詳細な説明
本明細書は、本発明の特徴を組み入れた1つまたは複数の態様を開示する。開示されている態様は、本発明を単に例示しているに過ぎない。本発明の範囲は、開示されている態様には限定されない。複数の発明を説明することになろう。本発明の範囲は、本明細書に添付の特許請求の範囲によって定められる。
記載されている態様、および本明細書における「1つの態様(one embodiment)」、「1つの態様(an embodiment)」、「1つの例示的態様」などへの言及は、記載されている態様がある特定の特徴、構造または特性を含んでもよいが、すべての態様がその特定の特徴、構造または特性を必ずしも含まなくてもよいことを指し示している。その上、そのような語句は、必ずしも同じ態様に言及しているわけではない。さらに、ある特定の特徴、構造または特性が1つの態様に関連して記載されている場合には、明示的に記載されているか否かによらず、そのような特徴、構造または特性を他の態様に関連して実現することも当業者の知識の範囲内にあるものと理解されたい。
いくつかの態様は、凸面および凹面を有する、装用者の眼の表面に装用することができる人工装具を含む。当該人工装具は、凸面上に位置する開口拡大帯を有する。当該人工装具は、装用者の眼の本来の眼瞼裂を少なくとも1mm拡大させる。
いくつかの態様は、装用者の眼の表面に装用することができる人工装具を含む。当該人工装具は凸面および凹面を有する。凸面上に開口拡大帯が位置する。当該人工装具は、装用者の眼の本来の眼瞼裂を少なくとも1mm拡大させる角強膜コンタクトレンズである。
いくつかの態様は、凸面および凹面を有する人工装具を含む。凸面上に開口拡大帯が位置する。当該人工装具は、装用者の眼の本来の眼瞼裂を少なくとも1mm拡大させる強膜リングである。
いくつかの態様は、装用者の眼の表面に装用することができる人工装具を含む。当該人工装具は凸面および凹面を有する。凸面上に開口拡大帯が位置する。当該開口拡大帯は少なくとも1つの表面特徴を含む。当該人工装具は、装用者の眼の本来の眼瞼裂を少なくとも1mm拡大させる。
いくつかの態様は、凸面、凹面、および周辺エッジを有する、装用者の眼の表面に装用することができる人工装具を含む。当該人工装具はまた、凸面上に位置する開口拡大帯も有する。当該開口拡大帯は、最大厚さ変化部が間に位置する外側勾配および内側勾配を含む。外側勾配と内側勾配は異なる。いくつかの態様において、外側勾配は内側勾配よりも大きい。他の態様において、内側勾配は外側勾配よりも大きい。
いくつかの態様は、凸面、凹面、および周辺エッジを有する、装用者の眼の表面に装用することができる人工装具を含む。当該人工装具はまた、凸面上に位置する開口拡大帯も有する。当該開口拡大帯は、最大厚さ変化部が間に位置する外側勾配および内側勾配を含む。外側勾配と内側勾配は同じである。
いくつかの態様は、装用者の眼の表面に装用することができる人工装具を含む。当該人工装具は凸面および凹面を有する。凸面上に開口拡大帯が位置する。当該開口拡大帯は少なくとも1つの表面特徴を有する。当該開口拡大帯はまた、最小垂直寸法も有する。
いくつかの態様は、装用者の眼の表面に装用することができる人工装具を含む。当該人工装具は、凸面、凹面、周辺エッジ、および幾何学中心を有する。凸面上に開口拡大帯が位置する。当該開口拡大帯は少なくとも1つの表面特徴を有する。当該少なくとも1つの表面特徴の少なくとも一部分は、当該人工装具の幾何学中心から5.25mmまたはそれよりも外側に位置する。
いくつかの態様において、人工装具は少なくとも14.0mmの全径を有する。他の態様において、人工装具は少なくとも14.5mmの全径を有する。いくつかの態様において、人工装具は少なくとも15mmの全径を有する。いくつかの態様において、人工装具は少なくとも15.5mmの全径を有する。さらにいくつかの他の態様において、人工装具は少なくとも16.0mm以上の全径を有する。
いくつかの態様において、人工装具は回転対称性レンズである。いくつかの態様において、人工装具は回転可能である。いくつかの態様において、人工装具は回転可能でない。
いくつかの態様において、開口拡大帯は、装用者の下眼瞼を少なくとも1mm押し下げる。いくつかの態様において、開口拡大帯は、装用者の上眼瞼を少なくとも1mm拳上させる。
いくつかの態様において、人工装具は着色された強調色を含む。いくつかの態様において、着色された強調色は、眼用人工装具の、人工装具が装用されたときに眼の角膜縁またはその近くにフィットする部分の周りにあるか、または角膜縁を越えて広がる(着色された部分の径が角膜縁間の直径の測定値よりも大きいことを意味する)。いくつかの態様において、着色された強調色は、角膜縁リング、サークルリング、またはサークルレンズである。
いくつかの態様において、人工装具は多焦点コンタクトレンズである。いくつかの態様において、人工装具はトーリックコンタクトレンズである。いくつかの態様において、人工装具は単焦点コンタクトレンズである。
いくつかの態様において、開口拡大帯は表面摩擦増加区域を含む。いくつかの態様において、表面摩擦増加は、表面処理、コーティング、異なる材料、表面のくぼみ、表面の凸凹、またはそれらの組み合わせによってもたらされる。
いくつかの態様において、開口拡大帯はまた、最大厚さ変化部が間に位置する外側勾配および内側勾配も含む。いくつかの態様において、外側勾配と内側勾配は異なる。いくつかの態様において、外側勾配は内側勾配よりも大きい。いくつかの態様において、外側勾配は3°〜45°の角度を有する。いくつかの態様において、外側勾配は5°〜25°の角度を有する。いくつかの態様において、内側勾配は1°〜15°の角度を含む。
いくつかの態様において、開口拡大帯は厚さ漸増部および最大厚さ変化部を有する。いくつかの態様において、最大厚さ変化は25ミクロン〜1,000ミクロンの範囲内にある。いくつかの態様において、最大厚さ変化は100ミクロン〜500ミクロンの範囲内にある。いくつかの態様において、最大厚さ変化は75ミクロン〜400ミクロンの範囲内にある。いくつかの態様において、最大厚さ変化部は人工装具の外側エッジから1.0mm〜2.5mmの間に位置する。いくつかの態様において、最大厚さ変化部は、人工装具が眼の表面に装用されたときに装用者の眼の角膜縁またはその外側に位置する。外側とは、1つの最大厚さ追加点から人工装具の幾何学中心を経由して反対側の最大厚さ追加点まで測定した場合の方が、装用者の眼の角膜縁上の1つの点から角膜の中心を経由して角膜縁上の反対側の点まで測定した場合よりも、最大厚さ変化部の径が大きいことを意味する。いくつかの態様において、厚さ漸増部は厚さ増加部である。いくつかの態様において、厚さ漸増部は厚さ減少部である。
いくつかの態様において、開口拡大帯の最外部は、人工装具の幾何学中心から3mm〜8.5mmの範囲内に位置する。いくつかの態様において、開口拡大帯の最外部は、人工装具の幾何学中心から5mm〜7.75mmの範囲内に位置する。いくつかの態様において、開口拡大帯の最内部は、人工装具の周辺エッジと人工装具の周辺エッジから6mmとの間に位置する。
いくつかの態様において、開口拡大帯の最小垂直寸法は、装用者の眼の本来の眼瞼裂の最大垂直径よりも大きい。いくつかの態様において、開口拡大帯の最小垂直寸法は10.5mmに等しいかまたはそれよりも大きい。いくつかの態様において、開口拡大帯の最小垂直寸法は11mmに等しいかまたはそれよりも大きい。いくつかの態様において、開口拡大帯の最小垂直寸法は11.5mmに等しいかまたはそれよりも大きい。いくつかの態様において、開口拡大帯の最小垂直寸法は12mmに等しいかまたはそれよりも大きい。いくつかの態様において、開口拡大帯の最小垂直寸法は、開口拡大帯の最上部と開口拡大帯の最下部との間の垂直距離である。
いくつかの態様において、開口拡大帯は少なくとも1つの表面特徴を含む。いくつかの態様において、開口拡大帯は複数の表面特徴を有する。
いくつかの態様において、人工装具は角強膜コンタクトレンズである。いくつかの態様において、人工装具は強膜リングである。
いくつかの態様において、開口拡大帯は最小垂直寸法を有する。
いくつかの態様において、人工装具はまた、周辺エッジ、幾何学中心、および少なくとも1つの表面特徴も有する。いくつかの態様において、当該少なくとも1つの表面特徴または当該少なくとも1つの表面特徴の少なくとも一部分は、当該人工装具の幾何学中心から5.25mmまたはそれよりも外側に位置する。いくつかの態様において、当該周辺エッジは、鋭利な形状、丸みのある形状、鈍い形状、またはやや丸みのある形状を有する。いくつかの態様において、当該周辺エッジは25ミクロン〜100ミクロンの厚さを有する。
いくつかの態様において、人工装具はハイブリッドデザインを有する。いくつかの態様において、人工装具は均質なデザインを有する。
いくつかの態様において、開口拡大帯は、1つのリング、複数のリング、1つの部分的リング、複数の部分的リング、1つの島状部、複数の島状部、1つのバンド、複数のバンド、部分的バンド、1つの区分された区域、または複数の区分された区域を含む。いくつかの態様において、これらの部分的区域は、人工装具の周りに輪を描くように並んでいる。他の態様において、これらの部分的区域は、人工装具の周りに輪を描くようには並んでいない。
いくつかの態様において、人工装具は装用者によって連続して装用されうる。いくつかの態様において、人工装具は装用者によって非連続的に装用されうる。いくつかの態様において、人工装具は装用者によって1日間、1週間、または1カ月間装用されうる。
いくつかの態様において、人工装具は使い捨て式である。いくつかの態様において、人工装具は再利用可能である。
いくつかの態様において、人工装具は屈折力を含む。いくつかの態様において、人工装具は屈折力を含まない。
いくつかの態様は、開口拡大帯を有する人工装具を含む。当該開口拡大帯は、外側勾配、内側勾配、最大厚さ差分追加点、および厚さ漸増径を有する。当該人工装具はまた、周辺エッジ、幾何学中心および全径も有する。当該全径は、周辺エッジ上の第1の点から反対側の周辺エッジ上の第2の点まで、当該人工装具の幾何学中心および開口拡大帯を経由して測定される。全径は14.5mm以上である。外側勾配は5度〜25度の範囲にある。開口拡大帯の最大厚さ差分追加点は75ミクロン以上である。開口拡大帯の最大厚さ差分追加点は周辺エッジから1mm〜3mmの間に位置する。厚さ漸増径は10.5mm以上である。
いくつかの態様において、人工装具は自由に回転できる。いくつかの態様において、人工装具は自由には回転できない。
いくつかの態様において、厚さ漸増径は、装用者の眼の本来の開口の垂直測定値よりも1mm大きい。
いくつかの態様において、人工装具は角強膜レンズである。いくつかの態様において、人工装具は強膜リングである。
いくつかの態様において、人工装具は屈折力を有する。いくつかの態様において、人工装具は屈折力を有しない。
いくつかの態様において、人工装具は単焦点コンタクトレンズである。いくつかの態様において、人工装具は多焦点コンタクトレンズである。いくつかの態様において、人工装具はトーリックコンタクトレンズである。
いくつかの態様において、人工装具はハイドロゲルを含む。いくつかの態様において、人工装具はシリコーンハイドロゲルを含む。いくつかの態様において、人工装具は均質な材料を含む。いくつかの態様において、人工装具はハイブリッド材料を含む。
いくつかの態様において、開口拡大帯は周辺エッジでまたはそれに近接して始まる。いくつかの態様において、開口拡大帯は周辺エッジの内側で始まる。
いくつかの態様において、最大厚さ差分追加点は100ミクロン以上である。いくつかの態様において、最大厚さ差分追加点は125ミクロン以上である。いくつかの態様において、最大厚さ差分追加点は150ミクロン以上である。いくつかの態様において、最大厚さ差分追加点は200ミクロン以上である、いくつかの態様において、最大厚さ差分追加点は225ミクロン以上である。いくつかの態様において、最大厚さ差分追加点は250ミクロン以上である。
いくつかの態様において、人工装具は、1日装用用、使い捨て用、連続装用用、1週間装用用または1カ月間装用用のうちの1つである。
いくつかの態様において、人工装具は安定化されていない。
いくつかの態様において、開口拡大帯は円形リングである。いくつかの態様において、開口拡大帯は、リングを構成する一連の部分的区分である。
いくつかの態様は、装用者の本来の眼瞼裂を少なくとも1mm拡大させるためのプロトコールまたは説明書を提供すること、および凸面に位置する開口拡大帯を含む少なくとも1つの人工装具を提供することによって、装用者の眼の本来の眼瞼裂を拡大させる方法を提供する。いくつかの態様において、プロトコールまたは説明書は、装用者の本来の眼瞼裂の垂直寸法を決定するため、および本来の眼瞼裂の最大垂直寸法よりも少なくとも1mm大きい最小垂直寸法を有する人工装具を装用者に提供するための指示を含む(そのような決定は、単に例示に過ぎないが、実際の測定、写真撮影、目視推定、または、試用人工装具、直径が判明しているコンタクトレンズ、もしくは直径が判明している人工装具のフィッティングのうちの1つによって行うことができる)。
装用者の眼の美容上の外観を向上させるために装用者の眼の眼瞼裂を拡張し/拡大させ、かつ、垂れ下がった眼瞼および/または眼瞼下垂に罹患した患者の苦痛を軽減するためにも用いることができる、角強膜コンタクトレンズおよび強膜リングの形態である本特許出願の人工装具を開発した。装用者の眼の外観を向上させるとは、それが、眼の外見を、より開いた、かつ/またはより大きな、かつ、より敏活なものにすることを意味する。新規人工装具は、上眼瞼を上側に押し(拳上させ)、かつ/または下眼瞼をも下側に押し(押し下げ)、そうすることで装用者の眼瞼裂または開口を大きくすることを介して、装用者の美容上の外観を向上させる。本人工装具は、装用者の眼の開口を、その通常の/本来の眼の開口の垂直寸法から最大でさらに50%開大させることが示されている。40歳以下の人の眼の平均的な開口が、およそ10.5mmの垂直寸法(上眼瞼縁と下眼瞼縁との間)を有する本来の開口を有し、40歳よりも後には同じ点からの平均寸法がおよそ9mmになるか、または開口サイズがおよそ15%減少することを考えれば、本明細書に記載の人工装具が装用者の眼の若々しい外見を回復させることできることがわかる。
当該人工装具は、例えば、以下のうちの1つまたは複数を含む:角膜縁またはその外側に位置し、それ故に、凸面の形態をとる瞳孔部または光学部に対しても外側に位置する、エッジ厚増加部、内側厚さ漸増帯(internal incremental thickness zone)、厚さ漸減帯(regressive thickness zone)、または表面摩擦増加帯(いずれか1つ)であって、単に例示に過ぎないが、以下のうちの1つまたは複数でできているもの:1つのリング(複数のリング)、1つのバンド(複数のバンド)、複数の部分的リング(複数のリングレット)、1つのドーム(複数のドーム)、1つの島状部(複数の島状部)、1つの区分された領域(複数の領域)、レンズの周縁部の近くもしくはその周辺にありかつ/または開口拡大帯の内部にあるかもしくはそれを覆う粗さ/摩擦のある凸面、1つのトランケーション(複数のトランケーション)、コンタクトレンズの全体的厚みづけ、より大きな径、およびより急なベースカーブ。その効果は、装用者の眼の眼瞼裂を開大させて、そうすることで視機能に対する瞼下垂の影響を最小限に抑え、かつ患者/装用者の美容上の外観を向上させることにある。本人工装具は、角強膜コンタクトレンズの形態である場合、ソフトコンタクトレンズまたはハイブリッド型コンタクトレンズの形態であってよい。人工装具がコンタクトレンズとは対照的に強膜リングの形態である場合、強膜リングは屈折力を伴わない中央開放開口を含む。強膜リングは、以下のうちの1つに見いだされる材料でできていてよい:ハードコンタクトレンズ、ガス透過性コンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ;ハイブリッド型コンタクトレンズ。人工装具(コンタクトレンズまたは強膜リングである)に関する、厚さ漸増領域(帯、区域)または厚さ漸減領域(帯、区域)、または表面摩擦増加領域(帯、区域)は、以下のうちの1つであってよい;回転対称性、回転非対称性、楕円アーチ様特徴、分離した島状部。楕円アーチ(複数のアーチ)様特徴(複数の特徴)は、上眼瞼の眼瞼縁の曲線および/または下眼瞼の眼瞼縁の曲線と近似していてよい。厚さ漸増領域、または厚さ漸減領域、または表面摩擦増加領域は、連続的であっても非連続的であってもよい。厚さ漸増または厚さ漸減領域、または表面摩擦増加部は、同じ材料でできていても異なる材料でできていてもよい。人工装具は以下のうちの1つとして装用することができる;連続装用用、1日装用用、1週間連続装用用、1カ月間連続装用用。人工装具は使い捨て式であっても再利用可能であってもよい。人工装具は、装用者によって取り外されて再装着することができる。
眼の開口(眼瞼裂):眼瞼が開いているときに眼の上眼瞼と下眼瞼との間に位置する区域である。
開口拡大帯:(厚さ漸増領域/帯/区域、厚さ漸減領域/帯/区域または表面摩擦増加領域/帯/区域のうちの1つまたは複数として呼ぶこともできる)。上眼瞼を持ち上げる(拳上させる)、および/または下眼瞼を押し下げる(下垂させる)トポグラフィまたは表面摩擦をもたらし、そうすることで眼の開口を拡大させる、領域、帯、区域である。
厚さ漸増区域:強膜リングまたはコンタクトレンズの厚さ漸増領域または帯の内部に位置する区域。厚さ漸増領域または帯が(単に例示に過ぎないが)複数の領域または帯である場合は、厚さ漸増区域(area of incremental thickness)は複数の厚さ漸増区域(areas of incremental thickness)と称される。厚さ漸増区域は、表面に厚さを加えるか、または厚さ漸増区域の周りの厚さを減らすことによって(それ故に厚さ漸減帯によって)形成されうることに留意すべきである。
瞼下垂:眼瞼下垂とも称され、正面視で眼の上眼瞼縁が異常に低いところにあることと定義される。正常な成人の上眼瞼は上部角膜縁の1.5mm下側にあり、瞳孔のわずかに鼻側で最も高くなっている。瞼下垂は、以下に示すように先天性または後天性として分類される。この鑑別は年齢に基づく。より包括的な分類は病因に基づき、これには筋原性、腱膜性、神経性、機械的、外傷性、および偽下垂性が含まれる。先天性眼瞼下垂の原因として最も多いのは、上眼瞼挙筋の発達が不適切であることに起因する筋原性である。
眼瞼形成とは、眼瞼挙上をもたらす手術手技の名称である。現在、米国では毎年およそ200,000〜300,000件の眼瞼形成術が行われており、費用は上眼瞼手術1件当たりおよそ2,500ドル、下眼瞼手術1件当たりおよそ3,500ドルである。眼瞼形成は、40歳以上の人に対して行われる美容顔面手術手技として最もよく行われるものの1つである。加えて、今日の国際社会では大きな眼の方が小さな眼よりも魅力的であると認知されていることにも留意すべきである。
強膜リングまたはコンタクトレンズの芯取り(centration):本明細書で用いる場合、装用者の角膜縁および/もしくは瞳孔の中心が強膜リングの開放開口内に最も合うように、またはコンタクトレンズの場合には装用者の瞳孔の中心が光学部内に最も合うようにする、強膜リングまたはコンタクトレンズの適正なセンタリングのことを意味する。
中心開放開口:人工装具の幾何学中心を含む、材料が存在しない穴または開放部のことを意味する。
コンタクトレンズ:角膜上にフィットするように設計され、通常は視力の不足を矯正するために装用される、薄いレンズのことである;コンタクトレンズは一般に、以下の3つの大きなカテゴリーに分類される:#1)角膜コンタクトレンズ、#2)角強膜コンタクトレンズ、#3)強膜コンタクトレンズ。この3つの大きなカテゴリーを、以下のサブカテゴリー(単に例示に過ぎないが)にさらに細分することもできる:A)1日装用用(1日のみの装用のために用いられ、睡眠時は取り外すことを意味する)、B)連続装用用(限られた数日間にわたって、日中も夜間も絶え間なく装用される)、およびC)1日間または連続して装用しうるが、汚れるか、または一定の光学的品質もしくは快適さの品質を失ったときには廃棄される、使い捨て式コンタクトレンズ。(重要なこととして、本明細書に開示される人工装具はカテゴリー#2(角強膜コンタクトレンズ)のものであり、それ故、コンタクトレンズと言う用語を用いる場合、それは角強膜コンタクトレンズのものであることを意味することを指摘しておく)。
