以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の冷却器10の全体構成を示す図であり、断面図示されている。冷却器10は、その冷却器10内に封入された冷媒を利用して発熱体12を冷却する。図1に示すように、冷却器10は、加熱部14、冷却部16、駆動補助装置18、および膨張抑制部20等を備えている。冷却器10の冷媒は、常温では液体で、発熱体12により加熱されることにより沸騰する流体である。なお、図1の矢印DR1は、冷却器10が設置された状態での上下方向DR1すなわち鉛直方向DR1を表している。
発熱体12は、冷却器10により冷却される部材であり、具体的には、冷却が必要な半導体素子などである。一例を挙げれば、インバータの半導体素子モジュールである。発熱体12の電気端子12a、12bは加熱部14から突き出ており、発熱体12は、その電気端子12a、12bに通電されることにより発熱する。本実施形態では、発熱体12は2つ設けられている。
加熱部14はその内部に加熱部空間14aを形成している。その加熱部空間14a内には発熱体12が収容されており、加熱部14はその発熱体12を備えている。その加熱部空間14aは冷媒で満たされている。そして、加熱部14は、その発熱体12の熱を加熱部空間14a内の冷媒すなわち冷媒流体へ放熱させることにより、その冷媒を加熱し沸騰気化させる。
詳細には、加熱部14は箱状の加熱部壁141を備えており、その加熱部壁141が、発熱体12を収容する発熱体収容空間としての加熱部空間14aを形成している。そして、その加熱部壁141内において、発熱体12は、発熱体12まわりが気体または液体の冷媒で満たされるように収容されている。例えば本実施形態では、加熱部空間14a全体が気体または液体の冷媒で満たされており、その冷媒が全て液体となっているときには2つの発熱体12全体もしくは一部が液体の冷媒に漬かるようになっている。なお、加熱部空間14aの冷却部16側である一端は後述の冷却部16の冷却部空間16aに連通しているが、加熱部空間14aの他端は閉塞されている。
冷却部16は、加熱部空間14aと連通している冷却部空間16aを、冷却部16の内部に形成している。そして、冷却部16は、加熱部14で気化され冷却部空間16aへ流入してきた気体の冷媒を冷却して液化させる。
具体的に冷却部16は、冷却部壁161と冷却装置162とを備えている。冷却部16は、加熱部14に対し水平方向に並んで配置されている。
冷却部壁161は管状の形状を成しており、その内側に冷却部空間16aを形成している。冷却装置162は、冷却部壁161の周りに設けられた多数の冷却フィン162aから構成されている。
そして、冷却装置162は、冷却部空間16a内の冷媒を、外気と熱交換させることにより冷却する。更に、熱交換フィンとしての冷却フィン162aは膨張抑制部20にまで延設され膨張抑制部20に連結されており、冷却装置162は、冷却部空間16a内の冷媒を、膨張抑制部20内の作動流体20aと熱交換させることによっても冷却する。すなわち、冷却部16は、冷媒を冷却する際に、その冷媒からの熱を、冷却部16周りの外気および膨張抑制部20内の作動流体20aへ放熱する。
冷却部壁161は、高い放熱性能が得られるように、例えば薄肉の金属、好ましくは薄肉のアルミニウム合金で構成されている。また、冷却部壁161、冷却装置162、および加熱部壁141は一体となって、アルミニウム合金等の金属から成り冷媒が収容される1つの冷媒容器を構成している。
冷却部空間16aは管状に形成された空間であり、その長手方向に直交する管路断面積が極めて小さい管路で構成されている。そのため、冷却部空間16a内に冷媒の気液界面26が存在する場合には、その気液界面26は、重力方向に拘わらず、冷媒の表面張力により、冷却部空間16aの長手方向を向くように維持される。すなわち、冷却部空間16aの長手方向において、気液界面26を境に加熱部14側には気体冷媒が存在し、その反対側には液体冷媒が存在する。
例えば、冷媒が加熱部14で加熱されることにより、気体になった冷媒の体積が増すほど、冷却部空間16a内において気液界面26は、加熱部空間14aから遠ざかる方向すなわち図1の左方向に移動する。そうすると、冷却部16は、液体冷媒も冷却するが、それと共に、加熱部14で気化された気体冷媒も冷却し凝縮させる。
