約10から約40重量パーセントを構成する。他の実施形態において、第1のオルガノポリシロキサン(a)は組成物の約15から約30重量パーセントを構成する。
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、アルケニル官能化シロキサンは、コーティングの粘度を増大させ、コーティングとコートされる表面との間の結合を向上させることができると考えられる。
この組成物は、少なくとも2つの水素ペンダント基を含み、第1のオルガノポリシロキサンとは異なる、例えばそれぞれのオルガノポリシロキサン中に異なる種類の原子または異なる原子数を有する、1つまたは複数の第2のオルガノポリシロキサン(b)も含む。
少なくとも2つの水素ペンダント基を含む好適なオルガノポリシロキサン(b)の非制限的な例には、ポリマー骨格に沿った水素ペンダント基または水素末端基を有するオルガノポリシロキサンが含まれる。いくつかの実施形態において、オルガノポリシロキサンは下記の構造式(V)
Figure 2016040385
によって表すことができ、式中、pは約8から約12、例えば約10である。他の実施形態において、オルガノポリシロキサンは下記の構造式(VI)
HMe2SiO(Me2SiO)pSiMe2H (VI)
によって表すことができ、式中、pは約140から170、例えば約150から約160である。2つの異なる分子量の材料を含む、これらのポリマーの混合物を用いることができる。例えば、約400から約7,500、例えば約1900の平均分子量を有する、混合物の約2重量%から約5重量%のトリメチルシリル末端ポリメチル水素シロキサンを、約400から約37,000、好ましくは約12,000の平均分子量を有する、約98から約95%のジメチル水素シリル末端ポリメチル水素シロキサンと混合して用いることができる。
いくつかの実施形態において、反応成分におけるビニル基対水素基のモル比は約0.010:1から約0.20:1である。いくつかの実施形態において、架橋するポリマーの水素基対鎖延長ポリマーの水素基のモル比は約5.0:1から約20:1である。少なくとも2つの水素ペンダント基を含む有用なオルガノポリシロキサンの非制限的な例には、ジメチルヒドロ末端ポリジメチルシロキサンと、メチルヒドロ、ジメチルポリシロキサンコポリマーと、メチルヒドロ末端メチルオクチルシロキサンのコポリマーと、メチルヒドロ、フェニルメチルシロキサンのコポリマーとが含まれる。
いくつかの実施形態において、第2のオルガノポリシロキサン(b)は、1つまたは複数のアルキルおよび/または1つまたは複数のアリール基、例えばそれぞれメチル基、エチル基、またはフェニル基をさらに含むことができる。
一般に、水素置換のシロキサンの粘度は、約100から約1,000,000cstの範囲であり得る。
いくつかの実施形態において、第2のオルガノポリシロキサン(b)は、組成物の約1から約40重量パーセントを構成する。
他の実施形態において、第2のオルガノポリシロキサン(b)は、組成物の約5から約30重量パーセントを構成する。他の実施形態において、第2のオルガノポリシロキサン(b)は、組成物の約10から約30重量パーセントを構成する。
存在する場合、第3の成分は組成物の約0.1から約20重量パーセントを構成することができる。他の実施形態において、第3の成分は組成物の約0.1から10重量パーセントを構成する。
いくつかの実施形態において、組成物は1つまたは複数の環状シロキサン、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサンおよび/またはデカメチルシクロペンタシロキサンをさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、環状シロキサンは組成物の約5から約80重量パーセントを構成する。他の実施形態において、環状シロキサンは組成物の約20から約80重量パーセントを構成する。他の実施形態において、環状シロキサンは組成物の約40から約80重量パーセントを構成する。
いくつかの実施形態において、組成物は第1および第2のオルガノポリシロキサンとは異なる1つまたは複数のオルガノポリシロキサン、例えばアルキルシロキサンなどの以下に示す式(IV)のシロキサンをさらに含む。
そのようなオルガノポリシロキサンの非制限的な例は、下記の構造式(IV)
Figure 2016040385
