JP2016028375A - 炭素複合ケイ素材料及びその製造方法並びにリチウム二次電池用負極材料 - Google Patents

炭素複合ケイ素材料及びその製造方法並びにリチウム二次電池用負極材料 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、サイクル特性に優れたリチウム二次電池用負極材料として適用可能な炭素複合ケイ素材料及びその製造方法を提供することにある。【解決手段】繊維状、網目状又はウイスカ状に凝集した特異的な表面形態を有するケイ素凝集体の表面に炭素成分が存在して複合化することを特徴とする炭素複合ケイ素材料を提供する。前記リチウム二次電池用負極材料は、ケイ素粒子及び/又はケイ素へ変換可能なケイ素成分及び炭素化可能な成分及びバインダーが溶解または分散した前駆体溶液を電界紡糸法で繊維化する工程と、前記工程の生成物を非酸素雰囲気中で加熱する工程により製造される。また、リチウム二次電池用負極材料として適用される。【選択図】 図1

Description

この発明は、繊維状、網目状又はウイスカ状に凝集した特異的な表面形態を有するケイ素凝集体の表面に炭素成分が存在する炭素複合ケイ素材料及びその製造方法並びにリチウム二次電池用負極材料に関する。
大気汚染や地球温暖化への対策として、CO排出量の低減やエネルギー効率の効率化に向けた種々の対策がなされており、自動車業界においては、電気自動車やハイブリッド電気自動車の導入によるCO排出量の削減が期待されている。そして、これら車両のモータ駆動用電源として、高性能な二次電池の開発が進んでいる。
このような自動車用モータの駆動に用いられる二次電池としては、特に高容量であることやサイクル特性に優れていることが求められることから、各種二次電池の中でも、高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目されている。
リチウムイオン二次電池におけるエネルギー密度を高めるためには、正極と負極の単位質量当たりに蓄えられる電気量を高める必要があり、このような要求を満たすためにはそれぞれの活物質の選定が極めて重要なものとなる。
炭素を負極として用いる従来のリチウム二次電池のエネルギー密度を向上させることはほぼ限界に達している。炭素を負極として用いた場合、そのサイクル特性は良好であるが、その初期充電容量を電気自動車やハイブリッド電気自動車などの車両モータ駆動用電源としてもとめられるまで大きく出来ない。
炭素を負極に用いる代わりにシリコンを用いた場合は、グラファイトを用いた場合に比べて初期充電容量大きくすることが可能であるが(シリコンの理論容量:4200mAh/g、グラファイトの理論容量:372mAh/g)、シリコンはリチウムの吸蔵脱離に伴いシリコン負極が膨張と収縮を繰り返すためシリコン粒子の割れによる微粒子化や集電体からの剥離によりサイクル特性が非常に悪く、グラファイトの場合と比べても良好なサイクル特性を維持できない
特許文献1では、アモルファスシリコン薄膜中に結晶性シリコンが点在する形態であり、結晶性シリコンの結晶サイズが5nm未満である結晶性シリコンを負極活物質とすることが開示されている。
特許文献2では、鱗片状の薄膜微粉末の前記平均長径と前記平均厚みとの比、即ち平均長径/平均厚みで示されるアスペクト比が5以上であるシリコン負極材料が開示されている。
特許文献3では、結晶性金属の形状やサイズを制御、最適化することによって、具体的には結晶すべり面に対する垂直方向の大きさが500nm以下、より好適には100nm以下の構造にすることでサイクル特性が改善されることが開示されている。
一方、発明者らは、ケイ素粒子より構成された特異的な表面形態を有して、繊維状、網目状又はウイスカ状に凝集したケイ素凝集体及びその製造方法に関する発明を特願2014−012390号として特許出願した。
特開2007−194204号公報 特開2011−65983号公報 特開2013−89408号公報
シリコンのような結晶性金属を主成分とする負極活物質は、先に述べたように高容量であるがリチウム(Li)吸蔵時の体積変化から生じる活物質粒子の割れに起因する微粉化が集電性の劣化を引き起こすという欠点があり、このような問題を解消し、リチウムイオン二次電池用負極材料としてサイクル特性に優れた材料を供給することにある。
