JP7453658B2 - ホウ素含有化合物およびそれを含む薬剤 - Google Patents

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Description

本発明は、ホウ素中性子捕捉療法に用いるホウ素含有化合物に関するものであり、またホウ素含有化合物を含む薬剤に関する。
ホウ素の安定同位体(以後「10B」とも記載する。)は、中性子線を照射することで、核分裂反応が進行して、α線を放出する。ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy:以下「BNCT」)は、その放出したα線によって細胞内のDNAに損傷を与え、がん細胞を死滅させる技術であり、放射線療法と化学療法を掛け合わせた新しいがん治療法である。
BNCTは、10BがDNAのより近い位置に存在することでその効果が向上するので、10Bを細胞内へ運搬することが重要となる。このことから、細胞内に侵入できるホウ素含有化合物およびそれを用いた薬剤(以下「ホウ素製剤」とも呼ぶ。)の発明は重要となる。
一方、BNCTのホウ素製剤は、これまでにBPA(ボロノフェニルアラニン)が使用されてきている。しかし、BPAは、1分子中に1個の10Bしか含んでおらず、細胞内に10Bを運搬する上で効率が悪い。
特許文献1には、希土類元素とホウ素を組み込んだ(1)式の含ホウ素希土類化合物とそれを有効成分として含有するホウ素中性子捕捉療法用組成物が開示されている。
なお、ここで、Rは希土類原子であり、xおよびyはそれぞれ0.5≦x≦1.5および0≦y≦3を満たす数である。
(1)式の化合物は1分子中に1つ以上のホウ素を組み込むことが可能である。しかし、多量のホウ素を組み込めるほどではない。
一方、10Bを多数含んでいる物質として、1分子中に12個の10Bが含まれるホウ素クラスター(Disodium Mercaptoundecahydrododecaborate:以下「BSH」と呼ぶ。)が知られている(特許文献2)。
特開2014-172822号公報 特開2018-016590号公報
BSHは、一度に大量の10Bを細胞内に運搬できるので新しいBNCTのためのホウ素製剤として期待できる。しかし、10Bは単独で細胞内に侵入することができないので、細胞内に運搬するための手段を必要とする。
また、ホウ素中性子捕捉療法では、中性子線を受けた10Bが短距離(およそ10μm)とはいえ、放射線を放出する。したがって、正常細胞へ10Bが取り込まれない、選択性が必要とされる。
通常この選択性は、EPR(Enhanced Permeability and Retention)効果を利用する。したがって、ホウ素含有化合物の粒度制御が重要となる。特許文献1ではEPR効果を発揮できる粒径を100から200nmの大きさとして、該当する大きさの粒径のものが開示されているが、より安定に粒径を制御する要請がある。
本発明は上記の課題に鑑みて想到されたものであり、粒径の制御が容易であって、10Bを多数含んだBSHを細胞内に侵入させることができるホウ素含有化合物を提供する。
より具体的に本発明に係るホウ素含有化合物は、
担持粒子にホウ素の安定同位体と、細胞透過性ペプチド(細胞内運搬ペプチド)と、凝集阻害剤を担持させ
前記凝集阻害剤はエチレングリコール鎖が28のポリエチレングリコールであり、
前記細胞透過性ペプチドと前記ホウ素の安定同位体とが7:3~3:7であり、
前記凝集阻害剤が前記細胞透過性ペプチドを介して担持粒子に担持されたことを特徴とする。
本発明に係るホウ素含有化合物は、担持粒子として金粒子を利用するため、ナノオーダーの粒径制御が極めて容易である。したがって、EPR効果を奏する粒子径の大きさのそろったホウ素含有化合物を得ることができる。
また、ホウ素の安定同位体には、BSH(ホウ素クラスター)を利用する。BSHは金粒子の表面に複数結合することが期待されるため、1つの粒子で多数のホウ素の安定同位体を細胞内に入れることができる。
また、担持粒子となる金粒子に細胞透過性ペプチドを担持させることで、ホウ素含有化合物は細胞侵入能を獲得することができる。
さらに、ホウ素含有化合物の外面には凝集阻害剤が担持されているので、ホウ素含有化合物は、凝集することなく、水に溶解させることができ、薬剤として利用することができる。
