JP2016000772A - 芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム - Google Patents

芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】位相差比及び色相に優れる芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムの提供。
【解決手段】式(I)で表される構造単位及び式(III)で表される構造単位を含み、式(III)で表わされる構造単位の含有量が2000ppm未満である芳香族ポリカーボネート樹脂を含むシート又はフィルム。
Figure 2016000772

Figure 2016000772

【選択図】なし

Description

本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムに関する。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、透明性が高く、耐熱性、耐衝撃性等に優れるため、OA機器分野、電気・電子分野等の原材料として、工業的に広く利用されている。中でも芳香族ポリカーボネート樹脂からなるシート及びフィルムは、液晶表示装置の前面保護シート(例えば、特許文献1参照)、導光シート(例えば、特許文献2参照)などの光学用途において好適に使用されている。
一方、ポリカーボネート樹脂の製造方法においても、従来多くの検討がなされている。その中で、芳香族ジヒドロキシ化合物、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」又は「BPA」ともいう)から誘導される芳香族ポリカーボネート樹脂は、界面重合法あるいは溶融重合法の両製造方法により工業化されている。このうち界面重合法は環境面に於いて多くの問題を抱えているのが実情である。
また、溶融重合法としては、芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとからポリカーボネートを製造する方法、例えばビスフェノールAとジフェニルカーボネートを溶融状態でエステル交換反応により、副生する芳香族モノヒドロキシ化合物を除去しながら重合する方法が古くから知られている。
本発明者らは先に、高速な重合速度を達成し、良好な品質の芳香族ポリカーボネート樹脂を得る方法として、ポリカーボネートプレポリマーの封止末端をジオール化合物により連結して鎖延長する新しい方法を見出した(例えば、特許文献3参照)。この方法によれば、ポリカーボネートプレポリマーの封止末端をジオール化合物により連結して鎖延長することにより、Mwが30,000〜100,000程度の高重合度の芳香族ポリカーボネート樹脂を短時間に製造することができるとされている。
国際公開第2012/049977号 特開2011−180420号公報 国際公開第2012/157766号
溶融重合法は、界面重合法と異なり溶媒を使用しない等、環境面において多くの利点を有している。しかしながら、溶融重合法によって得られる芳香族ポリカーボネート樹脂は、自然発生する異種構造(分岐構造)を多量に含み、特に低せん断速度領域においては粘度が高く、非ニュートン性を示す。そのため、低せん断速度領域におけるシート又はフィルムへの成形加工においては不均一な残留歪みが発生しやすく、加工直後の反りや高温環境下での後収縮差に伴う変形を生じる、即ち位相差比が大きいという課題があった。また、異種構造に起因する成形加工時の色相(YI値)の悪化も課題であった。
このように、溶融重合法による芳香族ポリカーボネート樹脂を種々のシート又はフィルム用途に成形加工する場合、未だ満足のいく位相差比及び色相(YI値)を達成出来ていないのが現状である。したがって、本発明が解決しようとする課題は、種々の光学用途に適用可能となるレベルまでに位相差比が小さく且つ色相が良好な芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、溶融重合法で製造したものでありながら分岐化度が低く、異種構造量が少ない等の品質上の利点を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を含むシート又はフィルムが、光学用途に適用可能なレベルで十分に優れた位相差比と良好な色相とを達成できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下に示す芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムを提供するものである。
<1> 下記一般式(I)で表される構造単位及び下記一般式(III)で表わされる構造単位を含み、下記一般式(III)で表わされる構造単位の含有量が2000ppm未満である芳香族ポリカーボネート樹脂を含むシート又はフィルムである。
Figure 2016000772

(式中、R及びRは、各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、又は炭素数6〜20のアリールオキシ基を表し、p及びqは、0〜4の整数を表し、Xは、単結合又は下記(Ia)の群から選択される基を表す)
Figure 2016000772

(ここで、R及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表すか、あるいはRとRは、相互に結合して脂肪族環を形成していてもよい)
Figure 2016000772

(式中、Xは、上記と同義である)
<2> YI値が0.9以下である、<1>に記載のシート又はフィルムである。
<3> 下記式(1)で示される位相差比が0.35以下である、<1>又は<2>に記載のシート又はフィルムである。
((Remax)−(Remin))/(Remax) ・・・(1)
<4> 芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基含有量が、1000ppm以下である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のシート又はフィルムである。
<5> 芳香族ポリカーボネート樹脂が、下記一般式(II)で表される環状カーボネートを含み、その含有量が芳香族ポリカーボネート樹脂に対して3000ppm以下である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載のシート又はフィルムである。
Figure 2016000772

(式中、Ra及びRbは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の直鎖若しくは分岐のアルキル基、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数3〜30のシクロアルキル基、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数6〜30のアリール基、又は酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して環を形成していてもよく、R11〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐のアルキル基を表し、nは0〜30の整数を表す)
<6> 環状カーボネートが、下記一般式(IIa)で表される、<5>に記載のシート又はフィルムである。
Figure 2016000772

(式中、Ra及びRbは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の直鎖若しくは分岐のアルキル基、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数3〜30のシクロアルキル基、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数6〜30のアリール基、又は酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して環を形成していてもよい)
<7> 芳香族ポリカーボネート樹脂の下記式(2)で表される構造粘性指数N値が、1.25以下である、<1>〜<6>のいずれか1つに記載のシート又はフィルムである。
N値=(log(Q160値)-log(Q10値))/(log160―log10) ・・・(2)
<8> 芳香族ポリカーボネート樹脂が、溶融重合法により得られる、<1>〜<7>のいずれか1つに記載のシート又はフィルムである。
<9> 芳香族ポリカーボネート樹脂が、ポリカーボネートプレポリマーと下記一般式(IV)で表されるジオール化合物とをエステル交換触媒の存在下に反応させて高分子量化する高分子量化工程と、高分子量化工程で副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去する環状カーボネート除去工程とを含む方法により得られる、<1>〜<8>のいずれか1つに記載のシート又はフィルムである。
Figure 2016000772

(式中、Ra及びRbは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の直鎖若しくは分岐のアルキル基、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数3〜30のシクロアルキル基、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数6〜30のアリール基、又は酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して環を形成していてもよく、R11〜R13は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐のアルキル基を表し、nは、0〜30の整数を表す)
<10> 一般式(IV)で表されるジオール化合物が、下記一般式(IVa)で表される化合物である、<9>に記載のシート又はフィルムである。
Figure 2016000772

