従来の処理装置101は、汚水の煮沸殺菌処理過程において発生する蒸気を完全に冷却することができずに、下水配管107へ排出することが問題であった。この蒸気は、煮沸槽102がボイラー状となって蒸気圧が高くなり、高温かつ高圧の蒸気となるため、下水配管107を損傷させる危険性があった。
そこで、感染性廃棄物を適切に煮沸殺菌処理するに際し、煮沸後の汚水とともに蒸気を適切に冷却する必要性があった。
そこで、本発明の感染性廃棄物処理方法は、煮沸対象物である感染性廃棄物を煮沸する煮沸槽と、煮沸対象物を冷却し、排出する冷却槽と、前記煮沸槽から前記冷却槽へ煮沸対象物を移送する移送管と、前記煮沸槽と前記冷却槽の上部であって前記煮沸槽内の水位センサの最高水位よりも上方に位置して煮沸槽内で発生する蒸気を前記冷却槽へ通気する蒸気通気路と、煮沸対象物を一時貯留して前記煮沸槽へ移送する貯留槽を有し、前記貯留槽に所定量の煮沸対象物を貯留すると、前記煮沸槽内の水位センサの最高水位に達するまで煮沸対象物を前記煮沸槽へ移送する第一段階と、前記煮沸槽内の水位センサにより最低水位よりも高水位となると、ヒータを稼働開始し、その後に水温計の所定温度の感知により前記煮沸槽内の撹拌機を稼働させ、水温センサが所定温度以上の煮沸温度を感知後に所定時間の煮沸を継続するとともに、前記所定時間の経過後に前記ヒータ及び前記撹拌機の稼働を停止する第二段階と、煮沸槽内に導水部から水を供給し、前記煮沸槽と前記冷却槽を連結する移送管により、前記煮沸槽の煮沸対象物を前記冷却槽へ移送し、前記冷却槽の排出口より排出する第三段階にあって、第二段階の前記撹拌機の稼働とともに、前記冷却槽の通気口近傍にあり放水部に接続するミストノズルから噴霧を開始することを特徴とする。
また、本発明の感染性廃棄物処理装置は、煮沸対象物である感染性廃棄物を煮沸する煮沸槽と、煮沸槽と隣接配置する冷却槽と、前記煮沸槽から前記冷却槽へ煮沸対象物を移送する移送管と、煮沸により発生する蒸気を前記煮沸槽から前記冷却槽へ通気する蒸気通気路と、を有し、前記煮沸槽は、前記煮沸対象物を投入する投入部と、外部から水を導入する導水部と、前記煮沸槽内を加熱するヒータと、からなり、前記冷却槽は、前記冷却槽内に水を供給する放水部と、冷却後の前記煮沸対象物を排出する排出口と、からなり、前記蒸気通気路は、前記煮沸槽と前記冷却槽の上部であって、煮沸槽内に投入される煮沸対象物よりも高い位置に配置することを特徴とする。
また、冷却槽の放水部は、蒸気通気路に接続する前記冷却槽側の通気口の近傍に配置することが好ましい。
また、却槽の放水部に、ミストノズルを接続することが好ましい。
また、移送管は逆U字型の配管であり、そのサイフォン現象により煮沸槽から冷却槽へ煮沸対象物を移送するものであって、前記移送管の一部が前記煮沸槽の内部にあることが好ましい。
また、煮沸対象物を一時貯留する貯留槽を有し、前記貯留槽内の前記煮沸対象物が所定量に達したことを前記貯留槽内の水位センサが感知することにより、ポンプにより貯留された煮沸対象物を煮沸槽に移送することが好ましい。
また、前記煮沸槽は、その内部の煮沸対象物の最高水位を検知する水位センサがあり、その最高水位よりも上方に蒸気通気路を連結する通気口が開口することが好ましい。
請求項1に記載の発明により、貯留槽の貯留される煮沸対象物を自動で適切に殺菌処理するとともに、下水に高圧蒸気が噴出されるという危険を回避することができる。
請求項2に記載の発明により、煮沸槽で煮沸するに際して発生する蒸気が蒸気通気路を介して冷却槽に通気し、冷却槽で放水部により冷却することができる。これにより、下水道に高圧の蒸気が噴出することを防止することができる。
請求項3に記載の発明により、冷却槽の放水部が蒸気通気路と接続する通気口の近傍にあり、拡散する蒸気が冷却槽に通気したときに冷却される。これにより、蒸気の冷却を適切に行うことができる。
請求項4に記載の発明により、放水部はミストノズルを用いて水を噴霧して行うことにより、拡散する蒸気を適切に冷却することができる。
