JP2016027944A - 冷間圧接用ダイスおよび線材 - Google Patents

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和明 廣田
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Abstract

【課題】十分に安定した接合強度が得られる冷間圧接を行うことのできる冷間圧接用ダイスを提供する。【解決手段】一対のダイス片1a〜1dで各線材11a、11bを把持するコイルチャック部2を構成するペアダイス100、101を2個備え、各コイルチャック部2に把持された各線材11a、11b同士が当接させるように両ペアダイス100、101を突き合わせて各線材11a、11b同士を接合する冷間圧接用ダイス1において、各コイルチャック部2の両ペアダイス100、101の突き合わせ部4の近傍の内壁部2aは、各コイルチャック部2に把持される各線材11a、11bの外形部に接することがないように各線材11a、11bの外形部の大きさより大きく形成されている。【選択図】図1

Description

この発明は、十分に安定した接合強度が得られる冷間圧接を行うことのできる冷間圧接用ダイスおよび線材に関するものである。
従来の線材を結線する工法の一つである冷間圧接工法は、冷間圧接機のフレームの上部に対向配置された両Vブロックの間にダイスを組み込み、フレームに軸支されたレバーを回動することにより、両Vブロックを互いに押圧させ、ダイスの間に突き合わせて挿入された線材を冷間圧接する。ダイスは4つのダイス片からなり、集合することでダイス孔を構成する。ダイス片の傾斜面がVブロックの傾斜面に当接するようにダイスはVブロックに組み込まれる。ダイス孔に線材を挿入し、その端部が互いに突き合うようにする。接続作業が開始されると、ダイスは、まずVブロックの移動方向に圧接される。続いて、ダイスはVブロックの傾斜面に沿ってスライドし、ダイス孔の軸方向にも圧接されて線材の突き合わせ面を圧縮する(例えば、特許文献1参照)。上記のような冷間圧接機に用いられる従来のダイスは、ダイス中央部に線材把持部を有し、線材把持部にこれと直交した複数の溝を形成して線材の滑りを防止している(例えば、特許文献2参照)。
特開平8−57662号公報 実公平3−40470号公報
先述の従来の冷間圧接用ダイスおよび線材のように、一般的な冷間圧接機で使用されている従来のダイスは、通常、ダイス孔の形状が線材の外径に合わせた円筒状に形成されている。従って、ダイス孔より線材の外径が小さいと線材が滑り、大きいと線材がダイス孔に入りきらず、ダイス孔と線材の形状が合っていなければ十分な冷間圧接が行えないという問題点があった。
また、後述の従来のダイスは、線材把持部に設けられた溝により、線材の外径のばらつきを多少吸収できると考えられる。しかし、線材の肉が溝に食い込むと、線材が線材把持部から外れず線材を送ることができなくなり、十分に冷間圧接を行えない懸念がある。また、実際の線材の導体径のばらつきや絶縁被膜厚さのばらつきを考えると、溝だけでは十分に線材の外径のばらつきを吸収できない問題点があった。
また、両従来のダイスおよびそのダイスで冷間圧接された線材では、上記線材の導体径および絶縁被膜厚さのばらつきに加えて冷間圧接によって結線する1対の線材それぞれの端面形状のばらつきがあり、結線部の接合強度を確保するためには線材の端面を仕上げ加工する等、線材の状態管理に細心の注意を要する問題点があった。