によって表すことができ、式中、Rはアルキル、アリール、シクロアルキル、シラシクロペンチル、アラルキル、およびそれらの混合物であり、Zは約20から約1,800である。いくつかの実施形態において、式(IV)のオルガノポリシロキサンは下記の構造式(IVA)
Figure 2016040385
によって表すことができ、式中、Zは上記の通りであるか、または例えば約70から約1800または約70から約1,350であってもよい。式(IV)のオルガノポリシロキサンの平均分子量は、約1900から約100,000、好ましくは約5,000から約100,000であってもよい。一般に、これは約20から約300,000センチストーク(cst)の粘度に相当する。
好適なアルキルオルガノシロキサンの非制限的な例は、ポリジメチルシロキサンである。アルキルオルガノシロキサンの粘度は、約100から約1,000,000cstの範囲であってよく、いくつかの実施形態において約12,500から約100,000cstの範囲であってよい。いくつかの実施形態において、アルキルオルガノシロキサンは組成物の約1から約20重量パーセントを構成する。他の実施形態において、アルキルオルガノシロキサンは組成物の約1から約10重量パーセントを構成する。他の実施形態において、アルキルオルガノシロキサンは組成物の約1から約5重量パーセントを構成する。
いくつかの実施形態において、組成物はシリカをさらに含み、これはコーティングの硬さを調整することができる。いくつかの実施形態において、シリカは組成物の約1から約15重量パーセントを構成する。他の実施形態において、シリカは組成物の約1から約10重量パーセントを構成する。他の実施形態において、シリカは組成物の約1から約5重量パーセントを構成する。
いくつかの実施形態において、組成物は、第1のオルガノポリシロキサン(a)および第2のオルガノポリシロキサン(b)の架橋を促進するための触媒量の触媒をさらに含む。熱硬化を促進するのに適した触媒の非制限的な例には、白金またはロジウム族金属触媒、例えばカールシュテット(Karstedt)触媒Pt2{[(CH2=CH)Me2Si]2O}3、または過酸化ジクミルなどの過酸化物触媒が含まれる。触媒は組成物の約0.001から約0.05重量パーセントの範囲の量で存在することができる。
組成物の成分は、例えば適用の直前まで触媒を架橋性成分から分離するために、1つの組成物または適用の前に混合される2つの組成物に調合することができる。好適な組成物の非制限的な例は、GE Advanced MaterialsよりLSR Topcoat Parts AおよびBとして市販されている2液性組成物であり、これはゴム製シール部材への適用の前に混合される。2004年1月20日の日付の製品安全データシートによれば、LSR Topcoat Part Aは約99%を超えるデカメチルシクロペンタシロキサンおよび約1%未満のオクタメチルシクロテトラシロキサンを含有している。2004年1月22日の日付の製品安全データシートによれば、LSR Topcoat Part Bは、約50%を超えるデカメチルシクロペンタシロキサン、約25%未満のビニル末端ポリジメチルシロキサン、沈殿している10%未満の合成アモルファスシリカ、5%未満のポリジメチルシロキサン、および10%を超えるシラン性水素流体を含有する。Part AおよびPart Bはゴム製シール部材への適用の最大約1日前に混合することができ、適用の直前に混合するのが好ましい。所望により相対量は変えることができるが、一般に、約50重量パーセントのPart Aおよび約50重量パーセントのPart Bが組成物を調製するのに用いられる。
いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも2つの極性基を含み、第1のオルガノポリシロキサンおよび第2のオルガノポリシロキサンとは異なる、例えばそれぞれのオルガノポリシロキサン中に異なる種類の原子または異なる数の原子を有する、1つまたは複数の硬化性オルガノポリシロキサンをさらに含むことができる。
オルガノポリシロキサンの各極性基は、アクリラート、メタクリラート、アミノ、イミノ、ヒドロキシ、エポキシ、エステル、アルキルオキシ、イソシアナート、フェノール、ポリウレタンオリゴマー、ポリアミドオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマー、ポリオール、およびカルボキシプロピルからなる群から独立に選択することができる。当業者であれば、オルガノポリシロキサンが1つまたは複数の任意の上記の極性基およびそれらの混合物を含むことができることを理解するであろう。
