JP2016023179A - 改変型の耐熱性RecAタンパク質、該タンパク質をコードする核酸分子、該タンパク質を用いた核酸の増幅方法、及び核酸増幅用キット - Google Patents

改変型の耐熱性RecAタンパク質、該タンパク質をコードする核酸分子、該タンパク質を用いた核酸の増幅方法、及び核酸増幅用キット Download PDF

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Abstract

【課題】核酸増幅技術の高精度化及び高効率化を図り、非特異的な増幅を抑制して、より特異的かつ効率的に所望の核酸のみを増幅できる技術の提供。【解決手段】野生型の耐熱性RecAタンパク質に比べて、鋳型核酸に対するプライマーのミスアニーリングを低減させる機能を有する特定のアミノ酸配列の202番目に相当する位置のアミノ酸がトリプトファンである改変型の耐熱性RecAタンパク質、及びその機能等価物。前記野生型の耐熱性RecAタンパク質が、サーマス・サーモフィラス又は、サーマス・アクアティカスに由来する改変型の耐熱性RecAタンパク質。【選択図】なし

Description

本発明は、改変型の耐熱性RecAタンパク質、及び該タンパク質をコードする核酸分子、及び該タンパク質を用いた核酸の増幅方法、及び核酸増幅用キットに関する。詳細には、野生型の耐熱性RecAタンパク質に比べて、核酸増幅反応系における鋳型核酸の高精度かつ効率的な増幅に寄与する能力が向上されている改変型の耐熱性RecAタンパク質、及びその利用方法に関する。
ポリメラーゼ連鎖反応(以下、「PCR」と略する場合がある。)等の核酸増幅技術は、標的とする特定のDNA領域を短時間で10万倍以上に増幅できる画期的な技術である。しかしながら、その反応を最適化することは難しく、プライマーが標的配列以外にアニールする、あるいはプライマー同士がアニールする等、プライマーのミスアニーリングにより生じる非特異的増幅により増幅効率が低下する等の問題があった。鋳型核酸に非特異的な増幅産物は、増幅精度が低下する要因となり、後の実験に支障を来たすバックグラウンドノイズとなる。そのため、非特異的増幅を抑制し、標的核酸のみを特異的かつ効率的に増幅できる高精度の増幅技術の確立が求められていた。
そこで、非特異的な増幅を抑制するための様々な試みが報告されている。例えば、PCR核酸増幅反応において、変異誘発ヌクレオチド除去タンパク質、例えばMutMおよび/またはMutYタンパク質を添加することで、増幅核酸の変異導入を抑制する方法が報告されている(特許文献1)。詳細には、変異誘発ヌクレオチド除去タンパク質を用いて、8−オキソグアニンヌクレオチド、2−オキソアデニンヌクレオチド等の変異を誘発するヌクレオチドを含む1本鎖または2本鎖のDNA鎖から、該ヌクレオチドを取り除くものである。そして、これにより、該DNA鎖を鋳型としたDNA伸長または増幅反応の際に起こりうる変異を抑制し、増幅反応の正確性を高めるというものである。
しかしながら、変異誘発ヌクレオチド除去タンパク質(MutM、MutT)は、プライマーと鋳型核酸とのペアリング特異性向上活性は有していない。そのため、特許文献1の技術によるプライマーと鋳型核酸とのペアリング特異性向上効果は限定的であり、プライマーのミスアニーリングを効果的に抑制できるものではなかった。
また、増幅サイクルの各段階でプライマーのミスアニーリングが起こらないように反応を制御するべく様々な試みが報告されている。例えば、高度好熱菌由来の耐熱性RecAタンパク質が、鋳型やプライマーと相互作用して、特定の鋳型配列のみに対するプライマーの結合を促進でき、それにより、プライマーのミスアニーリングを抑制できることを報告されている。ここで、RecAタンパク質とは、単鎖核酸に協同的に結合し、該単鎖核酸と二本鎖核酸との間で相同領域を検索し、核酸の相同組換えを行うタンパク質である。
そして、本発明者らは、以前に、PCR核酸増幅反応において、前述のRecAタンパク質と当該タンパク質活性化する因子とを共存させることにより、プライマーのミスアニーリングを効果的に抑制し、所望の核酸をより特異的に増幅することができることを報告した(特許文献2及び3)。具体的には、PCR核酸増幅方法において、反応液中に、RecAタンパク質等の相同的組換えタンパク質、及びATP-γS等のタンパク質活性化因子を添加することで、非特異的なPCR産物の増幅を低く抑えることができ、所望の核酸をより特異的に増幅することができることが報告されている(特許文献2)。更に、PCR核酸増幅反応中において、反応液中に、RecAタンパク質等の相同的組換えタンパク質、及びATP等のヌクレオチド3リン酸を添加することで、非特異的なPCR産物の増幅を低く抑えることができ、所望の核酸をより特異的に増幅することができることが報告されている(特許文献3)。そして、ヌクレオチド3リン酸の存在により、RecAタンパク質は活性化され、その生物学的機能を良好に保持できることが報告されている。
上述の特許文献2、3の技術は、鋳型核酸中で一塩基多型を調べたい配列領域をプライマーとしてPCR核酸増幅反応を行い、増幅産物量を指標に一塩基多型の有無を検出することができるものである。しかしながら、検出精度の面では、市場の要求を十分に満足させるものではなかった。その要因として、RecAタンパク質のプライマーと鋳型核酸とのペアリング特異性向上活性が不十分であるがために、非特異的増幅が生じていることが考えられた。
そこで、上述の問題点を解決するための研究が進められ、その研究のなかで、高精度な核酸増幅に寄与し得る改変型の耐熱性RecAタンパク質が報告されている(特許文献4)。特許文献4の改変型の耐熱性RecAタンパク質は、野生型のサーマス・サーモフィラス由来の耐熱性RecAタンパク質(以下、「TthRecAタンパク質」と称する)のアミノ酸配列において、C末端の酸性領域を構成する13個の酸性アミノ酸残基を欠失した「Hyper-TthRecAタンパク質」と称するC末端切断型の耐熱性RecAタンパク質である。そして、かかるC末端切断型の耐熱性RecAタンパク質は、高い相同組換え活性を有し、プライマーと鋳型核酸のペアリング特異性の向上に貢献することが報告されている。そして、かかるC末端切断型の耐熱性RecAタンパク質を核酸増幅反応系に添加すると、非特異的増幅が生じず、標的核酸に特異的な増幅産物が得られ、高精度の核酸増幅が達成できる。
しかしながら、特許文献4のC末端切断型の耐熱性RecAタンパク質は、核酸増幅反応阻害の要因となり、これにより増幅効率の低下を招くことが判明した。この理由としては、当該タンパク質が相同組換え活性を発揮した後も核酸に付着したまま解離せず、これに続く鎖伸長反応を妨害することが想定された。そのため、特許文献4のC末端切断型の耐熱性RecAタンパク質は、核酸増幅反応への利用に際しては増幅効率面で更なる改善の余地があった。これと相俟って、当該タンパク質は一塩基多型解析に好適に利用できるものであるが、更なる解析の高精度化を図るため、鋳型核酸とプライマーのペアリング特異性の一層の向上に寄与し得る技術の構築が求められていた。
特開平11-225798号(特願平10-32738号) 再表2004/027060号(特願2004-537561号) 特開2006-174722号(特願2004-368831号) 特開2008-029222号(特願2006-203810号)
そこで、本発明は、核酸増幅技術の高精度化及び高効率化を図り、非特異的な増幅を抑制して、より特異的かつ効率的に所望の核酸のみを増幅できる技術の確立を目的とする。
本発明者が鋭意検討を行った結果、耐熱性RecAタンパク質のアミノ酸配列において、ある特定のアミノ酸に改変が生じている改変部位を有する改変型の耐熱性RecAタンパク質を構築した。かかる改変型の耐熱性RecAタンパク質は高い相同組換え活性を示した。そして、かかる改変型の耐熱性RecAタンパク質を核酸増幅反応系に添加したところ、非特異的増幅が生じず、標的核酸に特異的な増幅産物が得られ、一塩基多型解析等に利用可能な高精度の核酸増幅が達成できることを見出した。更に、検討を重ねたところ、従前のC末端切断型の耐熱性RecAタンパク質において観察されたような増幅阻害を回避して、高効率な核酸増幅が達成できた。これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
上述の目的を達成するため、下記の〔1〕〜〔13〕の構成からなる発明を提供する。
〔1〕以下のタンパク質から選択される改変型の耐熱性RecAタンパク質。
(1)配列番号1〜4の何れかのアミノ酸配列からなるタンパク質
(2)配列番号1〜4の何れかのアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されており、かつ、前記配列番号1〜4の何れかのアミノ酸配列の202番目に相当する位置のアミノ酸がトリプトファンであるアミノ酸配列からなるタンパク質であって、核酸増幅反応系において、配列番号6、8、10、又は12のアミノ酸配列からなる野生型の耐熱性RecAタンパク質に比べて、鋳型核酸に対するプライマーのミスアニーリングを低減させる機能を有するタンパク質
(3)配列番号1〜4の何れかのアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有し、かつ、前記配列番号1〜4の何れかのアミノ酸配列の202番目に相当する位置のアミノ酸がトリプトファンであるアミノ酸配列からなるタンパク質であって、核酸増幅反応系において、配列番号6、8、10、又は12のアミノ酸配列からなる野生型の耐熱性RecAタンパク質に比べて、鋳型核酸に対するプライマーのミスアニーリングを低減させる機能を有するタンパク質
〔2〕野生型の耐熱性RecAタンパク質が、サーマス(Thermus)属細菌に由来する上記〔1〕の改変型の耐熱性RecAタンパク質。
〔3〕野生型の耐熱性RecAタンパク質が、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)、又はサーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)に由来する上記〔1〕又は〔2〕の改変型の耐熱性RecAタンパク質。
〔4〕配列番号1〜3の何れかのアミノ酸配列からなる上記〔1〕〜〔3〕の何れかの改変型の耐熱性RecAタンパク質。
〔5〕配列番号4のアミノ酸配列からなる上記〔1〕〜〔3〕の何れかの改変型の耐熱性RecAタンパク質。
上述の〔1〕〜〔5〕の構成によれば、核酸増幅反応系における標的核酸の高精度かつ高効率な増幅に寄与する能力が向上されている改変型の耐熱性RecAタンパク質を提供する。特に、標的核酸とプライマーとのペアリング特異性を向上させる活性を有する。つまり、プライマーが、プライマーと相補的な標的核酸上の領域にのみにペアリングし、非相補的な領域にペアリングしたり、プライマー同士のプライマーダイマーを形成したりする等のミスアニーリングを抑制し、相補的配列をもって厳密にペアリングさせる。ミスアニーリング低減効果は、下述する通り、本願発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質が、相同組換え反応における主要なステージであるプライマーの相補的な標的核酸へのペアリング、及び鎖交換の双方の活性が向上していることより達成することができるものである。そのため、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質を核酸増幅系に添加することにより、改変部位を有しない野生型の耐熱性RecAタンパク質では不十分であった標的核酸に特異的、かつ、効率的な核酸増幅が可能となる。したがって、非特異的増幅を抑制でき、バックグラウンドノイズの影響を受けない標的核酸の増幅が可能となり、増幅精度の向上に寄与し得る。したがって、高精度な核酸増幅が要求される一塩基多型解析等に利用することができる他、様々な産業分野、特には分子生物学の分野に幅広く利用可能なタンパク質を提供できる。
また、本発明の変異型の耐熱性RecAタンパク質は、本発明者らが以前に開発したC末端切断型の耐熱性RecAタンパク質よりも、更に、高精度かつ高効率な増幅に寄与する能力が向上されている。当該C末端切断型の耐熱性RecAタンパク質は、従来において、高精度かつ高効率な核酸増幅に寄与する能力を有するとして知られていたものであるが、増幅阻害という問題を有していた。一方、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質は、核酸増幅系において標的核酸とプライマーとのペアリング後に、当該核酸から解離し得る(リサイクル性)機能が増強されている。これにより、ペアリング後の鎖伸長反応の円滑な進行が可能となり、従前のC末端切断型の耐熱性RecAタンパク質で観察されたような核酸増幅の阻害作用を低減させることができ、効率的な標的核酸の増幅を実現することができる。さらに、本発明の変異型の耐熱性RecAタンパク質は、相同組換えを促進することができ、遺伝子組換え実験に際して、効率的な遺伝子導入を実現することが可能となる。例えば、トランスジェニック動物の作製にあたっての胚幹細胞への遺伝子導入に利用でき、遺伝子現象の解析等の分子生物学の分野に幅広く利用可能なタンパク質を提供できる。
