JP2016039792A - 生体組織又は細胞の保存方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】氷結点以下の温度で水が非凍結状態となる過冷却が起こる状態が整った電場空間下で、生体の臓器、組織、細胞を保存し、これらを再建手術等に適用可能とする。
【解決手段】本発明に係る生体組織又は細胞の保存方法は、−4℃〜4℃に制御され、氷結点以下の温度で水が非凍結状態となる過冷却が起こる状態が整った0.3kV/m〜1.0kV/mの電界強度を有する電場空間下に生体組織又は細胞を載置し、60〜84時間、形態変化を起こさないで前記生体組織又は細胞を保存可能とし、前記電場空間を、1.0kV〜3.5kVの交流電圧を電極へ印加することで、前記電極を中心に半径50cm以内の範囲に形成し、前記生体組織又は細胞を血管内皮細胞とするものである。
【選択図】図14
【解決手段】本発明に係る生体組織又は細胞の保存方法は、−4℃〜4℃に制御され、氷結点以下の温度で水が非凍結状態となる過冷却が起こる状態が整った0.3kV/m〜1.0kV/mの電界強度を有する電場空間下に生体組織又は細胞を載置し、60〜84時間、形態変化を起こさないで前記生体組織又は細胞を保存可能とし、前記電場空間を、1.0kV〜3.5kVの交流電圧を電極へ印加することで、前記電極を中心に半径50cm以内の範囲に形成し、前記生体組織又は細胞を血管内皮細胞とするものである。
【選択図】図14
Description
本発明は、氷結点以下の温度で水が非凍結状態となる過冷却が起こる状態が整った電場空間下で、生体の臓器、組織、細胞を保存し、これら保存した組織等を再建手術等に適用することを狙った生体組織又は細胞の保存方法に関する。
生体の臓器、組織、細胞などの重大な機能低下、欠損や変形の病態に対する解決策の一つに「再建」がある。具体的には、乳癌切除後の遊離皮弁の血管吻合による乳房再建、切断指の血管吻合による切断指再接着、体表の悪性腫瘍切除後の遊離皮弁の血管吻合による再建、広範囲熱傷における遊離植皮、外傷や手術による大量失血に伴う輸血などが挙げられる。しかし、臓器、組織、細胞などが身体から切離されると、血液循環途絶のために血液からの酸素や栄養供給が得られず、老廃物の排除もできなくなって、軽微な細胞崩壊から次第に明らかな細胞崩壊、細胞壊死に至る。このため、細胞崩壊の段階が進むにつれて「再建」の成功の可能性が著しく低くなることが知られる。
従来から、医師や医療関係者はこの「再建」の成功率を上げるため、術式、技術、取り巻く環境などにおいてたゆまぬ努力を続けている。その重要な対策の一つとして、再建する臓器、組織、細胞を身体に存在したままとすること、或いはその直後の新鮮な状態で保存することが挙げられる。これまでに例えば、1)凍結、2)冷蔵、3)保存液の使用等が考えられてきた。
1)凍結
細胞凍結後の細胞繊維の破壊に伴ってドリップを生じることとなり、生体由来物の新鮮なままでの保存に難点がある。
細胞凍結後の細胞繊維の破壊に伴ってドリップを生じることとなり、生体由来物の新鮮なままでの保存に難点がある。
2)冷蔵(0℃〜4℃)
一般に使用され、容易に適用可能だが、生体の代謝が4℃で通常の10分の1程度になるというのに過ぎず、―4℃で非凍結であると生体の代謝が17分の1程度となることが知られている。したがって、非凍結の氷点下保存が一つの目指される方向である。
一般に使用され、容易に適用可能だが、生体の代謝が4℃で通常の10分の1程度になるというのに過ぎず、―4℃で非凍結であると生体の代謝が17分の1程度となることが知られている。したがって、非凍結の氷点下保存が一つの目指される方向である。
3)保存液
ウイルコンシン大学(UW)液が臓器保存に寄与し、7〜8時間が限界とされていた保存期間を、24時間程度に延長することが可能となった。しかし、5〜10%の機能不全を呈し、さらに保存期間が16時間以上経過すると、再建手術での成績が低くなることが知られている。
ウイルコンシン大学(UW)液が臓器保存に寄与し、7〜8時間が限界とされていた保存期間を、24時間程度に延長することが可能となった。しかし、5〜10%の機能不全を呈し、さらに保存期間が16時間以上経過すると、再建手術での成績が低くなることが知られている。
