JP2015502922A - 二酸化炭素と水素との反応によるギ酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、二酸化炭素と水との反応によるギ酸の製造方法に関する。
Description
本発明は、ギ酸の製造方法であって、周期表第8族、第9族または第10族の少なくとも1つの元素、および少なくとも13個の炭素原子を有する少なくとも1つの有機基を有する少なくとも1つのホスフィン配位子を含んでいる、触媒である遷移金属錯体化合物、第三級アミン、ならびに極性溶剤の存在下に、引き続き熱により分解されてギ酸および相応の第三級アミンになるギ酸−アミン付加物の形成下での、水素化反応器における二酸化炭素と水素との反応による前記方法に関する。
ギ酸と第三級アミンとからの付加物は、熱により遊離ギ酸と第三級アミンとに分解することができ、それゆえ、ギ酸の製造において中間生成物として用いられる。
ギ酸は、重要かつ広範囲に使用可能な生成物である。ギ酸は、例えば、飼料の製造での酸性化に、保存料として、殺菌剤として、テキスタイル産業および皮革産業における助剤として、航空機および離着陸用滑走路の霜取りのためのギ酸塩との混合物として、ならびに化学産業での合成構成要素として使用される。
前記ギ酸と第三級アミンとからの付加物は、様々な方法で製造することができ、例えば、(i)第三級アミンとギ酸との直接反応により、(ii)第三級アミンの存在下でギ酸メチルを加水分解してギ酸にすることにより、(iii)第三級アミンの存在下で一酸化炭素の触媒による水和反応により、または(iv)第三級アミンの存在下で二酸化炭素を水素化してギ酸にすることにより、製造することができる。最後に挙げられた二酸化炭素の触媒による水素化法は、二酸化炭素が大量に得られること、およびその源に関して適応性があるという特別な利点を有している。
WO2010/149507は、第三級アミン、遷移金属触媒、および静電係数(elektrostatischen Faktor)200×10-30Cm以上の高沸点極性溶剤、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、1,5−ペンタジオール、1,6−ヘキサンジオールおよびグリセリンの存在下での、二酸化炭素の水素化によるギ酸の製造方法を記載している。ギ酸−アミン付加物、第三級アミン、高沸点極性溶剤および触媒を含んでいる反応混合物が得られる。
前記反応混合物は、WO2010/149507によれば、以下の工程により後処理される:
1)第三級アミンおよび前記触媒を含んでいる上相、ならびにギ酸−アミン付加物、前記高沸点極性溶剤および前記触媒の残分を含んでいる下相の取得下での、前記反応混合物の相分離;前記上相の水素化への返送
2)第三級アミンおよび前記触媒の残分を含んでいる抽出物、ならびに前記高沸点極性溶剤およびギ酸−アミン付加物を含んでいるラフィネートの取得下での、第三級アミンによる前記下相の抽出;前記抽出物の水素化への返送
3)ギ酸を含んでいる蒸留物、ならびに遊離第三級アミンおよび前記高沸点極性溶剤を含んでいる塔底混合物の取得下での、蒸留塔における前記ラフィネートの熱分解;前記高沸点極性溶剤の水素化への返送。
1)第三級アミンおよび前記触媒を含んでいる上相、ならびにギ酸−アミン付加物、前記高沸点極性溶剤および前記触媒の残分を含んでいる下相の取得下での、前記反応混合物の相分離;前記上相の水素化への返送
2)第三級アミンおよび前記触媒の残分を含んでいる抽出物、ならびに前記高沸点極性溶剤およびギ酸−アミン付加物を含んでいるラフィネートの取得下での、第三級アミンによる前記下相の抽出;前記抽出物の水素化への返送
3)ギ酸を含んでいる蒸留物、ならびに遊離第三級アミンおよび前記高沸点極性溶剤を含んでいる塔底混合物の取得下での、蒸留塔における前記ラフィネートの熱分解;前記高沸点極性溶剤の水素化への返送。
WO2010/149507の方法では、前記触媒の分離が、相分離(工程1))および抽出(工程2))にもかかわらず完全にできないため、前記ラフィネート中に含まれている少量の触媒が、工程3)の蒸留塔における熱分解で、ギ酸−アミン付加物の、二酸化炭素と水素と第三級アミンとへの逆反応を以下の反応式により触媒作用しうることが好ましくない:
前記逆反応は、ギ酸と第三級アミンとからの付加物の収率を明らかに低下させ、それにより目的生成物のギ酸の収率を低下させる。
さらに、蒸留塔内でのギ酸−アミン付加物の熱分解において、形成されたギ酸が、高沸点極性溶剤(ジオールおよびポリオール)でエステル化されることが好ましくない。これは、目的生成物であるギ酸の収率のさらなる低下をもたらす。
本発明の課題は、二酸化炭素の水素化によるギ酸の製造方法を提供することであり、この方法により、触媒のほぼ完全な分離が可能になる。この新規の方法は、先行技術の前記欠点を有していない、または明らかに減少した程度でしか有しておらず、高収率および高純度の濃縮されたギ酸をもたらすものである。さらに、前記方法は、先行技術に記載されているよりも簡単な処理操作、特に水素化反応器からの流出物を後処理するためのより簡単な工程構想、より簡単な工程段階、より少ない工程段階の数またはより簡単な装置を可能にする。さらに、前記方法は、できる限り低い所要エネルギーで実施できるものでもある。
本課題は、以下の工程
(a)二酸化炭素、水素、少なくとも1つの、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノールおよび水からなる群から選択される極性溶剤、ならびに一般式(A1)
[式中、
R1、R2、R3は、互いに独立して、それぞれ1〜16個の炭素原子を有する非分岐鎖または分岐鎖の、非環式または環式の、脂肪族基、芳香脂肪族基または芳香族基を表していて、ここで、個々の炭素原子は、互いに独立して、−O−基および>N−基から選択されるヘテロ基により置換されていてもよく、ならびに2つまたは3つのすべての基が、少なくともそれぞれ4個の原子を含んでいる鎖の形成下に互いに結合しあっていてもよい]
の第三級アミンを含んでいる反応混合物(Reaktionsgemisch(Rg))を、
周期表第8族、第9族および第10族から選択される少なくとも1つの元素、ならびに少なくとも13個の炭素原子を有する少なくとも1つの有機基を有する少なくとも1つのホスフィン配位子を含んでいる、触媒である少なくとも1つの遷移金属錯体化合物の存在下に、
水素化反応器において、
前記触媒および第三級アミン(A1)を含んでいる上相(O1)、および、
前記少なくとも1つの極性溶剤、前記触媒の残分、ならびに一般式(A2)
[式中、
xiは、0.4〜5の範囲にあり、および
R1、R2、R3は、前述の意味を有する]
のギ酸−アミン付加物を含んでいる下相(U1)
を含んでいる2相の水素化混合物(H)の、場合により水の添加後の、取得下に、
均一触媒により反応させる工程、
(b)工程(a)で得られた水素化混合物(H)を、以下の工程
(b1)工程(a)で得られた水素化混合物(H)を、第一相分離装置において上相(O1)と下相(U1)とに相分離する工程、
または、
(b2)前記触媒を、抽出装置において、第三級アミン(A1)を含んでいる抽出剤によって、
ギ酸−アミン付加物(A2)および前記少なくとも1つの極性溶剤を含んでいるラフィネート(R1)、ならびに
第三級アミン(A1)および前記触媒を含んでいる抽出物(E1)
の取得下に、工程(a)で得られた水素化混合物(H)から抽出する工程、
または、
(b3)工程(a)で得られた水素化混合物(H)を、第一相分離装置において、上相(O1)と下相(U1)とに相分離して、前記触媒の残分を抽出装置において第三級アミン(A1)を含んでいる抽出剤によって、
ギ酸−アミン付加物(A2)および前記少なくとも1つの極性溶剤を含んでいるラフィネート(R2)、ならびに
第三級アミン(A1)および前記触媒の残分を含んでいる抽出物(E2)
の取得下に、下相(U1)から抽出する工程、
により後処理する工程、
(c)前記少なくとも1つの極性溶剤を、下相(U1)から、ラフィネート(R1)から、またはラフィネート(R2)から、第一蒸留装置において、
工程(a)の水素化反応器に返送される前記少なくとも1つの極性溶剤を含んでいる蒸留物(D1)、ならびに
第三級アミン(A1)を含んでいる上相(O2)およびギ酸−アミン付加物(A2)を含んでいる下相(U2)
を含んでいる2相の塔底混合物(S1)
の取得下に、分離する工程、
(d)場合により、工程(c)で得られた塔底混合物(S1)を、第二相分離装置において上相(O2)と下相(U2)とに相分離することにより後処理する工程、
(e)塔底混合物(S1)もしくは場合により下相(U2)に含まれているギ酸−アミン付加物(A2)を、熱分解装置において、工程(a)の水素化反応器に返送される相応の第三級アミン(A1)および前記熱分解装置から排出されるギ酸の取得下に、分解する工程、
を含んでいるギ酸の製造方法により解決される。
(a)二酸化炭素、水素、少なくとも1つの、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノールおよび水からなる群から選択される極性溶剤、ならびに一般式(A1)
R1、R2、R3は、互いに独立して、それぞれ1〜16個の炭素原子を有する非分岐鎖または分岐鎖の、非環式または環式の、脂肪族基、芳香脂肪族基または芳香族基を表していて、ここで、個々の炭素原子は、互いに独立して、−O−基および>N−基から選択されるヘテロ基により置換されていてもよく、ならびに2つまたは3つのすべての基が、少なくともそれぞれ4個の原子を含んでいる鎖の形成下に互いに結合しあっていてもよい]
の第三級アミンを含んでいる反応混合物(Reaktionsgemisch(Rg))を、
周期表第8族、第9族および第10族から選択される少なくとも1つの元素、ならびに少なくとも13個の炭素原子を有する少なくとも1つの有機基を有する少なくとも1つのホスフィン配位子を含んでいる、触媒である少なくとも1つの遷移金属錯体化合物の存在下に、
水素化反応器において、
前記触媒および第三級アミン(A1)を含んでいる上相(O1)、および、
前記少なくとも1つの極性溶剤、前記触媒の残分、ならびに一般式(A2)
xiは、0.4〜5の範囲にあり、および
R1、R2、R3は、前述の意味を有する]
のギ酸−アミン付加物を含んでいる下相(U1)
を含んでいる2相の水素化混合物(H)の、場合により水の添加後の、取得下に、
均一触媒により反応させる工程、
(b)工程(a)で得られた水素化混合物(H)を、以下の工程
(b1)工程(a)で得られた水素化混合物(H)を、第一相分離装置において上相(O1)と下相(U1)とに相分離する工程、
または、
(b2)前記触媒を、抽出装置において、第三級アミン(A1)を含んでいる抽出剤によって、
ギ酸−アミン付加物(A2)および前記少なくとも1つの極性溶剤を含んでいるラフィネート(R1)、ならびに
第三級アミン(A1)および前記触媒を含んでいる抽出物(E1)
の取得下に、工程(a)で得られた水素化混合物(H)から抽出する工程、
または、
(b3)工程(a)で得られた水素化混合物(H)を、第一相分離装置において、上相(O1)と下相(U1)とに相分離して、前記触媒の残分を抽出装置において第三級アミン(A1)を含んでいる抽出剤によって、
ギ酸−アミン付加物(A2)および前記少なくとも1つの極性溶剤を含んでいるラフィネート(R2)、ならびに
第三級アミン(A1)および前記触媒の残分を含んでいる抽出物(E2)
の取得下に、下相(U1)から抽出する工程、
により後処理する工程、
