本発明は、請求項1のプリアンブルに記載のラチェットに関し、特に、外科的介入のためのラチェット又は歯科用ラチェットに関する。本発明は更に、請求項17に記載のトルク伝達システムに、及び請求項22に記載の、医療分野におけるそのようなラチェットの使用に関する。その上、本発明は、請求項23に記載の、加えられるべきトルクをそのようなラチェットを用いてインプラントドライバに伝達する方法に、及び請求項27に記載の、そのようなラチェットを製造する方法に関する。
ツール及び/又は医療機器を使用して外科的介入を行う場合の、十分な殺菌の問題は周知である。血液又は組織残留物及びその他の創傷排出物が、相互に関連する部品の細隙又は接合部に入ること、及びそこに堆積することを防止するために、使用されるツールができるだけ少ない個々の部品から構成されるという事実が医療分野では重視される。
できるだけ少ない部品で、特に1つの部品でツールを形成することにより、いくつかの部品で形成されるツールの接合部において配置される堆積物又は微生物によって引き起こされる可能性がある感染を大幅に減らすことが可能である。
更に、一体成形の医療ツールの必要とされる殺菌では、起こり得る摩耗と損耗の兆候とを直接接触する場所においてもたらす可能性がある、個々の部品の取り外しは必要とされない。
少数の個々の部品からなる、又はただ1つの部品から形成されるツールは、ユーザによる誤った組み立てが減少する又は回避される可能性があるという更なる利点を、特に同一の構成のいくつかのツールが1つのコンテナ内で清浄にされる場合は更に有する。
その上、複数部品ツールの個々の部品が組み立てられること、及び組み立てられた部品の動作性が続いてテストされることによって発生する労力が削減される可能性がある。
従って、非常に少ない部品からなる、しばしば1つの一体成形部品のみからなるツール、例えば一体成形の鉗子、鋸子、ドリルなどが、多くの医療分野で好んで使用されるが、口腔、顎骨、及び顔面手術においてはいくつかの特殊なツールが、所望の機能を満たすことができるように、いくつかの部品から構成されなければならないということは依然として事実である。
これはとりわけ歯科及びインプラント処置の分野において特に重要であり、なぜならインプラント担持体又は歯の基部が顎の中に挿入される場合、歯肉のみでなく場合によっては顎骨さえも冒す可能性がある感染性因子が移されないよう特に注意しなければならないからである。そのようなインプラント担持体又は歯の基部は通常、いくつかの部品から形成される歯科用ラチェットを用いて顎骨にねじ込まれる。
上述の欠点、特に複数部品設計の医療ツールに関連する感染リスクを回避するために、ツールは1つの部品から製造されることが好ましく、すなわち一体成形の歯科用ラチェットが口腔、顎骨、及び顔面手術の分野においても使用されなければならない。
国際公開第2006/029542(A1)号パンフレットでは、ラチェット器具として設計された医療分野のためのトルクレンチが開示されている。受入開口部の周辺において、限定的に移動可能なラッチセグメントが配置され、その前部分は受入開口部の方を向いている。トルクレンチを前方向に作動させると、生成されるべきトルクが、ユーザによって及ぼされる前向きの力を用いて、偏向可能な線形弾性曲げブランチを介して加えられる。
ラッチバネがラッチセグメントからカラー(collar)領域内まで延在する。ラッチセグメントとラッチバネとは、いくつかの部品から構成されるラッチを形成し、これはあるいは1つの部品として設計されてもよい。ラッチセグメントとラッチバネとは、それらの両方がラッチバネの力に逆らって平面内で偏向することを可能にするチャネル形状の間隔内に配置される。
口腔、顎骨、及び顔面手術の分野においては、歯科用ラチェットからインプラントドライバまで伝達されるべきトルクを、慎重を期した様態で伝達することがしばしば重要である。しかし国際公開第2006/029542(A1)号パンフレットのトルクレンチはこれを可能にせず、なぜならトルク伝達は、ラッチセグメントが上部の第1の衝止部と接触した場合のみ行われるからである。従って、インプラントドライバへのトルクの慎重を期した伝達は不可能である。
独国実用新案第202007015689(U1)号明細書では、モノラチェットヘッド(mono ratchet head)と呼ばれるものがハンドル上に配置された歯科用ラチェットが提案されている。モノラチェットヘッドは、ラッチ要素を有するバネ要素としての、インプラントドライバのためのエンクロージャを提供する。可撓性のエンクロージャは、中断又は間隙をそれぞれ有する環状であるように更に設計され、従ってこれは開放リングの形状を有する。ラッチ要素がエンクロージャ又は開放リングのそれぞれの自由端上に形成される。ラッチ要素は、一方の方向のみにおけるインプラントドライバの移動を可能にする。他方の回転方向は、インプラントドライバをラッチ要素内にラッチすることによって達成される。
独国実用新案第202007015689(U1)号明細書の歯科用ラチェットの別の重要な構成要素は、例えばトルクス(torx)についても存在するような、インプラントドライバの溝形状の輪郭設計である。この設計のみが、独国実用新案第202007015689(U1)号明細書のラチェットについての所望の機能を達成することを可能にする。
インプラントドライバへのトルクの調節された伝達は、独国実用新案第202007015689(U1)号明細書の歯科用ラチェットを用いても不可能である。
従って本発明の目的は、ラチェットであって、加えられるべきトルクがこれを用いて正確に調節された様態でインプラントドライバに加えられることが可能な、ラチェットを提供することである。
この目的は、請求項1の特徴を有するラチェットによって解決される。
本発明によれば、ハンドルとその上に配置されたピボットハウジングとを含むラチェットが提案され、前記ピボットハウジングは平坦な螺旋である。更に、螺旋は可撓性であり、ラチェットは、ピボット軸に対して実質的に垂直方向を向いた面内で螺旋が巻かれるように作動させられることが可能である。
可撓性の螺旋としてのピボットハウジングの設計は、ラチェットがトルク伝達の方向に回転されられる場合に、ユーザによって加えられる力の一部が螺旋の可撓性の変形に流れ込み、その他の部分が、インプラントドライバにトルクが伝達されることを引き起こすということを、単純な手法で可能にする。第一に、ユーザによってハンドルに加えられる力は、インプラントドライバが螺旋によって、要素間に発生する摩擦力に起因して圧力嵌め手法で囲まれるまで、螺旋の可撓性の変形を引き起こし、これにより、ユーザによって加えられる更なる力はインプラントドライバへのトルク伝達を続いて発生させる。しかしユーザによって追加的に加えられる力が大きくなりすぎて、例えば顎、インプラント担持体、歯の基部などの損傷をもたらす可能性がある場合、ラチェットはインプラントドライバに対してスリップ又は空転する。従って、インプラントドライバへのトルク伝達を調節された様態で、人体も他の構成要素も損傷することなしに伝達することが可能である。
可撓性の螺旋の変形は平面内で巻かれることによって行われ、すなわち上面図(2次元)を考慮する場合、トルク伝達の間に螺旋はピボットハウジングのピボット軸の周りで、すなわち内側に巻かれる。従って、螺旋の可撓性は1つの平面にわたって延在するのみである。ラチェットがフリーホイール方向に回転させられる場合、螺旋はピボット軸から離れるように解放され、言い換えると螺旋は開かれる。
その上、螺旋としてのピボットハウジングの設計によって調整されたバネ力は、トルク伝達の方向に螺旋が巻かれる場合、インプラントドライバに対して、予め規定された接触力で螺旋を更に押す。従って、螺旋の表面粗度とインプラントドライバに対する螺旋の接触力との組み合わせは、トルク伝達を効果的に増加させる。
更に、回転のプロセスに先立って、ハンドルの長手方向軸を基準にしたラチェットの単純な回転によって、トルク伝達の方向を変えること、すなわちフリーホイーリング方向に変えることが可能である。従って、ラチェットのトルク伝達の方向を有利な手法で決定することが、ラチェットを改造する努力を要することなしに可能である。
単純な構成である本発明によるラチェットの構成を使用すれば、製造コストを低く保つことが可能である。
最後にラチェットは、例えば、使用されるツールの消毒及び処置室の準備に精通する歯科医の実習生などの、経験の少ない人員によってさえ、容易にかつ多大な努力を払うことなしに取り扱われることが可能である。
本発明によるラチェットの更なる実施形態は、従属請求項2〜16の主題である。
従って、ラチェットは一体成形設計を有してもよい。従って、例えば複数部品ラチェットなどについての取り付けに加えて、組み立ても不必要となるため、ラチェットの製造コストを実質的に最小化することが有利に可能である。その上、ラチェットの一体成形設計は、血液又は組織残留物が付着するリスクと、細菌の形成によりもたらされる感染リスクとを明らかに低下させる。各使用の後に必要とされる殺菌もはるかに迅速に行われることが可能であり、なぜならラチェットが分解された後に再度組み立てられる必要はもはやないからである。そのような効率的な操作を可能にすることはまた、医療システムの強い緊張を緩和する。ラチェットの一体成形構成によって更に、同一の又は類似した構成のいくつかのラチェットの場合に、組み立て中に部品が混同されて場合によってはラチェットの機能の消滅又は損傷がもたらされる可能性がある、ということが有利に防止される可能性がある。その上、ラチェットが繰り返し組み立てられる場合、部品の繊細な接合部が激しく使用され損耗する。一体成形構成はこの問題に効果的に対抗する。
更なる実施形態によれば、ラチェットの螺旋は少なくとも360°の、好ましくは少なくとも450°の、特に好ましくは少なくとも630°の角度を有してもよい。この角度は、ハンドルから螺旋への移行部から、螺旋の自由端までにわたるものである。角度寸法の構成又は螺旋のコイルの構成はそれぞれ複数の要因に依存する。従って、例えばインプラントドライバの外殻表面と動作可能な接続状態にある表面の粗度が、角度寸法を決定する。粗度がより高ければ、螺旋のより小さな角度寸法が必要とされる。螺旋の可撓性によっても角度寸法の選択は変更され、なぜならこれは螺旋がどの程度までインプラントドライバを囲むかを決定するからである。螺旋の可撓性はその断面に依存することに留意されたい。応力分散は螺旋の全アーク長にわたって分散されるため、応力分散がより良好ならば角度寸法はより大きい。螺旋はその最初のコイルを用いてインプラントドライバを囲むため、ハンドルをある角度をなして配置することも可能である。従って、例えば顎骨手術などにおける、狭い空間へのラチェットの到達可能性が向上する。
更なる実施形態では、螺旋は対数螺旋、双曲螺旋、又はアルキメデス螺旋(archimedic spiral)として設計されることが可能である。螺旋がアルキメデス螺旋として設計される場合、螺旋はインプラントドライバをしっかりと囲むことが可能であり、なぜなら螺旋の半径は、螺旋とハンドルとの間の接合部から螺旋の自由端までの角度に比例して減少するからである。従って、インプラントドライバに対する螺旋のバネ力は効果的に増加する。バネ力の要求に応じて、螺旋は対数螺旋又は双曲螺旋として設計されてもよい。
更なる実施形態によれば、螺旋はピボット軸に面した少なくとも1つの突起を有してもよい。突起は、インプラントドライバの対応する凹部内に係合することが可能なように、螺旋上に設計される。従って、トルク伝達の方向におけるラチェットの回転時に、インプラントドライバを囲む螺旋のセクションとインプラントドライバとの間の圧力嵌め接続(force−fit connection)(摩擦力)に加えて、形状適合接続(form−fit connection)が補助的に提供されることが達成されてもよい。更に、複数の突起が螺旋に沿って設けられてもよく、これによりラチェットからインプラントドライバへの力及び/又はトルク伝達は、1つのみの突起と比較してより規則的にインプラントドライバ上に分散されることが可能である。伝達されるトルクは、螺旋のピッチによって、突起と関連して影響を及ぼされる。従って一定のトルク伝達を可能にするために、対応する凹部がそれに応じてインプラントドライバに沿って形成されなければならないことに留意されたい。伝達されるトルクは、突起の高さ、ラチェットの材料、及び/又はその硬度に依存する。
更なる実施形態によれば、ピボット軸に面した突起は、螺旋の自由端上に配置されてもよい。螺旋の端における突起の配置は、圧力嵌め接続と形状適合接続との効果的な組み合わせを可能にし、なぜならインプラントドライバを囲むセクションが圧力嵌め接続を確実にし、形状適合接続が螺旋の端においてのみ発生するからである。従って突起は、圧力嵌め接続(摩擦力)によって達成されることができない力及び/又はトルク伝達の量のみを引き受けなければならない。端において配置される突起は従って、力伝達によって発生するその損耗が減らされ得るように有利に解放されてもよい。
更に、螺旋の自由端から離れる方を向いた突起の面は、ピボット軸に面した縁とある角度をなしてもよい。この角度が鋭角である場合、インプラントドライバの凹部に突起がよりしっかりと係合し、すなわちより良好に引っかかり、従って相互ラッチングが向上することが達成されてもよい。対照的に、角度が鈍角である場合、トルク制限が必要に応じて有利に実施されてもよく、なぜなら突起は所定のトルクに伴ってインプラントドライバの凹部から外れるからである。角度がより鈍角に設計されていれば、突起をインプラントドライバから離れるように曲げるためのトルクはより小さい。角度は必要に応じて、45°〜150°に、好ましくは70°〜120°に、特に好ましくは80°〜110°に設計されてもよい。
その上、螺旋はある長さにわたって延在する凹部を有してもよく、ここで凹部は、螺旋の自由端から離れる方を向いた突起の面に直接隣接する。従って螺旋の自由端は、この領域における螺旋の減らされた断面に起因して、凹部がない場合よりも柔軟であり、これにより、端において配置された突起はやはりインプラントドライバから離れるように偏向するため、トルク伝達の制限が可能になる。これは自由端における可撓性を必要に応じて調節することを可能にする。凹部は更に、螺旋の厚さ全体に及んでもよい。
更なる実施形態によれば、ピボット軸に面した螺旋の縁は、少なくとも1つのセクションにおいて粗面化されてもよい。そのような粗度はラチェットとインプラントドライバとの間のスリップを最小化するか又は防止し、これにより、ユーザによって加えられた力がインプラントドライバに実質的にスリップなしで伝達されるということが有利な手法で達成される。一般に、粗度は3つのセクタに分類されてもよい。Ramin〜Ra1という第1のセクタでは、一種の機械的接着が存在する。これに関連して、界面層における分子相互作用によって発生する、関与する表面の機械的コヒーレンスが存在する。表面は従って非常に滑らかに設計されるため、それらの接触に先立って存在する空気は逃げ去り、従って関与する2つの表面は互いにしっかりと付着する。トルクの伝達に適していないRa1〜Ra2という第2のセクタでは、滑り摩擦が存在する。Ra2〜Ramaxという第3のセクタでは静止摩擦が存在し、ここで、接触する2つの表面の表面構造は、それらが付着するほど粗いように設計される。Ramaxより大きい更なる第4のセクタは、形態適合とみなされてもよい。
