JP2016028992A - チタニア含有シリカガラスおよび光インプリントモールド - Google Patents

チタニア含有シリカガラスおよび光インプリントモールド Download PDF

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Abstract

【課題】寸法安定性に優れ、かつ所定の波長の紫外線の透過率が高く、光インプリントモールド用として好適するTiO2−SiO2ガラスを提供する。【解決手段】 TiO2の含有割合が1〜12質量%でFの含有割合が1000質量ppm以上であり、かつルチル型TiO2結晶を0.03〜1質量%の割合で含有するチタニア含有シリカガラスを提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、チタニア(以下、TiOと記す。)を含有するシリカガラス(以下、TiO−SiOガラスと記す。)と光インプリントモールドに係り、特に、光インプリント法のモールドとして使用されるTiO−SiOガラスと、それを用いた光インプリントモールドに関する。
近年、半導体デバイス、光導波路、微小光学素子(回折格子等)、バイオチップ、マイクロリアクタ等のデバイスにおいて、各種の基板の表面に1nm〜10μmの微細な凹凸パターンを形成する方法として、転写層として光硬化性樹脂を用いる光インプリント法が注目されている。
この方法は、基板の表面に形成された光硬化性樹脂の層(転写層)に、微細な凹凸の反転パターンを有するモールドを一定の押圧で押し付け、該モールドの上から紫外線を照射して光硬化性樹脂を硬化させた後、モールドを離型させることで、微細パターンを有する樹脂硬化層を形成する方法である。
このような光インプリント法に用いるモールド(以下、光インプリントモールドという。)には、光透過性、耐薬品性、光照射による温度上昇に対する寸法安定性等が求められる。モールド用の材料としては、光透過性、耐薬品性の点から石英ガラスが用いられる。しかし、石英ガラスは、室温付近における熱膨張係数(以下、CTEと示す。)が約500ppb/Kと高いため、光吸収に伴う温度上昇によって寸法が変化する。そこで、光インプリントモールド用の材料として、室温付近のCTEがより低いTiO−SiOガラスが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、特許文献1に提示されたTiO−SiOガラスは、CTEがほぼゼロとなる温度範囲(例えば、CTEが−5〜5ppb/Kとなる温度範囲。以下、ゼロ膨張温度範囲という。)が十分に広いものではなかった。また、光インプリントモールドとしての使用では、モールドを転写層から離型させる際に樹脂硬化層がモールドに付着しやすいため、モールドを洗浄する必要があるが、特許文献1に記載されたTiO−SiOガラスは、洗浄に対する耐久性が十分ではなかった。
特許文献2および特許文献3には、ゼロ膨張温度範囲を広くするために、フッ素を所定の割合で含有させたTiO−SiOガラスが開示されている。
しかしながら、フッ素を含有するTiO−SiOガラスでは、フッ素の含有割合が高くなると、ガラス中にTi3+が生じやすい。そして、ガラス中のTi3+は、光インプリント法で光硬化性樹脂の硬化に用いられる紫外線(例えば、水銀灯のI線(波長365nm))を吸収するため、例えば、特許文献4に示されるように、フッ素を含有するTiO−SiOガラスでは、波長365nmの紫外線の透過率が低くなる。そのため、光インプリントモールド用の材料として使用した場合は、十分な生産性が得られないという問題があった。
特開2006−306674号公報 特開2008−303100号公報 特開2005−104820号公報 特表PCT/JP2011/065603
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、ゼロ膨張温度範囲が広く寸法安定性に優れ、かつ紫外線の透過率が高く、光インプリントモールドとしての使用で高い生産性を得ることができるTiO−SiOガラスを提供することを目的とする。また、光透過性、耐薬品性、温度上昇に対する寸法安定性等に優れた光インプリントモールドを提供することを目的とする。
本発明のTiO−SiOガラスは、フッ素がドープされたTiO含有シリカガラスであり、TiOの含有割合が1〜12質量%であり、フッ素の含有割合が1000質量ppm以上であり、かつルチル型チタニア結晶を0.03〜1質量%の割合で含有することを特徴とする。
本発明のTiO−SiOガラスにおいて、Ti3+の含有割合は50質量ppm以下であることが好ましい。また、CTEが0ppb/Kとなる温度におけるCTEの傾きが1.0ppb/K以下であることが好ましい。
本発明の光インプリントモールドは、前記TiO−SiOガラスから構成されることを特徴とする。
本明細書において、「含有割合」を「濃度」ともいう。そして、TiOの含有割合を「TiO濃度」、フッ素の含有割合を「F濃度」とも示す。また、ルチル型TiO結晶の含有割合を「ルチル型TiO結晶濃度」とも示す。