上述の〔2〕及び〔3〕の構成によれば、核酸増幅反応系における標的核酸の高精度かつ高効率な増幅に寄与する能力が向上されたサーマス属細菌由来、特には、サーマス・サーモフィラス、又は、サーマス・アクアティカス由来の改変型の耐熱性RecAタンパク質を提供する。サーマス・サーモフィラス、及びサーマス・アクアティカス由来のRecAタンパク質の配列情報は公知であり、容易に本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質を取得することができる。また、当該タンパク質は優れた耐熱性を有することから核酸増幅系の使用に最適な改変型の耐熱性RecAタンパク質を提供することができる。
上述の〔4〕及び〔5〕の構成によれば、核酸増幅反応系における標的核酸の高精度かつ高効率な増幅に寄与する能力が向上された改変型の耐熱性RecAタンパク質を提供する。つまり、かかる改変型の耐熱性RecAタンパク質は、核酸増幅系において、一塩基多型解析等への利用に適した高精度な核酸増幅技術の構築に貢献する。それと共に、増幅阻害等を引き起こすことなく効率的に標的核酸の増幅を実現できる核酸増幅技術の構築に貢献する。
〔6〕上記〔1〕〜〔5〕の何れかの改変型の耐熱性RecAタンパク質をコードする核酸分子。
上述の〔6〕の構成によれば、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質をコードする核酸分子を提供する。そして、かかる核酸分子を利用することにより、遺伝子工学的手法を用いて低コストかつ工業的に大量に、上述の〔1〕〜〔5〕の構成の改変型の耐熱性RecAタンパク質生産することが可能となった。
〔7〕上記〔1〕〜〔5〕の何れかの改変型の耐熱性RecAタンパク質を添加して核酸の増幅反応を行う核酸増幅方法。
〔8〕前記増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応に基づく反応である上記〔7〕の核酸増幅方法。
上述の〔7〕及び〔8〕の構成によれば、核酸増幅反応の制御が簡便に行うことが可能となり、標的核酸の特異的、かつ、効率的な核酸増幅が可能となる。したがって、非特異的増幅を抑制でき、バックグラウンドノイズの影響を受けない標的核酸の増幅が可能となり、増幅精度の向上に寄与し得、高精度な核酸増幅が要求される一塩基多型解析等への利用にも適した核酸増幅技術を提供する。そして、核酸増幅系において増幅阻害等を引き起こすことなく効率的な標的核酸の増幅を実現することができる。そして、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質は耐熱性酵素であることから、上記効果を持続して発揮することができる。その結果、加熱工程を含む核酸増幅反応系の全サイクルにおいて高精度、かつ効率的な核酸増幅を達成できる。
〔9〕耐熱性DNAポリメラーゼと、上記〔1〕〜〔5〕の何れかの改変型の耐熱性RecAタンパク質、とを含む核酸を増幅するための核酸増幅用キット。
上述の〔9〕の構成によれば、このように核酸増幅に必要な成分をキットして構成することにより、簡便且つ迅速な核酸増幅が可能となる。
〔10〕タンパク質の鋳型核酸に対するプライマーのミスアニーリングを野生型の耐熱性RecAタンパク質に比べて低減させる方法であって、
前記野生型の耐熱性RecAタンパク質において、野生型の耐熱性RecAタンパク質の配列番号6、8、10、又は12のアミノ酸配列の202番目に相当する位置のアミノ酸をトリプトファンに置換する工程を有し、
ここで、前記野生型の耐熱性RecAタンパク質は、以下の(4)〜(6)のタンパク質から選択される、方法。
(4)配列番号6、8、10、又は12の何れかのアミノ酸配列からなるタンパク質
(5)配列番号6、8、10、又は12の何れかのアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質
(6)配列番号6、8、10、又は12の何れかのアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質
〔11〕さらに、配列番号13のアミノ酸配列からなるC末端切断型の耐熱性RecAタンパク質に比べて、核酸増幅反応系において鋳型核酸に対するプライマーのミスアニーリングを低減させる上記〔10〕の方法。
〔12〕さらに、前記タンパク質が、配列番号13のアミノ酸配列からなるC末端切断型の耐熱性RecAタンパク質に比べて、鋳型核酸に対する増幅阻害を低減させる上記〔10〕又は〔11〕の方法。
〔13〕さらに、配列番号6、8、10、又は12のアミノ酸配列からなる野生型の耐熱性RecAタンパク質に比べて、相同組換え活性を増強させる上記〔10〕〜〔12〕の何れかの方法。
上記〔10〕〜〔13〕の構成によれば、タンパク質の鋳型核酸に対するプライマーのミスアニーリングを野生型の耐熱性RecAタンパク質に比べて低減させることができる方法を提供するものである。本発明の方法により構築されるタンパク質は、非特異的増幅を抑制でき、バックグラウンドノイズの影響を受けない標的核酸の増幅を可能とし、増幅精度の向上に寄与することができる。
特に、〔11〕及び〔12〕の構成によれば、本発明者らが以前に開発したC末端切断型の耐熱性RecAタンパク質よりも、更に、高精度かつ高効率な増幅に寄与する能力が向上されたタンパク質を構築できる。当該タンパク質は、ペアリング後の鎖伸長反応の円滑な進行が可能となり、従前のC末端切断型の耐熱性RecAタンパク質で観察されたような核酸増幅の阻害作用を低減させることができ、効率的な標的核酸の増幅を実現することができるタンパク質の提供に貢献できる。
特に、〔13〕の構成によれば、相同組換えを促進することができるタンパク質を構築できる。本発明の方法により構築されるタンパク質を利用することで遺伝子組換え実験に際して、効率的な遺伝子導入を実現することが可能となる。例えば、トランスジェニック動物の作製にあたっての胚幹細胞への遺伝子導入に利用でき、遺伝子現象の解析等の分子生物学の分野に幅広く利用可能なタンパク質の提供に貢献できる。
野生型のサーマス・サーモフィラスの由来のRecAタンパク質(TthRecAタンパク質)を添加した核酸増幅反応を確認した実施例1の結果を示す電気泳動図及びその核酸増幅様式の模式図であり、Aは、野生型TthRecAタンパク質存在下での増幅結果、Bは、大腸菌由来SSBタンパク質存在下での増幅結果、Cは、大腸菌由来RecAタンパク質存在下での増幅結果を示し、Dは、上記Aで示すTthRecAタンパク質存在下、Eは、上記B及びCで示す大腸菌由来SSBタンパク質、及び大腸菌由来RecAタンパク質存在下での、核酸増幅反応系における鋳型核酸へのプライマーのアニーリング後の鎖伸長反応を模式的に示す。 野生型TthRecAタンパク質のアミノ酸配列の202番目のチロシンを、トリプトファンに置換した変異体(TthRecA-Y202W変異体)を調製した実施例2の結果を示す電気泳動図。 TthRecA-Y202W変異体の相同組換え活性を確認した実施例3の結果を示す電気泳動図であり、Aは、野生型TthRecAタンパク質、Bは、TthRecA-Y202W変異体、Cは、Hyper-TthRecA変異体の相同組換え活性を示す。 TthRecA-Y202W変異体の相同組換え活性を確認した実施例3の結果を示すものであり、図3の結果を数値化しグラフしたものである。図中、横軸は反応時間(分)、縦軸はD-Loop形成率(%)である。 TthRecA-Y202W変異体の相同組換え活性を確認した実施例4の結果を示すグラフであり、横軸は反応時間(分)、縦軸はD-Loop形成率(%)である。 TthRecA-Y202W変異体のATPase活性の確認した実施例5の結果を示すグラフであり、一本鎖DNA依存的ATPaseの結果を示すものであって、縦軸はATPからのADPの生成率(%)である。 TthRecA-Y202W変異体のATPase活性の確認した実施例5の結果を示すグラフであり、二本鎖DNA依存的ATPaseの結果を示すものであって、縦軸はATPからのADPの生成率(%)である。 TthRecA-Y202W変異体のPCR増幅精度への影響確認した実施例6の結果を示す電気泳動図であって、Aは、コントロール、Bは、TthRecA-Y202W変異体存在下での増幅結果、Cは、野生型TthRecAタンパク質存在下での増幅結果を示す。 TthRecA-Y202W変異体のPCR増幅精度の効果を確認した実施例7の結果を示す電気泳動図であって、Aは、コントロール、Bは、TthRecA-Y202W変異体存在下での増幅結果、Cは、野生型TthRecAタンパク質存在下での増幅結果、Dは、TaqRecAタンパク質存在下での増幅結果を示す。 TthRecA-Y202W変異体の核酸増幅精度の効果を確認した実施例8の結果を示す電気泳動図であって、Aは、ミスマッチの塩基を有しないプライマーでの増幅結果、Bは、ミスマッチの塩基を有するプライマーでの増幅結果を示す。 TthRecA-Y202W変異体の核酸増幅精度向上効果の持続性を確認した実施例9の結果を示す電気泳動図であって、Aは、30サイクルでの増幅結果、Bは、35サイクルの増幅結果を示す。
以下、具体的な本発明の実施の形態について説明するが、これはあくまでも本発明を例示するに留まり、本発明を限定するものではない。
以下、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質を「改変型の耐熱性RecAタンパク質」と略する場合がある。また、野生型の耐熱性RecAタンパク質を「野生型の耐熱性RecAタンパク質」と略する場合がある。
ここで、野生型の耐熱性RecAタンパク質とは、自然界より分離された高度好熱菌に保持されている耐熱性RecAタンパク質のアミノ酸配列、及び耐熱性RecAタンパク質をコードする塩基配列が、意図的もしくは非意図的に改変が生じている改変部位を有していないことを意味する。そして、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質は、野生型の耐熱性RecAタンパク質を改変の基礎とした。
改変型の基礎となる、野生型の耐熱性RecAタンパク質は、高度好熱菌由来のタンパク質である。具体的には、本発明の使用に適した高度好熱菌RecAタンパク質としては、サーマス(Thermus)属、サーモコッカス(Thermococcus)属、ピロコッカス(Pyrococcus)属、サーモトーガ(Thermotoga)属等由来のRecAタンパク質が例示される。好ましくは、サーマス属細菌由来のRecAタンパク質であり、特に好ましくは、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来のRecAタンパク質である。
なかでも、サーマス・サーモフィラスHB8株由来の野生型の耐熱性RecAタンパク質、及びサーモフィラスHB27株由来の野生型の耐熱性RecAタンパク質が好ましく利用できる。ここで、サーマス・サーモフィラスHB8株由来の野生型の耐熱性RecAタンパク質の塩基配列を配列番号5、アミノ酸配列を配列番号6(GenBank:BAA04215.1)、及び塩基配列を配列番号7、及びアミノ酸配列を配列番号8(GenBank:AAA64935.1)として開示する。さらに、サーモフィラスHB27株由来の野生型の耐熱性RecAタンパク質の塩基配列を配列番号9、アミノ酸配列を配列番号10として開示する(GenBank:AAK15321.1)。さらに、その配列情報を、配列番号11(塩基配列)及び配列番号12(アミノ酸配列)として開示するサーマス・アクアティカス由来の野生型の耐熱性RecAタンパク質を改変の基礎として好ましく利用できる。なお、サーマス・サーモフィラス、及びサーマス・アクアティカス由来の野生型の耐熱性RecAタンパク質であっても、上述のものとは異なる配列を有するものが存在するが、これらも改変の基礎として好ましく利用することができる。しかしながら、これらに限定するものではなく、上記野生型の耐熱性RecAタンパク質と同等の相同組換え活性等の機能を有し、配列同一性の高いものであれば、改変の基礎として好ましく利用できる。
本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質には、上述の野生型の耐熱性RecAタンパク質に比べて、核酸増幅反応系において鋳型となる標的核酸とプライマーとのペアリング特異性の向上に寄与し得る機能を発現する、すべての耐熱性RecAタンパク質が含まれる。ここで、上述の「核酸増幅反応系において標的核酸とプライマーとのペアリング特異性」とは、核酸増幅反応に際して、プライマーが、プライマーと相補的な標的核酸上の領域にのみにペアリング(対合)し、非相補的な領域にペアリングしたり、プライマー同士のプライマーダイマーを形成したりしないことを意味する。したがって、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質は、野生型の耐熱性RecAタンパク質と比較して、相補的配列同士を厳密にペアリングさせるように機能する。つまり、標的核酸に対するプライマーのミスアニーリングをより低減させることができ、1塩基の相違であってもこれを識別することできる。そして、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質には、野生型の耐熱性RecAタンパク質に比べて、高い相同組換え活性を有する。好ましくは、野生型の耐熱性RecAタンパク質との比較により、2〜4倍の相同組換え活性を有する。これらの機能により、非特異的増幅を抑制し、高精度かつ効率的な標的核酸の増幅を実現することができる。
