<第1実施形態>
図1から図4を参照して、第1実施形態に係る眼科撮影装置の構成について説明する。眼科撮影装置としては、OCT、眼底カメラ、走査型レーザ検眼装置等がある。本実施形態では、眼底カメラとOCTが一体化した眼科撮影装置について説明する。
本実施形態では、フーリエドメインタイプの光コヒーレンストモグラフィを適用した構成について説明する。光コヒーレンストモグラフィによって取得される画像をOCT画像と呼ぶことがある。また、OCT画像を形成するための計測動作をOCT計測と呼ぶことがある。
図1及び図2に示すように、眼科撮影装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100及び演算制御ユニット200を含んで構成される。眼底カメラユニット2は、従来の眼底カメラとほぼ同様の光学系を有する。OCTユニット100には、被検眼EのOCT画像を取得するための光学系が設けられている。演算制御ユニット200は、各種の演算処理や制御処理等を実行するコンピュータを具備している。
本実施形態では、被検眼Eにおける深さの異なる位置(たとえば前眼部Ecと眼底Ef)の断層像及び撮影画像の双方を取得可能な眼科撮影装置1について説明する。本実施形態では、前眼部Ecが「第1の深さ位置」に該当し、眼底Efが「第2の深さ位置」に該当する。また、本実施形態では、眼底カメラユニット2又はOCTユニット100により、前眼部Ecを撮影するモードを「第1モード」とし、眼底Efを撮影するモードを「第2モード」として説明する。
<眼底カメラユニット>
図1に示す眼底カメラユニット2には、被検眼E(前眼部Ec又は眼底Ef。以下、同様)の2次元画像(被検眼像)を形成するための光学系が設けられている。被検眼像には、観察画像や撮影画像などが含まれる。観察画像は、たとえば、赤外光(近赤外光)を用いて所定のフレームレートで形成されるモノクロの動画像である。撮影画像は、たとえば、可視光をフラッシュ発光して得られるカラー画像である。なお、眼底カメラユニット2は、蛍光画像などを取得可能に構成されていてもよい。
眼底カメラユニット2には、従来の眼底カメラと同様に、被検者の顔が動かないように支えるための顎受けや額当てが設けられている。更に、眼底カメラユニット2には、従来の眼底カメラと同様に照明光学系10、撮影光学系30及び固視光学系70が設けられている。照明光学系10、撮影光学系30及び固視光学系70は本体部に含まれる。本体部は、移動手段(架台移動部88。第3実施形態で詳述する)により移動可能となっている。
照明光学系10は被検眼Eに照明光を照射する。撮影光学系30は、この照明光の被検眼Eからの反射光を撮像装置(CCDイメージセンサ35、38)に導く。また、撮影光学系30は、OCTユニット100からの信号光を被検眼Eに導くとともに、被検眼Eを経由した信号光をOCTユニット100に導く。固視光学系70は、固視標を被検眼Eに投影するための光学系である。本実施形態において、撮影光学系30と固視光学系70は光路の一部(光路を形成する光学素子の一部)を共有している。具体的には、孔開きミラー21、対物レンズ22、合焦レンズ31、ダイクロイックミラー32、ハーフミラー40を共有している。本実施形態において、ハーフミラー40の位置が撮影光学系30の光路と固視光学系70の光路との分岐点である。
照明光学系10の観察光源11は、たとえばハロゲンランプにより構成される。観察光源11から出力された光(観察照明光)は、曲面状の反射面を有する反射ミラー12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して赤外光(近赤外光)となる。更に、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ17、18、絞り19及びリレーレンズ20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、対物レンズ22を経由して被検眼Eを照明する。
観察照明光の被検眼Eからの反射光は、対物レンズ22により屈折され、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を経由し、ダイクロイックミラー32により反射される。更に、この反射光は、ハーフミラー40を透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に結像される。CCDイメージセンサ35は、たとえば所定のフレームレートでその反射光を検出する。表示装置3には、CCDイメージセンサ35により検出されたその反射光に基づく画像(観察画像)Kが表示される。
撮影光源15は、たとえばキセノンランプにより構成される。撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って被検眼Eに照射される。撮影照明光の反射光は、観察照明光のそれと同様の経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、集光レンズ37によりCCDイメージセンサ38の受光面に結像される。表示装置3には、CCDイメージセンサ38により検出されたその反射光に基づく画像(撮影画像)Hが表示される。なお、観察画像Kを表示する表示装置3と撮影画像Hを表示する表示装置3は、同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
撮影光学系30は、前眼部専用レンズ300を有する。前眼部専用レンズ300は、前眼部Ecの撮影を行う場合に、撮影光学系30と固視光学系70との共通の光路(分岐点よりも被検眼E側)上に挿入される。前眼部専用レンズ300は、たとえば図1に示すように、ダイクロイックミラー55と合焦レンズ31の間に挿脱可能に配置される。前眼部専用レンズ300が挿入された状態で合焦レンズ31を移動させることにより、撮影光学系30のピント(焦点位置)を前眼部Ecに合わせることができる。本実施形態において、前眼部専用レンズ300が「第2レンズ」に該当する。
固視光学系70は、撮影光学系30の光路から分岐した固視光学系70の光路に光学素子を有する。光学素子は、固視標表示部71、リレーレンズ72及び絞り73を含んで形成されている。
