JP2016029533A - 水位予測に基づいた土砂災害予測システム - Google Patents
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Abstract
Description
このようなシステムとして、以下の特許文献1には、河川流域の複数の観測地点にカメラを配置し、得られた画像を通信回線を介して演算装置に送信し、演算装置において、送信された画像と予め取得された参照画像とを対比して、それぞれの観測地点での水位を表す水位データを得、得られた水位データを処理することにより、氾濫の可能性がある下流流域等の所定の監視地点の水位を予測することができるようにしたシステムが提案されている。
さらに、降水量及び土壌雨量指数に基づいて土砂災害の危険度を判定し、危険度が高まったときに土砂災害警戒情報を、市町村単位で発表している。
一方、土砂災害警戒情報は、上記したように、降水量及び土壌雨量指数に基づいて土砂災害の危険度が高まったと判定されたときに発表されるが、土壌雨量指数では地形を考慮しているが、1辺が5kmのメッシュでしか見ておらず、土砂災害防止法における区域指定に比べると大雑把で、「今、どこが危険か」という情報としては十分ではない。また、発表の単位が市町村単位であるため、該当地域の住民であっても自分のことと捉えにくく、避難の遅れにつながる恐れがある。なお、「土砂災害警戒判定メッシュ情報」も存在するが、1辺が5kmのメッシュであるため、やはり自分のこととは捉えにくい。
したがって、一般住民には、土砂災害の可能性が高い危険な場所及び時点を把握することが極めて困難となっており、本発明の目的は、上記したような従来例の問題点を解消することである。
土砂災害発生の危険区域の情報を記憶するデータベースであって、危険区域それぞれの上端部の位置及び土砂災害水位を危険区域に対応付けて記憶している危険区域データベースと、
指定された地点の水位予測する水位予測部と、
危険区域データベースに格納されている危険区域が土砂災害発生の可能性が高い警戒区域であるかどうかを判定する警戒区域判定部であって、
危険区域データベースから危険区域の上端部の位置及び土砂災害水位を取得し、
該上端部の位置を水位予測すべき地点として水位予測部に供給し、
水位予測部から上端部の位置の予測水位を受け取り、該予測水位を土砂災害水位と対比して、予測水位が土砂災害水位よりも高い場合には、当該危険区域を警戒区域であると判定する
よう構成されている警戒区域判定部と
を備えていることを特徴とする土砂災害予測システムを提供する。
また、本発明に係る土砂災害予測システムの水位予測部は、一実施形態では、
監視対象地域を分割することにより得られた複数の区画それぞれの標高を区画に対応付けて記憶している標高データベースと、
所定のインターバルで、これら区画それぞれの降雨量及び流入量に基づき、推定貯水高を演算する貯水高演算手段と、
所定のインターバルで、区画毎に標高と推定貯水高との和を仮想水面として演算し、各区画を取り巻く複数の区画の仮想水面の内の最も低い仮想水面を有する区画を、中心の区画から水が流出する方向として、水の流出方向を決定する流出方向決定手段と、
所定のインターバルで、各区画の貯水量及び降雨量に基づいて、各区画から該区画の流出方向への流出量を演算する流出量演算手段と、
決定された流出方向及び流出量、並びに水流経路の断面形状に基づいて、該経路の水位を演算する水位演算手段と
を備えている。
1)土砂災害の発生の危険のある区域(危険区域)は、既存の調査に基づいて入手することができる。
2)土砂災害の発生時には、該発生区域の上端部で河や沢の水位が上昇し、したがって、調査記録等に基づいて得られた危険区域の上端部の水位が上昇したかどうかを判断することによって、土砂災害の危険度を判断することができる。
3)危険区域の上端部では、普段は水の流れがないことも多く、また、計測機器を設置するのは難しい場合が多い。さらに、監視すべき対象区域が多い場合には水位計を設置することは現実的ではない。したがって、水位計を設置する代わりに、降雨状況等に基づいてコンピュータにより水位を予測する水位予測システムを使用することにより、水位上昇を予測することができる。