上記課題を解決する本発明は、以下の技術的手段から構成される。
〔1〕 ケイ素粒子が凝集して繊維状、網目状又はウイスカ状になっているケイ素凝集体であって、前記ケイ素凝集体表面に炭素成分が存在することを特徴とする炭素複合ケイ素材料。
〔2〕 前記ケイ素粒子が、前記ケイ素凝集体の表面においては、粒子径が50nm以上3μm以下で凝集していることを特徴とする前記〔1〕に記載の炭素複合ケイ素材料。
〔3〕 前記ケイ素凝集体において、ケイ素凝集体の凝集径が5μm以下であることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の炭素複合ケイ素材料。
〔4〕 前記炭素複合ケイ素材料において、炭素含有量が炭素複合ケイ素材料の3重量%から50重量%であることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の炭素複合ケイ素材料。
〔5〕 ケイ素粒子及び/又はケイ素へ変換可能なケイ素成分及び炭素化可能な成分及びバインダーが分散又は溶解した前駆体溶液を電界紡糸法で繊維化する工程と、前記工程の生成物を非酸素雰囲気中で加熱する工程を含むことを特徴とする炭素複合ケイ素材料の製造方法。
〔6〕 前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の炭素複合ケイ素材料が用いられることを特徴とするリチウム二次電池用負極材料。
本発明は、これまでに類のない表面に凹凸構造を有する繊維状、網目状又はウイスカ状のケイ素凝集体と、前記ケイ素凝集体表面に炭素成分が存在することを特徴とする炭素複合ケイ素材料が提供可能となる。また、リチウムイオン二次電池用負極材料として適用可能な炭素複合ケイ素材料の提供が可能となる。
また、本発明に係る製造方法によれば、繊維径が5μm以下の様々な太さの繊維状又は網目状又はウイスカ状の多結晶ケイ素凝集体を作製することができる。
この様な多結晶ケイ素凝集形態を有するリチウム二次電池用負極材料は二次電池分野における応用が期待される新しい産業上有用な素材である。
実施例1の炭素複合ケイ素材料の電子線顕微鏡写真(50000倍)。 実施例2の炭素複合ケイ素材料の電子線顕微鏡写真(5000倍)。 実施例3の炭素複合ケイ素材料の電子線顕微鏡写真(5000倍)。 実施例1の炭素複合ケイ素材料のラマンスペクトル。 実施例2の炭素複合ケイ素材料のラマンスペクトル。 実施例3の炭素複合ケイ素材料のラマンスペクトル。 実施例6と比較例1のリチウム二次電池用負極材料のサイクル特性 実施例7のリチウム二次電池用負極材料のサイクル特性 実施例8と比較例2のリチウム二次電池用負極材料のサイクル特性比較
本発明の炭素複合ケイ素材料は、ケイ素粒子が凝集して繊維状、網目状又はウイスカ状になっているケイ素凝集体であって、前記ケイ素凝集体表面に炭素成分が存在することを特徴とする炭素複合ケイ素材料である。
本発明の炭素複合ケイ素材料を構成するケイ素粒子は、非晶質または結晶質であっても良い。また、一つの粒子が多結晶体や非晶質と結晶質の混成体であってもよい。リチウム二次電池用負極材料の特性を変化するための微量の添加物が含まれても良い。
ケイ素粒子は、ケイ素凝集体表面において粒子径50nm以上3μm以下であることが好ましい。
炭素複合ケイ素材料を構成する炭素成分は、炭素単体であることが好ましく、結晶性、非晶質など炭素単体に限定されない。また、一部のケイ素が炭素や酸素と結合してSiCやSiOCとして存在してもよい。さらに、ケイ素凝集体表面でない部分の一部に炭化水素が存在してもよい。
ケイ素粒子と炭素成分の複合化の形態は、炭素成分がケイ素粒子の表面を覆っている、一部接着している、化学結合しているなど、特に限定されないが、炭素成分の共存によりリチウム二次電池用負極材料などへの適用に必要な電子伝導性を付与することが可能である。また、架橋構造を形成し繊維状、網目状又はウイスカ状の構造を形成するための助剤としても機能する。