駆動補助装置18は、一軸方向または略一軸方向へ伸縮する伸縮部28と、錘30とを備えている。伸縮部28は、冷媒の加熱および冷却によって加熱部空間14a内および冷却部空間16a内で生じる冷媒の体積変化を吸収する。すなわち、伸縮部28は、その冷媒の体積変化を吸収する吸収部として機能する。そして、伸縮部28は、伸縮部28の内側に、冷却部空間16aと連通している吸収部空間としての伸縮部空間28aを形成している。
伸縮部28は、例えば蛇腹等で構成されており、本実施形態では上下方向DR1に伸縮する。すなわち、伸縮部28の伸縮方向は上下方向DR1である。駆動補助装置18は機械的な動作を行う部分であるので、冷却器10における駆動部と呼んでもよい。伸縮部28が上下に伸縮すると、それに伴い、伸縮部空間28aも上下に伸縮する。伸縮部空間28a内は液体冷媒で満たされている。
また、伸縮部28の下端は冷却部壁161に対して固定されており、伸縮部空間28aの下端は冷却部空間16aに連通している。その一方で、伸縮部28の上端には錘30が固定されており、伸縮部空間28aの上端は閉塞されている。従って、この伸縮部空間28a、上述の加熱部空間14a、および冷却部空間16aは全体として、冷媒が封入された一空間としての気密な冷媒封入空間32を構成しており、その冷媒封入空間32は冷媒で満たされている。
そして、冷却部空間16a内の冷媒が伸縮部空間28a内へ流入すると、伸縮部空間28aが伸びて伸縮部28の上端および錘30が上昇する。逆に、伸縮部空間28aが縮んで伸縮部28の上端および錘30が下降すると、伸縮部空間28a内の冷媒が冷却部空間16a内へ流出する。すなわち、その冷媒は、伸縮部28を伸縮作動させる伸縮部駆動用の流体として機能している。
錘30は、伸縮部28が上下に伸縮する際の慣性を増すために設けられている。すなわち、錘30は、伸縮部空間28aの膨張および収縮に同期して振動するので、冷媒の自励振動に同期した慣性力を冷媒封入空間32内の冷媒へ作用させることで冷媒の自励振動を補助する振動補助部として機能する。錘30は、高密度の部材であれば良く、例えば鉄で構成されている。
膨張抑制部20は、伸縮部空間28aを収縮させる収縮力Fb、すなわち伸縮部空間28aの膨張を抑える膨張抑制力Fbを発生する。その伸縮部空間28aの膨張とは、言い換えれば、伸縮部空間28aが上方へ伸びることである。従って、この膨張抑制部20の膨張抑制力Fbは、伸縮部空間28a内の冷媒圧力が伸縮部空間28aを上向きに膨張させる膨張力Faに対抗する。
具体的に、膨張抑制部20は、第1空間201aが形成された第1空間形成部201と、第2空間202aが形成された第2空間形成部202とから構成されている。その第1空間形成部201は第2空間形成部202と一体的に構成されており、第1空間201aと第2空間202aとは互いに連通して一つの膨張抑制部空間20bを構成している。また、第1空間形成部201は冷却部16の冷却フィン162aに固定され、第2空間形成部202は冷却部壁161に固定されている。
膨張抑制部空間20bは密閉空間を構成しており、膨張抑制部空間20b内には作動流体20aが封入されている。言い換えれば、膨張抑制部空間20bは、作動流体20aが封入されている作動流体封入空間である。また、膨張抑制部空間20b内には、作動流体20a以外の流体は封入されておらず、すなわち、膨張抑制部空間20bは作動流体20aで満たされている。そして、膨張抑制部空間20b内の作動流体20aは飽和状態になっている。そのため、膨張抑制部空間20b内の作動流体20aは気液混合の流体となっている。本実施形態では、作動流体20aは、冷媒封入空間32に封入された冷媒と同一の物質であるので、その冷媒と比較して同じ圧力の下で同じ沸点を有する。
第1空間形成部201は、冷却部空間16aから発せられる冷媒の熱を受け取るように構成されている。そのため、第1空間形成部201は、冷媒封入空間32内の冷媒温度を感知する温度感知部としての機能を有する。詳細には、第1空間形成部201は冷却フィン162aに連結されており、それによって、冷却フィン162aからの熱が第1空間201a内の作動流体20aへ伝わり易いようになっている。従って、冷却フィン162aの熱伝導によって冷媒から作動流体20aへ伝熱されるので、冷却フィン162aは、冷却部空間16a内の冷媒の熱を矢印FL1のように第1空間形成部201へ伝える伝熱部として機能する。
このような構成により、第1空間形成部201は、冷却部空間16a内の冷媒の熱により膨張抑制部空間20b内の作動流体20aを加熱する。作動流体20aが加熱されると、作動流体20aの中の液相部分が蒸発し、膨張抑制部空間20bの内圧が上昇する。