4)護岸や岩盤よりも高い位置の土砂は、これまで殆ど流水にさらされておらず流出しやすい状態にあり、したがって、水位が、「普段水の来ない高さ」まで達した時には土砂災害の危険が高まる。「普段水の来ない高さ」は、コンクリート等による護岸になっている高さ又は自然の岩盤が表れている高さであり、現地を確認することで得ることができる。
5)各危険区域の「普段水の来ない高さ」を調査して「土砂災害水位」として設定し、予測水位がその水位に達した場合には、その危険区域の土砂災害の危険度が高まっているとして、危険区域を警戒区域として警報を発生する。
危険区域情報DB50は、既存の調査によって予め入手された土砂災害の発生の危険のある区域すなわち「危険区域」を特定する情報、並びに、それぞれの危険区域の「上端部」の位置である「上端部位置」を表す情報及び該上端部の普段水の来ない高さすなわち「土砂災害水位」を特定する情報を記憶している。また、警戒区域判定部20によって、ある「危険区域」が「警戒区域」であると判定された場合には、その旨の情報も記憶する。
水位演算結果DB60は、水位予測部10によって予測された水位(予測水位)を格納する。警戒区域判定部20によって危険区域の上端部の水位の予測が指定された場合は、該上端部の予測水位を格納する。上端部の予測水位は、警戒区域判定部20によって参照される。
なお、危険区域DB50に格納されている全ての危険区域の土砂災害の危険性を予測する必要がない場合には、危険区域DB50に格納されている複数の危険区域をモニタ画面上に表示し、該画面上でオペレータが危険区域を選択すること等により、適宜設定しても良い。
演算部1は、流出量・方向演算部11、貯水量演算部12、水位演算部13、危険流域推定部14、及び植生登録部15で構成されている。
一方、ステップS2において、標高DB2を参照して、オルソ画像の作成と同様な原理で斜め写真の各画素に対応する現地座標の計算を行い、撮影位置・姿勢DB6に記憶された斜め写真の撮影位置及び姿勢に基づいて、斜め写真上の各ピクセル座標に現地の座標を対応付け、それを斜め写真対応付DB7に格納する。
なお、オルソ画像から植生領域を正確に把握することが肝要であるが、例えば、植生領域がメッシュ状の区画のサイズよりも小さい場合、及び、植生領域が区画のサイズよりも大きいが植生領域中に岩盤がまばらに存在して植生に粗密がある場合、植生領域中の植生の割合(%)がどの程度であるかを、オペレータが入力する。
ステップS4では、斜め写真対応付DBを参照して、代表点の座標が映り込んでいる斜め写真を特定し、該斜め写真上の代表点のRGB画素値を測定する。複数の斜め写真が該当する場合には、すべてを以降の処理の対象とする。そして、代表点のRGB画素値と植生マスタ8に記憶されている標準的なRGB画素値とを対比し、最も類似度の高い植生を代表点の植生であると判定する。
P=|(MR-R)|+|(MG-G)|+|MB-B)|
ただし、P:類似度
MR、MG、MB:植生マスタのRGB値
R、G、B:代表点のRGB値
このようにして、すべての代表点の植生を決定し、最も該当件数の多い植生を、その植生領域の植生として決定する。ただし、類似度の1位と2位との差が例えば20%未満の場合には、オペレータが、斜め写真を見て植生を判断して入力する。
代表点なしの小区分は、「芝地・牧草地」として設定する。
これにより、植生領域の「植生の状態」が植生マスタ登録された「針葉樹」、「広葉樹」、「芝地・牧草地」のいずれであるかが決定され、その後の水位推定処理において利用される。
Q=1/3.6・f・r・A
ただし、Q: 流出量(m3/秒)
f: 流出係数
r: 雨量(mm/時)
A: 流域面積(km2)
雨量rは、降雨DB3に格納された気象庁等からの実測データ及び予測データに基づいている。
流出係数fは、土地の特性を考慮した流れやすさを表す係数であり、例えば、
急峻な山地の場合、f=0.75〜0.9
起伏のある土地及び樹林の場合、f=0.5〜0.75
平坦な耕地の場合、f=0.45〜0.6
山地河川の場合、f=0.75〜0.85
である。
f=0.60(広葉樹林)×0.2+0.60(針葉樹林)×0.05
+0.80(岩盤)×0.15+0.50(芝地・牧草地)×0.6
=0.57