角膜コンタクトレンズ:角膜レンズは角膜のみによって支えられ、角膜縁(角膜と強膜との接合部)を越えては広がらない。角膜コンタクトレンズの一例は、装用者の角膜の直径よりも大きくなく、かつほとんどの場合には装用者の角膜の直径よりも小さい直径を有する、硬質ハードコンタクトレンズであろう。また、角膜コンタクトレンズがソフトコンタクトレンズであってもよい。
角強膜レンズ:角強膜レンズとは、視力の低下を矯正するために用いられるコンタクトレンズの一種のことである。この名称は、眼の中でのレンズの区域および安静位のことを指している。角強膜レンズは角膜と強膜上にある球結膜との両方によって支えられ、角膜縁を越えて広がる。角強膜コンタクトレンズの例は、ソフトコンタクトレンズ、ハイブリッド型コンタクトレンズであろう。これらのレンズは装用者の角膜の直径を超える直径を有し、装用者の角膜縁区域を越えて広がる。それらは一般に(常にではないが)直径が12.5〜15mmの範囲にわたる。角強膜レンズの裏の涙液貯留は、角膜の上をアーチ状に覆う完全強膜コンタクトレンズと比較すると非常に限定的である。角強膜レンズは非常によく用いられている。
Δ厚さ漸増(delta incremental thickness)、厚さ漸増差分(incremental thickness delta)、厚さ漸増の差分(delta of incremental thickness)、および最大厚さ変化(maximum change in thickness):厚さ漸増領域内に位置するある点と、同じ点で測定されたコンタクトレンズまたは強膜リングの通常の厚さとの間の厚さの差のことである。最大差分とは、厚さ差または最大Δ厚さ(maximum delta thickness)が最大である点、または言い換えると、最大厚さ変化が見いだされる点のことである。
Δ厚さ漸減(delta regressive thickness)、厚さ漸減差分(regressive thickness delta)、厚さ漸減の差分(delta of regressive thickness)、および最大厚さ変化(maximum change in thickness):コンタクトレンズまたは強膜リングの、厚さ漸減領域内に位置するある点と、内側(人工装具の中心に向かう側)の近傍(密接して位置する)区域の厚さとを比較した厚さの差のことである。最大差分とは、厚さの差または最大Δ厚さが最大である点、または言い換えると、最大厚さ変化が見いだされる点のことである。
エッジ:コンタクトレンズまたは強膜リングのエッジとは、本明細書で用いる場合、コンタクトレンズの外周縁のことであり、または強膜リングの場合には、強膜リングの外周エッジ、または開放開口に近い内周エッジのいずれかのことである。強膜リングの内側エッジ(開放中央開口に隣接)は、強膜リングの外側エッジのものに類似した輪郭を有する。
ガス透過性コンタクトレンズ:酸素透過性のある硬質材料を含むコンタクトレンズのことである;そのような材料は、装用者の角膜の直径に等しいかもしくはそれ未満の直径であるガス透過性角膜コンタクトレンズに、または、軟質親水性スカートの材料よりも中央側にある材料がガス透過可能材料である、ハイブリッド型コンタクトレンズの中央硬質ガス透過可能領域に用いられる。
幾何学中心:幾何学中心とは、本明細書で用いる場合、強膜リングまたはコンタクトレンズの絶対的中心であることを意味する。コンタクトレンズの場合にはこれは実在する;強膜リングの場合には、これは仮想的に想定される開放開口の中心のことである。
ハイブリッド型コンタクトレンズまたはハイブリッド型強膜リング:ハイブリッド型コンタクトレンズとは、本明細書で用いる場合、互いに結びついた2種以上の材料で構成されるコンタクトレンズまたは強膜リングのことである。この一例は、中央部のガス透過可能材料および外側の軟質親水性コンタクトレンズスカートを含む、市販されている今日のハイブリッド型コンタクトレンズのようなものであろう。本明細書で考察するさらに3つの態様は以下の通りである:#1)ハイブリッド型コンタクトレンズの外側周が硬質であり、中心部が軟質である、本明細書で教示される態様、または#2)強膜リングの場合には、より硬質な(より軟質性が低いか、またはより硬質な)材料でできた強膜上に載せられるリングで、その上、拡大効果をもたらす厚さ漸増帯の一部または全体を形成する、より軟質でより柔軟な材料が強膜リングに固定されているもの。より軟質でより柔軟なこの材料は、より硬質な強膜リングから伸びる指状要素の形態であってよい。#3)ソフトコンタクトレンズの場合には、上眼瞼を持ち上げるよう、および/または下眼瞼を下垂させるように表面摩擦増加をもたらすものと同じ材料ではない、要素または表面処理を有するもの。
厚さ漸増部:標準化された凸面を持つ基礎となる強膜リングまたはコンタクトレンズ上の1つの点をとって、本明細書で教示される強膜リングまたはコンタクトレンズ上の同じ点からの差を計算した場合に、厚さの差またはΔ厚さが増加しているもののことである。言い換えると;強膜リングまたはコンタクトレンズの凸面曲率を数学的に標準化した後に、強膜リングまたはコンタクトレンズの標準化された凸面に上乗せして加えられる追加の厚さのことである。重要なこととして、コンタクトレンズの場合、光学部がコンタクトレンズの個別の屈折力に起因する異なる凸曲率を有しうるため、光学部の凸面は標準化された凸面の計算には考慮されず、それ故に除外されることを指摘しておく。最大厚さ漸増とは、ピーク厚さ差分または最大厚さ変化のことである。重要なこととして、厚さ漸増部は、厚さ漸減領域によって取り囲むか、またはそれに隣接させることによって作り出しうることを指摘しておく。
厚さ漸増径:厚さ漸増径とは、垂直軸に沿って、最大Δ厚さ点または最大厚さ変化点から、前記最大Δ厚さ点の反対側に位置する最大Δ厚さ点または最大厚さ変化点まで、人工装具の幾何学中心を通って直線上を進んだ場合の距離のことである。
厚さ漸増領域/帯/区域:(「開口拡大帯」とも称される)とは、本特許出願のために作られた語句である。厚さ漸増帯とは、コンタクトレンズまたは強膜リングの標準化された凸面に上乗せして加えられた追加の厚さのある帯、領域、区域である。また、厚さ漸増帯を、複数の厚さ漸増帯または厚さ漸増領域で構成することもでき、さらに1つまたは複数の厚さ漸増区域に分割することもできる。すべてではないがほとんどの場合には、厚さ漸増帯または厚さ漸増領域は、装用者に対して有用な視力矯正をもたらさない。厚さ漸増帯は開口拡大帯とも呼ばれる。厚さ漸増領域または厚さ漸増帯の目的は、装用者の眼の眼瞼裂(開口)を拡大させるように、上眼瞼を押し上げる(拳上させる)、および/または下眼瞼を下垂させる(押し下げる)ための力を与えることである。
厚さ漸増帯の幅:厚さ漸増帯が始まって終わるまでの、強膜リングまたはコンタクトレンズの凸面上の幅の測定値のことである。これは通常、人工装具の外側エッジに最も近い部分から人工装具の幾何学中心に最も近い部分までの厚さ漸増帯の幅である。
内側勾配:「内側」勾配とは、開口拡大帯の、最大厚さ差分点と、開口拡大帯が人工装具の幾何学中心の最も近くで終わるところとの間の勾配のことである。
接合部:接合部とは、本明細書で用いる場合、従来のハイブリッド型コンタクトレンズのガス透過可能中央領域の外周縁が外側ソフトスカートの内周縁と接する場所のこと、またはハイブリッド型強膜リングもしくは逆ハイブリッド型レンズの場合には2種類の材料が接する場所のことを意味する。
角膜縁:強膜に隣接する、眼の角膜の辺縁領域のことを指す。角膜の平均直径はおよそ11〜12mmであり、通常は平均およそ11.5mmであると認識されている。
最小垂直寸法:開口拡大帯を有する人工装具の構造的特徴を測定および/または定量するための1つの手段である。最小垂直寸法とは、本明細書に記載のすべてではないがいくつかの態様を定量するために用いられるパラメーターである。「垂直寸法」とは、人工装具の最上部近くにある開口拡大帯の最も高い部分と、人工装具の最下部付近にある開口拡大帯の最も低い部分との間の垂直距離のことである。換言すれば、「垂直寸法」は、上眼瞼を上側に押す人工装具の最上部と、下眼瞼を下側に押す人工装具の最下部との間の垂直距離を定めている。開口拡大帯が人工装具のエッジで始まる場合、開口拡大帯の「垂直寸法」は人工装具の垂直サイズ(全径)に対応する。最も高い点および最も低い点が同じ垂直軸にない場合には、「垂直寸法」は、垂直軸に対する最も高い点の投影と、最も低い点の投影と間の距離である。開口拡大帯が回転対称性でない場合には、垂直距離は人工装具が回転すると変化する可能性がある。「最小垂直寸法」とは、最小の垂直寸法を有する人工装具の回転位置に対応する垂直寸法のことである。眼瞼からの圧力により、多くの場合には、人工装具は回転してこの回転位置になる傾向がある。
多焦点コンタクトレンズ:2つ以上の屈折力領域で構成されるコンタクトレンズのことである。そのようなコンタクトレンズは、老視を矯正するため、最低でも装用者の遠見視力を矯正するために用いられる。ある種の多焦点コンタクトレンズは、装用者の遠見視力、中間視力、および近見視力を矯正すると考えられる。
本来の眼瞼裂(本来の開口):眼瞼の縁の間の間隙−瞼裂とも呼ばれる。本来の眼瞼裂とは、コンタクトレンズを装用していないとき、眼の力を抜いているとき、および人が無表情でありかつ目を細めたり笑ったりまゆをひそめたりしていないときの、眼瞼裂の間隙または区域のことである。
標準化された前方凸面:コンタクトレンズまたは強膜リングの通常の前方凸面に厚さ漸増が加えられていない、前方凸面のことを意味する。通常の前方凸面は、非球面凸曲率または球面凸曲率を有する前方凸面であってよい。すべてではないがほとんどの場合、標準化された前方表面は球面曲率を有するものである。言い換えると、標準化された前方凸曲率は、凸曲率から、加えられた厚さ漸増を引いたものに等しい。コンタクトレンズの凸面を標準化する場合、光学部はコンタクトレンズの屈折力によって影響される異なる曲率を有しうるため、標準化された表面に、光学部の凸面の周辺は考慮されない。
光学部:コンタクトレンズの、屈折力を含む中央区域のことである。光学部はコンタクトレンズの中で固定されたサイズにあり、固定された場所にある。本明細書に含まれる開示において、光学部(optic zone)およびオプティカルゾーン(optical zone)という用語は同じものを意味する。概して、ソフトコンタクトレンズの光学部は直径が7mm〜9mmの範囲にある。光学部の直径は概して、夜間に瞳孔が拡張したときにグレアおよび光散乱を防止する目的で、瞳孔部の直径よりも大きい。強膜リングは光学部を有しておらず、その代わりに開放開口を有する。
全外径:人工装具の外側エッジから当該人工装具を横切って幾何学中心を経由して反対側の外側エッジまで測定される直径。
外側勾配:「外側」勾配とは、開口拡大帯の、最大厚さ差分点と、開口拡大帯が人工装具の外側エッジの最も近くで終わるところとの間の勾配のことである。
全厚:コンタクトレンズまたは強膜リングの凹面上のある点から、互いに対して同じ点にある外側凸面上の点まで測定される場合の厚さ。
ピーク厚さ差分(最大厚さ差分):最大厚さ漸増(追加)または最大厚さ漸減(減少)のことである。言い換えると、最大厚さ変化のことである。
人工装具:装用者に利益を与える、装用者によって装用されるデバイス。本明細書に開示される開示の場合、利益は美容上の利益または視力の利益であってよい。
眼瞼下垂:上眼瞼が垂れ下がることであり、単に例示に過ぎないが以下によって引き起こされる:動眼神経の麻痺。眼瞼下垂とは上眼瞼の異常な垂れ下がりのことを指し、一方または両方の眼が冒されうる。常在性のこともあれば間欠性のこともある。眼瞼下垂は、出生時から存在する先天性のこともあり、または人生の後になって発症する後天性のこともある。通常、眼瞼下垂は孤発性障害として起こるが、さまざまな他の病状と関連していることもある。眼瞼下垂には小児および成人集団の両方が罹患する。眼瞼下垂の発生率は、小児では0.18%と報告されているが、高齢成人ではより高い頻度で起こり、これはおそらく加齢要因が原因であり、集団の1%以上である。眼瞼下垂の罹患しやすさは男性と女性のいずれも等しい。
眼瞼下垂の最も一般的な特徴は、罹患した眼の上眼瞼の垂れ下がりである。垂れ下がりの重症度に応じて、これは以下のカテゴリーに分けられる:ごく軽度(1〜2mm)、中等度(3〜4mm)および重度(4mmを上回る)。眼瞼下垂を有する人は、流涙増加およびかすみ目を訴えることがある。著しい眼瞼下垂を有する患者は、遮られていない正常な視力を得るために、指で眼瞼を押し上げるか、またはまゆを持ち上げる必要があることがあり、このことが緊張性頭痛および眼精疲労につながることもある。
眼瞼下垂は、眼瞼を持ち上げる筋肉(挙筋およびミュラー筋)が、それを適正に行えるほど十分には強くない場合に起こる。これは片眼または両眼を冒し、高齢者ほど頻度が高いが、これは眼瞼内の筋肉が衰え始めるためである。眼瞼下垂は通常、眼瞼筋が適正に機能できないことが原因で起こる。これは眼瞼筋の局所的損傷または眼瞼筋につながる神経の損傷が原因で起こることもある。これはまた、正常な老化過程として起こることもある。重症筋無力症、真性糖尿病、脳卒中、ホルネル症候群および脳腫瘍のような疾患を有する人では、眼瞼下垂が後天的に起こるリスクが高い。実際、神経筋障害である重症筋無力症は、後天性眼瞼下垂の原因として最も多いものの1つである。また、コンタクトレンズの長期装用者や、外観の美容上の治療のためにボトックス(Botox)を用いた者でも、眼瞼下垂が発症する可能性がある。治療せずに放置しておくと、特に小児では、眼瞼下垂は、小児が自分の眼の一方で適正に見ることができなくなる「弱視」と呼ばれる合併症を招くことがある。この病状は、適正に治療されれば好転させることができる。小児では、視覚障害および身体的美観が損なわれることが原因で情緒障害が起こることもある。
視力障害が存在しない軽度の眼瞼下垂の症例では、病状の定期的モニタリングが必要である。しかし、著しい先天性眼瞼下垂では、眼科専門医および形成外科医の専門技能を必然的に伴う外科的介入を行う理由となる。外科的様式には、眼瞼筋の矯正、および挙筋短縮術、ミュラー筋短縮術または前頭筋利用吊り上げ法のような手技が一般に行われる。今日では、クランチ眼鏡または特殊な強膜コンタクトレンズを用いるような非外科的様式も広まっている。図1は、左眼に先天性眼瞼下垂を有する人を示している。図2は、下垂性眼瞼が原因で機能阻害を示している視野を図示している。眼瞼下垂は装用者の眼の視野に影響を及ぼし、それ故に機能的視力のある区域を限定する。眼瞼下垂が上眼瞼のものであり、上眼瞼が瞳孔の一部分を覆っている場合には、眼瞼下垂を有する人は自分の上方視野の一部分を見る能力を失うと考えられる。図3〜7は、眼瞼下垂に罹患した4例の人を示している。眼瞼下垂にはあらゆる年齢で罹患するおそれがあり、40歳以上の者で発生率が最も高い。
瞳孔部:本明細書で用いる場合、コンタクトレンズにおける、装用者によって装用されたときに装用者の瞳孔と光学的に連通する(または言い換えると、装用者の眼の瞳孔がそこを通って光を受容する)帯のことである。瞳孔部は、夜間または薄暗い照明下では瞳孔が拡張してより大きな区域となり、周辺光のレベルが高いと、より小さな区域となる。本明細書に記載の人工装具の瞳孔部は概ね、周辺光のレベルが低いことが原因で瞳孔が拡張したときに瞳孔を覆う目的で、直径およそ6mmから直径およそ8mmまで(またはコンタクトレンズの幾何学中心から3mm〜4mmの半径)の範囲である。瞳孔部は概ね、コンタクトレンズの光学部またはオプティカルゾーンよりも小さい。瞳孔部は、強膜リングの中央開放開口内に位置する。
ピギーバック:「ピギーバック」またはピギーバッキングという用語は、より大きなソフトコンタクトレンズの表面上に、より小さな硬質コンタクトレンズがあることである。これらの手法は、硬質レンズによる視力矯正の利点と、ソフトレンズによる快適さの利点とを与える。この用語はまた、同時に装用される2つ以上のソフトコンタクトレンズに対しても適用される。
領域:領域、帯、区域という用語はすべて、本開示において同じ意味を有する。
厚さ漸減部:厚さ減少部のことである。
厚さ漸減径:厚さ漸増径とは、垂直軸に沿って、最大Δ厚さ点から、前記最大Δ厚さ点の反対側に位置する最大Δ厚さ点まで、人工装具の幾何学中心を通って直線上を進んだ場合の距離のことである。
厚さ漸減領域:(「開口拡大帯」とも称される)とは、一方の側で厚さが増加し、もう一方の側では同じ厚さが維持されるかまたは厚さがさらに減少しており、単に例示に過ぎないが、人工装具の凸面上に「谷間」様の区域、領域、帯であるトポグラフィ、または「部分的な」谷間様の区域、領域、帯が形成されるように、人工装具の標準化された厚さが減少している領域のことである。厚さ漸減領域は一般に(常にではないが)、厚さ漸増領域をもたらす。
厚さ漸減帯の幅:厚さ漸減帯が始まって終わるまでの、強膜リングまたはコンタクトレンズの凸面上の幅の測定値のことである。これは一般に(常にではないが)、人工装具の外側エッジに最も近いところで始まって、人工装具の幾何学中心に最も近い側で終わるところまで測定される。
逆ハイブリッド型コンタクトレンズ:これは、外部スカートが硬質材料でできていて、中央帯が軟質レンズ材料でできている、ハイブリッド型人工装具のことである。
硬質中央部:硬質中央部はコンタクトレンズの区域のことを意味する;従来のガス透過性またはハイブリッド型ガス透過性のものは、硬質材料でできている。
リング:リングという用語は、本明細書で用いる場合、連続的リングまたは不連続的リングでありうる。したがって、厚さが漸増しているリングは、連続的リングまたは分断された不連続的リングであってよい。リングはまた、人工装具に連続的または不連続的に輪を描く、1つのバンド(複数のバンド)、1つの帯(複数の帯)、1つの島状部(複数の島状部)、1つの領域(複数の領域)、および1つの区分(複数の区分)と呼ぶこともできる。
強膜:角膜縁で角膜と接合し、眼の特定領域では球結膜によって覆われている、眼の白色の被覆部。
強膜リング型アイエンハンサー(scleral ring eye enhancer)(強膜リング):装用者の眼の強膜上にフィットする、ある人工装具デバイスは、装用者の眼瞼裂の拡大をもたらす外側凸面上に位置するトポグラフィ(開口拡大帯)を有し、かつ、装用者の視線に干渉しないように中央開放開口を含む。強膜リングは1つの材料(均質)を含むことができ、またはハイブリッド型強膜リングの場合には複数の材料を含みうる。ハイブリッド型強膜リングは、上眼瞼を押し上げかつ/または下眼瞼を下垂させる、指状要素を含みうる。強膜リングは屈折力を含まない。すべてではないがほとんどの場合には、強膜リングは角膜の部分を覆わない。しかし、いくつかの態様において、強膜リングは、角膜縁、および角膜の非常に限られた周辺領域を覆うと考えられる。
強膜コンタクトレンズ:強膜レンズとは、角膜の上をアーチ状に覆う(角膜の上には載っていないことを意味する)、特別に設計された大きな直径の「硬質」コンタクトレンズのことである。それらの直径は14mmから20mm超までの範囲にわたりうる。それらは「強膜」レンズと呼ばれるが、これはそれらが角膜(眼の着色部分を覆う透明なドーム状組織)を完全に覆ってその上をアーチ状に覆い、強膜(眼の外側壁を形成する眼の白色部分)上まで広がるためである。強膜レンズは強膜「のみによって支えられ」、角膜および角膜縁の上をアーチ状に完全に覆う。強膜レンズは、装用者の眼の強膜上に非常に堅固にフィットする。
シリコーンハイドロゲル:ソフトコンタクトレンズ用に用いられる材料のことである。シリコーンハイドロゲルは1998年に利用可能になった。シリコーンハイドロゲルは、シリコーンの極めて高い酸素透過性と、従来のハイドロゲルの快適性および臨床的性能との両方を有する。シリコーンは水よりも酸素透過性が高いため、シリコーンハイドロゲルの酸素透過性はレンズの含水量によっては束縛されない。今日では、非常に高い酸素透過性を備え、そのため終夜装用(連続装用)が承認されているレンズが開発されている。1日装用が承認されているレンズも、シリコーンハイドロゲル材料で入手可能である。
