図1は、本発明の実施において好適な超音波診断装置(本超音波診断装置)の全体構成図である。プローブ10は、超音波を送受する超音波探触子であり、被検体(生体)内の血管を含む診断領域で超音波ビームを走査する。本超音波診断装置において、プローブ10は、例えば、リニアプローブが好適であり、電子的走査により血管の長軸方向に沿って超音波ビームを移動させる。なお、リニアプローブとは異なる走査態様のプローブ10が利用されてもよいし、電子的走査または電子的走査と機械的走査の組み合わせにより診断領域内で超音波ビームを立体的に走査するプローブ10が利用されてもよい。
送受信部12は、プローブ10が備える複数の振動素子を送信制御して送信ビームを形成し、送信ビームを診断領域内で走査させる。また、送受信部12は、複数の振動素子から得られる複数の受信信号を整相加算処理して受信ビームを形成し、診断領域内の全域から受信信号を収集する。つまり、送受信部12は、送信ビームフォーマと受信ビームフォーマの機能を備えている。なお、超音波の受信信号を得るにあたり、送信開口合成等の技術が利用されてもよい。
画像形成処理部20は、診断領域内から収集される受信信号に基づいて、超音波画像用のデータ(画像データ)を形成する。画像形成処理部20は、例えば、超音波の受信信号に対して、検波処理やフィルタ処理やAD変換処理や座標変換処理(スキャンコンバート処理)等を施すことにより、診断領域のBモード画像(断層画像)データを形成する。例えば、血管の長軸断面を含んだ断層画像の画像データが形成される。
なお、血管の長軸断面を含んだ断層画像のBモード画像データに加えて、その断層画像内のドプラ情報が得られてもよい。そして、断層画像内の各点における速度を表すドプラ画像データが形成されてもよい。
本超音波診断装置は、血流反応性血管拡張(FMD:Flow Mediated Dilatation)による血管内皮機能評価において好適な機能を備えている。FMDによる血管内皮機能評価においては、安静時から駆血解除後に亘って約10分間程度の診断期間内で、複数時相に亘って各時相ごとに画像形成処理部20がBモード画像データを形成する。
画像形成処理部20において形成されたBモード画像データは、表示処理部60に送られ、そのBモード画像データに対応した画像が表示部62に表示される。つまり安静時から駆血解除後に亘る診断期間内における複数時相のBモード画像、すなわち、血管の断層画像に関する動画像が表示部62に表示される。
また、画像形成処理部20において形成されたBモード画像データは、画像記憶部22に記憶される。画像記憶部22には、FMDの診断期間内における全時相のBモード画像データが記憶されてもよいし、診断期間内における注目期間に関する複数時相のBモード画像データが選択的に記憶されてもよい。
図2は、FMDにおける診断期間を説明するための図である。図2には、FMDの診断中における血管径の変化が示されている。なお、横軸が診断時刻(計測時刻)であり縦軸が血管径を示している。
本超音波診断装置を利用したFMDの診断においては、例えば上腕動脈の血管が診断対象とされ、被検者の安静時状態から血管のBモード画像データが形成される。図2において、期間Iが安静時状態である。
次に、被検者の前腕部がカフなどで駆血される。図2において、期間IIが駆血状態である。血管径は、駆血直後から徐々に減少した後、ほぼ一定値を維持する。駆血は、例えば5分程度行われる。駆血状態の期間IIにおいて、血管のBモード画像データが形成されてもよい。
そして、駆血状態の後にカフが開放される。図2において、期間IIIがカフ開放後の期間である。カフが開放されると、血管径は、開放直後から例えば30秒から40秒程度経過した時刻T1ごろから拡大をはじめる。そして血管径が最大値に達した後、徐々に減少して安静時状態の血管径に戻る。カフ開放後の期間IIIにおいても血管のBモード画像データが形成される。
本超音波診断装置では、期間Iから期間IIIまでの全期間に亘って、各時相ごとに血管のBモード画像データが形成され、血管の断層画像に関する動画像が表示部62(図1)に表示される。
さらに、本超音波診断装置は、FMDの診断結果として、%FMD(パーセントFMD)を算出する。%FMDは次式により算出される。
[数1]%FMD=((開放後最大径−安静時径)/安静時径)×100
つまり、%FMDの算出においては、安静時における血管径である安静時径と、カフを開放した後の血管径の最大値である開放後最大径が必要となる。
