JP2016034939A - 含水エタノール製剤及びその製造方法、並びに、リゾチーム加工品及び/又はその塩並びにその製造方法 - Google Patents

含水エタノール製剤及びその製造方法、並びに、リゾチーム加工品及び/又はその塩並びにその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】透明性に優れた含水エタノール製剤及びその製造方法、並びにリゾチーム加工品及び/又はその塩並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】含水エタノール製剤は、リゾチーム及び/又はその塩、あるいはこれらの加工品を含有し、下記に規定される蛍光強度が5,500以上である。蛍光強度:前記含水エタノール製剤を前記リゾチーム及び/又はその塩、あるいはこれらの加工品の濃度が0.05質量%になり、且つリン酸塩の濃度が0.2Mになるようにリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈して得られる希釈液5mLに8mMの1,8−アニリノナフタレンスルホン酸のメタノール溶液25μLを添加して得られる液を30分間室温で反応させた後の該液について、励起波長390nm(励起バンド幅10nm)及び蛍光波長470nm(蛍光バンド幅10nm)の条件にて測定された蛍光強度
【選択図】なし

Description

本発明は、含水エタノール製剤及びその製造方法、並びに、リゾチーム加工品及び/又はその塩並びにその製造方法に関する。
リゾチームは、卵、動物の組織、体液、植物など生物界に広く存在する酵素である。工業的には、卵白から単離されるリゾチームが、食品及び医薬品に応用されている(特許文献1)。例えば、リゾチームは抗菌作用を有することから、消毒剤の成分として広く使用されている。
特開平5−221875号公報
本発明者らは、リゾチームを含水エタノール製剤の成分として使用する場合、エタノール溶液中でリゾチームが十分に溶解せず、リゾチームが沈殿するという問題を発見した。
そこで、本発明者らは、リゾチームの蛍光強度が特定以上になるまで過加熱して得られるリゾチーム加工品及び/又はその塩が、エタノールへの溶解性に優れており、該リゾチーム加工品及び/又はその塩を用いて、透明性に優れた含水エタノール製剤を得ることができることを見出し、本発明を想到した。
本発明は、透明性に優れた含水エタノール製剤及びその製造方法、並びにリゾチーム加工品及びその製造方法を提供する。
1.本発明の一態様に係る含水エタノール製剤は、リゾチーム及び/又はその塩、あるいはこれらの加工品を含有し、下記に規定される蛍光強度が5,500以上である。
蛍光強度:前記含水エタノール製剤を、前記リゾチーム及び/又はその塩、あるいはこれらの加工品の濃度が固形分換算で0.05質量%になり、且つリン酸塩の濃度が0.2Mになるようにリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈して得られる希釈液5mLに8mMの1,8−アニリノナフタレンスルホン酸のメタノール溶液25μLを添加して得られる液を30分間室温で反応させた後の該液について、励起波長390nm(励起バンド幅10nm)及び蛍光波長470nm(蛍光バンド幅10nm)の条件にて測定された蛍光強度
2.上記1に記載の含水エタノール製剤は、波長660nmの光の透過率が85%以上であることができる。
3.上記1又は2に記載の含水エタノール製剤は、前記含水エタノール製剤を25℃で1ヵ月保存した後の波長660nmの光の透過率が85%以上である。
4.上記1ないし3のいずれかに記載の含水エタノール製剤において、前記エタノールの濃度が40質量%以上90質量%以下であることができる。
5.上記1ないし4のいずれかに記載の含水エタノール製剤において、前記リゾチーム及び/又はその塩、あるいはこれらの加工品の濃度が固形分換算で0.1質量%以上5質量%以下である、含水エタノール製剤。
6.上記1ないし5のいずれかに記載の含水エタノール製剤において、エタノール以外の水溶性アルコールをさらに含有することができる。
7.上記1ないし6のいずれかに記載の含水エタノール製剤は、スプレー式容器に充填されていることができる。
8.上記1ないし6のいずれかに記載の含水エタノール製剤は、ポンプ式容器に充填されていることができる。
9.上記1ないし6のいずれかに記載の含水エタノール製剤は、不織布に含浸されていることができる。
10.本発明の一態様に係るリゾチーム加工品及び/又はその塩は、下記定義によって規定される蛍光強度が4,000以上である:
蛍光強度:前記リゾチーム加工品及び/又はその塩の濃度が0.05質量%になり、且つリン酸塩の濃度が0.2Mになるようにリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈して得られる希釈液5mLに8mMの1,8−アニリノナフタレンスルホン酸のメタノール溶液25μLを添加して得られる液を30分間室温で反応させた後の該液について、励起波長390nm(励起バンド幅10nm)及び蛍光波長470nm(蛍光バンド幅10nm)の条件にて測定された蛍光強度
11.本発明の一態様に係るリゾチーム加工品及び/又はその塩の製造方法は、上記10に記載のリゾチーム加工品及び/又はその塩を製造する方法であって、波長660nmの光の透過率が70%超であり、pHが5.0以上7.0以下であり、かつ、リゾチーム及び/又はその塩の濃度が固形分換算で0.5質量%以上7質量%以下であるリゾチーム及び/又はその塩を、該水溶液の波長660nmの光の透過率が70%になるまで加熱する第1の加熱工程と、前記第1の加熱工程の後に、前記水溶液の波長660nmの光の透過率が70%未満の極小値になるまで加熱した後、70%になるまで該水溶液を加熱する第2の加熱工程と、前記第2の加熱工程の後に、前記水溶液の波長660nmの光の透過率が70%を超える状態で該水溶液をさらに加熱する第3の加熱工程と、を含む。
12.上記11に記載のリゾチーム加工品及び/又はその塩を製造する方法において、前記第3の加熱工程の加熱条件が、第3の加熱工程で得られた水溶液を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過したものとエタノールとを質量比で1:1の割合で混合したときに波長660nmの光の透過率が85%以上になるまで加熱する条件であることができる。
13.上記11又は12に記載のリゾチーム加工品及び/又はその塩の製造方法において、前記第3の加熱工程の後に、前記水溶液を噴霧乾燥又は凍結乾燥させて、粉末状のリゾチーム加工品及び/又はその塩を得る工程をさらに含む。
14.本発明の一態様に係る含水エタノール製剤の製造方法は、上記11ないし13のいずれかに記載の製造方法で得られたリゾチーム加工品及び/又はその塩とエタノール及び水とを混合して、含水エタノール製剤を得る工程を含む。
15.本発明の一態様に係る含水エタノール製剤の製造方法は、上記10に記載のリゾチーム加工品及び/又はその塩とエタノール及び水とを混合して、含水エタノール製剤を得る工程と、を含む。
16.上記14又は15に記載の含水エタノール製剤の製造方法において、前記含水エタノール製剤を得る工程において、前記含水エタノール製剤における前記リゾチーム加工品及び/又はその塩の濃度が固形分換算で0.1質量%以上5質量%以下となるように、前記リゾチーム加工品と前記エタノール及び水とを混合することができる。
17.上記14ないし16のいずれかに記載の含水エタノール製剤の製造方法において、前記含水エタノール製剤を得る工程において、前記含水エタノール製剤におけるエタノールの濃度が40質量%以上90質量%以下となるように、前記リゾチーム加工品及び/又はその塩と前記エタノール及び水とを混合することができる。