請求項5に記載の発明により、従来の感染性廃棄物処理装置にあった煮沸対象物が煮沸される前に移送管の内部に入り込み、煮沸されずに排出されるという不都合を回避することができる。移送管の一部が煮沸槽の内部にあることで、移送管の内部に入り込んだ煮沸対象物も煮沸槽の煮沸により加熱殺菌することができる。
請求項6の記載の発明により、貯留槽に貯留した煮沸対象物を自動で感染性廃棄物に移送することができる。これにより、使用に適した感染性廃棄物処理装置とすることができる。
請求項7に記載の発明により、貯留槽から移送される煮沸対象物が最高水位となる位置よりも高い位置に蒸気通気路が配置していることで、蒸気通気路に煮沸対象物が混入されることを防止することができる。
本発明の感染性廃棄物処理装置1について、図面に沿って説明する。本発明の感染性廃棄物処理装置1は、主に、血液、体液、創部洗浄後の生理食塩水等の常温において液体状の廃棄物を対象とする。その他にも、動物の糞や人糞等の粘体性物質であっても熱水溶解性の処理袋に入れて処理できるものも対象とする。これらの感染性廃棄物が本発明の煮沸対象物である。
図1に示すように、本発明の感染性廃棄物処理装置1は、煮沸対象物を一時貯留し、自動的に煮沸槽21に移送する貯留槽71と配管17を介して連結して用いる。但し、後述の通り、感染性廃棄物処理装置1は、煮沸対象物を直接投入することができる第二投入部22bがあり(図2参照)、必ずしも貯留槽71と連結して用いる必要はない。
貯留槽71を連結する感染性廃棄物処理装置1は、感染性廃棄物が多量に発生する大型の病院や研究施設における使用に適した実施形態である。本実施形態の貯留槽71は、架台72に動物実験に用いる金網製の檻73を載せ、その下方に箱状の貯留槽71を配置する。多数の動物が檻73に入れられた状況では、順次、排泄される尿、糞が檻73から金網の網目の間を通じて貯留槽71に落下する。これにより、貯留槽71が煮沸対象物を貯留する。
貯留槽71内には、煮沸対象物を移送する動力源となるポンプ75が配置してあり、このポンプ75と煮沸槽21の第一投入部22aとを配管17により連結する。この第一投入部22aは、煮沸槽21の一部を開口し、そこに接続フランジを介して配管17を接続する。
また、貯留槽71内には水位センサ74が配置してあり、排泄された動物の糞等の煮沸対象物が一定量貯留されると、ポンプ75が作動し、煮沸対象物が配管17内を通り、煮沸槽21に移送されるように制御される。
本実施形態は、動物実験用の檻73の下方に貯留槽71を配置したものであるが、これに限られず、大型医療施設等において煮沸対象物となる感染性廃棄物専用の廃棄槽が設置されている場合、この廃棄槽を貯留槽71としてもよい。
感染性廃棄物処理装置1を図2に示す。この感染性廃棄物処理装置1は、主に煮沸槽21と、冷却槽41からなり、両者の周りを金属製のケース2が覆い、2つの槽を隣接して設置した一個の機械装置である。
このケース2の下面の四隅付近には、感染性廃棄物処理装置1を適宜所定の位置に移動させるための、回転可能な車輪を有するキャスター3、3が配置されている。また、同じくケース2の下面の四隅には、感染性廃棄物処理装置1を所定の位置で固定するための、位置固定部4、4が配置される。この位置固定部4、4は、その軸方向へのリフトアップにより、キャスター3、3と接地面との間に隙間を生じさせることで、感染性廃棄物処理装置1の位置を固定する。
ケース2は、正面視で高さ(図2の縦方向)が約1100mm、幅(図2の横方向)が約800mm、奥行きが約480mm(図3参照)の上面が開いた箱状に形成される。ケース2のサイズはこれに限定されないことは言うまでもない。
煮沸槽21と冷却槽41は、ともに内部が中空の収納部材であり、ステンレス等の金属製材質による。煮沸槽21と冷却槽41は、その側面の一部が接触するように隣接して配置する。煮沸槽21と冷却槽41の幅は、約2対1の割合となり、冷却槽41より煮沸槽21の容積は約2倍以上の大きさがある。
煮沸槽21と冷却槽41の上面はいずれもほぼ同じ高さであるが、両者の底面35、36の高さは異なる。冷却槽41の底面36は、ケース2のキャスター3、3の位置付近であるが、煮沸槽21の底面35は冷却槽41の底面36よりも若干高い位置となる。具体的には、冷却槽41の底面36付近には、排出口45が開口され、排出用フランジを介して下水道に繋がっているが、この排出口45よりも、煮沸槽21の底面35は高い位置にある。
