JP2016035137A - 振動低減性能に優れたコンクリート製部材 - Google Patents

振動低減性能に優れたコンクリート製部材 Download PDF

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Abstract

【課題】安定的に、高い振動低減性能を示すコンクリート製部材Pを提供する。
【解決手段】中空部Bを有し、その中空部内に袋体11に砂等の粒状体10からなる質量体を充填した防振体Fを配置し、その防振体の下部に相当する位置が弾性層となっているコンクリート製建築部材である。この建築部材が振動を受けると、前記防振体が動吸振として作用して建築部材の振動を抑制する。このとき、前記粒状体が動吸振における付加質量に、前記弾性層が動吸振におけるバネに、粒状体自身相互の摩擦熱による振動エネルギー損失が動吸振における抵抗となって振動低減効果が高くなる。その粒状体の質量・大きさ・形状等や弾性層の性状・形状等を適宜に設定することによって、振動低減効果が最大となる周波数帯域のチューニングを容易になし得る。浮き床に本発明を採用することもできる。
【選択図】図1

Description

本発明は、建築部材とし得る振動低減性能に優れたコンクリート製部材、そのコンクリート製部材によって形成されたスラブ、同コンクリート製部材における振動低減周波数調整方法、その振動低減周波数調整方法によって調整されたコンクリート製部材によって形成されたスラブ、並びに、前記各コンクリート製部材を躯体床上方に防振材を介して配置した浮き床構造に関する。
音対策は住環境、生活環境向上の面で重要である。建設物に一般に使用されるコンクリート製部材は、密度も剛性も高く、空気中を伝わる音(空気伝搬(伝播)音)に対して優れた遮音性を示す。一方、集合住宅における上階からの床衝撃音や鉄道の振動等は、固体である建設部材自体を振動させ、その建設部材表面から音(固体伝搬音)として居室内に放射される。後者の固体伝搬音は、コンクリートの内部損失が小さいため、そのコンクリート内を伝搬する内に自然に低減していくことは期待できない。
その固体伝搬音の低減を図る手段として、コンクリート製建設部材自体の質量を増やしたり、防振材を使用したりする、等の手段で振動を抑える方法があるが、建設物全体の質量が増したり、コスト高や工期が延長したり等の問題が生じる。
他方、従来から、所定位置に中空の円筒体や、発泡スチロール等のコンクリートより軽量な立方体を埋設した中空スラブ(ボイドスラブ)工法が知られている。この中空部を利用して新たな機能を付加するという着想が以前からあった。
その着想の1つとして、埋設する管状体の内部に袋詰の液体を挿入し、振動減衰性能を向上させた中空スラブが提案されている。この提案は、液体と管状体内部に間隙を形成することで、液体の慣性がスラブの振動に対抗し、減衰させるとしている(特許文献2要約、図1参照)。
他の着想として、中空部に発泡樹脂体を充填したプレキャスト板が提案されている。この発泡樹脂体を充填することにより、ほとんどプレキャスト板の質量を増加させず、床衝撃音の遮断性能を高めることができるとしている(特許文献3要約、図2参照)。
また、押出成形セメント床パネルにおいて、その中空部に袋詰めした砂状無機材を充填し、その無機材で衝撃を遮断する技術も提案されている(特許文献4段落0022〜0023、図3参照)。
さらに、砂等の防音材をコンクリート板内に充填し、その防音材でもって振動を消滅(減衰)する技術も提案されている(特許文献1要約、図1〜図13参照)。
また、上記ボイドスラブの中空部に質量部材を弾性部材で被覆した防振体を装填した技術も提案されている(特許文献5段落0010、同0014、図1〜図4参照)。この技術は、動吸振を利用したものである。