好ましくは、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質の機能として、核酸増幅系において、標的核酸とプライマーとのペアリング後に、当該核酸から解離し得ること(リサイクル性)が要求される。これにより、ペアリング後の鎖伸長反応の円滑な進行が可能となる。そして、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質は、上述の先行技術文献の特許文献4に記載のC末端切断型の耐熱性RecAタンパク質であるHyper-TthRecA変異体と比較して、向上したリサイクル性を有するものである。
ここで、Hyper-TthRecA変異体は、上述の通り野生型の耐熱性RecAタンパク質のC末端側の酸性領域が欠失したC末端切断型の耐熱性RecAタンパク質であり、その一例を配列番号13としてそのアミノ酸配列を開示する。なお、配列番号13のアミノ酸配列のうち、151番目のアルギニンがグリシンに置換したものも同等の機能を有するとしてHyper-TthRecA変異体として例示される。かかるHyper-TthRecA変異体は、野生型の耐熱性RecAタンパク質に比べて相同組換え活性が高いとして開発されたものである。しかしながら、核酸増幅反応系において、標的核酸とプライマーとのペアリング後にも当該核酸に付着したままで解離し難い。そのため、ペアリング後に続く、鎖伸長反応が妨害され、核酸の増幅阻害が生じるとの望ましくない特性が判明した。一方、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質によれば、鎖伸長反応の妨害を回避でき、Hyper-TthRecA変異体で観察されたような核酸増幅の阻害作用を低減させることができ、効率的な標的核酸の増幅を実現することができる。
リサイクル性について説明を加えると、RecAタンパク質は、ATP等のNTPの存在下で単鎖核酸に結合し、相同配列部位を探索する。この結果、プライマーとその相補配列を有する標的核酸がペアリングする。続いて、鎖交換反応が遂行する過程で、ATPは加水分解され、ADPとなるが、ADPの下ではRecAタンパク質の核酸に対する親和性は低下し、核酸から解離する。これがリサイクル性である。そして、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質は、このATPをADPに加水分解するATPase活性が、Hyper-TthRecA変異体、及び野生型の耐熱性RecAタンパク質より高く、そのため、ペアリング活性の発揮後に、核酸からの迅速に解離するリサイクル性が高く、核酸増幅を阻害することがない。
下記実施例にて、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質の機能として増強が確認された相同組換え活性は、以下の2つのステージに大きく分けられる。
(1)相補的配列へのペアリング(相同対合)
(2)鎖交換
したがって、上記(1)及び(2)の双方のステージが円滑に進むことにより、相同組換え活性を増強させ、増幅反応におけるミスアニーリングを低減させることができる。つまり、相補的配列へのペアリングの後、ペアリングに間違いがあれば外れなければならない。これにより、増幅反応におけるミスアニーリングを防ぐことができる。例えば、以下で説明するPCR等においては、一本鎖DNAが相補的な二本鎖DNAにペアリングした後、鎖交換と共に一本鎖DNAは二本鎖DNAから外れていくことなる。上記Hyper-TthRecA変異体は、下記実施例3で確認した通り、上記(1)の活性のみ高い。そのため、二本鎖DNAへの一本鎖DNAのペアリングは円滑に進行するが、鎖交換反応の活性の向上が認められないために、一本鎖DNA及び当該タンパク質が二本鎖DNAから外れにくくなる傾向があり、ペアリングに間違いがあったとしてもその傾向が変わらない。一方、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質は、上記(1)及び(2)の双方ステージの面から相同組換え活性を増強できることから、増幅反応におけるミスアニーリングを低減させることができる。
ここで、核酸増幅反応とは、好適には、耐熱性ポリメラーゼによるPCRを指すが、原理の異なる他の酵素を利用した各種核酸増幅方法を排除するものではない。したがって、リガーゼ連鎖反応(以下、「LCR」と称する場合がある)、鎖置換増幅反応(以下、「SDA」と称する場合がある)、ローリングサイクル増幅反応(以下、「RCA」と称する場合がある)等の公知の核酸増幅反応を含む。
具体的には、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質として、上述の機能を有する限り、サーマス・サーモフィラス由来の耐熱性RecAタンパク質を表す配列番号6、8、又は10のアミノ酸配列の202番目のチロシンに改変が生じているものが例示される。さらに、サーマス・アクアティカス由来の耐熱性RecAタンパク質を表す配列番号12のアミノ酸配列の202番目のチロシンに改変が生じているものが例示される。ここで、改変とは、欠失、置換若しくは付加を意味する。そして、好ましくは、当該202番目のチロシンがアラニン以外の他のアミノ酸に置換されているものが例示される。特に好ましくは、トリプトファンに置換されたものであり、このような改変型の耐熱性RecAタンパク質のアミノ酸配列の一例を配列表の配列番号1、2、3、及び4に示す。また、配列番号6、8、10、又は12とは相違するアミノ酸配列を有する野生型の耐熱性RecAタンパク質を改変の基礎とした場合には、配列番号6、8、10、又は12の202番目に相当する位置のチロシンに改変が生じているものが、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質に含まれる。特に、サーマス属細菌由来のRecAタンパク質のアミノ酸配列において、配列番号6、8、10、又は12の202番目に相当する位置のチロシンに改変が生じているものが本願発明に含まれる。
つまり、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質としては、上述の機能を有する限り、サーマス・サーモフィラス又はサーマス・アクアティカス由来のRecAタンパク質を表す配列番号6、8、10、又は12のアミノ酸配列の202番目に相当する位置のチロシンが改変され、更に、かかる改変に加えて他の部位に改変が生じているものも含まれる。したがって、配列番号6、8、10、又は12のアミノ酸配列と少なくとも80%若しくは85%、好ましくは90%、特に好ましくは、92%、95%若しくは98%の配列同一性を有する野生型のRecAタンパク質を基礎として構築されたものも本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質に含まれる。また、配列番号6、8、10、又は12のアミノ酸配列に少なくとも1以上のアミノ酸の欠失、置換、及び付加されたアミノ酸配列を有する野生型のRecAタンパク質を基礎として構築されたものも本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質に含まれる。ここで、1以上のアミノ酸の欠失、置換、及び付加とは、好ましくは1〜数個のアミノ酸の欠失、置換、及び付加されたものであり、これらの組み合わせをも含む。なお、上記202番目に相当する位置のチロシンの改変は、好ましくは、アラニン以外の他のアミノ酸への置換であり、特に好ましくは、トリプトファンに置換されたものが例示される。
したがって、配列番号1、2、3、又は4のアミノ酸配列において、202番目のアミノ酸がトリプトファンであり、上述の機能を有する限りは、他の部位に改変を含むアミノ酸配列を有するものも本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質に含まれる。詳細には、配列番号1、2、3、又は4のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されており、かつ、配列番号1、2、3、又は4のアミノ酸配列の202番目に相当する位置のアミノ酸がトリプトファンであるアミノ酸配列からなるもの、及び配列番号1、2、3、又は4のアミノ酸配列と少なくとも80%若しくは85%、好ましくは90%、特に好ましくは92%、95%、若しくは98%の配列同一性を有し、かつ、配列番号1、2、3、又は4のアミノ酸配列の202番目に相当する位置のアミノ酸がトリプトファンであるアミノ酸配列からなるものも本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質に含まれる。
本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質は公知の方法によって取得することができる。例えば、改変の基礎となる野生型の耐熱性RecAタンパク質をコードするDNAに対して改変を施し、得られた改変DNAを用いて宿主細胞を形質転換し、かかる形質転換体の培養物から耐熱性RecAタンパク質を採取することによって取得することができる。
改変の基礎となる野生型の耐熱性RecAタンパク質をコードするDNAは、公知の遺伝子クローニング技術を用いて取得することができる。例えば、GenBank等の公知のデータベースを検索することによって取得することができる遺伝子情報を基にしてプライマーを設計し、RecAタンパク質を産生し得る高度好熱菌から抽出したゲノムDNAを鋳型としてPCRを行うことにより取得することができる。また公知の遺伝子情報に基づいて、常法のホスホルアミダイト(phosphoramidite)法等の核酸合成法により合成することによっても取得するができる。ここで、本発明の改変型の基礎として好適な耐熱性RecAタンパク質の遺伝子情報として、上述の通り野生型のサーマス・サーモフィラスHB8株由来の耐熱性RecAタンパク質をコードする配列番号5、又は7に示す塩基配列、野生型のサーマス・サーモフィラスHB27株由来の耐熱性RecAタンパク質をコードする配列番号9に示す塩基配列、野生型のサーマス・アクアティカス由来の耐熱性RecAタンパク質をコードする配列番号11に示す塩基配列等を好ましく利用することができる。
耐熱性RecAタンパク質をコードするDNAに改変を施す方法としては、特に制限はなく、当業者に公知の改変タンパク質作製のための変異導入技術を利用することができる。例えば、部位特異的突然変異誘発法、PCR法等を利用して変異を導入するPCR突然誘発法、あるいは、トランスポゾン挿入突然変異誘発法などの公知の変異導入技術を利用することができる。また、市販の変異導入用キット(例えば、QuikChange(登録商標) Site-directed Mutagenesis Kit(Stratagene社製))を利用してもよい。目的とする改変型の耐熱性RecAタンパク質のアミノ酸配列が定まれば、それをコードする適当な塩基配列を決定でき、常法のホスホルアミダイト法等の核酸合成技術を利用して本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質をコードするDNAを合成することができる。
具体的には、野生型の耐熱性RecAタンパク質をコードするDNAを鋳型として、所望の改変を施した配列を含むオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行うことによって取得することができる。
得られた改変遺伝子を用いて宿主細胞を形質転換するためには、公知の大腸菌等の宿主・発現ベクターシステムを利用することができる。例えば、改変型の耐熱性RecAタンパク質を安定に増幅できるDNAベクターに連結させ、改変型の耐熱性RecAタンパク質を効率的に発現できる大腸菌に導入する。そして、炭素源、窒素源その他必須の栄養素を含む培地に接種し、常法に従って培養して該改変型の耐熱性RecAタンパク質を発現させる。
なお、発現ベクターは、プロモーター配列、耐熱性RecAタンパク質をコードする遺伝子を挿入できる少なくとも1つの制限酵素サイトを有するマルチクローニングサイト等の配列を含み、かつ、上述の宿主細胞で発現できるものであれば、何れの発現ベクターを用いることができる。好適なプロモーターとしては、例えば、T7lacプロモーターを利用するのが好ましい。
さらに、この発現ベクターには他の公知の塩基配列が含まれていてもよい。他の公知の塩基配列としては特に限定されない。例えば、発現産物の安定性を付与する安定性リーダー配列、発現産物の分泌を付与するシグナル配列が挙げられる。また、ネオマイシン耐性遺伝子・カナマイシン耐性遺伝子・クロラムフェニコール耐性遺伝子・アンピシリン耐性遺伝子・ハイグロマイシン耐性遺伝子等の形質転換された宿主において表現型選択を付与することが可能なマーキング配列等をも含ませることができる。
このような発現ベクターは、市販の大腸菌用発現ベクター(例えばpETタンパク質発現システム:ノバジェン社製)を用いることが可能であり、さらに、適宜所望の配列を組み込んだ発現ベクターを作製して使用することが可能である。
