JP2016023194A - 生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法 - Google Patents

生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】PBATを含み、圃場に設置された生分解性プラスチック製マルチフィルムを、微生物由来の酵素を用いて効率的に分解する方法を提供すること。
【解決手段】微生物の産生するエステル加水分解酵素を用いて圃場に設置された生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法であって、所定の二軸平均粒径を有するカルシウム塩又はカルシウム含有土壌改良剤を圃場に設置された生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に散布する工程と、前記エステル加水分解酵素を含む溶液を生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に適用する工程とを有し、生分解性プラスチック製マルチフィルムがポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)を含有し、エステル加水分解酵素が、所定の微生物により産生されるものである、生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)を所定量含有する生分解性プラスチック製マルチフィルムを、微生物の産生するエステル加水分解酵素及びカルシウム塩又はカルシウム含有土壌改良剤を用いて分解する方法に関する。
生分解性プラスチックは、環境中の微生物によって完全分解されるプラスチックである。農業や土木業などで使用するプラスチック製資材を生分解性プラスチックで製造すれば、使用後に生分解性プラスチックを回収する手間を省くことができ、回収した生分解性プラスチックの処理も不要となる。
現在、日本の農業では、年間約12万トンのプラスチック製資材が消費されており、マルチフィルムは約3.3万トンが消費されている(農林水産省統計・平成20年から21年)。
マルチフィルムを使用したマルチ栽培技術は、地温を上昇させ、保湿するなどの作用により作物の育成を促進する効果に優れるとともに、雑草や病害虫の繁殖を抑える作用もあるため、日本の畑作においては欠かすことができない栽培技術となっている。特に、日本においては、農業就業者の老齢化の進行と働き手不足により省力的な農業技術が必要とされる状況にあるため、他国と比較しても生分解性プラスチック製のマルチフィルムが広く普及している。しかしながら、現在使用されている生分解性プラスチック製のマルチフィルムは、使用する環境により分解速度が異なるという問題点が指摘されており、場合によっては最終的なマルチフィルムの分解が不完全となって農作業に支障をきたすこともある。従って、生分解性プラスチック製のマルチフィルムを使用した後に、その分解を促進する方法が必要となっている。
このような状況の下、従来、生分解性プラスチックを分解する微生物や酵素を利用した生分解性プラスチック製品の分解方法が複数報告されている(特許文献1から7参照)。
ここで、生分解性プラスチックを微生物や酵素を使用して分解しようとした場合、反応溶液のpHや塩濃度等がそれらの微生物の生育や、酵素の活性に適したものであるかどうかが問題となる。特に、酵素溶液に生分解性プラスチックを浸漬して生分解性プラスチックを分解した場合、生分解性プラスチックは有機酸エステルであって、分解により有機酸残基を生成するため、生分解性プラスチックの分解に伴って酵素溶液のpHが緩やかに低下することが見出されていた(特許文献8及び9参照)。このような酵素溶液のpHの低下に伴う酵素活性の低下を防止するため、特許文献8及び9には、酵素溶液にリン酸ナトリウムや炭酸カルシウムを加えることを特徴とする生分解性プラスチックの分解による反応溶液のpHの安定化方法が開示されている。
しかしながら、特許文献8及び9に記載された生分解性プラスチックの分解条件は、生分解性プラスチック製の包装資材を溶液中で分解する際のものであり、圃場などに実際に設置した生分解性プラスチック製のマルチフィルムを分解する際の条件を検討したものではない。また、特許文献8及び9で実際に使用されているpH調整剤は、化学実験用の試薬としても用いられる緩衝剤であり、農地へ散布することを想定されたものではない。例えば、リン酸ナトリウム緩衝液等のナトリウムを含む塩類は、農地に散布すると後作の作物への塩害の懸念がある。ホウ酸緩衝液中に含まれるホウ素は、作物の生育に影響を与えることが知られており、農地への散布には適していない。また、トリス塩酸緩衝液については、単価が高い上、食品への適用例は知られておらず、動物への毒性も指摘されていることから、農地に散布することは現実的ではない。
特許文献10においては、炭酸カルシウムを混合して成形した、酵素による加水分解を受けやすい生分解性プラスチック製の成形物を示している。しかしながら、圃場にマルチフィルムを設置する場合、使用中に土壌中の微生物等、環境中の微生物と接触する。このため、一般の環境微生物が分泌する酵素で分解されやすい特許文献10の成形物をマルチフィルムに使用した場合、分解が抑制されるべき時期においても予想外に分解が進行する可能性もあり、マルチフィルムへの使用には適していない。このため、特許文献10の成形物とは異なり、マルチフィルムとして使用した場合に、作物の収穫前等には分解せず、作物収穫後に初めて、急速にフィルムを分解できる材料を開発することが望まれている。
一方で、微生物由来の酵素を使用した生分解性プラスチック製のマルチフィルムの分解方法については、既に、酵母Pseudozyma antarctica由来の酵素PaE、及び糸状菌NITE P-573由来の新規の分解酵素PCLE(Paraphoma related fungal Cutinase Like Enzyme)を使用した方法が示されている(特許文献4及び5、及び非特許文献1参照)。ここで、上記PaEやPCLEが分解する基質となる生分解性プラスチック材料としては、ポリブチレンサクシネート(PBS)やポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)(PBSA)等が具体的に知られている(特許文献4及び5参照)。
上記の微生物由来の酵素のうち、PaEに関しては、本発明の発明者らにより酵素を大量に生産して高濃度の酵素溶液を得る手法も特許出願済みであり(特許文献7参照)、このような酵素の大量生産方法を採用することにより、農業現場での使用のための酵素の大量供給も可能となる。
また、農業現場に設置した生分解性プラスチック製マルチフィルムの上記の酵素を用いた分解方法として、特許文献6には、上記の酵素と、好ましくは保湿剤とを併用することにより、ビニールハウス内に設置したPBS/PBSAを含有する市販の生分解性プラスチック製マルチフィルムを急速に劣化する方法が示されている。
ここで、酵素について一般的に知られているように、これらの生分解性プラスチック分解酵素の活性もpHに依存しており、例えば、PaEは、中性からアルカリ性域で高い酵素活性を示し、pH9.5において最も高い活性を示す(非特許文献2)。一方、PCLEは中性域近傍で高い酵素活性を示すことが知られており、その至適pHは7.2である(非特許文献3)。また、PCLEについては、その活性に塩類が関与することが知られており、1mM程度の塩化カルシウムを添加することにより、PCLEの活性が大きく増大することが報告されている(鈴木ら、日本農芸化学会大会講演要旨、2011年;非特許文献3)。このようなpHの調整や塩類濃度の調整により、生分解性プラスチック分解酵素の分解条件の至適化が可能となれば、酵素を用いた生分解性プラスチック製のマルチフィルムの分解を効率化することができると考えられる。
ところで、生分解性プラスチック製マルチフィルムの開発当初、原料に用いられる生分解性プラスチックとしては、PBSやPBSAが代表的に使用されていた。
