JP2016040356A - ポリイミド組成物、ポリイミド成形体の製造方法、及びポリイミドフィルムの製造方法 - Google Patents

ポリイミド組成物、ポリイミド成形体の製造方法、及びポリイミドフィルムの製造方法 Download PDF

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一章 西尾
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Toshihiro Inoue
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武史 寺田
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武史 寺田
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Abstract

【課題】溶液を乾燥する過程における水分による成形体の白化を抑制することができるポリイミド組成物を提供すること。【解決手段】テトラカルボン酸化合物1種以上とジアミン化合物1種以上とを重縮合させた有機溶媒に可溶なポリイミドと、第二級モノアミン化合物とを反応させてなるポリイミド中にアミド酸アミドを導入したポリイミド組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、有機溶媒に可溶なポリイミドと第二級モノアミン化合物とを反応させてなるポリイミド組成物、これを用いたポリイミド成形体の製造方法、及びポリイミドフィルムの製造方法に関する。
芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とからなるポリイミドは、耐熱性に優れるとともに、電気絶縁性、機械的強度、耐薬品性にも優れることから、宇宙航空用及び車輌用、電気・電子部品用、半導体用の材料として広く利用されている。
例えば、モノマーとしてピロメリット酸二無水物(PMDA)と4,4’−ジアミノジフェ二ルエーテル(DADE)とを重縮合させて得られるポリイミドは、ガラス転移温度(Tg)が420℃、熱分解開始温度(Tm)は500℃以上の特性を示すことが知られている。また、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と1,4−ジアミノベンゼン(PPD)とを重縮合させて得られるポリイミドは、Tgが500℃以上、Tmが550℃以上の特性を示すことが知られている。
しかし、PMDAやBPDAを用いて製造されたポリイミドは、一般に有機溶媒への溶解性に乏しく、溶解性の改善が望まれている。
PMDAやBPDAを用いた耐熱性の高い有機溶媒に可溶なポリイミドとして、特許文献1には、四成分以上のモノマーからなる、有機溶媒可溶性のブロック共重合ポリイミドが記載されている。このポリイミドは、特定のテトラカルボン酸二無水物と特定の芳香族ジアミンとを1:1.5〜2のモル比で反応させて溶剤可溶のオリゴマーを生成させ、これに更に同一の又は異なるテトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを加えることにより製造されている。具体的には、二成分系触媒の存在下に、少なくともPMDA、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、4,4’−DADE、2,4−ジアミノトルエン(DAT)を含有する四成分以上のモノマーからなるブロック共重合ポリイミドが遂次反応によって製造されている。
また、特許文献2には、s−BPDA、PMDA、DADE、DATを含む四成分以上のモノマーからなるブロック共重合ポリイミドが、また、特許文献3および4にはBPDA、PMDA、DADE、ビシクロ(2,2,2)オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BCD)を含む四成分以上のモノマーからなるブロック共重合ポリイミドが記載されている。
国際公開第2004/035689号パンフレット 国際公開第2008/120398号パンフレット 国際公開第2008/155811号パンフレット 国際公開第2011/033690号パンフレット
上述のような有機溶媒可溶性のポリイミドを含むポリイミド溶液は、溶媒として極性有機溶剤を用いるため、高湿度雰囲気に長時間置かれると溶液が吸湿し、フィルム等に成形する過程で成形体が白化する問題があった。また、ポリイミド溶液からフィルム等を成形する際に溶媒を加熱除去する必要があり、均一な成形体を得るために長時間クリーンな雰囲気を保持する必要もあった。