これらのオルガノポリシロキサンは湿気硬化性でないことが好ましい。
いくつかの実施形態において、極性基はアクリラート基、例えばアクリルオキシプロピル基である。他の実施形態において、極性基はメタクリルオキシプロピル基などのメタクリラート基である。
極性基を有するオルガノポリシロキサンは、1つまたは複数のアルキル基および/またはアリール基、例えばメチル基、エチル基、またはフェニル基をさらに含むことができる。
そのようなオルガノポリシロキサンの非制限的な例は、[15〜20%(アクリルオキシプロピル)メチルシロキサン]−ジメチルシロキサンのコポリマー、例えばMorrisville,PAのGelest,Inc.より市販されているUMS−182アクリラート官能化シロキサンである。
他の実施形態において、そのようなオルガノポリシロキサンは式(III)
Figure 2016040385
によって表すことができ、式中、R1はアクリラート、メタクリラート、アミノ、イミノ、ヒドロキシ、エポキシ、エステル、アルキルオキシ、イソシアナート、フェノール、ポリウレタンオリゴマー、ポリアミドオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマー、ポリオール、およびカルボキシプロピルからなる群から選択され、R2はアルキルであり、nは2から4の範囲であり、xはこの潤滑剤の粘度を約10から2,000,000cstとさせるのに十分な整数である。
いくつかの実施形態において、極性基を有するオルガノポリシロキサンは組成物の約1から約40重量パーセント、他の実施形態において約3から約20重量パーセント、また他の実施形態において組成物の約1から約20重量パーセントを構成する。
いかなる理論に束縛されることも望まないが、極性のシロキサンはコートされた表面の最上部に存在して、係合する表面間の摩擦係数を減少させるのに役立ち得ると考えられている。また、照射後に極性のシロキサンの粘度が増大し、コーティングの基材への結合を向上させることができると考えられる。
いくつかの実施形態において、組成物は湿気硬化性シロキサン、例えば例
Figure 2016040385
のような少なくとも2つのヒドロキシル基を含む湿気硬化性シロキサンを本質的に含まず、式中、R2はアルキルであり、nは2から4の範囲であり、xはこの潤滑剤の粘度を約10から2,000,000cstとさせるのに十分な整数である。官能基の結果として湿気硬化特性を有する他の湿気硬化性シロキサンには、アルコキシ、アリールオキシ、オキシム、エポキシ、−OOCR13、N,N−ジアルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノオキシ、N−アルキルアミド、−O−NH−C(O)−R13、−O−C(=NCH3)−NH−CH3、−O−C(CH3)=CH2、および−S−C36Si(OCH33などの官能基を有するシロキサンが含まれ、式中、R13はHまたはヒドロカルビルである。本明細書で用いられる「湿気硬化性」とは、シロキサンが周囲条件において大気水分の存在下で硬化可能であることを意味する。本明細書で用いられる「湿気硬化性シロキサンを本質的に含まない」とは、組成物が、約5重量パーセント未満の湿気硬化性シロキサン、いくつかの実施形態においては約2重量パーセント未満を含み、また他の実施形態においては湿気硬化性シロキサンを含まないことを意味する。
シール部材と接触している医療用具の他の構成要素は、ガラス、金属、セラミック、プラスチック、ゴム、またはそれらの組合せから形成することができる。いくつかの実施形態において、構成要素は1つまたは複数のオレフィンポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(2−メチル−1−ペンテン)および/または環状ポリオレフィンから調製される。例えば、ポリオレフィンはホモポリマー、または好ましくは約2から6の炭素原子を有するポリプロピレンなどの脂肪族モノオレフィンのコポリマーであってもよい。