本発明によるラチェットの更なる態様では、ラチェットはステンレス鋼、チタン、セラミック、耐摩耗性プラスチックなどから形成されてもよい。ラチェットの長寿命を考慮して、ラチェットの、特にその締め付け面の耐摩耗性及び/又は抗摩耗性が特に重視される。更に、長期にわたって機能することが保証されてもよい。あるいは、腐食から保護されるように特定の被覆プロセスを経た、任意の種類の機械加工鋼、建築鋼、又はバネ鋼が使用されてもよい。バネ鋼1.4310、チタングレード4、チタングレード5、PEEKが特に適することが判明している。更に、無菌であることが可能なエラストマが検討されている。螺旋の可撓性は、材料の選択に応じて調節され得ることに留意されたい。
別の態様では、ピボット軸に面した螺旋の縁は、少なくとも1つのセクションにおいて硬化させられてもよい。ラチェットの低損耗性のために、ラチェット、特にピボット軸に面した螺旋の縁は、インプラントドライバより硬いことが重要である。これに関して、例えば変態硬化、結晶微細化、時効硬化、固溶体硬化、歪み硬化などのような様々な硬化方法が使用されてもよい。ラチェットの硬さの程度が、関連するインプラントドライバと揃えられ、これによりラチェットとインプラントドライバとが相関ペアを構成する場合、更に有利である。
更なる実施形態によれば、螺旋の少なくとも1つの突起は、少なくとも1つのセクションにおいて硬化させられてもよい。従って、少なくとも1つの突起が丸味を帯びて、少なくとも1つの対応する凹部との正確に適合した係合がもはや行われない、ということが効果的に防止され得る。更に、突起の丸みによって望ましくなく発生するスリップが回避され得る。
本発明によるラチェットの一実施形態では、ハンドル及び/又はピボットハウジング及び/又は螺旋の領域内にマーキングが設けられてもよい。このマーキングは、ユーザが例えば口腔領域内の組織、創傷などの敏感な場所において手術を行う場合に、ユーザにとって特に有利であり、なぜならこのマーキングは、インプラントドライバを締め付けるため又は緩めるためにどちらの方向にラチェットが回転させられるべきかを示すからである。従って、敏感な場所における、ラチェットによる回転方向の不必要な「試行」が効果的に回避され得る。
本発明によるラチェットの更なる実施形態では、ハンドルとピボットハウジングとは同じ厚さを有してもよい。従って、一定の材料厚からラチェットを製造することが可能であり、これにより製造コストは削減され、製造プロセスは大幅に容易になる。
本発明の別の態様によれば、ハンドルは円筒形であってもよく、これにより人間工学的取り扱いがユーザにとって可能になる。
本発明によるラチェットの更なる態様によれば、ラチェットは衝止部(stop)を含んでもよい。衝止部は、ピボットハウジングの領域内に少なくとも部分的に突出し、好ましくは螺旋が巻かれる面と比べて平行な面全体にわたって延在し、インプラントドライバに面していない側上に配置され、これによりラチェットは、インプラントドライバ上に配置される場合、インプラントドライバ上に衝止部まで配置されることのみが可能である。従って、ラチェットをインプラントドライバ上に配置する場合に、ラチェットがインプラントドライバの軸方向において組織内又は開放傷内まで摺動し、これにより場合によっては患者を傷つける可能性がある、ということが効果的に防止される。
本発明の更なる態様によれば、請求項17に記載のトルク伝達システムが更に提供され、前記トルク伝達システムは、本発明によるラチェットと、インプラントドライバとを含む。その上、インプラントドライバは、円筒形の設計の第1のセクションと、円筒形又は円錐台形の設計の第2のセクションとを含み、ここで第2のセクションは、医療ツール、外科的インプラント、又はその他の任意の物体のためのレセプタクルを更に含む。
このようなトルク伝達システムを用いて、ラチェットをトルク伝達の方向に回転させることによって、ユーザの力をラチェットを介してインプラントドライバに単純な手法で伝達することが、スリップにより発生する力及び/又はトルクの損失なしに可能である。
医療ツールは、アレンヘッド、トルクスヘッド、ミリングヘッド、研磨ヘッド、ピンレセプタクル、ピンサー(pincers)、やすりなどであってもよい。
本発明によるトルク伝達システムの有利な更なる発展は、従属請求項18〜21の主題である。
従って、ラチェットとインプラントドライバとの間に圧力嵌め接続が存在してもよい。トルク伝達は従って、摩擦力の助けを借りて容易に実施されてもよい。
代替として又は補足として、ラチェットとインプラントドライバとの間に形状適合接続が存在してもよい。ラチェットからインプラントドライバへのトルク伝達は従って、特に有利な手法でもたらされてもよい。
更に、インプラントドライバ上の第1のセクションは、少なくともその外殻表面に沿って配置された凹部を含んでもよく、ここで、そのような形状適合接続の場合、螺旋の少なくとも1つの突起が、インプラントドライバの少なくとも1つの凹部と係合状態にあるということが達成される。従って、形状適合接続は単純な手法で確立され得る。
その上、複数の凹部が、インプラントドライバの外殻表面に沿って周期的な間隔及び/又は隔離距離を有して配置されてもよい。従って、螺旋からの力の伝達は、少なくとも1つの突起を介してインプラントドライバに特に有利な手法で伝達される。
本発明の更なる態様によれば、インプラントドライバにトルクを伝達するための、医学分野における、特に外科又は歯科分野における本発明によるラチェットの使用が、請求項20に従って提案される。
本発明の更に別の態様によれば、請求項23に従って、インプラントドライバに加えられるべきトルクを本発明によるラチェットを用いて伝達する方法が提供され、この方法は、ラチェットをインプラントドライバ上に、その軸方向において配置し、好ましくはラチェットをフリーホイーリング方向に回転させ、同時にラチェットをインプラントドライバに沿って降下させるステップと、ラチェットをインプラントドライバ上に固定し、ラチェットをトルク伝達の方向に回転させることによってインプラントドライバにトルクを伝達するステップと、インプラントドライバ上に配置されたラチェットをフリーホイーリング方向に回転させることによってインプラントドライバを解放するステップと、フリーホイーリング方向に回転させ、同時にラチェットをインプラントドライバからその軸方向において除去することによって、ラチェットをインプラントドライバから取り外すステップとを含む。
従って、本発明によるラチェットを用いた、上記で説明した利点及び効果が同様に達成される。
本発明による方法の有利な更なる発展は、従属請求項24〜26の主題である。
本発明による方法の一実施形態によれば、ラチェットをインプラントドライバ上に固定し、ラチェットをトルク伝達の方向に回転させることによってインプラントドライバにトルクを伝達するステップと、インプラントドライバ上に配置されたラチェットをフリーホイーリング方向に回転させることによってインプラントドライバを解放するステップとは、好ましくは、ラチェットがインプラントドライバから取り外される前に繰り返し実行される。
更に、ラチェットをインプラントドライバ上に固定し、ラチェットをトルク伝達の方向に回転させることによってインプラントドライバにトルクを伝達するステップは、螺旋の少なくとも1つの突起がインプラントドライバの少なくとも1つの凹部と係合状態にあるような仕方で実行されてもよい。また、インプラントドライバ上に配置されたラチェットをフリーホイーリング方向に回転させることによってインプラントドライバを解放するステップは、螺旋の少なくとも1つの突起がインプラントドライバの少なくとも1つの凹部から外れるような仕方で実行されてもよい。
本発明による方法の更なる好ましい実施形態によれば、ラチェットをインプラントドライバ上に固定し、ラチェットをトルク伝達の方向に回転させることによってインプラントドライバにトルクを伝達するステップは、ピボットハウジングに加えられるトルクの第1の部分が、可撓性の螺旋を平面内で巻き続け、これによりピボット軸に面した縁とインプラントドライバとの間に圧力嵌め接続が存在するような仕方で、かつピボットハウジングに加えられるトルクの第2の部分が、インプラントドライバの枢動移動を発生させるような仕方で実行され、インプラントドライバ上に配置されたラチェットをフリーホイーリング方向に回転させることによってインプラントドライバを解放するステップは、ピボット軸に面した螺旋の縁とインプラントドライバとの間の圧力嵌め接続が解放されるような仕方で実行される。
前述の実施形態に伴う、ラチェットを固定するステップとインプラントドライバを解放するステップという2つのステップは、それぞれがこの実施形態の対応するステップと組み合わされてもよいということに留意されたい。
本発明による方法と本発明によるラチェットの使用とにより、ラチェットに関連して前述したものと同じ利点が同様に達成されることが可能である。繰り返しを避けるため、それらをここで再び列挙することはしない。
本発明の更に別の態様によれば、請求項27に従って、ラチェットを製造する方法が提供され、この方法は、ブランクを選択するステップと、レーザ切断、水ジェット切断、ワイヤ浸食、スパーク浸食、又はパンチングを用いてラチェットの輪郭を形成するステップとを含む。
このようにして、本発明によるラチェットを、特に単純かつ正確な手法で、及び低コストで製造することが可能である。
本発明による方法の例示的な、有利な更なる発展は、従属請求項28の主題である。
方法のこの好ましい実施形態によれば、ブランクは均一な厚さであるように選択される。この有利な設計により、一定の材料厚からラチェットを製造することが可能になり、これにより製造コストが削減され、製造プロセスは大幅に容易になる。
本発明の前述の特徴及び機能、並びに更なる態様及び特徴について、好ましい実施形態の詳細な説明を用いて、添付の図面を参照して以下に説明する。
本発明によるラチェットの平面図である。
図1に従った本発明によるラチェットの側面図である。
螺旋の自由端上に突起を有する、本発明によるラチェットの平面図である。
1.5ターンを有する螺旋を有する、本発明によるラチェットの平面図である。
衝止部を有する、本発明によるラチェットの断面である。
本発明によるラチェット上の突起の拡大図である。
本発明によるラチェット上の突起の拡大図である。
本発明によるラチェット上の突起の拡大図である。
本発明によるラチェット上の突起の拡大図である。
本発明によるラチェット上の突起の拡大図である。
本発明によるラチェット上の突起の拡大図である。
自由端上の突起と螺旋の隣接する凹部とを有する、本発明によるラチェットの平面図である。
インプラントドライバの側面図である。
図7aに従ったインプラントドライバの平面図である。
更なるインプラントドライバの側面図である。
図1は、本発明の第1の例示的実施形態によるラチェット1の平面図を示す。
第1の実施形態によるラチェット1は一体成形設計であり、同じ厚さdを有するハンドル2とピボットハウジング4とからなる。ピボットハウジング4は2ターンを有するアルキメデス螺旋6として設計される。ピボット軸Dであって、これを基準にしてラチェット1からインプラントドライバ100へのトルク伝達が行われるピボット軸Dが、ピボットハウジング4内に配置される。トルク伝達の方向が示されている矢印は、ラチェット1の回転に関連することに留意されたい。
螺旋6は2ターンを有するように設計されるため、インプラントドライバ100に対する接触力は更に増加し、なぜならトルク伝達の方向におけるラチェット1の回転時には、ラチェット1のニュートラル位置において及び/又はフリーホイーリング方向において得られるギャップ5がもはや存在せず、従って互いに接触する螺旋の縁が実質的にトルク伝達を支持するからである。これらの縁はまた、トルク伝達を支持するために粗面化される。
ピボット軸Dに面した螺旋の縁8は粗面化され、これにより螺旋1からインプラントドライバ100へのトルク伝達はより効果的に行われ得る。更に、ピボット軸Dに面した縁8は、インプラントドライバ100に関する損耗を最小にするか又は回避するために硬化される。
開/閉方向を示す、ここではハンドル2の領域内に施されるラチェット1上のマーキング3は、ラチェット1の容易な取扱いに関してユーザの役に立ち、これにより組織への又は口腔領域内での損傷が効果的に防止され得る。従ってユーザは、トルク伝達のために又はフリーホイーリングのために、それぞれどちらの方向にラチェット1を作動させるべきかを明確に見ることができる。ラチェット1上のマーキング3はまた、接着、エッチング、彫刻、レーザ加工されてもよく、又は他の何らかの凸版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、孔版印刷、又はフラット印刷技術によって形成されてもよい。
図2は、図1によるラチェット1の側面図であり、ここで、ラチェット1の螺旋6は平面内で、すなわち2次元的に巻かれることがわかる。ラチェットの厚さdは2mmである。
図3は、本発明の第2の例示的実施形態における、突起10を有するラチェット1’の平面図を示す。突起10は、ピボット軸Dに面した螺旋6’の縁8’上の、螺旋6’の自由端12上に配置される。
第2の実施形態によるラチェット1’は更に、1つの部品として設計され、やはり同じ厚さdを有するハンドル2とピボットハウジング4’とからなる。ピボット軸Dはピボットハウジング4’の内側に配置される。図1と同様に、トルク伝達の方向が示されている矢印は、ラチェット1’の回転に関連する。
図4は、1.5ターンを有する螺旋6’’を有する、第3の実施形態によるラチェット1’’の平面図を示す。
図5は、本発明の更なる実施形態による、衝止部14を有するラチェット1’’’の断面を示す。ピボットハウジング4’’’及び/又はハンドル2’’’から突出する衝止部14は、インプラントドライバレセプタクルの領域内にこれが少なくとも部分的に突出するように設計され、従ってラチェット1’’’は、予め規定された領域までのみインプラントドライバ100上に配置されることが可能である。従って、過度に「深い」配置による組織の損傷が効果的に防止され得る。ハンドル2’’’は、ピボットハウジング4’’’から離れる方を向いた側上にレセプタクル16を更に含む。このレセプタクル16は、ハンドル2’’’の延長を、例えばこれがなければ到達できない場所に到達するように取り付けるために役立ち得る。