そこで、本超音波診断装置は、図2の期間Iから期間IIIまでの全診断期間のうち、安静時状態の期間Iにおける10心拍程度の期間と、カフ開放後の期間IIIにおける最大血管径を含む期間を注目期間として、注目期間内における複数時相のBモード画像データを画像記憶部22(図1)に記憶する。
図1に戻り、制御部70は、例えば、操作デバイス72を介して入力されるユーザ(検査者)の操作に応じて、注目期間内における複数時相のBモード画像データを画像記憶部22に記憶する。
FMDの診断において、検査者は、まず、被検者の安静時状態において、操作デバイス72を操作して、安静時状態における複数時相のBモード画像データを記憶する指示を入力する。この操作を受け、制御部70は、例えば、予め設定されている記録時間(例えば10秒程度)のBモード画像データを画像記憶部22に記憶する。
なお、被検体内の拍動(心拍)の計測結果である生体信号データが得られている場合には、生体信号データを参照して、例えば、予め設定されている心拍数(例えば10心拍程度)のBモード画像データを画像記憶部22に記憶するようにしてもよい。
安静時状態における診断の後に、被検者の前腕部がカフなどで駆血され、期間IIの駆血状態における診断が行われる(図2参照)。但し、%FMDの算出においては期間IIの駆血状態での血管径が不要であるため、この期間IIのBモード画像データは、画像記憶部22に記憶しなくてもよい。もちろん、参考データとして、期間IIにおけるBモード画像データを画像記憶部22に記憶するようにしてもよい。
駆血状態の後にカフが開放されると、検査者は、表示部62に表示されるBモード画像つまり血管の断層画像に関する動画像を見ながら、例えば血管径が最大となるタイミングで操作デバイス72を操作して、最大血管径を含む期間(最大径期間)における複数時相のBモード画像データを記憶する指示を入力する。この操作を受けて、制御部70は、例えば、予め設定されている記録時間(例えば数十秒程度または数十心拍程度)だけ、操作のタイミングから遡った期間のBモード画像データを画像記憶部22に記憶する。
つまり、動画像で最大径を確認した直後のタイミングでユーザが操作するため、そのタイミングから数十秒だけ遡って、最大径が含まれるようにBモード画像データが記憶される。もちろん、ユーザ操作のタイミングよりも時間的に前のBモード画像データに加えてそのタイミングよりも時間的に後のBモード画像データが例えば数十秒程度記憶されてもよい。
また、駆血状態の後にカフが開放され、血管径が拡大をはじめる時刻T1(図2参照)を含む開放期間におけるBモード画像データを画像記憶部22に記憶するようにしてもよい。また、カフ開放により血管がどれだけずれたのかを後にユーザが確認できるように、カフ開放前の期間から、Bモード画像データを画像記憶部22に記憶するようにしてもよい。
このように、本超音波診断装置は、安静時から駆血解除後に亘って約10分間ほどの長期間の診断期間内で、FMDの診断において必要とされる最小限のBモード画像データを選択的に画像記憶部22に記憶することができる。そのため、診断期間の全Bモード画像データを記憶する場合に比べて、画像記憶部22の記憶容量を大幅に小さくすることができる。また、FMDの診断において必要とされる最小限のBモード画像データが選択されているため、画像記憶部22に記憶されたデータを利用する後段の処理における負荷も軽減される。
診断カーソル設定部30は、各時相のBモード画像データ内において、血管の位置に診断カーソルを設定する。診断カーソル設定部30における処理については、後にさらに詳述する。
血管診断部40は、各時相のBモード画像データ内において、その画像データに基づいて血管壁の位置を特定し、診断カーソルが設定された位置における血管径を測定する。血管診断部40は、例えば、特許文献1(特開2014−50536号公報)に説明される処理により血管壁の位置を特定する。つまり、血管診断部40は、各時相のBモード画像データ内において、血管の内腔に対応した内腔領域を特定する内腔特定処理と、内腔領域から血管外側に向かう画素値の変化に基づいて血管の内膜を特定する内膜特定処理を実行し、内膜の位置を血管壁の位置とする。血管壁は、浅い側の前壁と深い側の後壁のそれぞれについて特定される。そして、診断カーソル内において得られる前壁と後壁の間の距離が血管径とされる。
表示処理部60は、複数時相のBモード画像データに基づいて、血管径の計測に係る表示画像、特に、FMDによる血管内皮機能評価に係る表示画像を形成する。表示処理部60は、FMDによる血管内皮機能評価に係る表示画像として、Bモード画像、Aモード波形、Mモード画像、血管径変化波形、%FMD(パーセントFMD)の算出結果などを含んだ表示画像を形成する。表示処理部60において形成された表示画像は、表示部62に表示される。