(c)前記少なくとも1つの極性溶剤を、下相(U1)から、ラフィネート(R1)から、またはラフィネート(R2)から、第一蒸留装置において、
工程(a)の水素化反応器に返送される前記少なくとも1つの極性溶剤を含んでいる蒸留物(D1)、ならびに
第三級アミン(A1)を含んでいる上相(O2)およびギ酸−アミン付加物(A2)を含んでいる下相(U2)
を含んでいる2相の塔底混合物(S1)
の取得下に、分離する工程、
(d)場合により、工程(c)で得られた塔底混合物(S1)を、第二相分離装置において上相(O2)と下相(U2)とに相分離することにより後処理する工程、
(e)塔底混合物(S1)もしくは場合により下相(U2)に含まれているギ酸−アミン付加物(A2)を、熱分解装置において、工程(a)の水素化反応器に返送される相応の第三級アミン(A1)および前記熱分解装置から排出されるギ酸の取得下に、分解する工程、
を含んでいるギ酸の製造方法により解決される。
本発明による方法によって、ギ酸が高い収率で得られることが確認された。本発明による方法は、触媒として使用される遷移金属錯体化合物を、先行技術と比べてより有効に分離すること、ならびに前記化合物を工程(a)の水素化反応器に返送することを可能にする。これにより、ギ酸−アミン付加物(A2)の逆反応がほぼ阻止され、ギ酸収率が上昇する。それに加えて、本発明により使用される極性溶剤の分離により、工程(e)の熱分解装置で得られるギ酸のエステル化が阻止され、同じくギ酸収率が上昇する。さらに、驚くべきことに、本発明による極性溶剤の使用は、工程(a)で得られる水素化混合物(H)中のギ酸−アミン付加物(A2)の濃度を、(WO2010/149507で使用された高沸点極性溶剤と比べて)上昇させることが確認された。
これにより、比較的小さな反応器の使用が可能になり、これまた同様に費用の節約をもたらす。
「工程」および「工程段階」という概念は、以下において同義に用いられる。
ギ酸−アミン付加物(A2)の製造;工程段階(a)
本発明による方法では、工程段階(a)において、水素化反応器内で、二酸化炭素、水素、少なくとも1つの、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノールおよび水からなる群から選択される極性溶剤、ならびに一般式(A1)の第三級アミンを含んでいる反応混合物(Rg)を反応させる。この反応は、触媒の存在下に行われる。触媒として、周期表第8族、第9族および第10族から選択される少なくとも1つの元素、ならびに少なくとも13個の炭素原子を有する少なくとも1つのホスフィン配位子を含んでいる、少なくとも1つの遷移金属錯体化合物が使用される。
本発明による方法では、工程段階(a)において、水素化反応器内で、二酸化炭素、水素、少なくとも1つの、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノールおよび水からなる群から選択される極性溶剤、ならびに一般式(A1)の第三級アミンを含んでいる反応混合物(Rg)を反応させる。この反応は、触媒の存在下に行われる。触媒として、周期表第8族、第9族および第10族から選択される少なくとも1つの元素、ならびに少なくとも13個の炭素原子を有する少なくとも1つのホスフィン配位子を含んでいる、少なくとも1つの遷移金属錯体化合物が使用される。
工程段階(a)で使用される二酸化炭素は、固体、液体または気体であってよい。大規模工業的に入手可能な、二酸化炭素を含んでいる混合気体が、一酸化炭素をほとんど含んでいない場合(CO体積分率1%未満)、前記混合気体を使用することも可能である。工程段階(a)の二酸化炭素の水素化で使用される水素は、一般に気体である。二酸化炭素および水素は、不活性ガス、例えば、窒素または希ガスを含んでいてもよい。しかし、その含有量が、水素化反応器中の二酸化炭素および水素の総量に対して10mol%未満であるのが有利である。確かに、比較的多い量は、場合により同様に許容可能であるが、しかし、一般に、前記反応器内の比較的高い圧力の使用を制限し、これにより、さらなる圧縮エネルギーが必要となる。
二酸化炭素および水素は、別個の流として工程段階(a)に導入してよい。二酸化炭素および水素を含んでいる混合物を工程段階(a)で使用することも可能である。
本発明による方法において、工程段階(a)における二酸化炭素の水素化では、少なくとも1つの第三級アミン(A1)が使用される。本発明の範囲において、「第三級アミン(A1)」は、1つの第三級アミン(A1)とも、2つまたはそれ以上の第三級アミン(A1)の混合物とも理解される。
本発明による方法で使用される第三級アミン(A1)は、好ましくは、工程段階(a)で得られる水素化混合物(H)が、場合により水の添加後に、少なくとも2相であるように選択される、もしくは前記極性溶剤により調整される。この水素化混合物(H)は、前記触媒および第三級アミン(A1)を含んでいる上相(O1)、および少なくとも1つの極性溶剤、前記触媒の残分、ならびにギ酸−アミン付加物(A2)を含んでいる下相(U1)を含んでいる。
第三級アミン(A1)は、上相(O1)中に富化されて存在している、つまり、上相(O1)は、第三級アミン(A1)の大部分を含んでいる。第三級アミン(A1)に関して「富化されて」もしくは「大部分」とは、本発明の範囲において、液相、つまり、水素化混合物(H)中の上相(O1)および下相(U1)における遊離第三級アミン(A1)の総質量に対して、上相(O1)における遊離第三級アミン(A1)の質量割合が50%超と理解される。
遊離第三級アミン(A1)とは、ここで、ギ酸−アミン付加物(A2)の形態で結合していない第三級アミン(A1)と理解される。
上相(O1)における遊離第三級アミン(A1)の質量割合は、それぞれ水素化混合物(H)中の上相(O1)および下相(U1)における遊離第三級アミン(A1)の総質量に対して、70%超、特に90%超であるのが好ましい。
第三級アミン(A1)の選択は、一般に、相挙動ならびに液相(上相(O1)および下相(U1))中の第三級アミン(A1)の溶解度を、工程段階(a)の工程条件下に、実験に基づいて測定する簡単な試験により行われる。さらに、第三級アミン(A1)に、非極性溶剤、例えば、脂肪族溶剤、芳香族溶剤、または芳香脂肪族溶剤を添加してよい。好ましい非極性溶剤は、例えば、オクタン、トルエンおよび/またはキシレン(o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン)である。
前記一般式(A1)の第三級アミンが好ましく、ここで、R1、R2、R3の基は、同一または異なっていて、互いに独立して非分岐鎖または分岐鎖の、非環式または環式の、それぞれ1〜16個の炭素原子、好ましくは1〜12個の炭素原子を有する脂肪族基、芳香脂肪族基または芳香族基を表していて、個々の炭素原子は、互いに独立して、−O−基および>N−基から選択されるヘテロ基により置換されていてもよく、ならびに、2つまたは3つのすべての基が、少なくともそれぞれ4つの原子を含んでいる鎖の形成下に、互いに結合していてもよい。特別な好ましい実施態様では、一般式(A1)の第三級アミンは、C原子の総数が、少なくとも9であるという条件つきで使用される。
好適な第三級アミン(A1)として、例えば、以下が挙げられる:
・トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリ−n−ウンデシルアミン、トリ−n−ドデシルアミン、トリ−n−トリデシルアミン、トリ−n−テトラデシルアミン、トリ−n−ペンタデシルアミン、トリ−n−ヘキサデシルアミン、トリ−(2−エチルヘキシル)アミン。
・ジメチルデシルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジメチルテトラデシルアミン、エチル−ジ−(2−プロピル)アミン、ジオクチルメチルアミン、ジヘキシルメチルアミン。
・トリシクロペンチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリシクロヘプチルアミン、トリシクロオクチルアミン、およびこれらの、1つまたはそれ以上のメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基または2−メチル−2−プロピル基により置換された誘導体。
・ジメチルシクロヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、ジエチルシクロヘキシルアミン、エチルジシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロペンチルアミン、メチルジシクロペンチルアミン。
・トリフェニルアミン、メチルジフェニルアミン、エチルジフェニルアミン、プロピルジフェニルアミン、ブチルジフェニルアミン、2−エチルヘキシルジフェニルアミン、ジメチルフェニルアミン、ジエチルフェニルアミン、ジプロピルフェニルアミン、ジブチルフェニルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)フェニルアミン、トリベンジルアミン、メチルジベンジルアミン、エチルジベンジルアミン、およびこれらの、1つまたはそれ以上のメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基または2−メチル−2−プロピル基により置換された誘導体。
・N−C1〜C12−アルキルピペリジン、N,N−ジ−C1〜C12−アルキルピペラジン、N−C1〜C12−アルキルピロリドン、N−C1〜C12−アルキルイミダゾール、およびこれらの、1つまたはそれ以上のメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基または2−メチル−2−プロピル基により置換された誘導体。
・1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(「DBU」)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(「DABCO」)、N−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン(「Tropan」)、N−メチル−9−アザビシクロ[3.3.1]ノナン(「Granatan」)、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン(「Chinuclidin」)。
・トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリ−n−ウンデシルアミン、トリ−n−ドデシルアミン、トリ−n−トリデシルアミン、トリ−n−テトラデシルアミン、トリ−n−ペンタデシルアミン、トリ−n−ヘキサデシルアミン、トリ−(2−エチルヘキシル)アミン。
・ジメチルデシルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジメチルテトラデシルアミン、エチル−ジ−(2−プロピル)アミン、ジオクチルメチルアミン、ジヘキシルメチルアミン。
・トリシクロペンチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリシクロヘプチルアミン、トリシクロオクチルアミン、およびこれらの、1つまたはそれ以上のメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基または2−メチル−2−プロピル基により置換された誘導体。
・ジメチルシクロヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、ジエチルシクロヘキシルアミン、エチルジシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロペンチルアミン、メチルジシクロペンチルアミン。
・トリフェニルアミン、メチルジフェニルアミン、エチルジフェニルアミン、プロピルジフェニルアミン、ブチルジフェニルアミン、2−エチルヘキシルジフェニルアミン、ジメチルフェニルアミン、ジエチルフェニルアミン、ジプロピルフェニルアミン、ジブチルフェニルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)フェニルアミン、トリベンジルアミン、メチルジベンジルアミン、エチルジベンジルアミン、およびこれらの、1つまたはそれ以上のメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基または2−メチル−2−プロピル基により置換された誘導体。
・N−C1〜C12−アルキルピペリジン、N,N−ジ−C1〜C12−アルキルピペラジン、N−C1〜C12−アルキルピロリドン、N−C1〜C12−アルキルイミダゾール、およびこれらの、1つまたはそれ以上のメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基または2−メチル−2−プロピル基により置換された誘導体。
・1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(「DBU」)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(「DABCO」)、N−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン(「Tropan」)、N−メチル−9−アザビシクロ[3.3.1]ノナン(「Granatan」)、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン(「Chinuclidin」)。
本発明による方法では、2つまたはそれ以上の異なる第三級アミン(A1)からの混合物を使用してもよい。
本発明による方法では、第三級アミン(A1)として、R1、R2、R3の基が、互いに独立して、C1〜C12−アルキル基、C5〜C8−シクロアルキル基、ベンジル基およびフェニル基から選択されるアミンが使用されるのが特に好ましい。
本発明による方法では、第三級アミン(A1)として、飽和アミン、つまり、単結合のみを含んでいるアミンが使用されるのが特に好ましい。
本発明による方法では、第三級アミンとして、R1、R2、R3の基が、互いに独立して、C5〜C8−アルキル基、特にトリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、ジオクチルメチルアミンおよびジメチルデシルアミンから選択される、一般式(A1)のアミンが使用されるのが殊に好ましい。
本発明による方法の1つの実施態様では、一般式(A1)の1つの第三級アミンが使用される。
特に、第三級アミンとして、R1、R2、R3の基が、互いに独立して、C5−アルキルおよびC6−アルキルから選択される一般式(A1)の1つのアミンが使用される。本発明による方法では、一般式(A1)の第三級アミンとして、トリ−n−ヘキシルアミンが使用されるのが最も好ましい。
第三級アミン(A1)は、本発明による方法では、すべての工程段階において液体で存在しているのが好ましい。しかし、これは絶対条件ではない。第三級アミン(A1)が、少なくとも好適な溶剤中に溶けていれば同じく充分である。好適な溶剤は、根本的に、二酸化炭素の水素化に関して化学的に不活性であり、第三級アミン(A1)および前記触媒が溶けやすく、その逆に前記極性溶剤ならびにギ酸−アミン付加物(A2)が溶けにくいような溶剤である。したがって、根本的に、化学的に不活性の非極性溶剤、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、または芳香脂肪族炭化水素、例えば、オクタンおよび高級アルカン、トルエン、キシレンが考慮される。
本発明による方法において、工程段階(a)における二酸化炭素の水素化では、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノールおよび水からなる群から選択される少なくとも1つの極性溶剤が使用される。
本発明の範囲における「極性溶剤」とは、1つの極性溶剤とも、2つまたはそれ以上の極性溶剤からの混合物とも理解される。
前記極性溶剤は、工程段階(a)で得られた水素化混合物(H)が、場合により水の添加後に、少なくとも2相であるように選択されるのが好ましい。この極性溶剤は、下相(U1)中に富化されて存在している、つまり、下相(U1)は、この極性溶剤の大部分を含んでいる。前記極性溶剤に関して「富化されて」もしくは「大部分」とは、本発明の範囲において、水素化反応器中の液相(上相(O1)および下相(U1))における前記極性溶剤の総質量に対して、下相(U1)における前記極性溶剤の質量割合が50%超と理解される。
下相(U1)における前記極性溶剤の質量割合は、それぞれ、上相(O1)および下相(U1)における前記極性溶剤の総質量に対して70%超、特に90%超であるのが好ましい。
前記基準を満たす極性溶剤の選択は、一般に、相挙動ならびに液相(上相(O1)および下相(U1))における極性溶剤の溶解度を、工程段階(a)の工程条件下に実験に基づいて測定する簡単な試験により行われる。
前記極性溶剤は、純粋な極性溶剤、または2つもしくはそれ以上の極性溶剤からの混合物であってよい。
本発明による方法の1つの実施態様では、工程(a)において、まず単相の水素化混合物が得られ、この混合物は、水の添加により2相の水素化混合物(H)に変わる。
本発明による方法のさらなる実施態様では、工程(a)において、直接、2相の水素化混合物(H)が得られる。前記実施態様により得られる2相の水素化混合物(H)は、直接、工程(b)による後処理に供給されてよい。この2相の水素化混合物(H)に、工程(b)におけるさらなる後処理の前に、さらに水を添加することも可能である。これは、分配係数PKの上昇をもたらしうる。
さらなる特に好ましい実施態様では、極性溶剤として、水、メタノール、または水とメタノールとからの混合物が使用される。
ジオール、ならびにそのギ酸エステル、ポリオールならびにそのギ酸エステル、スルホン、スルホキシドおよび開鎖または環状のアミドの、極性溶剤としての使用は、好ましくない。好ましい実施態様では、これらの極性溶剤は、反応混合物(Rg)中に含まれていない。
本発明による方法で、工程段階(a)で使用される極性溶剤もしくは溶剤混合物の、使用される第三級アミン(A1)に対するモル比は、一般に、0.5〜30、好ましくは1〜20である。
本発明による方法で工程段階(a)の二酸化炭素の水素化において、触媒として使用される遷移金属錯体化合物は、周期表第8族、第9族および第10族(IUPACによる命名法)から選択される少なくとも1つの元素、ならびに少なくとも13個の炭素原子を有する少なくとも1つの有機基を有する少なくとも1つのホスフィン配位子を含んでいる。前記周期表第8族、第9族および第10族には、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、IrおよびPtが含まれている。工程段階(a)では、触媒として、1つの遷移金属錯体化合物、または2つもしくはそれ以上の遷移金属錯体化合物からの混合物を使用してよい。「遷移金属錯体化合物」とは、本発明の範囲において、1つの遷移金属錯体化合物とも、2つまたはそれ以上の遷移金属錯体化合物の混合物とも理解される。
好ましくは、触媒として使用される遷移金属錯体化合物は、Ru、Rh、Pd、Os、IrおよびPtからなる群から選択される少なくとも1つの元素、特に好ましくは、Ru、RhおよびPdからなる群からの少なくとも1つの元素を含んでいる。殊に好ましくは、この遷移金属錯体化合物はRuを含んでいる。
触媒として好ましい遷移金属錯体化合物は、13〜30個の炭素原子、好ましくは14〜26個の炭素原子、さらに好ましくは14〜22個の炭素原子、特に好ましくは15〜22個の炭素原子、特に16〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの有機基を有する少なくとも1つのホスフィン配位子を含んでいて、前記有機基は、ホスフィン配位子のリン原子に結合している。
さらなる好ましい実施態様では、触媒として使用される遷移金属錯体化合物は、一般式(I)
[式中、
R11、R12、R13、R14は、互いに独立して、置換されていない、または少なくとも一置換されている−C13〜C30−アルキル、−(フェニル)−(C7〜C24−アルキル)、−(フェニル)−(C4〜C24−アルキル)2、−(フェニル)−(C3〜C24−アルキル)3、−(フェニル)−(O−C7〜C24−アルキル)、−(フェニル)−(O−C4〜C24−アルキル)2、−(フェニル)−(O−C3〜C24−アルキル)3、−(シクロヘキシル)−(C7〜C24−アルキル)、−(シクロヘキシル)−(C4〜C24−アルキル)2、−(シクロヘキシル)−(C3〜C24−アルキル)3、−(シクロヘキシル)−(O−C7〜C24−アルキル)、−(シクロヘキシル)−(O−C4〜C24−アルキル)2、または−(シクロヘキシル)−(O−C3〜C24−アルキル)3であり、
ここで、前記置換基は、−F、−Cl、−Br、−OH、−ORa、−COOH、−COORa、−OCORa、−CN、−NH2、−N(Ra)2および−NHRaからなる群から選択されていて;
R15、R16は、互いに独立して水素もしくは−C1〜C4−アルキルである、または、これらが結合している炭素原子と一緒に、1つの置換されていない、もしくは少なくとも一置換されているフェニル環もしくはシクロヘキシル環を形成していて、
ここで、前記置換基は、−OCORa、−OCOCF3、−OSO2Ra、−OSO2CF3、−CN、−OH、−ORa、−N(Ra)2、−NHRaおよび−C1〜C4−アルキルからなる群から選択されていて;
Raは、−C1〜C4−アルキルであり、ならびに
n、mは、互いに独立して0、1または2である]
の少なくとも1つの二座ホスフィン配位子を含んでいる。
R11、R12、R13、R14は、互いに独立して、置換されていない、または少なくとも一置換されている−C13〜C30−アルキル、−(フェニル)−(C7〜C24−アルキル)、−(フェニル)−(C4〜C24−アルキル)2、−(フェニル)−(C3〜C24−アルキル)3、−(フェニル)−(O−C7〜C24−アルキル)、−(フェニル)−(O−C4〜C24−アルキル)2、−(フェニル)−(O−C3〜C24−アルキル)3、−(シクロヘキシル)−(C7〜C24−アルキル)、−(シクロヘキシル)−(C4〜C24−アルキル)2、−(シクロヘキシル)−(C3〜C24−アルキル)3、−(シクロヘキシル)−(O−C7〜C24−アルキル)、−(シクロヘキシル)−(O−C4〜C24−アルキル)2、または−(シクロヘキシル)−(O−C3〜C24−アルキル)3であり、
ここで、前記置換基は、−F、−Cl、−Br、−OH、−ORa、−COOH、−COORa、−OCORa、−CN、−NH2、−N(Ra)2および−NHRaからなる群から選択されていて;
