JP2015523076A - 液体試料中のatpを検出する器具 - Google Patents

液体試料中のatpを検出する器具 Download PDF

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Abstract

液体試料中のATPを検出する器具(1000)及びキット(1000)が提供される。器具及びキットは、ルシフェリンを含む液体試薬組成物、及び、試料採取部(30)と操作部(20)とを有する試料採取装置(100)を含む。試料採取部(30)は、実質的に複数の繊維間の空間によって形成されない1つ以上の窪み(32)に、所定量の液体試料を獲得し解放可能に保持するようになっている。試料採取装置(30)は、約6.8以下のpHを有する液体試薬組成物と接触したとき、液体試薬組成物のpHを6.9以上に変える、有効量のpH調整試薬を含む乾式被膜を含む。器具又はキットの使用方法も提供される。【選択図】図1

Description

(関連出願の相互参照)
本出願は、2012年7月6日出願の米国特許仮出願第61/668,520号の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
試料採取プログラムは、食品飲料産業で、クリティカルな原料、中間材料、完成品、及び加工環境をモニターするために用いられる。定期的な試料採取及び検査により、品質保証担当者はごく初期の段階で、微生物等の望ましくない物質を検出し、設備及び/又は製品の続いて起こる汚染を防止するための処置をとることができる。不必要な物質を検出するために、様々な検査を実施することができる。そのような検査の例としては、残留化学物質検査(例えば、アデノシン三リン酸(ATP)生物発光検査、及びタンパク質比色検査)、培養方法、遺伝子検査(例えば、PCR)、免疫診断検査、及び生物発光検査が挙げられる。
試料採取装置は、典型的に環境検査のための表面試料を採取するために使用される。市販の試料採取装置としては、スポンジ、スワブ等の吸収装置が挙げられる。更に、試料採取装置のいくつかは、所定量の液体試料を採取することができる。
ATPは、試料中の微生物の有無を検出するために、日常的に用いられる。ATPの分解から生成された化学エネルギーが光エネルギーに変換される。この反応で消費されたATPの分子それぞれが、光の光子を1つ生成する。この発光出力は、ルミノメーターで定量化することができる。試料中にATPが存在することは、微生物が存在する直接的な指標(即ち、ATPは微生物に由来する)である可能性がある、又はATPは、微生物が存在する間接的な指標(即ち、ATPは、植物質又は動物質に由来し、微生物の成長を助ける栄養素が試料中に存在する可能性があることを示す)である可能性がある。更に、試料中のATPの有無は、食品、飲料、他の産業の加工、ヘルスケア(例えば、内視鏡)、並びに、冷却水及び処理水等用における洗浄工程の有効性を評価するために、及び/又は殺生物剤による処理が、微生物のレベルを下げるのに有効であったかどうか判断するために、日常的に用いられる。
本開示は、概して、ルシフェラーゼ酵素を用いた試料中のATPの検出に関する。特に、本開示は、pH調整試薬を含む乾式被膜を含む、多目的の試料採取装置に関する。pH調整試薬は、ルシフェリンを含む液体試薬組成物と接触したとき、pH変化を引き起こす能力がある。このpH変化は、実質的に定常状態の発光反応の達成を、低いpHにおける達成よりも短い期間で、促進させることができる。驚いたことに、試料採取装置を液体試料と接触させることができ、乾式被膜が液体試料中で可溶であっても、有効量のpH調整試薬が、試料採取装置上に、及び/又は試料採取装置中に保持されて、有効量が、上述のpH変化が達成される液体試薬組成物に移されることができる。更に、試料採取装置は所定量の液体試料を取得し、それによって、操作者が液体試料中のATPの量を検出し、必要に応じて、定量化することができる。
一態様では、本開示はキットを提供する。キットは、開口部と、ルミノメーターに操作上連結されるようになっているキュベット部と、を備えた容器と、ルシフェリンを含む液体試薬組成物と、試料採取部を有する試料採取装置と、を含むことができる。液体試薬組成物は、閉鎖した区画に配置されることができる。液体試薬組成物のpHは、約6.8以下である。試料採取装置の試料採取部は、実質的に繊維間の空間によって形成されない1つ以上の窪みに、所定量の液体試料を獲得し解放可能に保持するようになっている。試料採取装置は、液体試薬組成物と接触したとき、液体試薬組成物のpHを6.9以上に変える、有効量のpH調整試薬を含む乾式被膜を含むことができる。
別の態様では、本開示は器具を提供する。器具は、開口部と、ルミノメーターに操作上連結されるようになっているキュベット部と、を備えた容器と、ルシフェリンを含む液体試薬組成物と、試料採取部を有する試料採取装置と、を含むことができる。液体試薬組成物は、閉鎖した区画に配置されることができる。液体試薬組成物のpHは、約6.8以下である。試料採取部は、実質的に繊維間の空間によって形成されない1つ以上の窪みに、所定量の液体試料を獲得し解放可能に保持するようになっている。装置の試料採取部は、液体試薬組成物と接触したとき、液体試薬組成物のpHを6.9以上に変える、有効量のpH調整試薬を含む乾式被膜を含む。
上述のキット又は器具の任意の実施形態では、pH調整試薬は、水溶性の試薬を含むことができる。キット又は器具の任意の上述の実施形態では、試料採取部は、較正済みループを含むことができる。キット又は器具の任意の上述の実施形態では、閉鎖した区画は、脆弱な壁を含むことができる。いくつかの実施形態では、脆弱な壁は、開口部とキュベット部との間で容器に配置されることができる。キット又は器具のいくつかの実施形態では、試料採取装置は、閉鎖した区画を含み、試料採取装置は、更に、流動性組成物を容器から選択的に解放する構造を含む。キット又は器具の任意の上述の実施形態では、試料採取部は、発泡材料を含むことができる。キット又は器具の任意の上述の実施形態では、pH調整試薬は、N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N’−[2−エタンスルホン酸]、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される緩衝液成分を含むことができる。キット又は器具の任意の上述の実施形態では、pH調整試薬は、1つ以上の窪みに被覆されることができる。キット又は器具の任意の上述の実施形態では、被膜は、更に、有効量の細胞抽出剤を含むことができる。キット又は器具の任意の上述の実施形態では、ルシフェラーゼ酵素は、本質的に、温度、イオン性洗剤、及び還元剤のばらつきに対して、対応する非組み換えルシフェラーゼ酵素より感度が低いルシフェラーゼ活性を有する組み換えルシフェラーゼ酵素からなり得る。キット又は器具の任意の上述の実施形態では、被膜は、任意に、有効量のリン酸緩衝液成分を含まない。キット又は器具の任意の上述の実施形態では、所定量は、約0.01mL〜約0.25mLであり得る。
更に別の態様では、本開示は、方法を提供する。方法は、所定量の液体試料を取得するために試料採取装置を用いるステップと、反応混合物を形成するために、容器中で所定量の試料を液体試薬組成物と接触させるステップと、反応混合物から放出された光を検出するためにルミノメーターを用いるステップと、を含むことができる。試料採取装置は、試料採取部を含む。試料採取部は、1つ以上の窪みに所定量の液体試料を獲得し解放可能に保持するようになっている。1つ以上の窪みは、実質的に複数の繊維間の空間によって形成されない。装置の試料採取部は、約6.8以下のpHを有する液体試薬組成物と接触したとき、液体試薬組成物のpHを6.9以上に変える、有効量のpH調整試薬を含むことができる乾式被膜を含む。液体試薬組成物は、ルシフェリンを含む。容器は、ルミノメーターに操作上連結されるようになっているキュベット部を含む。
上述の方法の任意の実施形態では、方法は、更に、容器中で所定量の試料及び液体試薬組成物を撹拌するステップを含むことができる。方法の任意の上述の実施形態では、液体試薬組成物は、更に、ルシフェラーゼ酵素を含むことができる。方法の任意の上述の実施形態では、ルシフェラーゼ酵素活性は、本質的に、温度、イオン性洗剤、及び還元剤のばらつきに対して、対応する非組み換えルシフェラーゼ酵素より感度が低いルシフェラーゼ活性を有する組み換えルシフェラーゼ酵素からなり得る。方法の任意の上述の実施形態では、試料を含む試料採取装置を液体試薬組成物と接触させることは、10℃〜35℃(両端の値を含む)の範囲内の温度で、試料採取装置を液体試薬組成物と接触させることを含むことができる。方法の任意の上述の実施形態では、試料採取装置を液体試薬組成物と接触させた後、実質的に定常状態の量の光が、20秒未満で組成物から放出される。