上記1ないし9のいずれかに記載の含水エタノール製剤によれば、リゾチーム及び/又はその塩、あるいはこれらの加工品を含有し、上記定義で規定される蛍光強度が5,500以上であることにより、水溶性を有し、かつエタノールへの溶解性に優れているため、上記1ないし9のいずれかに記載の含水エタノール製剤は透明性に優れている。
上記含水エタノール製剤は例えば、医薬品として、食品の洗浄用途として、又は衛生用途としての使用が可能である。この場合、菌の除去用途として上記含水エタノール製剤を使用することができる。より具体的には、上記含水エタノール製剤は例えば、容器(例えば、ノズル又はスプレー等が付属されている容器、あるいはこれらが付属していない容器)に収容した形態にて、あるいは、不織布に含浸させた形態にて使用することができる。
また、上記10に記載のリゾチーム加工品及び/又はその塩は、上記定義で規定される蛍光強度が4,000以上であることにより、水溶性を有し、かつエタノールへの溶解性に優れているので、透明性に優れた含水エタノール製剤の製造に使用することができ、かつ、菌の不活化作用を有する。
また、上記11ないし13に記載のリゾチーム加工品及び/又はその塩の製造方法によれば、前記第1の加熱工程、前記第2の加熱工程及び前記第3の加熱工程により、上記定義で規定される蛍光強度が4,000以上であることから、水溶性を有し、かつエタノールへの溶解性に優れているため、菌の不活化作用を有するリゾチーム加工品及び/又はその塩を得ることができる。
また、上記14、16及び17に記載の含水エタノール製剤の製造方法によれば、上記11ないし13に記載の製造方法で得られたリゾチーム加工品及び/又はその塩とエタノール及び水とを混合して、含水エタノール製剤を得る工程を含むことにより、水溶性を有し、かつ、エタノールへの溶解性に優れているため、抗菌作用を有するリゾチーム加工品及び/又はその塩を得ることができ、かつ、前記含水エタノール製剤を得る工程によって、透明性に優れ、かつ、菌の不活化作用を有する含水エタノール製剤の製造に使用することができる。
また、上記15ないし17に記載の含水エタノール製剤の製造方法によれば、上記10に記載のリゾチーム加工品とエタノール及び水とを混合して、含水エタノール製剤を得る工程を含むことにより、透明性に優れ、かつ、菌の不活化作用を有する含水エタノール製剤を得ることができる。
本発明の一実施形態に係るリゾチーム加工品及び/又はその塩の製造方法において、第1の加熱工程、第2の加熱工程及び第3の加熱工程での加熱時間と透過率との関係を模式的に表す図である。 本発明の一実施例で得られたリゾチーム加工品及び/又はその塩の電気泳動(SDS−PAGE)結果を示す写真である。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、格別に断らない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
<含水エタノール製剤>
本発明の一実施形態に係る含水エタノール製剤は、リゾチーム及び/又はその塩、あるいはこれらの加工品を含有し、下記に規定される蛍光強度が5,500以上であることを特徴とする。
蛍光強度:前記含水エタノール製剤を前記リゾチーム及び/又はその塩、あるいはこれらの加工品(以下、「リゾチーム加工品等」と記載することもある。)の濃度が固形分換算で0.05質量%になり、且つリン酸塩の濃度が0.2Mになるようにリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈して得られる希釈液5mLに8mMの1,8−アニリノナフタレンスルホン酸のメタノール溶液25μLを添加して得られる液を30分間室温で反応させた後の該液について、励起波長390nm(励起バンド幅10nm)及び蛍光波長470nm(蛍光バンド幅10nm)の条件にて測定された蛍光強度
本発明において、「含水エタノール製剤」とは、水を含むエタノールを含む製剤をいい、その性状は、液状のものや、ジェル等の粘稠物等、流動性組成物であるとよい。また、本発明において「室温」とは、20℃以上25℃以下のことをいう。
[蛍光強度]
本発明で規定される含水エタノール製剤の蛍光強度は、含水エタノール製剤に含まれる蛋白質の表面疎水性の指標である。すなわち、本発明で規定される含水エタノール製剤の蛍光強度が高いほど、含水エタノール製剤に含まれる蛋白質の表面疎水性が高いといえる。
そのため、本実施形態に係る含水エタノール製剤の蛍光強度は主に、該含水エタノール製剤に含まれるリゾチーム加工品等の表面疎水性に起因している。通常、蛋白質の表面疎水性を高めると、蛋白質の疎水性部分同士が引き合い、凝集するため、水やエタノールへの溶解性が低下する。しかしながら、本実施形態に係るリゾチーム加工品等は、表面疎水性が高いにもかかわらずエタノールへの溶解性に優れており、かつ、水溶性を有するという特徴を有する。
本実施形態に係る含水エタノール製剤に含まれるリゾチーム加工品等が、エタノールへの溶解性及び水溶性の双方に優れている原因は明らかではないが、該リゾチーム加工品等は表面疎水性が極めて高いのに加えて、該リゾチーム加工品等が本実施形態に係る含水エタノール製剤中において「水溶性を有する凝集体」の形態で溶解しているので、水溶性に優れているためであると推測される。
表面疎水性がより高い点で、本実施形態に係る含水エタノール製剤の蛍光強度は、下記定義によって規定される5,500以上であることが好ましく、6,000以上であることが好ましく、さらに6,500以上であることが好ましく、通常10,000以下である。
本発明において、含水エタノール製剤及び後述するリゾチーム加工品等の蛍光強度は、Canadian Institute of Food Science and Technology 1985 Vol.18 No.4 p.290-295に記載された方法にて測定された値である。なお、本発明におけるリゾチーム加工品等の蛍光強度の測定に用いるリン酸緩衝液は、リン酸二水素ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウムを用いて調製したものである。また、本発明におけるリゾチーム加工品等の蛍光強度は、0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0、リン酸塩としてリン酸二水素ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウムで調製される)の蛍光強度をブランク値として別途測定し、該ブランク値を差し引いた値である。
本実施形態に係る含水エタノール製剤及び後述する実施形態に係るリゾチーム加工品の蛍光強度は、日本分光株式会社、型名FP−8500蛍光分光光度計を用いて、励起波長390nm、励起バンド幅10nm、蛍光波長470nm、蛍光バンド幅10nm、レスポンス0.5sec、感度Low(約270±10V)(電源周波数(50/60Hz))、ペリスタシッパSHP−820型使用の条件で測定したときの値である。なお、他の蛍光分光光度計を用いて測定することもできるが、その際は感度等の測定条件を本願で規定する条件に合わせる必要がある。
[リゾチーム及び/又はその塩、あるいはこれらの加工品]
本発明において、「リゾチーム」とは、N−アセチルグルコサミンとN−アセチルムラミン酸とのβ−1,4結合を加水分解する性質を有するタンパク質をいう。また、本発明において、「リゾチーム加工品」とは、リゾチーム及び/又はその塩とは異なる立体構造を有するものをいい、リゾチームを変性させて得ることができる。
リゾチームは、卵、動物の組織、体液、植物など生物界に広く存在し、基質特異性と構造から大きく以下の5種のファミリーに分類される。
1.リゾチーム(細菌型)
2.リゾチーム(ニワトリ型)
3.リゾチーム(グース型)
4.リゾチーム(ファージ型;Vタイプ)
5.リゾチーム(CH型)
