まず、図4の油圧回路図を参照しつつ、図1乃至図3に示す構造について説明する。図1に示す車体フレームケース11には、トラクタ等の車両の変速装置であるHST1が、一つのユニットとして収容されている。車体フレームケース11は、前後両端を開口端としており、該前後端のうちの一方(本実施例ではこれを前端とする)の開口端11aは、エンジン10(図4参照)の端部(本実施例では後端部)に接合され、他方の開口端11bは、アクスルケース12の端部(本実施例では前端部)に接合される。なお、以下、各構成要素の位置や方向については、車体フレームケース11の開口端11aが前端、開口端11bが後端であるとの前提であるものとする。
アクスルケース12は図示されない車軸(アクスル)を支持するとともに、該車軸を駆動するための伝動機構を収容する。該伝動機構は、HST1の出力を該車軸に伝達するものであり、(例えばギア式の)変速機構を含むものであってもよい。この場合には、HST1を主変速機構とし、アクスルケース12内の変速機構を副変速機構とすることになる。
接合した車体フレームケース11及びアクスルケース12は、一つの車体フレームとして、例えば、トラクタ等の車両の左右中央部に配置され、図3に示すように、その左右端に略水平板状の左右ステップ13・14が固設される。該ステップ13・14は、車両乗降用や、運転席に座る作業者の足置きとして用いられる。左右ステップ13・14のうちの一方のステップ14の下方には、HST1の後記可動斜板を制御するためのサーボユニット30が配置されている。
HST1は、油圧ポンプ2、油圧モータ3、センタセクション4、HSTハウジング5、チャージポンプ20等を組み合わせてなるものである。本実施例で、センタセクション4は、鉛直板状で、車体フレームケース11の後開口端11bを覆うように、車体フレームケース11内に固設されている。センタセクション4の鉛直前面には、ポンプ取付面・モータ取付面が上下並列状に形成されており、該ポンプ取付面に油圧ポンプ2のシリンダブロック2aを、該モータ取付面に油圧モータ3のシリンダブロック3aを、回転摺動自在に取り付けている(弁板を介設してもよい)。なお、本実施例では、油圧ポンプ2が上方に、油圧モータ3が下方に配置されている。センタセクション4より前方にHSTハウジング5が延設され、油圧ポンプ2及び油圧モータ3の上下左右及び前部を覆っている。
図1に示すように、HSTハウジング5の前壁部5aが油圧ポンプ2及び油圧モータ3の前方に配置されている。この前壁部5aのうち、油圧ポンプ2に臨む部分には、油圧ポンプ2用の可動斜板6が、(図1では前壁部5aと可動斜板6とが離れているように見えているが、実際には)回動・摺動自在に装着され、シリンダブロック2aより前方に突出するプランジャ2bの頭部に当接している。また、該前壁部5aのうち、油圧モータ3に臨む部分には、油圧モータ3用の固定斜板7が固設され、シリンダブロック3aより前方に突出するプランジャ3bの頭部に当接している。
図2に示すように、HSTハウジング5の左右各側壁に、同一軸芯上の孔5b・5cが、HSTハウジング5の内部空間と外部空間とを連通するように形成されている。孔5bには軸受キャップ8が嵌入され、孔5cには軸受ブラケット9が嵌入されている。軸受キャップ8の外端には、フランジ8bが形成されており、孔5bの外側開口端を覆うように、HSTハウジング5の左右一側外面に嵌合されている。軸受ブラケット9にも同様にフランジ9bが形成されており、孔5cの外側開口端を覆うように、HSTハウジング5の左右他側外面に嵌合されている。
可動斜板6は、その回動支点軸として、左右一対のトラニオン軸6a・6bを有している。これらを嵌入・軸支すべく、軸受キャップ8及び軸受ブラケット9にはそれぞれ、軸受孔8a・9aが形成されており、各軸受孔8a・9a内にて、軸受キャップ8・軸受ブラケット9の内周面に沿って、軸受17がそれぞれ設けられている。また、軸受ブラケット9の軸受孔9a内には油シール18が設けられている。軸受孔8aにはトラニオン軸6aが嵌入され、軸受孔9aにはトラニオン軸6bが嵌入され、各軸受孔8a・9aに嵌入されたトラニオン軸6a・6bは、軸受17を介して軸受キャップ8・軸受ブラケット9にて回動自在に軸支されている。また、軸受ブラケット9において、油シール18は、軸受17の潤滑油の漏れを防いでいる。
トラニオン軸6a・6bは長さが異なっている。短い方のトラニオン軸6aの外端は、軸受キャップ8のフランジ8bにて覆われていて、HSTハウジング5より外方には突出していない。一方、軸受ブラケット9の軸受孔9aは左右貫通状であって、その外端がフランジ9bにて開口しており、長い方のトラニオン軸6bの外端部は、該軸受ブラケット9のフランジ9b(軸受孔9aの外端)より外方に突出することで、HSTハウジング5より突出しており、さらに、車体フレームケース11の左右側壁のうちの一方の側壁に設けられた孔11cを介して、車体フレームケース11の外方へと突出している。
さらに、軸受ブラケット9には、フランジ9bより左右外方へと突出するように脚部9cが形成されている。この脚部9cは、例えば、トラニオン軸6bの軸芯上に見てフランジ9bの外周縁に沿って延伸するように形成されるものとしてもよいし、また、脚部9cを複数個設け、フランジ9bの外周縁に沿ってこれらを配列するものとしてもよい。脚部9cは、孔11cを介して車体フレームケース11の外方へと突出している。こうして、軸受ブラケット9のフランジ9bより突出するトラニオン軸6bの外端部及び軸受ブラケット9の脚部9cが、孔11cを介して、車体フレームケース11の外側におけるステップ14下方の空間へと突出しており、これらを利用して、該ステップ14下方に配置されるべきサーボユニット30が取り付けられる。