R15、R16は、互いに独立して水素もしくは−C1〜C4−アルキルである、または、これらが結合している炭素原子と一緒に、1つの置換されていない、もしくは少なくとも一置換されているフェニル環もしくはシクロヘキシル環を形成していて、
ここで、前記置換基は、−OCORa、−OCOCF3、−OSO2Ra、−OSO2CF3、−CN、−OH、−ORa、−N(Ra)2、−NHRaおよび−C1〜C4−アルキルからなる群から選択されていて;
Raは、−C1〜C4−アルキルであり、ならびに
n、mは、互いに独立して0、1または2である]
の少なくとも1つの二座ホスフィン配位子を含んでいる。
−C13〜C30−アルキルとは、R11、R12、R13およびR14の基に関して、本発明の範囲において、13〜30個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基と理解される。これらの基には、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘニコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、およびトリコンチル基からなる群から選択される直鎖または分岐鎖のアルキル基が含まれている。この−C13〜C30−アルキル基は、非分岐鎖、つまり直鎖であるのが好ましい。
好ましいアルキル基(−C13〜C30−アルキル)は、14〜26個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基(−C14〜C26−アルキル)、さらに好ましくは14〜22個(−C14〜C22−アルキル)、特に好ましくは15〜22個(−C15〜C22−アルキル)、特に16〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基(−C16〜C20−アルキル)であり、直鎖のアルキル基が好ましい。
−(フェニル)−(C7〜C24−アルキル)とは、R11、R12、R13およびR14の基に関して、本発明の範囲において、フェニル環を介してホスフィン配位子(I)のリン原子に結合している、一般式(II)の基と理解される。前記−C7〜C24−アルキル基は、フェニル環の2位、3位または4位で結合していてよく、直鎖または分岐鎖であってよい。前記フェニル環は、この−C7〜C24−アルキル基の他に、さらなる置換基を有していないのが好ましい。前記−C7〜C24−アルキル基は、置換されていなくてよい、または少なくとも一置換されていてよい。前記−C7〜C24−アルキル基は、直鎖で置換されていないのが好ましい。
−(フェニル)−(C7〜C24−アルキル)基中のアルキル基として、7〜18の直鎖または分岐鎖のアルキル基(つまり、−(フェニル)−(C7〜C18−アルキル))が好ましい。7〜12個の炭素原子を有するアルキル基(つまり、−(フェニル)−(C7〜C12−アルキル))が特に好ましい。
−(フェニル)−(O−C6〜C24−アルキル)とは、R11、R12、R13およびR14の基に関して、本発明の範囲において、フェニル環を介してホスフィン配位子(I)のリン原子に結合している、一般式(III)の基であると理解される。前記−O−C7〜C24−アルキル基は、2位、3位または4位で酸素を介してフェニル環に結合していてよく、直鎖または分岐鎖であってよい。前記フェニル環は、−C7〜C24−アルキル基の他に、さらなる置換基を有していないのが好ましい。前記−O−C7〜C24−アルキル基は、置換されていなくてよい、または少なくとも一置換されていてよい。前記−C7〜C24−アルキル基は、直鎖であり、置換されていないのが好ましい。前記−(フェニル)−(O−C7〜C24−アルキル)基中のアルキル基として7〜18個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基(つまり、−(フェニル)−(O−C7〜C18−アルキル))が好ましい。7〜12個の炭素原子を有するアルキル基(つまり、−(フェニル)−(O−C7〜C12−アルキル)が特に好ましい。
−(シクロヘキシル)−(C7〜C24−アルキル)とは、R11、R12、R13およびR14の基に関して、本発明の範囲において、シクロヘキシル環を介してホスフィン配位子(I)のリン原子に結合している、一般式(IV)の基と理解される。前記−C7〜C24−アルキル基は、2位、3位または4位でシクロヘキシル環に結合していてよく、直鎖または分岐鎖であってよい。前記シクロヘキシル環は、この−C7〜C24−アルキル基の他に、さらなる置換基を有していないのが好ましい。前記−C7〜C24−アルキル基は、置換されていなくてよい、または少なくとも一置換されていてよい。前記−C7〜C24−アルキル基は、直鎖で置換されていないのが好ましい。前記−(シクロヘキシル)−(C7〜C24−アルキル)基中のアルキル基として、7〜18個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基(つまり、−(シクロヘキシル)−(C7〜C18−アルキル)が好ましい。7〜12個の炭素原子を有するアルキル基(つまり、−(シクロヘキシル)−(C7〜C12−アルキル))が特に好ましい。
−(シクロヘキシル)−O−C7〜C24−アルキルとは、R11、R12、R13およびR14の基に関して、本発明の範囲において、シクロヘキシル環を介して(波線の結合;1位)ホスフィン配位子(I)のリン原子に結合している、一般式(V)の基と理解される。前記−O−C7〜C24−アルキル基は、2位、3位または4位で酸素を介してシクロヘキシル環に結合していて、直鎖または分岐鎖であってよい。前記シクロヘキシル環は、この−C7〜C24−アルキル基の他にさらなる置換基を有していないのが好ましい。前記−O−C7〜C24−アルキル基は、置換されていなくてよい、または少なくとも一置換されていてよい。前記−C7〜C24−アルキル基は、直鎖であり、置換されていないのが好ましい。前記−(シクロヘキシル)−(O−C7〜C24−アルキル)基中のアルキル基として、7〜18個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基(つまり、−(シクロヘキシル)−(O−C7〜C18−アルキル))が好ましい。7〜12個の炭素原子を有するアルキル基(つまり、−(シクロヘキシル)−(O−C7〜C12−アルキル))が特に好ましい。
一般式II、一般式III、一般式IVおよび一般式Vの波線の結合は、フェニル環もしくはシクロヘキシル環の、ホスフィン配位子(I)のリン原子との(1位での)結合を示している。
一般式II、一般式III、一般式IVおよび一般式Vでは、−C7〜C24−アルキル基もしくは−O−C7〜C24−アルキル基は、フェニル環もしくはシクロへキシル環の4位で結合しているのが好ましい。フェニル環もしくはシクロヘキシル環が、4位に−C7〜C18−アルキル基もしくは−O−C7〜C18−アルキル基を有しているのが好ましい。フェニル環もしくはシクロヘキシル環が、4位に−C7〜C12−アルキル基もしくは−O−C7〜C12−アルキル基を有しているのが特に好ましい。
−(フェニル)−(C4〜C24−アルキル)2とは、R11、R12、R13およびR14の基に関して、本発明の範囲において、フェニル環を介してホスフィン配位子(I)のリン原子に結合していて、前記フェニル環が2つの−C4〜C24−アルキル基を有している基と理解される。前記−C4〜C24−アルキル基は、(2,3)位、(2,4)位、(2,5)位、(2,6)位、(3,4)位または(3,5)位でフェニル環に結合していてよく、ここで、(3,5)位が好ましい。前記−C4〜C24−アルキル基は、直鎖または分岐鎖であってよい。前記フェニル環は、2つの−C4〜C24−アルキル基の他にさらなる置換基を有していないのが好ましい。前記−C4〜C24−アルキル基は、置換されていなくてよい、または少なくとも一置換されていてよい。前記−C4〜C24−アルキル基は、置換されていないのが好ましい。
−(フェニル)−(C4−C24−アルキル)2基中のアルキル基として、4〜18の直鎖または分岐鎖のアルキル基(つまり、−(フェニル)−(C4〜C18−アルキル)2)が好ましい。4〜12個の炭素原子を有するアルキル基(つまり、−(フェニル)−(C4〜C12−アルキル)2)、特に4〜6個の炭素原子を有するアルキル基(つまり、−(フェニル)−(C4〜C6−アルキル)2)が特に好ましい。好適なアルキル基は、例えば、tert−ブチルである。
−(フェニル)−(O−C4〜C24−アルキル)2とは、R11、R12、R13およびR14の基に関して、本発明の範囲において、フェニル環を介してホスフィン配位子(I)のリン原子に結合していて、前記フェニル環が2つの−O−C4〜C24−アルキル基を有している基と理解される。前記−O−C4〜C24−アルキル基は、(2,3)位、(2,4)位、(2,5)位、(2,6)位、(3,4)位または(3,5)位でフェニル環に結合していてよく、ここで、(3,5)位が好ましい。前記−O−C4〜C24−アルキル基は、直鎖または分岐鎖であってよい。前記フェニル環は、2つの−O−C4〜C24−アルキル基の他にさらなる置換基を有していないのが好ましい。前記−O−C4〜C24−アルキル基は、置換されていなくてよい、または少なくとも一置換されていてよい。前記−O−C4−C24−アルキル基は、置換されていないのが好ましい。
−(フェニル)−(O−C4〜C24−アルキル)2基中のアルキル基として、4〜18の直鎖または分岐鎖のアルキル基(つまり、−(フェニル)−(O−C4〜C18−アルキル)2)が好ましい。4〜12個の炭素原子を有するアルキル基(つまり、−(フェニル)−(O−C4〜C12−アルキル)2)、特に4〜6個の炭素原子を有するアルキル基(つまり、−(フェニル)−(O−C4〜C6−アルキル)2)が特に好ましい。好適な−O−アルキル基は、例えば、tert−ブトキシである。
−(シクロヘキシル)−(C4〜C24−アルキル)2および−(シクロヘキシル)−(O−C4〜C24−アルキル)2には、−(フェニル)−(C4〜C24−アルキル)2もしくは(フェニル)−(O−C4〜C24−アルキル)2に対する前記実施態様および好ましい実施態様が相応して適用される。
−(フェニル)−(C3〜C24−アルキル)3、−(フェニル)−(O−C3〜C24−アルキル)3、−(シクロヘキシル)−(C3〜C24−アルキル)3、−(シクロヘキシル)−(O−C3〜C24−アルキル)および−(シクロヘキシル)−(O−C3−C24−アルキル)3とは、1位でホスフィン配位子(I)のリン原子に結合しているフェニル環もしくはシクロヘキシル環であって、このフェニル環もしくはシクロヘキシル環が、3つの−C3〜C24−アルキル基もしくは3つの−O−C3〜C24−アルキル基を有しているものと理解される。前記−C3〜C24−アルキル基もしくは−O−C3〜C24−アルキル基は、(2,3,4)位、(2,3,5)位、(2,4,6)位、(3,4,5)位または(2,3,6)位でフェニル環もしくはシクロヘキシル環に結合していてよい。
R11、R12、R13およびR14の基が同一である、ホスフィン配位子(I)が特に好ましい。
さらに特に好ましいのは、一般式(I)
[式中、
R11、R12、R13、R14は、互いに独立して置換されていない、または少なくとも一置換されている、−C13〜C30−アルキル、−(フェニル)−(C7〜C24−アルキル)、−(フェニル)−(C4〜C24−アルキル)2、−(フェニル)−(O−C7〜C24−アルキル)、−(フェニル)−(O−C4〜C24−アルキル)2、−(シクロヘキシル)−(C7〜C24−アルキル)、−(シクロヘキシル)−(C4〜C24−アルキル)2、−(シクロヘキシル)−(O−C7〜C24−アルキル)または−(シクロヘキシル)−(O−C4〜C24−アルキル)2であり、
