JP2016027963A - 液浸インプリント方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
基板表面上に塗布した成形材料を成形温度に加熱し、この成形材料をモールドに対してプレスして、モールド表面に形成した凹凸構造を転写する工程を備えたインプリント方法において、成形材料をモールドに対してプレスする工程に先立って、モールド表面に形成された凹凸構造内部に、成形材料の成形温度より沸点及び発火点が高い液体を充填し、該凹凸構造内部の空気と置換する工程を設ける。
【選択図】 図2
Description
ナノインプリントに関する様々な技術が開発され、その応用範囲も多岐にわたっている。
その中で、成形材料の選択肢が多いことから、熱ナノインプリントが電子デバイス、光学デバイス、バイオチップ等の製作手法に取り入れられている。
その際、凹型のモールドパターンには周辺部分から軟化した成形材料が流れ込み、中心部に残留した空気は高い圧力によって徐々に圧縮され、最後には消えて完全充填される。
しかし、流動する材料が不充分な場合には成形パターンに欠陥が発生し易い。特に、厚みがあり成形材料が潤沢に存在するバルク材とは異なり、Si基板上に形成された薄膜は薄いために流動量が不足しがちで、モールドパターンに成形材料が完全に充填されずに気泡が残存することにより成形不良が発生する可能性が高い。
また、減圧された環境下での成形や、超音波振動によって成形材料の流動性を向上させる手法が下記非特許文献1と特許文献3に、そして、モールドと成形材料間の空隙を積極的に空気から凝縮性ガスに置換して、気体封入によるバブル欠陥を防止する手法が下記特許文献4にそれぞれ開示されている。
下記特許文献1と2で開示された手法のようにモールドパターンの設計時に制約がある場合、インプリント技術を適用して製作できるデバイスの種類に制限が生じるため、インプリント技術の汎用性が損なわれる虞がある。また、下記非特許文献1や特許文献3で開示されたような減圧環境の実現や超音波振動の印加には真空ポンプや超音波発生器等をインプリント装置に付加しなければならない。
しかし、薄膜のように成形材料2の全体量が比較的少なく、モールドパターンを完全充填するために必要な成形材料の流入量が確保できない場合には、モールドパターンの形状を正確に成形材料上へ転写できなくなり、成形材料2表面の凹凸構造には不良成形の原因となる欠陥4が発生してしまう(図1(c))。
以上の技術課題を鑑み、本発明は、熱インプリントにおいて真空ポンプや超音波発生器を利用することなく、インプリント工程中の雰囲気を構成する気体がモールド3と成形材料2間の空隙に取り込まれることによる転写精度の低下を防ぐために、高沸点液体による置換工程を追加したインプリント方法を提供することを目的とする。
次に、モールド3と成形材料2間の距離を縮め、間隙に存在する空気等の残留ガスを後述する液体5で置換する(図2(a))。
また、モールド3と成形材料2を含むプレス機構そのものを、液体で満たした容器の中に浸漬するようにしてもよい。空気と置換される液体5に求められる物性は、成形温度まで加熱されても気化せずに、この温度でも発火することなく化学的に安定な液体の状態を保ち、しかも、成形材料2、モールド3の材質に対し溶解性や浸食性がないことである。
このプレス工程の進行に併せて、軟化した成形材料2がモールドパターンの凹部内に流入し、モールドパターンに充填された液体5は押し出されるようにしてモールドパターンの外側に排出され、モールド3の端部から外部へ排出される。
この液体5の存在により、成形材料2は空気等の残留ガスに妨げられることなく、モールドパターン内部を完全に充填できる(図2(b))。
モールド3と成形材料2を成形材料のガラス転移温度以下に冷却した後、モールド3と成形材料2を引き離し、モールドパターンの凹凸構造を反転させた凸凹構造を成形材料2の表面上に完全な形状で転写することができる(図2(c))。