油圧ポンプ2は、シリンダブロック2aの回転芯軸としての前後水平状のポンプ軸2cを有し、油圧モータ3は、シリンダブロック3aの回転芯軸としての前後水平状のモータ軸3cを有する。ポンプ軸2c・モータ軸3cは、センタセクション4にて回転自在に軸支されている。ポンプ軸2cの後端部及びモータ軸3cの後端部は、センタセクション4よりアクスルケース12内へと後方に突出している。該アクスルケース12内にて、ポンプ軸2cの後端部には、PTO軸またはPTO軸に連動連係しているPTO伝動軸15の前端部が、カップリング15aを介して接続されており、一方、HST1の出力軸としてのモータ軸3cの後端部には、前記のアクスルケース12内の伝動機構の入力軸16の前端部が、カップリング16aを介して接続されている。
車体フレームケース11内において、HSTハウジング5の前壁部5aの前端には、ギアケース21が固設されている。ポンプ軸2cの前部はHSTハウジング5の前壁部5aより、ギアハウジング21を介して、前方へと突出している。エンジン10と車体フレームケース11の前開口端11aとを接合した状態において、車体フレームケース11内には、前開口端11aを介して、エンジン10の前後水平状のエンジン出力軸10a及びその後端部に設けられるフライホイール10bが配設される。HST1の入力軸としてのポンプ軸2cは、前述の如くギアハウジング21より前方に突出し、その前端部が、ダンパ10cを介してフライホイール10bに接続されている。
ギアケース21内において、ポンプ軸2cの前後途中部が回転自在に軸支されているとともに、該ポンプ軸2cに対し平行のチャージポンプ駆動軸24が回転自在に軸支されている。ギアケース21内にて、ポンプ軸2cの該前後途中部にはギア22が固設され、ギアポンプ駆動軸24にはギア23が固設され、両ギア22・23が噛合して、ポンプ軸2cからチャージポンプ駆動軸24へと動力を伝達するためのギア列を構成している。ギアケース21の前端には、ポンプ軸2cの該ギアハウジング21からの前方突出部と並列するように、チャージポンプ20を収容するポンプハウジング25が固設されており、該チャージポンプ駆動軸24がギアケース21からポンプハウジング25へと前方に突出している。ポンプハウジング21内ではポンプ駆動軸24に対し平行のポンプ従動軸20cが軸支されている。ポンプハウジング21内にて、ポンプ駆動軸34に固設されたポンプギア20aとポンプ従動軸20cに固設されたポンプギア20bとが噛合して、チャージポンプ20としてのギアポンプを構成している。
ここで、図1を参照しつつ図4の油圧回路図にて示すチャージポンプ20からHST1への作動油供給系統について説明する。チャージポンプ20は、アクスルケース12内の油溜まりより油を吸入する。すなわち、アクスルケース12には、油取り出しポートP1が設けられていて、アクスルケース12内の油溜まりより油取り出しポートP1を介してアクスルケース12の外部へと取り出された油が、油路L1を介して、車体フレームケース11内に配置されたチャージポンプ20の吸入口へと吸入される。油路L1は、例えば、車体フレームケース11の壁内に形成してもよいし、ケース11・12の外部に配管される油管にて構成してもよい。
チャージポンプ20の吐出口より吐出される油は、再び車体フレームケース11の外部へと取り出され、図4にて図示するラインフィルタ26、油路L2、チャージポートP2を介して、センタセクション4内に形成されたチャージ油路4a内に供給される。なお、図1に示す実施例では、チャージポートP2は、後方のアクスルケース12内に向かってセンタセクション4の後端面にて開口するチャージ油路4aの開口後端であり、油路L2は油管19にて構成されており、油路L2としての該油管は、アクスルケース12の外部に延設されて、アクスルケース12の壁に設けた孔12aを介してアクスルケース12内へと導入され、センタセクション4の後端面におけるポートP2としての油路4aの開口端に接続されている。油路L2は、必ずしも図1のようにアクスルケース12を通る油管19で構成する必要はなく、したがって、センタセクション4内のチャージ油路4aを図1のようにアクスルケース12内に向けて開口させることも必然ではない。
センタセクション4のチャージ油路4a内の油量は、センタセクション4内に設けたリリーフ弁28にて調整され、余剰の油は、センタセクション4内に形成したドレン油路4bを介して、センタセクション4の前方におけるHSTハウジング5内の空間に排出される。なお、図1に示すように、HSTハウジング5には、HSTハウジング5内の油をHSTハウジング5の外部に排出するためのドレンポート5dが形成されており、該ドレンポート5dは、通常は図1に示すようにドレンキャップ29にて閉栓されている。このドレンポート5dからの油の排出先であるHSTハウジング5内または車体フレームケース11内の油溜まりは、図4に示すように、油路L5を介して、アクスルケース12内の油溜まりと連通させてもよい。
図4に示すように、センタセクション4内には、油圧ポンプ2と油圧モータ3との間に介装される一対のメイン油路ML1・ML2が形成されている。さらに、該センタセクション4内に、図4に示すように、一対のチャージ弁ユニットCV1・CV2が設けられており、チャージ油路4a内の(リリーフ弁28にて調量された)油は、チャージ弁ユニットCV1における逆止弁50が開弁することによりメイン油路ML1へと補充され、また、チャージ弁ユニットCV2における逆止弁50が開弁することによりメイン油路ML2へと補充される。なお、各チャージ弁ユニットCV1・CV2にて、それぞれの逆止弁50をバイパスするようにリリーフ弁51が設けられており、該当のメイン油路ML1・ML2内の油を調量するものとしている。さらに、一方のチャージ弁ユニットCV2(好ましくは、チャージ弁ユニットCV2の逆止弁50にて油の補充を受けるメイン油路ML2を、後進時に高圧側となる油路とする。)には、当該逆止弁50をバイパスするように、可動斜板6の中立領域拡張用のオリフィス52が設けられている。
ここで、図4の油圧回路図にて、サーボユニット30の概略構成と、チャージポンプ20からサーボユニット30への油供給系統について説明する。チャージポンプ20からの油は、ラインフィルタ26を通過後に、油路L2を介してHST1へと供給されるとともに、油路L3を介してサーボユニット30へと供給される。すなわち、チャージポンプ20は、HST1の作動油を供給するものであるとともに、HST1の可動斜板6制御用のサーボユニット30の作動油を供給するものでもある。