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、線材の外径および線材の端面形状がばらついた場合でも、十分に安定した接合強度が得られる冷間圧接を行うことのできる冷間圧接用ダイスおよび線材を提供することを目的とする。
この発明の冷間圧接用ダイスは、
一対のダイス片で線材を把持するコイルチャック部を構成するペアダイスを2個備え、上記各コイルチャック部に把持された上記線材同士が当接させるように上記両ペアダイスを突き合わせて上記線材同士を接合する冷間圧接用ダイスにおいて、
上記各コイルチャック部の上記両ペアダイスの突き合わせ部の近傍の内壁部は、上記各コイルチャック部に把持される上記各線材の外形部に接することがないように上記各線材の外形部の大きさより大きく形成されている。
また、この発明の線材は、
冷間圧接にて接合された線材において、
上記線材の接合部近傍の断面積は、上記線材の素線の断面積より大きく形成されているものである。
また、この発明の冷間圧接用ダイスは、
一対のダイス片で線材を把持するコイルチャック部を構成するペアダイスを2個備え、上記各コイルチャック部に把持された上記線材同士が当接させるように上記両ペアダイスを突き合わせて上記線材同士を接合する冷間圧接用ダイスにおいて、
上記線材として、第1線材と、上記第1線材の硬さより硬さが柔らかい第2線材を用いる場合、
上記コイルチャック部の上記両ペアダイスの突き合わせ部の外周にはバリ収納部が形成され、
上記バリ収納部は、上記コイルチャック部からテーパ形状にて形成されるとともに、
当該テーパ形状のテーパ角は、上記両線材の内、上記第2線材が挿入される側の断面形状が、上記第1線材を挿入される側より大きく形成されているものである。
この発明の冷間圧接用ダイスおよび線材は上記に示すように構成されているため、
線材の外径および線材の端面形状がばらついた場合でも、十分に安定した接合強度が得られる冷間圧接を行うことができる。
この発明の実施の形態1の冷間圧接用ダイスの構成を示す斜視図である。 図1に示した冷間圧接用ダイスの構成を示す上面図である。 図1に示した冷間圧接用ダイスの構成を示す断面図である。 図1に示した冷間圧接用ダイスの動作を説明する説明図である。 図1に示した冷間圧接用ダイスを用いて冷間圧接後の線材の構成を示す図である。 図1に示した冷間圧接用ダイスを用いて冷間圧接後の線材の構成を示す図である。 図1に示した冷間圧接用ダイスを用いて冷間圧接後の線材の構成を示す図である。 この発明の実施の形態2における冷間圧接用ダイスの構成を示す断面図である。 この発明の実施の形態3における冷間圧接用ダイスの構成を示す断面図である。 図9に示した冷間圧接用ダイスを用いて冷間圧接後の線材の構成を示す図である。 この発明の実施の形態3における他の冷間圧接用ダイスの構成を示す断面図である。 この発明の実施の形態3における他の冷間圧接用ダイスの構成を示す断面図である。 この発明の実施の形態4における冷間圧接用ダイスおよび線材の構成を示す断面図である。 この発明の実施の形態4おける他の冷間圧接用ダイスおよび線材の構成を示す断面図である。 この発明の実施の形態4における他の冷間圧接用ダイスおよび線材の構成を示す断面図である。 この発明の実施の形態5における冷間圧接用ダイスおよび線材の構成を示す断面図である。
実施の形態1.
