[0003]現在の研究は、消化管微生物叢及び脳−腸軸をIBSの病態生理に関連付けている。IBSに随伴する腹痛及び不快感は、脳−腸軸及びストレスホルモンに対する応答に関係付けられている。研究により、IBS患者の消化管微生物叢が健常対照の消化管微生物叢から変化していることが示された。消化管微生物叢が感染後IBS(PI−IBS)を引き起こすという証拠も存在する。IBSは、異常な消化管微生物叢と、またさらに細菌過剰増殖と関連付けられた(Kimら、Digestive Diseases and Sciences、2012年5月)。
[0004]フラジェリンは、細菌鞭毛の主要な構造構成要素であり、個体における自然及び適応免疫系の両方を活性化することが示されている。例えば、細菌フラジェリン(A4−Fla2及びFla−X)に対する抗体は、IBSを有する患者で健常対照よりも頻繁に検出された(それぞれp=0.004及びp=0.009;Schoepferら、Neurogastroenterol. Motil.、20巻、1110〜1118頁(2008年))。
[0005]様々な腸疾患又は障害における腸内微生物バイオーム、ストレスホルモン、炎症性サイトカイン及びマスト細胞マーカーの役割を裏付ける一連の証拠が増えている。例えば、OmpC、Cbir1、FlaX及びFla2に対する抗体は、炎症性腸疾患(IBD)の価値のあるバイオマーカーであることが立証された。大腸菌(Escherichia coli)K12タンパク質(例えば、Era、FocA、FrvX、GabT、YbaN、YcdG、YhgN、YedK及びYidX)に対する抗体のサブセットは、クローン病(CD)を有する個体と健常対照とを、またCDを有する個体と潰瘍性大腸炎を有する個体とを区別するのに用いることができる(Chenら、Mol. Cell Proteomics、8巻、1765〜1776頁、(2009年))。カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)(C.jejuni、Cj)、大腸菌(E.Coli、Ec)、腸炎菌(Salmonella enteritidis)(S.enteritidis、Se)、フレキシナ赤痢菌(Shigella flexneri)(S.flexneri、Sf)による感染によりしばしば引き起こされるIBSに随伴する感染後小腸細菌過剰増殖(SIBO)を有する個体は、感染菌のフラジェリンタンパク質に対する抗体を有することがある(Spiller R及びGarsed K.、Gastroenterology、136巻、1979〜1988頁(2009年))。
[0006]興味深いことに、抗生物質、プロバイオティクス及びプレバイオティクスなどの消化管微生物叢を標的とする療法は、IBSの症状を緩和すると思われる。例えば、抗生物質リファキシミンは、腸内細菌に影響を及ぼし、宿主個体に負の影響を及ぼす細菌産物を減少させると思われる。
[0007]腸内微生物バイオームに加えて、マスト細胞もIBSの病因において重要な役割を果たしている。腸の遠位区域におけるマスト細胞浸潤の増大及び活性化は、IBSの症状発現及び重症度に関連する。これらの細胞は、IBS患者における粘膜刺激に対する内臓求心性神経の応答の増大にも関連付けられている。マスト細胞の過形成は、感染後IBS及び非感染後IBSの両方におけるこれらの細菌による感染の後に一般的に観察される。β−トリプターゼ、ヒスタミン及びプロスタグランジンE2(PGE2)などのマスト細胞マーカーの測定は、IBSの臨床診断に重要な意味を有する。IBSの診断を補助するマスト細胞マーカーを用いる詳細な方法は、それらの開示がすべての目的のためにそれらの全体として参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,114,616号及び米国特許出願公開第2012/244558号に記載されている。
[0008]IBS患者は、一般的に、脳−腸軸又は中枢ストレス応答系により媒介される異常な腸管運動及び消化管の感覚過敏を経験する。脳−腸軸の1つのアームは、交感神経系及び視床下部−下垂体−副腎軸(HPA)により形成される、中枢遠心性経路である。IBSを含むストレス感受性障害において、アドレノコルチコトロピンホルモン(ACTH)、コルチゾール及びカテコールアミンなどのHPA軸のストレスホルモンが放出される。いくつかの研究により、IBS患者におけるHPA軸応答が粘膜免疫活性化の増大により引き起こされ、これがひいてはHPA軸を刺激する血漿サイトカインレベルを増加させることが示された。ストレス応答の鈍化がIBSの症状に寄与することが理論化された。さらに、マスト細胞マーカーの発現の増大及び微生物叢の抗原/抗体組成の変化に起因するIBSの症状は、脳−腸軸の調節不全により引き起こされる免疫応答の変化により増悪すると考えられている。
[0009]前述のことを考慮すると、IBS試料と非IBS試料とを区別して診断するための方法及びキットの必要性が当技術分野に存在する。本発明は、この必要性及び他の必要性を満たす。
[0011]いくつかの実施形態において、細菌抗原抗体マーカーのアレイは、大腸菌(E.Coli)FliC、フレキシナ赤痢菌(S.flexneri)FliC、カンピロバクター・ジェジュニ(C.jejuni)FlaA、カンピロバクター・ジェジュニFlaB、大腸菌O157:H7FliC、大腸菌FrvX、大腸菌GabT、カンピロバクター・ジェジュニ81−045、カンピロバクター・ジェジュニ81−128及びカンピロバクター・ジェジュニ81−008、大腸菌Era、大腸菌FocA、大腸菌FrvX、大腸菌GabT、大腸菌YbaN、大腸菌YcdG、大腸菌YhgN、大腸菌YedK、大腸菌YidX、ラクトバチルス・アシドフィルス(L.acidophilus)Frc、ラクトバチルス・アシドフィルスEno、ラクトバチルス・ジョンソニイ(L.johnsonii)EFTu、バクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)OmpA、プレボテラ属(Prevotella)OmpA、ウェルシュ菌(C.perfringens(Clostridia perfringens))10bA、ウェルシュ菌SpA、フェカリス菌(E.faecalis(Enterococcus faecalis))Sant、リステリア菌(L.monocytogenes(Listeria monocytogenes))Osp並びにその組合せに対する抗体からなる群から選択される。
[0012]いくつかの実施形態において、抗体は、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcOFliC、SeFljB、CjGT−A、Cjdmh、CjCgtA及びその組合せからなる群から選択される細菌抗原に特異的に結合する。
[0013]いくつかの実施形態において、抗体は、EcFliC、EcEra、EcFocA、EcFrvX、EcGabT、EcYbaN、EcYcdG、EcYhgN、EcYidX、EcYedK及びその組合せからなる群から選択される細菌抗原に特異的に結合する。
[0014]いくつかの実施形態において、抗体は、LaFrc、LaEno、LjEFTu、BfOmpA、PrOmpA、Cp10bA、CpSpA、EfSant、LmOsp及びその組合せからなる群から選択される細菌抗原に特異的に結合する。
[0017]いくつかの実施形態において、診断モデルは、細菌抗原抗体マーカーモデルを含む。いくつかの実施形態において、診断モデルは、IBSの臨床サブタイプ及び健常対照の既知の転帰を有する後ろ向きコホートを用いて確立する。
[0018]いくつかの実施形態において、細菌抗原抗体マーカーモデルは、後ろ向きコホートにおいて決定された1つ又は複数の細菌抗原抗体マーカーのレベルにロジスティック回帰分析を適用することにより得られる。
[0020]いくつかの実施形態において、マスト細胞マーカーのアレイは、β−トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2及びその組合せからなる群から選択される。
[0023]いくつかの実施形態において、ストレス因子のアレイは、コルチゾール、BDNF、セロトニン、CRF、ACTH及びその組合せからなる群から選択される。
[0025]いくつかの実施形態において、診断モデルは、IBSの臨床サブタイプ及び健常対照の既知の転帰を有する後ろ向きコホートを用いて確立する。いくつかの実施形態において、診断モデルは、細菌抗原抗体マーカーモデル、マスト細胞マーカーモデル及び/又はストレス因子マーカーモデルを含む。
[0026]いくつかの実施形態において、マスト細胞マーカーモデルは、後ろ向きコホートにおいて決定された1つ又は複数のマスト細胞マーカーのレベルにロジスティック回帰分析を適用することにより得られる。
[0027]いくつかの実施形態において、細菌抗原抗体マーカーモデルは、後ろ向きコホートにおいて決定された1つ又は複数の細菌抗原抗体マーカーのレベルにロジスティック回帰分析を適用することにより得られる。
[0028]いくつかの実施形態において、マスト細胞マーカーモデルは、後ろ向きコホートにおいて決定された1つ又は複数のマスト細胞マーカーのレベルにロジスティック回帰分析を適用することにより得られる。
[0029]いくつかの実施形態において、ストレス因子マーカーモデルは、後ろ向きコホートにおいて決定された1つ又は複数のストレス因子マーカーのレベルにロジスティック回帰分析を適用することにより得られる。
[0030]いくつかの実施形態において、方法は、IBSの診断をIBS便秘型(IBS−C)、IBS下痢型(IBS−D)、IBS混合型(IBS−M)、IBS交替型(IBS−A)又は感染後IBS(IBS−PI)と分類するステップをさらに含む。
[0031]1つの態様において、本発明は、対象におけるIBSの診断を補助する方法を提供する。いくつかの例において、方法は、(a)試料中に存在する細菌抗原抗体を細菌抗原抗体及び細菌抗原抗体結合部分を含む複合体に変換するのに適する条件下で対象からの生体試料を細菌抗原抗体結合部分(例えば、細菌抗原又はその抗原性断片)と接触させるステップと、複合体のレベルを決定し、それにより、試料中に存在する細菌抗原抗体のレベルを決定するステップとを含む。
[0032]いくつかの実施形態において、方法は、試料中に存在する細菌抗原抗体のレベルを細菌抗原抗体の対照レベルと比較するステップをさらに含み、細菌抗原抗体のレベルが対象がIBSを有する可能性の増大を示す。
[0033]いくつかの実施形態において、細菌抗原は、EcFliC、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcOFliC、CjGT−A、Cjdmh、CjCgtA、SeFljB、EcEra、EcFocA、EcFrvX、EcGabT、EcYbaN、EcYcdG、EcYhgN、EcYedK、EcYidX、LaFrc、LaEno、LjEFTu、BfOmpA、PrOmpA、Cp10bA、CpSpA、EfSant、LmOsp、及びその組合せからなる群から選択される。
[0035]いくつかの実施形態において、方法は、対象からの生体試料中のマスト細胞マーカーのレベルを決定するステップと、試料中に存在するマスト細胞マーカーのレベルを対照レベルと比較するステップとをさらに含み、対象からの試料中のマスト細胞マーカーのレベルの増加は、対象がIBSを有する可能性の増大を示す。
[0036]いくつかの実施形態において、マスト細胞マーカーは、β−トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2及びその組合せからなる群から選択される。
[0038]いくつかの実施形態において、方法は、IBSの診断をIBS便秘型(IBS−C)、IBS下痢型(IBS−D)、IBS混合型(IBS−M)、IBS交替型(IBS−A)又は感染後IBS(IBS−PI)と分類するステップをさらに含む。
[0040]特定の実施形態において、複数の時点は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50又はそれ以上の時点を含む。他の例において、複数の時点における最初の時点は、療法の過程中に存在する。非限定的な例として、マーカーのそれぞれは、療法の前に、及び/又は療法の過程中の以下の週、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、80、90、100週等の1つ若しくは複数(例えば、複数)で測定することができる。
[0043]いくつかの実施形態において、対照の疾患分類プロファイルは、健常対照である対象、IBS又はIBS便秘型(IBS−C)、IBS下痢型(IBS−D)、IBS混合型(IBS−M)、IBS交替型(IBS−A)若しくは感染後IBS(IBS−PI)などのIBSのサブタイプを有する対象からの疾患分類プロファイルを含む。他の実施形態において、対照の疾患分類プロファイルは、健常対照、IBSを有する対象又はIBS−C、IBS−D、IBS−M、IBS−A若しくはIBS−PIなどのIBSの特定のサブタイプを有する対象である複数の対象からの複数の疾患分類プロファイルの平均を含む。
[0045]いくつかの実施形態において、細菌抗原抗体は、EcFliC、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcOFliC、CjGT−A、Cjdmh、CjCgtA、SeFljB、EcEra、EcFocA、EcFrvX、EcGabT、EcYbaN、EcYcdG、EcYhgN、EcYedK、EcYidX、LaFrc、LaEno、LjEFTu、BfOmpA、PrOmpA、Cp10bA、CpSpA、EfSant、LmOsp、及びその組合せに対する抗体からなる群から選択される。
[0047]いくつかの実施形態において、マスト細胞マーカーは、β−トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2及びその組合せからなる群から選択される。
[0048]本発明の様々な方法及びアッセイのいくつかの実施形態において、抗体が表1、2又は3に示す細菌抗原に対する抗体である、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27種又はそれ以上の細菌抗原抗体マーカーの存在又はレベルを検出し、IBSを予測するのに有用である診断マーカープロファイルを作出する。特定の例において、本明細書に記載のバイオマーカーは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)又は免疫組織化学測定法などの免疫測定法を用いて分析する。
本発明の1つの実施形態から得られたヒトβ−トリプターゼの用量反応曲線を示す図である。
本発明の1つの実施形態から得られたヒトプロスタグランジンE2(PGE2)の用量反応曲線を示す図である。
本発明の1つの実施形態から得られたヒトヒスタミンの用量反応曲線を示す図である。
ロジスティック回帰モデルにおけるマーカー値対試料の推定される相関係数の導出を示す図である。推定値が正の勾配に対応する場合、マーカーは、IBS対健常対照の予測に対する正の効果を有する。推定値が大きな負の勾配を有する場合、マーカーは、IBSの予測に対して大きな負の効果を有する。推定値が約0である場合、マーカーは、IBSの診断への予測による寄与を実質的にもたらさない。推定値は、特定のマーカーがIBSの予測に関する情報を与えるかどうかを決定するために用いられる。
コホート#1〜4からのβ−トリプターゼデータの密度解析を示す図である。
コホート#3からのヒスタミンデータの密度解析を示す図である。
コホート#1〜4からのプロスタグランジンE2の密度解析を示す図である。
3つのマスト細胞マーカー(例えば、β−トリプターゼ、ヒスタミン及びプロスタグランジンE2)を用いてIBSを予測するためのロジスティック回帰モデルに基づくROC曲線を示す図である。
8つの細菌抗原抗体マーカー(例えば、大腸菌FliC、フレキシナ赤痢菌FliC、カンピロバクター・ジェジュニFlaA、カンピロバクター・ジェジュニFlaB、大腸菌Era、大腸菌O157:H7FliC、大腸菌FrvX、大腸菌GabT、カンピロバクター・ジェジュニ81−045、カンピロバクター・ジェジュニ81−128及びカンピロバクター・ジェジュニ81−008に対する抗体)を用いてIBSを予測するためのロジスティック回帰モデルに基づくROC曲線を示す図である。
8つの細菌抗原抗体マーカー(例えば、大腸菌FliC、フレキシナ赤痢菌FliC、カンピロバクター・ジェジュニFlaA、カンピロバクター・ジェジュニFlaB、大腸菌Era、大腸菌O157:H7FliC、大腸菌FrvX、大腸菌GabT、カンピロバクター・ジェジュニ81−045、カンピロバクター・ジェジュニ81−128及びカンピロバクター・ジェジュニ81−008に対する抗体)及び2つのマスト細胞マーカー(例えば、血清β−トリプターゼ及びプロスタグランジンE2)の組合せを用いてIBSを予測するためのロジスティック回帰モデルに基づくROC曲線を示す図である。
CBir1、Fla2及びFlaXなどのIBD細菌からのフラジェリン並びに大腸菌K12のFliC、フレキシナ赤痢菌のFliC、カンピロバクター・ジェジュニのFlaA、カンピロバクター・ジェジュニのFlaB、大腸菌O157:H7のFliC及び腸炎菌PT4のFljBなどのIBD細菌からのフラジェリンのアミノ酸配列アライメントを示す図である。緑色、橙色及び赤色バーは、類似性レベルを示す。黒色領域は、配列類似性を表す。
CBir1、Fla2(ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)細菌A4クローン)及びFlaXなどのIBD細菌からのフラジェリン並びにフレキシナ赤痢菌のFliC、大腸菌K12のFliC、腸炎菌のFliC、腸炎菌PT4のFljB、カンピロバクター・ジェジュニのFlaA及びカンピロバクター・ジェジュニのFlaBなどのIBS細菌からのフラジェリンのアミノ末端領域のアミノ酸配列アライメントを示す図である。
CBir1、Fla2(ラクノスピラ科細菌A4クローン)及びFlaXなどのIBD細菌からのフラジェリン並びにフレキシナ赤痢菌のFliC、大腸菌K12のFliC、腸炎菌のFliC、腸炎菌PT4のFljB、カンピロバクター・ジェジュニのFlaA及びカンピロバクター・ジェジュニのFlaBなどのIBS細菌からのフラジェリンの中間領域のアミノ酸配列アライメントを示す図である。
CBir1、Fla2(ラクノスピラ科細菌A4クローン)及びFlaXなどのIBD細菌からのフラジェリン並びにフレキシナ赤痢菌のFliC、大腸菌K12のFliC、腸炎菌のFliC、腸炎菌PT4のFljB、カンピロバクター・ジェジュニのFlaA及びカンピロバクター・ジェジュニのFlaBなどのIBS細菌からのフラジェリンのカルボキシ末端領域のアミノ酸配列アライメントを示す図である。
IBS関連細菌と対比したIBDのフラジェリンタンパク質の系統樹を示す図である。
健常対照及びIBS−C、IBS−D又はIBS−Mを有する患者を含む患者の後ろ向きコホートにおける午前及び午後における様々なサイトカイン(例えば、IL−10、IL−12p70、IL−6、IL−8及びTNF)及びホルモン(例えば、セロトニン及びコルチゾール)のレベルを示す図である。
午後の試料中のコルチゾールレベルが健常対照対IBS−Dを高度に予測したことを示す図である。図17Aは、午前の試料における健常対照(HC)とIBS−C、IBS−D及びIBS−Mを有する患者との間のコルチゾールレベルの相関を示す図である。図17Bは、午後の試料における健常対照(HC)とIBS−C、IBS−D及びIBS−Mを有する患者との間のコルチゾールレベルの相関を示す図である。
コルチゾールのレベルと他のマーカー(例えば、コホートからのデータセットにおけるIL−10、IL12p70、IL−6、IL−8、セロトニン及びTNF−α)のレベルとの間の関係性を示す図である。線形回帰モデルにおける有意な関連は同定されなかった。
健常対照(HC)患者及びIBS−C、IBS−D又はIBS−Mを有する患者のコルチゾール:IL−6比を示す図である。
データセットにおけるコルチゾールと他のマーカー(例えば、CjFala、CjFlaB、EcEra、EcFlic、EcGabT、EcOFliC、CRP、SAA、sICAM、sVCAM、PII、SfFlic、GROA、PGE2、ヒスタミン、トリプターゼ、TWEAK及びBDNF)との間の関係性を示す図である。
対数変換変量に関する多重線形回帰モデリングの結果を示す図である。特に、各マーカーのコルチゾールに対する関係性を示す表である。
コルチゾールと細菌抗原EcOFliCに対する抗体との比が健常対照、IBS−C、IBS−D及びIBS−M患者の間で有意に異なることを示す図である(F=3.343、p=0.020)。比の統計的に有意な差が群間で判定された。
コホートの健常対照、IBS−C、IBS−D及びIBS−M患者におけるコルチゾールのレベルを示す図である。
EMBOSSを用いたEcEraの抗原性断片の予測(囲み)を示す図である。
EMBOSSを用いたEcGabtの抗原性断片の予測(囲み)を示す図である。
合わせたヒト腸内16SrDNA配列データセットに基づく系統樹を示す図である。各クレードについて回収された配列、系統型及び新規系統型の総数をカッコ内に含めて表示する(Eckburgら、Science、308巻、1635〜1638頁、Jefferyら、Gut、61巻、997〜1006頁(2012年)参照)。
正常対照者及びIBS−D又はIBS−Mを有する患者からの血清試料中のラクトバチルス・アシドフィルスEnoに対する抗体(図27A)、ラクトバチルス・アシドフィルスFrcに対する抗体(図27B)及びラクトバチルス・ジョンソニイEFTuに対する抗体(図27C)のレベルを示す図である。
正常対照者及びIBS−D又はIBS−Mを有する患者からの血清試料中のバクテロイデス・フラジリスOmpAに対する抗体(図28A)及びプレボテラ属OmpAに対する抗体(図28B)のレベルを示す図である。
正常対照者及びIBS−D又はIBS−Mを有する患者からの血清試料中のウェルシュ菌10bAに対する抗体(図29A)、ウェルシュ菌SpAに対する抗体(図29B)、フェカリス菌Santに対する抗体(図29C)及びリステリア菌Ospに対する抗体(図29D)のレベルを示す図である。
[発明の詳細な説明]
I.序
[0080]IBSと他の腸疾患又は障害とで症状が類似しているため、患者を過敏性腸症候群と診断することは、能力を必要とするものであり得る。バイオマーカーに基づくアッセイは、IBSと他の疾患及び障害とを区別するための迅速且つ正確な診断方法をもたらし得る。
[0081]IBSの正確な病態生理は依然として解明されていないが、IBSは、一部は、宿主の腸内微生物バイオーム及びストレスホルモンの調節不全により引き起こされると考えられている。研究により、消化管微生物叢が宿主に影響を及ぼし、粘膜の炎症及び免疫活性化をもたらし得ること、並びにコルチゾールレベルがIBSを有する女性において高いことがあり得ることが示された(Heitkemperら、Am J Gastroenterol、91巻(5号)、906〜13頁(1996年))。
[0082]この理論を裏付ける所見は、IBSと診断された患者の消化管粘膜にマスト細胞の数の増加を見いだすことができるという所見を含む(Guilarte, M.ら、Gut、56巻、203〜209頁(2007年)、Walker, M. M.ら、Pharmacol. Ther.、29巻、765〜773頁(2009年)、Akbar, A.ら、Gut、57巻、923〜929頁(2008年)、Barbara, G.ら、Gastroenterology、126巻、693〜702頁(2004年)、Barbara, G.ら、Gastroenterology、132巻、26〜37頁(2007年)、Cremon, C.ら、Am. J. Gastroenterol.、104巻、392〜400頁(2009年)及びO’Sullivan, M.ら、Neurogastroenterol. Motil.、12巻、449〜457頁(2000年))。同様に、いくつかの研究で、ヒスタミン及びセリンプロテアーゼ(例えば、トリプターゼ)を含む、これらの細胞から放出されるレベルのメディエーターがIBS患者の結腸粘膜に認められることも見いだされた(Buhnerら、Gastroenterology、137(4)、(2009年)、Barbaraら、Gastroenterology、122(4)、Suppl. 1:A−276、(2002年))。
[0083]ヒト消化管微生物叢は、少なくとも1000種の細菌を含み、約160種の異なる種の約1014個の個別の細菌細胞が各個体の腸に生息している(Oin, J.ら、Nature、464巻、59〜65頁(2010年))。宿主の(例えば、個体の)遺伝及び免疫組成並びに環境因子が消化管微生物叢に影響を及ぼし、これがひいては、宿主の消化管系内の免疫及び生理を形作ることが理論化された。この理論は、健常者(例えば、腸障害又は疾患を有さない)が彼/彼女の腸にコロニーを形成している微生物叢との共生関係性を維持しているのに対して、IBSを有する者は、この微生物叢−免疫相互作用の不均衡を有していることを示唆している。