(式中、Ra及びRbは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の直鎖若しくは分岐のアルキル基、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数3〜30のシクロアルキル基、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数6〜30のアリール基、又は酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して環を形成していてもよい)
<11> ジオール化合物が、2−ブチル−2−エチルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジイソブチルプロパン−1,3−ジオール、2−エチル−2−メチルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、及び2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオールからなる群から選択される少なくとも1種である、<10>に記載のシート又はフィルムである。
<12> 芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量が、35,000〜100,000である、<1>〜<11>のいずれか1つに記載のシート又はフィルムである。
本発明によれば、種々の光学用途に適用可能となるレベルまでに位相差比が小さく且つ色相が良好な芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムを提供することができる。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
<芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム(以下、単に「シート又はフィルム」ともいう)は、下記一般式(I)で表される構造単位及び下記一般式(III)で表わされる構造単位を含み、下記一般式(III)で表わされる構造単位の含有量が2000ppm未満である芳香族ポリカーボネート樹脂を含むシート又はフィルムである。
Figure 2016000772
式中、R及びRは、各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、又は炭素数6〜20のアリールオキシ基を表し、p及びqは、0〜4の整数を表し、Xは、単結合又は上記(Ia)の群から選択される基を表す。R及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表すか、あるいはRとRは、相互に結合して脂肪族環を形成していてもよい。
溶融重合法で製造される芳香族ポリカーボネート樹脂であって、一般式(I)で表される構造単位を主たる構成単位として含み、一般式(III)で表される構造単位を2000ppm未満の含有量で含む芳香族ポリカーボネート樹脂を用いてシート又はフィルムを形成することで、形成されたシート又はフィルムは、位相差比が充分に小さく、また優れた色相を有することから、光学用途に好適に適用可能である。
芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムは、位相差比及び色相(YI値)が大幅に改善されたものである。このようなシート又はフィルムを構成可能な芳香族ポリカーボネート樹脂は、例えば、ポリカーボネートプレポリマーと特定構造のジオール化合物を含む連結剤との反応により、ポリカーボネートプレポリマーを高分子量化する方法によって得ることができる。このような方法によって得られる芳香族ポリカーボネート樹脂は、従来の界面重合法で得られる芳香族ポリカーボネート樹脂とほぼ同等の構造を有し、又は場合により極少量の連結剤に由来する部分構造を含む構造となる。
シート又はフィルムは、当業者がシート又はフィルムと認識可能な成形体であれば、その形状、大きさ、厚み等は特に制限されず、目的等に応じてそれらを適宜選択することができる。更にシート又はフィルムは、所定の大きさを有する面と、その面に対して垂直方向に所定の厚みとを有する成形体、短尺方向及び長尺方向を有する面と、その面に対して垂直方向に所定の厚みとを有し、長尺方向に連続的に成形される成形体等を含む。また、シート又はフィルムは、長尺方向に巻き取られたロール体であってもよい。
シート又はフィルムの位相差比は、下記式(1)によって算出され、好ましくは0.35以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.25以下である。下限値は、特に制限されず、例えば0.01以上、好ましくは0.03以上であることが許容される。
((Remax)−(Remin))/(Remax) ・・・(1)
ここで、Remaxは測定範囲内での位相差の最大値であり、Reminは測定範囲内での位相差の最小値である。また、測定範囲はシート又はフィルムの外縁部分を除いた中心部分とすることが好ましい。具体的な位相差比の測定方法については後述する。
シート又はフィルムの色相は、YI値により評価され、YI値が0.9以下であることが好ましく、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.7以下である。下限値は、特に制限されず、例えば0.01以上、好ましくは0.03以上であることが許容される。
なお、YI値は、シート又はフィルムから調製される測定用の試料溶液を用いて測定される。具体的な試料溶液の調製方法、YI値の測定方法については後述する。
[芳香族ポリカーボネート樹脂]
シート又はフィルムを形成する芳香族ポリカーボネート樹脂は、一般式(I)で表される構造単位の少なくとも1種を主たる構成単位として含み、更に一般式(III)で表わされる構造単位の少なくとも1種を2000ppm未満の含有量で含む。ここで「主たる」とは、芳香族ポリカーボネート樹脂中の全構造単位中における一般式(I)で表される構造単位の含有率が60モル%以上であることを意味し、80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
Figure 2016000772
式中、R及びRは各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、又は炭素数6〜20のアリールオキシ基を表し、p及びqは各々独立して、0〜4の整数を表し、Xは、単結合又は下記(Ia)の群から選択される基を表す。なお、*は結合位置であることを示す。
Figure 2016000772
ここで、R及びRは各々独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表すか、あるいはRとRは、相互に結合して脂肪族環を形成していてもよい。
一般式(I)で表される構成単位に誘導される芳香族ジヒドロキシ化合物としては、下記一般式(I’)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2016000772
前記一般式(I’)中、R、R、p、q及びXは、各々前記一般式(I)におけるR、R、p、q及びXと同義である。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、具体的にはビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
中でも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが芳香族ジヒドロキシ化合物としての安定性、更にはそれに含まれる不純物の量が少ないグレードの入手が容易である点等の理由により好ましいものとして挙げられる。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物を1種単独で用いて構成されてもよく、ガラス転移温度の制御、流動性の向上等を目的として、各種芳香族ジヒドロキシ化合物のうち複数種を必要に応じて組み合わせて用いて構成されていてもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、一般式(I)で表される構造単位に加えて一般式(III)で表される構造単位を更に含む。
Figure 2016000772
一般式(III)におけるXは、一般式(I)におけるXと同義である。
芳香族ポリカーボネート樹脂における一般式(III)で表される構成単位の含有率はプレポリマー中に、質量基準で2000ppm未満であるが、好ましくは1500ppm以下であり、より好ましくは1000ppm以下であり、更に好ましくは800ppm以下であり、特に好ましくは700ppm以下であり、最も好ましくは600ppm以下である。一般式(III)で表される構成単位の含有率が2000ppm以上であると、芳香族ポリカーボネート樹脂中の分岐度が過度に増加し、熱安定性が低下したり、位相差比及び色相などの光学的物性が低下したりする傾向がある。
また、これらの異種構造の構成単位は自然発生する分岐構造である。したがってこれらの異種構造の構成単位の含有率が所定量以上であると、シート又はフィルム成形加工時の流動性が低下し成形性が悪化する等のデメリットが生じる傾向がある。その結果、位相差比や色相などの光学的特性が悪化する場合がある。
一般式(III)で表される構成単位の含有率の下限は特に制限されないが、例えば、検出下限値(通常1ppm程度)とすることができる。芳香族ポリカーボネート樹脂における一般式(III)で表される構成単位の含有率の下限値は、例えば1ppm以上(検出下限値)であり、場合により5ppm以上、更に10ppm以上であることが許容される。
なお、前記一般式(III)で表される構成単位の含有率は、シート又はフィルムから測定用試料を調製してH−NMR解析により測定された質量基準の値である。
上記一般式(III)で表される構造単位は、芳香族ポリカーボネート樹脂の製造時に生成しやすい異種構造の1種である。芳香族ポリカーボネート樹脂が異種構造を所定の含有率で含むことにより、溶融強度等の溶融特性が向上する傾向がある。これにより、成形時に適度な溶融張力が維持され、ドローダウンが抑制されて安定した成形が可能になる。異種構造を所定の含有率で含む芳香族ポリカーボネート樹脂は、例えば、後述する特定構造のジオール化合物を含む連結剤を用いて芳香族ポリカーボネートプレポリマーを高分子量化する工程を含む方法によって製造することができる。
芳香族ポリカーボネート樹脂が、後述する特定構造のジオール化合物を含む連結剤を用いる方法によって製造されたものである場合、高分子量化工程で使用するジオール化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。芳香族ポリカーボネート樹脂が、ジオール化合物に由来する構造単位を含む場合、芳香族ポリカーボネート樹脂の全構造単位量に対するジオール化合物由来の構造単位の含有率は、例えば1モル%以下であり、好ましくは0.1モル%以下である。
ジオール化合物に由来する構造単位の含有率は、H−NMR解析により測定して求めた値である。
更に、芳香族ポリカーボネート樹脂は、末端水酸基濃度が1000ppm以下であることが好ましく、800ppm以下であることがより好ましく、600ppm以下であることが更に好ましく、500ppm以下であることが特に好ましい。末端水酸基濃度が1000ppm以下であると耐加水分解性がより向上する傾向がある。