本発明に係るホウ素含有化合物の構成を示す模式図である。 ホウ素クラスター(BSH)の構造を示す構造式である。 担持粒子としての金の走査電子顕微鏡写真である。 修飾細胞透過性ペプチドの適合性を調べるために行った実験結果を示す写真である。 HeLa細胞にホウ素含有化合物を接触させた結果を示す写真である。図5(a)は接触前であり、図5(b)は接触後である。 ホウ素含有化合物において、ホウ素クラスター(BSH)と修飾細胞透過性ペプチド(サンプルP1)の比率を変えたホウ素含有化合物をHeLa細胞と接触させた結果を示す写真である。 修飾された金ナノ粒子の元素組成を調べたX線光電子分光法(XPS)のスペクトルを表すグラフである。 修飾された金ナノ粒子の元素組成を調べたエネルギー分散X線(EDX)スペクトルの結果を表す写真である。 修飾された金ナノ粒子のBSHおよび各サンプルペプチドの割合を変えたとき、および凝集阻害剤のPEGの鎖長を変えたときの複合体の凝集状態を525nmの吸光度で測定した結果を示すグラフである。
以下に本発明に係るホウ素含有化合物およびそれを用いた薬剤について説明を行う。なお、以下の説明は本発明の一実施の形態および一実施例についての例示であって、本発明は以下の説明に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下の実施の形態は変更することができる。
本発明に係るホウ素含有化合物は、担持粒子と、ホウ素の安定同位体と、細胞透過性ペプチド(細胞内運搬ペプチド)と、凝集阻害剤で構成されている。
ホウ素の安定同位体は、担持粒子と結合する必要がある。例えば、ホウ素を含む骨格がチオール基(-SH)を有していれば、自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer:「SAMs」)を担持粒子上で構成するので、好適である。特に担持粒子を金とした場合は、金粒子上に安定にSAMsを構成する。
さらに、ホウ素の安定同位体がBSHであればより好適である。BSHは、12個のホウ素を含みさらにチオール基が結合したナトリウム塩である。
担持粒子は、ホウ素の安定同位体とSAMsを構成する金属であれば金以外の金属であってもよい。例えば、銀、白金、銅等が挙げられる。担持粒子の粒径はホウ素含有化合物となった時に、EPR効果を奏するとされる20~200nm、より好ましくは50~150nmとなるような大きさが望ましい。
ホウ素の安定同位体は10B元素が含まれる状態であればよい。特に担持粒子に対してSAMsを構成できるように、チオール基を有する化合物の形で存在するものが好適に利用できる。BSHは、12個の10Bと1個のチオール基を有しているので、好適に利用することができる。
細胞透過性ペプチドは、細胞侵入能を有していれば特に限定されない。Tat、オリゴアルギニン、penetration、TP-10といったペプチドが好適に利用できる。中でも、Tatペプチド(「Tatタンパク質」といってもよい。)等は好適に利用できる。なお、細胞透過性ペプチドも、チオール基が結合していることが必要である。なお、これらのペプチドはN末端若しくはC末端を適宜改変して使用することができる。
凝集阻害剤は、本発明に係るホウ素含有化合物において担持粒子同士が凝集することを防止できることが必要である。また、生体適合性も必要とされる。そのような長鎖の炭化水素として、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸等が挙げられる。特にポリエチレングリコールは好適に利用することができる。
なお、凝集阻害剤は、細胞透過性ペプチドに結合して存在するのが好ましい。ホウ素含有化合物の外周を包み、粒子同士の凝集を阻害するからである。凝集阻害剤と細胞透過性ペプチドが結合したもの、若しくはさらにチオール基が結合したものを修飾細胞透過性ペプチドと呼ぶ。
本発明に係るホウ素含有化合物は、薬剤として使用することができる。投与方法としては、非経口投与が望ましく、静脈注射、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射、経皮投与、経鼻投与、経肺投与、経腸投与、口腔内投与および経粘膜投与などの投与のための製剤であることができる。たとえば、注射剤、経皮吸収テープ、エアゾール剤および坐剤などであることができる。また、これらの製剤とする際には、従来公知の技術を用いて調製され、製剤分野において通常使用される無毒性かつ不活性な担体もしくは賦形剤を含有することができる。