本発明によれば、フッ素がドープされたTiO−SiOガラス(以下、FドープTiO−SiOガラスという。)において、ルチル型TiO結晶が0.03〜1質量%の濃度で含まれており、ガラス中のTi3+の濃度が低く抑えられているため、Ti3+に起因する紫外線(例えば、波長365nmのI線)の透過率の減少が抑制される。したがって、ゼロ膨張温度範囲が室温付近で十分に広く、かつ紫外線の内部透過率が高く、光インプリントモールドの構成材料として好適するTiO−SiOガラスが得られる。
また、本発明のTiO−SiOガラスは、化学的耐久性に優れており、光インプリントモールドとして用いた場合、洗浄が容易である、セルフクリーニング性に優れている、などの利点を有する。すなわち、付着した樹脂をTiOの光触媒能により分解することができるため、洗浄工程で樹脂を簡単に剥離(洗浄)できるうえに、セルフクリーニング性が高く、洗浄の不要化が期待できる。
本発明の実施例および比較例において、ルチル型TiO結晶の濃度と、Ti3+濃度およびCTEが0ppb/Kとなる温度におけるCTEの傾きとの関係を表すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[FドープTiO−SiOガラス]
本発明の実施形態は、FドープTiO−SiOガラスであり、TiO濃度が1〜12質量%であり、F濃度が1000ppm以上である。また、ルチル型TiO結晶を含有し、その濃度が0.03〜1質量%となっている。
本発明のFドープTiO−SiOガラスにおいては、ガラス中のTi3+濃度が低く(具体的には、50質量ppm以下)抑えられる結果、Ti3+に起因する紫外線(例えば、波長365nmのI線)の透過率の減少が抑制されるので、光インプリント法で樹脂の硬化に用いられる紫外線の透過率が高い。また、CTEが0ppb/Kとなる温度(クロスオーバー温度:COTまたはTzcと示す。)が室温付近であり、かつCOTにおけるCTEの傾き(以下、CTEslopeという。)の値が極めて小さい(例えば、1.0ppb/K以下)ガラスとなる。なお、CTEが0ppb/Kとなることを、ゼロ膨張ともいう。
以下、本発明のFドープTiO−SiOガラスにおける、CTEslope、TiO濃度、F濃度、およびルチル型TiO結晶濃度等について、さらに説明する。
<CTEslope
光インプリントモールド用のTiO−SiOガラスにおいて、ゼロ膨張温度範囲を広くし寸法安定性を高める観点から、CTEslopeの値はできるだけ小さいことが好ましい。具体的にCTEslopeは、1.0ppb/K以下であることが好ましい。そして、CTEslopeを小さくするには、F濃度を高くし、仮想温度(Tf)は低くすることが好ましい。
<TiO濃度>
TiO濃度が1質量%未満であると、室温付近でゼロ膨張にならないおそれがある。反対に、TiO濃度が12質量%を超えると、CTEが負になるおそれがあり好ましくない。TiO濃度が1〜12質量%の場合に、COTが室温付近となり、かつ極めて小さいCTEslopeの値(例えば、1.0ppb/K以下)を達成することができる。
TiO濃度は、3〜10質量%がより好ましく、5〜8質量%が特に好ましい。
<F濃度>
F濃度が高いほど、Tfを低く調整することが可能となり、CTEslopeの値を小さくすることができる。また、F濃度が高いほど、後述するアニール工程において、より容易にルチル型TiO結晶を析出させることができる。これらの観点から、F濃度は1000ppm以上とする。3000ppm以上がより好ましく、7000ppm以上が特に好ましい。
なお、上限は特にないが、F濃度が高いほど、ガラスへのフッ素ドープ(導入)に時間がかかるので、F濃度は製造上無理のない値とすることが好ましい。具体的には、F濃度は50000質量ppm以下が好ましく、30000質量ppm以下がより好ましく、10000質量ppm以下であることが特に好ましい。
<仮想温度Tf>
TiO−SiOガラスにおいては、Tfが低いほどCTEslopeを小さくすることができる。Tfは1000℃以下が好ましく、950℃以下がより好ましい。しかし、Tfを低い温度に調整するには長時間の熱処理が必要となるので、ガラス製造の作業効率等の点で、Tfが低すぎない値とすることが好ましい。これらの観点から、Tfは750℃以上が好ましく、800℃以上がより好ましい。
(Ti3+濃度)
TiO−SiOガラス中のTi3+は、光インプリント法で樹脂の硬化に用いられる紫外線を吸収し透過率を低下させるため、ガラス中のTi3+濃度はできるだけ低くすることが好ましい。具体的には、Ti3+濃度は50質量ppm以下であることが好ましく、20質量ppm以下であることがより好ましく、10質量ppm以下であることが特に好ましい。Ti3+濃度が50質量ppm以下のガラスでは、紫外線(例えば、波長365nmのI線)の透過率の低下が抑制されるため、光インプリントモールドとしての使用において、樹脂層への微細パターンの形成を効率的に行うことができる。
なお、本発明のFドープTiO−SiOガラスにおいて、厚さ1mm当たりの波長365nmの光の透過率(以下、T365)は95%以上であることが好ましい。
<ルチル型TiO結晶の濃度>