ここで、前記置換基は、−F、−Cl、−Br、−OH、−ORa、−COOH、−COORa、−OCORa、−CN、−NH2、−N(Ra)2および−NHRaからなる群から選択されていて;
R15、R16は、互いに独立して水素もしくは−C1〜C4−アルキルである、またはこれらが結合している炭素原子と一緒に、1つの置換されていない、もしくは少なくとも一置換されているフェニル環もしくはシクロヘキシル環を形成していて、
ここで、前記置換基は、−OCORa、−OCOCF3、−OSO2Ra、−OSO2CF3、−CN、−OH、−ORa、−N(Ra)2、−NHRaおよび−C1〜C4−アルキルからなる群から選択されていて;
Raは、−C1〜C4−アルキルであり、ならびに
n、mは、両方とも0、1または2、好ましくは両方とも0または1、特に両方とも0である]
のホスフィン配位子である。
[式中、
R11、R12、R13、R14は、互いに独立して置換されていない、または少なくとも一置換されている、−C13〜C30−アルキル、−(フェニル)−(C7〜C24−アルキル)、−(フェニル)−(C4〜C24−アルキル)2、−(フェニル)−(O−C7〜C24−アルキル)、−(フェニル)−(O−C4〜C24−アルキル)2、−(シクロヘキシル)−(C7〜C24−アルキル)、−(シクロヘキシル)−(C4〜C24−アルキル)2、−(シクロヘキシル)−(O−C7〜C24−アルキル)または−(シクロヘキシル)−(O−C4〜C24−アルキル)2であり、
ここで、前記置換基は、−F、−Cl、−Br、−OH、−ORa、−COOH、−COORa、−OCORa、−CN、−NH2、−N(Ra)2および−NHRaからなる群から選択されていて;
R15、R16は、互いに独立して水素もしくは−C1〜C4−アルキルである、またはこれらが結合している炭素原子と一緒に、1つの置換されていない、もしくは少なくとも一置換されているフェニル環もしくはシクロヘキシル環を形成していて、
ここで、前記置換基は、−OCORa、−OCOCF3、−OSO2Ra、−OSO2CF3、−CN、−OH、−ORa、−N(Ra)2、−NHRaおよび−C1〜C4−アルキルからなる群から選択されていて;
Raは、−C1〜C4−アルキルであり、ならびに
n、mは、両方とも0、1または2、好ましくは両方とも0または1、特に両方とも0である]
のホスフィン配位子である。
さらに特に好ましいのは、一般式(I)
[式中、
R11、R12、R13、R14は、互いに独立して、置換していない、または少なくとも一置換されている、−C13〜C30−アルキル、−(フェニル)−(C7〜C24−アルキル)、−(フェニル)−(O−C7〜C24−アルキル)、−(シクロヘキシル)−(C7〜C24−アルキル)または−(シクロヘキシル)−(O−C7〜C24−アルキル)であり、
ここで、前記置換基は、−F、−Cl、−Br、−OH、−ORa、−COOH、−COORa、−OCORa、−CN、−NH2、−N(Ra)2および−NHRaからなる群から選択されていて;
R15、R16は、互いに独立して水素もしくは−C1〜C4−アルキルである、またはこれらが結合している炭素原子と一緒に、1つの置換されていない、もしくは少なくとも一置換されているフェニル環もしくはシクロヘキシル環を形成していて、
ここで、前記置換基は、−OCORa、−OCOCF3、−OSO2Ra、−OSO2CF3、−CN、−OH、−ORa、−N(Ra)2、−NHRaおよび−C1〜C4−アルキルからなる群から選択されていて;
Raは、−C1〜C4−アルキルであり、ならびに
n、mは、両方とも0、1または2、好ましくは両方とも0または1、特に両方とも0である]
のホスフィン配位子である。
[式中、
R11、R12、R13、R14は、互いに独立して、置換していない、または少なくとも一置換されている、−C13〜C30−アルキル、−(フェニル)−(C7〜C24−アルキル)、−(フェニル)−(O−C7〜C24−アルキル)、−(シクロヘキシル)−(C7〜C24−アルキル)または−(シクロヘキシル)−(O−C7〜C24−アルキル)であり、
ここで、前記置換基は、−F、−Cl、−Br、−OH、−ORa、−COOH、−COORa、−OCORa、−CN、−NH2、−N(Ra)2および−NHRaからなる群から選択されていて;
R15、R16は、互いに独立して水素もしくは−C1〜C4−アルキルである、またはこれらが結合している炭素原子と一緒に、1つの置換されていない、もしくは少なくとも一置換されているフェニル環もしくはシクロヘキシル環を形成していて、
ここで、前記置換基は、−OCORa、−OCOCF3、−OSO2Ra、−OSO2CF3、−CN、−OH、−ORa、−N(Ra)2、−NHRaおよび−C1〜C4−アルキルからなる群から選択されていて;
Raは、−C1〜C4−アルキルであり、ならびに
n、mは、両方とも0、1または2、好ましくは両方とも0または1、特に両方とも0である]
のホスフィン配位子である。
さらに特に好ましいのは、一般式(I)
[式中、
R11、R12、R13、R14は、互いに独立して、置換されていない、または少なくとも一置換されている−C13〜C30−アルキルであり、
ここで、前記置換基は、−F、−Cl、−Br、−OH、−ORa、−COOH、−COORa、−OCORa、−CN、−NH2、−N(Ra)2および−NHRaからなる群から選択されていて;
R15、R16は、互いに独立して水素または−C1〜C4−アルキルであり、
Raは、−C1〜C4−アルキルであり、ならびに
n、mは、両方とも0である]
のホスフィン配位子である。
[式中、
R11、R12、R13、R14は、互いに独立して、置換されていない、または少なくとも一置換されている−C13〜C30−アルキルであり、
ここで、前記置換基は、−F、−Cl、−Br、−OH、−ORa、−COOH、−COORa、−OCORa、−CN、−NH2、−N(Ra)2および−NHRaからなる群から選択されていて;
R15、R16は、互いに独立して水素または−C1〜C4−アルキルであり、
Raは、−C1〜C4−アルキルであり、ならびに
n、mは、両方とも0である]
のホスフィン配位子である。
さらに好ましいのは、一般式(I)
[式中、
R11、R12、R13、R14は、互いに独立して、置換されていない−C13〜C30−アルキルであり;
R15、R16は、両方とも水素であり、および
n、mは、両方とも0である]
のホスフィン配位子である。
[式中、
R11、R12、R13、R14は、互いに独立して、置換されていない−C13〜C30−アルキルであり;
R15、R16は、両方とも水素であり、および
n、mは、両方とも0である]
のホスフィン配位子である。
最も好ましいのは、一般式(I)
[式中、
R11、R12、R13、R14は、すべて同じで、置換されていない−C12〜C20−アルキル、好ましくは置換されていないC12〜C18−アルキル、さらに好ましくはC13〜C18−アルキルであり;
R15、R16は、両方とも水素であり、および
n、mは、両方とも0である]
のホスフィン配位子である。
[式中、
R11、R12、R13、R14は、すべて同じで、置換されていない−C12〜C20−アルキル、好ましくは置換されていないC12〜C18−アルキル、さらに好ましくはC13〜C18−アルキルであり;
R15、R16は、両方とも水素であり、および
n、mは、両方とも0である]
のホスフィン配位子である。
特に好ましい二座ホスフィン配位子(I)は、1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン、および1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタンからなる群から選択される。
一般式(I)のnおよびmが、両方とも0である、前記式のホスフィン配位子は、例えば、以下の反応式1(RG 1)に記載の、一般式(VIII)の1,2−ビス(ジクロロホスフィノ)エタン化合物と、一般式(IX)のグリニャール化合物との反応により得られ、一般式(IX)および一般式(I)において、R17は、前記R11、R12、R13、R14に対して示された意味を有しており、ここで、前記好ましい実施態様が相応に適用される。一般式(VIII)のR15およびR16には、ホスフィン配位子(I)に対して記載された定義および好ましい実施態様が相応に適用される。
1,2−ビス(ジクロロホスフィノ)エタンと、ブチルグリニャール化合物との一般的な反応は、Jack Lewisら、Journal of Organometallic Chemistry,433(1992),135〜139に記載されている。
一般式(I)のnおよびmが、両方とも0であり、R11、R12、R13およびR14が互いに独立して、置換されていない、または少なくとも一置換されている−C12〜C30−アルキルである、前記式のホスフィン配位子は、さらに、例えば、以下の反応式2(RG 2)に記載の、一般式(X)の1,2−ビス(ジヒドロホスフィノ)エタン化合物と一般式(XI)の末端オレフィンとの反応により得られ、ここで、一般式(XI)および一般式(I)において、R18には、前記R11、R12、R13、R14に示された意味および好ましい実施態様が相応して適用される。一般式(X)のR15およびR16には、ホスフィン配位子(I)に対して記載された定義および好ましい実施態様が相応して適用される。
1,2−ビス(ジヒドロホスフィノ)エタンと、末端オレフィン(CH2=CHCH2−OCH3)との一般的な反応は、Warren K.Millerら、Inorganic Chemistry 2002,41,5453〜5465に記載されている。
nおよびmが両方とも0であるホスフィン配位子(I)は、さらに、例えば、以下の反応式3(RG 3)に記載の、一般式(XII)のモノホスフィン化合物と、一般式(XIII)のアルキン化合物との反応により得られ、ここで、一般式(XII)および一般式(I)において、R17は、前記R11、R12、R13、R14に対して示された意味を有しており、ここで、好ましい実施態様が相応に適用される。一般式(XIII)のR15およびR16には、ホスフィン配位子(I)に対して記載された定義および好ましい実施態様が相応して適用される。
モノホスフィン化合物とアルキン化合物との一般的な反応は、US3,681,481に記載されている。
特に好ましい実施態様では、触媒として使用される遷移金属錯体化合物は、一般式(I)の1つの二座ホスフィン配位子、ならびに1〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの有機基を有する少なくとも1つの単座モノホスフィン配位子を含んでいる。
配位とは、本発明の範囲において、ホスフィン配位子が、遷移金属中心原子に対して、ホスフィン配位子のリン原子から形成することができる結合の数と理解される。つまり、単座ホスフィン配位子は、リン原子から遷移金属中心原子への1つの結合を形成することができ、二座ホスフィン配位子は、リン原子から遷移金属中心原子への2つの結合を形成することができる。
単座モノホスフィン配位子として、一般式(Ia)
[式中、
R19、R20、R21は、互いに独立して、置換されていない、または少なくとも一置換されている−C1〜C20−アルキル、−フェニル、−ベンジル、−シクロヘキシル、または−(CH2)−シクロヘキシルであり、