冷却槽41の上面付近であって煮沸槽21と接する面を一部内方へ凹ませた凹部分43がある。この凹部分43に対応する位置で、煮沸槽21の冷却槽側の面を一部開口した通気口14、冷却槽41の煮沸槽側の面を一部開口した通気口15があり、この両通気口14、15を筒状の蒸気通気路42により連結する。
煮沸槽21は、貯留槽71から煮沸対象物を移送するための第一投入部22aとは別に、その上面を一部開口して、煮沸槽21内部に直接、煮沸対象物を投入可能な第二投入部22bを配置する。この第二投入部22bには、丸型の開閉扉23があり、感染性廃棄物を投入しない場合や煮沸する場合には開閉扉23を閉じて第二投入部22bを閉鎖する。
煮沸槽21に水位センサ25を配置する。この水位センサ25は、煮沸槽21の内部にセンサ軸を挿通して水位を感知する。この水位センサ25により煮沸槽21内部の煮沸対象物の水位が最低水位(L1)以上であることを感知すると、ヒータ26、26が稼働し、加熱が開始されるよう制御される。
煮沸槽21の水位センサ25は、煮沸対象物の最低水位(L1)を感知するとともに、煮沸槽21内部の水位が所定の最高水位(L2)も感知する。煮沸対象物が貯留槽71から移送される場合、最高水位(L2)を感知すると、貯留槽71のポンプ75が停止し、煮沸槽21へ煮沸対象物の移送が停止するよう制御され、オーバーフローが防止される。
煮沸槽21内部の下方には、ヒータ26、26が複数本、配置される。このヒータ26、26は外部の電源と接続して熱を発し、煮沸槽21の内部に移送、投入された煮沸対象物を加熱する。これにより移送、投入された煮沸対象物を煮沸して殺菌処理する。ヒータ26、26は、図2に示すように複数本を並べて配置したり、図3に示すように正面側及び背面側から各々1本ずつ配置してもよく、本数や配置位置はこれに限定されない。また、このヒータ26、26は、電気ヒータ以外の蒸気ヒータであってもよい。
図2に示すように、煮沸槽21には水温計29を配置し、水温が煮沸温度(約100℃)に達するまで加熱し、煮沸温度に達した状態で所定時間(例えば、15分間)、煮沸温度を維持するようにタイマー制御される。そして、この所定時間経過後にヒータ26、26の加熱を停止するよう制御される。
煮沸槽21には、撹拌機27を配置しており、この撹拌機27により煮沸対象物を撹拌する。この撹拌機27の撹拌軸は、煮沸槽21の内部へ挿通され、その先端にプロペラ状の撹拌子がある。この撹拌機27は、水温計29により水温が例えば95℃に達すると撹拌を開始し、ヒータ26、26の加熱停止と同じく所定時間の経過後に撹拌を停止するよう制御される。この撹拌により、ヒータ26、26による煮沸による温度ムラを無くすることができる。
煮沸槽21の前面の上部を開口してノズルを取り付けた導水部24があり、この導水部24は、煮沸槽21の外側を通る配管11、煮沸槽21の下方に配置される電磁弁12、12を介して、上水道に接続される。ヒータ26、26及び撹拌機27の稼働が停止した後、電磁弁12、12が作動し、上水道から水を煮沸槽21内に供給する。この水の供給により、加熱された煮沸対象物を冷却する。
煮沸槽21から冷却槽41への煮沸対象物の移送は、移送管である逆U字状に形成されたU字配管31により行われる。U字配管31は、煮沸槽21と冷却槽41との接する部分に配置され、U字配管31の煮沸槽21の底面35付近にある先端33から上方に伸び、蒸気通気路42の下方付近で湾曲して下方へ伸び、冷却槽41の底面36付近に終端34が来るようにしてある。
煮沸槽21の底面35は、冷却槽41と接しない側から傾斜する傾斜面32がある。この傾斜面32により、煮沸槽21内で煮沸された煮沸対象物がU字配管31の先端33がある冷却槽41と接する側へ移動し易くなる。
また、この煮沸槽21の底面35は、冷却槽41の底面36よりも高い位置にある。この配置と、ヒータ26、26の加熱後に導水部24からの所定量の水の供給により、サイフォン現象が生じて、煮沸対象物と水がU字配管31を通って、冷却槽41へ移送される。
