JP2016020316A - Pet用ホウ素化合物 - Google Patents

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Hiroyuki Michiue
宏之 道上
佳哉 井口
Yoshiya Inokuchi
佳哉 井口
松井 秀樹
Hideki Matsui
秀樹 松井
一仁 富澤
Kazuhito Tomizawa
一仁 富澤
瑞生 北松
Mizuo Kitamatsu
瑞生 北松
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【課題】安価で簡便な方法で合成することができるBSHを基本とした構造のPET対応のホウ素化合物を提供する。【解決手段】メルカプトウンデカハイドロドデカボレート(BSH)に、0〜3個のアルギニンが連続したアミノ酸配列を付加し、さらに金属配位子を結合させたホウ素化合物、およびそのホウ素化合物に放射性核種を配位させたPET用プローブ。【選択図】なし

Description

本発明は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)のための陽電子放出断層画像法(PET:positron emission tomography)用ホウ素化合物に関する。
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、悪性腫瘍細胞を選択的に破壊し、腫瘍周囲の正常細胞に影響を与えないがん放射線治療法として注目されている。BNCTは、がん細胞にホウ素(10B)原子を含む化合物を取り込ませ、人体に無害な低エネルギーの熱/熱外中性子線を体外から照射し、ホウ素(10B)原子の中性子捕獲および核分裂反応を利用してがん細胞を選択的に破壊する治療方法である。核分裂反応によって高線エネルギー付与のα粒子と、反跳するリチウム(7Li)核を産生する(10B+1n → 7Li+4He+2.4MeV)。このα粒子t7Li核の飛程は、それぞれ細胞直径より短い10μm以下であるため、放射線の効果は10Bを含有する細胞に限定される。それゆえ、10Bをあらかじめ腫瘍細胞に選択的に取り込ませ、そこに中性子線照射を行えば、細胞レベルでのガン選択的な治療法となる。
現在のがん治療では、外科手術、放射線療法、化学療法の3つが主に行われており、疾患のレベルにより、これらの手法を組み合わせた集学的治療が行われている。近年、放射線療法におけるサイバーナイフなどの定位放射線治療では、医療機器の発達に伴い、ミリ単位で照射野を制御できるようになっている。しかし、悪性脳腫瘍を例にみると、最も悪性度の高い膠芽腫では、前述のような放射線治療技術の発達にもかかわらず、平均生存期間約1年、5年生存率5%未満と極めて予後が不良である。その理由として、腫瘍が脳内へ浸潤性発育をするという特性が挙げられる。このような高浸潤能をもつ腫瘍は、MRI(核磁気共鳴画像法)等の画像上描出される腫瘍領域の外側の正常能に、細胞レベルで多くの腫瘍細胞が散在している。そのため、正常組織に浸潤している腫瘍細胞を正確にイメージングすることが困難であり、細胞レベルでの治療に至っておらず、予後不良の原因となっている。
BNCTは前述したように、低毒性のホウ素化合物を用いるため、化学療法のような重篤な副作用はない。また、他の放射線療法のような照射線による正常組織へのダメージも極めて少ない治療法である。これまで中性子源として、原子炉を必要としていたが、加速器を使用した中性子源の開発により、原子炉と同等以上の中性子照射線量が得られており、病院併設型加速器中性子捕捉療法の実現に近づいている。
現在、BNCTは、悪性脳腫瘍や悪性黒色腫、頭頸部がん、悪性中皮腫などの治療で臨床研究が盛んにおこなわれている。
安全な中性子源の開発が進んでいる現在において、BNCTで最も重要視されているのが、ホウ素製剤の開発である。現在までに臨床応用されている薬剤は、ホウ素フェニルアラニン(BPA)と、メルカプトウンデカハイドロドデカボレート(BSH)の2種類である(非特許文献1および2)(下記構造式参照)。
BPAは、必須アミノ酸であるフェニルアラニンに10B原子を1つ結合させた化合物である。BPAは血液脳関門を通過して脳全体に広がり、特にアミノ酸代謝の高い脳腫瘍に能動的に取り込まれる。また、BPAについては、18Fを結合させた18F−BPAを用いて、陽電子放出断層画像法(PET)でのBNCT治療前の薬物動態評価が行われている(非特許文献3および4)(下記構造式参照)。しかし、BPAは化合物1分子あたりに占める10Bの割合が4.7%と低く、治療効果を得るには大量のホウ素製剤が必要となる。加えて少量ではあるが正常組織にも取り込まれるため、腫瘍部の10Bの取り込みと正常部の取り込みの比を考えた中性子線照射を実施しなければならないという制約がある。
BSHは、分子内に10B原子を12個含む20面体の化学構造を有し、化合物1分子あたりに占める10Bの割合は57.4%と高い。BSH自身には、腫瘍選択的送達能はないが、高水溶性・低毒性であり、血液脳関門が壊れている脳腫瘍組織においてEPR(enhanced permeability and retention)効果により蓄積する。しかし、細胞内への取り込み能がないことや、PETなどの薬物動態をイメージングする手法が無いため、脳腫瘍以外では用いられていない。
近年これらBPAやBSHの弱点を補う10Bキャリアとして、アミノ酸や糖類、リポソーム、高分子ミセルといったキャリアの研究・開発が報告されている。本発明者らも、これまでに、抗体結合型・発光イメージングリポソームや細胞膜通過ペプチド(cell-penetrating peptides:CPP)を使用したマルチBSH−ペプチドを開発している(特許文献1、非特許文献5)。しかしながら、PET用に使用できるBSH製剤の開発はまだ行われていない。