[0084]本発明は、細菌抗原に対する抗体(例えば、細菌抗原抗体)の、並びに場合によって、個体から採取した生体試料で測定されたマスト細胞マーカー及び/又はストレス因子マーカーとの組合せでのそのレベルが、個体がIBSを有するかどうかを正確に予測することができるという驚くべき発見に一部基づいている。
[0085]1つの態様において、本発明は、特定の細菌抗原抗体マーカー及びマスト細胞マーカーの単独又は組合せでの存在又はレベルに基づく過敏性腸症候群の診断を補助するための方法及びアッセイを提供する。特定の実施形態において、これらの方法及びアッセイは、対象の血液及び/又は血清中の様々なIBSバイオマーカーの存在及びレベルの検出に関連する。好ましい実施形態において、方法は、細菌抗原(例えば、大腸菌FliC、フレキシナ赤痢菌FliC、カンピロバクター・ジェジュニFlaA、カンピロバクター・ジェジュニFlaB、大腸菌O157:H7FliC、大腸菌FrvX、大腸菌GabT、カンピロバクター・ジェジュニ81−045、カンピロバクター・ジェジュニ81−128及びカンピロバクター・ジェジュニ81−008、大腸菌Era、大腸菌FocA、大腸菌FrvX、大腸菌GabT、大腸菌YbaN、大腸菌YcdG、大腸菌YhgN、大腸菌YedK、大腸菌YidX、ラクトバチルス・アシドフィルス、Frc、ラクトバチルス・アシドフィルスEno、ラクトバチルス・ジョンソニイEFTu、バクテロイデス・フラジリスOmpA、プレボテラ属OmpA、ウェルシュ菌10bA、ウェルシュ菌SpA、フェカリス菌Sant、リステリア菌Osp)に対する少なくとも1つの抗体の、或いは対象からの血液及び/又は血清試料中の少なくとも1つのマスト細胞マーカー(β−トリプターゼ、ヒスタミン及びプロスタグランジンE2)との組合せでのその検出を含む。
[0086]1つの態様において、本発明は、いくつかの時点にわたる特定の細菌抗原抗体マーカー、マスト細胞マーカーの又はその組合せでの存在又はレベルに基づいた対象、症候群におけるIBSの進行をモニタリングする方法を提供する。特定の実施形態において、これらの方法及びアッセイは、複数の時点における対象の血液及び/又は血清中の様々なIBSバイオマーカーの存在及びレベルの検出並びにIBSバイオマーカーのレベルの差の比較に関連する。好ましい実施形態において、方法は、細菌抗原(例えば、大腸菌FliC、フレキシナ赤痢菌FliC、カンピロバクター・ジェジュニFlaA、カンピロバクター・ジェジュニFlaB、大腸菌O157:H7FliC、大腸菌FrvX、大腸菌GabT、カンピロバクター・ジェジュニ81−045、カンピロバクター・ジェジュニ81−128及びカンピロバクター・ジェジュニ81−008、大腸菌Era、大腸菌FocA、大腸菌FrvX、大腸菌GabT、大腸菌YbaN、大腸菌YcdG、大腸菌YhgN、大腸菌YedK、大腸菌YidX、ラクトバチルス・アシドフィルス、Frc、ラクトバチルス・アシドフィルスEno、ラクトバチルス・ジョンソニイEFTu、バクテロイデス・フラジリスOmpA、プレボテラ属OmpA、ウェルシュ菌10bA、ウェルシュ菌SpA、フェカリス菌Sant、リステリア菌Osp)に対する少なくとも1つの抗体の、或いは第1の時点及び第2の時点における対象からの血液及び/又は血清試料中の少なくとも1つのマスト細胞マーカー(β−トリプターゼ、ヒスタミン及びプロスタグランジンE2)との組合せでの検出を含む。場合によって、方法は、少なくとも1つのストレス因子マーカー(例えば、コルチゾール及びBDNF)の検出も含む。方法は、細菌抗原抗体(複数の抗体)と、細菌抗原抗体(複数の抗体)、マスト細胞マーカー(複数可)及び場合によってストレス因子マーカー(複数可)の組合せのレベル(複数可)を比較するステップをさらに含み、レベル(複数可)の差が対象におけるIBSの進行を示す。
[0087]いくつかの態様において、本発明は、
a)少なくとも1つの細菌抗原抗体の又は試料中の少なくとも1つのマスト細胞マーカーとの組合せでのその存在又はレベルを検出する診断マーカープロファイルを決定するステップと、
b)診断マーカープロファイルに基づくアルゴリズムを用いて試料をIBS試料又は非IBS試料と分類するステップと
を含む、個体からの試料がIBSに関連するかどうかを分類する方法を提供する。
[0088]いくつかの態様において、本発明は、試料のIBS試料又は非IBS試料としての分類を補助するための統計的アルゴリズムを用いる。他の態様において、本発明は、他の腸障害(例えば、IBD)を除外するための統計的アルゴリズムを用いる。
[0089]1つの態様において、本発明は、IBSを有する個体向けの療法の選択を補助するための方法及びアッセイをさらに提供する。
II.定義
[0090]本明細書で用いているように、以下の用語は、特別の定めのない限り、それらに帰する意味を有する。
[0091]「微生物叢」、「微生物相」及び「微生物バイオーム」という用語は、身体器官又は部分に一般的に生息する生存微生物の群集を意味する。消化管微生物叢のメンバーは、フィルミクテス(Firmicutes)、バクテロイデテス(Bacteroidetes)、プロテオバクテリア(Proteobacteria)、イプシロンプロテオバクテリア(Epsilonproteobacteria)、フソバクテリア(Fusobacteria)、アルファプロテオバクテリア(Alphaproteobacteria)、ベータプロテオバクテリア(Betaproteobacteria)、ガンマプロテオバクテリア(Gammaproteobacteria)、ベルミクロビウム(Verrumicrobia)、デルタプロテオバクテリア(Deltaproteobacteria)、分類されていないシアノバクテリア近縁及びアクチノバクテリア(Actinobacteria)の門の微生物;バクテロイデス(Bacteroides)、プレボテラ又はルミノコッカス(Ruminococcus)属の微生物;ビフィドバクテリア(Bifidobacteria)、腸内細菌科(Enterobacteraceae)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ベイロネラ属(Veillonella)、バクテロイデス属(Bacteroides)、連鎖球菌(Streptococcus)、アクチノマイシナエ(Actinomycinaea)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)、コリンセラ属(Collinsella)、クロストリジウム属(Clostridium)、腸球菌(Enterococcus)、コプロコッカス属(Coprococcus)、コプロバチルス属(Coprobacillus)、プロテオバクテリア属(Proteobacteria)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ルミノコッカス属(Ruminococcus)、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、ドレア属(Dorea)、アシネトバクター属(Acinetobacter)及び大腸菌の種の微生物;ルミノコッカス・トルクエス(Ruminococcus torques)、ルミノコッカス・トルクエス様(R.torques−like)、コリンセラ・アエロファシエンス様(Collinsella aerofaciens−like)、クロストリジウム・コクレアタム(Clostridium cocleatum)、ユーバクテリウム・レクタレ(Eubacterium rectale)、クロストリジウム・コッコイデス(Clostridium coccoides)、リノバトス・プロダクタタス(Rhinobatos productus)型の微生物を含むが、これらに限定されない。いくつかの例において、消化管微生物叢は、消化管の表面又は頂端部に位置する粘膜関連微生物叢、及び消化管の内腔に認められる内腔関連微生物叢を含む。
[0092]「過敏性腸症候群」及び「IBS」という用語は、一般的に明らかな構造異常の非存在下での腹痛、腹部不快感、腸パターンの変化、軟便又はより頻繁な排便、下痢及び便秘を含むが、これらに限定されない1つ又は複数の症状によって特徴づけられる機能性腸障害の群を含む。どの症状が優勢であるかによって、(1)下痢優勢型(IBS−D)、(2)便秘優勢型(IBS−C)及び(3)交替性便通パターンを有するIBS(IBS−A)の少なくとも3つの形のIBSが存在する。IBSは、症状の混合の形でも起こり得る。感染後IBS(IBS−PI)などのIBSの様々な臨床サブタイプも存在する。
[0093]「試料を変換すること」及び「バイオマーカーを変換すること」という用語は、本明細書で定義したようにマーカーを抽出するための又はマーカーを変化若しくは修飾するための試料の物理的及び/又は化学的変化を含む。マーカーのレベル又は濃度を測定するための試料又はマーカーの抽出、操作、化学的沈殿、ELISA、複合体化、免疫抽出、物理的又は化学的修飾はすべて、変換を構成する。変換ステップの前後で試料又はマーカーが同一でない限り、変化又は修飾は、変換である。
[0094]「バイオマーカー」又は「マーカー」という用語は、個体からの試料をIBS試料と分類するために或いは個体からの試料におけるIBS様症状を随伴する1つ又は複数の疾患又は障害を除外するために用いることができる生化学的マーカー、血清学的マーカー、遺伝マーカー、微生物マーカー又は他の臨床的若しくは超音波検査特性などの診断マーカーを含む。「バイオマーカー」又は「マーカー」という用語は、IBSをその様々な型又は臨床的サブタイプに分類するために用いることができる抗体マーカー、生化学的マーカー、血清学的マーカー、遺伝マーカー、ホルモンマーカー、微生物マーカー又は他の臨床的若しくは超音波検査特性などの分類マーカーも含む。本発明に用いるのに適する診断マーカーの非限定的な例は、以下に記載のものであり、細菌抗原に対する抗体、細菌抗原、フラジェリン、サイトカイン、増殖因子、ストレスホルモン、抗好中球抗体、抗サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)抗体、抗微生物抗体、抗組織トランスグルタミナーゼ(tTG)抗体、リポカリン、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)、組織メタロプロテアーゼ阻害物質(TIMPs)、アルファ−グロブリン、アクチン切断タンパク質、S100タンパク質、フィブリノペプチド、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、タチキニン、グレリン、ニューロテンシン、セロトニン、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)、セリンプロテアーゼ(例えば、β−トリプターゼ、エラスターゼ)、プロスタグランジン(例えば、PGE2)、ヒスタミン、C反応タンパク質(CRP)、ラクトフェリン、抗ラクトフェリン抗体、カルプロテクチン、ヘモグロビン、NOD2/CARD15、セロトニン再取込み輸送体(SERT)、トリプトファンヒドロキシラーゼ−1、5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)、ラクツロースなどを含む。好ましい実施形態において、本発明に用いるのに適する診断マーカーは、本明細書に記載のものであり、大腸菌FliC、フレキシナ赤痢菌FliC、カンピロバクター・ジェジュニFlaA、カンピロバクター・ジェジュニFlaB、大腸菌O157:H7FliC、大腸菌FrvX、大腸菌GabT、カンピロバクター・ジェジュニ81−045、カンピロバクター・ジェジュニ81−128及びカンピロバクター・ジェジュニ81−008、大腸菌Era、大腸菌FocA、大腸菌FrvX、大腸菌GabT、大腸菌YbaN、大腸菌YcdG、大腸菌YhgN、大腸菌YedK、大腸菌YidX、ラクトバチルス・アシドフィルス、Frc、ラクトバチルス・アシドフィルスEno、ラクトバチルス・ジョンソニイEFTu、バクテロイデス・フラジリスOmpA、プレボテラ属OmpA、ウェルシュ菌10bA、ウェルシュ菌SpA、フェカリス菌Sant、リステリア菌Osp及びそれらの混合物からなる群から選択される微生物叢抗原に結合する抗体を含むが、これらに限定されない。分類マーカーの例は、制限なしに、レプチン、SERT、トリプトファンヒドロキシラーゼ−1,5−HT、洞粘膜タンパク質8、ケラチン8、クラウジン8、ゾヌリン、コルチコトロピン放出ホルモン受容体1(CRHR1)、コルチコトロピン放出ホルモン受容体2(CRHR2)、β−トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2(PGE2)などを含む。いくつかの実施形態において、診断マーカーは、IBSをその様々な形態又は臨床サブタイプに分類するために用いることができる。他の実施形態において、分類マーカーは、試料をIBS試料と分類するために或いはIBS様症状を随伴する1つ又は複数の疾患又は障害を除外するために用いることができる。当業者は、本発明に用いるのに適する付加的な診断及び分類マーカーについて知っている。
[0095]「ストレス因子」又は「ストレスホルモン」という用語は、コルチゾール、コルチコトロフィン放出ホルモン、チロトロピン、コルチコトロピン放出因子(CRF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、セロトニン、ドパミン、グルタミン酸、ノルエフィネフリンなどを含む。
[0096]「推定値」という用語は、ロジスティック回帰モデルの推定される部分相関係数を意味する(図4参照)。
[0097]「生体試料」は、個体から得られた生物学的検体を含む。本発明において用いる適切な試料は、制限なしに、全血、血漿、血清、唾液、尿、便(すなわち、糞便)、涙液及び他の体液又は小腸若しくは結腸試料などの組織試料(すなわち、生検材料)並びにその細胞抽出物(例えば、赤血球抽出物)を含む。好ましい実施形態において、試料は、血液、血漿又は血清試料である。より好ましい実施形態において、試料は、血清試料である。特定の例において、「試料」という用語は、血液、身体組織、血清、リンパ液、リンパ節組織、脾臓組織、骨髄又は1つ若しくは複数のこれらの組織から得られた免疫グロブリン濃縮画分を含むが、これらに限定されない。血清、唾液及び尿などの試料の使用は、当技術分野で周知である(例えば、Hashidaら、J. Clin. Lab. Anal.、11巻、267〜86頁(1977年))。当業者は、血清及び血液試料などの試料は、マーカーレベルの解析の前に希釈することができることを理解する。
[0098]「個体」、「対象」又は「患者」という用語は、一般的にヒトを意味するが、例えば、他の霊長類、げっ歯類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ブタなどを含む他の動物をも意味する。
[0099]「分類すること」という用語は、疾患状態を有する試料を「関連付けること」又は「類別すること」を含む。特定の例において、「分類すること」は、統計的証拠、経験的証拠又は両方に基づいている。特定の実施形態において、分類する方法及びシステムは、既知の疾患状態を有する試料のいわゆる訓練セットを使用する。確立されたならば、訓練データセットは、試料の未知の疾患状態を分類するために未知試料を比較する特徴としての基準、モデル又はテンプレートとしての役割を果たす。特定の例において、試料を分類することは、試料の疾患状態を診断することに類似している。特定の他の例において、試料を分類することは、試料の疾患状態と他の疾患状態とを区別することに類似している。
[0100]本明細書で用いているように、「プロファイル」という用語は、IBSなどの疾患又は障害に関連する独特の特徴又は特性を表すあらゆるデータの組を含む。該用語は、試料中の1つ又は複数の診断マーカーを分析する「診断マーカープロファイル」、個体が経験している又は経験した1つ又は複数のIBSに関連する臨床的因子(すなわち、症状)を特定する「症状プロファイル」及びその組合せを包含する。「症状プロファイル」は、IBSに関連する1つ又は複数の症状の存在、重症度、頻度及び/又は持続時間を表す1組のデータを含み得る。例えば、「診断マーカープロファイル」は、IBSに関連する1つ又は複数の診断マーカーの存在又はレベルを表す1組のデータを含み得る。
[0101]いくつかの実施形態において、上述の1つ又は複数の診断マーカー及び/又は診断プロファイルを測定するためのパネルは、試料をIBS試料又は非IBS試料と分類するために構築し、用いることができる。当業者は、複数の診断マーカーの存在又はレベルを、例えば、個体の試料のアリコート又は希釈物を用いて同時に又は連続的に決定することができることを理解する。特定の例において、個体の試料中の特定の診断マーカーのレベルが比較試料(例えば、正常、GI対照、IBD及び/又はセリアック病試料)又は試料の集団中の同じマーカーのレベルより少なくとも約10%、15%、20%、25%、50%、75%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、600%、700%、800%、900%又は1000%大きい(例えば、正常、GI対照、IBD及び/又はセリアック病試料の比較集団中の同じマーカーのレベルの中央値より大きい)場合、個体の試料中の特定の診断マーカーのレベルは、上昇していると考えられる。特定の他の例において、個体の試料中の特定の診断マーカーのレベルが比較試料(例えば、正常、GI対照、IBD及び/又はセリアック病試料)又は試料の集団中の同じマーカーのレベルより少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%小さい(例えば、正常、GI対照、IBD及び/又はセリアック病試料の比較集団中の同じマーカーのレベルの中央値より小さい)場合、個体の試料中の特定の診断マーカーのレベルは、低下していると考えられる。
[0102]本明細書で用いているように、「実質的に同じアミノ酸配列」という用語は、天然に存在するアミノ酸配列と類似しているが、同一でないアミノ酸配列を含む。例えば、天然に存在するペプチド、ポリペプチド又はタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するアミノ酸配列は、修飾された配列が天然に存在するペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の免疫反応性などの少なくとも1つの生物学的活性を保持するならば、天然に存在するペプチド、ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列と比べてアミノ酸付加、欠失又は置換などの1つ又は複数の修飾を有し得る。アミノ酸配列間の実質的類似性の比較は、約6〜100残基、好ましくは約10〜100残基、より好ましくは約25〜35残基を用いて通常実施する。本発明のペプチド、ポリペプチド又はタンパク質、或いはその断片の特に有用な修飾は、例えば、安定性の増大を付与する修飾である。1つ又は複数のD−アミノ酸の組み込みは、ポリペプチド又はポリペプチド断片の安定性の増大に有用な修飾である。同様に、リシン残基の欠失又は置換は、ポリペプチド又はポリペプチド断片を分解から保護することにより安定性を増大させ得る。
[0103]「複合体」、「免疫複合体」、「コンジュゲート」及び「免疫コンジュゲート」という用語は、抗体又は抗体断片に結合した(例えば、非共有結合手段により)ペプチド又は抗原を含むが、これらに限定されない。
[0104]「IBSの進行及び退行をモニタリングすること」という用語は、個体の疾患状態(例えば、IBSの存在又は重症度)を判定するための本発明の方法、システム及びコードの使用を含む。いくつかの実施形態において、本発明の方法、システム及びコードは、例えば、診断マーカーの解析及び/又はIBSに関連する症状の同定に基づいてIBSが個体において速やか又は徐々に進行する可能性を判定することによりIBSの進行を予測するために用いることができる。他の実施形態において、本発明の方法、システム及びコードは、例えば、診断マーカーの解析及び/又はIBSに関連する症状の同定に基づいてIBSが個体において速やか又は徐々に退行する可能性を判定することによりIBSの退行を予測するために用いることができる。
[0105]「細菌抗原抗体マーカープロファイル」という用語は、個体の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27又はそれ以上のマーカー(複数可)を含み、マーカー(複数可)は、大腸菌FliC、フレキシナ赤痢菌FliC、カンピロバクター・ジェジュニFlaA、カンピロバクター・ジェジュニFlaB、大腸菌O157:H7FliC、大腸菌FrvX、大腸菌GabT、カンピロバクター・ジェジュニ81−045、カンピロバクター・ジェジュニ81−128及びカンピロバクター・ジェジュニ81−008、大腸菌Era、大腸菌FocA、大腸菌FrvX、大腸菌GabT、大腸菌YbaN、大腸菌YcdG、大腸菌YhgN、大腸菌YedK、大腸菌YidX、ラクトバチルス・アシドフィルス、Frc、ラクトバチルス・アシドフィルスEno、ラクトバチルス・ジョンソニイEFTu、バクテロイデス・フラジリスOmpA、プレボテラ属OmpA、ウェルシュ菌10bA、ウェルシュ菌SpA、フェカリス菌Sant、リステリア菌Osp等などの細菌抗原を認識する(例えば、それに特異的に結合して、複合体を形成する)抗体などであるが、これに限定されない細菌抗原抗体マーカーであり得る。統計解析は、細菌抗原抗体マーカー(複数可)のレベルを細菌抗原抗体マーカープロファイルに変換し得る。いくつかの例において、統計解析は、四分位数スコアであり、マーカーのそれぞれの四分位数スコアを合計して、四分位数和スコアを作出することができる。1つの態様において、単一学習統計分類子システム(a single learning statistical classifier system)を含む統計処理を細菌抗原抗体マーカープロファイルのデータセットに適用して、細菌抗原抗体マーカープロファイルに基づき試料をIBS試料又は非IBS試料(例えば、健常対照試料)と分類する、統計学による決定をもたらし、細菌抗原抗体マーカープロファイルは、少なくとも1つの細菌抗原抗体マーカーのレベルを示している。
[0106]「マスト細胞マーカープロファイル」という用語は、個体の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のマーカー(複数可)を含み、マーカー(複数可)は、β−トリプターゼ、ヒスタミン及びプロスタグランジンE2などであるが、これらに限定されないマスト細胞マーカーであり得る。統計解析は、マスト細胞マーカー(複数可)のレベルをマスト細胞マーカープロファイルに変換する。いくつかの例において、統計解析は、四分位数スコアであり、マーカーのそれぞれの四分位数スコアを合計して、四分位数和スコアを作出することができる。1つの態様において、単一学習統計分類子システムを含む統計処理をマスト細胞マーカープロファイルのデータセットに適用して、マスト細胞マーカーに基づき試料をIBS試料又は非IBS試料と分類する、統計学による決定をもたらし、マスト細胞マーカープロファイルは、少なくとも1つの細菌抗原抗体マーカーのレベルを示している。
[0107]四分位解析において、データの範囲を4つの等しい部分に分割する3つの数(値)が存在する。第1四分位数(「下側四分位数」とも呼ぶ)は、それより下に下部データの25パーセントがある数である。第2四分位数(「中央四分位数」)は、範囲を中間に分け、それより下にデータの50パーセントを有する。第3四分位数(「上側四分位数」とも呼ぶ)は、それより下にデータの75パーセント及びそれより上にデータの上位25パーセントを有する。非限定的な例として、四分位解析は、第1四分位数におけるマーカーレベル(<25%)に1の値を割り当て、第2四分位数におけるマーカーレベル(25〜50%)に2の値を割り当て、第3四分位数におけるマーカーレベル(51〜<75%)に3の値を割り当て、第4四分位数におけるマーカーレベル(75〜100%)に4の値を割り当てるように、抗体又は本明細書に記載の他のタンパク質などのマーカーの濃度レベルに適用することができる。
[0108]本明細書で用いているように、「四分位数和スコア」又は「QSS」は、対象のマーカーのすべての四分位数スコアの和を含む。非限定的な例として、6種のマーカーのパネル(例えば、細菌抗原抗体マーカー及び/又はマスト細胞マーカー)の四分位数和スコアは、6〜24の範囲にある可能性があり、この場合、マーカーの存在若しくは非存在、又はマーカーのレベルに基づいて、個々のマーカーのそれぞれに1〜4の四分位数スコアが割り当てられる。