また、宿主細胞としては、大腸菌に限定されず、バシラス属細菌、シュードモナス属細菌等をも利用できる。更に、原核生物に限定されず真核生物細胞を利用することが可能である。例えば、Saccharomyces cerevisiae等の酵母、Sf9細胞等の昆虫細胞、CHO細胞、COS-7細胞等の動物細胞等を好適に利用することが可能である。
このようにして得られた形質転換体の培養物からの本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質の採取、及び精製は公知の手法を用いて行うことができる。一例を簡潔に説明すると、形質転換体の培養物の培養物から菌体を収集し、適当な緩衝液に懸濁させ、超音波処理等にて菌体を破砕し菌体抽出液を得る。破砕に際してはリゾチームや界面活性剤を適宜含ませた緩衝液中で行うことが好ましい。続いて、遠心分離やろ過等により上清を収集し、熱処理に付して形質転換体由来の夾雑タンパク質を失活させ、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質の粗抽出液を得る。熱処理は65℃にて60分が特に好ましい。この粗抽出液から、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーやアフィニティ―クロマトグラフィー等を利用して、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質を精製することができる。
そして、精製されたRecAタンパク質が所望の改変が生じている改変部位を有する本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質であるか否かの確認は、公知のアミノ酸分析法によって行うことができる。例えば、エドマン分解法に基づく自動アミノ酸決定法が利用できる。さらに、相同組み換え活性を公知のD-Loop形成アッセイ等により測定し改変部位を有しない野生型の耐熱性RecAタンパク質と比較して、活性が向上しているか否かを確認すること、又はD-Loop形成活性の経時変化を確認することによって行うことができる。D-Loop形成アッセイについては、本明細書の実施例3及び4に示す方法によって行うことができる。また、PCR等の核酸増幅系に供して改変部位を有しない野生型の耐熱性RecAタンパク質と比較して、鋳型核酸とプライマーのペアリング特異性が向上しているか否かを確認することによって行うことができる。例えば、ミスマッチの塩基を含むプライマーを用いて増幅産物量を比較することによって行うことができ、具体的には、本明細書の実施例6〜8に示す方法によって行うことができる。
以上の通り、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質は、野生型の耐熱性RecAタンパク質と比較して核酸増幅反応系における標的核酸の増幅効率に寄与する能力が向上されている。特に、標的核酸とプライマーとのペアリング特異性を向上させる活性を有する。つまり、プライマーが、プライマーと相補的な標的核酸上の領域にのみにペアリングし、非相補的な領域にペアリングしたり、プライマー同士のプライマーダイマーを形成したりする等のミスアニーリングを抑制し、相補的配列同士を厳密にペアリングさせる。そのため、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質を核酸増幅系に添加することにより、改変部位を有しない野生型の耐熱性RecAタンパク質では不十分であった標的核酸に特異的、かつ、効率的な核酸増幅が可能となる。したがって、非特異的増幅を抑制でき、バックグラウンドノイズの影響を受けない標的核酸の増幅が可能となり、増幅精度の向上に寄与し得る。したがって、高精度な核酸増幅が要求される一塩基多型解析等に利用することができる他、様々な産業分野、特には分子生物学の分野に幅広く利用可能なタンパク質を提供できる。
そして、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質は、高い相同組換え機能を有していることから、遺伝子組換え実験に際して、効率的な遺伝子導入を実現することが可能となる。例えば、トランスジェニック動物の作製にあたっての胚幹細胞への遺伝子導入に利用でき、遺伝子現象の解析等の分子生物学の分野に幅広く利用可能なタンパク質を提供できる。
さらに、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質は、本発明者らが以前に開発したC末端切断型の耐熱性RecAタンパク質よりも、更に、高精度かつ高効率な増幅に寄与する能力が向上されている。C末端切断型のRecAタンパク質は、従来において、高精度な核酸増幅に寄与する能力を有するとして知られていたものであるが、増幅阻害という問題を有していた。一方、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質は、核酸増幅系において標的核酸とプライマーとのペアリング後に、当該核酸から解離し得る(リサイクル性)機能が増強されている。これにより、ペアリング後の鎖伸長反応の円滑な進行が可能となり、従前のC末端切断型の耐熱性RecAタンパク質で観察されたような核酸増幅の阻害作用を低減させることができ、効率的な標的核酸の増幅を実現することができる。
本発明は更に、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質を用いた、鋳型核酸の核酸増幅方法をも提供する。本発明の核酸増幅方法は、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質を添加して核酸増幅反応を行うものである。
ここで、PCRに本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質を適用する場合にについて説明する。PCRは、耐熱性DNAポリメラーゼを用いて連鎖反応的にDNAを増幅する方法である。そしてPCRの原理は、プライマーおよび耐熱性DNAポリメラーゼの存在下で、3段階の温度変化をnサイクル繰り返すことにより増幅対象核酸(以下、標的核酸と略する場合がある。)を2のn乗倍に増幅するものである。
詳細には、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質、標的核酸、耐熱性DNAポリメラーゼ、プライマー、dNTP、並びに適当な緩衝液を含んで調製されたPCR反応液を調製する。そして、熱変性、アニーリング、伸長反応からなる温度サイクルに供することにより行われる。また、dNTPとは別個にヌクレオチド5´−三リン酸(以下、「NTP」と称する。)を含んで調製してもよい。ここで、プライマー、dNTPは必要に応じて検出のため適当な標識物質により標識していても良い。このような標識物質は公知であるので当業者は適宜選択して使用できる。
増幅対象となる標的核酸は、その起源、長さ及び塩基配列等に対する制限なく、また、一本鎖、二本鎖を問わず、いかなる核酸であってもよい。具体的には、生物のゲノムDNAでもよく、或いは、該ゲノムDNAを物理的手段若しくは制限酵素消化により切断された断片であっても良い。更に、DNA断片をプラスミド、ファージ等に挿入したものに対しても好適に利用できる。さらに、核酸を含む可能性のある試料から調製、あるいは単離したものであってもよい。また、当該技術分野で常用されている核酸自動合成機等を使用して合成されたDNA断片、mRNAを鋳型にして合成したcDNA断片等の人工的産物等、いずれも標的核酸となり得る。
プライマーは、標的核酸の特定配列に対して相補的になるように設計されるものである。特には、増幅すべき標的配列のその両端に相補的な塩基配列を有するものであることが好ましい。もっとも単純な系ではプライマーが2つ要求されるが、マルチプレックスPCR(Multiplex PCR)等を行う場合は3つ以上でもよく、また、1のプライマーのみでの増幅反応にも好適に利用可能である。プライマーの設計は、ランダムプライマーを用いる場合を除いて、標的核酸の配列を予め調査し決定される。そして、標的核酸の塩基配列の調査には、GeneBank、EBI等のデータベースを好適に利用できる。
プライマーは、ホスホアミダイト法等に基づく化学合成法、既に標的となる核酸が取得されている場合にはその制限酵素断片等が利用可能である。化学合成法に基づきプライマーを調製する場合には、合成に先立って標的核酸の配列情報に基づいて設計される。プライマーは合成後、HPLC等の手段により精製される。また、化学合成を行う場合には市販の自動合成装置を利用することも可能である。ここで、相補的とは、プライマーと標的核酸とが塩基対合則に従って特異的に結合し安定な二重鎖構造を形成できることを意味する。したがって、完全な相補性のみならず、プライマーと標的核酸が互いに安定な二重鎖構造を形成し得るのに十分である限り、いくつかの核酸塩基のみが塩基対合則に沿って適合する部分的な相補性であっても許容される。その塩基数は、標的核酸を特異的に認識するために十分に長くなければならないが、長すぎると逆に非特異的反応を誘発するので好ましくない。したがって、適当な長さはGC含量等の標的核酸の配列情報、並びに、反応温度、反応液中の塩濃度等のハイブリダイゼーション反応条件など多くの因子に依存して決定される。好ましくは、20〜50塩基長である。
ここで、使用される耐熱性DNAポリメラーゼは、通常PCRにおいて使用できる耐熱性DNAポリメラーゼであれば、特に制限はない。例えば、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来のTaqポリメラーゼ、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)由来のTthポリメラーゼ、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus Stearothermophilus)由来のBstポリメラーゼ、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来のVent ポリメラーゼ、サーモコッカス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis)のKOD ポリメラーゼ、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)由来のPfuポリメラーゼ等の好熱菌由来のDNAポリメラーゼが挙げられる。
dNTPとしては、アデニン、チミン、グアニンおよびシトシンの各塩基に夫々対応する4種類のデオキシヌクレオチドが使用される。特には、dGTP、dATP、dTTP、dCTPの混合物が好ましく使用される。更に、PCRで合成され伸長される核酸分子中に、耐熱性DNAポリメラーゼによって取り込まれ得る限りにおいては、デオキシヌクレオチドの誘導体をも含み得る。そのような誘導体として、7−デアザ−dGTP、7−デアザ−dATP等が例示され、例えば、夫々dGTP、dATPに代えて、若しくは、双方を共在させて使用することができる。したがって、核酸合成に必要なアデニン、チミン、グアニンおよびシトシンの各塩基に対応する4種類が含まれる限り、いかなる誘導体の使用を排除するものではない。
緩衝液としては、一般的には、適当な緩衝成分およびマグネシウム塩等を含んで調製される。緩衝成分としては、トリス酢酸、トリス塩酸、リン酸ナトリウム並びにリン酸カルシウム等のリン酸塩が好適に使用できる。特にはトリス酢酸の使用が好ましい。緩衝成分の最終濃度は5mM〜100mMの範囲で調製される。また緩衝液のpHは好ましくはpH6.0〜9.5、特に好ましくはpH7.0〜8.0の範囲内で調製される。また、マグネシウム塩としては特に制限はないが、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム等を適宜使用できる。特には酢酸マグネシウムが好ましい。更に、必要に応じて、KCl等のカリウム塩、DMSO、グリセロール、ベタイン、ゼラチン、Triton等を添加することができる。また、市販のPCR用耐熱性DNAポリメラーゼに添付の緩衝液を用いることができる。緩衝液の組成は、使用するDNAポリメラーゼの種類等に応じて適宜変更することができる。特には、MgCl2、KCl等のイオン強度の影響、DMSO、グリセロール等のDNAの融解温度に影響を与える各種添加物並びにそれらの濃度を勘案して、適宜設定することができる。
そして、反応液は容量100μl以下、特には、10〜50μlの範囲で調製することが好ましい。各成分の濃度として、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質は好ましくは反応溶液中に0.004〜0.02μg/μlの濃度で含まれるよう使用される。本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質以外の各成分の濃度は、PCRは公知であることから、当業者は適宜設定することができる。例えば、標的核酸は、好ましくは100μl当り10 pg〜1μgの濃度で、プライマーDNAは好ましくは、最終濃度0.01〜10μM、特には0.1〜1μMの濃度に調製される。更に、耐熱性DNAポリメラーゼは、好ましくは100μlあたり0.1〜50 unit、特には1〜5 unitの範囲の濃度で使用する。そして、dNTPは、好ましくは最終濃度0.1 mM〜1 Mに調製する。ただし、これに限定されるものではなく、上述の通り、適宜設定されるものである。