本発明者らは、FドープTiO−SiOガラスにおいて、ルチル型TiO結晶を所定の濃度で析出させることで、ガラス中のTi3+濃度を低減できることを見出した。ガラス中のTi3+濃度低減の観点から、ルチル型TiO結晶の濃度は、0.03質量%以上であり、0.05質量%以上が好ましい
また一方で、ルチル型TiO結晶の含有量が多いと、この結晶粒子自体が光インプリント法で光硬化性樹脂の硬化に用いられる紫外線を吸収することにより、透過率の低下が懸念される。そのため、ルチル型TiO結晶の濃度は1.0質量%以下が好ましい。
さらに、ガラス中に含有されるルチル型TiO結晶の粒子径は、0.5nm〜500nmの範囲が好ましい。ルチル型TiO結晶の粒子径が500nmを超えると、結晶粒子による紫外線の吸収端部が長波長側にシフトするため、I線およびG線の領域における紫外線の透過率の低下がより懸念される。ルチル型TiO結晶の粒子径は、200nm以下がより好ましく、50nm以下が特に好ましい。
TiO−SiOガラス中にルチル型TiO結晶を析出させるには、製造の際の熱処理条件(温度と時間)、ガラス中のF濃度、ルチル型以外のTiO結晶の量など、多くの要素を制御することが必要である。
ルチル型TiO結晶の析出は、TiO−SiOガラスの製造の際の徐冷(アニール)工程での熱履歴と大きく関係する。アニール工程における高温での保持時間が長いほど、ルチル型TiO結晶の析出が進行し、析出量が多くなる。また、このような傾向は、ガラス中のF濃度が高いほど促進される。これは、フッ素が含有されることでガラスの粘性が下がり、SiOとTiOとの分相が起きやすくなり、TiOリッチ相が生成する結果、ルチル型TiO結晶が析出しやすくなるためであると考えられる。
また、ルチル型TiO結晶の析出は、アニール工程前にガラス中に残存するルチル型以外のTiO結晶の量にも影響される。残存するルチル型以外のTiO結晶の量が多いほど、アニール工程で、その結晶を核としてルチル型TiO結晶が析出しやすくなると考えられる。
ルチル型TiO結晶を析出させるために好ましい熱処理条件としては、具体的に、アニール工程において、950℃以上の高温での熱処理時間が10時間以上であることが挙げられる。950℃以上の高温での熱処理時間は20時間以上であることがより好ましく、50時間以上であることが特に好ましい。
[FドープTiO−SiOガラスの製造方法]
このように、TiO濃度が1〜12質量%、F濃度が1000ppm以上であり、かつルチル型TiO結晶の濃度が0.05〜1質量%である本発明のFドープTiO−SiOガラスを得るには、例えば、以下に示す(a)〜(e)の各工程を有する製造方法を採ることができる。
(a)火炎加水分解およびガラス微粒子(スート)堆積工程
SiO前駆体とTiO前駆体を含むガラス形成原料を酸水素火炎に供給し、この酸水素火炎中でSiO前駆体とTiO前駆体を加水分解(火炎加水分解)させて、TiO−SiOガラス微粒子(スート)を生成する。そして、得られるガラス微粒子を基材に堆積、成長させて、多孔質ガラス体を形成する。
火炎加水分解においては、ガラス形成原料であるSiO前駆体とTiO前駆体をいずれも蒸気形態に転化(ガス化)し、これらを混合して酸水素火炎に供給し、この火炎中で加水分解してTiO−SiOガラス微粒子を形成する。
次いで、所定の速度で回転する種棒を基材として用い、この基材に、前記火炎加水分解で生成するTiO−SiOガラス微粒子を堆積、成長させて、多孔質ガラス体を形成する。
ガラス形成原料は、ガス化が可能な原料であれば特に限定されない。SiO前駆体としては、SiCl、SiHCl、SiHCl、SiHCl等の塩化物、SiF、SiHF、SiH等のフッ化物、SiBr、SiHBr等の臭化物、SiI等のヨウ化物のようなハロゲン化ケイ素化合物、または式:RSi(OR)4−n(ここで、Rは炭素数1〜4のアルキル基、nは0〜3の整数である。)で表されるアルコキシシランが挙げられる。また、TiO前駆体としては、TiCl、TiBr等のハロゲン化チタン化合物、または式:RTi(OR)4−n(ここで、Rは炭素数1〜4のアルキル基、nは0〜3の整数である。)で示されるアルコキシチタンが挙げられる。SiO前駆体およびTiO前駆体として、シリコンチタンダブルアルコキシドのような、SiとTiの化合物を使用することもできる。
基材としては、石英ガラス製の種棒を使用することができる。また、棒状に限らず板状の基材を使用してもよい。
(a´)多孔質ガラス体の仮焼工程
(a)工程で得られた多孔質ガラス体は、比較的脆く、そのままではハンドリングしにくいため、仮焼することが好ましい。仮焼することで、多孔質ガラス体の嵩密度を増大させることができる。仮焼は、大気雰囲気下、1100〜1350℃の温度で3〜7時間焼成することにより行う。雰囲気は、窒素やアルゴン等の不活性雰囲気でもよい。
多孔質ガラス体を構成するTiO−SiOガラス微粒子の表面には、ケイ素原子に結合した水酸基(Si−OH)が存在していると考えられる。嵩密度が大きいほど、粒子の比表面積が小さくなり、相対的に多孔質ガラス体に存在するSi−OHの量が少なくなる。すなわち、多孔質ガラス体の嵩密度が大きいほど、該多孔質ガラス体に存在するSi−OHの量が少なくなり、後述するFドープ処理の際の反応で生成するHFの量が少なくなると考えられる。そのため、後述する緻密化処理工程でのガラス体からのフッ素の脱離を抑制できる。