本実施形態に係る含水エタノール製剤では、リゾチームとして、上記5種のファミリーのいずれも使用することができる。これらのリゾチームのなかでも、原料であるリゾチームとして、卵白リゾチーム、ヒトリゾチーム等のリゾチーム(ニワトリ型)が好ましく、さらに、低コストで入手可能である点から、卵白リゾチームがより好ましい。
また、リゾチームの塩としては、食品添加物又は薬学的に許容可能である塩が挙げられ、塩酸、炭酸、リン酸、ホウ酸、へキサメタリン酸、硝酸、硫酸などの無機酸の塩、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、酢酸、グルタミン酸、グリセロリン酸、グルコン酸などの有機酸の塩があげられる。リゾチームの塩のなかでも、無機酸の塩が好ましく、消炎剤として広く使用され、安全性が確立している点から、塩化リゾチームがより好ましい。
(蛍光強度)
表面疎水性がより高く、エタノールへの溶解性がより優れている点で、下記定義によって規定されるリゾチーム加工品等の蛍光強度は4,500以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、通常、10,000以下である。
蛍光強度:前記リゾチーム加工品及び/又はその塩の濃度が固形分換算で0.05質量%になり、且つリン酸塩の濃度が0.2Mになるようにリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈して得られる希釈液5mLに8mMの1,8−アニリノナフタレンスルホン酸のメタノール溶液25μLを添加して得られる液を30分間室温で反応させた後の該液について、励起波長390nm(励起バンド幅10nm)及び蛍光波長470nm(蛍光バンド幅10nm)の条件にて測定された蛍光強度
(濃度)
本実施形態に係る含水エタノール製剤において、エタノールへの溶解性により優れているため、透明性をより高めることができる点で、リゾチーム及び/又はその塩、あるいはこれらの加工品の濃度が固形分換算で0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上であるのがより好ましく、0.5質量%超(例えば0.6質量%以上)であることがさらに好ましく、0.7質量%以上であることが最も好ましく、一方、4質量%以下であるのがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましい。
本実施形態に係る含水エタノール製剤において、リゾチーム及び/又はその塩、あるいはこれらの加工品は、リゾチーム及び/又はその塩、あるいはこれらの加工品から選ばれる少なくとも1種を含有することができる。また、本実施形態に係る含水エタノール製剤において、リゾチーム及び/又はその塩、あるいはこれらの加工品から選ばれる複数種類を含有する場合、リゾチーム及び/又はその塩、あるいはこれらの加工品の濃度(固形分換算)は、リゾチーム及び/又はその塩、あるいはこれらの加工品の合計量の濃度(固形分換算)を意味する。
(二量体及び三量体)
前記リゾチーム加工品及び/又はその塩は、約29K(=10)Daの蛋白質及び/又は約36.5KDaの蛋白質を含むことができ、約29KDaの蛋白質及び約36.5KDaの蛋白質の両方を含むことがより好ましい。すなわち、本実施形態に係る含水エタノール製剤は、約29KDaの蛋白質及び/又は約36.5KDaの蛋白質を含むことができる。本実施形態に係る含水エタノール製剤ならびに前記リゾチーム加工品又はその塩中に約29KDaの蛋白質及び/又は約36.5KDaの蛋白質が含まれていることは、後述する実施例に示す電気泳動によって確認することができる。なお、電気泳動は、市販の電気泳動キッドを用いて行うことができる。
約29KDaの蛋白質は、リゾチーム加工品及び/又はその塩の二量体であると推測され、約36.5KDaの蛋白質は、リゾチーム加工品及び/又はその塩の三量体であると推測される。
本実施形態に係る含水エタノール製剤中において、リゾチーム加工品及び/又はその塩として、約29KDaの蛋白質及び/又は約36.5KDaの蛋白質が含まれていることにより、リゾチーム加工品及び/又はその塩が表面疎水性の高い状態にて該含水エタノール製剤中に存在していると推測される。
(製造方法)
リゾチーム加工品及び/又はその塩は、後述する実施形態に係るリゾチーム加工品及び/又はその塩の製造方法の欄に記載された第1加熱工程、第2加熱工程及び第3加熱工程によって製造することができる。
[エタノール]
本実施形態に係る含水エタノール製剤は、殺菌効果を有し、かつリゾチーム加工品等の溶解性をより高めることができる点で、エタノールの濃度は40質量%以上90質量%以下であることができ、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることがさらに好ましく、一方、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましい。
[透過率]
本実施形態に係る含水エタノール製剤は、透明性に優れている点で、波長660nmの光の透過率が85%以上であることができ、90%以上であることが好ましい(通常100%以下である)。波長660nmの光は、工業用水試験法JIS K0101において、水の濁り度合を測定する波長として定められている。また、本発明において、波長660nmの光の透過率は、公知の吸光光度計によって測定することができる。
また、本実施形態に係る含水エタノール製剤は、長期間保存後も透明性を維持することができる点で、本実施形態に係る含水エタノール製剤を25℃で1ヵ月保存した後の波長660nmの光の透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることが好ましい(通常100%以下である)。
[エタノール以外の水溶性アルコール]
本実施形態に係る含水エタノール製剤は、エタノール以外の水溶性アルコールをさらに含有することができる。本実施形態に係る含水エタノール製剤が水溶性アルコールをさらに含有することにより、該含水エタノール製剤の透明性をより保持することができる。
なかでも、透明性をより保持し、かつ、アルコールによる殺菌効果と、リゾチーム加工品等が有する菌の不活化作用とを併せ持つことができるため、消毒剤として利便性がより高い点で、本実施形態に係る含水エタノール製剤はエタノールに加えて、エタノール以外の水溶性アルコールの少なくとも1種を含むことが好ましい。
エタノール以外の水溶性アルコールとしては、例えば、イソプロパノール等のエタノール以外の炭素数3、4又は5の低級アルコール、あるいはグリセリン、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール等の多価アルコール等が挙げられる。これらの水溶性アルコールは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本実施形態に係る含水エタノール製剤が水溶性アルコールを含む場合、その含有量は通常、0.1質量%以上20質量%以下であり、0.5質量%以上であることが好ましく、一方、10質量%以下であることが好ましい。ただし、本実施形態に係る含水エタノール製剤が水溶性アルコールを含む場合、含水エタノール製剤を構成する各成分の総量が100質量%を超えないものとする。また、リゾチーム加工品等の安定性をより保持することができる点で、本実施形態に係る含水エタノール製剤がエタノール以外の水溶性アルコールを含む場合、エタノールの含有量に対するエタノール以外の水溶性アルコールの含有量は質量比で1/700以上1/5以下であることが好ましい。