この例では、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を成形材料として使用し、モールド13の表面に形成されたモールドパターンの凹凸構造の内部に充填される液体として、フッ素系不活性液体を使用した。
図3は実際のインプリント実験での成形材料11とSi製モールド13の配置を示している。成形材料11の用意とモールド13の離型処理は下記の手順で行った。
(ステップ1)
エチルセロソルブアセテート溶液にポリメタクリル酸メチル(PMMA)が溶解した東京応化工業社製の紫外線硬化性樹脂(OEBR=1000)をSi基板10上に回転数4000rpmでスピンコートした。オーブンにて170℃で20分間加熱することにより、厚み460nmのPMMA薄膜層となった成形材料11をSi基板10上に形成する。
(ステップ2)
Si製モールド13に形成された凹凸パターンの表面にダイキン工業社製のフッ素離型剤Optool HD−1101をディッピング法によって塗布する。
(ステップ3)
PMMA薄膜層となった成形材料11が塗布されたSi基板10の外周端は、平ワッシャー9とアルミニウム製試料ホルダー6との間に挟まれるようにボルト8によって固定する。
(ステップ4)
アルミニウム製試料ホルダー6は、PMMA薄膜層となった成形材料11が下側になるように、熱インプリント装置の上部セラミックヒーター7aに、上部バネ付きフック16aにより物理的に固定する。
(ステップ5)
Si製モールド13は、ポリイミド製基材とシリコーン製接着剤で構成された耐熱性両面テープ14によってグラッシーカーボン製プレート15に接着する。
(ステップ6)
グラッシーカーボン製プレート15は、Si製モールド13の表面に形成された凸凹パターンが上側になるように、熱インプリント装置の下部セラミックヒーター7bに下部バネ付フック16bにより物理的に固定する。
(ステップ7)
上記のように、Si製モールド13とPMMA薄膜層となった成形材料11の配置が完了した後、パーフルオロトリブチルアミンを主成分とする3M社製のフッ素系不活性液体フロリナートFC−43(沸点:174℃)12をSi製モールド13の表面に形成された凹凸構造の上にピペットを用いて滴下する。
(ステップ8)
上部と下部のセラミックヒーター7a、7bに通電し、Si製モールド13とPMMA薄膜層となった成形材料11を、PMMAのガラス転移温度である105℃を超過する145℃まで加熱する。
(ステップ9)
Si製モールド13とPMMA薄膜層となった成形材料11の温度が設定値に達した段階で、Si製モールド13の表面に形成された凹凸構造に対し、PMMA薄膜層となった成形材料11の表面を1MPa〜5MPaの圧力でプレスする。
(ステップ10)
成形圧力が設定値に達した段階で、10〜60秒間保持する。
(ステップ11)
上部と下部のセラミックヒーター7a、7bへの通電を停止して、Si製モールド13とPMMA薄膜層となった成形材料11の温度がPMMAのガラス転移温度を下回る95℃になるまで自然冷却する。
(ステップ12)
SiモールドをPMMA薄膜から離型する。
下図の線図は、上図の白線を示した部分の断面形状を示している。
図5(a)に示されたフロリナートFC−43を滴下しない従来法でインプリントした場合では、モールドパターンのサイズと比較して、かなり大きな陥没と隆起構造が確認された。
2本の点線で示した高さの最大値と最小値間の差は532nmであり、凸型Siモールドのパターン高さ200nmの2倍以上の値である。
一方、図5(b)に示されたフロリナートFC−43を滴下した場合では、最大値と最小値の差は32nmと測定され、この値は、フロリナートFC−43を使用しない従来法での高低差の僅か6%にあたり、転写精度が劇的に改善されたことを意味している。
特に、複数の素子を一挙に成形するため、素子毎の凹凸構造を多数並べたモールドを使用する場合には、滴下装置の位置、液体供給量を自動的にプログラム制御して、必要な箇所に最適な量が供給されるようにすることが好ましい。