ここで、PBSAはPBSに比べて物理化学的な劣化や生分解を受けやすいことが知られており、市販の生分解性プラスチック製のマルチフィルムにおいては、これら生分解性プラスチックを混合して成形することにより、マルチフィルム全体としての分解度を調節していた。しかし、PBSとPBSAのみで作られたマルチフィルムは、圃場に設置する作業の際中や、作物の栽培途中に縦裂きが起こりやすく、マルチフィルムとしての機能を全うしない場合があった。このような課題を解決するため、近年市販されている生分解性プラスチック製マルチフィルム等の各種生分解性プラスチック製品には、それらの材料に加えて、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)(PBAT)やポリ乳酸(PLA)が配合されて強度や弾性が高められている場合が多い。PBATは、破断強度、破断伸度、衝撃強度がポリエチレンよりも高い等、良好な物性を示すことから、現在市販されている生分解性マルチフィルムのほぼ全てに配合されている。さらに、PLAは、常温での生分解性が低いことや、生物系素材由来のポリマーであり、環境負荷が低減可能であるとのイメージが強いという理由から、市販のマルチフィルムの一部に混合されている。PBATやPLAを含むマルチフィルムでは、以前に流通していたPBSとPBSAのみのマルチフィルムに比べて、使用中に思いがけず破壊される事例や分解を受ける事例が減少したことが報告されている。一方で、使用後に分解を試みても、期待されているほどは分解されず、未分解のマルチフィルムが耕耘機に絡まるので、鋤込みができず畑が使えない期間が生じる事例などが報告されている。PBATは、欧州においてレジ袋として消費され、使用後には生ゴミの回収容器として使用され、生ゴミとともに堆肥中に混ぜ込まれるが、生ゴミの回収後において袋の強度を急速に低下させることができれば、堆肥製造工程の簡略化や短時間化が可能になる。既にPBATは、世界で年間7万トン以上が消費されており、PBAT含有フィルムを、迅速かつ効率的に分解する方法が必要とされている。
特開平09−252791号公報 特開2004−075905号公報 国際公開第2004/038016号パンフレット 特許第4915593号公報 特許第5082125号公報 特開2013−023643号公報 特開2013−048563号公報 特開2010−138389号公報 特開2010−138390号公報 特開2012−77246号公報
Koitabashi M, Noguchi MT, Sameshima-Yamashita Y, Hiradate S, Suzuki K, Yoshida S, Watanabe T, Shinozaki Y, Tsushima S & Kitamoto HK (2012) Degradation of biodegradable plastic mulch films in soil environment by phylloplane fungi isolated from gramineous plants. AMB Express 2: 40. Shinozaki Y, Morita T, Cao XH, et al. (2013a) Biodegradable plastic-degrading enzyme from Pseudozyma antarctica: cloning, sequencing, and characterization. Appl Microbiol Biotechnol. Suzuki K, Noguchi MT, Shinozaki Y, Koitabashi M, Sameshima-Yamashita Y, Yoshida S, Fujii T & Kitamoto HK (2014) Purification, characterization, and cloning of the gene for a biodegradable plastic-degrading enzyme from Paraphoma-related fungal strain B47-9. Appl Microbiol Biotechnol 98: 4457-4465. Watanabe T, Shinozaki Y, Yoshida S, Koitabashi M, Sameshima-Yamashita Y, Fujii T, Fukuoka T & Kitamoto HK (2014) Xylose induces the phyllosphere yeast Pseudozyma antarctica to produce a cutinase-like enzyme which efficiently degrades biodegradable plastics. J Biosci Bioeng 117: 325-329. Suzuki K, Sakamoto H, Shinozaki Y, Tabata J, Watanabe T, Mochizuki A, Koitabashi M, Fujii T, Tsushima S & Kitamoto HK (2013) Affinity purification and characterization of a biodegradable plastic-degrading enzyme from a yeast isolated from the larval midgut of a stag beetle, Aegus laevicollis. Appl Microbiol Biotechnol.97:7679-7688. Shinozaki Y, Kikkawa Y, Sato S, Fukuoka T, Watanabe T, Yoshida S, Nakajima-Kambe T & Kitamoto HK (2013b) Enzymatic degradation of polyester films by a cutinase-like enzyme from Pseudozyma antarctica: surface plasmon resonance and atomic force microscopy study. Appl Microbiol Biotechnol 97: 8591-8598. Shinozaki Y, Watanabe T, Nakajima-Kambe T & Kitamoto HK (2013c) Rapid and simple colorimetric assay for detecting the enzymatic degradation of biodegradable plastic films. J Biosci Bioeng 115: 111-114.
以上に述べたとおり、PBATやPLAを含むマルチフィルムは、従来のPBS/PBSA混合マルチフィルムに比べて環境中での分解速度が遅いため、これらPBATやPLA配合マルチフィルムを効率的に分解できる新たな技術の開発が求められていた。
特に、酵素によるPBATの分解活性については、PBATを製造するBASF社が土壌環境中でのPBATの分解を報告しており、また、精製したPCLEがPBATを分解することを示唆する報告(非特許文献3)や、Pseudozyma antarcticaの培養液に、PBSA:PBS:PBAT=47:37:17(質量比)の生分解性プラスチック製マルチフィルムを浸漬した際に、フィルム中の何らかの成分が分解されてフィルムが溶解されることが目視で確認されたとの報告(非特許文献4)がなされているものの、PCLEにより、実用可能なレベルに効率的にPBATの分解が促進されるとの報告もなく、且つ圃場で適用可能な詳細な分解条件の検討などはなされていない。実際、これまで、圃場でも使用可能な条件と効率で、単一の酵素を用いてPBATそのものを分解できるとする報告はほとんどなされていない。
よって、本発明は、PBATを含み、圃場に設置された生分解性プラスチック製マルチフィルムを、微生物由来の酵素を用いて効率的に分解する方法を提供することを目的とする。
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、圃場に設置された、生分解性プラスチック製のマルチフィルムの表面に、生分解性プラスチック分解酵素散布した場合、生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面のpHが急速に低下し、酵素活性が抑制されることを初めて見出した。なお、このような急速なpHの低下は、溶液中で生分解性プラスチックを分解した際のpHの低下の傾向とも異なるものであった。そして、本発明の発明者らは、好ましくは、所定の粒径を有するカルシウム塩又はカルシウム含有土壌改良剤を、圃場に設置された生分解性プラスチック製のマルチフィルムの表面に散布したとき、マルチフィルム表面でのpHの急激な変化が抑制され、生分解性プラスチック分解酵素により、圃場に設置された生分解性プラスチック製のマルチフィルムを効率的に分解できることを見出した。
更に、本発明者らは、所定の酵素がPBATを効率よく分解できることを初めて見出した。
以上の知見により、本発明者らは本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
(1)微生物の産生するエステル加水分解酵素を用いて圃場に設置された生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法であって、
0.07μm以上7.42μm以下の二軸平均粒径を有するカルシウム塩又はカルシウム含有土壌改良剤を圃場に設置された生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に散布する工程と、
前記エステル加水分解酵素を含む溶液を生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に適用する工程とを有し、