用語「好ましい」及び「好ましくは」とは、特定の状況下で、特定の利益をもたらすことができる、本発明の実施形態を指す。しかしながら、同じ、又は他の状況下において他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを意味するものではなく、本発明の範囲から他の実施形態を除外することを目的としたものではない。
用語「含む(comprise)」及びこの変形は、これらの用語が現れる明細書及び請求項を制限する意図を持たない。
本明細書で使用するとき、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」、及び「1つ以上の」は、互換可能に使用される。したがって、例えば、細胞抽出剤は、「1つ以上の」細胞抽出剤を意味すると解釈できる。
用語「及び/又は」は、列挙された要素の1つ又は全てを、若しくは列挙された要素の任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
また本明細書では、端点による数値範囲の記載は、その範囲に含まれるすべての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
上記の本発明の課題を解決するための手段は、本発明の開示されるそれぞれの実施形態又は本発明のすべての実施を説明することを目的としたものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示するものである。本出願の全体を通じて幾つかの箇所で、実施例のリストによって指針が与えられるが、これらの実施例は異なる組み合わせで使用することができる。いずれの場合も、記載される列挙は、あくまで代表的な群としてのみの役割を果たすものであって、排他的な列挙として解釈するべきではない。
これらの実施形態及び他の実施形態の更なる詳細を、添付の図面及び以下の説明文に記載する。他の特徴、目的、及び利点は、説明文及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかとなろう。
本開示による試料採取装置の1つの実施形態の側面図である。 図1の試料採取装置の試料採取部の詳細側面図である。 本開示による試料採取装置の別の実施形態の側面図である。 本開示による試料採取装置のもう1つの別の実施形態の側面図である。 本開示による器具の1つの実施形態の部分断面の分解立体図である。 図4の器具が組み立てられ、試料採取装置及び容器が互いに対して第1の操作位置にあるのを示す、部分断面の側面図である。 図4の器具が組み立てられ、試料採取装置及び容器が互いに対して第2の操作位置にあるのを示す、部分断面の側面図である。
本開示の何らかの実施形態が詳細に説明される前に、本発明はその用途で、以下の説明に記載される又は以下の図面に示される構成の詳細及び構成要素の配置に限定されないことを理解すべきである。本発明には他の実施形態が可能であり、本発明は様々な方法で実施又は実行することが可能である。また、本明細書で使用する語法及び専門用語は、説明を目的としたものであり、限定ものとして見なされるべきでない点は理解されるべきである。「含む(including)」、「備える(comprising)」、又は「有する(having)」、及びこれらの変化形は、その後に列記される要素及びそれらの均等物、並びに更なる要素を包含することを意味する。別段の指定又は限定がない限り、用語「接続された」及び「結合された」並びにその変化形は、広義で使用され、直接的及び間接的な接続及び結合の両方を包含する。更に、「接続される」及び「結合される」は、物理的又は機械的な接続若しくは結合に限定されない。本開示の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用されてもよく、構造的又は論理的な変更がなされてもよいことを理解すべきである。更に、「前方」、「後方」、「上」、「下」といった用語は、各要素の互いに対する関係を説明するためにのみ用いられるものであり、装置の特定の向きを説明すること、装置に必要とされる若しくは求められる向きを指示又は示唆すること、又は本明細書に記載される発明が、使用時にどのように使用、装着、表示、又は配置されるかを特定することを目的とするものでは決してない。
本開示は、一般に、試料中の有機残渣及び/又は細胞からATPを検出する器具及び方法に関する。本開示によれば、細胞からのATPは、ATPを放出させるために試料を細胞抽出剤と接触させ、ルシフェリンの存在下で放出されたATPがルシフェラーゼ酵素活性と反応し、その結果、測定可能な光が生成されることが関与する、酵素反応を用いて、放出されたATPを検出することによって検出される。
特に、本開示は、1)所定量の液体試料を獲得し解放可能に保持することができる、2)液体試料を用いて、乾燥した再水和可能な有効量のpH調整試薬を再水和することができる、並びに、3)ルシフェラーゼの触媒作用による発光反応を促進させるために、液体試料及び有効量のpH調整試薬を容器に送達することができる、ようになっている試料採取装置を備えた器具及び/又はキットを提供する。有利には、本開示は、ルシフェリンを含む水溶液混合物を長時間貯蔵し、発光タイプのルシフェラーゼ酵素活性に必要なラグタイムを短縮するために混合物のpHを即座に調整して、ATP及びルシフェリンの存在下で、特に、低温(例えば、20℃未満の温度)で、安定した発光出力(例えば、最大発光出力)を得るために用いることができる、キット及び器具を提供する。
図1は、本開示による器具、キット及び/又は方法で用いることができる、試料採取装置の一実施形態を示す。試料採取装置100は、操作部20、及び試料採取部30を含む。例示した実施形態では、試料採取部30は、任意のステム15によって、操作部20に連結される。典型的には、試料採取装置100は、対応する容器(図示せず)に受容される形状及び寸法をなす。操作部20は、当該技術分野において周知の工程を用いて、様々な材料(例えば、木、金属、プラスチック、ガラス)から作られることができ、操作部20は、試料採取装置100が、使用中に、掴まれる及び/又は操作されることができる位置として機能する。必要に応じて、操作部は、試料採取装置100を、手で掴む、又は機械的に把持するのを容易にするように、形作られた、及び/又は非平滑化されたハンドル24を含む。必要に応じて、試料採取装置100は、更に、突き刺し先端40を含むことができる。
試料採取部30は、試料源から液体試料を取得し(毛細血管圧によって)、保持することができる、少なくとも1つの窪みを画定する、任意の好適な構造を含んでもよい。一実施形態では、試料採取部30は、一つの窪みを画定する。他の実施形態では、試料採取部30は、流体連通していない複数の窪みを含む。試料採取部30が、窪みを1つ含む、又は複数含むに関係なく、試料採取部30は、所定の最大試料量を保持するように設計される。最大試料量は、例えば、試料を用いて行なわれる試験の所望の感度に基づいて、選択されてもよい。
図1は、複数の窪み32を含む、試料採取部30の一実施形態を示す。図1aは、図1の試料採取部30の詳細図を示す。例示した実施形態では、窪み32は、試料採取装置100を取り巻くぎざぎざからなる。1つ以上の窪み用に、様々な設計コンフィギュレーションを用いて所定量を達成することができることが、当業者には認知されよう。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第WO 2009/134509号は、所定量の液体試料を取得し、保持するのに適している窪みを含む、様々な試料獲得装置を開示している。
別の実施形態では、本開示の試料採取装置の試料採取部は、発泡材料で形成された複数の窪みを含んでもよい。環境表面から試料を取得するための発泡物品(例えば、スポンジ、ハンドルに装着されたスポンジ)は、当技術分野で周知である。図2は、発泡材料を含む試料採取部30を含む試料採取装置100’を示す。発泡材料は、液体試料を取得し、保持することができる個々の小室又は空所を含む。本開示の試料採取装置で使用される好適な発泡材料としては、例えば、ウレタン発泡材、ポリエチレン発泡材、及びポリスチレン発泡材が挙げられる。いくつかの実施形態では、発泡体は、ポリマーの表面をより親水性にするために、処理されてもよい(例えば、コロナ処理、又は電子ビーム処理)。発泡材料は、材料(例えば、接着剤、機械的ファスナー等)、及び当技術分野で周知である工程を用いて、ステム15及び/又は操作部20に連結されることができる。
