JP2016035137A - 振動低減性能に優れたコンクリート製部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】中空部Bを有し、その中空部内に袋体11に砂等の粒状体10からなる質量体を充填した防振体Fを配置し、その防振体の下部に相当する位置が弾性層となっているコンクリート製建築部材である。この建築部材が振動を受けると、前記防振体が動吸振として作用して建築部材の振動を抑制する。このとき、前記粒状体が動吸振における付加質量に、前記弾性層が動吸振におけるバネに、粒状体自身相互の摩擦熱による振動エネルギー損失が動吸振における抵抗となって振動低減効果が高くなる。その粒状体の質量・大きさ・形状等や弾性層の性状・形状等を適宜に設定することによって、振動低減効果が最大となる周波数帯域のチューニングを容易になし得る。浮き床に本発明を採用することもできる。
【選択図】図1
Description
他方、従来から、所定位置に中空の円筒体や、発泡スチロール等のコンクリートより軽量な立方体を埋設した中空スラブ(ボイドスラブ)工法が知られている。この中空部を利用して新たな機能を付加するという着想が以前からあった。
他の着想として、中空部に発泡樹脂体を充填したプレキャスト板が提案されている。この発泡樹脂体を充填することにより、ほとんどプレキャスト板の質量を増加させず、床衝撃音の遮断性能を高めることができるとしている(特許文献3要約、図2参照)。
さらに、砂等の防音材をコンクリート板内に充填し、その防音材でもって振動を消滅(減衰)する技術も提案されている(特許文献1要約、図1〜図13参照)。
また、特許文献3のプレキャスト板は床衝撃音の遮断性能を高めているが、これは主に軽量床衝撃音に効果があり、重量床衝撃音で重要となる63Hz、125Hz帯域といった、比較的低い周波数帯域における低減効果が見られない。
特許文献4の技術は、重量が軽く剛性の低いセメント板を対象とした技術であり、これをコンクリート板に適用しても効果があるか不明である。また、天井下地材にダイナミックダンパーを分散配置しており、砂状無機材の効果は不明である。
特許文献5の技術は、動吸振によって防振するものであるが、その防振体が金属製棒状体を発泡ポリエチレン製弾性部材で被覆したものである。動吸振は、質量、バネ定数(弾性率)のみではなく、それらに加えて振動エネルギー損失が適切に調整されたときに初めて有効な振動低減効果を発揮する。このため、この特許文献5の技術では、振動エネルギー損失に係わる数値やその実現に関する具体的な記述が無いため、動吸振による有効な振動低減効果を得られるか不明である。
ここで、動吸振は、振動する対象物に、補助的な質量体をバネ等の弾性体と適切な振動エネルギー損失を持った抵抗を介して付加することにより、対象物の振動を抑制するものである。このため、前記コンクリート製部材にあっては、前記粒状体がその動吸振の質量体に相当し、弾性層が同バネに相当し、その弾性層及び粒状体の内部の振動エネルギー損失機能が抵抗に相当して動吸振機能を発揮するものとなり、振動し難いコンクリート製部材が構成されることとなる。
また、防振体は袋体に粒状体を充填したものであるため、コンクリート製部材に振動が生じると、その振動によってその粒状体が相互に関わり合って、摩擦熱により振動エネルギーを損失させ、この損失が動吸振に高い振動減衰作用を与えることができる。
因みに、特許文献4においては、押出成形セメント床パネルの中空部に袋詰めした砂状無機材を充填しているため、一見、本発明のコンクリート製部材のように、その砂状無機材を充填した部材が中空部内において、動吸振を行うように考えられる。しかし、この特許文献4の技術は、無機材の質量とその無機材内部の振動エネルギー損失のみで振動を低減するものであって、また、袋の材質も記載されていないから、前述の動吸振における弾性体に相当する部材の記載はないとすべきであって、動吸振として振動低減するものではない。このため、特許文献4の技術は本発明の動吸振を有するコンクリート製部材とはその形態が明らかに異なって同じものではない。
しかし、浮き床は、理想的な質量とは異なり、板状であるがために曲げ振動が生じてしまう。浮き床での板の振動が生じると、板である浮き床の共振周波数において振動が増幅し、浮き床としての防振性能が低下してしまう。
このため、本発明に係わるコンクリート製部材を浮き床として用いれば、前記のように、その浮き床をなすコンクリート製部材に振動が生じると、防振体自身の防振性に加え、防振体と弾性層による動吸振によってその振動抑制が行われるため、板としての振動が低減されることとなり、浮き床の防振性能の低下を改善し、防振性能を向上させることができる。