一般に芳香族ポリカーボネート樹脂における末端部分は、フェノール等の芳香族モノヒドロキシ化合物で封止された構造となっているが、一部が水酸基となっている場合がある。したがって、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度とは、芳香族ポリカーボネート樹脂における水酸基の含有割合である。末端水酸基濃度は、例えば、シート又はフィルムから測定用試料を調製してH−NMR解析により測定することができる。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、下記一般式(II)で表される環状カーボネートを含んでいてもよい。下記一般式(II)で表される環状カーボネートは、公知の化合物であり、試薬供給業者より入手できるか、又は公知の方法により容易に合成することができる。下記一般式(II)で表される環状カーボネートは芳香族ポリカーボネート樹脂を成形加工する際に混練することにより存在させてもよい。あるいは、下記一般式(II)で表される環状カーボネートは、芳香族ポリカーボネート樹脂の製造工程で副生したものであってもよい。例えば、後述する製造方法で得られる芳香族ポリカーボネート樹脂は、製造工程で連結剤として使用するジオール化合物に対応する環状カーボネートが副生する場合があるが、これを反応系外へ除去したのちでも、少量の環状ポリカーボネートが残存し、最終的に得られる芳香族ポリカーボネート樹脂中にかかる環状ポリカーボネートが含まれる場合がある。芳香族ポリカーボネート樹脂中に環状カーボネートが3000ppm以下で存在することにより、芳香族ポリカーボネート樹脂の流動性が向上する傾向がある。その為、シート又はフィルムとして成形加工する場合は成形性が向上し、より光学的に均一なシート又はフィルムとなり得る。なお、環状カーボネートの含有量が3000ppmを超えたり、反対に低過ぎたりすると、得られるシート又はフィルムの機械的強度が低下する、光学的物性が悪化する等のデメリットが生じる場合がある。
Figure 2016000772
一般式(II)中、Ra及びRbは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の直鎖若しくは分岐のアルキル基、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数3〜30のシクロアルキル基、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数6〜30のアリール基、又は酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して環を形成していてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
11〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐のアルキル基を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
nは0〜30の整数、好ましくは1〜6の整数、より好ましくは1〜3の整数、特に好ましくは1を表す。
一般式(II)中、Ra及びRbは、好ましくは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数1〜8のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して炭素数3〜8の脂環式環を形成していてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
11〜R14は、好ましくは、各々独立して、水素原子、フッ素原子又はメチル基を表す。nは、好ましくは、1〜6の整数を表す。
一般式(II)中、Ra及びRbは、より好ましくは、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基である。特に好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、及びイソブチル基が挙げられる。R11〜R14は、より好ましくは、各々水素原子である。nは、より好ましくは、1〜3の整数を表す。
前記一般式(II)で表される環状カーボネートとしてより好ましくは、下記一般式(IIa)で表される化合物である。一般式(IIa)中、Ra及びRbはそれぞれ上述した一般式(II)におけるRa及びRbとそれぞれ同義である。
Figure 2016000772
一般式(II)で表される環状カーボネートの具体例としては、以下に示す構造の化合物が挙げられる。
Figure 2016000772
芳香族ポリカーボネート樹脂における上記一般式(II)で表される環状カーボネートの含有率は質量基準で3000ppm以下が好ましく、より好ましくは1000ppm以下、更に好ましくは500ppm以下、更に好ましくは300ppm以下、特に好ましくは100ppm以下である。環状ポリカーボネートの含有率の下限は、通常は検出下限値となるが、好ましくは0.0005ppmであり、より好ましくは0.005ppmであり、更に好ましくは0.05ppmであり、特に好ましくは0.1ppmである。
環状カーボネートが特定の含有率で含まれることにより、芳香族ポリカーボネート樹脂を成形加工する際の流動性が向上し、光学的により均一なフィルム又はシートとなり得る。
なお、芳香族ポリカーボネート樹脂における一般式(II)で表される環状カーボネートの含有率は、シート又はフィルムから測定用試料を調製してGC−MSを用いて測定される。
シート又はフィルムを構成する芳香族ポリカーボネート樹脂が、一般式(II)で表される環状カーボネートを含む場合、光学特性、成形性等の観点から、一般式(III)で表される構造単位の含有量に対する一般式(II)で表される環状カーボネートの含有量の重量
比は、例えば1×10−7〜6であり、1×10−3〜1であることが好ましく、0.01〜0.1であることがより好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂においては、下記数式(2)で表されるN値(構造粘性指数)が、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.28以下、特に好ましくは1.25以下、最も好ましくは1.23以下である。
N値=(log(Q160値)-log(Q10値))/(log160-log10) ・・・(2)
上記数式(2)中、Q160値は280度、荷重160kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積(ml/sec)を表し、Q10値は280度、荷重10kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積(ml/sec)を表す。
構造粘性指数「N値」は、芳香族ポリカーボネート樹脂の分岐化度の指標とされる。芳香族ポリカーボネート樹脂においては、N値は低く、分岐構造の含有割合が少なく直鎖構造の割合が高いことが好ましい。一般に、芳香族ポリカーボネート樹脂は同じMwに於いては分岐構造の割合が多くなると流動性が高くなる(Q値が高くなる)傾向にあるが、後述する製造方法で得られる芳香族ポリカーボネート樹脂は、N値を低く保ったまま高い流動性(高いQ値)を達成することができる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは35,000〜100,000、より好ましくは35,000〜80,000、特に好ましくは35,000〜75,000、最も好ましくは40,000〜65,000である。重量平均分子量がこの範囲内であれば、生産性がより良好であり、さらにシート又はフィルムの機械的物性、耐熱性、耐有機溶剤性等の物性がより良好である。
芳香族ポリカーボネート樹脂における数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比である分子量分布(Mw/Mn)は、例えば1.9〜2.5であり、2.0〜2.4であることが好ましい。
なお、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、シート又はフィルムから測定用試料を調製してGPCを用いてポリスチレン換算値として測定される。
シート又はフィルムを構成する芳香族ポリカーボネート樹脂は、添加剤を更に含む樹脂組成物であってもよい。添加剤としては、例えば、触媒失活剤、酸化防止剤、無機充填剤、難燃剤、耐熱安定剤、加水分解安定化剤、顔料、染料、強化剤、充填剤、滑剤、結晶核剤、可塑剤、流動性改良材、帯電防止剤、抗菌剤等が挙げられる。樹脂組成物がその他の添加剤を含む場合、その含有率は目的等に応じて適宜選択される。また、必要に応じてポリエチレンテレフタレート(PET)やスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂が混合されていてもよい。
(芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法)
シート又はフィルムに含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は特に制限されるものではない。芳香族ポリカーボネート樹脂は、以下に示す溶融重合法による製造方法で得られることが好ましい。以下に示す製造方法を採ることにより、分岐化度が低く、異種構造の含有率が低く、良好な色相を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を効率的に製造することができる。更に得られる芳香族ポリカーボネートは、末端水酸基濃度が低く、特定構造の環状カーボネートを所望の含有率で含むことができる。
好ましい芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、ポリカーボネートプレポリマーと下記一般式(IV)で表されるジオール化合物とをエステル交換触媒の存在下に反応させて、高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂を得る高分子量化工程と、前記高分子量化工程で副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去する環状カーボネート除去工程とを含む製造方法である。
Figure 2016000772
一般式(IV)中、Ra及びRbは、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の直鎖若しくは分岐のアルキル基、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数3〜30のシクロアルキル基、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数6〜30のアリール基、又は酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して環を形成していてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
11〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐のアルキル基を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
nは0〜30、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは1である。
一般式(IV)中、Ra及びRbは、好ましくは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数1〜8のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して炭素数3〜8の脂環式環を形成していてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。R11〜R14は、好ましくは、各々独立して、水素原子、フッ素原子又はメチル基を表す。nは、好ましくは、1〜6の整数を表す。