本発明は、これらの問題を解決するため、溶液を乾燥する過程における水分による成形体の白化を抑制することができるポリイミド組成物を提供することを目的とする。さらには、溶液を水に接触させることにより容易にフィルムや繊維などの成形体が得られるポリイミド組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、ポリイミドを構成するイミド環の一部を第二級アミン化合物と反応させて開環した、ポリイミド中にアミド酸アミド構造を導入したポリイミド組成物を用いることにより、溶液として取り扱う際の水に対する制限を大幅に改善できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の項に関するものである。
特定の化合物群から選択されたテトラカルボン酸化合物1種以上と特定のジアミン化合物1種以上とを重縮合させた有機溶媒に可溶なポリイミドと、第二級モノアミン化合物とを反応させてなるポリイミド組成物。
テトラカルボン酸化合物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ(2,2,2)−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、ピロメリット酸二無水物から選ばれた化合物であり、
ジアミン化合物としては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジアミノ安息香酸、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、9、9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンから選ばれた化合物である。
さらに、第二級モノアミン化合物が、下記式で表される第二級モノアミンであることを特徴とする前記ポリイミド組成物である。

R1;メチル基またはエチル基
R2;炭素数が1〜6である脂肪族アルキル基またはヒドロキシアルキル基
さらに、第二級モノアミン化合物の含有量が、ポリイミドのイミド基100当量に対して1〜80当量であるポリイミド組成物である。
上記記載のポリイミド組成物が有機溶媒に溶解しているポリイミド組成物溶液を、水を80%以上含有する水溶液に接触させることによりポリイミド組成物を凝固させ、ポリイミド成形体やフィルムを製造することができる。
本発明のポリイミド組成物を用いることにより、溶媒として極性有機溶剤を用いた場合の、溶液を乾燥する過程における成形体の白化が抑えられる。本発明のポリイミド組成物を用いて得られたポリイミド成形体は、熱処理を行うことによりアミド酸アミド構造が閉環・イミド化して元のポリイミドと同じ構造に戻り、耐熱性や接着性などの機能も元のポリイミドが有するものと同等になる。
また、本発明のポリイミド組成物を含むポリイミド組成物溶液は、水に接触させることで直ちに透明な(透視性を保った)凝固体を形成する。この凝固体に含まれる水と残存する少量の溶媒を加熱除去することにより、容易にポリイミド成形体が得られる。この凝固体は流動性や粘着性が無く、凝固状態を保ったまま空気中で取り扱うことが可能であり、簡易な加工プロセスでの成形品の作成を可能にする。
さらには、本発明のポリイミド組成物は、アミド酸アミド構造を含んでいるため、元のポリイミドより有機溶媒への溶解性が高い。そのため、高濃度の溶液として貯蔵した場合でも増粘が抑えられ、保存安定性が向上する。
本発明で使用する有機溶媒に可溶なポリイミド(以下、「可溶性ポリイミド」と記載することもある。)は、有機溶媒に可溶であればどのような構造単位からなるポリイミドでも構わないが、脂肪族化合物に由来する構造を主骨格とするポリイミドは、比較的極性の低い有機溶媒にも溶解するものもあり、本発明で使用しても十分な効果が得られないことがある。
一方、芳香族化合物に由来する構造を主骨格とするポリイミドは、高い耐熱性を始めとし優れた物性を持っているが、溶媒への溶解性をほとんど示さないか、特定の極性溶媒にのみ可溶性を示すにとどまる。そのため、その成形品については、取扱性、作業性、成形加工性などが制限されたものとなっている。本発明において、芳香族化合物に由来する構造を主骨格とするポリイミドを使用すると、取扱性、作業性、成形加工などの改善に大きな効果がある。
本発明で使用する可溶性ポリイミドは、モノマーとしてテトラカルボン酸成分とジアミン成分をほぼ等量用い、これらを溶媒中で重縮合させることにより製造できる。
