ワイヤレスマイクロホン、無線ギター送信機又は無線ポケット送信機において、例えば使用されるような高周波送信機は、典型的には、複数のオーディオ信号の送信のために、複数のHF無線信号を無線送信するための高周波送信出力段を備えている。
図1は、従来技術に係る高周波送信機の概略ブロック回路図を示す。高周波送信機500は、入力INと、出力OUTと、送信機出力段又は電力増幅器40と、動作点調整部20とを備える。調整可能な減衰器10の入力信号は、入力信号INを表す。調整可能な減衰器10の出力信号は、増幅器又は送信機出力段40に結合される。送信アンテナ70(又はその複数)は出力OUTにおいて提供される。その点では、外部の高周波HF送信機の別の送信アンテナ80から送信アンテナ70を介して送信機出力段40において複数の無線信号(複数の高周波信号)が影響を与える可能性がある。そのような状況は、2つ又はそれ以上のモバイル送信機は空間的に互いに接近する場合に発生することができ、もしくは、例えば、静止送信機(移動式携帯電話、テレビ送信機等)がある環境でモバイル送信機が動作したときに起こりうる。図1に示される状況は、高周波送信機50から送信される高周波信号との相互作用をもたらし、これにより望ましくない二次放射(secondary emissions)の発生につながる可能性がある。従って、もし高周波送信機50がバッテリモードで動作しており、送信機出力段40が典型的には高周波送信機500の消費電力を低減するために、非線形動作点で動作させた場合、その状況はさらに悪化する可能性がある。
望ましくない二次放射を減少させるために、送信機出力段40内の送信トランジスタの動作点電力はできるだけ高くなるように選択することができる。特に、動作点電力が固定的に設定され、すなわち、それは動作点電力が可変ではない場合である。動作点電力の変化は、動作点電力における温度及び/又は許容誤差を誘起するゆらぎに関して補償の方法得でのみ実施することができる。その方法においては、送信トランジスタが永久に高いP1dB圧縮点を持っていることを確実にすることができる。そのような高いP1dB圧縮点は低い二次放射をもたらす。一方、恒久的に高いP1dB圧縮点は、高電力を要求するという欠点がある。そして、高電力の要求は、バッテリ駆動の送信機に対して動作時間の減少をもたらす。
特許文献1は、入力又は出力の方向性結合器を有する送信機出力段を開示している。送信機の送信電力の一部は方向性結合器によって結合されて出力され、整流される。送信トランジスタのバイアス電圧は整流して得られる直流電圧に依存して変化する。換言すれば、バイアス電圧は、特定の送信出力電力のレベルに依存して変更される。
特許文献2は、高周波HF送信機の増幅器が開示されている。方向性結合器は、出力送信電力を検出する。送信電力は、送信周波数において電力検出器を用いて送信電力を検出することに代えて、送信信号をより低い周波数に混合することによって検出される。それは低い周波数での送信電力を測定することが容易であるのでそれがなされる。
優先権主張されたドイツ国特許出願において、ドイツ国特許庁は、以下の公報を検索した。特許文献3、4及び5。
本発明の目的は、望ましくない二次放射の放出を低減し、かつ、送信機の電力消費を低減する改良された高周波送信機を提供することにある。
上記目的は請求項1に記載の高周波送信機によって達成される。
このように(ワイヤレスマイクロホン、ギター送信機又はポケット送信機のための)高周波送信機が提供される。上記送信機は、少なくとも1つのアンテナと、送信すべき高周波信号を増幅する電力増幅器と、上記アンテナを介して結合された干渉信号を検出する干渉信号検出部と、上記干渉信号検出部によって検出された複数の干渉信号の電力を検出する電力検出器と、上記アンテナを介して結合される干渉電力に依存して上記電力増幅器の動作点電力を調整する動作点調整部とを備える。動作点電力の調整は、例えば、送信出力段に含まれる送信トランジスタのバイアス及び/又はドレイン又はコレクタの調整により達成できる。
本発明の一態様によれば、上記干渉信号検出部は、上記電力増幅器の出力と上記送信機の出力との間に設けられ、送信アンテナを介して結合された干渉電力を検出する方向性結合器を備える。
本発明の別の態様によれば、上記干渉信号検出部は、上記電力増幅器の入力信号と出力信号を混合するミキサを備える。上記電力増幅器の出力信号はまた、送信アンテナを介して結合される干渉電力を有する。上記ミキサの出力信号は送信アンテナによって結合される干渉電力を含む。
本発明の別の態様によれば、動作点調整部は、アンテナを介して結合された干渉電力がしきい値を超えたとき電力増幅器の動作点電力を増大させ、干渉電力がしきい値未満に低下したときに上記動作点電力を減少させるように適合される。