生分解性プラスチック製マルチフィルムが1質量%以上100質量%以下のポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)を含有し、
エステル加水分解酵素が、Pseudozyma属酵母、Cryptococcus属酵母、Acremonium属糸状菌、Alternaria属糸状菌、Arthrinium属糸状菌、Aureobasidium属糸状菌、Cladosporium属糸状菌、Epicoccum属糸状菌、Fusarium属糸状菌、及びPeniciccium属糸状菌からなる群から選ばれる微生物により産生されるものである、生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法。
(2)エステル加水分解酵素が、酵母Pseudozyma antarcticaの産生するクチナーゼ様酵素PaE、Cryptococcus magnus類縁株BPD1Aの産生するCmCut1、Cryptococcus flavus GB-1株の産生するCfCLE GB-1、及びCryptococcus flavus Sb19-1株の産生するCfCLE Sb19-1からなる群から選択される、(1)に記載の生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法。
(3)カルシウム塩が炭酸カルシウムであり、カルシウム含有土壌改良剤が重質炭酸カルシウム又は軽質炭酸カルシウムを含む、(1)又は(2)に記載の生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法。
(4)エステル加水分解酵素を含む溶液を生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に適用する工程の後、生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面を洗浄する工程を有する、(1)から(3)のいずれかに記載の生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法。
(5)生分解性プラスチック製マルチフィルムが1質量%以上99%以下のポリ乳酸を更に含有する、(1)から(4)のいずれかに記載の生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法。
(6)微生物の産生するエステル加水分解酵素を含む溶液を圃場に設置された生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に適用する工程を有する、生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法であって、
生分解性プラスチック製マルチフィルムが18質量%以上100質量%以下のポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)を含有し、
エステル加水分解酵素が、酵母Pseudozyma antarcticaの産生するクチナーゼ様酵素PaE、Cryptococcus magnus類縁株BPD1Aの産生するCmCut1、Cryptococcus flavus GB-1株の産生するCfCLE GB-1、及びCryptococcus flavus Sb19-1株の産生するCfCLE Sb19-1からなる群から選択される、生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法。
本発明の第一の態様の生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法は、微生物の産生するエステル加水分解酵素を用いて圃場に設置された生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する際、生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に所定の粒径を有するカルシウム塩又はカルシウム含有土壌改良剤を散布する。このため、生分解性プラスチック分解酵素であるエステル加水分解酵素による、生分解性プラスチック製マルチフィルムの分解に伴うマルチフィルム表面の急激なpHの低下が抑制され、生分解性プラスチック分解酵素による生分解性プラスチックの分解活性が長時間に亘って高く維持される。よって、本発明の方法を採用することにより、生分解性プラスチック分解酵素を用いた生分解性プラスチック製マルチフィルムの分解を効率的に行うことを可能とする。
これによる副次的な効果として、生分解性プラスチック製マルチフィルムの分解時期の制御が容易となり、使用者の都合に合わせて、マルチフィルムを土壌中に鋤込むことが可能となる。また、同様に、カルシウム塩又はカルシウム含有土壌改良剤の散布により、生分解性プラスチック分解酵素による反応の効率化がもたらされるため、副次的に、生分解性プラスチック分解酵素の使用量を低減することも可能となる。
また、本発明の第二の態様の生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法は、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)(PBAT)を含有するマルチフィルムの微生物由来の酵素を使用した効率的な分解方法を新規に提供するものである。本発明の第二の態様の生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法により、今後、市場に広く流通すると考えられるPBATを使用したマルチフィルムを効率的に分解することができるようになる。
表面プラズモン共鳴装置を用いた酵素PaEによるPBATの分解活性測定の結果を示す図面である。 表面プラズモン共鳴装置を用いた酵素PCLEによるPBATの分解活性測定の結果を示す図面である。 生分解性プラスチック分解酵素と炭酸カルシウムを併用した場合の生分解性プラスチック製マルチフィルムの分解の様子を示す図面である。 炭酸カルシウムと生分解性プラスチック分解酵素の併用による圃場に設置した生分解性プラスチック製マルチフィルムの分解促進効果を説明する図面である。 カルシウム成分の粒径による生分解性プラスチック製マルチフィルム(市販品AおよびB)の分解効率の違いの検討の結果を示す図面である。
以下、本発明について詳細に説明する。
<カルシウム塩又はカルシウム含有土壌改良剤を使用した生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法>
本発明の生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法は、微生物の産生するエステル加水分解酵素を用いて圃場に設置された生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法であって、所定の粒径のカルシウム塩又はカルシウム含有土壌改良剤を圃場に設置された生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に散布する工程(カルシウム成分散布工程)と、前記エステル加水分解酵素を含む溶液を生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に適用する工程(生分解性プラスチック分解酵素適用工程)とを有し、生分解性プラスチック製マルチフィルムがポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)を含有し、エステル加水分解酵素が、所定の微生物により産生されるものである。
上述のように、生分解性プラスチック分解酵素等を含む酵素溶液に生分解性プラスチックを浸漬して生分解性プラスチックを分解した場合、酵素溶液のpHが緩やかに低下することが見出されていた。一方、生分解性プラスチック製のマルチフィルムを圃場に設置した状態で、当該マルチフィルム上に生分解性プラスチック分解酵素を散布した場合、マルチフィルム表面のpHがどのように変化するかに関しては、当業者に知られてはいなかった。
本発明の発明者らは、以下の実施例においても説明するとおり、生分解性プラスチック製のマルチフィルム上に生分解性プラスチック分解酵素を散布した場合、マルチフィルムの表面が急激に酸性に変化することを見出した。そして、PaEやPCLE等の主要な生分解性プラスチック分解酵素の至適pH等も参考に、マルチフィルムの表面を中性から微アルカリ性に維持することにより、生分解性プラスチック分解酵素による、圃場での生分解性プラスチック製マルチフィルムの分解を非常に効率的に実施可能であることを見出した。