まず、マニングの公式により各区画の流速を計算し、各区画の通過に要する時間を区画サイズ(m)/流速により計算する。
v=1/n・R2/3・I1/2
ただし、v: 流速(m/秒)
n: 粗度係数
R: 径深(流積/潤辺)
I: 勾配
「粗度係数」は、水の流れやすさ、すなわち河床の状態及び地表の状態を表しているものであり、本発明の一実施例においては、広葉樹林の粗度係数を0.60、針葉樹林の粗度係数を0.80、岩盤の粗度係数を0.02、芝地・牧草地の粗度係数を0.20と設定し、監視地域毎に、これらの粗度係数をシミュレーション結果に基づいて修正する。そして、例えば、上記に例示したように、広葉樹林20%、針葉樹林5%、岩盤15%、芝地・牧草地60%である区画の場合、該区画の粗度係数nは、上記したそれぞれの粗度係数を用いると、以下のように計算される。
n=0.60(広葉樹林)×0.2+0.80(針葉樹林)×0.05
+0.02(岩盤)×0.15+0.20(芝地・牧草地)×0.6
=0.283
また、「流積」とは、断面積であり、「潤辺」とは、水路断面において水が周囲の壁や底と接する長さである。流速の計算に用いる勾配として、流出開始時点での仮想水面の勾配を用いる。
区画1から区画2への流出水量=60m3×8s/30s=16m3
区画1から区画3への流出水量=60m3×5s/30s=10m3
区画1から区画4への流出水量=60m3×10s/30s=20m3
区画1から区画5への流出水量=60m3×7s/30s=14m3
ただし、区画5への流出量は、30秒以内に流れた時間は7秒だけであるため、8秒ではなく7秒を用いて計算する。最後の流出先である区画5への流出量は、区画1からの流出量60m3から、区画2〜4への流出量を減算することによって算出してもよい。
例えば、図10に示すように、河川区画と通常区画とが存在する場合、標高+貯水高に応じて水の流出方向が決定され、河川区画に流出した後は、すべてが河川を流れるものとする。
各タンクモデルの時点t+Δtにおける貯留高(Si)は、以下の計算式から求める。
S1(t+Δt)=(1-β1Δt)・S1(t)−q1(t)・Δt+R
S2(t+Δt)=(1-β2Δt)・S2(t)−q2(t)・Δt+β1・S1(t)・Δt
S3(t+Δt)=(1-β3Δt)・S3(t)−q3(t)・Δt+β2・S2(t)・Δt
ただし、S1(t)、S2(t)、S3(t):時点tにおけるそれぞれのタンクの貯留高
β1、β2 、β3:各タンクの浸透流出孔の浸透係数
q1(t)、q2(t)、q3(t):時点tにおけるそれぞれのタンクの側面孔からの流出量
q1(t)=α1{S1(t)−L1}+α2{S1(t)−L2}
q2(t)=α3{S2(t)−L3}
q3(t)=α4{S3(t)−L4}
ただし、α1、α2、α3、α4: 各流出孔の流出係数
L1、L2、L3、L4: 各流出孔の高さ
このようにしてタンクモデルにより得られた流出量、すなわち土壌を通って隣接する区画に流れ出る流出量も、それぞれの区画の河川水位の推定に用いられる。
貯水量(各区画に留まっている水量)
=前回処理終了時の貯水量+時間当たりの貯水量の増加
時間当たりの貯水量の増加
=時間当たりの降雨量+時間当たりの流入量
−時間当たりの流出量−時間当たりの損失量
単位時間は、例えば30秒である。
貯水量の計算は、上記に限ることなく種々の既知の方法を採用することができる。
下底=5m
上底=5+2H/10+2H/10=5+2H/5
であるから、
流積=H2/5+5H
となる。したがって、10mの水路での水の体積は、
体積=流積×流水距離
=(H2/5+5H)×10
=2H2+50H
得られた水路の体積と貯水量とを一致させる方程式を解くことにより、水位(H)を求めることができる。
Claims (8)
- コンピュータを用いて土砂災害の可能性を予測する土砂災害予測システムであって、
土砂災害発生の危険区域の情報を記憶するデータベースであって、危険区域それぞれの上端部の位置及び土砂災害水位を危険区域に対応付けて記憶している危険区域データベースと、
指定された地点の水位予測する水位予測部と、
危険区域データベースに格納されている危険区域が土砂災害発生の可能性が高い警戒区域であるかどうかを判定する警戒区域判定部であって、