仮焼温度は、1100℃以上が好ましく、1150℃以上がより好ましい。仮焼温度が低すぎると、粒子の焼結が進行せず、嵩密度が増大しないおそれがある。仮焼温度は、1350℃以下が好ましく、1300℃以下がより好ましい。仮焼温度が高すぎると、粒子の焼結が進行しすぎて閉気孔が存在してしまうため、後述するFドープ処理工程で多孔質ガラス体にフッ素を導入した際に、F濃度にバラツキが生じる、Si−OHの量が極端に少なくなり、フッ素単体(F)との反応が遅くなる、透明ガラス化工程で透明ガラス化した後に泡が残ってしまう、などの問題が生ずるおそれがある。
(b)Fドープ処理工程(フッ素化工程)
(a)工程で得られた多孔質TiO−SiOガラス体にFドープ処理を行い、フッ素を含有する多孔質TiO−SiOガラス体を得る。Fドープ処理は、多孔質ガラス体を、フッ素含有雰囲気で満たされた反応槽内に所定温度で所定時間保持して行う。
フッ素含有雰囲気としては、フッ素(F)ガス雰囲気および含フッ素ガス(例えば、SiF、SF、CHF、CF、C、C等)雰囲気が挙げられる。より低温で効率よくフッ素をドープする観点から、フッ素(F)ガス雰囲気を用いることが好ましい。以下、フッ素ガスを用いた場合のフッ素ドープ処理について、説明する。
反応に使用されるフッ素(F)ガスは、反応の制御のしやすさおよび経済的な観点から、フッ素(F)単体を不活性ガスで希釈した混合ガス(以下、フッ素混合ガスとも示す。)として使用することが好ましく、特に、フッ素単体を窒素ガスで希釈した混合ガスとして使用することが好ましい。使用される不活性ガスは、ガス中に水分が含まれると、混合ガスとして使用する際にフッ素単体と反応してフッ化水素を生成するおそれがあり、注意が必要である。その観点から、不活性ガスの露点は−10℃以下であることが好ましく、−40℃以下がより好ましく、−60℃以下が特に好ましい。
なお、フッ素単体を窒素ガスで希釈した混合ガスとして使用する場合、反応の制御のしやすさおよび経済的な観点から、フッ素単体の濃度は100モルppm〜50モル%であることが好ましく、1000モルppm〜20モル%であることがより好ましい。フッ素単体の濃度が100モルppm未満であると、多孔質ガラス体にフッ素を導入する速度が遅くなり、処理時間が著しく長くなるおそれがある。一方、50モル%を超えると、多孔質ガラス体にフッ素を導入する速度が速くなりすぎて、反応の制御が困難になるおそれがある。
反応槽としては、内壁および内部設備をフッ素単体に対し耐食性を有する材料で構成したものが好ましい。そして、前記耐食性材料としては、ガス状の不純物を発生しない、またはガス状の物質を発生させても不純物とならない材料が好ましい。TiO−SiOガラスに不純物が混入すると、光学特性(ヘイズ等)や物理特性(CTE等)が悪化するおそれがある。
反応槽の内壁および内部設備として好適な材料としては、金属類(ニッケル、銅、鉄等)、合金類(ステンレス(SUS316)、モネル、インコネル、ハステロイ等)、ガラス類(合成石英ガラス、ソーダライムガラス等)、ハロゲン化金属(フッ化カルシウム、フッ化ニッケル等)、ペルハロゲン化樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(以下、PFAと記す。)、ポリクロロトリフルオロエチレン等)等が挙げられる。また、フッ素単体に対する耐食性を向上させるために、反応槽の内壁および内部設備の表面に、フッ化物または酸化物の不動態化被覆層を形成するのが好ましい。フッ化物の不動態化被覆層を形成するのがより好ましい。フッ素単体含有雰囲気に該表面を曝露させることで、該表面を不動態化させることができる。
(b)工程において、多孔質ガラス体をフッ素混合ガスで満たされた反応槽内に保持する際に、反応場で生成したHFを連続的もしくは断続的に除去することが好ましい。HFを除去する方法としては、固体金属フッ素物を反応槽内に保持することで、HFを固体金属フッ化物に吸着させる方法や、断続的または連続的にフッ素混合ガスもしくは不活性ガスを流通させる方法が例示できる。使用する金属フッ素化物は特に限定されないが、アルカリ金属のフッ化物、アルカリ土類金属のフッ化物、およびこれらの混合物からなる群より選ばれるものが好ましく、その中でもフッ化ナトリウムが特に好ましい。
(b)工程において、反応槽内の温度の制限は特にない。ただし、固体金属フッ化物によりHFを吸着させる必要がある場合は、反応槽内の温度が低いほど吸着能が向上する。また、透明ガラス化温度以上の温度とした場合、多孔質TiO−SiOガラス体の緻密化が進行し、多孔質TiO−SiOガラス体内部にまでフッ素を含有させることが困難になるため、好ましくない。
これらの点から、反応槽内の温度は200℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがさらに好ましい。一方で、温度が高いほど、多孔質ガラス体へのフッ素の拡散が進行しやすく、フッ素の導入反応時間が短縮されるので好ましい。この観点から、反応槽内の温度は−50℃以上が好ましく、0℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。