図3は、本開示による試料採取装置100”の別の他の実施形態を示す。この実施形態では、試料採取部30は、試料液体の所定量を取得して、保持するように構成された較正済みループ34を含む。較正済みループは当技術分野で周知であり、様々な形状をとってもよく、例えば、円形(図3に示されているように)、又は長円形が挙げられる。必要に応じて、本開示による任意の試料採取装置は、更に、本開示によるpH調整試薬を含む被膜を配置することができる被膜領域を含んでもよい。被膜を塗布することができる被膜領域36を含む、試料採取装置100”の実施形態が図3に示される。被膜は、本開示による液体試薬組成物と接触した(例えば、混合された)とき、初期のpHが6.8以下である液体試薬組成物のpHを、調整後pH 6.9以上に、好ましくは、調整後約7.2〜8.0のpHに、より好ましくは、調整後約7.2〜7.8のpHに調整する、有効量のpH調整試薬を含むことができる。更に、図3に示されているのは、ハンドル24を含む操作部20、ステム15、及び突き刺し先端40である。任意の実施形態では、pH調整試薬は、水溶性の試薬であり得る。
いくつかの実施形態では、試料採取部30は、約45ダイン/センチメートル(ダイン/cm)〜約72ダイン/cmなど、約20ダイン/cm〜約82ダイン/cmの範囲で界面エネルギーを有する材料から作られる。いくつかの実施形態では、試料採取部30の材料は、水の界面エネルギー、又は約72ダイン/cmに近い界面エネルギーを有するように選択される。試料は、いくつかの従来の医療用スワブの場合のように、吸収によってではなく、界面エネルギーによって、試料採取部30内に保持されるので、試料は、繊維状の先端を含む従来の医療用スワブと比べて、試料採取部30から取り出すのがより簡単である可能性がある。即ち、試料採取部30から試料の液体、及び/又は液体に懸濁した粒子を取り除くのに必要なエネルギーがより少なくて済む可能性がある。場合によっては、大きな割合の試料粒子が、機械的ボルテクサーの助けなしで、試料採取部30から取り除かれるが、試料採取部30から試料を溶出させるのに機械的ボルテクサーが利用されてもよい。
一般に、試料採取部30は、所望の試料獲得特性を達成する材料からなり、それは、採取した試料の種類に依存し得る(例えば、液体試料によっては、液体の表面張力に影響を及ぼす、溶解した、又は懸濁した固体を含む場合がある)。試料採取部30が試料を獲得し保持する能力に影響を与え得る材料の性質としては、例えば、界面エネルギーが挙げられる。例えば、前述したように、試料を、毛管力によって、試料採取部30によって画定された1つ以上の窪みに引き入れるために、特定の界面エネルギーを有する材料が選択されてもよい。試料採取部が作製される材料の他の特性としては、試料に対する実質的な不活性、又は、例えば、試料が試料採取部30から放たれた際にルシフェラーゼ酵素活性に影響を与え得る化学物質又は他の汚染物質の比較的低い溶出速度が挙げられる。
いくつかの実施形態では、試料採取部30は、必ずしも所望の試料獲得特性を含んでいない母材、及び、親水性表面、疎水性表面、正電荷表面、又は負電荷表面に所望の試料獲得特性を達成させる材料を含む外層(例えば、被膜)を含んでもよい。例えば、無機被膜(例えば、シリカ被膜)、又は有機被膜(例えば、ポリアクリレート等のポリマー被膜)は、試料採取部30に親水性の特性を与えることができる。試料採取部30を形成する材料の界面エネルギー(又は、表面張力)特性は、更に、非限定的な例として、処理される材料が放電、又はコロナ、電子ビーム処理に曝されるコロナ処理のような物理的処理の助けを用いて達成されてもよい。
いくつかの実施形態では、試料採取部30は、少なくとも部分的に比較的剛性のポリマー(例えば、ナイロン、ポリスルフホン、ポリカーボネート、又はこれらの組み合わせ)で形成されてもよく、又はシリコーンなどのより順応性のポリマーを用いて形成されてもよい。試料採取部30用の材料の例としては、キャスティング、輪郭押出成形、成形(例えば、射出成形)又はエンボス加工に好適な任意の熱可塑性材料、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ナイロン等が挙げられるが、これらに制限されない。他の実施形態では、試料採取部30は、好適な材料のシートを所望の窪み構造に成形する、又はエンボス加工することによって、形成されてもよい。
本開示の試料採取装置は、乾式被膜を含む。任意の実施形態では、乾式被膜は、装置の試料採取部上に及び/又は試料採取部中(例えば、窪みの中)に配置されることができ、その結果、装置が液体試料に浸漬されるとき、被膜が液体試料と接触する。任意の実施形態では、乾式被膜の少なくとも一部分は、試料採取装置の別の部分(例えば、ステム、突き刺し先端)に配置されることができる。乾式被膜は、本開示による液体試薬組成物と接触した(例えば、混合された)とき、液体試薬組成物のpHを変える、有効量のpH調整試薬を含む。任意の実施形態では、pH調整試薬は、水溶性の試薬を含む。任意の実施形態では、pH調整試薬は、7.0以上のpKa、好ましくは7.2以上のpKaを有する緩衝液(例えば、pH調整試薬は、塩基又は共役酸を含む)の成分を含む。pH調整試薬は、N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N’−[2−エタンスルホン酸]、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに制限されない、好適な緩衝液成分をそれぞれ含む。いくつかの実施形態では、被膜は、リン酸エステルを含む有効量のpH調整試薬を含まない。液体試薬組成物のpHを初期のpH 6.8以下から調整後pH 6.9以上に変えるのに有効なリン酸エステルの量を含むpH調整試薬は、更に、ルシフェラーゼ酵素活性を少なくとも部分的に阻害するのに十分であり得る。任意の実施形態では、pH調整試薬は、金属塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)を含む。
任意の実施形態では、被膜は、更に、ルシフェラーゼ酵素活性を実質的に阻害しない細胞溶解試薬を含むことができる。好適な細胞溶解試薬の例としては、クロルヘキシジンジグルコン酸、TRITON X−100、リゾチーム、リソフスタフィン、バクテリオファージ溶解素、第四アンモニウム化合物(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム)、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAB)、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(DTAB)、TWEEN 20、TWEEN 80、及びこれらの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに制限されない。
試料採取装置に被覆されるpH調整試薬の量は、6.8以下の初期(即ち、pH調整試薬と接触する前の)pHから、約6.9以上の調整後pH(pH調整試薬と接触した後)に液体試薬組成物のpHを変えるのに十分であるべきである。好ましくは、試料採取装置に被覆されるpH調整試薬の量は、初期のpH 6.8以下から、約7.2以上のpHに液体試薬組成物のpHを変えるのに十分であるべきである。
被膜は、任意の好適な被膜方法を用いて、試料採取装置に塗布されることができる。任意の実施形態では、被膜は、最初に、液体被膜として(即ち、pH調整試薬が、例えば、水等の溶媒に溶解されている、又は懸濁されている)試料採取装置に塗布されることができる。溶媒は、その後乾燥させられ、実質的に乾燥したpH調整試薬を試料採取装置に残す。任意の実施形態では、液体被膜は、試料採取装置(例えば、試料採取装置の試料採取部)をpH調整試薬を含む液体に浸漬することにより塗布される。被膜液に浸漬されている間、試料採取装置を撹拌させて、試料採取部の1つ以上の窪みの中に被膜液が移動するのを促進させることができる。装置が被覆された後、被覆された部分は、pH調整試薬及び/又は細胞溶解試薬を実質的に分解させることなく溶媒を蒸発させるのに十分な条件下(例えば、周囲温度、又は周囲以上の(暖かい)温度)で乾燥させる(例えば、空気流、熱対流炉などで)ことができる。
本開示のキット及び器具は、更に、容器を含む。容器は、試料を本明細書に記述される液体試薬組成物と接触させる器として機能する。容器は、開口部を含み、試料採取装置の少なくとも一部分(例えば、試料採取部)を受容するように構成される(例えば、形状及び寸法をなす)。図4は、本開示による容器を備える器具の一実施形態の部分断面の分解組立図を示す。器具1000は、本明細書に記載される任意の実施形態による、ハンドル24及び試料採取部30を備えた操作部20を含む試料採取装置100を含む。器具1000は、更に、図4に断面図で示された容器200を含む。