図6は、ラチェット1’による螺旋6’上の突起10の、複数の拡大図を示す。図6a)では、螺旋6’の端12上の突起10.1はくさび状の設計である。突起10.1は、くさびが端12に向けて降下するようなくさび形状の設計である。このくさび状の突起10.1により、図8a及び図8bに示すインプラントドライバ100をトルク伝達の方向においてしっかりと拘束すること、及びフリーホイーリング方向において、このくさび形状に起因して特に良好な手法でこれを再び解放することが可能である。図6b)では、突起10.2はやはり端12上に配置される。突起10.2は、端12から離れる方を向いた、縁8に対して直交する面11.2と、端12の方を向いた面上の凹形設計とを有する。凹形設計の代わりに、図6c)では突起10.3は凸型設計である。図6d)は、突起10.4の配置が、ピボット軸Dに面した縁8に沿って行われてもよいということを明らかにする。同様に、複数の突起10.5が、図6e)から明らかになるように、ピボット軸Dに面した縁8上に配置されてもよい。突起10.5の数は、図e)に示すような2つには限定されない。更に、突起10.5は所定の距離を有して配置されてもよい。図6b)は、図6a)におけるような構成を示すが、螺旋6がピボット軸Dから離れる方を向いた面上に凹部13.1を含むということが異なる。この凹部13.1は、突起10.6から所定の長さにわたって延在する。これにより、突起の領域の可撓性を調節することが可能になる。
これらの前述の突起(1つ又は複数)10の設計は、ラチェット1とインプラントドライバ100との間の形状適合接続を達成することを可能にする。
図7は、自由端12上の突起10.7と螺旋6’’’’の隣接する凹部13.2とを有する、本発明によるラチェット1’’’’の平面図である。
この第4の実施形態によるラチェットは、両方が同じ厚さdを有するハンドル2’’’’とピボットハウジング4’’’’とから形成される。ピボットハウジング4’’’’は螺旋6’’’’として形成され、その自由端12上にくさび形状の突起10.7を有する。突起10.7は、くさびが螺旋6’’’’の自由端12に向けて降下するようなくさび形状の設計である。更に、螺旋6’’’’は長さLに沿って延在する凹部13.2を有する。突起10.7は、螺旋6’’’’の自由端12から離れる方を向いた、角度αによって規定される面11.6を更に含む。角度αは、自由端12から離れる方を向いた面11.6から、ピボット軸Dに面した縁8までにわたるものである。
ピボット軸Dに面した縁8は、自由端12から離れる方を向いた面のすぐ前に凹部13.2を備え、前記凹部13.2は所定の長さLにわたって延在する。この凹部13.2は、螺旋6’’’’の自由端12から離れる方を向いた突起10.7の面11.6に直接隣接する。連続的な先細りと凹部13.2との間の移行は、連続的に形成される。
螺旋6’’’’の凹部13.2の長さは、長さLによって測定されるが、これはもちろん、図7の結果として角度βを用いてラジアン単位で測定されてもよい。螺旋6’’’’の凹部13.1が、自由端12から離れる方を向いた面11.6に直接隣接することも必須ではない。
更に図7は、螺旋6’’’’の断面自体が、ハンドル2’’’’上に配置された端から自由端12まで先細りになることを示す。更なる追加の先細りとして理解されるべき、自由端12の領域における凹部13.2の追加的形成は、過度に高いトルクが伝達される場合に、凹部13.2の領域において、従って突起10.7の領域においても、螺旋6’’’’が柔軟に後ろに曲がる、言い換えると、インプラントドライバ100から離れるように曲がるということをもたらす。従って、凹部13.2及び/又は螺旋6’’’’の設計に応じて、トルク制限がこの領域においてもたらされてもよい。
図8aはインプラントドライバ100の側面図を示す。図8bはインプラントドライバ100の平面図であり、ここで、複数の凹部102は40の区分を有する。凹部102はくさび形状の設計であり、言い換えると、図3に従ったラチェット1’の凹部10と相補的である。しかし、第4の実施形態によるラチェット1’’’’がトルク伝達のために使用される場合も有利な可能性があり、なぜならこの場合、トルクが必要に応じて制限及び/又は調節され得るからである。インプラントドライバ100は円筒形の設計であり、外殻表面108上に複数の凹部102を含む。くさび状凹部102のピッチは、所望のトルク伝達が調節され得るように、ラチェットを十分考慮して設計されてもよい。
図9は、2つのセクション104及び106に分けられた更なるインプラントドライバ100’を示す。第1のセクション104は円筒形の設計である。その外殻表面108に沿って複数の凹部102’が配置される。第2のセクション106は円錐台形の設計であり、その端に、ここでは概略的に示す医療ツールのためのレセプタクル110を含む。
ハンドル2の構成及びその数に関しては、独国特許出願第102011052422号明細書の図5a、図5b、図5c、及び図7a、図7b、図7c、並びに関連する説明を参照されたい。
説明した実施形態に加えて、本発明は更なる設計アプローチも考慮に入れる。
ピボットハウジングのピボット軸とハンドルの長手方向軸とは、互いに間隔をあけられてもよい。ピボットハウジングは従って、ハンドルに対してある角度をなして構成されてもよい。ラチェットのこの有利な設計を使用すれば、ピボット軸が長手方向軸から間隔をあけられていることにより、ユーザが、到達するのが困難な場所において、特に臼歯の領域において作業することが可能になる。ピボットハウジングのピボット軸とハンドルの長手方向軸とは、交差してもよい。
ピボットハウジングのピボット軸とハンドルの長手方向軸とは、長手方向軸を基準にして30°〜150°の、好ましくは60°〜120°の、特に好ましくは90°の角度で交差してもよい。この設計は、特に、到達するのが困難な領域の場合の、インプラントドライバ上へのラチェットの配置のための利点を有する。ピボットハウジングとハンドルとの間に固定可能な継手(securable joint)を配置して、角度の連続的調節を必要に応じて可能にすることが、容易に可能である。螺旋の角度寸法(アーク長)がより大きければ、レンチに対するより多くのピッチが可能である。
ピボット軸Dに対して少なくとも垂直方向で部分的に弾性及び/又は可撓性であるバネ状の移行部が、例えば、ハンドル2とピボットハウジング4との間に形成されてもよい。移行部は蛇行パターンで形成されてもよい。この設計は、インプラントドライバ100上への一体成形のラチェット1の配置のために有利である。
前述の実施形態では、ラチェットは一体成形構成であるが、ラチェットはいくつかの部品で形成されてもよい。
ピボット軸に面した縁が滑らかであるように形成され、トルク伝達は単に1つの突起によって、又は圧縮された螺旋により引き起こされるバネ力によって行われるようにすることも更に可能である。
設計サイズに応じて、ラチェット1の厚さdは随意選択で0.5mm〜5mm、好ましくは1mm〜4mm、特に好ましくは2.5mmという寸法であってもよい。
より良好な取り扱いのために、ハンドルは鋸歯状であってもよく又は構造化されてもよい。ハンドルは円筒形の設計であるが、三角形、正方形、長方形の断面などを有してもよい。
螺旋内に少なくとも1つの突起が形成されてもよいが、対応する点状の凹部を設けること、及び対応する突起をインプラントドライバに設けることも可能である。更に、螺旋に沿って凹部と突起とを組み合わせることも考えられる。
螺旋は平面内で巻かれるが、更なる発展した螺旋はいくつかの面にわたって(3次元的に)巻かれてもよく、これによりピボット軸に面した螺旋の一方の縁は、360°を超える囲み角を有してインプラントドライバを囲む。
凹部は外殻表面に沿って周期的な間隔を有して延在するが、凹部は非周期的に形成されてもよい。
突起は硬化されるが、軟化焼鈍されてもよい。
凹部13.2はピボット軸Dに面した螺旋の側面上で得られる必要はなく、代替として又は補足として、ピボット軸Dから離れる方を向いた螺旋の側面及び/又は面上に配置されてもよい。しかし簡略化された設計では、この凹部13.2は省略されてもよい。
伝達されるトルクは、例えば、突起の高さと、ピボット軸から離れる方を向いた凹部の深さとの組み合わせに依存してもよい。トルク伝達の間、この凹部は、突起に至る螺旋の隣接する領域及び/又はセクションまでの、及び場合によっては突起自体までの十分な間隔を可能にし、これにより、ことによると過度に大きなトルクが伝達されるときにインプラントドライバから離れる方にはね返り、このようにしてトルク制限を可能にする。
凹部はピボット軸に面した面上に形成されるが、ラチェットの表側において形成されてもよい。これにより、狭い空間の場合にラチェットをより柔軟に使用することが可能になる。
ラチェットを製造する代替の方法は、最初に、材料ブロックの形態のブランクが選択されるように行われてもよい。これは次に、ラチェットの所望の輪郭が形成されるように加工されてもよい。続いて、ラチェットの輪郭を含む材料ブロックは、厚さdを有する個々のラチェットに分離される。必要に応じて、分離されたラチェットは更に処理されてもよい。これに関して、レーザ切断、水ジェット切断、ワイヤ浸食、スパーク浸食、又はパンチングが使用されてもよい。
上記では、医療分野、特に歯科分野のためのラチェット1について説明したが、ラチェット1は、例えば宇宙飛行、半導体製造などの、清浄度に対する高い要求を有する分野においても使用されてもよい。
ラチェットが、特に外科的介入のためのラチェット又は歯科用ラチェットが提供され、ここでラチェットはハンドルとその上に配置されたピボットハウジングとを有し、前記ピボットハウジングは平坦な螺旋である。螺旋は可撓性であり、ピボット軸Dに対して実質的に垂直方向を向いた面内で螺旋が巻かれるように作動させられてもよい。本発明はまた、ラチェットとインプラントドライバとを含むトルク伝達システムに関する。インプラントドライバは、円筒形である第1の部分と、円筒形又は円錐台形である第2の部分とを有し、第2の部分は、医療ツール、外科的インプラント、又はその他の任意の物体のためのレセプタクルを加えて有する。このようにして、改良されたラチェットであって、加えられるべきトルクがこれを用いて調節された様態でインプラントドライバに加えられることが可能な、改良されたラチェットが得られる。
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の医療分野のためのラチェットに関し、特に、外科的介入のためのラチェット又は歯科用ラチェットに関する。本発明は更に、請求項16に記載のトルク伝達システムに、及び請求項21に記載の、医療分野におけるそのようなラチェットの使用に関する。その上、本発明は、請求項22に記載の、加えられるべきトルクをそのようなラチェットを用いてインプラントドライバに伝達する方法に、及び請求項26に記載の、そのようなラチェットを製造する方法に関する。
ツール及び/又は医療機器を使用して外科的介入を行う場合の、十分な殺菌の問題は周知である。血液又は組織残留物及びその他の創傷排出物が、相互に関連する部品の細隙又は接合部に入ること、及びそこに堆積することを防止するために、使用されるツールができるだけ少ない個々の部品から構成されるという事実が医療分野では重視される。
できるだけ少ない部品で、特に1つの部品でツールを形成することにより、いくつかの部品で形成されるツールの接合部において配置される堆積物又は微生物によって引き起こされる可能性がある感染を大幅に減らすことが可能である。
更に、一体成形の医療ツールの必要とされる殺菌では、起こり得る摩耗と損耗の兆候とを直接接触する場所においてもたらす可能性がある、個々の部品の取り外しは必要とされない。
少数の個々の部品からなる、又はただ1つの部品から形成されるツールは、ユーザによる誤った組み立てが減少する又は回避される可能性があるという更なる利点を、特に同一の構成のいくつかのツールが1つのコンテナ内で清浄にされる場合は更に有する。
その上、複数部品ツールの個々の部品が組み立てられること、及び組み立てられた部品の動作性が続いてテストされることによって発生する労力が削減される可能性がある。
従って、非常に少ない部品からなる、しばしば1つの一体成形部品のみからなるツール、例えば一体成形の鉗子、鋸子、ドリルなどが、多くの医療分野で好んで使用されるが、口腔、顎骨、及び顔面手術においてはいくつかの特殊なツールが、所望の機能を満たすことができるように、いくつかの部品から構成されなければならないということは依然として事実である。
これはとりわけ歯科及びインプラント処置の分野において特に重要であり、なぜならインプラント担持体又は歯の基部が顎の中に挿入される場合、歯肉のみでなく場合によっては顎骨さえも冒す可能性がある感染性因子が移されないよう特に注意しなければならないからである。そのようなインプラント担持体又は歯の基部は通常、いくつかの部品から形成される歯科用ラチェットを用いて顎骨にねじ込まれる。
上述の欠点、特に複数部品設計の医療ツールに関連する感染リスクを回避するために、ツールは1つの部品から製造されることが好ましく、すなわち一体成形の歯科用ラチェットが口腔、顎骨、及び顔面手術の分野においても使用されなければならない。
国際公開第2006/029542(A1)号パンフレットでは、ラチェット器具として設計された医療分野のためのトルクレンチが開示されている。受入開口部の周辺において、限定的に移動可能なラッチセグメントが配置され、その前部分は受入開口部の方を向いている。トルクレンチを前方向に作動させると、生成されるべきトルクが、ユーザによって及ぼされる前向きの力を用いて、偏向可能な線形弾性曲げブランチを介して加えられる。
ラッチバネがラッチセグメントからカラー(collar)領域内まで延在する。ラッチセグメントとラッチバネとは、いくつかの部品から構成されるラッチを形成し、これはあるいは1つの部品として設計されてもよい。ラッチセグメントとラッチバネとは、それらの両方がラッチバネの力に逆らって平面内で偏向することを可能にするチャネル形状の間隔内に配置される。
口腔、顎骨、及び顔面手術の分野においては、歯科用ラチェットからインプラントドライバまで伝達されるべきトルクを、慎重を期した様態で伝達することがしばしば重要である。しかし国際公開第2006/029542(A1)号パンフレットのトルクレンチはこれを可能にせず、なぜならトルク伝達は、ラッチセグメントが上部の第1の衝止部と接触した場合のみ行われるからである。従って、インプラントドライバへのトルクの慎重を期した伝達は不可能である。
独国実用新案第202007015689(U1)号明細書では、モノラチェットヘッド(mono ratchet head)と呼ばれるものがハンドル上に配置された歯科用ラチェットが提案されている。モノラチェットヘッドは、ラッチ要素を有するバネ要素としての、インプラントドライバのためのエンクロージャを提供する。可撓性のエンクロージャは、中断又は間隙をそれぞれ有する環状であるように更に設計され、従ってこれは開放リングの形状を有する。ラッチ要素がエンクロージャ又は開放リングのそれぞれの自由端上に形成される。ラッチ要素は、一方の方向のみにおけるインプラントドライバの移動を可能にする。他方の回転方向は、インプラントドライバをラッチ要素内にラッチすることによって達成される。