一般式(IV)中、Ra及びRbは、より好ましくは、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基である。特に好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基及びイソブチル基が挙げられる。R11〜R14は、より好ましくは、各々水素原子である。nは、より好ましくは、1〜3の整数を表す。
一般式(IV)で表されるジオール化合物としてより好ましいものは、下記一般式(IVa)で表される化合物である。一般式(IVa)中、Ra及びRbは、一般式(IV)におけるRa及びRbとそれぞれ同義である。
Figure 2016000772
一般式(IVa)中、Ra及びRbとしてより好ましくは、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、さらに好ましくは炭素数2〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基である。特に好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、及びイソブチル基が挙げられ、好ましくはエチル基、プロピル基、n−ブチル基、及びイソブチル基が挙げられる。
ジオール化合物としては、2−ブチル−2−エチルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジイソブチルプロパン−1,3−ジオール、2−エチル−2−メチルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、エタン−1,2−ジオール(1,2−エチレングリコール)、2,2−ジイソアミルプロパン−1,3−ジオール及び2−メチルプロパン−1,3−ジオールが挙げられる。
また、ジオール化合物の他の具体例としては、以下の構造式を有する化合物が挙げられる。
Figure 2016000772
これらのうちで特に好ましいものは、2−ブチル−2−エチルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジイソブチルプロパン−1,3−ジオール、2−エチル−2−メチルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール及び2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオールからなる群から選択される少なくとも1種のジオール化合物である。
芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法で用いられる芳香族ポリカーボネートプレポリマー(以下、単に「プレポリマー」、「PP」ともいう)は、芳香族ポリカーボネート樹脂を構成する上記一般式(I)で表される構造を主たる繰り返し単位とする重縮合ポリマーである。
プレポリマーは、一般式(I)で表される構造単位に誘導される芳香族ジヒドロキシ化合物を塩基性触媒の存在下に炭酸ジエステルと反応させる公知のエステル交換法(溶融重合法)、あるいは芳香族ジヒドロキシ化合物を酸結合剤の存在下にホスゲン等と反応させる公知の界面重合法、のいずれによっても容易に得ることができる。
上記一般式(I)で表される構造単位に誘導される芳香族ジヒドロキシ化合物としては、上記一般式(V)で表される化合物が挙げられる。
プレポリマーは、界面重合法で合成したものであっても溶融重合法で合成したものであってもよく、また、固相重合法や薄膜重合法などの方法で合成したものであってもよい。また、使用済みディスク成形品等の使用済み製品から回収されたポリカーボネートなどを用いることも可能である。これらのポリカーボネートは混合して反応前のポリマーとして利用しても差し支えない。例えば界面重合法で重合したポリカーボネートと溶融重合法で重合したポリカーボネートとを混合してもよく、また、溶融重合法あるいは界面重合法で重合したポリカーボネートと使用済みディスク成形品等から回収されたポリカーボネートとを混合して用いても構わない。
プレポリマーとして好ましくは、特定条件を満たす末端封止されたプレポリマーが挙げられる。
すなわち、プレポリマーは、その少なくとも一部が芳香族モノヒドロキシ化合物由来の末端基又は末端フェニル基(以下、合わせて「封止末端基」ともいう)で封止されていることが好ましい。
その封止末端基の割合としては、全末端量に対して60モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましい。
また、プレポリマーに含まれる芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の総モル数に対する封止末端基の割合である封止末端基濃度(全構成単位に対する封止末端基の割合)は2モル%以上、好ましくは2〜20モル%、特に好ましくは2〜12モル%である。封止末端基濃度が2モル%以上の場合にジオール化合物との反応が速やかに進行する。プレポリマーの全末端量に対する封止末端基量の割合は、プレポリマーのH−NMR解析により分析することができる。
プレポリマーの主な末端構造として、封止末端の他、芳香族ジヒドロキシ化合物由来の末端(末端水酸基)等が挙げられる。これらの末端構造の総量が全末端基量である。
プレポリマーの末端水酸基濃度は、Ti複合体による分光測定によって測定することが可能である。また末端水酸基濃度はH−NMR解析により測定することも可能である。同評価による末端水酸基濃度としては1,500ppm以下が好ましく、さらに好ましくは1,000ppm以下が好適である。この範囲以下の末端水酸基濃度又はこれに対応する範囲を超える封止末端量であると、ジオール化合物との反応が進行し易くなる傾向がある。
ここでいう「プレポリマーの全末端基量」は、例えば分岐の無いポリカーボネート(すなわち、鎖状ポリマー)0.5モルがあれば、全末端基量は1モルであるとして計算される。なお、「芳香族ポリカーボネート樹脂の全末端基量」についても同様である。
封止末端基の具体例としては、フェニル末端、クレジル末端、o−トリル末端、p−トリル末端、p−t−ブチルフェニル末端、ビフェニル末端、o−メトキシカルボニルフェニル末端、p−クミルフェニル末端などの末端基を挙げることができる。
これらの中では、ジオール化合物とのエステル交換反応で反応系より除去されやすい低沸点の芳香族モノヒドロキシ化合物で構成される末端基が好ましく、フェニル末端、p−tert−ブチルフェニル末端などが特に好ましい。
このような封止末端基は、界面重合法においてはプレポリマー製造時に末端停止剤を用いることにより導入することができる。末端停止剤の具体例としては、p−tert−ブチルフェノール、フェノール、p−クミルフェノール、長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。末端停止剤の使用量は、所望するプレポリマーの末端量(すなわち所望するプレポリマーの分子量)や反応装置、反応条件等に応じて適宜決定することができる。
溶融重合法においては、プレポリマー製造時にジフェニルカーボネートのような炭酸ジエステルを芳香族ジヒドロキシ化合物に対して過剰に使用することにより、封止末端基を導入することができる。反応に用いる装置及び反応条件にもよるが、具体的には芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して炭酸ジエステルを1.00〜1.30モル、より好ましくは1.02〜1.20モル使用する。これにより、上記末端封止量を満たすプレポリマーが得られる。
好ましくは、プレポリマーとして、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを反応(エステル交換反応)させて得られる末端封止された重縮合ポリマーを使用する。
プレポリマーを製造するとき、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物とともに、一分子中に3個以上の官能基を有する多官能化合物を併用することもできる。このような多官能化合物としてはフェノール性水酸基、カルボキシ基を有する化合物が好ましく使用される。
さらにプレポリマーを製造するとき、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物とともに、ジカルボン酸化合物を併用し、ポリエステルカーボネートとしても構わない。前記ジカルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が好ましく、これらのジカルボン酸は酸クロリド又はエステル化合物として反応させることが好ましく採用される。また、ポリエステルカーボネート樹脂を製造する際に、ジカルボン酸は、前記ジヒドロキシ成分とジカルボン酸成分との合計を100モル%とした時に、0.5〜45モル%の範囲で使用することが好ましく、1〜40モル%の範囲で使用することがより好ましい。
プレポリマーの分子量としては、Mwが5,000以上35,000未満であることが好ましい。より好ましくはMwが15,000以上35,000未満、さらに好ましくは20,000以上35,000未満、特に好ましくは20,000以上33,000以下の範囲である。
この範囲内の分子量のプレポリマーを使用すると、プレポリマー自体の粘度が低いため、プレポリマーの製造を高温、高剪断、長時間にて実施する必要がなくなり、及び/又は、ジオール化合物との反応を高温、高剪断、長時間にて実施する必要がなくなる傾向がある。
芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法においては、末端封止されたプレポリマーに特定構造のジオール化合物をエステル交換触媒存在下、減圧条件にて作用させることにより、プレポリマーから高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂が生成する。この反応は温和な条件で高速に進み、高品質の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる。
ここで、上記特定構造のジオール化合物を反応させる方法においては、プレポリマーとジオール化合物との反応が進行するとともに、ジオール化合物の構造に対応した構造を有する環状体である環状カーボネートが副生する。副生する環状カーボネートを反応系外へ除去することによって、プレポリマーの高分子量化が更に進行し、最終的には従来のホモポリカーボネート(例えばビスフェノールA由来のホモポリカーボネート樹脂)とほぼ同じ構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる。
なお、高分子量化工程と環状カーボネート除去工程とは、必ずしも物理的及び時間的に別々の工程とする必要はなく、実際には同時に行われる。好ましい製造方法は、プレポリマーとジオール化合物とを、エステル交換触媒の存在下に反応させて高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂を得るとともに、前記高分子量化反応で副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去する工程を含むものである。
副生する環状カーボネートは、上記一般式(II)で表される構造を有する化合物である。なお、副生する環状カーボネートの構造等の詳細は、既述のとおりである。副生する環状カーボネートは使用するジオール化合物に対応する構造を有しており、ジオール化合物由来の環状体であると考えられるが、このような高分子量化とともに環状カーボネートが副生される反応機構は、必ずしも明らかではない。