以下、本願発明の実施の形態について説明する。図1はこの発明の実施の形態1の冷間圧接用ダイスの構成を示す分解斜視図および組み合わせ斜視図、図2は図1に示した冷間圧接用ダイスの構成を示す上面図、図3は図1に示した冷間圧接用ダイスの構成の図2におけるX−X方向断面を示す断面図であり、図3(a)は線材の挿入前を、図3(b)は線材の挿入後をそれぞれ示し、図3(d)、図3(e)は図3(a)における(d)および(e)箇所の線材の挿入前のコイルチャック部の詳細を説明するための拡大断面図と、図3(e)、図3(f)は図3(b)における(e)および(f)箇所の、線材の挿入後のコイルチャック部および線材の詳細を説明するための拡大断面図とをそれぞれ示す。
図4は図1に示した冷間圧接用ダイスにおいて、線材を冷間圧接する場合の動作を説明する説明図、図5は図1に示した冷間圧接用ダイスを用いて冷間圧接を行った後の線材の構成を示す図、図6は図1に示した冷間圧接用ダイスを用いて冷間圧接を行った前および後の絶縁被膜部を外周に備えていない線材の構成を示す断面図、図7は図1に示した冷間圧接用ダイスを用いて冷間圧接を行った前および後の絶縁被膜部を外周に備えた線材の構成を示す断面図である。
図において、冷間圧接用ダイス1(以下、ダイス1と称する。)は、4個のダイス片1a〜1dにより構成されている。そして、ダイス片1aおよびダイス片1bが対となりペアダイス100を構成し、ダイス片1cおよびダイス片1dが対となりペアダイス101を構成している。これらの2個の両ペアダイス100、101が対となりダイス1を構成する。ペアダイス100により第1線材11aが把持され、ペアダイス101により第2線材11bが把持され、各ペアダイス100、101が突き合わせされることで、第1線材11aと第2線材11bとが圧接され接合されて、線材11が形成される。
ペアダイス100を構成するダイス片1aとダイス片1bとの合わせ面10には溝部20がそれぞれ設けられ、ダイス片1aとダイス片1bとを合わせることでこの溝部20により第1線材11aの把持用のコイルチャック部2を構成している。そして、コイルチャック部2への線材11aの挿入を容易にするため、コイルチャック部2の線材11の挿入口側はダイス片1a、1bの端面には向かってテーパ状に広がって形成されている線材挿入用の案内部3を備えている。
また、コイルチャック部2には、ペアダイス100側の第1線材11aとペアダイス101側の第2線材11bとを突き合わせされる突き合わせ部4が形成され、ペアダイス100、101が突き合わせされて押圧された際には、各ペアダイス100、101の突き合わせ部4が突き合わせされて両線材11a、11bを圧接する。ダイス片1a、1bの突き合わせ部4の周囲には、第1線材11aの冷間圧接過程にて生じるバリ13を逃すためのバリ収納部5が設けられている。
次に、コイルチャック部2の内壁部の詳細について説明する(図3参照)。コイルチャック部2の突き合わせ部4の近傍の内壁部2a(図3(d)、図3(f))は、第1線材11aの外形部が接することがないように、第1線材11aの外形部の大きさより大きく形成されている。ここでは図3(f)に示すように、第1線材11aの直径より、内壁部2aの直径が大きい円形状にて形成されている。さらに、コイルチャック部2の内壁部2a以外の内壁部2b(図3(c)、図3(e))は、第1線材11aの外形部に当接する箇所Zを有するような略楕円形状にて形成されている。ここでは図3(e)に示すように、第1線材11aの直径と、内壁部2bの縦方向の長さとが略同一に形成されており、当接する箇所Zを有するように形成している。尚、ペアダイス101の構成は、上記に示したペアダイス100の構成と同様であるため、その説明は適宜省略する。
