JP2016032342A - 同期電動機の速度・位相推定方法 - Google Patents

同期電動機の速度・位相推定方法 Download PDF

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賢司 小堀
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Abstract

【課題】直列多段方式のインバータで駆動される同期電動機において、セルユニットの通信遅れやセルユニット個体差によるゲート遅れがあっても、正確に同期電動機の速度・位相を推定する。
【解決手段】制御部1からセルユニットU1〜W3への送信信号をループバックさせ、この時の各セルユニットU1〜W3への送受信時間差分を計測する。各セルユニットU1〜W3の前記送受信時間差分の差に基づいてゲート信号の送信タイミングを補正する。この補正したゲート信号により、同期電動機の空転状態時に、全セルユニットU1〜W3の下アームスイッチング素子または上アームのスイッチング素子を同時にONして同期電動機に短絡パルス電流を発生させ、この短絡パルス電流の各計測時間の時間間隔ta,tbと位相間隔θa,θbに基づいて同期電動機の速度ω_estおよび位相を推定する。
【選択図】図4

Description

本発明は、直列多重方式の高圧インバータで駆動される同期電動機の速度・位相推定方法に関する。
直列多重方式の高圧インバータは、従来の2レベルや3レベルなどのインバータのように直流リンク部が一つではなく、入力トランスTinで絶縁された複数の直流リンク部を有する。セルユニットと呼ばれる単相インバータを多段に直列接続することにより、接続した段数分の直流電圧の合計を出力することができる。
特開2006−238541号公報 特開2012−213293号公報 特開2004−215466号公報 特開2002−101642号公報 特開2008−131712号公報 特開平5−292753号公報
しかしながら、 永久磁石を界磁源とする同期電動機は、空転中にモータ端子に速度誘起起電力が発生する。そのため、インバータなどで同期電動機を起動する場合は、インバータが零電圧を出力するとモータ端子の短絡状態と同じ状態となり、空転速度が高い場合には過大な電流が発生する。
これを抑制するためには、速度誘起起電力と同一振幅で同―位相の電圧を継続して出力する必要がある。しかし、位置センサや速度センサがないと、この電圧振幅や位相を設定することができない。
そこで、特許文献3では、インバータの出力状態を短時間だけ短絡状態に設定し、そのとき発生するパルス状の短絡電流(以下、短絡パルス電流と称する)が誘起起電力の位相とちょうど逆の位相に発生する原理を利用する。これを時間間隔を空けて実行し、その時間差と計測位相差より速度を推定している。
図6に、2レベルインバータの場合のモータ端子を短絡する電流経路を示す。図7は、発生した短絡パルス電流のベクトルの位相から、同期電動機の速度を検出する原理を示すチャートである。
例として、3回の短絡パルス電流で計測した位相と時間から同期電動機の速度を計算できる。
例えば、図6に示すように、下アーム全相のスイッチング素子x、y、zをゲートONし、短絡期間を3回発生させる。図7に示すように、この短絡期間により、短絡パルス電流が発生し、この短絡パルス電流のベクトルの位相を計測する。各短絡パルス電流の時間間隔Ta,Tbと位相間隔θa,θbを以下の(1),(2)式とする。
Figure 2016032342
Figure 2016032342
そして、これら時間間隔Ta,Tbの時間差ΔTと、位相間隔θa,θbの位相差Δθは以下の(3)式となる。
Figure 2016032342
そして、時間差ΔTと位相差Δθに基づいた以下の(4)式で速度ω_estを計算する。
Figure 2016032342
なお、速度ω_estを積分することにより、位相(回転子位置)を演算できる。
しかしながら、従来の方法を直列多段方式のインバータに適用すると、セルユニットU1〜W3の通信遅れや、セルユニットの個体差によるゲート出力遅れが存在するため、図8に示すようにサージ電圧による電流が発生し、短絡パルス電流の検出から正確な位相を推定できない。
以上示したようなことから、直列多段方式のインバータで駆動される同期電動機において、セルユニットの通信遅れやセルユニット個体差によるゲート遅れがあっても、正確に同期電動機の速度・位相を推定することが課題となる。
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、単相インバータから成るセルユニットを多段に直列接続した直列多段方式のインバータで駆動され、永久磁石を界磁源とする同期電動機の速度・位相推定方法であって、制御部からセルユニットへの送信信号をループバックさせ、この時の各セルユニットへの送信信号と受信信号の差を計測し、同期電動機の空転状態時に、各セルユニットの前記送信信号と受信信号の差の誤差に基づいて送信タイミングを補正したゲート信号により全セルユニットの下アームスイッチング素子または上アームのスイッチング素子を同時にONして同期電動機に短絡パルス電流を発生させ、この短絡パルス電流の各計測時間の時間間隔と位相間隔に基づいて同期電動機の速度および位相を推定することを特徴とする。
また、別の態様として、単相インバータから成るセルユニットを多段に直列接続した直列多段方式のインバータで駆動され、永久磁石を界磁源とする同期電動機の速度・位相推定方法であって、同期電動機の空転状態時に、ゲート信号により全セルユニットの下アームのスイッチング素子または上アームのスイッチング素子を同時にONして同期電動機に短絡パルス電流を発生させ、この短絡パルス電流の各計測時間の時間間隔と位相間隔に基づいて同期電動機の速度および位相を推定し、同期電動機の速度および位相の推定に用いる前記位相間隔は、各セルユニットの通信の遅れや、セルユニットの個体差によるゲート出力遅れである遅延分を含まないことを特徴とする。
本発明によれば、直列多段方式のインバータで駆動される同期電動機において、セルユニットの通信遅れやセルユニット個体差によるゲート遅れがあっても、正確に同期電動機の速度・位相を推定することが可能となる。