シリコーンハイドロゲルの短所は、それらがやや硬性であり、レンズ表面が疎水性であって「湿潤性」が低い場合があることである。これらの要因はレンズの快適さに影響しうる。新たな製造手法、および多目的溶剤への変更により、これらの影響は最小限に抑えられてきている。プラズマコーティングと呼ばれる表面修飾プロセスにより、レンズ表面の疎水性が変更される。別の手法は、レンズ表面を親水性にするために内部再湿潤剤を組み入れることである。第3のプロセスでは、表面改質も添加剤も伴うことなく、架橋がより少なくなり、湿潤性がより高くなる、骨格のより長いポリマー鎖を用いる。
単焦点コンタクトレンズ:単一の屈折力を含むコンタクトレンズ。屈折力は、遠視、近視、乱視のうちの1つまたは複数を矯正するためであってよい。
滑り抵抗:眼瞼がまばたきして、コンタクトレンズまたは強膜リングの上を横切ったときに、眼瞼とコンタクトレンズとの間にかかる抵抗。
勾配:外面の曲率またはトポグラフィ。より具体的には、本開示における勾配は、開口拡大帯、領域または区域の傾きまたは傾斜の度合いとして特徴づけられる。勾配は外側勾配および内側勾配によって特徴づけられる。
ソフトスカート:ソフトスカートとは、ハイブリッド型コンタクトレンズまたは強膜リングに配置されて見いだされる軟質親水性材料の外側環状帯のことである。
ソフトコンタクトレンズ:硬質レンズは約120年間前後にわたって存在してきたが、ソフトレンズははるかに最近になって開発されたものである。Otto Wichterleによって行われたソフトレンズに関する最も重要な発見により、1960年代に最初のソフトハイドロゲルレンズが数カ国で売り出され、1971年には1日装用用材料(polymacon)の「Soflens」が米国FDAによって承認された。硬質コンタクトレンズは十分な快適さが実現されるまでにある適応期間を必要とするものの、ソフトコンタクトレンズでは直ちに快適さが得られる。ソフトレンズ用ポリマーに対する最大の改良としては、酸素透過性の増加、レンズの湿潤能力および総合的快適性がある。
安定化帯:例えば単に例示に過ぎないが、同軸安定化帯、トランケーション、プリズムバラスト、スラブオフ、重みづけなどによって人工装具を安定化する領域、帯、区域。安定化帯は、眼瞼がまばたきしたときに眼の中にある人工装具が回転するのを実質的に減少または停止させる。安定化帯は一般に、眼瞼縁に接触することでレンズが回転するのを防ぐ。安定化帯または安定化特徴は、ソフトコンタクトレンズによる装用者の角膜への酸素透過の減少を引き起こすことがある。
表面特徴:人工装具の表面上に位置する、人工装具の残りの部分とは異なる特徴。この特徴は、単に例示に過ぎないが、厚さの増加/減少、表面摩擦の増加、異なる材料でできた領域、くぼみ、隆起、表面の凹凸、表面のトポグラフィの何らかの変化、およびそれらの任意の組み合わせでありうる。
表面摩擦または表面摩擦の増加:人工装具が装用者の眼瞼と接触したときに表面摩擦の増加をもたらす、人工装具の凸面の表面区域、帯、領域を意味する。人工装具の凸面上のこの区域は、開口拡大帯上に配置することができる。この区域または帯は、厚さ漸増帯または厚さ漸増領域の表面上に、厚さ漸増帯または厚さ漸増領域の代わりに用意することができる。表面摩擦増加領域、帯、区域は、平坦でもよく、盛り上がっていてもよい。
厚さ領域または帯:基礎となるコンタクトレンズに対して厚さ漸増部が加えられる、コンタクトレンズの領域または帯。この領域または帯は、凸外面に対して厚さが加えられるところである。これはまた、厚さ漸増帯と称することもできる。
厚さ差:第1の点が、第1の点に近接する第2の点よりも薄い、人工装具の領域、帯、区域のことである。ほとんどの場合(すべてではないが)、この厚さ差は漸変的であり、不連続性をもたらす階段関数ではない。厚さ差は、人工装具において厚さ漸増領域、または厚さ漸減領域に見いだすことができる。
厚さ勾配:傾きまたは傾斜を有する表面のトポグラフィの水平軸に沿った1mmの移動当たりに測定される厚さ。厚さ勾配は厚さ漸増または厚さ漸減を用いて計算することができ、また、全厚を介して計算することもできる。厚さ勾配は外側厚さ勾配領域または内側厚さ勾配領域に配置することができ、これらは両方とも開口拡大帯に付随する。
トーリックコンタクトレンズ:装用者の乱視異常を矯正するためのトーリック領域またはトーリック帯を含むコンタクトレンズのことである。このタイプのトーリックレンズは、円柱矯正力(cylindrical corrective power)または球面円柱屈折力でありうる。
垂直寸法:垂直軸に投影された、開口拡大帯の最も高い点と最も低い点との距離のことである。開口拡大帯が対称性でない場合には、垂直寸法はレンズが回転すると変化する可能性があり、すなわち、垂直寸法はレンズの回転位置の関数である。
図8〜11は、本明細書で教示されるコンタクトレンズがフィットする患者集団から除外されるべきである眼の例である。図8〜11における人の上眼瞼が瞳孔の上縁から2mm以内にないこと、または下眼瞼が瞳孔の下縁から2mm以内にないことに留意すべきである。
上で述べたように、上眼瞼を押し上げるように設計された強膜ハード/硬質コンタクトレンズは、装用者が自身の眼瞼を通常にまばたきしたときにこの種のレンズにかなり大きな不快さが伴うことが原因で、市場では大きな失敗に終わっている。加えて、そのような強膜コンタクトレンズを装用した場合の眼の美容性も、装用者にとって満足なものではない。事実上、眼瞼下垂の矯正のために設計されたそのような強膜コンタクトレンズは、1980年代以後、ほとんど販売が途絶えている。角膜のみにフィットする硬質角膜コンタクトレンズは、眼瞼によってコンタクトレンズが中心から外に押されるため、装用者の眼瞼を押し上げることができない。
従来の角強膜コンタクトレンズ(本明細書で教示される角強膜コンタクトレンズよりも前のもの)(現在、世界中で最も広まっているもの)は、それらの幾何学的設計が原因で、複数の角強膜コンタクトレンズ装用者の眼瞼を押し上げることも、眼瞼裂を開大させることもできない。角強膜コンタクトレンズは、複数の異なる光学的矯正をもたらす。語句「複数の異なる光学的矯正または処方」という語句の使用は、プラノ(屈折力がない)角強膜コンタクトレンズの装用者の屈折力または処方のほか、コンタクトレンズによって提供されるほとんどすべての公知の光学的処方または屈折力のことも意味する。
したがって、プラノを含むほとんど任意およびすべての公知の屈折力、高レベルの快適性、良好な芯取り性、ならびに、装用者の上眼瞼を押し上げ(眼瞼下垂の場合)、かつ/または下眼瞼を下垂させ、そうすることで装用者の1つの眼瞼裂(または、1つが右眼用で1つが左眼用という2つのそのようなコンタクトレンズを装用する場合には複数の眼瞼裂/開口)を拡大させる優れた向上性を提供するように設計することができる、角強膜コンタクトレンズ(ソフトコンタクトレンズおよび/またはハイブリッド型コンタクトレンズ)の形態である人工装具に対しては、未だに対処されていない需要が存在する。
加えて、コンタクトレンズの「非装用者」の眼の眼瞼裂(開口)を拡大させる人工装具に対しても、差し迫った需要が存在する。強膜リングの形態であるそのような人工装具は、別の態様として本明細書に記載されている。強膜リングはコンタクトレンズであることを意図しない。強膜リングは光学部もいかなる屈折力も含まない。強膜リングの中央領域は中央開放開口のそれである。しかし、本明細書で教示されるような強膜リングは、装用者の眼瞼裂または眼開口を拡大させる開口拡大帯を含む。
「コンタクトレンズ」という用語を本明細書で用いる場合には、強膜コンタクトレンズ、ガス透過性角膜コンタクトレンズ、ハード角膜コンタクトレンズであるものとして言及する場合を除き、角強膜コンタクトレンズであるものを意味していることを指摘しておくべきであろう。本明細書で開示されているコンタクトレンズは、角強膜コンタクトレンズであるものである。したがって、本開示を読む場合には、この段落に記述した例外を除き、「コンタクトレンズ」という用語は常に、角強膜コンタクトレンズであるものと解釈されるべきである。強膜リングという用語は、本明細書に含まれる定義において定められた意味を有すると理解されるべきである。
本明細書に開示されている態様は、角強膜コンタクトレンズの形態および強膜リングの形態である人工装具を教示している。この角強膜コンタクトレンズは、コンタクトレンズの幾何学中心から3.0mmの点よりも外側にある領域内の任意のところに位置する、最小で25ミクロン以上の厚さ漸増領域または帯を有し、ここで、角強膜コンタクトレンズはその光学部を通じて装用者の未矯正の屈折異常を大きく矯正する適切な屈折力を提供し、かつ、ここで、厚さ漸増は、同じ光学的矯正力を提供する、同じタイプの、同じ製造元の従来のコンタクトレンズのものと比較して同じ点で測定される厚さ差分であり、かつ、ここで、厚さ漸増領域は装用者の眼の眼瞼裂の拡大をもたらす。角強膜コンタクトレンズは、単に例示に過ぎないが、ソフトコンタクトレンズまたはハイブリッド型コンタクトレンズでありうる。角強膜コンタクトレンズは、単焦点、多焦点、トーリック、乱視用コンタクトレンズのうち任意の1つまたは複数の光学的デザインのものでありうる。ソフトコンタクトレンズは、連続装用用、1日装用用、計画的取替え用、または使い捨て式のものでありうる。角強膜コンタクトレンズは、装用者の眼瞼裂を拡大させる効果をさらに高めるためにコンタクトレンズの光学部から適切に除外されて位置する、着色された、色合いのついた虹彩リング、角膜縁リングまたは環状バンドを有しうる。この着色された、色合いのついたリングまたはバンドの一部分は、装用者の眼の角膜縁にほぼ隣接するがその上を越えるように配置することができ、装用者の角膜縁を越えて広がることができる。着色部分間の外径は、角膜縁間の直径の測定値よりも大きくてもよいものとする。
強膜リングとは、常にではないが一般に、眼が正常に開いているときにその外周エッジが上眼瞼および下眼瞼の裏側に位置し、かつ、装用者の視線に干渉しないように、その内周エッジが装用者の瞳孔径(暗所で正常に拡張したとき)の外側に位置するリングであるもののことである。強膜リングの内側エッジ(開放中央開口に隣接)は、強膜リングの周辺エッジのものに類似した輪郭を有する。このことは、装用者がまばたきしたときの不快さを防ぐ一助となる。強膜リングは、装用者の視線が阻害されないようにする中央開放開口を有する。強膜リングは、ハード、ガス透過性、ソフト、ハイブリッドといった、さまざまなコンタクトレンズ材料の任意のもので構成されうる。強膜リングは、開口拡大帯または厚さ漸増領域、厚さ漸減領域および/または表面摩擦増加区域を含みうる。表面摩擦増加帯は平坦であってもよく、または人工装具の凸面から盛り上がっていてもよい。厚さ漸増領域または帯は、単に例示に過ぎないが、1つの材料(リングの基礎材料であるもの)でできていてもよく、または、より柔軟でより軟質な材料が、主要な強膜リングのより硬質でより柔軟性の低い軟質材料に対して固定された、複数の材料でできていてもよい。すべてではないがほとんどの場合には、ハイブリッド型強膜リングについて言えば、より柔軟な材料(より硬質性の低い)により、上眼瞼の押し上げおよび下眼瞼の押し下げがもたらされる。
ハイブリッド型強膜リングは、すべてではないがいくつかの態様において、上眼瞼を押し上げかつ/または下眼瞼を下垂させる指状要素を含みうる。強膜リングは屈折力を含まない。その作用機序は、上眼瞼および下眼瞼が閉じようとしているかまたは閉じているときには、指状要素を折り畳むかまたは曲げるために必要な通常の力に打ち勝つ力が当該眼瞼によって与えられるが、当該眼瞼が再び開かれると、指状要素を折り畳むかまたは曲げるために必要な力は、指状要素の構造によって課されるものよりも小さくなり、それ故に指状要素は元の位置にはね戻り、そうして今度は眼瞼に打ち勝って上眼瞼を拳上させもしくは押し上げ、かつ/または下眼瞼を押し下げるかまたは下垂させる、というものである。ハイブリッド型強膜リングのすべてではないがいくつかの態様において、指状要素は、強膜リングの外面にあらかじめ形成(設計)された受け入れ用の溝(receiving trench)の中に曲げられるかまたは折り畳まれる。1つまたは複数の溝の場所は、各指状要素に対して適正な場所に用意される。これにより、まばたきしたときに指状要素がほとんど平坦に折り畳まれ、その結果、眼瞼が、指状要素の上を通って容易に閉じること、または開くことが可能になる。また、本開示は強膜リング人工装具に付随する指状要素を示して教示しているものの、それらはコンタクトレンズ人工装具にも付随しうることも指摘しておくべきである。
漸増帯は、強膜リングおよびコンタクトレンズを1つの材料で作る場合には均質な材料で構成することもでき、または強膜リングもしくはコンタクトレンズを2つの材料で作る場合にはハイブリッド帯で構成することもできる。人工装具のいくつかの態様においては、厚さ漸増帯もしくは領域または厚さ漸減帯もしくは領域は存在しても存在しなくてもよく、その代わりにさらなる眼瞼摩擦がもたらされるように帯または領域の表面が改変される。この表面摩擦増加領域または帯は、眼瞼のまばたきまたは強制閉鎖の際には容易にその上を通過させることができるが、眼瞼を開くとこの摩擦増加領域は上眼瞼を拳上させかつ/または下眼瞼を押し下げ、そうすることで眼の開口を開大させる。表面摩擦増加帯、領域、区域は、平坦であってもよく、または人工装具の凸面上に盛り上がっていてもよい。表面摩擦増加帯、領域、区域は、開口拡大帯、領域、区域であってよい。
厚さ漸増帯または表面摩擦増加帯は、本明細書に教示される人工装具のいくつかの態様において、単に例示に過ぎないが、以下のものとして形作ることができる:1つのリング(複数のリング)、複数のリングレット、複数の部分的リング、1つのバンド、複数のバンド、複数の部分的バンド、1つのドーム、一連のドーム、任意の幾何学形状である分離した領域または島状部、1つの区分された区域、複数の区分された区域。厚さ漸増帯は、コンタクトレンズの外側凸面に配置される。厚さ漸増帯は、コンタクトレンズまたは強膜リングの標準化された外側凸面曲率から高くなった厚さ区域として表現することができる。コンタクトレンズまたは強膜リングのすべてではないがほとんどの好ましい態様において、(開口拡大帯)の厚さ漸増帯は、その外側勾配が凸面と接する点またはその内側勾配が凸面と接する点で、外側凸面曲率のものと連続した様式で接続している(コンタクトレンズまたは強膜リングの凸曲率が連続表面のそれであることを意味する)。いくつかの他の態様において、凸面は1つまたは複数の不連続性を有し、その上に1つまたは複数の厚さ漸増領域がその近隣または近傍に配置されており、それ故に連続表面ではない。ハイブリッド型強膜リングについて言えば、いくつかの態様において、厚さ漸増帯は、1つの材料が別の材料に対して固定される不連続表面を介して形成される。均質な強膜リングについて言えば、リングは1つの材料で作られ、ほとんどの場合には、厚さ漸増領域(開口拡大帯)を利用して上眼瞼が押し上げられかつ/または下眼瞼が下垂する。
人工装具という用語は、本明細書で用いる場合、角強膜コンタクトレンズまたは強膜リングのうちの1つであることを意味する。「コンタクトレンズ」という用語は、本明細書で用いる場合、硬質、ソフト、ガス透過性、ハイブリッドのうちの1つでありうる角強膜コンタクトレンズであるものを意味する。
厚さ漸増帯を含む厚さ漸増帯/領域/区域(開口拡大帯)は、すべてではないがほとんどの態様において、コンタクトレンズまたは強膜リングの瞳孔部の外縁に隣接し、瞳孔部の外側にある凸面上に位置する。瞳孔部はコンタクトレンズのオプティカルゾーンと同じサイズであるかまたはそれよりも小さく、強膜リングの中央開放開口内に位置する。厚さ漸増帯の最大厚さ差分部は、コンタクトレンズまたは強膜リングである人工装具が装用されたときに、装用者の眼の角膜縁の箇所(それと並んで)またはその外部(外側)に位置する。このことは、厚さ漸増帯(開口拡大帯)の最大厚さ差分部または最大厚さ変化部が、コンタクトレンズまたは強膜リングが装用されるかまたは装用されることを意図した、角膜の幾何学中心を通る角膜縁間の直径(角膜直径の外側)の測定値に等しいか、またはそれよりも径が大きいことを意味する。本明細書で教示されるようなコンタクトレンズまたは強膜リングは、厚さ漸増帯を含むコンタクトレンズまたは強膜リングであり、ここで、厚さ漸増帯は厚さ漸増部、勾配および幅を有し、かつ、ここで、厚さ漸増径は装用者の眼の本来の眼瞼裂よりも1mm〜10mm大きい範囲内にある。厚さ漸増帯は凸面上に位置し、上眼瞼を押し上げるもの、および/または下眼瞼を押し下げるものとして作用する。その正味の美容上の効果は、装用者の眼の開口または眼瞼裂(開口)を拡大させることである。
いくつかのさらなる態様においては、眼開口拡大効果をも引き起こすトポグラフィが提供されるように、凸面デザインに厚さ漸減領域が提供される。この場合には、上眼瞼が拳上させ/押し上げられ、かつ下眼瞼が下垂させ/押し下げられるように、厚さ漸減領域が凸面内に谷間を形成する。谷間を取り囲むトポグラフィは、厚さ漸増領域、帯、区域などとなる。
ほとんどの好ましい態様において、人工装具は、厚さ漸増領域を追加/設計する場合には、厚さ漸減領域が人工装具の中に設計されるのとは反対に、全区域を通じて薄く保つことができる。これは、厚さ漸減領域が実際には、厚さ漸減領域の厚さの削減の結果であるという事実に起因する。したがって、開口拡大効果が得られるように(漸減性領域を介して)人工装具の凸面内に必要な谷間の深さを得るためには、内側に位置する区域(レンズの中心により近い)は、漸減性領域よりも厚くなければならない。したがって、厚さ漸減領域を有する人工装具は、表面区域全体を通じて、厚さ漸増領域を含む人工装具よりも厚くなると考えられる。人工装具のほとんどの場合に、より薄い全表面区域を有するものの方が、より厚い全表面区域を有するものよりも好ましい。上記のことを説明した上で、人工装具のいくつかの態様においては、眼開口拡大効果を得るために厚さ漸減領域が利用される。
厚さ漸増領域および/または厚さ漸減領域は、回転対称性、回転非対称性、楕円アーチ様特徴(複数の特徴)、島状部または島状部様の区域のうちの1つでありうる。楕円アーチ様特徴、分離した島状部。楕円アーチ(複数のアーチ)様特徴(複数の特徴)は、上眼瞼の眼瞼縁の曲線および/または下眼瞼の眼瞼縁の曲線と近似していてよい。いくつかの態様において、厚さ漸増帯は、光学部(コンタクトレンズの場合)または開放開口(強膜リングの場合)のいずれかの側(右側または左側)に位置する、幾分直立した島状部である。
人工装具の厚さ漸増領域は、25ミクロン〜1,000ミクロンの範囲内にあり、好ましい範囲が100ミクロン〜500ミクロンであり、より好ましい範囲が100ミクロン〜400ミクロンであり、より好ましい範囲が75〜400ミクロンである、最大Δ厚さ差異(厚さの追加)を有しうる。最大Δ厚さは、25ミクロン、50ミクロン、100ミクロン、150ミクロン、200ミクロン、250ミクロン、300ミクロン、350ミクロン、400ミクロン、450ミクロン、500ミクロン、550ミクロン、600ミクロン、650ミクロン、700ミクロン、750ミクロン、800ミクロン、1000ミクロンでありうる。最大Δ厚さ差異部は人工装具の外周エッジから0.5mm〜3mmに位置しうる。厚さ漸増領域は、人工装具の外側エッジでまたはその近くから開始/出発して、外側エッジから6mmまでに位置しうる。ほとんどの態様において、厚さ漸増領域は、外側エッジにあるか、または人工装具の外側エッジから0.1mm〜3mmにありうる。最大厚さ漸増の差分は、ほとんどの場合には、人工装具のエッジの0.5mm〜3.0mm内側の範囲内にあり、好ましい範囲は人工装具のエッジの1.0mm〜2.5mm内側である。厚さ漸増径(最大厚さ追加点から、人工装具の幾何学中心を経由して反対側の最大厚さ追加点まで測定)は、10.5mm以上、11.0mm以上、11.5mm以上、12.0mm以上、12.5mm以上、13mm以上、13.5mm以上、または14.0mm以上でありうる。