いくつかの実施形態において、ポリオレフィンは基本的に直鎖状であるが、場合により例えば従来の低密度ポリエチレンに見られるような側鎖を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、ポリオレフィンは少なくとも50%がアイソタクチックである。他の実施形態において、ポリオレフィンは構造の少なくとも約90%がアイソタクチックである。いくつかの実施形態において、シンジオタクチックポリマーを用いることができる。好適な環状ポリオレフィンの非制限的な例には、エチレン−ノルボルネンのコポリマー、例えばFlorence,KYのTicona Engineering Polymersより市販されているTOPAS(登録商標)エチレン−ノルボルネンのコポリマーが含まれる。
ポリオレフィンは、少量の、一般には約0.1から10パーセントの、適切なモノマーとの共重合により組成物中に組み込まれたさらなるポリマーを含有することができる。そのようなコポリマーを組成物に加えて最終組成物の他の特性を増強することができ、例えば、ポリアクリラート、ポリビニル、ポリスチレンなどであってよい。
いくつかの実施形態において、容器に照射安定性を与えるための照射安定化添加剤、例えば容器の照射安定性に寄与する可動化添加剤(mobilizing additive)(例えば本件特許出願人に譲渡され、共に本明細書に参照により組み込まれる特許文献1および特許文献2に開示されるものなど)を含むポリオレフィン組成物で他の構成要素を構築してもよい。
シール部材の表面へコーティングの薄膜を塗布することは、任意の適した方法、例えば浸漬法、ブラシ法、スプレー法などにより実現してもよい。組成物は希釈せずに用いるか、または溶媒中、例えば低分子量シリコーン、非毒性の塩素化またはフッ素化炭化水素(例えば1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、フロン)、または毒物学が重要でないと考えられる場合には従来の炭化水素溶媒(例えばアルカン、トルエン、石油エーテルなど)中で用いてもよい。続いて溶媒を蒸発により除去する。潤滑剤薄膜は任意の都合の良い厚さであってよく、実際にはその厚みは潤滑剤の粘度および塗布時の温度などの要因によって決まるであろう。薄膜を厚くすることによってそれほどの利点は得られないので、経済的な理由のため、薄膜はできるだけ薄く塗布するのが好ましい。
本発明の組成物は塗布後に完全に硬化させるか、または部分的に硬化させて基材に付着させ、次に後になって完全に硬化させることができる。例えば、風乾によって部分的な硬化が可能になるであろう。組成物は最初流体であり、任意の適した方法、例えば浸漬法、ブラシ法、またはスプレー法によって基材に直接塗布することができる。コーティングの正確な厚みは重要ではないと考えられ、例えば1または2ミクロンの非常に薄いコーティングは効果的な潤滑特性を示す。操作性には必要ではないが、コーティングの厚みは実質的に全体的に均一であることが望ましい。
反応性部分の硬化は当業界で周知の従来の方法により実現することができる。例えば、触媒を用いた硬化、オーブンまたは高周波(RF)による熱硬化、ならびにガンマ線、電子線、または紫外線の使用は有用な方法である。ヒドロシリル化反応を開始することになる任意のメカニズムは有用な硬化の手法である。
いくつかの実施形態において、コーティングはアイソトープまたは電子線での照射により少なくとも部分的に硬化される。電離放射線の形での放射線滅菌は、カテーテル、外科用品、および救命救急用具などの医療用具に病院で一般的に用いられる。ガンマ線照射は放射線滅菌の最も一般的な形態であり、典型的には材料がオートクレーブ処理の高温に感受性であるが電離放射線には適合する場合に用いられる。ガンマ線放射の殺菌効果は、生物組織の酸化による殺菌効果を発揮し、したがって簡単、迅速、かつ効果的な殺菌方法を提供する。ガンマ線はコバルト−60(60Co)アイソトープ源または機器生成の加速電子源のいずれかより使用される。滅菌されるべき材料を露出した60Co源の回りで規定の時間動かすと、十分な曝露が達成される。医療用具を滅菌するのに最も一般的に用いられる承認された線量は、約10から約100kGy、例えば20から50kGyである。