更には、本発明の炭素複合ケイ素材料は、ケイ素凝集体の凝集径が5μm以下であることが好ましい。より好ましいケイ素凝集体の凝集径は、構成するケイ素粒子のサイズに依存するが、100nmから5μmが好ましい。100nm未満であると破砕した場合の飛散などが生じその取扱いが難しくなる。5μmを超えると通常の粉砕ケイ素粒子との差異が得られないため好ましくない。さらに好ましくは、200nmから3μmである。
また、本発明の炭素複合ケイ素材料は、炭素含有量が炭素複合ケイ素材料の3重量%から50重量%であることが好ましい。3重量%未満であると、目的とする導電性やリチウムイオン二次電池負極としての特性が発現できないため好ましくない。50重量%を超えるとケイ素が本来持つ特性を発現できないために好ましくない。
そして、より好ましくは、炭素複合ケイ素材料の炭素含有量が炭素複合ケイ素材料の
5重量%から45重量%であり、特に好ましくは、15重量%から45重量%である。
本発明の炭素複合ケイ素材料は、ケイ素粒子及び/又はケイ素へ変換可能なケイ素成分及び炭素化可能な成分及びバインダーが分散又は溶解した前駆体溶液を電界紡糸法で繊維化する工程と、前記工程の生成物を非酸素雰囲気中で加熱する工程により製造されるが、紡糸方法は特に限定されるものではない。
一般にポリマーの紡糸方法が適用可能であり、溶融紡糸(乾式紡糸)、湿式紡糸、電界紡糸などが適用される。特に、ケイ素凝集体の凝集径を5μm以下にする場合、電界紡糸法によって製造されることが好ましい。
前記のケイ素へ変換可能なケイ素成分としては、加熱処理によりケイ素に変換可能なものであれば特に限定されない。具体的には、有機化合物で被覆されたケイ素微粒子のほか、ポリシラン、ポリシリンなどが用いられる。
前記の炭素化可能な成分としては、炭化水素系化合物であれば特に限定するものではないが、好ましくは、樹脂素材、糖やセルロース、黒鉛を酸化分解して形成された水酸基やカルボキシル基等を含む炭化水素系成分が用いられる。
前記のバインダーとなるポリマーとしては、非酸素雰囲気下での加熱処理により除去可能なものであれば特に限定されないが、好ましくはビニル系ポリマーが用いられる。ビニル系ポリマーとしては、PE、PP、PIB、PVC、PVDF、PEFE、PVAc、PVA、PVB、PVF、PAN、PMAN、PMMA、PMME、PMA、PSやこれらのコポリマーが用いられる。
電界紡糸では、ケイ素粒子及び/又はケイ素へ変換可能なケイ素成分及び炭素化可能な成分が分散又は溶解した前駆体溶液とするための溶媒は、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコール−α−モノメチルエーテル、プロピレングリコール−α−モノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−α−アセテートなどのグリコール誘導体、アセトン、MEKなどのケトン類、エチルエーテル、THF、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸プロピル、α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン等のエステル類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、β-ラクタム、γ-ラクタム、δ-ラクタムなどのアミド類などがあり、ケイ素粒子及び/又はケイ素へ変換可能な成分が可溶もしくは分散可能であり、バインダーとなるポリマーが可溶であり、電場印加により誘電分極が起こりうる溶剤であれば特に限定されない。
湿式紡糸では、前記の溶剤に加え、アルカンのような非極性溶媒も用いられる。ケイ素粒子及び/又はケイ素へ変換可能なケイ素成分及び炭素化可能な成分が可溶もしくは分散可能であり、バインダーとなるポリマーが可溶であれば特に限定されない。
溶融紡糸(乾式紡糸)では溶剤を使用しないため、ケイ素粒子及び/又はケイ素へ変換可能なケイ素成分及び炭素化可能な成分が分散可能であるような熱可塑性のポリマーをバインダーとする。
以下、本発明の紡糸法の中でも最も好ましい電界紡糸法を用いた炭素複合ケイ素材料の製造方法について説明する。
本発明に用いる電界紡糸法は、粘性を有する溶液を高電圧を印加したシリンジ針とコレクタ(対極)間に射出させることによって溶液中の固形物成分からなる繊維からなる不織布をコレクタ上に得る工程である。既知の不織布製造方法によって得られる不織布に比べて、得られる樹脂製繊維の直径が小さいことが特徴である。