直列多段方式のインバータの一例を示す概略図。 セルユニットを示す回路図。 直列多段方式のインバータにおいて下アーム全相のスイッチング素子をゲートONした時の電流経路図。 計測時と補正後の送受信タイミングを示すタイムチャート。 直列多段方式のインバータにおける短絡パルス電流を示すタイムチャート。 2レベルインバータにおいて下アーム全相のスイッチング素子をゲートONした時の電流経路図。 短絡パルス電流の発生タイミングと位相から速度を推定する原理説明図。 直列多段方式のインバータにおける短絡パルス電流の波形図。
以下、本発明に係る同期電動機の速度・位相推定方法の実施形態1,2を図1〜図5に基づいて説明する。
[実施形態1]
図1は、 直列多段方式の高圧インバータの一例を示す構成図である。
図1では、例として、直列3段方式の高圧インバータの例を示している。各セルユニットをそれぞれU1,U2,U3,V1,V2,V3,W1,W2,W3,インバータの負荷をLoadとし、負荷Loadの端子電圧をVu,Vv,Vwとする。端子電圧VuはセルユニットU1,U2,U3の電圧の和になるため以下の(5)式になる。
Figure 2016032342
各セルユニットU1〜W3は光通信でメインコントロールユニット(制御部)1と接続されている。メインコントロールユニット1からゲート許可信号や、ゲート信号を各セルユニットU1〜W3に送信し、各セルユニットU1〜W3から故障状態等をメインコントロールユニット1に送信している。
図2は各セルユニットU1〜W3を示す概略回路図である。各セルユニットの直流リンク電圧をVdcとする。ここで、符号Uは上段と接続されるレグの上アームのスイッチング素子、符号Xは上段と接続されるレグの下アームのスイッチング素子、符号Vは下段と接続されるレグの上アームのスイッチング素子、Yは下段と接続されるレグの下アームのスイッチング素子とする。
図3に示すように直列多段方式のインバータの場合、全セルユニットU1〜W3の下アーム素子または上アーム素子を同時に全相ゲートONし、短絡モードを作り出す。図3では、下アーム素子を全相ゲートONしている状態を示している。これにより、従来技術で説明した2レベルインバータと同様に同期電動機の位相および速度を推定することが可能となる。
しかし、上述したように各セルユニットU1〜W3間に通信遅れが存在するため、予め送信信号をループバックさせ、この時の各セルユニットU1〜W3の送信時間と受信時間の差(以下、送受信時間差分と称する)を計測する。そして、各セルユニットU1〜W3の送受信時間差分の差に基づいてゲート信号の送信タイミングを補正する。この補正されたゲート信号を同期電動機の空転時に送信し、セルユニットの下アームまたは上アームのスイッチング素子を同時にONさせる。ゲート出力遅れはIGBTのターンオン時間よりも通信時間のほうが支配的であるため、サージ電圧の影響は受けにくい。そのため、図7の原理を使用できる。
例として、各セルユニットU1〜W3の送受信時間差分を予め計測しておき、セルユニットU1の送受信時間差分と他のセルユニットU2〜W3の送受信時間差分の差を演算する。次送信時に、セルユニットU1の送受信時間差分と他のセルユニットU2〜W3の送受信時間差分の差に基づいて他のセルユニットU2〜W3の送信タイミングを補正する方法を図4に示す。図4ではU相のみのセルユニットU1,U2,U3のみを示しているが、同様にセルユニットU1の送信時間と受信時間の差を基準として、V,W相のセルユニットV1,V2,V3,W1,W2,W3の送信タイミングを調整する。
そして、補正後の送信タイミングで発生させた短絡パルス電流により従来技術と同様に位相等を検出する。
以上示したように、本実施形態1によれば、 直列多段方式のインバータで駆動する同期電動機において、送信タイミングを補正することにより、セルユニットの通信遅れやセルユニットの個体差によるゲート出力遅れがあっても空転時における同期電動機の速度・位相の正確な推定が可能であり、瞬停等で運転が停止した際も、速やかな起動が可能となる。
また、外乱トルクを与えることなく、推定動作を完了させて始動が可能となる。
[実施形態2]
実施形態1における送信タイミングの補正により位相および速度を推定することが可能であるが、IGBTのターンオン時間の影響により送信タイミングの補正では位相および速度の推定に微小ながら誤差が生じてしまう。図5に示すように、微小な誤差が存在するため、ゲート出力遅れが存在し、サージ電圧による電流が発生してしまう。
本実施形態2では、通信遅れ分である遅延時間Ta’分の電流検出を位相の推定演算に使用せずに、検出電流の傾きから正確な位相および速度の推定を可能とする方法を示す。
例として、3回の短絡パルス電流で計測した位相と時間により速度ω_estを説明する。短絡電流ベクトル発生位相は遅延時間T’後から演算に使用することで、サージ電圧による電流の影響を受けずに同期電動機の速度・位相の推定が可能となる。
3回の短絡期間を発生させることにより、短絡パルス電流を発生させて、この電流ベクトルの位相θ0,θ1’,θ1,θ2’を計測する。各短絡パルス電流の時間間隔ta,tbと計測した位相間隔θa,θbを(6)式,(7)式とする。
Figure 2016032342
Figure 2016032342
そして、これらの時間間隔Ta,Tbの時間差ΔTと、位相間隔θa,θbの位相差Δθは以下の(8)式となる。
Figure 2016032342
そして、時間差ΔTと位相差Δθに基づいた以下の(9)式で速度ω_estを計算する。なお、速度ω_estを積分することで位相(回転子位置)を演算できる。
Figure 2016032342
以上示したように、本実施形態2によれば、直列多段方式であるため、セルユニットU1〜W3のスイッチングに通信等での時間的な遅れが生じるが、スイッチングの遅れ時間を考慮することで、サージ電圧を抑制し、推定誤差を減少させることが可能となる。
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
U1,U2,U3,V1,V2,V3,W1,W2,W3…セルユニット
1…メインコントロールユニット(制御部)
t0,t1,t2…計測時間
ta,tb…時間間隔
Δt…時間差
θ0,θ1,θ2…位相
θa,θb…位相間隔
Δθ…位相差