第2空間形成部202は、駆動補助装置18を第2空間202a内に収容するように配置されている。そのため、膨張抑制部空間20bの内圧すなわち第2空間202aの内圧が上昇するほど、膨張抑制力Fbが大きくなる。要するに、第2空間202aは、作動流体20aの圧力を伸縮部28に作用させ且つ作動流体20aの圧力により膨張抑制力Fbが冷媒の自励振動中に生じるように形成されている。そして、膨張抑制部20は、伸縮部空間28aが膨張する膨張途中および伸縮部空間28aが収縮する収縮途中において、膨張抑制力Fbを伸縮部28へ作用させる。
上述のように構成された冷却器10では、加熱部空間14a内の液体冷媒が発熱体12により加熱され沸騰させられると冷媒の気体部分が増し、それと共に冷媒全体の体積が増加し伸縮部28の上端が上昇する。冷媒の気体部分がある程度増し例えば気液界面26が図1のように冷却部空間16a内に入ると、冷却部16が、その冷媒の気体部分を冷却し凝縮させる。
冷媒の気体部分が凝縮することにより気体部分が少なくなると、それと共に冷媒全体の体積が減少し伸縮部28の上端が下降する。そして、発熱体12の一部または全部が液体の冷媒に浸かるようになる。発熱体12が液体の冷媒に浸かると、上述したように再び加熱部空間14a内の液体の冷媒が沸騰し蒸発する。
このように、冷却器10において加熱部14および冷却部16は、冷媒に蒸発と凝縮とを繰り返させることにより、冷媒封入空間32内で冷媒の気液界面26を自励振動させる。要するに、冷媒封入空間32内で冷媒を自励振動させる。そして、伸縮部28は、その冷媒の自励振動に伴う冷媒全体の体積変化を吸収する。更に、伸縮部28は、所定のばね定数を持っているので、その伸縮部28の伸縮方向における釣合い点に向って伸縮量に応じた反力を生じ、冷媒の自励振動を補助する役割を果たす。
この気液界面26の自励振動すなわち冷媒の自励振動に伴い冷媒が蒸発と凝縮とを繰り返すことで、発熱体12から冷媒を介し外気に至る熱伝達経路において高い熱伝達性能を得つつ、発熱体12の熱を、冷媒と冷却部壁161と冷却装置162とを介し、冷却部16から外気へ放出させることができる。
また、冷却部空間16a内および伸縮部空間28a内において気液界面26から離れた部位の液体冷媒はサブクール状態になっている。従って、そのサブクール状態の液体冷媒が、伸縮部28の上端が下降すると共に発熱体12まわりに流れ込むので、発熱体12を冷却する高い冷却性能を得ることができる。
図2は、冷媒の気液界面26が自励振動しているときのタイムチャートである。この図2では、発熱体12の温度Txすなわち発熱体温度Tx、加熱部空間14a内の平均圧力PRav、冷媒および作動流体20aのそれぞれの平均圧力PAav、PBavが、上から順に示されている。また、図2では、膨張抑制部20が設けられたことの効果を説明するために、発熱体12の温度Txおよび加熱部空間14a内の平均圧力PRavのタイムチャートでは、膨張抑制部20を有する本実施形態のものを実線L1、L2で示し、本実施形態から膨張抑制部20を取り去った比較例のものを二点鎖線Lc1、Lc2で示している。また、図2の実線L3は冷媒の平均圧力PAavを示し、破線L4は作動流体20aの平均圧力PBavを示している。
なお、瞬時値としての冷媒圧力および作動流体20aの圧力は冷媒の自励振動に同期して周期的に変動するので、冷媒の平均圧力PAav、作動流体20aの平均圧力PBav、加熱部空間14a内の平均圧力Prfは、上記自励振動の1サイクル毎の平均値となっている。詳細に言えば、冷媒の平均圧力PAavすなわち平均冷媒圧力PAavは、上記自励振動の1サイクルにわたって冷媒圧力を平均した平均値、要するに、その1サイクル毎の冷媒圧力の平均値である。また、作動流体20aの平均圧力PBavすなわち平均作動流体圧力PBavは、上記自励振動の1サイクルにわたって作動流体20aの圧力を平均した平均値、要するに、その1サイクル毎の作動流体20aの圧力の平均値である。また、加熱部空間14a内の平均圧力Prfは、上記自励振動の1サイクルにわたって加熱部空間14a内の圧力を平均した平均値である。
また、冷媒圧力は冷媒封入空間32内のどこで測定されてもよいが、本実施例では、伸縮部空間28a内で測定される。また、加熱部空間14a内の平均圧力Prfは、加熱部空間14a内の冷媒の平均圧力Prfであるので、伸縮部空間28a内での測定圧力に基づく平均冷媒圧力PAavと同じ値または略同じ値になる。また、作動流体20aの圧力は膨張抑制部空間20b内のどこで測定されてもよいが、本実施例では、第2空間202a内で測定される。また、図2は、冷媒の自励振動の周期に対して十分に長い時間にわたってタイムチャートを表示している。