サーボユニット30は、サーボハウジング31を有しており、該サーボハウジング31内に油圧シリンダ32を構成しており、該油圧シリンダ32内に、可動斜板6の位置制御用アクチュエータとしてのピストン33を収容しており、該ピストン33内には、ピストン33を中立位置に付勢するバネ33aを設けている。なお、図4(及び後述の図11)に図示されるバネ33aは、図3に示すバネ33aとは構造が異なっているように描かれているが、図4(図11)でのバネ33aは、ピストン33を中立位置に付勢する機能を有することが示されていればよいのであって、当該機能を有するものであれば、その具体的な構造はどのようなものでもよい。さらに該サーボハウジング31内に、油圧シリンダ32内においてピストン33の一側に形成される油室32aに対する油の給排を行う給排切換弁35、及び、油圧シリンダ32内においてピストン33の他側に形成される油室32bに対する油の給排を行う給排切換弁36を設けている。給排切換弁35・36は、比例ソレノイド35a・36aを用いた電磁比例制御弁とされ、スプール等の可動部品をバネ33aのバネ力や油圧力に対抗する方向に比例ソレノイド35a・36aの駆動力で駆動し、可動部品の位置や力のバランスを制御することで、流量や圧力を制御する。比例ソレノイド35a・36aは、印加される電流値(制御電流値)と比例した駆動力を発生するようになっている。したがって、上記流量や圧力は、比例ソレノイド35a・36aへの印加電流に応じて制御される。給排切換弁35・36のうちの一方を、前進用に励磁されるべき給排切換弁とし、他方を、後進用に励磁されるべき給排切換弁としており、給排切換弁35・36のうち、励磁された側の給排切換弁の給排ポート35dまたは36dからその該当の油室32aまたは32bに油が供給されるものとしている。
サーボハウジング31には入口ポートP3が設けられており、油路L3から入口ポートP3を介してサーボハウジング31内に導入された油が、両給排切換弁35・36それぞれの給入ポート35b・36bへと供給される。また、サーボハウジング31には出口ポートP4が設けられており、両給排切換弁35・36の排出ポート35c・36cからの排出油は合流し、出口ポートP4、サーボハウジング31外部の油路L4、及び、HSTハウジング5(または車体フレームケース11)に設けた入口ポートP5を介して、HSTハウジング5(または車体フレームケース11)内の油溜まりへと排出される。
各給排切換弁35・36は、比例ソレノイド35a・36aに印加される電流値に応じて、供給位置Sと排出位置Dとに振動的に切り換えられるものである。各給排切換弁35・36は、供給位置Sにあるときに、その給入ポート35bまたは36bを給排ポート35dまたは36dに連通し、該給入ポート35bまたは35bに導入されている入口ポートP3からの油を、その該当の油室32aまたは32bに供給する。各給排切換弁35・36は、排出位置Dにあるときに、その給排ポート35dまたは36dを排出ポート35cまたは36cに連通し、その給排ポート35d・36dに導入されている該当の油室32aまたは32bからの油を、出口ポートP4へと排出する。このように油の給排を繰り返すことで油室32aまたは32bに対する圧力が設定され、この圧力と前記バネ33aの付勢力とが釣り合うポイントまでピストン33がストロークする。なお、前記電流値は図外の変速ペダルやレバーの操作量に応じて図外のコントローラーが創成するものとされる。
以上の図4によるサーボユニット30の構成を踏まえて、その具体的構造を、図2及び図3にて説明する。サーボユニット30は前述の如くステップ14の直下方に配設され、サーボハウジング31の上端面のすぐ上にステップ14が存在する。このことを考慮して、給排切換弁35・36は、前後に配列された状態で、サーボハウジング31の下部31L(以下、ハウジング下部31L)内に設けられ、両給排切換弁35・36のソレノイド35a・36aを、サーボハウジング31の底面より下方に突出させており、一方、油圧シリンダ32は、サーボハウジング31の上部31U(以下、ハウジング上部31U)内に前後水平状に形成されている。
ハウジング下部31L内に設けられる各給排切換弁35・36の上部に給入ポート35b・36bが、下部に排出ポート35c・36cがそれぞれ設けられている。ハウジング下部31L内には、給入ポート35b・36b同士を接続するように前後水平状の給入油路31bが形成されており、その前後途中部より、HST1に対し左右反対側(以下、サーボユニット30の説明において、この側を「左右外側」というものとする)に、左右水平状の給入油路31aを延設している。該給入油路31aの外端は、サーボハウジング31の左右外側の側面31j(以下、ハウジング外側面31j)にて開口している。この給入油路31aの開口端を、図4に示す入口ポートP3としており、ここに、油路L3としての油管等が接続される。
ハウジング下部31L内の、該給入油路31bの下方にて、排出ポート35c・36c同士を接続するように前後水平状の排出油路31cが形成されており、その前後途中部より左右外側に、左右水平状の排出油路31dを延設している。該排出油路31dの外端は、ハウジング外側面31jにて開口している。この排出油路31dの開口端を、図4に示す出口ポートP4としており、ここに、車体フレームケース11内またはHSTハウジング5内の油溜まりへと油を排出するための油路L4としての油管等が接続される。