PETは、放射性同位体(RI)を含む薬剤を用いる核医学検査の一種である。対象薬剤にRIを標識し、投与後に体内で放出される放射線を特殊なカメラでとらえて画像化する。放出した陽電子が近くの電子と結合して消滅する代わりに透過力の強い放射線を2個生み出し、その場所から互いに180℃反対方向へ飛び去る。この一対の放射線をとらえることで、放射線源の存在する部位が計算可能となる。PET検査は全身を一度に調べることができ、悪性腫瘍画像診断や生体内薬剤動態検査に使用されている。PET用のプローブとしては、前述した18Fのみならず、11CなどのRIを結合させたり、金属キレーターに64Cu、68Gaといった核種を標識したペプチドや抗体が利用されている。
また、医薬品開発における新薬開発期間の短縮と開発コストの削減には、医薬品候補からの脱落要因の多くを占める薬物のヒトにおける体内動態を早期に調べることが重要である。日本においても、低用量の被験物質(新薬候補化合物)を健常人へ投与する「マイクロドーズ臨床試験」のガイドラインが作成され、開発早期での低用量(薬効発現量の1/100以下)の臨床試験の実施が可能となっている。その際、有効なのが、PETを中心とした分子イメージングである。
特開平2013−087098号公報
Kato I, Ono K, Sakurai Y, Chmae M, Maruhashi T, Imahori Y, et al. Effectiveness of BNCT for recurrent head and neck malignancies. Appl Radiat Isot 2004; 61: 1069-73 Hatanake H. A revised boron-neutron capture therapy for malignant brain tumors. J Neurol 1975; 209: 81-94 Oncol Lett 2011; 2:423-7 J Nucl Med 1998;39:325-33 Biomaterials 2009; 30:1746-55
ホウ素中性子捕捉療法において、治療するためにどのくらいのホウ素が腫瘍部に取り込まれているかにより、治療に使う中性子線量を決定することが好ましいため、使用するホウ素製剤の体内薬物動態をPETにより評価することが望まれているが、上述したように、従来のホウ素製剤では、1分子当たりに占める10B原子の数が少ないといった問題や、PET等の検査に利用できないといった問題がそれぞれある。
そこで、本発明は、安価で簡便な方法で合成することができるBSHを基本とした構造のPET対応のホウ素化合物を提供することを目的とする。
本発明者らは、化合物1分子内に10B原子12個を含むBSHに、金属配位子を結合させることにより、PET用ホウ素化合物として使用できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、メルカプトウンデカハイドロドデカボレート(BSH)に、0〜3個の連続したアルギニンからなるアミノ酸配列を付加し、さらに金属配位子を結合させたホウ素化合物に関する。
本発明のホウ素化合物において、金属配位子は、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、1,4,7−トリアザシクロノナン−1,4,7−三酢酸(NOTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、2−ナフチルエチルトリメチルアンモニウム(NETA(α−NETA))、1,4,7,10−テトラアザシクロテトラドデカン−1,4,7,10−テトラ(メチレンホスホン酸)(DOTP)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、(α,α’,α’’,α’’’)−テトラメチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTMA)およびフタル酸ジオクチル(DOP3)からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
本発明のホウ素化合物において、アミノ酸配列は、2または3個の連続したアルギニンからなることが好ましい。
本発明はさらに、上記本発明のホウ素化合物に放射性核種を配位させたPET用プローブに関する。
本発明のPET用プローブにおいて、放射性核種は、64Cu、68Ga、85Sr、76Br、137Cs、52Mn、54Mn、63Zn、65Zn、59Fe、60Co、88Yおよび89Zrから選択される少なくとも1種の放射性金属核種であることが好ましい。
本発明によれば、本発明のホウ素化合物を放射性同位体金属原子と共に用いることにより、投与後のホウ素製剤のイメージングが可能となり、放射線照射治療において非常に有効な生体内薬物動態情報を得ることができる。このような生体内薬物動態情報を得ることができれば、悪性腫瘍に対するBSHの治療効果をあげることができ、さらには悪性脳腫瘍以外のホウ素中性子捕捉療法へのBSHの適用が可能になる。
本発明のホウ素化合物は、放射性金属核種との錯体を形成できるため、PETによる腫瘍の診断、腫瘍の治療効果診断、腫瘍の病態解析または腫瘍の治療のために用いることができる。さらに、BSHに2または3個のアルギニンが連続したアミノ酸配列を付加することにより、細胞内へのホウ素化合物の導入が効率的になされる。本発明のホウ素化合物に、放射性金属核種を結合させたPET用プローブは、ホウ素中性子捕捉療法に必要とされている検査薬剤として、がん治療の評価ならびに他の疾患の検査用試薬として使用することができる。