図2は、発熱体12の発熱量が増大した状況を示している。具体的には、発熱体12の発熱量がt1時点にて増大したことに起因して、発熱体温度Txがt1時点から上昇し始めている。そのため、t1時点から、加熱部空間14a内の冷媒の温度上昇により、平均冷媒圧力PAavおよび加熱部空間14a内の平均圧力PRavも上昇し始めている。
また、冷媒の熱は冷却フィン162aを介して膨張抑制部空間20b内の作動流体20aへ伝えられる。このとき、熱の伝わりには時間的な遅れが生じるので、t1時点よりも後のt2時点から、作動流体20aの温度上昇により、平均作動流体圧力PBavが上昇し始めている。
更に、冷媒から作動流体20aへの伝熱ロスが生じるので、平均作動流体圧力PBavは平均冷媒圧力PAavよりも低くなる。すなわち、冷媒の自励振動の1サイクルにわたって膨張抑制力Fbを平均した平均膨張抑制力は、その自励振動の1サイクルにわたって膨張力Faを平均した平均膨張力よりも小さくなる。この平均圧力PAav、PBavの関係は冷媒の自励振動中にわたって継続する。なお、上記平均膨張抑制力は、平均作動流体圧力PBavを換算して算出されてもよく、上記平均膨張力は、平均冷媒圧力PAavを換算して算出されてもよい。また、平均膨張抑制力とは、言い換えれば上記自励振動の1サイクル毎の膨張抑制力Fbの平均値であり、平均膨張力とは、言い換えれば上記自励振動の1サイクル毎の膨張力Faの平均値である。
t2時点から平均作動流体圧力PBavが上昇した後、冷媒の自励振動の周期が短くなって冷却部16から外気への放熱量が増大し、t3時点にて、発熱体温度Tx、加熱部空間14a内の平均圧力PRav、および平均冷媒圧力PAavが、t1時点の大きさに戻っている。また、t3時点から僅かに遅れて、平均作動流体圧力PBavもt1時点の大きさに戻っている。
この図2に示すように、平均冷媒圧力PAavが増大し始めているt1時点から、大気圧と平均冷媒圧力PAavとの差圧ΔPAair(=PAav−大気圧)は、大気圧が変化しないので、その平均冷媒圧力PAav変化に従って大きくなっている。その一方で、平均冷媒圧力PAavと平均作動流体圧力PBavとの差圧ΔPAB(=PAav−PBav)の変化は、平均作動流体圧力PBavが平均冷媒圧力PAavに追従するように変化しているので、上記差圧ΔPAairの変化に比して抑えられている。
すなわち、平均冷媒圧力PAavおよび平均作動流体圧力PBavのタイムチャートから判るように、膨張抑制部20は、平均冷媒圧力PAavが高くなるほど、冷媒の自励振動の1サイクルにわたって膨張抑制力Fbを平均した平均膨張抑制力が大きくなるように、膨張抑制力Fbを調節している。
上述した大気圧と平均冷媒圧力PAavとの差圧ΔPAairの変化から、膨張抑制部20を有さない比較例では、t1時点から、冷媒圧力に基づく膨張力Fa(図1参照)は、大気圧に基づく膨張抑制力Fb(図1参照)に対して増大する一方となる。そのため、例えば、錘30の慣性力が錘30の加速度に従って大きくなっても、膨張力Faに対抗して液体冷媒を冷却部16から加熱部14へ押す力が、膨張力Faの増大に対して不足することが考えられる。
そうなると、発熱体温度Txおよび加熱部空間14a内の平均圧力PRavが二点鎖線Lc1、Lc2のように上昇する一方となり得る。そして、発熱体温度Txおよび加熱部空間14a内の平均圧力PRavはそれぞれ限界点LTx、LPRavを超えるおそれがあり、その限界点LTx、LPRavを超えれば、冷媒の自励振動は止まり、発熱体12からの発熱を止めない限り、伸縮部28は最も伸びた状態から戻らなくなる。なお、上記平均圧力PRavの限界点LPRavは、冷媒の自励振動を継続可能な平均圧力PRavの上限値であり、上記発熱体温度Txの限界点LTxは、平均圧力PRavの限界点LPRavに対応した発熱体温度Txである。
一方、膨張抑制部20を有する本実施形態では、t1時点から、冷媒圧力に基づく膨張力Faは増大するものの、平均冷媒圧力PAavと平均作動流体圧力PBavとの差圧ΔPABの変化が抑えられているので、作動流体20aの圧力に基づく膨張抑制力Fbに対して相対的にはあまり変化しない。そのため、膨張力Faに対抗して液体冷媒を冷却部16から加熱部14へ押す力が膨張力Faの増大に対して不足せず、冷媒の自励振動が継続する。