[0109]「統計アルゴリズム」又は「統計解析」という用語は、学習統計分類子システムを含む。いくつかの例において、学習統計分類子システムは、ランダムフォレスト、分類及び回帰木、ブースト木、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、一般カイ二乗自動相互作用検出器モデル、相互作用木、多変量適応型回帰スプライン、機械学習分類子並びにその組合せからなる群から選択される。特定の例において、統計アルゴリズムは、単一学習統計分類子システムを含む。他の実施形態において、統計アルゴリズムは、少なくとも2つの学習統計分類子システムの組合せを含む。いくつかの例において、少なくとも2つの学習統計分類子システムを相前後して適用する。本発明に用いるのに適する統計アルゴリズム及び解析の非限定的な例は、その開示がすべての目的のために全体として参照により本明細書に組み込まれる、2011年10月18日に出願した国際出願PCT/US2011/056777に記載されている。
[0110]「診断モデル」という用語は、細菌抗原抗体マーカープロファイル、マスト細胞マーカープロファイル及びその組合せを含む。好ましい態様において、後ろ向き解析は、既知の合併症を含む既知の疾患転帰及び実施された外科的処置並びに健常対照のコホートについて行う。1つの態様において、回帰分析(例えば、ロジスティック回帰)は、診断モデルを発展させるために1つ若しくは複数の細菌抗原抗体マーカーのレベル及び/又は1つ若しくは複数のマスト細胞マーカーのレベルについて実施することができる。
III.実施形態の説明
A.過敏性腸症候群の診断を補助する方法
[0111]1つの態様において、本発明は、対象における過敏性腸症候群(IBS)の診断を補助する方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、
a)対象から採取した生体試料中の細菌抗原抗体マーカーのアレイのレベルを測定するステップと、
b)細菌抗原抗体マーカーのアレイの測定されたレベルに統計解析を適用して、細菌抗原抗体マーカープロファイルを作出するステップと、
c)細菌抗原抗体マーカープロファイルを診断モデルと比較して、個体が健常対照であることと比較してIBSを有する可能性の増大を有するかどうかを判定するステップと
を含む。
[0112]いくつかの実施形態において、細菌抗原抗体マーカーは、細菌抗原に対する抗体であり、細菌抗原は、EcFliC、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcOFliC、CjGT−A、Cjdmh、CjCgtA、SeFljB、EcEra、EcFocA、EcFrvX、EcGabT、EcYbaN、EcYcdG、EcYhgN、EcYedK、EcYidX、LaFrc、LaEno、LjEFTu、BfOmpA、PrOmpA、Cp10bA、CpSpA、EfSant、LmOsp、及びその組合せからなる群から選択される。
[0113]いくつかの実施形態において、統計解析は、細菌抗原抗体マーカーのアレイのレベルを細菌抗原抗体マーカープロファイルに変換する。
[0114]いくつかの実施形態において、細菌抗原抗体マーカープロファイルは、複数の細菌抗原抗体マーカーの解析に基づく経験的に得られたプロファイルを含む。1つの態様において、マーカーの濃度又はそれらの測定濃度値をコンピュータ搭載のアルゴリズムにより指数に変換する。特定の態様において、プロファイルは、生物学的データを数字で表す、合成又はヒト由来の出力、スコア又はカットオフ値(複数可)である。プロファイルは、臨床上の決定を判定する又は下す又は下す補助をするために用いることができる。細菌抗原抗体マーカープロファイルは、時間の経過にわたって複数回測定することができる。1つの態様において、アルゴリズムは、既知の試料を用いて訓練し、その後、既知の同一性の試料を用いて妥当性確認することができる。
[0115]いくつかの実施形態において、診断モデルは、細菌抗原抗体モデルを含む。いくつかの実施形態において、診断モデルは、IBSの臨床サブタイプ及び健常対照の既知の転帰を有する後ろ向きコホートを用いて確立する。
[0116]いくつかの実施形態において、細菌抗原抗体モデルは、後ろ向きコホートにおいて決定された1つ又は複数の細菌抗原抗体マーカーのレベルにロジスティック回帰分析を適用することにより得られる。
[0117]いくつかの実施形態において、方法は、
d)対象から採取した生体試料中のマスト細胞マーカーのアレイのレベルを測定するステップと、
e)マスト細胞マーカーのアレイの測定されたレベルに統計解析を適用して、マスト細胞マーカープロファイルを作出するステップと、
f)マスト細胞マーカープロファイルを診断モデルと比較して、個体が健常対照であることと比較してIBSを有する可能性の増大を有するかどうかを判定するステップと
をさらに含み、及び/又は代わりに含む。
[0118]いくつかの実施形態において、マスト細胞マーカーのアレイは、マスト細胞マーカーのアレイは、β−トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2及びその組合せからなる群から選択される。
[0119]いくつかの実施形態において、統計解析は、マスト細胞マーカーのアレイのレベルをマスト細胞プロファイルに変換する。
[0120]いくつかの実施形態において、方法は、
d)対象から採取した生体試料中のストレスホルモンマーカーのアレイのレベルを測定するステップと、
e)ストレスホルモンマーカーのアレイの測定されたレベルに統計解析を適用して、ストレスホルモンマーカーのプロファイルを作出するステップと、
f)ストレスホルモンマーカーのプロファイルを診断モデルと比較して、個体が健常対照であることと比較してIBSを有する可能性の増大を有するかどうかを判定するステップと
をさらに含み、及び/又は代わりに含む。
[0121]いくつかの実施形態において、ストレスホルモンマーカーのアレイは、コルチゾール、BDNF、セロトニン、CRF、ACTH及びその組合せからなる群から選択される。
[0122]いくつかの実施形態において、統計解析は、マスト細胞マーカーのアレイのレベルをストレスホルモンプロファイルに変換する。
[0123]いくつかの実施形態において、診断モデルは、IBSの臨床サブタイプ及び健常対照の既知の転帰を有する後ろ向きコホートを用いて確立する。いくつかの実施形態において、診断モデルは、細菌抗原抗体マーカーモデル、マスト細胞マーカーモデル、ストレスホルモンマーカーモデル又はその組合せを含む。
[0124]いくつかの実施形態において、細菌抗原抗体マーカーモデルは、後ろ向きコホートにおいて決定された1つ又は複数の細菌抗原抗体マーカーのレベルにロジスティック回帰分析を適用することにより得られる。
[0125]いくつかの実施形態において、マスト細胞マーカーモデルは、後ろ向きコホートにおいて決定された1つ又は複数のマスト細胞マーカーのレベルにロジスティック回帰分析を適用することにより得られる。
[0126]いくつかの実施形態において、ストレスホルモンモデルは、後ろ向きコホートにおいて決定された1つ又は複数のストレスホルモンマーカーのレベルにロジスティック回帰分析を適用することにより得られる。
[0127]いくつかの実施形態において、方法は、IBSの診断をIBS便秘型(IBS−C)、IBS下痢型(IBS−D)、IBS混合型(IBS−M)、IBS交替型(IBS−A)又は感染後IBS(IBS−PI)と分類するステップをさらに含む。
[0128]1つの態様において、本発明は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27種又はそれ以上の細菌抗原抗体マーカーのレベルを決定することにより対象における過敏性腸症候群の診断を補助する方法であって、細菌抗原抗体マーカー(複数可)が表1及び2に示す細菌抗原の少なくとも1つを認識する方法を提供する。好ましい実施形態において、本明細書で提供する方法は、EcFliC、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcOFliC、CjGT−A、Cjdmh、CjCgtA、SeFljB、EcEra、EcFocA、EcFrvX、EcGabT、EcYbaN、EcYcdG、EcYhgN、EcYedK、EcYidX、LaFrc、LaEno、LjEFTu、BfOmpA、PrOmpA、Cp10bA、CpSpA、EfSant、LmOsp、及びその組合せからなる群から選択される細菌抗原に対する抗体の検出に依拠する。
[0129]いくつかの実施形態において、対象における過敏性腸症候群(IBS)の診断を補助する方法は、少なくとも1つの細菌抗原抗体マーカーのレベルを決定するステップを含み、細菌抗原抗体マーカーは、EcFliC、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcOFliC、CjGT−A、Cjdmh、CjCgtA、SeFljB、EcEra、EcFocA、EcFrvX、EcGabT、EcYbaN、EcYcdG、EcYhgN、EcYedK、EcYidX、LaFrc、LaEno、LjEFTu、BfOmpA、PrOmpA、Cp10bA、CpSpA、EfSant、LmOsp、及びその組合せに対する抗体からなる群から選択される。
[0130]いくつかの実施形態において、対象におけるIBSの診断を補助する方法は、少なくとも2つの細菌抗原抗体マーカーのレベルを決定するステップを含み、細菌抗原抗体マーカーは、EcFliC、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcOFliC、CjGT−A、Cjdmh、CjCgtA、SeFljB、EcEra、EcFocA、EcFrvX、EcGabT、EcYbaN、EcYcdG、EcYhgN、EcYedK、EcYidX、LaFrc、LaEno、LjEFTu、BfOmpA、PrOmpA、Cp10bA、CpSpA、EfSant、LmOsp、及びその組合せに対する抗体からなる群から選択される。例えば、EcFliC及びSfFliC;EcFliC及びCjFlaA;EcFliC及びCjFlaB;EcFliC及びEcOFliC;EcFliC及びCjGT−A;EcFliC及びCjdmh;EcFliC及びCjCgtA;EcFliC及びSeFljB;EcFliC及びEcEra;EcFliC及びEcFocA;EcFliC及びEcFrvX;EcFliC及びEcGabT;EcFliC及びEcYbaN;EcFliC及びEcYcdG;EcFliC及びEcYhgN;EcFliC及びEcYedK;EcFliC及びEcYidX;EcFliC及びLaFrc;EcFliC及びLaEno;EcFliC及びLjEFTu;EcFliC及びBfOmpA;EcFliC及びPrOmpA;EcFliC及びCp10bA;EcFliC及びCpSpA;EcFliC及びEfSant;EcFliC及びLmOsp;SfFliC及びCjFlaA;SfFliC及びCjFlaB;SfFliC及びEcOFliC;SfFliC及びCjGT−A;SfFliC及びCjdmh;SfFliC及びCjCgtA;SfFliC及びSeFljB;SfFliC及びEcEra;SfFliC及びEcFocA;SfFliC及びEcFrvX;SfFliC及びEcGabT;SfFliC及びEcYbaN;SfFliC及びEcYcdG;SfFliC及びEcYhgN;SfFliC及びEcYedK;SfFliC及びEcYidX;SfFliC及びLaFrc;SfFliC及びLaEno;SfFliC及びLjEFTu;SfFliC及びBfOmpA;SfFliC及びPrOmpA;SfFliC及びCp10bA;SfFliC及びCpSpA;SfFliC及びEfSant;SfFliC及びLmOsp;CjFlaA及びCjFlaB;CjFlaA及びEcOFliC;CjFlaA及びCjGT−A;CjFlaA及びCjdmh;CjFlaA及びCjCgtA;CjFlaA及びSeFljB;CjFlaA及びEcEra;CjFlaA及びEcFocA;CjFlaA及びEcFrvX;CjFlaA及びEcGabT;CjFlaA及びEcYbaN CjFlaA及び;CjFlaA及びEcYcdG;CjFlaA及びEcYhgN;CjFlaA及びEcYedK;CjFlaA及びEcYidX;CjFlaA及びLaFrc;CjFlaA及びLaEno;CjFlaA及びLjEFTu;BfOmpA;CjFlaA及びPrOmpA;CjFlaA及びCp10bA;CjFlaA及びCpSpA;CjFlaA及びEfSant;CjFlaA及びLmOsp;CjFlaB及びEcOFliC;CjFlaB及びCjGT−A;CjFlaB及びCjdmh;CjFlaB及びCjCgtA;CjFlaB及びSeFljB;CjFlaB及びEcEra;CjFlaB及びEcFocA;EcFrvX;CjFlaB及びEcGabT;CjFlaB及びEcYbaN;CjFlaB及びEcYcdG;CjFlaB及びEcYhgN;CjFlaB及びEcYedK;CjFlaB及びEcYidX;CjFlaB及びLaFrc;CjFlaB及びLaEno;CjFlaB及びLjEFTu;CjFlaB及びBfOmpA;CjFlaB及びPrOmpA;CjFlaB及びCp10bA;CjFlaB及びCpSpA;CjFlaB及びEfSant;CjFlaB及びLmOsp;EcOFliC及びCjGT−A;EcOFliC及びCjdmh;EcOFliC及びCjCgtA;EcOFliC及びSeFljB;EcOFliC及びEcEra;EcOFliC及びEcFocA;EcOFliC及びEcFrvX;EcOFliC及びEcGabT;EcOFliC及びEcYbaN;EcOFliC及びEcYcdG;EcOFliC及びEcYhgN;EcOFliC及びEcYedK;EcOFliC及びEcYidX;EcOFliC及びLaFrc;EcOFliC及びLaEno;EcOFliC及びLjEFTu;EcOFliC及びBfOmpA;EcOFliC及びPrOmpA;EcOFliC及びCp10bA;EcOFliC及びCpSpA;EcOFliC及びEfSant;EcOFliC及びLmOsp;CjGT−A及びCjdmh;CjGT−A及びCjCgtA;CjGT−A及びSeFljB;CjGT−A及びEcEra;CjGT−A及びEcFocA;CjGT−A及びEcFrvX;CjGT−A及びEcGabT;CjGT−A及びEcYbaN;CjGT−A及びEcYcdG;CjGT−A及びEcYhgN;CjGT−A及びEcYedK;CjGT−A及びEcYidX;CjGT−A及びLaFrc;CjGT−A及びLaEno;CjGT−A及びLjEFTu;CjGT−A及びBfOmpA;CjGT−A及びPrOmpA;CjGT−A及びCp10bA;CjGT−A及びCpSpA;CjGT−A及びEfSant;CjGT−A及びLmOsp;Cjdmh及びCjCgtA;SeFljB;Cjdmh及びEcEra;Cjdmh及びEcFocA;Cjdmh及びEcFrvX;Cjdmh及びEcGabT;Cjdmh及びEcYbaN;Cjdmh及びEcYcdG;Cjdmh及びEcYhgN;Cjdmh及びEcYedK;EcYidX;Cjdmh及びLaFrc;Cjdmh及びLaEno;Cjdmh及びLjEFTu;Cjdmh及びBfOmpA;Cjdmh及びPrOmpA;Cjdmh及びCp10bA;Cjdmh及びCpSpA;Cjdmh及びEfSant;Cjdmh及びLmOsp;CjCgtA及びSeFljB;CjCgtA及びEcEra;CjCgtA及びEcFocA;CjCgtA及びEcFrvX;CjCgtA及びEcGabT;CjCgtA及びEcYbaN;CjCgtA及びEcYcdG;CjCgtA及びEcYhgN;CjCgtA及びEcYedK;CjCgtA及びEcYidX;CjCgtA及びLaFrc;CjCgtA及びLaEno;CjCgtA及びLjEFTu;CjCgtA及びBfOmpA;CjCgtA及びPrOmpA;CjCgtA及びCp10bA;CjCgtA及びCpSpA;CjCgtA及びEfSant;CjCgtA及びLmOsp;SeFljB及びEcEra;SeFljB及びEcFocA;SeFljB及びEcFrvX;SeFljB及びEcGabT;SeFljB及びEcYbaN;SeFljB及びEcYcdG;SeFljB及びEcYhgN;SeFljB及びEcYedK;SeFljB及びEcYidX;SeFljB及びLaFrc;SeFljB及びLaEno;SeFljB及びLjEFTu;SeFljB及びBfOmpA;SeFljB及びPrOmpA;SeFljB及びCp10bA;SeFljB及びCpSpA;SeFljB及びEfSant;SeFljB及びLmOsp;EcEra及びEcFocA;EcEra及びEcFrvX;EcEra及びEcGabT;EcEra及びEcYbaN;EcEra及びEcYcdG;EcEra及びEcYhgN;EcEra及びEcYedK;EcEra及びEcYidX;EcEra及びLaFrc;EcEra及びLaEno;EcEra及びLjEFTu;EcEra及びBfOmpA;EcEra及びPrOmpA;EcEra及びCp10bA;EcEra及びCpSpA;EcEra及びEfSant;EcEra及びLmOsp;EcFocA及びEcFrvX;EcFocA及びEcGabT;EcFocA及びEcYbaN;EcFocA及びEcYcdG;EcFocA及びEcYhgN;EcFocA及びEcYedK;EcFocA及びEcYidX;EcFocA及びLaFrc;EcFocA及びLaEno;EcFocA及びLjEFTu;EcFocA及びBfOmpA;EcFocA及びPrOmpA;EcFocA及びCp10bA;EcFocA及びCpSpA;EcFocA及びEfSant;EcFocA及びLmOsp;EcFrvX及びEcGabT;EcFrvX及びEcYbaN;EcFrvX及びEcYcdG;EcFrvX及びEcYhgN;EcFrvX及びEcYedK;EcFrvX及びEcYidX;EcFrvX及びLaFrc;EcFrvX及びLaEno;EcFrvX及びLjEFTu;EcFrvX及びBfOmpA;EcFrvX及びPrOmpA;EcFrvX及びCp10bA;EcFrvX及びCpSpA;EcFrvX及びEfSant;EcFrvX及びLmOsp;EcGabT及びEcYbaN;EcGabT及びEcYcdG;EcGabT及びEcYhgN;EcGabT及びEcYedK;EcGabT及びEcYidX;EcGabT及びLaFrc;EcGabT及びLaEno;EcGabT及びLjEFTu;EcGabT及びBfOmpA;EcGabT及びPrOmpA;EcGabT及びCp10bA;EcGabT及びCpSpA;EcGabT及びEfSant;EcGabT及びLmOsp;EcYbaN及びEcYcdG;EcYbaN及びEcYhgN;EcYbaN及びEcYedK;EcYbaN及びEcYidX;EcYbaN及びLaFrc;EcYbaN及びLaEno;EcYbaN及びLjEFTu;EcYbaN及びBfOmpA;EcYbaN及びPrOmpA;EcYbaN及びCp10bA;EcYbaN及びCpSpA;EcYbaN及びEfSant;EcYbaN及びLmOsp;EcYcdG及びEcYhgN;EcYcdG及びEcYedK;EcYcdG及びEcYidX;EcYcdG及びLaFrc;EcYcdG及びLaEno;EcYcdG及びLjEFTu;EcYcdG及びBfOmpA;EcYcdG及びPrOmpA;EcYcdG及びCp10bA;EcYcdG及びCpSpA;EcYcdG及びEfSant;EcYcdG及びLmOsp;EcYhgN及びEcYedK;EcYhgN及びEcYidX;EcYhgN及びLaFrc;EcYhgN及びLaEno;EcYhgN及びLjEFTu;EcYhgN及びBfOmpA;EcYhgN及びPrOmpA;EcYhgN及びCp10bA;EcYhgN及びCpSpA;EcYhgN及びEfSant;EcYhgN及びLmOsp;EcYedK及びEcYidX;EcYedK及びLaFrc;EcYedK及びLaEno;EcYedK及びLjEFTu;EcYedK及びBfOmpA;EcYedK及びPrOmpA;EcYedK及びCp10bA;EcYedK及びCpSpA;EcYedK及びEfSant;EcYedK及びLmOsp;EcYidX及びLaFrc;EcYidX及びLaEno;EcYidX及びLjEFTu;EcYidX及びBfOmpA;EcYidX及びPrOmpA;EcYidX及びCp10bA;EcYidX及びCpSpA;EcYidX及びEfSant;EcYidX及びLmOsp;LaFrc及びLaEno;LaFrc及びLjEFTu;LaFrc及びBfOmpA;LaFrc及びPrOmpA;LaFrc及びCp10bA;LaFrc及びCpSpA;LaFrc及びEfSant;LaFrc及びLmOsp;LaEno及びLjEFTu;LaEno及びBfOmpA;LaEno及びPrOmpA;LaEno及びCp10bA;LaEno及びCpSpA;LaEno及びEfSant;LaEno及びLmOsp;LjEFTu及びBf
OmpA;LjEFTu及びPrOmpA;LjEFTu及びCp10bA;LjEFTu及びCpSpA;LjEFTu及びEfSant;LjEFTu及びLmOsp;BfOmpA及びPrOmpA;Cp10bA;CpSpA;EfSant;LmOsp;PrOmpA及びCp10bA;PrOmpA及びCpSpA;PrOmpA及びEfSant;PrOmpA及びLmOsp;Cp10bA及びCpSpA;Cp10bA及びEfSant;Cp10bA及びLmOsp;CpSpA及びEfSant;CpSpA及びLmOsp;及びEfSant及びLmOspに対する細菌抗原抗体などの、2つの細菌抗原抗体マーカーのレベルを測定することができる。
[0131]いくつかの実施形態において、対象における過敏性腸症候群(IBS)の診断を補助する方法は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26種、又はすべての27種の細菌抗原抗体マーカーのレベルを決定するステップを含み、細菌抗原抗体マーカーは、EcFliC、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcOFliC、CjGT−A、Cjdmh、CjCgtA、SeFljB、EcEra、EcFocA、EcFrvX、EcGabT、EcYbaN、EcYcdG、EcYhgN、EcYedK、EcYidX、LaFrc、LaEno、LjEFTu、BfOmpA、PrOmpA、Cp10bA、CpSpA、EfSant及びLmOspに対する抗体からなる群から選択される。
[0132]いくつかの実施形態において、方法は、
a)試料中に存在する細菌抗原抗体を細菌抗原抗体及び細菌抗原結合部分を含む複合体に変換するのに適する条件下で対象からの生体試料を細菌抗原抗体結合部分(例えば、マルチウエルプレート上の細菌抗原)と接触させるステップと、
b)複合体のレベルを決定し、それにより、試料中に存在する細菌抗原抗体のレベルを決定するステップと
を含む。
[0133]いくつかの実施形態において、方法は、c)試料中に存在する細菌抗原抗体のレベルを細菌抗原抗体の対照レベルと比較するステップをさらに含み、細菌抗原抗体のレベルが対象がIBSを有する可能性の増大を示す。
[0134]いくつかの実施形態において、細菌抗原抗体の対照レベルは、健常対照対象からの試料中の細菌抗原抗体のレベル又は健常対照対象のコホートからの試料中に存在する細菌抗原抗体の平均レベルである。他の実施形態において、細菌抗原抗体の対照レベルは、非IBS対象からの試料中の細菌抗原抗体のレベル又は非IBS対象のコホートからの試料中に存在する細菌抗原抗体の平均レベルである。対照レベルを決定するのに有用である罹患対象の非限定的な例は、非IBS消化管疾患を有する対象、炎症性腸疾患(IBD)を有する対象、潰瘍性大腸炎(UC)を有する対象、クローン病(CD)を有する対象、セリアック病を有する対象、胃食道逆流疾患(GERD)を有する対象、癌を有する対象、消化管の癌を有する対象、胃の癌を有する対象、小又は大腸の癌を有する対象などを含む。
[0135]いくつかの実施形態において、対照レベルは、個々の試料中に存在する細菌抗原抗体を細菌抗原抗体及び細菌抗原を含む複合体に変換するのに適する条件下で健常対照対象からの生体試料を細菌抗原(例えば、マルチウエルプレート上の)と接触させ、(b)複合体のレベルを決定し、それにより、個々の試料中に存在する細菌抗原抗体のレベルを決定することにより測定する。他の例において、対照レベルは、健常対照対象のコホートの試料から測定される複合体の平均レベルである。
[0136]いくつかの実施形態において、対照レベルと比べて、対象からの試料中の細菌抗原抗体の同様なレベルは、対象がIBSを有さない可能性の増大を示す。いくつかの実施形態において、対照レベルと比べて、対象からの試料中の細菌抗原抗体のレベルの差は、対象がIBSを有する可能性の増大を示す。
[0137]より好ましい実施形態において、方法は、β−トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2(PGE2)及びその組合せから選択される少なくとも1つのマスト細胞マーカーの検出をさらに含む。β−トリプターゼ、ヒスタミン及びプロスタグランジンE2(PGE2)を検出する方法は、それらの開示がすべての目的のために全体として参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,114,616号及び米国特許出願公開第2012/244558号に詳細に記載されている。