独国実用新案第202007015689(U1)号明細書の歯科用ラチェットの別の重要な構成要素は、例えばトルクス(torx)についても存在するような、インプラントドライバの溝形状の輪郭設計である。この設計のみが、独国実用新案第202007015689(U1)号明細書のラチェットについての所望の機能を達成することを可能にする。
インプラントドライバへのトルクの調節された伝達は、独国実用新案第202007015689(U1)号明細書の歯科用ラチェットを用いても不可能である。
従って本発明の目的は、ラチェットであって、加えられるべきトルクがこれを用いて正確に調節された様態でインプラントドライバに加えられることが可能な、ラチェットを提供することである。
この目的は、請求項1の特徴を有するラチェットによって解決される。
本発明によれば、ハンドルとその上に配置されたピボットハウジングとを含むラチェットが提案され、前記ピボットハウジングは平坦な螺旋である。更に、螺旋は可撓性であり、ラチェットは、ピボット軸に対して実質的に垂直方向を向いた面内で螺旋が巻かれるように作動させられることが可能であり、ここで、螺旋は対数螺旋、双曲螺旋、又はアルキメデス螺旋(archimedic spiral)として形成される。
可撓性の螺旋としてのピボットハウジングの設計は、ラチェットがトルク伝達の方向に回転されられる場合に、ユーザによって加えられる力の一部が螺旋の可撓性の変形に流れ込み、その他の部分が、インプラントドライバにトルクが伝達されることを引き起こすということを、単純な手法で可能にする。第一に、ユーザによってハンドルに加えられる力は、インプラントドライバが螺旋によって、要素間に発生する摩擦力に起因して圧力嵌め手法で囲まれるまで、螺旋の可撓性の変形を引き起こし、これにより、ユーザによって加えられる更なる力はインプラントドライバへのトルク伝達を続いて発生させる。しかしユーザによって追加的に加えられる力が大きくなりすぎて、例えば顎、インプラント担持体、歯の基部などの損傷をもたらす可能性がある場合、ラチェットはインプラントドライバに対してスリップ又は空転する。従って、インプラントドライバへのトルク伝達を調節された様態で、人体も他の構成要素も損傷することなしに伝達することが可能である。
可撓性の螺旋の変形は平面内で巻かれることによって行われ、すなわち上面図(2次元)を考慮する場合、トルク伝達の間に螺旋はピボットハウジングのピボット軸の周りで、すなわち内側に巻かれる。従って、螺旋の可撓性は1つの平面にわたって延在するのみである。ラチェットがフリーホイール方向に回転させられる場合、螺旋はピボット軸から離れるように解放され、言い換えると螺旋は開かれる。
その上、螺旋としてのピボットハウジングの設計によって調整されたバネ力は、トルク伝達の方向に螺旋が巻かれる場合、インプラントドライバに対して、予め規定された接触力で螺旋を更に押す。従って、螺旋の表面粗度とインプラントドライバに対する螺旋の接触力との組み合わせは、トルク伝達を効果的に増加させる。
更に、回転のプロセスに先立って、ハンドルの長手方向軸を基準にしたラチェットの単純な回転によって、トルク伝達の方向を変えること、すなわちフリーホイーリング方向に変えることが可能である。従って、ラチェットのトルク伝達の方向を有利な手法で決定することが、ラチェットを改造する努力を要することなしに可能である。
単純な構成である本発明によるラチェットの構成を使用すれば、製造コストを低く保つことが可能である。
最後にラチェットは、例えば、使用されるツールの消毒及び処置室の準備に精通する歯科医の実習生などの、経験の少ない人員によってさえ、容易にかつ多大な努力を払うことなしに取り扱われることが可能である。
螺旋がアルキメデス螺旋として設計される場合、螺旋はインプラントドライバをしっかりと囲むことが可能であり、なぜなら螺旋の半径は、螺旋とハンドルとの間の接合部から螺旋の自由端までの角度に比例して減少するからである。従って、インプラントドライバに対する螺旋のバネ力は効果的に増加する。バネ力の要求に応じて、螺旋は対数螺旋又は双曲螺旋として設計されてもよい。
本発明によるラチェットの更なる実施形態は、従属請求項2〜15の主題である。
従って、ラチェットは一体成形設計を有してもよい。従って、例えば複数部品ラチェットなどについての取り付けに加えて、組み立ても不必要となるため、ラチェットの製造コストを実質的に最小化することが有利に可能である。その上、ラチェットの一体成形設計は、血液又は組織残留物が付着するリスクと、細菌の形成によりもたらされる感染リスクとを明らかに低下させる。各使用の後に必要とされる殺菌もはるかに迅速に行われることが可能であり、なぜならラチェットが分解された後に再度組み立てられる必要はもはやないからである。そのような効率的な操作を可能にすることはまた、医療システムの強い緊張を緩和する。ラチェットの一体成形構成によって更に、同一の又は類似した構成のいくつかのラチェットの場合に、組み立て中に部品が混同されて場合によってはラチェットの機能の消滅又は損傷がもたらされる可能性がある、ということが有利に防止される可能性がある。その上、ラチェットが繰り返し組み立てられる場合、部品の繊細な接合部が激しく使用され損耗する。一体成形構成はこの問題に効果的に対抗する。
更なる実施形態によれば、ラチェットの螺旋は少なくとも360°の、好ましくは少なくとも450°の、特に好ましくは少なくとも630°の角度を有してもよい。この角度は、ハンドルから螺旋への移行部から、螺旋の自由端までにわたるものである。角度寸法の構成又は螺旋のコイルの構成はそれぞれ複数の要因に依存する。従って、例えばインプラントドライバの外殻表面と動作可能な接続状態にある表面の粗度が、角度寸法を決定する。粗度がより高ければ、螺旋のより小さな角度寸法が必要とされる。螺旋の可撓性によっても角度寸法の選択は変更され、なぜならこれは螺旋がどの程度までインプラントドライバを囲むかを決定するからである。螺旋の可撓性はその断面に依存することに留意されたい。応力分散は螺旋の全アーク長にわたって分散されるため、応力分散がより良好ならば角度寸法はより大きい。螺旋はその最初のコイルを用いてインプラントドライバを囲むため、ハンドルをある角度をなして配置することも可能である。従って、例えば顎骨手術などにおける、狭い空間へのラチェットの到達可能性が向上する。
更なる実施形態によれば、螺旋はピボット軸に面した少なくとも1つの突起を有してもよい。突起は、インプラントドライバの対応する凹部内に係合することが可能なように、螺旋上に設計される。従って、トルク伝達の方向におけるラチェットの回転時に、インプラントドライバを囲む螺旋のセクションとインプラントドライバとの間の圧力嵌め接続(force−fit connection)(摩擦力)に加えて、形状適合接続(form−fit connection)が補助的に提供されることが達成されてもよい。更に、複数の突起が螺旋に沿って設けられてもよく、これによりラチェットからインプラントドライバへの力及び/又はトルク伝達は、1つのみの突起と比較してより規則的にインプラントドライバ上に分散されることが可能である。伝達されるトルクは、螺旋のピッチによって、突起と関連して影響を及ぼされる。従って一定のトルク伝達を可能にするために、対応する凹部がそれに応じてインプラントドライバに沿って形成されなければならないことに留意されたい。伝達されるトルクは、突起の高さ、ラチェットの材料、及び/又はその硬度に依存する。
更なる実施形態によれば、ピボット軸に面した突起は、螺旋の自由端上に配置されてもよい。螺旋の端における突起の配置は、圧力嵌め接続と形状適合接続との効果的な組み合わせを可能にし、なぜならインプラントドライバを囲むセクションが圧力嵌め接続を確実にし、形状適合接続が螺旋の端においてのみ発生するからである。従って突起は、圧力嵌め接続(摩擦力)によって達成されることができない力及び/又はトルク伝達の量のみを引き受けなければならない。端において配置される突起は従って、力伝達によって発生するその損耗が減らされ得るように有利に解放されてもよい。
更に、螺旋の自由端から離れる方を向いた突起の面は、ピボット軸に面した縁とある角度をなしてもよい。この角度が鋭角である場合、インプラントドライバの凹部に突起がよりしっかりと係合し、すなわちより良好に引っかかり、従って相互ラッチングが向上することが達成されてもよい。対照的に、角度が鈍角である場合、トルク制限が必要に応じて有利に実施されてもよく、なぜなら突起は所定のトルクに伴ってインプラントドライバの凹部から外れるからである。角度がより鈍角に設計されていれば、突起をインプラントドライバから離れるように曲げるためのトルクはより小さい。角度は必要に応じて、45°〜150°に、好ましくは70°〜120°に、特に好ましくは80°〜110°に設計されてもよい。
その上、螺旋はある長さにわたって延在する凹部を有してもよく、ここで凹部は、螺旋の自由端から離れる方を向いた突起の面に直接隣接する。従って螺旋の自由端は、この領域における螺旋の減らされた断面に起因して、凹部がない場合よりも柔軟であり、これにより、端において配置された突起はやはりインプラントドライバから離れるように偏向するため、トルク伝達の制限が可能になる。これは自由端における可撓性を必要に応じて調節することを可能にする。凹部は更に、螺旋の厚さ全体に及んでもよい。
更なる実施形態によれば、ピボット軸に面した螺旋の縁は、少なくとも1つのセクションにおいて粗面化されてもよい。そのような粗度はラチェットとインプラントドライバとの間のスリップを最小化するか又は防止し、これにより、ユーザによって加えられた力がインプラントドライバに実質的にスリップなしで伝達されるということが有利な手法で達成される。一般に、粗度は3つのセクタに分類されてもよい。Ramin〜Ra1という第1のセクタでは、一種の機械的接着が存在する。これに関連して、界面層における分子相互作用によって発生する、関与する表面の機械的コヒーレンスが存在する。表面は従って非常に滑らかに設計されるため、それらの接触に先立って存在する空気は逃げ去り、従って関与する2つの表面は互いにしっかりと付着する。トルクの伝達に適していないRa1〜Ra2という第2のセクタでは、滑り摩擦が存在する。Ra2〜Ramaxという第3のセクタでは静止摩擦が存在し、ここで、接触する2つの表面の表面構造は、それらが付着するほど粗いように設計される。Ramaxより大きい更なる第4のセクタは、形態適合とみなされてもよい。
本発明によるラチェットの更なる態様では、ラチェットはステンレス鋼、チタン、セラミック、耐摩耗性プラスチックなどから形成されてもよい。ラチェットの長寿命を考慮して、ラチェットの、特にその締め付け面の耐摩耗性及び/又は抗摩耗性が特に重視される。更に、長期にわたって機能することが保証されてもよい。あるいは、腐食から保護されるように特定の被覆プロセスを経た、任意の種類の機械加工鋼、建築鋼、又はバネ鋼が使用されてもよい。バネ鋼1.4310、チタングレード4、チタングレード5、PEEKが特に適することが判明している。更に、無菌であることが可能なエラストマが検討されている。螺旋の可撓性は、材料の選択に応じて調節され得ることに留意されたい。
別の態様では、ピボット軸に面した螺旋の縁は、少なくとも1つのセクションにおいて硬化させられてもよい。ラチェットの低損耗性のために、ラチェット、特にピボット軸に面した螺旋の縁は、インプラントドライバより硬いことが重要である。これに関して、例えば変態硬化、結晶微細化、時効硬化、固溶体硬化、歪み硬化などのような様々な硬化方法が使用されてもよい。ラチェットの硬さの程度が、関連するインプラントドライバと揃えられ、これによりラチェットとインプラントドライバとが相関ペアを構成する場合、更に有利である。
更なる実施形態によれば、螺旋の少なくとも1つの突起は、少なくとも1つのセクションにおいて硬化させられてもよい。従って、少なくとも1つの突起が丸味を帯びて、少なくとも1つの対応する凹部との正確に適合した係合がもはや行われない、ということが効果的に防止され得る。更に、突起の丸みによって望ましくなく発生するスリップが回避され得る。
本発明によるラチェットの一実施形態では、ハンドル及び/又はピボットハウジング及び/又は螺旋の領域内にマーキングが設けられてもよい。このマーキングは、ユーザが例えば口腔領域内の組織、創傷などの敏感な場所において手術を行う場合に、ユーザにとって特に有利であり、なぜならこのマーキングは、インプラントドライバを締め付けるため又は緩めるためにどちらの方向にラチェットが回転させられるべきかを示すからである。従って、敏感な場所における、ラチェットによる回転方向の不必要な「試行」が効果的に回避され得る。
本発明によるラチェットの更なる実施形態では、ハンドルとピボットハウジングとは同じ厚さを有してもよい。従って、一定の材料厚からラチェットを製造することが可能であり、これにより製造コストは削減され、製造プロセスは大幅に容易になる。
本発明の別の態様によれば、ハンドルは円筒形であってもよく、これにより人間工学的取り扱いがユーザにとって可能になる。
本発明によるラチェットの更なる態様によれば、ラチェットは衝止部(stop)を含んでもよい。衝止部は、ピボットハウジングの領域内に少なくとも部分的に突出し、好ましくは螺旋が巻かれる面と比べて平行な面全体にわたって延在し、インプラントドライバに面していない側上に配置され、これによりラチェットは、インプラントドライバ上に配置される場合、インプラントドライバ上に衝止部まで配置されることのみが可能である。従って、ラチェットをインプラントドライバ上に配置する場合に、ラチェットがインプラントドライバの軸方向において組織内又は開放傷内まで摺動し、これにより場合によっては患者を傷つける可能性がある、ということが効果的に防止される。
本発明の更なる態様によれば、請求項16に記載のトルク伝達システムが更に提供され、前記トルク伝達システムは、本発明によるラチェットと、インプラントドライバとを含む。その上、インプラントドライバは、円筒形の設計の第1のセクションと、円筒形又は円錐台形の設計の第2のセクションとを含み、ここで第2のセクションは、医療ツール、外科的インプラント、又はその他の任意の物体のためのレセプタクルを更に含む。
このようなトルク伝達システムを用いて、ラチェットをトルク伝達の方向に回転させることによって、ユーザの力をラチェットを介してインプラントドライバに単純な手法で伝達することが、スリップにより発生する力及び/又はトルクの損失なしに可能である。
医療ツールは、アレンヘッド、トルクスヘッド、ミリングヘッド、研磨ヘッド、ピンレセプタクル、ピンサー(pincers)、やすりなどであってもよい。
本発明によるトルク伝達システムの有利な更なる発展は、従属請求項17〜20の主題である。
従って、ラチェットとインプラントドライバとの間に圧力嵌め接続が存在してもよい。トルク伝達は従って、摩擦力の助けを借りて容易に実施されてもよい。
代替として又は補足として、ラチェットとインプラントドライバとの間に形状適合接続が存在してもよい。ラチェットからインプラントドライバへのトルク伝達は従って、特に有利な手法でもたらされてもよい。