なお、駆動補助装置18において、膨張力Faを生じさせる向きに冷媒圧力を受ける受圧面積と、膨張抑制力Fbを生じさせる向きに作動流体20aまたは大気の圧力を受ける受圧面積とは互いに同じである。
上述したように、本実施形態によれば、膨張抑制部20は、平均冷媒圧力PAavが高くなるほど、冷媒の自励振動の1サイクルにわたって膨張抑制力Fbを平均した平均膨張抑制力が大きくなるように、膨張抑制力Fbを調節する。従って、冷媒圧力に基づく膨張力Faが、それに対抗し膨張抑制部20が発生する膨張抑制力Fbと比較して一方的に大きくなっていくことが進行し難くなる。言い換えれば、冷媒圧力が作動流体20aの圧力によって相殺される。そのため、冷媒の自励振動に対する負荷を適切に増減することができるので、その自励振動を安定させて継続させることが可能である。そして、冷媒の自励振動を安定させることにより、延いては、冷却器10の冷却性能を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、膨張抑制部20は、冷媒封入空間32から発せられる冷媒の熱を受け取るように構成され、その冷媒の熱により作動流体20aを加熱する。そして、膨張抑制部20において作動流体20aが封入されている膨張抑制部空間20bは、作動流体20aの圧力を伸縮部28に作用させ且つ作動流体20aの圧力により膨張抑制力Fbが生じるように形成されている。従って、機械的な作動機構を必要とせずに、平均冷媒圧力PAavが高くなるほど平均膨張抑制力が大きくなるように、膨張抑制力Fbを調節することが可能である。
また、本実施形態によれば、作動流体20aは冷媒と比較して同じ圧力の下で同じ沸点を有するので、膨張抑制部空間20b内の作動流体20aの圧力が、冷媒封入空間32内の冷媒圧力と比較して、冷媒から作動流体20aへの伝熱ロス分だけ低くなることになる。そのため、平均冷媒圧力PAavと平均作動流体圧力PBavとの差圧ΔPAB(=PAav−PBav)を正方向に生じさせつつその差圧ΔPABを非常に小さくすることができ、膨張力Faと膨張抑制力Fbとの大小関係を、冷媒の自励振動を継続させる上で適切に維持することができる。
また、本実施形態によれば、錘30は、冷媒の自励振動に同期した慣性力を冷媒封入空間32内の冷媒へ作用させることで冷媒の自励振動を補助するので、その自励振動が継続し易くなる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。また、前述の実施形態と同一または均等な部分については省略または簡略化して説明する。後述の第3実施形態以降でも同様である。
図3は、本実施形態の冷却器10の全体構成を示す図であり、図1と同様に断面図示されている。図3に示すように、本実施形態では、冷却部16の冷却フィン162aが膨張抑制部20にまで延設されてはいない。すなわち、膨張抑制部20は冷却部16の冷却フィン162aに対して間隔を空けて配置されている。この点が第1実施形態と比較して異なっている。
具体的に本実施形態では、膨張抑制部20は、第1空間形成部201の外周に設けられた多数の熱交換フィン203を備えている。その熱交換フィン203は第1空間形成部201に固定されている。熱交換フィン203は、冷却部16の冷却フィン162aから、両フィン162a、203の間に介在する空気を介して受熱できるように、冷却フィン162aに近接して配置されている。
これにより、冷却器10は、冷却部16の冷却フィン162aと膨張抑制部20の熱交換フィン203との間で、矢印FL2のように空気を介して伝熱されるようになっている。このような構成から、第1実施形態と同様に、第1空間形成部201は、冷却部空間16a内の冷媒の熱により膨張抑制部空間20b内の作動流体20aを加熱する。
本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。なお、前述の図2のタイムチャートは、本実施形態でも第1実施形態と同様のものになる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
図4は、本実施形態の冷却器10の全体構成を示す図であり、図1と同様に断面図示されている。図4に示すように、本実施形態では、冷却部16の冷却フィン162aが膨張抑制部20にまで延設されてはいない。そして、膨張抑制部20は、作動流体20aに替えてバネ204を有し、そのバネ204の付勢力によって膨張抑制力Fb(図1参照)を発生する。この点が第1実施形態と比較して異なっている。