本発明の別の態様によれば、動作点調整部は、アンテナを介して結合された干渉電力に依存して電力増幅器の動作点電力を調整するように適合され、上記動作点電力は、干渉電力が増加するにつれて増大され、干渉電力が減少するにつれて減少される。
本発明の別の態様によれば、電力変圧器の動作点電力の調整は、種々のステップ(段階)で又はステップ(段階)なしで達成される。
本発明の別の態様によれば、送信機は、送信機の入力と電力増幅器の入力との間に設けられ、上記電力検出器によって検出される干渉電力に依存して電力増幅器の入力電力を制御する調整可能な減衰器を備える。
電力増幅器は入力信号INを受信する。その信号の周波数は高周波HFの範囲内であることが好ましい。有用な信号を送信するために、入力信号INは変調された高周波HF信号を表すことができる。この場合において、送信すべき有用な信号は、入力信号INとして電力増幅器に供給される前に、高周波HF信号の変調のために使用される。有用な信号は、例えば、オーディオ信号を表すことができる。あるいはそれは、例えば、デジタル符号化情報を含むか、又はテレビ信号を表すことができる。有用信号の別の種類は、本発明の適用領域に含まれている。
本発明はまた、高周波信号を送信する方法に関する。送信すべき高周波信号は、電力増幅器で増幅される。アンテナを介して結合される外部干渉信号(すなわち、外部の高周波送信機からの干渉信号ということもある)は干渉信号検出部により検出される。干渉信号検出部により検出された複数の干渉信号の電力は電力検出器によって検出される。電力増幅器の動作点電力は、電力検出器により検出される複数の干渉信号の電力に依存して動作点調整部により調整される。
本発明は、動作点電力(電流及び電圧)の動的調整の概念に基づく、すなわち、アンテナにおいて結合される複数の外部高周波信号(複数の干渉信号)のレベル又は電力に依存してP1dB圧縮点の動的調整の概念に基づいている。その点では、高結合されて入力された外来の複数の高周波信号(すなわち、高電力である)は高い動作点電力をもたらし、低結合されて入力された複数の高周波信号は低い動作点電力をもたらす。その点において、動作点電力の高レベルは送信機出力段(電力増幅器40)の増加された線形性をもたらし、これにより、二次放射の減少をもたらす。
本発明は、例えば、ワイヤレスマイクロホン、無線ギター送信機又は無線ポケット送信機のための高周波HF送信機を提供するという概念に関し、ここで、高周波HF送信機は調整可能な複数の動作点を有する増幅器を有する。オプショナルで、増幅器とアンテナとの間に方向性結合器を設けることができ、当該方向性結合器は、増幅器から送信されるべき複数の出力信号を検出しないが、隣接する他の外部の複数の高周波HF送信機からアンテナを介して受信され又は結合された干渉を検出し、また、これらの信号に基づいて増幅器の動作点又は増幅器の動作点電力を調整することができる。もしアンテナによって受信されて結合された干渉がもはや存在しない場合は、動作点電力が高周波HF送信機の電力消費に関して正の効果を有し、再び減少させることができる。送信機の動作点の動的調整のおかげで、最大動作点電力は、干渉電力の高レベルで結合又はアンテナを介して受信された場合にのみ設定されている。これらの干渉電力がもはや存在している場合には、動作点電力を低減することができない。
本発明のさらなる構成は、従属請求項の主題である。
本発明の一例として、利点及び実施形態が、図面を参照してより詳細に説明されている。
図2は、第1の実施形態に係る高周波HF送信機の概略ブロック回路図を示す。その入力INにおいて、高周波送信機100は、調整可能な減衰器(又は調整可能な増幅器)10と、電力増幅器(送信機出力段)40と、動作点調整部20とを備え、オプショナルで電力増幅器40の出力において方向性結合器60を備え、オプショナルで方向性結合器60の出力において電力検出器50を備える。電力検出器50の出力は、調整可能な減衰器10及び動作点調整部20に結合される。電力増幅器40の出力は、送信アンテナ70に結合される。
方向性結合器60は、それが電力増幅器40から送信される出力信号(すなわち、複数の出力信号といえる)を検出しないが、アンテナ70によって受信され又は結合される、それらの複数の干渉信号(外来の高周波HF送信機からの複数の高周波HF信号)を検出するように設計される。アンテナ70によって結合される干渉電力(すなわち、アンテナによって結合され、例えば隣接する他の複数の高周波HF送信機によって生成されている外部の複数の高周波HF信号といえる)は方向性結合器60の手段によって結合されて出力され、電力検出器50によって検出される。電力増幅器40の動作点電力は電力検出器50によって検出された干渉電力のレベルに依存して調整される。そのことは、動作点調整部20によって行われる。調整可能な減衰器又は調整可能な増幅器10は電力増幅器40の出力電力を一定に保持するように動作する。つまり、そのことは、調整可能な減衰器10によって調整される、電力増幅器40の入力電力によって行われる。