更に、インプラントドライバ上の第1のセクションは、少なくともその外殻表面に沿って配置された凹部を含んでもよく、ここで、そのような形状適合接続の場合、螺旋の少なくとも1つの突起が、インプラントドライバの少なくとも1つの凹部と係合状態にあるということが達成される。従って、形状適合接続は単純な手法で確立され得る。
その上、複数の凹部が、インプラントドライバの外殻表面に沿って周期的な間隔及び/又は隔離距離を有して配置されてもよい。従って、螺旋からの力の伝達は、少なくとも1つの突起を介してインプラントドライバに特に有利な手法で伝達される。
本発明の更なる態様によれば、インプラントドライバにトルクを伝達するための、医学分野における、特に外科又は歯科分野における本発明によるラチェットの使用が、請求項19に従って提案される。
本発明の更に別の態様によれば、請求項22に従って、インプラントドライバに加えられるべきトルクを本発明によるラチェットを用いて伝達する方法が提供され、この方法は、ラチェットをインプラントドライバ上に、その軸方向において配置し、好ましくはラチェットをフリーホイーリング方向に回転させ、同時にラチェットをインプラントドライバに沿って降下させるステップと、ラチェットをインプラントドライバ上に固定し、ラチェットをトルク伝達の方向に回転させることによってインプラントドライバにトルクを伝達するステップと、インプラントドライバ上に配置されたラチェットをフリーホイーリング方向に回転させることによってインプラントドライバを解放するステップと、フリーホイーリング方向に回転させ、同時にラチェットをインプラントドライバからその軸方向において除去することによって、ラチェットをインプラントドライバから取り外すステップとを含む。
従って、本発明によるラチェットを用いた、上記で説明した利点及び効果が同様に達成される。
本発明による方法の有利な更なる発展は、従属請求項23〜25の主題である。
本発明による方法の一実施形態によれば、ラチェットをインプラントドライバ上に固定し、ラチェットをトルク伝達の方向に回転させることによってインプラントドライバにトルクを伝達するステップと、インプラントドライバ上に配置されたラチェットをフリーホイーリング方向に回転させることによってインプラントドライバを解放するステップとは、好ましくは、ラチェットがインプラントドライバから取り外される前に繰り返し実行される。
更に、ラチェットをインプラントドライバ上に固定し、ラチェットをトルク伝達の方向に回転させることによってインプラントドライバにトルクを伝達するステップは、螺旋の少なくとも1つの突起がインプラントドライバの少なくとも1つの凹部と係合状態にあるような仕方で実行されてもよい。また、インプラントドライバ上に配置されたラチェットをフリーホイーリング方向に回転させることによってインプラントドライバを解放するステップは、螺旋の少なくとも1つの突起がインプラントドライバの少なくとも1つの凹部から外れるような仕方で実行されてもよい。
本発明による方法の更なる好ましい実施形態によれば、ラチェットをインプラントドライバ上に固定し、ラチェットをトルク伝達の方向に回転させることによってインプラントドライバにトルクを伝達するステップは、ピボットハウジングに加えられるトルクの第1の部分が、可撓性の螺旋を平面内で巻き続け、これによりピボット軸に面した縁とインプラントドライバとの間に圧力嵌め接続が存在するような仕方で、かつピボットハウジングに加えられるトルクの第2の部分が、インプラントドライバの枢動移動を発生させるような仕方で実行され、インプラントドライバ上に配置されたラチェットをフリーホイーリング方向に回転させることによってインプラントドライバを解放するステップは、ピボット軸に面した螺旋の縁とインプラントドライバとの間の圧力嵌め接続が解放されるような仕方で実行される。
前述の実施形態に伴う、ラチェットを固定するステップとインプラントドライバを解放するステップという2つのステップは、それぞれがこの実施形態の対応するステップと組み合わされてもよいということに留意されたい。
本発明による方法と本発明によるラチェットの使用とにより、ラチェットに関連して前述したものと同じ利点が同様に達成されることが可能である。繰り返しを避けるため、それらをここで再び列挙することはしない。
本発明の更に別の態様によれば、請求項26に従って、ラチェットを製造する方法が提供され、この方法は、ブランクを選択するステップと、レーザ切断、水ジェット切断、ワイヤ浸食、スパーク浸食、又はパンチングを用いてラチェットの輪郭を形成するステップとを含む。
このようにして、本発明によるラチェットを、特に単純かつ正確な手法で、及び低コストで製造することが可能である。
本発明による方法の例示的な、有利な更なる発展は、従属請求項27の主題である。
方法のこの好ましい実施形態によれば、ブランクは均一な厚さであるように選択される。この有利な設計により、一定の材料厚からラチェットを製造することが可能になり、これにより製造コストが削減され、製造プロセスは大幅に容易になる。
本発明の前述の特徴及び機能、並びに更なる態様及び特徴について、好ましい実施形態の詳細な説明を用いて、添付の図面を参照して以下に説明する。
本発明によるラチェットの平面図である。
図1に従った本発明によるラチェットの側面図である。
螺旋の自由端上に突起を有する、本発明によるラチェットの平面図である。
1.5ターンを有する螺旋を有する、本発明によるラチェットの平面図である。
衝止部を有する、本発明によるラチェットの断面である。
本発明によるラチェット上の突起の拡大図である。
本発明によるラチェット上の突起の拡大図である。
本発明によるラチェット上の突起の拡大図である。
本発明によるラチェット上の突起の拡大図である。
本発明によるラチェット上の突起の拡大図である。
本発明によるラチェット上の突起の拡大図である。
自由端上の突起と螺旋の隣接する凹部とを有する、本発明によるラチェットの平面図である。
インプラントドライバの側面図である。
図7aに従ったインプラントドライバの平面図である。
更なるインプラントドライバの側面図である。
図1は、本発明の第1の例示的実施形態によるラチェット1の平面図を示す。
第1の実施形態によるラチェット1は一体成形設計であり、同じ厚さdを有するハンドル2とピボットハウジング4とからなる。ピボットハウジング4は2ターンを有するアルキメデス螺旋6として設計される。ピボット軸Dであって、これを基準にしてラチェット1からインプラントドライバ100へのトルク伝達が行われるピボット軸Dが、ピボットハウジング4内に配置される。トルク伝達の方向が示されている矢印は、ラチェット1の回転に関連することに留意されたい。
螺旋6は2ターンを有するように設計されるため、インプラントドライバ100に対する接触力は更に増加し、なぜならトルク伝達の方向におけるラチェット1の回転時には、ラチェット1のニュートラル位置において及び/又はフリーホイーリング方向において得られるギャップ5がもはや存在せず、従って互いに接触する螺旋の縁が実質的にトルク伝達を支持するからである。これらの縁はまた、トルク伝達を支持するために粗面化される。
ピボット軸Dに面した螺旋の縁8は粗面化され、これにより螺旋1からインプラントドライバ100へのトルク伝達はより効果的に行われ得る。更に、ピボット軸Dに面した縁8は、インプラントドライバ100に関する損耗を最小にするか又は回避するために硬化される。
開/閉方向を示す、ここではハンドル2の領域内に施されるラチェット1上のマーキング3は、ラチェット1の容易な取扱いに関してユーザの役に立ち、これにより組織への又は口腔領域内での損傷が効果的に防止され得る。従ってユーザは、トルク伝達のために又はフリーホイーリングのために、それぞれどちらの方向にラチェット1を作動させるべきかを明確に見ることができる。ラチェット1上のマーキング3はまた、接着、エッチング、彫刻、レーザ加工されてもよく、又は他の何らかの凸版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、孔版印刷、又はフラット印刷技術によって形成されてもよい。
図2は、図1によるラチェット1の側面図であり、ここで、ラチェット1の螺旋6は平面内で、すなわち2次元的に巻かれることがわかる。ラチェットの厚さdは2mmである。
図3は、本発明の第2の例示的実施形態における、突起10を有するラチェット1’の平面図を示す。突起10は、ピボット軸Dに面した螺旋6’の縁8’上の、螺旋6’の自由端12上に配置される。
第2の実施形態によるラチェット1’は更に、1つの部品として設計され、やはり同じ厚さdを有するハンドル2とピボットハウジング4’とからなる。ピボット軸Dはピボットハウジング4’の内側に配置される。図1と同様に、トルク伝達の方向が示されている矢印は、ラチェット1’の回転に関連する。
図4は、1.5ターンを有する螺旋6’’を有する、第3の実施形態によるラチェット1’’の平面図を示す。
図5は、本発明の更なる実施形態による、衝止部14を有するラチェット1’’’の断面を示す。ピボットハウジング4’’’及び/又はハンドル2’’’から突出する衝止部14は、インプラントドライバレセプタクルの領域内にこれが少なくとも部分的に突出するように設計され、従ってラチェット1’’’は、予め規定された領域までのみインプラントドライバ100上に配置されることが可能である。従って、過度に「深い」配置による組織の損傷が効果的に防止され得る。ハンドル2’’’は、ピボットハウジング4’’’から離れる方を向いた側上にレセプタクル16を更に含む。このレセプタクル16は、ハンドル2’’’の延長を、例えばこれがなければ到達できない場所に到達するように取り付けるために役立ち得る。
図6は、ラチェット1’による螺旋6’上の突起10の、複数の拡大図を示す。図6a)では、螺旋6’の端12上の突起10.1はくさび状の設計である。突起10.1は、くさびが端12に向けて降下するようなくさび形状の設計である。このくさび状の突起10.1により、図8a及び図8bに示すインプラントドライバ100をトルク伝達の方向においてしっかりと拘束すること、及びフリーホイーリング方向において、このくさび形状に起因して特に良好な手法でこれを再び解放することが可能である。図6b)では、突起10.2はやはり端12上に配置される。突起10.2は、端12から離れる方を向いた、縁8に対して直交する面11.2と、端12の方を向いた面上の凹形設計とを有する。凹形設計の代わりに、図6c)では突起10.3は凸型設計である。図6d)は、突起10.4の配置が、ピボット軸Dに面した縁8に沿って行われてもよいということを明らかにする。同様に、複数の突起10.5が、図6e)から明らかになるように、ピボット軸Dに面した縁8上に配置されてもよい。突起10.5の数は、図e)に示すような2つには限定されない。更に、突起10.5は所定の距離を有して配置されてもよい。図6b)は、図6a)におけるような構成を示すが、螺旋6がピボット軸Dから離れる方を向いた面上に凹部13.1を含むということが異なる。この凹部13.1は、突起10.6から所定の長さにわたって延在する。これにより、突起の領域の可撓性を調節することが可能になる。
これらの前述の突起(1つ又は複数)10の設計は、ラチェット1とインプラントドライバ100との間の形状適合接続を達成することを可能にする。
図7は、自由端12上の突起10.7と螺旋6’’’’の隣接する凹部13.2とを有する、本発明によるラチェット1’’’’の平面図である。
この第4の実施形態によるラチェットは、両方が同じ厚さdを有するハンドル2’’’’とピボットハウジング4’’’’とから形成される。ピボットハウジング4’’’’は螺旋6’’’’として形成され、その自由端12上にくさび形状の突起10.7を有する。突起10.7は、くさびが螺旋6’’’’の自由端12に向けて降下するようなくさび形状の設計である。更に、螺旋6’’’’は長さLに沿って延在する凹部13.2を有する。突起10.7は、螺旋6’’’’の自由端12から離れる方を向いた、角度αによって規定される面11.6を更に含む。角度αは、自由端12から離れる方を向いた面11.6から、ピボット軸Dに面した縁8までにわたるものである。
ピボット軸Dに面した縁8は、自由端12から離れる方を向いた面のすぐ前に凹部13.2を備え、前記凹部13.2は所定の長さLにわたって延在する。この凹部13.2は、螺旋6’’’’の自由端12から離れる方を向いた突起10.7の面11.6に直接隣接する。連続的な先細りと凹部13.2との間の移行は、連続的に形成される。
螺旋6’’’’の凹部13.2の長さは、長さLによって測定されるが、これはもちろん、図7の結果として角度βを用いてラジアン単位で測定されてもよい。螺旋6’’’’の凹部13.1が、自由端12から離れる方を向いた面11.6に直接隣接することも必須ではない。
更に図7は、螺旋6’’’’の断面自体が、ハンドル2’’’’上に配置された端から自由端12まで先細りになることを示す。更なる追加の先細りとして理解されるべき、自由端12の領域における凹部13.2の追加的形成は、過度に高いトルクが伝達される場合に、凹部13.2の領域において、従って突起10.7の領域においても、螺旋6’’’’が柔軟に後ろに曲がる、言い換えると、インプラントドライバ100から離れるように曲がるということをもたらす。従って、凹部13.2及び/又は螺旋6’’’’の設計に応じて、トルク制限がこの領域においてもたらされてもよい。
図8aはインプラントドライバ100の側面図を示す。図8bはインプラントドライバ100の平面図であり、ここで、複数の凹部102は40の区分を有する。凹部102はくさび形状の設計であり、言い換えると、図3に従ったラチェット1’の凹部10と相補的である。しかし、第4の実施形態によるラチェット1’’’’がトルク伝達のために使用される場合も有利な可能性があり、なぜならこの場合、トルクが必要に応じて制限及び/又は調節され得るからである。インプラントドライバ100は円筒形の設計であり、外殻表面108上に複数の凹部102を含む。くさび状凹部102のピッチは、所望のトルク伝達が調節され得るように、ラチェットを十分考慮して設計されてもよい。
図9は、2つのセクション104及び106に分けられた更なるインプラントドライバ100’を示す。第1のセクション104は円筒形の設計である。その外殻表面108に沿って複数の凹部102’が配置される。第2のセクション106は円錐台形の設計であり、その端に、ここでは概略的に示す医療ツールのためのレセプタクル110を含む。
ハンドル2の構成及びその数に関しては、独国特許出願第102011052422号明細書の図5a、図5b、図5c、及び図7a、図7b、図7c、並びに関連する説明を参照されたい。
説明した実施形態に加えて、本発明は更なる設計アプローチも考慮に入れる。