本発明の炭素複合ケイ素材料の製造方法は、最初に、ケイ素粒子及び/又はケイ素へ変換可能なケイ素成分及び炭素化可能な成分及びバインダーが分散又は溶解した前駆体溶液を電界紡糸法で繊維化する工程を有する。
前記工程では、ケイ素凝集体表面に炭素成分が存在して複合化したケイ素含有繊維が得られる。そのためには、ケイ素粒子及び/又はケイ素へ変換可能なケイ素成分及び炭素化可能な成分及びバインダーとなるポリマーが共存して分散または溶解した混合溶液(前駆体溶液)を作ることが必要である。前駆体溶液の固形分(ケイ素粒子及び/又はケイ素へ変換可能なケイ素成分及び炭素化可能な成分及びバインダー)濃度は電界紡糸条件を考慮すると、2重量%〜50重量%程度であることが望ましい。好ましくは5重量%〜30重量%となる。ケイ素粒子及び/又はケイ素へ変換可能なケイ素成分及び炭素化可能な成分及びバインダーとなるポリマー成分が前記した含有比率内に収まるように混合する。
前駆体溶液中のケイ素成分として、ケイ素粒子を用いる場合は平均粒径3μm以下のケイ素微粒子であることが好ましい。ケイ素微粒子の形状は限定されず、最大長が平均粒径3μm以下であれば等方性、異方性形状を有する粒子を用いることが可能である。平均粒径3μm以下のケイ素微粒子を原料とすることにより、前記ケイ素凝集体の粒子径が50m以上5μm以下で凝集している炭素複合ケイ素材料を確実に形成することができる。
前記混合溶媒に用いる溶剤としては、ケイ素微粒子及び/又はケイ素に変換可能な成分及び複合化する炭素成分が可溶もしくは分散可能であり、バインダーとなるポリマーが可溶であり、電場印加により誘電分極が起こりうる溶剤であれば特に限定されないが、前記した溶媒を用いるのが好ましい。
前記工程で得られた炭素複合ケイ素含有繊維は、非酸素雰囲気中で加熱する工程により目的とする炭素複合ケイ素材料を形成する。非酸素雰囲気中で加熱する工程は、構成するケイ素の酸化を抑制するため、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの非酸素雰囲気中で加熱処理を行う。必要に応じ水素などの還元性ガスを導入することも可能である。
加熱温度は、バインダー成分が除去でき、ケイ素成分に複合化した炭素化可能な成分の炭素化が可能な温度であれば特に限定されない。500℃から1000℃の温度で処理する事が好ましい。1000℃を超える温度で処理すると凝集体を構成するケイ素粒子の焼結の進行や炭素成分とケイ素成分の過剰な反応が進行するため目的の特性を発現する事が出来ない。より好ましくは、550℃から700℃である。
この加熱する工程で、電界紡糸工程で用いたバインダー成分としての有機物やその残留炭素成分は除去されるが、炭素複合ケイ素材料を形成する炭素成分はケイ素凝集体の表面に残留する。
本発明の炭素複合ケイ素材料は、リチウム二次電池用負極材料として用いられる。リチウム二次電池の電極反応はリチウムイオンと電子の授受が電解液と粒子界面で生じる。リチウムイオンは電解液中を伝導し粒子中へ、電子は粒子を通して集電体へ流れる。そのため、リチウムイオンが伝導する電解液と粒子が接触する面積を増やすこと、集電体までの電子の通り道を増やすことが効率良い電極反応をもたらし、放電容量とサイクル寿命の良好な特性を示すことに繋がる。
リチウム二次電池用負極材料として用いる本発明の炭素複合ケイ素材料は、繊維状、網目状又はウイスカ状に凝集する事により有効な電解質の拡散パスを提供可能であり、ケイ素凝集体と炭素が複合化する事により電子伝導性を付与する事が可能である。炭素によるケイ素凝集体を構成するケイ素粒子中へのリチウムイオンの挿入・脱離反応に伴うシリコン粒子の膨張・収縮によるサイズ変化を、炭素材料が抑止し、また、繊維状、網目状又はウイスカ状に凝集する事により形成する空孔により、凝集体の膨張・収縮による電極体積変化を緩和する事ができ、リチウム二次電池のサイクル特性を向上する事が可能となる。
〔実施例1〕
バインダー成分とするポリビニルアルコール(PVA0.767g)を蒸留水3.068gに添加し、濃度20wt%PVA水溶液を調製した。そこへ、ケイ素ナノ粒子(アルドリッチ社製、平均粒径100nm)0.192g(ポリビニルアルコールの25%)を添加し、超音波分散して濃度10.3wt%に調製した。