本発明によれば、方向性結合器60は、送信アンテナ70によって結合される干渉電力又は信号を検出する。従って、方向性結合器60は送信される電力増幅器40の出力電力を検出しない。さらに、アンテナ70によって結合される干渉電力(結合されて入力される外部の複数の高周波HF信号)は方向性結合器60及び電力検出器50の手段によって検出され、動作点調整部20に入力される。(アンテナ70に結合された)検出された干渉電力に基づいて、電力増幅器40の動作点電力は調整される。電力増幅器40の動作点は動作点電力の調整により調整することができる。
実際に検出され又は結合される干渉電力が方向性結合器60及び電流検出器50の手段により検出できるという事実のおかげで、干渉電力の発生期間(動作点電力が増大する可能性がある期間)において動作点調整部20を用いて動作点が適応化される。電力増幅器の線形性はまた増加された動作点電力により増大させることができる。従って、電力増幅器40の1dB圧縮点(P1dB)は結合されて入力された干渉電力に依存して動的に調整することができる。
電力増幅器の総合利得が可変動作点電力を用いて一定に保つことができるように、増幅器の入力電力は、結合されて入力された干渉電力に依存して調整可能な減衰器10によって調整することができる。
本発明に係る高周波HF送信機のおかげで、互いに相対的に隣接する複数の無線送信機の空間的な近接のために、二次放射を回避することができ、電力増幅器40は動作点電力の増大による動作点調整の提供により非常に高い線形性で動作することができる。線形性における増大は増大される電力の要求を含むので、電力増幅器40の線形性における当該増大は、アンテナを介して結合される干渉電力がしきい値を超えるときにのみおこる。それに対する代替例として、当該電力は、結合されて入力される干渉電力のレベルに依存してステップなしで(自動的に)調整することができる。
動作点電力の恒久的な増加は、特にモバイルデバイス及びバッテリ駆動デバイスに関して望ましくない。従って、増加される動作点電力は、それが実際に必要な場合にのみ提供されるように、電力増幅器40の増加した直線性及び増加した動作点電力との間で比較評価することが必要である。
図3は、第2実施形態に係る高周波HF送信機の概略ブロック回路図を示す。その入力INにおいて、高周波HF送信機200は、調整可能な減衰器10と、電力増幅器40と、動作点調整部20と、電力増幅器40と、電力増幅器40と並列関係にあるミキサ65と、電力検出器50とを備える。調整可能な減衰器10は、電力増幅器40の入力に連結される。調整可能な減衰器10の出力と、電力増幅器40の出力とは、ミキサ65に結合される。ミキサ65の出力信号はバンドパスフィルタ55によってフィルタリングすることができる。電力検出器50の出力信号は、オプショナルで調整可能な減衰器10及び動作点調整部20に入力することができる。
アンテナ70を介して結合されて入力される外来の高周波電力は送信信号とともにミキサ65に供給され、増幅されない送信信号と混合される。外来の高周波信号はミキサ65において混合することによりベースバンドに混合される。和の周波数及び積の周波数における複数の積は、バンドパスフィルタ55により除去される。ベースバンドに混合された外来の高周波信号は電力検出器50に供給され、電力検出器50は外来の高周波電力に依存してDC電圧を生成する。動作点電力はDC電圧のレベルに依存して動作点調整部20によって調整される。動作点電力の変動により発生する送信トランジスタの利得における変化は減衰器10によって補償することができる。
純粋の干渉信号はミキサ65において混合することにより得ることができる。電力増幅器40の動作点電力は干渉電力のレベルに依存して、特に動作点調整部20により調整される。入力電力は、出力電力を一定に保持することができるように調整可能な減衰器10の手段により調整される。
図4は、第3の実施形態に係る高周波HF送信機の概略ブロック回路図を示す。第3の実施形態に係る高周波HF送信機は、第1又は第2の実施形態に係る高周波HF送信機に基づいて構成できる。高周波HF送信機300は、入力INと、調整可能な減衰器10と、電力増幅器40と、動作点調整部20と、送信アンテナ70と、受信アンテナ85とを備える。受信アンテナ85は電力検出器50に結合することができる。電力検出器50の出力は、調整可能な減衰器10及び動作点調整部20に結合することができる。第1及び第2の実施形態に係る高周波HF送信機とは対照的に、アンテナ70の出力信号は干渉電力の検出のための基礎としては使用されない。むしろ、アンテナ85は受信アンテナとして用いられ、その場合において結合されて入力される複数の干渉信号は電力検出器50に入力され、そのときこれに応じて、受信された外来の高周波HF信号の各電力を検出して確認することができる。次いで、送信出力段40の動作点電力の調整は、第1及び第2の実施形態において説明したように達成される。