一般式(IV)で表されるジオール化合物を用いた製造方法によって得られる高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂は、ジオール化合物由来の構造単位をほとんど含まず、樹脂の骨格はホモポリカーボネート樹脂とほぼ同じである。すなわち、連結剤であるジオール化合物由来の構造単位が骨格に含まれないか、含まれるとしても極めて少量であることから、熱安定性が極めて高く耐熱性に優れている。一方で、従来のホモポリカーボネート樹脂と同じ骨格を有しながら、N値が低い、異種構造を有する構造単位の割合が少ない、色相に優れている等の優れた品質を備えることができる。
なお、この製造方法によって得られる芳香族ポリカーボネート樹脂の骨格にジオール化合物由来の構造単位が含まれてもよい。その場合、高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の全構造単位量中におけるジオール化合物由来の構造単位の割合は1モル%以下、より好ましくは0.1モル%以下である。
以下に、芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法の詳細な条件を説明する。
(i)ジオール化合物の添加
プレポリマーに上記一般式(IV)で表されるジオール化合物を添加混合し、高分子量化反応器内で高分子量化反応(エステル交換反応)を行う。
ジオール化合物の使用量としては、プレポリマーの全末端基量1モルに対して0.01〜1.0モルであるのが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0モルであり、さらに好ましくは0.2〜0.7モルである。
ただし、比較的沸点が低いジオール化合物を使用するときは、反応条件によっては一部が揮発などにより反応に関与しないまま系外へ出る可能性を考慮して、予め過剰量を添加することもできる。例えば、プレポリマーの全末端基量1モルに対して最大50モル、好ましくは10モル、より好ましくは5モル添加することもできる。
ジオール化合物の添加混合方法については特に制限されないが、ジオール化合物として沸点の比較的高いもの(沸点約350℃以上)を使用する場合には、前記ジオール化合物は、減圧度10torr(1333Pa以下)以下の高真空下で、直接高分子量化反応器へ供給することが好ましい。より好ましくは、減圧度2.0torr以下(267Pa以下)、より好ましくは0.01〜1torr(1.3〜133Pa以下)である。ジオール化合物を高分子量化反応器へ供給する際の減圧度が不充分であると、副生物(フェノール)によるプレポリマー主鎖の開裂反応が進行してしまい、高分子量化するためには反応混合物の反応時間を長くせざるを得なくなる場合がある。
一方、ジオール化合物として沸点の比較的低いもの(沸点約350℃未満)を使用する場合には、プレポリマーとジオール化合物とを比較的ゆるやかな減圧度で混合することもできる。例えば、プレポリマーとジオール化合物と常圧に近い圧力で混合してプレポリマー混合物としたのち、プレポリマー混合物を減圧条件下の高分子量化反応に供することにより、沸点の比較的低いジオール化合物であっても揮発が最小限に抑えられ、過剰に使用する必要性がなくなる。
(ii)エステル交換反応(高分子量化反応)
プレポリマーとジオール化合物との高分子量化反応に使用する温度としては、240℃〜320℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは260℃〜310℃、より好ましくは280℃〜310℃である。
また、減圧度としては13kPa(100torr)以下が好ましく、さらに好ましくは1.3kPa(10torr)以下、より好ましくは0.67〜0.013kPa(5〜0.1torr)である。
高分子量化反応に使用されるエステル交換触媒(以下、単に「触媒」ともいう)としては塩基性化合物が挙げられ、例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物、含窒素化合物等が挙げられる。
このような化合物としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属等の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物及びアルコキシド;4級アンモニウムヒドロキシド及びそれらの塩;アミン類等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独若しくは組み合わせて用いることができる。
アルカリ金属化合物としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が用いられる。
アルカリ土類金属化合物としては、具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が用いられる。
含窒素化合物としては、具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル基及び/又はアリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン類、プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類、あるいは、アンモニア、水素化ホウ素テトラメチルアンモニウム、水素化ホウ素テトラブチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラブチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラフェニルアンモニウム等の塩基あるいは塩基性塩等が用いられる。
エステル交換触媒としては、亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛の塩も好ましく用いられ、これらは単独若しくは組み合わせて用いることができる。
エステル交換触媒としては、具体的には、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)等が挙げられる。
これらの触媒は、プレポリマーを構成する芳香族ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、1×10−9〜1×10−3モルの比率で、好ましくは1×10−7〜1×10−5モルの比率で用いられる。
(iii)環状カーボネート除去工程
高分子量化反応によってプレポリマーが高分子量化されて所望の分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂が得られると同時に、副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去する。副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去することによってプレポリマーの高分子量化反応が更に進行する。
環状カーボネートの除去方法としては、例えば同じく副生するフェノール等の芳香族モノヒドロキシ化合物及び未反応のジオール化合物などとともに反応系より留去する方法が挙げられる。反応系より留去する場合の温度は、240℃〜320℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは260℃〜310℃、より好ましくは280℃〜310℃である。
環状カーボネートの除去については、副生する環状カーボネートの少なくとも一部について行う。副生する環状カーボネートの残存量の好ましい上限は3000ppmである。すなわち、本発明の前記一般式(IV)で表される構造を有するジオール化合物を用いた製造方法では、前記一般式(II)で表される構造を有する環状カーボネートが3000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、特に好ましくは300ppm以下含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる。その場合、前記一般式(II)で表される構造を有する環状カーボネートの含有割合の下限は、通常は検出限界値となり、好ましくは0.0005ppm以上である。
なお、環状カーボネートの含有割合は、GC−MSで測定した値である。
反応系外へ留去された環状カーボネートは、その後加水分解、精製等の工程を経て回収・再利用(リサイクル)することができる。環状カーボネートとともに留去されるフェノールについても同様に回収し、ジフェニルカーボネート製造工程へ供給して再利用することができる。
(iv)その他の製造条件
プレポリマーとジオール化合物との高分子量化反応により、反応後の芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)がプレポリマーの重量平均分子量(Mw)よりも5,000以上高めることが好ましく、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは15,000以上高めるのが好ましい。
高分子量化反応における装置の種類や釜の材質などは公知のいかなるものを用いてもよく、連続式で行ってもよくまたバッチ式で行ってもよい。上記の反応を行うに際して用いられる反応装置は、錨型攪拌翼、マックスブレンド攪拌翼、ヘリカルリボン型攪拌翼等を装備した縦型であっても、パドル翼、格子翼、メガネ翼等を装備した横型であってもスクリューを装備した押出機型であってもよく、また、これらを重合物の粘度を勘案して適宜組み合わせた反応装置を使用することが好適に実施される。好ましくは横型撹拌効率の良い回転翼を有し、減圧条件にできるユニットをもつものである。さらに好ましくは、ポリマーシールを有し、脱揮構造をもつ2軸押出機あるいは横型反応機である。
装置の材質としては、SUS310、SUS316やSUS304等のステンレスや、ニッケル、窒化鋼などポリマーの色調に影響のない材質が好ましい。また装置の内側(ポリマーと接触する部分)には、バフ加工あるいは電解研磨加工を施したり、クロムなどの金属メッキ処理を行ったりしてもよい。
高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂に、触媒失活剤(以下、単に「失活剤」ともいう)を適用してもよい。一般的に失活剤としては公知の酸性物質等が挙げられ、これら失活剤の添加による触媒の失活が好適に実施される。これらの失活剤として具体的には、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、パラトルエンスルホン酸ブチル等の芳香族スルホン酸エステル類、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、パラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等の芳香族スルホン酸塩、ステアリン酸クロリド、酪酸クロリド、塩化ベンゾイル、トルエンスルホン酸クロリド、塩化ベンジル等の有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸等のアルキル硫酸塩、リン酸類、亜リン酸類等が挙げられる。
これらのうちで、パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸ブチル、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、及びパラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩からなる群から選択される触媒失活剤が好適に用いられる。
触媒失活剤の添加は、上記高分子量化反応終了後に従来公知の方法でポリカーボネート樹脂に混合することができる。例えば、ターンブルミキサーやヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサーで代表される高速ミキサーで分散混合した後、押出機、バンバリーミキサー、ロール等で溶融混練する方法が適宜選択される。