PCRは、以下の工程に従って実行され、これらの工程は本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質の存在下で行なわれる。
(1)鋳型核酸の熱変性
(2)プライマーのアニーリング
(3)耐熱性ポリメラーゼによる伸長反応
上述の(1)〜(3)からなる三段階の温度変化を1サイクルとする反応を、適切なサイクルを繰り返すことによって、プライマーが起点となって標的核酸を鋳型として、相補性を有するもう一本の核酸鎖の合成が開始される。その結果、nサイクルの反応で標的核酸は2のn乗倍に増幅される。サーモサイクル数は、鋳型となる標的核酸の種類、量およびその純度等に応じて決定されるが、非特異的増幅を抑制し効率的な核酸増幅の観点から20〜40サイクル、特には、20〜30サイクルで行うことが好ましい。
以下に各工程について詳細に説明する。
(1)鋳型核酸の熱変性
二本鎖核酸を加熱により、変性させ一本鎖に解離させる。好ましくは、92〜98℃で10〜60秒行われる。また、長いDNA領域を増幅する場合には、鋳型DNAの分解を防止するため、一番初めの熱変性のみを低温度(例えば、92℃程度)に設定することができる。
(2)プライマーのアニーリング
温度を下げることにより、上述の(1)において熱変性され一本鎖となった鋳型核酸とプライマーとのハイブリッドを形成する。アニーリングは、好ましくは30〜60秒間行われる。また、アニーリング温度はプライマーに用いるオリゴヌクレオチドのTmを推定し、このTmをアニーリング温度として設定することが好ましい。アニーリング温度が高いとプライマーの鋳型特異的な結合能が向上するが、アニーリング温度が高すぎるとプライマーが鋳型核酸に結合しなくなることが知られている。通常は、50〜70℃で行われる。
(3)耐熱性ポリメラーゼによる伸長反応
耐熱性ポリメラーゼによりプライマーからの核酸鎖の伸長反応が3´末端において行われる。伸長反応温度は、耐熱性ポリメラーゼの種類に応じて、適宜設定されるものであるが、65〜75℃で行うことが好ましい。また、伸長時間は、標的配列が1kb以下のときは1分程度で十分であり、それより長い場合には、1kbにつき1分の割合で長くすることが好ましい。
以上、本発明の核酸増幅方法として、一般的なPCRにつき説明したが、様々なPCRの変法にも本発明の核酸増幅方法は適用できる。例えば、アダプター付加PCR、アレル特異的増幅法(MASA法)、非対称PCR、逆PCR(IPCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、一本鎖DNA高次構造多型PCR(PCR-SSCP法)、アービトラリリーポリメラーゼ連鎖反応(AP-PCR)、RACE、マルチプレックスPCR(multiplex PCR)等が挙げられる。しかしながら、これらに限定するものではなく、あらゆるPCRの変法に利用可能である。
以上のように構成する事により、発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質の添加下で、核酸増幅反応を行うことにより、標的核酸に特異的な、かつ、効率的な核酸増幅が可能となる。そして、標的核酸に関連のない非特異的増幅を抑制でき、バックグラウンドノイズの影響を受けない核酸増幅が可能となる。つまり、鋳型となる標的核酸へのプライマーの配列特異性を向上した状態を維持できる。その結果、プライマーが標的配列以外にアニールする、あるいはプライマー同士がアニールする等のミスアニーリングに起因する非特異的な増幅を抑制できる。これにより精度の高い核酸増幅が可能となる。これにより、高精度な核酸増幅が要求される一塩基多型解析等への利用にも適した核酸増幅技術を提供することができる。そして、核酸増幅系において増幅阻害等を引き起こすことなく効率的な標的核酸の増幅を実現することができる。そして、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質は耐熱性酵素であることから、上記効果を持続して発揮することができる。その結果、加熱工程を含む核酸増幅反応系の全サイクルにおいて高精度の核酸増幅を達成できる。
また、本発明はPCRにより核酸を増幅させるための核酸増幅用キットを提供する。本発明の核酸増幅用キットは、DNAポリメラーゼ、改変型の耐熱性RecAタンパク質を含んで構成される。更に、適当な緩衝液、dNTP等のPCRに必要な成分を適宜含んで構成してもよい。また、所望の核酸をもって病原体等を検出するためのキットのような場合には、所望の核酸増幅に特異的な任意のプライマー等を含ませてもよい。このようにPCR増幅に必要な成分をキットして構成することにより、簡便且つ迅速なPCR増幅が可能となる
本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質、該タンパク質を使用した核酸増幅方法およびキットは、様々な用途に利用可能である。例えば、医療分野、生物化学分野、環境分野、食品分野等の多岐にわたる用途に利用可能である。例えば、遺伝子型分析のために、少量の試料から大量のDNAを調製するに際して、或いは、DNAシークエンシングのためのDNAの調製に際して利用可能である。さらに、動物或いは植物細胞、微生物等から抽出した少量の試料からDNAチップ固定用DNAを調製する等、種々の用途に適用できる。
具体的には、医療分野での利用として、一塩基多型解析をはじめとする遺伝子診断、SARS、インフルエンザ等のウイルスや細菌等の病原体の検出等が例示される。特に、一塩基多型解析に本発明は好適に適用できる。本発明により、プライマーの標的核酸以外の核酸への結合並びにプライマー同士の結合等の非特異的な結合を抑制することができ、効果的にプライマーのミスアニーリングを抑制できる。したがって、所望の一塩基多型を有する核酸に相補的なプライマーを用いることにより、かかる一塩基多型を有する核酸が効率的に増幅できる。その一方で、かかる一塩基多型を有しない核酸は増幅されないか、または増幅が抑制されない。その結果、かかる一塩基多型を有する核酸を特異的に増幅することが可能となる。更に、その効果は、本発明によって達成される高いアニーリング温度によって増強され、一塩基多型を感度良く、かつ、効率的に検出することができる。また、生物化学分野での利用として、個人の同定、生物種の同定が挙げられる。
そして、環境分野における利用においては、環境中における細菌、ウイルス等の病原体検出等の環境測定、新規有用微生物の探索等が例示される。さらに、食品分野における利用としては、遺伝子組み換え作物含有の判定、偽ブランド食物の検定等が例示される。しかしながら、これに限定されるものではない。核酸増幅技術が適用可能な用途であれば、制限されることなく本発明の方法を適用できる。
(別実施の形態1)
本発明は、タンパク質の鋳型核酸に対するプライマーのミスアニーリングを野生型の耐熱性RecAタンパク質に比べて低減させる方法を提供できる。そして、当該方法は以下の工程を有して構成される。
前記野生型の耐熱性RecAタンパク質において、野生型の耐熱性RecAタンパク質の配列番号6、8、10、又は12のアミノ酸配列の202番目に相当する位置のアミノ酸を他のアミノ酸に置換する工程。
前記野生型の耐熱性RecAタンパク質は、本発明の変異型の耐熱性RecAタンパク質の基礎として例示したものを好適に利用することができる。他のアミノ酸としては、トリプトファンへの置換が好ましく例示され、アミノ酸の置換は、公知の改変タンパク質作製のための公知の変異導入技術等を利用して行うことができ、かかる技術については上述した。
本発明の方法により構築されたタンパク質は、上述の本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質の機能を有する。
(別実施の形態2)
1.本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質は、DNAライブラリーからの標的cDNAクローンの濃縮又は単離に適用することができる。
詳細には、濃縮又は単離を所望する標的cDNAの一部の配列をプライマーとして使用し、DNAライブラリーを鋳型として増幅反応を行う際に、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質を適用できる。ここで、増幅反応に際しては、PCR他、公知の核酸増幅反応系等を利用することが可能である。これにより、標的cDNAと関連のない非特異的な増幅を抑制でき、標的cDNAのみを特異的に増幅可能となる。したがって、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質の、DNAライブラリーからの標的DNAクローンのクローニング系への適用により、所望の標的cDNAクローンを特異的、かつ、効率的に濃縮、単離することが可能となる。特異的かつ効率的なcDNAクローニングは、遺伝子発現、発生、分化等の解析、並びに有用物質の産生の分野において大いに貢献し得る。
ここで、DNAライブラリーとしては、濃縮若しくは単離を所望する標的のDNA領域を含む、又は、含み得ることが期待されるDNAライブラリーが使用される。そして、DNAライブラリーは、ゲノムライブラリー、cDNAライブラリーのいずれでもよいが、特にはcDNAライブラリーが好ましい。なお、本明細書において、ゲノムライブラリーとは、特定の単一生物種の全ゲノムDNAを無作為にベクターに組み込んだクローン化されたDNAの集合体を意味する概念として使用した。一方、cDNAライブラリーとは、特定の組織、細胞、生物由来のmRNAを逆転写反応によってcDNA化し、ベクターに組み込んで作成したcDNA断片の集合体を意味する概念として使用した。
プライマーは、通常、標的核酸の特定配列に対して相補的になるように設計されるものである。特には、増幅すべき標的配列のその両端に相補的な塩基配列を有するものであることが好ましく、濃縮又は単離を所望する標的cDNAの一部の配列が好適に利用できる。なお、プライマーの設計は公知であり、標的となるcDNAの塩基配列に基づいて設計され、化学的合成等の公知の技術により調製することができる。
2.本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質は、RNAからDNAの逆転写反応に適用することができる。
詳細には、逆転写酵素の存在下、ランダムへキサマープライマー、オリゴdTプライマー、標的遺伝子特異的プライマーを用いて、逆転写反応によりRNAからのcDNAの合成反応を行う際に本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質を適用することができる。更には、合成されたcDNAを鋳型として増幅反応を行う際にも適用することができる。ここで、増幅反応に際しては、PCRの他、公知の核酸増幅技術を利用することが可能である。これにより、標的RNAに関連のない非特異的なcDNAの合成を抑制でき、所望の標的RNAに対するcDNAの特異的な合成が可能となる。したがって、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質の逆転写反応系への適用により、所望の標的RNAに対するcDNAを特異的、かつ、効率的に合成することが可能となる。RNAからcDNAへの変換は遺伝子工学上不可欠な手法であることから、遺伝子発現検出とその定量、RNAの構造解析、cDNAクローニング等、その利用価値は高い。
ここで、RNAとしては、全RNAの他、mRNA、tRNA、rRNA等、特に制限はない。所望の遺伝子が発現若しくは発現していることが期待される細胞、組織から、公知の方法を用いて調製される。例えば、グアニジン/セシウムTFA法、塩化リチウム/尿素法、AGPC法等を利用できる。また、プライマーとして、適用される反応条件において鋳型RNAにアニールするものであれば特に制限はなく、上述したようにランダムへキサマープライマー、オリゴdTプライマー、標的遺伝子特異的プライマーを使用できる。ここで、標的遺伝子特異的プライマーとは、特定の鋳型RNAに相補的な塩基配列を有するものであり、好適には、一般的なPCR増幅系で使用されるプライマーの3´側が利用される。
以下に実施例を示し、さらに本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
下記の実施例においては、耐熱性RecAタンパク質としてサーマス・サーモフィラス由来のRecAタンパク質(以下、「TthRecAタンパク質」と称する場合がある)を例示するが、これに限定されるものではない。
(実施例1)TthRecAタンパク質を添加した核酸増幅反応の確認
TthRecAタンパク質が、核酸増幅反応に与える影響について、好熱菌由来でない他のDNA結合タンパク質である大腸菌由来の一本鎖結合タンパク質(以下、「SSBタンパク質」と称する場合がある)と大腸菌由来RecAタンパク質を添加した場合とを比較した。
(方法)
