以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
まず、本実施形態に係る可変容量型ピストンポンプ(以下、単にポンプと称す)について、図1を参照しつつ説明する。ポンプ1は、ポンプハウジング10と、回転軸20と、シリンダブロック14とを備えている。
ポンプハウジング10は、フロントハウジング10a、センタハウジング10b、リヤハウジング10cを接合することによって構成されており、その内部にクランク室12を有する。
回転軸20は、その大部分がポンプハウジング10のクランク室12内に収容されており、一方の端部のみがポンプハウジング10から突出している。回転軸20は、クランク室12内において、ベアリングにより回転可能に保持されている。ポンプハウジング10から突出する回転軸20の端部は、図示しない動力取出装置に連結されており、エンジンにより回転軸20全体が回転駆動される。
シリンダブロック14も、ポンプハウジング10のクランク室12内に収容されている。シリンダブロック14は、回転軸20と一体的に回転するように、回転軸20にスプライン嵌合されている。シリンダブロック14には、回転軸20の突出する端部の側に開口を有する複数のシリンダボア14aが設けられており、複数のシリンダボア14aはシリンダブロック14における回転軸20周りに所定角度間隔で配置されている。そして、複数のシリンダボア14a内にはそれぞれ、回転軸20の突出する端部の側にヘッドが突出するピストン16が収容されている。
ポンプハウジング10のクランク室12には、さらに、斜板30が収容されている。以下、図2〜図4を参照して、斜板30の構成について説明する。図2は、図1に示す斜板30の斜視図である。図3は、図1に示す斜板30を摺接面側から見た側面図である。図4は、図1に示す斜板30を摺接面とは反対側から見た側面図である。
図2〜図4に示されているように、斜板30は、本体部31と、一対の摺動部32と、被押圧部33とを有している。
本体部31は、略板状であり、その中央部に、上述の回転軸20が挿通される貫通孔31aが設けられている。一対の摺動部32は、本体部31を両側から挟む位置に、本体部31と一体的に設けられている。
本体部31および摺動部32の前面側は、図3に示すように平坦面30aとなっており、この面が後述する摺接面である。一方、本体部31および摺動部32の背面側は、図2、4に示すように、摺動部32が本体部31に対して突出する形状となっている。摺動部32は、その断面が半月状(D字状)であり、背面側に凸となるように所定の曲率で湾曲した摺動面32aを有している。
また、本体部31には、本体部31から上側に延びる被押圧部33が設けられている。被押圧部33には、その前面側に収容孔33aが形成されており、この収容孔33aに、後述する円筒部材33bが配置されている。なお、円筒部材33bは、回動できないように固定された状態で配置されてもよく、回動自在に配置されてもよい。また、被押圧部33には、その背面側に、後述する斜板復帰バネ60の先端部によって付勢される位置に、斜板復帰バネ60の先端部が係合する突起部33c及び平面部33dが形成されている。
図1に戻って、斜板30は、その背面側に配置された斜板受部材34によって、その位置が保持されている。斜板受部材34は、上述した斜板30の摺動部32の摺動面32aと略同一の曲率を有する支持面34aを有する。斜板30は、摺動部32の摺動面32aが斜板受部材34の支持面34aに接するように配置され、それにより、斜板受部材34により上記曲率に沿って揺動可能に支持される。より詳しくは、斜板30は、斜板受部材34の支持面34aの曲率中心Xを基準に回動する(傾転するともみなせるし、回転するともみなせる)ことが可能である。この曲率中心Xは、斜板30の摺動部32の摺動面32aの曲率中心でもある。そして、この曲率中心Xは、斜板30の回動位置によらず、摺接面30aからの距離(最短距離)が一定である点と定義することができる。以下の説明では、この曲率中心を回動中心Xと称す。なお、図1においては、回動中心Xを点で示しているが、回動中心Xの線は奥行方向(紙面に垂直な方向)に延びている。
斜板30は、ピストン16のストロークを規定する傾角を変更可能とするように回動中心X周りに回動可能に配置されている。傾角は、たとえば、回転軸20の軸線に直交する直線を基準とする角度として定義することができる。本実施形態において、傾角は、回転軸20の軸線に直交する直線に対する摺接面30aの角度として定義される。