特開平05−33404号公報 特開平08−170398号公報 特開平09−287217号公報 特開2012−46938号公報 特開2013−227739号公報
ここで、特許文献2のように建築部材自体に振動を減衰させる技術は、低い周波数帯域の振動低減性能を高めるという着想がない。このため、床衝撃音などによる低い周波数帯域の振動に対して低減機能が望めない(効果が薄い)。
また、特許文献3のプレキャスト板は床衝撃音の遮断性能を高めているが、これは主に軽量床衝撃音に効果があり、重量床衝撃音で重要となる63Hz、125Hz帯域といった、比較的低い周波数帯域における低減効果が見られない。
特許文献1の技術は、砂をパネル間に挟んで充填する等の手段を採用しているため、その砂の充填作業が煩雑であるとともに、振動低減効果が示されていない。
特許文献4の技術は、重量が軽く剛性の低いセメント板を対象とした技術であり、これをコンクリート板に適用しても効果があるか不明である。また、天井下地材にダイナミックダンパーを分散配置しており、砂状無機材の効果は不明である。
特許文献5の技術は、動吸振によって防振するものであるが、その防振体が金属製棒状体を発泡ポリエチレン製弾性部材で被覆したものである。動吸振は、質量、バネ定数(弾性率)のみではなく、それらに加えて振動エネルギー損失が適切に調整されたときに初めて有効な振動低減効果を発揮する。このため、この特許文献5の技術では、振動エネルギー損失に係わる数値やその実現に関する具体的な記述が無いため、動吸振による有効な振動低減効果を得られるか不明である。
そこで、本発明は、上記実状の下、最適に調整された質量とバネ定数と振動エネルギー損失を有した動吸振によってコンクリート製部材の振動低減効果を得ることを課題とする。
前記課題を達成するため、本発明は、中空部を有し、その中空部内に袋体に粒状体を充填した防振体を配置するコンクリート製部材において、少なくとも防振体の下部に相当する位置が弾性層となっているコンクリート製部材としたのである。
ここで、動吸振は、振動する対象物に、補助的な質量体をバネ等の弾性体と適切な振動エネルギー損失を持った抵抗を介して付加することにより、対象物の振動を抑制するものである。このため、前記コンクリート製部材にあっては、前記粒状体がその動吸振の質量体に相当し、弾性層が同バネに相当し、その弾性層及び粒状体の内部の振動エネルギー損失機能が抵抗に相当して動吸振機能を発揮するものとなり、振動し難いコンクリート製部材が構成されることとなる。
また、防振体は袋体に粒状体を充填したものであるため、コンクリート製部材に振動が生じると、その振動によってその粒状体が相互に関わり合って、摩擦熱により振動エネルギーを損失させ、この損失が動吸振に高い振動減衰作用を与えることができる。
さらに、防振体が袋体に粒状体を充填したものであるため、中空部内への防振体の配置(装填)時、防振体が中空部内面に応じた形に容易に変形し、良好な接地状態を得られる。このため、コンクリート製部材の振動が効率良く防振体に伝達される。さらに、コンクリート製部材が振動を受けた際、前述の粒状体によって振動エネルギーが損失され、また、防振体自体の形状も変化するため、防振体全体が中空部内面から完全に浮き上がって動吸振機能が失われる、という事態になりにくい。
このように、本発明にあっては、粒状体自身の摩擦による振動吸収作用と動吸振機能による振動吸収作用が円滑に行われるため、優れた振動吸収作用を発揮する。
因みに、特許文献4においては、押出成形セメント床パネルの中空部に袋詰めした砂状無機材を充填しているため、一見、本発明のコンクリート製部材のように、その砂状無機材を充填した部材が中空部内において、動吸振を行うように考えられる。しかし、この特許文献4の技術は、無機材の質量とその無機材内部の振動エネルギー損失のみで振動を低減するものであって、また、袋の材質も記載されていないから、前述の動吸振における弾性体に相当する部材の記載はないとすべきであって、動吸振として振動低減するものではない。このため、特許文献4の技術は本発明の動吸振を有するコンクリート製部材とはその形態が明らかに異なって同じものではない。