芳香族化合物に由来する構造を主骨格とするポリイミドを使用する場合は、テトラカルボン酸成分として芳香族テトラカルボン酸化合物を主として用い、また、ジアミン成分として芳香族ジアミンを主として用いる。この場合、テトラカルボン酸成分およびジアミン成分は、それらを構成する化合物全体の50%以上、特に、70%以上が芳香族化合物からなることが好ましい。
本発明で用いることができるテトラカルボン酸成分に制限はなく、芳香族テトラカルボン酸化合物、脂環式テトラカルボン酸化合物、脂肪族テトラカルボン酸化合物などから選択することができる。具体的には、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ(2,2,2)−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、ピロメリット酸二無水物等が挙げられる。
本発明で用いることができるジアミン成分に制限はなく、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミン、シロキサンジアミンなどから選択することができる。具体的には、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジアミノ安息香酸、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、9、9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。
上述のテトラカルボン酸成分とジアミン成分の組み合わせは、得られるポリイミドが有機溶媒、好ましくは極性有機溶媒に可溶性になるものであれば制限はない。また、各成分は複数の化合物で構成されていても良い。極性有機溶媒としては、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルホルムアミド、スルホラン、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。これらの溶媒は可溶性ポリイミド製造時の反応溶媒として用いることができる。
テトラカルボン酸成分とジアミン成分との重縮合反応はどのような形式であっても構わないが、3種以上の化合物を用いる場合には、ブロック共重合ポリイミドを生成する反応形式とすることが好ましい。具体的には、多段階で重縮合反応を進めることにより、特定のモノマー配列をもったブロック共重合ポリイミドが得られる。
例えば、第一段目の反応として、第一のテトラカルボン酸成分に対して過剰量の第一のジアミン成分を反応させて両末端がアミノ基のオリゴイミドを合成する。続いて、第二段目の反応として、第二のテトラカルボン酸成分と第二ジアミン成分を、全体のテトラカルボン酸成分とジアミン成分のモル量がほぼ等しくなる量を用いて重縮合反応を行うことにより、ブロック共重合ポリイミドが得られる。
重縮合反応では、イミド化触媒を使用することが好ましい。触媒は公知のものを用いることができるが、γ−バレロラクトンとピリジン、またはγ−バレロラクトンとN−メチルモルホリンの混合物は、イミド化反応の完了後、ポリイミド溶液から除去することが容易であるため好ましい。また、反応溶液には、生成する水を共沸で除くためにトルエンなどを加えることが好ましい。
イミド化触媒を使用することにより、重縮合反応は160〜200℃の温度で行うことができる。また、生成する水の量により、反応の終了(イミド化の完了)が確認できる。
本発明のポリイミド組成物は、可溶性ポリイミドと第二級モノアミン化合物とを反応させることにより得られる。反応は、150℃以下、好ましくは100℃以下のポリイミド溶液に、第二級モノアミン化合物を直接、あるいは溶媒に希釈して加え、攪拌混合することで行われる。反応温度は0℃〜130℃、好ましくは10℃〜100℃である。反応温度が低すぎると十分に反応が進行しないことがあり好ましくない。また、反応温度が高すぎるとモノアミン化合物の蒸発が生じ好ましくない。反応時間は30分〜6時間、好ましくは1〜3時間である。反応には、可溶性ポリイミドの製造に用いることができる前述の反応溶媒を用いることができる。
第二級モノアミン化合物の添加量は、可溶性ポリイミドのイミド基100当量に対し、1〜80当量、好ましくは2〜70当量、さらに好ましくは4〜60当量である。これより少ないと十分な効果が発揮されないし、多いと加熱処理時のイミド閉環にともなうアミン化合物の脱離量が多くなり好ましくはない。
本発明で使用できる第二級モノアミン合物としては、N−メチルエタノールアミン(2−(メチルアミノ)エタノール)、3−(メチルアミノ)−1−プロパノール、3−(メチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、メチルアミノアセトアルデヒドジメチルアセタール、2−(エチルアミノ)エタノール、4−(エチルアミノ)−1−ブタノール等が挙げられる。