容器は、少なくとも1つの壁50及び開口部52を含み、開口部は、試料採取装置100を受容するように構成される。以下で論じられるように、図4に例示する実施形態で示された開口部52を備えた器具1000は、試料採取装置100全体を受容する形状及び寸法をなす。容器は、更に、ルミノメーターに操作上連結されるようになっているキュベット部54を含む。典型的には、容器200のキュベット部54又は容器200全体を、ルミノメーターの相補形状の受容区画内に置くことによって、キュベット部54はルミノメーターに操作上連結される。キュベット部54は、ルシフェラーゼ酵素によって触媒された反応の生成物として放出される光がキュベット部54を通って伝播するのを可能にする、光伝播可能な材料(例えば、ガラス、又は高分子材料、例えば、ポリエチレン(poyethylene)、ポリプロピレン、ポリカーボネート、又はポリスチレン等)から作られる。
容器200は、例えば、当該技術分野において周知の押出成形工程及び/又は成形工程を用いて、単一物品(図示せず)として作られてもよい。あるいは、図4に例示する実施形態の円筒形状のスリーブ56及びキュベット55などの容器200の部分は、別々に作られて、好適な手段(例えば、接着剤、ヒートシール工程、音波溶接、及び/又はスリーブ56とキュベット55を一緒に圧入する)を用いて一緒に連結されてもよい。スリーブ56は、例えば、ポリプロピレン、又はポリエチレンなどのプラスチックポリマーを用いて、成形又は押出成形工程によって作られてもよい。キュベット55は、立方体、立方形、円筒状、円錐形、円錐台形、他の好適な幾何学的形状、及びこれらの組み合わせなど、様々な幾何学的形状に形成されることができる。好ましくは、キュベット55の壁は、キュベット55に入る及び/又はキュベット55から出る光(例えば、可視光)が通過できるように構成される。任意に、容器は、更に薄板60を含んでもよい。薄板60は、キュベット55をスリーブ56と一緒にしっかりと保持することができる。薄板60は、例えば、紙又はプラスチックフィルムから作ることができ、ラベルとして用いられてもよい。
本開示のキット及び器具は、更に、液体試薬組成物(図4〜6に示される液体試薬組成物70)を含む。液体試薬組成物は、ルシフェラーゼ;好ましくは、発光タイプのルシフェラーゼ;及びATP源の存在下で、発光反応を促進させるのに十分な濃度(例えば、0.3〜0.4mg/Lのルシフェリン)でルシフェリンを含む。本開示の方法では、ATP源は、本明細書に開示される試料、又は事前定義された量又は濃度のATPを含有する溶液(即ち、陽性対照、又はATP基準)であり得る。任意の実施形態では、液体試薬組成物は、水溶液を含むことができる。本開示の器具又はキットで用いられる液体試薬組成物は、6.8以下の初期(即ち、pH調整試薬と接触する前の)pHを有する。好ましくは、液体試薬組成物は、6.4以下の初期(即ち、pH調整試薬と接触する前の)pHを有する。
任意の実施形態では、液体試薬組成物は、任意に、緩衝剤を含んでもよい。好適な緩衝剤は、液体試薬組成物のpHをpH 6.8以下に、好ましくはpH 6.4以下に、保つのに有効であるpKaを有する。N−(2−アセトアミド)−イミノ二酢酸(ADA)は、好適な緩衝剤の非限定的な例である。緩衝剤は、液体試薬組成物のpHを有効に保つだけ十分に高く、なおかつ、試料採取装置の試料採取部に被覆されたpH調整試薬によって媒介された液体試薬組成物のpHが変わるのを実質的に阻止しないだけ十分に低い量(例えば、pH 6.4〜6.8の液体試薬組成物425マイクロリットル中に約16mMのADA)で、液体試薬組成物中に存在すべきである。任意の実施形態では、液体試薬組成物は、更に、ルシフェラーゼ酵素を含んでもよい。任意の実施形態では、ルシフェラーゼ酵素は、本質的に、温度、イオン性洗剤、及び還元剤のばらつきに対して、対応する非組み換えルシフェラーゼ酵素より感度が低いルシフェラーゼ活性を有する組み換えルシフェラーゼ酵素からなり得る。ルシフェラーゼ酵素は、例えば、約9mg/Lの濃度で、液体試薬組成物中に存在することができる。任意の実施形態では、液体試薬組成物は、更に、マグネシウムイオン源(例えば、二酢酸マグネシウム四水和物)を含むことができる。マグネシウムイオン源は、液体試薬組成物が液体試料と混合されるときにルシフェラーゼ酵素活性と実質的に干渉しない濃度(例えば、約3mM)で存在することができる。任意の実施形態では、液体試薬組成物は、更に、タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン)を含むことができる。理論に束縛されるものではないが、タンパク質は、長期貯蔵中にルシフェラーゼ酵素を安定させる、及び/又はルシフェラーゼ酵素がプロテアーゼ酵素活性の影響を受けにくくする可能性がある。タンパク質は、作用濃度において、液体試薬組成物が液体試料と混合されるときにルシフェラーゼ酵素活性と実質的に干渉してはならない。タンパク質は、例えば、約0.046重量パーセントの濃度で、液体試薬組成物中に存在し得る。任意の実施形態では、液体試薬組成物は、防腐剤(例えば、0.046重量パーセントのアジ化ナトリウム)を、液体試薬組成物が液体試料と混合されるときにルシフェラーゼ酵素活性と実質的に干渉しない濃度で、更に含むことができる。任意の実施形態では、液体試薬組成物は、更に、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含んでもよい。理論に束縛されるものではないが、EDTAは、液体試薬組成物中の防腐剤として作用することができ、更に、液体試薬組成物及び/又液体試料中に存在するイオンをキレート化するように作用する場合がある。
任意の実施形態では、液体試薬組成物は、閉鎖した区画に配置されることができる。いくつかの実施形態では、閉鎖した区画は、脆弱な壁を含む。図4に例示する実施形態では、容器は、更に、区画67を形成するキュベット55の近位に配置された耐液体性の脆弱な壁65を含む。脆弱な壁65は、例えば、プラスチックフィルム、金属箔、又は金属被覆プラスチックフィルムなど、耐水性材料から作ることができる。接着剤、ヒートシール、音波溶接、又は当該技術分野において周知の他の手段によって脆弱な壁65をキュベット55及び/又はスリーブ56に連結させて耐液体性の密封を形成し、液体試薬組成物70を区画67内に保持することができる。
別の実施形態(図示せず)では、液体試薬組成物は、容器内に配置された脆弱なアンプル(例えば、ガラス又は重合体のアンプル)内に配置されてもよい。アンプルを砕くのに十分な力で容器を圧搾することによって、又は試料採取装置(例えば、試料採取装置の突き刺し先端)をアンプルを砕くのに十分な力でアンプルに押し付けることによって、液体試薬組成物を脆弱なアンプルから放つことができる。
更なる実施形態(図示せず)では、液体試薬組成物は、試料採取装置に配置された区画に配置されてもよい。Nason(米国特許第5,266,266号、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、中空のステムと、作動可能弁を備えた液体収容閉鎖区画と、を含むスワブ装置を開示しており、この作動可能弁は、スワブの少なくとも一部分がその中に配置された管の中に液体を送達するように、液体を中空のステムに放つ。本開示の任意の試料採取装置は、Nasonの中空のステム及び試薬室を含むように変更されてもよい。試薬室は、本開示の液体試薬組成物を含むことができ、液体試薬組成物は、Nasonによって説明された技法を用いて本開示の容器に移送することができる。液体試薬組成物は、本開示による試料採取装置を用いて液体試料が獲得される前又は後に、容器に移すことができる。反応(例えば、化学反応及び/又は酵素反応)で用いられる液体試薬組成物を一時的に貯蔵する他の区画は、当技術分野で周知であり、そのような区画は、本開示の液体試薬組成物を一時的に収容するために用いることができることを当業者は理解するであろう。そのような区画の非限定的な例は、米国特許第7,399,984号、米国特許第6,548,018号、米国特許第5,965,453号、及び米国特許第6,524,530号に見ることができ、当該特許は全て参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
本開示はキットを提供する。キットは、本明細書に記述される方法に従って、例えば、液体試料中のATPの有無を検出するために用いられてもよい。任意の実施形態では、キットは、本明細書に開示される方法の実施形態を開示する指示を含んでもよい。