再建適応例を挙げると、突発事故などにより切断された手指や足趾は、マイクロサージャリーの技術で0.4〜1mm径の血管を手術用顕微鏡下に吻合し、血行再開させて生着を得る切断指(趾)再接着が行われる。この再接着術の時期が、事故後より早期であればその生着の可能性が高くなる。一般的に再接着可能な時間は室温で3〜5時間とされ、2〜4℃の低温保存で12〜24時間とされる。さらに、四肢切断の組織量が多い場合、再接着可能な時間はさらに短く、約4時間とされている。切断指を生着させるための組織保存で要求されるのは、時間単位で組織、細胞が安定したまま保存されることである。
一方で、下記特許文献1,2等において、氷点下で凍結しない保存が可能な電場形成システム冷蔵庫を用いることにより、臓器、組織、細胞の代謝を下げ、臓器、組織、細胞を生体内と同等な状態にする保存することに関する発明が提案されている。
しかし、上記特許文献1で提案される保存方法は、電流電圧のかけ方について交流、直流のいずれであってもよいとされ、100V、500V、1000V等といった各電圧値のほかに、有効な電圧印加方法の特定がされていない。また、長期間、自然に近い状態で微生物又は動物由来物が有する活性を、不活性化もしくは不活性化、死滅化させることなく保存しようとすることに着目した発明であるので、保存による細胞障害等の軽減に効果的に寄与させることが難しいという問題がある。また、上記特許文献2で提案される保存方法は、直流電圧と同時に交流電圧を印加する等、やや複雑な制御が必要とされる。また、溶存酸素を不活性化させることを目的とした細胞の酸化に着目した技術である。
本発明は、上記実情に鑑み提案され、氷結点以下の温度で水が非凍結状態となる過冷却が起こる状態が整った電場空間下で、生体の臓器、組織、細胞を保存し、特に、これらを再建手術等に適用することが可能になる生体組織又は細胞の保存方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る生体組織又は細胞の保存方法は、−4℃〜4℃に制御され、氷結点以下の温度で水が非凍結状態となる過冷却が起こる状態が整う0.3kV/m〜1.0kV/mの電界強度を有する電場空間下に生体組織又は細胞を載置することで、前記生体組織又は細胞を60〜84時間、形態変化を起こさせないで保存可能とすることを特徴とする。
特に、上記電場空間が、1.0kV〜3.5kVの交流電圧を電極へ印加することで、前記電極を中心に半径50cm以内の範囲に形成されることを特徴とする。
また、上記生体組織又は細胞が、血管内皮細胞であることを特徴とする。
本発明に係る生体組織又は細胞の保存方法では、−4℃〜4℃に制御され、氷結点以下の温度で水が非凍結状態となる過冷却が起こる状態が整う0.3kV/m〜1.0kV/mの電界強度を有する電場空間を形成する。この電場空間下に生体組織又は細胞を載置することで、生体組織又は細胞を60〜84時間、形態変化を起こさせないで保存可能とする。したがって、本発明に係る生体組織又は細胞の保存方法により保存された生体組織又は細胞は、例えば、身体から切離されてから60〜84時間、形態変化を起こすことなく保存することができ、これらを再建手術等に適用することが可能となる。
特に、本発明では、上記電場空間が、1.0kV〜3.5kVの交流電圧を電極へ印加することで、電極を中心に半径50cm以内の範囲に形成される構成である。これにより、上記電場空間において、氷結点以下の温度で水が非凍結状態となる過冷却が起こる状態を確実に形成することができ、本発明により保存された生体組織又は細胞を確実に、身体から切離されてから60〜84時間の間、形態変化を起こさせることなく保存することができる。
また、本発明では、上記生体組織又は細胞が、血管内皮細胞である構成である。したがって、本発明に係る生体組織又は細胞の保存方法により血管内皮細胞を保存し、この保存した血管内皮細胞で、突発事故などにより切断された手指や足趾の再建手術を行うことが有効となる可能性がある。
以下、本発明に係る生体組織又は細胞の保存方法の一実施形態を説明する。なお、この実施形態は、本発明の構成を具現化した例示に過ぎず、特許請求の範囲に記載した事項を逸脱することがなければ種々の設計変更を行うことができる。
本発明は、氷結点以下の温度で水が非凍結状態となる過冷却が起こる状態が整えることのできる電場形成が可能な冷蔵庫を使い、この冷蔵庫内に生体組織又は細胞を載置することで、この生体組織又は細胞を60〜84時間、形態変化を起こすことなく保存可能とする生体組織又は細胞の保存方法に係る。
