JP2016034255A - Ghファミリー12に属する超耐熱性エンドグルカナーゼ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】温泉高温土壌から直接抽出したDNAから得られた超耐熱性エンドグルカナーゼは、少なくとも100℃、pH5.5の条件下でp−ニトロフェニルーβーD−セロビオシド(PNPC)を基質とした加水分解活性を有し、特定のアミノ酸配列からなるポリペプチド、前記配列の内の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は前記配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド。
【選択図】なし
Description
[1] (A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(B)配列番号1で表されるアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも100℃、pH5.5の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−セロビオシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド、
(C)配列番号1で表されるアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも100℃、pH5.5の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−セロビオシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド、
からなるエンドグルカナーゼ触媒領域を有することを特徴とする、超耐熱性エンドグルカナーゼ。
[2] β−グルカン、リケナン、p−ニトロフェニル−β−D−セロビオシド、カルボキシメチルセルロース、又はリン酸膨潤アビセルを基質とし得る、前記[1]の超耐熱性エンドグルカナーゼ。
[3] (a)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列、
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも100℃、pH5.5の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−セロビオシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(c)配列番号1で表されるアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも100℃、pH5.5の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−セロビオシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(d)配列番号2で表される塩基配列と70%以上の配列同一性を有し、かつ少なくとも100℃、pH5.5の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−セロビオシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(e)配列番号2で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドの塩基配列であり、かつ少なくとも100℃、pH5.5の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−セロビオシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
からなるエンドグルカナーゼ触媒領域をコードする領域を有する、ポリヌクレオチド。
[4] 前記ポリペプチドが、β−グルカン、リケナン、p−ニトロフェニル−β−D−セロビオシド、カルボキシメチルセルロース、又はリン酸膨潤アビセルを基質とし得る、前記[3]のポリヌクレオチド。
[5] 前記[3]又は[4]のポリヌクレオチドが組込まれており、
宿主細胞において、グリコシド加水分解活性を有するポリペプチドを発現し得る、発現ベクター。
[6] 前記[5]の発現ベクターが導入されている、形質転換体。
[7] 真核微生物である、前記[6]の形質転換体。
[8] 前記[6]又は[7]の形質転換体内で、超耐熱性エンドグルカナーゼを生産することを含む、超耐熱性エンドグルカナーゼの製造方法。
[9] 前記[1]若しくは[2]の超耐熱性エンドグルカナーゼ、前記[3]若しくは[4]のポリヌクレオチドがコードする超耐熱性エンドグルカナーゼ、又は前記[8]の超耐熱性エンドグルカナーゼの製造方法によって製造された超耐熱性エンドグルカナーゼと、少なくとも1種のその他のグリコシド加水分解酵素とを含む、グリコシド加水分解酵素混合物。