本開示のキットは、本明細書に開示される任意の実施形態による容器を含む。容器は、開口部、及びルミノメーターに操作上連結されるようになっているキュベット部を含む。本開示のキットは、更に、本明細書に開示される任意の実施形態によるルシフェリンを含む液体試薬組成物を含む。液体試薬組成物の初期pH(即ち、本開示のpH調整試薬と接触する前)は、約6.8以下のpH、好ましくは、約6.4以下のpHである。本開示のキットは、更に、本明細書に開示される任意の実施形態による試料採取部及び操作部を有する試料採取装置を含む。液体試薬組成物は、本明細書に開示されるように、容器又は試料採取装置に配置された、閉鎖した区画に配置される。試料採取装置の試料採取部は、本明細書に説明されるように、実質的に複数の繊維間の空間によって形成されない1つ以上の窪みに、所定量の液体試料を獲得し解放可能に保持するようになっている。試料採取装置の試料採取部は、液体試薬組成物と接触した(例えば、混合された)とき、液体試薬組成物のpHを6.9以上に変える、好ましくは約7.2〜8.0のpHに、より好ましくは約7.2〜7.8のpHに変える、有効量のpH調整試薬を含む乾式被膜を含む。任意の実施形態では、pH調整試薬は、水溶性の試薬を含む。
本開示のキット及び器具は、液体試料中のATPの有無を検出する方法で用いることができる。試料中にATPが存在することは、試料中に、有機残渣及び/又は微生物(例えば、病原微生物)が存在する可能性を示し得る。更に、試料中のATPの量は、試料中の微生物の相対数の指標になり得る。したがって、試料の単位量当たりのATP量を割り出すことができるように、所定量の試料を試験することは望ましい。試料の単位量当たりのATP量は、試料が、特定用途(例えば、食品又は飲料生産)で使用するのに許容可能であるかどうか、洗浄工程が、有機残渣を除去するのに有効であったかどうか、及び/又は殺生物剤処理が、微生物の数を低減するのに有効であったかどうかを判断するために、所定値と比較され得る。
一実施形態では、方法は、所定量の液体試料を得るために試料採取装置を用いること、反応混合物を形成するために、容器中で所定量の試料を液体試薬組成物と接触させること、及び反応混合物から放出された光を検出するためにルミノメーターを用いることを含む。所定量の液体試料は、約10マイクロリットル〜約250マイクロリットルであり得る。いくつかの実施形態では、所定量の液体試料は、約100マイクロリットル〜約200マイクロリットルであり得る。いくつかの実施形態では、所定量の液体試料は、約125マイクロリットル〜約175マイクロリットルであり得る。
試料は液体を含む。液体は水を含んでもよい。試料は、更に、液体中に溶解された、分散された、及び/又は懸濁された固体を含んでもよい。好適な試料の非限定的な例としては、定置洗浄(CIP)洗浄水試料、工程及び冷却水試料、及び内視鏡洗浄水試料が挙げられる。
本開示の方法で用いられる試料採取装置は、本明細書に開示された任意の試料採取装置であり得る。試料採取装置は、試料採取部、及び操作部を含む。試料採取部は、1つ以上の窪みに所定量の液体試料を獲得し解放可能に保持するようになっている。1つ以上の窪みは、実質的に複数の繊維間の空間によって形成されない。装置の試料採取部は、初期のpH 6.8以下を有する液体試薬組成物と接触した(例えば、混合された)とき、液体試薬組成物のpHを6.9以上に調整する、有効量のpH調整試薬を含む乾式被膜を含む。
本開示の方法で用いられる液体試薬組成物は、ルシフェリン(例えば、ホタルルシフェリン)を含む。ルシフェリンは、ルシフェラーゼ酵素活性による酸化を経て、オキシルシフェリン及び光を生成する化合物である。ルシフェリン化合物は、pH 6.8を超える液体溶液中に長時間に貯蔵されたとき、不安定になり得る。したがって、本開示の方法で用いられる液体試薬組成物は、6.8以下の初期pHを有する。好ましくは、液体試薬組成物は、6.4以下の初期pHを有する。
任意の実施形態では、液体試薬組成物は、更に、ルシフェラーゼ酵素を含んでもよい。好ましい実施形態では、ルシフェラーゼ酵素は、温度、イオン性洗剤、及び還元剤のばらつきに対して、対応する非組み換えルシフェラーゼ酵素より感度が低いルシフェラーゼ活性を有する、組み換えルシフェラーゼ酵素を含む。いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼ酵素は、本質的に、温度、イオン性洗剤、及び還元剤のばらつきに対して、対応する非組み換えルシフェラーゼ酵素より感度が低いルシフェラーゼ活性を有する、組み換えルシフェラーゼ酵素からなる。
任意の実施形態では、液体試薬組成物は、任意に、緩衝剤を含んでもよい。緩衝剤は、ルシフェリンを含有する液体溶液を貯蔵するのに好適であるpH(例えば≦6.8)に液体試薬組成物を維持するために用いることができる。N−(2−アセトアミド)−イミノ二酢酸(ADA)は、好適な緩衝剤の非限定的な例である。緩衝剤は、液体試薬組成物のpHを有効に保つだけ十分に高く、なおかつ、試料採取装置の試料採取部に被覆されたpH調整試薬によって媒介された液体試薬組成物のpHの変化を実質的に阻止しないだけ十分に低い量(例えば、pH 6.4〜6.8の液体試薬組成物425マイクロリットル中に約16mMのADA)で、液体試薬組成物中に存在すべきである。
本開示の方法で用いられる容器は、キュベット部を含む。キュベット部は、ルシフェラーゼ酵素によって触媒された反応の生成物として放出される光がキュベット部を通って伝播するのを可能にする。キュベット部は、ルミノメーターに操作上連結されるようになっている(例えば、形状及び寸法をなす)。いくつかの実施形態では、反応混合物から放出された光を検出するためにルミノメーターを用いることは、液体試料中のATPの有無を検出することを含む。いくつかの実施形態では、反応混合物から放出された光を検出するためにルミノメーターを用いることは、液体試料中に存在するATPの量(例えば、相対量、又は絶対量)を測定することを含む。
反応混合物を形成するために、容器中で所定量の試料を液体試薬組成物と接触させることは、容器中で試料採取装置の試料採取部を液体試薬組成物と接触させることを含む。接触は、例えば、試料採取装置の少なくとも一部分を、好ましくは、試料採取部全体を液体試薬組成物に浸漬することによって達成されてもよい。接触は、反応混合物を形成する(例えば、液体試料の少なくとも一部分が液体試薬組成物中に拡散することによって)。液体試薬組成物に既に存在しない場合、ルシフェラーゼを反応混合物に加えることができる。このようにして、ATPが液体試料に存在する場合、ATPは、ルシフェラーゼ酵素によって触媒された発光反応を促進させることができる。発光反応は、上述のルミノメーターで検出することができる。
図5及び6は、反応混合物を形成するために、容器中で所定量の試料を液体試薬組成物と接触させる過程の1つの実施形態を例示する。試料採取装置100を用いて所定量の液体試料を得た後、試料採取装置を容器200に挿入する。図5は、容器中のステム15及び試料採取部30を備えた試料採取装置100を示す。この配置では、試料採取装置100及び容器200は、互いに対して第1の操作位置に置かれており、器具1000は、液体試料を区画67にある液体試薬組成物70と接触させる準備が整っている。試料採取装置100のハンドル24に対して手で又は機械的に圧力を加えることで、突き刺し先端40は、脆弱な壁65を貫通するまで区画67の方へ付勢され、図6に示されているように、試料採取部30に付随する液体試料(図示せず)を液体試薬組成物70と接触させる。図6に例示する実施形態では、試料採取装置100及び容器200は、互いに対して第2の操作位置に置かれる。この実施形態では、試料採取装置100は、容器200に完全に挿入されており、料採取装置の試料採取部30は、液体試薬組成物70と接触している。
任意の実施形態では、反応混合物を形成するために、容器中で所定量の試料を液体試薬組成物と接触させることは、更に、容器中で試料及び液体試薬組成物を撹拌するステップを含むことができる。撹拌は、例えば、旋回動作、振り子状動作で容器を急速に振ることによって、又は容器を振動させる機械と容器を接触させることによって、手作業で、又は機械的に行われてもよい。