HST1に向かう側(以下、サーボユニット30の説明においては、この側を「左右内側」というものとする)の側面であるサーボハウジング31の左右内側面(以下、ハウジング内側面31i)には、ハウジング上部31Uからハウジング下部31Lにかけて切欠31g(図2参照)が設けられていて、ピストン33とHST1の可動斜板6のトラニオン軸6bとを連結する連結部材としてのアーム34が該切欠31g内に配置されている。さらに、ハウジング上部31Uにおける該切欠31gの上部には、油圧シリンダ32に連通する孔31hが形成され、切欠31gの該上部内に配置されるアーム34の上端部より突出する係止部34aが、孔31hを介して、該油圧シリンダ32内のピストン33に係止されている。なお、孔31hは、ピストン33の摺動方向や摺動量にかかわらず、油室32a・32bのいずれにも連通することはなく、すなわち、ピストン33により、切欠31gに対しての油室32a・32bの油密性が確保されている。
切欠31gの下部に配置されるアーム34の下部には、同一軸芯上のトラニオンボス34b及びボルトボス34dが形成されている。トラニオンボス34bは、後記カバー部材37にて軸受(後記オイルシール39)を介して回動自在に軸支され、該カバー部材37より左右内側)に水平状に突出している。この突出端には、テーパー状の凹部34cが形成されていて、この凹部34cに、トラニオン軸6bのテーパー状の先端部を嵌入するものとしている。
ボルトボス34dは、操作ボス34bとは左右反対側の、左右外側に水平状に延出されている。サーボハウジング31におけるハウジング上部31Uとハウジング下部31Lとの境界部分(油圧シリンダ32より下方で、給排切換弁35・36より上方)には、サーボハウジング31の左右内側の切欠31gから左右外側まで貫通孔31rが穿設されていて、該貫通孔31rにボルトボス34dが相対回動自在に挿通され、その外端を、ハウジング外側面31jより突出させている。このボルトボス34dの外端から操作ボス34bの凹部34cにかけて、該ボルトボス34d・操作ボス34bを軸芯状に貫通するボルト孔34eが穿設されている。
サーボハウジング31のハウジング内側面31iには、切欠31gを覆うように、カバー部材37が固設(詳しくは、ボルト38にてサーボハウジング31に締止)されている。カバー部材37には孔37aが設けられており、前記のアーム34の操作ボス34bが該孔37aに挿通され、孔37a内に設けたオイルシール39を介して、カバー部材37に対し油密とされる。また、操作ボス34bの回転軸線上にボルトボス34dが延伸されサーボハウジング31に挿通させることでアーム34が軸支されている。さらに、カバー部材37からは、前記の軸受ブラケット9の脚部9cに対応して、脚部37bが左右内側に延出されている。
サーボユニット30は、アーム34及びカバー部材37も組み入れた状態で一つのユニットとなっており、これをHST1に装着する際に、前述の如く車体フレームケース11の孔11cを介して突出されているトラニオン軸6bの先端部及び軸受ブラケット9の脚部9bを利用するものである。すなわち、まず、カバー部材37より突出するアーム34の操作ボス34bのテーパー状凹部34cに、テーパー状のトラニオン軸6bの先端部を嵌入する。ここで、凹部34c及びトラニオン軸6bの先端部のテーパー形状は、左右外側に先窄まりの状態となっている。したがって、トラニオン軸6bの先端部が凹部34cに少し入った状態から、サーボユニット30ごと左右内側に押し込むと、テーパー状凹部34cとトラニオン軸6bのテーパー状先端部とが嵌合し、それ以上はサーボユニット30を左右内側に押し込めない状態となる。この状態となったときに、サーボハウジング31より左右外側に突出するアーム34のボルトボス34d先端の開口よりボルト孔34eにボルト40を挿通する。トラニオン軸6bには、その外端にて開口する軸芯状の雌螺子孔6cが形成されており、凹部34cに嵌入されているトラニオン軸6bの雌螺子孔6c内に、ボルト孔34eより左右外側(凹部34c内)に突出するボルト40の先端の螺子軸部40aが螺入される。こうして、アーム34がトラニオン軸6bに固定される。
さらに、カバー部材37の脚部37bの左右内側面を、孔11cを介して車体フレームケース11より突出している軸受ブラケット9の脚部9cの左右外側面に当接し、ボルト41にて脚部37bを脚部9cに締止する。こうして、カバー部材37を軸受ブラケット9に固定することで、車体フレームケース11の外側に配置されるサーボハウジング31が、車体フレームケース11内に配置されるHSTハウジング5に固定され、HST1に対するサーボユニット30の取付が完了する。
ここで、図2にてわかるように、サーボユニット30の上方にはステップ14が配置されているが、ステップ14は略水平板状に延設されていて、サーボユニット30の左右外側を覆うものではない。すなわち、サーボユニット30の左右外側は開放されているので、作業者は、簡単に、ステップ14の下方の所定の取付位置にサーボユニット30をもって来ることができ、そして、その後の、凹部34cにトラニオン軸6bの先端部を嵌入することによるサーボユニット30のトラニオン軸6bに対する位置決め、アーム34とトラニオン軸6との嵌合のためのサーボユニット30の左右内側への押し込み、そして、ボルト40及びボルト41のねじ込みという一連の行程からなるサーボユニット30のHST1への取付作業を、簡単に行うことができるのである。そして、メンテナンス等の目的でのサーボユニット30のHST1からの脱却も、ステップ14の下方に配設されているサーボユニット30にアクセスし、ボルト40・41を抜き取り、サーボユニット30ごと左右外側に引き抜くという一連の作業を行うことで、簡単に当該脱却を完了することができる。このように、サーボユニット30のHST1に対する取付・脱却において、サーボユニット30を分解したり、また組み直したりする必要が全くないのである。
以上のようにHST1に組み付けた状態のサーボユニット30においては、給排切換弁35・36の制御により、油圧シリンダ32内のピストン33が前後方向に摺動する。このピストン33の摺動につれ、アーム34の係止部34aが、ボルト40の軸芯を回動中心軸として、前後方向に回動するものであり、これにより、アーム34のトラニオンボス34b及びボルトボス34dが、ボルト40の軸芯回りで回動する。この回動により、ボルト40を介してアーム34に固定されているトラニオン軸6bが、トラニオンボス34bと一体状に、ボルト40の軸芯回りで回動し、このトラニオン軸6bの回動により、可動斜板6が傾動する。