固視標表示部71は、固視標や視力測定用視標を表示する。固視標は被検眼Eを固視させるための視標であり、眼底撮影時やOCT計測時などに使用される。固視標表示部71は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)である。本実施形態において、固視標表示部71は、アライメント(後述)等がなされた状態、且つ前眼部専用レンズ300が固視光学系70の光路に無い状態で、眼底Efと共役な位置に配置されている。
固視標表示部71は、制御部211(後述)の制御により、その画面上の特定の座標位置のみを選択的に点灯させる。固視標表示部71から出力された光は、その一部がハーフミラー40にて反射され、ダイクロイックミラー32に反射され、合焦レンズ31及びダイクロイックミラー55を経由し、孔開きミラー21の孔部を通過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投影される。
固視標表示部71はLCDに限られない。たとえば複数のLED(Light Emitting Diode)が配列されたパネルをLCDの代わりに配置し、少なくとも一つのLEDを点灯させることにより固視標の像の投影を行うことができる。この場合、LEDを点灯させることも「表示」に含まれるものとする。
リレーレンズ72は、ハーフミラー40と固視標表示部71の間に挿脱可能に設けられている。リレーレンズ72が固視光学系70の光路に配置されることにより、眼底Efに対して固視標の像の焦点位置を変更することができる。すなわち、前眼部専用レンズ300が撮影光学系30の光路に配置されると、固視標表示部71と眼底Efの共役関係が崩れるが、リレーレンズ72を固視光学系70の光路に配置することで眼底Efに固視標の像の焦点位置を合わせることができる。つまり、前眼部専用レンズ300の挿入により崩れた固視標表示部71と眼底Efとの共役関係を回復することができる。本実施形態において、リレーレンズ72が「第1レンズ」に該当する。
絞り73は、リレーレンズ72と固視標表示部71の間に配置されている。絞り73は、その開口サイズを変更することにより、眼底Efに投影される固視標の像のサイズ(大きさ)を変更することができる。前眼部専用レンズ300が撮影光学系30の光路に挿入されること等により、眼底Efに投影される固視標の像は拡大する。従って、被検者はどこを固視すべきか分かり難くなる。この場合、絞り73は、その開口サイズを狭くし、固視標表示部71により眼底Efに投影される固視標の像のサイズを小さくする。このように、絞り73で固視標の像のサイズを変更することにより、眼底Efに所望の大きさで固視標の像を投影させることができる。なお、絞り73は、上述のように単一の開口のサイズを連続的に変更させることにより固視標のサイズを変更するものに限られない。たとえば、異なる開口サイズを有するターレット状の絞り73を設け、固視標の像の大きさに合わせて対応する開口サイズを択一的に固視標表示部71の前に配置させることも可能である。本実施形態において、これらの絞り73が「変更手段」に該当する。
更に、眼底カメラユニット2には、従来の眼底カメラと同様にアライメント光学系50とフォーカス光学系60が設けられている。アライメント光学系50は、被検眼Eに対する装置光学系の位置合わせ(アライメント)を行うための視標(アライメント視標)を生成する。フォーカス光学系60は、被検眼Eに対して焦点(ピント)を合わせるための視標(スプリット視標)を生成する。
アライメント光学系50のLED51から出力された光(アライメント光)は、絞り52、53及びリレーレンズ54を経由してダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過し、対物レンズ22により被検眼Eに投影される。
アライメント光の被検眼Eからの反射光は、対物レンズ22及び上記孔部を経由し、その一部がダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を通過し、ダイクロイックミラー32により反射され、ハーフミラー40を透過し、ダイクロイックミラー33に反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に投影される。CCDイメージセンサ35による受光像(アライメント視標像)は、観察画像Kとともに表示装置3に表示される。ユーザは、従来の眼底カメラと同様の操作を行ってアライメントを実施する。また、演算制御ユニット200がアライメント視標像の位置を解析して光学系を移動させることによりアライメントを行ってもよい。
フォーカス調整を行う際には、照明光学系10の光路に反射棒67の反射面が斜設される。フォーカス光学系60のLED61から出力された光(フォーカス光)は、リレーレンズ62を通過し、スプリット視標板63により二つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65に反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射される。更に、フォーカス光は、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21に反射され、対物レンズ22により被検眼Eに結像される。
フォーカス光の被検眼Eからの反射光は、アライメント光の反射光と同様の経路を通ってCCDイメージセンサ35により検出される。CCDイメージセンサ35による受光像(スプリット視標像)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。演算制御ユニット200は、従来と同様に、スプリット視標像の位置を解析して合焦レンズ31及びフォーカス光学系60を移動させてピント合わせを行う。また、スプリット視標を視認しつつ手動でピント合わせを行ってもよい。
ダイクロイックミラー32の後方には、ミラー41、コリメータレンズ42、及びガルバノミラー43、44を含む光路が設けられている。この光路はOCTユニット100に導かれている。
ガルバノミラー44は、OCTユニット100からの信号光LSをx方向に走査する。ガルバノミラー43は、信号光LSをy方向に走査する。これら二つのガルバノミラー43、44により、信号光LSをxy平面上の任意の方向に走査することができる。本実施形態において、信号光LSは「照明光」の一例である。