この分散液を電界紡糸用ケイ素前駆体成分液とし、厚み20μmのアルミ箔をコレクタとして電界紡糸を行った。
電界紡糸の条件は、電界強度1.3kV/cm,吐出速度0.008ml/min,塗布時間20minとした。
得られた繊維状形成物をアルゴン雰囲気中(2ml/min)、10℃/minの昇温速度で600℃まで加熱し1時間保持することによりバインダー成分を除去し、炭素複合ケイ素材料1を得た。
電子顕微鏡観察(図1)より、得られた炭素複合ケイ素材料1は、平均粒径80nmのケイ素粒子と炭素成分より構成され、1から2μmの繊維径であった。ラマンスペクトル(図4)より、得られた炭素複合ケイ素材料1は結晶性ケイ素と炭素成分から構成されていた。また、高周波燃焼方式(堀場製作所製炭素・硫黄分析装置)により15重量%の炭素を含有することが確認された。
これらの結果より、実施例1で形成された材料は、ケイ素成分と炭素成分が複合化され、網目状に凝集していることが確認された。
〔実施例2〕
バインダー成分とするポリビニルアルコール(PVA0.767g)を蒸留水3.068gに添加し、濃度20wt%PVA水溶液を調製した。そこへ、炭素成分原料1の2wt%水溶液6.5gとケイ素ナノ粒子(アルドリッチ社製、平均粒径100nm)0.192g(ポリビニルアルコールの25%)を添加し、超音波分散して濃度10.3wt%に調製した。
この分散液を電界紡糸用ケイ素前駆体成分液とし、厚み20μmのアルミ箔をコレクタとして電界紡糸を行った。
電界紡糸の条件は、電界強度1.3kV/cm,吐出速度0.008ml/min,塗布時間20minとした。
得られた繊維状形成物をアルゴン雰囲気中(2ml/min)、10℃/minの昇温速度で600℃まで加熱し1時間保持することによりバインダー成分を除去し、炭素複合ケイ素材料2を得た。
電子顕微鏡観察(図2)より、得られた炭素複合ケイ素材料1は、平均粒径80nmのケイ素粒子と炭素成分より構成され、1から2μmの繊維径であった。ラマンスペクトル(図5)より、得られた炭素複合ケイ素材料2は結晶性ケイ素と炭素成分から構成されていた。また、高周波燃焼方式(堀場製作所製炭素・硫黄分析装置)により45重量%の炭素を含有することが確認された。
これらの結果より、実施例1で形成された材料は、ケイ素成分と炭素成分が複合化され、網目状に凝集していることが確認された。
前記炭素成分原料1は、黒鉛を酸化分解して形成された水酸基やカルボキシル基等を含む炭化水素系成分であり、以下の方法で合成した。
機械撹拌装置と還流管、滴下ロートを装着した500ml三ツ口フラスコを、氷冷により10℃とした。ここへ、硫酸46mlと黒煙1.0gを投入し300rpmで撹拌した。そこへ、硝酸ナトリウム1.0gを添加した。15分撹拌後、過マンガン酸カリウム6.0gを温度上昇が5℃程度に収まるようにはじめゆっくりと添加した。添加終了後35℃で1h撹拌した後、蒸留水280mlをゆっくり滴下した。この際、はじめの20ml程度は激しく発熱し、さらに50ml程度までは発泡するが、その後収まった。反応液が90℃となるまで昇温し、0.5h撹拌した。30%過酸化水素水6mlを滴下し反応を終了した。12000rpm,20minで遠心分離し、上澄みを除去した。蒸留水250mlを添加し同条件で遠心分離後上澄みを除去した。同様の操作を上澄みが中性になるまで繰り返した。最後に蒸留水を100g加えて1wt%溶液(1.0g/100g)に調製した。電界紡糸用ケイ素前駆体成分液合成の際は、所定の濃度に濃縮して使用した。
〔実施例3〕
実施例2と同じ手法で、鱗片状ナノケイ素(平均粒子厚み:20nm、平均面方向サイズ:2μm)0.25g(ポリビニルアルコールの25%)を超音波分散し、濃度11.6wt%に調製した。
この分散液を電界紡糸用ケイ素前駆体成分液とし、厚み20μmのアルミ箔をコレクタとして電界紡糸を行った。
電界紡糸の条件は、電界強度1.3kV/cm,吐出速度0.008ml/min,塗布時間20minとした。
