内燃エンジンで使用されるための既知のポンプ組立体では、加圧燃料をエンジンの燃料噴射器に供給するために複数のユニットポンプが設けられる。一部のユニットポンプタイプまたはユニットポンプ/噴射器タイプの装置では、各ユニットポンプ内で加圧される燃料がその専用の噴射器のみに送出される。別のコモンレールタイプのシステムでは、各ユニットポンプは加圧燃料をコモンレールに供給するように構成され、そのコモンレールから燃料がエンジンのすべての噴射器に送出される。通常、ユニットポンプの構成要素は、エンジンブロックの内部に設置されるかまたはその外部に設置されるモジュール式ポンプハウジング内に配置される。
各ユニットポンプが、カム駆動装置によりポンプハウジング内に設けられるボア内で往復運動するように駆動されるプランジャを有する。通常、カム駆動装置はカムシャフト上に設置され、カムおよびカムと協働するカム従動部(ローラなど)を有し、それらがプランジャのポンピングストローク(pumping stroke)を駆動させ、その間、カムシャフトが駆動されてカムが回転して燃料が加圧される。
カムシャフトは歯車列を介してクランクシャフトによって駆動され、通常はクランクシャフトの回転速度の半分で駆動される。エンジンクランクシャフトは、エンジンブロックの一体部分を通常は形成するクランクケース内に収容される。シリンダブロックとしばしば称されるエンジンブロックはエンジンのシリンダを有する一体構造物であり、シリンダ内で、燃料、空気および燃焼ガスが圧縮および膨張され、それによりエンジンに動力が供給される。また、カムシャフトは、エンジンシリンダのための吸入バルブおよび排出バルブのオペレーションを駆動させるのにも使用される。
クランクシャフトは、シリンダピストンの往復線形運動を回転に変換するエンジンの一部分である。クランクシャフトは各エンジンシリンダに対して1つ存在する複数のクランクピンを支持し、それらに対して、各エンジンシリンダからのコネクティングロッドの端部が取り付けられる。一部のV形エンジンでは、1つのクランクピンに対して2つのコネクティングロッドが結合される。ピストンが燃焼サイクルを通して駆動されると、クランクピンが回転させられ、それによりクランクシャフトが回転する。
ユニットポンプはエンジンのカムシャフトを起点として駆動されるように設置されるのが一般的である。これまでに、クランクシャフトにより直接に駆動されるようにユニットポンプを設置することも提案されている。ユニットポンプをクランクシャフト上に設置する構成の一例が特開2008−014159に記載されている。この例には、ユニットポンプが歯車列構成要素を介して駆動されないことで歯車列の騒音および応力が排除されるという利点がある。特開2008−014159では、ユニットポンプがシャフトの動力出力端部(power output end)から遠い端部のところに設置されることから、ギアボックスの重量バランスを均衡させることができる。
本発明の目的は、上で言及した種類のポンプ組立体をさらに改善することであり、ここでは、前記または各ユニットポンプが、従来の構成のようにカムシャフト上ではなく、クランクシャフト上に直接に設置される。
本発明の第1の態様によると、燃料が噴射される少なくとも1つのエンジンシリンダを備える内燃エンジンのための燃料ポンプ組立体が提供され、各シリンダが、関連付けられるシリンダ内で往復運動する関連付けられるシリンダピストンを有する。燃料ポンプ組立体が複数のユニットポンプを備え、各ユニットポンプは、ユニットポンプの一部分を形成することができる関連付けられるポンプチャンバ内の燃料を加圧するためのポンピングプランジャを有し、これにより、エンジンの関連付けられる燃料噴射器までの送出が行われる。前記または各シリンダピストンによりクランクシャフトが回転駆動され、このクランクシャフトが、エンジンギアボックスが取り付けられることができる動力出力端部と、動力出力端部から離れた端部とを備える。クランクシャフトがユニットポンプのポンピングプランジャを駆動させるように構成されるカムを支持し、さらに、少なくとも1つのクランク組立体を支持する。前記または各クランク組立体が使用時にシリンダピストンのうちのそれぞれ1つに結合される。
燃料噴射器はユニットポンプと一体的な部分を形成してよいかまたは別個の構成要素であってもよい。
通常、エンジンギアボックスがクランクシャフトの動力出力端部のところに配置されてその動力出力端部によって駆動される。
一実施形態では、カムが、動力出力端部から離れたクランクシャフトの端部のところに取り付けられ得る。これにより、カムさらにはそれによりユニットポンプがエンジンのアクセス可能な部分のところに配置されることになる(すなわち、通常はエンジンの前方部)。
別の実施形態では、カムがクランクシャフトに取り付けられることができ、この場合、カムとクランクシャフトの離れた端部との間に少なくとも1つのクランク組立体が位置する。これによりユニットポンプがエンジン内の比較的アクセス困難なところに配置されることになるが、ユニットポンプが不当な変更(tampering)防止箇所に位置することになるという利点もある。