ピボットハウジングのピボット軸とハンドルの長手方向軸とは、互いに間隔をあけられてもよい。ピボットハウジングは従って、ハンドルに対してある角度をなして構成されてもよい。ラチェットのこの有利な設計を使用すれば、ピボット軸が長手方向軸から間隔をあけられていることにより、ユーザが、到達するのが困難な場所において、特に臼歯の領域において作業することが可能になる。ピボットハウジングのピボット軸とハンドルの長手方向軸とは、交差してもよい。
ピボットハウジングのピボット軸とハンドルの長手方向軸とは、長手方向軸を基準にして30°〜150°の、好ましくは60°〜120°の、特に好ましくは90°の角度で交差してもよい。この設計は、特に、到達するのが困難な領域の場合の、インプラントドライバ上へのラチェットの配置のための利点を有する。ピボットハウジングとハンドルとの間に固定可能な継手(securable joint)を配置して、角度の連続的調節を必要に応じて可能にすることが、容易に可能である。螺旋の角度寸法(アーク長)がより大きければ、レンチに対するより多くのピッチが可能である。
ピボット軸Dに対して少なくとも垂直方向で部分的に弾性及び/又は可撓性であるバネ状の移行部が、例えば、ハンドル2とピボットハウジング4との間に形成されてもよい。移行部は蛇行パターンで形成されてもよい。この設計は、インプラントドライバ100上への一体成形のラチェット1の配置のために有利である。
前述の実施形態では、ラチェットは一体成形構成であるが、ラチェットはいくつかの部品で形成されてもよい。
ピボット軸に面した縁が滑らかであるように形成され、トルク伝達は単に1つの突起によって、又は圧縮された螺旋により引き起こされるバネ力によって行われるようにすることも更に可能である。
設計サイズに応じて、ラチェット1の厚さdは随意選択で0.5mm〜5mm、好ましくは1mm〜4mm、特に好ましくは2.5mmという寸法であってもよい。
より良好な取り扱いのために、ハンドルは鋸歯状であってもよく又は構造化されてもよい。ハンドルは円筒形の設計であるが、三角形、正方形、長方形の断面などを有してもよい。
螺旋内に少なくとも1つの突起が形成されてもよいが、対応する点状の凹部を設けること、及び対応する突起をインプラントドライバに設けることも可能である。更に、螺旋に沿って凹部と突起とを組み合わせることも考えられる。
螺旋は平面内で巻かれるが、更なる発展した螺旋はいくつかの面にわたって(3次元的に)巻かれてもよく、これによりピボット軸に面した螺旋の一方の縁は、360°を超える囲み角を有してインプラントドライバを囲む。
凹部は外殻表面に沿って周期的な間隔を有して延在するが、凹部は非周期的に形成されてもよい。
突起は硬化されるが、軟化焼鈍されてもよい。
凹部13.2はピボット軸Dに面した螺旋の側面上で得られる必要はなく、代替として又は補足として、ピボット軸Dから離れる方を向いた螺旋の側面及び/又は面上に配置されてもよい。しかし簡略化された設計では、この凹部13.2は省略されてもよい。
伝達されるトルクは、例えば、突起の高さと、ピボット軸から離れる方を向いた凹部の深さとの組み合わせに依存してもよい。トルク伝達の間、この凹部は、突起に至る螺旋の隣接する領域及び/又はセクションまでの、及び場合によっては突起自体までの十分な間隔を可能にし、これにより、ことによると過度に大きなトルクが伝達されるときにインプラントドライバから離れる方にはね返り、このようにしてトルク制限を可能にする。
凹部はピボット軸に面した面上に形成されるが、ラチェットの表側において形成されてもよい。これにより、狭い空間の場合にラチェットをより柔軟に使用することが可能になる。
ラチェットを製造する代替の方法は、最初に、材料ブロックの形態のブランクが選択されるように行われてもよい。これは次に、ラチェットの所望の輪郭が形成されるように加工されてもよい。続いて、ラチェットの輪郭を含む材料ブロックは、厚さdを有する個々のラチェットに分離される。必要に応じて、分離されたラチェットは更に処理されてもよい。これに関して、レーザ切断、水ジェット切断、ワイヤ浸食、スパーク浸食、又はパンチングが使用されてもよい。
上記では、医療分野、特に歯科分野のためのラチェット1について説明したが、ラチェット1は、例えば宇宙飛行、半導体製造などの、清浄度に対する高い要求を有する分野においても使用されてもよい。
ラチェットが、特に外科的介入のためのラチェット又は歯科用ラチェットが提供され、ここでラチェットはハンドルとその上に配置されたピボットハウジングとを有し、前記ピボットハウジングは平坦な螺旋である。螺旋は可撓性であり、ピボット軸Dに対して実質的に垂直方向を向いた面内で螺旋が巻かれるように作動させられてもよい。本発明はまた、ラチェットとインプラントドライバとを含むトルク伝達システムに関する。インプラントドライバは、円筒形である第1の部分と、円筒形又は円錐台形である第2の部分とを有し、第2の部分は、医療ツール、外科的インプラント、又はその他の任意の物体のためのレセプタクルを加えて有する。このようにして、改良されたラチェットであって、加えられるべきトルクがこれを用いて調節された様態でインプラントドライバに加えられることが可能な、改良されたラチェットが得られる。
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の医療分野のためのラチェットに関し、特に、外科的介入のためのラチェット又は歯科用ラチェットに関する。本発明は更に、請求項9に記載のトルク伝達システムに、及び請求項14に記載の、医療分野におけるそのようなラチェットの使用に関する。その上、本発明は、請求項15に記載の、加えられるべきトルクをそのようなラチェットを用いてインプラントドライバに伝達する方法に、及び請求項19に記載の、そのようなラチェットを製造する方法に関する。
ツール及び/又は医療機器を使用して外科的介入を行う場合の、十分な殺菌の問題は周知である。血液又は組織残留物及びその他の創傷排出物が、相互に関連する部品の細隙又は接合部に入ること、及びそこに堆積することを防止するために、使用されるツールができるだけ少ない個々の部品から構成されるという事実が医療分野では重視される。
できるだけ少ない部品で、特に1つの部品でツールを形成することにより、いくつかの部品で形成されるツールの接合部において配置される堆積物又は微生物によって引き起こされる可能性がある感染を大幅に減らすことが可能である。
更に、一体成形の医療ツールの必要とされる殺菌では、起こり得る摩耗と損耗の兆候とを直接接触する場所においてもたらす可能性がある、個々の部品の取り外しは必要とされない。
少数の個々の部品からなる、又はただ1つの部品から形成されるツールは、ユーザによる誤った組み立てが減少する又は回避される可能性があるという更なる利点を、特に同一の構成のいくつかのツールが1つのコンテナ内で清浄にされる場合は更に有する。
その上、複数部品ツールの個々の部品が組み立てられること、及び組み立てられた部品の動作性が続いてテストされることによって発生する労力が削減される可能性がある。
従って、非常に少ない部品からなる、しばしば1つの一体成形部品のみからなるツール、例えば一体成形の鉗子、鋸子、ドリルなどが、多くの医療分野で好んで使用されるが、口腔、顎骨、及び顔面手術においてはいくつかの特殊なツールが、所望の機能を満たすことができるように、いくつかの部品から構成されなければならないということは依然として事実である。
これはとりわけ歯科及びインプラント処置の分野において特に重要であり、なぜならインプラント担持体又は歯の基部が顎の中に挿入される場合、歯肉のみでなく場合によっては顎骨さえも冒す可能性がある感染性因子が移されないよう特に注意しなければならないからである。そのようなインプラント担持体又は歯の基部は通常、いくつかの部品から形成される歯科用ラチェットを用いて顎骨にねじ込まれる。
上述の欠点、特に複数部品設計の医療ツールに関連する感染リスクを回避するために、ツールは1つの部品から製造されることが好ましく、すなわち一体成形の歯科用ラチェットが口腔、顎骨、及び顔面手術の分野においても使用されなければならない。
国際公開第2006/029542(A1)号パンフレットでは、ラチェット器具として設計された医療分野のためのトルクレンチが開示されている。受入開口部の周辺において、限定的に移動可能なラッチセグメントが配置され、その前部分は受入開口部の方を向いている。トルクレンチを前方向に作動させると、生成されるべきトルクが、ユーザによって及ぼされる前向きの力を用いて、偏向可能な線形弾性曲げブランチを介して加えられる。
ラッチバネがラッチセグメントからカラー(collar)領域内まで延在する。ラッチセグメントとラッチバネとは、いくつかの部品から構成されるラッチを形成し、これはあるいは1つの部品として設計されてもよい。ラッチセグメントとラッチバネとは、それらの両方がラッチバネの力に逆らって平面内で偏向することを可能にするチャネル形状の間隔内に配置される。
口腔、顎骨、及び顔面手術の分野においては、歯科用ラチェットからインプラントドライバまで伝達されるべきトルクを、慎重を期した様態で伝達することがしばしば重要である。しかし国際公開第2006/029542(A1)号パンフレットのトルクレンチはこれを可能にせず、なぜならトルク伝達は、ラッチセグメントが上部の第1の衝止部と接触した場合のみ行われるからである。従って、インプラントドライバへのトルクの慎重を期した伝達は不可能である。
独国実用新案第202007015689(U1)号明細書では、モノラチェットヘッド(mono ratchet head)と呼ばれるものがハンドル上に配置された歯科用ラチェットが提案されている。モノラチェットヘッドは、ラッチ要素を有するバネ要素としての、インプラントドライバのためのエンクロージャを提供する。可撓性のエンクロージャは、中断又は間隙をそれぞれ有する環状であるように更に設計され、従ってこれは開放リングの形状を有する。ラッチ要素がエンクロージャ又は開放リングのそれぞれの自由端上に形成される。ラッチ要素は、一方の方向のみにおけるインプラントドライバの移動を可能にする。他方の回転方向は、インプラントドライバをラッチ要素内にラッチすることによって達成される。
独国実用新案第202007015689(U1)号明細書の歯科用ラチェットの別の重要な構成要素は、例えばトルクス(torx)(登録商標)についても存在するような、インプラントドライバの溝形状の輪郭設計である。この設計のみが、独国実用新案第202007015689(U1)号明細書のラチェットについての所望の機能を達成することを可能にする。
インプラントドライバへのトルクの調節された伝達は、独国実用新案第202007015689(U1)号明細書の歯科用ラチェットを用いても不可能である。
従って本発明の目的は、ラチェットであって、加えられるべきトルクがこれを用いて正確に調節された様態でインプラントドライバに加えられることが可能な、ラチェットを提供することである。
この目的は、請求項1の特徴を有するラチェットによって解決される。
本発明によれば、ハンドルとその上に配置されたピボットハウジングとを含むラチェットが提案され、前記ピボットハウジングは平坦な螺旋である。更に、螺旋は可撓性であり、ラチェットは、ピボット軸に対して実質的に垂直方向を向いた面内で螺旋が巻かれるように作動させられることが可能であり、ここで、螺旋は対数螺旋、双曲螺旋、又はアルキメデス螺旋(archimedic spiral)として形成される。
可撓性の螺旋としてのピボットハウジングの設計は、ラチェットがトルク伝達の方向に回転されられる場合に、ユーザによって加えられる力の一部が螺旋の可撓性の変形に流れ込み、その他の部分が、インプラントドライバにトルクが伝達されることを引き起こすということを、単純な手法で可能にする。第一に、ユーザによってハンドルに加えられる力は、インプラントドライバが螺旋によって、要素間に発生する摩擦力に起因して圧力嵌め手法で囲まれるまで、螺旋の可撓性の変形を引き起こし、これにより、ユーザによって加えられる更なる力はインプラントドライバへのトルク伝達を続いて発生させる。しかしユーザによって追加的に加えられる力が大きくなりすぎて、例えば顎、インプラント担持体、歯の基部などの損傷をもたらす可能性がある場合、ラチェットはインプラントドライバに対してスリップ又は空転する。従って、インプラントドライバへのトルク伝達を調節された様態で、人体も他の構成要素も損傷することなしに伝達することが可能である。
可撓性の螺旋の変形は平面内で巻かれることによって行われ、すなわち上面図(2次元)を考慮する場合、トルク伝達の間に螺旋はピボットハウジングのピボット軸の周りで、すなわち内側に巻かれる。従って、螺旋の可撓性は1つの平面にわたって延在するのみである。ラチェットがフリーホイール方向に回転させられる場合、螺旋はピボット軸から離れるように解放され、言い換えると螺旋は開かれる。
その上、螺旋としてのピボットハウジングの設計によって調整されたバネ力は、トルク伝達の方向に螺旋が巻かれる場合、インプラントドライバに対して、予め規定された接触力で螺旋を更に押す。従って、螺旋の表面粗度とインプラントドライバに対する螺旋の接触力との組み合わせは、トルク伝達を効果的に増加させる。
更に、回転のプロセスに先立って、ハンドルの長手方向軸を基準にしたラチェットの単純な回転によって、トルク伝達の方向を変えること、すなわちフリーホイーリング方向に変えることが可能である。従って、ラチェットのトルク伝達の方向を有利な手法で決定することが、ラチェットを改造する努力を要することなしに可能である。
単純な構成である本発明によるラチェットの構成を使用すれば、製造コストを低く保つことが可能である。
最後にラチェットは、例えば、使用されるツールの消毒及び処置室の準備に精通する歯科医の実習生などの、経験の少ない人員によってさえ、容易にかつ多大な努力を払うことなしに取り扱われることが可能である。
螺旋がアルキメデス螺旋として設計される場合、螺旋はインプラントドライバをしっかりと囲むことが可能であり、なぜなら螺旋の半径は、螺旋とハンドルとの間の接合部から螺旋の自由端までの角度に比例して減少するからである。従って、インプラントドライバに対する螺旋のバネ力は効果的に増加する。バネ力の要求に応じて、螺旋は対数螺旋又は双曲螺旋として設計されてもよい。
本発明によるラチェットの更なる実施形態は、従属請求項2〜8の主題である。
従って、ラチェットは一体成形設計を有してもよい。従って、例えば複数部品ラチェットなどについての取り付けに加えて、組み立ても不必要となるため、ラチェットの製造コストを実質的に最小化することが有利に可能である。その上、ラチェットの一体成形設計は、血液又は組織残留物が付着するリスクと、細菌の形成によりもたらされる感染リスクとを明らかに低下させる。各使用の後に必要とされる殺菌もはるかに迅速に行われることが可能であり、なぜならラチェットが分解された後に再度組み立てられる必要はもはやないからである。そのような効率的な操作を可能にすることはまた、医療システムの強い緊張を緩和する。ラチェットの一体成形構成によって更に、同一の又は類似した構成のいくつかのラチェットの場合に、組み立て中に部品が混同されて場合によってはラチェットの機能の消滅又は損傷がもたらされる可能性がある、ということが有利に防止される可能性がある。その上、ラチェットが繰り返し組み立てられる場合、部品の繊細な接合部が激しく使用され損耗する。一体成形構成はこの問題に効果的に対抗する。