防振体の袋体は粒状体を充填できればその素材及び形状は何れでも良いが、その素材は、ポリエチレンや不織布等の粒状体が漏れ出さないものを使用できる。このとき、ポリエチレンのような非透水性の素材であれば、防振体が雨水等に接しても、内部に浸出せず、重量が変わらないため、設定した動吸振を得ることができて好ましい。また、形状も中空部に装填し得れば、有蓋筒状、球状、楕円球状等と任意である。
また、前記不織布、麻袋、土嚢袋等からなる袋体は、剛体物に比べれば適度な弾性と柔軟性を有するものであり、袋体自身が弾性層を形成して前記動吸振を担う要素となり得る。このため、前記「防振体の下部に相当する位置の弾性層」には、袋体自身で構成した(袋体の下部が弾性層の)場合も含まれ、袋体がシート状の場合はその袋体の下部の位置がその弾性層を形成する弾性シートとなる。
さらに、柔軟性を有する袋体は中空部に防振体を配置したとき、中空部内面形状に応じて容易に変形する。このため、前記のように、中空部内への防振体の配置時、防振体の中空部内面への良好な接地状態を得られるため、コンクリート製部材の振動が効率良く防振体に伝達されて、優れた振動吸収作用が発揮される。
また、その弾性シート等の取付は、同様に、動吸振を行い得る態様であれば、中空部に置く(敷設する)だけ等の袋体又は中空部に固定されていなくても良いが、少なくとも一方に固定されていることが好ましい。一方に固定されていると、例えば、袋体に固定されていると、袋体の中空部への装填と同時に弾性シート等も装填されてその装填作業が容易である。
この埋込材は、型枠内に均等に並べて配置して固定することが好ましいが、個々の建物のスラブ等を構成するこのコンクリート製部材における配筋態様等を考慮して、型枠内に適切な配置に並べて固定する。また、単に、防振体を充填する場合は、埋込材の中空部長さ方向を所定間隔で発泡スチロール等によって隔壁を形成し、その隔壁間に防振体を充填するようにする。このとき、防振体と隔壁は、埋込材の一端から他端に向かって順々に隔壁、防振体を装填する等の手段を採用する。
また、複数の中空の埋込材を建設部材に埋設するとき、隣接する埋込材同士が接するように配置して、防振体が分断されるようにしてもよいし、各埋込材間に隙間を設けて配置して、防振体が分散されるようにしてもよい(図11(a)、(b)参照)。
このように、複数の埋込材を埋設することにより、1つ当たりの埋込材を軽量化し、運搬や施工を容易にできる。また、防振体が振動で移動しても、1つの埋込材内の移動で収まり、常に所定の振動低減性能を発揮できる。
このボイドスラブPは、工場内、又は建設現場で型枠を組み、上端筋、下端筋等を配筋するとともに、前記中空管Bを配置した後、型枠内にコンクリートCを打設し、コンクリート硬化後に型枠を取り外して製作する。このとき、中空管Bは防振体Fを装填して配置したり、配置後に中空管B内に防振体Fを装填したり、コンクリート硬化後に中空管B内に防振体Fを装填したりすることができる。
(1)試験用躯体
図1に示したコンクリート板Pにおいて、高さh:250mm、長さL:6,000mm、幅W:1,200mmのコンクリート躯体を使用した(図6(a)参照)。この躯体Pには、長さ:1,200mm、断面短径:125×同長径:225mmの断面楕円形の鋼管B(図6(a)参照、その図中の数字の単位はmm)が長さ方向335mmピッチtで埋設してあり、この鋼管でもって中空部Bを形成している。この中空部を有したコンクリート板の曲げ剛性は3.3×107Nm2、面密度は440kg/m2である。
図1、図6に示すコンクリート躯体Pにおいて、図4(a)に示す不織布(ポリエステルとポリエチレンの複合布であって、面密度:50g/m2)からなる袋11に砂10を充填した防振体Fを中空部Bのほぼ全長に亘って配置した(図2(a)参照)。このとき、その防振体Fの縦断面積は中空部(鋼管)Bの縦断面積の3/4程度とした(図3(d)参照)。砂10は乾燥山砂である中目砂(粒径1.0〜2.5mm、単位容積質量1.6kg/L)を使用し、その砂のコンクリートに対する質量比は11%とした。
実施例1の防振体Fは、図4(b)に示すように、不織布からなる袋11に土嚢袋を被せ、その土嚢袋は、ポリエチレン製であって面密度:90g/m2のものを使用して2重巻きとした。実施例2の防振体Fは、図4(a)に示す不織布からなる袋11のみのものを使用した。
この両実施例において、不織布からなる袋11自体が弾性層Gを構成すると共に土嚢袋が弾性層Gを形成し、両実施例1、2の各防振体Fの質量(砂の質量)、バネ定数、減衰定数は表1の通りである。