<OCTユニット>
OCTユニット100には、被検眼Eの断層像を取得するための光学系が設けられている(図2を参照)。この光学系は、従来のフーリエドメインタイプのOCT装置と同様の構成を有する。すなわち、この光学系は、低コヒーレンス光を参照光と信号光に分割し、被検眼Eを経由した信号光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光のスペクトル成分を検出するように構成されている。この検出結果(検出信号)は演算制御ユニット200に送られる。
光源ユニット101は広帯域の低コヒーレンス光L0を出力する。低コヒーレンス光L0は、たとえば、近赤外領域の波長帯(約800nm〜900nm程度)を含み、数十マイクロメートル程度の時間的コヒーレンス長を有する。
光源ユニット101から出力された低コヒーレンス光L0は、光ファイバ102によりファイバカプラ103に導かれて信号光LSと参照光LRに分割される。なお、ファイバカプラ103は、光を分割する手段(スプリッタ;splitter)、及び、光を合成する手段(カプラ;coupler)の双方の作用を有するが、ここでは慣用的に「ファイバカプラ」と称する。
信号光LSは、光ファイバ104により導光され、コリメータレンズユニット105により平行光束となる。更に、信号光LSは、各ガルバノミラー44、43により反射され、コリメータレンズ42により集光され、ミラー41により反射され、ダイクロイックミラー32を透過し、固視標表示部71からの光と同じ経路を通って被検眼Eに照射される。信号光LSは、被検眼Eにおいて散乱、反射される。この散乱光及び反射光をまとめて信号光LSの反射光と称することがある。信号光LSの反射光は、同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ103に導かれる。
参照光LRは、光ファイバ106により導光され、コリメータレンズユニット107により平行光束となる。更に、参照光LRは、ミラー108、109、110により反射され、ND(Neutral Density)フィルタ111により減光され、ミラー112に反射され、コリメータレンズ113により参照ミラー114の反射面に結像される。参照ミラー114に反射された参照光LRは、同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ103に導かれる。
ファイバカプラ103は、信号光LSの反射光と、参照ミラー114に反射された参照光LRとを合波する。これにより生成された干渉光LCは、光ファイバ115により導光されて出射端116から出射される。更に、干渉光LCは、コリメータレンズ117により平行光束とされ、回折格子118により分光(スペクトル分解)され、集光レンズ119により集光されてCCDイメージセンサ120の受光面に投影される。
CCDイメージセンサ120は、たとえばラインセンサであり、分光された干渉光LCの各スペクトル成分を検出して電荷に変換する。CCDイメージセンサ120は、この電荷を蓄積して検出信号を生成する。更に、CCDイメージセンサ120は、この検出信号を演算制御ユニット200に送る。
この実施形態ではマイケルソン型の干渉計を採用しているが、たとえばマッハツェンダー型など任意のタイプの干渉計を適宜に採用することが可能である。また、CCDイメージセンサに代えて、他の形態のイメージセンサ、たとえばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどを用いることが可能である。
<演算制御ユニット>
演算制御ユニット200の構成について説明する。演算制御ユニット200は、CCDイメージセンサ120から入力される検出信号を解析して被検眼EのOCT画像を形成する。そのための演算処理は、従来のフーリエドメインタイプのOCT装置と同様である。
また、演算制御ユニット200は、眼底カメラユニット2、表示装置3及びOCTユニット100の各部を制御する。たとえば演算制御ユニット200は、眼底Efの断層像G(図2を参照)等のOCT画像を表示装置3に表示させる。
また、眼底カメラユニット2の制御として、演算制御ユニット200は、観察光源11、撮影光源15及びLED51、61の動作制御、固視標表示部71の動作制御、合焦レンズ31の移動制御、反射棒67の移動制御、フォーカス光学系60の移動制御、各ガルバノミラー43、44の動作制御などを行う。
また、OCTユニット100の制御として、演算制御ユニット200は、光源ユニット101の動作制御、参照ミラー114及びコリメータレンズ113の移動制御、CCDイメージセンサ120の動作制御などを行う。
演算制御ユニット200は、たとえば、従来のコンピュータと同様に、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイスなどを含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、眼科撮影装置1を制御するためのコンピュータプログラムが記憶されている。演算制御ユニット200は、CCDイメージセンサ120からの検出信号に基づいてOCT画像を形成する専用の回路基板を備えていてもよい。また、演算制御ユニット200は、キーボードやマウス等の操作デバイス(入力デバイス)や、LCD等の表示デバイスを備えていてもよい。
眼底カメラユニット2、表示装置3、OCTユニット100及び演算制御ユニット200は、一体的に(つまり単一の筺体内に)構成されていてもよいし、それぞれ別体として構成されていてもよい。一体的に構成される場合、眼底カメラユニット2、表示装置3、OCTユニット100及び演算制御ユニット200は、1つの本体部に設けられる。別体で構成される場合、少なくとも眼底カメラユニット2の各構成は1つの本体部に設けられている必要がある。
<制御系>
眼科撮影装置1の制御系の構成について図3を参照しつつ説明する。
<制御ユニット>
眼科撮影装置1の制御系は、演算制御ユニット200の制御ユニット210を中心に構成される。制御ユニット210は、たとえば、前述のマイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイス等を含んで構成される。