参考例1〜3のホウ素化合物(それぞれBSH−Tmr−1R、BSH−Tmr−2R、BSH−Tr−3R)について、投与からの各培養時間経過時の誘導結合プラズマ発行分光分析データにより定量化した腫瘍細胞内10B濃度(ng/106細胞)を示すグラフである。 参考例2(A)および参考例3(B)のホウ素化合物についての、種々のホウ素化合物濃度による腫瘍細胞内10B濃度(ng/106細胞)を示すグラフである。 参考例1〜3のホウ素化合物およびBSHについて、細胞との培養24時間時点において観察した、(a)BSH(抗BSH抗体:緑)、(b)ペプチド(HLA−A:緑)、(c)核(ヘキスト染色:青)を示す共焦点レーザー顕微鏡写真データ(×120)である。(d)は(a)〜(c)を重ね合せたものである。 実施例2および実施例3(それぞれBSH−2R−DOTA、BSH−3R−DOTA)のホウ素化合物のWSR−1アッセイによる細胞毒性評価を示すグラフである。 実施例2および実施例3のホウ素化合物を投与した担がんモデルマウスの腫瘍部の共焦点レーザー顕微鏡写真データ(×10)である。(a)BSH(抗BSH抗体:赤)、(b)ヒトグリオーマ細胞(抗HLA−A抗体:緑)、(c)核(ヘキスト染色:青)を示す。(d)は(a)〜(c)を重ね合せたものである。 図5Aの上段、実施例3のデータの各部分の高倍率(×60)写真データである。(a)BSH(抗BSH抗体:赤)、(b)ヒトグリオーマ細胞(抗HLA−A抗体:緑)、(c)核(ヘキスト染色:青)を示す。(d)は(a)〜(c)を重ね合せたものである。 実施例3(A)および実施例2(B)のホウ素化合物およびBSH(C)の、担がんマウスモデルにおける各組織における10B濃度(μg/g組織)を示すグラフである。10B濃度は、誘導結合プラズマ発行分光分析法(ICP−AES)により測定した。 実施例4(AおよびC)および実施例5(BおよびD)のホウ素化合物の、担がんモデルマウスでの体内分布をPETカメラで撮像した断層写真である。AおよびBは、上から腫瘍部の冠状断、矢状断、水平断であり、CおよびDは、それぞれAおよびBの頭部拡大画像である。 実施例4(A)および実施例5(B)のホウ素化合物の、担がんモデルマウスでのPETデータから算出した各組織における放射能濃度(%ID/cc)を示すグラフである。 実施例4および実施例5のホウ素化合物を投与した担がんモデルマウスの、各組織における放射性濃度(%ID/g組織)を示すグラフである。
本発明のホウ素化合物は、ホウ素源としてBSHを使用し、0〜3個のアルギニンが連続したアミノ酸配列と金属配位子とを結合させたものであり、放射性金属核種との錯体を形成できるため、PETによる腫瘍の診断、腫瘍の治療効果診断、腫瘍の病態解析または腫瘍の治療のために用いることができる。
本明細書においては、0〜3個のアルギニンが連続したアミノ酸配列を「nR(n=0〜3)」と記載する場合があり、たとえば、「0R」はアルギニン残基が0個であることを意味し、「1R」はアルギニン残基が1個、「2R」はアルギニン残基が2個、「3R」はアルギニン残基が3個をそれぞれ意味する。
本発明で用いるBSHは、1分子当たりに占める10Bの割合が13.8%であり、アミノ酸型のホウ素製剤であるBPAの4.7%を上回るものであり、BNCTに用いるホウ素製剤として望ましい性質を有する。
本発明に用いられる金属配位子としては、特に限定されるものではないが、DOTA(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’’,N’’’−テトラ酢酸)、1,4,7−トリアザシクロノナン−1,4,7−三酢酸(NOTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、2−ナフチルエチルトリメチルアンモニウム(NETA(α−NETA))、1,4,7,10−テトラアザシクロテトラドデカン−1,4,7,10−テトラ(メチレンホスホン酸)(DOTP)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、(α,α’,α’’,α’’’)−テトラメチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTMA)およびフタル酸ジオクチル(DOP3)またはその誘導体など種々のものを使用することができ、これらは二種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明においては、アルギニン残基は必須ではないが、アルギニンが1〜3個連続したアミノ酸配列が付加されていることが好ましい。本発明のホウ素化合物は、アルギニンが2または3個連続したアミノ酸配列を有することがより好ましく、3個連続したアミノ酸配列とすることが最も好ましい。本発明のホウ素化合物は、アルギニン残基が付加されていなくても、従来のBSHと同等の効果を有し、放射性金属核種との錯体は、BSHをPETイメージング可能とする有用なものである。一方、アルギニンが2または3個連続したアミノ酸配列(2Rまたは3R)を有する本発明のホウ素化合物は、細胞内にBSHを導入する有効なCPPであり、3Rにおいては、担がんモデル動物の腫瘍内部へBSHを導入できる極めて有効なものである(試験例4)。この3Rでの細胞内10B濃度は、これまでに報告されている11Rでの同様な実験と比較して8倍であり、その他のアミノ酸とBSHとを組み合わせた従来のものよりもはるかに高い細胞内導入量を示す。このような細胞内へのBSHの導入は、細胞外に導入された10Bと比較してBNCTにおける腫瘍殺傷効果は50〜100倍高いことが報告されており、これまでのBSH製剤と比較して高い効果が期待できる。また、BSHに3RおよびDOTAを付加したホウ素化合物の腫瘍部と正常脳組織との10B濃度の比(T/N)および腫瘍部と血液との10B濃度の比(T/B)は投与後12時間でそれぞれ7.1、5.3と高く、これまでのBSHのT/N:1.5、T/B:2.1と比較して非常に良好な結果である。