コンクリート製部材は、主に建設部材として使用される。この建設部材はプレキャスト(PCa)部材、ハーフプレキャスト部材でもよいし、現場打ちで形成してもよい。また、床部材に限られず、壁、基礎等にも適用出来る。
そのコンクリート製部材の使用態様として、一般的なスラブ(床構造)の構成部材のみならず、例えば、防振浮き床構造が考えられる。その防振浮き床構造は、設備機器からの振動を建物に伝搬させないために用いられたり、コンサートホール等の静謐が重要となる建物において、ホール外から振動として伝搬し、ホール内において固体伝搬音を発生させないために用いられたりしている。その浮き床の原理は、振動を伝えたくない躯体床(あるいは振動している躯体床)と設備機器等を振動絶縁するために、バネと質量からなる共振系を構成するものであり、共振系の周波数よりも十分に高い周波数においては、浮き床・躯体床間で振動が伝わり難いため、防振できる。
しかし、浮き床は、理想的な質量とは異なり、板状であるがために曲げ振動が生じてしまう。浮き床での板の振動が生じると、板である浮き床の共振周波数において振動が増幅し、浮き床としての防振性能が低下してしまう。
このため、本発明に係わるコンクリート製部材を浮き床として用いれば、前記のように、その浮き床をなすコンクリート製部材に振動が生じると、防振体自身の防振性に加え、防振体と弾性層による動吸振によってその振動抑制が行われるため、板としての振動が低減されることとなり、浮き床の防振性能の低下を改善し、防振性能を向上させることができる。
このようなスラブや浮き床を本発明に係わるコンクリート製部材によって形成する際、そのコンクリート製部材が施工される部位、例えば、集合住宅等の床(スラブ)や浮き床にはその床で最も振動が生じてその振動を低減したい周波数領域(範囲)がある。このため、コンクリート製部材が施工される各部位に応じてそのコンクリート製部材を振動低減させたい前記周波数範囲となるように防振体の振動低減周波数を、前記防振体の質量・大きさ・形状等や弾性層の弾性率を適宜に設定することによって調整すれば、その部位における最適な振動低減効果を得ることができる。すなわち、防振体の質量・大きさ・形状等や弾性層の弾性率を適宜に設定することによって、振動低減効果が最大となる周波数帯域(領域)のチューニング(調整)を容易になし得る。弾性層の弾性率はその性状・形状・厚み等によって設定する。
各防振体は、中空部内に分断して形成したり、分散して形成したりして、その防振体間が平面的に分断又は分散して配置することができる。
防振体の袋体は粒状体を充填できればその素材及び形状は何れでも良いが、その素材は、ポリエチレンや不織布等の粒状体が漏れ出さないものを使用できる。このとき、ポリエチレンのような非透水性の素材であれば、防振体が雨水等に接しても、内部に浸出せず、重量が変わらないため、設定した動吸振を得ることができて好ましい。また、形状も中空部に装填し得れば、有蓋筒状、球状、楕円球状等と任意である。
また、前記不織布、麻袋、土嚢袋等からなる袋体は、剛体物に比べれば適度な弾性と柔軟性を有するものであり、袋体自身が弾性層を形成して前記動吸振を担う要素となり得る。このため、前記「防振体の下部に相当する位置の弾性層」には、袋体自身で構成した(袋体の下部が弾性層の)場合も含まれ、袋体がシート状の場合はその袋体の下部の位置がその弾性層を形成する弾性シートとなる。
さらに、柔軟性を有する袋体は中空部に防振体を配置したとき、中空部内面形状に応じて容易に変形する。このため、前記のように、中空部内への防振体の配置時、防振体の中空部内面への良好な接地状態を得られるため、コンクリート製部材の振動が効率良く防振体に伝達されて、優れた振動吸収作用が発揮される。