(b)工程において、反応槽内の圧力の制限は特にない。ただし、安全性の観点から、反応槽内の圧力は低いほど好ましく、ゲージ圧で1MPa以下が好ましく、0.6MPa以下がより好ましく、0.3MPa以下が特に好ましい。
一方で、反応槽内が減圧になると、反応槽内に外気が吸引されるおそれがある。外気中に含まれる水分や揮発性有機物等はフッ素ガス(フッ素単体)と反応してHFを生成するため、外気の吸引は避ける方が好ましい。この観点から、反応槽内の圧力はゲージ圧で0MPa以上が好ましい。
さらに、多孔質ガラス体に均一に短時間でフッ素をドープできることから、多孔質ガラス体が配置された反応槽内を減圧下において脱気処理をした後、フッ素ガスまたは前記フッ素混合ガスを所定の圧力になるまで導入することが好ましい。脱気の圧力は、好ましくは13000Pa以下、特に好ましくは1300Pa以下である。また、脱気処理とフッ素導入からなる処理を複数回繰り返してもよい。
(b)工程の反応槽内において、多孔質ガラス体をフッ素単体に接触させる時間は、1分〜1週間が好ましく、10分〜2日間がより好ましく、1時間〜6時間が特に好ましい。多孔質ガラス体とフッ素単体との接触を複数回に亘って行う場合は、その合計の時間がこの範囲内であることが好ましい。
なお、多孔質ガラス体が配置された反応槽内を減圧下において脱気処理を行うことにより、該反応槽内に存在する水分や揮発性有機物を除去することができる。これにより、フッ素ガスとこれら水分や揮発性有機物が反応してHFが生成することを防止できる。その観点から、脱気処理を効率的に行うために加熱することが好ましい。加熱温度は50℃〜300℃が好ましく、50℃〜200℃がより好ましく、50℃〜150℃が特に好ましい。
このように構成される(b)工程においては、反応槽内のフッ素単体の濃度、反応槽内に導入するフッ素単体の総量、反応槽内の温度および圧力、多孔質ガラス体をフッ素単体に接触させる時間等をコントロールすることで、多孔質ガラス体へのFドープ量を調整することができる。
(c)緻密化処理工程
(b)工程で得られたFドープ多孔質ガラス体を、減圧下またはヘリウム雰囲気で緻密化温度まで昇温し、FドープTiO−SiOガラス緻密体を得る。
緻密化温度は、1250〜1550℃が好ましく、1300℃以上1500℃以下が特に好ましい。なお、本明細書において「緻密化温度」とは、光学顕微鏡で空隙が確認できなくなるまで多孔質ガラス体を緻密化できる温度をいう。
また、(b)Fドープ処理工程と(c)緻密化処理工程との間において、Fドープ多孔質ガラス体を、大気圧未満の圧力下において、不活性雰囲気下で所定温度で所定時間保持する前処理を行うことができる、これにより、Fドープ多孔質ガラス体中に存在する未反応のフッ素ガスやHFを効率よく除去することができ、(c)緻密化処理工程におけるフッ素の脱離を抑制することができる。前処理温度は、(b)工程でフッ素をドープした際の処理温度以上であり、かつ400℃未満であることが好ましい。また、前処理時間は30分以上1日以下であることが好ましい。
(d)透明ガラス化工程
(c)工程で得られたFドープTiO−SiOガラス緻密体を、透明ガラス化温度まで昇温し、Fドープ透明ガラス体を得る。透明ガラス化温度は、1350〜1800℃が好ましく、1500℃以上がより好ましく、1550℃以上がさらに好ましい。そして、1600℃以上1700℃以下が最も好ましい。なお、Fの含有量が多い場合は、ガラスの粘性が低下し、透明ガラス化温度が低下するため、透明ガラス化温度は、1250〜1550℃が好ましく、特に1300〜1500℃が好ましい。本明細書において「透明ガラス化温度」とは、光学顕微鏡で結晶が確認できなくなり、透明なガラスが得られる温度をいう。
透明ガラス化の雰囲気としては、ヘリウムやアルゴン等の不活性ガス100%の雰囲気、または前記不活性ガスを主成分とする雰囲気であることが好ましい。圧力については、減圧または常圧であればよい。減圧の場合は1×10Pa以下が好ましい。
(d´)成形工程
必要であれば、(d)工程で得られたFドープ透明ガラス体を、軟化点以上の温度に加熱して所望の形状に成形し、FドープTiO−SiO成形ガラス体を得る。成形温度としては、1500〜1800℃が好ましい。1500℃未満では、FドープTiO−SiO透明ガラスの粘度が高いため、実質的に自重変形が行われない。成形温度が1800℃超では、SiOの昇華が無視できなくなる。なお、前記した(d)透明ガラス化工程とこの(d´)成形工程とは、連続して行うことができるが、同時に行うこともできる。
(e)徐冷(アニール)工程
(d´)工程で得られたTiO−SiO成形ガラス体に対してアニールを行う。アニール処理により、所定の仮想温度TfのFドープ透明ガラス成形体を得ることができる。
アニール処理の条件は、ガラス中にルチル型TiO結晶が前記した所定の濃度で析出されるように、950℃より高温での熱処理時間を10時間以上とすることが好ましい。950℃より高温での熱処理時間は、20時間以上であることがより好ましく、50時間以上であることが特に好ましい。
このような条件でのアニール処理によって、ガラス中のルチル型TiO結晶の濃度が0.03〜1質量%で、仮想温度Tfが750〜1000℃のガラス体を得ることができる。