本発明のホウ素化合物は、ホウ素源のBSHと金属配位子またはアルギニンとの間や、金属配位子とアルギニンとの間に、それらの結合を容易にするために通常リンカーが用いられる。リンカーは、通常のアルキレン基から成り、そのアルキレン基中には、エーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、ジスルフィド結合、アミド結合、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、リン酸結合を含むことができる。リンカーを構成する分子の原子数は、0〜50が好ましく、0〜20がより好ましい。また、上記共有結合以外にも非共有結合性の連結、たとえば配位子−金属イオン間の相互作用、静電相互作用、疎水性相互作用、ペプチド−ペプチド相互作用、タンパク質−ペプチド相互作用、タンパク質−配位子相互作用が挙げられる。例えば、N−スクシンイミジル 4−マレイミドブチレート、ニトロピリジンスルフェニル基などの反応性の側鎖を有するシステイン残基、リシンなどの他のアミノ酸などを用いてもよい。
本発明のホウ素化合物は、WST−1アッセイによって1mMの濃度でも細胞殺傷効果はなく、動物実験において安全に使用できるレベルである。
本発明ホウ素化合物のさらに好ましい点としては、本発明のホウ素化合物は、簡単な手法で合成可能かつ大量生産が可能なことである。本発明のホウ素化合物の合成方法は、特に限定されるものではないが、一般的なアミノ酸の固相合成法から作成することもできる。
たとえば、本発明のホウ素化合物は、金属配位子にアミノ酸残基を結合させ、アミノ基を保護して、ペプチド固相合成に用いる樹脂担体に結合させ、このアミノ酸を用いて、順次必要なアルギニン等のアミノ酸残基を、脱保護、カップリング工程により結合する。その後、BSHを結合させるためのリンカーを連結し、BSHとの反応を行うことにより、合成することができる。
保護アミノ酸を結合した金属配位子は、一般的な有機合成の手法により合成することができるが、Fmoc−L−Lys−モノアミド−DOTA−トリスtert−ブチルエステルなど、市販されているものを用いることもできる。これをペプチド固相合成に用いられる樹脂担体に結合させる。
ペプチド合成において使用する保護ペプチド樹脂担体としては、特に限定されるものではなく、市販されている種々のものを用いることができ、たとえばベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂などが挙げられる。
ペプチドの固相合成法においては、アミノ酸は、保護基によって分子内のアミノ基をあらかじめ保護して用いられる。保護基としては、たとえば9−フルオレニル−メトキシカルボニル(Fmoc)基、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)基などがあげられるが、これらに限定されるものではない。なお、アミノ酸は、必要に応じて、側鎖の官能基を当該官能基に応じた保護基により保護して用いることができる。なお、本願明細書において、アミノ基や側鎖の官能基が保護されているアミノ基を「保護アミノ酸」という。
縮合には、一般的なペプチド合成に用いられる活性化試薬などが用いられる。縮合の際の反応温度は、ペプチド合成において一般的な温度であればよい。通常、反応温度は、約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。所望の細胞膜透過ペプチド配列に相当する配列からなるペプチドを合成した後、ホウ素化合物との結合に使用するための官能基を有するアミノ酸、たとえばシステインを縮合させ、ホウ素化合物との結合に使用する官能基を導入することができる。この際、ホウ素化合物との結合に用いるため、アミノ酸ではないリンカーを連結させることもできる。
得られた生成物がその分子内に保護基を有する場合、定法にしたがって、たとえば酸処理、アルカリ処理、触媒の存在下での水素気流中での接触還元などにより行うことができる。なお、保護基の導入と脱保護に関しては、たとえば、グリーンズ・プロテクティブ・イン・オーガニック・シンセシス第4版[ペーターG.M.ワッツ(Peter G.M. Wuts)およびテオドラW.グリーン(Theodora W. Greene)、Greene's Protective Groups in Organic Synthesis, 2006]に記載の方法にしたがって行うこともできる。
得られた金属配位子−ペプチド−リンカー化合物は、製造後、必要に応じて、得られた生成物の単離や精製を行ってもよい。生成物の単離や精製は、たとえば、逆相高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーによって行うことができる。
得られた金属配位子−ペプチド−リンカー化合物を、純水、または適当な緩衝液または有機溶媒に溶解し、BSHと反応させ、HPLCなどで反応を追跡し、原料の金属配位子−ペプチド−リンカーが消失を確認したのち、分取用HPLCにて目的とするホウ素化合物を得ることができる。
本発明のホウ素化合物は、金属配位子に放射性金属核種を配位させ、PET用のプローブとして使用することができる。使用する放射性金属核種としては、特に限定されるものではないが、64Cu、68Ga、85Sr、76Br、137Cs、52Mn、54Mn、63Zn、65Zn、59Fe、60Co、88Yおよび89Zrから選択される少なくとも1種などがあげられる。
さらに、本発明のホウ素化合物は、そのままホウ素捕捉療法に用いることができるため、有効成分であるホウ素以外に、腫瘍に対する選択制を高めるために、いわゆる腫瘍マーカーを含有させることができる。このような腫瘍マーカーとしては、特に限定されるものではなく、たとえば腫瘍に多く発現しているEGFR(上皮成長因子受容体)やCD133(がん幹細胞マーカー)などといった、がん表面に特異的に多く発現しているマーカーに対して結合するペプチド等のリガンドを使用することができる。