[10] セルロースを含む材料を、前記[1]若しくは[2]の超耐熱性エンドグルカナーゼ、前記[3]若しくは[4]のポリヌクレオチドがコードする超耐熱性エンドグルカナーゼ、前記[6]しくは前記[7]に記載の形質転換体、前記[8]の超耐熱性エンドグルカナーゼの製造方法によって製造された超耐熱性エンドグルカナーゼ、又は前記[9]のグリコシド加水分解酵素混合物に接触させることにより、リグノセルロース分解物を生産することを含む、リグノセルロース分解物の製造方法。
また、本発明に係るポリヌクレオチド、当該ポリヌクレオチドが組込まれた発現ベクター、当該発現ベクターが導入されている形質転換体は、本発明に係る超耐熱性エンドグルカナーゼの製造に好適に用いられる。
糸状菌、細菌、アーキアを含む多くの微生物は難培養性であり、土壌など微生物環境に生息する菌の99%が未知の菌であるといわれている。特に、高温環境に生息する微生物の培養は極めて困難であり、現在の微生物培養技術では土壌中に生息する微生物の0.1%以下を単離・培養しているにすぎないと考えられている。この高温土壌微生物の難培養性が、耐熱性酵素の開発が進まない一因である。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(すなわち、AR19M−113−4)、
(B)配列番号1で表されるアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも100℃、pH5.5の条件下でPNPCを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド、
(C)配列番号1で表されるアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも100℃、pH5.5の条件下でPNPCを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド。
本発明及び本願明細書において、「ポリペプチドにおいてアミノ酸が置換する」とは、ポリペプチドを構成しているアミノ酸が別のアミノ酸に変わることを意味する。
本発明及び本願明細書において、「ポリペプチドにおいてアミノ酸が付加される」とは、ポリペプチド中に新たなアミノ酸が挿入されることを意味する。
本発明に係るポリヌクレオチドは、本発明に係る超耐熱性エンドグルカナーゼをコードする。当該超耐熱性エンドグルカナーゼは、当該ポリヌクレオチドが組込まれた発現ベクターを宿主に導入することにより、当該宿主の発現系を利用して生産することができる。
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも100℃、pH5.5の条件下でPNPCを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(c)配列番号1で表されるアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも100℃、pH5.5の条件下でPNPCを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(d)配列番号2で表される塩基配列と70%以上の配列同一性を有し、かつ少なくとも100℃、pH5.5の条件下でPNPCを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(e)配列番号2で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドの塩基配列であり、かつ少なくとも100℃、pH5.5の条件下でPNPCを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列。
本発明及び本願明細書において、「ポリヌクレオチドにおいて塩基が置換する」とは、ポリヌクレオチドを構成している塩基が別の塩基に変わることを意味する。
本発明及び本願明細書において、「ポリヌクレオチドにおいて塩基が付加される」とは、ポリヌクレオチド中に新たな塩基が挿入されることを意味する。
本発明に係る発現ベクターは、前記本発明に係るポリヌクレオチドが組込まれており、宿主細胞において、少なくとも100℃、pH5.5の条件下でPNPCを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドを発現し得る。すなわち、前記本発明に係るポリヌクレオチドが、前記本発明に係る超耐熱性エンドグルカナーゼを発現し得る状態で組込まれた発現ベクターである。具体的には、上流から、プロモーター配列を有するDNA、前記本発明に係るポリヌクレオチド、及びターミネーター配列を有するDNAからなる発現カセットが、発現ベクターに組込まれていることが必要である。なお、周知の遺伝子組み換え技術を用いることにより、ポリヌクレオチドを発現ベクターに組み込むことができる。ポリヌクレオチドの発現ベクターへの組み込みでは、市販の発現ベクター作製キットを用いてもよい。