なお、ピストン33は、その前後水平の軸芯に沿って前後移動するのに対し、係止部34aを含めてのアーム34の上部は、ピストン33の移動に追従しての前後方向の回動の際に、上下にも移動することとなるが、切欠31g及び孔31hは、このアーム34上部の上下動も可能であるように構成されている。また、前述の如く、ボルトボス34dはサーボハウジング31の貫通孔31rに相対回動自在に挿通されているため、該ボルトボス34dを含むアーム34の、ボルト40の軸芯を中心とする回動が可能となっている。
次に、図5乃至図10に示す別実施例に係るサーボユニット30A・30B・30C・30D・30Eと、それらのHST1に対しての取付構造について説明する。なお、図1〜4にて用いられる符号と同じ符号の指す構成要素については、図1乃至図4に示す実施例で用いられている構成要素と同じかまたは同様の機能を有するものとして、特別な場合を除き、その説明を省略する。
まず、図5に示すサーボユニット30Aの実施例について説明する。サーボユニット30Aでは、サーボハウジング31Aにおける切欠31gの下部をさらに下方に拡張して、これをギャラリ31mとしており、また、サーボユニット30Aのサーボハウジング31内において、サーボユニット30における排出油路31cから左右外側に延設される排出油路31dに代えて、該排出油路31cから左右内側に延設される排出油路31kを形成している。この排出油路31kがハウジング内側面31iにてギャラリ31mに開口している。
サーボユニット30Aのカバー部材37Aには、サーボユニット30のカバー部材37における脚部37bに代えて、アーム34のトラニオンボス34bの外周面周りを全周にわたって囲むように円筒状となったマウントボス37cが形成されている。これに対応して、HST1に設けられている軸受ブラケット9Aにも、図2に示す如き軸受ブラケット9の脚部9cに代えて、トラニオン軸6bの外周面周りを全周にわたって囲むように円筒状となったマウントボス9dを、フランジ9bより左右外側に延出するように形成している。マウントボス37cとマウントボス9dとを接合する(ボルト41にて締結する)と、これらの中に、トラニオン軸6b及びトラニオンボス34bを囲む円周状の閉空間が形成されることとなり、これをギャラリ42としている。
サーボユニット30Aのカバー部材37Aにおいては、該カバー部材37Aと操作ボス34bとの間に隙間37dを形成している。該隙間37dは、サーボハウジング31におけるギャラリ31mとマウントボス9d・37c内のギャラリ42とを連通する。また、サーボユニット30Aの装着に適用される軸受ブラケット9Aの軸受孔9aの外端側にはオイルシールは設けていない。
こうして、サーボユニット30Aにおいては、図5中、矢印にて示すように、サーボハウジング31A内の排出油路31kからギャラリ31mにドレン油を排出させることができる。ドレン油は、隙間37dを介してギャラリ42に導入され、さらに、ギャラリ42からトラニオン軸6bの軸受17に潤滑油として供給されるものとなっている。軸受ブラケット9内の軸受17及びトラニオン軸6bを潤滑した油は、さらにHSTハウジング5内へと導入され、HST1の各部の潤滑油として活用される。すなわち、図4の油圧回路図に照らせば、隙間37dが出口ポートP4、切欠9eが入口ポートP5、ギャラリ42が油路L4として機能しているのである。
次に、図6に示すサーボユニット30Bの実施例について説明する。サーボユニット30Bでは、車体フレームケース11の孔11cを介してアーム34をHST1の可動斜板6のトラニオン軸6bに固定している構造は、サーボユニット30・30Aのものと同様である。一方、サーボユニット30・30Aのサーボハウジング31がHST1の軸受ブラケット9に固設されるのに対し、サーボユニット30Bのサーボハウジング31は、軸受ブラケット9には固定されず、車体フレームハウジング11に固定される。
サーボユニット30Bには、サーボユニット30Aのものと同じく、円筒状のマウントボス37cを有するカバー部材37Aが用いられており、車体フレームハウジング11の孔11c周りに形成されたマウント部11eの端面にカバー部材37Aのマウントボス37cの左右内側端面を接合し、ボルト41にて締止することで、カバー部材37Aを車体フレームケース11に固定し、これにより、サーボハウジング31を車体フレームハウジング11に固定するものとしている。
なお、本実施例においてトラニオン軸6bを軸支する軸受ブラケット9Bは、カバー部材37や37Aとの接合に必要な脚部9cやマウントボス9dを有する必要がないので、軸受キャップ8のようにその外端を平坦のフランジ9bとし、トラニオン軸6bのみが該フランジ9bより左右外側に突出するように構成されている。このように、軸受ブラケット9Bを、簡単な形状で低コストのものを用いることができる。
なお、サーボユニット30Bに適用されるカバー部材37Aは、軸受ブラケット9Aと接合されるものではないため、図6に示すように、サーボユニット30Bから、接合されるカバー部材37A・軸受ブラケット9B内に形成される油路を介して軸受ブラケット9B内の軸受17に潤滑油を供給するという潤滑油供給構造を採用することはできない。したがって、そのサーボハウジング31は、サーボユニット30のサーボハウジング31と同じものとしている。すなわち、ハウジング外側面31jにて開口する排出油路31dを有しており、ギャラリ31gも、下方に拡張してギャラリ31mを設けていないものとなっている。また、カバー部材37Aにおいては、油密性を確保するため、オイルシール39周りの隙間37dを設けていない。
次に、図7に示すサーボユニット30Cの実施例について説明する。サーボユニット30Bのアーム34は以上に述べた各実施例と同様の構造にて、トラニオン軸6bに固定されるものであり、一方、サーボユニット30Cのサーボハウジング31Cは、ステップ14に固定されるものとされている。