圃場に散布した場合に土壌や作物に悪影響を及ぼす可能性が低い材料の中では、カルシウム塩やカルシウム含有土壌改良剤において、生分解性プラスチック製マルチフィルムの分解効率向上の効果が優れていることが見出されたが、本発明の発明者らは、そのようなカルシウム塩やカルシウム含有土壌改良剤の中でも、二軸平均粒径が0.34μm以上3.72μm以下のものが、特に、生分解性プラスチック製マルチフィルムの分解効率向上効果に優れることを見出した。
[カルシウム成分散布工程]
カルシウム成分散布工程においては、所定の粒径のカルシウム塩又はカルシウム含有土壌改良剤を圃場に設置された生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に散布する。
(カルシウム塩又はカルシウム含有土壌改良剤)
カルシウム塩又はカルシウム含有土壌改良剤は、0.07μm以上7.42μm以下、好ましくは、0.35μm以上3.74μm以下、更に好ましくは、0.35μm以上0.45μm以下の二軸平均粒径を有するものである。カルシウム塩又はカルシウム含有土壌改良剤の粒径を、このように比較的小さな粒径にすることにより、生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面において、生分解性プラスチックの分解に伴って酸性基が多量に露出した場合であっても、カルシウム塩又はカルシウム含有土壌改良剤のpH調整作用により、pHの急激な低下を抑制することができる。これにより、生分解性プラスチック分解酵素を生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に適用した場合においても、生分解性プラスチック分解酵素の活性を十分に維持することができる。
カルシウム塩及びカルシウム含有土壌改良剤の粒径は、従来公知の二軸平均粒径の測定方法により測定することができるが、本発明においては、光学顕微鏡(倍率:100倍から1000倍)にて、カルシウム塩又はカルシウム含有土壌改良剤の短径及び長径を測定し、算術平均することにより二軸平均粒径を得て、粒子100個の平均を求めることにより得られた値を意味するものとする。
生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法に使用できるカルシウム塩としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、塩化カルシウムや、モンモリロナイト等のカルシウムを含有する鉱物を挙げることができる。また、カルシウム含有土壌改良剤としては、重質炭酸カルシウム含有土壌改良剤や軽質炭酸カルシウム含有土壌改良剤を挙げることができる。
これらの中でも、生分解性プラスチック製マルチフィルムの効率的な分解に必要とされる量の散布により、土壌や作物に対して悪影響を与えないという点から、カルシウム塩である炭酸カルシウム、並びにカルシウム含有土壌改良剤である、重質炭酸カルシウム含有土壌改良剤及び軽質炭酸カルシウム含有土壌改良剤が好ましい。
炭酸カルシウムは、農業分野においては肥料として使用されており、一般に土壌に対して、15kg/10a以上の散布量で散布する資材ある。また、炭酸カルシウムや炭酸カルシウム含有土壌改良剤は、入手も簡単な上に価格も廉価である。このため、炭酸カルシウムを使用することにより、本発明の方法を、低コスト且つ低リスクで使用することができる。
本発明において、生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面にカルシウム又はカルシウム含有土壌改良剤を散布する場合、カルシウム塩の質量に換算して、マルチフィルム1m2あたり、10g以上50g以下の散布量で上記のカルシウム成分を散布することが好ましく、20g以上30g以下の散布量でカルシウム成分を散布することが好ましい。
上記の散布量でカルシウム成分を散布することにより、カルシウム成分による土壌に対する悪影響を限定的なものとしつつも、生分解性プラスチック製マルチフィルムの分解効率を効果的に維持することができる。
[生分解性プラスチック分解酵素適用工程]
本発明においては、生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に生分解性プラスチック分解酵素(エステル加水分解酵素)を含む溶液を適用する。
(生分解性プラスチック分解酵素)
本発明で使用される生分解性プラスチック分解酵素(広義のエステル加水分解酵素)としては、生分解性プラスチックのエステル結合を分解する酵素として従来公知の酵素を使用することができ、例えば、リパーゼ及びクチナーゼ、並びにそれら以外のエステラーゼ等を挙げることができる。
また、ProteinaseKなど、一部のプロテアーゼでも生分解性プラスチックを加水分解する現象が知られており、これらの酵素による生分解性プラスチック分解の場合にも、同じように本手法が適用できる。つまり、本発明のエステル加水分解酵素である生分解性プラスチック分解酵素については、代表的な酵素活性として、エステル加水分解活性以外の活性を有する酵素であってもよい。上述のProteinase Kについては、ペプチダーゼ活性に他にもエステラーゼ活性を有し、生分解性プラスチックを分解することが知られている。本発明においては、エステラーゼ活性を有し、分類学上、エステル加水分解酵素以外の酵素として分類される微生物由来の酵素についても、エステル加水分解酵素に含まれるものとする。
このような生分解性プラスチック分解酵素を得るにあたっては、例えば、当該酵素を産生する微生物を単離して培養し、生分解性プラスチック分解酵素を含む培養液の形で酵素溶液を得てもよいし、遺伝子組み換えの技術により、当該酵素を産生する遺伝子を単離するとともに、大量発現系に当該遺伝子を導入して得た粗酵素溶液、あるいは酵素そのものを単離してもよい。
本発明において、上記の生分解性プラスチック分解酵素を産生する微生物としては、Pseudozyma属酵母、Cryptococcus属酵母、Acremonium属糸状菌、Alternaria属糸状菌、Arthrinium属糸状菌、Aureobasidium属糸状菌、Cladosporium属糸状菌、Epicoccum属糸状菌、Fusarium属糸状菌、及びPeniciccium属糸状菌からなる群から選ばれる微生物を挙げることができる。本発明における生分解性プラスチック分解酵素としては、酵母Pseudozyma antarcticaの産生するクチナーゼ様酵素PaE、Cryptococcus magnus類縁株BPD1Aの産生するCmCut1、Cryptococcus flavus GB-1株の産生するCfCLE GB-1、及びCryptococcus flavus Sb19-1株の産生するCfCLE Sb19-1からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
なお、上記の生分解性プラスチック分解酵素のうち、酵母Pseudozyma antarcticaの産生するクチナーゼ様酵素PaEをコードする遺伝子PaCLE1、及びCryptococcus magnus類縁株BPD1Aの産生するCmCut1をコードするゲノムDNA及びcDNA配列については、それぞれ、GenBank Accession No. DM067526、並びにAB823702及びAB823703の登録番号で登録されており、Cryptococcus flavus GB-1株の産生するCfCLE GB-1、及びCryptococcus flavus Sb19-1株の産生するCfCLE Sb19-1については、配列番号1及び2にその遺伝子配列を示した。
生分解性プラスチック分解酵素を含む溶液は、任意の方法によって生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に適用すればよい。例えば、生分解性プラスチック分解酵素を含む溶液は、生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に塗布、散布、又は噴霧することができる。
生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に生分解性プラスチック分解酵素を含む溶液を接触させる期間は、適用する環境の気温によって適宜調整することが好ましいが、例えば、適用する環境の気温が19℃以上30℃以下である場合には、1時間から20日の間接触させることが好ましく、3時間から7日の間接触させることが更に好ましい。特に、上記の期間に亘り、生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に上記生分解性プラスチック分解酵素を接触させ、生分解性プラスチック製マルチフィルムをすき込み可能な程度にまで分解が進行した場合には、農業機械などを用いて生分解性プラスチック製マルチフィルムを土壌中にすき込み、土壌中の微生物などの助けを借りて更に生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解することが好ましい。