触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を0.013〜0.13kPa(0.1〜1torr)の圧力、200〜350℃の温度で脱揮除去する工程を設けてもよく、このためには、パドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新能の優れた攪拌翼を備えた横型装置、あるいは薄膜蒸発器が好適に用いられる。好ましくは、ポリマーシールを有し、ベント構造をもつ2軸押出機あるいは横型反応機である。
[芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムの製造方法]
芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムの製造方法は、一般的な芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムの製造方法に準じるものでよく、特に限定された手法を要しない。例えば、一般式(I)で表される構造単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する重合反応中若しくは該重合反応終了時、又は該重合反応に使用した触媒を触媒失活剤で失活後であってペレット化する前のいずれかの時期に各種添加剤や他の熱可塑性樹脂を添加して、芳香族ポリカーボネート樹脂に混合することによりシート又はフィルムを製造することもできる。各種添加剤や他の熱可塑性樹脂の混合は、必要に応じて行なうことでよく、例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法における触媒失活剤の混合と同時に行ってもよく、別途行ってもよい。
高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂を用いてシート又はフィルムを作製する方法としては、溶融押出法(例えば、Tダイ成形法)、キャスト塗工法(例えば、流延法)、カレンダー成形法、熱プレス法等、様々な製膜方法を用いることができ、特に限定されない。好ましくは、溶融押出法が挙げられる。すなわち、シート又はフィルムを溶融押出法で作製する装置は、周知の溶融押出成形機を用いればよい。
以下、芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムの製造方法の一実施形態について説明する。
まず、芳香族ポリカーボネート樹脂を含む樹脂材料を押出機に投入して溶融混練し、T型ダイの先端(リップ)からシート状の溶融熱可塑性樹脂材料を押し出す。
溶融押出機としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機等が挙げられる。また、2層以上からなる多層の熱可塑性樹脂フィルムを製造する場合には、複数の溶融押出機を用いてもよい。例えば、3層の熱可塑性樹脂フィルムを製造する場合には、3基又は2基の溶融押出機を用いて、それぞれの熱可塑性樹脂材料を溶融混練し、溶融した樹脂材料を3種3層分配型又は2種3層分配型フィードブロックで分配し、単層T型ダイに流入させて共押出してもよいし、それぞれの溶融した樹脂材料をマルチマニホールドダイに別々に流入させてリップ手前で3層構成に分配して共押出してもよい。
溶融押出機には、適宜、樹脂材料中の比較的大きな異物等をろ過、除去する為のスクリーンメッシュ、樹脂材料中の比較的小さな異物、ゲル等をろ過、除去する為のポリマーフィルター、押し出す樹脂量を安定定量化する為のギアポンプなどを設けてもよい。
T型ダイは、スリット状のリップを有するダイであり、例えば、フィードブロックダイ、マニホールドダイ、フィッシュテールダイ、コートハンガーダイ、スクリューダイ等が挙げられる。多層のシート又はフィルムを製造する場合には、マルチマニホールドダイなどを用いてもよい。
また、T型ダイのリップの幅方向の長さは、特に制限は無いが、製品幅に対して1.2〜1.5倍であることが好ましい。リップの開度は、所望する製品の厚みにより適宜調整すればよいが、通常、所望する製品の厚みの1.01〜10倍、好ましくは1.1〜5倍である。リップの開度の調整は、T型ダイの幅方向に並んだボルトで調整するのが好ましい。リップ開度は幅方向に一定でなくてもよく、例えば、端部のリップ開度を中央部のリップ開度より狭く調整することでドローレゾナンス現象を抑制することができる。
次いで、押し出されたシート状の樹脂材料を、2本の冷却ロールの間に挟み込んで成形する。2本の冷却ロールは、互いに金属ロールであってもよいし、互いに弾性ロールであってもよいし、一方が金属ロールであり、他方が弾性ロールであってもよい。それぞれロールの表面状態は、特に限定されず、例えば、鏡面であってもよく、模様や凹凸等があってもよい。
金属ロールとしては、高剛性であれば特に限定されず、例えば、ドリルドロール、スパイラルロール等が挙げられる。
弾性ロールとしては、例えば、ゴムロールや、外周部に金属製薄膜を備えた弾性ロール(以下、金属弾性ロールという場合がある。)などが挙げられ、なかでも、金属弾性ロールであることが好ましい。
2本の冷却ロール間の隙間(ロールギャップ)は、所望の製品厚みにより適宜調整され、シート状の樹脂材料の両面が、それぞれ冷却ロールの中央部の表面に接する様にロールギャップが設定される。そのため、シート状の樹脂材料は、2本の冷却ロールで挟み込まれると、冷却ロールの中央部から一定の圧力を受けてシート又はフィルムに成形される。
2本の冷却ロールの圧着圧はロール剛性の許容範囲において任意である。また、シート又はフィルム成形品の成形速度についても、適宜調整可能である。
成形されるシート又はフィルムの構造は、特に限定されず、単層構造であっても、複数の層構造であってもよい。複数の層構造である場合には、例えば、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂などの同一又は異なる熱可塑性の樹脂材料の2層、3層又は4層以上の構造であってもよい。
本実施形態のシート又はフィルムは、液晶表示装置やプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイにおける光学フィルムなどに好適に用いることができ、特に、基材フィルム表面にハードコート処理やアンチグレア処理等の表面処理を施して形成される光学フィルムにおける基材フィルムとしてより好適に用いることができる。
さらに、本実施形態のシート又はフィルムは、優れた機械的及び光学的特性を有している為、自動車用銘板、自動車内装部品等の自動車分野、電子機器筺体等のOA機器分野、電子・電気分野等の一般工業分野にも好適に適用することができる。
具体例としては、電気・電子分野などの各種原材料、自動車・航空機産業における各種材料、その他光学機器部品、電車や自動車などの車載用品、各種建築部材、コピー機やファクシミリ、パソコンなどOA機器の各種部品在料、テレビや電子レンジなど家電製品の各種部品材料、コネクターやICトレイなどの電子部品用途、ヘルメット、プロテクター、保護面などの保護具部材、各異医療用機器の部材、などを挙げる事ができるがこれらに限定されない。
以上のように特に好ましい本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムの用途としては、低位相差比且つ良好な色相を必要とする成形品が挙げられる
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何らの制限を受けるものではない。なお、実施例中の測定値は、得られた芳香族ポリカーボネートプレポリマー、芳香族ポリカーボネート樹脂及び芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム(以下、共通する場合は、まとめて「ポリカーボネート」ともいう)の分析及び物性評価は、以下の方法あるいは装置を用いて測定した。
(1)重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn):
GPCを用い、クロロホルムを展開溶媒として、分子量既知(分子量分布=1)の標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、“PStQuickMP-M”)を用いて検量線を作成した。測定した標準ポリスチレンから各ピークの溶出時間と分子量値をプロットし、3次式による近似を行い、較正曲線とした。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下の計算式により、ポリスチレン換算値として求めた。
Mw=Σ(W×M)÷Σ(W
Mn=Σ(N×M)÷Σ(N
ここで、iは分子量Mを分割した際のi番目の分割点、Wはi番目の重量、Nはi番目の分子数、Mはi番目の分子量を表す。また分子量Mとは、較正曲線の同溶出時間でのポリスチレン分子量値を表す。
(2)分子量分布(Mw/Mn)
ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)及びポリスチレン換算数平均分子量(Mn)より以下の計算式より求めた。
分子量分布=Mw/Mn
[測定条件]
装置;東ソー株式会社製、HLC−8320GPC
カラム;ガードカラム:TSKguardcolumnSuperMPHZ-M×1本
分析カラム:TSKgelSuperMultiporeHZ-M×3本
溶媒;HPLCグレードクロロホルム
注入量;10μL
試料濃度;0.2w/v%HPLCグレードクロロホルム溶液
溶媒流速;0.35ml/min
測定温度;40℃
検出器;RI
(3)末端水酸基濃度(ppm)
H−NMRの解析結果から末端水酸基を観測することによって測定した。
H−NMRによるプレポリマー(PP)中の末端水酸基濃度は、樹脂サンプル0.05gを1mlの重水素置換クロロホルム(0.05w/v%TMS含有)に溶解し、23℃で1H−NMRを測定することで求めた。具体的には、4.7ppmの水酸基ピークと7.0〜7.5ppm付近のフェニル及びフェニレン基(末端フェニル基及びBPA骨格由来のフェニレン基)の積分比より、PP中の末端水酸基濃度(OH濃度)を算出した。なお、芳香族ポリカーボネート樹脂中の末端水酸基濃度も、同様に測定し、算出することができる。
なお、H−NMRの測定条件の詳細は以下のとおりである。
測定装置:日本電子社製LA-500(500MHz)
測定核:
relaxationdelay:1s
x_angle:45deg
x_90_width:20μs
x_plus:10μs
scan:500times
(4)末端フェニル基濃度(封止末端基濃度、Ph末端量;モル%)
H−NMRの解析結果から、下記数式により求めた。
Figure 2016000772
具体的には、樹脂サンプル0.05gを、1mlの重水素置換クロロホルム(0.05w/v%TMS含有)に溶解し、23℃で1H−NMRスペクトルを測定し、7.4ppm前後の末端フェニル基と7.0〜7.3ppm付近のフェニレン基(BPA骨格由来)の積分比より、PPの末端フェニル基量及び末端フェニル基濃度を測定した。なお、H−NMRの測定条件の詳細は上記と同様である。
(5)環状カーボネート含有量
サンプルとなる芳香族ポリカーボネート樹脂10gをジクロロメタン100mlに溶解し、1000mlのメタノール中へ攪拌しながら滴下した。沈殿物を濾別し、濾液中の溶媒を除去した。得られた固体をGC−MSにより以下の測定条件で分析した。なお、この測定条件での検出限界値は0.0005ppmである。
GC−MS測定条件:
測定装置:AgilentHP6890/5973MSD
カラム:キャピラリーカラムDB−5MS,30m×0.25mmI.D.,膜厚0.5μm