制御ユニット210には、制御部211が設けられている。制御部211は、前述の各種制御を行う。特に、制御部211は、眼底カメラユニット2の走査駆動部81、合焦駆動部82、前眼部専用レンズ駆動部83、リレーレンズ駆動部84及び絞り調整部85、更にOCTユニット100の光源ユニット101及び参照駆動部130を制御する。本実施形態において、制御ユニット210及び制御部211が「制御手段」に該当する。
走査駆動部81は、たとえばサーボモータを含んで構成され、ガルバノミラー43、44の向きを各々独立に変更する。本実施形態において、「走査部」は走査駆動部81とガルバノミラー43、44を含む。
合焦駆動部82は、たとえばパルスモータを含んで構成され、合焦レンズ31を光軸方向に移動させる。それにより、眼底Efに向かう光の合焦位置が変更される。
前眼部専用レンズ駆動部83は、たとえばソレノイドを含んで構成され、モードの選択に対応して前眼部専用レンズ300を撮影光学系30と固視光学系70との共通の光路に挿脱させる。前眼部専用レンズ300が挿入された状態で、合焦レンズ31を移動させることにより、撮影光学系30のピント(焦点位置)が前眼部Ecと合致する。本実施形態では、第1モードが前眼部Ecを撮影するモードである。従って、入力部250等により第1モードが選択された場合、制御部211は、前眼部専用レンズ駆動部83を制御して、前眼部専用レンズ300を撮影光学系30と固視光学系70との共通の光路に挿入する。
リレーレンズ駆動部84は、たとえばソレノイドを含んで構成され、モードの選択に対応してリレーレンズ72を固視光学系70の光路に挿脱させる。それにより、眼底Efに対する固視標の像の焦点位置が変更される。たとえば、前眼部専用レンズ300が撮影光学系30の光路に配置されている場合、そのままでは固視標表示部71による固視標の像の焦点位置が眼底Efからずれてしまう。従って、被検者は固視を確実に行えない可能性がある。リレーレンズ駆動部84は、リレーレンズ72を固視光学系70の光路に挿入することにより、固視標の像の焦点位置を眼底Efに合わせる。すなわち、前眼部専用レンズ300が撮影光学系30の光路に配置されている場合、リレーレンズ72は、固視標の像の焦点位置を眼底Efに合わせるために、固視光学系70の光路に挿入されるよう構成されている。
絞り調整部85は、たとえばパルスモータを含んで構成され、モードの選択に対応して絞り73の開口サイズを変更する。それにより、眼底Efに投影される固視標の像のサイズが変更される。たとえば、リレーレンズ72が固視光学系70の光路に配置された場合、眼底Efに投影される固視標の像のサイズが大きくなる。この場合、絞り調整部85は絞り73の開口サイズを狭め(或いはターレットにより異なる開口サイズから適当な開口サイズを選択することにより)、固視標の像のサイズを変更する。
このように、制御部211は、第1モード又は第2モードの選択に対応して固視光学系70に設けられたリレーレンズ72及び絞り73(リレーレンズ駆動部84及び絞り調整部85)を制御することにより、固視光学系70における光学素子の配置を変更する。つまり、眼底Efに投影される固視標の呈示態様を変更する。なお、「固視標の呈示態様を変更する」とは、被検眼Eによる固視標の像の視認状態を変更することである。本実施形態では、固視標のサイズを最適な大きさに変更させることも「固視標の呈示態様を変更する」ことに含まれる。
参照駆動部130は、たとえばパルスモータを含んで構成され、参照光LRの進行方向に沿って、コリメータレンズ113及び参照ミラー114を一体的に移動させる。
また、制御部211は、固視標表示部71を制御し、固視標を表示させる。制御部211は、記憶部212にデータを書き込む処理や、記憶部212からデータを読み出す処理を行う。
記憶部212は、各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、たとえば、OCT画像の画像データ、眼底像の画像データ、画像データを取得した際の撮影モード、画像データを取得した際の固視標の投影位置、患者IDや氏名などの被検者に関する情報、撮影日時、及び左眼/右眼の識別情報(左右情報)などがある。
<画像形成部>
画像形成部220は、CCDイメージセンサ120からの検出信号に基づいて、被検眼Eの断層像の画像データを形成する。この処理には、従来のフーリエドメインタイプの光コヒーレンストモグラフィと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれている。
画像形成部220は、たとえば、前述の回路基板や通信インターフェイス等を含んで構成される。なお、この明細書では、「画像データ」と、それに基づいて呈示される「画像」とを同一視することがある。
<画像処理部>
画像処理部230は、画像形成部220により形成された画像や眼底カメラユニット2で取得された画像に対して各種の画像処理や解析処理を施す。たとえば、画像処理部230は、画像の輝度補正や分散補正等の各種補正処理を実行する。
また、画像処理部230は、画像形成部220により形成された断層像の間の画素を補間する補間処理を実行するなどして、被検眼Eの3次元画像の画像データを形成する。
画像処理部230は、3次元画像の画像データに基づいて、任意の断面における断層像を形成することができる。この処理は、たとえば、手動又は自動で指定された断面に対し、この断面上に位置する画素(ボクセル等)を特定し、特定された画素を2次元的に配列させて当該断面における被検眼Eの形態を表す画像データを形成することにより実行される。このような処理により、元の断層像の断面(信号光LSの走査線の位置)だけでなく、所望の断面における画像を取得することが可能となる。
画像処理部230は、たとえば、前述のマイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、回路基板等を含んで構成される。
<表示部>
表示部240は、前述した演算制御ユニット200の表示デバイスを含んで構成される。また、表示部240は、眼底カメラユニット2の筺体に設けられたタッチパネルモニタなどの各種表示デバイスを含んでいてもよい。
<入力部>