ここで、前記置換基は、−C1〜C20−アルキル、−F、−Cl、−Br、−OH、−ORa、−COOH、−COORa、−OCORa、−CN、−NH2、−N(Ra)2および−NHRaからなる群から選択されていて;
Raは、−C1〜C4−アルキルである]
のモノホスフィン配位子が好ましい。
R19、R20、R21は、互いに独立して、置換されていない、または少なくとも一置換されている−C1〜C20−アルキル、−フェニル、−ベンジル、−シクロヘキシル、または−(CH2)−シクロヘキシルであり、
ここで、前記置換基は、−C1〜C20−アルキル、−F、−Cl、−Br、−OH、−ORa、−COOH、−COORa、−OCORa、−CN、−NH2、−N(Ra)2および−NHRaからなる群から選択されていて;
Raは、−C1〜C4−アルキルである]
のモノホスフィン配位子が好ましい。
前記−C1〜C20−アルキルは、直鎖または分岐鎖であってよい。R19、R20、R21に好適な基は、例えば、前述のメチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、1−(2−メチル)プロピル、2−(2−メチル)プロピル、1−ペンチル、1−ヘキシル、1−ヘプチル、1−オクチル、1−ノニル、1−デシル、1−ウンデシル、1−ドデシル、1−トリデシル、1−テトラデシル、1−ペンタデシル、1−ヘキサデシル、1−ヘプタデシル、1−オクタデシル、1−ノナデシル、1−イコシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、1−(2−メチル)ペンチル、1−(2−エチル)ヘキシル、1−(2−プロピル)ヘプチルおよびノルボニルである。
単座モノホスフィン配位子(Ia)のR19、R20、R21の3つの基が同一である、前記配位子が好ましい。一般式P(n−CqH2q+1)3の単座モノホスフィン配位子(Ia)であって、qが1〜20である、特にqが1〜12である前記配位子が特に好ましい。トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−n−ヘキシルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン、トリ−n−デシルホスフィンおよびトリ−n−ドデシルホスフィンからなる群から選択される単座モノホスフィン配位子(Ia)が最も好ましい。
前記触媒として使用される遷移金属錯体化合物は、好ましくは1つの二座ホスフィン配位子(I)および2つの単座モノホスフィン配位子(Ia)を含んでいて、ここで、二座ホスフィン配位子(I)および単座モノホスフィン配位子(Ia)には、前記定義および好ましい実施態様が相応して適用される。
さらに、前記遷移金属錯体化合物は、さらなる配位子を含んでいてよく、例えば、水素化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、ギ酸塩、酢酸、プロピオネート、カルボキシレート、アセチルアセトネート、カルボニル、DMSO、水酸化物、トリアルキルアミン、アルコキシドが挙げられる。
前記触媒として使用される遷移金属錯体化合物は、直接その活性形態で生成することもでき、また、通常の標準錯体、例えば、[M(p−シメン)Cl2]2、[M(ベンゼン)Cl2]n、[M(COD)(アリル)]、[MCl3×H2O]、[M(アセチルアセトネート)3]、[M(COD)Cl2]2、[M(DMSO)4Cl2](式中、Mは、周期表第8族、第9族または第10族からの元素である)から出発して、前記相応のホスフィン配位子もしくは複数の前記相応のホスフィン配位子の添加下に、工程段階(a)の反応条件下に初めて(インサイチュ)で生成することもできる。
本発明による方法では、触媒として、
[Ru(PnBu3)2(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnヘキシル3)2(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnオクチル3)2(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnデシル3)2(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(PnBu3)2(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnヘキシル3)2(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnオクチル3)2(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnデシル3)2(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(PnBu3)2(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnヘキシル3)2(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnオクチル3)2(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnデシル3)2(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(PnBu3)2(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン))(H)2]、
[Ru(Pnヘキシル3)2(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnオクチル3)2(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnデシル3)2(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(PnBu3)(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(Pnヘキシル3)(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(Pnオクチル3)(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(Pnデシル3)(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(PnBu3)(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(Pnヘキシル3)(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(Pnオクチル3)(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(Pnデシル3)(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(PnBu3)(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(Pnヘキシル3)(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(Pnオクチル3)(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(Pnデシル3)(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(PnBu3)(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(Pnヘキシル3)(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン))(CO)(H)2]、
[Ru(Pnオクチル3)(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン)(CO(H)2]、
[Ru(Pnデシル3)(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(PnBu3)(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnヘキシル3)(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnオクチル3)(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnデシル3)(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(PnBu3)(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnヘキシル3)(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnオクチル3)(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnデシル3)(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(PnBu3)(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnヘキシル3)(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnオクチル3)(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnデシル3)(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(PnBu3)(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnヘキシル3)(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン))(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnオクチル3)(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン)(CO(H)(HCOO)]および
[Ru(Pnデシル3)(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]
からなる群から選択される、少なくとも1つの遷移金属錯体化合物が使用されるのが好ましい。