[0138]いくつかの実施形態において、対象におけるIBSの診断を補助する方法は、少なくとも1つのマスト細胞マーカーのレベルを決定するステップを含み、マスト細胞マーカーは、β−トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2及びその組合せからなる群から選択される。他の実施形態において、対象におけるIBSの診断を補助する方法は、少なくとも2つのマスト細胞マーカーのレベルを決定するステップを含み、マスト細胞マーカーは、β−トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2及びその組合せからなる群から選択される。例えば、方法は、少なくとも2つのマスト細胞マーカー、例えば、β−トリプターゼ及びヒスタミン、β−トリプターゼ及びプロスタグランジンE2並びにβ−トリプターゼ及びプロスタグランジンE2のレベルを測定するステップを含む。さらに他の実施形態において、対象におけるIBSの診断を補助する方法は、本明細書に記載の3つすべてのマスト細胞マーカーのレベルを決定するステップを含む。
[0139]特定の実施形態において、β−トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2(PGE2)及びその組合せから選択される少なくとも1つのマスト細胞マーカーと併せた、EcFliC、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcOFliC、CjGT−A、Cjdmh、CjCgtA、SeFljB、EcEra、EcFocA、EcFrvX、EcGabT、EcYbaN、EcYcdG、EcYhgN、EcYedK、EcYidX、LaFrc、LaEno、LjEFTu、BfOmpA、PrOmpA、Cp10bA、CpSpA、EfSant、LmOsp、及びその組合せからなる群から選択される細菌抗原と複合化する、少なくとも1つの細菌抗原抗体マーカーのレベルを決定することにより対象における過敏性腸症候群の診断を補助する方法を提供する。
[0140]いくつかの実施形態において、対象におけるIBSの診断を予測する方法は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27種の、EcFliC、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcOFliC、CjGT−A、Cjdmh、CjCgtA、SeFljB、EcEra、EcFocA、EcFrvX、EcGabT、EcYbaN、EcYcdG、EcYhgN、EcYedK、EcYidX、LaFrc、LaEno、LjEFTu、BfOmpA、PrOmpA、Cp10bA、CpSpA、EfSant及びLmOspに対する抗体からなる群から選択される、細菌抗原抗体マーカー(複数可)、並びにβ−トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2及びその組合せからなる群から選択される、少なくとも1、2、3種のマスト細胞マーカー(複数可)のレベルを決定するステップを含む。いくつかの例において、方法は、細菌抗原抗体マーカー:マスト細胞マーカーの組合せ、例えば、それぞれ1:1(すなわち、EcFliC:β−トリプターゼ)、1:2、1:3、2:1、2:2、2:3、3:1、3:2、3:3、4:1、4:2、4:3、5:1、5:2、5:3、6:1、6:2、6:3、7:1、7:2、7:3、8:1、8:2、8:3、9:1、9:2、9:3、10:1、10:2、10:3、11:1、11:2、11:3、12:0、12:1、12:2、12:3、13:0、13:1、13:2、13:3、14:1、14:2、14:3、15:1、15:2、15:3、6:1、16:2、16:3、17:1、17:2、17:3、18:1、18:2、18:3、19:1、19:2、19:3、20:1、20:2、20:3、21:1、21:2、21:3、22:1、22:2、22:3、23:1、23:2、23:3、24:1、24:2、24:3、25:1、25:2、25:3、26:1、26:2、26:3、27:1、27:2、及び27:3の細菌抗原抗体マーカー:マスト細胞マーカーのレベルを決定するステップを含む。
[0141]他の態様において、本発明は、IBSの診断をIBS便秘型(IBS−C)、IBS下痢型(IBS−D)、IBS混合型(IBS−M)、サブタイプ分類不能IBS(IBS−U)、IBS交替型(IBS−A)又は感染後IBS(IBS−PI)と分類する方法を提供する。
[0142]いくつかの実施形態において、対象におけるIBSの診断を補助する方法は、少なくとも1つのストレス因子マーカーのレベルを決定するステップを含み、ストレス因子マーカーは、コルチゾール、BDNF、セロトニン、CRF、ACTH及びその組合せからなる群から選択される。他の実施形態において、対象におけるIBSの診断を補助する方法は、少なくとも2つのストレス因子マーカーのレベルを決定するステップを含み、ストレス因子マーカーは、コルチゾール、BDNF、セロトニン、CRF、ACTH及びその組合せからなる群から選択される。例えば、コルチゾール及びBDNF、コルチゾール及びセロトニン、コルチゾール及びCRF、コルチゾール及びACTH、BDNF及びセロトニン、BDNF及びCRF、BDNF及びACTH、セロトニン及びCRF、セロトニン及びACTH並びにCRF及びACTHなどの2つのストレス因子マーカーのレベルを決定する。さらに他の実施形態において、対象におけるIBSの診断を補助する方法は、少なくとも3、4又はすべての5種のストレス因子マーカーのレベルを決定するステップを含み、ストレス因子マーカーは、コルチゾール、BDNF、セロトニン、CRF、ACTH及びその組合せからなる群から選択される。
[0143]いくつかの実施形態において、対象におけるIBSの診断を予測する方法は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27種の、EcFliC、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcOFliC、CjGT−A、Cjdmh、CjCgtA、SeFljB、EcEra、EcFocA、EcFrvX、EcGabT、EcYbaN、EcYcdG、EcYhgN、EcYedK、EcYidX、LaFrc、LaEno、LjEFTu、BfOmpA、PrOmpA、Cp10bA、CpSpA、EfSant及びLmOspに対する抗体からなる群から選択される、細菌抗原抗体マーカー(複数可)、並びにβ−トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2及びその組合せからなる群から選択される、少なくとも1、2、3種のマスト細胞マーカー(複数可)のレベルを決定するステップを含む。いくつかの例において、方法は、細菌抗原抗体マーカー:マスト細胞マーカーの組合せ、例えば、それぞれ1:1(すなわち、EcFliC:β−トリプターゼ)、1:2、1:3、2:1、2:2、2:3、3:1、3:2、3:3、4:1、4:2、4:3、5:1、5:2、5:3、6:1、6:2、6:3、7:1、7:2、7:3、8:1、8:2、8:3、9:1、9:2、9:3、10:1、10:2、10:3、11:1、11:2、11:3、12:0、12:1、12:2、12:3、13:0、13:1、13:2、13:3、14:1、14:2、14:3、15:1、15:2、15:3、6:1、16:2、16:3、17:1、17:2、17:3、18:1、18:2、18:3、19:1、19:2、19:3、20:1、20:2、20:3、21:1、21:2、21:3、22:1、22:2、22:3、23:1、23:2、23:3、24:1、24:2、24:3、25:1、25:2、25:3、26:1、26:2、26:3、27:1、27:2、及び27:3の細菌抗原抗体マーカー:マスト細胞マーカーのレベルを決定するステップを含む。
[0144]他の実施形態において、対象におけるIBSの診断を予測する方法は、本明細書に記載の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27種の細菌抗原抗体マーカー(複数可)、本明細書に記載の少なくとも1、2、3種のマスト細胞マーカー(複数可)及び場合によって本明細書に記載の少なくとも1、2、3、4又は5種のストレス因子マーカー(複数可)のレベルを決定するステップを含む。例えば、方法は、細菌抗原抗体マーカー:マスト細胞マーカー:ストレス細胞マーカーの組合せ、例えば、それぞれ1:1:1(すなわち、EcFliC:β−トリプターゼ:コルチゾール)、1:1:2、1:1:3、1:1:4、1:1:5、1:2:1、1:2:2、1:2:3、1:2:4、1:2:5、1:3:1、1:3:2、1:3:3、1:3:4、1:3:5、2:1:1、2:1:2、2:1:3、2:1:4、2:1:5、2:2:1、2:2:2、2:2:3、2:2:4、2:2:5、2:3:1、2:3:2、2:3:3、2:3:4、2:3:5、3:1:1、3:1:2、3:1:3、3:1:4、3:1:5、3:2:1、3:2:2、3:2:3、3:2:4、3:2:5、3:3:1、3:3:2、3:3:3、3:3:4、3:3:5、4:1:1、4:1:2、4:1:3、4:1:4、4:1:5、4:2:1、4:2:2、4:2:3、4:2:4、4:2:5、4:3:1、4:3:2、4:3:3、4:3:4、4:3:5、5:1:1、5:1:2、5:1:3、5:1:4、5:1:5、5:2:1、5:2:2、5:2:3、5:2:4、5:2:5、5:3:1、5:3:2、5:3:3、5:3:4、5:3:5、6:1:1、6:1:2、6:1:3、6:1:4、6:1:5、6:2:1、6:2:2、6:2:3、6:2:4、6:2:5、6:3:1、6:3:2、6:3:3、6:3:4、6:3:5、7:1:1、7:1:2、7:1:3、7:1:4、7:1:5、7:2:1、7:2:2、7:2:3、7:2:4、7:2:5、7:3:1、7:3:2、7:3:3、7:3:4、7:3:5、8:1:1、8:1:2、8:1:3、8:1:4、8:1:5、8:2:1、8:2:2、8:2:3、8:2:4、8:2:5、8:3:1、8:3:2、8:3:3、8:3:4、8:3:5、9:1:1、9:1:2、9:1:3、9:1:4、9:1:5、9:2:1、9:2:2、9:2:3、9:2:4、9:2:5、9:3:1、9:3:2、9:3:3、9:3:4、9:3:5、10:1:1、10:1:2、10:1:3、10:1:4、10:1:5、10:2:1、10:2:2、10:2:3、10:2:4、10:2:5、10:3:1、10:3:2、10:3:3、10:3:4、10:3:5、11:1:1、11:1:2、11:1:3、11:1:4、11:1:5、11:2:1、11:2:2、11:2:3、11:2:4、11:2:5、11:3:1、11:3:2、11:3:3、11:3:4、11:3:5、12:1:1、12:1:2、12:1:3、12:1:4、12:1:5、12:2:1、12:2:2、12:2:3、12:2:4、12:2:5、12:3:1、12:3:2、12:3:3、12:3:4、12:3:5、13:1:1、13:1:2、13:1:3、13:1:4、13:1:5、13:2:1、13:2:2、13:2:3、13:2:4、13:2:5、13:3:1、13:3:2、13:3:3、13:3:4、13:3:5、15:1:1、15:1:2、15:1:3、15:1:4、15:1:5、15:2:1、15:2:2、15:2:3、15:2:4、15:2:5、15:3:1、15:3:2、15:3:3、15:3:4、15:3:5、16:1:1、16:1:2、16:1:3、16:1:4、16:1:5、16:2:1、16:2:2、16:2:3、16:2:4、16:2:5、16:3:1、16:3:2、16:3:3、16:3:4、16:3:5、17:1:1、17:1:2、17:1:3、17:1:4、17:1:5、17:2:1、17:2:2、17:2:3、17:2:4、17:2:5、17:3:1、17:3:2、17:3:3、17:3:4、17:3:5、18:1:1、18:1:2、18:1:3、18:1:4、18:1:5、18:2:1、18:2:2、18:2:3、18:2:4、18:2:5、18:3:1、18:3:2、18:3:3、18:3:4、18:3:5、19:1:1、19:1:2、19:1:3、19:1:4、19:1:5、19:2:1、19:2:2、19:2:3、19:2:4、19:2:5、19:3:1、19:3:2、19:3:3、19:3:4、19:3:5、20:1:1、20:1:2、20:1:3、20:1:4、20:1:5、20:2:1、20:2:2、20:2:3、20:2:4、20:2:5、20:3:1、20:3:2、20:3:3、20:3:4、20:3:5、21:1:1、21:1:2、21:1:3、21:1:4、21:1:5、21:2:1、21:2:2、21:2:3、21:2:4、21:2:5、21:3:1、21:3:2、21:3:3、21:3:4、21:3:5、22:1:1、22:1:2、22:1:3、22:1:4、22:1:5、22:2:1、22:2:2、22:2:3、22:2:4、22:2:5、22:3:1、22:3:2、22:3:3、22:3:4、22:3:5、23:1:1、23:1:2、23:1:3、23:1:4、23:1:5、23:2:1、23:2:2、23:2:3、23:2:4、23:2:5、23:3:1、23:3:2、23:3:3、23:3:4、23:3:5、24:1:1、24:1:2、24:1:3、24:1:4、24:1:5、24:2:1、24:2:2、24:2:3、24:2:4、24:2:5、24:3:1、24:3:2、24:3:3、24:3:4、24:3:5、25:1:1、25:1:2、25:1:3、25:1:4、25:1:5、25:2:1、25:2:2、25:2:3、25:2:4、25:2:5、25:3:1、25:3:2、25:3:3、25:3:4、25:3:5、26:1:1、26:1:2、26:1:3、26:1:4、26:1:5、26:2:1、26:2:2、26:2:3、26:2:4、26:2:5、26:3:1、26:3:2、26:3:3、26:3:4、26:3:5、27:1:1、27:1:2、27:1:3、27:1:4、27:1:5、27:2:1、27:2:2、27:2:3、27:2:4、27:2:5、27:3:1、27:3:2、27:3:3、27:3:4、及び27:3:5の細菌抗原抗体マーカー:マスト細胞マーカー:ストレス細胞マーカーのレベルを決定するステップを含む。
[0145]他の態様において、本発明は、a)第1の時点に採取した第1の生体試料中の、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27種又はそれ以上の、EcFliC、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcOFliC、CjGT−A、Cjdmh、CjCgtA、SeFljB、EcEra、EcFocA、EcFrvX、EcGabT、EcYbaN、EcYcdG、EcYhgN、EcYedK、EcYidX、LaFrc、LaEno、LjEFTu、BfOmpA、PrOmpA、Cp10bA、CpSpA、EfSant、LmOsp及びその組合せからなる群から選択される細菌抗原を認識する、細菌抗原抗体マーカーのレベルを決定するステップと、b)第2の時点に採取した第2の生体試料中の細菌抗原抗体マーカーのレベルを決定するステップと、c)第1の試料中に存在する細菌抗原抗体マーカーのレベルを第2の試料中に存在する細菌抗原抗体マーカーのレベルと比較するステップとにより対象における過敏性腸症候群の進行又は退行をモニタリングする方法であって、細菌抗原抗体マーカーのレベルの差が対象におけるIBSの進行を示す、方法を提供する。
[0146]いくつかの実施形態において、対象における過敏性腸症候群の進行又は退行をモニタリングする方法は、a)第1の時点における第1の試料中のβ−トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2(PGE2)及びその組合せから選択される少なくとも1つのマスト細胞マーカーと併せた、EcFliC、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcOFliC、CjGT−A、Cjdmh、CjCgtA、SeFljB、EcEra、EcFocA、EcFrvX、EcGabT、EcYbaN、EcYcdG、EcYhgN、EcYedK、EcYidX、LaFrc、LaEno、LjEFTu、BfOmpA、PrOmpA、Cp10bA、CpSpA、EfSant、LmOsp、及びその組合せからなる群から選択される細菌抗原と複合化する、少なくとも1つの細菌抗原抗体マーカーのレベルを決定するステップと、b)第2の時点における第2の試料中の細菌抗原抗体マーカー(複数可)及びマスト細胞マーカー(複数可)のレベルを決定するステップと、c)細菌抗原抗体マーカー(複数可)及びマスト細胞マーカー(複数可)のレベルを比較するステップとを含み、第2の試料と比較した第1の試料中のレベルが対象におけるIBSの進行又は退行を示す。
[0147]いくつかの実施形態において、第2の試料と比較した第1の試料中の細菌抗原抗体マーカー(複数可)及びマスト細胞マーカー(複数可)のレベル(複数可)の増加は、対象におけるIBSの進行を示す。いくつかの実施形態において、第2の試料と比較した第1の試料中の細菌抗原抗体マーカー(複数可)及びマスト細胞マーカー(複数可)のレベル(複数可)の低下は、対象におけるIBSの退行を示す。
[0148]いくつかの実施形態において、本発明は、
a)対象から採取した生体試料中の細菌抗原(例えば、EcFliC、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcOFliC、CjGT−A、Cjdmh、CjCgtA、SeFljB、EcEra、EcFocA、EcFrvX、EcGabT、EcYbaN、EcYcdG、EcYhgN、EcYedK、EcYidX、LaFrc、LaEno、LjEFTu、BfOmpA、PrOmpA、Cp10bA、CpSpA、EfSant、LmOsp、など)を認識する細菌抗原抗体マーカーのアレイ及びマスト細胞マーカー(例えば、血清β−トリプターゼ、プロスタグランジンE2など)のアレイのレベルを測定するステップと、
b)選択された細菌抗原抗体マーカー及びマスト細胞マーカーの測定されたレベルに統計解析を適用して、選択された細菌抗原抗体マーカー及びマスト細胞マーカーのレベルの表示を含む、疾患分類プロファイルを作出するステップと、
c)対象の疾患分類プロファイルを対照の疾患分類プロファイルと比較して、対象がIBS便秘型(IBS−C)、IBS下痢型(IBS−D)、IBS混合型(IBS−M)、IBS交替型(IBS−A)又は感染後IBS(IBS−PI)を有するかどうかを判定するステップと
を含む、対象におけるIBSの診断を分類する方法を提供する。
[0149]いくつかの実施形態において、疾患分類プロファイルは、複数の選択された細菌抗原抗体マーカー及びマスト細胞マーカーの解析に基づく経験的に得られるプロファイルを含む。1つの態様において、マーカーの濃度又はそれらの測定濃度値をコンピュータ搭載のアルゴリズムによりプロファイルに変換する。特定の態様において、プロファイルは、生物学的データを数字で表す、合成又はヒト由来の出力、スコア又はカットオフ値(複数可)である。プロファイルは、臨床上の決定を判定する又は下す又は下す補助をするために用いることができる。疾患分類プロファイルは、時間の経過にわたって複数回測定することができる。1つの態様において、アルゴリズムは、既知の試料を用いて訓練し、その後、既知の同一性の試料を用いてバリデートすることができる。
[0150]いくつかの実施形態において、疾患分類プロファイル対照は、健常対象、IBS又はIBS便秘型(IBS−C)、IBS下痢型(IBS−D)、IBS混合型(IBS−M)、IBS交替型(IBS−A)若しくは感染後IBS(IBS−PI)などのIBSのサブタイプを有する対象である対象の疾患分類プロファイルを含む。他の実施形態において、対照の疾患分類プロファイルは、健常対照、IBSを有する対象又はIBS−C、IBS−D、IBS−M、IBS−A若しくはIBS−PIなどのIBSの特定のサブタイプを有する対象である複数の対象の複数の疾患分類プロファイルの平均を含む。
[0151]少なくとも1つの細菌抗原抗体マーカーのレベルを検出又は決定するために用いる試料は、一般的に全血、血漿、血清、唾液、尿、便(すなわち、糞便)、涙液及び他の体液又は小腸若しくは結腸試料などの組織試料(すなわち、生検材料)である。試料は、血清、全血、血漿、便、尿又は組織生検材料であることが好ましい。特定の例において、本発明の方法は、試料中の少なくとも1つの細菌抗原抗体のレベルを検出又は決定する前に個体から試料を得るステップをさらに含む。好ましい実施形態において、追加の細菌抗原抗体及び/又はマスト細胞マーカーを血液又は血清試料から検出する。他の実施形態において、追加の細菌抗原抗体及び/又はマスト細胞マーカーを便試料又は対象の腸からの生検材料から検出する。
[0152]特定の他の実施形態において、少なくとも1つの細菌抗原抗体マーカーのレベルは、免疫測定法(例えば、ELISA)又は免疫組織化学測定法を用いて決定する。本発明の方法に用いるのに適する免疫測定法の非限定的な例は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を含む。本発明の方法に用いるのに適する免疫組織化学測定法の例は、直接蛍光抗体測定法、間接蛍光抗体(IFA)測定法、抗補体免疫蛍光測定法及びアビジン−ビオチン免疫蛍光測定法などの免疫蛍光測定法を含むが、これに限定されない。他のタイプの免疫組織化学測定法は、免疫ペルオキシダーゼ測定法を含む。血清、血漿、唾液又は尿試料中の細菌抗原の存在又はレベルを決定するための適切なELISAキットは、例えば、Antigenix America Inc.(Huntington station、NY)、Promega(Madison、WI)、R&D Systems,Inc.(Minneapolis、MN)、Life Technologies(Carlsbad、CA)、CHEMICON International,Inc.(Temecula、CA)、Neogen Corp.(Lexington、KY)、PeproTech(Rocky Hill、NJ)、Alpco Diagnostics(Salem、NH)、Pierce Biotechnology,Inc.(Rockford、IL)及び/又はAbazyme(Needham、MA)から入手できる。
1.細菌抗原抗体
[0153]本明細書で用いているように、「細菌抗原抗体」という用語は、抗細菌抗原抗体のような、細菌抗原又はその抗原性断片に特異的に結合する抗体を意味する。特定の理論に拘束されるものではないが、消化管微生物叢に関わるIBS又は他の障害を有する人は、抗細菌抗原抗体を発生し得る。
[0154]1つの態様において、本発明は、細菌抗原抗体マーカーを用いてIBSの診断を補助する方法を提供する。
[0155]いくつかの実施形態において、方法は、対象から採取した生体試料中の細菌抗原抗体マーカーのアレイのレベルを測定するステップを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの細菌抗原抗体マーカーのレベルは、健常対照と比較してIBSを有する個体において増加している。他の実施形態において、少なくとも1つの細菌抗原抗体マーカーのレベルは、健常対照と比較してIBSを有する個体において減少している。いくつかの実施形態において、細菌抗原抗体マーカーのアレイのレベルは、健常対照からの試料と比較してIBSを有する個体から採取した試料において調節不全の状態である。
[0156]いくつかの実施形態において、方法は、
a)試料中に存在する細菌抗原抗体を細菌抗原抗体及び細菌抗原ポリペプチド又はその断片を含む複合体に変換するのに適する条件下で対象からの生体試料を細菌抗原ポリペプチド又はその抗原性断片と接触させるステップと、
b)複合体のレベルを決定し、それにより、試料中に存在する細菌抗原抗体のレベルを決定するステップと
を含む。いくつかの実施形態において、方法は、
c)試料中に存在する細菌抗原抗体のレベルを細菌抗原抗体の対照レベルと比較するステップ
をさらに含み、細菌抗原抗体のレベルが対象がIBSを有する可能性の増大を示す。
[0157]細菌抗原ポリペプチド又はその断片は、測定されるべき細菌抗原抗体に選択的に結合する。例えば、細菌フラジェリン(例えば、SfFliC)に対する抗体のレベルは、フラジェリンポリペプチド又はその抗原性断片を用いて測定することができる。