本発明に係る形質転換体は、本発明に係る発現ベクターが導入されている。当該形質転換体中では、本発明に係る超耐熱性エンドグルカナーゼを発現させ得る。発現ベクターを導入する宿主としては、大腸菌等の原核細胞であってもよく、酵母、糸状菌、昆虫培養細胞、哺乳培養細胞、又は植物細胞等の真核細胞であってもよい。大腸菌の形質転換体を培養することにより、本発明に係る超耐熱性エンドグルカナーゼを、より簡便かつ大量に生産することができる。一方で、真核細胞内ではタンパク質に糖鎖修飾が施されるため、真核細胞の形質転換体を用いることにより、原核細胞の形質転換体を用いた場合よりも、より耐熱性に優れた超耐熱性エンドグルカナーゼを生産し得る。
本発明に係る超耐熱性エンドグルカナーゼの製造方法は、前記本発明に係る形質転換体内で、超耐熱性エンドグルカナーゼを生産する方法である。前記本発明に係るポリヌクレオチドが、発現の時期等の制御能を有していないプロモーターの下流に組込まれている発現ベクターを用いて製造された形質転換体内では、本発明に係る超耐熱性エンドグルカナーゼが恒常的に発現している。一方で、特定の化合物や温度条件等によって発現を誘導するいわゆる発現誘導型プロモーターを用いて製造された形質転換体に対しては、それぞれの発現誘導条件に適した誘導処理を行うことにより、当該形質転換体内に超耐熱性エンドグルカナーゼを発現させる。
前記本発明に係る超耐熱性エンドグルカナーゼ、又は前記本発明に係る超耐熱性エンドグルカナーゼの製造方法によって製造された超耐熱性エンドグルカナーゼと、少なくとも1種のその他のグリコシド加水分解酵素を含むグリコシド加水分解酵素混合物として使用することもできる。前記本発明に係る超耐熱性エンドグルカナーゼの製造方法によって製造された超耐熱性エンドグルカナーゼは、形質転換体内に含まれた状態のものであってもよく、形質転換体から抽出又は精製されたものであってもよい。本発明に係る超耐熱性エンドグルカナーゼを、その他のグリコシド加水分解酵素との混合物として多糖類の加水分解反応に用いることにより、難分解性であるリグノセルロースをより効率よく分解させることができる。
本発明に係るリグノセルロース分解物の製造方法は、本発明に係る超耐熱性エンドグルカナーゼによりセルロースやへミセルロースを加水分解して、オリゴ糖を産生することによってリグノセルロース分解物を得る方法である。具体的には、ヘミセルロース若しくはセルロースを含む材料を、本発明に係る超耐熱性エンドグルカナーゼ、本発明に係る形質転換体、本発明に係る超耐熱性エンドグルカナーゼの製造方法によって製造された超耐熱性エンドグルカナーゼ、又は本発明に係るグリコシド加水分解酵素混合物に接触させることにより、ヘミセルロース若しくはセルロース分解物を生産する。
<1> 温泉土壌からのDNA抽出と全ゲノムシーケンス(Whole Genome Sequence、WGS)
70〜99℃で活性を示す新規超耐熱性エンドグルカナーゼの遺伝子探索を目的として、中性〜弱アルカリ性温泉から土壌DNAを採取し、これらの土壌を構成する微生物叢メタゲノムDNAの塩基配列解読を行った。
中性〜弱アルカリ性温泉土壌サンプルとして、野外にて高温の温泉が噴き出している日本国内の3ヶ所、5地点(メタゲノムDNAサンプルN2、AR19、AR15、OJ1、及びH1)から、土壌、泥、バイオマットを含む温泉水を採取した。これらの温泉土壌サンプルは、採取時の温度58〜78℃、pH7.2〜8のレンジにあった。
温泉土壌サンプルAR19について、メタゲノムDNAの配列解読を行い、454シーケンサーにおいては平均リード長396bp、総リード数2,766,332個、総ゲノム解読量1,106,243,280bpを得、Hiseq2000シーケンサーにおいては平均リード長92.65bpのペアエンドで、総リード数894,238,096個、総ゲノム解読量83,112,168,755bpを得、合計して84.2Gbpの全ゲノムシーケンス(WGS)データセットを得た。
454シーケンサー及びHiseq2000シーケンサーで読みとられた塩基配列に対して、CLCbio社製のCLC Genomics Workbench(ver5.5.1)を用いてクオリティーフィルタリング及びDenovoアセンブリングを行った。クオリティーフィルタリング後には、454シーケンサーで得られたリードの総リード長は1,084,400,576bpとなり、Hiseq2000シーケンサーで得られた塩基配列データの総リード長は81,323,692,563bpとなった。アセンブリング後には、500bp以上の長さを持つコンティグの数は967,925個、総全長は419,787,603bpとなり、このうち最大コンティグ長は287,641bpであった。
UniProtデータベース(http://www.uniprot.org/)からEC番号が3.2.1.4(セルラーゼ)、3.2.1.21(β−グルコシダーゼ)、3.2.1.37(β−キシロシダーゼ) 、3.2.1.91(セルロース 1,4−β−セロビオシダーゼ)、3.2.1.8(エンド1,4−β−キシラナーゼ)の配列をダウンロードし(アクセス日:2011/12/9)、これらグリコシド加水分解酵素遺伝子のプロテオームローカルデータベースを構築した。アノテーションソフトウェアMetagene(Noguchi et al., DNA Research,2008,15(6))を使用して、前記<2>で得たコンティグ配列から、遺伝子領域(=オープンリーディングフレーム)を推定した(Metagene option:−m)。