昇温条件:50℃(5minhold)−300℃(15minhold),10℃/min
注入口温度:300℃、打ち込み量:1.0μl(スプリット比25)
イオン化法:EI法
キャリアーガス:He,1.0ml/min
Aux温度:300℃
質量スキャン範囲:33−700
溶媒:HPLC用クロロホルム
内部標準物質:2,4,6−トリメチロールフェノール
(6)異種構造の含有量
樹脂サンプル0.05gを1mlの重水素置換クロロホルム(0.05w/v%TMS含有)に溶解し、23℃で核磁気共鳴分析装置H−NMRを用いて高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂(PC)中の異種構造の含有量を測定した。文献Polymer42(2001)7653-7661中のP.7659に記載されたHa及びHbのH−NMRの帰属により、以下に示す異種構造(PSA)の含有(ppm)量を測定した。なお、H−NMRの測定条件は上記と同様である。
Figure 2016000772
(7)N値
高化式フローテスターCFT−500D(島津製作所(株)製)を用いて、芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムを切断して、120℃で5時間乾燥して得た芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム試料について、穴径1.0mmφ、長さ10mmのダイを用い、280℃、荷重160kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積をQ160値とし、同様に280℃、荷重10kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積をQ10値として、これらを用いて下式により求めた。なお、Q値は溶融樹脂の流出量(ml/sec)である。
N値=(log(Q160値)-log(Q10値))/(log160-log10))
(8)色相(YI値)
芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム試料を、特級ジクロロメタンへ15体積%となるように溶解して測定用試料を調製し、日本電色工業株式会社製分光色差計「SD6000」により、光路長50mmにてYI値を測定した。
(9)位相差比
幅330mmのTダイ成形機より作成した260mm幅フィルム試料より両端50mmを切り除いた160mm幅フィルム試験片について位相差測定装置「株式会社フォトニックラティス製複屈折評価システムWPA−100」を用いて、測定波長543nmで位相差を測定した。
位相差比は、543nmで測定した位相差Reの値を用い、フィルム幅内で測定された位相差最大値(Remax)と位相差最小値(Remin)をと用い、下式より算出した。
(Remax−Remin)/Remax
位相差比が大きいほど位相差のバラつきが大きく、光学的物性が不均一であることを示し、位相差比が小さいほど位相差のバラつきが小さく、光学的物性が均一であり、加熱後の熱収縮や低そり性に優れることを示している。
以下の実施例及び比較例で使用したジオール化合物の化学純度はいずれも98〜99%、塩素含有量は0.8ppm以下、アルカリ金属、アルカリ土類金属、チタン及び重金属(鉄、ニッケル、クロム、亜鉛、銅、マンガン、コバルト、モリブデン、スズ)の含有量は各々1ppm以下である。芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルの化学純度は99%以上、塩素含有量は0.8ppm以下、アルカリ金属、アルカリ土類金属、チタン及び重金属(鉄、ニッケル、クロム、亜鉛、銅、マンガン、コバルト、モリブデン、スズ)の含有量は各々1ppm以下であった。
[芳香族ポリカーボネート樹脂の製造例1:PC−1]
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン66.480kg(291.209モル)、ジフェニルカーボネート70.179kg(327.610モル)及び触媒として炭酸セシウム0.17μモル/モル(BPAに対してのモル数)を攪拌機及び留出装置付の300Lの反応に入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。減圧度を0.046MPa(345torr)に調整し、160℃にて原料を加熱溶融し、1時間攪拌した。
その後、9時間かけて、徐々に昇温、減圧度を下げながら、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行なった。最終的に系内を260℃、減圧度を0.05kPa(0.38torr)以下とし、さらに1時間保持し、芳香族ポリカーボネートプレポリマー(以下、「PP−E」と略すことがある)を得た。
得られた芳香族ポリカーボネートプレポリマー(PP−E)のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は27900、末端水酸基濃度(末端OH基濃度)は280ppm、封止末端濃度(末端Ph基濃度)は5.8mol%であった。
末端水酸基濃度は、H−NMRより算出した値であり、全ポリマー中に含まれる末端OH基濃度を示す。また、末端Ph基濃度は、H−NMRより算出した値であり、全フェニレン基量及びフェニル末端中のフェニル基量(水酸基で置換されたフェニル基を含む)から算出される封止末端基濃度を示す。
芳香族ポリカーボネートプレポリマー(PP−E)をメルター(二軸押出機)により樹脂温度280℃に溶融し、13300g/hrの速さで、予め300℃に加熱した回転数180rpmのニーダーへ連続供給した。
同時に、アンカー翼を具備した連結剤調整槽において、ジオール化合物である2−ブチル−2−エチルプロパン−1,3−ジオール(BEPG)3000gを75〜80℃で加熱溶融し、0.005mol/Lの炭酸セシウム(CsCO)水溶液82mlを添加、攪拌し、0.1torrで1時間、脱水処理(水分含有量は検出限界以下)を行った。得られた触媒を含有するBEPGを124g/hrの速さで上記ニーダーへPP−Eと共に連続供給した。
PP−Eの全末端量(封止末端基量)1モルに対して0.25モルの流量でBEPGを連続供給し、触媒である炭酸セシウム(CsCO)をBPAの1モルに対して0.33μモルの割合で連続供給した。
引き続き、ニーダー出口より280℃に保温された輸送管を経由し、PP−Eと炭酸セシウムが添加されたBEPGの混合物を流速13425g/hrで横型攪拌反応器へ供給し、高分子量化反応を行った。このときの横型攪拌反応器の器内圧力は0.5torr、樹脂温度は300℃であった。
横型攪拌反応器の平均滞留時間が60分になるように液面レベルを制御し、高分子量化反応と同時に副生するフェノールと環状カーボネート(5−ブチル−5−エチル−1,3−ジオキサン−2−オン)の留去を行った。横型攪拌反応器の撹拌翼は20rpmで撹拌した。
さらに横型攪拌反応器で連結高分子量化反応を行った後に得られた芳香族ポリカーボネート樹脂に対し、触媒失活剤としてパラトルエンスルホン酸ブチル(p−TSB)5ppmと酸化防止剤としてオクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(イルガノックス1076・BASF社製)1000ppmを二軸混練機により混練した。得られたポリカーボネート樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は42900、分子量分布(Mw/Mn)は2.4であり、また、得られたポリカーボネート樹脂のN値は1.19、末端水酸基濃度は400ppm、異種構造(PSA;一般式(III)で表わされる構造単位であって、X=C(CHであるもの)の量は500ppm、環状カーボネート(5−ブチル−5−エチル−1,3−ジオキサン−2−オン)の含有量は1ppmであった。
[芳香族ポリカーボネート樹脂の製造例2:PC−2]
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン64.662kg(283.245モル)、ジフェニルカーボネート63.710kg(297.41モル)及び触媒として炭酸セシウム1.0μモル/モル(BPAに対してのモル数)を攪拌機及び留出装置付の300Lの反応に入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。減圧度を0.046MPa(345torr)に調整し、160℃にて原料を加熱溶融し、1間攪拌した。
その後、10時間かけて、徐々に昇温、減圧度を下げながら、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行なった。最終的に系内を260℃、減圧度を0.05kPa(0.38torr)以下とし、さらに1時間保持し、芳香族ポリカーボネートプレポリマー(以下、「PP−F」と略すことがある)を得た。
得られた芳香族ポリカーボネートプレポリマー(PP−F)のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は30000、OH濃度は1200ppm、フェニル末端濃度(Ph末端濃度)は2.0mol%であった。OH濃度は、NMRより算出した値であり、全ポリマー中に含まれるOH基濃度を示す。また、Ph末端濃度は、NMRより算出した値であり、全フェニレン基及びフェニル末端中のフェニル基(水酸基で置換されたフェニル基を含む)末端濃度を示す。
芳香族ポリカーボネートプレポリマー(PP−F)をメルター(二軸押出機)により樹脂温度を280℃に溶融し、13300g/hrの速さで予め300℃へ加熱した回転数140rpmのニーダーへ連続供給した。
引き続き、ニーダー出口より280℃に保温された輸送管を経由し、芳香族ポリカーボネートプレポリマー(PP−F)を流速13300g/hrで横型攪拌反応器へ供給し、高分子量化反応を行った。このときの横型攪拌反応器の器内圧力は0.5torr、樹脂温度は300℃であった。
横型攪拌反応器の平均滞留時間が120分になるように液面レベルを制御し、高分子量化反応と同時に副生するフェノールの留去を行った。横型攪拌反応器の撹拌翼は20rpmで撹拌した。
さらに横型攪拌反応器で連結高分子量化反応を行った後に得られたポリカーボネート樹脂に対し、触媒失活剤としてパラトルエンスルホン酸ブチル(p−TSB)5ppmと酸化防止剤としてオクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(イルガノックス1076・BASF社製)1000ppmを二軸混練機により混練した。得られたポリカーボネート樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は44700、分子量分布(Mw/Mn)は2.6であり、得られたポリカーボネート樹脂のN値は1.29、末端水酸基濃度は1100ppm、異種構造(PSA)量は2000ppmであった。
[実施例1]
製造例1で得られた芳香族ポリカーボネート樹脂PC−1を用い、下記条件下にて成形加工し、芳香族ポリカーボネート樹脂シートを得た。
フィルム成形機:東芝機械株式会社製フィルム試験機 SPU‐03026W
押出機:ベント式26mmФ二軸スクリュウ
ダイス:有効幅330mm
押出温度:260℃
吐出量:15kg/h
成形法:非ロール押し付け成形
フィルム厚み:100μm
得られた芳香族ポリカーボネート樹脂シートについて、位相差比及び色相を評価した。評価結果を下表に示す。
[比較例1]
比較例1において、樹脂をPC−2に変更したこと以外は、実施例1と同様に成形加工し、同様にして評価した。
Figure 2016000772
表1から、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムは、光学的性質、特に位相差比と色相に優れることが分かる。