本実施形態に係る含水エタノール製剤の水の含有量は10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、下限値は15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、一方、上限値は40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。ただし、本実施形態に係る含水エタノール製剤は、含水エタノール製剤を構成する各成分の総量が100質量%を超えないものとする。また、リゾチーム加工品等の溶解性をより高めることができる点で、本実施形態に係る含水エタノール製剤において、エタノールの含有量に対する水の含有量は質量比で1/10以上であることが好ましく、また1/1以下であることが好ましく、1/3以上1/1以下であることがより好ましい。
[その他の素材]
本実施形態に係る含水エタノール製剤において、上記リゾチーム加工品等、エタノール及び水以外にその他の配合素材を含有することができる。
その他の素材としては、例えば、グリシン、有機酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、デヒドロ酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、亜硫酸ナトリウム、EDTA、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化アルキルジアミノエチルグリシン、ヨードチンキ、ポピドンヨード、セチル酸化ベンザルコニウム、トリクロサン、クロルキシレノール、イソプロピルメチルフェノール、ε−ポリリシン、ラクトフェリン、ナイシン、バクテリオシン、ウド抽出物、エゴノキ抽出物、カワラヨモギ抽出物、酵素分解ハトムギ抽出物、しらこタンパク抽出物、ツヤプリシン、ペクチン分解物等の静菌剤を本発明の効果を損なわない範囲で適宜組み合わせて使用することができる。
本実施形態に係る含水エタノール製剤はさらに、クエン酸、クエン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン等のpH調整剤、トコフェロール酢酸エステル等の酸化防止剤、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース等の増粘剤などの添加剤、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の界面活性剤を必要に応じて含有していてもよい。
[剤型]
本実施形態に係る含水エタノール製剤の粘度(例えば1〜100,000mPa・s)は使用方法に応じて適宜定めることができる。例えば、噴霧可能な粘度の液剤とし、トリガースプレーヤー、ポンプ容器、スクイズ容器、エアゾル容器等の容器に充填することにより、本実施形態に係る含水エタノール製剤を含む液滴を、手指、食品、調理器具、住居環境、嘔吐物、排泄物等に噴霧することにより、菌の不活化を手軽に行うことができる。すなわち、上記容器は、本実施形態に係る含水エタノール製剤を含む。
また、本実施形態に係る含水エタノール製剤に、不活化の対象物(例えば、手指、食品、医療機器、医療器具、調理器具、住居環境)を浸すことにより、菌の不活化を手軽に行うことができる。
また、本実施形態に係る含水エタノール製剤を不織布に含浸させたシートの形態で使用することができる。すなわち、上記不織布は、本実施形態に係る含水エタノール製剤が含浸されている。この場合、不織布の材質としては、例えば、紙、繊維が挙げられる。本実施形態に係る含水エタノール製剤を不織布に含浸させたシートシートを対象物の表面に接触させることにより、菌の不活化を手軽に行うことができる。
さらに、本実施形態に係る含水エタノール製剤をローション状又はジェル状とすることにより、化粧品、あるいは、医薬品又は医薬部外品である皮膚外用剤として使用することができる。
[一具体例]
本実施形態に係る含水エタノール製剤の一具体例は、リゾチーム及び/又はその塩、あるいはこれらの加工品並びにエタノール及び水を含み、前記リゾチーム及び/又はその塩、あるいはこれらの加工品の濃度が固形分換算で0.1質量%以上5質量%以下であり、前記エタノールの濃度が40質量%以上90質量%以下である。この場合、前記含水エタノール製剤を25℃で1ヵ月保存した後の波長660nmの光の透過率が85%以上である。
<リゾチーム加工品及び/又はその塩の製造方法>
本発明の一実施形態に係るリゾチーム加工品及び/又はその塩の製造方法は、上記定義で規定される蛍光強度が4,000以上であるリゾチーム加工品及び/又はその塩を製造する方法であって、波長660nmの光の透過率が70%超であり、pHが5.0以上7.0以下であり、かつ、リゾチーム及び/又はその塩の濃度が固形分換算で0.5質量%以上7質量%以下であるリゾチームの水溶液を、該水溶液の波長660nmの光の透過率が70%になるまで加熱する第1の加熱工程(以下、単に「第1の加熱工程」ともいう。)と、前記第1の加熱工程の後に、70%未満の極小値まで加熱した後、さらに該水溶液の波長660nmの光の透過率が70%になるまで該水溶液を加熱する第2の加熱工程(以下、単に「第2の加熱工程」ともいう。)と、前記第2の加熱工程の後に、前記水溶液の波長660nmの光の透過率が70%を超える状態で該水溶液をさらに加熱する第3の加熱工程(以下、単に「第3の加熱工程」ともいう。)と、を含む。
本実施形態に係るリゾチーム加工品及び/又はその塩の製造方法によれば、前記第1の加熱工程、第2の加熱工程及び第3の加熱工程によって、上記定義で規定される蛍光強度が4,000以上であるリゾチーム加工品及び/又はその塩を得ることができ、かつ、上記リゾチームの製造方法によって得られたリゾチーム加工品及び/又はその塩とエタノール及び水とを混合することにより、該リゾチーム加工品及び/又はその塩を含む、透明性に優れた含水エタノール製剤を得ることができる。
(加熱のメカニズム)
図1は、本実施形態に係るリゾチーム加工品及び/又はその塩の製造方法において、第1の加熱工程、第2の加熱工程及び第3の加熱工程での加熱時間と透過率との関係を模式的に表す図である。本発明者らは、リゾチームを含む水溶液を加熱する際に、波長660nmの光の透過率が加熱時間に応じて図1に示すように変化することを見出した。当該透過率の変化は主に、得られるリゾチーム加工品の表面疎水性の変化及び水溶性の変化(水溶性の低下及びこれに続く水溶性の増加)に起因すると推測される。
図1に示されるように、第1の加熱工程によって、波長660nmの光の透過率が70%超である水溶液の該光の透過率が低下して70%になる。より具体的には、第1の加熱工程によって、水溶液の透明度が低下する。
また、第2の加熱工程によって、図1に示されるように、該水溶液の波長660nmの光の透過率は70%から70%未満の極小値まで低下した後で、70%まで上昇する。すなわち、この場合、目視にて水溶液の白濁及び/又は沈殿が確認された後(言い換えれば、該水溶液の透過率(透明性)が低下した後)、該白濁及び/又は沈殿が次第に消失する(言い換えれば、該水溶液の透過率(透明性)が上昇する)ことができる。
さらに、第3の加熱工程では、第2の加熱工程によって70%となった前記水溶液の波長660nmの光の透過率が70%を超える値に増加した後、該透過率が70%を超える状態で該水溶液をさらに加熱する。より具体的には、第3の加熱工程においては、該水溶液中に白濁及び/又は沈殿が生じない(言い換えれば、該水溶液の透過率(透明性)が維持されている)ことが好ましい。
[第1の加熱工程]
第1の加熱工程の加熱対象は、波長660nmの光の透過率が70%超(好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、通常100%以下)であり、pHが5.0以上7.0以下であり、かつ、リゾチーム及び/又はその塩の濃度が固形分換算で0.5質量%以上7質量%以下であるリゾチーム及び/又はその塩の水溶液である。
第1の加熱工程によって、波長660nmの光の透過率が70%になることは、該水溶液の透過率が低下することを意味し、例えば、目視にて該水溶液の白濁を確認することができる。
すなわち、第1の加熱工程では、前記水溶液中のリゾチームの立体構造及び/又はリゾチームの表面の表面疎水性が上昇し、疎水性部分が引き合い凝集して、前記水溶液中のリゾチームの溶解性が低下する結果、該水溶液の波長660nmの光の透過率が70%超から70%に低下すると推測される。