人工装具の厚さ漸減領域は、25ミクロン〜1,000ミクロンの範囲内にあり、好ましい範囲が100ミクロン〜500であり、より好ましい範囲が100ミクロン〜400ミクロンであり、より好ましい範囲が75ミクロン〜400ミクロンである、最大Δ厚さ差異(厚さの減少)を有しうる。最大Δ厚さは、25ミクロン、50ミクロン、100ミクロン、150ミクロン、200ミクロン、250ミクロン、300ミクロン、350ミクロン、400ミクロン、450ミクロン、500ミクロン、550ミクロン、600ミクロン、650ミクロン、700ミクロン、750ミクロン、800ミクロン、1000ミクロンでありうる。厚さ漸減領域は、外側エッジから、外側エッジから6mmまでのところに位置しうる。ほとんどの態様において、厚さ漸減領域は人工装具の外側エッジから0.1mm〜3mmにありうる。最大厚さ漸増の差分または最大厚さ漸減の差分は、ほとんどの場合には、人工装具のエッジの0.5mm〜3.0mm内側の範囲にあり、好ましい範囲は人工装具のエッジの1.0mm〜2.5mm内側である。
厚さ漸増が原因で生じる開口拡大帯は、最大厚さ変化点(最大Δ厚さ)によって分けられる2つの勾配を含む。これらの2つの勾配は外側勾配および内側勾配と呼ばれる。開口拡大帯(厚さ漸増領域または厚さ漸減領域)の、人工装具の外側エッジに最も近い側にある「外側」勾配は、開口開大効果を達成する一助となる。「外側」勾配は、単に例示に過ぎないが、1mm当たり50ミクロン以上である、1mm当たり100ミクロン以上である、1mm当たり150ミクロン以上である、1mm当たり200ミクロン以上である、1mm当たり250ミクロン以上である、1mm当たり300ミクロン以上である、1mm当たり350ミクロン以上でありうる。「内側」勾配は、単に例示に過ぎないが、1mm当たり50ミクロン以下、1mm当たり100ミクロン以下、1mm当たり150ミクロン以下、1mm当たり200ミクロン以下、1mm当たり250ミクロン以下、1mm当たり300ミクロン以下、1mm当たり350ミクロン以下でありうる。「外側」勾配が有する1mm当たりの厚さの変化が50ミクロン未満である場合、開大効果は最小限となる。外側勾配が有する1mm当たりの厚さの変化が300ミクロンを上回る場合、人工装具は不快なものとなり、偏心する可能性がある。開口拡大帯の、人工装具の外側エッジに最も近い側での外側勾配は、最小で3度から最大で45度までの範囲内にあり、好ましくは5度〜25度の範囲内にある。開口拡大帯の、人工装具の幾何学中心に最も近い側での「内側」勾配の範囲は、最小で1度から最大で15度までの範囲内にありうる。すべてではないがほとんどの態様において、外側勾配は内側勾配よりも大きい。いくつかの態様において、外側勾配は内側勾配のそれと概ね等しい。そして、いくつかの態様において、内側勾配は外側勾配よりも大きい。
いくつかの態様において、人工装具は、開口拡大帯(厚さ漸増領域または厚さ漸増漸減領域)をその凸面に含むことができ、ここで開口拡大帯は、開口開大効果をもたらす凸面上の隆起をもたらす。この隆起(厚さ漸増または厚さ漸減によってもたらされる)は、湾曲形状、勾配角度、1ミリメートル当たりの厚さの変化、および最大厚さ変化(最大厚さ差分)を有する。いくつかの態様において、開口拡大帯の外側勾配は、人工装具の外周エッジでまたはそれに近接して始まることができ、開口拡大帯の最大厚さ差分部まで続く。いくつかの態様において、外側勾配が外周エッジでまたはそれに隣接して始まる場合には、外側勾配は外側エッジの勾配から2度以内にあると考えられる。すべてではないがほとんどの態様において、最大厚さ差分の場所は、外側エッジから1mm〜3mmの範囲内に実現され、好ましい範囲は外側エッジから1.0mm〜2.5mmである。開口拡大帯は、外側エッジから開口拡大帯を横切って人工装具の幾何学中心へと進んで測定した場合に、1mm〜6mmの幅を含みうる。
すべてではないがほとんどの態様において、少なくとも1つの隆起は、人工装具の幾何学中心を通る仮想垂直軸に沿って、幾何学中心の上または下に位置する。いくつかの他の態様において、少なくとも1つの隆起は、人工装具の幾何学中心を通る仮想水平軸によって区切られるように、幾何学中心のいずれかの側に位置する。さらに他の態様においては、単に例示に過ぎないが、人工装具の幾何学中心を基準として40度、45度、90度、135度、150度、180度、210度、330度のうち2つ以上だけ、人工装具の幾何学中心を通る仮想的な軸によって区切られるように配置されうる、分離した複数の隆起が位置しうる。
人工装具のピークΔ厚さ漸増(最大厚さ変化)領域(帯、区域)またはピークΔ厚さ漸減(最大厚さ変化)領域(帯、区域)の場所は、装用者の上眼瞼縁に対して0.1mm以上上方(上)、および/または下眼瞼縁に対して0.1mm以上下方(下)に位置しうるが、より好ましくは、装用者の上眼瞼縁に対して0.5mm以上上方(上)、および/または下眼瞼縁に対して0.5mm以上下方(下)に位置する。重要なこととして、この段落に含まれる上記の測定値は「人工装具を装用していない」眼瞼のものであり、かつ、装用者の眼がまっすぐ前を見ており、はっきり見ようとしたり強い光で見たりしようとして力を入れてはおらず、力を抜いたときのもの(装用者の眼の本来の開口)であることを指摘しておく。したがって、人工装具を装用したときに、上眼瞼は最小で0.1mm以上拳上し、下眼瞼は最小で0.1mm以上押し下げられる(下垂する)。しかし、より好ましい例では、人工装具を装用したときに、上眼瞼は最小で0.5mm以上拳上し、下眼瞼は最小で0.5mm以上押し下げられる(下垂する)。人工装具の開口拡大効果は、着色された強調色を介してさらに高めることができる。着色された強調色は、人工装具上に位置する、着色された角膜縁リング、着色されたサークルリング(これは着色されたサークルレンズと称しうる)であってよい。したがって、この着色された強調色を有する人工装具(例えば、着色された角膜縁リング)によって装用者の眼の開口が拡大されればされるほど、着色された角膜縁リングが装用者の眼を見ている人によってより観察されうる。このことは、着色された角膜縁リング、カラーリングまたは色強調が、装用者の眼の美容上の向上という点でより劇的になるという極めて補完的な効果をもたらす。着色された強調色の一部分は、色強調が施された人工装具が装用されたときに、装用者の眼の角膜縁(その上にもしくはそれに隣接して)、またはその外側に位置すると考えられる。このことは、人工装具の色強調が施された部分が、装用されたときに、装用者の眼の角膜縁区域の上またはその外側に位置することを意味する。したがって、着色された強調部分の一部分の直径は、装用者の角膜の外径に等しいか、またはそれよりも径が大きい。
いくつかの態様においては、例えば単に例示に過ぎないが、コンタクトレンズ多焦点デザインのものである人工装具、および/または乱視を矯正するためのものであって、それ故にトーリック構成要素および安定化帯(特徴または要素)を有する屈折力を必要とするものが使用される。いくつかの態様においては、例えば単に例示に過ぎないが、強膜リングである人工装具、または球面屈折力のみを有する単焦点コンタクトレンズであるものの場合、人工装具は通常のまばたきによって自由に回転でき、それ故に安定化帯(特徴、要素)を有しない。いくつかの他の態様において、安定化帯(特徴または要素)は、単焦点球面屈折力コンタクトレンズのために使用される。安定化帯(特徴または要素)が使用される場合、それは開口拡大帯のデザインの上または中に作る(それ故にそれらは一体になったものとして特別に設計される)こともでき、またそれは開口拡大帯とは別々であってもよい。
表面摩擦増加領域/帯/区域は、人工装具の凸面上に配置されることができ、装用者の眼の開口を増大させることができる。表面摩擦増加帯/領域/区域は、開口拡大帯/領域/区域と呼ぶことができる。表面摩擦増加領域/帯/区域は、平坦でも、不規則でも、盛り上がっていても、または人工装具の凸面上に一体化していてもよい。表面摩擦増加領域の幅は、人工装具の外側エッジから、外側エッジから6mmの点までを含む幅を含みうる。いくつかの他の態様において、表面摩擦増加領域は、人工装具の外側エッジから0.1mm〜6mmの中に位置する。ある態様において、表面摩擦増加領域が平坦であってそれ故に、表面摩擦増加領域を含む人工装具の開口拡大帯の凸面またはその一部分上の帯/領域/区域に近似することを考慮すれば、その領域は厚さ勾配を有しない。他の態様において、厚さ勾配はある。表面摩擦増加領域は、人工装具の開口拡大帯の凸面またはその一部分上に、単に例示に過ぎないが、以下を含む任意の公知の手段を介して製作することができる;成形、熱成形、表面処理、コーティング、エッチング、沈着、ガスエッチング、ガス処理、レーザーエッチング、レーザー処理、化学エッチング、および化学処理。人工装具における該人工装具の外側エッジから0mm〜6mmの範囲内に位置する凸面領域/帯/区域であって、外側エッジから6mmを越えて位置する凸面区域と比較して1%以上の摩擦抵抗を含む凸面領域/帯/区域はいずれも、表面摩擦増加領域/帯/区域と判断されるであろう。そのような表面摩擦増加凸面領域/帯/区域は、単に例示に過ぎないが、コーティングされた表面、くぼんだ表面、細かいひびが入った表面、表面隆起、表面リング、表面の線、すべりにくい表面、不規則な表面などであってよいと考えられる。
表面増加領域/帯/区域のくぼみ、隆起、リングおよび線は垂直深さを有する。当該垂直深さは、くぼみ、隆起、リングまたは線のピークと谷との間の距離によって定義される。これらの特徴の垂直深さは500オングストローム〜50ミクロンの範囲内にあり、好ましくは1ミクロン〜10ミクロンの範囲内にある。
表面摩擦増加領域/帯/区域は、人工装具の凸面上に位置する独立型の特徴であってもよい。さらに、表面摩擦増加領域/帯/区域は、開口拡大帯の外側勾配上またはその一部分上に位置してもよい。
また、表面摩擦増加領域/帯/区域を、人工装具の凸面上の開口拡大帯の全体または一部を磨かないことによって作り出すこともできる。これは、磨かれている残りの凸面と対比して表面摩擦増加を有する開口拡大帯によって定義される領域/帯/区域をもたらすと考えられる。
図12A〜Bおよび13A〜Bは、開口拡大帯が人の眼の眼瞼裂を拡大させることができる2つのやり方を図示している。図12Aおよび13Aは、本明細書に記載の人工装具を装用していない人を示しており、図13Aおよび13Bは、開口拡大帯を有する人工装具を眼に重ね合わせている同じ人を示している。
図12Bは、最大Δ厚さ部1202が眼の本来の開口の外側にある、人工装具1200の態様を示している。言い換えると、装用された場合に、人工装具1200の1つ(または複数)の開口拡大帯の最大Δ厚さ分部1202は、眼の力を抜いて正面を見たときに、上眼瞼縁よりも上側および下眼瞼縁よりも下側に位置する。厚さ漸増径(ある最大厚さ追加点から、人工装具の幾何学中心を経由して反対側の最大厚さ追加点まで測定された直径)は、上眼瞼縁と下眼瞼縁との間の距離よりも大きい。
厚さ漸増径および同様に厚さ漸減径とは、ある最大Δ厚さ点から、人工装具の幾何学中心を通って、前記最大Δ厚さ点の反対側に位置する最大Δ厚さ点まで直線上を進む軸に沿った距離である。本明細書に開示されている態様は、人工装具をフィットさせるために人工装具のフィッティングを行う場合に、最大Δ厚さ(ピーク厚さ差分とも呼ばれる)が、最低でも上眼瞼縁に対して0.1mm上側および/または下眼瞼縁に対して0.1mm下側に位置することを教示している。
人工装具の厚さ漸増径および厚さ漸減径は人工装具の全径(最外径)に応じて任意の直径でありうるが、しかし、ほとんどの場合には、厚さ漸増径および厚さ漸減径は10.5mm〜15mmの範囲内にある。
人工装具1200上の最大Δ厚さ部1202の場所は、上眼瞼の裏側でありかつ上眼瞼縁に対して上側に位置し、かつ下眼瞼の裏側でありかつ下眼瞼縁に対して下側に位置し、そうすることで眼の眼瞼裂(開口)を拡大させる。もっとはっきりさせると、この態様において、最大Δ厚さ部の場所は、それが眼の本来の開口の外側にある、すなわちその垂直測定値よりも大きい距離にあるため(厚さ漸増径が、本来の眼開口の垂直測定値よりも大きいことを意味する)、眼の本来の開口の中にはない。この態様の場合には、上眼瞼は、開口拡大帯が厚さ漸増帯、厚さ漸減帯または表面摩擦増加領域のうちの1つまたは複数であることが原因で押し上げられる。そして、下眼瞼は、同じく開口拡大帯が厚さ漸増帯、厚さ漸減帯または表面摩擦増加領域のうちの1つまたは複数であることが原因で下側に押される。厚さ漸増帯(領域、区域)を有する態様の場合における作用の方法は、厚さ追加部が上眼瞼を外側および上側に押すこと、および下眼瞼を下側および外側に押すことのいずれかを介してもたらされる。厚さ漸減帯(領域、区域)を有する態様の場合における作用の方法は、上眼瞼縁および下眼瞼縁が、厚さ漸減帯の境界が眼の瞳孔に最も近い側で有意な厚さを加え始めるところで勾配に接触すること、または厚さ漸減帯の谷間で接触してその中に保持されることのいずれかを介してもたらされる。表面摩擦増加(領域、区域)を有する態様の場合における作用の方法は、厚さ追加部が上眼瞼を外側および上側に押すこと、および下眼瞼を下側および外側に押すことのいずれかを介してもたらされる。
図13Bは、人工装具1300における最大Δ厚さ部1302の位置が、上眼瞼縁および下眼瞼縁に位置しているを示している。図13Bにおける点線が、図12Bに記載された態様の同じ点線と比較して、直径(厚さ漸増径または厚さ漸減径)が小さいことに注目されたい。図12Bは、図13Bと比較して、より大きい厚さ漸増径または厚さ漸減径を有する。この態様における作用の方法は、厚さ漸増帯の幅方向を横切る外側勾配を利用して拡大効果を実現する。人工装具1300の外側エッジに面する側にあるその開始部から、眼の本来の開口のすぐ内側に位置する最大Δ厚さ部1302まで、厚さが増す(増大する)急な勾配(厚さ漸増帯幅方向または厚さ漸減帯の幅方向に交差する)を有することにより、勾配は、上眼瞼を上に動かしかつ下眼瞼を下に動かし、そうすることで眼の開口を開大させる、滑り用の板または柱面体の形状を持つくさび(wedge)として作用する。この態様により、厚さ漸増径または厚さ漸減径は、眼の正常な/本来の開口の中にある最大Δ厚さ部を有することが可能である。
図14A〜17Bは、人工装具の凸面上に存在する開口拡大帯/厚さ漸増領域のさまざまな態様を図示している。
図14Aは、1つの態様による強膜リング1400を図示している。強膜リング1400は、幾何学中心1402中心に位置する中央開放開口1404を有する。強膜リング1400は、開放開口1404の両側に位置する2つの厚さ漸増領域1408を含む。各厚さ漸増領域1408は、最大厚さ漸増部(ピークΔ厚さ部)1406を有する。厚さ漸増領域1408は、装用されたときに装用者の眼の眼瞼裂を大きくすることができる。
図14Bは、別の態様によるコンタクトレンズ1450を図示している。コンタクトレンズ1450は、中心に位置する幾何学中心1452を有する光学領域1454を有する。コンタクトレンズ1450は、光学領域1454の両側に位置する2つの厚さ漸増領域1458を含み、これは両方とも盛り上がった島状部の形状をしている。各厚さ漸増領域1458は、最大厚さ漸増部(ピークΔ厚さ部)1456を有する。厚さ漸増領域1458は、装用されたときに使用者の眼の眼瞼裂を大きくすることができる。
図15Aは、別の態様によるコンタクトレンズ1500を図示している。コンタクトレンズ1500は、リング形状の厚さ漸増または厚さ漸減領域1504によって取り囲まれた光学部1502を含む。コンタクトレンズ1500はまた、厚さ漸増または厚さ漸減領域1504を取り囲み、コンタクトレンズ1500のエッジに向かって広がる、厚さ漸減領域1506も含む。
図15Bは、別の態様によるコンタクトレンズ1520を図示している。コンタクトレンズ1520は、卵形状の厚さ漸増または厚さ漸減領域1524によって取り囲まれた光学部1522を含む。コンタクトレンズ1520はまた、厚さ漸増または厚さ漸減領域1524を取り囲み、コンタクトレンズ1520のエッジに向かって広がる厚さ漸減領域1526も含む。
図15Cは、別の態様によるコンタクトレンズ1540を図示している。コンタクトレンズ1540は、2つの厚さ漸増または厚さ漸減領域1544を有する光学部1542を含み、当該領域は当該光学部の周りに位置し、一方が上側で一方が下側にある。各厚さ漸増または厚さ漸減領域1544は部分的リング形状を有する。コンタクトレンズ1540はまた、厚さ漸増または厚さ漸減領域1524の外側に位置し、コンタクトレンズ1540のエッジに向かって広がる厚さ漸減領域1546も含む。
図15Dは、別の態様によるコンタクトレンズ1560を図示している。コンタクトレンズ1560は、複数のバンド形状の厚さ漸増または厚さ漸減領域1564を有する光学部1562を含む。厚さ漸増または厚さ漸減領域1564は、光学部1562の周りにスポーク様の様式で位置する。厚さ漸増または厚さ漸減領域1564は、コンタクトレンズ1560のエッジに向かって広がることもでき(図示されているように)、またはエッジの内側の点へと広がることもできる(図示されていない)。
図16Aは、別の態様による強膜リング1600を図示している。強膜リング1600は、リング形状の厚さ漸増または厚さ漸減領域1604によって取り囲まれた中央開放開口1602を含む。強膜リング1600はまた、厚さ漸増または厚さ漸減領域1604を取り囲み、強膜リング1600のエッジに向かって広がる厚さ漸減領域1606も含む。
図16Bは、別の態様による強膜リング1620を図示している。強膜リング1620は、卵形状の厚さ漸増または厚さ漸減領域1624によって取り囲まれた中央開放開口1622を含む。強膜リング1620はまた、厚さ漸増または厚さ漸減領域1624を取り囲み、強膜リング1620のエッジに向かって広がる厚さ漸減領域1626も含む。
図16Cは、別の態様による強膜リング1640を図示している。強膜リング1640は、2つの厚さ漸増または厚さ漸減領域1644を有する中央開放開口1642を含み、当該領域は当該開口の周りに位置し、一方が上側で一方が下側にある。各厚さ漸増または厚さ漸減領域1644は部分的リング形状を有する。強膜リング1640はまた、厚さ漸増または厚さ漸減領域1624の外側に位置し、強膜リング1640のエッジに向かって広がる厚さ漸減領域1646も含む。
図16Dは、別の態様による強膜リング1660を図示している。強膜リング1660は、複数のバンド形状の厚さ漸増または厚さ漸減領域1664を有する中央開放開口1662を含む。厚さ漸増または厚さ漸減領域1664は、中央開放開口1662の周りにスポーク様の様式で位置する。厚さ漸増または厚さ漸減領域1664は、強膜リング1660のエッジに向かって広がることもでき(図示されているように)、またはエッジの内側の点へと広がることもできる(図示されていない)。
図17A〜Cは、表面摩擦増加領域を有するコンタクトレンズのさまざまな態様を図示している。図17Aは、光学領域1702と、光学領域1702を取り囲むリング形状の表面摩擦増加領域1704とを有するコンタクトレンズ1700を示している。図17Bは、光学領域1712と、光学領域1712を取り囲む卵形状の表面摩擦増加領域1714とを有するコンタクトレンズ1710を示している。図17Cは、光学領域1722と、光学領域1722の周りに位置し、一方が上側で一方が下側にある2つの表面摩擦増加領域1724とを有するコンタクトレンズ1720を示している。各表面摩擦増加領域1724は部分的リング形状を有する。
図17D〜Fは、表面摩擦増加領域を有する強膜リングのさまざまな態様を図示している。図17Dは、中央開放開口1732と、中央開放開口1732を取り囲むリング形状の表面摩擦増加領域1734とを有する強膜リング1730を示している。図17Eは、中央開放開口1742と、中央開放開口1742を取り囲む卵形状の表面摩擦増加領域1744とを有する強膜リング1740を示している。図17Fは、中央開放開口1752と、中央開放開口1752の周りに位置し、一方が上側で一方が下側にある2つの表面摩擦増加領域1754とを有する強膜リング1750を示している。各表面摩擦増加領域1754は部分的リング形状を有する。
当該人工装具は、以下のものの「1つまたは複数」を改変して、人工装具の眼瞼挙上効果または眼瞼(開口)拡大効果を最適化することを可能にする。
1)全径
すべてではないがほとんどの場合には、より大きな径が最も有効である。単に例示に過ぎないが、14.5mm、14.8mm、15.0mm、15.5mm、16.0mm、16.5mm(強膜リングの場合には、外径は上記の寸法でもよいし、または16.0mm以上でもよい)。
2)全厚
すべてではないがほとんどの態様において、より大きい全厚が最も有効である。