燃料ポンプ組立体がクランクシャフトのためのハウジングをさらに備えることができる。ハウジングがエンジンハウジングまたはエンジンブロックの形態をとることができる。ユニットポンプがエンジンブロック内に少なくとも部分的に取り付けられてよく、より好適には、全体にエンジンブロック内に取り付けられる。特定の一実施形態では、クランクシャフトのためのクランクケースまたはクランクハウジングがエンジンハウジングと一体的な部分を形成し、ユニットポンプが、全体にクランクケース内に配置される。
別の実施形態では、燃料ポンプ組立体が、エンジンハウジングの外部にユニットポンプを取り付けるための取り付け手段をさらに備える。
ユニットポンプが、取付手段によりエンジンハウジングの外部に設置される共通のポンプハウジング内に取り付けられ得る。
別法として、ユニットポンプの各々が、関連付けられる取り付け手段によりエンジンハウジングに取り付けられるそれ自体の専用のハウジング内に取り付けられてもよい。
好適には、クランク組立体が、クランクピンと、シリンダピストンに結合されるコネクティングロッドとを有する。
本発明の燃料ポンプ組立体は、ポンピングプランジャを駆動させるために、別個のカムシャフトを利用するのではなく、クランクシャフトの形態の既存のエンジン構成要素が使用され得るという利点を提供する。これは、駆動シャフトとポンピングプランジャとの間に歯車列構成要素が存在しないことにより、歯車列の騒音および応力が排除されることを意味する。
ユニットポンプの各々が、カムと協働するローラと、ローラを少なくとも部分的に取り囲み、使用時にカムの上に載るときにローラによって駆動されるシューとをさらに備えることができ、したがって、クランクシャフトと共にカムが回転するとき、シューが関連付けられるポンピングプランジャと協働し、シューに駆動力が加えられる。
別の実施例では、ユニットポンプの各々が、カムと協働するローラと、使用時にカムの上にローラが載るときにローラによって駆動されるタペットなどの従動部とをさらに備え、それにより、クランクシャフトと共にカムが回転するとき、従動部が関連付けられるポンピングプランジャと協働し、従動部に駆動力が加えられる。一実施例では、従動部がタペットである。
フライホイールがクランクシャフトの動力出力端部のところに取り付けられ得る。フライホイールはクランクシャフトを安定して回転させるように機能する。
例えば、カムはクランクシャフトと一体的な部分を形成するかまたはクランクシャフトによって支持される別個の構成要素であってよい。
本発明の第2の態様によると、燃料が噴射される少なくとも1つのエンジンシリンダを備える内燃エンジンのための燃料ポンプ組立体が提供され、各シリンダが、使用時に関連付けられるシリンダ内で往復運動する関連付けられるシリンダピストンを有する。燃料ポンプ組立体が、エンジンの複数の燃料噴射器のうちの1つの燃料噴射器への送出のためにポンプチャンバ内の燃料を加圧するためのポンピングプランジャを有するユニットポンプを備える。クランクシャフトが前記または各シリンダピストンによって回転駆動され、このクランクシャフトは、エンジンギアボックスが取り付けられる動力出力端部と、動力出力端部から離れた端部とを備える。クランクシャフトがユニットポンプのポンピングプランジャを駆動させるように構成されるカムを支持し、さらに、少なくとも1つのクランク組立体を支持し、前記または各クランク組立体が使用時にシリンダピストンのうちのそれぞれ1つに結合される。カムがクランクシャフトに取り付けられ、ここでは、カムとクランクシャフトの離れた端部との間に少なくとも1つのクランク組立体が位置する。
本発明の第3の態様によると、往復動シリンダピストンを各々が有する複数のエンジンシリンダと、本発明の第1の態様によるポンプ組立体と、を備える圧縮点火内燃エンジンが提供され、シリンダピストンが使用時にクランクシャフトの回転を駆動する。通常、このようなエンジンでは、燃焼のためにエンジンシリンダ内に噴射される燃料の圧力は少なくとも100MPa(1000bar)であり、より一般的には少なくとも200MPa(2000bar)である。
本発明の第1または第2の態様の好適なおよび/または任意選択の特徴は単独で、または、適切に組み合わされて、本発明の第3の態様の中に組み込まれてもよい。
次に、以下の図を参照しながら単に例として本発明を説明する。