生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に適用する酵素溶液中の、生分解性プラスチック分解酵素の含有量は特に限定されるものではないが、上記酵素溶液1mL中、0.1単位以上20単位以下の生分解性プラスチック分解酵素を含有していることが好ましく、0.3単位以上10単位以下の生分解性プラスチック分解酵素を含有していることが更に好ましい。
なお、生分解性プラスチック分解酵素の活性は、以下の方法により測定することができる。
まず、内径10mmの試験管に、20mMのTris−HCl緩衝液(pH6.8)1730μLと、基質として、所定量のPBSAエマルジョンEM−301溶液を水に溶解した水溶液30μLと、を添加して混合し、更に必要に応じて100mM 塩化カルシウム溶液40μLを添加する。
次いで、生分解性プラスチック分解酵素を産生する微生物の培養液を得て、遠心分離により微生物を除去した後、上清200μLを得て、上記試験管中に添加する。上清を添加した混合液をボルテックスで撹拌し、濁度計を用いて660nmにおける透過率を測定する。その後、30℃において、220rpmで試験管を振とうしながら、混合時及び混合後15分の透過率を求める。濁度計により得られた透過率を以下の式(1)により吸光度に変換し、得られた吸光度から以下の式(2)により酵素活性を求める。
t=−log(X/100) ・・・(1)
C=(A0−A15)×10/15[U/mL/min] ・・・(2)
(式中、Atは時間t(min)における吸光度を示し、Xは透過率を示し、Cは酵素活性を示し、A0及びA15は、それぞれ混合時及び混合後15分における吸光度を示す。)
[生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法の実施態様]
生分解性プラスチック分解酵素とカルシウム塩又はカルシウム含有土壌改良剤とは、生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に別々に適用してもよく、同時に適用してもよい。例えば、本発明においては、カルシウム塩又はカルシウム含有土壌改良剤を生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に散布した後、生分解性プラスチック分解酵素を含む溶液をマルチフィルムの表面に散布してもよいし、生分解性プラスチック分解酵素を含む溶液を生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に散布した後、カルシウム又はカルシウム含有土壌改良剤を生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に散布してもよい。また、カルシウム塩又はカルシウム含有土壌改良剤と生分解性プラスチック分解酵素とを含む混合液を、生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に適用してもよい。
本発明の方法は、上記組成のポリマーであれば、酵素による分解が促進されうることから、堆肥袋や栽培用ポット、除草シート、蔓ネット等、マルチフィルム以外の用途の生分解性プラスチックの分解促進にも適用することができる。
本発明においては、生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面にカルシウム塩又はカルシウム含有土壌改良剤を散布し、生分解性プラスチック分解酵素を生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に適用した後、マルチフィルムの表面を水で洗い流した場合においても、生分解性プラスチックの分解は十分に進行する。これは、生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に生分解性プラスチック分解酵素が結合すると考えられるので、マルチフィルム表面を水で洗い流したとしても、生分解性プラスチック分解酵素は、生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に残留するためである。
よって、例えば、生分解性プラスチック分解酵素を適用した生分解性プラスチック製マルチフィルムが洗い流された場合においても、生分解性プラスチック製マルチフィルムの分解は十分に進行する。
生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面を水で洗い流す場合、マルチフィルム表面への生分解性プラスチック分解酵素の適用後、3時間から1日後に行うことが好ましい。
[生分解性プラスチック製マルチフィルム]
本発明の生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法を適用する対象となる生分解性プラスチック製マルチフィルムは、生分解性プラスチックとして、1質量%以上100質量%以下のポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)(PBAT)を含有する。生分解性プラスチック製マルチフィルムにおけるPBATの含有量は、1質量%以上95質量%以下であることが好ましく、18質量%以上75質量%以下であることがより好ましく、18質量%以上60質量%以下であることが特に好ましい。
本発明が適用される生分解性プラスチック製マルチフィルムは、生分解性プラスチックとして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは10質量%以下のポリ乳酸(PLA)を含有するが、ポリ乳酸を含有していなくてもよい。近年市場に流通する生分解性プラスチック製マルチフィルムは、PBAT以外にもポリ乳酸も含有している場合があるが、本発明の生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法は、PBAT以外にもPLAを含有する生分解性プラスチック製マルチフィルムに対しても適用することができる。
前述のとおり、近年市場に流通している生分解性プラスチック製マルチフィルムは、その使用耐久性の改善や、物理的特性の調整のため、多くの製品でPBATが配合されている。しかしながら、従来、PBATを含有する生分解性プラスチック製品を効率的に分解するために使用可能な生分解性プラスチック分解酵素製剤は、一般的に知られていなかった。
本発明においては、PBATが配合された生分解性プラスチック製マルチフィルムを効率よく分解できる方法を提供することにより、生分解性プラスチック製マルチフィルムを使用した栽培技術の利便性を向上させることができ、生分解性プラスチック製マルチフィルムの一層の普及を促すこともできる。
現在、日本国内では、農業従事者の高齢化に伴って農業従事者人口が減少し、耕作放棄地が急増しており、農業の省力化技術の開発が求められている。生分解性プラスチック製マルチフィルムを使用することにより、使用済みのマルチフィルムの回収及び処分のための労力が不要となるので、農業の省力化を実現できるとともに、使用済みの生分解性プラスチック製マルチフィルムを、酵素を用いて迅速に分解する、効率的な分解促進技術を利用することにより、使用済みの生分解性プラスチック製のマルチフィルムの、土壌への短期間での鋤き込みも可能となるので、耕作地を効率的且つ計画的に利用することができるようにもなる。
このように、生分解性プラスチック製マルチフィルムの利便性が向上することにより、生分解性プラスチック製マルチフィルムの消費量が増大すると考えられるが、生分解性プラスチック製マルチフィルムの消費量が増大することにより、生分解性プラスチック製マルチフィルムの生産及び流通コストの低減も可能となる。
また、欧州諸国では、生分解性プラスチック製マルチフィルムの普及促進に向けた政策が具体化しており、中国でも、従来のポリエチレン製マルチフィルムによる環境問題が深刻化している。世界各国で生分解性プラスチック製マルチフィルムの普及と、その利便性を向上するための各種技術の開発が求められている。
このため、本発明によれば、生分解性プラスチック製マルチフィルムの利便性を向上するための技術を提供することにより、国内外で求められる生分解性プラスチック製マルチフィルムの一層の普及を促進することができる。
<所定のエステル加水分解酵素を使用した生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法>
本発明は、微生物の産生するエステル加水分解酵素を含む溶液を圃場に設置された生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に適用する工程を有する、生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法であって、生分解性プラスチック製マルチフィルムが18質量%以上100質量%以下のポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)を含有し、エステル加水分解酵素が、酵母Pseudozyma antarcticaの産生するクチナーゼ様酵素PaE、Cryptococcus magnus類縁株BPD1Aの産生するCmCut1、Cryptococcus flavus GB-1株の産生するCfCLE GB-1、及びCryptococcus flavus Sb19-1株の産生するCfCLE Sb19-1からなる群から選択される方法にも関する。