(原料)
第1の加熱工程において水溶液中で使用する、原料であるリゾチーム及び/又はその塩は、上述した含水エタノール製剤の欄で例示したリゾチームを使用することができる。低コストで入手容易である点から、原料であるリゾチーム及び/又はその塩は卵白リゾチームであるのが好ましい。
(原料の濃度)
リゾチームの立体構造を確実に変化させることができ、かつ、リゾチームの凝集を防止して、得られる含水エタノール製剤の透明性を高めることができる点で、第1の加熱工程において、水溶液中のリゾチームの濃度は0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、一方、7質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
(リゾチーム及び/又はその塩の水溶液)
リゾチーム及び/又はその塩の水溶液を構成する溶媒は水であるが、リゾチーム及び/又はその塩の水への溶解性に影響しない範囲で水と混和する有機溶媒を含有してもよい。リゾチーム及び/又はその塩の水溶液を構成する溶媒における水の割合は通常80質量%以上100質量%以下である。また、リゾチーム及び/又はその塩の水溶液を構成する溶媒が、水と混和する有機溶媒を含む場合、リゾチーム及び/又はその塩の水溶液を構成する溶媒における該有機溶媒の割合は通常1質量%以上20質量%以下である。
前記有機溶媒としては、水と混和する有機溶媒であればよく、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
(pH)
リゾチームの凝集を防止して、得られる含水エタノール製剤の透明性を高めることができ、かつ、得られるリゾチーム加工品の表面疎水性を高めることができる点で、第1の加熱工程、第2の加熱工程及び第3の加熱工程において、前記水溶液のpHは5.0以上ことが好ましく、5.0を超えるのがより好ましく、5.5以上であることがさらに好ましく、一方、7.0以下であることが好ましく、6.5以下であることがより好ましい。
また、必要に応じて、酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、クエン酸、酢酸、リン酸等の有機酸)、アルカリ(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基)又は緩衝液(例えば、酢酸緩衝液)を使用して、前記水溶液を上記範囲のpHに調整してもよい。
例えば、リゾチームがリゾチームの塩(例えば塩化リゾチーム)である場合、酸、アルカリ又は緩衝液を使用して、水溶液のpHを上記範囲のpHに調整したうえで、第1の加熱工程を行うことが好ましい。
[第2の加熱工程]
第2の加熱工程において、第1の加熱工程で得られた水溶液の波長660nmの光の透過率が70%から70%未満の極小値になり、さらに70%になるように加熱するとは、第1の加熱工程で得られた水溶液の透過率がさらに低下した後増加に転じ、目視で次第に透明になっていくことを確認できることをいう。
すなわち、第2の加熱工程では、前記水溶液中のリゾチームの立体構造がさらに変化し、リゾチームの表面疎水性がさらに高まるにつれて、リゾチームの水溶性がが一旦低下した後に高まる結果、水溶液の波長660nmの光の透過率が70%になると推測される。
第2の加熱工程においてリゾチームの表面疎水性がさらに高まるにつれて、リゾチームの水溶性が一旦低下した後に高まるメカニズムは明らかでないが、第2の加熱工程によって、第1の加熱工程において生じたリゾチームの凝集がさらに進行し、次いで凝集したリゾチーム同士が結合して線状の凝集体に変化し、この凝集体が前記水溶液に溶解するため、表面疎水性が高められつつ、前記水溶液中のリゾチームの溶解性が上昇するためであると推測される。
図1に示されるように、第2の加熱工程によって、該水溶液の波長660nmの光の透過率は70%から70%未満の極小値まで低下した後で、70%まで上昇する。前記水溶液中のリゾチームの立体構造をより確実に変化させることができる点で、第2の加熱工程による、該水溶液の波長660nmの光の透過率の極小値は60%未満であることが好ましく、50%未満であることがより好ましい(通常0%以上)。
第2の加熱工程は第1の加熱工程の後に引き続いて行うことができる。すなわち、第2の加熱工程は第1の加熱工程と連続的に行うことができる。
[第3の加熱工程]
第3の加熱工程では、前記第2の加熱工程の後に、前記水溶液の波長660nmの光の透過率が70%を超える状態で該水溶液をさらに加熱する。第1の加熱工程、第2の加熱工程及び第3の加熱工程により、リゾチーム加工品及び/又はその塩を得ることができる。
すなわち、第3の加熱工程では、前記水溶液中のリゾチームの立体構造がさらに変化し、リゾチームの水溶性を維持した状態で、リゾチームの表面疎水性がさらに高められる結果、水溶液の波長660nmの光の透過率が70%を超える値を維持することができると推測される。
前記水溶液中のリゾチームの立体構造をより確実に変化させることができる点で、第3の加熱工程は、該水溶液の波長660nmの光の透過率が75%以上になるまで加熱することがより好ましく、80%以上になるまで加熱することがより好ましい(通常100%以下である)。
さらに、第3の加熱工程は、第3の加熱工程で得られた水溶液を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過したものとエタノールとを質量比で1:1の割合で混合したときに波長660nmの光の透過率が85%以上になるまで加熱することが好ましく、90%以上になるまで加熱することがより好ましい(通常100%以下である)。
第3の加熱工程で得られた水溶液を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過したものとエタノールとを質量比で1:1の割合で混合したときに波長660nmの光の透過率が85%以上になることは、第3の加熱工程で得られたリゾチーム加工品及び/又はその塩の表面疎水性及び水溶性がより高められることを意味し、換言すれば、該リゾチーム加工品及び/又はその塩がエタノール及び水への溶解性により優れていることを意味する。より具体的には、上記定義で規定される蛍光強度が4,000以上であるリゾチーム加工品及び/又はその塩が得られた指標とすることができる。
第3の加熱工程は第2の加熱工程の後に引き続いて行うことができる。すなわち、第3の加熱工程は第1の加熱工程及び第2の加熱工程と連続的に行うことができる。
第3の加熱工程において、前記透過率が70%を超える状態でさらに加熱されて透明化した水溶液は、室温に戻しても該透過率を維持することができる(言い換えれば、透明性を維持することができる)。その原因としては、該水溶液中に含まれるリゾチーム加工品等の形態である線状の凝集体の立体構造が室温でも維持されているためであると推測される。
(加熱温度及び加熱時間)
本実施形態に係る含水エタノール製剤の製造方法における、リゾチーム加工品及び/又はその塩の製造において、高い収率を達成することができ、かつ、該水溶液を第1の加熱工程、第2の加熱工程及び第3の加熱工程でそれぞれ規定される透過率に調整できる点で、第1の加熱工程、第2の加熱工程及び第3の加熱工程における該水溶液の中心品温を70℃以上となるように加熱することが好ましく、製造時間を短縮できる点で、80℃以上がより好ましく、90℃以上がさらに好ましく、通常、130℃以下であってもよく、さらには約100℃以下であってもよい。なお、第1の加熱工程、第2の加熱工程及び第3の加熱工程における加熱時間は、加熱温度及び処理量に応じて各工程で規定する透過率を満たすように適宜決定することができる。