[0158]特定の実施形態において、本発明は、
a)細菌抗原抗体を細菌抗原及び捕捉抗細菌抗原抗体を含む複合体に変換するのに適する条件下で、含有される細菌抗原抗体を有する試料を接触させるステップと、
b)前記複合体を酵素標識インジケーター抗体と接触させて、前記複合体を標識複合体に変換するステップと、
c)標識複合体を酵素の基質と接触させるステップと、
d)試料中の細菌抗原抗体の存在又はレベルを検出するステップと
を含む、IBSの診断を補助する方法を提供する。
[0159]例えば、本明細書に記載の実施例3及び4に例示するように、本発明の方法は、試料中に存在する細菌抗原抗体のレベルを測定するために用いる。
[0160]特定の実施形態において、様々な細菌抗原が、IBSの診断を補助する本発明の方法に特に有用である。細菌抗原の非限定的な例は、消化管微生物叢により発現されるフラジェリンポリペプチド又はその断片及び他のポリペプチド又はその断片を含む。微生物フラジェリンは、それ自体を中空円柱に配置してフィラメントを形成する細菌鞭毛に見いだされるタンパク質である。フラジェリンポリペプチド又はその断片は、クロストリジウム属、ラクノスピラ科細菌A4、大腸菌K12、大腸菌O157:H7、フレキシナ赤痢菌、カンピロバクター・ジェジュニ及び腸炎菌を含む細菌により一般的に発現される。フラジェリンポリペプチドの非限定的な例を表1に示す。
[0161]「CjFlaA」という用語は、抗FlaA抗体との免疫反応性を示すカンピロバクター・ジェジュニのフラジェリンサブユニットを意味する。試料中の抗FlaA抗体レベルを決定するのに有用である適切なCjFlaA抗原は、制限なしに、FlaAタンパク質、FlaAタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するFlaAポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。FlaAポリペプチドは、一般的にFlaAタンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、カンピロバクター・ジェジュニなどの腸内細菌からの精製により、NCBI受託番号ABC69276.1などのFlaAペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により調製することができる。
[0162]「CjFlaB」という用語は、抗FlaB抗体との免疫反応性を示すカンピロバクター・ジェジュニのフラジェリンBを意味する。試料中の抗FlaB抗体レベルを決定するのに有用である適切なCjFlaB抗原は、制限なしに、FlaBタンパク質、FlaBタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するFlaBポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。FlaBポリペプチドは、一般的にFlaBタンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、カンピロバクター・ジェジュニなどの腸内細菌からの精製により、NCBI受託番号EAQ72883.1などのFlaBペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により調製することができる。
[0163]「EcFliC」という用語は、抗FliC抗体との免疫反応性を示す大腸菌株K12のフラジェリンを意味する。試料中の抗FliC抗体レベルを決定するのに有用である適切なEcFliC抗原は、制限なしに、大腸菌株K12のFliCタンパク質、大腸菌株K12のFliCタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するFliCポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。大腸菌株K12のFliCポリペプチドは、一般的に大腸菌株K12のFliCタンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、大腸菌などの腸内細菌からの精製により、NCBI受託番号AAA23950.1などのFliCペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により調製することができる。
[0164]「EcOFliC」という用語は、抗FliC抗体との免疫反応性を示す大腸菌株O157:H7のフラジェリンを意味する。試料中の抗FliC抗体レベルを決定するのに有用である適切なFliC抗原は、制限なしに、FliCタンパク質、FliCタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するFliCポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。FliCポリペプチドは、一般的にFliCタンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、大腸菌株O157:H7などの腸内細菌からの精製により、NCBI受託番号BAB36085.1などのFliCペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により調製することができる。
[0165]「SfFliC」という用語は、抗FliC抗体との免疫反応性を示すフレキシナ赤痢菌のフラジェリンを意味する。試料中の抗FliC抗体レベルを決定するのに有用である適切なSfFliC抗原は、制限なしに、FliCタンパク質、FliCタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するFliCポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。FliCポリペプチドは、一般的にFliCタンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、フレキシナ赤痢菌などの腸内細菌からの精製により、NCBI受託番号BAA04093.1などのFliCペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により調製することができる。当業者は、フレキシナ赤痢菌FliCが鞭毛フィラメント構造タンパク質、フラジェリン及びH−抗原としても公知であることを認識する。
[0166]「Cj81−045」又は「CjGT−A」という用語は、抗Cj81−045(CjGT−A)抗体との免疫反応性を示すカンピロバクター・ジェジュニ膜タンパク質を意味する。試料中の抗Cj81−045(CjGT−A)抗体レベルを決定するのに有用である適切なCj81−045(CjGT−A)抗原は、制限なしに、Cj81−045(CjGT−A)タンパク質、Cj81−045(CjGT−A)タンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するCj81−045(CjGT−A)ポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。Cj81−045(CjGT−A)ポリペプチドは、一般的にCj81−045(CjGT−A)タンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、カンピロバクター・ジェジュニなどの腸内細菌からの精製により、NCBI受託番号AAW56124.1などのCj81−045(CjGT−A)ペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により調製することができる。
[0167]「Cj81−128」又は「Cjdmh」という用語は、抗Cj81−128(Cjdmh)抗体との免疫反応性を示すカンピロバクター・ジェジュニ膜タンパク質を意味する。試料中の抗Cj81−128(Cjdmh)抗体レベルを決定するのに有用である適切なCj81−128(Cjdmh)抗原は、制限なしに、Cj81−128(Cjdmh)タンパク質、Cj81−128(Cjdmh)タンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するCj81−128(Cjdmh)ポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。Cj81−128(Cjdmh)ポリペプチドは、一般的にCj81−128(Cjdmh)タンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、カンピロバクター・ジェジュニなどの腸内細菌からの精製により、NCBI受託番号AAW56187.1などのCj81−128(Cjdmh)ペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により調製することができる。
[0168]「Cj81−008」又は「CjCgtA」という用語は、抗Cj81−008(CjCgtA)抗体との免疫反応性を示すカンピロバクター・ジェジュニのベータ−1,4−N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼを意味する。試料中の抗Cj81−008(CjCgtA)抗体レベルを決定するのに有用である適切なCj81−008(CjCgtA)抗原は、制限なしに、Cj81−008(CjCgtA)タンパク質、Cj81−008(CjCgtA)タンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するCj81−008(CjCgtA)ポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。Cj81−008(CjCgtA)ポリペプチドは、一般的にCj81−008(CjCgtA)タンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、カンピロバクター・ジェジュニなどの腸内細菌からの精製により、NCBI受託番号AAW56101.1などのCj81−008(CjCgtA)ペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により調製することができる。
[0169]いくつかの実施形態において、本発明の方法は、消化管微生物叢(例えば、大腸菌K12)により発現される少なくとも1つのポリペプチド又はその断片に対する抗体のレベルを決定するステップを含む。消化管微生物叢の大腸菌により発現されるポリペプチドの非限定的な例を表2に示す。
[0170]「EcEra」という用語は、抗Era抗体との免疫反応性を示す大腸菌株K12のRas様膜結合性リボソーム結合GTPアーゼを意味する。試料中の抗Era抗体レベルを決定するのに有用である適切なEcEra抗原は、制限なしに、大腸菌株K12のEraタンパク質、大腸菌株K12のEraタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するEraポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。大腸菌株K12のEraポリペプチドは、一般的に大腸菌株K12のEraタンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、大腸菌株K12などの腸内細菌からの精製により、NCBI受託番号AAA03242.1などのEraペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により調製することができる。当業者は、Eraが膜結合性16SrRNA結合GTPアーゼ、B2566、SdgE及びRbaAとしても公知であることを認識する。
[0171]「EcFrvX」という用語は、抗FrvX抗体との免疫反応性を示す大腸菌株K12のfrvオペロンタンパク質を意味する。FrvXは、エンド−1,4−ベータグルカナーゼであると予測されている。試料中の抗FrvX抗体レベルを決定するのに有用である適切なEcFrvX抗原は、制限なしに、大腸菌株K12のFrvXタンパク質、大腸菌株K12のFrvXタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するFrvXポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。大腸菌株K12のFrvXポリペプチドは、一般的に大腸菌株K12のFrvXタンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、大腸菌などの腸内細菌からの精製により、NCBI受託番号AAB03031.1などのFrvXペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により調製することができる。
[0172]「EcGabT」という用語は、抗GabT抗体との免疫反応性を示す大腸菌株K12のPLP依存性4−アミノ酪酸アミノトランスフェラーゼを意味する。試料中の抗GabT抗体レベルを決定するのに有用である適切なGabT抗原は、制限なしに、大腸菌株K12のGabTタンパク質、大腸菌株K12のGabTタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するGabTポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。GabTポリペプチドは、一般的に大腸菌株K12のGabTタンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、大腸菌などの腸内細菌からの精製により、NCBI受託番号AAC36832.1などのGabTペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により、或いはファージディスプレイを用いることにより調製することができる。当業者は、GabTが(S)−3−アミノ−2−メチルプロピオン酸トランスアミナーゼ、GABAアミノトランスフェラーゼ、GABA−AT、ガンマ−アミノ−N−酪酸トランスアミナーゼ及びグルタミン酸−コハク酸セミアルデヒドトランスアミナーゼL−AIBATとしても公知であることを認識する。
[0173]「EcYhgN」という用語は、抗生物質トランスポーターとして機能すると予測され、抗YhgN抗体との免疫反応性を示す大腸菌株K12膜タンパク質を意味する。試料中の抗YhgN抗体レベルを決定するのに有用である適切なEcYhgN抗原は、制限なしに、大腸菌株K12のYhgNタンパク質、大腸菌株K12のYhgNタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するYhgNポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。YhgNポリペプチドは、一般的に大腸菌株K12のYhgNタンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、大腸菌などの腸内細菌からの精製により、NCBI受託番号AAA58232.1などのYhgNペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により、或いはファージディスプレイを用いることにより調製することができる。当業者は、YhgNが予測された抗生物質トランスポーターとしても公知であることを認識する。
[0174]「EcYedK」という用語は、抗YedK抗体との免疫反応性を示す大腸菌株K12の予測タンパク質を意味する。試料中の抗YedK抗体レベルを決定するのに有用である適切なEcYedK抗原は、制限なしに、大腸菌株K12のYedKタンパク質、大腸菌株K12のYedKタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するYedKポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。YhgNポリペプチドは、一般的に大腸菌株K12のYedKタンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、大腸菌などの腸内細菌からの精製により、NCBI受託番号AA48139などのYedKペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により、或いはファージディスプレイを用いることにより調製することができる。
[0175]「EcYidX」という用語は、抗YidX抗体との免疫反応性を示す大腸菌株K12の推定レプリカーゼを意味する。YidXは、リポタンパク質Cであると予測される。試料中の抗YidX抗体レベルを決定するのに有用である適切なYidX抗原は、制限なしに、大腸菌株K12のYidXタンパク質、YidXタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するYidXポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。YidXポリペプチドは、一般的に大腸菌株K12のYidXタンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、大腸菌などの腸内細菌からの精製により、NCBI受託番号AAT48200.1などのYidXペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により調製することができる。当業者は、YidXが予測リポタンパク質Cとしても公知であることを認識する。
[0176]いくつかの実施形態において、対象における過敏性腸症候群の診断を補助する方法は、少なくとも1つの細菌抗原抗体のレベルを決定するステップを含み、細菌抗原は、EcFliC、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcEra、EcOFliC、EcFrvX、EcGabT、Cj81−045、Cj81−128、Cj81−008及びその組合せからなる群から選択される。
[0177]いくつかの実施形態において、本発明の方法は、共生及び/又は日和見細菌により発現される少なくとも1つのポリペプチド又はその断片に対する抗体のレベルの存在を決定するステップを含む。共生及び/又は日和見細菌により発現されるポリペプチドの非限定的な例を表3に示す。
[0178]「LaFrc」という用語は、抗Frc抗体との免疫反応性を示すラクトバチルス・アシドフィルスのタンパク質を意味する。Frcは、ホルミルCoAトランスフェラーゼであると予測される。試料中の抗Frc抗体レベルを決定するのに有用である適切なFrc抗原は、制限なしに、ラクトバチルス・アシドフィルスのFrcタンパク質、ラクトバチルス・アシドフィルスのFrcタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するFrcポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。ラクトバチルス・アシドフィルスのFrcポリペプチドは、一般的にラクトバチルス・アシドフィルスのFrcタンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、ラクトバチルス・アシドフィルスなどの腸内細菌からの精製により、NCBI Ref.Seq.番号YP_193317又はUniProt.番号Q5FLY8などのFrcペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により調製することができる。
[0179]「LaEno」という用語は、抗Eno抗体との免疫反応性を示すラクトバチルス・アシドフィルスのタンパク質を意味する。Enoは、ホスホピルビン酸ヒドラターゼ(エノラーゼ)であると予測される。試料中の抗Eno抗体レベルを決定するのに有用である適切なEno抗原は、制限なしに、ラクトバチルス・アシドフィルスのEnoタンパク質、ラクトバチルス・アシドフィルスのEnoタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するEnoポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。ラクトバチルス・アシドフィルスのEnoポリペプチドは、一般的にラクトバチルス・アシドフィルスのEnoタンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、ラクトバチルス・アシドフィルスなどの腸内細菌からの精製により、NCBI Ref.Seq.番号YP_193779又はUniProt.番号Q5FKM6などのEnoペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により調製することができる。
[0180]「LiEFTu」という用語は、抗EFTu抗体との免疫反応性を示すラクトバチルス・ジョンソニイのタンパク質を意味する。EFTuは、伸長因子Tuであると予測される。試料中の抗EFTu抗体レベルを決定するのに有用である適切なEFTu抗原は、制限なしに、ラクトバチルス・ジョンソニイのEFTuタンパク質、ラクトバチルス・ジョンソニイのEFTuタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するEFTuポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。ラクトバチルス・ジョンソニイのEFTuポリペプチドは、一般的にラクトバチルス・ジョンソニイのEFTuタンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、ラクトバチルス・ジョンソニイなどの腸内細菌からの精製により、NCBI Ref.Seq.番号NP_964865又はUniProt.番号Q74JU6などのEFTuペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により調製することができる。
[0181]「BfOmpA」という用語は、抗OmpA抗体との免疫反応性を示すバクテロイデス・フラジリスのタンパク質を意味する。OmpAは、主要な外膜タンパク質Aであると予測される。試料中の抗OmpA抗体レベルを決定するのに有用である適切なOmpA抗原は、制限なしに、バクテロイデス・フラジリスのOmpAタンパク質、バクテロイデス・フラジリスのOmpAタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するOmpAポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。バクテロイデス・フラジリスのOmpAポリペプチドは、一般的にバクテロイデス・フラジリスのOmpAタンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、バクテロイデス・フラジリスなどの腸内細菌からの精製により、NCBI Ref.Seq.番号YP_098863又はUniProt.番号Q64VP7などのOmpAペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により調製することができる。
[0182]「PrOmpA」という用語は、抗OmpA抗体との免疫反応性を示すプレボテラ属種、例えば、プレボテラ属種オーラル分類群472株F0295のタンパク質を意味する。OmpAは、免疫反応性抗原PG33又は主要外膜タンパク質Aであると予測される。試料中の抗OmpA抗体レベルを決定するのに有用である適切なOmpA抗原は、制限なしに、プレボテラ属種のOmpAタンパク質、プレボテラ属種のOmpAタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するOmpAポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。プレボテラ属種のOmpAポリペプチドは、一般的にプレボテラ属種のOmpAタンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、プレボテラ属種などの腸内細菌からの精製により、NCBI GenBank受託番号EEX54413又はUniProt.番号C9PT48などのOmpAペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により調製することができる。