容器のキュベット部は、ルシフェラーゼ酵素活性から生じる発光を検出するために、ルミノメーターに操作上連結される。市販のルミノメーターは、本開示の方法の任意の実施形態で用いるのに適している。好適なルミノメーターの非限定的な例は、3M(商標)Clean−Trace(商標)NG Luminometer(3M Company(St.Paul,MN)から市販)である。典型的には、キュベットは、容器の一部(例えば、キュベット部)又は容器全体をルミノメーターの対応する受容区画内に置くことにより、操作上連結される。キュベット部は、反応混合物が形成される前又は後に、ルミノメーターに操作上連結されてもよい。典型的には、反応混合物が形成された後、キュベット部はルミノメーターに操作上連結される。いくつかの実施形態では、キュベット部は、反応混合物の形成後5秒までに、ルミノメーターに操作上連結される。いくつかの実施形態では、キュベット部は、反応混合物の形成後10秒までに、ルミノメーターに操作上連結される。いくつかの実施形態では、キュベット部は、反応混合物の形成後15秒までに、ルミノメーターに操作上連結される。いくつかの実施形態では、キュベット部は、反応混合物の形成後20秒までに、ルミノメーターに操作上連結される。いくつかの実施形態では、キュベット部は、反応混合物の形成後30秒までに、ルミノメーターに操作上連結される。いくつかの実施形態では、キュベット部は、反応混合物の形成後45秒までに、ルミノメーターに操作上連結される。いくつかの実施形態では、キュベット部は、反応混合物の形成後60秒までに、ルミノメーターに操作上連結される。いくつかの実施形態では、キュベット部は、反応混合物の形成後90秒までに、ルミノメーターに操作上連結される。いくつかの実施形態では、キュベット部は、反応混合物の形成後2分までに、ルミノメーターに操作上連結される。好ましくは、キュベットは、反応混合物の形成後、約5〜10秒以内に、ルミノメーターに操作上連結される。
キュベット部がルミノメーターに操作上連結された後、発光がルミノメーターによってモニターされる。反応混合物が形成された後、反応が比較的安定した発光量に達するのに時間がかかる場合がある。この現象は、表4〜9のデータによって示される。発光が比較的安定したプラトーに達する期間は、表11に要約されるように、反応の温度に反比例する。
方法の任意の実施形態では、液体試薬組成物は、ルシフェラーゼ及びATP源の存在下で、発光反応を促進するのに十分な濃度のルシフェリン(例えば、約0.3〜0.4mg/Lのルシフェリン)を含む。本開示の方法では、ATP源は、本明細書に開示される液体試料、又は事前定義された量又は濃度のATPを含有する溶液(即ち、陽性対照、又はATP基準)であり得る。任意の実施形態では、液体試薬組成物は、水溶液を含むことができる。本開示の器具又はキットで用いられる液体試薬組成物は、6.8以下の初期(即ち、本開示のpH調整試薬と接触する前の)pHを有する。好ましくは、液体試薬組成物は、6.4以下の初期pHを有する。
方法の任意の実施形態では、液体試薬組成物は、任意に、緩衝剤を含んでもよい。好適な緩衝剤は、液体試薬組成物の初期pHをpH 6.8以下に、好ましくはpH 6.4以下に保つのに有効であるpKaを有する。N−(2−アセトアミド)−イミノ二酢酸(ADA)は、好適な緩衝剤の非限定的な例である。緩衝剤は、液体試薬組成物のpHを有効に保つだけ十分に高く、なおかつ、試料採取装置の試料採取部に被覆されたpH調整試薬によって媒介された液体試薬組成物のpHの変化を実質的に阻止しないだけ十分に低い量(例えば、pH 6.4〜6.8の液体試薬組成物425マイクロリットル中に約16mMのADA)で、液体試薬組成物中に存在すべきである。方法の任意の実施形態では、液体試薬組成物は、更に、ルシフェラーゼ酵素を含んでもよい。方法の任意の実施形態では、ルシフェラーゼ酵素は、本質的に、温度、イオン性洗剤、及び還元剤のばらつきに対して、対応する非組み換えルシフェラーゼ酵素より感度が低いルシフェラーゼ活性を有する組み換えルシフェラーゼ酵素からなり得る。ルシフェラーゼ酵素は、例えば、約9mg/Lの濃度で、液体試薬組成物中に存在することができる。方法の任意の実施形態では、液体試薬組成物は、更に、マグネシウムイオン源(例えば、二酢酸マグネシウム四水和物)を含むことができる。マグネシウムイオン源は、液体試薬組成物が液体試料と混合されるときにルシフェラーゼ酵素活性と実質的に干渉しない濃度(例えば、約3mM)で存在することができる。方法の任意の実施形態では、液体試薬組成物は、更に、タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン)を含むことができる。タンパク質は、例えば、約0.046重量パーセントの濃度で、液体試薬組成物中に存在し得る。方法の任意の実施形態では、液体試薬組成物は、液体試料と混合されるときにルシフェラーゼ酵素活性と実質的に干渉しない濃度で、防腐剤(例えば、0.046重量パーセントのアジ化ナトリウム)を更に含むことができる。
本開示の方法の任意の実施形態では、液体試料を含む試料採取装置を液体試薬組成物と接触させることは、特定の温度(例えば、周囲温度)で、試料採取装置を液体試薬組成物と接触させることを含む。一般に、接触が低温で起こるとき、発光反応が比較的安定した発光量に達するためには、より長い期間が必要である。逆に、接触が高温で起こるとき、発光反応が比較的安定した発光量に達するためには、より短い期間が必要である。本開示の方法の任意の実施形態では、液体試料を含む試料採取装置を液体試薬組成物と接触させることは、10℃〜35℃(両端の値を含む)の範囲内の温度で、液体試料を液体試薬組成物と接触させることを含む。好ましくは、液体試料を含む試料採取装置を液体試薬組成物と接触させることは、15℃〜30℃(両端の値を含む)の範囲内の温度で、液体試料を液体試薬組成物と接触させることを含む。
方法の任意の実施形態では、試料採取装置を液体試薬組成物と接触させた後、実質的に定常状態の量の光が、一定期間後に組成物から放出される。上述のように期間は、接触が起こる温度の影響を受け得る。本開示の任意の実施形態では、実質的に定常状態の量の光が、25秒未満で組成物から放出される(例えば、接触が約10℃〜約20℃の温度で起こるとき)。本開示の任意の実施形態では、実質的に定常状態の量の光が、約22秒以下で組成物から放出される(例えば、接触が約10℃〜約20℃の温度で起こるとき)。いくつかの実施形態では、実質的に定常状態の量の光が、20秒未満で組成物から放出される(例えば、接触が約14℃〜約20℃の温度で起こるとき)。いくつかの実施形態では、実質的に定常状態の量の光が、約10秒以下で組成物から放出される(例えば、接触が約20℃の温度で起こるとき)。
本発明の方法は、ATP及び本開示による液体試薬組成物を含む試料と接触しているルシフェラーゼ酵素が、実質的に定常状態である発光反応を触媒するために必要な時間を、実質的に減少させる。表11(下記)は、反応が実質的に定常状態の発光に達するための平均所要時間が、10℃〜20℃(両端の値を含む)の範囲の温度で、本開示の方法によって約3倍減少することを示す。
実施形態
実施形態Aは、
開口部と、ルミノメーターに操作上連結されるようになっているキュベット部と、を備えた容器と、
ルシフェリンを含む液体試薬組成物であり、液体試薬組成物は閉鎖した区画に配置され、液体試薬組成物のpHは約6.8以下である、液体試薬組成物と、
試料採取部及び操作部を有する試料採取装置と、を含み、
試料採取部は、実質的に複数の繊維間の空間によって形成されない1つ以上の窪みに、所定量の液体試料を獲得し解放可能に保持するようになっており、
試料採取装置の試料採取部は、液体試薬組成物と接触したとき、液体試薬組成物のpHを6.9以上に変える、有効量のpH調整試薬を含む乾式被膜を含む、キットである。
実施形態Bは、
開口部と、ルミノメーターに操作上連結されるようになっているキュベット部と、を備えた容器と、
ルシフェリンを含む液体試薬組成物であり、液体試薬組成物は閉鎖した区画に配置され、液体試薬組成物のpHは約6.8以下である、液体試薬組成物と、
試料採取部及び操作部を有する試料採取装置と、を含み、
試料採取部は、実質的に複数の繊維間の空間によって形成されない1つ以上の窪みに、所定量の液体試料を獲得し解放可能に保持するようになっており、
試料採取装置は、液体試薬組成物と接触したとき、液体試薬組成物のpHを6.9以上に調整する、有効量のpH調整試薬を含む乾式被膜を含む、器具である。
実施形態Cは、実施形態Aのキット又は実施形態Bの器具であって、乾式被膜は、試料採取装置の試料採取部に配置される。
実施形態Dは、実施形態A〜Cの実施形態のうちの任意の1つのキット又は器具であって、pH調整試薬は、水溶性の試薬を含む。
実施形態Eは、実施形態A〜Dの実施形態のうちの任意の1つのキット又は器具であって、試料採取部は、較正済みループを含む。
実施形態Fは、実施形態A〜Eの実施形態のうちの任意の1つのキット又は器具であって、閉鎖した区画は、脆弱な壁を含む。
実施形態Gは、実施形態Fのキット又は器具であって、脆弱な壁は、開口部とキュベット部との間で容器に配置される。