より具体的には、第1の加熱工程と第2の加熱工程を同じ加熱温度で連続して行う場合、第1の加熱工程における加熱時間及び第2の加熱工程における加熱時間は、合計で中心品温が70℃以上75℃以下の場合は5分間以上120分間以下、中心品温が75℃超80℃以下の場合は5分間以上75分間以下、中心品温が80℃超85℃以下の場合は5分間以上65分間以下、中心品温が85℃超90℃以下の場合は5分間以上45分間以下、中心品温が90℃超95℃以下の場合は5分間以上35分間以下、中心品温が95℃超100℃以下の場合は5分間以上20分間以下であることが好ましい。
第3の加熱工程における加熱時間は、中心品温が70℃以上75℃以下の場合は5分間以上600分間以下、中心品温が75℃超80℃以下の場合は5分間以上360分間以下、中心品温が80℃超85℃以下の場合は5分間以上240分間以下、中心品温が85℃超90℃以下の場合は5分間以上195分間以下、中心品温が90℃超95℃以下の場合は5分間以上150分間以下、中心品温が95℃超100℃以下の場合は5分間以上100分間以下であることが好ましい。
第1の加熱工程、第2の加熱工程及び第3の加熱工程を同じ加熱温度で連続して行う場合、第1の加熱工程における加熱時間及び第2の加熱工程における及び第3の加熱工程における加熱時間は、合計で中心品温が70℃以上75℃以下の場合は125分間以上720分間以下、中心品温が75℃超80℃以下の場合は80分間以上435分間以下、中心品温が80℃超85℃以下の場合は70分間以上305分間以下、中心品温が85℃超90℃以下の場合は50分間以上240分間以下、中心品温が90℃超95℃以下の場合は40分間以上185分間以下、中心品温が95℃超100℃以下の場合は25分間以上120分間以下であることが好ましい。すなわち、波長660nmの光の透過率が70%超であり、pHが5.0以上7.0以下であり、かつ、リゾチーム及び/又はその塩の濃度が固形分換算で0.5質量%以上7質量%以下であるリゾチーム及び/又はその塩の水溶液を上記各中心品温にて各加熱時間加熱することにより、上記実施形態に係るリゾチーム加工品及び/又はその塩を得ることができる。
[含水エタノール製剤を得る工程]
本実施形態に係る製造方法では、含水エタノール製剤を得る工程によって、上記実施形態に係る含水エタノール製剤を得ることができる。
本実施形態に係る製造方法において、透明性により優れた含水エタノール製剤を得ることができる点で、含水エタノール製剤を得る工程において、該含水エタノール製剤におけるリゾチーム加工品及び/又はその塩の濃度が固形分換算で好ましくは0.1質量%以上5質量%以下(より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%超、例えば0.6質量%以上であり、特に好ましくは0.7質量%以上、一方、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下)となるように、前記エタノールと前記第3の加熱工程で得られた前記水溶液とを混合するのが好ましい。この場合、上記実施形態に係る含水エタノール製剤の欄で例示された他の成分をさらに混合することができる。
また、本実施形態に係る含水エタノール製剤を得る製造方法において、殺菌効果を有し、透明性により優れた含水エタノール製剤を得ることができる点で、例えば、含水エタノール製剤を得る工程において、該含水エタノール製剤におけるエタノールの濃度が好ましくは40質量%以上90質量%以下(より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上、一方、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下)となるように、前記エタノールと前記第3の加熱工程で得られた前記水溶液とを混合することが好ましい。
<リゾチーム加工品及び/またはその塩>
本発明の一実施形態に係るリゾチーム加工品及び/又はその塩は、上記実施形態に係る含水エタノール製剤の欄において記載された通りであり、下記定義によって規定される蛍光強度が4,000以上(好ましくは4,500以上、より好ましくは5,000以上)である。前記蛍光強度は、前記リゾチーム加工品及び/又はその塩の濃度が固形分換算で0.05質量%になり、且つリン酸塩の濃度が0.2Mになるようにリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈して得られる希釈液5mLに8mMの1,8−アニリノナフタレンスルホン酸のメタノール溶液25μLを添加して得られる液を30分間室温で反応させた後の該液について、励起波長390nm(励起バンド幅10nm)及び蛍光波長470nm(蛍光バンド幅10nm)の条件にて測定された蛍光強度の値である。なお、リゾチーム加工品及び/又はその塩の濃度が固形分換算で0.05質量%であり、リン酸塩の濃度が0.2Mとなるようにリン酸緩衝液で希釈するとは、具体的には、例えばリゾチーム加工品及び/又はその塩を固形分換算で1質量%含有する水溶液の蛍光強度を測定する場合、前記水溶液5gと0.25Mのリン酸緩衝液80mLを100mLのメスフラスコに入れた後、精製水で100mLにメスアップすることで調整されることをいう。
(蛍光強度)
本発明で規定されるリゾチーム加工品及び/又はその塩の蛍光強度は、リゾチーム加工品及び/又はその塩の表面疎水性の指標である。すなわち、本発明で規定されるリゾチーム加工品及び/又はその塩の蛍光強度が高いほど、リゾチーム加工品及び/又はその塩の表面疎水性が高く、リゾチーム加工品及び/又はその塩の表面疎水性が高いと言える。
通常、蛋白質の表面疎水性を高めると、蛋白質の疎水性部分同士が引き合い、凝集するため、水やエタノールへの溶解性が低下する。しかしながら、本実施形態に係るリゾチーム加工品及び/又はその塩は、表面疎水性が高いにもかかわらずエタノールへの溶解性に優れており、かつ、水溶性を有するという特徴を有する。
本実施形態に係るリゾチーム加工品及び/又はその塩が、エタノールへの溶解性及び水溶性の双方に優れている原因は明らかではないが、リゾチーム加工品及び/又はその塩は表面疎水性に優れているため、エタノールへの溶解性に優れており、かつ、リゾチーム加工品及び/又はその塩が水及び/又はエタノール中で水溶性を有する凝集体として該エタノールに溶解しているので、水溶性に優れているためであると推測される。
(製造方法)
本実施形態に係るリゾチーム加工品及び/又はその塩は、上記実施形態に係る含水エタノール製剤の製造方法の欄に記載された第1加熱工程、第2加熱工程及び第3加熱工程によって製造することができる。
なお、本実施形態に係るリゾチーム加工品及び/又はその塩の製造方法において、前記第3の加熱工程の後に、前記水溶液を噴霧乾燥又は凍結乾燥させて、粉末状のリゾチーム加工品及び/又はその塩を得る工程をさらに含むことができる。
噴霧乾燥及び凍結乾燥は、常法に則り行うとよい。
<含水エタノール製剤の製造方法>
本実施形態に係る含水エタノール製剤の製造方法は、上記実施形態に係るリゾチーム加工品及び/又はその塩の製造方法によって得られた、上記リゾチーム加工品及び/又はその塩とエタノール及び水とを混合して、含水エタノール製剤を得る工程(以下、単に「含水エタノール製剤を得る工程」ともいう。)と、を含む。すなわち、上記実施形態に係る含水エタノール製剤は、上記製造方法によって得ることができる。
この場合、前記含水エタノール製剤を得る工程において、該含水エタノール製剤におけるリゾチーム加工品及び/又はその塩の濃度が固形分換算で好ましくは0.1質量%以上5質量%以下(より好ましくは0.2質量%以上、0.5質量%超、例えば0.6質量%以上であることがさらに好ましく、0.7質量%以上であることが最も好ましく、一方、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下)となるように、前記エタノール及び水と前記リゾチーム加工品及び/又はその塩とを混合してもよい。この場合、上記実施形態に係る含水エタノール製剤の欄で例示された他の成分をさらに混合することができる。