すなわち、ステップ14からは、鉛直下方にカバー板43が垂設されて、サーボユニット30Bの左右外側に配置される。一方、サーボハウジング31Cからは左右外側にボルトボス31nが延設されており、ボルトボス31nの外端面をカバー板43に当接し、ボルト44を、カバー板43を介してボルトボス31nに螺入して、サーボハウジング31をカバー板43に締止するものとしている。
サーボユニット30Cにおけるカバー部材37Cは、軸受ブラケットにも車体フレームハウジング11にも取り付けられることはないので、脚部37bもマウントボス37cも形成する必要はない。したがって、図6に示すように、カバー部材37Cは簡単な平坦板状の部材となっている。一方、トランスミッション軸6bを軸支する軸受ブラケットについても、カバー部材37や37Aを取り付ける構造とする必要がないため、やはり、図6に示すように、サーボユニット30Bに対して適用されるような、簡単な構造の軸受ブラケット9Bが適用される。このように、軸受ブラケット9B及びカバー部材37Cのいずれについても、簡単な形状で低コストのものを用いることができる。
カバー板43には、孔43aが設けられており、アーム34のボルトボス34dの外端部を該孔43aより突出させており、カバー板43の外側からボルトボス34d内のボス孔34eに対するボルト40の挿入や抜き取り作業を容易に行うことができるようにしている。
次に、図8に示すサーボユニット30Dの実施例について説明する。この実施例では、ステップ14に代えて、該ステップ14よりも低くしたステップ45を車体フレームケース11に固設している。ステップ14が孔11cの上端よりもかなり上方に配置されていたのに対し、ステップ45は、孔11cの上端よりも低い段を有しており、サーボユニット30・30A・30B・30Cのように、サーボハウジング31(または31A)のハウジング上部31Uの油圧シリンダ32とハウジング下部31Lの給排切換弁35・36との間にトラニオン軸6bの軸芯位置を配置した状態のままでは、その上方に配置されるハウジング上部31Uがステップ45と干渉してしまう。
そこで、このステップ45の下方に配置されるサーボユニット30Dにおいては、サーボハウジング31Dにて、そのハウジング内側面31i沿いの部分を、油圧シリンダ32を構成するハウジング上部31Uの上端部(油圧シリンダ32より上方の部分)を上方に延出して上方延出部31Uaとし、この上方延出部31Uaに、アーム34のボルトボス34dを挿通するための貫通孔31rを形成している。さらに、ハウジング内側面31i沿いに、該上方延出部31Uaの上端からさらに鉛直板状に上方に延出する上方延出部31Ubを形成しており、ハウジング内側面31i沿いの切欠31gを、上方延出部31Ub〜31Ua〜ハウジング上部31Uにかけて形成している。貫通孔31rは、このように形成した切欠31gの上部より左右外側に延設され、油圧シリンダ32よりも上方に配置されている。
こうして、トラニオン軸6bの軸芯位置よりも下方に、油圧シリンダ32を構成するハウジング上部31Uを配置しており、これにより、サーボハウジング31の、ボルトボス33dを挿通した部分(トラニオン軸6bの軸芯位置)のすぐ上方の位置まで、ステップ45を低くすることができる。なお、この実施例のステップ45は、ひとつの段差を設けて上段45a及び下段45bを形成している。ステップ45の上段45a・下段45b間の段差を構成する鉛直板部45cは、ハウジング内側面31i沿いの上方延出部31Ubと、貫通孔31rを有する上方延出部31Uaとの間に形成される段差に沿わせており、上段45aを上方延出部31Ubの上端のすぐ上方に、下段45bを上方延出部31Uaの上端のすぐ上方に、それぞれ配置している。
アーム34は、このサーボユニット30Dに適用される場合には、アーム34の上部にトラニオンボス34b及びボルトボス34dを配し、アーム34の下部にピストン33に係止される係止部34aを配する状態とされ、サーボユニット30・30A・30B・30Cに適用される場合のものを上下反転した状態となる。これに対応して、カバー部材37及び軸受ブラケット9は、サーボユニット30に用いられる、脚部37b・9cを有するものを、上下反転した状態で適用している。なお、図6に示すようにサーボユニット30Aに適用されるマウントボス37c・9dを有するカバー部材37A及び軸受ブラケット9Aを、このサーボユニット30Dについて適用してもよいが、サーボユニット30Dから軸受ブラケット9A内の軸受17へと給排切換弁35・36の排出油を導く構成とするには、サーボユニット30Dのサーボハウジング31Dでは、排出油路31cが切欠31gよりもかなり低い位置に形成されることとなるため、水平状の排出油路31kに代え、排出油路31cからそれよりも高い切欠31gへと適切に油を案内する油路構造が必要となる。
次に、図9、図10に示すサーボユニット30Eの実施例について説明する。この実施例では、さらに、ステップ45よりも低くしたステップ46を車体フレームケース11に固設している。図8のステップ45では、その下段45bが、孔11cの上端よりも低くはなっていたものの、トラニオン軸6bの軸芯よりは高かった。ステップ46も、ステップ45と同様に一つ段差を介して上段46a・下段46bを有するものとなっているが、該上段46aがトラニオン軸6bの軸芯より高い一方、該下段46bはトラニオン軸6bの軸芯より低くなっている。したがって、図8に示したサーボユニット30D では、アーム34のボルトボス34d及びこれを収容するサーボハウジング31Dの上方延出部31Ua、さらには油圧シリンダ32を構成するハウジング上部31Uが該下段46bと干渉してしまう。
そこで、このような低い下段46bを有するステップ46に対応して適用されるサーボユニット30Eにおいては、まず、サーボハウジング31Eの全体がトラニオン軸6bの軸芯よりも低く配設されている。これにより、ピストン33をトラニオン軸6bに連結する連結部材については、アーム34のボルトボス34aのようにサーボハウジングを貫通するために左右方向に長い部分を有する必要がなくなる。