実施形態Hは、実施形態Aのキット又は実施形態Bの器具であって、試料採取装置は、閉鎖した区画を含み、試料採取装置は、更に、流動性組成物を容器から選択的に解放する構造を含む。
実施形態Iは、実施形態A〜Hの実施形態のうちの任意の1つのキット又は器具であって、試料採取部は、発泡材料を含む。
実施形態Jは、実施形態A〜Iの実施形態のうちの任意の1つのキット又は器具であって、pH調整試薬は、N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N’−[2−エタンスルホン酸]、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される緩衝液成分を含む。
実施形態Kは、実施形態A〜Jの実施形態のうちの任意の1つのキット又は器具であって、pH調整試薬は、1つ以上の窪みに被覆される。
実施形態Lは、実施形態A〜Kの実施形態のうちの任意の1つのキット又は器具であって、被膜は、更に、有効量の細胞抽出剤を含む。
実施形態Mは、実施形態A〜Lの実施形態のうちの任意の1つのキット又は器具であって、ルシフェラーゼ酵素は、本質的に、温度、イオン性洗剤、及び還元剤のばらつきに対して、対応する非組み換えルシフェラーゼ酵素より感度が低いルシフェラーゼ活性を有する組み換えルシフェラーゼ酵素からなる。
実施形態Nは、実施形態A〜Mの実施形態のうちの任意の1つのキット又は器具であって、被膜は、有効量のリン酸緩衝液成分を含まない。
実施形態Oは、実施形態A〜Nの実施形態のうちの任意の1つのキット又は器具であって、所定量は、約0.01mL〜約0.25mLである。
実施形態Pは、
所定量の液体試料を取得するために試料採取装置を用いるステップであって、
試料採取装置は、試料採取部、及び操作部を含み、
試料採取部は、実質的に複数の繊維間の空間によって形成されない1つ以上の窪みに、所定量の液体試料を獲得し解放可能に保持するようになっており、
試料採取装置は、約6.8以下のpHを有する液体試薬組成物と接触したとき、液体試薬組成物のpHを6.9以上に変える、有効量のpH調整試薬を含む乾式被膜を含み、
液体試薬組成物は、ルシフェリンを含む、ステップと、
反応混合物を形成するために、容器中で所定量の試料及びpH調整試を液体試薬組成物と接触させるステップと、
反応混合物から放出された光を検出するためにルミノメーターを用いるステップであって、
容器は、ルミノメーターに操作上連結されるようになっているキュベット部を含む、ステップと、を含む方法である。
実施形態Qは、実施形態Pの方法であって、容器中で所定量の試料と液体試薬組成物とを撹拌するステップを更に含む。
実施形態Rは、実施形態P又は実施形態Qの方法であって、液体試薬組成物は、更に、ルシフェラーゼ酵素を含む。
実施形態Sは、実施形態Rの方法であって、ルシフェラーゼ酵素活性は、本質的に、温度、イオン性洗剤、及び還元剤のばらつきに対して、対応する非組み換えルシフェラーゼ酵素より感度が低いルシフェラーゼ活性を有する組み換えルシフェラーゼ酵素からなる。
実施形態Tは、実施形態P〜Sのうちの任意の1つの方法であって、試料を含む試料採取装置を液体試薬組成物と接触させることは、10℃〜35℃(両端の値を含む)の範囲内の温度で、試料採取装置を液体試薬組成物と接触させることを含む。
実施形態Uは、実施形態P〜Tのうちの任意の1つの方法であって、試料採取装置を液体試薬組成物と接触させた後、実質的に定常状態の量の光が、20秒未満で組成物から放出される。
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。
被配合物:
被膜配合物1及び2は、表1及び2に列挙された成分から溶液として調製された。被膜配合物1のpHは約8.5、被膜配合物2のpHは約7.2であった。
Figure 2015523076
Figure 2015523076
液体試薬組成物:
次の実施例で用いられた液体試薬組成物は、ルシフェリン及びルシフェラーゼ酵素を含む。実施例1〜3で用いられた液体試薬組成物は、表3に列挙された成分からの溶液として調製された。配合物のpHは、約6.4であった。各容器の密封されたキュベット部に含まれた液体試薬組成物の総量は、約425マイクロリットルであった。
Figure 2015523076
比較例1〜3で用いられた液体試薬組成物は、液体試薬組成物のpHを6.4から6.8に調整するためのpH調整試薬として、水酸化ナトリウム(4N)が加えられたことを除けば、表2に列挙されたものと同じであった。
ATP試験器具の調製:
図1Aに記載した設計に類似した器具を用いた。試料採取装置の操作部を、ポリプロピレン/TPE配合物から作製した。試料採取装置のステム及び試料採取部を、アセタール樹脂を用いて作製した(即ち、単一部分として成形した)。試料採取装置は約167mmの全長を有し、操作部の長さは約50.5mmに及び、ステムの長さは約89.5mmに及び、試料採取リング要素の長さは約27mmに及んだ。試料採取部の窪みを、ステムから少なくとも約10mm離して位置決めした。窪みは、試料採取部を囲んで離間して配置した11つのぎざぎざ(深さおよそ0.3〜0.4mm)からなった。窪みは、各窪み間を約0.85mm離間させて、試料採取装置の試料採取部に約14.6mmの距離にわたって離間して配置した。鋭い円錐形に形作られた先端(長さ約2.4mm)を、図1Aに示すように、試料採取部の端部のステムとは反対側に配置した。
3M Clean−Trace(商標)Water ATP試験装置を、3M Company(St.Paul,MN)から入手した。各試験装置のホイル密封された区画に位置する冷凍乾燥された酵素のペレットを、容器から取り出し、容器のキュベット部の液体を、表3に記載する液体試薬組成物425マイクロリットルと取り替えた。更に、試料採取装置の試料採取部を、表1及び2に記載する被膜配合物のうちの1つで被覆した。試料採取装置は、試料採取装置の操作部を持ち、窪みのすべてが被膜溶液に浸漬される地点まで装置の反対端を被膜溶液に浸漬することによって被覆した。装置を被膜溶液から引き上げた後、およそ145マイクロリットルの被膜溶液が試料採取装置上に留まった。温風を用いて、試料採取装置上の被膜を乾燥させた。
(実施例1)
上述のATP試験器具を用いた。試料採取装置の試料採取部は、被膜配合物1で被覆され、上述のように乾燥させた。試料採取装置をATP試験器具から取り出し、Sigma−Aldrich Corporationから市販される5×10−9Mのアデノシン三リン酸(triphophate)(ATP)10mLを含むバイアルに浸漬した。試料採取部がATP溶液に浸されている間、試料採取装置をバイアルの側面で軽く叩くことで、窪みから気泡を追い出し、試料液体の事前定義された量が獲得し易いようにした。約1〜3秒の浸漬後、試料採取装置をバイアルから素早く取り出し、容器に再挿入した。試料採取装置は、約145マイクロリットルのATP溶液を保持した。試料採取装置を、第1の操作位置から第2の操作位置に移動させるために、試料採取装置のハンドルを押した。試料採取装置が容器中で移動することによって、脆弱な密封が破壊され、試料採取部は液体試薬組成物と直接接触した状態で位置付けられた。容器を垂直位に保持し、激しく左右(振り子運動)に10秒間振とうした。容器を振とうした後、器具のキュベット部をClean−Trace(商標)NG Luminometer(3M Company(St.Paul,MN)から市販)に直ちに挿入し、測定値を相対発光量(RLU)で記録した。RLU測定値を70秒間およそ10秒毎に得た。これは、前の読み取り後、直ちにルミノメーターに新しい読み取りを開始させることによって行われた。機器が新しい読み取りをそれぞれ取得し、提示するのにおよそ10秒を要するので、約10秒毎にRLU測定値を得ることになった。試験はすべて、10℃で人工気候室で行なわれた。材料及び設備はすべて、試験に先立って人工気候室で平衡化した。合計5つの複製試料の試験を行い、結果を表4に示す。
試料採取装置を、第1の操作位置から第2の操作位置に移動させることは、キュベットの液体試薬組成物のpHを約6.4のpHから約7.2のpHに上昇させる結果になった。
比較例1
試料採取装置が被膜配合物2で被覆されたこと、及び、液体試薬組成物のpHが6.8であったことを除いて、実施例1と同じ手順を用いた。RLU測定値を70秒間10秒毎に得た。合計5つの複製試料の試験を行い、結果を表5に示す。
Figure 2015523076
Figure 2015523076
(実施例2)
試験が14℃で行なわれたことを除いて、実施例1に記載したのと同じ手順に従った。合計5つの複製試料の試験を行い、結果を表6に示す。
比較例2