[0183]「Cp10bA」という用語は、抗10bA抗体との免疫反応性を示すウェルシュ菌のタンパク質を意味する。10bAは、10b抗原であると予測される。試料中の抗10bA抗体レベルを決定するのに有用である適切な10bA抗原は、制限なしに、ウェルシュ菌の10bAタンパク質、ウェルシュ菌の10bAタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有する10bAポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。ウェルシュ菌の10bAポリペプチドは、一般的にウェルシュ菌の10bAタンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、ウェルシュ菌などの腸内細菌からの精製により、NCBI GenBank受託番号EDT72304又はUniProt.番号B1V1I2などの10bAペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により調製することができる。
[0184]「CpSpA」という用語は、抗SpA抗体との免疫反応性を示すウェルシュ菌のタンパク質を意味する。SpAは、表面保護抗原SpA類似体であると予測される。試料中の抗SpA抗体レベルを決定するのに有用である適切なSpA抗原は、制限なしに、ウェルシュ菌のSpAタンパク質、ウェルシュ菌のSpAタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するSpAポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。ウェルシュ菌のSpAポリペプチドは、一般的にウェルシュ菌のSpAタンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、ウェルシュ菌などの腸内細菌からの精製により、NCBI Ref.Seq.番号YP_209686又はUniProt.番号Q5DWA9などのSpAペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により調製することができる。
[0185]「EfSant」という用語は、抗Sant抗体との免疫反応性を示すフェカリス菌のタンパク質を意味する。Santは、表面抗原であると予測される。試料中の抗Sant抗体レベルを決定するのに有用である適切なSant抗原は、制限なしに、フェカリス菌のSantタンパク質、フェカリス菌のSantタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するSantポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。フェカリス菌のSantポリペプチドは、一般的にフェカリス菌のSantタンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、フェカリス菌などの腸内細菌からの精製により、NCBI GenBank受託番号EEU72780又はUniProt.番号C7W575などのSantペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により調製することができる。
[0186]「LmOsp」という用語は、抗Osp抗体との免疫反応性を示すリステリア菌のタンパク質を意味する。Ospは、外表面抗原であると予測される。試料中の抗Osp抗体レベルを決定するのに有用である適切なOsp抗原は、制限なしに、リステリア菌のOspタンパク質、リステリア菌のOspタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するOspポリペプチド又はその免疫反応性断片などのその断片を含む。リステリア菌のOspポリペプチドは、一般的にリステリア菌のOspタンパク質との約50%より大きい同一性、好ましくは約60%より大きい同一性、より好ましくは約70%より大きい同一性、より好ましくは約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%より大きいアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表現するものであり、アミノ酸同一性は、CLUSTALWなどの配列アライメントプログラムを用いて判定する。そのような抗原は、例えば、リステリア菌などの腸内細菌からの精製により、NCBI Ref.Seq.番号YP_002349810又はUniProt.番号B8DFK3などのOspペプチドをコードする核酸の組換え発現により、溶液又は固相ペプチド合成などの合成手段により調製することができる。
[0187]いくつかの実施形態において、方法は、個体からの試料中に存在する細菌抗原に対する抗体のレベルを測定することにより少なくとも1つの細菌抗原抗体のレベルを決定するステップを含む。いくつかの例において、個体が細菌抗原抗体を有することは、IBSを示すものである。個体における細菌抗原抗体の存在又はレベルは、疾患のレベルと相関し得る。
[0188]いくつかの実施形態において、本発明は、アッセイが、
a)抗細菌抗原抗体を抗細菌抗原抗体及び捕捉細菌抗原を含む複合体に変換するのに適する条件下で、抗細菌抗原抗体を含有する試料を接触させるステップと、
b)複合体を酵素標識インジケーター抗体と接触させて、複合体を標識複合体に変換するステップと、
c)標識複合体を酵素の基質と接触させるステップと、
d)抗細菌抗原抗体の存在又はレベルを検出するステップと
を含む、IBSの診断を補助する方法を提供する。
[0189]例えば、本明細書に記載の実施例4に例示するように、本発明の方法は、試料中に存在する細菌抗原に特異的な抗体のレベルを測定するために用いる。
[0190]いくつかの実施形態において、患者試料中の細菌抗原に対する少なくとも1つの抗体のレベルは、患者がIBS、例えば、感染後IBSを有することを示し、細菌抗原は、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcOFliC、SeFljB、CjCgtA、CjGT−A、Cjdmh及びその組合せからなる群から選択される。
[0191]いくつかの実施形態において、患者試料中の共生細菌抗原に対する少なくとも1つの抗体のレベルは、患者がIBSを有することを示し、共生細菌抗原は、LaFrc、LaEno、LjEFTu、BfOmpA、PrOmpA、Cp10bA、CpSpA、EfSant、LmOsp及びその組合せからなる群から選択される。細菌綱バクテロイデス・フラジリス又はプレボテラ属種からの細菌抗原に対する抗体のレベルが、正常対照試料におけるレベルと比較して個体から採取した試料において低下していると判定される場合、個体は、IBSを有すると診断される。ウェルシュ菌、腸球菌、リステリア属及び他のファーミキューテス門の綱からなる群から選択される細菌綱の細菌抗原に対する抗体のレベルが、正常対照試料と比較して個体の試料において高いと判定される場合、個体は、IBSを有すると診断される。
[0192]いくつかの実施形態において、健常対照と比較してバクテロイデス綱細菌に対する抗体のより低いレベルを有する対象は、IBSを有する可能性がより高い。これと対照的に、健常対照と比較してクロストリジウム、モリキューテス及び/又は桿菌綱の細菌に対する抗体のより高いレベルを有する対象は、IBSを有する可能性がより高い。
[0193]他の実施形態において、本明細書で提供する方法は、BfOmpA及びPrOmpA抗原などのバクテロイデス抗原と比べて、LaFrc、LaEno、LjEfTu、Cp10ba、CpSpaA、EfSant及びLmOsp抗原などのファーミキューテス抗原に対する抗体のレベル(例えば、量、濃度、比率)の増加を有する対象は、対象がIBSを有する可能性の増大を有すると予測されることを判定するために用いる。
2.マスト細胞マーカー:β−トリプターゼ
[0194]1つの態様において、
a)対象からの試料中に存在するβ−トリプターゼのレベルを決定するステップと、
b)試料中に存在するβ−トリプターゼのレベルを対照レベルと比較するステップとを含み、対象からの試料中に存在するβ−トリプターゼのレベルの増加が対象がIBSを有する可能性の増大を示す、対象における過敏性腸症候群(IBS)の診断を補助する方法を提供する。
[0195]いくつかの実施形態において、対象からの試料中に存在するβ−トリプターゼのレベルを決定する方法は、
a)試料中に存在するβ−トリプターゼをβ−トリプターゼ及びβ−トリプターゼ結合部分を含む複合体に変換するのに適する条件下で対象からの生体試料をβ−トリプターゼ結合部分と接触させるステップと、
b)複合体のレベルを決定し、それにより、試料中に存在するβ−トリプターゼのレベルを決定するステップと
を含む。
[0196]特定の実施形態において、対象からの試料中に存在するβ−トリプターゼのレベルを決定する方法は、β−トリプターゼをβ−トリプターゼ及び捕捉抗トリプターゼ抗体を含む複合体に変換するのに適する条件下で、β−トリプターゼを含有する試料を接触させるステップと、(b)複合体を酵素標識インジケーター抗体と接触させて、複合体を標識複合体に変換するステップと、(c)標識複合体を酵素の基質と接触させるステップと、d)試料中のβ−トリプターゼの存在又はレベルを検出するステップとを含む。
[0197]特定の実施形態において、本発明は、
a)β−トリプターゼをβ−トリプターゼ及び捕捉抗トリプターゼ抗体を含む複合体に変換するのに適する条件下で、β−トリプターゼを含有する試料を接触させるステップと、
b)複合体を酵素標識インジケーター抗体と接触させて、複合体を標識複合体に変換するステップと、
c)標識複合体を酵素の基質と接触させるステップと、
d)試料中のβ−トリプターゼの存在又はレベルを検出するステップと
を含む、IBSの診断を補助するためのアッセイを提供する。
[0198]いくつかの態様において、ELISAに基づくβ−トリプターゼアッセイは、以下のステップを含む。96ウエルマイクロタイタープレートを100μlの炭酸ナトリウム(pH.9.6)中2μg/ml抗ヒトβ−トリプターゼ抗体で、4℃で一夜コートする。洗浄緩衝液(例えば、PBST)で洗浄した後、プレートを300μl/ウエルのブロッキング/アッセイ緩衝液(例えば、PBS中5%BSA)とともに緩やかに撹拌しながら室温(RT)で30分間インキュベートする。洗浄後、100μl/ウエルの試料、キャリブレータ又は対照。いくつかの例において、試料、キャリブレータ又は対照をプレートに加える前に連続希釈する(アッセイ緩衝液で1:8)。一般的に、キャリブレータは、既知量のヒトβ−トリプターゼをスパイクした連続希釈正常プール血清である。キャリブレータを用いて、試料中のヒトβ−トリプターゼのレベルを決定するために用いる検量曲線(例えば、標準曲線を作出する。RTでさらに2時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、次いで、アッセイ緩衝液中で最適化希釈度で100μlのアルカリホスファターゼコンジュゲート抗ヒトβ−トリプターゼとともにインキュベートする。プレートを緩やかに撹拌しながら2時間インキュベートし、次いで洗浄する。100μlの発色基質(例えば、Tropix CSPD)を各ウエルに加え、発光プレートリーダーで発光を読み取る前に暗所で30分間インキュベートする。Graphpad(Prism)などのグラフ化ソフトウエアを用いて相対発光単位(RLU)とβ−トリプターゼ濃度をプロットする。試料及び対照中のβ−トリプターゼのレベルは、試料と同じアッセイで実施される検量曲線から補間により計算する。
[0199]具体例としてのアッセイでは、検出範囲は、0.019〜5000ng/mlであった。EC50は、65ng/mlであり、回収率は、正常プール血清にスパイクした20ngのヒトβ−トリプターゼを含有する試料で81.5%であった。
[0200]対象からの試料中に存在するβ−トリプターゼのレベルを決定する方法の具体例としての実施形態は、その開示がすべての目的のために全体として参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,114,616号に記載されている。
[0201]特定の例では、バイオマーカーは、例えば、同じ時点又は異なる時点に同じ個体から採取した試料中で検出することができるが、好ましい実施形態においては、β−トリプターゼ、ヒスタミン及び/又はPGE2は、同じ試料から検出する。特定の実施形態において、バイオマーカーは、対象からの血液又は血清試料の異なるアリコートを用いて実施される別個のアッセイで検出する。他の実施形態において、バイオマーカーは、単一マルチプレックス検出アッセイ、例えば、Luminex xAMPアッセイで検出する。
3.マスト細胞マーカー:ヒスタミン
[0202]特定の実施形態において、本発明は、
a)アセチル化ヒスタミンをヒスタミン及び捕捉抗ヒスタミン抗体を含む複合体に変換するのに適する条件下で、ヒスタミンを含有する試料を接触させるステップと、
b)複合体を酵素標識インジケーター抗体と接触させて、複合体を標識複合体に変換するステップと、
c)標識複合体を酵素の基質と接触させるステップと、
d)試料中のヒスタミンのレベルを検出するステップと
を含む、IBSの診断を補助するためのアッセイを提供する。
[0203]アッセイの具体例としての実施形態は、EIA Histamine Assay(カタログ番号IM2015、ImmunoTech)などのヒスタミン酵素免疫測定法である。手短に述べると、25μlのアシル化緩衝液、100μlの試料、キャリブレータ又は対照及び25μlのアシル化試薬を混合し、直ちにボルテックス混合機で混合することにより、試料中に存在するヒスタミン、キャリブレータ又は対照をアセチル化する。50μlのアシル化試料、キャリブレータ又は対照をマイクロタイターアッセイプレートの抗ヒスタミン抗体コートウエルに加える。次いで、200μlのアルカリホスファターゼ−ヒスタミンコンジュゲートをプレートに加える。プレートを2〜8℃で振とうしながら2時間インキュベートする。ウエルを洗浄溶液で洗浄し、200μlの発色基質をウエルに加える。プレートを暗所で18〜25℃で振とうしながら30分間インキュベートする。次いで、発光プレートリーダーで発光を読み取る前に50μlの反応停止溶液を加える。Graphpad(Prism)などのグラフ化ソフトウエアを用いてキャリブレータの相対発光単位(RLU)とヒスタミン濃度をプロットする。試料及び対照中のヒスタミンのレベルは、試料と同じアッセイで実施される検量曲線から補間により計算する。
4.マスト細胞マーカー:プロスタグランジンE2
[0204]特定の実施形態において、本発明は、
a)プロスタグランジンE2をプロスタグランジンE2及び捕捉抗プロスタグランジンE2抗体を含む複合体に変換するのに適する条件下で、プロスタグランジンE2を含有する試料を接触させるステップと、
b)複合体を酵素標識インジケーター抗体と接触させて、複合体を標識複合体に変換するステップと、
c)標識複合体を酵素の基質と接触させるステップと、
d)試料中のプロスタグランジンE2のレベルを検出するステップと
を含む、IBSの診断を補助するためのアッセイを提供する。
[0205]アッセイの具体例としての実施形態は、Prostaglandin E2 EIA−Monoclonal(カタログ番号514010、Cayman Chemical)などのPGE2競合酵素免疫測定法である。手短に述べると、50μlのキャリブレータ(標準)又は試料をあらかじめコートしたヤギ抗マウスIgGマイクロタイターアッセイプレートのウエルに加える。50μlのPGE2トレーサー(共有結合によりコンジュゲートしたPGE2及びアセチルコリンエステラーゼ)を加え、次いで50μlの抗PGE2マウスIgGを加える。プレートを4℃で振とうしながら18時間インキュベートする。プレートを洗浄緩衝液で5分間洗浄する。200μlの発色試薬(例えば、エルマン試薬)をウエルに加える。プレートを暗所で振とうしながら60〜90分間インキュベートする。発光を発光プレートリーダーで405nmで読み取る。Graphpad Prism(Graphpad Software、La Jolla、CAなどのグラフ化ソフトウエアを用いてキャリブレータの相対発光単位(RLU)とプロスタグランジンE2濃度をプロットする。試料及び対照中のプロスタグランジンE2のレベルは、試料と同じアッセイで実施される検量曲線から補間により計算する。
5.ストレスホルモン
[0206]発明者らは、血清中のコルチゾールレベルにより、個体がIBSを有するかどうかを予測することができることを発見した。健常対照者は、IBS−C、IBS−D及びIBS−Mを含むIBSを有する個体と比較して高いコルチゾールのレベルを有する。
[0207]本発明のいくつかの実施形態において、方法は、対象から採取した試料中のストレスホルモンのレベルを測定するステップと、それを、健常対照又は非IBS対照である対照のストレスホルモンのレベルと比較するステップとを含む。いくつかの例において、ストレスホルモンレベルは、朝又は午後のいずれかに対象から採取した試料において測定し、対応する時刻に採取した対照試料のストレスホルモンレベルと比較する。IBSを診断するためのコルチゾールレベルの予測値は、試料が得られる対象の概日リズム周期によって変動する。いくつかの例において、午後(例えば、p.m.又はpost meridiem)に採取された試料における健常対照とIBS−Dとを区別するためのコルチゾールの予測値が最も高い。好ましい実施形態において、ストレスホルモンは、コルチゾールである。
[0208]コルチゾール、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ACTH及びコルチコトロピン放出因子(CRF)などのストレスホルモンは、血清、血液、唾液、尿等を含む試料から測定することができる。コルチゾールを測定する場合、正常な健常者では、レベルが日周リズムに従い、朝に最高レベルで、深夜に最低であることを認識することが重要である。コルチゾールレベルを測定する方法は、Arbor Assays(Ann Arbor、MI)、CisBio Bioassays(Bdford、MA)、Enzo Life Sciences(Farmingdale、NY)から入手できるELISAアッセイを含む。
[0209]いくつかの実施形態において、本発明の方法は、ストレス因子のレベルと他のストレス因子、細菌抗原抗体マーカー(例えば、EcFliC、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcEra、EcOFliC、EcFrvX、EcGabT、Cj81−045、Cj81−128、Cj81−008)、炎症マーカー(例えば、CRP、SAA、ICAM、VCAM、PII)又はマスト細胞マーカー(例えば、PGE2、ヒスタミン、トリプターゼ)のレベルとの比を得るステップをさらに含み、その比は、IBS又はIBSサブタイプを予測する。
B.疾患の進行をモニタリングする方法
[0210]他の態様において、本発明は、
a)複数の時点に対象から採取した生体試料中の細菌抗原抗体マーカーのアレイ(例えば、EcFliC、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcOFliC、CjGT−A、Cjdmh、CjCgtA、SeFljB、EcEra、EcFocA、EcFrvX、EcGabT、EcYbaN、EcYcdG、EcYhgN、EcYedK、EcYidX、LaFrc、LaEno、LjEFTu、BfOmpA、PrOmpA、Cp10bA、CpSpA、EfSant、LmOsp及びそれらの混合物)及びマスト細胞マーカーのアレイ(例えば、血清β−トリプターゼ、ヒスタミン及びプロスタグランジンE2)のレベルを測定するステップと、
b)選択された細菌抗原抗体マーカー及びマスト細胞マーカーの測定されたレベルに統計解析を適用して、選択された細菌抗原抗体マーカー及びマスト細胞マーカーの経時的レベルの表示を含む、経時的な疾患活動性プロファイルを作出するステップと、
c)対象がIBSの進行を経験しているかどうかを判定するステップと
を含む、対象における過敏性腸症候群の進行をモニタリングする方法を提供する。
[0211]特定の実施形態において、複数の時点は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50又はそれ以上の時点を含む。他の例において、複数の時点における最初の時点は、療法の過程中に存在する。非限定的な例として、マーカーのそれぞれは、療法の前に、及び/又は療法過程中の以下の週、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、80、90、100週等の1つ若しくは複数(例えば、複数)で測定することができる。
[0212]いくつかの実施形態において、細菌抗原抗体マーカープロファイルは、複数の細菌抗原抗体マーカーの解析に基づく実験的に得られるプロファイルを含む。1つの態様において、マーカーの濃度又はそれらの測定濃度値をコンピュータ搭載のアルゴリズムにより指数に変換する。特定の態様において、プロファイルは、生物学的データを数字で表す、合成又はヒト由来の出力、スコア又はカットオフ値(複数可)である。プロファイルは、臨床上の決定を判定する又は下す又は下す補助をするために用いることができる。細菌抗原抗体マーカープロファイルは、時間の経過にわたって複数回測定することができる。1つの態様において、アルゴリズムは、既知の試料を用いて訓練し、その後、既知の同一性の試料を用いてバリデートすることができる。
[0213]いくつかの実施形態において、マスト細胞マーカープロファイルは、複数のマスト細胞マーカーの解析に基づく実験的に得られるプロファイルを含む。1つの態様において、マーカーの濃度又はそれらの測定濃度値をコンピュータ搭載のアルゴリズムによりプロファイルに変換する。特定の態様において、プロファイルは、生物学的データを数字で表す、合成又はヒト由来の出力、スコア又はカットオフ値(複数可)である。プロファイルは、臨床上の決定を判定する又は下す又は下す補助をするために用いることができる。マスト細胞マーカープロファイルは、時間の経過にわたって複数回測定することができる。1つの態様において、アルゴリズムは、既知の試料を用いて訓練し、その後、既知の同一性の試料を用いてバリデートすることができる。
[0214]いくつかの実施形態において、療法は、プロバイオティクス及び/又はプレバイオティクスの投与である。「プロバイオティクス」という用語は、摂取されるとき、宿主生物の消化管系に有益である微生物を含む。一般的に、プロバイオティクスは、宿主とその腸内微生物叢との相互作用を改善する。「プレバイオティクス」という用語は、宿主の腸の健康が改善するように腸内微生物叢又はその一部の増殖及び/又は活動を刺激することができる難消化性消耗品を含む。いくつかの実施形態において、療法は、栄養療法である。「栄養療法」という用語は、IBSの症状を緩和する又は個体の消化管系の健康に有益である食品を含む食事療法を含む。
[0215]いくつかの実施形態において、対象におけるIBSの進行又は退行をモニタリングする方法は、
a)第1の時点に採取した第1の生体試料中のEcFliC、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcOFliC、CjGT−A、Cjdmh、CjCgtA、SeFljB、EcEra、EcFocA、EcFrvX、EcGabT、EcYbaN、EcYcdG、EcYhgN、EcYedK、EcYidX、LaFrc、LaEno、LjEFTu、BfOmpA、PrOmpA、Cp10bA、CpSpA、EfSant、LmOsp、及びその組合せからなる群から選択される1、2、3、4、5、6、7、8種又はそれ以上の細菌抗原抗体マーカー(複数可)のレベルを決定するステップと、
b)第2の時点に採取した第2の生体試料中の選択された細菌抗原抗体マーカー(複数可)のレベル(複数可)を決定するステップと、
c)第1の試料中に存在する選択された細菌抗原抗体マーカー(複数可)のレベル(複数可)を第2の試料中に存在する選択された細菌抗原抗体マーカー(複数可)のレベル(複数可)と比較するステップとを含み、選択された細菌抗原抗体マーカー(複数可)のレベル(複数可)の差が対象におけるIBSの進行を示す。
[0216]いくつかの実施形態において、対象におけるIBSの進行又は退行をモニタリングする方法は、
a)第1の時点における第1の試料中のβ−トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2(PGE2)及びその組合せから選択される少なくとも1つのマスト細胞マーカーと併せた、EcFliC、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcOFliC、CjGT−A、Cjdmh、CjCgtA、SeFljB、EcEra、EcFocA、EcFrvX、EcGabT、EcYbaN、EcYcdG、EcYhgN、EcYedK、EcYidX、LaFrc、LaEno、LjEFTu、BfOmpA、PrOmpA、Cp10bA、CpSpA、EfSant、LmOsp、及びその組合せからなる群から選択される少なくとも1つの細菌抗原抗体マーカーのレベルを決定するステップと、