3)エッジ厚
すべてではないがほとんどの態様において、コンタクトレンズまたは強膜リングの最周辺エッジ厚は、コンタクトレンズ製造元によって通常提供される特定のブランドレンズ、特定の型、特定の屈折力の最周辺エッジ厚からの変化はないままとされる。したがって、外側エッジは、すべてではないがほとんどの場合に、従来の角強膜コンタクトレンズのそれに近似している。
いくつかの態様において、最周辺エッジ厚は、厚さが増加している。
すべてではないがほとんどの態様において、コンタクトレンズまたは強膜リングの最周辺エッジ厚は、コンタクトレンズ製造元によって通常提供される特定のブランドレンズ、特定の型、特定の屈折力の最周辺エッジ厚からの変化はないままとされる。したがって、外側エッジは、すべてではないがほとんどの場合に、従来の角強膜コンタクトレンズのそれに近似している。
4)最大厚さ追加または最大厚さ差分の場所
ある態様において、コンタクトレンズの外側エッジから0.5mm内側(外側エッジから人工装具の中心に向かって)から、外側エッジから3mm内側までの区域は、厚さが増加している。他の態様において、コンタクトレンズの外側エッジから0.5mm内側(外側エッジから人工装具の中心に向かって)から、外側エッジの7mm内側までの区域は、厚さが増加している。これらの態様において、開口拡大帯の「幅」は、コンタクトレンズの全径に応じて、2.5mm〜6.5mmの範囲内にあってよい。他のある態様において、開口拡大帯の幅は、やはりコンタクトレンズの全径に応じて、1mm〜7mmの範囲内にあってよい。いくつかの態様において、開口拡大帯は、人工装具の外側エッジから、人工装具の外側エッジの2.5mm〜5mm内側の範囲内までに広がる。外側エッジからの正確な距離は、人工装具の型に依存し、また人工装具の全径にも依存する。すべてではないがほとんどの態様において、人工装具の最周辺エッジから0.5mm〜2.5mmの範囲内にある区域が、最大Δ厚さを提供する(しかし好ましくは、コンタクトレンズまたは強膜リングの最周辺エッジから0.5mm〜2.0mmの範囲内にある)。
5)厚さ漸増領域
すべてではないがほとんどの態様において、1つまたは複数の厚さ漸増または厚さ漸減領域は、コンタクトレンズの幾何学中心から3.0mmに近接するかまたはその外側に位置する。1つまたは複数の厚さ漸増または厚さ漸減領域は概して、コンタクトレンズまたは強膜リング開放開口の瞳孔部に近接するかまたはその外側に位置する。
そのような1つまたは複数の領域は、コンタクトレンズの凸面上に、単に例示に過ぎないが、1つのリング(複数のリング)、1つのバンド(複数のバンド)、または複数の部分的リング(複数のリングレット)、1つのドーム(複数のドーム)、1つの島状部(複数の島状部)、1つの区分された区域、複数の区分された区域、または任意の幾何学形状をしている、1つまたは複数の区域を含みうる。領域は回転対称領域であってもよく、または回転非対称性領域であってもよい。
すべてではないがほとんどの態様において、1つまたは複数の厚さ漸増領域において、1つまたは複数の領域の表面幾何学形状は凸曲率の増加を含む。
すべてではないがほとんどの態様において、1つまたは複数の厚さ漸増領域において、表面幾何学形状は、コンタクトレンズまたは強膜リングの全体的凸面のものと連続した表面を含む。
コンタクトレンズのすべてではないがほとんどの態様において、1つまたは複数の厚さ漸増領域において、曲率変化は装用者に対していかなる視力矯正ももたらさない。強膜リングのすべての態様において、1つまたは複数の厚さ漸増領域において、曲率変化は装用者に対していかなる視力矯正ももたらさない。すべてではないがほとんどの態様において、厚さ漸増は0.1ミクロン〜1,000ミクロンの範囲であってよい。人工装具のすべてではないがほとんどの態様において、厚さ漸増領域は最大厚さ追加点を有しうる。最大厚さ追加は25ミクロン〜1000ミクロンの範囲であってよい。いくつかの態様において、最大厚さ変化/最大厚さ差分は100ミクロン〜500ミクロンの範囲内にある。いくつかの態様において、最大厚さ変化は75ミクロン〜400ミクロンの範囲内にある。
6)表面摩擦の増加
表面摩擦増加を利用する態様は、開口拡大帯を形成する、または厚さ漸増帯の一部としての、人工装具の凸面上の表面摩擦のそれであってよい。
すべてではないがほとんどの態様において、コンタクトレンズまたは強膜リングと一方または両方の眼瞼との間の接触区域では滑り抵抗が増加している。これは、眼瞼とコンタクトレンズの凸面との間の摩擦を増加させること、しかし眼瞼を刺激することなく実現されるような限られたやり方でそれを行うこと、によって実現される。開口拡大帯の外側にある人工装具の残りの部分の表面摩擦と比較して、開口拡大帯の中での摩擦抵抗の増加が1%以上の差であることは、意味がある可能性がある。
7)凸面形状
すべてではないがほとんどの態様において、コンタクトレンズの周縁部の近くおよび/またはその周辺の凸面形状は、特定のブランドレンズのコンタクトレンズ製造元によって通常提供される、特定の型で特定の屈折力を持つものと比較して、改変されている。
8)勾配差
ほとんどの態様において、最も急な勾配は厚さ漸増領域の外側勾配のそれであり、より急でない勾配は、コンタクトレンズまたは強膜リングの幾何学中心に最も近い、厚さ漸増領域の内側勾配でのものである。
ある態様において、最も急な勾配は厚さ漸増領域の内側勾配のそれであり、より急でない勾配は、コンタクトレンズまたは強膜リングの外側エッジに最も近い、厚さ漸増領域の外側勾配でのものである。
他のある態様において、厚さ漸増領域の外側勾配は厚さ漸増領域の内側勾配に等しい。
9)レンズ材料
すべてではないがほとんどの態様において、レンズ材料はシリコーンハイドロゲルまたはハイドロゲル材料のものである。
いくつかの態様において、レンズ材料はガス透過可能材料または硬質材料のものである。
いくつかの態様においては、異なる材料がコンタクトレンズまたは強膜リングに追加/結合され、挿入され、固定されて、そうすることでコンタクトレンズ外側凸面材料の1つの領域(複数の領域)または1つの区域(複数の区域)が改変される。
強膜リングのいくつかの他の態様において、強膜リングはガス非透過性材料のものである。
いくつかの他の態様において、強膜リング材料は硬質ガス非透過可能材料のものである。
10)人工装具のエッジ形状
すべてではないがほとんどの態様において、最周辺エッジ形状は、特定のブランドの、特定のコンタクトレンズタイプの、特定のコンタクトレンズ屈折力に関して得られるものから改変されていない。
いくつかの態様において、エッジ形状は、特定のブランドの、特定のコンタクトレンズタイプの、特定のコンタクトレンズ屈折力に関して得られるものと比較して、コンタクトレンズまたは強膜リングの周辺エッジから内側の凸面上でより急な勾配を有するように改変されている。
いくつかの態様において、エッジ形状は、特定のブランドの、特定のコンタクトレンズタイプの、特定のコンタクトレンズ屈折力に関して得られるものと比較して、コンタクトレンズまたは強膜リングの周辺エッジから内側で、より急でない勾配であるように改変されている。
エッジ厚は、好ましくは25〜100ミクロンの間である。使い捨て式タイプのコンタクトレンズの場合、エッジ厚は、好ましくは25〜50ミクロンの間である。非使い捨て式タイプのコンタクトレンズの場合、エッジ厚は、好ましくは30〜60ミクロンの間である。エッジは、鋭利な形状、丸みのある形状、やや丸みのある形状、または鈍い形状であってよい。
11)エッジ処理
すべてではないがいくつかの態様において、コンタクトレンズまたは強膜リングのエッジの一部分はトランケートされている。いくつかの他の態様において、2つの部分(1つは上眼瞼に近接して位置し、1つは下眼瞼に近接して位置する)がトランケートされている。
すべてではないがいくつかの態様において、エッジはプリズムバラストを伴う。
すべてではないがいくつかの態様において、レンズのエッジは重みづけされている。
12)ベースカーブ
すべてではないがほとんどの態様において、コンタクトレンズまたは強膜リングのベースカーブは、装用者の角膜または眼の上に通常フィットするものよりも急であるように増加している(すべてではないがほとんどの場合に、強膜リングは装用者の角膜上にフィットしないという了解の下で)。強膜リングが角膜上にフィットする場合、それは瞳孔部の外側にある周辺角膜上でのみフィットする。
すべてではないがいくつかの態様において、コンタクトレンズまたは強膜リングのベースカーブは、装用者の角膜または眼の上に通常フィットするものよりも急でないように増加している(すべてではないがほとんどの場合に、強膜リングは装用者の角膜上にフィットしないという了解の下で)。強膜リングが角膜上にフィットする場合、それは瞳孔部の外側にある周辺角膜上でのみフィットする。
すべてではないがいくつかの態様において、コンタクトレンズまたは強膜リングのベースカーブは、装用者の角膜または眼の上に通常フィットするものと同じである(すべてではないがほとんどの場合に、強膜リングは装用者の角膜上にフィットしないという了解の下で)。
13)凸面の質感
すべてではないがいくつかの態様において、コンタクトレンズまたは強膜リングの凸面の質感は、単に例示に過ぎないが、くぼみ、平滑でない表面、隆起、凹凸、開口拡大帯の外側の人工装具の区域よりも低い滑らかさ、および刻み目を有する、1つの領域、複数の領域、1つの区域、複数の区域を有しうる。この表面質感は概して、開口拡大帯を覆うかまたはその一部分である。
14)屈折力
本明細書で開示されるコンタクトレンズは、プラノ(度数がない)を含む、処方用のすべてのレンズ度数を企図していることを指摘しておくべきであろう。
本明細書で開示される(コンタクトレンズおよび強膜リングのものである)人工装具の態様は、専門家が患者に対するフィット性を、その患者に対して可能な最良の眼瞼挙上成果が確実に得られるように検査する目的で用いる、フィッティング用セットのための必要性を企図している。フィッティング用セットは、コンタクトレンズを処方する際に変更される単一の最良の変数または変数の組み合わせをカスタマイズおよび理解するために患者に対して検査される、上述の14種の変数のうちの1つまたは複数を提供することができる。しかし、最適なフィッティング用セットを用いても、潜在的可能性のあるすべての装用者の大半のフィッティングを十分に行うには2〜6種の試験用コンタクトレンズがあるべきであることが明らかになっている。
開示される強膜リングは中央開放開口を含むが、屈折力は「全く」含まないことを指摘しておくべきであろう。図18〜23は、開口拡大帯を有する人工装具を伴うかまたは伴わないさまざまな人の眼を示している。
図18は、65歳の男性の本来の眼、すなわち彼が厚さ漸増領域を有する人工装具を装用していない様子を示している。対照的に、図19は、彼が厚さ漸増領域(開口拡大帯)を有する人工装具を装用した様子を示している。図18と19を比較することにより、本明細書に記載の厚さ漸増領域を有する人工装具を装用したときに彼の眼の眼瞼裂が拡大していることを見てとることができる。図19で装用されている人工装具は、100ミクロンのベース厚さ、および300ミクロンの全厚を有する厚さ漸増領域を有し、ピーク厚さ差分または最大追加厚さは200ミクロンである。
図20〜21は、45歳の女性の眼瞼裂の拡大を示している。図20は彼女の本来の眼を示しており、図21は彼女が眼に厚さ漸増領域を有する人工装具を装用した様子を示している。見てとれるように、図20と比較して、図21では上眼瞼が持ち上がっている。図21で装用されている人工装具は、600ミクロンの最大厚さ追加または最大厚さ差分を有する厚さ漸増領域(開口拡大帯)を有する。
図22A〜Bは、66歳の男性の眼を示している。図22Aは上眼瞼の眼瞼下垂を有する彼の本来の右眼を示しており、図22Bは彼が厚さ漸増領域(開口拡大帯)を有する人工装具を同じ眼の表面に装用した様子を示している。図22Bでは、厚さ漸増領域を有する人工装具が彼の右上眼瞼を押し上げることを見てとることができる。このように、開口の開大/拡大は極めて劇的である。
図23は、40歳の女性の右眼および左眼を示している。彼女は、厚さ漸増領域を有する人工装具を彼女の右眼(図23の左側)に装用している。彼女は人工装具を彼女の左眼(図23の右側)には装用していない。彼女の右眼の人工装具は、彼女の左眼と比較して、彼女の右眼の開口/眼瞼裂を実質的に拡大させている。彼女の右眼の表面に装用された人工装具は、厚さ漸増領域(開口拡大帯)を有し、200ミクロンという最大厚さ追加/最大厚さ差分が、人工装具の外周エッジのおよそ1.5mm内側に位置する。
図24Aは、男性の本来の眼、すなわち彼が厚さ漸増領域を有する人工装具を装用していない様子を示している。対照的に、図24Bは、彼が厚さ漸増領域(開口拡大帯)を有する人工装具を装用した様子を示している。図24Aと24Bを比較することにより、本明細書に記載の厚さ漸増領域を有する人工装具を装用したときに彼の眼の眼瞼裂が拡大していることを見てとることができる。
図25A〜Cは、3種の異なる人工装具に関するさまざまな表面プロフィールを示している。レンズ2520、2540および2560はすべて、2500に位置する幾何学中心、および線2502によって指し示される瞳孔部を有する。各レンズ2520、2540および2560はそれぞれ、厚さ漸増領域2522、2542および2546を有する。図25Aにおける厚さ漸増領域2522の外側勾配は、当該厚さ漸増領域の内側勾配よりも小さいことに注目されたい。図25Bにおける厚さ漸増領域2542の外側勾配は、当該厚さ漸増領域の内側勾配よりも大きいことに注目されたい。図25Cにおける厚さ漸増領域2546の外側勾配は、当該厚さ漸増領域の内側勾配よりも大きいことに注目されたい。
厚さ漸増帯の幅:厚さ漸増帯または領域の幅とは、人工装具の外側エッジに向かう側にあるその開始部(厚さ漸増部が始まるところ)から、人工装具の中心に向かう側にある帯または領域(厚さ漸増部が終わるところ)まで測定される距離のことである。この帯または領域の幅は概ね1mm〜7mmの範囲であるが、いくつかの場合には2.5mm〜6.5mmの間であり、ほとんどの場合には2.5mm〜5mmの間である。
人工装具の厚さ漸増プロフィールとは、厚さ漸増が0.1ミクロン〜1,000ミクロンの範囲である厚さ漸増帯のものであってよい。厚さ漸増帯は人工装具の外側エッジでまたはそれに近接して始まって、人工装具の外側エッジまでであってよい。最大Δ厚さ漸増/最大厚さ追加は25ミクロン〜1,000ミクロンの範囲であり、好ましくは100ミクロン〜800ミクロンであり、100ミクロン〜500ミクロンの差分が好ましく、より好ましい範囲は75ミクロン〜400ミクロンである。ある態様において、コンタクトレンズの外側エッジから0.5mm内側(外側エッジから人工装具の中心に向かって)から、外側エッジから3mm内側までの区域は、厚さが増加している。他の態様において、コンタクトレンズの外側エッジから0.5mm内側(外側エッジから人工装具の中心に向かって)から、外側エッジから7mm内側までの区域は、厚さが増加している。これらの態様において、開口拡大帯の「幅」は、コンタクトレンズの全径に応じて、2.5mm〜6.5mmの範囲内にあってよい。他の態様において、開口拡大帯の幅は、やはりコンタクトレンズの全径に応じて、1mm〜7mmの範囲内にあってよい。いくつかの態様において、開口拡大帯は、人工装具の外側エッジから、人工装具の外側エッジの2.5mm〜5mm内側の範囲内までに広がる。外側エッジからの正確な距離は、人工装具の型に依存し、また人工装具の全径にも依存する。
すべてではないがほとんどの態様において、人工装具の最周辺エッジから0.5mm〜2.5mmの範囲内にある区域が、最大Δ厚さを提供するが、しかし好ましくは、コンタクトレンズまたは強膜リングの最周辺エッジから0.5mm〜2.0mmの範囲内にある。
図26は、本明細書に記載の人工装具のいくつかの態様に関する、エッジから中心までの外側凸面の厚さプロフィールの例示である。この例示は、凸面プロフィール(勾配)、および同じく厚さ漸増領域または帯の、考えられるさまざまな例を示している。
図27A〜Eは、5種類の人工装具2710、2720、2730、2740、および2750に関する、さまざまな厚さ漸増領域を図示している。各人工装具2710、2720、2730、2740および2750は、厚さ漸増区域によって取り囲まれた瞳孔部2700を有する。図27Aは、厚さ漸増領域2712および2714を有する人工装具2710を示している。図27Bは、厚さ漸増領域2722、2724、2726、および2728を有する人工装具2720を示している。図27Cは、厚さ漸増領域2732および2734を有する人工装具2720を示している。図27Dは、厚さ漸増領域2742および2744を有する人工装具2740を示している。図27Eは、厚さ漸増領域2752、2754、2756、および2758を有する人工装具2750を示している。
図28〜34は、さまざまなタイプの開口拡大帯を有するさまざまなコンタクトレンズの透視図を示している。図28〜34はすべてコンタクトレンズを図示しているが、図28〜34に関連して記載されたのと同じ特徴を強膜リングに対して組み入れることも可能と考えられることは理解されるであろう。図28は、凸面2802、凹面2804、および周辺エッジ2806を有する、コンタクトレンズ2800を示している。厚さ漸増領域2810は凸面2802上に位置する。厚さ漸増領域2810は、厚さの増加した1つの連続リングであってもよく、または厚さの増加した複数の不連続的な部分的リングであってもよい。厚さ漸増領域2810は周辺エッジ2806の内側に位置し、コンタクトレンズ2800の残りの部分とは異なる厚さを有する。レンズの厚さプロフィールは、第1の厚さ2812、第2の厚さ2814、第3の厚さ2816、および第4の厚さ2818によって例示される。第1の厚さ2812、第3の厚さ2816、および第4の厚さ2818は、従来のコンタクトレンズの標準的な厚さに等しい。厚さ漸増領域2810に位置する第2の厚さ2814は、標準的な厚さを上回る厚さを有する。
図29は、凸面2902、凹面2904、および周辺エッジ2906を有するコンタクトレンズ2900を示している。表面摩擦増加領域2910は凸面2902上に位置する。表面摩擦増加領域2910は、表面摩擦増加を有する1つの連続リングであってもよく、または表面摩擦増加を有する複数の不連続的な部分的リングであってもよい。表面摩擦増加領域2910は周辺エッジ2906の内側に位置し、コンタクトレンズ2900の残りの部分とは異なる表面摩擦を有する。凸面2902の表面摩擦プロフィールは、第1の表面摩擦2912、第2の表面摩擦2914、第3の表面摩擦2916、および第4の表面摩擦2918によって例示される。第1の表面摩擦2912、第3の表面摩擦2916、および第4の表面摩擦2918は、従来のコンタクトレンズの標準的な表面摩擦に等しい。表面摩擦増加領域2910に位置する第2の表面摩擦2914は、標準的な表面摩擦よりも大きい表面摩擦を有する。
図30は、凸面3002、凹面3004、および周辺エッジ3006を有するコンタクトレンズ3000を示している。厚さ漸増および表面摩擦増加領域3010は、凸面3002上に位置する。厚さ漸増および表面摩擦増加領域3010は、厚さ漸増および表面摩擦増加を有する1つの連続リングであってもよく、または厚さ漸増および表面摩擦増加を有する複数の不連続的な部分的リングもしくは区域であってもよい。厚さ漸増および表面摩擦増加領域3010は、周辺エッジ3006の内側に位置し、コンタクトレンズ3000の残りの部分とは異なる厚さおよび表面摩擦を有する。凸面3002の厚さおよび表面摩擦プロフィールは、第1の厚さおよび表面摩擦3012、第2の厚さおよび表面摩擦3014、第3の厚さおよび表面摩擦3016、ならびに第4の厚さおよび表面摩擦3018によって例示される。第1の厚さおよび表面摩擦3012、第3の厚さおよび表面摩擦3016、ならびに第4の厚さおよび表面摩擦3018は、従来のコンタクトレンズの標準的な厚さおよび標準的な表面摩擦に等しい。厚さ漸増および表面摩擦増加領域3010に位置する第2の厚さおよび表面摩擦3014は、標準的な厚さおよび表面摩擦を上回る厚さおよび表面摩擦を有する。