アニール処理の雰囲気は、ヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性ガス100%の雰囲気、これらの不活性ガスを主成分とする雰囲気、または空気雰囲気とし、圧力は減圧または常圧が好ましい。
こうして、TiO濃度が1〜12質量%で、F濃度が1000ppm以上であり、かつルチル型TiO結晶を0.03〜1質量%の濃度で含有するFドープTiO−SiOガラス体を得ることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
実施例1
(a)火炎加水分解およびガラス微粒子堆積工程
TiO−SiOガラスのガラス形成原料であるTiClとSiClを、それぞれガス化させた後に混合し、混合物を酸水素火炎中で加水分解(火炎加水分解)させた。そして、得られたTiO−SiOガラス微粒子を基材(種棒)に堆積、成長させて、TiO濃度が7.06質量%である多孔質TiO−SiOガラス体を形成した。なお、TiO濃度は、後述する方法で測定した値である。以下、同様である。
(a´)仮焼工程
次いで、得られた多孔質TiO−SiOガラス体を、基材に堆積させたままの状態で、大気中1200℃で4時間保持した後、基材から外した。
(b)フッ素化工程
(a´)仮焼工程で得られた多孔質TiO−SiOガラス体から10kgのガラス体を切り出し、SUS316L製の冶具に担持させ、冶具とともにSUS316L製オートクレーブ(容積50L)に入れた。そして、マントルヒーターを用いて外側から加熱し、オートクレーブ内の温度を常温から140℃まで0.5〜2℃/minの速度で昇温させた。次いで、オートクレーブ内を140℃に保ったまま、圧力が絶対圧で13000Pa以下となるまで真空脱気し、1時間保持した後、窒素ガスでオートクレーブ内を置換した。
次いで、窒素ガスで20モル%に希釈したフッ素ガスの所定量、すなわち前記ガラス体の質量に対してフッ素(フッ素元素)が7200質量ppmの割合になる量を、8時間かけてオートクレーブ内に導入し、フッ素化を行った後、窒素ガスでオートクレーブ内を置換した。その後、上記と同様にして、ガラス体の質量に対して7200質量ppmの割合のフッ素の8時間かけての導入を2回実施し、合計で、ガラス重量に対する割合が21600質量ppmのフッ素量を導入し、24時間のフッ素化処理を行った。
(c)緻密化処理工程
(b)工程で得られたFドープ多孔質ガラス体を、真空雰囲気で1350℃まで昇温させ、1350℃で2時間保持して、FドープTiO−SiOガラス緻密体を得た。
(d)透明ガラス化工程
(c)工程で得られたFドープTiO−SiOガラス緻密体を、真空雰囲気で1630℃まで昇温させ、Fドープ透明ガラス体を得た。
(d´)成形工程
得られたFドープ透明ガラス体をカーボン炉に移し、アルゴンガス雰囲気で1700℃に加熱して円柱状に成形し、Fドープ成形ガラス体を得た。
(e)徐冷(アニール)工程
(d´)工程で得られた成形ガラス体をそのまま炉内で、1000℃から0.8℃/hrの速度で800℃まで徐冷した後、室温まで急冷した。こうしてアニールされた成形ガラス体を得た。
実施例2
実施例1と同様にして(a)工程と(a´)工程を実施し、TiO濃度が6.98質量%の多孔質TiO−SiOガラス体を得た。
(b)フッ素化工程
(a´)仮焼工程で得られた多孔質TiO−SiOガラス体から10.9kgのガラス体を切り出し、実施例1と同様にしてオートクレーブ(容積50L)に入れ、マントルヒーターを用いて加熱し、オートクレーブ内の温度を常温から80℃まで0.5〜2℃/minの速度で昇温させた。次いで、オートクレーブ内を80℃に保ったまま、圧力が絶対圧で13000Pa以下となるまで真空脱気し、1時間保持した後、窒素ガスでオートクレーブ内を置換した。
次に、窒素ガスで20モル%に希釈したフッ素ガスの所定量、すなわち前記ガラス体の質量に対してフッ素(フッ素元素)が3900質量ppmの割合になる量を、4時間かけてオートクレーブ内に導入し、フッ素化を行った後、窒素ガスでオートクレーブ内を置換した。その後、ガラス体の質量に対して7800質量ppmの割合のフッ素の8時間かけての導入、次いで5900質量ppmの割合のフッ素の6時間かけての導入を順に実施し、合計で、ガラス重量に対する割合が17600質量ppmのフッ素量を導入し、18時間のフッ素化処理を行った。
次いで、(c)工程〜(e)工程を実施例1と同様にして実施し、アニールされたFドープ成形ガラス体を得た。
実施例3
実施例1と同様にして(a)工程と(a´)工程を実施し、TiO濃度が7.38質量%の多孔質TiO−SiOガラス体を得た。
(b)フッ素化工程
(a´)仮焼工程で得られた多孔質TiO−SiOガラス体から11.2kgのガラス体を切り出し、実施例1と同様にしてオートクレーブ(容積50L)に入れ、マントルヒーターを用いて加熱し、オートクレーブ内の温度を常温から80℃まで0.5〜2℃/minの速度で昇温させた。次いで、オートクレーブ内を80℃に保ったまま、圧力が絶対圧で13000Pa以下となるまで真空脱気し、1時間保持した後、窒素ガスでオートクレーブ内を置換した。