冷却槽41の下部に排出口45が開口される。この排出口45と配管を経由して下水道に繋がっている。この排出口45から冷却された煮沸対象物を下水へ流出する。
この移送管であるU字配管31は、その一部が煮沸槽21の内部に配置される。具体的には、先端33から上方の湾曲部分までが煮沸槽21の内部にあり、湾曲部分から終端34までが冷却槽41の内部に配置される。図5に示す従来の感染性廃棄物処理装置101は、U字状の配管105が煮沸槽102の外部に配置されていたため、加熱処理する前に煮沸槽102に入れられた煮沸対象物がU字状の配管105内に入り込んで加熱処理することなく排出されることがあった。しかし、本実施形態におけるU字配管31はその先端33から湾曲部分までが煮沸槽21の内部にあることから、仮にU字配管31内に煮沸前の煮沸対象物が入り込んでもヒータ26、26の加熱がこのU字配管31に伝わり、加熱処理をすることができる。
ここで、蒸気通気路42について説明する。蒸気通気路42は、従来の感染性廃棄物処理装置では、高圧の蒸気が下水に排出される危険性を除去するために、配置する。煮沸対象物がヒータ26、26の稼働により殺菌処理する場合、概ね100℃の温度で所定時間煮沸し、また密閉された槽内で煮沸することから高温高圧の蒸気が相当量、発生する。この蒸気をさらに高圧状態にしないように冷却槽41へ移動させる必要がある。このため、蒸気通気路42は、煮沸槽21と冷却槽41の上面付近であって、煮沸対象物を煮沸する最高水位(L2)よりも上方に配置し、開口部を大きくすることで蒸気が圧縮されて更なる高圧状態とならないようにしてある。
具体的に、蒸気通気路42及び通気口14、15の形態について説明する。図2に示すように、蒸気通気路42は、煮沸槽21及び冷却槽41の上面付近にある。その高さ(図2の縦方向)は、煮沸槽21全体の高さの約5分の1ないし6分の1程度であり、冷却槽41全体の高さの6分の1ないし7分の1程度である。図4に示すように、蒸気通気路42の横幅(図4の横方向)は、煮沸槽21及び冷却槽41の横幅の約2分の1程度である。
蒸気通気路42及び通気口14、15は、煮沸槽21の水位センサ25に設定する最高水位(L2)よりも上方に位置するように配置する。また、煮沸槽21は煮沸対象物を煮沸するものであるため、この最高水位(L2)から蒸気通気路42、通気口14、15までに所定間隔を開けることが好ましい。これにより、煮沸対象物が蒸気通気路42内に流入することを防止できる。蒸気通気路42及び通気口14、15の開口面積は、狭すぎると蒸気を圧縮することとなるから、上記の通り、相当程度を採用する必要がある。上記の開口面積に限定することはないが、煮沸により発生する蒸気を高圧としない程度とすることが好ましい。
図4に示すように、冷却槽41には、煮沸槽21の導水部24と同じく、放水部44があり、配管11及び電磁弁12、12を経由して、上水道に繋がっている。冷却槽41の内部に、この放水部44に水を霧状に排出するミストノズル46を接続する。このミストノズルから水を霧状に冷却槽41内へ排出し、蒸気通気路42内を通り、冷却槽41に通気した蒸気を冷却する。
本実施形態における冷却槽41の内部に放水部44から配置されるミストノズル46は、冷却槽41の通気口15と高さであって、通気口15の近傍に配置する。このミストノズル46は、水温計が例えば95℃を感知すると煮沸槽21の撹拌機27が撹拌を開始するとともに、電磁弁12、12が開いて、冷却槽41内に冷却ミストを噴霧するように制御される。95℃を感知した状況で蒸気が多く発生するとともに、冷却槽41をミストで噴霧することで気圧差が発生し、蒸気が蒸気通気路42を通って、冷却槽41への通気を促進する。このミストノズル46からの噴霧により、冷却槽41で蒸気を冷却することができ、従来より懸念されていた下水道へ高圧の蒸気が排出されることがない。
放水部44は、ミストノズル46の他に、シャワーノズル等のその他の散水ノズルであってもよい。また、通気口15の近傍に位置するものであれば、通気口15の上方に配置したり、通気口15の対面側に配置するものであってもよい。