斜板30は、その前面側の摺接面30aが、シリンダブロック14側を向いている。摺接面30aには、シリンダブロック14から突出する各ピストン16のヘッド(一端部)が、シュー36を介して摺接している。ピストン16のヘッドそれぞれに取り付けられたシュー36は、シュー36が貫挿される孔を有する円板状のリテーナ35によって保持されている。回転軸20とともにシリンダブロック14が回転すると、各ピストン16は、シュー36を介して摺接面30aを摺接しつつ、回転軸20周りに回転する。
斜板30が回動中心X周りに回動して傾斜することにより、シリンダブロック14に収容された各ピストン16は、そのヘッド側の端部(図1の左端部)がシュー36を介して押接され、また、シリンダブロック14はリヤハウジング10cの内端壁面に止着されたバルブプレート40に押接される。
そして、シリンダブロック14が回転軸20と一体的に回転されることにより、各ピストン16が斜板30の傾角により規定されたストロークを往復動されるとともに、シリンダボア14aがバルブプレート40に透設された円弧状をなす吸入ポート40aおよび吐出ポート40bと交互に連通される。これにより作動油が吸入ポート40aからシリンダボア14a内に吸入され、シリンダボア14a内の作動油はポンプ作用により吐出ポート40bから吐出される。なお、吸入通路10d及び吐出通路10eはリヤハウジング10cに形成され、それぞれ吸入ポート40aおよび吐出ポート40bと連通されている。
ポンプ1は、さらに斜板30の前面側、すなわち、シリンダブロック14側に配置されたコントロールピストン50を備えている。コントロールピストン50は、ポンプハウジング10のセンタハウジング10bの側部に設けられており、クランク室12に連通するハウジング52と、ハウジング52内を往復動するピストン部58とを有する。ピストン部58が斜板30の被押圧部33に対向するように、ハウジング52は、回転軸20に対して傾いた方向に延在する略円筒状の形状を有している。
ハウジング52の開口のうち、斜板30から遠い方の開口は、ネジ54によって塞がれている。これにより、ハウジング52内にはピストン収容室56が画成され、このピストン収容室56にピストン部58が収容されている。
ピストン部58は、円柱状の外形を有している。ピストン部58の径は、ピストン収容室56の内壁面との間に隙間がないように、かつ、ピストン収容室56においてピストン部58が摺動できるように設計される。ピストン部58の斜板30側の端面は、平面状であり、斜板30の被押圧部33における円筒部材33bに接触する位置まで移動可能である。図1に示すように、押圧部であるピストン部58の斜板30側の端面は、斜板30の被押圧部33の円筒部材33bに接しており、所定の押圧力で円筒部材33bを常に押圧している。
ピストン収容室56のうち、ピストン部58とネジ54との間の空間は、作動油が流入する制御室56aとして機能する。制御室56a内の圧力(以下、制御圧と称す)は、作動油の流入により変化する。コントロールピストン50は、この制御圧の変化によってピストン部58を摺動させ、斜板30をシリンダブロック14側から押圧する。これにより、コントロールピストン50は、斜板30の傾角を作動油の吐出容量が最大となる最大傾角と作動油の吐出容量が最小となる最小傾角との間で調整する。
ポンプ1は、さらに斜板30の背面側に、一方向に延びる円筒螺旋状のバネ(コイルバネ)である斜板復帰バネ60を備えている。すなわち、斜板復帰バネ60は、斜板30の摺接面30aに対してコントロールピストン50と反対側に配置されている。具体的には、斜板復帰バネ60は、ポンプハウジング10のフロントハウジング10aに形成されたバネ室70内に、その基端部が収容されている。
本実施形態において、バネ室70は回転軸20に対して平行に形成されており、斜板復帰バネ60はバネ室70から斜板30に向かって延びている。その結果、斜板復帰バネ60は、その軸線方向が回転軸20に対して平行となるように配置されている。斜板復帰バネ60の先端部は、上述した斜板30の被押圧部33の背面に当接し、かつ、背面に形成された突起部33c及び平面部33dと係合している。斜板復帰バネ60は、バネ室70及び斜板30と固定されておらず、バネ室70と被押圧部33との間に挟み込まれた状態でその位置及び姿勢が保持されている。