Claims (12)

  1. 下記一般式(I)で表される構造単位及び下記一般式(III)で表わされる構造単位を含み、下記一般式(III)で表わされる構造単位の含有量が2000ppm未満である芳香族ポリカーボネート樹脂を含むシート又はフィルム。
    Figure 2016000772

    (式中、R及びRは、各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、又は炭素数6〜20のアリールオキシ基を表し、p及びqは、0〜4の整数を表し、Xは、単結合又は下記(Ia)の群から選択される基を表す)
    Figure 2016000772

    (ここで、R及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表すか、あるいはRとRは、相互に結合して脂肪族環を形成していてもよい)
    Figure 2016000772

    (式中、Xは、上記と同義である)
  2. YI値が0.9以下である、請求項1に記載のシート又はフィルム。
  3. 下記式(1)で示される位相差比が0.35以下である、請求項1又は2に記載のシート又はフィルム。
    ((Remax)−(Remin))/(Remax) ・・・(1)
  4. 芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基含有量が、1000ppm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート又はフィルム。
  5. 芳香族ポリカーボネート樹脂が、下記一般式(II)で表される環状カーボネートを含み、その含有量が芳香族ポリカーボネート樹脂に対して3000ppm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート又はフィルム。
    Figure 2016000772

    (式中、Ra及びRbは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の直鎖若しくは分岐のアルキル基、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数3〜30のシクロアルキル基、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数6〜30のアリール基、又は酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して環を形成していてもよく、R11〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐のアルキル基を表し、nは0〜30の整数を表す)
  6. 環状カーボネートが、下記一般式(IIa)で表される、請求項5に記載のシート又はフィルム。
    Figure 2016000772

    (式中、Ra及びRbは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の直鎖若しくは分岐のアルキル基、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数3〜30のシクロアルキル基、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数6〜30のアリール基、又は酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して環を形成していてもよい)
  7. 芳香族ポリカーボネート樹脂の下記式(2)で表される構造粘性指数N値が、1.25以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシート又はフィルム。
    N値=(log(Q160値)-log(Q10値))/(log160―log10) ・・・(2)
  8. 芳香族ポリカーボネート樹脂が、溶融重合法により得られる、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシート又はフィルム。
  9. 芳香族ポリカーボネート樹脂が、ポリカーボネートプレポリマーと下記一般式(IV)で表されるジオール化合物とをエステル交換触媒の存在下に反応させて高分子量化する高分子量化工程と、高分子量化工程で副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去する環状カーボネート除去工程とを含む製造方法により得られる、請求項1〜8のいずれか1項に記載のシート又はフィルム。
    Figure 2016000772

    (式中、Ra及びRbは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の直鎖若しくは分岐のアルキル基、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数3〜30のシクロアルキル基、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数6〜30のアリール基、又は酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して環を形成していてもよく、R11〜R13は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐のアルキル基を表し、nは、0〜30の整数を表す)
  10. 一般式(IV)で表されるジオール化合物が、下記一般式(IVa)で表される化合物である、請求項9に記載のシート又はフィルム。
    Figure 2016000772

    (式中、Ra及びRbは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の直鎖若しくは分岐のアルキル基、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数3〜30のシクロアルキル基、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数6〜30のアリール基、又は酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して環を形成していてもよい)
  11. ジオール化合物が、2−ブチル−2−エチルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジイソブチルプロパン−1,3−ジオール、2−エチル−2−メチルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、及び2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオールからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項10に記載のシート又はフィルム。
  12. 芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量が、35,000〜100,000である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のシート又はフィルム。
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