次に上記のように構成された実施の形態1のダイスの動作について説明する。まず、ダイス1は、従来と同様の冷間圧接機内に配置する。そして、各ダイス片1a〜1dが間隔を保持した状態で配置されている。この状態で、図4(a)に示すように、ペアダイス100、101のそれぞれの案内部3側からコイルチャック部2に線材11を挿入する。次に、図4(b)に示すように、各ダイス片1a〜1dの両側を内側に押圧して図4(b)中の矢印Aで示す方向に移動する。そして、ダイス片1a、1bで構成するペアダイス100のコイルチャック部2内には第1線材11aが、また、ダイス片1c、1dで構成するペアダイス101のコイルチャック部2内には第2線材11bが収まる。そして、内壁部2bの箇所Zにおいて各線材11a、11bは当接し、コイルチャック部2により各線材11が把持される。この時、ペアダイス100とペアダイス101とは間隔が保持されたままである。
次に、図4(c)に示すように、両ペアダイス100、101を内側に押圧して(図4(c)中の矢印Bで示す方向)、両ペアダイス100、101を突き合わすと、各ペアダイス100、101のコイルチャック部2により把持された両線材11a、11bが圧縮され接合される。そして、圧縮された両線材11a、11bの接合部分の一部はバリ13となりバリ収納部5に押し出される。次に、図4(d)に示すように、両ペアダイス100、101の各ダイス片1a、1dおよび各ダイス片1c、1dを離反させる(図4(d)中の矢印Cで示す方向)。
これらの工程を多段的に繰り返すことで線材11の接合部の酸化膜・不純物をバリ13として外部に排出することで安定した冷間圧接を行う。そして、このような工程を経て冷間圧接にて接続された線材11の接合部は、図5に示すように、線材11の接合部近傍110の断面積は、線材11の素線の断面積より大きく形成されている。これは、コイルチャック部2の突き合わせ部4の近傍の内壁部2aを、両線材11aの外形部が接することがないように、両線材11aの外形部の大きさより大きく形成されているためであり、冷間圧接において、両線材11a、11bの接合部分が圧接され、その応力が両線材11a、11bの外形部の接していない内壁部2a側に発散するためである。
次に上記に示した実施の形態1の冷間圧接用ダイス1を用いた冷間圧接によって構成された線材11の別の例について説明する。例えば、一般的な線材11は、接合前は図6(a)、(b)に示すように、全てが同一直径の円柱の導体121のみにて形成される形状である、そして接合後は、図6(c)、(d)に示すように、線材11の接合部近傍110の断面積は、線材11の素線の断面積より大きく形成されている。
また、線材11は例えば銅やアルミニウムおよびそれらを主とする合金等の導体121にて形成されており、線材11は導体121の外周が絶縁被膜部120にて被覆されている場合にも同様に接合される。例えば、線材11は、接合前は図7(a)、(b)に示すように、全てが同一直径の円柱にて形成される形状であるが、接合後は、図7(c)、(d)に示すように、線材11の接合部近傍110の断面積は、線材11の素線の断面積より大きく形成されている。尚、図6および図7の図は、線材11として説明したが、接合部から切断した第1線材11aまたは第2線材11bのいずれか一方に対応する側のみを示したものであり、さらに、接合後においては、バリ13が除去された後の状態を示すものである。
上記のように構成された実施の形態1における冷間圧接用ダイスおよび線材によれば、コイルチャック部の両ペアダイスの突き合わせ部の近傍の内壁部は、各コイルチャック部に把持される各線材の外形部に接することがないように各線材の外形部の大きさより大きく形成されており、接合後の線材が、接合部近傍の断面積を他の箇所の断面積より拡径することにより、線材の接合部の近傍部分の断面面積を大きくすることができる。これにより線材の接合部の接合強度を向上させることができ、接合部の品質の信頼性を確保することが可能になる。
特に、モータ製造ラインのように冷間圧接による結線頻度が高いラインにおいて、線材の直径のばらつきや絶縁被膜部の厚さのばらつき等があるが、それらを十分許容できる接合強度が得られるため、結線不良の発生を防止し、製品の品質向上に寄与することができる。このように、精度が高く生産性も高い冷間圧接を提供できるため、モータ製造ラインにおいて安心して冷間圧接工法を採用できる。