以下に本発明に係るホウ素含有化合物の製造方法の概略について説明する。まず、担持粒子として金ナノ粒子を選択した。別に、ポリエチレングリコール(PEG)と、チオール基(-SH基)を修飾したCPP(以下実施例ではCPPの部分はTatペプチド使用:全体で修飾細胞透過性ペプチド)とBSH(分子内に1個の-SH基をもつ)を用意した。これらを混合することによって、修飾細胞透過性ペプチドと、BSHがそれぞれAu-S配位共有結合によって吸着した金ナノ粒子を調製した。これを以下「修飾された金ナノ粒子」と呼ぶ。修飾された金ナノ粒子は本発明に係るホウ素含有化合物である。
このホウ素含有化合物(修飾された金ナノ粒子)は、BSHを持ったまま、細胞に侵入することができる。つまり、本発明に係るホウ素含有化合物は、細胞内にBSHを運搬することができる。
また、ホウ素含有化合物は表面をPEG(凝集防止剤)で保護しているので、凝集することなく水中で分散させることができる。
ホウ素含有化合物の構成を図1に示す。中心に担持粒子として金ナノ粒子がある。その周囲には、BSHとCPPがAu-S結合で結合している。CPPの末端には、PEGが連結している。
BSHは1分子中に12個の10Bと1個の-SH基を含んだホウ素クラスターである。図2にその化学構造式を示す。BSHはKatchem(プラハ、チェコ)より購入した。
金ナノ粒子は以下のように合成した。1mMテトラクロリド金(III)酸水溶液250mLを、丸底フラスコ内で攪拌しながら沸騰させ、そこに38.8mMクエン酸三ナトリウム水溶液25mLを加えた。その溶液を15分還流すると色に変化が起こり、淡い黄色から深い赤色へと変化した。その溶液を攪拌しながら、室温まで冷却した。
合成した金ナノ粒子は、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope, SEM)で観測し、直径は20.5nmと見積もった。図3はSEMでの観測写真である。スケールバーは100nmである。粒形は、滑らかな球状にかなり近いといえる。
PEG(ポリエチレングリコール)鎖とCys(システイン)を修飾したTatペプチド(PEG28-Tat-SH)はペプチド固相法により合成した。これが修飾細胞透過性ペプチドである。なお、PEG28の「28」は、後述するがポリエチレングリコール中のエチレングリコール鎖の結合数を表す。「-SH」は、チオール基である。修飾細胞透過性ペプチドは、細胞透過性ペプチドと凝集阻害剤が結合し、さらにシステインを結合させることでチオール基が結合したものである。細胞透過性ペプチドをTatとしたので、ここでは、以下修飾Tatペプチドと呼ぶ。なお、ここでTat部分のアミノ酸配列は、表1の配列番号1に示す。
Fmoc基(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基)の脱保護は、20%ピぺリジン/DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)溶液を加え、室温で7分間攪拌することにより行った。
DMFによる洗浄を行った後、HBTU/NMM試薬を用いて、1回のカップリング当たり室温で40分間攪拌することで、各アミノ酸をカップリングさせた。N末端のFmoc基を脱保護後、キャッピングを行った。
樹脂をDCM(ジクロロメタン)で洗浄し、94%TFA(トリフルオロ酢酸)、2.5%蒸留水、2.5%TIPS(トリイソプロピルシラン)、1%EDT(エタンジチオール)を用いて室温で1.5時間攪拌することにより、樹脂から切り出した。精製した修飾Tatペプチドは、MALDI-Tof MassおよびRP-HPLCにより同定および純度を確認した。
他にもコントロールの修飾TatペプチドとしてTat-PEG28-SHやTat-SH、PEG12-Tat-SH、PEG6-Tat-SH、PEG6×2-Tat-SH、PEG18-Tat-SH、PEG24-Tat-SH、も同様に合成した。これらをサンプルペプチドと呼び、それぞれサンプルP1、サンプルP2、サンプルP3、サンプルP4、サンプルP5、サンプルP6、サンプルP7、サンプルP8と呼ぶ。サンプルペプチドには、Tatペプチドのみで修飾したもの(サンプルP4)も含まれている。