換言すると、斜板復帰バネ60は、その座面(バネの端面)に関しては、基端部の座面60aがバネ室70の底壁と当接し、先端部の座面60bが斜板30の被押圧部33と当接する。これにより、斜板復帰バネ60は、圧縮され、斜板30を摺接面30aに対してシリンダブロック側に付勢する。なお、斜板復帰バネ60は、例えばSWP−B等の金属製の線材を加工して形成された線バネである。
次に、図5及び図6を参照して、斜板復帰バネ60の斜板30側の座面中心の位置について詳細に説明する。ここで、斜板復帰バネ60の斜板30側の座面中心とは、斜板復帰バネ60の斜板30側(先端部側)の座面60bにおける中心であり、例えば座面60bの外周上の全ての点から等しい距離にある点をいう。本実施形態では、斜板復帰バネ60は円筒螺旋状であるため、座面60bの形状(すなわち、斜板復帰バネ60の先端部の端面形状)は円形であり、その円の中心を座面中心と定義することができる。以下、斜板復帰バネ60の斜板30側の座面60bにおける中心を、斜板復帰バネ60の座面中心と称す。
まず、斜板復帰バネ60の座面中心の位置を示すための各基準(回動中心X、垂直基準線、及び平行基準線)について説明する。図5は、斜板30の摺接面30aと斜板30の回動中心Xとの位置関係を模式的に示す図である。なお、図5において、回動中心Xを点で示しているが、回動中心Xの線は奥行方向(紙面に垂直な方向)に延びている。
図5に示されているように、「Max」で示した最大傾角のときの斜板30の摺接面30aから回動中心Xまでの距離dと、「Min」で示した最小傾角のときの斜板30の摺接面30aから回動中心Xまでの距離dとは一定である。すなわち、回動中心Xは、摺接面30aからの距離が斜板30の傾角によらずに一定である。また、断面において、最大傾角のときの斜板30の摺接面30aと最小傾角のときの斜板30の摺接面30aとに接する仮想円Eは、回動中心Xの任意の点を中心とした円として描かれる。すなわち、回動中心Xは、斜板30の傾角によらずに斜板30の摺接面30aと接する仮想円Eを断面とする円柱の中心軸線と定義することもできる。
平行基準線Yは、斜板復帰バネ60の軸線方向に対して平行であり、且つ、回動中心Xを通る直線である。本実施形態では、斜板復帰バネ60の軸線は、回転軸20に対して平行であるため、平行基準線Yは回転軸20に対して平行な線である。この平行基準線Yと直交し、且つ、回動中心Xを通る直線を、垂直基準線Zと定義する。
図6は、本実施形態に係るポンプ1における斜板30の傾角の変位に応じた斜板復帰バネ60の座面中心の位置の変動を示す模式図である。図6でも、図5に示した平行基準線Y、垂直基準線Zおよび回動中心Xを示している。図6では、さらに、斜板復帰バネ60の軸線を軸線Sとして示している。
図6では、本実施形態に係るポンプ1における斜板復帰バネ60の座面中心の位置の変動が、両矢印Aで示されている。両矢印Aは、斜板30の傾角が最大傾角のときの斜板復帰バネ60の座面中心の位置(以下、第1の座面中心位置と称す)A1と、斜板30の傾角が最小傾角のときの斜板復帰バネ60の座面中心の位置(以下、第2の座面中心位置と称す)A2との間において、斜板復帰バネ60の座面中心の位置が変動することを示している。斜板30の最大傾角と最小傾角との間の角度差はθで示している。図6に示すように、斜板復帰バネ60の座面中心の位置は、第1の座面中心位置A1と第2の座面中心位置A2との間を、回動中心Xを中心とする仮想円の円弧に沿って移動する。なぜなら、斜板復帰バネ60の座面中心が位置する斜板30の被押圧部33と、回動中心Xとの距離が、傾角によらず常に一定であるためである。
図6の両矢印Aで示されているように、本実施形態に係るポンプ1においては、例えば平行基準線Yおよび垂直基準線Zに平行な平面に垂直な方向(紙面に垂直な方向)から見て、斜板30の傾角が最大傾角のときの第1の座面中心位置A1と、斜板30の傾角が最小傾角のときの第2の座面中心位置A2との間を、垂直基準線Zが通過している。すなわち、斜板30の傾角が最大傾角のときの第1の座面中心位置A1と斜板30の傾角が最小傾角のときの第2の座面中心位置A2とに垂直基準線Zが挟まれている。
第1の座面中心位置A1、第2の座面中心位置A2および垂直基準線Zがこのような位置関係を有する場合には、図6に示すように、斜板復帰バネ60の座面中心の位置は、両矢印Aの範囲においてほぼ真横に移動し、図6の上下方向(すなわち、垂直基準線Zの方向)に関する変位はほとんどない。そのため、斜板30の傾角が最大傾角から最小傾角まで変化し、それに伴い、斜板復帰バネ60の座面中心の位置が第1の座面中心位置A1から第2の座面中心位置A2まで移動したときでも、斜板復帰バネ60の座面中心の位置は垂直基準線Zの方向に関してほとんど変位しない。