具体的に本実施形態では、膨張抑制部20は、空間形成部201、202(図1参照)を備えず、バネ204とガイド部材205と支持部材206とを備えている。バネ204は圧縮コイルバネであり、バネ204の一端は錘30に接触しバネ204の他端は支持部材206に接触している。また、この支持部材206は、剛性の高い平板状の金属部材であり、加熱部壁141に固定されている。このようなバネ204の配置により、バネ204は、伸縮部28を縮める向きに付勢力を発生させており、その付勢力は膨張抑制力Fb(図1参照)となっている。
また、バネ204は、例えば形状記憶合金等の感熱材料で構成されている。詳細には、バネ204は、その材料の特性から、バネ204の温度が高くなるほどバネ204の自由長さが長くなるようになっている。そのため、上記膨張抑制力Fbとしての付勢力は、錘30の位置を変えずに比較した場合、バネ204の温度が高くなるほど大きくなる。また、バネ204は、冷却フィン162aから受熱し易いように、バネ204の長手方向が冷却フィン162aの積層方向と平行になる姿勢で冷却フィン162aに近づけて配置されている。
このような構成から、冷却部空間16a内の冷媒の熱が冷却フィン162aから矢印FL3のように伝熱され、バネ204の温度が高くなるほど、バネ204はそのバネ204の付勢力を大きくする。つまり、膨張抑制部20は、冷媒が加熱されて平均冷媒圧力PAavが高くなるほど上記平均膨張抑制力が大きくなるように、膨張抑制力Fbとしてのバネ204の付勢力を調節する。
ガイド部材205は、バネ204の座屈を防止しつつ、バネ204が伸縮部28を縮める向きに錘30を押圧するように案内する。詳細には、ガイド部材205は細長い円柱状の丸棒で構成されており、バネ204の内側に挿通されている。そして、ガイド部材205の一端部分は錘30の上面に向くように下向きに屈曲されている。ガイド部材205の他端部分は支持部材206にカシメ等によって固定されている。従って、ガイド部材205は、その他端部分が支持部材206によって支持された片持ち状態になっている。
本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
なお、前述の図2のタイムチャートは、本実施形態でも第1実施形態と同様のものになる。但し、本実施形態においては、図2の実線L3は、冷媒の自励振動の1サイクルにわたって膨張力Fa(図1参照)を平均した平均膨張力を示し、破線L4は、冷媒の自励振動の1サイクルにわたって膨張抑制力Fb(図1参照)を平均した平均膨張抑制力を示す。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
図5は、本実施形態の冷却器10の全体構成を示す図であり、図1と同様に断面図示されている。図5に示すように、本実施形態では、膨張抑制部20の作動流体20aが冷却部16からだけでなく加熱部14からも受熱するように構成されている。この点が第1実施形態と比較して異なっている。
具体的に本実施形態では、膨張抑制部20の第1空間形成部201が冷却部16の側方から更に加熱部14の側方にまで延設されている。そして、膨張抑制部20は、第1空間形成部201の外周に設けられ且つ加熱部壁141に接続された多数の熱交換フィン207を備えている。その熱交換フィン207は第1空間形成部201と加熱部壁141とにそれぞれ固定され、第1空間形成部201と加熱部壁141との間をつないでいる。
これにより、第1空間形成部201内の作動流体20aは、冷却部空間16a内の冷媒から矢印FL1のように冷却フィン162aの熱伝導によって受熱し、更に、加熱部空間14a内の冷媒から矢印FL4のように熱交換フィン207の熱伝導によって受熱する。このような構成から、膨張抑制部20は、第1実施形態と比較してより応答性良く、冷媒封入空間32内の冷媒の熱によって第1空間201a内の作動流体20aを加熱することができる。
本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。なお、前述の図2のタイムチャートは、本実施形態でも第1実施形態と同様のものになる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第4実施形態と異なる点を主として説明する。
図6は、本実施形態の冷却器10の全体構成を示す図であり、図5と同様に断面図示されている。図6に示すように、本実施形態では、冷却部16の冷却フィン162aが膨張抑制部20にまで延設されてはいない。すなわち、膨張抑制部20は冷却部16の冷却フィン162aに対して間隔を空けて配置されている。この点が第4実施形態と比較して異なっている。