電場形成が可能な冷蔵庫は、−4℃〜4℃に制御される温度制御手段を備えている。また、冷蔵庫内の棚、壁、底又は天井等の所定の箇所に板状又は棒状の電極を備えている。さらに、この電極へ1.0kV〜3.5kVの交流電圧を印加する電圧印加手段を備えている。
電場形成が可能な冷蔵庫は、この電極へ1.0kV〜3.5kVの交流電圧が印加されることで、電極を中心に半径50cm以内である冷蔵庫の収納空間内に0.3kV/m〜1.0kV/mの電界強度を有する電場空間を形成することができる。また、そのときの冷蔵庫の収納空間の温度を、温度制御手段によって−4℃〜4℃に制御することができる。その他、交流印加電圧の高低の制御や、電極に蓄える電荷の制御は、公知の制御装置を使うことで達成することができる。
なお、好ましい交流印加電圧は、1000V〜2500V(ボルト)である。これにより500V/m程度の電界強度を有する電界強度を有する電場空間を形成することが好ましい。また、このような電場空間において、生体組織又は細胞は非凍結状態のまま、少なくとも2.5〜3.5日に相当する時間である72時間程度まで、形態変化を起こすことなく保存することができる。また、温度制御手段によって制御する温度は特に、−4℃〜0℃又は、−4℃以下(〜−10℃程度までの低温)に制御することが好ましい。
電場形成が可能な冷蔵庫に備わる電極は、冷蔵庫の収納空間の形状から、板状の平面電極であることが好ましい。また、平面電極の一方の面に絶縁材を配置し、電場を形成するのに方向を持たせる形態、すなわち平面電極の一方の面側のみに電場を形成する形態も好ましい形態といえる。なお、平面電極そのもの又は電場形成が可能な冷蔵庫に対し、実施時の放電や漏電を確実に避ける各種の保護手段、接触による電撃を低減するための各種の防護手段を備えるべきことに留意すべきである。
以下、上述のような構成の電場形成が可能な冷蔵庫を使い、生体組織又は細胞の例として齧歯類であるラットの血管内皮細胞を取り上げ、これが組織学的に形態変化を起こすことなく保存可能であるか否か確認したので、その結果を各実施例として説明していく。
(実施例1:保存組織の免疫組織染色による組織学的検討)
犠牲にした複数のラットを二群に分け、犠牲後ただちに、そのうちの一群をグループAとして一般的な冷蔵庫(4℃、電圧印加「無」)内に載置して保存した。また、他群をグループBとして、電場形成が可能な冷蔵庫(−4℃、1000Vの電圧印加)内に載置して保存した。グループA及びグループBから、犠牲後7日目、9日目、12日目にそれぞれ大腿血管を採取し、ヴォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand Factor)染色による免疫組織染色で血管内皮細胞を染色した。
犠牲にした複数のラットを二群に分け、犠牲後ただちに、そのうちの一群をグループAとして一般的な冷蔵庫(4℃、電圧印加「無」)内に載置して保存した。また、他群をグループBとして、電場形成が可能な冷蔵庫(−4℃、1000Vの電圧印加)内に載置して保存した。グループA及びグループBから、犠牲後7日目、9日目、12日目にそれぞれ大腿血管を採取し、ヴォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand Factor)染色による免疫組織染色で血管内皮細胞を染色した。
その結果、図1〜図6に示すような組織学的知見が得られた。すなわち、図1に示すグループAの4℃、電圧印加「無」の7日目の大腿血管の写真並びに、図2に示すグループBの−4℃、1000Vの電圧印加の7日目の大腿血管の写真では血管内皮が染色され、その構造が保たれていることが分かった。
しかしながら、図3に示すグループAの4℃、電圧印加「無」の9日目の大腿血管の写真では、血管内皮の脱落が著明となった(図中の矢印参照)。その一方で、図4に示すグループBの−4℃、1000Vの電圧印加の9日目の大腿血管の写真では血管内皮が染色され、その構造が保たれていた。
なお、図5に示すグループAの4℃、電圧印加「無」の12日目の大腿血管の写真並びに、図6に示すグループBの−4℃、1000Vの電圧印加の12日目の大腿血管の写真では、血管内皮細胞の構造が保たれなくなっていた(図中の矢印参照)。
以上から、本発明に係る生体組織又は細胞の保存方法によって、少なくともラットの大腿血管を犠牲後9日間まで、組織学的に保存可能となることが示唆された。
(実施例2:保存組織のSEMによる組織学的検討)