Claims (2)

  1. 単相インバータから成るセルユニットを多段に直列接続した直列多段方式のインバータで駆動され、永久磁石を界磁源とする同期電動機の速度・位相推定方法であって、
    制御部からセルユニットへの送信信号をループバックさせ、この時の各セルユニットの送受信時間差分を計測し、
    同期電動機の空転状態時に、各セルユニットの前記送受信時間差分の差に基づいて送信タイミングを補正したゲート信号により全セルユニットの下アームスイッチング素子または上アームのスイッチング素子を同時にONして同期電動機に短絡パルス電流を発生させ、この短絡パルス電流の各計測時間の時間間隔と位相間隔に基づいて同期電動機の速度および位相を推定することを特徴とする同期電動機の速度・位相の推定方法。
  2. 単相インバータから成るセルユニットを多段に直列接続した直列多段方式のインバータで駆動され、永久磁石を界磁源とする同期電動機の速度・位相推定方法であって、
    同期電動機の空転状態時に、ゲート信号により全セルユニットの下アームのスイッチング素子または上アームのスイッチング素子を同時にONして同期電動機に短絡パルス電流を発生させ、この短絡パルス電流の各計測時間の時間間隔と位相間隔に基づいて同期電動機の速度および位相を推定し、
    同期電動機の速度および位相の推定に用いる前記位相間隔は、各セルユニットの通信の遅れや、セルユニットの個体差によるゲート出力遅れである遅延分を含まないことを特徴とする同期電動機の速度・位相推定方法。
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