作製したサンプルペプチドを表2に示す。表2で、右端からサンプルNo.、サンプルペプチドの略称、サンプルペプチドの構造を表す。なお、ここで「Ac」はアセチル基であり、「CHCO-」であり、「Sp」はエチレングリコール鎖のことで、化学構造式は、「-(CH-CH-O)-」である。したがって、「Sp2」は「-(CH-CH-O)-」を表す。また、ポリエチレングリコール中のエチレングリコール鎖の結合数を数字で示し、PEG6等とも表す。また、「C」はシステインを表す。また、Tatはアミノ酸配列を示す。このように、修飾Tatペプチド(サンプルペプチド)は、チオール基との結合およびPEGとの結合において、間に他の構造が含まれてもよい。
これら金ナノ粒子、BSHおよび各サンプルペプチドを水中で混合するときに形成される複合体の凝集状態を調べた。実験方法はまず、金ナノ粒子水溶液とBSH水溶液と各サンプルペプチド水溶液を混ぜ合わせ、最終濃度として、金ナノ粒子1.9nM、BSH405μM、サンプルペプチド45μMの水溶液とした。
溶液の調製方法は、金ナノ粒子溶液、サンプルペプチド水溶液、BSH水溶液を別々に用意し、先にサンプルペプチド水溶液とBSH水溶液を混ぜ合わせてから金ナノ粒子溶液に加えることで、上記のモル濃度とした。
攪拌時間は1晩、室温で行った。攪拌後の水溶液の画像を図4に示す。写真は左からa:金ナノ粒子のみ、b:サンプルP4(Tat-SH)、c:サンプルP1(Sp28-Tat-SH)、d:サンプルP2(Sp12-Tat-SH)、e:サンプルP3(Tat-Sp28-SH)、f:BSHのみで表面を修飾した金ナノ粒子、g:サンプルP4(Tat-SH)のみで表面を修飾した金ナノ粒子を用いた結果である。
その結果、PEG28-Tat-SHを加えたサンプルP1(c)のみ凝集が確認されなかった。画像ではサンプルP2(PEG12-Tat-SH:(d))、サンプルP3(Tat-PEG28-SH:(e))、サンプルP4(Tat-SH:(b))、サンプルP4のみ表面された金ナノ粒子(g)は完全に凝集し、チューブの底に沈殿した。なお、金ナノ粒子のみ(a)やBSHのみ表面修飾された金ナノ粒子(f)では、凝集は確認されない。
細胞内に10Bを搬送するには、水中に分散し溶液として扱えることが必要となる。すなわち、凝集を生じて沈殿してしまっては、細胞内に入ることはできない。したがって、ホウ素を細胞内に運搬させるためには、サンプルP1(PEG-Tat-SH)のように、粒子の最外殻に凝集阻害剤を配置するのがよいということがわかる。
次に、この修飾された金ナノ粒子が、細胞内に侵入できるかを確認するための試験を行った。培養したHeLa細胞に、サンプルP1の最終濃度が1μMになるように修飾した金ナノ粒子を加えて2時間インキュベーションを行った。修飾された金ナノ粒子の調整方法は、まず、サンプルP1とBSHの割合が1:9になるように混ぜ合わせた金ナノ粒子水溶液を調製し、この粒子を遠心分離によって沈殿させ、余剰の原料を取り除くため、上澄み液を除去した後、蒸留水で再分散させる操作を2回繰り返した。最後にもう一度遠心分離を行って沈殿させ、上澄み液を除去することで、修飾された金ナノ粒子の沈殿物を回収して、HeLa細胞が培養されている培地に加えた。2時間、37℃でインキュベーションした後、培地を洗浄して、細胞を暗視野顕微鏡で観察した。
その結果を図5に示す。図5(a)は、HeLa細胞のみの画像であり、図5(b)は、HeLa細胞に調整したホウ素含有化合物を加えたものである。スケールバーは50μmである。金ナノ粒子は表面プラズモン共鳴により、波長520nm付近の光を吸収し、赤色に見える。図5(b)に示すように、修飾した金ナノ粒子を担持粒子とするホウ素含有化合物を加えたHeLa細胞は、赤く色づいた。このことから修飾された金ナノ粒子は細胞内へ侵入したことがわかる。この高い細胞膜透過性は、CPPによって引き起こされ、同時に多量のBSHを細胞内へ運搬することに成功した。
次に、この修飾された金ナノ粒子のBSHおよび各サンプルペプチドの割合を変えたとき、細胞内に侵入できるかを確認するための試験を行った。培養したHeLa細胞に、金ナノ粒子が0.76nMになるように修飾した金ナノ粒子を加えて2時間インキュベーションを行った。修飾された金ナノ粒子の調整方法は、まず、サンプルP1とBSHの割合が10:0、9:1、7:3、5:5、3:7、1:9、0:10になるように混ぜ合わせた金ナノ粒子水溶液を調製し、この粒子を遠心分離によって沈殿させ、余剰の原料を取り除くため、上澄み液を除去した後、蒸留水で再分散させる操作を2回繰り返した。最後にもう一度遠心分離を行って沈殿させ、上澄み液を除去することで、修飾された金ナノ粒子の沈殿物を回収して、HeLa細胞が培養されている培地に加えた。