推定されたORFからグリコシド加水分解酵素遺伝子を抽出するために、BLASTP(blastall ver. 2.2.18)を使い、前記ローカルデータベースに参照した。BLASTPのoption条件は、「Filter query sequence=false」、「Expectation value(E)<1e−20」[以下、デフォルト値:Cost to open a gap=−1、Cost to extended gap=−1、X dropoff value for gapped alignment=0、Threshold for extending hits=0、Word size=default]とし、ヒットしたORF配列をグリコシド加水分解酵素遺伝子として収集した。収集された塩基配列は、セルラーゼ、エンドヘミセルラーゼ、脱分岐酵素等のグリコシド加水分解酵素を含んでいた。
前記<3>で収集された塩基配列について、タンパク質の機能領域配列データベースpfam HMMs(Pfam version 23.0 and HMMER v2.3;Finn et al.,Nucleic Acids Research Database,2010,Issue 38,p.D211-222)を基準に、機能分類を行った。具体的には、タンパク質モチーフ検索プログラムHMMER(Durbin et al.,‘The theory behind profile HMMs. Biological sequence analysis: probabilistic models of proteins and nucleic acids’, 1998,Cambridge University Press.;hmmpfam(Ver.2.3.2)、E−value cutoff<1e−5; Database=Pfam_fs(models that can be used to find fragments of the represented domains in a sequence.))を用いて、Pfam領域データベースとの相同性から、前記<3>で収集された各塩基配列についてグリコシド加水分解酵素(GH)ファミリーを決定した。なお、GH触媒ドメインの配列を70%以上カバーしているものを、各ファミリーに属する酵素遺伝子としてカウントした。
オープンリーディングフレームAR19M−113は、309アミノ酸残基からなるポリペプチド(配列番号1)をコードし、1位のアミノ酸残基がメチオニンから開始し、3’末端が終始コドンで終わる完全長配列(配列番号2)であった。シグナル配列予測ソフトウェアSignalP 4.1を使った解析によれば、シグナルペプチドは予想されなかった。また、モチーフの配列相同性から、オープンリーディングフレームAR19M−113は、113位のプロリン(P)から281位のトレオニン(T)までの169アミノ酸残基がGlycoside hydrolase family 12の触媒ドメインをコードしていると推測された。当該ORFと最も配列同一性が高かった既知アミノ酸配列は、好熱性アーキアのクレンアーキオータ門サーモフィラム・ペンデンス・ストレイン Hrk 5のGH12エンドグルカナーゼ(Genbank:YP_921079.1)であった。ClustalWアルゴリズムにより算出した両者のアミノ酸配列の相同性は、全長で35%、GH12触媒領域については41%であったため、当該ORFは新規な配列であると確認された。
配列番号5で表される塩基配列からなるフォワードプライマー(5’−CACCATGGGTAAAAGACTCTATGGA−3’:配列番号3で表される塩基配列の5’末端側に4塩基(CACC)付加したもの。5’側に付加したCACCは、ベクターに挿入するための配列である。)と配列番号4で表される塩基配列からなるリバースプライマー(5’−TCAAGCAAACATTTTTTCTGGTTC−3’)を用い、ゲノムDNA増幅キット(GenomiPhi V2 DNA Amplification Kit、GEヘルスケア社製)で増幅した温泉土壌DNAをテンプレートにして、PCRを行った。配列番号3で表される塩基配列は、配列番号2で表される塩基配列の1〜21位の塩基からなる部分配列と相同的な(同一の)塩基配列である。また、配列番号4で表される塩基配列は、配列番号2で表される塩基配列の907〜930位の塩基からなる部分配列と相補的な塩基配列である。増幅したPCR産物は、Champion pET Directional TOPO(登録商標) Expression Kits(ライフテクノロジーズ社製)のpET101/D−TOPOベクターに挿入し、One Shot TOP10株に形質転換した。コロニーPCRによりポジティブクローンを選抜し、100mg/Lアンピシリンを含むLB液体培地を用いて37℃、200rpmで17〜20時間培養した後、ミニプレップキット(Wizard(登録商標) plus SV Minipreps DNA Purification System、Promega社製)を用いてプラスミドの調製を行った。調製したプラスミドは、ライフテクノロジーズ社の3730 DNA Analyzerシーケンサーを用いて配列確認を行った。