防振体の粒状体には、種々のものが考えられるが、砂(細砂等)、礫、石、砂利等を採用することができ、振動によってその粒状体が相互に関わり合って摩擦熱による振動エネルギーの損失が得られる。また、中空部に防振体を配置したとき、中空部内面に沿った形状となるため、安定した接地(装填)状態が得られる。
防振体における袋体への粒状体の充填量はその質量が粒状体を除いた建設部材質量の2〜35%になるように調整することができる。質量比2%以上の防振体が建設部材の振動に有効に対抗し、振動低減性能を向上させる。35%以下であれば、建設部材の質量増の影響が小さい。
袋体に弾性層を付加する場合のその弾性層は、種々の材料及び態様が考えられるが、動吸振を行い得る弾性材料であれば何れでも良く、例えば、合成ゴム等の弾性シートを使用でき、また、土嚢袋のような一定の厚みをもつ繊維の集合体も使用できる。特に土嚢袋は入手が容易で、適度な弾性と柔軟性を持つため好ましい。このとき、弾性シート等は袋体の柔軟性を大きく妨げないものが好ましい。
また、その弾性シート等の取付は、同様に、動吸振を行い得る態様であれば、中空部に置く(敷設する)だけ等の袋体又は中空部に固定されていなくても良いが、少なくとも一方に固定されていることが好ましい。一方に固定されていると、例えば、袋体に固定されていると、袋体の中空部への装填と同時に弾性シート等も装填されてその装填作業が容易である。
以上から、前記弾性層は、例えば、前記袋体の下部をなす弾性層、中空部に敷設された弾性シート、袋体の少なくとも下部に相当する位置に積層した弾性シート、同下部に相当する位置に貼り付けた弾性シート、袋体にかぶせた袋状の弾性シート、袋体の周囲に弾性シートを巻きつけた弾性シート等から構成し、それらの少なくとも1つの態様によって形成されているものとすることができる。このため、前記各態様は組み合わせること、例えば、袋体の周囲に弾性シートを巻きつけ、その下部に相当する位置に弾性シートを積層する等とすることができる。
中空部内における防振体の配置(充填)は、各防振体の間に空隙部があってもなくても良いが、空隙部を有する場合、その空隙部は、各防振体の間に形成したり、防振体内に形成したり(図3参照)することができ、その両者を併用することもできる。前者の場合、例えば、中空部の両端をキャップで閉塞し、そのキャップ間に、防振体を所要間隔でその中空部の縦断全面を塞いで配置し、その各防振体の配置間に空隙部を形成する。この場合、前記質量比(例えば、砂質量の比率)は、敷設した防振体の大きさ及び空隙部の大きさで調節する。後者の場合、例えば、中空部の両端をキャップで閉塞し、そのキャップ間(中空部全長)に防振体を充填し、その防振体の袋体への粒状体の充填量を調整することによってその充填層の上に所要大きさの空隙部を形成することとなる。
中空部の形成のためには、複数の中空の埋込材を建設部材に埋設してもよい。この埋込材は、建設部材に対してその長手方向及び短手方向にバランスよく均等に配置することが望ましく、中空部を有すればいずれの物も採用でき、例えば、中空のスパイラル管やロール管を採用できる。また、コンクリートより軽量な発泡スチロール製埋込材を併用してもよい。
この埋込材は、型枠内に均等に並べて配置して固定することが好ましいが、個々の建物のスラブ等を構成するこのコンクリート製部材における配筋態様等を考慮して、型枠内に適切な配置に並べて固定する。また、単に、防振体を充填する場合は、埋込材の中空部長さ方向を所定間隔で発泡スチロール等によって隔壁を形成し、その隔壁間に防振体を充填するようにする。このとき、防振体と隔壁は、埋込材の一端から他端に向かって順々に隔壁、防振体を装填する等の手段を採用する。