従って、第1空間形成部201内の作動流体20aは、加熱部空間14a内の冷媒から矢印FL4のように熱交換フィン207の熱伝導によって受熱するが、冷却部空間16a内の冷媒からは受熱しない。
本実施形態では、前述の第4実施形態と共通の構成から奏される効果を第4実施形態と同様に得ることができる。なお、前述の図2のタイムチャートは、本実施形態でも第4実施形態と同様のものになる。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
図7は、本実施形態の冷却器10の全体構成を示す図であり、図1と同様に断面図示されている。図7に示すように、本実施形態の冷却器10は、冷媒の熱が冷却部16の冷却フィン162aの熱伝導によって膨張抑制部20の作動流体20aへ伝熱されるようにはなっていない。その替わりに、膨張抑制部20は、流体封入部38とアクチュエータ40とピストン42と複数のセンサ44、46、48と制御部50とを備えている。この点が第1実施形態と比較して異なっている。
流体封入部38は、第1実施形態の第2空間形成部202(図1参照)と同様に構成されている。具体的には、流体封入部38の内部には、作動流体20aが封入された封入部空間38aが形成されており、その封入部空間38aはその作動流体20aで満たされている。また、流体封入部38は、駆動補助装置18を封入部空間38a内に収容するように配置され、冷却部壁161に固定されている。そのため、封入部空間38aの内圧が上昇するほど、膨張抑制力Fbが大きくなる。要するに。封入部空間38aは、作動流体20aの圧力を伸縮部28に作用させ且つ作動流体20aの圧力により膨張抑制力Fbが生じるように形成されている。但し、本実施形態の作動流体20aは冷媒と同一の物質である必要はなく、常に気体として封入部空間38aに封入されている。
アクチュエータ40は、例えばリニアモータまたは油圧シリンダなどで構成されており、制御部50からの信号に従ってピストン42を作動させる。そして、そのピストン42は、封入部空間38aの一部を形成しており、ピストン42の往復方向の位置に応じて封入部空間38aの容積を変化させる。従って、アクチュエータ40は、ピストン42で封入部空間38a内の作動流体20aを押圧することにより膨張抑制力Fbを発生する。その膨張抑制力Fbは、作動流体20aをピストン42で押圧する押圧力が大きくなるほど大きくなる。
加熱部温度センサ44は、加熱部空間14a内の冷媒温度を検出する温度検出装置であり、検出した冷媒温度を示す検出信号を制御部50へ出力する。また、冷却部温度センサ46は、冷却部空間16a内の冷媒温度を検出する温度検出装置であり、検出した冷媒温度を示す検出信号を制御部50へ出力する。また、作動流体圧力センサ48は、封入部空間38a内の作動流体20aの圧力である作動流体圧を検出する圧力検出装置であり、検出した作動流体圧を示す検出信号を制御部50へ出力する。
制御部50は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとその周辺回路とから構成された電子制御装置であり、ROM等に予め記憶されたコンピュータプログラムに従って種々の制御処理を実行する。
具体的に、制御部50は、冷媒温度に基づいてアクチュエータ40を制御する。アクチュエータ40を制御するための冷媒温度としては、加熱部温度センサ44の検出温度と冷却部温度センサ46の検出温度との何れであってもよいが、本実施形態では、冷却部温度センサ46の検出温度が採用されている。従って、制御部50は、冷却部温度センサ46によって検出される冷媒温度に基づいてアクチュエータ40を制御する。
また、制御部50は、アクチュエータ40の制御を図8の制御マップに従って実行する。詳細に言うと、その制御マップでは横軸が冷却部温度センサ46によって検出される冷媒温度になっており、縦軸が作動流体圧の目標値である目標作動流体圧になっており、目標作動流体圧は冷媒温度が高いほど高く設定される。そして、図7に示す制御部50は、作動流体圧力センサ48によって検出される作動流体圧を目標作動流体圧に一致させるようにアクチュエータ40を制御する。すなわち、アクチュエータ40は、制御部50の制御により、冷媒温度が高いほど作動流体圧を高くする。