入力部250は、前述した演算制御ユニット200の入力デバイスを含んで構成される。また、入力部250には、眼科撮影装置1の筐体や外部に設けられた各種のボタンやキーが含まれていてもよい。たとえば眼底カメラユニット2が従来の眼底カメラと同様の筺体を有する場合、入力部250は、この筺体に設けられたジョイスティックや操作パネル等を含んでいてもよい。
なお、表示部240と入力部250は、それぞれ個別のデバイスとして構成される必要はない。たとえばタッチパネルモニタのように、表示機能と入力機能とが一体化されたデバイスを用いることも可能である。
<信号光の走査及びOCT画像について>
ここで、信号光LSの走査及びOCT画像について説明する。
眼科撮影装置1による信号光LSの走査態様としては、たとえば、水平スキャン、垂直スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋(渦巻)スキャンなどがある。これらの走査態様は、被検眼の観察部位、解析対象(網膜厚など)、走査に要する時間、走査の精密さなどを考慮して適宜に選択的に使用される。
ガルバノミラー43、44は互いに直交する方向に信号光LSを走査するように構成されているので、信号光LSをx方向及びy方向にそれぞれ独立に走査できる。更に、ガルバノミラー43、44の向きを同時に制御することにより、xy面上の任意の軌跡に沿って信号光LSを走査することが可能である。それにより、上記のような各種の走査態様を実現できる。
上記のような態様で信号光LSを走査することにより、走査線(走査軌跡)に沿った深度方向(z方向)の断層像を形成することができる。また、特に走査線の間隔が狭い場合には、3次元画像を形成することができる。
<動作>
次に、図4を参照して、第1実施形態に係る眼科撮影装置1の動作について説明する。ここでは、OCTユニット100を用いて被検眼Eを撮影する場合について述べる。また、以下の動作では、撮影光学系30の光路に前眼部専用レンズ300が挿入されていない状態を前提として説明を行う。
まず、検査者は入力部250等により、撮影モードを選択する(S10)。
S10で第1モードが選択された場合、制御部211は、前眼部専用レンズ駆動部83を駆動させ、撮影光学系30の光路に前眼部専用レンズ300を挿入させる(S11)。そして、制御部211は、合焦駆動部82を駆動させ、撮影光学系30の光路で合焦レンズ31の位置を移動させる(S12)。S11及びS12により、撮影光学系30のピント(焦点位置)が前眼部Ecに合致する。
次に、制御部211は、リレーレンズ駆動部84を駆動させ、リレーレンズ72を固視光学系70の光路に挿入させる(S13)。更に、制御部211は、絞り調整部85を駆動させ、絞り73の開口サイズを狭める(S14)。S14により、固視標表示部71から投影される固視標の像のサイズを小さくすることができる。それにより、第1モードにおいて眼底Efに所望の固視標の像を投影することが可能となる。よって、固視の適正化を図ることができる。
その後、制御部211は、参照駆動部130を駆動させ、コリメータレンズ113及び参照ミラー114を第1モードの撮影に対応する位置に移動させる(S15)。そして、アライメント光学系50等により前眼部Ecに対するアライメント等が行われ、撮影光学系30と前眼部Ecとの位置合わせが完了する(S16)。以上の動作を行った後、第1モードによる撮影が開始される(S17)。
一方、S10で第2モードが選択された場合、アライメント光学系50等により眼底Efに対するアライメント等が行われ、撮影光学系30と眼底Efとの位置合わせが完了する(S18)。その後、OCTユニット100により仮計測を行い、表示部240にOCT画像を表示させる。制御部211は、そのフレーム内の特定領域において表示されるOCT画像に基づき、参照駆動部130を駆動させ、参照ミラー114を第2モードの撮影に対応する移動させる(S19)。この動作により、眼底Efに対する撮影光学系30の焦点位置の微調整が可能となる。以上の動作を行った後、第2モードによる撮影(本計測)が開始される(S17)。
<作用・効果>
以上のような眼科撮影装置1の作用及び効果について説明する。
本実施形態に係る眼科撮影装置1は、被検眼Eの第1の深さ位置(前眼部Ec)を撮影する第1モードと、第1の深さ位置とは異なる第2の深さ位置(眼底Ef)を撮影する第2モードとで動作可能である。眼科撮影装置1は、撮影光学系30と、固視光学系70と、制御部211を含んで構成されている。撮影光学系30は、第1モード及び第2モードのうち予め選択されたモードで被検眼Eを撮影する。固視光学系70は、固視標を表示する固視標表示部71を撮影光学系30から分岐した光路に有し、固視標表示部71により表示された固視標の像を被検眼Eに投影する。制御部211は、選択されたモードに対応して固視光学系70を制御し、固視標の呈示態様を変更する。
従って、本実施形態の構成によれば、被検眼の撮影部位(たとえば、前眼部Ecや眼底Ef)に関わらず、眼底Efにピントが合った固視標の像を呈示できる。つまり、被検眼の撮影部位に関わらず、固視の適正化を図ることができる。
また、本実施形態に係る眼科撮影装置1の制御部211は、固視光学系70における光学素子の配置を変更することにより、固視標の呈示態様を変更する。より具体的に説明すると、固視光学系70は、固視標の像の焦点位置を変更する第1レンズ(リレーレンズ72)を有する。そして、制御部211は、選択されたモードに対応してリレーレンズ72を固視光学系70の光路に挿脱させることにより、固視光学系70における光学素子の配置を変更する。更に、本実施形態に係る眼科撮影装置1の固視光学系70は、被検眼Eに投影される固視標の像の大きさを変更する変更手段(絞り73)を有する。制御部211は、固視光学系70の光路へのリレーレンズ72の挿脱に対応して絞り73を駆動させ、固視標の像の大きさを変更する。
従って、被検眼の撮影部位に対応するように、リレーレンズ72や絞り73を動作させることにより、眼底Efにピントが合った固視標の像を呈示できる。つまり、被検眼の撮影部位に関わらず、固視の適正化を図ることができる。