更なる実施形態によれば、ラチェットの螺旋は少なくとも360°の、好ましくは少なくとも450°の、特に好ましくは少なくとも630°の角度を有してもよい。この角度は、ハンドルから螺旋への移行部から、螺旋の自由端までにわたるものである。角度寸法の構成又は螺旋のコイルの構成はそれぞれ複数の要因に依存する。従って、例えばインプラントドライバの外殻表面と動作可能な接続状態にある表面の粗度が、角度寸法を決定する。粗度がより高ければ、螺旋のより小さな角度寸法が必要とされる。螺旋の可撓性によっても角度寸法の選択は変更され、なぜならこれは螺旋がどの程度までインプラントドライバを囲むかを決定するからである。螺旋の可撓性はその断面に依存することに留意されたい。応力分散は螺旋の全アーク長にわたって分散されるため、応力分散がより良好ならば角度寸法はより大きい。螺旋はその最初のコイルを用いてインプラントドライバを囲むため、ハンドルをある角度をなして配置することも可能である。従って、例えば顎骨手術などにおける、狭い空間へのラチェットの到達可能性が向上する。
更なる実施形態によれば、螺旋はピボット軸に面した少なくとも1つの突起を有してもよい。突起は、インプラントドライバの対応する凹部内に係合することが可能なように、螺旋上に設計される。従って、トルク伝達の方向におけるラチェットの回転時に、インプラントドライバを囲む螺旋のセクションとインプラントドライバとの間の圧力嵌め接続(force−fit connection)(摩擦力)に加えて、形状適合接続(form−fit connection)が補助的に提供されることが達成されてもよい。更に、複数の突起が螺旋に沿って設けられてもよく、これによりラチェットからインプラントドライバへの力及び/又はトルク伝達は、1つのみの突起と比較してより規則的にインプラントドライバ上に分散されることが可能である。伝達されるトルクは、螺旋のピッチによって、突起と関連して影響を及ぼされる。従って一定のトルク伝達を可能にするために、対応する凹部がそれに応じてインプラントドライバに沿って形成されなければならないことに留意されたい。伝達されるトルクは、突起の高さ、ラチェットの材料、及び/又はその硬度に依存する。
更なる実施形態によれば、ピボット軸に面した突起は、螺旋の自由端上に配置されてもよい。螺旋の端における突起の配置は、圧力嵌め接続と形状適合接続との効果的な組み合わせを可能にし、なぜならインプラントドライバを囲むセクションが圧力嵌め接続を確実にし、形状適合接続が螺旋の端においてのみ発生するからである。従って突起は、圧力嵌め接続(摩擦力)によって達成されることができない力及び/又はトルク伝達の量のみを引き受けなければならない。端において配置される突起は従って、力伝達によって発生するその損耗が減らされ得るように有利に解放されてもよい。
更に、螺旋の自由端から離れる方を向いた突起の面は、ピボット軸に面した縁とある角度をなしてもよい。この角度が鋭角である場合、インプラントドライバの凹部に突起がよりしっかりと係合し、すなわちより良好に引っかかり、従って相互ラッチングが向上することが達成されてもよい。対照的に、角度が鈍角である場合、トルク制限が必要に応じて有利に実施されてもよく、なぜなら突起は所定のトルクに伴ってインプラントドライバの凹部から外れるからである。角度がより鈍角に設計されていれば、突起をインプラントドライバから離れるように曲げるためのトルクはより小さい。角度は必要に応じて、45°〜150°に、好ましくは70°〜120°に、特に好ましくは80°〜110°に設計されてもよい。
その上、螺旋はある長さにわたって延在する凹部を有してもよく、ここで凹部は、螺旋の自由端から離れる方を向いた突起の面に直接隣接する。従って螺旋の自由端は、この領域における螺旋の減らされた断面に起因して、凹部がない場合よりも柔軟であり、これにより、端において配置された突起はやはりインプラントドライバから離れるように偏向するため、トルク伝達の制限が可能になる。これは自由端における可撓性を必要に応じて調節することを可能にする。凹部は更に、螺旋の厚さ全体に及んでもよい。
更なる実施形態によれば、ピボット軸に面した螺旋の縁は、少なくとも1つのセクションにおいて粗面化されてもよい。そのような粗度はラチェットとインプラントドライバとの間のスリップを最小化するか又は防止し、これにより、ユーザによって加えられた力がインプラントドライバに実質的にスリップなしで伝達されるということが有利な手法で達成される。一般に、粗度は3つのセクタに分類されてもよい。Ramin〜Ra1という第1のセクタでは、一種の機械的接着が存在する。これに関連して、界面層における分子相互作用によって発生する、関与する表面の機械的コヒーレンスが存在する。表面は従って非常に滑らかに設計されるため、それらの接触に先立って存在する空気は逃げ去り、従って関与する2つの表面は互いにしっかりと付着する。トルクの伝達に適していないRa1〜Ra2という第2のセクタでは、滑り摩擦が存在する。Ra2〜Ramaxという第3のセクタでは静止摩擦が存在し、ここで、接触する2つの表面の表面構造は、それらが付着するほど粗いように設計される。Ramaxより大きい更なる第4のセクタは、形態適合とみなされてもよい。
本発明によるラチェットの更なる態様では、ラチェットはステンレス鋼、チタン、セラミック、耐摩耗性プラスチックなどから形成されてもよい。ラチェットの長寿命を考慮して、ラチェットの、特にその締め付け面の耐摩耗性及び/又は抗摩耗性が特に重視される。更に、長期にわたって機能することが保証されてもよい。あるいは、腐食から保護されるように特定の被覆プロセスを経た、任意の種類の機械加工鋼、建築鋼、又はバネ鋼が使用されてもよい。バネ鋼1.4310、チタングレード4、チタングレード5、PEEKが特に適することが判明している。更に、無菌であることが可能なエラストマが検討されている。螺旋の可撓性は、材料の選択に応じて調節され得ることに留意されたい。
別の態様では、ピボット軸に面した螺旋の縁は、少なくとも1つのセクションにおいて硬化させられてもよい。ラチェットの低損耗性のために、ラチェット、特にピボット軸に面した螺旋の縁は、インプラントドライバより硬いことが重要である。これに関して、例えば変態硬化、結晶微細化、時効硬化、固溶体硬化、歪み硬化などのような様々な硬化方法が使用されてもよい。ラチェットの硬さの程度が、関連するインプラントドライバと揃えられ、これによりラチェットとインプラントドライバとが相関ペアを構成する場合、更に有利である。
更なる実施形態によれば、螺旋の少なくとも1つの突起は、少なくとも1つのセクションにおいて硬化させられてもよい。従って、少なくとも1つの突起が丸味を帯びて、少なくとも1つの対応する凹部との正確に適合した係合がもはや行われない、ということが効果的に防止され得る。更に、突起の丸みによって望ましくなく発生するスリップが回避され得る。
本発明によるラチェットの一実施形態では、ハンドル及び/又はピボットハウジング及び/又は螺旋の領域内にマーキングが設けられてもよい。このマーキングは、ユーザが例えば口腔領域内の組織、創傷などの敏感な場所において手術を行う場合に、ユーザにとって特に有利であり、なぜならこのマーキングは、インプラントドライバを締め付けるため又は緩めるためにどちらの方向にラチェットが回転させられるべきかを示すからである。従って、敏感な場所における、ラチェットによる回転方向の不必要な「試行」が効果的に回避され得る。
本発明によるラチェットの更なる実施形態では、ハンドルとピボットハウジングとは同じ厚さを有してもよい。従って、一定の材料厚からラチェットを製造することが可能であり、これにより製造コストは削減され、製造プロセスは大幅に容易になる。
本発明の別の態様によれば、ハンドルは円筒形であってもよく、これにより人間工学的取り扱いがユーザにとって可能になる。
本発明によるラチェットの更なる態様によれば、ラチェットは衝止部(stop)を含んでもよい。衝止部は、ピボットハウジングの領域内に少なくとも部分的に突出し、好ましくは螺旋が巻かれる面と比べて平行な面全体にわたって延在し、インプラントドライバに面していない側上に配置され、これによりラチェットは、インプラントドライバ上に配置される場合、インプラントドライバ上に衝止部まで配置されることのみが可能である。従って、ラチェットをインプラントドライバ上に配置する場合に、ラチェットがインプラントドライバの軸方向において組織内又は開放傷内まで摺動し、これにより場合によっては患者を傷つける可能性がある、ということが効果的に防止される。
本発明の更なる態様によれば、請求項9に記載のトルク伝達システムが更に提供され、前記トルク伝達システムは、本発明によるラチェットと、インプラントドライバとを含む。その上、インプラントドライバは、円筒形の設計の第1のセクションと、円筒形又は円錐台形の設計の第2のセクションとを含み、ここで第2のセクションは、医療ツール、外科的インプラント、又はその他の任意の物体のためのレセプタクルを更に含む。
このようなトルク伝達システムを用いて、ラチェットをトルク伝達の方向に回転させることによって、ユーザの力をラチェットを介してインプラントドライバに単純な手法で伝達することが、スリップにより発生する力及び/又はトルクの損失なしに可能である。
医療ツールは、アレンヘッド、トルクスヘッド、ミリングヘッド、研磨ヘッド、ピンレセプタクル、ピンサー(pincers)、やすりなどであってもよい。
本発明によるトルク伝達システムの有利な更なる発展は、従属請求項10〜13の主題である。
従って、ラチェットとインプラントドライバとの間に圧力嵌め接続が存在してもよい。トルク伝達は従って、摩擦力の助けを借りて容易に実施されてもよい。
代替として又は補足として、ラチェットとインプラントドライバとの間に形状適合接続が存在してもよい。ラチェットからインプラントドライバへのトルク伝達は従って、特に有利な手法でもたらされてもよい。
更に、インプラントドライバ上の第1のセクションは、少なくともその外殻表面に沿って配置された凹部を含んでもよく、ここで、そのような形状適合接続の場合、螺旋の少なくとも1つの突起が、インプラントドライバの少なくとも1つの凹部と係合状態にあるということが達成される。従って、形状適合接続は単純な手法で確立され得る。
その上、複数の凹部が、インプラントドライバの外殻表面に沿って周期的な間隔及び/又は隔離距離を有して配置されてもよい。従って、螺旋からの力の伝達は、少なくとも1つの突起を介してインプラントドライバに特に有利な手法で伝達される。
本発明の更なる態様によれば、インプラントドライバにトルクを伝達するための、医学分野における、特に外科又は歯科分野における本発明によるラチェットの使用が、請求項14に従って提案される。
本発明の更に別の態様によれば、請求項15に従って、インプラントドライバに加えられるべきトルクを本発明によるラチェットを用いて伝達する方法が提供され、この方法は、ラチェットをインプラントドライバ上に、その軸方向において配置し、好ましくはラチェットをフリーホイーリング方向に回転させ、同時にラチェットをインプラントドライバに沿って降下させるステップと、ラチェットをインプラントドライバ上に固定し、ラチェットをトルク伝達の方向に回転させることによってインプラントドライバにトルクを伝達するステップと、インプラントドライバ上に配置されたラチェットをフリーホイーリング方向に回転させることによってインプラントドライバを解放するステップと、フリーホイーリング方向に回転させ、同時にラチェットをインプラントドライバからその軸方向において除去することによって、ラチェットをインプラントドライバから取り外すステップとを含む。
従って、本発明によるラチェットを用いた、上記で説明した利点及び効果が同様に達成される。
本発明による方法の有利な更なる発展は、従属請求項16〜18の主題である。
本発明による方法の一実施形態によれば、ラチェットをインプラントドライバ上に固定し、ラチェットをトルク伝達の方向に回転させることによってインプラントドライバにトルクを伝達するステップと、インプラントドライバ上に配置されたラチェットをフリーホイーリング方向に回転させることによってインプラントドライバを解放するステップとは、好ましくは、ラチェットがインプラントドライバから取り外される前に繰り返し実行される。
更に、ラチェットをインプラントドライバ上に固定し、ラチェットをトルク伝達の方向に回転させることによってインプラントドライバにトルクを伝達するステップは、螺旋の少なくとも1つの突起がインプラントドライバの少なくとも1つの凹部と係合状態にあるような仕方で実行されてもよい。また、インプラントドライバ上に配置されたラチェットをフリーホイーリング方向に回転させることによってインプラントドライバを解放するステップは、螺旋の少なくとも1つの突起がインプラントドライバの少なくとも1つの凹部から外れるような仕方で実行されてもよい。
本発明による方法の更なる好ましい実施形態によれば、ラチェットをインプラントドライバ上に固定し、ラチェットをトルク伝達の方向に回転させることによってインプラントドライバにトルクを伝達するステップは、ピボットハウジングに加えられるトルクの第1の部分が、可撓性の螺旋を平面内で巻き続け、これによりピボット軸に面した縁とインプラントドライバとの間に圧力嵌め接続が存在するような仕方で、かつピボットハウジングに加えられるトルクの第2の部分が、インプラントドライバの枢動移動を発生させるような仕方で実行され、インプラントドライバ上に配置されたラチェットをフリーホイーリング方向に回転させることによってインプラントドライバを解放するステップは、ピボット軸に面した螺旋の縁とインプラントドライバとの間の圧力嵌め接続が解放されるような仕方で実行される。
前述の実施形態に伴う、ラチェットを固定するステップとインプラントドライバを解放するステップという2つのステップは、それぞれがこの実施形態の対応するステップと組み合わされてもよいということに留意されたい。
本発明による方法と本発明によるラチェットの使用とにより、ラチェットに関連して前述したものと同じ利点が同様に達成されることが可能である。繰り返しを避けるため、それらをここで再び列挙することはしない。
本発明の更に別の態様によれば、請求項19に従って、ラチェットを製造する方法が提供され、この方法は、ブランクを選択するステップと、レーザ切断、水ジェット切断、ワイヤ浸食、スパーク浸食、又はパンチングを用いてラチェットの輪郭を形成するステップとを含む。
このようにして、本発明によるラチェットを、特に単純かつ正確な手法で、及び低コストで製造することが可能である。
本発明による方法の例示的な、有利な更なる発展は、従属請求項20の主題である。
方法のこの好ましい実施形態によれば、ブランクは均一な厚さであるように選択される。この有利な設計により、一定の材料厚からラチェットを製造することが可能になり、これにより製造コストが削減され、製造プロセスは大幅に容易になる。