[Ru(PnBu3)2(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnヘキシル3)2(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnオクチル3)2(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnデシル3)2(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(PnBu3)2(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnヘキシル3)2(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnオクチル3)2(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnデシル3)2(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(PnBu3)2(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnヘキシル3)2(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnオクチル3)2(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnデシル3)2(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(PnBu3)2(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン))(H)2]、
[Ru(Pnヘキシル3)2(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnオクチル3)2(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(Pnデシル3)2(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン)(H)2]、
[Ru(PnBu3)(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(Pnヘキシル3)(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(Pnオクチル3)(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(Pnデシル3)(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(PnBu3)(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(Pnヘキシル3)(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(Pnオクチル3)(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(Pnデシル3)(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(PnBu3)(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(Pnヘキシル3)(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(Pnオクチル3)(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(Pnデシル3)(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(PnBu3)(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(Pnヘキシル3)(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン))(CO)(H)2]、
[Ru(Pnオクチル3)(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン)(CO(H)2]、
[Ru(Pnデシル3)(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)2]、
[Ru(PnBu3)(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnヘキシル3)(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnオクチル3)(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnデシル3)(1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(PnBu3)(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnヘキシル3)(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnオクチル3)(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnデシル3)(1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(PnBu3)(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnヘキシル3)(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnオクチル3)(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnデシル3)(1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(PnBu3)(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnヘキシル3)(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン))(CO)(H)(HCOO)]、
[Ru(Pnオクチル3)(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン)(CO(H)(HCOO)]および
[Ru(Pnデシル3)(1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン)(CO)(H)(HCOO)]
からなる群から選択される、少なくとも1つの遷移金属錯体化合物が使用されるのが好ましい。
前記化合物によって、二酸化炭素の水素化において、TOF値(turn−over−frequency)1000h-1超、および分配係数PK100超を得ることができる。
均一触媒作用による、とは、本発明の範囲において、前記触媒が、少なくとも部分的に液体の反応溶媒中に溶けて存在していると理解される。好ましい実施態様では、それぞれ液体の反応溶媒(反応混合物(Rg)の液相)中に存在する触媒の総量に対して、工程段階(a)で使用される触媒の少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは99%超が、液体の反応溶媒中に溶けて存在しており、前記触媒が、完全に溶けて液体の反応溶媒中に存在している(100%)のが最も好ましい。
工程段階(a)において、触媒として使用される遷移金属錯体化合物の金属成分の量は、それぞれ水素化反応器内の液体の反応混合物(Rg)全体に対して、一般に、0.1〜5000質量ppm、好ましくは1〜800質量ppm、特に好ましくは5〜800質量ppmである。ここで、前記触媒は、上相(O1)中に富化されて存在している、つまり、上相(O1)が前記触媒の大部分を含んでいるように選択される。前記触媒に関して「富化されて」もしくは「大部分」とは、本発明の範囲において、前記触媒の分配係数PK=[上相(O1)中の触媒濃度]/[下相(U1)中の触媒濃度]が10以上であると理解される。分配係数PKが50以上であるのが好ましく、分配係数PKが100以上であるのが特に好ましい。
前記触媒として使用される遷移金属錯体化合物によって、二酸化炭素の水素化において、TOF値(turn−over−frequency)1000h-1超を得ることができる。(TON値=反応時間に対する触媒中の金属成分1モルあたりのギ酸−アミン付加物(A2)(モル);TOF値=反応時間1時間あたりの触媒中の金属成分1モルあたりのギ酸−アミン付加物(A2)(モル))。触媒回転数(TOF)およびターンオーバー数TON;TOFおよびTONの定義は以下を参照:J.F.Hartwig,Organotransition Metal Chemistry,1.Edition,2010,University Science Books,Sausalito/California P.545)。
したがって、本発明の対象は、遷移金属錯体化合物、およびその触媒としての、特にギ酸の製造方法における触媒としての使用でもある。
それゆえ、本発明の対象は、周期表第8族、第9族および第10族から選択される少なくとも1つの元素、および一般式(I)の少なくとも1つのホスフィン配位子を含んでいる遷移金属錯体化合物でもある。
それゆえ、本発明の対象は、一般式(I)のホスフィン配位子ならびに一般式(Ia)の少なくとも1つの単座ホスフィン配位子を含んでいる遷移金属錯体化合物でもある。
それゆえ、本発明の対象は、前記遷移金属錯体化合物の、ギ酸の製造方法における触媒としての使用でもある。
工程段階(a)における二酸化炭素の水素化は、液相中で、好ましくは20〜200℃の範囲の温度および0.2〜30MPa(絶対)の範囲の全圧で行われる。温度は、少なくとも30℃、特に好ましくは少なくとも40℃、ならびに好ましくは最高150℃、特に好ましくは最高120℃、殊に好ましくは最高80℃であるのが好ましい。全圧は、好ましくは少なくとも1MPa(絶対)、特に好ましくは少なくとも5MPa(絶対)、ならびに好ましくは最大20MPa(絶対)である。
好ましい実施態様では、工程段階(a)の水素化は、40〜80℃の範囲の温度および5〜20MPa(絶対)の範囲の圧力で行われる。
二酸化炭素の部分圧は、工程段階(a)において一般に少なくとも0.5MPa、好ましくは少なくとも2MPa、ならびに一般に最大8MPaである。好ましい実施態様では、工程段階(a)の水素化は、2〜7.3MPaの範囲の二酸化炭素の部分圧で行われる。
水素の部分圧は、工程段階(a)において一般に少なくとも0.5MPa、好ましくは少なくとも1MPa、ならびに一般に最大25MPa、好ましくは最大15MPaである。好ましい実施態様では、工程段階(a)の水素化は、1〜15MPaの範囲の水素の部分圧で行われる。
水素化反応器における反応混合物(Rg)中の水素の二酸化炭素に対するモル比は、好ましくは0.1〜10、特に好ましくは1〜3である。
水素化反応器における反応混合物(Rg)中の二酸化炭素の第三級アミン(A1)に対するモル比は、好ましくは0.1〜10、特に好ましくは0.5〜3である。
水素化反応器として、根本的に、所定の温度および所定の圧力下の気/液反応に好適なあらゆる反応器が使用されてよい。気−液反応系に好適な標準反応器は、例えば、K.D.Henkel,"Reactor Types and Their Industrial Applications"、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,2005,Wiley−VCH Verlag GmbH & Co.KGaA,DOI:10.1002/14356007.b04_087,Kapitel3.3"Reactors for gas−liquid reactions"に示されている。例として、撹拌槽反応器、管型反応器または気泡塔反応器が挙げられる。