更に、本実施形態に係る眼科撮影装置1は、被検眼Eの第1の深さ位置(前眼部Ec)を撮影する第1モードと、第1の深さ位置とは異なる第2の深さ位置(眼底Ef)を撮影する第2モードとで動作可能である。眼科撮影装置1は、撮影光学系30と、固視光学系70と、制御部211を含んで構成されている。撮影光学系30は、第1モード及び第2モードのうち予め選択されたモードで被検眼Eを撮影する。固視光学系70は、固視標を表示する固視標表示部71を撮影光学系30から分岐した光路に有し、固視標表示部71により表示された固視標を被検眼Eに投影する。制御部211は、選択されたモードに対応して固視光学系70を制御し、被検眼Eの眼底Efに対する共役位置と固視標表示部71の位置とを略一致させるように固視光学系70を調整する。なお、「眼底Efに対する共役位置と固視標表示部71の位置とを略一致させる」とは、被検者が固視標表示部71による固視標の像を認識することができるよう、眼底Efに対する共役位置と固視標表示部71の位置との調整を行うことである。
たとえば、前眼部専用レンズ300が撮影光学系30の光路に配置された場合、眼底Efに対する共役位置が固視標表示部71の位置からずれる。そこで、制御部211は、リレーレンズ駆動部84を駆動させ、リレーレンズ72を固視光学系70の光路に配置することで、眼底Efに対する共役位置と固視標表示部71の位置とを一致させる。
従って、被検眼の撮影部位に応じて、眼底Efに対する共役位置と固視標表示部71の位置を一致させることにより、眼底Efにピントが合った固視標の像を呈示できる。つまり、被検眼の撮影部位に関わらず、固視の適正化を図ることができる。
<第2実施形態>
次に、図5から図7を参照して、第2実施形態に係る眼科撮影装置の構成について説明する。第1実施形態と同様の構成については同じ符号を用いる。また、第1実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する場合がある。本実施形態では、撮影モードとして前眼部Ecを撮影する第1モード、及び眼底Efを撮影する第2モードの2つの撮影モードを有している。
本実施形態の眼科撮影装置1は、絞り調整部85の代わりに、固視標駆動部86を有する(図6参照)。固視標駆動部86は、たとえばパルスモータを含んで構成され、固視標表示部71を固視光学系70の光路に沿って前後方向に移動させる。なお、「前後方向」とは、固視標表示部71がハーフミラー40に近づく方向(前方向)、及び遠ざかる方向(後方向)を意味する。固視標表示部71は、固視光学系70の光路に沿って前後方向に移動可能に設けられている(図5参照)。たとえば、前述のように、第1モードが選択された場合、前眼部専用レンズ300が撮影光学系30の光路に挿入されること等により、眼底Efに投影される固視標の像は拡大する。この場合、制御部211は、固視標駆動部86を制御し、固視標表示部71を後方向に移動させる。それにより、眼底Efに投影される固視標の像のサイズを小さくすることができる。このようにして、所望の大きさの固視標の像を眼底Efに投影することができる。本実施形態における固視標駆動部86が、「固視標移動手段」に該当する。
<動作>
次に、図7を参照して、第2実施形態に係る眼科撮影装置1の動作について説明する。ここでは、OCTユニット100を用いて被検眼Eを撮影する場合について述べる。また、以下の動作では、撮影光学系30の光路に前眼部専用レンズ300が挿入されていない状態を前提として説明を行う。
まず、検査者は入力部250等により、撮影モードを選択する(S20)。
S20で第1モードが選択された場合、制御部211は、撮影光学系30の光路に前眼部専用レンズ300を挿入させ(S21)、撮影光学系30の光路で合焦レンズ31の位置を移動させる(S22)。S21及びS22により、撮影光学系30のピント(焦点位置)が前眼部Ecに合致する。
次に、制御部211は、リレーレンズ72を固視光学系70の光路に挿入させ(S23)、固視標表示部71を固視光学系70の後方向に移動させる(S24)。S24により、第1モードにおいて眼底Efに所望の固視標を投影することが可能となる。よって、固視の適正化を図ることができる。
その後、制御部211は、コリメータレンズ113及び参照ミラー114を第1モードの撮影に対応する位置に移動させる(S25)。そして、アライメント光学系50等により撮影光学系30と前眼部Ecとの位置合わせが完了する(S26)。以上の動作を行った後、第1モードによる撮影が開始される(S27)。
一方、S20で第2モードが選択された場合、アライメント光学系50等により撮影光学系30と眼底Efとの位置合わせが完了する(S28)。その後、OCTユニット100により仮計測を行い、表示部240にOCT画像を表示させる。そのOCT画像における注目部位がフレーム内の所定位置に描画されるように参照駆動部130を駆動させ、参照ミラー114を第2モードの撮影に対応する移動させる(S29)。この動作により、眼底Efに対して撮影光学系30の焦点位置を厳密に合わせることが可能となる。以上の動作を行った後、第2モードによる撮影(本計測)が開始される(S27)。
なお、制御部211により、固視標表示部71とリレーレンズ72を相対的に移動させることにより、固視標の像のサイズ調整が可能である。すなわち、固視標の像のサイズ調整は、本実施形態で説明したように、固視標表示部71を移動させる場合に限られない。たとえば、制御部211により、固視光学系70の光路に挿入したリレーレンズ72を前後方向に移動させることによっても、固視標の像のサイズ調整が可能である。
<作用・効果>
以上のような眼科撮影装置1の作用及び効果について説明する。
本実施形態に係る眼科撮影装置1は、固視光学系70の光路に沿って固視標表示部71を移動させる固視標移動手段(固視標駆動部86)を有する。制御部211は、固視光学系70の光路へのリレーレンズ72の挿脱に対応して固視標移動手段を駆動させ、固視標表示部71を移動させる。
従って、本実施形態の構成によれば、被検眼の撮影部位(たとえば、前眼部Ecや眼底Ef)に対応して固視標表示部71を移動させることにより、被検眼Eに対して所望の固視標の像を呈示できる。つまり、被検眼の撮影部位に関わらず、固視の適正化を図ることができる。
<第2実施形態の変形例>
本変形例では、第2実施形態におけるリレーレンズ72が複数のリレーレンズ(72a、72b。図示なし)を含む構成について説明する。