本発明のポリイミド組成物は、可溶性ポリイミドと第二級モノアミン化合物とを溶媒中で反応させることにより、ポリイミド組成物溶液として得られる。このポリイミド組成物溶液をそのまま、あるいは希釈して、ポリイミド成形体の製造の製造に用いることができる。例えば、このポリイミド組成物溶液を金属、ガラス等の支持体上に塗布し、加熱等により溶媒を除去することでポリイミドフィルムが得られる。
また、このポリイミド組成物溶液を水に接触させ、生成する凝固体から、加熱等により含有する水と残存する有機溶媒を除去することでもポリイミド成形体が得られる。
使用する水は、少量の有機溶媒や無機塩類を含んでいてもよく、水が80%以上、表面張力50dyne/cm以上の水溶液であればよい。表面張力が低いと、均一な凝固体が得られず、透明なポリイミド成形体が得られない。
ポリイミド組成物溶液と水を接触させる方法としては、例えば、金属、プラスチック、ガラス等の基材の表面に溶液を塗布した状態で基材ごと水に接触させる方法がある。また、ノズルから糸状あるいはカーテン状に水に射出して凝固することもできる。
上述のようにして得られるポリイミドフィルムやポリイミド成形体は、熱処理を行うことによりアミド酸アミド構造が閉環・イミド化して元のポリイミドと同じ構造に戻すことができる。熱処理温度は240℃〜350℃、好ましくは260℃〜330℃である。反応温度が低すぎると十分に反応が進行しないことがあり好ましくない。また、反応温度が高すぎると膜中に気泡が生じることがあり好ましくない。反応時間は1分〜60分、好ましくは2分〜30分である。熱処理は、上述の塗膜や凝固体から、水や有機溶媒を除去するための加熱工程に引き続いて行われることが好ましく、熱処理温度を何段階に分けて行うことも可能である。
以下、具体例を示して本発明を説明する。
化合物の略号は次の通りである。
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
BAPB:4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル
DADE:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
mDADE:3, 4’−ジアミノジフェニルエーテル
TPE−Q:1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン
DAT:2,4−ジアミノトルエン
HOAB・SO2:ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン
MAE:N−メチルエタノールアミン
EAE:2-(エチルアミノ)エタノール
MADMA:メチルアミノアセトアルデヒドジメチルアセタール
NMP:N−メチルピロリドン
各測定値等は次の方法によるものである。
(1)分子量及び分子量分布
高速液体クロマトグラフ(GPC:HL8320、東ソー(株)製)で、分子量及び分子量分布を測定した。またチャートのMAEのピーク面積からMAEの残存量を算出し、MAEの反応率を求めた。
(2)白化レベル
ポリイミド組成物溶液を100μmの厚みにガラス板上に塗布し、水に1分間浸漬して取出し、生成したポリイミド膜を剥がし取った。剥がし取った直後の膜を、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの透明性と目視比較し、ポリイミド膜の透明性と同じになるPETフィルムの枚数を白化レベルとして示した。白化レベル1はPETフィルム1枚相当で、ほぼ透明であり、白化レベル40は、PETフィルム40枚相当に当たり白く濁り不透明の状態を示している。
(3)熱分析
<水中凝固法による試験フィルムの作成>
ポリイミド組成物溶液を、厚さ300μmスペーサーを用いてガラス板上に塗布し、水に10分間浸漬した後、水から取り出し粘着性のないポリイミド膜を得、それを60℃で30分間乾燥した。得られたポリイミドフィルムをガラス板より剥ぎ取り、金属枠に固定して210℃で10分間、さらに320℃で30分間加熱した。
<加熱法による試験フィルムの作成>
ポリイミド組成物溶液を、厚さ300μmスペーサーを用いてガラス板上に塗布し、85℃のホットプレート上で60分間静置乾燥し、粘着性の無くなったポリイミドフィルムをガラス板より剥ぎ取り、金属枠に固定して150℃で30分間乾燥した。さらに320℃で30分間加熱した。