また、複数の中空の埋込材を建設部材に埋設するとき、隣接する埋込材同士が接するように配置して、防振体が分断されるようにしてもよいし、各埋込材間に隙間を設けて配置して、防振体が分散されるようにしてもよい(図11(a)、(b)参照)。
このように、複数の埋込材を埋設することにより、1つ当たりの埋込材を軽量化し、運搬や施工を容易にできる。また、防振体が振動で移動しても、1つの埋込材内の移動で収まり、常に所定の振動低減性能を発揮できる。
本発明は、以上のように構成することによって、安定的に振動低減性能を発揮するコンクリート製建設部材を提供できる。また、コンクリート製部材が施工される部位において最適な振動低減性能を発揮できるものとし得る。
本発明に係る建設部材の一実施形態の概略斜視図 同他の実施形態を示し、(a)〜(c)は概略切断平面図 同実施形態における粒状体の各充填割合の袋体(防振体)の中空部への各装填例図 同実施形態における防振体の各例図 同実施形態における防振体の他例図 同実施形態の実施例を示し、(a)は要部横断面図、(b)は加振作用図 同実施形態の各実施例における周波数と振動低減量との関係図 同実施形態の各実施例における周波数とインピーダンスレベルの関係図 同実施形態の各実施例における周波数とインピーダンスレベルの関係図 同実施形態の各実施例における周波数とインピーダンスレベルの関係図 他の実施形態を示し、(a)、(b)はそれぞれ概略部分縦断面図
この実施形態は、図1に示すように、建設部材の内、各種の床版を構成する平面視四角状ボイドスラブ(PC板)Pに関し、そのボイドに、スパイラル管やロール管(鋼管)等の中空管Bを使用し、スラブ内縦方向又は横方向全長に亘って中空管Bの両端がスラブPの対向する両端面に開口するよう埋設されて、前記中空管B内に砂10を充填した袋11からなる防振体Fを弾性層G(図4、図5参照)を介して装填したものである。
このボイドスラブPは、工場内、又は建設現場で型枠を組み、上端筋、下端筋等を配筋するとともに、前記中空管Bを配置した後、型枠内にコンクリートCを打設し、コンクリート硬化後に型枠を取り外して製作する。このとき、中空管Bは防振体Fを装填して配置したり、配置後に中空管B内に防振体Fを装填したり、コンクリート硬化後に中空管B内に防振体Fを装填したりすることができる。
この実施形態のボイドスラブ(コンクリート板)Pにおいて、その各中空管Bの全長に亘って(全部に)防振体Fを装填し、その防振体Fの間に空隙を形成したり、その各中空管Bの全長亘って等間隔に(空隙aを介して)防振体Fを装填したりする(図2(a)〜(c)参照)。その中空管Bの両端は発泡スチロール製のキャップeで閉塞する。
この実施形態において、その振動性能を確認するため、以下の試験を行った。
(1)試験用躯体
図1に示したコンクリート板Pにおいて、高さh:250mm、長さL:6,000mm、幅W:1,200mmのコンクリート躯体を使用した(図6(a)参照)。この躯体Pには、長さ:1,200mm、断面短径:125×同長径:225mmの断面楕円形の鋼管B(図6(a)参照、その図中の数字の単位はmm)が長さ方向335mmピッチtで埋設してあり、この鋼管でもって中空部Bを形成している。この中空部を有したコンクリート板の曲げ剛性は3.3×107Nm、面密度は440kg/mである。
(2)実施例1、2
図1、図6に示すコンクリート躯体Pにおいて、図4(a)に示す不織布(ポリエステルとポリエチレンの複合布であって、面密度:50g/m)からなる袋11に砂10を充填した防振体Fを中空部Bのほぼ全長に亘って配置した(図2(a)参照)。このとき、その防振体Fの縦断面積は中空部(鋼管)Bの縦断面積の3/4程度とした(図3(d)参照)。砂10は乾燥山砂である中目砂(粒径1.0〜2.5mm、単位容積質量1.6kg/L)を使用し、その砂のコンクリートに対する質量比は11%とした。