前述のとおり、従来、PBATを含有する生分解性プラスチック製のマルチフィルムを効率的に分解できる生分解性プラスチック分解酵素は知られていなかった。本発明の発明者らは、酵母Pseudozyma antarcticaの産生するクチナーゼ様酵素PaE、Cryptococcus magnus類縁株BPD1Aの産生するCmCut1、Cryptococcus flavus GB-1株の産生するCfCLE GB-1、及びCryptococcus flavus Sb19-1株の産生するCfCLE Sb19-1が、PBATを含有する生分解性プラスチック製マルチフィルムを効率よく分解できることを見出した。
このため、これらの酵素を使用することにより、今後、より広く流通することが予測されるPBATを含有する生分解性プラスチック製マルチフィルムを、圃場にて効率よく分解することが可能となる。
本発明によれば、生分解性プラスチック分解酵素であるエステル加水分解酵素による、生分解性プラスチック製マルチフィルムの分解に伴うマルチフィルム表面の急激なpHの低下が抑制され、生分解性プラスチック分解酵素による生分解性プラスチックの分解活性が長時間に亘って高く維持される。よって、本発明の方法を採用することにより、生分解性プラスチック分解酵素を用いた生分解性プラスチック製マルチフィルムの分解を効率的に行うことを可能とする。
<試験例1;酵素溶液の調製>
Pseudozyma antarcticaが生産するPaE、糸状菌B47-1株が生産するPCLE、又はCryptococcus magnus類縁菌PBD1A株が生産するCmCut1を含有する粗酵素溶液は、それぞれ、非特許文献4、非特許文献1、又は非特許文献5に記載された方法に従って各菌株を培養して、得られた培養液をフィルターで濾過し、菌体を除去することにより調製した。また、Cryptococcus flavus GB-1株とSb19-1株が生産するCfCLE GB-1又はCfCLE Sb19-1を含有する酵素溶液は以下に説明する方法に従って調製した。
各方法において得られた培養液を、それぞれ、7000rpm、5分間の遠心分離に供して菌体を除去し、孔径0.45μmのろ紙(製品名:Cellulose acetate C045A090C、アドバンテック株式会社製)を使用してフィルターろ過を行なって粗酵素液とした。
各酵素の酵素活性の測定は、PBSAエマルジョンの濁度減少量により評価した。具体的には、緩衝液に660nmにおける吸光度)がおよそ0.65となるようPBSAエマルジョンを懸濁した水溶液1.9mLを内径10mmの試験管に入れ、培養上清を100μL加え、30℃で180rpm、15分間振とう処理して、吸光度を再度測定した。1分間に吸光度を1.0減少させる酵素量を1Uと定義し、各酵素溶液の酵素量を規定した。反応に用いた緩衝液は、PaEでは20mM Tris HCl緩衝液(pH6.8)、PCLEでは2mM CaCl2入り20mM Tris HCl緩衝液(pH6.8)を用いた。
[Cryptococcus flavusの培養条件]
前培養として、Cryptococcus flavus GB-1株、Sb19-1株を以下に示すYM培地中で、30℃で24時間振とう培養した。次に、本培養として、以下に示すYX培地を100mL容三角フラスコ中に20mL装入し、これに上記の前培養液200μLを接種して、30℃、200rpmで96時間まで振とう培養した。なお、培養終了後にGB-1株では6.1U/mL、Sb19-1株では10.2U/mLのPBSAエマルジョン分解活性を示した。
(YM培地の組成)
Yeast extract 0.3%、Malt extract 0.3%、Bacto peptone 0.5%、グルコース 1.0%
(YX培地の組成)
Yeast extract 1.0%、D−キシロース 6.0%
<試験例2;Cryptococcus flavus GB4-1株及びSb19-1株が生産するCfCLE GB-1, CfCLE Sb19-1の同定>
今回植物表面から2株の生分解性プラスチック分解菌を単離し、rDNAのITS領域の配列から、Cryptococcus flavus と同定した。既に、生分解性プラスチック分解酵素を産生する菌株としての報告があるCryptococcus sp.S-2株は、C. flavusとの類縁性が高いという報告がある。そこで、Cryptococcus sp.S-2株の生分解性プラスチック分解酵素CLEの遺伝子配列(D83540)をDDBJから取得し、その配列内でプライマーを設計した。このプライマーを用いたPCRにより、Cryptococcus flavus GB-1株とSb19-1株が生産するCfCLE GB-1及びCfCLE Sb19-1の遺伝子配列を取得した。CfCLE GB-1のゲノム上の遺伝配列を配列番号1に、CfCLE Sb19-1のゲノム上の遺伝子配列を配列番号2に記載した。ここで、配列番号1の遺伝子配列のうちの592から638の配列、及び配列番号2の592から638の配列はイントロンであると推定される。
<試験例3;PBAT及びPLAを含むフィルムの分解活性の測定>
1質量%のPBAT(BASF社製、エコフレックスF blend C1200)、又はL−ポリ乳酸(PLA、分子量10万、ポリサイエンス社製)を含むクロロホルム溶液を調製し、PBAT溶液及びPLA溶液を、100:0、95:5、90:10、85:15の比率(PBAT:PLA)で混合した。混合後の各溶液20μLを、直径7mmのガラス板の表面でそれぞれ固化し、24時間風乾した後、水洗して再度風乾した。1枚のフィルムあたりの生分解性プラスチックの重量は0.3mgになった。PaE又はPCLEの粗酵素液をそれぞれ0.3U/mLになるように蒸留水で調製するとともに、その際PCLE溶液には2mMのCaCl2を加えた。フィルム表面に粗酵素溶液を50μLずつ滴下し、湿度を保った30℃の密閉容器内で120分間保持した。酵素反応後、反応液中に溶け出してきたテレフタル酸由来の260nmの紫外吸収を、ナノドロップND−1000(ナノドロップ社製)を用いて測定した。また、反応液中のpHを、フラットISFET pH電極(堀場製作所製)を用いて測定した。なお、対照としては、粗酵素液を121℃で15分間加熱処理することにより酵素活性を失活させた溶液を用いた。
実験は、一条件あたりの母数を5として実施し、各条件について、対照となる失活酵素を使用して得られた値の平均値と活性を有する酵素を使用して得られた値の平均値との差を結果として表1にまとめた。
表1から明らかなように、PaE及びPCLEを使用してフィルムを処理した反応液で共に紫外線吸収が認められ、PaE及びPCLEがともに、PBATを分解することが示されたものの、PaEを使用してフィルムを処理した反応液ではPCLEを使用してフィルムを処理した反応液よりも高い吸光度を示し、PCLEに比べてPaEのほうが、PBATの分解活性が高いことが示唆された。更に、特に、PaEを使用した系において、PLA含量比が高いフィルムではより多くのPBATが溶出した。また、表2に示すように、PaEもPCLEも生分解性プラスチックが分解された結果、反応液のpHが低下し、フィルムの分解により有機酸が遊離していることが示唆された。なお、100%PBATフィルムをPaEにより処理した際の反応液中のpHは、反応開始時に平均5.60であったが、20分後に5.41、40分後に5.29、60分後に4.90と急速に低下し、120分後には4.40となった。
以上の結果から、PBAT100%のフィルムやPBATにPLAを混合したフィルムの分解には、PaEやPCLEを用いることができることがわかった。
表1 PBAT及びPLE混合フィルムのPaE及びPCLEによる分解性の検討
※OD260は120分間の反応後の酵素反応液における260nmでの吸光度
表2 PBAT及びPCELの分解に伴うpHの変動
<試験例4;表面プラズモン共鳴装置を用いた生分解性プラスチック製フィルムの分解活性測定>
[生分解性プラスチック分解酵素の精製]
PaE、PCLE、CmCut1、CfCLE GB-1、及びCfCLE Sb19-1の精製は、非特許文献5に記載されたPBSAエマルジョンに対するアフィニティークロマトグラフィーを使用して行い、得られた生分解性プラスチック分解酵素については、SDSゲル電気泳動後の銀染色で単一バンドになるまで精製されていることを確認した。酵素の濃度は、Bradford法で定量した。
[表面プラズモン共鳴装置を用いた精製酵素による生分解性プラスチック製フィルムの分解活性測定]