図5は、第4の実施形態に係る高周波HF送信機の概略ブロック回路図を示す。第4の実施形態に係る高周波HF送信機は、第2又は第3の実施形態に係る高周波HF送信機に基づいて構成することができる。第3の実施形態に係る高周波HF送信機の場合と同様に、送信アンテナ70に加えて受信アンテナ85を備える。ミキサ65は、電力増幅器40の入力及び受信アンテナ85に結合されて2つの信号の混合を行う。ミキサ65の出力はオプショナルでバンドパスフィルタ55に入力される。次いで、バンドパスフィルタ55の出力信号は電力検出器50に入力される。
第2及び第4の実施形態に係る高周波HF送信機では、アンテナ70,85を介して結合されて入力される外来の高周波電力(干渉電力)は実際の送信信号とともにミキサ65に供給され、増幅されない送信信号とともに混合される。外来の高周波信号は混合動作によってベースバンドに混合される。和の周波数及び差の周波数における複数の積はバンドパスフィルタ55によって除去することができる。ベースバンドに混合された外来の高周波信号は電力検出器50に供給され、電力検出器50は外来の高周波電力(干渉電力)に依存してDC電圧を生成する。DC電圧のレベルに依存して、動作点電力は動作点調整部20により調整される。もし利得における変化が発生すれば、減衰器10によって補償することができる。
図4の第3の実施形態に係る高周波HF送信機において、別の受信アンテナ85の提供により方向性結合器60を省略することができる。
図6は第5実施形態に係るワイヤレスマイクロホンの模式図を示す。ワイヤレスマイクロホン1は、例えばマイクロホンヘッド1aにおいて、複数のオーディオ信号(音声信号)を検出するためのマイクロホンカプセル620を有する。さらに、ワイヤレスマイクロホンは、例えば、第1の実施形態に係る高周波HF送信機である、無線送信機610を有している。無線送信機610の出力はアンテナ30に結合される。第5の実施形態に係る無線送信機610は、第1、第2、第3又は第4の実施形態に係る高周波HF送信機に基づいて構成できる。
図7は、第6の実施形態に係る、無線ギター送信機又は無線ポケット送信機の概略図を示す。無線ギター送信機又は無線ポケット送信機2は、オーディオ(音声)入力2aと、アンテナ30と、無線送信機610とを備える。第6の実施形態に係る高周波HF送信機610は、この場合において、第1、第2、第3又は第4の実施形態に係る高周波HF送信機に対応する。例えばマイクロホン、もしくは例えば、ギターのような楽器はオーディオ入力2aに接続することができる。オーディオ入力2aにより受信された複数のオーディオ信号は高周波HF送信機610及び送信アンテナ30を介して無線送信される。
図8は、種々の干渉電力レベルでの電力増幅器40の1dB圧縮点の適合の概略図を示している。図8は、特に、結合されて入力された外来の高周波電力と、送信出力段のP1dB圧縮点との関係を示す。
図9は、図2〜図5において図示された送信機におけるあるトランジスタの種々の出力特性曲線のファミリーを示すグラフである。図9は、グラフ形式で、ドレイン・ソース間電圧Udsと、ドレイン・ソース間電流Idsとを示す。当該図はさらに、一定の負荷抵抗における一定の出力電力を有する電力増幅器40の種々の動作点A−Dを示す。動作点A,B,C又はDはアンテナ70によって結合される干渉電力のレベルに従って選択される。複数の動作点のシフトのおかげで、電力増幅器40の1dB圧縮点を遷移させることでき、この場合において、電力増幅器40の出力電力は一定に維持することができる。
図9はまた、一定の負荷インピーダンスを持つ種々の負荷直線を示す。もし出力電力が一定である場合、送信出力段の送信機の動作点電力は、検出された干渉電力のレベル(検出された外来の高周波電力)に従って調整される。もし動作点電力の変化があるときは、電力増幅器40又は送信トランジスタの利得において変化があり、調整可能な減衰器10によって補償することができる。
図10は、本発明に係る送信出力段の種々の動作点を例示するためのグラフを示す。特に、当該図は、一定の負荷抵抗で一定の出力電力を有する送信トランジスタの種々の動作点を示す。結合されて入力された干渉電力が存在する場合、動作点を調整し、又は(B及びCを経由して)AからDに向かって調整又はシフトできる。その場合において、そのような調整は、測定された又は結合されて入力された干渉電力のレベルに応じて行われる。送信出力段のP1dB圧縮点は動作点A−Dにおけるそのようなシフトによりシフトされる。その場合において、出力電力は一定に保持されたままである。
本発明に係る高周波送信機は、例えば、ワイヤレスマイクロホン、無線ギター送信機又は無線ポケット送信機において使用することができる。