シーケンス確認後、目的遺伝子をもつプラスミドを、ヒートショック法によりタンパク質発現用大腸菌へ導入した。形質転換用コンピテントセルは、Champion(登録商標) pET Directional TOPO(登録商標) Expression Kits(Invitrogen社製)に付属するBL21 Star(DE3)株を用いた。目的の遺伝子をもつ大腸菌を100mg/Lアンピシリンを含むLB培地に植菌し、OD600=0.2〜0.8程度まで培養した後、IPTG(Isopropyl−β−D(−)−thiogalactopyranoside)を添加し、さらに5〜20時間培養することによって、目的タンパク質の発現誘導を行った。培養後、遠心分離を行って大腸菌を回収し、培養液の1/10容量の50mM Tris−HCl Buffer(pH8.0)を加えて懸濁した。その後、超音波破砕装置astrason3000(MISONIX社製)を用いて、5分間破砕−5分間休止工程を7〜8回繰り返し、目的タンパク質を含む遺伝子組換え大腸菌の粗抽出物を得た。当該遺伝子組換え大腸菌粗抽出物をフィルター(孔径φ=0.45μm、ミリポア社製)で濾過し、得られた濾液を遺伝子組換え大腸菌破砕上清とした。
AR19M−113−4遺伝子がコードする酵素タンパク質(AR19M−113−4)のグリコシド加水分解活性を調べた。計測には、前記<7>で得られた精製酵素(約1mg/mL)を50mMのTris−HClバッファー(pH8.0)で0.02mg/mLに希釈した精製酵素溶液を用い、PNPC(Sigma社製)を基質として用いた。
AR19M−113−4遺伝子がコードする酵素タンパク質(AR19M−113−4)のグリコシド加水分解活性を調べた。計測には、前記<7>で得られた精製酵素(約1mg/mL)を50mMのTris−HClバッファー(pH8.0)で0.02mg/mLに希釈した精製酵素溶液を用い、PNPC(Sigma社製)を基質として用いた。
AR19M−113−4遺伝子がコードする酵素タンパク質(AR19M−113−4)に対して、様々なセルロース基質とヘミセルロース基質に対する加水分解活性を調べた。計測には、前記<8>又は<9>で用いた精製酵素溶液(0.02mg/mL)を用いた。また、基質として、PSA、アビセル粉末(微結晶性セルロース粉末、Merck社製)、CMC(Sigma社製)、キシラン(ブナ材由来、Sigma社製)、キシログルカン(Tamarind由来、Megazyme社製)、ラミナリン(Laminaria digitata由来、Sigma社製)、リケナン(MP Biomedicals社製)、β−グルカン(大麦由来)、PNPG(Sigma社製)、PNPX(Sigma社製)、PNPC(Sigma社製)、PNPL(Sigma社製)を用いた。
PSAはリン酸溶液でアビセル粉末(微結晶性セルロース粉末、Merck社製)を一旦溶解させた後に滅菌蒸留水を加えて析出させた後、pHが5以上になるまで洗浄することによって調製した。なお、以降の実験に用いたPSAは全て当該方法により調製した。
AR19M−113−4遺伝子がコードする酵素タンパク質(AR19M−113−4)のグリコシド加水分解活性の温度依存性を調べた。計測には、前記<7>で得られた精製酵素(約1mg/mL)を50mMのTris−HClバッファー(pH8.0)で0.02mg/mLに希釈した精製酵素溶液を用いた。また、基質としては、既知エンドグルカナーゼにおいて基質による温度特性の差異が報告されていたため、PNPCと、基質特異性解析において最も高い活性が認められた大麦由来β−グルカン(Sigma社製)とを用いた。
また、反応温度を95、100、105、110、115、120、125、又は130℃とした場合は、前記<9>と同様に行い、加水分解によって生成したp−ニトロフェノール量を求め、比活性(U/mg)を算出した。
また、反応温度を95、100,105、110、115、又は120℃とした場合は、pH4.5 の200mM 酢酸バッファーと基質として1質量% β−グルカン水溶液を用いた以外は、前記<9>と同様にして酵素反応を行い、前記<10>と同様にして加水分解によって生成した還元糖量を求め、比活性(U/mg)を算出した。
AR19M−113−4遺伝子がコードする酵素タンパク質(AR19M−113−4)のグリコシド加水分解活性のpH依存性を調べた。計測には、前記<7>で得られた精製酵素(約1mg/mL)を50mMのTris−HClバッファー(pH8.0)で0.02mg/mLに希釈した精製酵素溶液を用いた。また、基質としては、PNPCと大麦由来β−グルカン(Sigma社製)を用いた。
AR19M−113−4の熱安定性(耐熱性)を調べるため、1時間〜40時間プリインキュベーションを行い、各温度における酵素タンパク質のPNPC加水分解活性を計測した。
タンパク質の熱安定性に関わる指標として、熱変性温度又は熱崩壊温度Tm(melting temperature)がしばしば使われる。一定時間の予備加温(プリインキュベーション)により酵素活性が無処理区の50%に減少するプリインキュベーション温度はタンパク質の熱崩壊温度Tmにほぼ等しく、酵素活性を計測することにより求めることができる。この方法により、AR19M−113−4の熱崩壊温度Tmを求めた。