表面プラズモン共鳴装置(SPR装置)を用いると、生分解性プラスチック分解酵素による、生分解性プラスチック製フィルムの分解速度を正確に調べることができる。SPR装置の基板に生分解性プラスチック製フィルムを固定し、基板表面の溶液流路に生分解性プラスチック分解酵素溶液を流した際のRU値減少量は、生分解性プラスチックの分解量と相関することが示されている(非特許文献6)。
本試験例では非特許文献6に開示された方法と同じ方法で、各精製酵素によるPBATの分解速度を調べた。図1(実線)に示すように、母数3とした実験で新しいPBATフィルム表面をHSB−Nバッファー中で、精製PaE(100nM)で処理した結果、600秒後のRU値は平均して−9174RU(SD:−1395)となった。また、図1(点線)に示すように、一度、酵素処理したフィルムに対して再度、PaE(100nM)酵素溶液で処理した場合、450秒後のRU値は平均−2109RU(SD:−938)となった。このように、精製したPaEは、PBATフィルムを分解する活性を有することが確認された。
一方、図2に示すように、同様の実験を、1mM CaCl2入りHSB−Nバッファー中で、100nM、200nM、及び300nMのPCLEを用いて実施したところ、440秒後のRU値は、酵素無しの場合は−12.6RU、PCLE 100nMの場合は−126RU、PCLE 200nMの場合は−258RU、PCLE 300nMの場合は−478RUであり、PaEがPCLE等の従来PBAT活性の示唆されていた酵素と比べても、PBATの初期分解活性が高いことが強く示唆された。
<試験例5;精製された生分解性プラスチック分解酵素によるPBATフィルムの分解>
精製された各生分解性プラスチック分解酵素によるPBATの分解活性を非特許文献2に記載された方法に従って確認した。
PBATを1質量%含有するクロロホルム溶液又はジクロロメタン溶液を、直径7mmのガラス板の表面に20μLずつ滴下し、室温で24時間風乾させた後、蒸留水で洗浄して更に風乾した。このようにして作製されたPBATフィルムは、1枚あたり約0.3mgのPBATを含んでいた。
試験例4に記載された方法に従って精製されたPaE(濃度:2.5μg/mL、緩衝液:pH8.8 Tris−HCl)、PCLE(濃度:10μg/mL、緩衝液:pH7.4、1mM CaCl2入り25mM HEPES−NaOH2)、CmCut1(濃度:9.2μg/mL、緩衝液:pH7.4、2.5mM CaCl2入り25mM HEPES−NaOH)、並びにCfCLE GB-1及びCfCLE Sb19-1(濃度:10μg/mL、緩衝液:pH7.8、25mM HEPES−NaOH)を、括弧内に示した反応条件でPBATフィルムの分解反応に供した。
作製したフィルムの表面に各酵素溶液を50μlずつ滴下し、湿度を一定に維持した密閉容器内において、30℃で24時間保持した。反応後、酵素反応液中の全有機炭素量を非特許文献2に記載の全有機体炭素計(TOC−V;島津製作所製)で測定し、反応に用いた酵素の炭素量を差し引いて、反応によりフィルムから溶け出した有機物の量を算出して、PBATの分解効率とした。以上の実験は、各条件について母数を3として実施した。
その結果、表3に示すように、いずれも酵素もPBATを分解したものの、既知のPBAT分解酵素であるPCLEに比べ、PaE、CmCut1、CfCLE GB-1、及びCfCLE Sb19-1はPCLEと比べてもPBATの分解効率が高く、その傾向は、Cryptococcus flavus由来の2種類の酵素で特に顕著であった。
表3 精製した生分解性プラスチック分解酵素によるPBATの分解
<試験例6;生分解性プラスチック分解酵素による生分解性プラスチック製フィルムの分解>
精製された各生分解性プラスチック分解酵素による生分解性プラスチック製フィルムの分解活性を非特許文献7に記載された方法に従って確認した。
PBATを1質量%又はPLAを1質量%、それぞれ含有するクロロホルム溶液を調製し、混合フィルム作成用には、PBAT:PLAが85:15になるよう各生分解性プラスチックのクロロホルム溶液を混合した。各溶液300μLに、ナイルブルー染色液(武藤化学株式会社製)10μLを混合した混合液を調製した。直径7mmのガラス板の表面に、3種類(PBATのみ、PLAのみ、及びPBAT:PLA=85:15の混合物)の生分解性プラスチック溶液、20μLを滴下して、着色フィルムを作成した。
酵素反応には、精製したPaE、CfCLE GB-1、及びCfCLE Sb19-1を用いた。全ての酵素について、酵素濃度は2μg/mLとし、緩衝液は1mM CaCl2入りの25mM HEPES−NaOH(pH7.8)溶液とした。各酵素溶液50μLずつをすべての系列について合計5枚のフィルムの表面に滴下し、30℃にて反応させた。反応時間は、PBATフィルム及びPLAフィルムについては24時間、PBAT/PLA混合フィルムについては2時間とした。フィルム1枚あたり反応液35μLを96穴マイクロプレートに回収し、マイクロプレートリーダーを用い、600nmにおける吸光度として、溶け出した青色色素の濃度を測定した。結果を表4に示す。非特許文献7における教示によれば、フィルムから溶出した青色色素の量は、フィルムの分解量に相関するため、上記600nmにおける吸光度が、所定の範囲でフィルムの分解量に相関すると考えられる。
表4からも明らかなように、本試験例で用いた全ての精製酵素はPBAT及びPLAを良好に分解した。なお、混合フィルムの分解性については、PaEとCfCLE SB19-1が特に優れていた。
表4 精製した生分解性プラスチック分解酵素によるPBAT及びPLAの分解
<試験例7;生分解性プラスチック製マルチフィルムの分解の際の表面のpH>
生分解性プラスチック製マルチフィルム(市販品A;PBSA:PBS:PBAT=47:37:17(質量比))を10×10cmの断片に切断し、密閉容器内に風乾させた土壌(農業環境技術研究所内の圃場から採集したもの)を敷き詰め、その表面に5×5cmの表面が土壌から露出するように生分解性プラスチック製マルチフィルムを設置した。このマルチフィルムの表面に、特許文献7記載の方法で調製したPaE粗酵素液(PaE 3.8U/ml、pH8(pHは未調整))を750μL(300mL/m2相当)散布し、密閉して37℃で保持した。1時間後、マルチフィルム表面の反応液のpHをpH試験紙で測定したところpHが約3から4まで低下していた。このことから、生分解性プラスチック分解酵素PaEによる有機酸ポリマーの分解に伴い、酸性基の数が増大していることが示唆された。
このため、pH8.0の20mM Tris緩衝液で表面を洗浄してpHを平衡化したのち、再び、37℃で30分保持した。その結果、マルチフィルム表面のpHは再び、pH5程度にまで低下し、マルチフィルム表面の洗浄後も酵素反応が進行していることが推察された。
<試験例8;炭酸カルシウムの併用による生分解性プラスチック製マルチフィルムの分解促進>
PaE粗酵素液(3.8U/ml)に対して、1%(W/V)及び2%(W/V)となるように炭酸カルシウム(和光純薬株式会社製、試薬、長軸径3.9μm−短軸径3.53μm、二軸平均粒径3.72μm)を添加して、炭酸カルシウム入りの生分解性プラスチック分解酵素溶液を調製した。
生分解性プラスチック製マルチフィルム(市販品A;PBSA:PBS:PBAT=47:37:17(質量比))を10×10cmの断片に切断し、密閉容器内に風乾させた土壌(農業環境技術研究所内の圃場から採集したもの)を敷き詰め、その表面に5×5cmの表面が土壌から露出するように生分解性プラスチック製マルチフィルムを設置した。
このマルチフィルムの表面に、上記の炭酸カルシウム入りPaE粗酵素溶液を750μl(300mL/m2相当)散布し、密閉して25℃から45℃の温度で24時間静置し、マルチフィルムの分解の程度を確認した。その結果、全ての温度条件において、炭酸カルシウムと生分解性プラスチック分解酵素を併用した場合、生分解性プラスチック分解酵素によるマルチフィルムの分解がより一層促進され、黒色のマルチフィルムが透けて見えるほどの薄さまで分解されることが確認された(図3参照)。
<試験例9;炭酸カルシウムの併用による圃場に設置した生分解性プラスチック製マルチフィルムの分解促進>
圃場に設置した市販の生分解性プラスチック性マルチフィルム(市販品A;PBSA:PBS:PBAT=47:37:17(質量比))を面積約1aのビニールハウス内に設けた1m×1mの平畦に設置した。マルチフィルムの表面にPaE粗酵素液(4.3U/mL)1m2あたり300mLを、肩掛け農薬散布機で散布し、散布処理の1日後にマルチフィルムの分解面積を写真撮影した後、中心部80cm×80cmの断片を切り出して洗浄及び風乾の後、重量を計測した。実験は3回反復して行った。その結果、酵素処理区では、酵素無処理区に比べて、マルチフィルムの重量が平均3.6%減少した。一方、マルチフィルムの表面にPaE粗酵素液を散布した直後に3gの炭酸カルシウム(長軸径μm3.9−短軸径3.53μm、二軸平均粒径3.72μm)を散布したところ、散布処理の1日後には生分解性プラスチック性マルチフィルムの表面に亀裂が入って穴が開くなど、迅速に分解し、マルチフィルムの重量が平均5.6%減少する効果が得られた(試験は3回反復して行った)。