図1を参照すると、6シリンダ圧縮点火内燃エンジンが、「エンジンブロック」14と称されるエンジンハウジングの一体部分を形成するクランクケース内に収容されるエンジンクランクシャフト12を有する、概して10で示される燃料ポンプ組立体を有する。燃料をその中に噴射するためのエンジンシリンダ15がエンジンブロック14内に画定される。各シリンダ15が、シリンダ内で往復運動する関連付けられるシリンダピストン(図示せず)を有する。図1に示される実施形態では、クランクシャフト12が7つの軸受16(1つのみが参照符号16によって示される)を支持し、1つの軸受16が各エンジンシリンダ15の間に設置され、1つの軸受16がクランクシャフト12の各端部のところに設置される。軸受16のうちの隣接し合う軸受は関連付けられるクランク組立体によって離間される。各クランク組立体が、コネクティングロッド20と、コネクティングロッド20の端部に軸受のジャーナルを画定するピン18の形態のクランク部材とを有する。コネクティングロッド20のもう一方の端部がシリンダピストンのうちの関連付けられるシリンダピストンに取り付けられる。クランクピン18の軸がクランクシャフト12の軸からオフセットされ、クランクピン18がシリンダピストンの線形往復運動をクランクシャフト12の回転運動に変換する。シリンダピストンが燃焼サイクルを通して駆動されると、クランクピン18がクランクシャフト12を中心として回転させられる。
クランクシャフト12が、エンジンギアボックス(図示せず)に結合される動力出力端部26と、動力出力端部26から離れた第2の端部22とを有し、以下ではこの第2の端部22はクランクシャフトの離れた端部22と称される。フライホイール24が、使用時にクランクシャフトを駆動させるときにクランクシャフトを安定させるためにおよびクランクシャフト12の角速度を一定に維持するために、動力出力端部26のところに設置される。フライホイール24と同じクランクシャフトの端部の方で(すなわち、動力出力端部26)、ユニットポンプ28がクランクシャフト12上に設置される。ユニットポンプ28が、フライホイール24の内部かつシャフト12の離れた端部22から最も遠いところに位置するクランク組立体の外部においてクランクシャフト12によって設置または支持される。言い換えると、ユニットポンプ28は、端部に配置されるクランク組立体18、20とフライホイール24との間に位置する。ユニットポンプ26がクランクシャフト12上に直接に設置されることにより、従来の構成では一般的であるように駆動シャフトとカム36との間に中間伝動装置を設けることが、一切必要ではなくなる。
図2にさらに詳細に示されるように、ユニットポンプ28がポンプハウジング30を有し、ポンプハウジング30内に、リターンストロークおよびポンピングストロークを含めたポンピングサイクルを実行する往復動ポンピングプランジャ34を収容するためのプランジャボア32が設けられる。クランクシャフト12が、3つのカムローブを有するカム36を支持する。後でさらに詳細に説明するように別のカム形態も考えられる。
ユニットポンプ28が、使用時にクランクシャフト12を回転させるときにカム36に係合されてカム表面の上に載るローラ38をさらに有する。バケットタペット40の形態の中間駆動部材がピンおよび車軸(axle)を介してローラ38に結合され、したがって、ローラ38がカム36の表面の上に載るときにタペット40が線形的に往復運動させられる。タペット40がスプリングクリップ42を介してプランジャ34に結合され、したがって、タペット40が往復運動するときにプランジャ34も往復運動する。プランジャ34のポンピングストロークが、タペット40を駆動させるときにカム36によって駆動され、プランジャ34のリターンストロークがプランジャリターンスプリング35によって駆動される。
別の実施形態(図示せず)では、ローラ−シュー構成がカムとプランジャとの間の中間駆動装置として使用され得る。この場合、シューは、ポンピングサイクルを通して、カム表面の上に載るときにシューさらにはそれによりポンピングプランジャを駆動させるように機能するローラを部分的に取り囲むことができる。
プランジャボア32が、タペット40から離れたその端部のところにポンプチャンバ44を画定する。ユニットポンプ28が、ポンピングサイクルの適切な時点でポンプチャンバ44に入るおよびポンプチャンバ44から出る燃料流れを制御するメータリングバルブ46を装備する。別の出口バルブ(図示せず)がポンプチャンバ44からの加圧燃料の流れのみを制御する。
ポンプチャンバ44がメータリングバルブ46を介して供給通路(図示せず)から移送圧力(transfer pressure)の燃料を受け取る。メータリングバルブ46は付勢ばねによってばね付勢されて開かれるばね付勢バルブであり、これは、電磁アクチュエータによって付勢ばねに逆らって閉じるように作動される。出口バルブは、ポンプチャンバ44内の燃料が所定のレベルに達するときに付勢ばねに逆らって開くばね付勢出口バルブである。両方のバルブが閉じ、ポンプチャンバ44の容積を減少させるためにプランジャボア32内でプランジャ34が内側に移動するとき、ポンプチャンバ44内の燃料が加圧される。燃料がポンプチャンバ44内で加圧されると、出口バルブを開くところにポイントが到達し、それにより、加圧燃料が下流のコモンレール(図示せず)まで流れることが可能となる。カム36が3つのカムローブを有することから、クランクシャフト12が一回転することでプランジャ34が3回のポンピングサイクルを実施することになる。各ポンピングサイクルで、出口バルブが開けられ、一定量の加圧燃料がコモンレールまで送出される。