図31は、凸面3102、凹面3104、および周辺エッジ3106を有する、コンタクトレンズ3100を示している。厚さ漸増領域3110は凸面3102上に位置する。厚さ漸増領域3110は、厚さの増加した1つの連続リングであってもよく、または厚さの増加した複数の不連続的な部分的リングもしくは区域であってもよい。厚さ漸増領域3110は、周辺エッジ3106の内側に位置し、コンタクトレンズ3100の残りの部分とは異なる厚さを有する。レンズの厚さプロフィールは、第1の厚さ3112、第2の厚さ3114、第3の厚さ3116、および第4の厚さ3118によって例示される。第1の厚さ3112、第3の厚さ3116、および第4の厚さ3118は、従来のコンタクトレンズの標準的な厚さに等しい。厚さ漸増領域3110に位置する第2の厚さ3114は、標準的な厚さを上回る厚さを有する。コンタクトレンズ3100はまた、周辺エッジ3106上に小さいトランケーション3120も有する。
図32は、凸面3202、凹面3204、および周辺エッジ3206を有する、コンタクトレンズ3200を示している。厚さ漸増領域3210は凸面3202上に位置する。厚さ漸増領域3210は、厚さの増加した1つの連続リングであってもよく、または厚さの増加した複数の不連続的な部分的リングもしくは区域であってもよい。厚さ漸増領域3210は、周辺エッジ3206の内側に位置し、コンタクトレンズ3200の残りの部分とは異なる厚さを有する。レンズの厚さプロフィールは、第1の厚さ3212、第2の厚さ3214、第3の厚さ3216、および第4の厚さ3218によって例示される。第1の厚さ3212、第3の厚さ3216、および第4の厚さ3218は、従来のコンタクトレンズの標準的な厚さに等しい。厚さ漸増領域3210に位置する第2の厚さ3214は、標準的な厚さを上回る厚さを有する。コンタクトレンズ3200はまた、周辺エッジ3206上に位置する小さいトランケーション3220およびプリズムバラスト3222も有する。小さいトランケーション3220は、周辺エッジ3206上でプリズムバラスト3222とは反対側に位置する。
図33は、凸面3302、凹面3304、および周辺エッジ3306を有するコンタクトレンズ3300を示している。厚さ漸増領域3310は凸面3302上に位置する。厚さ漸増領域3310は、厚さの増加した1つの連続リングであってもよく、または厚さの増加した複数の不連続的な部分的リングもしくは区域であってもよい。厚さ漸増領域3310は、周辺エッジ3306の内側に位置し、コンタクトレンズ3300の残りの部分とは異なる厚さを有する。レンズの厚さプロフィールは、第1の厚さ3312、第2の厚さ3314、第3の厚さ3316、および第4の厚さ3318によって例示される。第1の厚さ3312、第3の厚さ3316、および第4の厚さ3318は、従来のコンタクトレンズの標準的な厚さに等しい。厚さ漸増領域3310に位置する第2の厚さ3314は、標準的な厚さを上回る厚さを有する。コンタクトレンズ3300はまた、周辺エッジ3306上に小さいトランケーション3320および小さいトランケーション/プリズムバラスト3322も有する。小さいトランケーション3320は、周辺エッジ3306上で小さいトランケーション/プリズムバラスト3322とは反対側に位置する。
図34は、凸面3402、凹面3404、および周辺エッジ3406を有するコンタクトレンズ3400を示している。厚さ漸増領域3410は凸面3402上に位置する。厚さ漸増領域3410は、厚さの増加した1つの連続リングであってもよく、または厚さの増加した複数の不連続的な部分的リングもしくは区域であってもよい。厚さ漸増領域3410は周辺エッジ3406の内側に位置し、コンタクトレンズ3400の残りの部分とは異なる厚さを有する。レンズの厚さプロフィールは、第1の厚さ3412、第2の厚さ3414、第3の厚さ3416、および第4の厚さ3418によって例示される。第1の厚さ3412、第3の厚さ3416、および第4の厚さ3418は、従来のコンタクトレンズの標準的な厚さに等しい。厚さ漸増領域3410に位置する第2の厚さ3414は、標準的な厚さを上回る厚さを有する。コンタクトレンズ3400はまた、周辺エッジ3406上に位置する小さいトランケーション/プリズムバラスト3422も有する。
図35〜38は、さまざまなタイプの開口拡大帯を有する複数のコンタクトレンズの上面図を示している。図35〜38はすべてコンタクトレンズを図示しているが、図35〜38に関連して記載されたのと同じ特徴を強膜リングに対して組み入れることも可能と考えられることは理解されるであろう。図35は、周辺エッジ3502および瞳孔部3510を有するコンタクトレンズ3500を示している。瞳孔部3510は屈折力を有しても有しなくてもよく、特定の屈折力を有するかまたはそれを欠く従来のコンタクトレンズのものと同じ標準的な厚さおよび凸曲面を有する。周辺エッジ3502と瞳孔部3510との間に位置するのは厚さ漸増領域3506である。厚さ漸増領域(開口拡大帯)3506は、人工装具の外側エッジでまたはそれに近接して始まってよいことを指摘しておくべきであろう。厚さ漸増領域3506に関して単一のリングが示されているが、複数のリングまたは部分的リングがあってもよいことは理解されよう。厚さ漸増領域3506を取り囲み、周辺エッジ3502と厚さ漸増領域3506との間に位置するのは、周辺領域3504である。周辺領域3504は、従来のコンタクトレンズの標準的な厚さおよび曲率に等しい厚さおよび曲率を有する。内部領域3508は、瞳孔部3510と厚さ漸増領域3506との間に位置する。内部領域3508は、従来のコンタクトレンズのものに等しい厚さおよび曲率を有する。
図36は、周辺エッジ3602および瞳孔部3610を有するコンタクトレンズ3600を示している。瞳孔部3610は屈折力を有しても有しなくてもよく、特定の屈折力を有するかまたはそれを欠く従来のコンタクトレンズのものと同じ標準的な表面摩擦、厚さ、および凸曲率を有する。周辺エッジ3602と瞳孔部3610との間に位置するのは、表面摩擦増加領域3606である。表面摩擦増加領域3606は、表面摩擦を増加させる質感のある表面である。質感のある表面は、限定はされないが、異なる材料、くぼみ、隆起、表面凹凸、表面のトポグラフィの何らかの変化、またはそれらの任意の組み合わせによって作り出すことができる。表面摩擦増加領域(開口拡大帯)3606に関して単一のリングが示されているが、複数のリングがあってもよいことは理解されよう。表面摩擦増加領域3606を取り囲み、周辺エッジ3602と表面摩擦増加領域3606との間に位置するのは、周辺領域3604である。周辺領域3604は、従来のコンタクトレンズの標準的な表面摩擦に等しい表面摩擦を有する。内部領域3608は、瞳孔部3610と表面摩擦増加領域3606との間に位置する。内部領域3608は、従来のコンタクトレンズのものに等しい表面摩擦、厚さ、および曲率を有する。
図37は、周辺エッジ3702および瞳孔部3710を有するコンタクトレンズ3700を示している。瞳孔部3710は屈折力を有しても有しなくてもよく、特定の屈折力を有するかまたはそれを欠く従来のコンタクトレンズのものと同じ標準的な表面摩擦、厚さ、および凸曲率を有する。周辺エッジ3702と瞳孔部3710との間に位置するのは、厚さ漸増および表面摩擦増加領域3706である。厚さ漸増および表面摩擦増加領域(開口拡大帯)3706は、表面摩擦を増加させる、厚さが増しておりかつ質感のある表面を含む。質感のある表面は、限定はされないが、異なる材料、表面処理、くぼみ、隆起、表面凹凸、表面のトポグラフィの何らかの変化、またはそれらの任意の組み合わせによって作り出すことができる。厚さ漸増および表面摩擦増加領域3706に関して単一のリングが示されているが、複数のリングがあってもよいことは理解されよう。厚さ漸増および表面摩擦増加領域3706を取り囲み、周辺エッジ3702と厚さ漸増および表面増加領域3706との間に位置するのは、周辺領域3704である。周辺領域3704は、従来のコンタクトレンズの標準的な厚さおよび表面摩擦に等しい厚さおよび表面摩擦を有する。内部領域3708は、瞳孔部3710と表面摩擦増加領域3706との間に位置する。内部領域3708は、従来のコンタクトレンズのものに等しい厚さ、表面摩擦、および曲率を有する。
図38は、周辺エッジ3802および瞳孔部3810を有するコンタクトレンズ3800を示している。瞳孔部3810は、屈折力を有しても有しなくてもよく、特定の屈折力を有するかまたはそれを欠く従来のコンタクトレンズのものと同じ標準的な厚さおよび凸曲率を有する。瞳孔部3810は乱視屈折力も含む。瞳孔部3810の上方および下方に位置するのは、2つの厚さ漸増領域3806である。2つの厚さ漸増領域3806(開口拡大帯)のそれぞれは、外側勾配、内側勾配、および最大厚さ差分点/最大厚さ追加点を含むと考えられることに留意すべきである。各厚さ漸増領域3806は半球形状を有する。コンタクトレンズ3800はまた、瞳孔部3810の両側に位置する2つの内部領域3808も含む。各内部領域3808は、従来のコンタクトレンズの標準的な厚さおよび曲率に等しい厚さおよび曲率を有する。レンズの周縁部を取り囲むのは周辺領域3804であり、これも従来のコンタクトレンズの標準的な厚さおよび曲率に等しい厚さおよび曲率を有する。しかし、2つの厚さ漸増領域のそれぞれは、コンタクトレンズの外側エッジでまたはそれに近隣して始まりうることを指摘しておくべきであろう。厚さ漸増領域3806が、表面摩擦を増加させる質感のある表面も含みうることは理解されるであろう。さらに、厚さ漸増領域3806を、質感のある表面を有し、かつ従来の厚さおよび曲率を有する表面摩擦増加領域によって置き換えることもできる。
図39A〜Eは、1つの態様によるコンタクトレンズ3900の表面プロフィールを図示している。コンタクトレンズ3900は0.0+/-1.00Dの屈折力を有する。図39Aに見られるように、コンタクトレンズ3900は、第1の表面3904、第2の表面3906、第3の表面3908、および第4の表面3910を含む。第1の表面3904は、6.50mm〜9.5mmの範囲にわたる曲率半径を有する。第2の表面3906は、隆起の形態である厚さ漸増領域(開口拡大帯)を例証している。第2の表面3906の曲率半径は、4.50mm〜7.50mmの範囲にわたる。第2の表面3906は、2.0mm〜4.0mmの間の幅を有しうる。第3の表面3908は、6.50mm〜9.50mmの範囲にわたる曲率半径を有する。第4の表面3910はコンタクトレンズ3900の最外周辺上に位置し、2.0mm〜8.0mmの範囲にわたる曲率半径を有する。コンタクトレンズ3900の全径は、11.0mm〜16.5mmの範囲にわたりうる。図39Bは、コンタクトレンズ3900の側面図を示している。図39Cは、図39A中の線3902に沿ったコンタクトレンズ3900の横断面図を示している。図39Dはコンタクトレンズ3900の凸面を示しており、図39Eはコンタクトレンズ3900の凹面を示している。
図40は、球面屈折力を有するコンタクトレンズ4000を、眼4014に重ね合わせて示している。眼4014は、上眼瞼4012および下眼瞼4008を有する。コンタクトレンズ4000は、厚さ漸増区域(開口拡大帯)4002、瞳孔部4006、および周辺エッジ4004を含む。図40では、コンタクトレンズ4000が上眼瞼4012の裏側にフィットする区域4010を有することを見てとることができる。区域4010に含まれるのは、厚さ漸増領域4002の一部である。
図41は、乱視屈折力を有するコンタクトレンズ4100を、眼4114に重ね合わせて示している。眼4114は、上眼瞼4112および下眼瞼4108を有する。コンタクトレンズ4100は、厚さ漸増領域(開口拡大帯)4102、瞳孔部4106、および周辺エッジ4104を含む。図41では、コンタクトレンズ4100が上眼瞼4112の裏側にフィットする区域4110を有することを見てとることができる。区域4110に含まれるのは、厚さ漸増領域4102の一部である。コンタクトレンズ4100はまた、最下部に位置する重みづけ/安定化帯4116も有する。
図42は、球面屈折力を有するコンタクトレンズ4200を、眼4214に重ね合わせて示している。眼4214は、上眼瞼4212および下眼瞼4208を有する。コンタクトレンズ4200は、複数の部分的リング4202を有する厚さ漸増領域(開口拡大帯)4218、瞳孔部4206、および周辺エッジ4204を含む。図42では、コンタクトレンズ4200が上眼瞼4212の裏側にフィットする区域4210を有することを見てとることができる。区域4210に含まれるのは、厚さ漸増領域4218に位置する複数の部分的リング4202である。
図43は、球面屈折力を有するコンタクトレンズ4300を、眼4314に重ね合わせて示している。眼4314は、上眼瞼4312および下眼瞼4308を有する。コンタクトレンズ4300は、複数の部分的リング4302を有する厚さ漸増領域(開口拡大帯)4318、瞳孔部4306、および周辺エッジ4304を含む。図43では、コンタクトレンズ4300が上眼瞼4312の裏側にフィットする区域4310を有することを見てとることができる。区域4310に含まれるのは、厚さ漸増領域4318に位置する複数の部分的リング4302である。コンタクトレンズ4300はまた、最下部に位置する重みづけ/安定化帯4316も有する。
図44は、ハイブリッド型多焦点コンタクトレンズ4400の1つの態様を示している。コンタクトレンズ4400は、ソフトスカート4404を取り囲む周辺エッジ4402を含む。ソフトスカート4404は、厚さ漸増領域(開口拡大帯)4406を含む。接合部4416は、厚さ漸増領域4406の周辺に位置する。接合部4416は、厚さ漸増領域4406をガス透過可能硬質帯4408と接続させる。ガス透過可能硬質帯4408は、度数連続推移部(continuous graduation of power)4412を有し、非球面遠隔帯4410および非球面近傍帯4414を含む。図44の態様は周辺エッジ4402の近傍に位置する厚さ漸増領域4406を示しているが、それがガス透過可能硬質帯4408の近隣または周辺にある任意の場所にあってもよい。このことは、厚さ漸増領域4406がハイブリッド型コンタクトレンズ4400の幾何学中心から3.0mmの近隣または外側に位置しうることを意味する。
図45は、ハイブリッド型コンタクトレンズ4500の1つの態様を、眼と重ね合わせて示している。コンタクトレンズ4500は、ソフトスカート4504を取り囲む周辺エッジ4502を含む。ソフトスカート4504は厚さ漸増領域4506(開口拡大帯)を含み、その周辺エッジに位置する接合部4516を有する。接合部4516は、ソフトスカート4504をガス透過可能硬質帯4508と接続させる。ガス透過可能硬質帯4508は球面屈折力または乱視屈折力を含みうる。
図46は、ソフト多焦点コンタクトレンズ4600の1つの態様を示している。コンタクトレンズ4600は、周辺エッジ4602、厚さ漸増区域(開口拡大帯)4604、近距離帯4606(コンタクトレンズの幾何学中心を丸く囲むリングとして例示されている)、中間帯4608(コンタクトレンズの幾何学中心を丸く囲むリングとして例示されている)、および遠隔帯4610(中間帯4608によって取り囲まれた、より大きい中央の色の濃い区域として例示されている)を含む。
図47は、逆ハイブリッド型コンタクトレンズ4700の1つの態様を示している。コンタクトレンズ4700は周辺エッジ4702および幾何学中心4712を含む。硬質外部スカート4704は軟質中心4710を取り囲み、厚さ漸増領域(開口拡大帯)4706を含む。接合部4708は、硬質外部スカート4704と軟質中心4710との間に位置する。
人工装具のフィッティングのための患者選択プロセス
本人工装具は、上眼瞼縁が瞳孔の上縁から2mm〜3mmもしくはそれ未満の内部にある、および/または下眼瞼縁が瞳孔の下縁から2mm〜3mmまたはそれ未満の内部にある眼の上にフィットした場合に、装用者の眼の眼瞼裂の有意な美容上の向上/拡大をもたらす。人工装具についての患者の選択を確立するための別のやり方は、眼瞼を開いた静止位置で上眼瞼または下眼瞼が眼の上側および/または下側の輪部区域を覆っている眼の選択である。
本明細書に開示されている態様はまた、直径が判明している画像を、装用する可能性のある者の皮膚および顔面眼領域に投射する計器も教示している。この計器はまた、装用する可能性のある者の眼および近隣の顔面領域上に投射された画像の写真を撮影することも可能にする。これを行うことにより、最良の眼瞼拡大効果を得るために必要な、適切な直径のコンタクトレンズまたは強膜リングを直ちに把握することが可能である。いくつかの態様においては、装用者の瞳孔の狭窄が最小限に抑えられるように、赤外光を用いて装用者の眼に光を投射する。他の態様においては、低レベルの可視光を投射する。さらに他の態様においては、赤外線カメラを用いる。
このプロセスは、コンタクトレンズ人工装具の場合に、複数のリングまたは一連のドット、線のセットをコンタクトレンズに描くかまたは固定する、人工装具のフィッティング用セットをさらに企図している;各ドット、線またはリングは、単に例示に過ぎないが、最外近接ドット、線またはリングよりも直径が1mm小さい。これにより、眼科ケアの専門家が、どのコンタクトレンズが最大の開口拡大をもたらすかについて人工装具を装用者の眼に対して試験する場合に、目視的に迅速に判断することができる。専門家はまた、続いて、さまざまな試験用レンズの開放開口の中に存在する線またはリングの数を単に指し示し、そうすることで、装用者の眼の開口の中に最大数の線またはリングが提示されるものの選択を可能にすることもできる。
第1のフィッティング法の態様では、本明細書で教示される人工装具のフィッティングにおいて、以下の手法に従う:
#1)患者/装用予定者に笑わずに力を抜かせた上で、装用予定者の一方の眼または両方の眼の写真を撮影する;
#2)写真を表示するかまたは印刷する;
#3)表示または印刷された写真に示された、本来の1つまたは複数の眼瞼裂を測定する;
#4)最良の芯出しが得られ、かつフィットさせた装用予定者で測定したばかりの眼瞼裂よりも1mm〜10mm広い範囲内にあり、しかしほとんどの場合には2mm〜4mm広いと考えられる全外径を有する、試験用人工装具を選ぶ;
#5)装用者の眼の外観を観察した後に、処方および/または引渡しを行う人工装具を選ぶ(これは、眼科ケアの専門家によって、および/またはフィットさせた患者からのフィードバックによってのみ、行うことができる);
#6)装用予定者または患者の第2の眼のフィッティングのために、適切な段階を繰り返す。
第2のフィッティング法の態様では、本明細書で教示される人工装具のフィッティングにおいて、以下の手法に従う:
#1)患者/装用予定者に笑わずに力を抜かせた上で、患者/装用予定者の一方の眼または両方の眼の本来の眼瞼裂を測定する;
#2)最良の芯出しが得られ、かつフィットさせた装用予定者で測定したばかりの眼瞼裂よりも1mm〜10mm広い範囲内にあり、しかしほとんどの場合には2mm〜4mm広いと考えられる全外径を有する、試験用人工装具を選ぶ;
#3)装用者の眼の外観を観察した後に、処方および/または引渡しを行う人工装具を選ぶ(これは、眼科ケアの専門家によって、および/またはフィットさせた患者からのフィードバックによってのみ、行うことができる);
#4)装用予定者または患者の第2の眼のフィッティングのために、適切な段階を繰り返す。
第3のフィッティング法の態様では、本明細書で教示される人工装具のフィッティングにおいて、以下の手法に従う:
#1)患者/装用予定者に笑わずに力を抜かせた上で、装用予定者の一方の眼または両方の眼の写真を撮影する;
#2)写真を表示するかまたは印刷する;
#3)表示または印刷された写真に示された、本来の1つまたは複数の眼瞼裂を測定する;
#4)最良の芯出しが得られ、かつフィットさせた装用予定者で測定したばかりの眼瞼裂よりも1mm〜10mm広い範囲内にあり、しかしほとんどの場合には2mm〜4mm広いと考えられる全外径を有する在庫切れの人工装具をフィットさせるかまたは発注する。
第4のフィッティング法の態様では、本明細書で教示される人工装具のフィッティングにおいて、以下の手法に従う:
#1)患者/装用予定者に笑わずに力を抜かせた上で、患者/装用予定者の一方の眼または両方の眼の本来の眼瞼裂を測定する;