b)第2の時点における第2の試料中の選択された細菌抗原抗体マーカー(複数可)及び選択されたマスト細胞マーカー(複数可)のレベル(複数可)を決定するステップと、
c)選択された細菌抗原抗体マーカー(複数可)及び選択されたマスト細胞マーカー(複数可)のレベルを比較するステップとを含み、第2の試料と比較した第1の試料中のレベル(複数可)が対象におけるIBSの進行又は退行を示す。
[0217]いくつかの実施形態において、第2の試料と比較した第1の試料中の選択された細菌抗原抗体マーカー(複数可)及び選択されたマスト細胞マーカー(複数可)のレベル(複数可)の増加は、対象におけるIBSの進行を示す。いくつかの実施形態において、第2の試料と比較した第1の試料中の選択された細菌抗原抗体マーカー(複数可)及び選択されたマスト細胞マーカー(複数可)のレベル(複数可)の低下は、対象におけるIBSの退行を示す。
[0218]特定の実施形態において、対象におけるIBSの進行をモニタリングする方法は、8種の細菌抗原抗体マーカー及び2種のマスト細胞マーカーのレベルを決定するステップを含む。好ましい実施形態において、対象におけるIBSの進行をモニタリングする方法は、EcFliC、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcOFliC、CjGT−A、Cjdmh、CjCgtA、SeFljB、EcEra、EcFocA、EcFrvX、EcGabT、EcYbaN、EcYcdG、EcYhgN、EcYedK、EcYidX、LaFrc、LaEno、LjEFTu、BfOmpA、PrOmpA、Cp10bA、CpSpA、EfSant、LmOspに対する抗体のレベル並びにマスト細胞マーカートリプターゼ及びPGE2のレベルを決定するステップを含む。
[0219]いくつかの実施形態において、本発明は、
a)試料中に存在する細菌抗原抗体マーカーを細菌抗原抗体マーカー及び細菌抗原抗体結合部分を含む複合体に変換するのに適する条件下で第1の時点に対象から採取した第1の生体試料を細菌抗原抗体結合部分(例えば、細菌抗原又は捕捉抗原)と接触させるステップと、
b)複合体のレベルを決定し、それにより、第1の試料中に存在する細菌抗原抗体マーカーのレベルを決定するステップと、
c)試料中に存在する細菌抗原抗体マーカーを細菌抗原抗体マーカー及び細菌抗原抗体結合部分を含む複合体に変換するのに適する条件下で第2の時点に対象から採取した第2の生体試料を細菌抗原抗体結合部分と接触させるステップと、
d)複合体のレベルを決定し、それにより、第2の試料中に存在する細菌抗原抗体マーカーのレベルを決定するステップと、
e)第1の試料中に存在する細菌抗原抗体マーカーのレベルを第2の試料中に存在する細菌抗原抗体マーカーのレベルと比較するステップとを含み、細菌抗原抗体マーカーのレベルの差が対象における過敏性腸症候群(IBS)の進行を示す、対象におけるIBSの進行をモニタリングする方法を提供する。
[0220]いくつかの実施形態において、細菌抗原又は抗体結合部分は、EcFliC、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcOFliC、CjGT−A、Cjdmh、CjCgtA、SeFljB、EcEra、EcFocA、EcFrvX、EcGabT、EcYbaN、EcYcdG、EcYhgN、EcYedK、EcYidX、LaFrc、LaEno、LjEFTu、BfOmpA、PrOmpA、Cp10bA、CpSpA、EfSant、LmOsp、及びその組合せからなる群から選択される。特定の実施形態において、方法は、少なくとも1つの細菌抗原抗体マーカーのレベルを決定するステップを含む。他の実施形態において、方法は、細菌抗原抗体マーカーのアレイのレベルを決定するステップを含む。
[0221]いくつかの実施形態において、マスト細胞マーカーは、β−トリプターゼ、ヒスタミン、プロスタグランジンE2及びその組合せからなる群から選択される。
[0222]いくつかの実施形態において、方法は、試料中に存在する少なくとも1つのマスト細胞マーカーのレベルを決定するステップをさらに含む。他の実施形態において、方法は、1、2、3、4、5、6、7又は8種のマスト細胞マーカーなどの複数のマスト細胞マーカーのうちの1つのレベルを決定するステップをさらに含む。
[0223]他の実施形態において、細菌抗原抗体結合部分は、分析すべき細菌抗原抗体により認識される捕捉抗原である。いくつかの例において、捕捉抗原は、細菌抗原ポリペプチド又はその断片である。実施例6で、捕捉抗原をそれらの免疫原性部位に基づいて選択する方法を提供する。
[0224]本発明に従って細菌抗原に対する特異抗体のレベル(例えば、量)を分析又は検出するための既に商業的に入手できない抗体の発生及び選択は、いくつかの方法で達成することができる。例えば、1つの方法は、当技術分野で公知のタンパク質発現及び精製方法を用いて対象のポリペプチド(すなわち、抗原)を発現させ、及び/又は精製することであるが、他の方法は、当技術分野で公知の固相ペプチド合成方法を用いて対象のポリペプチドを合成することである。例えば、Guide to Protein Purification、Murray P. Deutcher編、Meth. Enzymol.、182巻(1990年)、Solid Phase Peptide Synthesis、Greg B. Fields編、Meth. Enzymol.、289巻(1997年)、Kisoら、Chem. Pharm. Bull.、38巻、1192〜99頁(1990年)、Mostafaviら、Biomed. Pept. Proteins Nucleic Acids、1巻、255〜60頁(1995年)及びFujiwaraら、Chem. Pharm. Bull.、44巻、1326〜31頁(1996年)を参照のこと。対象の精製又は合成ポリペプチドは、例えば、Accelagen(San Diego、CA)、Exon Biosystems(San Diego、CA)及びGenScript(Piscataw、NJ)から商業的に入手できる。精製又は合成ポリペプチドは、例えば、マウス又はウサギに注射して、ポリクローナル又はモノクローナル抗体を作出することができる。当業者は、例えば、Antibodies、A Laboratory Manual、Harlow及びLane編、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N. Y.(1988年)に記載されているように、抗体の製造のために多くの手順が利用できることを認識する。当業者は、抗体を模倣する(例えば、抗体の機能的結合領域を保持する)結合断片又はFab断片を調製することができることも認識する。例えば、Antibody Engineering: A Practical Approach、Borrebaeck編、Oxford University Press、Oxford(1995年)及びHuseら、J. Immunol.、149巻、3914〜3920頁(1992年)を参照のこと。
[0225]少なくとも1つの細菌抗原抗体マーカー及び/又は少なくとも1つのマスト細胞マーカーのレベルを検出、測定又は決定するために用いる試料は、一般的に全血、血漿、血清、唾液、尿、便(すなわち、糞便)、涙液及び他の体液又は小腸若しくは結腸試料などの組織試料(すなわち、生検材料)である。試料は、血清、全血、血漿、便、尿又は組織生検材料であることが好ましい。特定の例において、本発明の方法は、試料中の少なくとも1つの細菌抗原抗体マーカーのレベルを検出又は決定する前に個体から試料を得るステップをさらに含む。好ましい実施形態において、追加の細菌抗原抗体マーカー及び/又はマスト細胞マーカーを血液又は血清試料から検出する。他の実施形態において、追加の細菌抗原及び/又はマスト細胞マーカーを便試料又は対象の腸からの生検材料から検出する。
C.診断方法
[0226]本発明のいくつかの実施形態において、診断モデルは、IBSの臨床サブタイプ及び健常対照の既知の転帰を有する後ろ向きコホートを用いて確立する。いくつかの例において、診断プロファイルは、細菌抗原抗体マーカーモデル及び/又はマスト細胞マーカーモデルを含む。診断モデルは、IBSを有する個体及び健常対照に関する後ろ向きデータを統計アルゴリズムに適用することにより作出される。いくつかの実施形態において、細菌抗原抗体モデルは、後ろ向きコホートにおいて決定した1つ又は複数の細菌抗原抗体マーカーのレベルにロジスティック回帰分析を適用することにより得られる。いくつかの実施形態において、マスト細胞マーカーモデルは、後ろ向きコホートにおいて決定した1つ又は複数のマスト細胞マーカーのレベルにロジスティック回帰分析を適用することにより得られる。例えば、実施例1で例示するように、診断モデルは、細菌抗原抗体マーカー及びマスト細胞マーカーの後ろ向きデータ並びにロジスティック回帰機械学習アルゴリズムを用いて作出した。
D.統計解析
[0227]特定の例において、統計アルゴリズム又は統計解析は、学習統計分類子システムである。本明細書で用いているように、「学習統計分類子システム」という用語は、複合データセット(例えば、対象のマーカーのパネル及び/又はIBS関連症状のリスト)に適応し、そのようなデータセットに基づいて決定を下すことができる機械学習アルゴリズム技術を含む。学習統計分類子システムは、ランダムフォレスト(RF)、分類及び回帰木(C&RT)、ブースト木、ニューラルネットワーク(NN)、サポートベクターマシン(SVM)、一般カイ二乗自動相互作用検出器モデル、相互作用木、多変量適応型回帰スプライン、機械学習分類子並びにその組合せからなる群から選択することができる。学習統計分類子システムは、木に基づく統計アルゴリズム(例えば、RF、C&RT等)及び/又はNN(例えば、人工NN等)であることが好ましい。本発明に用いるのに適する学習統計分類子システムのさらなる例は、米国特許出願公開第2008/0085524号、第2011/0045476号及び第2012/0171672号に記載されている。特定の実施形態において、方法は、対象からの試料をIBS試料又は非BS試料(例えば、健常対照からの試料)と分類するステップを含む。
[0228]特定の例において、統計アルゴリズムは、単一学習統計分類子システムである。単一学習統計分類子システムは、RF又はC&RTなどの木に基づく統計アルゴリズムを含むことが好ましい。非限定的な例として、単一学習統計分類子システムは、予測若しくは確率値並びに単独での又は少なくとも1つの症状の存在若しくは重症度(すなわち、症状プロファイル)と組み合わせた、少なくとも1つの診断マーカーの存在又はレベル(すなわち、細菌抗原抗体マーカープロファイル及び/又はマスト細胞マーカープロファイルを含む診断マーカープロファイル)に基づいて試料をIBS試料又は非BS試料(例えば、健常対照)と分類するために用いることができる。単一学習統計分類子システムの使用により、感度、特異度、正の予測値、負の予測値及び/又は少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の全体の精度で試料がIBS試料と一般的に分類される。したがって、IBS試料又は非BS試料としての試料の分類は、対象におけるIBSの診断を補助するのに有用である。
[0229]特定の他の例において、統計アルゴリズムは、少なくとも2つの学習統計分類子システムの組合せである。学習統計分類子システムの組合せは、例えば、相前後して又は並行して用いられるRF及びNNを含むことが好ましい。非限定的な例として、RFを最初に用いて、単独での又は症状プロファイルと組み合わせた、診断マーカープロファイルに基づいて予測又は確率値を作出することができ、NNを次に用いて、予測又は確率値及び同じ若しくは異なる診断マーカープロファイル又はプロファイルの組合せに基づいて試料をIBS試料又は非BS試料と分類することができる。本発明のハイブリッドRF/NN学習統計分類子システムは、試料を感度、特異度、正の予測値、負の予測値及び/又は少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の全体の精度で試料をIBS試料と分類することが有利である。特に好ましい実施形態において、統計アルゴリズムは、ランダムフォレスト分類子又はランダムフォレスト分類子及びニューラルネットワーク分類子の組合せである。
[0230]いくつかの例において、学習統計分類子システム又は複数の学習統計分類子システムを用いることにより得られたデータは、処理アルゴリズムを用いて処理することができる。そのような処理アルゴリズムは、例えば、多層パーセプトロン、バックプロパゲーションネットワーク及びレベンバーグ−マーカート(Levenberg−Marquardt)アルゴリズムからなる群から選択することができる。他の例において、並行又は連続式などの、そのような処理アルゴリズムの組合せを用いることができる。
[0231]本明細書に記載の種々の統計学的方法及びモデルは、健常者及びIBS患者からの試料のコホートを用いて訓練し、試験することができる。例えば、医師により、好ましくは胃腸病専門医により、例えば、米国特許出願公開第2010/0094560号に記載されているように生検、結腸鏡検査法又は免疫測定法を用いてIBS又はその臨床サブタイプを有すると診断された患者からの試料は、本発明の統計学的方法及びモデルを訓練し、試験するのに用いるのに適している。IBSを有すると診断された患者からの試料は、例えば、米国特許第8,463,553号並びに米国特許出願公開第2010/0094560号及び第2008/0085524号に記載されているように免疫測定法を用いてIBSサブタイプに層別化することもできる。健常者からの試料は、IBS試料と同定されなかったものを含み得る。当業者は、本発明の統計学的方法及びモデルを訓練し、試験するのに用いることができる患者試料のコホート得るためのさらなる手法及び診断基準について知っている。
E.アッセイ及びキット
[0232]1つの態様において、本発明は、方法が(a)固相表面を細菌抗原又はその抗原性断片でコートするステップと、(b)試料中に存在する細菌抗原抗体を細菌抗原及び細菌抗原抗体を含む複合体に変換するのに適する条件下で固相表面を試料と接触させるステップと、(c)三元複合体を形成するのに適する条件下で細菌抗原及び細菌抗原抗体を検出抗体と接触させるステップと、(d)三元複合体を発光又は化学発光基質と接触させるステップとを含む、試料中の細菌抗原抗体マーカーの検出のためのアッセイを提供する。
[0233]1つの実施形態において、検出抗体をアルカリホスファターゼにコンジュゲートさせる。他の実施形態において、検出抗体を酵素にコンジュゲートさせず、方法は、(i)四元複合体を形成するのに適する条件下で、三元複合体を、アルカリホスファターゼにコンジュゲートさせた第3の抗体と接触させるステップと、(ii)四元複合体を発光又は化学発光基質と接触させるステップとをさらに含む。
[0234]適切な抗体対をサンドイッチELISAにおける捕捉及び検出抗体に用いることができる。当業者は、アッセイのための適切な抗体対をどのようにして選択するかを知り、認識する。一般的に、第1の(捕捉)抗体の結合が第2の(検出)抗体を妨害しないように異なるエピトープにおいて対象の標的、例えば、ベータ−トリプターゼに結合する2つの抗体を選択する。特定の実施形態において、複合体の検出を補助するために、検出抗体を酵素、例えば、アルカリホスファターゼにコンジュゲートさせる。他の実施形態において、検出抗体に結合している、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ)にコンジュゲートさせた第2の抗体をアッセイに用いることができる。
[0235]一般的に、複合体は、発光基質、例えば、Ultra LITE(NAG Research Laboratories)、SensoLyte(AnaSpec)、SuperSignal ELISA Femto Maximum Sensitivity Substrate(Thermo Scientific)、SuperSignal ELISA Pico Chemiluminescent Substrate(Thermo Scientific)又はCPSD(二ナトリウム3−(4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(5’−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}−4−イル)フェニルホスフェート;Tropix,Inc.)などのキットに見いだされる発光基質を用いることにより検出される。
[0236]細菌抗原の抗原性断片のアミノ酸配列は、EMBOSSなどのソフトウエアアルゴリズムを用いてin silicoで免疫原性部位を予測することにより同定することができる。例えば、抗原タンパク質の一連のペプチド断片の疎水性、近接性(アクセシビリティ)及び柔軟性などの性質を評価して、最も抗原性である(例えば、最高の抗原性スコアを有する)と予測されるペプチド断片を決定する。EMBOSSを用いる詳細な記述は、実施例6に見いだされる。
[0237]IBSの診断を補助するためのアッセイの1つの実施形態において、試料は、ヒト全血又は血清である。
[0238]IBSの診断を補助するためのアッセイの他の実施形態において、試料は、IBSを有すると疑われる対象から得る。
[0239]IBSの診断を補助するためのアッセイの他の実施形態において、試料中のβ−トリプターゼの存在又はレベルを検出するステップは、検出装置の使用を含む。IBSの診断を補助するためのアッセイの他の実施形態において、検出装置は、発光プレートリーダーを含む。IBSの診断を補助するためのアッセイの他の実施形態において、検出装置は、分光光度計を含む。
[0240]他の実施形態において、本発明は、(a)β−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミンをβ−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミン並びに捕捉抗β−トリプターゼ、抗プロスタグランジンE2及び/又は抗ヒスタミン抗体を含む複合体に変換するのに適する条件下でβ−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミンを有する試料を接触させるステップと、(b)複合体を酵素標識インジケーター抗体と接触させて、複合体を標識複合体に変換するステップと、(c)標識複合体を酵素の基質と接触させるステップと、(d)試料中のβ−トリプターゼ、プロスタグランジンE2及び/又はヒスタミンの存在又はレベルを検出するステップとを含む、IBSの診断を補助するためのアッセイを提供する。
[0241]特定の実施形態において、提供するアッセイは、本明細書に記載の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、29、30種又はそれ以上のバイオマーカーの検出を含む。好ましい実施形態において、提供するアッセイは、少なくとも1つの細菌抗原抗体マーカー、少なくとも1つのマスト細胞マーカー及び場合によって少なくとも1つのストレス因子マーカーの検出を含む。
[0242]以下の実施例は、請求の範囲に記載されている発明を例示するために提示するが、限定するものではない。
実施例1: 細菌抗原抗体マーカーを用いて、及び細菌抗原抗体マーカーをマスト細胞マーカーと組み合わせて用いて、IBSの診断を補助する方法
[0243]この実施例では、細菌抗原抗体マーカーを用いてIBSの診断を補助する方法を例示する。この実施例では、細菌抗原抗体マーカー及びマスト細胞マーカーの組合せを用いてIBSを診断する方法をさらに例示する。
[0244]背景: 細菌叢の変化は、IBSの関連病原因子であると考えられる。細菌鞭毛の主要な構造構成要素である、フラジェリンは、Toll様受容体5による認識により個体における自然免疫系及び適応免疫系の両方を活性化する。A4−Fla2及びFla−X(細菌フラジェリンタンパク質)に対する抗体は、健常対照と比較してIBSを有する患者で有意に高頻度で存在することが認められた(それぞれp=0.004及びp=0.009;Schoepferら、Neurogastroenterol. Motil.20巻、1110〜1118頁(2008年))。消化管微生物叢を標的とするIBS治療薬リファキシミンは、腸内細菌に影響を及ぼし、宿主個体に負の影響を及ぼす細菌産物を減少させるように思われる。リファキシミン対プラセボの奏功率は、第1のエンドポイントにおいて40.7%対31.7%であり、重要な第2のエンドポイントにおいて40.2%対30.3%であることが示された。消化管微生物叢に対するリファキシミンの可能な作用機序は、宿主個体の免疫応答などの細菌の局所粘膜接触状態の減少並びに細菌及び宿主個体の応答の両方の抗生物質による変化を含む。
[0245]細菌フラジェリン(例えば、Cbir1、FlaX及びFla2)に対する抗菌抗体は、炎症性腸疾患(IBD)の有用なバイオマーカーであることが立証された。大腸菌K12タンパク質(例えば、Era、FocA、FrvX、GabT、YbaN、YcdG、YhgN、YedK及びYidX)に対する最近発見された抗体のサブセットは、クローン病(CD)を有する個体と健常対照とを、またCDを有する個体と潰瘍性大腸炎を有する個体とを区別するのに用いることができる(Chenら、Mol. Cell Proteomics、8巻、1765〜1776頁、(2009年))。カンピロバクター・ジェジュニ(C.jejuni、Cj)、大腸菌(E.Coli、Ec)、腸炎菌(S.enteritidis、Se)、フレキシナ赤痢菌(S.flexneri、Sf)による感染によりしばしば引き起こされるIBSに随伴する感染後小腸細菌過剰増殖(SIBO)を有する個体は、感染菌のフラジェリンタンパク質に対する抗体を有することがある(Spiller R及びGarsed K.、Gastroenterology、136巻、1979〜1988頁(2009年))。フラジェリンタンパク質は、カンピロバクター・ジェジュニFlaA、カンピロバクター・ジェジュニFlaB、大腸菌FliC、大腸菌O157:H7FliC、フレキシナ赤痢菌FliC、腸炎菌FlijBを含む。腸炎菌は、サルモネラ菌(Salmonella enterica)の種である。マスト細胞の過形成は、感染後IBS及び非感染後IBSの両方においてこれらの細菌による感染の後に一般的に観察される。
[0246]マスト細胞は、過敏性腸症候群(IBS)の病因において重要な役割を果たす。遠位腸区域におけるマスト細胞の浸潤及び活性化の増加は、IBSの症状の発現及び重症度に関連する。これらの細胞は、IBS患者における粘膜刺激に対する内臓求心性神経の応答の上昇にも関連付けられている。β−トリプターゼ、ヒスタミン及びプロスタグランジンE2(PGE2)などのマスト細胞マーカーの測定は、IBSの臨床診断に重要な意味を有する。これらのマーカーは、特に粘膜バリアにおいて重要な免疫調節機能を有する。多数のIBS患者は、微生物叢抗原/抗体組成の変化を伴うマスト細胞マーカーの増加を有する。
[0247]方法:本明細書に記載することは、個体からの試料中の細菌抗原抗体及びマスト細胞マーカーのレベルを測定し、前記レベルを対照レベルと比較し、個体がIBSを有する可能性の増大を有するかどうかを判定することによりIBSの診断を補助する方法の開発及び妥当性確認である。この方法において、大腸菌FliC、フレキシナ赤痢菌FliC、カンピロバクター・ジェジュニFlaA、カンピロバクター・ジェジュニFlaB、大腸菌Era、大腸菌O157:H7FliC、大腸菌FrvX、大腸菌GabTなどの細菌抗原に対する抗体並びにβ−トリプターゼ、ヒスタミン及びプロスタグランジンE2などのマスト細胞マーカーの血清レベルを健常対照及びIBSを有する患者からの試料において測定した。データを用いてロジスティック回帰機械学習アルゴリズムを実施して、健常対照及びIBSを有する個体から採取した試料について情報を与え、予測するマーカーを選択する。
[0248]健常対照試料及びIBS試料の細菌抗原抗体及びマスト細胞マーカーのマーカー値を計算し、ロジスティック回帰モデリングにより解析した。解析により、マーカーのレベルがIBS又はHCを予測し得るかどうかを示す各マーカーの推定値が作出された。図4にマーカー値及び試料からの推定値の導出を例示する。推定値は、マーカーがIBSの予測に対する正の効果を有することを表す正の値を有し得る。より大きい正の値を有する推定値は、IBSとHCとを区別することに対してより大きい効果を有する。推定値は、マーカーがIBSの予測に対する負の効果を有することを示す負の値を有し得る。この場合には、マーカー値は、HCよりIBS試料において低い。実質的に0に近い推定値は、マーカーがIBSの予測に寄与しないことを示す。
[0249]この研究では、我々はコホート#1〜4と表示した4件の前向き収集臨床試験(prospectively-collect clinical trials)からの試料を用いた。試料は、IBSを有する個体及び健常対照からのものである。それぞれの特定の試験及び要件を表4〜表7に示す4件の臨床試験における組み入れ及び除外の選択基準は、特有のものであった。