本発明の効果を実証するため、上述の実施例において、フッ素系不活性液体フロリナートFC−43をSi製モールド13の表面に形成された凹凸パターンの上に滴下せずに、まったく同じ成形条件でインプリントした結果を図4(b)に示す。パターンエリア周辺の凸型スペースエリアの大部分で、加圧によって圧縮された残留空気が減圧時に爆発して生成された欠陥が観察された。
一般的に熱ナノインプリントでは、成形温度、冷却温度、成形圧力、プレススピ−ド、保持時間等の条件が成形精度に大きな影響を与える。そこで、本実験では、加熱温度と冷却温度をそれぞれ145℃と95℃に固定し、その他の成形条件を増減させてみたが、いずれの条件でも欠陥の消失は確認できなかった。
次に、フッ素系不活性液体フロリナートFC−43の代わりに、比較的沸点の低いパ−フルオロトリプロピルアミンを主成分とするフッ素系不活性液体フロリナートFC−3283(沸点:128℃)をSiモールド表面の凹凸パターンの上に滴下して、実施例1とまったく同じ成形条件でインプリントしたが、プレス工程の途中で全てのフロリナートFC−3283が蒸発してしまい、欠陥を防止する効果は確認できなかった。
さらに、温度上昇がフッ素系不活性液体フロリナートFC−43の流動性に及ぼす影響を検証するため、セラミックヒ−タ−7による加熱温度と動粘度、表面張力に伴う接触角の関係を調べた。
Si製モールド13とPMMA薄膜層となった成形材料11が加熱されるに伴い、Si製モールド13とPPMMA薄膜層となった成形材料11間の隙間を満たしているフロリナートFC−43も伝熱効果によって加熱され、その物性にも影響を及ぼす。
液体の流動性を示す重要な性質の一つに動粘度がある。図6によると、フロリナートFC−43の動粘度は145℃まで加熱されると室温時の25cStから0.33cStまで低下する。
また、流動性に影響を及ぼす他の要因として、表面張力の相互作用が挙げられる。つまり、基板とフロリナートFC−43間の表面張力の相対的な大小関係はフロリナートFC−43の流動性を変化させるのである。
なお、図6はSi製モールド13の代替品として離型処理を施したSi基板にフロリナートFC−43を滴下して接触角の温度依存性を測定した結果である。Si基板温度を145℃まで加熱すると、基板上のフロリナートFC−43液滴の接触角は室温時の7.9°から22.3°まで上昇した。このことから、成形温度付近の環境下ではフロリナートFC−43とSiモールド間との界面張力は小さくなり、流動性が向上することが予想される。
したがって、本発明に係るインプリント方法で使用される高沸点液体は、成形温度付近で安定な液体状態を保ちつつ、温度上昇に伴い流動性が向上する特性を有することが望ましい。
また、過度な成形荷重を加えることができない比較的脆い材料の基板上や、熱特性の異なる複数の材料が積層された基板上にマイクロ・ナノ構造体を形成する際にも、気泡混入による欠陥の発生を確実に低減でき、低荷重成形技術として威力を発揮することが期待される。
2 成形材料(熱可塑性材料薄膜)
3 モールド
4 欠陥
5 高沸点液体
6 アルミニウム製試料ホルダー
7 セラミックヒーター
8 ボルト
9 平ワッシャー
10 Si基板
11 PMMA薄膜層となった成形材料
12 フロリナートFC−43
13 Siモールド
14 ポリイミド製両面テープ
15 グラッシーカーボン製プレート
16 バネ付きフック
Claims (1)
- 基板表面上に塗布した成形材料を成形温度に加熱し、前記成形材料を前記モールドに対してプレスして、モールド表面に形成した凹凸構造を転写する工程を備えたインプリント方法において、
前記成形材料を前記モールドに対してプレスを行うプレス工程に先立って、前記モールド表面に形成された凹凸構造内部に、前記成形材料の成形温度より沸点及び発火点が高く、かつ、前記成形材料として使用する熱可塑性材料に対し化学反応を起こさない不活性液体を、前記凹凸構造の内部の空気を排除するように充填する液体充填工程を備え、
前記プレス工程において、前記成形材料が前記凹凸構造の凹部内に流入し、前記不活性液体が押し出され、前記モールドの端部から排出されることを特徴とするインプリント方法。
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