その結果を図6に示す。図6(a)から(h)はそれぞれ各比率毎の明視野画像(左側)と暗視野画像(右側)を示す。また、明視野画像と暗視野画像はそれぞれ同一倍率である。明視野画像には、スケールバー(50μm)を示した。図6(a)はHeLa細胞のみの画像であり、図6(b)~(h)は、HeLa細胞に、調整したサンプルP1とBSHの割合が10:0(b)、9:1(c)、7:3(d)、5:5(e)、3:7(f)、1:9(g)、0:10(h)のホウ素含有化合物(修飾された金ナノ粒子)を加えたものである。図5(d)、(e)、(f)のHeLa細胞は赤く色づいた。図(b)、(c)および図(g)、(h)のHaLa細胞は赤く色づかなかった。
粒子の最外殻に凝集阻害剤が密集してしまうと、CPPの細胞表面への接触をも阻害されてしまい細胞膜透過性が失われてしまう。また、金ナノ粒子に表面修飾されたサンプルP1の割合が少なくなっても細胞膜透過性が失われてしまう。従って、ホウ素含有化合物(修飾された金ナノ粒子)の高い細胞膜透過性は、サンプルP1とBSHの割合に依存することがわかる。
上記の実験では、サンプルP1のペプチドについては、BSHとの比が7:3~3:7の時に、細胞膜透過性を有しているといえる。
次に、修飾された金ナノ粒子の元素組成を確認するための試験を行った。実験方法はまず、金ナノ粒子水溶液とBSH水溶液とサンプルP1水溶液を混ぜ合わせ、最終濃度として、金ナノ粒子1.9nM、BSH405μM、サンプルP1が45μMの水溶液とした。水溶液中のこの粒子を遠心分離によって沈殿させ、余剰の原料を取り除くため、上澄み液を除去した後、蒸留水で再分散させる操作を2回繰り返した。最後にもう一度遠心分離を行って沈殿させ、上澄み液を除去することで、修飾された金ナノ粒子の沈殿物を回収して、X線光電子分光法(XPS)スペクトルを測定した。
その結果を図7に示す。いずれのグラフも横軸は結合エネルギー(eV)であり、縦軸は強度(任意単位)である。また、図7(a)はAu元素の4f軌道の電子、(b)はC元素の1s軌道の電子、(c)はO元素の1s軌道の電子、(d)はN元素の1s軌道の電子、(e)はB元素の1s軌道の電子、(f)はS元素の2p軌道の電子、(g)はSi元素の2軌道の電子のXPSスペクトルである。
図7(g)より、測定基板として用いたSi元素のピークが現われていないことから、基板に修飾された金ナノ粒子が存在することがわかる。図7(a)より、修飾された金ナノ粒子にAu元素が含まれていることがわかり、金ナノ粒子の存在が確認される。図7(b)より、修飾された金ナノ粒子に3種類のC元素が含まれていることがわかり、ペプチドのカルボニル炭素と通常の炭素、およびPEGの-O-CH-の炭素の存在が確認される。
図7(c)より、修飾された金ナノ粒子に2種類のO元素が含まれていることがわかり、ペプチドのカルボニル酸素とPEGの酸素元素の存在が確認される。図7(d)より、修飾された金ナノ粒子にN元素が含まれていることがわかり、ペプチドのアミド結合の窒素の存在が確認される。図7(e)より、修飾された金ナノ粒子にB元素が含まれていることがわかり、BSHの存在が確認される。図7(f)より、修飾された金ナノ粒子にS元素が含まれていることがわかり、そのピーク位置より、Au-S結合の存在が確認される。
次に、修飾された金ナノ粒子の元素組成を確認するための試験を行った。実験方法はまず、金ナノ粒子水溶液とBSH水溶液とサンプルP1水溶液を混ぜ合わせ、最終濃度として、金ナノ粒子1.9nM、BSH405μM、サンプルP1が45μMの水溶液とした。水溶液中のこの粒子を遠心分離によって沈殿させ、余剰の原料を取り除くため、上澄み液を除去した後、蒸留水で再分散させる操作を2回繰り返した。最後にもう一度遠心分離を行って沈殿させ、上澄み液を除去することで、修飾された金ナノ粒子の沈殿物を回収して、エネルギー分散X線(EDX)スペクトルを測定した。