一方で、サーボハウジング31Eが低くなることで、油圧シリンダ32が低くなり、ピストン33とトラニオン軸6bとを連結する連結部材については、上下に長い構造がもとめられる。しかし、この連結部材が、アーム34のように、トラニオン軸6bの軸芯を回動中心とするアーム構造のままであると、アーム34の係止部34aのようにピストン33に係止する部分が、トラニオン軸6bの軸芯を中心とする回動時に、前後及び上下に大きく移動するので、ピストン33との係合状態を保持することが難しく、また、このような係止部の大きな移動を確保するには、孔31hを大きくする必要があるため、ピストン33による油室32a・32bの油密性の保持が難しくなる。
そこで、サーボユニット30Eにおいては、ピストン33とトラニオン軸6bとを連結する連結部材を、互いに噛合する上下の扇形ギア61・62にて構成するものとしている。上側の扇形ギア61には、アーム34のトラニオンボス34bと同様の、テーパー状の凹部61bを有するトラニオンボス61aが形成されており、凹部61bから扇形ギア61の左右外側面まで貫通するボルト孔61cが形成されている。扇形ギア61の左右外側面よりボルト60がボルト孔61cに挿通され、凹部61bに嵌入されたトラニオン軸6bの雌螺子孔6cにボルト60の螺子軸部60aが螺入されることにより、扇形ギア61がトラニオン軸6bに固定され、トラニオン軸6b及びこれと同一軸芯上に配置されるボルト60の軸芯線を中心に、扇形ギア61及びトラニオン軸6bが一体に回動可能となっている。
扇形ギア61の下縁にはギア歯61dが形成されており、その下方の扇形ギア62の上縁に形成されるギア歯62bと噛合している。扇形ギア62の下端には、アーム34の係止部34aと同様の係止部62aが形成されていて、油圧シリンダ32中のピストン33に係止されている。扇形ギア62は、係止部62aとギア歯62bとの間の上下中間部分にその枢支軸63を有している。係止部62aにて係止されるピストン33が前後摺動するとそれに連れて枢支軸63を中心に扇形ギア62が回動し、これにより扇形ギア61が回動して、これと一体にトラニオン軸6b及び可動斜板6が回動する。
サーボハウジング31Eは、下側の扇形ギア62を支持するように構成されている。サーボハウジング31Eにおいてハウジング内側面31iに沿って形成される切欠31gは、扇形ギア62の下部を収容するものであり、切欠31gの上端には、扇形ギア62を通してその上部をサーボハウジング31Eより上方に延出させるために、開口31gaが設けられている。枢支軸63はこの開口31gaの直上方に配置されるものであり、その左右外側端を支持すべく、油圧シリンダ32を構成するハウジング上部31Uの上端より上方に延出する上方延出部31Ucを形成している。貫通孔31rは設けられていないため、油圧シリンダ32と給排切換弁36・37との間隔を縮めることができ、サーボハウジング31Eを上下にコンパクトなものとすることができる。
サーボユニット30Eの取付にあたって、サーボハウジング31Eは、HST1の軸受ブラケット9Aに対し固定されるものとされる。なお、扇形ギア61・62を支持するような強度を確保するために円筒状のマウントボス9dを有する軸受ブラケット9Aを用いているが、強度上の問題等がなく、適用が可能なのであれば、脚部9cを有する軸受ブラケット9を用いてもよい。
サーボユニット30Eは、この軸受ブラケット9Aに取り付ける部材として、軸受部材47が用いられている。軸受部材47の下部は、切欠31gを覆うようにサーボハウジング31Eのハウジング内側面31iに接合される(図示されないが、ボルト38にてサーボハウジング31Eに締止されるものとしてもよい)。軸受部材47は、扇形ギア61・62の左右内側面に沿って上下に延設され、軸受部材47の上下中間部には、扇形ギア62の枢支軸63の左右内側端が支持される。そして、軸受部材47の上部には、カバー部材37の軸受孔37aの如く、オイルシール39を備えた軸受孔47aが設けられている。扇形ギア61のトラニオンボス61aは、軸受孔47aに挿通され、オイルシール39を介して軸受部材47にて軸支される。
軸受部材47の上部には、軸受ブラケット9Aのマウントボス9dに対応して、カバー部材37Aのマウントボス37cの如き円筒状のマウントボス47bが構成されている。サーボユニット30Eの取付に際しては、マウントボス47bを軸受ブラケット9Aのマウントボス9dに当接し、ボルト41にてマウントボス47bを軸受ブラケット9Aのマウントボス9dに締止することで、サーボハウジング31Eを軸受ブラケット6Aに固定するものである。
なお、サーボユニット30等では、ボルトボス34dの外端部がサーボハウジング31より突出していることを除いては、アーム34の全体がサーボハウジング31またはカバー部材37に覆われている。一方、サーボユニット30Eにおいては、軸受部材47が扇形ギア61・62の左右内側に配置される一方、扇形ギア61の全体及び扇形62の上部がサーボハウジング31Eより上方に延出されているため、これらの左右外側面が露出してしまう。これらの露出部分を覆うように、軸受部材47の上部からサーボハウジング31Eの上方延出部31Ucの上端にかけて、カバー48を取り付けている。なお、扇形ギア61の左右外側面に配置されるボルト60の頭もカバー48に覆われることとなるため、該カバー48を着脱自在とするか、カバー48の該当の部位にレンチ孔を設け、レンチ孔を介してカバー48の外側からボルト60の頭にレンチを係止できるようにすることが好ましい。さらに、取付完了したサーボユニット30Eは、このカバー48を、ステップ46の上段46aと下段46bとの間の鉛直板部46cに沿わせることとなるため、このステップ46の鉛直板部46cにも、レンチ孔を設け、このレンチ孔と、カバー48のレンチ孔とに通したレンチをボルト60の頭に係止できるように構成してもよい。