制御部70は、本超音波診断装置内を全体的に制御する。制御部70による全体的な制御には、操作デバイス72を介してユーザから受け付けた指示も反映される。
図1に示す構成(符号を付した各部)のうち、送受信部12,画像形成処理部20,診断カーソル設定部30,血管診断部40,表示処理部60の各部は、例えば電気電子回路やプロセッサ等のハードウェアを利用して実現することができ、その実現において必要に応じてメモリ等のデバイスが利用されてもよい。また、上記各部に対応した機能が、CPUやプロセッサやメモリ等のハードウェアと、CPUやプロセッサの動作を規定するソフトウェア(プログラム)との協働により実現されてもよい。
画像記憶部22は、例えば、半導体メモリやハードディスク等の記憶デバイスにより実現することができる。表示部62の好適な具体例は液晶ディスプレイ等であり、操作デバイス72は、例えばマウス、キーボード、トラックボール、タッチパネル、その他のスイッチ類等のデバイスで構成される。制御部70は、例えばCPUやプロセッサやメモリ等のハードウェアと、CPUやプロセッサの動作を規定するソフトウェア(プログラム)との協働により実現することができる。
本超音波診断装置の全体構成は以上のとおりである。次に、本超音波診断装置により実現される機能の具体例について説明する。なお、図1に示した構成(符号を付した各部)については、以下の説明において図1の符号を利用する。
図3は、FMDによる血管内皮機能評価に係る表示画像の具体例を示す図である。図3に示す表示画像は、Bモード画像(B)、Aモード波形(A)、Mモード画像(M)、血管径変化波形(D)、血流速変化波形(V)を含んでおり、表示処理部60により形成されて表示部62に表示される。
Bモード画像(B)は、各時相のBモード画像データに対応した画像であり、Bモード画像内には、血管の長軸断面が映し出されている。画像記憶部22に記憶された複数時相のBモード画像のうち、例えばユーザ(検査者)によって指定された時相のBモード画像が表示される。もちろん、複数時相のBモード画像が例えば時相順に次々に表示されてもよい。
なお、Bモード画像内には、診断カーソル設定部30により設定される診断カーソルDCが表示されている。血管診断部40は、診断カーソルDCが設定された位置における画像データに基づいて血管壁の位置を特定し、血管壁の位置に基づいて血管径を測定する。
Aモード波形(A)は、Bモード画像内に指定された診断カーソルDC内における深さ方向の輝度値の変化を示す波形である。例えば、診断カーソルDC内の代表ライン(1本の超音波ビーム)に対応したAモード波形が形成される。また、診断カーソルDC内の複数ライン、例えば、診断カーソルDCを構成する10本のライン(10本の超音波ビーム)から得られる輝度値の平均値により、Aモード波形が形成されてもよい。
また、Aモード波形内に、血管診断部40において特定された血管壁の位置を示す血管壁マーカmを表示してもよい。血管壁は、浅い側の前壁と深い側の後壁のそれぞれについて特定され、例えば、前壁と後壁に対応した2つの血管壁マーカmがAモード波形内に表示される。これら2つの血管壁マーカmの間の距離が血管径となる。
Mモード画像(M)は、診断カーソルDCから得られるライン画像を複数時相に亘って時間軸方向に沿って並べた画像である。例えば、時相1、時相2、時相3、・・・の順に、複数時相のBモード画像データの各々から次々に得られるライン画像に基づいて、Mモード画像が形成される。なお、ライン画像は、診断カーソルDC内の代表ライン(1本の超音波ビーム)に対応した画像でもよいし、診断カーソルDC内の複数ライン、例えば、診断カーソルDCを構成する10本のライン(10本の超音波ビーム)から得られる輝度値の平均値の画像でもよい。また、Mモード画像内に、血管診断部40において特定された血管壁の位置を示す血管壁マーカを表示してもよい。
血管径変化波形(D)は、血管診断部40において計測される血管径の時間変化を示す波形である。つまり、横軸を時間軸、縦軸を血管径の値として、各時相ごとに算出される血管径を示したものが血管径変化波形である。
なお、血管径変化波形の時間軸とMモード画像の時間軸は、互いに揃えて表示される。また、血管径変化波形とMモード画像内には、時相カーソルTが表示される。時相カーソルTは、例えば、操作デバイス72を利用してユーザが所望の時相に移動させることができ、時相カーソルTに対応した時相のBモード画像が表示される。また、例えば、血管径が最大となる時相に時相カーソルTを表示させてもよいし、血管径が最小となる時相や安静時の時相を示すカーソルが表示されてもよい。