電子顕微鏡観察(図3)より、得られた炭素複合ケイ素材料3は、平均粒径2μmの鱗片状ケイ素より構成され、1から3μmの繊維径であった。ラマンスペクトル(図6)より、得られた炭素複合ケイ素材料2は結晶性ケイ素と炭素成分から構成されていた。また、高周波燃焼方式(堀場製作所製炭素・硫黄分析装置)により27重量%の炭素を含有することが確認された。
これらの結果より、実施例2で形成された材料は、ケイ素成分と炭素成分が複合化され、網目状に凝集していることが確認された。
〔実施例4〕
実施例1と同じ手法で、ケイ素ナノ粒子(アルドリッチ社製、平均粒径100nm)0.192g(ポリビニルアルコールの25%)、グルコース0.13g、蒸留水7.5gを添加して濃度10.3wt%に調製し、超音波分散した。
この分散液を電界紡糸用ケイ素前駆体成分液とし、厚み20μmのアルミ箔をコレクタとして電界紡糸を行った。
電界紡糸の条件は、電界強度1.3kV/cm,吐出速度0.008ml/min,塗布時間20minとした。
電子顕微鏡観察とラマンスペクトルより、実施例4で形成された材料は、ケイ素成分と炭素成分が複合化され、網目状に凝集していることが確認された。
〔実施例5〕
実施例1と同じ手法で、鱗片状ナノケイ素0.192g(ポリビニルアルコールの25%)、グルコース0.13g、蒸留水7.5gを添加して濃度10.3wt%に調製し、超音波分散した。
この分散液を電界紡糸用ケイ素前駆体成分液とし、厚み20μmのアルミ箔をコレクタとして電界紡糸を行った。
電界紡糸の条件は、電界強度1.3kV/cm,吐出速度0.008ml/min,塗布時間20minとした。
電子顕微鏡観察とラマンスペクトルより、実施例5で形成された材料は、ケイ素成分と炭素成分が複合化され、網目状に凝集していることが確認された。
〔実施例6〕
実施例1で得られた炭素複合ケイ素材料1が70重量部、導電材アセチレンブラックが15重量部およびPI(ポリイミド)15重量部をNMP(N−メチル−2−ピロリドン)324重量部と混合し、負極合材スラリーを得た。18μmの銅箔の面上に、上記負極合材スラリーを塗布し、乾燥した後、プレス加工した。プレス後、電極を真空減圧下に置き、230℃で10時間乾燥した。
上記で得られた厚さ19μm、密度0.56g/cmの負極(電極面積:17mmφ)を作用極とし、リチウム金属を対極に用い、電解液としてエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを3:7(体積比)で混合した溶媒に1mol/lの濃度にLiPFを溶解した溶液を用いて、電気化学セルをドライボックス中で作製した。
炭素複合ケイ素材料1の重量あたり400mA/gの電流でリチウム電位に対して1mVの定電圧を電流が80mA/gに減衰するまで印可した時の充電容量は2825mAh/gであった。その後、400mA/gの電流で2.0Vまで放電した時の容量は2048mAh/gであった(1サイクル目)。2サイクル目以降、1サイクル目と同様の充放電を実施し、10サイクル目の放電容量は1977mAh/gであり、1サイクル目に対する容量維持率は96.5%であった。
〔比較例1〕
ケイ素ナノ粒子(アルドリッチ社製、平均粒径100nm)が70重量部、導電材アセチレンブラックが15重量部およびPI(ポリイミド)15重量部をNMP(N−メチル−2−ピロリドン)379重量部と混合し、負極合材スラリーを得た。18μmの銅箔の面上に、上記負極合材スラリーを塗布し、乾燥した後、プレス加工した。プレス後、電極を真空減圧下に置き、230℃で10時間乾燥した。
上記で得られた厚さ12μm、密度0.88g/cmの負極(電極面積:17mmφ)を作用極とし、リチウム金属を対極に用い、電解液としてエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを3:7(体積比)で混合した溶媒に1mol/lの濃度にLiPFを溶解した溶液を用いて、電気化学セルをドライボックス中で作製した。
ケイ素ナノ粒子の重量あたり400mA/gの電流でリチウム電位に対して1mVの定電圧を電流が80mA/gに減衰するまで印可した時の充電容量は3461mAh/gであった。その後、400mA/gの電流で2.0Vまで放電した時の容量は2485mAh/gであった(1サイクル目)。2サイクル目以降、1サイクル目と同様の充放電を実施し、10サイクル目の放電容量は1833mAh/gであり、1サイクル目に対する容量維持率は73.8%であった。