そのため、軸線Sが第1の座面中心位置A1および第2の座面中心位置A2に近接するように、斜板復帰バネ60を配置することで、斜板復帰バネ60の座面中心の位置は、最大傾角の位置(A1)、最小傾角の位置(A2)およびそれらの間の任意の傾角の位置において、軸線Sから逸れる量が小さく抑えられる。
図6では、比較のため、斜板復帰バネ60の第1の座面中心位置と第2の座面中心位置との間を垂直基準線Zが通過していない場合が、両矢印B及び両矢印Cで示されている。なお、両矢印B、Cのいずれの場合も、斜板30の最大傾角と最小傾角との間の角度差θは、上述した両矢印Aの角度差θと同じである。
両矢印Bは、斜板復帰バネ60の第1の座面中心位置B1および第2の座面中心位置B2がいずれも垂直基準線Zよりも斜板復帰バネ60側に位置している場合の斜板復帰バネ60の座面中心の位置の変動量を示している。図6に示すように、斜板30の傾角が最大傾角から最小傾角まで変化し、それに伴い、斜板復帰バネ60の座面中心の位置が第1の座面中心位置B1から第2の座面中心位置B2まで移動したときに、斜板復帰バネ60の座面中心の位置は下方向に漸次移動していき垂直基準線Zの方向に関して大きく変位する。すなわち、第1の座面中心位置B1および第2の座面中心位置B2がいずれも垂直基準線Zよりも斜板復帰バネ60側に位置する場合には、第1の座面中心位置A1および第2の座面中心位置A2の間を垂直基準線Zが通過する場合に比べて、斜板復帰バネ60の座面中心の位置の垂直基準線Zの方向に関する変位が大きくなる。
したがって、両矢印Bの場合においては、軸線Sが最大傾角の位置(B1)および最小傾角の位置(B2)のどちらかに近接するように斜板復帰バネ60を配置したとしても、斜板復帰バネ60の座面中心の位置が軸線Sから大幅に逸れる。
両矢印Cは、第1の座面中心位置C1および第2の座面中心位置C2がいずれも垂直基準線Zよりもコントロールピストン50側に位置している場合の斜板復帰バネ60の座面中心の位置の変動量を示している。図6に示すように、斜板30の傾角が最大傾角から最小傾角まで変化し、それに伴い、斜板復帰バネ60の座面中心の位置が第1の座面中心位置C1から第2の座面中心位置C2まで移動したときに、斜板復帰バネ60の座面中心の位置は上方向に漸次移動していき垂直基準線Zの方向に関して大きく変位する。すなわち、第1の座面中心位置C1および第2の座面中心位置C2がいずれも垂直基準線Zよりもコントロールピストン側に位置する場合にも、第1の座面中心位置A1および第2の座面中心位置A2の間を垂直基準線Zが通過する場合に比べて、斜板復帰バネ60の座面中心の位置の垂直基準線Zの方向に関する変位が大きくなる。
したがって、両矢印Cの場合においても、両矢印Bの場合同様、軸線Sが最大傾角の位置(C1)および最小傾角の位置(C2)のどちらかに近接するように斜板復帰バネ60を配置したとしても、斜板復帰バネ60の座面中心の位置が軸線Sから大幅に逸れる。
以上で説明した通り、本実施形態に係るポンプ1では、斜板復帰バネ60の第1の座面中心位置A1と、斜板復帰バネ60の第2の座面中心位置A2との間を、垂直基準線Zが通過する位置関係を有する。斜板復帰バネ60の斜板30側の座面中心の位置は、垂直基準線Z上または垂直基準線Zの近傍では、垂直基準線Z方向における変動が小さい。上述したポンプ1では、第1の座面中心位置A1と第2の座面中心位置A2とが垂直基準線Zを挟むように位置しているので、斜板30側の座面中心の位置は垂直基準線上または垂直基準線Zの近傍となる。よって、垂直基準線Z方向における斜板30側の座面中心の位置の変動を小さくすることができる。そのため、斜板復帰バネ60の座面中心の位置が当該斜板復帰バネ60の軸線Sから逸れる量が、斜板30の傾角によらず小さくなるように、斜板復帰バネ60を設けることができる。したがって、斜板30の最大傾角から最小傾角に亘って、斜板復帰バネ60の斜板30側の端部が局部的に屈曲することを抑制することができる。以上より、斜板復帰バネ60の機能劣化を抑制することができる。
なお、垂直基準線Zが、斜板復帰バネ60の第1の座面中心位置A1と斜板復帰バネ60の第2の座面中心位置A2との間を通過する位置関係、すなわち、斜板復帰バネ60の第1の座面中心位置A1と第2の座面中心位置A2とが垂直基準線Zを挟む位置関係には、垂直基準線Zが第1の座面中心位置A1または第2の座面中心位置A2と重なる位置関係を含む。