実施例1の防振体Fは、図4(b)に示すように、不織布からなる袋11に土嚢袋を被せ、その土嚢袋は、ポリエチレン製であって面密度:90g/mのものを使用して2重巻きとした。実施例2の防振体Fは、図4(a)に示す不織布からなる袋11のみのものを使用した。
この両実施例において、不織布からなる袋11自体が弾性層Gを構成すると共に土嚢袋が弾性層Gを形成し、両実施例1、2の各防振体Fの質量(砂の質量)、バネ定数、減衰定数は表1の通りである。
(3)試験方法
各実施例1、2において、図6(b)に示すように、そのコンクリート躯体Pの長手両端部及び中央部を防振体bで防振支持し、その各実施例の躯体PをハンマーHで加振し、試験体全体に設定した各計測点への伝達のインピーダンスを平均して、振動低減量を算出した。加振点は長手側端部の中央、計測点は、平面視500mmピッチ格子の各交点等(短手方向:両端及びその中点、長手方向:両端及びその間の12等分位点、計:39点)として、加振時の各計測点における振動のし難さ(伝達のインピーダンス:dB)を計測した。
(4)試験結果
全計測点の伝達のインピーダンスを平均した値を比較した。両実施例の振動低減量(dB)を下記表1及び図7に示す。
Figure 2016035137
この試験結果において、実施例1においては、最も振動低減効果のある周波数帯域は「63Hz」であることが理解でき、実施例2においては同「125Hz」であることが理解できる(図7参照)。このことから、袋11に土嚢袋を被せると(弾性層が厚くなると=弾性率が小さくなると)、最も振動低減効果のある周波数帯域が低くなることが理解できるため、その弾性層の厚みやバネ定数を適宜に設定することによって、低減したい周波数帯域を適宜に得られることが理解できる。
なお、同一条件において、砂10の含水量を変えて同一試験を行ったが、減衰曲線において相違はなかった。
因みに、上記コンクリート躯体(スラブ)Pの曲げ波の共振周波数は80Hzであり、防振体Fの共振周波数を72Hz又は60Hzとした場合、前者の方が後者に対し、スラブPの曲げ波の共振周波数に近いため、振動低減効果が高かった。
以上はオクターブバンド毎の実験結果であったが、さらに細かい周波数特性を調べるために、前述と同様に躯体PをハンマーHで加振し、その躯体Pの長手側端部中央における加振点における駆動点インピーダンスの周波数特性を詳細に観察した。その駆動点インピーダンスレベルはその値が小さいほど振動しやすいことを示し、ディップ(傾斜)の落ち込み具合の変化で効果の有無を確認することができる。このため、本発明に係わる実施例として、袋体11に粒状体である砂10を所要の割合で充填した防振体Fを中空部Bに装填したコンクリート躯体P、及び比較例としてその防振体Fを装填していない同一構成のコンクリート躯体を用意した。その実験結果を図8〜図10に示し、各図において、実線が本発明に係わる実施例、破線が比較例を示す。
図8(a)〜同(d)は、図2(a)に示す防振体Fの装填状態のコンクリート躯体Pにおいて、袋体11として土嚢袋を使用し、中空部(ボイド穴)Bの縦断面方向に砂量を変化させた場合であって、その袋体11に、砂(粒状体)10を、中空部Bの縦断面積の1/6(コンクリートに対する砂の質量比:2.3%、図3(a))、同1/3(同:7%、同図(b))、同1/2(同:4.6%、同図(c))、同3/4(同:11%、同図(d))の各実施例を示し、その各実施例が、比較例に対してディップが浅く、高い防振効果が得られた範囲Eを点部分で示す。
この実験結果から、防振効果の高い範囲Eは砂11の充填量が増すにつれて低周波領域に移行することが理解できる。
図9(a)〜同(c)は、袋体11の砂10の充填量を図3(e)のほぼ全体とした防振体Fの装填状態のコンクリート躯体Pにおいて、その防振体Fの中空部B内の配置を、図2(a)〜同(c)としたものであって、図9(a)が図2(a)の場合、同(b)が同(b)の場合、同(c)が同(c)の場合を示す。