各実施例1、2において、図6(b)に示すように、そのコンクリート躯体Pの長手両端部及び中央部を防振体bで防振支持し、その各実施例の躯体PをハンマーHで加振し、試験体全体に設定した各計測点への伝達のインピーダンスを平均して、振動低減量を算出した。加振点は長手側端部の中央、計測点は、平面視500mmピッチ格子の各交点等(短手方向:両端及びその中点、長手方向:両端及びその間の12等分位点、計:39点)として、加振時の各計測点における振動のし難さ(伝達のインピーダンス:dB)を計測した。
全計測点の伝達のインピーダンスを平均した値を比較した。両実施例の振動低減量(dB)を下記表1及び図7に示す。
なお、同一条件において、砂10の含水量を変えて同一試験を行ったが、減衰曲線において相違はなかった。
因みに、上記コンクリート躯体(スラブ)Pの曲げ波の共振周波数は80Hzであり、防振体Fの共振周波数を72Hz又は60Hzとした場合、前者の方が後者に対し、スラブPの曲げ波の共振周波数に近いため、振動低減効果が高かった。
この実験結果から、防振効果の高い範囲Eは砂11の充填量が増すにつれて低周波領域に移行することが理解できる。
この実験結果において、砂量が多くなれば、防振効果が増すことが確認されるが、防振体Fの中空部B内の配置態様の相違においては、防振効果の高い範囲Eの周波領域の移行は認められなかった。
この実験結果において、防振効果の高い範囲Eは、弾性層Gが厚くなる(弾性率が小さくなる)に従い、低周波領域に移行することが理解できる。
弾性層Gは土嚢袋に限らず、他の合成ゴムシート等を使用し得ることは勿論であり、その場合、袋体11に巻きつけたり、図5に示すように、防振体Fの下部に敷くだけであったりしてもよい。このとき、弾性シートGは袋体11に貼り付けたり、鋼管(中空部)B内面に貼り付けたり、両者11、Bに貼り付けたりすることができる。両者11、Bに貼り付ける場合、例えば、弾性シートGの両面に貼着層を形成し、袋体11又は中空部B内面の一方にその弾性シートGに貼り付け、袋体11をその弾性シートG上に配置することによって、両者に貼り付ける等の手段を採用する。
さらに、各実施形態において、粒状体(砂)10のコンクリートとの比率調整のため、砂10を充填しない鋼管や軽量な発泡スチロール製の埋込材Bを併用して埋設してもよい。
このため、例えば、集合住宅やオフィスビルにおいて、本発明に係るコンクリート製部材からなる浮き床上の設備機器等で生じた振動による固体伝搬音を、隣の部屋や下の階に伝わり難いものとしたり、コンサートホールにおいて、客席部やバルコニー部に同様に本発明に係る浮き床構造を使用すれば、ホール外で発生した振動が伝搬してきてもホール内に伝わり難くなり、ホール内に固体伝播音を発生し難くすることができる。この湿式浮き床構造の場合、防振体Fは袋体に粒状体を充填しない、その粒状体のみを中空部B内に配置した場合においても採用できる。
B 中空埋込材(鋼管、容器)
C コンクリート
F 防振体(砂入り袋)
G 弾性層(土嚢袋)
a 空隙部
10 砂(粒状体)
11 袋(袋体)
Claims (6)
- 中空部を有し、その中空部内に、袋体に粒状体を充填した防振体を配置するコンクリート製部材において、少なくとも防振体の下部に相当する位置が弾性層となっているコンクリート製部材。
- 前記弾性層が、前記袋体の下部をなす弾性層、前記中空部に敷設された弾性シート、袋体の少なくとも下部に相当する位置に積層した弾性シート、同下部に相当する位置に貼り付けた弾性シート、袋体にかぶせた袋状の弾性シート、袋体の周囲に巻きつけた弾性シートの少なくとも1つによって形成されている請求項1に記載のコンクリート製部材。
- 前記袋体が、非透水性である請求項1又は2に記載のコンクリート製部材。
- 請求項1〜3の何れか1つに記載のコンクリート製部材において、そのコンクリート製部材が施工される部位に応じて、前記防振体の粒状体量、前記弾性層の弾性率、又はその防振体の粒状体量及び弾性層の弾性率を変化させ、前記部位における最適な振動低減効果を生じるようにするコンクリート製部材における振動低減周波数調整方法。
- 請求項4記載の振動低減周波数調整方法によって調整されたコンクリート製部材によって形成されたスラブ。
- 請求項1乃至3の何れか1つに記載のコンクリート製部材又は請求項4記載の振動低減周波数調整方法によって調整されたコンクリート製部材を躯体床上方に防振材を介して配置した浮き床構造。
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