危険区域データベースから危険区域の上端部の位置及び土砂災害水位を取得し、
該上端部の位置を水位予測すべき地点として水位予測部に供給し、
水位予測部から上端部の位置の予測水位を受け取り、該予測水位を土砂災害水位と対比して、予測水位が土砂災害水位よりも高い場合には、当該危険区域を警戒区域であると判定する
よう構成されている警戒区域判定部と
を備えていることを特徴とする土砂災害予測システム。 - 請求項1記載の土砂災害予測システムにおいて、該システムはさらに、警戒区域判定部が危険区域を警戒区域であると判定した場合に、土砂災害が生じる可能性があることを示す土砂災害注意情報を発生する警戒情報発生部を備えていることを特徴とする土砂災害予測システム。
- 請求項2記載の土砂災害予測システムにおいて、
該システムはさらに、ネット上で公開された雨量、気象警報及びライブカメラからの画像を含んだ水位関連公開情報を所定のインターバルで取得して水位関連公開情報データベースに記憶し更新する手段を備え、
水位予測部は、水位関連公開情報データベースに記憶された水位関連公開情報を用いて、指定された地点の水位予測を実行するよう構成され、
警戒情報発生部はさらに、水位関連公開情報データベースに記憶された最新の水位関連公開情報の内の雨量及び気象情報を、該当する危険区域の地図上に表示するとともに、ライブカメラからの画像へのリンクを該地図上に表示するよう構成されている
ことを特徴とする土砂災害予測システム。 - 請求項1〜3いずれかに記載の土砂災害予測システムにおいて、警戒区域判定部は、危険区域が警戒区域であるかどうかの判定を、危険区域情報データベースに格納された全ての危険区域に対して自動的に実行するよう構成されていることを特徴とする土砂災害予測システム。
- 請求項1〜4いずれかに記載の土砂災害予測システムにおいて、水位予測部は、
監視対象地域を分割することにより得られた複数の区画それぞれの標高を区画に対応付けて記憶している標高データベースと、
所定のインターバルで、これら区画それぞれの降雨量及び流入量に基づき、推定貯水高を演算する貯水高演算手段と、
所定のインターバルで、区画毎に標高と推定貯水高との和を仮想水面として演算し、各区画を取り巻く複数の区画の仮想水面の内の最も低い仮想水面を有する区画を、中心の区画から水が流出する方向として、水の流出方向を決定する流出方向決定手段と、
所定のインターバルで、各区画の貯水量及び降雨量に基づいて、各区画から該区画の流出方向への流出量を演算する流出量演算手段と、
決定された流出方向及び流出量、並びに水流経路の断面形状に基づいて、該経路の水位を演算する水位演算手段と
を備えていることを特徴とする土砂災害予測システム。 - 請求項5記載の土砂災害予測システムにおいて、
水位予測部はさらに、河川が含まれていない区画それぞれを真上から撮像した真上写真及び斜め方向から撮像した斜め写真に基づき、河川が含まれていない区画の植生の状態を決定する手段であって、植生が含まれている区画について、真上写真に基づいて植生の座標を決定し、斜め写真のRGB画素値に基づいて植生の種類を決定する植生状態決定手段を備え、
流出量演算手段は、貯水量及び降雨量に加えて、植生状態決定手段により決定された植生の種類に基づいて、流出方向への流出量を演算するよう構成されている
ことを特徴とする土砂災害予測システム。 - 請求項6記載の土砂災害予測システムにおいて、植生状態決定手段は、植生の種類が針葉樹林、広葉樹林、芝地・牧草地のいずれかであるかを決定し、かつ、これら種類毎の植生及び岩盤が1区画内で占める割合を該区画の植生状態として決定するよう構成されており、植生状態決定手段により決定された植生状態が、流量演算手段の流量の計算に反映されることを特徴とする土砂災害予測システム。
- 請求項5〜7いずれかに記載の土砂災害予測システムにおいて、流出量演算手段はさらに、所定のインターバルで、流出方向演算手段により決定された流出方向の流出速度を演算し、各区画の貯水量及び降雨量に加えて、決定された流出速度に基づいて、流出方向の区画の所定のインターバルにおける等価的な流入量を演算するよう構成されていることを特徴とする土砂災害予測システム。
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