次いで、窒素ガスで20モル%に希釈したフッ素ガスの所定量、すなわち前記ガラス体の質量に対してフッ素(フッ素元素)が6100質量ppmの割合になる量を、8時間かけてオートクレーブ内に導入し、フッ素化を行った後、窒素ガスでオートクレーブ内を置換した。その後、上記と同様にして、ガラス体の質量に対して7600質量ppmの割合のフッ素の8時間かけての導入、次いで6200質量ppmの割合のフッ素の6.5時間かけての導入を順に実施し、合計で、ガラス重量に対する割合が19900質量ppmのフッ素量を導入し、22.5時間のフッ素化処理を行った。
次いで、(c)工程〜(e)工程を実施例1と同様にして実施し、アニールされたFドープ成形ガラス体を得た。
比較例
実施例1と同様にして(a)工程と(a´)工程を実施し、TiO濃度が5.54質量%の多孔質TiO−SiOガラス体を得た。
(b)フッ素化工程
(a´)仮焼工程で得られた多孔質TiO−SiOガラス体から6.6kgのガラス体を切り出し、実施例1と同様にしてオートクレーブ(容積50L)に入れ、マントルヒーターを用いて加熱し、オートクレーブ内の温度を常温から140℃まで0.5〜2℃/minの速度で昇温させた。次いで、オートクレーブ内を140℃に保ったまま、圧力が絶対圧で13000Pa以下となるまで真空脱気し、1時間保持した。その後、窒素ガスで20モル%に希釈したフッ素ガスを、オートクレーブ内の圧力がゲージ圧で0.05MPaとなるまで導入し、温度140℃、ゲージ圧0.05MPaの条件で6時間保持した。
次いで、オートクレーブ内のガスをパージして大気圧まで降圧し、窒素ガスで20モル%に希釈したフッ素ガスを400cc/minの流量で2時間流通させて、オートクレーブ内のフッ素ガスを更新した後、オートクレーブ内の圧力がゲージ圧0.05MPaとなるまで昇圧し、温度140℃、ゲージ圧0.05MPaの条件で6時間保持した。この操作をさらに4回繰り返し、多孔質TiO−SiOガラス体とフッ素ガスとを、温度140℃、ゲージ圧0.05MPaの条件下に合計36時間保持し、ガラス重量に対する割合が14000質量ppmのフッ素を導入した。
次に、(c)工程〜(d´)工程を実施例1と同様にして実施し、Fドープ成形ガラス体を得た。
(e)徐冷(アニール)工程
(d´)工程で得られた成形ガラス体を、1000℃から950℃まで10℃/hrの速度で冷却した後、950℃で72時間保持し、その後、室温まで急冷した。こうして、アニールされた成形ガラス体を得た。
こうして実施例1〜3および比較例でそれぞれ得られたFドープ成形ガラス体について、ガラス中のTiO濃度、F濃度、仮想温度(Tf)、ルチル型TiO結晶の濃度、およびTi3+濃度を、それぞれ以下に示す方法で測定した。また、Tzc(COT)およびCTEslopeを、それぞれ以下に示す方法で測定した。
<TiO濃度およびF濃度の測定>
TiO濃度およびF濃度は、濃度既知のサンプルを用い、蛍光X線分析により、FP法(ファンダメンタルパラメータ法)を用いて求めた。
すなわち、実施例1〜3および比較例でそれぞれ得られたFドープ成形ガラス体の任意の部位から、35mm角で厚さ15mmのガラス片を採取し、これらのガラス片に対して、蛍光X線分析を行った。そして、その分析結果と、TiO濃度およびF濃度が既知のサンプルについての蛍光X線分析の結果から、FP法を用いてTiO濃度およびF濃度を算出した。
<仮想温度(Tf)の測定>
実施例1〜3および比較例でそれぞれ得られたFドープ成形ガラス体の任意の部位から、20mm角で厚さ2mmのガラス片を採取し、鏡面研磨を実施した後、ガラス片の赤外吸収スペクトルを、赤外分光計(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、装置名:Magna760)を用いて測定した。このとき、データ間隔は約4.0cm−1とし、吸収スペクトルは256回スキャンさせた平均値とした。得られた赤外吸収スペクトルにおいて、2260cm−1付近に観察されるピークが、合成石英ガラスのSi−O−Si結合による伸縮振動の倍音に起因するピークである。このピーク位置を用いて、Tfが既知で同組成のガラスによって検量線を作成し、作成された検量線を用いてガラス片のTfを求めた。
<ルチル型TiO結晶の濃度の測定>
実施例1〜3および比較例でそれぞれ得られたFドープ成形ガラス体を粉砕し、得られた粉末のX線回折(XRD)スペクトルを、X線回折装置(株式会社リガク社製、装置名:SmartLab)を用いて測定した。そして、XRDスペクトルにおいて、2θ=54.3付近に現れるルチル型結晶(211)面のピーク面積をそれぞれ算出した。次いで、こうして算出された前記ピーク面積の値から、検量線を用いて、ガラス中のルチル型TiO結晶の濃度(質量%)を算出した。
なお、検量線は以下に示すようにして作成した。すなわち、ルチル型TiO結晶の粉末とSiOガラス粉末とを、質量比で(0:100)、(0.5:99.5)、(1:99)、(2:98)となるようにそれぞれ秤量し、ボールミルでそれぞれ混合した。次いで、それぞれの混合粉末のXRDスペクトルを測定し、2θ=54.3付近に現れるルチル型結晶(211)面のピーク面積をそれぞれ算出した。