前記含水エタノール製剤を得る工程において、該含水エタノール製剤におけるエタノールの濃度が好ましくは40質量%以上90質量%以下(より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上、一方、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下)となるように、前記エタノール及び水と前記リゾチーム加工品及び/又はその塩とを混合してもよい。
<含水エタノール製剤の使用方法(菌の不活化方法)>
本実施形態に係る含水エタノール製剤を、菌を不活化する対象領域へ噴霧又は塗布したり、菌を不活化する対象物と混合したり、摂取させる等の方法(菌を不活化する方法)をとることができる。
<作用効果>
本実施形態に係る含水エタノール製剤は、リゾチーム加工品等を含有するため、菌の不活化に有用であり、かつ、該リゾチーム加工品等が水及びエタノールへの溶解性に優れているため、該リゾチーム加工品等が該含水エタノール製剤中で沈殿しにくく、透明性に優れているため、食器や器具を着色しないため、幅広く使用できる。
以下、試験例により本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
清水980gにリゾチーム(鶏卵卵白を原料とする卵白リゾチーム)20gを添加、混合し、該リゾチームの2質量%水溶液を調製した。その後、前記水溶液を中心品温80℃で10分間加熱した結果、該水溶液の波長660nmの光の透過率が70%に低下した(第1の加熱工程)。次いで、前記水溶液の波長660nmの光の透過率が70%未満の極小値(20%)になるまで加熱した後、さらに該水溶液の光の透過率が70%になるまで中心品温80℃で加熱し、第2の加熱工程で60分間の加熱処理を行った(第2の加熱工程)。次いで、前記水溶液の波長660nmの光の透過率が上昇し、70%超を維持した状態で該水溶液を中心品温80℃で20分間加熱した(第3の加熱工程)。これにより、リゾチーム加工品を2質量%含有する水溶液を得た。
なお、第3加熱工程後の水溶液の透過率は96%であり、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した水溶液をエタノールと質量比で1:1にて混合したときの透過率は97%であった。
得られたリゾチーム加工品の2質量%水溶液を0.45μmのメンブレンフィルターで濾過した後、得られたろ液98gをエタノール100g、グリセリン1g、及びグリセリン脂肪酸エステル1gと混合し、試験番号1の含水エタノール製剤を得た。
表1に示す条件、すなわち、リゾチーム水溶液のpH、リゾチーム濃度、加熱時間、加熱時の中心品温を変更した以外は試験番号1と同様の方法によって、試験番号2ないし25のリゾチーム加工品を調製した。なお、試験番号22の含水エタノール製剤は、リゾチーム加工品を0.05質量%含有する水溶液を凍結乾燥することにより、リゾチーム加工品の濃度を2質量%に濃縮した後、エタノール等と混合することにより調製した。
次いで、リゾチーム加工品の量、エタノールの量及び水の量を変更して、リゾチーム加工品の濃度及びエタノールの濃度を表1に示す値とした以外は試験番号1と同様の方法により、各リゾチーム加工品を含む、試験番号2ないし25の含水エタノール製剤(粘度:3mPa・s)を調製した。なお、表1の各含水エタノール製剤の総量から、リゾチーム加工品、エタノール、グリセリン、及びグリセリン脂肪酸エステルの各量を差し引いた値に基づいて、該含水エタノール製剤中の水の濃度を算出することができる。
Figure 2016034939
なお、各試験番号における含水エタノール製剤及び水溶液の波長660nmの光の透過率は、吸光光度計(型名「UV−2450」、株式会社島津製作所製)によって測定された。表1では、各試験番号における第1の加熱工程の前の水溶液の波長660nmの光の透過率(%)、第2の加熱工程中での波長660nmの光の透過率の極小値(%)、ならびに加熱終了時の水溶液の波長660nmの光の透過率(すなわち、第3の加熱工程後の水溶液の波長660nmの光の透過率)(%)を示している。なお、試験番号1ないし25では、第1の加熱工程、第2の加熱工程及び第3の加熱工程を連続して行っており、表1の加熱時間は第1、第2及び第3の加熱工程における加熱時間の合計である。
また、表1において、含水エタノール製剤の透明さは、以下の基準によって評価された。なお、試験番号23については、リゾチーム加工品が含水エタノール製剤中で沈殿したため、含水エタノール製剤についての評価は行わなかった。
○:目視にて、濁り又は沈殿物が確認されなかった。
×:目視にて、濁り又は沈殿物が確認された。
試験番号1ないし16は、加熱前の水溶液の波長660nmの光の透過率が70%超であり、pHが5.0以上7.0以下であり、かつ、リゾチーム及び/又はその塩の濃度が固形分換算で0.5質量%以上7質量%以下であるリゾチーム及び/又はその塩の水溶液を、第1の加熱工程によって、水溶液の波長660nmの光の透過率が70%になるまで該水溶液を加熱し、次いで、第2の加熱工程によって、前記水溶液が一旦白濁した後、白濁が次第に消失して透明性が高くなる(波長660nmの光の透過率が70%となる)まで該水溶液を加熱し、次いで、第3の加熱工程によって、該水溶液の透明性を維持しながら(前記水溶液の波長660nmの光の透過率が70%を超える状態を維持しながら)該水溶液を加熱することにより、リゾチーム加工品を得た。
また、試験番号1ないし16のリゾチーム加工品を得るための製造工程において、第3の加熱工程で得られた水溶液を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過したものとエタノールとを質量比で1:1の割合で混合したときに波長660nmの光の透過率が85%以上であった。
これに対して、試験番号17ないし25のリゾチーム加工品を得るための製造工程において、第3の加熱工程で得られた水溶液を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過したものとエタノールとを質量比で1:1の割合で混合したときに波長660nmの光の透過率が85%未満であった。
また、表1に示していないが、試験番号1ないし16の含水エタノール製剤はいずれも、25℃で1か月保存した後の波長660nmの光の透過率が85%以上であったことが確認された。
これに対して、試験番号17ないし25の含水エタノール製剤は、25℃で1か月保存した後の波長660nmの光の透過率が85%未満であった。
なお、試験番号17および18では、水溶液における前記光の透過率が70%未満(20%)に低下した後、再び70%以上には上昇しなかった。また、試験番号20では、水溶液における前記光の透過率が70%未満(15%)に低下した後、40%まで上昇したものの、70%以上まで上昇しなかった。また、試験番号21では、水溶液における前記光の透過率が70%未満(20%)に低下した後、50%まで上昇したものの、70%以上まで上昇しなかった。また、試験番号23では、水溶液における前記光の透過率が70%未満(10%)に低下した後、加熱を続けても該透過率は10%のままであった。また、試験番号24では、水溶液における前記光の透過率が70%未満(20%)に低下した後、52%まで上昇したものの、70%以上まで上昇しなかった。
[試験例2]
試験番号1で得られたリゾチーム加工品の水溶液及び試験番号1における加熱時間を変えて得られたリゾチーム加工品の水溶液について電気泳動を行った。
より具体的には、卵白リゾチームの2質量%水溶液を加熱温度80℃にて加熱時間0分、15分、30分、60分、90分、及び120分時点にて採取した該水溶液50μLにサンプルバッファー950μLを加え、100℃で10分間加熱した後、氷冷し、10μL(リゾチーム加工品として10μg)を電気泳動ゲルにチャージした。なお、サンプルバッファーとして2−メルカプトエタノールを加えていないもの(非還元)を使用した。電気泳動のゲルは、SDS−PAGEmini(テフコ株式会社製、ゲル濃度4−10%、ゲル厚1mm)を使用し、20mAの定電流で泳動した。染色液にはクマシーブルーR250を用いた。