本発明のホウ素化合物は、適当な薬学的に許容され得る賦形剤、担体、溶媒、ゲル形成剤、酸化防止剤、希釈剤、等張化剤、pH安定化剤など、本技術分野において通常用いられている添加剤を配合し、ホウ素製剤とすることが出来る。これらの添加剤は、通常当業者により適宜選択される。このようなホウ素製剤は、溶液、懸濁液、注射剤、カプセル、ゲル、軟膏、クリーム、エマルジョンなど、種々の剤形に調製することができる。つまり、生理食塩水、等張液や一般臨床で用いられる注射液用の添加剤と共に注射剤とすること、カプセル化して内服薬やゲル化剤や皮膚科薬剤と混ぜて経皮的導入薬剤などとすることも可能である。
本発明のホウ素化合物は、経静脈的、経動脈的に投与されることが一般的である。その他、内服薬による投与、筋肉注射による投与、経皮的投与なども有効に使用することができる。
本発明のPET用プローブは、上述したように、本発明のホウ素化合物に放射性金属核種を配位させ、金属錯体としたものであり、PETによる腫瘍の診断、腫瘍の治療効果診断、または腫瘍の病態解析のために用いることができる。
本発明のPET用プローブは、適当な薬学的に許容され得る賦形剤、担体、溶媒、ゲル形成剤、酸化防止剤、希釈剤、等張化剤、pH安定化剤など、本技術分野において通常用いられている添加剤を配合し、製剤化することができる。これらの添加剤は、通常当業者により適宜選択される。このようなPET用プローブ製剤は、溶液、懸濁液、注射剤、カプセル、ゲル、軟膏、クリーム、エマルジョンなど、種々の剤形に調製することができる。つまり、生理食塩水、等張液や一般臨床で用いられる注射液用の添加剤と共に注射剤とすること、カプセル化して内服薬やゲル化剤や皮膚科薬剤と混ぜて経皮的導入薬剤などとすることも可能である。
本発明のPET用プローブは、経静脈的、経動脈的に投与されることが一般的である。その他、内服薬による投与、筋肉注射による投与、経皮的投与なども有効に使用することができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実験材料
BSHはステラファーマ(株)(大阪)より分与された。5(6)−カルボキシテトラメチルローダミン(以下、Tmrとも略す)は、シグマ−アルドリッチ(セントルイス、MO、米国)から、N−スクシンイミジル 4−マレイミドブチレート(以下、Linkとも略す)は、東京化成工業(東京)から、Fmoc−L−Lys−モノ−アミド−DOTA−トリス tert−ブチルエステルは、マクロサイクリクス(Macrocyclics)(ダラス、TX、USA)から購入した。マウス製抗−BSHモノクローナル抗体は、切畑光統博士(大阪府立大学)より分与された(Doi A, Kawabata S, Iida K, Yokoyama K, Kajimoto Y, et al. Tumor-specific targeting of sodium borocaptate (BSH) to malignant glioma by transferrin-PEG liposomes: a modality for boron neutron capture therapy. J Neurooncol 2008;87:287-94)。ラビット製抗−HLA−A(human leukocyte antigen-A)モノクローナル抗体は、アブカム(abcam)(ケンブリッジ、英国)から購入した。
細胞培養
ヒト神経膠腫(グリオーマ)細胞U87ΔEGFRはWebster Cavenee博士(Department of Cellular & Molecular Medicine、カリフォルニア大学、サンディエゴ、CA、米国)より分与された。10%(v/v)ウシ胎児血清(GEヘルスケア、フェアフィールド、CA、米国)、100単位/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン(和光純薬工業(株))を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、和光純薬工業(株))を用いて直径10cmのプラスチック培養皿(BD、フランクリンレイクス、NJ、米国)中で、37℃、5%CO2下で培養した。
参考例1〜3:BSH−Tmr−nR(n=1〜3)の合成
Fmocペプチド固相合成法によりnR−Tmr(n=1〜3)をFmoc−NH−SAL−PEG樹脂(渡辺化学工業、広島)上で作製した。樹脂上のアミノ基を保護しているFmoc基をピペリジン(和光純薬工業(株)、大阪)で脱保護し、脱保護されたアミノ基とFmoc−R(Pbf)−OH(渡辺化学工業)をカップリングさせた。同様に必要個数のアルギニンをFmoc−R(Pbf)−OHを用いて脱保護−カップリングの工程を繰り返して連結させたのち、Fmoc−K−OHを用いてリシンを同様に連結させた。次に、リシンのアミノ基を脱保護し、5(6)−カルボキシテトラメチルローダミン(Tmr)をカップリングさせ、生成物(nR−Tmr(n=1〜3))を得た。その後、リシン側鎖のε−アミノ基にN−スクシンイミジル 4−マレイミドブチレート(Link)を反応させることにより、リシン側鎖のε−アミノ基の末端をマレイミド基にした。トリフルオロ酢酸(TFA)を用いて樹脂から切り出し、目的とするペプチドを得た。
得られたペプチドとBSHをそれぞれPBSに溶解し、pH=7の条件で混合することでBSHをペプチドに結合した。
目的のBSH−ペプチドは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で単離・精製し、凍結乾燥して得た。得られた合成物の確認は、質量分析(MALDI−Tof)により行った(参考例1:理論値:[M+H]+=1044.51、実測値:1044.44;参考例2:理論値:[M+H]+=1200.61、実測値:1200.35;参考例3:理論値:[M+H]+=1356.71、実測値:1357.29)。
実施例1〜3:BSH−nR−DOTA(n=0、2、3)の合成