PCR反応液(25μl)は、鋳型核酸として0.8〜50 ngヒトゲノムDNA(Promega、 Human Genomic DNA)、0.4μg野生型TthRecAタンパク質(Storage buffer : 50 mM Tris-HCl pH7.5, 1.0 mM EDTA, 0.5 mM DTT, 50% w/v グリセロール)、0.8 μMプライマー、2.0 U DNA ポリメラーゼ(Takara-Bio, rTaq DNA polymerase),0.2 mM dNTPs混合液、10 mM Tris-HCl pH8.3,50 mM KCl,1.5 mM MgCl2に混合することにより調製した。なお、鋳型核酸量は、50 ng、25 ng、13 ng、6 ng、3 ng、1.5 ng、及び0.8 ngとし、増幅産物量を比較した。
ここで、プライマーとしては、以下のプライマーセットaを使用した。
プライマーセットa:
5'−aacct cacaa ccttg gctga−3'(配列番号14)
5'−ttcac aactt aagat ttggc−3'(配列番号15)
また、ここで用いた野生型TthRecAタンパク質、及びこれをコードする遺伝子の配列情報を配列表の配列番号5(塩基配列、GenBank:D17392.1)、配列番号6(アミノ酸配列、GenBank:BAA04215.1)として開示した。
続いて、上記で調製した各PCR反応液について同一条件下でPCRを行い、増幅産物を得た。PCRは、92℃にて30秒の熱変性の後、94℃にて10秒,55℃にて30秒,68℃にて60秒の反応を1サイクルとした25サイクルの増幅反応によって行った。
増幅後、各増幅反応液に電気泳動緩衝液を添加して撹拌し、適量を分取して1.2%アガロースゲル電気泳動に供した。電気泳動後のゲルをエチジウムブロミドで染色し、DNAのバンドを可視化した。
そして、野生型TthRecA タンパク質に代えて、大腸菌由来SSBタンパク質(Promega、Single-Stranded DNA Binding Protein)と大腸菌由来RecAタンパク質(Epicenter Technologies)についても上述の手順に従ってPCRを行なった後、電気泳動に供した。
(結果)
結果を図1に示す。
図1のA〜Cは、電気泳動結果を示す図であり、Aは、野生型TthRecAタンパク質存在下での増幅結果、Bは、大腸菌由来SSBタンパク質存在下での増幅結果、Cは、大腸菌由来RecAタンパク質存在下での増幅結果である。そして、A〜Cのレーン1〜7は、夫々、鋳型核酸量50 ng、25 ng、13 ng、6 ng、3 ng、1.5 ng、0.8 ngでの結果である。
図1のA〜Cの結果より、野生型TthRecAタンパク質の添加下でPCRを行った場合には、今回検討した全ての鋳型核酸量において増幅産物を確認した(Aのレーン1〜7)。一方、大腸菌SSBタンパク質の添加下でPCR増幅を行った場合、および大腸菌RecAタンパク質の添加下でPCR増幅を行った場合においては、鋳型量が6 ng以下では増幅効率が顕著に低下した(Bのレーン4〜7、Cのレーン4〜7)。
図1のD及びEは、核酸増幅様式の模式図である。そして、上記図1のA〜Cの結果を受け、鋳型核酸へのプライマーのアニーリング後の鎖伸長反応を模式的に示した。Dは上記Aで示す野生型TthRecAタンパク質存在下、Eは上記B及びCで示す大腸菌由来SSBタンパク質、及び大腸菌由来RecAタンパク質存在下での反応である。
以上の結果から、大腸菌SSBタンパク質や大腸菌RecAタンパク質をPCR増幅反応に添加すると、野生型TthRecAタンパク質を添加する場合と比較して、核酸の増幅効率の低下が認められた。この増幅効率の低下は、大腸菌由来のタンパク質はPCRの高温反応(55℃以上)時に、鋳型核酸に結合した状態でタンパク質の変性が生じて増幅反応が阻害されたこと、又は、図1のEに示すように核酸への結合力が強く解離し難いため増幅反応が阻害されたことに起因するものと推察できる。一方、野生型TthRecAタンパク質は耐熱性があり、PCRの高温反応(55℃以上)時でもタンパク質変性が生じ難く、かつ、図1のDに示すように、アデノシンヌクレオチドの加水分解に伴って核酸から解離するため、増幅反応阻害が生じ難かったと推察できる。
(実施例2)変異体の調製
野生型TthRecAタンパク質のアミノ酸配列の202番目のチロシンを、トリプトファンに置換した変異体を調製した。そして、この変異体を「TthRecA-Y202W変異体」と命名した。
(方法)
(1)遺伝子クローニング
野生型TthRecAタンパク質をコードする遺伝子の既知の配列情報(GenBank:BAA04215.1)に基づいて、以下のプライマーセットbを合成した。これは、野生型TthRecAタンパク質のアミノ酸配列(配列番号6)の202番目のチロシンを、トリプトファンに置換させるために設計されたプライマーである。
プライマーセットbの配列情報は以下の通りである。
プライマーセットb:
5'−aaggt ggggg tcacg tgggg caacc ccgag acca−3'(配列番号16)
5'−tggtc tcggg gttgc cccac gtgac cccca cctt−3'(配列番号17)
次いで、野生型TthRecAタンパク質の発現クローンを鋳型として上述のプライマーセットbを使用したPCRにより変異導入を行った。なお、発現ベクターとしてはpET3aを使用し、変異導入は市販のQuick Change II Site-Directed Mutagenesis Kitを使用して行った。このとき、PCR反応液(50μl)は、15 ng 鋳型核酸、0.5μM プライマーセットb、1.25 U DNAポリメラーゼ(pfu Ultra HF polymerase)、0.2 mM dNTPsを、1x PCR反応緩衝液(Takara-Bio, QCII)に混合することにより調製した。そして、PCR反応液を、95℃に
て30秒、55℃にて60秒、68℃にて6 分の反応を1サイクルとした18サイクルの増幅反応を行った。
得られた増幅産物を、BL21(DE3)pLysSに形質転換することでTthRecA-Y202W変異体発現クローンを得た。
(2)タンパク質の発現および精製
(1)で得たTthRecA-Y202W発現クローンを、100μg/mlのアンピシリンを含むLB液体培地中で37℃にてOD600 = 0.5まで培養した。さらに、0.5 mM IPTGを添加して4時間培養した後、遠心分離(6,000x g、15分)してタンパク質発現菌体を得た。TthRecA-Y202W変異体の精製は、集菌し凍結させたタンパク質発現菌体(2 g)を緩衝液(20 ml)(50 mM Tris-HCl pH8.0、25 % Sucroseを、5 mM 2-メルカプトエタノール、0.4 % ポリオキシエチレンセチルエーテル)に懸濁した。続いて、超音波処理にて菌体を破砕し、EDTA(終濃度5mM)、KCl(終濃度2M)を混合した後、遠心分離(4℃、60,000x g、60分)して上清を分取した。次に、熱処理(65℃、1時間)して急冷(0℃、10分)後、遠心分離(4℃、60,000x g、20分)して上清を分取した。上清を、疎水クロマトグラフィーカラム(東ソー、Butyl Toyopearl 650M)に供した。カラムの平衡化緩衝液(PEMG2K)は、50 mMリン酸カリウムpH6.5(200 ml)、1 mM EDTA、5 mM 2-メルカプトエタノール, 10 % グリセロール、2 M KClを使用した。PEM2K緩衝液(100 ml)で洗浄した後、緩衝液(PEMG : 50 mM リン酸カリウム pH6.5, 1 mM EDTA, 5 mM 2-メルカプトエタノール、10 % グリセロール)を用いてグラジエントをかけてタンパク質の溶出画分を分取した。次に、PEMG緩衝液を外液として透析を行った後、PEMG緩衝液(30 ml)にて平衡化した陽イオン交換リン酸セルロースクロマトグラフィーカラム(ワットマン、P11)に供した。PEMG緩衝液(50 ml)で洗浄した後、緩衝液(PEMG1K : 50 mM リン酸カリウム pH6.5(30 ml)、1 mM EDTA、5 mM 2-メルカプトエタノール、10 % グリセロール、1 M KCl)を用いてグラジエントをかけてタンパク質の溶出画分を分取した。次に、PEMG緩衝液を外液として透析を行った後、陰イオン交換セルロースクロマトグラフィーカラム(GE、Resource Q)に供した。カラムの平衡化緩衝液はPEMG(20 ml)を使用した。PEMG緩衝液(30 ml)で洗浄した後、PEMG1K緩衝液(60 ml)を用いてグラジエントをかけてタンパク質の溶出画分を分取した。最後に、TEDG(20 mM Tris-HCl (pH 7.5), 1 mM EDTA, 0.1 mM DTT, 50% glycerol)緩衝液を外液として透析を行った。
続いて、得られたTthRecA-Y202W変異体の5 μg相当量を、SDS-PAGE電気泳動した後、泳動後のゲルをCBB染色した。また、同様に、野生型TthRecAタンパク質、野生型TaqRecAタンパク質、及び先行技術文献である特許文献4(特開2008-029222号)に記載のHyper-TthRecA変異体についても、各タンパク質の5 μg相当量を同様に電気泳動に供した。
なお、ここで使用したHyper-TthRecA変異体は、上述の特許文献4に記載に基づいて作製した。そして、そのアミノ酸情報を配列表の配列番号13として開示した。また、ここで、用いたTaqRecAタンパク質の配列情報を配列表の配列番号11(塩基配列)、配列番号12(アミノ酸配列)として開示した。
(結果)
結果を図2に示す。
図2は、電気泳動結果を示す図であり、レーン1は野生型TthRecAタンパク質、レーン2はTthRecA-Y202W変異体、レーン3は野生型TaqRecAタンパク質、レーン4はHyper-TthRecA変異体の電気泳動結果である。
図2の結果より、本発明で使用したTthRecA-Y202W変異体が調製できていることを確認した。また、塩基配列分析の結果、野生型TthRecAタンパク質の塩基配列において、当該アミノ酸配列の第202番目のチロシンをコードするコドンの置換が確認され、トリプトファンをコードすることが確認された。
(実施例3)TthRecA-Y202W変異体の相同組換え活性の確認−1
実施例2で取得したTthRecA-Y202W変異体の相同組換え活性を、D-Loop形成反応により野生型TthRecAタンパク質、及びHyper-TthRecA変異体と比較検討することにより確認した。
(方法)
二本鎖DNAとしてpBluescript SK(-) DNA(Novagen)を用い、その部分配列を有する90 merのオリゴヌクレオチド(5'- AAATC AATCT AAAGT ATATA TGAGT AAACT TGGTC TGACA GTTAC CAATG CTTAA TCAGT GAGGC ACCTA TCTCA GCGAT CTGTC TATTT -3'(配列番号18))を一本鎖DNAとして用いた。18μM 二本鎖DNA、0.05μM 一本鎖DNA (33Pで5'末端標識)、3.0μg TthRecA-Y202W変異体、1.3 mM ATPを、反応緩衝液(31 mM Tris-HCl pH7.5, 1.75 mM DTT、 0.09 mg/ml BSA、13 mM MgCl2、4.9 mM CP(クレアチンホスフェート)、7.8 U/μl CK(クレアチンキナーゼ))中で、37℃で0〜20分間保温した。反応後に、反応停止液(0.5% w/vol SDS、0.7 mg/ml Proteinase K)を加えて0℃で30 分間保温した。次に、反応液を1 %アガロースゲル電気泳動(泳動緩衝液: 0.5x TBE)した後、ゲルを乾燥させてRIイメージングアナライザー BAS2500 (富士フィルム)でシグナル検出した。
そして、TthRecA-Y202W変異体に代えて、野生型TthRecAタンパク質、及びHyper-TthRecA変異体を添加したものについても上述の手順に従ってD-Loopの形成を確認した。
(結果)
結果を図3、及び図4に示す。
図3は、電気泳動結果を示す図であり、A、B、及びCにおいて、矢印によりD-Loop生成物のバンドを示す。そして、Aは、野生型TthRecAタンパク質、Bは、TthRecA-Y202W変異体、Cは、Hyper-TthRecA変異体の相同組換え活性をD-Loop形成反応により確認したものである。そして、A〜Cのレーン1〜8は、夫々、0、0.5、1、1.5、2.5、5、10、及び20分間でのD-Loop形成反応の結果である。
図4は、図3の結果である、野生型TthRecAタンパク質、TthRecA-Y202W変異体、Hyper-TthRecA変異体の相同組換え活性をグラフにまとめたものであり、横軸は反応時間(分)、縦軸はD-Loop形成率(%)を示す。
図3、及び図4の結果より、TthRecA-Y202W変異体は、野生型TthRecAタンパク質と比較してより多くのD-Loop形成が認められた(図4の波形(1)と(2)の比較)。また、TthRecA-Y202W変異体は、Hyper-TthRecA変異体と比較して、最大の相同組換え活性は同程度であるが、時間経過に伴うD-Loop形成の解離が認められた(図4の波形(1)と(3)の比較)。
これらの結果から、TthRecA-Y202W変異体は、野生型TthRecAタンパク質よりも相同組換え活性が約4倍向上していることが判明した。一方、Hyper-TthRecA変異体とは、相同組換え活性の最大値は同等であった。しかしながら、TthRecA-Y202W変異体は、Hyper-TthRecA変異体に比べて、時間経過に伴うD-Loop形成の解離が認められ、これにより、TthRecA-Y202W変異体は、ATPの加水分解によってRecAタンパク質が核酸から解離するリサイクル性に優れていることが判明した。