また、冷間圧接工法による線材同士の接合は、押し付けて金属の新生面(酸化していない純金属面)における金属結合を利用した接合方法であるため、コネクタ端子による接合のように応力に頼らない。例えば、アルミニウムは経時的にクリープ(応力緩和)が生じる金属であり、アルミニウム線をコネクタ端子で結線しても押さえられたアルミニウム線が経時的に変形してしまう。このため、コネクタ端子の応力が抜けてしまい、結線部の電気抵抗が大きくなって品質不良を招くことがある。これに対し、冷間圧接ではアルミニウム線を確実に接合して結線することができる。上述の通り、本実施の形態1のダイスにより、モータ製造ラインにおいて冷間圧接工法を採用できるため、モータの巻線としてアルミニウム線を用いた場合でも、確実に結線を行え品質の向上を図ることができる。
また、本実施の形態1のように形成された線材の接合部近傍が拡径するが、モータ製造時の、巻線された線材同士を接合するという最終製品の製造工程において、本実施の形態1のような冷間圧接部の線材形状の変形が特に問題とはならない。
例えば、線材製造ラインでは、通常の線材製造時には冷間圧接による線材の結線工程がなく、供給材料の段取替え時のみに供給材料の使い終わりと使い始めを接続する冷間圧接による結線工程が発生する。これに対し、例えば、モータ製造ラインでは、通常のモータ製造時に、ワークごとに複数箇所で引き伸ばされながら巻線された線材同士を接続する冷間圧接による結線工程が発生する。本実施の形態1のダイスは、線材製造ラインのような冷間圧接による結線頻度が低いラインで使用することもできるが、特に、冷間圧接による結線頻度が高いモータ製造ラインにおいて使用することでより効果を発揮する。
尚、線材の接合部近傍や、コイルチャック部の突き合わせ部の近傍とは、接合後の線材の接合部に望まれる条件によって設定されるものである。但し、少なくとも上記の箇所が存在すれば上記実施の形態1の効果を奏することは可能である。また、このことは以下の実施の形態においても同様のことが言えるため、その説明は適宜省略する。
また、本実施の形態1は、冷間圧接可能な材質の線材であれば、どのような材質の線材であっても冷間圧接することができ、また、冷間圧接する第1および第2の線材は異種金属材料であっても、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。またこのことは以下の実施の形態においても同様のことが言えるため、その説明は適宜省略する。
実施の形態2.
上記実施の形態1においては、コイルチャック部の両ペアダイスの突き合わせ部の近傍の内壁部のみを、各コイルチャック部に把持される各線材の外形部に接することがないように各線材の外形部の大きさより大きく形成する例を示したが、これに限られることはなく、本実施の形態2においては、コイルチャック部の近傍の内壁部の全てにおいて、各コイルチャック部に把持される各線材の外形部に接することがないように各線材の外形部の大きさより大きく形成する場合について説明する。
図8はこの発明の実施の形態2における冷間圧接用ダイスの構成を示す、図2におけるX−X方向断面を示す断面図であり、図8(a)は線材の挿入前と、図8(b)は線材の挿入後とをそれぞれ示している。図において、上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。コイルチャック部2は、当該内壁部2cが、両線材11a、11bの外形部が接することがないように、両線材11a、11bの外形部の大きさより大きく形成されている。但し、このようにコイルチャック部2の場合には、両線材11a、11bを保持する保持部(図示せず)が別途必要となる。
上記のように構成された実施の形態2によれば、上記実施の形態1と同様に動作を行うことにより、同様の効果を奏するのはもちろんのこと、コイルチャック部の形状が簡便となるため製造コストが下がる。また、線材の径が若干異なる場合でも対応することができるため、製品の機種ごとに専用のダイスを製作する必要がなく、段取替えも必要としないため、製造現場の生産性向上に寄与することができる。
実施の形態3.