具体的には、基質無添加条件下での30分間の予備加熱により、PNPC加水分解活性が50%に減少する温度T50を指標として、AR19M−113−4の熱安定性を調べた。各データはロジスティック関数による近似を行い、近似曲線が相対活性値50%となる温度をT50とした。
Claims (10)
- (A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(B)配列番号1で表されるアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも100℃、pH5.5の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−セロビオシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド、
(C)配列番号1で表されるアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも100℃、pH5.5の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−セロビオシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド、
からなるエンドグルカナーゼ触媒領域を有することを特徴とする、超耐熱性エンドグルカナーゼ。 - 100℃、pH4.5の条件下でβ−グルカンに対する加水分解活性を有する、請求項1に記載の超耐熱性エンドグルカナーゼ。
- (a)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列、
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも100℃、pH5.5の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−セロビオシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(c)配列番号1で表されるアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも100℃、pH5.5の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−セロビオシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(d)配列番号2で表される塩基配列と70%以上の配列同一性を有し、かつ少なくとも100℃、pH5.5の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−セロビオシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(e)配列番号2で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドの塩基配列であり、かつ少なくとも100℃、pH5.5の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−セロビオシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
からなるエンドグルカナーゼ触媒領域をコードする領域を有する、ポリヌクレオチド。 - 前記ポリペプチドが、100℃、pH4.5の条件下でβ−グルカンに対する加水分解活性を有する、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
- 請求項3又は4に記載のポリヌクレオチドが組込まれており、
宿主細胞において、グリコシド加水分解活性を有するポリペプチドを発現し得る、発現ベクター。 - 請求項5に記載の発現ベクターが導入されている、形質転換体。
- 真核微生物である、請求項6に記載の形質転換体。
- 請求項6又は7に記載の形質転換体内で、超耐熱性エンドグルカナーゼを生産することを含む、超耐熱性エンドグルカナーゼの製造方法。
- 請求項1若しくは2に記載の超耐熱性エンドグルカナーゼ、請求項3若しくは4に記載のポリヌクレオチドがコードする超耐熱性エンドグルカナーゼ、又は請求項8に記載の超耐熱性エンドグルカナーゼの製造方法によって製造された超耐熱性エンドグルカナーゼと、少なくとも1種のその他のグリコシド加水分解酵素とを含む、グリコシド加水分解酵素混合物。
- セルロースを含む材料を、請求項1若しくは2に記載の超耐熱性エンドグルカナーゼ、請求項3若しくは4に記載のポリヌクレオチドがコードする超耐熱性エンドグルカナーゼ、請求項6若しくは7に記載の形質転換体、請求項8に記載の超耐熱性エンドグルカナーゼの製造方法によって製造された超耐熱性エンドグルカナーゼ、又は請求項9に記載のグリコシド加水分解酵素混合物に接触させることにより、リグノセルロース分解物を生産することを含む、リグノセルロース分解物の製造方法。
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