試料採取装置は被膜配合物2で被覆され、液体試薬組成物のpHは6.8であったことを除いて、実施例2と同じ手順を用いた。RLU測定値を70秒間10秒毎に得た。合計5つの複製試料の試験を行い、結果を表7に示す。
Figure 2015523076
Figure 2015523076
(実施例3)
試験が20℃で行なわれたことを除いて、実施例1に記載したのと同じ手順に従った。合計5つの複製試料の試験を行い、結果を表8に示す。
比較例3
試料採取装置は被膜配合物2で被覆され、液体試薬組成物のpHは6.8であったことを除いて、実施例3と同じ手順を用いた。RLU測定値を70秒間10秒毎に得た。合計5つの複製試料の試験を行い、結果を表9に示す。
Figure 2015523076
Figure 2015523076
(実施例4)
実施例1〜3及び対応する比較例1〜3の被験試料の、第1の時点(10秒)と第2の時点(20秒)との間のRLU測定値のパーセント増加を、以下の数式を用いて計算した:
RLUの%増加={[(20秒時のRLU)−(10秒時のRLU)]/(10秒時のRLU)}×100
RLU測定値の平均増加パーセント(n=5)を表10に示す。
Figure 2015523076
(実施例5)
実施例1〜3及び対応する比較例1〜3の被験試料の最大RLU測定値に達する平均時間(n=5)が決定した。結果を表11に記す。
Figure 2015523076
本明細書に引用するすべての特許、特許出願、及び公開公報、並びに電子的に入手可能な資料の開示内容の全体を、参照により援用する。本出願の開示内容と参照によって本明細書に組み込まれるいずれかの文書の開示内容との間になんらかの矛盾が存在する場合には、本出願の開示内容が適用されるものとする。上記の詳細な説明及び実施例は、あくまで理解を助ける明確さのために示したものである。これらによって不要な限定をするものと理解されるべきではない。本発明は、示され記載された厳密な詳細事項に限定されるべきではないが、それは当業者には明らかな変形が、特許請求の範囲において規定された本発明の範囲に包含されるからである。
全ての見出しは、読者の利便性のためであり、指定のない限り、その見出しに続く本文の意味を限定するために使用するべきではない。
本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な改変を行うことが可能である。これら及び他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。

Claims (21)

  1. 開口部と、ルミノメーターに操作上連結されるようになっているキュベット部と、を備えた容器と、
    ルシフェリンを含む液体試薬組成物であり、前記液体試薬組成物は閉鎖した区画に配置され、前記液体試薬組成物のpHは約6.8以下である、液体試薬組成物と、
    試料採取部を有する試料採取装置と、を含み、
    前記試料採取部は、実質的に複数の繊維間の空間によって形成されない1つ以上の窪みに、所定量の液体試料を獲得し解放可能に保持するようになっており、
    前記試料採取装置は、前記液体試薬組成物と接触したとき、前記液体試薬組成物のpHを6.9以上に変える、有効量のpH調整試薬を含む乾式被膜を含む、キット。
  2. 開口部と、ルミノメーターに操作上連結されるようになっているキュベット部と、を備えた容器と、
    ルシフェリンを含む液体試薬組成物であり、前記液体試薬組成物は閉鎖した区画に配置され、前記液体試薬組成物のpHは約6.8以下である、液体試薬組成物と、
    試料採取部を有する試料採取装置と、を含み、
    前記試料採取部は、実質的に複数の繊維間の空間によって形成されない1つ以上の窪みに、所定量の液体試料を獲得し解放可能に保持するようになっており、
    前記試料採取装置は、前記液体試薬組成物と接触したとき、前記液体試薬組成物のpHを6.9以上に変える、有効量のpH調整試薬を含む乾式被膜を含む、器具。
  3. 前記乾式被膜は、前記試料採取装置の前記試料採取部に配置される、請求項1に記載のキット、又は請求項2に記載の器具。
  4. 前記pH調整試薬は、水溶性の試薬を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のキット又は器具。
  5. 前記試料採取部は、較正済みループを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のキット又は器具。
  6. 前記閉鎖した区画は、脆弱な壁を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のキット又は器具。
  7. 前記脆弱な壁は、前記開口部と前記キュベット部との間で前記容器に配置される、請求項6に記載のキット又器具。
  8. 前記試料採取装置は、前記閉鎖した区画を含み、前記試料採取装置は、更に、前記流動性組成物を前記容器から選択的に解放する構造を含む、請求項1に記載のキット、又は請求項2に記載の器具。
  9. 前記試料採取部は、発泡材料を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のキット又は器具。
  10. 前記pH調整試薬は、N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N’−[2−エタンスルホン酸]、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される緩衝液成分を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のキット又は器具。
  11. 前記pH調整試薬は、1つ以上の窪みに被覆される、請求項1〜10のいずれか一項に記載のキット又は器具。
  12. 前記被膜は、更に、有効量の細胞抽出剤を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のキット又は器具。
  13. 前記ルシフェラーゼ酵素は、本質的に、温度、イオン性洗剤、及び還元剤のばらつきに対して、対応する非組み換えルシフェラーゼ酵素より感度が低いルシフェラーゼ活性を有する組み換えルシフェラーゼ酵素からなる、請求項1〜12のいずれか一項に記載のキット又は器具。
  14. 前記被膜は、有効量のリン酸緩衝液成分を含まない、請求項1〜13のいずれか一項に記載のキット又は器具。
  15. 前記所定量は、約0.01mL〜約0.25mLである、請求項1〜14のいずれか一項に記載のキット又は器具。
  16. 所定量の液体試料を取得するために試料採取装置を用いるステップであって、
    前記試料採取装置は、試料採取部を含み、
    前記試料採取部は、実質的に複数の繊維間の空間によって形成されない1つ以上の窪みに、所定量の液体試料を獲得し解放可能に保持するようになっており、
    前記試料採取装置は、約6.8以下のpHを有する液体試薬組成物と接触したとき、前記液体試薬組成物のpHを6.9以上に変える、有効量のpH調整試薬を含む乾式被膜を含み、
    前記液体試薬組成物は、ルシフェリンを含む、ステップと、
    反応混合物を形成するために、容器中で前記所定量の試料及び前記pH調整試薬を液体試薬組成物と接触させるステップと、
    前記反応混合物から放出された光を検出するためにルミノメーターを用いるステップであって、
    前記容器は、前記ルミノメーターに操作上連結されるようになっているキュベット部を含む、ステップと、を含む、方法。
  17. 前記容器中で前記所定量の前記液体試料と前記液体試薬組成物とを撹拌するステップを更に含む、請求項16記載の方法。
  18. 前記液体試薬組成物は、更に、ルシフェラーゼ酵素を含む、請求項16又は17に記載の方法。
  19. 前記ルシフェラーゼ酵素活性は、本質的に、温度、イオン性洗剤、及び還元剤のばらつきに対して、対応する非組み換えルシフェラーゼ酵素より感度が低いルシフェラーゼ活性を有する組み換えルシフェラーゼ酵素からなる、請求項18に記載の方法。
  20. 前記液体試料を含む前記試料採取装置を液体試薬組成物と接触させることは、10℃〜35℃(両端の値を含む)の範囲内の温度で、前記試料採取装置を前記液体試薬組成物と接触させることを含む、請求項16〜19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 前記試料採取装置を前記液体試薬組成物と接触させた後、実質的に定常状態の量の光が、20秒未満で前記液体試薬組成物から放出される、請求項16〜20のいずれか一項に記載の方法。
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