上記各実施の形態では、線材11において、絶縁被膜部120を備える場合と、絶縁被膜部120を備えない場合について同様に説明したが、線材11に被覆されている絶縁被膜部120は通常は滑り性を有する。よって、安定した冷間圧接による線材11の接合を行うためには冷間圧接時に線材11が滑らないことが望まれる。本実施の形態3においてはこのことに着目した場合について説明する。尚、本実施の形態3においては、絶縁被膜部120を備える線材11について示すが、絶縁被膜部を備えていない線材11においても同様に実施することができる。
図9はこの発明の実施の形態3における冷間圧接用ダイスの構成を示す、図2におけるX−X方向断面を示す断面図であり、図9(a)は線材の挿入前を、図9(b)は線材の挿入後をそれぞれ示している。図において、上記各実施の形態と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。コイルチャック部2の内壁部は、コイルチャック部2の突き合わせ部4の近傍の内壁部2dは、両線材11a、11bの外形部が接することがないように、第1線材11aの外形部の大きさより大きく形成されている。さらに、コイルチャック部2の内壁部2d以外の内壁部は、コイルチャック部2に把持される第1線材11aの外形部に接することがないように両線材11a、11bの外形部の大きさより大きく形成されている第1箇所としての内壁部2eと、両線材11a、11bの外形部に当接する箇所Zを有するように形成されている第2箇所としての内壁部2fとが交互に形成されている。
尚、ここでは内壁部2dと内壁部2eとは同様の形状にて形成されている。さらに、第2箇所の内壁部2dの大きさは、両線材11a、11bの絶縁被膜部120を除く大きさより小さく形成されている。よって、第2箇所の内壁部2dは、両線材11a、11bをコイルチャック部2にて把持した際に、両線材11a、11bの各絶縁被膜部120の厚みより深いため、絶縁被膜部120に食い込むように形成されている。但し、第2箇所の内壁部2dは、両線材11a、11bを把持した際に、当然のことながら、絶縁被膜部120の役割が果たせる程度に食い込むものであり、破れない程度に設定されているものである。
上記のように構成された実施の形態3のダイス1を用いて冷間圧接を行うと、例えば図10に示したように、線材11の外形が凹凸を有するように形成されることとなる。
上記のように構成された実施の形態3のダイスによれば、上記各実施の形態と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、第2箇所の内壁部により、線材の絶縁被膜部に楔を入れる効果が発生し、冷間圧接時に線材の滑りを防止する。
また、この発明の実施の形態3における他の冷間圧接用ダイスの構成の例を図11、および図12に示す。図11は、図2におけるX−X方向断面を示す断面図であり、図11(a)は線材の挿入前を、図11(b)は線材の挿入後をそれぞれ示している。また、図12は、図2におけるX−X方向断面を示す断面図であり、図12(a)は線材の挿入前を、図12(b)は線材の挿入後をそれぞれ示している。
上記図9に示した場合は、両線材11a、11bの外形部の大きさより大きく形成されている内壁部2d、2eを同心円状全てにおいて同様に大きく形成する例を示しが、これに限られることはなく、図11に示すように、第1線材11aの外形部の大きさより大きく形成されている、コイルチャック部2の突き合わせ部4の近傍の内壁部2gおよび、第1箇所の内壁部2hは、同心円状全てにおいて同様に大きくするのでは無く、図中において略矩形にて示した部分を大きく形成する場合も同様に行うことができる。また、図12に示すように、コイルチャック部2の突き合わせ部4の近傍の内壁部2aは例えば上記実施の形態1と同様に形成し、他の第1箇所の内壁部2eおよび第2箇所の内壁部2fは、図9に示した上記実施の形態3と同様に形成することも可能である。
実施の形態4.
ここではまず、冷間圧接によって絶縁被膜部120が被覆された線材11の接合を行った場合について説明する。冷間圧接によって生成されたバリ13には絶縁被膜部120が介在しているため、後から絶縁被膜部120が周囲に脱落したり、冷間圧接時の条件次第では絶縁被膜部120が線材11の接合部界面に介在する可能性が考えられる。このため絶縁被膜部120が施された線材11を冷間圧接によって接合する際に、事前に線材11の先端部近傍の絶縁被膜部120を除去しておくことにより当該懸念を払拭することができる。また、絶縁被膜部120が除去されている導体121部分を把持する場合には、絶縁被膜部120による滑りが生じることが防止され、安定した冷間圧接による接合を実施することができる。