さらに、表示画像内には、%FMD(パーセントFMD)の算出結果や血管径の値なども表示される。%FMDの値(10.7%)は、安静時における血管径である安静時径とカフを開放した後の血管径の最大値である開放後最大径に基づいて、既に説明した数1式により算出される。
そして、血管径として、例えば、安静時の血管径(3.92mm)と最大値の血管径(4.34mm)が表示される。また、最大時と安静時の血管径の差分値(0.42mm)が表示されてもよい。
なお、ドプラ画像データが得られている場合には、そのドプラ画像データに基づいて血管内の血流速や血流量が算出されてもよい。血流速や血流量の算出には、例えば参考文献(特開平9−248304号公報)に記載された技術を利用することが望ましい。
例えば、Bモード画像内に指定された診断カーソルDC内において、血管壁と血管壁の間、つまり血管内における複数点のドプラ情報に基づいて、ライン(超音波ビーム)に直交する方向の速度が算出され、複数点における速度の平均値が血流速とされる。また、複数点における速度の平均値である血流速と、血管壁と血管壁の間の距離である血管径から血流量が算出される。
血流速変化波形(V)は、血流速の時間変化を示す波形である。つまり、横軸を時間軸とし、縦軸を血流速の値として、各時相ごとに算出される血流速を示したものが血流速変化波形である。血流速変化波形に代えて、または、血流速変化波形と共に、血流量変化波形を表示するようにしてもよい。なお、血流速変化波形の時間軸と血管径変化波形の時間軸とMモード画像の時間軸は、互いに揃えて表示される。
さらに、表示画像内には、%Vel.(パーセントVel.)の算出結果や血流速の値なども表示される。%Vel.の値(124.4%)は、安静時における血流速(安静時血流速)とカフを開放した後の血流速の最大値である最大血流速に基づいて、例えば次式により算出される。
[数2]%Vel.=((最大血流速−安静時血流速)/安静時血流速)×100
次に、診断カーソル設定部30による診断カーソルDCの設定について詳述する。診断カーソル設定部30は、基準時相のBモード画像内において血管の位置に診断カーソルDCを設定し、その血管の位置が基準時相からずれてしまった場合に、そのずれに応じて、診断時相のBモード画像内において血管の位置に診断カーソルDCを設定し直す。
図4は、診断カーソルの設定例1を示す図である。図4には、診断対象となる血管の長軸断面を含んだBモード画像が図示されている。
診断カーソル設定部30は、基準時相のBモード画像内において、例えば、安静時状態における時相のBモード画像内に基準診断カーソルDCbを設定する。例えば、安静時状態における時相のBモード画像を確認したユーザが、操作デバイス72を利用して、そのBモード画像内において診断対象となる血管の位置に基準診断カーソルDCbを移動させて所望の位置で決定操作を行うことにより、基準診断カーソルDCbが設定される。
血管診断部40は、安静時状態における時相のBモード画像内において、そのBモード画像の画像データに基づいて血管壁の位置を特定し、基準診断カーソルDCbが設定された位置における血管径を測定する。
FMDにおいて、安静時の血管径と駆血解除後の血管径を比較する場合には、安静時と駆血解除後において同一部位の血管径を計測することが望ましい。ところが、駆血解除のためにカフを開放すると、被検者の前腕部分が動いてしまい、安静時と駆血解除後における血管径の計測位置がずれてしまう可能性がある。つまり、駆血解除後の診断時相において血管の位置が安静時状態からずれてしまう可能性がある。
そこで、診断カーソル設定部30は、診断時相のBモード画像内において、安静時状態からの血管の位置のずれに応じて、基準診断カーソルDCbの位置から診断カーソルDCを移動させる。例えば、所望の診断時相のBモード画像内において血管の位置のずれを確認したユーザが、操作デバイス72を利用して、そのBモード画像内において診断カーソルDCを走査方向に沿って移動させて決定操作を行い、基準診断カーソルDCbと同じ血管の位置に診断カーソルDCを設定する。
血管診断部40は、診断時相のBモード画像内において、そのBモード画像の画像データに基づいて血管壁の位置を特定し、診断カーソルDCが設定された位置における血管径を測定する。これにより、安静時状態の血管の位置と同じ位置において血管径を測定することが可能になり、例えばFMDにおける診断の精度が高められる。