Fmocペプチド固相合成法により、Lnk−nR−DOTA(n=0、2、3)を、Fmoc−NH−SAL−PEG樹脂上で作製した。樹脂上のアミノ基を保護しているFmoc基をピペリジンで脱保護し、アミノ基とFmoc−K−モノアミド−DOTA−トリス(tert−ブチルエステル)をカップリングさせた。Fmoc−R(Pbf)−OHおよびLinkとの脱保護−カップリングの工程を繰り返し、Link−nR−DOTAを得、TFAを用いて樹脂から切り出した。
得られたLink−nR−DOTAおよびBSHをそれぞれPBSで溶解し、pH=7の条件で混合してBSHをペプチドに結合した。
目的のBSH−ペプチドはHPLCで単離・精製し、凍結乾燥して得た。
得られた合成物の確認は、質量分析(MALDI−Tof)により行った(実施例1:理論値:[M+H]+=862.51、実測値:859.99;実施例2:理論値:[M+H]+=1174.71、実測値:1176.41;実施例3:理論値:[M+H]+=1330.81、実測値:1331.38)。
実施例4および5:64Cu標識BSH−nR−DOTA(n=3、0)の合成
サイクロトロン、PET装置等の使用は、おかやまメディカルイノベーションセンター(OMIC)分子イメージング部門等利用要項に基づき、承認された(承認番号:OM25−20)手順にしたがい行った。また、RIの使用は、岡山大学自然生命科学研究センター光・放射線情報解析部門鹿田施設放射線障害予防規定に基づき、承認された(許可承認番号:25056)手順にしたがい行った。
小型サイクロトロン(CYPRIS−HM12、住友重機械工業(株)、東京)を用いた64Cuの製造および精製にはOMICの設備を利用した。精製後の64Cu(50mol)と実施例3のホウ素化合物(BSH−3R−DOTA)(25〜35nmol)および実施例1のホウ素化合物(BSH−0R−DOTA)(50nmol)のそれぞれとを40℃の0.1Mリン酸緩衝液(pH5.5、100μL)中で30分間反応させた。目的の64Cu標識BSH−ペプチドはHPLCで精製し、実施例4(BSH−3R−DOTA−64Cu)および実施例5(BSH−0R−DOTA−64Cu)を、それぞれ収率0.6%で得た。
試験例1:腫瘍細胞の10B濃度測定
参考例1〜3で得られたホウ素化合物(参考例1(BSH−Tmr−1R:アルギニン1個);参考例2(BSH−Tmr−2R:アルギニン2個);参考例3(BSH−Tmr−3R:アルギニン3個))または対照としてペプチドを付加していないBSHを用いてグリオーマ細胞U87ΔEGFRへの10B導入を検討した。U87ΔEGFRをφ35mmディッシュ中(BD)で24時間培養後(2×105個細胞/ディッシュ)、培養液を、各ホウ素化合物を含む同量の培養液に置換した(終濃度10μM)。設定した時間(1、2、4、12、24、48、72時間)経過後、培養液を除去し、細胞をPBS(pH7.4、1mL)で2回洗浄した。各ディッシュに61%(v/v)硝酸(HNO3、ボロン測定グレード、和光純薬工業(株))を300μL加え、室温で30分間溶解させた。水を2.7mL加え、孔径0.2μmのフィルター(F2513−16、サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)、ウォルサム、MA、米国)で異物を除去した。得られたサンプルに含まれる10B量、すなわち、細胞内10B濃度を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES、VISTA−PRO、セイコーインスツル(株)、千葉)で測定した。結果を図1に示す。また、0.1、1μMの各濃度で、参考例2のホウ素化合物(BSH−Tmr−2R)および参考例3のホウ素化合物(BSH−Tmr−3R)を使用して同様の実験を行い、2、12、24時間インキュベート後に同様の操作で10B濃度を測定した。結果をそれぞれ図2のAおよびBに上記10μMでの結果とあわせて示す。
図1より、アルギニンが2または3個連続したアミノ酸配列を有する参考例2のホウ素化合物および参考例3のホウ素化合物では10Bは細胞内に導入された。これらの細胞内10B濃度は経時的に増加しており、24時間経過時の細胞内10B濃度は、それぞれ354.3±157.3、1757.5±261.2ng10B/106個細胞(n=4)であった。一方、対照のBSHおよび参考例1のBSH−Tmr−1Rでは10Bはごく少量しか細胞内に導入されておらず、24時間での細胞内濃度はそれぞれ74.2±91.5、57.1±52.5ng10B/106個細胞(n=4)であった(図1)。
また、参考例2のBSH−Tmr−2R、参考例3のBSH−Tmr−3Rの低用量での実験では、2時間の時点では両ペプチド共に細胞内への導入は認められなかった。12および24時間の長時間の培養では導入が観測されたが、参考例3のBSH−Tmr−3Rでの細胞内10B濃度は、それぞれ90.1±73.9、248.1±51.0ng10B/106個細胞(n=4)であり、10μMにおける細胞内濃度、1757.5±261.2ng10B/106個細胞(n=4)と比較して有意に低かった(図2のAおよびB)
試験例2:U87ΔEGFR細胞の免疫染色
U87ΔEGFRをポリエチレンイミンでコートされたカバーグラス(旭硝子(株)、東京)上で24時間培養後(1×104cells/ディッシュ)、培養液をBSH−ペプチド(BSH−Tmr−1R:アルギニン1個(参考例1);BSH−Tmr−2R:アルギニン2個(参考例2);BSH−Tmr−3R:アルギニン3個(参考例3))またはペプチドを付加していないBSHを含む同量の培養液に置換した(終濃度10μM)。24時間後、培養液を除去し細胞をPBSで2回洗浄し、4%(w/v)パラホルムアルデヒド(PFA、和光純薬工業(株))を加え、室温で30分間細胞を固定した。細胞をPBS(pH7.4、1mL)で洗浄後、0.25%(v/v)トリトンX−100を加えた。それから、1%(w/v)BSAでブロッキングし、1%(w/v)BSAを含む抗BSH抗体溶液(1μg/mL)にカバーグラスを室温で2時間浸した。洗浄後、Alexa−Fluor 488を標識したロバ製抗マウス製抗体(ライフテクノロジーズ、カールズバッド、CA、米国)溶液(2μg/mL)に室温で2時間浸した。洗浄後、ヘキスト33342((株)同仁化学研究所、熊本)で核染色し、プレパラートを作製後、共焦点レーザー顕微鏡(FluoView、オリンパス(株)、東京)でBSHの細胞内局在を観察した。結果を図3に示す。