(実施例4)TthRecA-Y202W変異体の相同組換え活性の確認−2
実施例2で取得したTthRecA-Y202W変異体の相同組換え活性を、上述の実施例3に続いてD-Loop形成反応により野生型TthRecAタンパク質、及びHyper-TthRecA変異体と比較検討することにより確認した。本実施例では、野生型TthRecAタンパク質のアミノ酸配列の202番目のチロシンを、トリプトファンではなくアラニンに置換した変異体を調製し、これについてもD-Loop形成能を比較検討した。なお、この変異体を「TthRecA-Y202A変異体」と命名した。
(方法)
二本鎖DNA及び一本鎖DNAは実施例3と同じものを使用した。15.5μM 二本鎖DNA、0.04μM 一本鎖DNA (33Pで5'末端標識)、3.0μg TthRecA-Y202W変異体、1.1 mM ATPを、反応緩衝液(25 mM Tris-HCl pH7.5、1.46 mM DTT、0.08 mg/ml BSA、10.9 mM MgCl2、4.1 mM CP(クレアチンホスフェート)、 6.5 U/μl CK(クレアチンキナーゼ))中で、55℃で0〜20分間保温した。反応後に、反応停止液(0.5 % w/vol SDS, 0.7 mg/ml Proteinase K)を加えて0℃で30分間保温した。次に、反応液を1 %アガロースゲル電気泳動(泳動緩衝液: 0.5x TBE)した後、ゲルを乾燥させてイメージングアナライザー(富士フィルム、BAS2500)でシグナル検出した。
そして、TthRecA-Y202W変異体に代えて、TthRecA-Y202A変異体、及び野生型TthRecAタンパク質を添加したものについても上述の手順に従ってD-Loopの形成を確認した。
なお、TthRecA-Y202A変異体は、実施例2のTthRecA-Y202Wと同様に手段により作製した。なお、このとき、プライマーとしては、以下のものを使用した。
プライマーセット:
5'- gaagg tgggg gtcac ggccg gcaac cccga gacc -3'(配列番号19)
5'- ggtct cgggg ttgcc ggccg tgacc cccac cttc -3'(配列番号20)
(結果)
結果を図5に示す。
図5は、図4と同様にして、野生型TthRecAタンパク質、TthRecA-Y202W変異体、及びTthRecA-Y202A変異体の相同組換え活性をグラフにまとめたものであり、横軸は反応時間(分)、縦軸はD-Loop形成率(%)を示す。
図5の結果より、上述の条件でのD-Loop形成反応では、野生型TthRecAタンパク質とTthRecA-Y202A変異体では検出パターンに大きな違いが見られず、TthRecA-Y202A変異体の相同組換え活性は野生型TthRecAタンパク質と同程度であった。それに対し、TthRecA-Y202W変異体は野生型TthRecAタンパク質よりも相同組換え活性が約2倍向上していた。これらの結果は、チロシン残基より面積がより大きいトリプトファン残基の芳香環が、解離した片方のDNAを安定的にスタッキングしているため、相同DNAの対合反応が起こりやすくなっていると推定される。以上をまとめると、TthRecA-Y202W変異体は、TthRecA-Y202A変異体や野生型TthRecAタンパク質と比較してより高い相同組換え活性が認められた。
(実施例5)TthRecA-Y202W変異体のATPase活性の確認
実施例2で取得したTthRecA-Y202W変異体の相同組換え活性を、ATPase活性測定により野生型TthRecAタンパク質、及びHyper-TthRecA変異体と比較検討することにより確認した。
(方法)
二本鎖DNAとしてpBluescript SK(-) DNA(Novagen)と、一本鎖DNAとしてM13 ssDNA (TAKARA)を用いた。22.6μM 二本鎖DNAまたは一本鎖DNA、3.0μg TthRecA-Y202W変異体、1.3 mM [α-32P] ATPを、反応緩衝液(31 mM Tris-HCl pH7.5, 1.75 mM DTT、0.09 mg/ml BSA、MgCl2を13 mM(一本鎖DNA)若しくは1 mM(二本鎖DNA)、4.9 mM CP(クレアチンホスフェート)、7.8U/μl CK(クレアチンキナーゼ))中で、55℃で30分間保温した。反応後に、等量の25mM EDTAを加え反応を停止した。反応停止後、サンプルを薄層クロマトグラフィーでATPとADPに分離した。分離後、Imaging Plate(IP)に一晩以上感光させ、RIイメージングアナライザー BAS2500 (富士フィルム)でATPと生成されたADPのシグナルを検出した。
そして、TthRecA-Y202W変異体に代えて、野生型TthRecAタンパク質、Hyper-TthRecA変異体を添加したものについても、夫々、上述の手順に従ってシグナルを検出した。
(結果)
結果を図6、及び7に示す。
図6、及び7は、野生型TthRecAタンパク質、TthRecA-Y202W変異体、及びHyper-TthRecA変異体のATPase活性を示すグラフであり、縦軸はADPの生成率(%)を示す。そして、図6は、一本鎖DNA依存的ATPase活性を、図7は、二本鎖DNA依存的ATPase活性を示す。
図6、及び7の結果より、TthRecA-Y202W変異体は二本鎖DNA及び一本鎖DNA依存的ATPaseのどちらにおいても、野生型TthRecAタンパク質、及びHyper-TthRecA変異体と比較して、高いATPase活性を得られた。したがって、TthRecA-Y202W変異体は、ATP加水分解を伴う核酸からタンパク質が解離するリサイクル性に優れていると考えられる。これらの結果は、TthRecA-Y202W変異体は、ATPの加水分解によってRecAタンパク質が核酸から解離するリサイクル性に優れていることが判明した実施例3の結果と追認するものである。
(実施例6)TthRecA-Y202W変異体の核酸増幅精度への影響確認
実施例2で取得したTthRecA-Y202W変異体が、核酸増幅精度に与える影響を、野生型TthRecAタンパク質と比較検討した。具体的には、プライマーと鋳型核酸の1〜5塩基のミスマッチを含むプライマーを使用したPCRにおける増幅産物量を比較することにより行った。
(方法)
PCR反応液(25 μl)は、鋳型核酸として実施例1のヒトゲノムDNAを25 ng、野生型TthRecAタンパク質を0.5μg、プライマーを0.2 μM(最終濃度)、DNA ポリメラーゼ(Takara-Bio、Premix Taq Version 2.0) (当該PCR試薬キットの標準濃度)に混合することにより調製した。
ここで、プライマーとしては、以下のプライマーセットc、d、及びe( Homo sapiens chromosome 7, ACCESSION NT_079596 REGION: 56196821..56325337を基に作製し、プライマーセットdは1塩基、eは5塩基のミスマッチを含むように作製)の何れかを使用してそれぞれPCR反応液を調製した。プライマーセットc、d、及びeの配列情報は以下の通りである。なお、プライマーセットcはミスマッチの塩基を含まないが、プライマーセットd及びeは、ミスマッチの塩基を含み、その塩基を大文字で示した。
プライマーセットc(ミスマッチの塩基数0):
5'- gccta aggtc acgtt gtccc-3’(配列番号21)
5'- gcagg cacca agaac tactg c-3’(配列番号22)
プライマーセットd(ミスマッチの塩基数1):
5'- gccta aggtc acgtt gtccc-3’(配列番号21)
5'- gcagg cacca Ggaac tactg c-3’(配列番号23)
プライマーセットe(ミスマッチの塩基数5):
5'- gccta aggtc acgtt gtccc-3’(配列番号21)
5'- gcGgg cGcca GgaaG tacGg c-3’(配列番号24)
上記で調製した各PCR反応液を同一の条件下でPCRを行い、増幅産物を得た。PCRは、94℃にて30秒の熱変性の後、94℃にて15秒、55℃にて30秒、72℃にて60秒の反応を1サイクルとした25サイクルの増幅反応によって行った。増幅後、各増幅反応液に電気泳動緩衝液を添加して撹拌し、半量を分取して1.2%アガロースゲル電気泳動に供した。電気泳動後のゲルをVistra greenで染色し、DNAのバンドを可視化した。
そして、野生型TthRecA タンパク質に代えて、TthRecA-Y202W変異体を添加したものについても上述の手順に従ってPCRを行なった後、電気泳動に供した。また、RecAタンパク質を添加せず、上述の手順に従ってPCRを行なった後、電気泳動に供し、これをコントロールとした。
(結果)
結果を図8に示す。
図8は、電気泳動結果を示す図であり、Aは、コントロール、Bは、TthRecA-Y202W変異体存在下での増幅結果、Cは、野生型TthRecAタンパク質の存在下での増幅結果である。そして、A〜Cのレーン1〜3は、夫々、プライマーセットc、d、eでの増幅結果である。
図8の結果より、TthRecA-Y202W変異体の添加下でPCRを行った場合には、プライマーセットd, eでは、顕著な増幅産物量の減少を確認した(Bのレーン2、3)。一方、野生型TthRecAタンパク質の添加下でPCR増幅を行った場合、プライマーセットdでは増幅産物量の減少はなく、プライマーセットeで増幅産物量が僅かに減少した(Cのレーン2、3)。コントロールにおいては、全てのプライマーセットでメジャーな増幅産物を確認した(Aのレーン1、2、3)。
以上の結果から、TthRecA-Y202W変異体の添加により、野生型TthRecAタンパク質と比較して、プライマーと鋳型核酸とのペアリング特異性が向上する、つまりPCRの反応精度が向上することが判明した。
(実施例7)TthRecA-Y202W変異体の核酸増幅精度の効果確認−1
TthRecA-Y202W変異体が、核酸の増幅精度に与える影響を、野生型TaqRecAタンパク質と比較検討した。具体的には、プライマーと鋳型核酸の1塩基のミスマッチを含むプライマーを使用したPCRにおける増幅産物量を比較することにより行った。
(方法)
PCR反応液(25 μl)は、鋳型核酸として実施例1のヒトゲノムDNAを25 ng、TthRecA-Y202W変異体を0.5μg,プライマーを0.2 μM(final濃度)、DNA ポリメラーゼ(Takara-Bio, Premix Taq Version 2.0) (当該PCR試薬キットの標準濃度)に混合することにより調製した。
ここで、プライマーとしては、以下のプライマーセットf、又は g( Homo sapiens chromosome 7, ACCESSION NT_079596 REGION: 56196821..56325337を基に作製し、プライマーセットgは1塩基のミスマッチを含むように作製)を使用してPCR反応液をそれぞれ調製した。プライマーセットf及びgの配列情報は以下の通りである。なお、プライマーセットfはミスマッチの塩基を含まないが、プライマーセットgは、1塩基のミスマッチを含み、その塩基を大文字で示した。
プライマーセットf(ミスマッチの塩基数0):
5’-gccta aggtc acgtt gtccc-3’(配列番号25)
5'- gcagg cacca agaac tactgc-3’(配列番号26)
プライマーセットg(ミスマッチの塩基数1):
5’-gccta aggtc acgtt gtccc-3’(配列番号25)
5'- gcagg cacca Ggaac tactgc-3’(配列番号27)
上記で調製した各PCR反応液を同一の条件下でPCRを行い、増幅産物を得た。PCRは、94℃にて30秒の熱変性の後、94℃にて15秒、55℃にて30秒、72℃にて60秒の反応を1サイクルとした25サイクルの増幅反応によって行った。増幅後、各増幅反応液に電気泳動緩衝液を添加して撹拌し、半量を分取して1.2%アガロースゲル電気泳動に供した。電気泳動後のゲルをVistra greenで染色し、DNAのバンドを可視化した。
そして、TthRecA-Y202W変異体に代えて、野生型TthRecAタンパク質、及び野生型TaqRecAタンパク質を添加したものについても上述の手順に従ってPCRを行なった後、電気泳動に供した。さらに、何れのRecAタンパク質又は変異体を添加せず、上述の手順に従ってPCRを行なった後、電気泳動に供し、これをコントロールとした。ここで、用いたTaqRecAタンパク質の配列情報を配列表の配列番号11(塩基配列)、配列番号12(アミノ酸配列)として開示した。
(結果)
結果を図9に示す。
図9は、電気泳動結果を示す図であり、Aは、コントロール、Bは、TthRecA-Y202W変異体存在下での増幅結果、Cは、野生型TthRecAタンパク質の存在下での増幅結果、Dは、野生型TaqRecAタンパク質の存在下での増幅結果を示す。そして、A〜Dのレーン1及び2は、夫々、プライマーセットf及びgでの増幅結果である。