図2は、電気泳動の結果を示す写真である。図2に示すように、加熱時間60分、90分、及び120分時点にて、約29KDaの蛋白質(二量体と推測)及び/又は約36.5KDaの蛋白質(三量体と推測)を示すバンドが明らかに検出された。また、図2に示すように、加熱時間が長いほど、これらの蛋白質を示すバンドが濃くなる(すなわち、生成する前記蛋白質の量が増加する)ことが確認された。このことから、同一の加熱温度においては、加熱時間が長いほど、該蛋白質の表面疎水性が増加し、エタノールへの溶解性が高い蛋白質が得られると推測される。
また、試験番号1ないし16の含水エタノール製剤は、グラム陽性菌及びグラム陰性菌の不活化効果を有していることが確認された。
[配合例1]
試験番号1で得られた含水エタノール製剤と下記の成分とを配合したジェル状の消毒剤(含水エタノール製剤)を調製し、ポンプ式容器に充填した。
含水エタノール製剤(試験番号1) 50質量%
エタノール 48質量%
グリセリン 1質量%
カルボキシビニルポリマー 1質量%
[配合例2]
下記の配合比にて、試験番号10で得られた含水エタノール製剤と下記の成分との混合物を不織布に含浸させて、ウエットティシュを調製した。
含水エタノール製剤(試験番号10) 99質量%
PEG−40水添ヒマシ油 1質量%
[配合例3]
下記の配合比にて、試験番号16で得られた含水エタノール製剤と下記の成分との混合物を調製した後、スプレー式容器に充填した。
含水エタノール製剤(試験番号16) 99質量%
グリセリン 0.5質量%
グリセリン脂肪酸エステル 0.5質量%
本発明の含水エタノール製剤は、例えば、手指、体躯、医療器具、学校,病院,福祉施設等の施設、工場、住居等の消毒を行う消毒剤、食品添加物、菌の除去剤として有用である。
本発明に係る実施の形態の説明は以上である。本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

Claims (17)

  1. リゾチーム及び/又はその塩、あるいはこれらの加工品を含有し、
    下記に規定される蛍光強度が5,500以上である、含水エタノール製剤。
    蛍光強度:前記含水エタノール製剤を、前記リゾチーム及び/又はその塩、あるいはこれらの加工品の濃度が固形分換算で0.05質量%になり、且つリン酸塩の濃度が0.2Mになるようにリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈して得られる希釈液5mLに8mMの1,8−アニリノナフタレンスルホン酸のメタノール溶液25μLを添加して得られる液を30分間室温で反応させた後の該液について、励起波長390nm(励起バンド幅10nm)及び蛍光波長470nm(蛍光バンド幅10nm)の条件にて測定された蛍光強度
  2. 請求項1において、
    波長660nmの光の透過率が85%以上である、含水エタノール製剤。
  3. 請求項1又は2において、
    前記含水エタノール製剤を25℃で1ヵ月保存した後の波長660nmの光の透過率が85%以上である、含水エタノール製剤。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、
    エタノールの濃度が40質量%以上90質量%以下である、含水エタノール製剤。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項において、
    前記リゾチーム及び/又はその塩、あるいはこれらの加工品の濃度が固形分換算で0.1質量%以上5質量%以下である、含水エタノール製剤。
  6. 請求項1ないし5のいずれかにおいて、
    エタノール以外の水溶性アルコールをさらに含有する、含水エタノール製剤。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項において、スプレー式容器に充填された、含水エタノール製剤。
  8. 請求項1ないし6のいずれか1項において、ポンプ式容器に充填された、含水エタノール製剤。
  9. 請求項1ないし6のいずれか1項において、不織布に含浸させた、含水エタノール製剤。
  10. 下記定義によって規定される蛍光強度が4,000以上である、リゾチーム加工品及び/又はその塩:
    蛍光強度:前記リゾチーム加工品及び/又はその塩の濃度が0.05質量%になり、且つリン酸塩の濃度が0.2Mになるようにリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈して得られる希釈液5mLに8mMの1,8−アニリノナフタレンスルホン酸のメタノール溶液25μLを添加して得られる液を30分間室温で反応させた後の該液について、励起波長390nm(励起バンド幅10nm)及び蛍光波長470nm(蛍光バンド幅10nm)の条件にて測定された蛍光強度
  11. 請求項10に記載のリゾチーム加工品及び/又はその塩を製造する方法であって、
    波長660nmの光の透過率が70%超であり、pHが5.0以上7.0以下であり、かつ、リゾチーム及び/又はその塩の濃度が固形分換算で0.5質量%以上7質量%以下であるリゾチーム及び/又はその塩の水溶液を、該水溶液の波長660nmの光の透過率が70%になるまで加熱する第1の加熱工程と、
    前記第1の加熱工程の後に、前記水溶液の波長660nmの光の透過率が70未満の極小値まで加熱した後、70%になるまで該水溶液を加熱する第2の加熱工程と、
    前記第2の加熱工程の後に、前記水溶液の波長660nmの光の透過率が70%を超える状態で該水溶液をさらに加熱する第3の加熱工程と、を含む、リゾチーム加工品及び/又はその塩の製造方法。
  12. 請求項11において、
    前記第3の加熱工程の加熱条件が、第3の加熱工程で得られた水溶液を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過したものとエタノールとを質量比で1:1の割合で混合したときに波長660nmの光の透過率が85%以上になるまで加熱する条件である、リゾチーム加工品及び/又はその塩の製造方法。
  13. 請求項11又は12において、
    前記第3の加熱工程の後に、前記水溶液を噴霧乾燥又は凍結乾燥させて、粉末状のリゾチーム加工品及び/又はその塩を得る工程をさらに含む、リゾチーム加工品及び/又はその塩の製造方法。
  14. 請求項11ないし13のいずれか1項に記載の製造方法で得られたリゾチーム加工品及び/又はその塩とエタノール及び水とを混合して、含水エタノール製剤を得る工程を含む、含水エタノール製剤の製造方法。
  15. 請求項10に記載のリゾチーム加工品及び/又はその塩とエタノール及び水とを混合して、含水エタノール製剤を得る工程を含む、含水エタノール製剤の製造方法。
  16. 請求項14又は15において、
    前記含水エタノール製剤を得る工程において、前記含水エタノール製剤における前記リゾチーム加工品及び/又はその塩の濃度が固形分換算で0.1質量%以上5質量%以下となるように、リゾチーム加工品とエタノール及び水とを混合する、含水エタノール製剤の製造方法。
  17. 請求項14ないし16のいずれか1項において、
    前記含水エタノール製剤を得る工程において、前記含水エタノール製剤におけるエタノールの濃度が40質量%以上90質量%以下となるように、前記リゾチーム加工品及び/又はその塩と前記エタノール及び水とを混合する、含水エタノール製剤の製造方法。
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