BSHは抗BSH抗体(緑)にて免疫し、核染色(青)を追加した。共焦点レーザー顕微鏡にて観察したところ、BSH−Tmr−2R(参考例2)およびBSH−Tmr−3R(参考例3)は細胞質領域および核内にBSHの局在が認められた。また、BSH−ペプチドに結合しているTmr(赤)も共局在していることより、BSH−ペプチドが細胞内で分解されず安定していることを示している。一方、BSHおよびBSH−Tmr−1R(参考例1)では、蛍光は観察されないか、観察されてもごく微量であったため、細胞内への導入は、ほとんどないと考えられた(図3)。
試験例3:細胞増殖アッセイ (Water-Soluble Tetrazolium: WST-1 assay)
実施例2のBSH−2R−DOTAおよび実施例3のBSH−3R−DOTAならびにBSHの毒性をWST−1アッセイで評価した。U87ΔEGFRを96ウェルプレート(BD)中で24時間培養後(5×103cells/ウェル)、培養液をBSH−2R−DOTA、BSH−3R−DOTAまたはBSHを含む同量の培養液に置換した(終濃度10、50、100、200μM)。対照としてジメチルスルホキシド(DMSO、同仁化学研究所)を使用した。24時間後、Cell Proliferation Reagent WST-1(ロシュ、バーゼル、スイス)を10μL/ウェル加えた。37℃で1時間インキュベートした後、マイクロプレートリーダー(Vient XS、DSファーマバイオメディカル、大阪)で各サンプルの吸光度(450nmおよび690nm)を測定した。結果を図4に示す。
BSH−2R−DOTA(実施例2)およびBSH−3R−DOTA(実施例3)のいずれも、対照であるDMSOおよびBSHと同程度の3.6〜3.9(n=4)の吸光度を示し(図4)、BSH−2R−DOTA(実施例2)およびBSH−3R−DOTA(実施例3)は共に、高濃度域においても、毒性を示さなかった。
試験例4:脳腫瘍モデルマウスでの10B生体内分布
本実験に関する動物の飼育、保管、使用は岡山大学動物実験委員会に承認された(承認番号:OKU‐2013058)手順にしたがい当該技術分野において一般的な方法で行った。担がんモデルマウスは、ヌードマウス(BALB/C nu/nu、メス、7〜9週齢、16〜20g、日本エスエルシー(株)、静岡)に、U87ΔEGFR細胞懸濁液(1×105個細胞/μL)3μLを脳内に直接注入して作製した。12日後、200μLの実施例2および3(BSH−2R−DOTA、BSH−3R−DOTA)の2種類およびBSH(200nmol/マウス)を尾静脈より投与した。
投与後、24時間にてマウス脳を4%(w/v)PFAでかん流固定後に摘出し、30%(w/v)スクロース(和光純薬工業(株))で脱水した。脳を凍結後、10μmの厚さに裁断し、凍結切片を作製した。M.O.M.キット(ベクターラボラトリーズ(VECTOR LABORATORIES)、バーリンゲーム、CA、米国)を用いてマウスIgGをブロッキングし、洗浄後、0.3%(v/v)TritonX−100を含む抗BSH抗体(1μg/mL)および抗HLA−A抗体溶液に室温で2時間浸した。洗浄後、Alexa−Fluor(登録商標)555を標識したロバ抗マウス抗体(ライフテクノロジーズ)およびAlexa−Fluor(登録商標)488を標識したヤギ抗ラビット抗体(ライフテクノロジーズ)溶液(2μg/mL)に室温で2時間浸した。洗浄後、ヘキスト33342で核染色し、プレパラートを作製後、共焦点レーザー顕微鏡でBSHの局在を観察した。結果を図5Aに、そして図5Aの実施例3に関する図を高倍率で確認したものを図5Bに示す。
BSH-ペプチドを抗BSH抗体(赤)、マウス脳内へ移植したヒトグリオーマ細胞を抗HLA−A抗体(緑)にて染色し、核染色(青)を追加した。共焦点レーザー顕微鏡による脳内BSH局在の観察により、低倍率では、BSH−3R−DOTA、BSH−2R−DOTAは腫瘍部で局在が観察され、正常部ではほとんど認められなかった(図5A)。特にBSH−3R−DOTAでは強く腫瘍内部に局在が確認された。高倍率においては、BSH−3R−DOTAは、腫瘍中心部および辺縁部ともに腫瘍細胞内部にBSHの局在が確認された(図5B)。細胞内部の局在を見たところ、細胞質領域では、BSH−3R−DOTAの導入が確認されたが、核への共局在はわずかにみられるだけであった(図5B)。
また、実施例2および3のホウ素化合物投与後、6、12、24、48時間で腫瘍、正常脳、血液、肝臓、腎臓を摘出した。各組織を61%(v/v)硝酸2mL中で90℃、1.5時間温浸し、その後水を3mL加えた。孔径0.2μmのフィルター(F2513−16、サーモフィッシャーサイエンティフィック)で異物を除去し、ICP−AESで10B濃度を測定した。結果を図6に示す。
実施例3および実施例2のいずれのホウ素化合物も腫瘍への取り込み量は他の組織と比較して高く、投与後6時間で実施例3および実施例2ならびに対照のBSHは、それぞれ2.41±1.93、2.23±0.68、1.50±0.32μg10B/g組織(n=3)であった(図6のA〜C)。一方で、実施例3のホウ素化合物は、腫瘍以外の組織の10B濃度が特に低く、投与後12時間での正常脳および血液中の10B濃度はそれぞれ、0.48±0.15、0.64±0.05μg10B/g組織(n=3)であった(図6のA)。腫瘍の10B濃度3.39±2.19μg10B/g組織(n=3)との比率(腫瘍/正常脳:T/N、腫瘍/血液:T/B)は、それぞれ7.1、5.3であった。
試験例5:PETイメージングおよびRI生体内分布測定