次に絶縁被膜部120の除去について説明する。絶縁被膜部120は線材11の導体121に対して強固に密着しているため、絶縁被膜部120の除去工程は容易では無い。例えばカッター刃や鉄ブラシ等で機械的に絶縁被膜部120を除去することは可能であるが、線材11の導体121の一部を同時に除去してしまうと線材11の外径がばらついてしまうため冷間圧接時の線材11の把持状態がばらつくことになる。但し、レーザ等を用いた熱エネルギーによる絶縁被膜部120の除去や薬品を用いた化学反応による絶縁被膜部120の除去等を行うことにより絶縁被膜部120のみを除去するようにすれば可能である。
これらのことにおける、実施の形態4について説明する。図13はこの発明の実施の形態4における冷間圧接用ダイスの構成を示す、図2におけるX−X方向断面を示す断面図であり線材の挿入後を示している。図において、上記各実施の形態と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。ダイス1は上記実施の形態1と同様に形成されており、各線材11a、11bは、コイルチャック部2に挿入した際の突き合わせ部4に相当する部分は、絶縁被膜部120が除去され、導体121のみにて形成されている。
また、図14はこの発明の実施の形態4における他の冷間圧接用ダイスの構成を示す、図2におけるX−X方向断面を示す断面図であり線材の挿入後を示している。図において、上記各実施の形態と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。各線材11a、11bは、図13に示した場合と同様に、コイルチャック部2に挿入した際の突き合わせ部4に相当する部分は、絶縁被膜部120が除去され、導体121のみにて形成されている。コイルチャック部2の内壁部2iは、全てにおいて、線材11と略同一の大きさにて形成されている。よって、突き合わせ部4の近傍においては、各線材11a、11bは導体121のみにて形成されているため、各コイルチャック部2に把持される各線材11a、11bの外形部に接することがない、各線材11a、11bの外形部の大きさより大きく形成されていることとなる。
また、図15はこの発明の実施の形態4における他の冷間圧接用ダイスの構成を示す、図2におけるX−X方向断面を示す断面図であり線材の挿入後を示している。図において、上記各実施の形態と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。ここでは、コイルチャック部2に挿入した際のコイルチャック部2に挿入される箇所に相当する部分全ては、絶縁被膜部120が除去され、導体121のみにて各線材11a、11bが形成されている。ダイス1の各コイルチャック部2の両ペアダイス100、101の突き合わせ部4の近傍の内壁部2jは、各コイルチャック部2に把持される各線材11a、11bの外形部、ここでは、絶縁被膜部120を除去した導体121に接することがないように、各線材11a、11bの導体121の外形部の大きさより大きく形成されている。また、コイルチャック部2の両ペアダイス100、101の突き合わせ部4の近傍以外の内壁部2kは、各線材11a、11bの外形部、ここでは絶縁被膜部120を除去した導体121に当接する箇所を有するように形成されている。
上記のように構成された実施の形態4のダイスによれば、上記各実施の形態と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、絶縁被膜部を除去して接合するため、絶縁被膜部がバリや接合部界面に介在する可能性を排除することが可能となる。
実施の形態5.
上記各実施の形態においては、線材の種類については特に示していないが、例えば、硬い第1線材11aと、この第1線材11aの硬さより柔らかい第2線材11bを使用する場合について説明する。このように異種金属を冷間圧接する場合、冷間圧接の過程において生成されるバリ13の生じ方が線材間で異なる。具体的には、柔らかい第2線材11bの方から先行してバリ13が生じ、その生じたバリ13がもう硬い第1線材11aからのバリ13の生成を抑制してしまう可能性がある。
このことを解消するために、ダイス1に設けられたバリ収納部5のテーパ角にペアダイス100、102間で有意差をつけて形成し対応する。すなわち、柔らかい第2線材11bが配設されるペアダイス101側のバリ収納部5のテーパ角θ2を、硬い第1線材11aが配設されるペアダイス100側のバリ収納部5のテーパ角θ1より大きく形成する。これにより、接合時に、柔らかい第2線材11bの方にバリ13が多く発生しても、バリ収納部5のテーパ角θ2が大きく形成されているため容易に安定したバリ13の排出ができ、つまりは安定した冷間圧接による接合品質を確保することが可能となる。