この実験結果において、砂量が多くなれば、防振効果が増すことが確認されるが、防振体Fの中空部B内の配置態様の相違においては、防振効果の高い範囲Eの周波領域の移行は認められなかった。
図10(a)〜同(c)は、図2(a)の防振体Fの装填状態のコンクリート躯体Pにおいて、袋体11の砂10の充填量を図3(d)の3/4とした防振体Fの袋体11の材質を変化させたものであり、図10(a)はその袋体11を上記不織布、同図(b)は同土嚢袋、同図(c)は袋体11を不織布とし、その袋体11に土嚢袋を被せたものである。土嚢袋は何れの場合も、一側に砂10又は袋体11を集めて(寄せて)二重巻き状態とした。このため、図10(a)→同図(b)→同図(c)に従い弾性層Gが厚くなる(バネ定数(弾性率)が小さくなる)ものとした。
この実験結果において、防振効果の高い範囲Eは、弾性層Gが厚くなる(弾性率が小さくなる)に従い、低周波領域に移行することが理解できる。
以上から、本発明に係るコンクリート製部材における動吸振による防振効果は大きく、その効果が得られる周波数範囲は防振体の粒状体量と弾性層の弾性率(バネ定数)を変えれば容易に調整できることが理解できる。
前記実施形態において、砂10に代えて、細砂、礫、石、砂利等の他の種々の粒状体も使用出来ることは勿論である。また、コンクリート製建設部材は、床部材に限られず、壁、基礎等にも適用出来ることは勿論である。
弾性層Gは土嚢袋に限らず、他の合成ゴムシート等を使用し得ることは勿論であり、その場合、袋体11に巻きつけたり、図5に示すように、防振体Fの下部に敷くだけであったりしてもよい。このとき、弾性シートGは袋体11に貼り付けたり、鋼管(中空部)B内面に貼り付けたり、両者11、Bに貼り付けたりすることができる。両者11、Bに貼り付ける場合、例えば、弾性シートGの両面に貼着層を形成し、袋体11又は中空部B内面の一方にその弾性シートGに貼り付け、袋体11をその弾性シートG上に配置することによって、両者に貼り付ける等の手段を採用する。
また、埋込材としては、所定長さの鋼管に防振体を充填し、両端を発泡スチロール製のキャップで閉塞したものが使用できる。この埋込材を長手方向に連続して配置すれば、必要な長さの埋込材を得ることができる。また、埋込材を長手方向に若干間隔をあけて断続的に配置して、各埋込材の間にコンクリート製の隔壁が形成されるようにしてもよい。この他、コンクリートより軽量な発泡スチロール製埋込材を併用してもよい。
さらに、防振体Fは、予め粒状体10を入れた袋11を埋込材内部へ装填して行う。その粒状体10の袋11への充填態様は、図3(a)〜(e)に示すように、袋11の縦断面において、そのほぼ半分であったり(同図(c))、ほぼ1/6であったり(同図(a))、ほぼ1/3であったり(同図(b))、逆に、ほぼ3/4であったり(同図(d))、ほぼ満杯であったり(同図(e))と、振動低減効果に応じて適宜に設定することができる。
中空埋込材Bとしての鋼管等の断面は、前記円形、楕円形に限られず、矩形などの多角形としたり、それらに属しない不整形としたりすることもできる。また、鋼管に代えてプラスチック容器も使用出来る。この場合、容器Bの断面形状は矩形、円柱形、角柱形、球形及びそれらに属しない不整形等が採用できる。また、各容器Bは設置方向(鋼管におけるその長さ方向)に連結的であっても断続的であってもよく、断続的の場合は海上に点在する島のようにその島状に配置するとよい。
また、防振体Fの中空埋込材B内への配置態様としては、図11(a)に示す所要間隔を持って配置(分散)したり、同図(b)に示す、中空部Bは連続的に形成されているが、防振体Fは、容器の壁や発泡スチロール製キャップe等で分断された配置としたりすることができる。