得られたポリイミドフィルムをMcScience社製TG−DTA装置で熱分析した。
(4)機械強度
熱分析用に作成したポリイミドフィルムを5mm幅の短冊状に切り出し、チャック間2cmで引張試験機(INSTRON社製 3342型)を用いて機械強度を測定した。
(5)密度
ポリイミドフィルムを5cm×7cmに切り出し、任意の24点について膜厚を測定し、その平均値から試料膜の体積を算出した。この体積と重量からポリイミドフィルムの密度を算出した。
(6)流動性
ポリイミド組成物溶液を常温で密栓保管した後の溶液状態を観察し、常温での流動性の有無で評価した。
[実施例1]
<第一工程>
水分分離トラップを備えた蛇管式冷却器、及びステンレス製の碇型攪拌機を取り付けた300ml容量のガラス製3つ口ガラスフラスコに、BPDA(8.82g,30mmol)、BAPB(3.68g,10mmol)を、NMP(80g)、バレロラクトン(1.0g)、ピリジン(1.5g)とともに反応器に加え、さらにトルエン(15g)を加えた。窒素ガスの流通下で160℃、180rpmで加熱・攪拌し、40分間反応を行った。反応液中に加えられた少量のトルエンが還流し、生成した水は水分分離トラップに留められる。
<第二工程>
反応溶液を常温まで冷却し、DADE(2.00g,10mmol)、TPE−Q(2.92g,10mmol)をNMP(40g)とともに加え、180℃、180rpmで加熱・撹拌して5時間反応を行った。その後、冷却して反応を停止し、ポリイミド溶液を得た。
ポリイミドの数平均分子量(Mn)は51,100、重量平均分子量は(Mw)105,300、Mw/Mn=2.02であった。
<第三工程>
得られたポリイミド溶液(45g,イミド基20m当量)に、MAEを0.225g(イミド基100当量に対し15当量)を加え、常温で2時間、180rpmで撹拌してポリイミド組成物溶液を得た。
ポリイミド組成物の数平均分子量(Mn)は57,500、重量平均分子量は(Mw)127,600、Mw/Mnは2.22、MAEの反応率は93%であった。
結果を表1に示す。また、ポリイミド組成物溶液を用いて水中凝固法で製造したフィルムの評価結果を表2に、熱凝固法で製造したフィルムの評価結果を表3に示す。
[実施例1a〜1d]
実施例1で合成したポリイミド溶液を用い、表−1に示した量のMAEを用いた以外は、実施例1と同様にしてポリイミド組成物溶液を得た。結果を表1に示す。
[実施例1e]
実施例1で合成したポリイミド溶液を用い、MAEに代えて表1に示した量のEAEを用いた以外は、実施例1と同様にしてポリイミド組成物溶液を得た。結果を表1に示す。
[実施例1f]
実施例1で合成したポリイミド溶液を用い、MAEに代えて表1に示した量のMADMAを用いた以外は、実施例1と同様にしてポリイミド組成物溶液を得た。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1で合成したポリイミド溶液を用いて各測定を行った。結果を表1に示す。
[実施例2]
<第一工程>
BPDA(8.82g,30mmol)、mDADE(3.00g,15mmol)を用いて170℃で50分間反応を行った以外は実施例1と同様に反応を行った。
<第二工程>
DADE(3.00g,15mmol)、NMP(55g)を用いた以外は実施例1と同様に反応を行ってポリイミド溶液を得た。
ポリイミドの数平均分子量(Mn)は29,000、重量平均分子量は(Mw)77,000、Mw/Mnは2.61であった。
<第三工程>
得られたポリイミド溶液にMAE(1.7g,イミド基100当量に対し40当量)を加えた以外は実施例1と同様に反応を行ってポリイミド組成物溶液を得た。
ポリイミド組成物の数平均分子量(Mn)は34,000、重量平均分子量は(Mw)107,000、Mw/Mnは3.14、MAEの反応率は90%であった。
得られたポリイミド組成物溶液を用いて水中凝固法で製造したフィルムの評価結果を表2に、熱凝固法で製造したフィルムの評価結果を表3に示す。
ポリイミド組成物溶液を常温で6か月密栓保管した後の流動状態は良好であった。
[比較例2]
実施例2で合成したポリイミド溶液は、反応容器から取り出す際に空気に触れると、一時間程度でゾル状となりフィルムに成形することができなかったため、膜物性は測定できなかった。白化レベルの測定は、反応容器からピペットで反応液を直接採取し、ガラス板上に直に流下塗布することで測定した。
[実施例3]
<第一工程>
PMDA(3.27g,15mmol)、DAT(3.66g,30mmol)、NMP(70g)を用いて180℃で50分間反応を行った以外は実施例1と同様に反応を行った。