上記のように構成された実施の形態5のダイスによれば、上記各実施の形態と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、バリ収納部のテーパ角を調整することにより、異種金属同士の接合でも接合品質を確保することができる。
尚、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
1 冷間圧接用ダイス(ダイス)、1a ダイス片、1b ダイス片、
1c ダイス片、1d ダイス片、2 コイルチャック部、2a 内壁部、
2b 内壁部、2c 内壁部、2d 内壁部、2e 内壁部、2f 内壁部、
2g 内壁部、2h 内壁部、2i 内壁部、2k 内壁部、3 案内部、
4 突き合わせ部、5 バリ収納部、11 線材、11a 第1線材、
11b 第2線材、13 バリ、20 溝部、100 ペアダイス、
101 ペアダイス、120 絶縁被膜部、121 導体。

Claims (10)

  1. 一対のダイス片で線材を把持するコイルチャック部を構成するペアダイスを2個備え、上記各コイルチャック部に把持された上記線材同士が当接させるように上記両ペアダイスを突き合わせて上記線材同士を接合する冷間圧接用ダイスにおいて、
    上記各コイルチャック部の上記両ペアダイスの突き合わせ部の近傍の内壁部は、上記各コイルチャック部に把持される上記各線材の外形部に接することがないように上記各線材の外形部の大きさより大きく形成されている冷間圧接用ダイス。
  2. 上記コイルチャック部の上記両ペアダイスの突き合わせ部の近傍以外の内壁部は、上記各線材の外形部に当接する箇所を有するように形成されている請求項1記載の冷間圧接用ダイス。
  3. 上記コイルチャック部の上記両ペアダイスの突き合わせ部の近傍以外の内壁部は、
    上記各コイルチャック部に把持される上記各線材の外形部に接することがないように上記各線材の外形部の大きさより大きく形成されている第1箇所と、
    上記各線材の外形部に当接する箇所を有するように形成されている第2箇所とが交互に形成されている請求項1記載の冷間圧接用ダイス。
  4. 上記線材は、当該線材の外周が絶縁被膜部にて被覆されている場合、
    上記コイルチャック部において、上記第2箇所の大きさは、上記線材の上記絶縁被膜部を除く大きさより小さく形成されている請求項3に記載の冷間圧接用ダイス。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の冷間圧接用ダイスを用いて圧接される線材において、
    上記線材は、外周が絶縁被膜部にて被覆され、
    上記コイルチャック部に挿入した際の上記突き合わせ部に相当する部分は、上記絶縁被膜部が除去されている線材。
  6. 上記コイルチャック部に挿入した際の上記コイルチャック部に挿入される箇所に相当する部分全ては、上記絶縁被膜部が除去されている請求項5に記載の線材。
  7. 冷間圧接にて接合された線材において、
    上記線材の接合部近傍の断面積は、上記線材の素線の断面積より大きく形成されている線材。
  8. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の冷間圧接用ダイスを用いて冷間圧接にて接合された線材において、
    上記線材の接合部近傍の断面積は、上記線材の素線の断面積より大きく形成されている線材。
  9. 一対のダイス片で線材を把持するコイルチャック部を構成するペアダイスを2個備え、上記各コイルチャック部に把持された上記線材同士が当接させるように上記両ペアダイスを突き合わせて上記線材同士を接合する冷間圧接用ダイスにおいて、
    上記線材として、第1線材と、上記第1線材の硬さより柔らかい硬さの第2線材を用いる場合、
    上記コイルチャック部の上記両ペアダイスの突き合わせ部の外周にはバリ収納部が形成され、
    上記バリ収納部は、上記コイルチャック部からテーパ形状にて形成されるとともに、
    当該テーパ形状のテーパ角は、上記線材の内、上記第2線材が挿入される側の断面形状が、上記第1線材を挿入される側より大きく形成されている冷間圧接用ダイス。
  10. 上記線材として、第1線材と、上記第1線材の硬さより柔らかい硬さの第2線材を用いる場合、
    上記コイルチャック部の上記両ペアダイスの突き合わせ部の外周にはバリ収納部が形成され、
    上記バリ収納部は、上記コイルチャック部からテーパ形状にて形成されるとともに、
    当該テーパ形状のテーパ角は、上記線材の内、上記第2線材が挿入される側の断面形状が、上記第1線材を挿入される側より大きく形成されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の冷間圧接用ダイス。
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