結果を図4に示す。
また、PaE酵素液を散布して3時間後、フィルム表面が濡れる程度(300mL弱)の水を更に散布する実験も行った。水散布処理の1日後に、上述の実験と同様に中心部80cm×80cmの断片を切り出して洗浄及び風乾し、重量を計測した結果、酵素無処理区(control)に比べて、マルチフィルムの重量が平均4.1%減少した。酵素と炭酸カルシウムとを併用処理した場合でも、水散布後のマルチフィルムの重量は、酵素無処理区に比べても平均5.1%減少した(表5参照)。
表5 炭酸カルシウム処理及び酵素処理後の水散布処理によるフィルム重量の減少(圃場実験)
<試験例10;カルシウム成分の併用による生分解性プラスチック分解活性の促進>
以下の試験では、圃場で用いるカルシウム成分として、生分解性プラスチック分解酵素による生分解性プラスチック製マルチフィルムの分解促進効果が高い成分の特性を検討した。
本試験では、以下のカルシウム塩又はカルシム含有土壌改良剤を用いた。
クレミクス(白石カルシウム株式会社製、水溶性カルシウム含有普通肥料、二軸平均粒径8.56μm)
ホワイトコート(白石カルシウム株式会社製、炭酸カルシウム水和剤(殺虫剤)、二軸平均粒径0.07μm以下)
クレフノン(白石カルシウム株式会社製、炭酸カルシウム水和剤(農薬/着色促進剤等)、二軸平均粒径1.58μm)
ホワイトンB(白石カルシウム株式会社製、重質炭酸カルシウム、二軸平均粒径7.42μm)
ソフトン3200(白石カルシウム株式会社製、重質炭酸カルシウム、二軸平均粒径0.35μm)
ビオライト(株式会社アリアケ製、軽質炭酸カルシウム(土壌改良剤)、二軸平均粒径0.45μm)
セルキープ(白石カルシウム株式会社製 水溶性塩化カルシウム(CaO)含有液体複合肥料)
苦土石灰(肥料、二軸平均粒径5.93μm)
炭酸カルシウム(和光純薬株式会社製、試薬、二軸平均粒径3.72μm)
なお、各カルシウム成分の平均粒径は、光学顕微鏡(倍率:200倍から1000倍)にて、カルシウム塩又はカルシウム含有土壌改良剤の短径及び長径を測定し、算術平均することにより二軸平均粒径を得て、粒子100個の平均を求めることにより得られた値である。また、セルキープは液体であるため、その使用にあたっては、1%(W/V)の水溶液に希釈して用いることとした。
生分解性プラスチック製マルチフィルム(市販品A:PBSA:PBS:PBAT=47:37:17(質量比))を、フィルム伸展方向に、縦横それぞれ1.5cm×5cmとなるように切断し、ガラスチューブに装入した。これに、1%W/Vになるように上記の各カルシウム成分を添加したPaE粗酵素液(5U/ml)10mLを加え、125rpmで30分振とうした。
反応後、マルチフィルムを取り出し、洗浄風乾した後にシール強度測定機(富士インパルス社製、PTT−100)を用い、チャック間距離10mm、試験速度300mm/minの条件下、引張り強度N(単位:N)を測定した(試験は5回反復して行った)。
その結果、酵素のみを用いて処理した場合に比較して、カルシウム成分を併用して処理した場合には、引っ張り強度が有意に低下しており、カルシウム成分による生分解性プラスチック製マルチフィルムの分解促進効果が確かめられた。結果を表6に示す。
表6 各種カルシウム成分を併用した酵素処理後のフィルムの強度変化(室内実験)
<試験例11;カルシウム成分の粒径による生分解性プラスチックの分解効率の違いの検討>
市販の生分解性プラスチック製マルチフィルム(市販品A;PBSA:PBS:PBAT=47:37:17(質量比)、及び市販品B;PBSA:PBS:PBAT:PLA=25:23:51:1(質量比))を、面積約1aのビニールハウス内に設けた1m×1mの平畦に設置した(試験は3回反復して行った)。生分解性プラスチック分解酵素であるPaE粗酵素溶液(3.4U/mL)に、各種カルシウム成分の添加量が1%(W/V)(ただし、セルキープは1%(W/W))となるようにカルシウム塩又はカルシウム含有土壌改良剤を混合し、この混合物を生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に、肩掛け農薬散布機で散布した。
カルシウム成分としては、は以下6製品を用いた;クレミクス、ソフトン3200、ビオライト、セルキープ、クレフノン、炭酸カルシウム(和光純薬株式会社製試薬)。
散布1日後にマルチフィルムの面積を写真撮影して記録し、3日後には中心部の80cm×80cmの断片を切り出して、洗浄・風乾後に重量を計測した。1日目のマルチフィルムの写真を図5に、3日目のマルチフィルムの重量を表6に示す。
その結果、酵素のみを散布したマルチフィルムにおける分解面積の割合が市販品Aで2.3%、市販品Bで2.6%であったのに対して、ソフトン、クレフノン、ビオライトの添加によりマルチフィルムの分解が顕著に促進され、重量も減少した。また、炭酸カルシウムを使用した場合、粒径が小さいほど生分解性プラスチック製マルチフィルムの分解効果に優れることが明らかになった。
表7 各種カルシウム成分を併用した酵素処理後のフィルムの分解(圃場実験)

Claims (5)

  1. 微生物の産生するエステル加水分解酵素を用いて圃場に設置された生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法であって、
    0.07μm以上7.42μm以下の二軸平均粒径を有するカルシウム塩又はカルシウム含有土壌改良剤を圃場に設置された生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に散布する工程と、
    前記エステル加水分解酵素を含む溶液を生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に適用する工程とを有し、
    生分解性プラスチック製マルチフィルムが1質量%以上100質量%以下のポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)を含有し、
    エステル加水分解酵素が、Pseudozyma属酵母、Cryptococcus属酵母、Acremonium属糸状菌、Alternaria属糸状菌、Arthrinium属糸状菌、Aureobasidium属糸状菌、Cladosporium属糸状菌、Epicoccum属糸状菌、Fusarium属糸状菌、及びPeniciccium属糸状菌からなる群から選ばれる微生物により産生されるものである、生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法。
  2. エステル加水分解酵素が、酵母Pseudozyma antarcticaの産生するクチナーゼ様酵素PaE、Cryptococcus magnus類縁株BPD1Aの産生するCmCut1、Cryptococcus flavus GB-1株の産生するCfCLE GB-1、及びCryptococcus flavus Sb19-1株の産生するCfCLE Sb19-1からなる群から選択される、請求項1に記載の生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法。
  3. カルシウム塩が炭酸カルシウムであり、カルシウム含有土壌改良剤が重質炭酸カルシウム又は軽質炭酸カルシウムを含む、請求項1又は2に記載の生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法。
  4. 生分解性プラスチック製マルチフィルムが1質量%以上99%以下のポリ乳酸を更に含有する、請求項1から3のいずれかに記載の生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法。
  5. 微生物の産生するエステル加水分解酵素を含む溶液を圃場に設置された生分解性プラスチック製マルチフィルムの表面に適用する工程を有する、生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法であって、
    生分解性プラスチック製マルチフィルムが18質量%以上100質量%以下のポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)を含有し、
    エステル加水分解酵素が、酵母Pseudozyma antarcticaの産生するクチナーゼ様酵素PaE、Cryptococcus magnus類縁株BPD1Aの産生するCmCut1、Cryptococcus flavus GB-1株の産生するCfCLE GB-1、及びCryptococcus flavus Sb19-1株の産生するCfCLE Sb19-1からなる群から選択される、生分解性プラスチック製マルチフィルムを分解する方法。
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