図9の結果より、TthRecA-Y202W変異体の添加下でPCRを行った場合には、プライマーセットfにおいて増幅産物を確認し、プライマーと鋳型核酸の1塩基のミスマッチを含むプライマーセットgでは増幅産物量が顕著に減少した(Bのレーン2)。また、野生型TthRecAタンパク質の添加下でPCR増幅を行った場合には、プライマーセットgでは増幅産物量が僅かに減少しただけであった(Cのレーン2)。一方、野生型TaqRecAタンパク質の添加下でPCR増幅を行った場合、およびコントロールにおいては、プライマーセットfとgの両方で同レベルの増幅産物量であった(Dのレーン1及び2)。
以上の結果から、TthRecA-Y202W変異体の添加により、野生型TthRecAタンパク質と比較して、プライマーと鋳型核酸とのペアリング特異性が向上する、つまりPCRの増幅精度が向上することが判明した。この結果は、上述の実施例6の結果とも合致する。
(実施例8)TthRecA-Y202W変異体の核酸増幅精度の効果確認−2
実施例2で取得したTthRecA-Y202W変異体が、核酸の増幅精度に与える影響を、野生型TthRecAタンパク質、野生型TaqRecAタンパク質、Hyper-TthRecA変異体と比較した。プライマーと鋳型核酸の1塩基のミスマッチを含むプライマーを使用したPCRにおける増幅産物量を比較することにより行った。
(方法)
PCR反応液(25 μl)は、鋳型核酸として実施例1のヒトゲノムDNAを25 ng、TthRecA-Y202W変異体を0.5μg,プライマーを0.2 μM(最終濃度)、DNAポリメラーゼ(Takara-Bio, Premix Taq Version 2.0) (当該PCR試薬キットの標準濃度)に混合することにより調製した。
ここで、プライマーとしては、以下のプライマーセットh、又は i( Homo sapiens chromosome 7, ACCESSION NT_079596 REGION: 56196821..56325337を基に作製し、プライマーセットiは1塩基のミスマッチを含むように作製)を使用してPCR反応液それぞれ調製した。プライマーセットh、及び iの配列情報は以下の通りである。なお、プライマーセットhはミスマッチの塩基を含まないが、プライマーセットiは、1塩基のミスマッチを含み、その塩基を大文字で示した。
プライマーセットh(ミスマッチの塩基数0):
5’-gccta aggtc acgtt gtccc-3’(配列番号28)
5'- gcagg cacca agaac tactgc-3’(配列番号29)
プライマーセットi(ミスマッチの塩基数1):
5’-gccta aggtc acgtt gtccc-3’(配列番号28)
5'- gcagg cacca Ggaac tactgc-3’(配列番号30)
上記で調製した各PCR反応液を同一の条件下でPCRを行い、増幅産物を得た。PCRは、94℃にて30秒の熱変性の後、94℃にて15秒、55℃にて30秒、72℃にて60秒の反応を1サイクルとした25サイクルの増幅反応によって行った。増幅後、各増幅反応液に電気泳動緩衝液を添加して撹拌し、半量を分取して1.2%アガロースゲル電気泳動に供した。電気泳動後のゲルをVistra greenで染色し、DNAのバンドを可視化した。
そして、TthRecA-Y202W変異体に代えて、野生型TthRecAタンパク質、及び野生型TaqRecAタンパク質、Hyper-RecA変異体を添加したものについても上述の手順に従ってPCRを行なった後、電気泳動に供した。
(結果)
結果を図10に示す。
図10は、電気泳動結果を示す図であり、Aは、プライマーセットhでの増幅結果、Bは、プライマーセットiでの増幅結果を示す。そして、A及びBのレーン1〜4は、夫々、野生型TthRecAタンパク質、TthRecA-Y202W変異体、野生型TaqRecAタンパク質、Hyper-TthRecA変異体の存在下の結果を示す。
図10の結果より、プライマーセットhを使用したPCRを行った場合には、野生型TthRecAタンパク質、TthRecA-Y202W変異体,野生型TaqRecAタンパク質、Hyper-TthRecA変異体の添加下で同レベルの増幅産物量を確認した。しかしながら、プライマーと鋳型核酸の1塩基のミスマッチを含むプライマーセットiを使用したPCRを行った場合には、TthRecA-Y202W変異体を添加下で増幅産物量が減少した(Bのレーン2)。一方、野生型TthRecAタンパク質、野生型TaqRecAタンパク質、Hyper-TthRecA変異体の添加下では増幅産物量の減少は見られなかった(Bのレーン1,3,4)。
以上の結果から、TthRecA-Y202W変異体の添加により、プライマーと鋳型核酸とのペアリング特異性が向上する、つまりPCRの増幅精度が向上することが確認できた。そして、かかる効果は、本発明者らが従前に開発したHyper-TthRecA変異体よりも優れたものであることが判明した。
(実施例9)TthRecA-Y202W変異体の核酸増幅精度向上効果の持続性確認
上述の実施例6〜8の結果により、TthRecA-Y202W変異体が、核酸の増幅精度を向上させることは確認できた。次に、PCRサイクルの経過に伴う当該効果の持続性について調べた。具体的には、プライマーと鋳型核酸の1塩基のミスマッチを含むプライマーを使用したPCRにおける増幅産物量を指標にして、PCRのサイクルを30回と35回で比較することにより行った。
(方法)
PCR反応液(25 μl)は、鋳型核酸として実施例1のヒトゲノムDNAを25 ng、TthRecA-Y202W変異体を0.5μg、プライマーを各0.2 μM(最終濃度)、DNA ポリメラーゼ(Takara-Bio, Premix Taq Version 2.0) (当該PCR試薬キットの標準濃度)に混合することにより調製した。
ここで、プライマーとしては、以下のプライマーセットj(Homo sapiens chromosome 7, ACCESSION NT_079596 REGION: 56196821..56325337を基に、1塩基のミスマッチを含むように作製)を使用してPCR反応液を調製した。プライマーセットjの配列情報は以下の通りである。なお、プライマーセットjは、1塩基のミスマッチを含み、その塩基を大文字で示した。
プライマーセットj(ミスマッチの塩基数1):
5’-gccta aggtc acgtt gtccc-3’(配列番号31)
5'- gcagg cacca Ggaac tactgc-3’(配列番号32)
上記で調製した各PCR反応液を同一の条件下でPCRを行い、増幅産物を得た。PCRは、94℃にて30秒の熱変性の後、94℃にて15秒、55℃にて30秒、72℃にて60秒の反応を1サイクルとした25または30サイクルの増幅反応によって行った。増幅後、各増幅反応液に電気泳動緩衝液を添加して撹拌し、半量を分取して1.2%アガロースゲル電気泳動に供した。電気泳動後のゲルをVistra green(GEヘルスケア)で染色し、DNAのバンドを可視化した。
そして、TthRecA-Y202W変異体に代えて、野生型TthRecAタンパク質を添加したものについても上述の手順に従ってPCRを行なった後、電気泳動に供した。さらに、RecAタンパク質を添加せず、上述の手順に従ってPCRを行なった後、電気泳動に供し、これをコントロールとした。
(結果)
結果を図11に示す。
図11は、電気泳動結果を示す図であり、Aは、30サイクルの増幅結果、Bは、35サイクルの増幅結果を示す。そして、A及びBのレーン1〜3は、夫々、コントロール、野生型TthRecAタンパク質、TthRecA-Y202W変異体存在下での結果である。
図11の結果より、プライマーと鋳型核酸の1塩基のミスマッチを含むプライマーセットjを使い、PCRを30サイクル行った場合には、コントロールの増幅量と比較して、野生型TthRecAタンパク質の添加下では増幅量が1/3に、TthRecA-Y202W変異体の添加下では増幅量が1/6に減少した。一方、PCRを35サイクル行った場合には、コントロールの増幅量と比較して、野生型TthRecAタンパク質の添加下およびTthRecA-Y202W変異体の添加下では増幅量は同じであった。
以上の結果から、TthRecA-Y202W変異体の添加により、プライマーと鋳型核酸とのペアリング特異性が向上するが、PCRのサイクルを重ねるとその効果が低下することが判明した。これは、増幅反応途中でTthRecA-Y202W変異体を追加添加することで、効果の低下を低減することが可能であると推察できる。また、リアルタイムPCRに用いる場合等には、PCRサイクルの増加による効果の低下は大きな問題とはならない。したがって、利用目的に応じてサイクル数やTthRecA-Y202W変異体の添加のタイミング等を適宜設定することで、本発明のTthRecA-Y202W変異体の機能を十分に発揮することができる。
医療分野、生物化学分野、環境分野、食品分野等において有用な核酸の増幅技術を提供する。

Claims (13)

  1. 以下の(1)〜(3)のタンパク質から選択される改変型の耐熱性RecAタンパク質。
    (1)配列番号1〜4の何れかのアミノ酸配列からなるタンパク質
    (2)配列番号1〜4の何れかのアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されており、かつ、前記配列番号1〜4の何れかのアミノ酸配列の202番目に相当する位置のアミノ酸がトリプトファンであるアミノ酸配列からなるタンパク質であって、核酸増幅反応系において、配列番号6、8、10、又は12のアミノ酸配列からなる野生型の耐熱性RecAタンパク質に比べて、鋳型核酸に対するプライマーのミスアニーリングを低減させる機能を有するタンパク質
    (3)配列番号1〜4の何れかのアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、前記配列番号1〜4の何れかのアミノ酸配列の202番目に相当する位置のアミノ酸がトリプトファンであるアミノ酸配列からなるタンパク質であって、核酸増幅反応系において、配列番号6、8、10、又は12のアミノ酸配列からなる野生型の耐熱性RecAタンパク質に比べて、鋳型核酸に対するプライマーのミスアニーリングを低減させる機能を有するタンパク質
  2. 前記野生型の耐熱性RecAタンパク質が、サーマス(Thermus)属細菌に由来する請求項1に記載の改変型の耐熱性RecAタンパク質。
  3. 前記野生型の耐熱性RecAタンパク質が、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)、又は、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)に由来する請求項1又は2に記載の改変型の耐熱性RecAタンパク質。
  4. 配列番号1〜3の何れかのアミノ酸配列からなる請求項1〜3の何れか一項に記載の改変型の耐熱性RecAタンパク質。
  5. 配列番号4のアミノ酸配列からなる請求項1〜3の何れか一項に記載の改変型の耐熱性RecAタンパク質。
  6. 請求項1〜5の何れか一項に記載の改変型の耐熱性RecAタンパク質をコードする核酸分子。
  7. 請求項1〜5の何れか一項に記載の改変型の耐熱性RecAタンパク質を添加して核酸の増幅反応を行う核酸増幅方法。
  8. 前記増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応に基づく反応である請求項7に記載の核酸増幅方法。
  9. 耐熱性DNAポリメラーゼ、と
    請求項1〜5の何れか一項に記載の改変型の耐熱性RecAタンパク質、とを含む核酸を増幅するための核酸増幅用キット。
  10. タンパク質の鋳型核酸に対するプライマーのミスアニーリングを野生型の耐熱性RecAタンパク質に比べて低減させる方法であって、
    前記野生型の耐熱性RecAタンパク質において、野生型の耐熱性RecAタンパク質の配列番号6、8、10、又は12のアミノ酸配列の202番目に相当する位置のアミノ酸をトリプトファンに置換する工程を有し、
    ここで、前記野生型の耐熱性RecAタンパク質は、以下の(4)〜(6)のタンパク質から選択される、方法。
    (4)配列番号6、8、10、又は12の何れかのアミノ酸配列からなるタンパク質
    (5)配列番号6、8、10、又は12の何れかのアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質
    (6)配列番号6、8、10、又は12の何れかのアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質。
  11. さらに、配列番号13のアミノ酸配列からなるC末端切断型の耐熱性RecAタンパク質に比べて、核酸増幅反応系において鋳型核酸に対するプライマーのミスアニーリングを低減させる請求項10に記載の方法。
  12. さらに、前記タンパク質が、配列番号13のアミノ酸配列からなるC末端切断型の耐熱性RecAタンパク質に比べて、鋳型核酸に対する増幅阻害を低減させる請求項10又は11に記載の方法。
  13. さらに、配列番号6、8、10、又は12のアミノ酸配列からなる野生型の耐熱性RecAタンパク質に比べて、相同組換え活性を増強させる請求項10〜12の何れか一項に記載の方法。
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