犠牲にしたラットの大腿血管を採取し複数に分割し、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で満たした複数のFalcon(登録商標)コニカルチューブに、それぞれ分割した大腿血管を一つずつ入れて二群に分け、そのうちの一群をグループCとして一般的な冷蔵庫(4℃、電圧印加「無」)内に載置して保存した。また、他群をグループDとして、電場形成が可能な冷蔵庫(−4℃、1000Vの電圧印加)内に載置して保存した。保存後0日のコントロールの大腿血管及び、グループC及びグループDから保存後1日目、3日目、7日目の大腿血管を得て電子顕微鏡(SEM)で観察し、血管内皮細胞の状態を評価した。
犠牲にしたラットの大腿血管を採取し複数に分割し、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で満たした複数のFalcon(登録商標)コニカルチューブに、それぞれ分割した大腿血管を一つずつ入れて二群に分け、そのうちの一群をグループCとして一般的な冷蔵庫(4℃、電圧印加「無」)内に載置して保存した。また、他群をグループDとして、電場形成が可能な冷蔵庫(−4℃、1000Vの電圧印加)内に載置して保存した。保存後0日のコントロールの大腿血管及び、グループC及びグループDから保存後1日目、3日目、7日目の大腿血管を得て電子顕微鏡(SEM)で観察し、血管内皮細胞の状態を評価した。
その結果、図7〜図13に示すような組織学的知見が得られた。すなわち、図7に示すコントロールのSEM写真では、血管内皮細胞の状態が保たれていた。図8に示すグループCの4℃、電圧印加「無」の1日目の大腿血管のSEM写真並びに、図9に示すグループDの−4℃、1000Vの電圧印加の1日目の大腿血管のSEM写真では血管内皮の構造上の変化は認められなかった。
しかしながら、図10に示すグループCの4℃、電圧印加「無」の3日目の大腿血管のSEM写真では、血管内皮細胞が膨化し、血管内皮の脱落が著明となった。その一方で、図11に示すグループDの−4℃、1000Vの電圧印加の3日目の大腿血管のSEM写真では、血管内皮細胞の状態が保たれていた。
なお、図12に示すグループCの4℃、電圧印加「無」の7日目の大腿血管のSEM写真並びに、図13に示すグループDの−4℃、1000Vの電圧印加の7日目の大腿血管のSEM写真では、血管内皮細胞が膨化し、血管内皮細胞が基底膜より剥離していた。
以上から、本発明に係る生体組織又は細胞の保存方法によって、少なくともラットの大腿血管を電子顕微鏡(SEM)で確認した場合、犠牲後3日間、組織学的に有効に保存することが可能であると示唆された。
(実施例3:保存組織の移植検査)
犠牲にしたラットを、電場形成が可能な冷蔵庫(−2℃、1000Vの電圧印加)内に載置して3日間、保存した。この保存したラットから大腿血管を採取し、別の同系統ラットに全身麻酔下、顕微鏡下でバイパス移植した。移植後2日目に移植したラットを全身麻酔し、移植血管の状態を目視で確認した。
犠牲にしたラットを、電場形成が可能な冷蔵庫(−2℃、1000Vの電圧印加)内に載置して3日間、保存した。この保存したラットから大腿血管を採取し、別の同系統ラットに全身麻酔下、顕微鏡下でバイパス移植した。移植後2日目に移植したラットを全身麻酔し、移植血管の状態を目視で確認した。
その結果、図14に示すように、移植血管は開存していた。したがって、本発明に係る生体組織又は細胞の保存方法によって、少なくともラットの大腿血管を犠牲後3日間まで、移植に有効な状態で保存することが可能であると示唆された。
以上より、実施例1〜3で示されたことを鑑みれば、本発明に係る生体組織又は細胞の保存方法によって、ラット大腿血管を組織学的に3日程度の保存が可能であると考えられる。また、その移植も可能であることが示唆された。
(比較例1)
一方、犠牲にしたラットを、電場形成が可能な冷蔵庫(−2℃、1000Vの電圧印加)内に載置して5日間、保存した。この保存したラットから大腿血管を採取し、別の同系統ラットに全身麻酔下、顕微鏡下でバイパス移植した結果、吻合した先から血栓形成が起こり、生存能力が保たれなかった。
一方、犠牲にしたラットを、電場形成が可能な冷蔵庫(−2℃、1000Vの電圧印加)内に載置して5日間、保存した。この保存したラットから大腿血管を採取し、別の同系統ラットに全身麻酔下、顕微鏡下でバイパス移植した結果、吻合した先から血栓形成が起こり、生存能力が保たれなかった。