<第二工程>
BPDA(8.82g,30mmol)、DADE(3.00g,15mmol)、NMP(55g)を用いて4時間30分間反応を行った以外は実施例1と同様に反応を行ってポリイミド溶液を得た。
ポリイミドの数平均分子量(Mn)は41,000、重量平均分子量は(Mw)106,000、Mw/Mnは2.56であった。
<第三工程>
得られたポリイミド溶液にMAE(1.8g,イミド基100当量に対し30当量)を加えた以外は実施例1と同様に反応を行ってポリイミド組成物溶液を得た。
ポリイミド組成物の数平均分子量(Mn)は38,400、重量平均分子量は(Mw)173,400、Mw/Mnは4.51、MAEの反応率は85%であった。
得られたポリイミド組成物溶液を用いて水中凝固法で製造したフィルムの評価結果を表2に、熱凝固法で製造したフィルムの評価結果を表3に示す。
ポリイミド組成物溶液を常温で6か月密栓保管した後の流動状態は良好であった。
得られたポリイミド組成物溶液をシリンダーに入れ、先端の細孔(0.5mmφ)から窒素の圧力で水中に押し出すことで、透明な凝固糸が得られた。これを水中に1時間浸漬した後、加熱乾燥器に入れ、100℃10分、200℃10分、320℃10分で加熱乾燥することで、ポリイミド繊維が得られた。
[比較例3]
実施例3で合成したポリイミド溶液を用いて水中凝固法で製造したフィルムの評価結果を表2に示す。
[実施例4]
<第一工程>
BPDA(11.77g,40mmol)、DAT(2.44g,20mmol)、NMP(80g)を用いて50分間反応を行った以外は実施例1と同様に反応を行った。
<第二工程>
DADE(4.00g,20mmol)、NMP(55g)を用いて6時間反応を行った以外は実施例1と同様に反応を行ってポリイミド溶液を得た。
ポリイミドの数平均分子量(Mn)は31,600、重量平均分子量(Mw)は71,600、Mw/Mnは2.26であった。
<第三工程>
得られたポリイミド溶液にMAE(1.8g,イミド基100当量に対し30当量)を加えた以外は実施例1と同様に反応を行ってポリイミド組成物溶液を得た。
ポリイミド組成物の数平均分子量(Mn)は35,000、重量平均分子量(Mw)は81,000、Mw/Mnは2.33、MAEの反応率は94%であった。
得られたポリイミド組成物溶液を用いて水中凝固法で製造したフィルムの評価結果を表2に、熱凝固法で製造したフィルムの評価結果を表3に示す。
ポリイミド組成物溶液を常温で6か月密栓保管した後の流動状態は良好であった。
[比較例4]
実施例4で合成したポリイミド溶液は、反応容器から取り出す際に空気に触れると、一時間程度でゾル状となりフィルムに成形することができなかったため、膜物性は測定できなかった。白化レベルの測定は、反応容器からピペットで反応液を直接採取し、ガラス板上に直に流下塗布することで測定した。
[実施例5]
<第一工程>
BPDA(8.82g,30mmol)、BAPB(3.68g,10mmol)、NMP(90g)、トルエン(20g)を用いて30分間反応を行った以外は実施例1と同様に反応を行った。
<第二工程>
DADE(2.00g,10mmol)、HOAB・SO2(2.80g,10mmol)、NMP(40g)を用いた以外は実施例1と同様に反応を行ってポリイミド溶液を得た。
ポリイミドの数平均分子量(Mn)は56,000、重量平均分子量(Mw)は126,000、Mw/Mnは2.15であった。
<第三工程>
得られたポリイミド溶液にMAE(0.2g,イミド基100当量に対し5当量)を加えた以外は実施例1と同様に反応を行ってポリイミド組成物溶液を得た。
ポリイミド組成物の数平均分子量(Mn)は58,000、重量平均分子量(Mw)は132,000、Mw/Mnは2.27、MAEの反応率は67%であった。
得られたポリイミド組成物溶液を用いて水中凝固法で製造したフィルムの評価結果を表2に、熱凝固法で製造したフィルムの評価結果を表3に示す。
ポリイミド組成物溶液を常温で6か月密栓保管した後の流動状態は良好であった。
[比較例5]
実施例5で合成したポリイミド溶液を用いて水中凝固法で製造したフィルムの評価結果を表2に、熱凝固法で製造したフィルムの評価結果を表3に示す。
[実施例6]
<第一工程>
BCD(2.98g,12mmol)、DADE(4.80g,24mmol)、NMP(60g)、トルエン(10g)を用いて80分間反応を行った以外は実施例1と同様に反応を行った。
<第二工程>
BPDA(7.06g,24mmol)、mDADE(2.40g,12mmol)を用いて4時間反応を行った以外は実施例1と同様に反応を行ってポリイミド溶液を得た。