オーブンでの硬化の場合、温度は約150℃から約180℃の範囲であるべきであり、オーブンでの滞留時間は一般に約30から約40秒であり、正確な公式化によって決まる。RF技術を用いる場合、コイルは約180℃から約240℃の基材表面温度を得るのに十分な熱を伝導するべきである。これらの温度においては、たった約2から約4秒が硬化に必要である。ガンマ線技術を用いる場合、放射線が硬化を開始させることになるので、ヒドロシリル化開始触媒の必要が除かれる。この技術は滅菌の利点も有しており、これは医療用途で有用である。
いくつかの実施形態において、コーティングされた物品を滅菌処理に供する。今日では、細菌、イースト、カビ、およびウイルスなどの生物を除去するために医療用具を滅菌する多くの滅菌技術が利用可能である。一般に用いられる、医療用具に用いられる滅菌技術には、オートクレーブ処理、エチレンオキシド(EtO)、またはガンマ線放射、ならびにより最近導入された、低温ガスプラズマおよび気相滅菌剤を伴うシステムが含まれる。
1つの一般的な滅菌技術は蒸気滅菌またはオートクレーブ処理であり、これは用具を例えば120℃を超える温度で最低20分間約120kPaの圧力で飽和蒸気にさらす、比較的簡単な方法である。この方法は通常、微生物をそれらの複製に必須の代謝成分および構成成分を破壊することによって殺すための高温と圧力に耐えるように設計された圧力容器内で行われる。オートクレーブ処理は、毒性の残渣を生じない、効率的、高信頼性、迅速な、比較的簡単な方法であるので、耐熱性の外科用器具および静脈内輸液の滅菌のために選択される方法である。
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、(a)上記のコーティングをゴム製シール部材の外側表面に塗布するステップと、(b)ステップ(a)のコーティングを少なくとも部分的に架橋させるステップとを含む、医療用具のチャンバーの内側表面とゴム製シール部材の外側表面との間の接触表面を潤滑化する方法を提供する。
他の実施形態において、本発明は、(a)上記のコーティングをゴム製シール部材の外側表面に塗布するステップと、(b)ステップ(a)のコーティングを少なくとも部分的に架橋させるステップとを含む、医療用具のチャンバーの内側表面とゴム製シール部材の外側表面との間のブレイクアウト力または解放力を低減する方法を提供する。
他の実施形態において、本発明は、(a)上記のコーティングをゴム製シール部材の外側表面に塗布するステップと、(b)ステップ(a)のコーティングを少なくとも部分的に架橋させるステップとを含む、医療用具のチャンバーの内側表面とゴム製シール部材の外側表面との間の持続力を低減する方法を提供する。
他の実施形態において、本発明は、(a)上記のコーティングをゴム製シール部材の外側表面に塗布するステップと、(b)ステップ(a)のコーティングを少なくとも部分的に架橋させるステップとを含む、医療用具のチャンバーの内側表面とゴム製シール部材の外側表面との間の解放力および持続力を低減する方法を提供する。
ブレイクアウト力、解放力、および持続量は、万能機械的試験器または一定速度のクロスヘッド移動を有するタイプの試験機械、例えば下記に詳細に説明するInstron model 1122で都合良く測定することができる。
本発明は下記の実施例により詳細に説明され、その中の多くの改変および変法が当業者に明らかとなるので、実施例は例証目的のみを意図している。
実施例1
この実施例では、10ml注射器のゴム栓に従来のポリジメチルシロキサンまたは本発明によるコーティング組成物を、場合により従来のポリジメチルシロキサンのさらなるトップコートと共にコーティングした。注射筒をポリプロピレンより形成し、従来のポリジメチルシロキサンをコーティングした。注射器の構成要素に照射を行い、解放力、およびポンプ性能に関係する注入ポンプ作動力(スティクション(sticktion))について評価した。
各注射筒を、12,500cstの粘度を有する従来のポリジメチルシロキサンで潤滑化させた。Helvoet FM457ブチルゴムの注射器栓に、(a)100,000cstの粘度を有する従来のポリジメチルシロキサン(「対照」)、(b)50重量パーセントのGE LSR Topcoat Part Aおよび50重量パーセントのGE LSR Topcoat Part Bの混合物からなるコーティング組成物から調製される本発明による硬化コーティングをコートするか(「試料A」)、または(c)最初に、50重量パーセントのGE LSR Topcoat Part Aおよび50重量パーセントのGE LSR Topcoat Part Bの混合物からなるコーティング組成物から調製される本発明による硬化コーティングをコートし、次に100,000cstの粘度を有する従来のポリジメチルシロキサンを上塗りした(「試料」B)。