中空埋込材Bへの袋Fの充填態様は、その中空埋込材の断面形状と袋の断面形状が同一であったり、異なったりしても良い。また、中空埋込材Bに防振体Fがその周囲に空隙aを持っていることが好ましい。空隙aがあると、防振体Fが振れやすく、動吸振が行われ易いからである。
さらに、各実施形態において、粒状体(砂)10のコンクリートとの比率調整のため、砂10を充填しない鋼管や軽量な発泡スチロール製の埋込材Bを併用して埋設してもよい。
なお、本発明は、鋼管等の埋込材によって中空部を形成したコンクリート製建設部材に限らず、種々の手段で中空部を形成したコンクリート製建設部材、例えば、袋詰め防振体Fを空隙をもってコンクリート層内に埋設したコンクリート製建設部材等にも採用できることは勿論である。
また、遮音効果を高めるために、コンクリートスラブの上に、グラスウール、ゴムなどの緩衝材(防振材)を敷き詰め、その上にもう一層コンクリート床を設ける湿式浮き床構造において、その浮き床を構成するコンクリート床に、本発明に係るコンクリート製部材を使用することができる。このようにすると、浮き床をなすコンクリート製部材に振動が生じると、防振体自身の防振性に加え、防振体と弾性層による動吸振によってその振動抑制が行われるため、板としての振動が低減されることとなり、浮き床の防振性能の低下を改善する。すなわち、その浮き床が板材であるがために生じる防振の欠陥を、本発明によって補い、防振効果を高めることができる。
このため、例えば、集合住宅やオフィスビルにおいて、本発明に係るコンクリート製部材からなる浮き床上の設備機器等で生じた振動による固体伝搬音を、隣の部屋や下の階に伝わり難いものとしたり、コンサートホールにおいて、客席部やバルコニー部に同様に本発明に係る浮き床構造を使用すれば、ホール外で発生した振動が伝搬してきてもホール内に伝わり難くなり、ホール内に固体伝播音を発生し難くすることができる。この湿式浮き床構造の場合、防振体Fは袋体に粒状体を充填しない、その粒状体のみを中空部B内に配置した場合においても採用できる。
P コンクリート製建設部材(ボイドスラブ)
B 中空埋込材(鋼管、容器)
C コンクリート
F 防振体(砂入り袋)
G 弾性層(土嚢袋)
a 空隙部
10 砂(粒状体)
11 袋(袋体)
Figure 2016035137

Claims (6)

  1. 中空部を有し、その中空部内に、袋体に粒状体を充填した防振体を配置するコンクリート製部材において、少なくとも防振体の下部に相当する位置が弾性層となっているコンクリート製部材。
  2. 前記弾性層が、前記袋体の下部をなす弾性層、前記中空部に敷設された弾性シート、袋体の少なくとも下部に相当する位置に積層した弾性シート、同下部に相当する位置に貼り付けた弾性シート、袋体にかぶせた袋状の弾性シート、袋体の周囲に巻きつけた弾性シートの少なくとも1つによって形成されている請求項1に記載のコンクリート製部材。
  3. 前記袋体が、非透水性である請求項1又は2に記載のコンクリート製部材。
  4. 請求項1〜3の何れか1つに記載のコンクリート製部材において、そのコンクリート製部材が施工される部位に応じて、前記防振体の粒状体量、前記弾性層の弾性率、又はその防振体の粒状体量及び弾性層の弾性率を変化させ、前記部位における最適な振動低減効果を生じるようにするコンクリート製部材における振動低減周波数調整方法。
  5. 請求項4記載の振動低減周波数調整方法によって調整されたコンクリート製部材によって形成されたスラブ。
  6. 請求項1乃至3の何れか1つに記載のコンクリート製部材又は請求項4記載の振動低減周波数調整方法によって調整されたコンクリート製部材を躯体床上方に防振材を介して配置した浮き床構造。
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