実施例6および比較例1の充放電試験結果(図7)より、実施例6は比較例1と比べて、炭素による凝集体であることから、初期容量は規制され若干小さくなるが、サイクル劣化は小さく、10サイクル目ですでに比較例1に比べ高い容量を示し、長期的に高い容量を維持することが可能である。
〔実施例7〕
実施例1の操作により得られた炭素複合ケイ素材料1(活物質)に、アセチレンブラック(AB)と、ポリフッカビニリデン(PVDF)をN-メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解したものを、活物質:AB:PVDFの重量比が58:25:17となるように混合して電極合材を作製し、その合材を銅メッシュ(φ=15mm,100mesh)に圧着して電極を得た。
上記電極を乾燥し、Li金属を対極、グラスフィルターをセパレータ、EC/DEC(v/v%)−1M LiPFを電解液とした半電池を作製した。
作製した半電池は、次の条件でLiの挿入(充電)、脱離(放電)を10回繰り返した。まず、電圧が0.01V(vs Li/Li)になるまで一定電流−0.6mAを保ち、電圧が0.01Vに達した後は電流が−0.4mAになるまで一定電圧0.01V(vs Li/Li)を保つことでLiを挿入した。Li挿入後、電圧が1.5V(vs Li/Li)になるまで一定電流0.6mAを保ち、電圧が1.5Vに達した後は電流が0.4mAになるまで一定電圧1.5V(vs Li/Li)を保つことでLiを脱離した。
上記条件の充放電条件による、10サイクルの充放電試験結果(図8)より、炭素複合ケイ素材料1を活物質として用いた初回の放電容量は約530mAh/gであり、ケイ素の理論容量に比較して小さいが、初期サイクル劣化はほとんど見られないことがわかった。
〔実施例8〕
実施例3の操作により得られた炭素複合ケイ素材料2を活物質として、実施例7と同様の方法で電極作製と半電池としての評価を実施した。
上記条件の充放電条件により、炭素複合ケイ素材料2を活物質として用いた初回の放電容量は約1200mAh/gであった。
〔比較例2〕
実施例3で用いた鱗片状ケイ素0.3gと炭素成分原料1の0.46wt%水溶液4.69gを超音波分散で混合し、水を除去後真空乾燥して負極材料とし、充放電特性を評価した。
実施例8および比較例2の充放電試験結果(図9)より、実施例8は比較例2と比べて初期容量は若干小さいが、サイクル劣化も小さいことがわかった。
本発明は、炭素複合ケイ素材料及びその製造方法を提供する。本発明の炭素複合ケイ材料は、サイクル特性の優れたリチウム二次電池用負極材料としてなど、蓄電池用部材として利用可能である。

Claims (6)

  1. ケイ素粒子が凝集して繊維状、網目状又はウイスカ状になっているケイ素凝集体であって、前記ケイ素凝集体表面に炭素が存在することを特徴とする炭素複合ケイ素材料。
  2. 前記ケイ素粒子が、前記ケイ素凝集体の表面においては、粒子径が50nm以上3μm以下で凝集していることを特徴とする請求項1に記載の炭素複合ケイ素材料。
  3. 前記ケイ素凝集体において、ケイ素凝集体の凝集径が5μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の炭素複合ケイ素材料。
  4. 前記炭素複合ケイ素材料において、炭素含有量が炭素複合ケイ素材料の3重量%から50重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の炭素複合ケイ素材料。
  5. ケイ素粒子及び/又はケイ素へ変換可能なケイ素成分及び炭素化可能な成分及びバインダーが分散又は溶解した前駆体溶液を電界紡糸法で繊維化する工程と、前記工程の生成物を非酸素雰囲気中で加熱する工程を含むことを特徴とする炭素複合ケイ素材料の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の炭素複合ケイ素材料が用いられることを特徴とするリチウム二次電池用負極材料。

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