以上に説明したサーボユニット30〜30Eは、図4に示すサーボユニット30の油圧回路構造、すなわち、ピストン33を収容する油圧シリンダ32及び油圧シリンダ32の油室32a・32b内の油量を制御するための給排切換弁35・36を組み合わせた構造であることを前提としている(図4では、サーボユニット30〜30Eの代表として、符号「30」を用いている。以下、サーボユニット30〜30Eを代表するものとして、「サーボユニット30」と称する)が、これに代えて、図11に示すサーボユニット90の油圧回路構造を採用してもよい。
サーボユニット90は、そのサーボハウジング91内に、サーボユニット30のものと同様の油圧シリンダ32を構成している。また、このサーボハウジング91には、図4に示すものと同様の、チャージポンプ20からの油を受ける入口ポートP3と、サーボハウジング91から油を排出するための出口ポートP4とが設けられている。このサーボハウジング91に、電磁弁である給排切換弁92と、機械的な操作手段にて操作される前後進切換用の方向切換弁93とが組み入れられている。
サーボユニット30では、前進・後進それぞれ専用に、すなわち、油室32a・32bそれぞれ専用の油量調整のために、二つの電磁弁である給排切換弁35・36を設けているため、コストが高くなる。これに対し、サーボハウジング90においては、高コストな電磁弁が適用されるのは、比例ソレノイド92aを有する給排切換弁92のみであり、方向切換弁93は、作業者にて手動操作されるレバーやペダル等の前後進切換用操作手段に対し機械的な連係手段を介して連係されているものなので、低コストなものである。このように、サーボユニット90は、電磁弁の個数を低減することによるコスト低減効果を奏するものである。
給排切換弁92は、給入ポート92b・排出ポート92c・給排ポート92dの三つのポートを有し、方向切換弁93は、給排ポート93a、排出ポート93b、第一油室接続ポート93c、第二油室接続ポート93dの四つのポートを有している。給排切換弁92の給入ポート92bは、油路91aを介して入口ポートP3に接続され、排出ポート92cは、油路91bを介して出口ポートP4に接続され、給排ポート92dは、油路91cを介して方向切換弁93の給排ポート93aに接続されている。方向切換弁93の排出ポート93bは、油路92dを介して、給排切換弁92の排出ポート92cから出口ポートP4への油路91bに接続され、給排切換弁92及び方向切換弁93からの排出油が、油路91b・91dを介して合流され、出口ポートP4から排出されるものとしている。方向切換弁93の第一油室接続ポート93cは、油路91eを介して油室32aに接続され、第二油室接続ポート93dは、油路91fを介して油室32bに接続されている。
給排切換弁92は、その比例ソレノイド92aにより、供給位置Sと排出位置Dとに振動的に切り換えられる。供給位置Sの給排切換弁92は、給排ポート92dを給入ポート92bに連通し、該給排ポート92dより油路91cを介して方向切換弁93の給排ポート93aに油を供給する。排出位置Dの給排切換弁92は、給排ポート92dを排出ポート92cに連通し、方向切換弁93の給排ポート93aより油路91cを介して油を出口ポートP4への油路91bへと排出する。この繰り返しにより給排ポート93aには所定の油圧が与えられる。
方向切換弁93には、前後進切換用操作手段の切換操作によって、第一位置Aと第二位置Bのいずれかに切り換わるソレノイドが備えられる。第一・第二位置A・Bのうちの一方が前進設定に該当し、他方が後進設定に該当する。ここでは、仮に、第一位置Aを前進設定位置、第二位置Bを後進設定位置であるものとして、説明する。第一位置Aの方向切換弁93は、給排ポート93aを第一油室接続ポート93cに、排出ポート93bを第二油室接続ポート93dにそれぞれ連通する。このときに、給排切換弁92が供給位置Sにあれば第一油室接続ポート93cから油路91eを介して油室32aに油が供給されてピストン33が油室32b側に移動し、油室32bからは自然に油路91f、第二油室接続ポート93d、排出ポート93bを介して、出口ポートP4への油路91dへと油が排出される。一方、給排切換弁92が排出位置Dにあれば、油室32aより油路91e、第一油室接続ポート93c、給排ポート93a、油路91c、排出ポート92bを介して、出口ポートP4への油路91bへと油が排出される。このように、方向切換弁93を第一位置Aにセットしている状態で、給排切換弁92を切換操作することで、ピストン33が油室32b寄りの領域で、変速操作手段(レバーやペダル等)にて設定した速度に応じた位置に配置され、これにより、HST1の可動斜板6が、目的の前進速度位置に配置される。後進速度設定時には、方向切換弁93を第二位置Bにセットしている状態で、給排切換弁92を供給位置Sにすることで油室32bに油が供給され、給排切換弁92を排出位置Dにすることで油室32bから油が排出され、これにより、ピストン33が油室32a寄りの領域で、該変速操作手段にて設定した速度に応じた位置に配置され、HST1の可動斜板6が、目的の後進速度位置に配置される。
図11に示すサーボユニット90の以上の如き構造は、図2、3、5〜10に示すサーボユニット30〜30Eのいずれに置き換えて採用してもよい。言い換えれば、サーボユニット90は、そのピストン33とトラニオン軸6bとの連結構造として、サーボユニット30〜30Dに用いられるようなアーム34、またはサーボユニット30Eに用いられるような扇形ギア61・62を備えている。そして、サーボハウジング91を、HST1の軸受ブラケット9若しくは9Aに固定する仕様である場合には、それに適するように、サーボユニット30、30A、30D、30Eにて用いられるようなカバー部材37、37A、37Dまたは軸受部材47を備え、サーボハウジング91を車体フレームケース11に対し固定する場合は、図6に示す如き構造を、サーボハウジング91をステップ14に対し固定する場合は、図7に示す如き構造を備えるものである。そして、サーボハウジング91も、出口ポートP4としてのポートをどこに設けるか、サーボハウジングをどこに対し固定するか等の設計の違いにより、サーボユニット30〜30Eにおけるサーボハウジング31、31A、31C、31D、31Eに適用されるいずれかの構造を採用するものとしている。