ポリイミドの数平均分子量(Mn)は34,716、重量平均分子量(Mw)は79,152、Mw/Mnは2.28であった。
<第三工程>
ポリイミド溶液(26.9g,イミド基17m当量)、MAE(0.26g,イミド基100当量に対し20当量)を用いた以外は実施例1と同様に反応を行ってポリイミド組成物溶液を得た。
ポリイミド組成物の数平均分子量(Mn)は36,000、重量平均分子量(Mw)は91,000、Mw/Mnは2.53、MAEの反応率は92%であった。
得られたポリイミド組成物溶液を用いて水中凝固法で製造したフィルムの評価結果を表2に、熱凝固法で製造したフィルムの評価結果を表3に示す。
ポリイミド組成物溶液を常温で6か月密栓保管した後の流動状態は良好であった。
[比較例6]
実施例6で合成したポリイミド溶液を用いて水中凝固法で製造したフィルムの評価結果を表2に示す。
[実施例7]
<第一工程>
BPDA(5.88g,20mmol)、BAPB(3.68g,10mmol)を用いた以外は実施例1と同様に反応を行った。
<第二工程>
BTDA(3.22g,10mmol)、DADE(2.00g,10mmol)、TPE−Q(2.92g,10mmol)を用いて6時間反応を行った以外は実施例1と同様に反応を行ってポリイミド溶液を得た。
ポリイミドの数平均分子量(Mn)は24,000、重量平均分子量(Mw)は73,000、Mw/Mnは3.06であった。
<第三工程>
ポリイミド溶液(15.0g,イミド基6.7m当量)、MAE(0.075g,イミド基100当量に対し15当量)を用いた以外は実施例1と同様に反応を行ってポリイミド組成物溶液を得た。
ポリイミド組成物の数平均分子量(Mn)は33,000、重量平均分子量(Mw)は102,000、Mw/Mnは3.09、MAEの反応率は91%であった。
得られたポリイミド組成物溶液を用いて水中凝固法で製造したフィルムの評価結果を表2に、熱凝固法で製造したフィルムの評価結果を表3に示す。
ポリイミド組成物溶液を常温で6か月密栓保管した後の流動状態は良好であった。
[比較例7]
実施例7で合成したポリイミド溶液を用いて水中凝固法で製造したフィルムの評価結果を表2に、熱凝固法で製造したフィルムの評価結果を表3に示す。

Claims (6)

  1. 以下の化合物群から選択されたテトラカルボン酸化合物1種以上とジアミン化合物1種以上とを重縮合させた有機溶媒に可溶なポリイミドと、第二級モノアミン化合物とを反応させてなるポリイミド組成物。
    テトラカルボン酸化合物;3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ(2,2,2)−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、ピロメリット酸二無水物
    ジアミン化合物;m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジアミノ安息香酸、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、9、9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン
  2. 第二級モノアミン化合物が、下記式で表される第二級モノアミンであることを特徴とする請求項1記載のポリイミド組成物。

    R1;メチル基またはエチル基
    R2;炭素数が1〜6である脂肪族アルキル基またはヒドロキシアルキル基
  3. 第二級モノアミン化合物の含有量が、ポリイミドのイミド基100当量に対して1〜80当量であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミド組成物。
  4. 第二級モノアミン化合物が、N−メチルエタノールアミンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミド組成物を有機溶媒に溶解させたポリイミド組成物溶液を、水を80%以上含有する水溶液に接触させてポリイミド組成物を凝固させることを特徴とするポリイミド成形体の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミド組成物を有機溶媒に溶解させたポリイミド組成物溶液を、基板に塗布した後、水を80%以上含有する水溶液中に浸漬して凝固させることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
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