[0250]IBSを予測するための情報を与えるマーカーを選択するために、コホート#1〜4からの試料からの細菌抗原抗体及びマスト細胞マーカーを含む17種のマーカーのデータをロジスティック回帰モデルに適用した。マーカーのそれぞれの計算推定値を表8に示す。赤池情報量基準(AIC)を用いて、モデルを、情報を与える可能性があるマーカーに圧縮した。統計的に有意な推定値(p<0.1)を有するマーカーを、情報を与える可能性があると判定した。IBSを予測すると判定された細菌抗原抗体マーカーは、大腸菌FliC、フレキシナ赤痢菌FliC、カンピロバクター・ジェジュニFlaA、カンピロバクター・ジェジュニFlaB、大腸菌Era、大腸菌O157:H7FliC、大腸菌FrvX、大腸菌GabTを含む。
[0251]研究の結果は、個体からの試料中の細菌抗原抗体マーカー(例えば、大腸菌FliC、フレキシナ赤痢菌FliC、カンピロバクター・ジェジュニFlaA、カンピロバクター・ジェジュニFlaB、大腸菌Era、大腸菌O157:H7FliC、大腸菌FrvX、大腸菌GabT)のレベルを測定することは、個体がIBSを有するかどうかを予測するのに有用であることを示すものである。結果は、細菌抗原並びにマスト細胞マーカー(例えば、β−トリプターゼ、ヒスタミン及びプロスタグランジンE2)のレベルを測定することは、IBS患者と健常対照との区別に明確に寄与することも示すものである。
[0252]結果:血清β−トリプターゼの予測能力をコホート#1〜4からの試料を用いて解析した。図5に健常対照対IBSを有する個体の試料中の血清β−トリプターゼの分布を示す。コホート#1については、血清β−トリプターゼの推定値が0.375(p=0.00697)であり、これにより、試料中の血清β−トリプターゼレベルがIBS患者と健常対照との区別に明確に寄与していることがわかる。コホート#2についての推定値は、0.115(p=0.0771)であった。コホート#3については、推定値は、−0.031(p=0.657)であり、コホート#4については、推定値は、−0.053(p=0.403)であった。データをコホート別にクラスター化した場合のすべてのデータの線形混合モデルにおいて、推定値は、0.115(p=0.0166)であった。コホート#3を除くすべてのデータの線形混合モデルにおいて、推定値は、0.216(p<0.0001)であった。結果は、血清β−トリプターゼのレベルがIBS又は健常対照の診断を予測し得ることを示すものであった。
[0253]コホート#1〜4からの試料中のヒスタミンレベルの回帰分析を実施した。推定値は、コホート#1について0.2118(p=0.0023)であった。結果は、ヒスタミンレベルがIBS又は健常対照の診断を予測し得ることを示すものである。図6に健常対照又はIBSを有する個体からの試料間の血清ヒスタミン分布を示す。
[0254]本研究に用いた健常対照又はIBSを有する個体からの試料中の血清PEG2分布を図7に示す。PEG2の回帰モデリングにより、コホート#1についての推定値は、−0.012(p=0.920)であり、コホート#2については0.034(p=0.788)であり、コホート#3については−0.220(p=0.029)であり、コホート#4については0.032(p=0.0005)であった。すべてのデータ及びコホート別のクラスターの線形混合モデルにおいて、推定値は、0.0843(p=0.1167)であった。コホート#3を除くすべてのデータの線形混合モデルにおいて、推定値は、0.205(p<0.116)であった。結果は、試料中の血清PGE2のレベルがIBSの診断を予測することができ、IBSとHCとを区別することができることを示すものである。
[0255]IBSを予測するためにマスト細胞マーカーを組み合わせて用いることができるかどうかを判定するために、本発明者らは、血清β−トリプターゼ、血清ヒスタミン及びPGE2に関するコホート#1〜4からのデータをロジスティック回帰モデルに適用した。293の試料を解析し、100のトレインテストスプリット(train-test split)を内部妥当性確認に用いた。感度及び特異度に関するROC曲線は、0.623のROC AUCを有していた(図8)。結果は、血清β−トリプターゼヒスタミン及びプロスタグランジンE2の組合せがIBSとHCとの区別に明確に寄与し得ることを示すものである。
[0256]IBS対健常対照を予測する細菌抗原抗体マーカーの診断可能性を評価するために、我々は、ロジスティック回帰機械学習アルゴリズムでコホート#1〜4からの細菌抗原マーカー(例えば、大腸菌FliC、フレキシナ赤痢菌FliC、カンピロバクター・ジェジュニFlaA、カンピロバクター・ジェジュニFlaB、大腸菌Era、大腸菌O157:H7FliC、大腸菌FrvX、大腸菌GabT)に関するデータを解析した。511の試料を評定し、100のトレインテストスプリットを内部妥当性確認に用いた。ROC AUCは、0.813であった(図9)。結果は、細菌抗原抗体マーカーの組合せが、機械学習アルゴリズムにおけるHCとIBSとの区別に強力且つ明確に寄与し得ることを示すものである。
[0257]HC及びIBSを予測するうえでの細菌抗原抗体マーカー及びマスト細胞マーカーの診断可能性を評価するために、細菌抗原抗体マーカー(例えば、大腸菌FliC、フレキシナ赤痢菌FliC、カンピロバクター・ジェジュニFlaA、カンピロバクター・ジェジュニFlaB、大腸菌Era、大腸菌O157:H7FliC、大腸菌FrvX、大腸菌GabT及びその組合せに対する抗体)並びにマスト細胞マーカー(例えば、PGE2及びβ−トリプターゼ)を単一診断ロジスティック回帰アルゴリズムで解析した。コホート#1〜4からの160の試料を試験し、100のトレインテストスプリットを内部妥当性確認に用いた。ROC AUCは、0.922であった(図10)。データは、マスト細胞及び細菌抗原抗体マーカーを組み合わせることによってHCとIBSとを区別する予測能力が得られることを示すものである。マスト細胞マーカーは、細菌抗原抗体マーカーによって与えられない追加情報に寄与し、したがって、2種のマーカーセットの組合せは、IBSを予測するための診断モデルにおいて相互補完的である。
[0258]結論:大腸菌FliC、フレキシナ赤痢菌FliC、カンピロバクター・ジェジュニFlaA、カンピロバクター・ジェジュニFlaB、大腸菌Era、大腸菌O157:H7FliC、大腸菌FrvX、大腸菌GabTに対する抗体などの細菌抗原抗体マーカーは、IBSとHCとを区別する有効な予測バイオマーカーである。細菌抗原抗体レベルは、マスト細胞マーカー(例えば、血清β−トリプターゼ、ヒスタミン及びプロスタグランジンE2)などの他のIBSバイオマーカーと組み合わせて、IBSの診断における精度を改善することができる。
実施例2:フラジェリンの系統発生解析
[0259]背景:我々は、IBS微生物叢のフラジェリン配列を研究し、それをIBDを有する個体における一般的細菌のフラジェリン配列と比較した。戦略は、IBSとIBD及び/又は健常対照とを区別することができる候補IBS特異的バイオマーカーを同定するように計画した。一般的に、IBD微生物叢は、CBir1、Fla2及びFlaXなどのフラジェリンタンパク質を有するが、IBS微生物叢は、大腸菌K12のFliC、フレキシナ赤痢菌のFliC、腸炎菌のFliC、カンピロバクター・ジェジュニのFlaA、カンピロバクター・ジェジュニのFlaB、大腸菌O157:H7のFliC及び腸炎菌のFljBなどのフラジェリンタンパク質を有する。IBSの病原細菌は、カンピロバクター・ジェジュニ、フレキシナ赤痢菌、大腸菌O157:H7及び腸炎菌(病原性が減少する順序)である。アミノ酸配列アライメントに用いたIBD及びIBS関連細菌からのフラジェリンタンパク質を表9に示す。
[0260]アミノ酸アライメントは、多重配列アライメントアルゴリズムを用いて実施した。図11にアライメント解析を示し、緑色、橙色及び赤色バーは、類似性のレベルを表し、黒色領域は、より高い類似性の領域を表す。図12にN末端領域のアライメントを示す。図13に中間領域のアライメントを示し、図14にC末端領域のアライメントを示す。C末端領域では、IBD関連細菌からのフラジェリンA4−Fla2、FlaX及びCBir1は、互いにより類似しているIBS細菌からのフラジェリンと比べた場合よりも互いに類似している。IBS細菌からのフラジェリンのうち、カンピロバクター・ジェジュニのFlaA及びFlaBは、他のIBS関連フラジェリンと比べた場合よりも互いに類似している。図15にアライメントデータの系統樹を示す。特に、その系統樹はCBir1を外集団として選択した無根近隣結合樹であり、枝の長さは隔たり及び配列相違性に対応する。IBD対IBS関連フラジェリンの配列類似性を表10における類似性パーセントマトリックスに示す。
実施例3: 細菌抗原に対する抗体を検出するための血清学的アッセイ(間接的コーティング)
[0261]この実施例では、個体からの試料中の細菌抗原抗体の存在及びレベルを検出するのに有用な血清学アッセイを記載する。アッセイをここに詳述する。
[0262]プロトコール:96ウエルマイクロタイタープレートを100μl/ウエルの1μg/ml抗His抗体(1xPBSで希釈)で、4℃で一夜コートして、抗体をプレートに結合させた。プレートをPBS−Tで4回洗浄した。残存PBS−Tを除去した。プレートを炭酸緩衝液中2μl/mlのHisタグ抗原100μlでコートした。プレートを室温で1.5時間インキュベートした。250μl/ウエルのブロッキング緩衝液をプレートに加え、室温に1時間維持した。希釈緩衝液中名目100EU/ml(1:50)の標準を調製することによって標準を調製し、その後、100EU/ml標準から希釈緩衝液を用いて6回の2倍連続希釈を行った。試料及び陽性対照は、希釈緩衝液で1:100希釈を行うことにより調製した。十分なブロッキングの後、ブロッキング溶液を除去し、100μl/ウエルの標準及び試料をプレートに加えた。プレートを緩やかに撹拌しながら1時間インキュベートした。その後、プレートをPBS−Tで4回洗浄し、残存PBS−Tを除去した。Hisタグ抗原に結合した細菌抗原抗体を認識するアルカリホスファターゼコンジュゲート抗体(AP−抗体)を希釈緩衝液で1:5000に希釈し、100μl/ウエルの希釈AP−抗体をプレートに加えた。緩やかに撹拌しながら室温で1時間インキュベートした後、プレートをPBS−Tで4回洗浄し、残存PBS−Tを除去した。100μl/ウエルのp−ニトロフェニルリン酸を加え、プレートを暗所で約15分間インキュベートした。50μl/ウエルの4N NaOH停止溶液の添加により酵素反応を停止させた。発光マイクロプレートリーダーを用いて405nmでプレートを読み取った。
実施例4:細菌抗原に対する抗体を検出するための血清学的アッセイ(直接的コーティング)
[0263]この実施例では、個体からの試料中の細菌抗原(例えば、大腸菌FliC、フレキシナ赤痢菌FliC、カンピロバクター・ジェジュニFlaA、カンピロバクター・ジェジュニFlaB、大腸菌Era、大腸菌O157:H7FliC、大腸菌FrvX、大腸菌GabT、カンピロバクター・ジェジュニ81−045、カンピロバクター・ジェジュニ81−128及びカンピロバクター・ジェジュニ81−00)に対する抗体の存在及びレベルを検出するのに有用な血清学アッセイを記載する。アッセイをここに詳述する。
[0264]プロトコール:96ウエルマイクロタイタープレートを100μl/ウエルの1μg/mlHisタグ細菌抗原ポリペプチド又はその断片(1xPBSで希釈)で、4℃で一夜コートした。プレートをPBS−Tで4回洗浄した。残存PBS−Tを除去した。250μl/ウエルのブロッキング緩衝液をプレートに加え、室温に1時間維持して、プレートをブロックした。標準は、1)希釈緩衝液を用いて名目100EU/ml(1:50)の標準を準備し、2)100EU/ml標準から6回の2倍連続希釈を行うことにより調製した。試料及び陽性対照は、希釈緩衝液で1:100希釈を行うことにより調製した。十分なブロッキングの後、ブロッキング溶液を除去し、100μl/ウエルの標準及び試料をプレートに加えた。プレートを緩やかに撹拌しながら1時間インキュベートした。プレートをPBS−Tで4回洗浄し、残存PBS−Tを除去した。アルカリホスファターゼコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG抗体(AP−ヤギ抗HuIgG)を希釈緩衝液で1:5000に希釈し、100μl/ウエルの希釈AP−ヤギ抗HuIgGをプレートに加えた。緩やかに撹拌しながら室温で1時間インキュベートした後、プレートをPBS−Tで4回洗浄し、残存PBS−Tを除去した。100μl/ウエルのp−ニトロフェニルリン酸を加え、プレートを暗所で約15分間インキュベートした。50μl/ウエルの4N NaOH停止溶液の添加により反応を停止させた。発光マイクロプレートリーダーを用いて405nmでプレートを読み取った。
実施例5:コルチゾールレベルとIBS診断との相関
[0265]この実施例ではIBS及びIBSサブタイプを診断するうえでのコルチゾールレベルの予測値を決定する方法を記載する。この実施例ではコルチゾールとサイトカイン又は細菌抗原との比がIBSの診断を補助し得ることも示す。
[0266]図16に健常対照及びIBS−C、IBS−D又はIBS−Mを有する患者を含む患者の後ろ向きコホートにおける午前及び午後の様々なサイトカイン(例えば、IL−10、IL−12p70、IL−6、IL−8及びTNF)並びにホルモン(例えば、セロトニン及びコルチゾール)のレベルを例示する。データは、IL−8、コルチゾール、セロトニン、IL−6及びTNFのレベルが患者のIBS疾患状態によって変動することを示している。したがって、これらのサイトカイン及びホルモンは、対象におけるIBSの診断を補助し得る。興味深いことに、サイトカイン及びホルモンのレベルは、試料を採取した時刻によって異なっている。コルチゾールレベルの線形回帰分析により、午後の試料中のコルチゾールレベルが健常対照対IBS−Dを高度に予測することが示された(図17)。
[0267]コルチゾールとホルモン又はサイトカインとの関係性を検討した。コホートからのデータセットにおけるコルチゾールのレベルと他のマーカーのレベルとの間に有意な関連は認められなかった(図18)。IL−6とコルチゾールとの間に非統計的有意な(non−statistically significant)関連があった(p=0.0674)。
[0268]データを解析し、各患者セットについてコルチゾールとIL−6との比を作出するために用いた。図19に健常対照患者及びIBS−C、IBS−D又はIBS−Mを有する患者のコルチゾール:IL−6比を示す。
[0269]解析を拡大して、ストレスホルモン(例えば、コルチゾール若しくはBDNF)と他のストレス因子、細菌抗原抗体マーカー(例えば、EcFliC、SfFliC、CjFlaA、CjFlaB、EcEra、EcOFliC、EcFrvX、EcGabT、Cj81−045、Cj81−128、Cj81−008)、炎症性サイトカインマーカー(例えば、CRP、SAA、ICAM、VCAM、PII)又はマスト細胞マーカー(例えば、PGE2、ヒスタミン、トリプターゼ)との間の関連を同定した。図20にコルチゾールベースの解析をグラフの形で示す。図21に対数変換変量に関する多重線形回帰の結果を示す。方法は、データセットの他のマーカーをコントロールしながら1つの特定のマーカーとコルチゾールとの関係性を評定することに基づいている。図22にコルチゾールと細菌抗原EcOFliCとの比が患者群間で有意に異なっていることを示す(F=3.343、p=0.020)。したがって、コルチゾール:EcOFliCの比は、IBSを予測するものであり、IBS及び/又はそのサブタイプの診断を補助し得る。図23に健常対照、IBS−C、IBS−D及びIBS−M患者におけるコルチゾールのレベルを示す。
実施例6:細菌抗原タンパク質の免疫原性部位の予測
[0270]この実施例では細菌抗原タンパク質の免疫原性部位(例えば、領域)を予測する方法を例示する。細菌抗原タンパク質の免疫原性部位に対応するペプチドは、作出し、例えば、IBSを有すると疑われる又は有するヒトからの血清試料などの試料中に位置する細菌抗原に対する抗体を捕捉するために記載する方法で用いることができる。
I.方法
[0271]オープンソースであるEMBOSS(例えば、Kolaskarら(1990)、FEBS Letters、276巻、172〜174頁参照)を用いて、抗原タンパク質の抗原性部位を予測することが可能であった。該ソフトウエアは、実験的に決定された169種の抗原決定基を組み込んでいた。該ソフトウエアは、決定基当たり20未満のアミノ酸を有するそれらの156種(合計2066残基)を選択し、抗原決定基における各残基の出現頻度としてのf(Ag)を計算した[f(Ag)=エピトープ_出現/2066]。
[0272]タンパク質セグメントの疎水性、近接性及び柔軟性を公知の方法により評価した(例えば、Kolaskarら;Parker JMRら(1986)、Biochemistry、25巻、5425〜5432頁参照)。所定のタンパク質において、7マーの各残基の疎水性、近接性及び柔軟性の合計を7マーの中央残基に割り当てた。7マー値のいずれかがタンパク質の平均を上回っていた場合、残基は、表面上にあると考えられた。これらの結果を用いて、表面におけるアミノ酸の出現の頻度f(s)を計算した。この方法を、Kolaskarらにより記載されたように、20種の天然アミノ酸に用いた。B、Z、Xの値をEdayhoff.dat(Dayhoffデータ)からの重み付け平均を用いて計算し、合計を計算した場合に無視した。抗原性プロペンシティA(p)をA(p)=f(Ag)/f(s)として計算した。
[0273]以下のステップを用いて抗原決定基を予測した。
1)各重複7マーの平均プロペンシティを計算し、中央残基(すなわち、i+3)に割り当て、
2)平均A(p)avをタンパク質全体について計算し、
3)(a)タンパク質全体についてA(p)avが≧1.0である場合、A(p)≧1.0を有するすべての残基を潜在的に抗原性であると考え、
3)(b)タンパク質全体についてA(p)avが<1.0である場合、A(p)>A(p)avを有するすべての残基を潜在的に抗原性であると考え、
4)すべての連続残基がステップ3により選択された6マーを抗原決定基と考えた。
[0274]前記方法を用いて選択したパラメーターを以下の表11に要約する。
II.結果
A.EcEraの抗原性断片
[0275]オンラインで利用できるEMBOSSソフトウエアを用いて、EcEraの抗原性断片の配列を予測することが可能であった。最高の抗原性断片が図24に見られる。EcEraの3つの最高抗原性スコアは、以下の通りである。
1.残基86→98におけるスコア1.213長さ13*
配列:IGDVELVIFVVEG(配列番号1)
8698Max_score_pos:92
2.残基116→129におけるスコア1.194長さ14*
配列:KAPVILAVNKVDNV(配列番号2)
116129Max_score_pos:120
3.残基207→221におけるスコア1.166長さ15*
配列:GAELPYSVTVEIERF(配列番号3)
207221Max_score_pos:213
[0276]前述の断片は、試料中の自己抗体に結合させるために本明細書における方法に単独で又は組み合わせて用いることができる。
B.EcGabTの抗原性断片
[0277]上記のEMBOSSソフトウエアを用いて、EcGabTの抗原性断片の配列を予測することが可能であった。最高の抗原性断片が図25に見られる。EcGabTの3つの最高抗原性スコアは、以下の通りである。
1.残基300→315におけるスコア1.201長さ16*
配列:GNPIACVAALEVLKVF(配列番号4)
300315Max_score_pos:308
2.残基49→92におけるスコア1.197長さ44*
配列:GIAVLNTGHLHPKVVAAVEAQLKKLSHTCFQVLAYEPYLELCEI(配列番号5)
4992Max_score_pos:80
3.残基383→407におけるスコア1.194長さ25*
配列:KGLILLSCGPYYNVLRILVPLTIED(配列番号6)
383407Max_score_pos:399
C.EcFrvXの抗原性断片
[0278]上記のEMBOSSソフトウエアを用いて、EcFrvXの抗原性断片の配列を予測することが可能であった。EcFrvXの3つの最高抗原性スコアは、以下の通りである。
1.残基303→317におけるスコア1.258長さ15*
配列:RPVVALCLPTRYLHA(配列番号7)
303317Max_score_pos:307
2.残基215→236におけるスコア1.212長さ22*
配列:SAEHIKPDVVIVLDTAVAGDVP(配列番号8)
215236Max_score_pos:224
3.残基54→62におけるスコア1.160長さ9*
配列:PKVAVVGHM(配列番号9)
5462Max_score_pos:58
[0279]大腸菌K12タンパク質の抗原性ペプチドの要約を以下に示す。
D.フラジェリンの抗原性断片
[0280]フラジェリンについては、超可変領域(おおよそaa200〜500)が抗原性であると文献で確立されている。本発明のフラジェリンペプチドの最高抗原性断片が図13に見られる。
実施例7:共生細菌抗原に対する抗体の存在
[0281]この実施例では、対象からの試料中の細菌抗原抗体マーカーの存在又はレベルの検出は、対象がIBS、例えば、IBS−D又はIBS−M(IBS−D/M)を有するかどうかを判定するために用いることができることを例示する。本研究では、実施例4に記載のアッセイ方法を用いて健常対照及びIBS患者からの血清試料中のLaFrc、LaEno、LjEFTu、BfOmpA、PrOmpA、Cp10bA、CpSpA、EfSant及びLmOspに対する抗体などの細菌抗原抗体のアレイのレベルを比較した。結果は、IBS−D又はIBS−Mを有する個体が正常な健常者と比べて低いレベル(例えば、量又は濃度)の特定の細菌抗原抗体を有することを実証するものである。
[0282]ラクトバチルス・アシドフィルスEno、ラクトバチルス・アシドフィルスFrc及びラクトバチルス・ジョンソニイEFTuに対する抗体のレベルは、健常対照試料(n=295)とIBS−D又はIBS−M(IBS−D/M)患者から採取した試料(n=229)との間で統計的に異なっていなかった(図27A〜C)。
[0283]バクテロイデス・フラジリスOmpAに対する抗体のレベルも健常対照(n=35)とIBS−D/M患者(n=34)との間で統計的に異なっていなかった(p値=0.0814)。しかし、プレボテラ属OmpAに対する抗体のレベルは、健常群(n=33)とIBS−D/M群(n=29)との間で統計的に異なっていた(p値=0.0377)(図28B)。特にIBS−D/M患者は、正常対照と比較してPrOmpA(PrevOmpA)の低いレベルを有していた。
[0284]ウェルシュ菌10bA、ウェルシュ菌SpA、フェカリス菌SA(Sant)及びリステリア菌Ospに対する抗体のレベルは、健常対照試料(n=18)とIBS−D又はIBS−M(IBS−D/M)患者から採取した試料(n=22)との間で統計的に異なっていなかった(図29A〜D)。
[0285]本実施例は、本明細書に記載のアッセイ方法が、細菌抗原抗体マーカーのレベルを決定し、IBSの診断を補助するために用いることができることを例示している。
[0286]本明細書で引用したすべての刊行物及び特許出願は、各個別の刊行物又は特許出願が参照により明確且つ個別に示されたかのように、参照により本明細書に組み込まれる。理解を明確にする目的のために例示及び実施例により、前述の発明をある程度詳細に記載したが、添付の特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなく、それに対する特定の変更及び修正を行うことができることは、当業者には容易に明らかになる。
略式配列表
配列番号1
EcEraペプチド(86〜98位)
IGDVELVIFVVEG
配列番号2
EcEraペプチド(116〜129位)
KAPVILAVNKVDNV
配列番号3
EcEraペプチド(207〜221位)
GAELPYSVTVEIERF
配列番号4
EcGabTペプチド(300〜315位)
GNPIACVAALEVLKVF
配列番号5
EcGabTペプチド(49〜92位)
GIAVLNTGHLHPKVVAAVEAQLKKLSHTCFQVLAYEPYLELCEI
配列番号6
EcGabTペプチド(383〜407位)
KGLILLSCGPYYNVLRILVPLTIED
配列番号7
EcFrvXペプチド(303〜317位)
RPVVALCLPTRYLHA
配列番号8
EcFrvXペプチド(215〜236位)
SAEHIKPDVVIVLDTAVAGDVP
配列番号9
EcFrvXペプチド(54〜62位)
PKVAVVGHM