リレーレンズ72aは、前眼部Ecを撮影する際に用いられるレンズである。撮影光学系30に前眼部専用レンズ300が挿入された状態で、固視光学系70にリレーレンズ72aを挿入することで、眼底Efに固視標の像の焦点位置を合わせることができる。つまり、固視標表示部71と眼底Efとの共役関係を保つことができる。
リレーレンズ72bは、眼底Efを撮影する際に用いられるレンズである。撮影光学系30から前眼部専用レンズ300が離脱された状態で、固視光学系70にリレーレンズ72bを挿入することで、眼底Efに固視標の像の焦点位置を合わせることができる。つまり、固視標表示部71と眼底Efとの共役関係を保つことができる。
本変形例において、リレーレンズ72aが「第1モード用レンズ」に該当し、リレーレンズ72bが「第2モード用レンズ」に該当する。
また、本実施形態の眼科撮影装置1は、リレーレンズ駆動部84の代わりに、リレーレンズ切換部87(図示なし)を有する。リレーレンズ切換部87は、たとえばソレノイドを含んで構成され、モードの選択に対応してリレーレンズ72a又はリレーレンズ72bを固視光学系70の光路に移動させる。たとえば、第1モードが選択された場合、撮影光学系30の光路に前眼部専用レンズ300が挿入されることにより、眼底Efに対する固視標の像の焦点位置がずれる(固視標表示部71と眼底Efの共役関係が崩れる)。この場合、リレーレンズ切換部87は、リレーレンズ72aを固視光学系70の光路に挿入させる。リレーレンズ72aを固視光学系70の光路に挿入することで固視標の像の焦点位置を眼底Efに合わせることができる。
<作用・効果>
以上のような眼科撮影装置1の作用及び効果について説明する。
本変形例に係る眼科撮影装置1は、第1レンズとして、第1モードに対応して用いられる第1モード用レンズ(リレーレンズ72a)と、第2モードに対応して用いられる第2モード用レンズ(リレーレンズ72b)とを含んで構成されている。制御部211は、第1モード用レンズ又は第2モード用レンズを固視光学系70の光路に挿脱させることにより、光学素子の配置を変更する。つまり、固視標の呈示態様を変更する。
従って、本実施形態の構成によれば、被検眼の撮影部位(たとえば、前眼部Ecや眼底Ef)に対応してリレーレンズの種類を変更することにより、被検眼Eに対して所望の固視標の像を呈示できる。つまり、被検眼の撮影部位に関わらず、固視の適正化を図ることができる。
<第3実施形態>
次に、図8及び図9を参照して、第3実施形態に係る眼科撮影装置の構成について説明する。第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成については同じ符号を用いる。また、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する場合がある。
また、本実施形態において、制御部211が固視光学系70を制御し、固視標の呈示態様を変更させる場合、第1実施形態から第3実施形態のいずれかの手法を用いることができる。第3実施形態の手法を用いる場合、リレーレンズ72aは「前眼部用レンズ」に該当し、リレーレンズ72bは、「眼底用レンズ」に該当する。以下では、第1実施形態の手法を用いる場合について説明する。
本実施形態の眼科撮影装置1は、本体部(図示なし)及び架台移動部88を有する(図8参照)。本体部は、たとえば従来と同様に基台部(図示なし)と架台部(図示なし)とを有する。基台部は、机や床に固定される。架台部は、照明光学系10、撮影光学系30及び固視光学系70を含んで構成され、基台部に対して移動可能となっている。架台移動部88は、たとえばパルスモータを含んで構成され、制御部211からの制御信号に基づいて基台部に対して架台部を相対的に移動させる。具体的に説明すると、入力部250等から架台部を移動させるための指示入力があった場合、制御部211からの制御信号に基づき、架台移動部88は、対物レンズ22を含む架台部を顎受け(額当て)に対して近づけたり遠ざけたりする。すなわち、架台移動部88は、被検眼Eと対物レンズ22との作動距離(ワーキングディスタンス:WD)を変更させる動作を行う。一般的に、眼底Efを撮影する場合には、架台部を被検眼Eに近づける。前眼部Ecを撮影する場合には、架台部を被検眼Eから遠ざける。本実施形態において、架台移動部88が「架台部移動手段」に該当する。なお、従来と同様に、架台部を手動で動かす構成も可能である。
記憶部212には、所定の閾値が予め記憶されている。閾値は、眼科撮影装置1において眼底Efを撮影するか前眼部Ecを撮影するかを判断するための値である。WDは、装置により前眼部Ec用と眼底Ef用とが予め決まっている。閾値は、その値を基に決まる。たとえば、前眼部撮影が可能なWDと眼底撮影が可能なWDとの間の位置(たとえば、中間位置)を閾値とする。
制御ユニット210は、位置検出部211aを有する(図8参照)。位置検出部211aは、基台部に対する架台部の位置を検出する。架台部が手動で移動される場合、当該位置はエンコーダ等の位置センサーにより検出される。架台部が制御部211により移動される場合、制御部211は、その制御信号に基づいて架台部の位置を特定する。
或いは、眼科撮影装置1によって撮影された画像を解析し、その画像の変化により本体部の大まかな位置を検出してもよい。たとえば、撮影画像に被検眼Eの全体が映っている場合、架台部は被検眼Eから遠い位置にあるといえる。一方、撮影画像に被検眼Eの一部しか映っていない場合、架台部は被検眼Eに近い位置にあるといえる。
制御部211は、位置検出部211aの検出結果と閾値との比較結果に基づいて、固視光学系70を制御し、固視標の呈示態様を変更する。たとえば、位置検出部211aで検出された架台部の位置が閾値よりも大きい(前眼部Ec用のWDに近い)という比較結果が得られると、制御部211は、被検眼Eの前眼部Ecを撮影するために固視光学系70を制御する。具体的には、前眼部専用レンズ駆動部83により前眼部専用レンズ300が撮影光学系30に挿入されると、制御部211は、リレーレンズ駆動部84を駆動させ、リレーレンズ72を固視光学系70の光路に挿入する。また制御部211は、絞り調整部85を駆動させ、絞り73の開口サイズを狭めることにより、眼底Efに投影される固視標の像のサイズを変更する。
<動作>