本発明の前述の特徴及び機能、並びに更なる態様及び特徴について、好ましい実施形態の詳細な説明を用いて、添付の図面を参照して以下に説明する。
本発明によるラチェットの平面図である。
図1に従った本発明によるラチェットの側面図である。
螺旋の自由端上に突起を有する、本発明によるラチェットの平面図である。
1.5ターンを有する螺旋を有する、本発明によるラチェットの平面図である。
衝止部を有する、本発明によるラチェットの断面である。
本発明によるラチェット上の突起の拡大図である。
本発明によるラチェット上の突起の拡大図である。
本発明によるラチェット上の突起の拡大図である。
本発明によるラチェット上の突起の拡大図である。
本発明によるラチェット上の突起の拡大図である。
本発明によるラチェット上の突起の拡大図である。
自由端上の突起と螺旋の隣接する凹部とを有する、本発明によるラチェットの平面図である。
インプラントドライバの側面図である。
図8aに従ったインプラントドライバの平面図である。
更なるインプラントドライバの側面図である。
図1は、本発明の第1の例示的実施形態によるラチェット1の平面図を示す。
第1の実施形態によるラチェット1は一体成形設計であり、同じ厚さdを有するハンドル2とピボットハウジング4とからなる。ピボットハウジング4は2ターンを有するアルキメデス螺旋6として設計される。ピボット軸Dであって、これを基準にしてラチェット1からインプラントドライバ100へのトルク伝達が行われるピボット軸Dが、ピボットハウジング4内に配置される。トルク伝達の方向が示されている矢印は、ラチェット1の回転に関連することに留意されたい。
螺旋6は2ターンを有するように設計されるため、インプラントドライバ100に対する接触力は更に増加し、なぜならトルク伝達の方向におけるラチェット1の回転時には、ラチェット1のニュートラル位置において及び/又はフリーホイーリング方向において得られるギャップ5がもはや存在せず、従って互いに接触する螺旋の縁が実質的にトルク伝達を支持するからである。これらの縁はまた、トルク伝達を支持するために粗面化される。
ピボット軸Dに面した螺旋の縁8は粗面化され、これにより螺旋1からインプラントドライバ100へのトルク伝達はより効果的に行われ得る。更に、ピボット軸Dに面した縁8は、インプラントドライバ100に関する損耗を最小にするか又は回避するために硬化される。
開/閉方向を示す、ここではハンドル2の領域内に施されるラチェット1上のマーキング3は、ラチェット1の容易な取扱いに関してユーザの役に立ち、これにより組織への又は口腔領域内での損傷が効果的に防止され得る。従ってユーザは、トルク伝達のために又はフリーホイーリングのために、それぞれどちらの方向にラチェット1を作動させるべきかを明確に見ることができる。ラチェット1上のマーキング3はまた、接着、エッチング、彫刻、レーザ加工されてもよく、又は他の何らかの凸版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、孔版印刷、又はフラット印刷技術によって形成されてもよい。
図2は、図1によるラチェット1の側面図であり、ここで、ラチェット1の螺旋6は平面内で、すなわち2次元的に巻かれることがわかる。ラチェットの厚さdは2mmである。
図3は、本発明の第2の例示的実施形態における、突起10を有するラチェット1’の平面図を示す。突起10は、ピボット軸Dに面した螺旋6’の縁8’上の、螺旋6’の自由端12上に配置される。
第2の実施形態によるラチェット1’は更に、1つの部品として設計され、やはり同じ厚さdを有するハンドル2とピボットハウジング4’とからなる。ピボット軸Dはピボットハウジング4’の内側に配置される。図1と同様に、トルク伝達の方向が示されている矢印は、ラチェット1’の回転に関連する。
図4は、1.5ターンを有する螺旋6’’を有する、第3の実施形態によるラチェット1’’の平面図を示す。
図5は、本発明の更なる実施形態による、衝止部14を有するラチェット1’’’の断面を示す。ピボットハウジング4’’’及び/又はハンドル2’’’から突出する衝止部14は、インプラントドライバレセプタクルの領域内にこれが少なくとも部分的に突出するように設計され、従ってラチェット1’’’は、予め規定された領域までのみインプラントドライバ100上に配置されることが可能である。従って、過度に「深い」配置による組織の損傷が効果的に防止され得る。ハンドル2’’’は、ピボットハウジング4’’’から離れる方を向いた側上にレセプタクル16を更に含む。このレセプタクル16は、ハンドル2’’’の延長を、例えばこれがなければ到達できない場所に到達するように取り付けるために役立ち得る。
図6は、ラチェット1’による螺旋6’上の突起10の、複数の拡大図を示す。図6a)では、螺旋6’の端12上の突起10.1はくさび状の設計である。突起10.1は、くさびが端12に向けて降下するようなくさび形状の設計である。このくさび状の突起10.1により、図8a及び図8bに示すインプラントドライバ100をトルク伝達の方向においてしっかりと拘束すること、及びフリーホイーリング方向において、このくさび形状に起因して特に良好な手法でこれを再び解放することが可能である。図6b)では、突起10.2はやはり端12上に配置される。突起10.2は、端12から離れる方を向いた、縁8に対して直交する面11.2と、端12の方を向いた面上の凹形設計とを有する。凹形設計の代わりに、図6c)では突起10.3は凸型設計である。図6d)は、突起10.4の配置が、ピボット軸Dに面した縁8に沿って行われてもよいということを明らかにする。同様に、複数の突起10.5が、図6e)から明らかになるように、ピボット軸Dに面した縁8上に配置されてもよい。突起10.5の数は、図6e)に示すような2つには限定されない。更に、突起10.5は所定の距離を有して配置されてもよい。図6f)は、図6a)におけるような構成を示すが、螺旋6がピボット軸Dから離れる方を向いた面上に凹部13.1を含むということが異なる。この凹部13.1は、突起10.6から所定の長さにわたって延在する。これにより、突起の領域の可撓性を調節することが可能になる。
これらの前述の突起(1つ又は複数)10の設計は、ラチェット1とインプラントドライバ100との間の形状適合接続を達成することを可能にする。
図7は、自由端12上の突起10.7と螺旋6’’’’の隣接する凹部13.2とを有する、本発明によるラチェット1’’’’の平面図である。
この第4の実施形態によるラチェットは、両方が同じ厚さdを有するハンドル2’’’’とピボットハウジング4’’’’とから形成される。ピボットハウジング4’’’’は螺旋6’’’’として形成され、その自由端12上にくさび形状の突起10.7を有する。突起10.7は、くさびが螺旋6’’’’の自由端12に向けて降下するようなくさび形状の設計である。更に、螺旋6’’’’は長さLに沿って延在する凹部13.2を有する。突起10.7は、螺旋6’’’’の自由端12から離れる方を向いた、角度αによって規定される面11.6を更に含む。角度αは、自由端12から離れる方を向いた面11.6から、ピボット軸Dに面した縁8までにわたるものである。
ピボット軸Dに面した縁8は、自由端12から離れる方を向いた面のすぐ前に凹部13.2を備え、前記凹部13.2は所定の長さLにわたって延在する。この凹部13.2は、螺旋6’’’’の自由端12から離れる方を向いた突起10.7の面11.6に直接隣接する。連続的な先細りと凹部13.2との間の移行は、連続的に形成される。
螺旋6’’’’の凹部13.2の長さは、長さLによって測定されるが、これはもちろん、図7の結果として角度βを用いてラジアン単位で測定されてもよい。螺旋6’’’’の凹部13.2が、自由端12から離れる方を向いた面11.6に直接隣接することも必須ではない。
更に図7は、螺旋6’’’’の断面自体が、ハンドル2’’’’上に配置された端から自由端12まで先細りになることを示す。更なる追加の先細りとして理解されるべき、自由端12の領域における凹部13.2の追加的形成は、過度に高いトルクが伝達される場合に、凹部13.2の領域において、従って突起10.7の領域においても、螺旋6’’’’が柔軟に後ろに曲がる、言い換えると、インプラントドライバ100から離れるように曲がるということをもたらす。従って、凹部13.2及び/又は螺旋6’’’’の設計に応じて、トルク制限がこの領域においてもたらされてもよい。
図8aはインプラントドライバ100の側面図を示す。図8bはインプラントドライバ100の平面図であり、ここで、複数の凹部102は40の区分を有する。凹部102はくさび形状の設計であり、言い換えると、図3に従ったラチェット1’の突起10と相補的である。しかし、第4の実施形態によるラチェット1’’’’がトルク伝達のために使用される場合も有利な可能性があり、なぜならこの場合、トルクが必要に応じて制限及び/又は調節され得るからである。インプラントドライバ100は円筒形の設計であり、外殻表面108上に複数の凹部102を含む。くさび状凹部102のピッチは、所望のトルク伝達が調節され得るように、ラチェットを十分考慮して設計されてもよい。
図9は、2つのセクション104及び106に分けられた更なるインプラントドライバ100’を示す。第1のセクション104は円筒形の設計である。その外殻表面108に沿って複数の凹部102’が配置される。第2のセクション106は円錐台形の設計であり、その端に、ここでは概略的に示す医療ツールのためのレセプタクル110を含む。
ハンドル2の構成及びその数に関しては、独国特許出願第102011052422号明細書の図5a、図5b、図5c、及び図7a、図7b、図7c、並びに関連する説明を参照されたい。
説明した実施形態に加えて、本発明は更なる設計アプローチも考慮に入れる。
ピボットハウジングのピボット軸とハンドルの長手方向軸とは、互いに間隔をあけられてもよい。ピボットハウジングは従って、ハンドルに対してある角度をなして構成されてもよい。ラチェットのこの有利な設計を使用すれば、ピボット軸が長手方向軸から間隔をあけられていることにより、ユーザが、到達するのが困難な場所において、特に臼歯の領域において作業することが可能になる。ピボットハウジングのピボット軸とハンドルの長手方向軸とは、交差してもよい。
ピボットハウジングのピボット軸とハンドルの長手方向軸とは、長手方向軸を基準にして30°〜150°の、好ましくは60°〜120°の、特に好ましくは90°の角度で交差してもよい。この設計は、特に、到達するのが困難な領域の場合の、インプラントドライバ上へのラチェットの配置のための利点を有する。ピボットハウジングとハンドルとの間に固定可能な継手(securable joint)を配置して、角度の連続的調節を必要に応じて可能にすることが、容易に可能である。螺旋の角度寸法(アーク長)がより大きければ、レンチに対するより多くのピッチが可能である。
ピボット軸Dに対して少なくとも垂直方向で部分的に弾性及び/又は可撓性であるバネ状の移行部が、例えば、ハンドル2とピボットハウジング4との間に形成されてもよい。移行部は蛇行パターンで形成されてもよい。この設計は、インプラントドライバ100上への一体成形のラチェット1の配置のために有利である。
前述の実施形態では、ラチェットは一体成形構成であるが、ラチェットはいくつかの部品で形成されてもよい。
ピボット軸に面した縁が滑らかであるように形成され、トルク伝達は単に1つの突起によって、又は圧縮された螺旋により引き起こされるバネ力によって行われるようにすることも更に可能である。
設計サイズに応じて、ラチェット1の厚さdは随意選択で0.5mm〜5mm、好ましくは1mm〜4mm、特に好ましくは2.5mmという寸法であってもよい。
より良好な取り扱いのために、ハンドルは鋸歯状であってもよく又は構造化されてもよい。ハンドルは円筒形の設計であるが、三角形、正方形、長方形の断面などを有してもよい。
螺旋内に少なくとも1つの突起が形成されてもよいが、対応する点状の凹部を設けること、及び対応する突起をインプラントドライバに設けることも可能である。更に、螺旋に沿って凹部と突起とを組み合わせることも考えられる。
螺旋は平面内で巻かれるが、更なる発展した螺旋はいくつかの面にわたって(3次元的に)巻かれてもよく、これによりピボット軸に面した螺旋の一方の縁は、360°を超える囲み角を有してインプラントドライバを囲む。
凹部は外殻表面に沿って周期的な間隔を有して延在するが、凹部は非周期的に形成されてもよい。
突起は硬化されるが、軟化焼鈍されてもよい。
凹部13.2はピボット軸Dに面した螺旋の側面上で得られる必要はなく、代替として又は補足として、ピボット軸Dから離れる方を向いた螺旋の側面及び/又は面上に配置されてもよい。しかし簡略化された設計では、この凹部13.2は省略されてもよい。
伝達されるトルクは、例えば、突起の高さと、ピボット軸から離れる方を向いた凹部の深さとの組み合わせに依存してもよい。トルク伝達の間、この凹部は、突起に至る螺旋の隣接する領域及び/又はセクションまでの、及び場合によっては突起自体までの十分な間隔を可能にし、これにより、ことによると過度に大きなトルクが伝達されるときにインプラントドライバから離れる方にはね返り、このようにしてトルク制限を可能にする。
凹部はピボット軸に面した面上に形成されるが、ラチェットの表側において形成されてもよい。これにより、狭い空間の場合にラチェットをより柔軟に使用することが可能になる。
ラチェットを製造する代替の方法は、最初に、材料ブロックの形態のブランクが選択されるように行われてもよい。これは次に、ラチェットの所望の輪郭が形成されるように加工されてもよい。続いて、ラチェットの輪郭を含む材料ブロックは、厚さdを有する個々のラチェットに分離される。必要に応じて、分離されたラチェットは更に処理されてもよい。これに関して、レーザ切断、水ジェット切断、ワイヤ浸食、スパーク浸食、又はパンチングが使用されてもよい。
上記では、医療分野、特に歯科分野のためのラチェット1について説明したが、ラチェット1は、例えば宇宙飛行、半導体製造などの、清浄度に対する高い要求を有する分野においても使用されてもよい。
ラチェットが、特に外科的介入のためのラチェット又は歯科用ラチェットが提供され、ここでラチェットはハンドルとその上に配置されたピボットハウジングとを有し、前記ピボットハウジングは平坦な螺旋である。螺旋は可撓性であり、ピボット軸Dに対して実質的に垂直方向を向いた面内で螺旋が巻かれるように作動させられてもよい。本発明はまた、ラチェットとインプラントドライバとを含むトルク伝達システムに関する。インプラントドライバは、円筒形である第1の部分と、円筒形又は円錐台形である第2の部分とを有し、第2の部分は、医療ツール、外科的インプラント、又はその他の任意の物体のためのレセプタクルを加えて有する。このようにして、改良されたラチェットであって、加えられるべきトルクがこれを用いて調節された様態でインプラントドライバに加えられることが可能な、改良されたラチェットが得られる。