各栓をオーブン中で約130〜140℃で約10から約20分硬化させた。各注射器を組立て、VWR Productsより入手可能な生理食塩水を10ml入れ、124℃で30分オートクレーブ処理した。
速い速度の注入をシミュレーションするための各試料注射器の解放力(ニュートン)を、Instron Model No.1122により圧縮(注入)モードで50kgの圧縮ロードセルを用いて100mm/分のクロスヘッドスピードで決定した。解放力は曲線の最も高いピークまたはグラフ上で曲線の傾きが変化する点として視覚的に決定される。最小の持続力は、解放力の後の曲線の最も低い部分またはなめらかな部分として決定される。最大の持続力は、解放力の後の曲線の最も高い部分として決定される。下記の表1に報告される値は、試料AおよびBならびに対照の各々についての5試料の平均である。
注入ポンプ作動力および液体供給特性を、各試験注射器についてBecton Dickinson Program 2、8ポンプデータ収集システムを用いて評価した。各注射器に10mlの脱イオン水を入れた。注射器内のすべての気泡を除き、栓の密封リブが目盛り上の所望の試験体積の印と一致するまでプランジャー棒を前進させた。マイクロボアチューブ(内径0.02”×長さ60”)を注射器に接続し、他方の端を23ゲージ×長さ1インチの針に接続した。針をビーカー中に挿入した。チューブのセットに注射器からの水を手動で入れ、注射器をポンプに取り付けた。注射筒のフランジをフランジスロットの前部に接続した。注射器のプランジャー棒を、注射器押し器を背にして置いた。ロードセルとプランジャー棒との間にすき間はなかった。流速をポンプが許容する最高スピードに設定することにより、ポンプをパージした。いったん流体がチューブと針を通ってビーカーへ自由に流れると、指定の流速がポンプで設定され、注入が開始した。図1〜7に示すように、各注射器における経時の力のチャートが生成された。スティクションまたはスティクションなしの視覚的な決定は、曲線のなめらかさについて各チャートを見ることにより行った。なめらかな曲線はスティクションがないことを示し、不規則形状の曲線(例えば識別可能なピークがある)はスティクションを示していた。
Figure 2016040385
上記の表1に示すように、また図1〜7を参照すると、本発明によるコーティングシステムを適用した試料Aは、従来のポリジメチルシロキサンをコートした対照試料と比較して、より低い解放力とスティクションの低減を示す。試料Bのように、従来のポリジメチルシロキサンを上塗りすることは、最大ポンプ作動力を明確には低下させなかった。
実施例2
この実施例において、10ml注射器の構成要素を、注射筒を環状ポリオレフィンで形成した以外は上記の実施例1と同様に評価した。試料Cを上記の試料Aの同様に調製した。試料Dを上記の試料Bと同様に調製した。試験結果を下記の表2に報告する。
Figure 2016040385
上記の表2に示すように、本発明によるコーティングシステムを適用した試料Cは、従来のポリジメチルシロキサンをコートした対照試料と比較して、より低い解放力を示す。試料Bのように、従来のポリジメチルシロキサンを上塗りすることは、解放力または持続力に明確には影響しなかった。
本発明は、特定の実施形態の具体的な詳細に関して説明してきた。そのような詳細が、付随の特許請求の範囲に含まれる場合を除いて、本発明の範囲を制限するものとして見なされることを意図しない。

Claims (1)

  1. 医療用具のためのゴム製シール部材であって、
    前記シール部材は前記医療用具のチャンバーの内側表面に密封状態で係合するように適合された外側表面を有し、
    前記シール部材の前記外側表面は、
    (a)少なくとも2つのアルケニル基を含む第1のオルガノポリシロキサン、
    (b)少なくとも2つの水素ペンダント基を含み、前記第1のオルガノポリシロキサンとは異なる第2のオルガノポリシロキサン、および
    (c)環状シロキサン、
    を含む硬化性組成物から調製されるコーティングをその上に有する、
    ことを特徴とするゴム製シール部材。
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