#2)最良の芯出しが得られ、かつフィットさせた装用予定者で測定したばかりの眼瞼裂よりも1mm〜10mm広い範囲内にあり、しかしほとんどの場合には2mm〜4mm広いと考えられる全外径を有する在庫切れの人工装具をフィットさせるかまたは発注する。
第5のフィッティング法の態様では、本明細書で教示される人工装具のフィッティングにおいて、以下の手法に従う:
#1)最良の芯出しが得られ、かつフィットさせた装用予定者で測定したばかりの眼瞼裂よりも1mm〜10mm広い範囲内にあり、しかしほとんどの場合には2mm〜4mm広いと考えられる全外径を有する在庫切れの人工装具をフィットさせるかまたは発注する。
図48は、本明細書に記載の人工装具のフィッティングのための方法の一例を示している。図48に見られるように、画像4800を人の眼に投射する。画像4800は、複数の印4804を有する目盛り4802を含む。印4804は、人の眼瞼裂を測定するために用いられ、かつ、上眼瞼を持ち上げるかまたは下眼瞼を押し下げて、それによって人の眼瞼裂を拡大させると考えられる人工装具の直径を決定するために用いられる。
任意およびすべての公知のコンタクトレンズ処理、色調、特別色デザイン(例えば単に例示に過ぎないが、外側角膜縁のサイズの外観を強め、そうすることで装用者の眼がより大きく見えるようにするために人工装具上に付与される、角膜縁リング、カラーリング、色強調などのカラーデザインを含む)、コーティング、材料、特定波長(複数の波長)の光のフィルタリング、コンタクトレンズのデザイン、形状、屈折力(プラノコンタクトレンズ、固定焦点コンタクトレンズまたは可変焦点コンタクトレンズを含む)、乱視矯正、球面矯正および老視矯正のために必要な任意の公知の屈折力を、本明細書に記載の人工装具(コンタクトレンズまたは強膜リング)に対して適用することを考慮しうることが理解されるべきである。単に例示に過ぎないが、人工装具がコンタクトレンズの形態である場合、コンタクトレンズは、球面屈折力のみを有する単焦点、球面円柱性屈折力を有する単焦点、球面屈折力のみを有する多焦点、球面円柱性屈折力を有する多焦点であってよい。強膜リングの形態である人工装具は屈折力を有しないと考えられ、単焦点でも多焦点でもないと判断される。
本明細書で開示されている態様は、単に例示に過ぎないが、コンタクトレンズの以下の特徴のうち「1つまたは複数」を介して、ソフトコンタクトレンズまたはハイブリッド型コンタクトレンズまたは強膜リングが装用者の眼瞼裂のサイズを増加させるあらゆる手段をカバーすることが理解されるべきである:「厚さ漸増領域(開口拡大帯)」、全厚の増加、エッジ厚の増加、全径の増加、厚さの増加した限局性区域、凸面摩擦の増加、凸面摩擦の増加した限局性区域、凸面上で厚さが増加している部分的区域の増加、厚さ漸減帯、凸面処理(材料および/または質感)、レンズの上方エッジに対するトランケーション、レンズの下方エッジに対するトランケーション、レンズの上方エッジおよび下方エッジに対するトランケーション、レンズのエッジ厚の増加、瞳孔部の外側でコンタクトレンズの凸面上の厚さを増加させる(部分的または完全な)1つのバンド(複数のバンド)または1つのリング(複数のリング)、1つのドーム(複数のドーム)、1つの区分(複数の区分)、ベースカーブフィットの増大。このリストは、限定的であることを意図していない。
すべてではないがいくつかの態様において、人工装具は瞳孔部の上側に厚さ増加領域を有する。
すべてではないがいくつかの態様において、人工装具は瞳孔部の下側に厚さ増加領域を有する。
すべてではないがいくつかの態様において、人工装具は瞳孔部の上側および下側に厚さ増加領域を有する。
すべてではないがいくつかの態様において、人工装具は、人工装具を安定化するためのトランケーションおよび/または重みづけを有する。
すべてではないがいくつかの態様において、レンズエッジは従来の人工装具の厚さおよびエッジのそれである。
すべてではないがいくつかの態様において、レンズエッジは、伝統的なコンタクトレンズと比較して、より厚い全厚およびエッジを有する。
重要なこととして、コンタクトレンズ人工装具の厚さ増加(瞳孔部の内部にあるか、または瞳孔部の外側にあるかを問わず)は、すべてではないがほとんどの態様において、コンタクトレンズの装用者の網膜上に光の焦点を合わせるコンタクトレンズの部分の所望の処方または屈折力を変化させないことを指摘しておく。
いくつかの態様において、ソフトコンタクトレンズまたはハイブリッド型コンタクトレンズであるものは球面屈折力を有するものであるが、しかし、瞳孔部の周辺にある区域は、180(+/-20度)の軸を有するマイナス非球面トーリックレンズのそれに厚さの点で類似するように構成され、このことは瞳孔部の上方および下方での厚さが通常よりも厚いことを意味する。
他の態様において、ソフトコンタクトレンズまたはハイブリッド型コンタクトレンズであるものは球面屈折力を有するものであるが、しかし、瞳孔部の周辺にある区域は、この周辺区域が、同じ屈折力、直径およびベースカーブを持つ従来の/伝統的なソフトまたはハイブリッド型球面屈折力コンタクトレンズのそれと比較して厚さが増加している点を例外として、ソフトコンタクトレンズまたはハイブリッド型コンタクトレンズのそれに厚さの点で類似するように構成される。
いくつかの態様において、ソフトコンタクトレンズまたはハイブリッド型コンタクトレンズであるものは乱視屈折力を含み、瞳孔部の周辺にある区域は、180(+/-20度)の軸を有するマイナス非球面トーリックレンズのそれに厚さの点で類似するように構成され、このことは瞳孔部の「上側および下側」での厚さが、典型的な乱視矯正用ソフトコンタクトレンズまたはハイブリッド型コンタクトレンズに関して通常であるよりも厚いことを意味する。
いくつかの態様は、ソフトコンタクトレンズまたはハイブリッド型コンタクトレンズの瞳孔部に対して上側および下側にある区域が、そのような球面屈折力または乱視屈折力を有するソフトコンタクトレンズまたはハイブリッド型コンタクトレンズに関して予想されるよりも厚いような、屈折力軸を有しない球面レンズを企図している。
いくつかの態様は、ソフトコンタクトレンズまたはハイブリッド型コンタクトレンズの瞳孔部に対して上側および下側にある区域が、そのような球面屈折力または乱視屈折力を有するソフトコンタクトレンズまたはハイブリッド型コンタクトレンズに関して予想されるよりも厚いような、光学軸を有する乱視用レンズを企図している。
いくつかの態様は、回転対称性である、人工装具の凸面上に位置する厚さ漸増領域(帯、区域)または厚さ漸減領域(帯、区域)を企図している。
いくつかの態様は、回転非対称性である、人工装具の凸面上に位置する厚さ漸増領域(帯、区域)または厚さ漸減領域(帯、区域)を企図している。
いくつかの態様は、非回転対称性である、人工装具の凸面上に位置する厚さ漸増領域(帯、区域)または厚さ漸減領域(帯、区域)を企図している。
いくつかの態様は、上眼瞼縁の曲線および/または下眼瞼縁の曲線と近似している、人工装具の凸面上に位置する厚さ漸増領域(帯、区域)または厚さ漸減領域(帯、区域)を企図している。
人工装具の厚さ漸増領域(開口拡大帯)は、25ミクロン〜1,000ミクロンの範囲内にあり、好ましい範囲が100ミクロン〜500ミクロンであり、より好ましい範囲が75ミクロン〜400ミクロンである、最大Δ厚さ差異(厚さの追加)を有しうる。
人工装具の厚さ漸減領域(開口拡大帯)は、25ミクロン〜1,000ミクロンの範囲内にあり、好ましい範囲が100ミクロン〜500ミクロンであり、より好ましい範囲が100ミクロン〜400ミクロンであり、より好ましい範囲が75ミクロン〜400ミクロンである、最大Δ厚さ差異(厚さの減少)を有しうる。
人工装具の凸面厚さ漸増領域(開口拡大帯)は、コンタクトレンズの幾何学中心から3mm〜8.5mmの範囲内に位置することができ、より好ましくはコンタクトレンズの幾何学中心から5mm〜7.75mmの範囲内にある。
厚さ漸増または厚さ漸減領域(開口拡大帯)は、ほとんどの場合には、人工装具のエッジより内側にある。しかし、ほとんどではないがいくつかの場合には、それが人工装具の外側エッジで始まってもよい。
最大厚さ漸増差分部は、ほとんどの場合には、人工装具のエッジに対して0.5mm〜3.0mm内側の範囲内にある。
最大厚さ漸減差分部は、ほとんどの場合には、人工装具のエッジに対して0.5mm〜3.0mm内側の範囲内にある。
厚さ漸増領域(帯、区域)(開口拡大帯)は、ほとんどの場合には、人工装具の外側エッジに対して0.1mm〜6.0mm内側の範囲内にある。
厚さ漸増領域(帯、区域)(開口拡大帯)は、いくつかの場合には、人工装具の外側エッジで始まって、人工装具の外側エッジに対して6mm内側まで進んでもよい。
厚さ漸減領域(帯、区域)(開口拡大帯)は、ほとんどの場合には、人工装具のエッジに対して0.1mm〜6.0mm内側の範囲内にある。しかし、ほとんどではないがいくつかの場合には、それが人工装具の外側エッジで始まってもよい。
厚さ漸増領域(帯、区域)(開口拡大帯)または厚さ漸減領域(帯、区域)(開口拡大帯)の幅は、0.5mm〜6mmであってよい。
厚さ漸増径および厚さ漸減径は、7mm〜15mmの範囲内にある。
いくつかの態様においては、複数のリングまたは厚さ漸増帯および/または厚さ漸減帯が存在する;ここで、1つのリングは別のリングの内側に(またはレンズの幾何学中心に対してより近くに)位置する。
いくつかの態様において、厚さ漸増帯または厚さ漸増帯(開口拡大帯)は勾配および最大厚さ差分部を有し、ここで最大厚さ漸増差分部の外側(人工装具の外側エッジに対してより近い)での外側勾配は、内側での内側勾配(人工装具の中心に対して最も近い)よりも急である。
いくつかの態様において、厚さ漸減領域または厚さ漸減帯は外側勾配および最大厚さ漸減差分を有し、ここで最大厚さ漸減差分側(人工装具の中心により近い)での内側勾配は最も急である。
いくつかの態様において、厚さ漸減領域または厚さ漸減帯は外側勾配および最大厚さ漸減差分を有し、ここで最大厚さ漸減差分側での内側勾配(人工装具の中心により近い)は外側勾配に等しい。
いくつかの態様において、コンタクトレンズまたは強膜リングの形態である人工装具は、眼瞼が閉じるかまたはまばたきをしたときには強膜リングの中心に向かって折り畳まれ、眼瞼が開かれたときには強膜リングの中心から離れる(展開する)、指状要素を含みうる。当該指状要素は、強膜リングの、眼の瞳孔の上方および下方にある領域に配置することができる。当該指状要素は、眼瞼が開かれて、まばたきもせず閉じてもいないときには、上眼瞼を拳上させ、下眼瞼を押し下げるかまたは下垂させることができる。
コンタクトレンズという用語が本開示において提示または使用される場合、それは、角強膜コンタクトレンズ、ハイブリッド型コンタクトレンズのうちの1つであることを意味する。
厚さ漸増領域という用語を用いる場合、それは開口拡大帯であることを意味する。
厚さ漸減領域という用語を用いる場合、それは開口拡大帯であることを意味する。
表面摩擦増加領域という用語を用いる場合、それは開口拡大帯であることを意味する。
人工装具のいくつかの態様においては、厚さ漸増帯(領域、区域)または厚さ漸減帯(領域、区域)は存在しても存在しなくてもよく、その代わりに人工装具の他の区域と比較して眼瞼摩擦の増加がもたらされるように、帯または領域の表面が改変される。この表面摩擦増加領域または帯は、眼瞼のまばたきまたは強制閉鎖の際には容易にその上を通過させることができるが、眼瞼を開くとこの摩擦増加領域は上眼瞼を拳上させかつ/または下眼瞼を押し下げ、そうすることで眼の開口を開大させる。
本明細書で開示される人工装具は、単に例示に過ぎないが、多焦点またはトーリック単焦点レンズまたはトーリック多焦点である場合には、回転を防ぐために安定化することができる(安定化帯の使用によって)。
本明細書で開示される人工装具は、単に例示に過ぎないが、単焦点球面レンズである場合には、安定化を有しない(安定化されておらず/自由に回転できる)。
本明細書で開示される人工装具は、強膜リングの形態である場合には常に、眼の通常/正常なまばたきによって自由に回転できる。そして、ほとんどの(しかしすべてではない態様)においては、球面屈折力のみを含み、安定化帯、特徴および要素を有しない単焦点コンタクトレンズの形態である場合も同様である。
本明細書で開示されるいくつかの態様における人工装具は、強膜リングの形態である場合には常に、眼の通常/正常なまばたきによって自由には回転できない。
いくつかの態様において、開口拡大帯および安定化帯は1つであって一体の設計であってよい。他の態様において、開口拡大帯は安定化帯、特徴または要素とは別々である。
図49〜53は、開口拡大帯を有する人工装具の例示的態様を図示している。図49は、周辺エッジ4902とは間隙を介して隔たっている開口拡大帯4906を有する強膜リング4900を示している。周辺エッジ4902と開口拡大帯4906との間に位置するのは、第1の領域4904である。第1の領域4904は、従来の強膜リングのものに等しい厚さおよび曲率を有する。開口拡大帯4906は外縁4908および内縁4916を有する。開口拡大帯4906は、外側勾配4910および内側勾配4914によって定められる厚さ漸増部を有し、最大厚さ漸増部4912が外側勾配4910と内側勾配4914との間に位置する。第2の領域4918は、内縁4916に近接して位置し、中央開放開口4920に向かって広がる。第1の領域4904と同様に、第2の領域4918は、従来の強膜リングのものに等しい厚さおよび曲率を有する。中央開放開口4920の中心に位置するのは、強膜リング4900の幾何学中心4922である。図49はまた、強膜リング4900の垂直寸法(VD)も示している。垂直寸法(VD)は、外縁4908の最上点から外縁4908の最下点まで測定される。
図50は、周辺エッジ5002で始まる開口拡大帯5004を有する強膜リング5000を示している。開口拡大帯5004は外側勾配5006および内側勾配5010によって定められる厚さ漸増部を有し、最大厚さ漸増部5008が外側勾配5006と内側勾配5010との間に位置する。開口拡大帯5004は、中央開放開口5014に近接して内縁5012を含む。中央開放開口5014の中心に位置するのは、強膜リング5000の幾何学中心5016である。図50はまた、強膜リング5000の垂直寸法(VD)も示している。垂直寸法(VD)は、周辺エッジ5002の最上部から周辺エッジ5002の最下部まで測定される。
図51は、周辺エッジ5102とは間隙を介して隔たっている開口拡大帯5106を有するコンタクトレンズ5100を示している。周辺エッジ5102と開口拡大帯5106との間に位置するのは、第1の領域5104である。第1の領域5104は、従来のコンタクトレンズのものに等しい厚さおよび曲率を有する。開口拡大帯5106は外縁5108および内縁5116を有する。開口拡大帯5106は外側勾配5110および内側勾配5114によって定められる厚さ漸増部を有し、最大厚さ漸増部5112が外側勾配5110と内側勾配5114との間に位置する。第2の領域5118は内縁5116に近接して位置し、コンタクトレンズ5100の幾何学中心5120に向かって広がる。第2の領域5118は屈折力を有しても屈折力を有しなくてもよく、特定の屈折力を有するかまたはそれを欠く従来のコンタクトレンズのものに等しい厚さおよび曲率を有する。図51はまた、コンタクトレンズ5100の垂直寸法(VD)も示している。垂直寸法(VD)は、外縁5108の最上部から外縁5108の最下部まで測定される。
図52は、周辺エッジ5202で始まる開口拡大帯5204を有するコンタクトレンズ5200を示している。開口拡大帯5204は外側勾配5206および内側勾配5210によって定められる厚さ漸増部を有し、最大厚さ漸増部5208が外側勾配5206と内側勾配5210との間に位置する。第2の領域5214は開口拡大帯5204の内縁5212に近接して位置し、コンタクトレンズ5200の幾何学中心5216に向かって広がる。第2の領域5214は屈折力を有しても屈折力を有しなくてもよく、特定の屈折力を有するかまたはそれを欠く従来のコンタクトレンズのものに等しい厚さおよび曲率を有する。図52はまた、コンタクトレンズ5200の垂直寸法(VD)も示している。垂直寸法(VD)は、周辺エッジ5202の最上部から周辺エッジ5202の最下部まで測定される。
図53A〜Eは、複数の厚さ漸増バンド5304を有する開口拡大帯のさまざまな例示的態様を示している。厚さ漸増バンドは、中央開放開口5300または光学部5302のいずれかの周りにスポーク様の様式で並んでいる。図53A〜Eには複数の異なるパターンが示されているが、あらゆる数または向きの厚さ漸増バンド5304が開口拡大帯に存在しうることは理解されよう。
図54〜56は、本明細書に記載の開口拡大帯の眼瞼裂拡大効果を図示している。図54は、人の本来の眼瞼裂を示している。図54に見られるように、人の本来の左眼瞼裂(図54の右側)の最大直径はおよそ6mmである。図55は、本明細書に記載の開口拡大帯を有する人工装具を装用した同じ人を示している。図55から、彼の左眼の眼瞼裂が拡大されたことを見てとることができる。彼の左眼の眼瞼裂の最大直径は今度はおよそ9.5mmであり、これはおよそ3.5mmの増加である。図56は、図54および55の中の左眼を比較のために並べて示している。
図57〜60は、本明細書に記載の人工装具の諸態様の表面プロフィールを例証している、さまざまなグラフを示している。図57〜60では、さまざまな開口拡大帯の内側勾配および外側勾配を定量している。
図61は、コンタクトレンズ6130の寸法を、ヒトの眼の解剖学的構造と比較して図示している。ヒトの眼は、上眼瞼6120、下眼瞼6122、角膜6124、および強膜6128を有する。角膜6214と強膜6128との境界面に位置するのは、角膜縁6126である。開口拡大帯6132を有するコンタクトレンズ6130は眼の表面に装用された状態で示されており、角膜6124および角膜縁6126を越えて、角膜6124の両側で強膜6128まで広がっている。コンタクトレンズ6130の可視化表現6100が、眼の左側に示されている(これは実際のレンズではなく、コンタクトレンズ6130のさまざまな寸法を示している表現である)。可視化表現6100によって示されているように、コンタクトレンズ6130は、周辺エッジ6102に近接して位置する開口拡大帯6132を有する。開口拡大帯6132は、外側勾配6104、最大厚さ漸増部6106、内側勾配6108、および内縁6110によって定められる。内縁6110の内側に位置するのは屈折力帯6112であり、幾何学中心6114がその中に位置する。図61から、最大厚さ漸増部6106が眼の両側で角膜縁6126の外側に位置することを見てとることができる。
図62は、強膜リング6230の寸法を、ヒトの眼の解剖学的構造と比較して図示している。ヒトの眼は、上眼瞼6220、下眼瞼6222、角膜6224、および強膜6228を有する。角膜6214と強膜6228との境界面に位置するのは、角膜縁6226である。開口拡大帯6232を有する強膜リング6230が眼の表面に装用された状態で示されており、角膜6224および角膜縁6226を越えて、角膜6224の両側で強膜6228まで広がっている。強膜リング6230の可視化表現6200が眼の左側に示されている(これは実際のレンズではなく、強膜リング6130のさまざまな寸法を示している表現である)。可視化表現6200によって示されているように、強膜リング6230は、周辺エッジ6202に近接して位置する開口拡大帯6232を有する。開口拡大帯6232は、外側勾配6204、最大厚さ漸増部6206、内側勾配6208、および内縁6210によって定められる。内縁6210の内側に位置するのは中央開放開口6212であり、幾何学中心6214がその中に位置する。図62から、最大厚さ漸増部6206が眼の両側で角膜縁6226の外側に位置することを見てとることができる。
図63A〜66Dは、さまざまな形状に関して、垂直寸法および/または最小垂直寸法をどのようにして測定するかを図示している。これらの図は開口拡大帯の例示的な形状を単純化したものであり、あらゆる形状が垂直寸法および最小垂直寸法を有することは理解されよう。これらの例示においては、垂直寸法および/または最小垂直寸法を測定するために用いられる点は、開口拡大帯の最上部および開口拡大帯の最下部に位置するものと仮定している。