代替的実施形態では、図3に示されるように、ユニットポンプ28が、クランクシャフト12の動力出力端部26のところにあるフライホイール24に隣接するように配置されるのではなく、クランクシャフト12の長さに沿う途中のところに設置される。ユニットポンプ28がクランクシャフト12の略中央に設置される場合、クランク組立体のうちの3つのクランク組立体がユニットポンプ28をクランクシャフト12の動力出力端部26から分離させ、クランク組立体のうちの3つのクランク組立体がユニットポンプ28をクランクシャフト12の離れた端部22から分離させる。やはり、前の実施形態と同様に、ユニットポンプ28がクランクシャフト12の離れた端部22から離間される位置のところでクランクシャフト12上に設置される。ユニットポンプ28は同様にエンジンブロック14内に完全に収容される。したがって、ユニットポンプ28は、不当な変更を回避することができる位置を占有することになる。
エンジンブロック14に対してユニットポンプを設置することには2つの選択肢がある。ポンプハウジングはクランクケース内のポケット(図示せず)内に設置されてよく、この場合、完全にエンジンブロック14内に位置することになる。これの利点は、エンジンを組み立てることが容易となること、および、全体の部品点数が少ないことである。点検保守のためにクランクケース内のユニットポンプ28にアクセスすることが不可能であってもそれが不利になることはなく、むしろ、ユニットポンプ28における不当な変更を回避するという利点を得ることができる。
別の構成では、ポンプハウジング30が、ボルトによりエンジンブロック14に固定され得る取り付けラグまたはブラケット(図示せず)を装備することもできる。この場合、ユニットポンプはクランクケース14の外部に位置することになり、容易にアクセスすることができる。この構成の利点は、ユニットポンプに対するすべての燃料接続部が燃料ホースを介することができることであり、この場合、エンジンブロック自体の中に燃料通路を形成する必要がない。
図4および図5が本発明の一実施形態を示しており、ここでは、2つのユニットポンプ28a、28bがクランクシャフト12の周りで角度的に離間されて同一のマルチローブカム36上に設置される。各ユニットポンプが図2を参照して上で説明した形態と等しい形態をとることができる。複数のユニットポンプを使用することにより、クランクシャフト12が一回転することで、各々のユニットポンプにより、燃料が3回加圧されて下流のコモンレールに送出されるような、より高いポンプ容量を有するポンプ組立体が得られる。また、ポンプ流量がより連続的となるという利点も得られる。
上で説明した単一ポンプ装置と同様の形でマルチプルポンプ装置がエンジンブロックの中に配置されるかまたはエンジンブロックに対して設置されてよい。2つ(またはそれ以上)のユニットポンプ28a、28bが共通のポンプハウジング内に収容され得、共通のポンプハウジングがエンジンブロック14内に設けられるボアまたはポケット内で受けられ得る。別法として、2つ(またはそれ以上)のユニットポンプ28a、28bのための共通のハウジングがエンジンブロック14内に設置されてもよく、または、上で説明したように取り付け装置を介してエンジンブロック14にボルト留めされるボルトオン組立体を形成してもよい。ボルトオン組立体を形成する場合、ユニットポンプ28a、28bが共通のポンプハウジング内に収容され得るか、または、各々が、それ自体の専用の設置プレートおよびボルトを介してエンジンブロックに設置されるそれ自体の専用のポンプハウジングを有してもよい。
混合型のユニットポンプ/コモンレールタイプのシステム(hybrid unit pump/common rail type system)では、ユニットポンプ28a、28bが燃料噴射システムのコモンレール(図示せず)に燃料を供給することができ、燃料噴射システムが、選択された噴射戦略に従い、加圧燃料を燃料噴射器に供給する。別の構成ではコモンレールが存在しなくてもよく、ユニットポンプが加圧燃料を専用の燃料噴射器(図示せず)に直接に供給してもよい。
実際には、図1から図3の構成では、すべてのユニットポンプの共通のカム上に複数のユニットポンプが設置される場合でも、同様の利点を得ることができる。この場合、カムはやはりマルチローブカムであってよい。
添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく本発明をさらに修正することが考えられることを認識されたい。例えば、カムが任意の数のカムローブを有することができ、任意の数の複数のユニットポンプがクランクシャフト12上に設置されてよい。燃料ポンプ組立体はコモンレール燃料システムで使用されなくてもよく、各ユニットポンプによりその専用の噴射器のみに加圧燃料を供給するような燃料システムで使用されてもよい。