その結果を図8に示す。図8(a)は、明視野画像である。図8(b)は、修飾された金ナノ粒子1個の明視野画像である。図8(c)は、図8(b)の金元素画像である。同様に、図8(d)は、図8(b)のホウ素元素画像であり、図8(e)は酸素元素画像であり、図8(f)は、硫黄元素画像であり、図8(g)は、窒素元素画像であり、図8(h)は、炭素元素画像である。図8(c)から図8(h)までの写真には、図8(b)と同じ位置に、ぼんやりとした像が確認できる。
図8(a)の明視野画像では、複合体と複合体の間に隙間があることがわかり、サンプルP1が金ナノ粒子に表面修飾され、複合体間の接触が防がれていることがわかる。また、複合体の元素成分である金元素(図8(c))、ホウ素元素(図8(d))、酸素元素(図8(e))、硫黄元素(図8(f))、窒素元素(図8(g))、炭素元素(図8(h))がそれぞれ確認された。
次に、この修飾された金ナノ粒子のBSHおよび各サンプルペプチドの割合を変えたとき、および凝集阻害剤のPEGの鎖長を変えたときの複合体の凝集状態を調べた。金ナノ粒子の525nmの吸光度を測定した。
その結果を図9に示す。図9は横軸がサンプルを表し、縦軸は吸光度(無単位)を示す。横軸では、金ナノ粒子単体(「AuNP」と記した。)、各サンプルペプチドとBSHの比率が、9:1、7:3、5:5、3:7、1:9のグループが示されている。また、各グループにおいて、サンプル4から8、そして1の順でPEGの鎖長が長くなる。なお、各グループ毎に各サンプルペプチドをP4、P5、P6、P7、P8、P1を単に「456781」と矢印で示した。
各サンプルペプチドとBSHの割合のいずれにおいても、凝集阻害剤であるPEGの鎖長が長くなると、吸光度が高くなり、凝集が防がれることがわかった。また、各サンプルペプチドとBSHの割合において、各サンプルペプチドの割合が増えると、凝集が防がれることもわかった。
PEGの鎖長は、18以上(サンプルP7)で最も好ましく複合体の凝集を防ぐことがわかった。また、サンプルP1(Sp28-Tat-SH)では、サンプルペプチドP1:BSH=7:3以上で最も好ましく複合体の凝集を防ぐことがわかり、サンプルP7(Sp18-Tat-SH)では、サンプルペプチドP7:BSH=7:3以上で、サンプルP8(Sp24-Tat-SH)では、サンプルペプチドP1:BSH=5:5以上で最も好ましく複合体の凝集を防ぐことがわかる。なお、ここで「以上」とは、サンプルペプチドの割合が高いという意味である。
本発明に係るホウ素含有化合物は、ホウ素中性子捕捉療法の際に、10Bを腫瘍細胞内に運搬する薬剤として好適に利用することができる。

Claims (7)

  1. 担持粒子にホウ素の安定同位体と、細胞透過性ペプチドと、凝集阻害剤を担持させ
    前記凝集阻害剤はエチレングリコール鎖が28のポリエチレングリコールであり、
    前記細胞透過性ペプチドと前記ホウ素の安定同位体とが7:3~3:7であり、
    前記凝集阻害剤が前記細胞透過性ペプチドを介して担持粒子に担持されたことを特徴とするホウ素含有化合物。
  2. 前記担持粒子の粒径が20~200nmであることを特徴とする請求項1に記載されたホウ素含有化合物。
  3. 前記ホウ素の安定同位体は、チオール基で修飾されたホウ素クラスターであることを特徴とする請求項1または2の何れかの請求項に記載されたホウ素含有化合物。
  4. 前記細胞透過性ペプチドがTatタンパク質であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載されたホウ素含有化合物。
  5. 前記担持粒子は金であることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載されたホウ素含有化合物。
  6. 前記ホウ素の安定同位体と、前記細胞透過性ペプチドは、チオール基によって前記担持粒子と結合していることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載されたホウ素含有化合物。
  7. 請求項1乃至の何れか一項に記載されたホウ素含有化合物を含む薬剤。
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Journalof Controlled Release,2017年,Vol.254,p.1-7

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