図63Aは、円の形状をしている外縁6306を有する開口拡大帯を有する人工装具6300を示している。外縁6306の最上点は点6302で示されており、外縁6306の最下点は点6304で示されている。最上点6302から最下点6304まで測定され、垂直軸に投影される垂直寸法(VD)が、図63Aの左側に示されている。外縁6306は円の形状をしているので、垂直寸法(VD)は最小垂直寸法(MVD)に等しい。円の場合、これは人工装具のあらゆる回転向きに対して成り立つ。
図63Bは、正三角形の形状をしている外縁6356を有する開口拡大帯を有する人工装具6350を示している。外縁6356の最上点は点6352で示されており、外縁6356の最下点は点6354で示されている。最上点6352から最下点6354まで測定されて、垂直軸に投影される垂直寸法(VD)が、図63Bの左側に示されている。図63Bにおいて、これは最小垂直寸法(MVD)でもある、正三角形の高さである。外縁6356は正三角形の形状をしているので、垂直寸法はレンズの向きに基づいて変化すると考えられる。例えば、図63Cに示されているように、三角形が辺を上にしたならば、最上点は点6358であり、最下点は点6360になると考えられる。点6358から点6360まで測定されて、垂直軸に投影される垂直寸法(VD)が、図63Cの左側に示されている。三角形のこの回転向きは、より大きな垂直寸法をもたらす。このより大きな垂直寸法は、すべての正三角形がそれらの辺の長さよりも低い高さを有するという事実が原因でもたらされる。
図64A〜Cは、人工装具6400上に位置する、卵形の形状をしている外縁6420を有する開口拡大帯の垂直寸法(VD)および最小垂直寸法(MVD)をどのようにして測定するかを図示している。図64Aは、卵形がその短軸が垂直方向を向くように配置されている第1の回転向きにある人工装具6400を示している。図64Aにおける向きは、卵形に関する最小垂直寸法(MVD)に等しい垂直寸法を示している。最小垂直寸法(MVD)は最上点6402から最下点6404まで測定され、垂直軸に投影される。図64BおよびCは、垂直寸法(VD)が最小垂直寸法でない、卵形の他の向きを示している。例えば、図64Bでは、卵形の長軸が垂直方向を向いている。これは、点6410から点6412まで測定され、図64Aに示された卵形の最小垂直寸法(MVD)よりも大きい垂直寸法(VD)をもたらす。同様に、図64Cにおける卵形の向きは、点6406から点6408まで測定されて、図64Aに示された最小垂直寸法(MVD)よりも大きい垂直寸法(VD)をもたらす。
図65A〜Bは、人工装具6500上の、外縁6510を有する2つの部分的リングによって定められる開口拡大帯の垂直寸法(VD)および最小垂直寸法(MVD)をどのように測定するかの別の例を示している。図65Aは、垂直寸法(VD)が開口拡大帯に関する最小垂直寸法(MVD)に等しい、人工装具の向きを示している。最小垂直寸法(MVD)は、最上点6502から最下点6504まで測定される。図65Bは、垂直寸法(VD)が最小垂直寸法(MVD)でない、人工装具6500の向きを示している。図65Bにおける垂直寸法(VD)は、最上点6506から最下点6508まで測定され、図65Aに示された最小垂直寸法よりも大きい。
図66A〜Bは、人工装具6600上の、四角形の形状に並んだ外縁6610を有する複数の分離した区域によって定められる開口拡大帯の垂直寸法および最小垂直寸法をどのように測定するかを図示している。図66Aは、開口拡大帯に関する垂直寸法(VD)が最小垂直寸法(MVD)に等しい、人工装具6600の第1の向きを示している。外部エッジ6610は、人工装具6600の中心から最も離れて位置する、点6602、6604、6606および6608を有する。図66Aでは、最小垂直寸法(MVD)が、最上点6602から最下点6606まで測定されて、図66Aの左側に位置する垂直軸に投影されている。図66Bは、最小垂直寸法(MVD)ではない垂直寸法(VD)を図示している人工装具6600の第2の向きを示している。図66Bにおける垂直寸法(VD)は、最上点6604から最下点6606まで測定されて、図66Bの左側に示された垂直軸に投影される。図66Bにおける垂直寸法(VD)は、図66Aに示された最小垂直寸法(MVD)よりも大きいことが見てとれる。
図66C〜Dは、人工装具6650上の、三角形の形状に並んだ外縁6660を有する複数の分離した区域によって定められる開口拡大帯の垂直寸法および最小垂直寸法をどのように測定するかを図示している。図66Cは、垂直寸法(VD)が最上点6652と最下点6654との間の距離である、人工装具6650の第1の向きを示している。図66Dは、垂直寸法が最小垂直寸法(MVD)に等しい第2の向きを示している。図66Dに示されているように、最上点6654から最下点6656まで測定される最小垂直寸法(MVD)が、図66Dの左側にある垂直軸に投影されている。
図67は、周辺エッジ6710および開放開口6702を有する強膜リング6700を示している。開放開口6702の上に位置するのは上部指状要素6704を有する厚さ漸増領域であり、開放開口6702の下に位置するのは下部指状要素6706を有する厚さ漸増領域である。強膜リング6700は、指状要素6704および6706が装用者の眼瞼によって折り畳まれたときにそれらを受け入れるように設計されている溝6708も有してよい。溝6708は、指状要素6704および6706の内側に近接して配置されている。溝6808は任意選択的であることに留意すべきである。
図68は、周辺エッジ6810および光学部6802を有するコンタクトレンズ6800を示している。光学部6802の上に位置するのは上部指状要素6804を有する厚さ漸増領域であり、光学部6802の下に位置するのは下部指状要素6806を有する厚さ漸増領域である。コンタクトレンズ6800は、指状要素6804および6806が装用者の眼瞼によって折り畳まれたときにそれらを受け入れるように設計されている溝6808も有してよい。溝6808は、指状要素6804および6806の内側に近接して配置されている。溝6808は任意選択的であることに留意すべきである。
図69は、オプティカルゾーン6902、上部指状要素6910、および下部指状要素6908を有するコンタクトレンズ6900の側面図を示している。図69において、上眼瞼6906は上部指状要素6910に接して示されている。上部指状要素6910は、コンタクトレンズ6900が装用されたときに上眼瞼6906を押し上げる(拳上させる)。図69はまた、下部指状要素6908と接している下眼瞼6904も示している。下部指状要素6909は、コンタクトレンズ6900が装用されたときに下眼瞼6904を押し下げる(下垂させる)。図69にはコンタクトレンズが示されているが、指状要素を有する強膜リング(図67に関する上記の説明を参照されたい)も、図69に記載されたのと同じ様式で上眼瞼を押し上げる(拳上させる)こと、および/または下眼瞼を押し下げる(下垂させる)ことができると考えられることが理解されるであろう。
表1は、4種類の異なる例示的な人工装具が異なる人の眼に及ぼした効果をまとめている。
(表1)4種類の異なる例示的レンズ(I、J、KおよびL)についての開口拡大の結果
レンズIの仕様は以下の通りである:
ベースカーブ8.4/全径15.0mm/150ミクロンの最大厚さ差分隆起がレンズの外側エッジから1.0mm〜1.50mmにある/開口拡大帯がレンズの外側エッジで始まる/全体的ベース厚さ(隆起および外側エッジを除く)はおよそ125ミクロン〜175ミクロンの範囲内/屈折力は-0.50Dに等しい。
レンズJの仕様は以下の通りである:
ベースカーブ8.4/全径15.0mm/300ミクロンの最大厚さ差分隆起がレンズの外側エッジから1.5mm〜10mmにある/開口拡大帯がレンズの外側エッジで始まる/全体的ベース厚さ(隆起および外側エッジを除く)はおよそ125ミクロン〜175ミクロンの範囲内/屈折力は-0.50Dに等しい。
レンズKの仕様は以下の通りである:
ベースカーブ8.4/全径15.5mm/150ミクロンの最大厚さ差分隆起がレンズの外側エッジから1.0mm〜1.5mmにある/開口拡大帯がレンズの外側エッジで始まる/全体的ベース厚さ(隆起および外側エッジを除く)はおよそ125ミクロン〜175ミクロンの範囲内/屈折力は-0.50Dに等しい。
レンズLの仕様は以下の通りである:
ベースカーブ8.4/全径15.5mm/300ミクロンの最大厚さ差分隆起がレンズの外側エッジから1.5mm〜2.0mmにある/開口拡大帯がレンズの外側エッジで始まる/全体的ベース厚さ(隆起および外側エッジを除く)がおよそ125ミクロン〜175ミクロンの範囲内/屈折力は-0.50Dに等しい。
表1は、特定のレンズが異なる人に対して非常に優れた成績であったこと、および、本明細書に記載の開口拡大帯を含む人工装具を装用することによってほとんどの人の眼瞼裂が拡大されうることを例証している。表1は装用しうるさまざまなレンズの一例に過ぎず、本明細書に記載の人工装具の寸法および/または拡大能力を限定することを意味しないことは了解されるであろう。
いくつかの態様は、外側凸面に位置する開口拡大帯を含む、装用者によって装用されうる人工装具を含む。当該人工装具はXmmの全径を有し、装用者の眼はYmmの垂直開口測定値を含み、ここでXmmはYmmよりも少なくとも1mm長い。開口拡大帯は装用者の眼の眼瞼裂を拡大させる。
いくつかの態様において、開口拡大帯は装用者の下眼瞼を押し下げる(下垂させる)。いくつかの態様において、開口拡大帯は装用者の上眼瞼を押し上げる(拳上させる)。いくつかの態様において、開口拡大帯は上眼瞼を少なくとも1mm押し上げる(拳上させる)。いくつかの態様において、開口拡大帯は下眼瞼を少なくとも1mm押し下げる(下垂させる)。いくつかの態様において、開口拡大帯は上眼瞼を1mm未満しか拳上させず、かつ/または下眼瞼を1mm未満しか押し下げないが、装用者の眼の眼瞼裂を少なくとも1mm拡大させる。
人工装具は、ハイドロゲル、シリコーンハイドロゲル、シリコーン、ガス透過性、親水性、硬質および柔軟性のうちの1つである材料を含む。
いくつかの態様において、人工装具は角強膜コンタクトレンズである。いくつかの態様において、人工装具はソフトコンタクトレンズである。いくつかの態様において、人工装具はハイブリッド型コンタクトレンズである。いくつかの態様において、人工装具は強膜リングである。
いくつかの態様において、開口拡大帯は人工装具のエッジより内側に位置する。いくつかの態様において、開口拡大帯は人工装具の外側エッジで始まる。
いくつかの態様において、開口拡大帯は回転対称性である。いくつかの態様において、開口拡大帯は回転非対称性である。
いくつかの態様において、開口拡大帯は、25ミクロン〜1,000ミクロンの範囲内にある最大厚さ漸増差分を有する。いくつかの態様において、開口拡大帯は、100ミクロン〜400ミクロンの範囲内にある最大厚さ漸増差分を有する。
いくつかの態様において、開口拡大帯は、人工装具の幾何学中心から3mm〜8.5mmの範囲内に位置する。いくつかの態様において、開口拡大帯は、人工装具の幾何学中心から5mm〜7.75mmの範囲内に位置する。
いくつかの態様において、開口拡大帯は、人工装具の外周エッジから0.1mm〜6.0mmの範囲内に位置する。いくつかの態様において、開口拡大帯は、人工装具の外周エッジから6.0mmまでの範囲内に位置する。
いくつかの態様において、開口拡大帯は、人工装具の外周エッジから0.5mm〜3.0mmの範囲内に位置する最大Δ厚さ部を有する。
いくつかの態様において、開口拡大帯は、レンズの凸面上に隆起を含む。
いくつかの態様における強膜リングは中央開放開口を含む。いくつかの態様において、強膜リングは均質なデザインを含む。いくつかの態様において、強膜リングはハイブリッドデザインを含む。
いくつかの態様において、強膜リングは柔軟な指状要素を含む。いくつかの態様において、指状要素は、眼のまばたきによって、強膜リングの幾何学中心に向かう方向に折り畳まれる。いくつかの態様において、指状要素は、眼瞼が開かれると、強膜リングの幾何学中心から隔たる方向に展開される。
人工装具は、連続、1日間、1週間および1カ月間のうちの1つの期間にわたって装用することができる。
いくつかの態様において、人工装具は使い捨て式である。いくつかの態様において、人工装具は再利用可能である。
いくつかの態様において、人工装具は屈折力を含む。いくつかの態様において、人工装具は屈折力を有しない。
いくつかの態様において、開口拡大帯は勾配および最大厚さ漸増差分部を有する。いくつかの態様において、最大厚さ漸増差分部の(人工装具の外側エッジに対して最も近い)外側での勾配は、(人工装具の中心に対して最も近い)内側での勾配よりも急である。
いくつかの態様において、人工装具は、表面摩擦増加帯または表面摩擦増加領域を含む。いくつかの態様において、人工装具は、厚さ漸増区域も厚さ漸減区域も有しないが、その代わりにその外側凸面に位置する表面摩擦増加帯を有する。
いくつかの態様において、開口拡大帯の幅は0.5mm〜6mmの範囲内にある。
いくつかの態様において、人工装具の外側エッジは、従来の角強膜コンタクトレンズのエッジに近似している。
いくつかの態様において、開口拡大帯は、人工装具を装用していないときの装用者の上眼瞼縁よりも0.1mm以上上側に位置する点に対応するピークΔ厚さ部を有する。いくつかの態様において、開口拡大帯は、人工装具を装用していないときの装用者の下眼瞼縁よりも0.1mm以上下側に位置する点に対応するピークΔ厚さ部を有する。いくつかの態様において、ピークΔ厚さ部は、装用者の眼の本来の開口の内部に位置する点に対応する。いくつかの態様において、ピークΔ厚さ部は、装用者の眼の本来の開口の外側に位置する点に対応する(ピークΔ厚さ部からピークΔ厚さ部まで人工装具の幾何学中心を経由して測定される距離が、上眼瞼縁と下眼瞼縁との間の垂直測定値(垂直眼開口)よりも大きいことを意味する。
いくつかの態様において、開口拡大帯は7mm〜15mmの範囲内にある直径(開口拡大帯の幅ではない)を有する。
いくつかの態様において、人工装具は角強膜コンタクトレンズである。いくつかの態様において、角強膜コンタクトレンズは球面単焦点コンタクトレンズである。いくつかの態様において、角強膜コンタクトレンズは多焦点コンタクトレンズである。いくつかの態様において、角強膜コンタクトレンズはトーリック屈折力を有する。いくつかの態様において、角強膜コンタクトレンズは単焦点球面円柱コンタクトレンズである。
いくつかの態様において、人工装具は回転対称性の開口拡大帯を含み、安定化されていない。いくつかの態様において、人工装具は回転対称性の開口拡大帯を含み、人工装具は安定化帯を有しない。
いくつかの態様において、人工装具は安定化帯を持たず、それ故に自由に回転できる。いくつかの態様において、人工装具は安定化されており、それ故に自由には回転できない。
いくつかの態様において、人工装具は、ある開口拡大帯および別個の開口安定化帯を有する。
いくつかの態様において、人工装具は開口拡大帯を有し、当該人工装具は自然なまばたきの際に自由に回転できる。
いくつかの態様において、人工装具は、装用者の眼の表面に装用されたときに、より大きな眼という美容上の外観を付け加える、着色された区域を含む。いくつかの態様において、着色された区域は、角膜縁リング、着色されたリング、強調色のうちの1つである。
いくつかの態様において、開口拡大帯は、人工装具の幾何学中心と交差する仮想垂直軸に沿って、幾何学中心の上および下に位置する。
いくつかの態様において、人工装具は、人工装具の幾何学中心と交差する仮想垂直軸に沿って幾何学中心の右側または左側に位置する開口拡大帯を含む。
いくつかの態様は、Xmmの全径を有する、装用者の眼のための人工装具を含み、装用者の眼はYmmの垂直開口測定を有し、ここでXmmはYmmよりも少なくとも1mm長い。当該人工装具は、3度〜45度の範囲内にある外側勾配を有する開口拡大帯を有する。
いくつかの態様は、Xmmの全径を有する、装用者の眼のための人工装具を含み、装用者の眼はYmmの垂直開口測定値を有し、ここでXmmはYmmよりも少なくとも1mm長い。当該人工装具は、1度〜15度の範囲内にある内側勾配を有する開口拡大帯を有する。
いくつかの態様は、幾何学中心の上方および下方に位置する開口拡大帯を有する人工装具を含む。当該開口拡大帯は厚さ勾配を有する。当該厚さ勾配は、1ミリメートル当たりの厚さ追加が50ミクロンを上回る。
いくつかの態様は、凸面上に開口拡大帯を有する人工装具を含む。当該開口拡大帯は凸面上に隆起をもたらす。当該開口拡大帯は、1mm当たりの厚さ追加が50ミクロンを上回る外側厚さ勾配を有する。
いくつかの態様は、凸面上に開口拡大帯を有する人工装具を含む。当該開口拡大帯は凸面上に隆起をもたらす。当該開口拡大帯は、1mm当たりの厚さ追加が50ミクロン未満である内側厚さ勾配を有する。
いくつかの態様において、開口拡大帯の外側厚さ勾配は、1mm当たりの厚さ追加が100ミクロンを上回る。いくつかの態様において、開口拡大帯の外側厚さ勾配は、1mm当たりの厚さ追加が150ミクロンを上回る。いくつかの態様において、開口拡大帯の外側厚さ勾配は、1mm当たりの厚さ追加が200ミクロンを上回る。いくつかの態様において、開口拡大帯の外側厚さ勾配は、1mm当たりの厚さ追加が300ミクロンを上回る。
いくつかの態様において、開口拡大帯の内側厚さ勾配は、1mm当たりの厚さ追加が100ミクロン未満である。いくつかの態様において、開口拡大帯の内側厚さ勾配は、1mm当たりの厚さ追加が150ミクロン未満である。いくつかの態様において、開口拡大帯の内側厚さ勾配は、1mm当たりの厚さ追加が200ミクロン未満である。いくつかの態様において、開口拡大帯の内側厚さ勾配は、1mm当たりの厚さ追加が300ミクロン未満である。
いくつかの態様において、開口拡大帯は人工装具の凸面上に隆起を有する。いくつかの態様において、隆起は人工装具の幾何学中心の上側および下側に垂直に位置する。
特許請求の範囲を解釈するために使用されるべく意図されているのは、「詳細な説明」のセクションであり、概要および要約書のセクション(あれば)ではないことを理解されたい。概要および要約書のセクション(あれば)は、発明者によって企図される本発明の、すべてではなく1つまたは複数の例示的態様を記述しており、したがって、本発明または特許請求の範囲を限定することは全く意図されていない。
本発明を、例示的な分野および用途に関する例示的態様を参照しながら、本明細書において説明してきたが、本発明がそれらに限定されると解釈されるべきではない。他の態様およびそれらに対する変更も可能であり、それらも本発明の範囲および趣旨の範囲内にある。例えば、この段落の一般性を限定することなく、態様は、図面中に例示された、および/または本明細書に記載された、ハードウェア、方法および/または実体には限定されない。さらに、諸態様(本明細書に明示的に記載されているか否かにかかわらず)は、本明細書に記載された例を越える分野および用途に対して有意な有用性を有する。
具体的な機能の実行を例証する機能的構成要素およびそれらの関係の助けを借りて、諸態様を本明細書において説明してきた。これらの機能的構成要素の境界は、説明の便宜上、本明細書において任意に定められている。特定の機能およびそれらの関係(またはそれらの均等物)が適切に遂行される限り、代替的な境界を定めることもできる。また、代替的な態様が、本明細書に記載されたものとは異なる順序を用いて、機能的構成要素、段階、操作、方法などを遂行してもよい。
本明細書における「1つの態様」、「1つの態様」、「1つの例示的態様」または類似の語句への言及は、記載されている態様がある特定の特徴、構造または特性を含んでもよいが、すべての態様がその特定の特徴、構造または特性を必ずしも含まなくてもよいことを指し示している。その上、そのような語句は、必ずしも同じ態様に言及しているわけではない。さらに、ある特定の特徴、構造または特性が1つの態様に関連して記載されている場合には、明示的に記載されているか否かによらず、そのような特徴、構造または特性を他の態様に関連して実現することも当業者の知識の範囲内にあるものと理解されたい。
本発明の広範性および範囲は、上記の例示的態様のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびその均等物のみによって定められるべきである。