次に、図9を参照して、第3実施形態に係る眼科撮影装置1の動作について説明する。ここでは、OCTユニット100を用いて被検眼Eを撮影する場合について述べる。また、以下の動作では、検査者が眼底Efの撮影を行った後、前眼部Ecの撮影を継続して行う場合について説明する。
まず、検査者は被検眼Eに対して本体部を遠ざけるよう入力部250により入力を行う。制御部211は、架台移動部88を駆動させ、被検眼Eに対して架台部を遠ざけるように移動させる(S30)。
位置検出部211aは、S30での移動に際し、基台部に対する架台部の位置を測定する(S31)。測定結果は制御部211に送信する。
制御部211は、S31での測定結果と記憶部212に記憶された閾値とを比較する。S31での測定結果が閾値よりも大きい場合(S32でYの場合)、制御部211は、前眼部Ecを撮影するよう撮影光学系30及び固視光学系70の調整を行う。
すなわち、制御部211は、前眼部専用レンズ300を撮影光学系30の光路に挿入させ(S33)、撮影光学系30の光路で合焦レンズ31の位置を移動させる(S34)。S33及びS34により、撮影光学系30のピント(焦点位置)が前眼部Ecに合致する。
また、制御部211は、リレーレンズ72を固視光学系70の光路に挿入させ(S35)、絞り73の開口サイズを狭める(S36)。S36により、第1モードにおいて眼底Efに適切な固視標の像を投影することが可能となる。よって、固視の適正化を図ることができる。
その後、制御部211は、コリメータレンズ113及び参照ミラー114を第1モードの撮影に対応する位置に移動させる(S37)。アライメント光学系50等により撮影光学系30と前眼部Ecとの位置合わせが完了する(S38)。以上の動作を行った後、第1モードによる撮影が開始される(S39)。
一方、S31での測定結果が閾値よりも小さい場合(S32でNの場合)、前眼部Ecを撮影できる作動距離が確保されていないこととなる。この場合、制御部211は、架台移動部88を駆動させ、被検眼Eから架台部を更に遠ざける(S30)。
<作用・効果>
以上のような眼科撮影装置1の作用及び効果について説明する。
本実施形態に係る眼科撮影装置1は、撮影光学系30と、固視光学系70と、基台部と、架台部と、架台移動部88と、制御部211とを有する。撮影光学系30は、被検眼Eを撮影する。固視光学系70は、固視標を表示する固視標表示部71を撮影光学系30から分岐した光路に有し、固視標表示部71により表示された固視標の像を被検眼Eに投影する。架台部は、撮影光学系30及び固視光学系70を含む。架台移動部88は、架台部を移動させる。制御部211は、架台部の位置に対応して固視光学系70を制御し、固視標の呈示態様を変更する。更に、本実施形態に係る眼科撮影装置1は、所定の閾値を予め記憶する記憶部212を有する。制御部211は、架台部の位置を検出する位置検出部211aを有する。位置検出部211aによる検出結果と所定の閾値との比較結果に基づいて固視光学系70を制御し、固視標の呈示態様を変更する。
従って、本実施形態の構成によれば、被検眼の撮影部位(たとえば、前眼部Ecや眼底Ef)に関わらず、眼底Efにピントが合った固視標の像を呈示できる。つまり、被検眼の撮影部位に関わらず、固視の適正化を図ることができる。
<変形例1>
前眼部専用レンズ300が撮影光学系30の光路に挿脱される構成は、上記実施形態で説明したような自動に限られない。たとえば、手動で前眼部専用レンズ300を撮影光学系30の光路に挿脱させることも可能である。
この場合、前眼部専用レンズ駆動部83の代わりに、前眼部専用レンズ検出部89を設ける(図10参照)。前眼部専用レンズ検出部89は、前眼部専用レンズ300が撮影光学系30の光路に挿入(または離脱)されたことを検知する。たとえば、前眼部専用レンズ検出部89によって前眼部専用レンズ300が撮影光学系30の光路に挿入されたことを検知した場合、その結果は、制御部211に送られる。制御部211は、当該検知結果に基づいてリレーレンズ駆動部84や絞り調整部85等を動作させ、第1モードで撮影が可能な状態とする。逆に、前眼部専用レンズ検出部89によって前眼部専用レンズ300が撮影光学系30の光路から離脱されたことを検知した場合、その結果は、制御部211に送られる。制御部211は、当該検知結果に基づいてリレーレンズ駆動部84や絞り調整部85等を動作させ、第2モードで撮影が可能な状態とする。
また、前眼部専用レンズ検出部89の検出結果に基づいて、制御部211が架台部の位置を決定し、架台移動部88を制御して架台部の位置を移動させることも可能である。たとえば、前眼部専用レンズ検出部89によって前眼部専用レンズ300が撮影光学系30の光路に挿脱されたことを検知した場合、その結果は、制御部211に送られる。制御部211は、当該検知結果に基づいて架台移動部88を駆動させ、架台部を前眼部EcのWD(或いは、眼底EfのWD)まで移動させる。
<変形例2>
上記実施形態では、固視標の像のサイズを変更する手法として、絞り73を設ける構成や、固視標表示部71自体を移動させる構成について説明したが、固視標の像のサイズを変更する構成は、これに限られない。制御部211は、固視標表示部71による固視標の表示態様を変更することにより、固視標の像のサイズを変更することができる。更に、固視標の視認性を向上させることも可能である。
たとえば、固視標表示部71としてLEDを用いる場合、制御部211は固視標表示部71を制御し、点灯させるLEDの数を変えることにより、固視標の大きさを調整することが可能である。たとえば、固視標の像を大きくしたい場合、制御部211は、隣接する複数のLEDを点灯させる。このように、絞り73を用いることなく固視標の像のサイズを変更することが可能である。
更には、制御部211は固視標表示部71を制御し、LEDを選択的に点灯させることで固視標の像の形状を変えることが可能である。また、制御部211が固視標表示部71を制御して、LEDの明るさを調節することや、LEDが点灯する色を変更することも可能である。このような制御を行うことにより、固視標の像の視認性を上げることができる。
<その他>
以上に説明した構成は、この発明を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形を適宜に施すことが可能である。また、上記実施形態や変形例の構成を適宜組み合わせることが可能である。