こうして混合粉末について算出されたルチル型結晶(211)面のピーク面積を、混合粉末中のルチル型TiO結晶の濃度(質量%)に対してプロットしたところ、直線形となり、ルチル型TiO結晶の濃度とルチル型結晶(211)面のピーク面積との相関を示す検量線が得られた。
<Ti3+の測定>
Ti3+濃度は、電子スピン共鳴(ESR:Electron Spin Resonance)を測定することにより求めた。ESRの測定は、以下の条件で行った。
周波数 :9.43GHz付近(X−band)、Jeol社製TE300
出力 :4mW
磁場強度、掃引幅:340mT、±50mT
変調磁場 :0.2mT
測定温度 :室温(25℃)
感度校正 :一定量のMn2+/MgOのピーク高さにて実施。
<TzcおよびCTEslopeの測定>
実施例1〜3および比較例でそれぞれ得られたFドープ成形ガラス体から、断面が35mm×10mmで長さ100mmのガラス体を切り出し、その長手方向のCTEを、レーザーヘテロダイン干渉式熱膨張計(ユニオプト社製、製品名:CTE−01)を用い、−150〜+200℃の範囲で精密測定した。そして、この測定結果から、TzcおよびCTEslopeの値を算出した。
これらの測定結果を、(b)フッ素化工程におけるオートクレーブ内の温度(表1では、フッ素化温度と示す。)、および(e)アニール工程において950℃より低い温度での熱処理時間(表1では、徐冷時間と示す。)とともに、表1に示す。また、これらの測定結果を基に、Ti3+濃度およびCTEslopeの値をルチル型TiO結晶の濃度に対してプロットしたグラフを図1に示す。
Figure 2016028992
表1から以下のことがわかる。すなわち、実施例1〜3で得られたTiO−SiOガラス体では、TiO濃度が1〜12質量%でF濃度が1000ppm以上となっており、十分に低いCTEslopeを有している。特に、実施例1〜2で得られたTiO−SiOガラス体は、CTEslopeが1.0ppb/K以下と極めて小さく、ゼロ膨張温度範囲が極めて広くなっている。また、実施例1〜3で得られたTiO−SiOガラス体では、ガラス中にルチル型TiO結晶が0.03〜1質量%の濃度で含まれており、ガラス中のTi3+の濃度が低く(具体的には、50質量ppm以下)抑えられている。したがって、Ti3+に起因する紫外線(例えば、波長365nmのI線)の透過率の減少が抑制される。
これに対して、比較例で得られたTiO−SiOガラス体では、TiO濃度が1〜12質量%でF濃度が500ppm以上となっており、低いCTEslopeを有しているが、ガラス中にルチル型TiO結晶が含有されておらず、ガラス中のTi3+の濃度が実施例1〜3に比べて大幅に増大している。したがって、Ti3+による紫外線の吸収が大きくなり、透過率が実施例に比べて大きく減少すると考えられる。
また、図1のグラフから、FドープTiO−SiOガラス体において、ルチル型TiO結晶の濃度が高くなるほど、Ti3+濃度が低くなり、かつCTEslopeの値が小さくなることがわかる。そして、ルチル型TiO結晶の濃度を0.03質量%以上とすることで、Ti3+の濃度が50質量ppm以下で、CTEslopeが1.0ppb/K以下と極めて小さいTiO−SiOガラス体が得られることがわかる。
本発明によれば、FドープTiO−SiOガラスにおいて、ガラス中のTi3+の濃度が低く抑えられているため、Ti3+に起因する紫外線(例えば、波長365nmのI線)の透過率の減少が抑制される。したがって、ゼロ膨張温度範囲が室温付近で十分に広く、かつ紫外線の内部透過率が高く、光インプリントモールドの構成材料として好適するTiO−SiOガラスが得られる。

Claims (4)

  1. フッ素がドープされたチタニア含有シリカガラスであり、
    チタニアの含有割合が1〜12質量%であり、フッ素の含有割合が1000質量ppm以上であり、かつルチル型チタニア結晶を0.03〜1質量%の割合で含有することを特徴とするチタニア含有シリカガラス。
  2. Ti3+の含有割合が50質量ppm以下である、請求項1に記載のチタニア含有シリカガラス。
  3. 熱膨張係数が0ppb/Kとなる温度における熱膨張係数の傾きが1.0ppb/K以下である、請求項1または2に記載のチタニア含有シリカガラス。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のチタニア含有シリカガラスから構成される光インプリントモールド。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2022065486A1 (ja) * 2020-09-28 2022-03-31 住友電気工業株式会社 フッ素含有シリカガラスの製造方法
WO2022065474A1 (ja) * 2020-09-28 2022-03-31 住友電気工業株式会社 フッ素含有シリカガラスの製造方法
WO2022145339A1 (ja) * 2020-12-29 2022-07-07 日本電気硝子株式会社 ガラス及びその製造方法

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