本実施形態に係るポンプ1において、斜板復帰バネ60は、その軸線方向が回転軸20に対して平行となるように配置されている。斜板復帰バネ60は、回転軸20の方向に並んだフロントハウジング10aとセンタハウジング10bとの間に組み込まれる。フロントハウジング10aとセンタハウジング10bとを結合する際には、回転軸20の軸線方向の沿った力で押し付けられるため、その力の向きが斜板復帰バネ60の軸線方向と同じであれば、斜板復帰バネ60の組み付けが容易となる。その上、ポンプ1は、一般に、回転軸20の軸線を基準に設計される。そのため、フロントハウジング10aに設けられるバネ室70や、バネ室70から延びる斜板復帰バネ60を回転軸20に対して平行にすることで、設計が容易となる。
また、通常、斜板復帰バネの先端部における局部的な屈曲に備えて、屈曲端部が動くことが予想される領域を余剰に確保することがおこなわれる。この場合には、ポンプの小型化を阻害し、若しくは、ポンプの寸法拡大を招く。これに対し、本実施形態に係るポンプ1によれば、斜板復帰バネ60が局部的に屈曲することを抑制することができるので、大きな領域を確保する必要がなく、ポンプハウジング10の小型化を実現することができる。
なお、第1の座面中心位置A1および第2の座面中心位置A2と垂直基準線Zとの位置関係は、より好ましくは、図7の両矢印Aで示されているように、第1の座面中心位置A1と、第2の座面中心位置A2とを結ぶ直線を二等分する点である中点Pを、垂直基準線Zが通過する。つまり、この場合、垂直基準線Zが、第1の座面中心位置A1と第2の座面中心位置A2とを結ぶ直線の垂直二等分線と一致する。
このとき、軸線Sが第1の座面中心位置A1を通るように斜板復帰バネ60を配置すると、軸線Sは、第2の座面中心位置A2および中点Pをも通る。すなわち、第1の座面中心位置A1、第2の座面中心位置A2、および中点Pは、軸線Sの方向に沿って並び、垂直基準線Z方向における位置ズレがない。
ここで、図6の両矢印Aの場合において、斜板復帰バネ60の座面中心の位置が移動する仮想円の半径をrとし、第2の座面中心位置A2と回動中心Xとを結ぶ直線の垂直基準線Zに対する傾きをθ’とすると、第1の座面中心位置A1と第2の座面中心位置A2との間で斜板復帰バネ60の座面中心の位置が軸線Sから逸れる量は、r(1−cosθ')となる。これに対し、図7の両矢印Aの場合においては、両矢印Aの角度差θが斜板復帰バネ60側とコントロールピストン50側とで等分されるので、第1の座面中心位置A1と回動中心Xとを結ぶ直線の垂直基準線Zに対する傾き、および、第2の座面中心位置A2と回動中心Xとを結ぶ直線の垂直基準線Zに対する傾きは、いずれもθ'よりも小さいθ/2となる。よって、第1の座面中心位置A1と第2の座面中心位置A2との間で斜板復帰バネ60の座面中心の位置が軸線Sから逸れる量は、r(1−cosθ')よりも小さいr(1−cos(θ/2))として示される。このように、中点Pを垂直基準線Zが通過する場合には、斜板30の傾角の変位に応じて斜板復帰バネ60の座面中心の位置が当該斜板復帰バネ60の軸線Sから逸れる量を最も小さくすることができるので、斜板30の傾角の変位に応じて斜板復帰バネ60の斜板30側の端部が局部的に屈曲することをより抑制することができる。
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
斜板30は、上記実施形態におけるものに限られない。例えば、斜板30の代わりに、図8に示すような形状の斜板130を採用することもできる。
斜板130は、斜板30の一対の摺動部32の代わりに、一対の回転軸部132を有する。上述した斜板30は、摺動部32と斜板受部材34との協働により回動中心X周りを回動する態様であるが、斜板130は、回動中心Xに沿って延在する円柱状の一対の回転軸部132がクランク室12内で回転可能に保持されることで、回動中心X周りを回動可能である。斜板130も、上述した斜板30の本体部31と同様の機能を有する円板状の本体部131を有する。本体部131は、その前面側に摺接面30aと同様の摺接面130aを有し、また、その上部に被押圧部33と同様の被押圧部133を有する。図8に示した斜板130は、上述した斜板30と同一または同等の機能を備える。その上、斜板130は、一対の回転軸部132を備えるため、上述の斜板受部材34が不要となり、ポンプ1の構成の簡素化を図ることができる。