なお、診断カーソルDCを設定する場合に、診断時相のBモード画像が表示されるが、その診断時相のBモード画像内に基準診断カーソルDCbを表示させることが望ましい。
ユーザは、例えば、駆血解除後における複数の診断時相のBモード画像について、例えば時相の古い順に、次々に診断時相のBモード画像を確認し、血管の位置が安静時からずれている診断時相のBモード画像を特定する。そして、その特定した診断時相のBモード画像内に診断カーソルDCが設定され、その診断カーソルDCを利用して、その診断時相以降における血管径が計測される。その診断時相以降において、さらに血管の位置がずれた場合には、診断カーソルDCが再設定されてもよい。
図5は、診断カーソルの設定例2を示す図である。図5には、診断対象となる血管の長軸断面を含んだBモード画像が図示されている。
診断カーソル設定部30は、図4の具体例1の場合と同様に、基準時相のBモード画像内において、例えば安静時状態における時相のBモード画像内に基準診断カーソルDCbを設定する。
図5の具体例2では、基準時相のBモード画像内において、例えばユーザからの操作に応じて、特徴的な画像箇所に参照マークRMが設定される。例えば、血管の近傍における筋層などの部位を取り囲むように参照マークRMが設定される。さらに、所望の診断時相のBモード画像を確認したユーザが、そのBモード画像内において、基準時相と同じ特徴的な画像箇所に参照マークRMを設定する。
診断カーソル設定部30は、基準時相における参照マークRMの位置と、診断時相における参照マークRMの位置に基づいて、基準時相と診断時相における参照マークRMの移動量(移動ベクトル)を導出する。そして、導出した移動量に応じて、基準診断カーソルDCbの位置から診断カーソルDCを走査方向に沿って移動させる。これにより、基準診断カーソルDCbと同じ血管の位置に診断カーソルDCが設定される。
図6は、診断カーソルの設定例3を示す図である。図6には、診断対象となる血管の長軸断面を含んだBモード画像が図示されている。
図6の具体例3では、深さ方向における範囲を限定した基準診断カーソルDCbが設定されている。例えば、安静時状態における時相のBモード画像を確認したユーザが、操作デバイス72を利用して、そのBモード画像内において診断対象となる血管の位置に基準診断カーソルDCbを移動させて所望の位置で決定操作を行うことにより、基準診断カーソルDCbが設定される。
また、図6の具体例3では、基準時相のBモード画像内において、例えばユーザからの操作に応じて、特徴的な画像箇所に参照マークRMが設定される。例えば、血管の近傍における筋層などの部位を取り囲むように参照マークRMが設定される。さらに、所望の診断時相のBモード画像を確認したユーザが、そのBモード画像内において、基準時相と同じ特徴的な画像箇所に参照マークRMを設定する。
診断カーソル設定部30は、基準時相における参照マークRMの位置と、診断時相における参照マークRMの位置に基づいて、基準時相と診断時相における参照マークRMの移動量(移動ベクトル)を導出する。そして、導出した移動量に応じて、基準診断カーソルDCbの位置から診断カーソルDCを走査方向と深さ方向に二次元的に移動させる。これにより、基準診断カーソルDCbと同じ血管の位置に診断カーソルDCが設定される。なお、必要に応じて、診断カーソルDCの深さ方向の長さが調整されてもよい。
また、診断カーソル設定部30は、基準時相のBモード画像データと診断時相のBモード画像データとの比較に基づいて、基準時相のBモード画像内において基準診断カーソルDCbが設定された血管の位置を、診断時相のBモード画像内において探索することにより、その探索した血管の位置に診断カーソルDCを設定し直してもよい。
例えば、相関演算等に基づくパターンマッチング処理により、基準時相におけるテンプレート内の画像データに一致又は類似する画像データを、診断時相のBモード画像内において探索し、探索された画像データの位置にテンプレートを移動させる。そして、テンプレートの移動量(移動ベクトル)に応じて、基準診断カーソルDCbの位置から診断カーソルDCを走査方向と深さ方向に二次元的に移動させてもよい。なお、パターンマッチング処理において、参照マークRMをテンプレートとしてもよいし基準診断カーソルDCbをテンプレートとしてもよい。