本実験に関する動物の飼育、保管、使用は、岡山大学動物実験委員会に承認された(承認番号:OKU−2013314)手順にしたがい行った。
試験例4と同様にして担がんモデルマウスを作製した。担がんモデルマウスに、実施例4および5で得られた各64Cu標識ホウ素化合物を尾静脈より投与し(各n=4)、投与後6、12、24時間での体内薬物動態を小動物用PETカメラ装置(Clairvivo、島津製作所、京都)で撮影した。断層写真を図7に、PETから算出した腫瘍、正常脳、血液・心臓における放射能濃度を図8に示す。PETイメージングから算出するT/N比は、腫瘍部全体と、それに対応する正常部の比をとったものであり、T/B比は、血液を設定することができないため、腫瘍/心臓比をとったものである。
実施例4のホウ素化合物は、腫瘍に選択的に取り込まれており、正常脳組織への取り込みは少ない(図7のAおよびC)。一方、実施例5のホウ素化合物では、腫瘍への取り込みもわずかである(図7のBおよびD)。腫瘍での放射能濃度は経時的に増加しており24時間でそれぞれ、2.97±0.15、2.25±0.36%ID/cc(ID:注入量)であった(図8のAおよびB)。実施例4のホウ素化合物の正常脳および血液・心臓の放射能濃度は、投与後24時間で1.07±0.26、2.46±0.38%ID/cc(図8のA)であり、T/N:2.8、T/B(腫瘍/(血液・心臓)):1.2であった。
ここで、64Cuのドープ前の試験例4のBSH−3R−DOTAおよびBSHのICP実測値のT/N比およびT/B比と本試験のPETイメージング値によるT/N比およびT/B比を、投与後24時間で比較した結果を表1に示す。
表1より、腫瘍モデルの組織から得た実測値と、PETイメージングにより得られた値が近い値を示しており、本発明のPETプローブが薬物動態を見る上で、非常に正確かつ有用な核種であることを示している。
また、64Cu標識ホウ素化合物投与後、6、12、24および48時間にて、腫瘍、正常脳、血液、肝臓、腎臓を摘出し、64Cuの体内分布を各組織に含まれる放射能濃度をガンマカウンタ測定することにより確認した。結果を図9に示す。
実施例4および5のホウ素化合物は、双方とも腫瘍中の濃度は他の組織と比較して高く、投与後24時間でそれぞれ3.74±2.75、2.92±1.13%ID/g組織(n=4)であった(図9)。また、実施例4のホウ素化合物では、正常脳および血液中の濃度は低く、投与後24時間でそれぞれ、0.46±0.14、1.93±0.43%ID/g組織(n=4)であり、T/N:8.1、T/B:2.0であった。
上述したように、PETイメージングの結果では、実施例4のT/NおよびT/Bは、それぞれ2.8および1.2と、組織を直接測定した実測値とは異なるものであるが、これは、PET画像では、中心部のみならず、平均化された周囲も含めて算出しているために値が小さく出るものであること、および実測では測定に用いる採取部による誤差が含まれるためであると考えられる。
また、18F−BPAの研究では、低分子化合物であることから、投与直後から腎臓に集積し始め、投与後数時間で体内から排出され、正常脳組織への送達は少なく、T/Nは3〜4程度である。本発明のPETイメージングにおけるT/Nは、18F−BPAと同等または下回っているが、治療には有効に用いられる程度のものである。また、肝臓の64Cu濃度は、10Bの結果と大きく異なる。BSHの体内動態をICP−AESで調べた研究では、静脈から投与直後は肝臓腎臓に多く集積するが、数時間後には腎臓への集積が大半となり、尿中への排泄が95%以上であることが報告されている。このことは、本願試験例4においても腫瘍以外の臓器にはほとんど集積していないことから、本発明のホウ素化合物やPETプローブにも当てはまるものと考えられる。したがって、試験例5における、64Cuの肝臓への集積は、腫瘍などに集積した本発明のPETプローブから、酵素やpH変化の影響により64Cuが脱離し、肝臓に集積したものと考えられるが、このレベルの配位力は治療に十分に用いることができる程度である。

Claims (5)

  1. メルカプトウンデカハイドロドデカボレート(BSH)に、0〜3個のアルギニンが連続したアミノ酸配列を付加し、さらに金属配位子を結合させたホウ素化合物。
  2. 金属配位子が、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、1,4,7−トリアザシクロノナン−1,4,7−三酢酸(NOTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、2−ナフチルエチルトリメチルアンモニウム(NETA(α−NETA))、1,4,7,10−テトラアザシクロテトラドデカン−1,4,7,10−テトラ(メチレンホスホン酸)(DOTP)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、(α,α’,α’’,α’’’)−テトラメチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTMA)およびフタル酸ジオクチル(DOP3)からなる群より選択される少なくとも1つである請求項1記載のホウ素化合物。
  3. アミノ酸配列が、2または3個の連続したアルギニンからなる請求項1または2記載のホウ素化合物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のホウ素化合物に放射性金属核種を配位させたPET用プローブ。
  5. 放射性金属核種が、64Cu、68Ga、85Sr、76Br、137Cs、52Mn、54Mn、63Zn、65Zn、59Fe、60Co、88Yおよび89Zrから選択される少なくとも1種の放射性金属核種である請求項4記載のPET用プローブ。
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