(比較例2)
また、犠牲にしたラットから大腿血管を採取し、生理食塩水につけた状態で電場形成が可能な冷蔵庫(−2℃、1000Vの電圧印加)内に載置して5日間、保存した。この保存した大腿血管を、別の同系統ラットに全身麻酔下、顕微鏡下でバイパス移植した。その結果、確認時に血栓形成を起こしていた。
また、犠牲にしたラットから大腿血管を採取し、生理食塩水につけた状態で電場形成が可能な冷蔵庫(−2℃、1000Vの電圧印加)内に載置して5日間、保存した。この保存した大腿血管を、別の同系統ラットに全身麻酔下、顕微鏡下でバイパス移植した。その結果、確認時に血栓形成を起こしていた。
以上から、血管バイパス移植は手技の善し悪しという要因が加わるが、保存期間と血栓形成という指標によって、本発明における保存期間の限界を定めることができる可能性が示された。
したがって、本発明に係る生体組織又は細胞の保存方法により、例えば、冷蔵庫の収納空間等に、−4℃〜4℃に制御され、0.3kV/m〜1.0kV/mの電界強度を有する電場空間を形成し、この電場空間下に生体組織又は細胞として例えば、血管内皮細胞を載置することで、3日間程度(60〜84時間、72時間程度)、形態変化を起こすことなく血管内皮細胞を保存することが可能となる。そして、この保存した血管内皮細胞を移植することも可能であり、本発明を利用して保存した血管内皮細胞を、突発事故などにより切断された手指や足趾の再建術を行うことが有効となる可能性がある。
以上、本発明について一実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。例えば、上記実施例において、血管内皮細胞をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)に入れて、本発明に係る生体組織又は細胞の保存方法を適用する例を説明したが、本発明に係る生体組織又は細胞の保存方法を適用するに際し、生体組織又は細胞を通常の生理食塩水に入れてもよく、所謂ウイスコンシン大学液に入れてもよい。
ここで、本実施形態を説明するのに用いた「保存」の用語の定義は、生鮮食品等について語るときに用いられる「保存」のそれとは、相違する。生鮮食品等での「保存」とは、その採取から人間に食されるまでの保存であって、腐敗が始まる前に賞味されることを目的として定義される。食肉、魚介、野菜、果物などは、採取時が常に食に最適というわけでなく、一定の熟成が必要なこともある。また、産地から消費者に渡るのに、流通という一定の期間も必要となる。
一方、本発明が貢献する医療分野において、その再建手術等に用いる生体由来物の「保存」は、再建の手術や処置が行われるとき、その由来物が総体として“生きている”だけでなく、術後に血液循環が再開通し、その循環により総体が生着し機能しなければならない。生体から生体由来物が切離され血流が途絶されると、細胞生存に最も鋭敏で影響を受けやすいのが血管内皮細胞である。血管内皮細胞は、直接血液と接する内皮層を持ち、血液との物質交換の調整の役割を果している。また、血液に対して、凝固防止をはじめとする種々の機能をはたしている。また、再建手術が正しく遂行されても、阻血時間が長くなると組織中に蓄積された活性酸素が血流で移植片内に循環し、さらに移植片の組織障害や内皮細胞障害(阻血再還流障害)を助長する。結果として再建不成立となる。よって、再建に供する臓器、組織、細胞は、極力生体内の状態、切離時の状態に近いこととして「保存」が定義される。
Claims (3)
- −4℃〜4℃に制御され、氷結点以下の温度で水が非凍結状態となる過冷却が起こる状態が整う0.3kV/m〜1.0kV/mの電界強度を有する電場空間下に生体組織又は細胞を載置することで、前記生体組織又は細胞を60〜84時間、形態変化を起こさせないで保存可能とすることを特徴とする生体組織又は細胞の保存方法。
- 前記電場空間が、1.0kV〜3.5kVの交流電圧を電極へ印加することで、前記電極を中心に半径50cm以内の範囲に形成されることを特徴とする請求項1に記載の生体組織又は細胞の保存方法。
- 前記生体組織又は細胞が、血管内皮細胞であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の生体組織又は細胞の保存方法。
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