さらに、例えば、相関演算等に基づくパターンマッチング処理により、複数の診断時相に亘って、各時相ごとにBモード画像内において診断カーソルDCの位置が探索されてもよい。これにより、複数の診断時相に亘って各時相ごとに好適な診断カーソルDCを設定することが可能になる。なお、複数の診断時相に亘ってパターンマッチング処理により診断カーソルDCを設定する場合には、パターンマッチングの精度が比較的高い複数の診断時相のみに診断カーソルDCを設定するようにしてもよい。これにより、比較的精度の高い時相のみを利用して血管径の測定を行うことが可能になる。
また、基準時相のBモード画像内において血管に対して基準マーカを設定し、その基準マーカを利用して血管の位置のずれが確認されてもよい。
図7は、基準マーカの具体例1を示す図である。図7(A)には、安静時状態における血管BVのBモード画像が図示されており、このBモード画像を基準時相の画像として、基準マーカMが設定される。基準マーカMは、複数の特徴点(P1〜P6)に基づいて形成される。例えば、安静時状態のBモード画像が表示部62に表示され、ユーザが、表示部62に表示される安静時状態のBモード画像を見ながら、血管BVの前壁FWと後壁BWの位置に、複数の特徴点(P1〜P6)を設定する。ユーザは、例えばマウスやトラックボールなどの操作デバイス72を利用して、Bモード画像内における複数の特徴点(P1〜P6)の位置を指定する。そして、2つの特徴点間を直線で結ぶことにより、基準マーカMが生成される。
図7(B)には、診断時相における血管BVのBモード画像が図示されている。図7(B)に示す診断時相のBモード画像は、例えば、FMDによる血管内皮機能評価においてカフを開放した後の断層画像である。図7(B)では、例えば被検者の前腕部分が動いてしまい、血管BVの位置が安静時の位置からずれている。
そのため、図7(A)において血管BVの前壁FWと後壁BWの位置に設定されていた基準マーカMが、図7(B)のBモード画像内において、血管BVからずれてしまっている。
図7(B)に示す状態の場合に、ユーザ(測定者)は、表示部62に表示される図7(B)のBモード画像を見ながら、図7(A)のように血管BVの前壁FWと後壁BWに重なるように基準マーカMを移動させる。その移動量(移動ベクトル)により、血管の位置のずれが確認され、診断カーソル設定部30は、確認されたずれ(移動量)に応じて、基準診断カーソルDCb(図4〜図6)の位置から診断カーソルDC(図4〜図6)を移動させる。これにより、血管径を測定する位置が修正され、望ましくは、安静時と同じ位置において血管径を測定することが可能になる。
図8は、基準マーカの具体例2を示す図である。図8(A)には、安静時状態における血管BVのBモード画像が図示されており、このBモード画像を基準時相の画像として、基準マーカM1,M2が生成される。図8(A)に示す基準マーカM1は安静時状態における前壁FWと後壁BWの境界線であり、基準マーカM2は血管BVの近傍における他組織の位置に設定される。
例えば、図8(A)のBモード画像内において、エコー値(輝度値)の大きさに基づいて、前壁FWの境界と後壁BWの境界が検出され、検出された境界に沿うように基準マーカM1が形成される。また、例えば、図8(A)のBモード画像内において比較的エコー値の大きな組織が検出され、その組織の位置に対して基準マーカM2が設定される。
図8(B)には、診断時相における血管BVのBモード画像が図示されている。図8(B)に示す診断時相のBモード画像内において、血管BVの位置が安静時の位置からずれている。
そのため、図8(A)において血管BVの前壁FWと後壁BWの位置に設定されていた基準マーカM1が、図8(B)のBモード画像内において、血管BVからずれてしまっている。また、図8(A)において組織に設定されていた基準マーカM2が、図8(B)のBモード画像内において、その組織の位置からずれてしまっている。
図8(B)に示す状態の場合に、ユーザ(測定者)は、表示部62に表示される図8(B)のBモード画像を見ながら、図8(A)のように血管BVの前壁FWと後壁BWに重なるように基準マーカM1を移動させる。なお、ユーザは、表示部62に表示される図8(B)のBモード画像を見ながら、図8(A)のように組織に重なるように、基準マーカM2を移動させてもよい。そして、基準マーカM1と基準マーカM2の少なくとも一方に関する移動量(移動ベクトル)により、血管の位置のずれが確認され、診断カーソル設定部30は、確認されたずれ(移動量)に応じて、基準診断カーソルDCb(図4〜図6)の位置から診断カーソルDC(図4〜図6)を移動させる。これにより、血管径を測定する位置が修正され、望ましくは、安静時と同じ位置において血管径を測定することが可能になる。
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。