その結果、前述の図2のタイムチャートは、本実施形態でも第1実施形態と同様のものになる。すなわち、冷媒温度の平均値に着目すれば、図7に示す制御部50は、冷却部温度センサ46によって検出される冷媒温度を冷媒の自励振動の1サイクルにわたって平均した平均冷媒温度が高くなるほど、冷媒の自励振動の1サイクルにわたって膨張抑制力Fbを平均した平均膨張抑制力が大きくなるように、膨張抑制力Fbをアクチュエータ40に調節させる。これにより、本実施形態のアクチュエータ40および制御部50を有する膨張抑制部20は、第1実施形態と同様に、平均冷媒圧力PAavが高くなるほど上記平均膨張抑制力が大きくなるように、膨張抑制力Fbを調節する。
本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。更に、本実施形態によれば、図7に示す制御部50は、冷却部温度センサ46によって検出される冷媒温度を冷媒の自励振動の1サイクルにわたって平均した平均冷媒温度が高くなるほど、冷媒の自励振動の1サイクルにわたって膨張抑制力Fbを平均した平均膨張抑制力が大きくなるように、膨張抑制力Fbをアクチュエータ40に調節させる。従って、制御部50によるアクチュエータ40の制御によって、冷媒の自励振動が継続するように最適に膨張抑制力Fbを調節することが可能である。
(他の実施形態)
(1)上述の第1、第2、第4、および第5実施形態において、作動流体20aは、冷媒封入空間32に封入された冷媒と同一の物質であるが、その冷媒とは異なる物質であってもよい。すなわち、作動流体20aは、その冷媒と比較して同じ圧力の下で異なる沸点を有していても差し支えない。
(2)上述の各実施形態において、発熱体12は加熱部空間14a内に収容されているが、発熱体12と加熱部空間14a内の冷媒とが熱交換することにより発熱体12が冷却されると共に冷媒が沸騰気化するのであれば、発熱体12は加熱部空間14a外に配置されていても差し支えない。
(3)上述の各実施形態において、発熱体12は2つ設けられているが、発熱体12は1つまたは3つ以上設けられていても差し支えない。
(4)上述の各実施形態において、発熱体12は、冷却が必要な半導体素子などであるが、電気部品である必要はない。
(5)上述の各実施形態において、加熱部空間14aおよび冷却部空間16aは、その長手方向が水平方向となるように設けられているが、例えば冷媒封入空間32が特許文献1に記載された流体容器のようにU字状に形成されていても差し支えない。
(6)上述の各実施形態では、冷却器10は、冷却部空間16aの長手方向が水平方向を向くように設置されているが、冷却部空間16a内の気液界面26の向きは冷媒の表面張力により維持されるので、冷却器10の設置向きに限定はない。
(7)上述の各実施形態において、発熱体12からの発熱が止まると、発熱体12全体が液体冷媒に浸るが、発熱体12の一部分が液体冷媒に浸るのでも差し支えない。
(8)上述の各実施形態において、冷却部16は、冷却部空間16a内の冷媒を外気と熱交換させることにより冷却するが、冷却部16まわりに冷却水が流れる配管を設け、冷媒を、その冷却水と熱交換させることにより冷却しても差し支えない。
(9)上述の各実施形態において、駆動補助装置18は錘30を備えているが、錘30は無くても差し支えない。或いは、錘30が、冷媒の自励振動を助長するように慣性力を付加する他の部品又は装置に置き換わっていても差し支えない。
(10)上述の各実施形態において、伸縮部28は蛇腹等で構成され上下に伸縮するが、例えばダイヤフラム等で構成されていてもよいし、或いは、冷媒の振動を吸収できれば伸縮しない構成であっても差し支えない。
(11)上述の第1、第2、第4、および第5実施形態において、膨張抑制部空間20b内の作動流体20aは飽和状態になっているが、作動流体20aの温度が高くなるほど膨張抑制部空間20bの内圧が高くなればよいので、膨張抑制部空間20b内の作動流体20aは飽和状態でなくても差し支えない。
(12)上述の各実施形態において、膨張抑制部20は、伸縮部空間28aの膨張途中および収縮途中において膨張抑制力Fbを伸縮部28へ作用させるが、伸縮部空間28aが膨張し収縮する全過程において膨張抑制力Fbを作用させる必要はない。例えば、膨張抑制部20は、伸縮部空間28aの膨張途中および収縮途中のうち膨張途中でのみ、膨張抑制力Fbを伸縮部28へ作用させてもよいし、伸縮部空間28aの収縮途中でのみ、膨張抑制力Fbを伸縮部28へ作用させてもよい。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。