二酸化炭素の水素化は、本発明による方法では、不連続または連続して実施されてよい。不連続の運転方式では、前記反応器は、所望の液体の、および場合により固体の出発原料および助剤が備えられていて、引き続き二酸化炭素および極性溶媒が、所望の圧力に所望の温度で押し込まれる。反応終了後、前記反応器は、通常の場合、減圧されて、両方の形成された液相が互いに分離される。連続的な運転方式では、出発原料および助剤は、二酸化炭素および水素を含めて、連続的に添加される。相応して、前記液相は、連続的に前記反応器から排出されるため、前記反応器内の液相の状態は、平均して一定である。二酸化炭素の連続的な水素化が好ましい。
水素化反応器内の反応混合物(Rg)中に含まれている成分の平均滞留時間は、一般に5分〜5時間である。
均一触媒作用による水素化では、工程段階(a)において、前記触媒、前記極性溶剤、第三級アミン(A1)および少なくとも1つのギ酸−アミン付加物(A2)を含んでいる水素化混合物(H)が得られる。
「ギ酸−アミン付加物(A2)」とは、本発明の範囲において、1つのギ酸−アミン付加物(A2)とも、2つまたはそれ以上のギ酸−アミン付加物(A2)からの混合物とも理解される。2つまたはそれ以上のギ酸−アミン付加物(A2)からの混合物は、使用される反応混合物(Rg)中に2つまたはそれ以上の第三級アミン(A1)が使用される場合、工程段階(a)で得られる。
本発明による方法の好ましい実施態様では、1つの第三級アミン(A1)を含んでいる反応混合物(Rg)が工程段階(a)で使用され、ここで、1つのギ酸−アミン付加物(A2)を含んでいる水素化混合物(H)が得られる。
本発明による方法の特に好ましい実施態様では、工程段階(a)において、第三級アミン(A1)としてトリ−n−ヘキシルアミンを含んでいる反応混合物(Rg)が使用され、ここで、トリ−n−ヘキシルアミンとギ酸とからのギ酸−アミン付加物を含んでいて、以下の式(A3)
に相等する水素化混合物(H)が得られる。
一般式(A2)のギ酸−アミン付加物において、R1、R2、R3の基は、一般式(A1)の第三級アミンに対して記載された前記意味を有していて、そこに記載された好ましい実施態様も相応して適用される。
一般式(A2)および一般式(A3)において、Xiは、0.4〜5の範囲にある。係数Xiは、ギ酸−アミン付加物(A2)もしくは(A3)の平均された組成、つまり、結合した第三級アミン(A1)の、ギ酸−アミン付加物(A2)もしくは(A3)中の結合したギ酸に対するモル比を示している。
係数Xiは、例えば、フェノールフタレインに対するアルコール性KOH溶液での酸塩基滴定によるギ酸含有量の測定により算定することができる。さらに、ガスクロマトグラフィーによるアミン含有量の測定による係数Xiの算定が可能である。ギ酸−アミン付加物(A2)もしくは(A3)の正確な組成は、様々なパラメーターに左右され、例えば、ギ酸および第三級アミン(A1)の濃度、圧力、温度ならびにさらなる成分、特に極性溶剤の存在および性質に左右される。
したがって、ギ酸−アミン付加物(A2)もしくは(A3)、つまり係数Xiの組成は、個々の工程段階を越えて変化してもよい。例えば、一般に、極性溶剤の除去後、比較的高いギ酸含有量を有するギ酸−アミン付加物(A2)もしくは(A3)が形成し、ここで、過剰の、結合した第三級アミン(A1)は、ギ酸−アミン付加物(A2)から分離されて、第二相を形成する。
工程段階(a)では、一般に、Xiが0.4〜5の範囲、好ましくは0.7〜1.6の範囲にあるギ酸−アミン付加物(A2)もしくは(A3)が得られる。
ギ酸−アミン付加物(A2)は、下相(U1)中で富化されて存在している、つまり、下相(U1)は、ギ酸−アミン付加物(A2)の大部分を含んでいる。ギ酸−アミン付加物(A2)に関して「富化されて」もしくは「大部分」とは、本発明の範囲において、下相(U1)中のギ酸−アミン付加物(A2)の質量割合が、水素化反応器における液相(上相(O1)および下相(U1))中のギ酸−アミン付加物(A2)の総質量に対して50%超であると理解される。
下相(U1)中のギ酸−アミン付加物(A2)の質量割合は、それぞれ上相(O1)および下相(U1)中のギ酸−アミン付加物(A2)の総質量に対して70%超、特に90%超であるのが好ましい。
水素化混合物(H)の後処理;工程段階(b)
工程段階(a)の二酸化炭素の水素化で得られた水素化混合物(H)は、好ましくは、場合により水の添加後に、2つの液相を有していて、工程段階(b)において、工程(b1)、(b2)または(b3)のいずれか1つによりさらに後処理される。
工程段階(a)の二酸化炭素の水素化で得られた水素化混合物(H)は、好ましくは、場合により水の添加後に、2つの液相を有していて、工程段階(b)において、工程(b1)、(b2)または(b3)のいずれか1つによりさらに後処理される。
工程段階(b1)による後処理
好ましい実施態様では、水素化混合物(H)は、工程(b1)によりさらに後処理される。
好ましい実施態様では、水素化混合物(H)は、工程(b1)によりさらに後処理される。
ここで、工程段階(a)で得られる水素化混合物(H)は、第一相分離装置において、相分離により、ギ酸−アミン付加物(A2)、少なくとも1つの極性溶剤および前記触媒の残分を含んでいる下相(U1)、ならびに前記触媒および第三級アミン(A1)を含んでいる上相(O1)の取得下に、さらに後処理される。
前記触媒として使用される遷移金属錯体化合物の、先行技術と比べて明らかに改善された分配係数(PK)のゆえに、前記触媒の相分離による分離は、ほぼ完全にできる。前記触媒の、下相(U1)中に含まれている金属成分の量は、一般に、それぞれ下相(U1)に対して4質量ppm未満、好ましくは3質量ppm未満、より好ましくは2質量ppm未満、特に好ましくは1質量ppm以下である。
場合により、下相(U1)からの前記触媒の残分を、後続の抽出によりさらに減らすことができる(工程段階b3による後処理)。明らかに改善された分配係数(PK)のゆえに、前記触媒として使用される遷移金属化合物の相分離による分離が、ほぼ完全にできるため、後続の抽出をしないで済ますことができる。
好ましい実施態様では、上相(O1)は、水素化反応器に返送される。下相(U1)は、好ましい実施態様では、工程段階(c)の第一蒸留装置に供給される。場合により、未反応の二酸化炭素を含んでいる両方の液相を介して存在する、さらなる液相、ならびに未反応の二酸化炭素および/または未反応の水素を含んでいる気相の、水素化反応器への返送も有利である。場合により、例えば、不所望の副生成物または不純物を排出するため、上相(O1)の一部および/または二酸化炭素の一部、または二酸化炭素および水素を含んでいる液体もしくは気体の相を前記工程から排出することが望ましい。
工程段階(a)で得られる水素化混合物(H)の分離は、一般に重量相分離により行われる。相分離装置として、例えば、標準装置および標準法が好適であり、例えば、E.Muellerら、"Liquid−liquid Extraction"、Ullman’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,2005,Wiley−VCH Verlag GmbH & Co.KGaA,DOI:10.1002/14356007.b93_06,Kapitel3"Appartus"に見られる。
前記相分離は、例えば、液体の水素化混合物を、およそ大気圧または大気圧近くにまで減圧した後、および例えばおよそ周囲温度または周囲温度近くにまで冷却した後に行うことができる。
本発明の範囲において、前記系、つまり、ギ酸−アミン付加物(A2)ならびに極性溶剤が富化された下相(U1)、ならびに第三級アミン(A1)および前記触媒が富化された上相(O1)では、両方の液相が、明らかに高められた圧力でもきわめてよく互いに分離することが判明した。したがって、本発明による方法では、極性溶剤および第三級アミン(A1)は、ギ酸−アミン付加物(A2)および極性溶剤が富化された下相(U1)の、第三級アミン(A1)および前記触媒が富化された上相(O1)からの分離、ならびに上相(O1)の、1〜30MPa(絶対)の圧力での水素化反応器への返送が実施できるように選択することができる。水素化反応器における全圧によれば、前記圧力は、好ましくは最大20MPa(絶対)である。したがって、先行する減圧をせずに両方の液体(上相(O1)および下相(U1))を第一相分離装置で互いに分離して、圧力を著しく上昇させずに上相(O1)を水素化反応器に返送することが可能である。
前記相分離を直接、水素化反応器で実施することも可能である。この実施態様では、水素化反応器は、同時に第一相分離装置として機能し、工程段階(a)および工程段階(b1)は、両方とも水素化反応器内で実施される。ここで、上相(O1)は、水素化反応器内に残留し、下相(U1)は、工程段階(c)の第一蒸留装置に供給される。
1つの実施態様では、本発明による方法は、水素化反応器および第一相分離装置における圧力および温度が、同一またはほぼ同一であるように実施され、ここで、ほぼ同一であるとは、圧力差±0.5MPaまで、もしくは温度差±10℃までと理解される。
驚くべきことに、前記系では、両方の液相(上相(O1)および下相(U1))は、水素化反応器内の反応温度に相等する高められた温度でも、きわめて良く互いに分離することも判明した。工程段階(b1)の相分離のために、返送される上相(O1)の冷却および引き続きの加熱も必要でない場合、同じくエネルギーが節約される。
工程段階(b3)による後処理
さらなる好ましい実施態様では、水素化混合物(H)は、工程(b3)によりさらに後処理される。
さらなる好ましい実施態様では、水素化混合物(H)は、工程(b3)によりさらに後処理される。
ここで、工程段階(a)で得られた水素化混合物(H)は、工程段階(b1)に関して前記記載の通り、第一相分離装置において下相(U1)と水素化反応器に返送される上相(O1)とに分離される。前記相分離に関して、工程段階(b3)には、工程段階(b1)に対して記載された実施態様および好ましい実施態様が相応して適用される。工程(b3)による後処理でも、相分離を直接、水素化反応器内で実施することが可能である。この実施態様では、水素化反応器は、同時に第一相分離装置として機能する。上相(O1)は、その後、水素化反応器内に残留し、下相(U1)は、抽出装置に供給される。
相分離後に得られる下相(U1)は、次に、抽出装置において、前記触媒の残分を分離するために、抽出剤である第三級アミン(A1)により、ギ酸−アミン付加物(A2)および少なくとも1つの極性溶剤を含んでいるラフィネート(R2)、ならびに第三級アミン(A1)および前記触媒の残分を含んでいる抽出物(E2)の取得下に抽出される。
好ましい実施態様では、抽出剤として、工程段階(a)において反応混合物(Rg)中に含まれているのと同一の第三級アミン(A1)が使用されるため、第三級アミン(A1)に関して、工程段階(a)に対して記載された実施態様および好ましい実施態様が、工程段階(b3)に相応して適用される。
工程段階(b3)で得られる抽出物(E2)は、好ましい実施態様では、工程段階(a)の水素化反応器に返送される。これにより、前記触媒の効率の良い回収が可能になる。ラフィネート(R2)は、好ましい実施態様では、工程段階(C)の第一蒸留装置に供給される。
抽出剤として工程段階(b3)では、工程段階(e)の熱分解装置で得られる第三級アミン(A1)が使用されるのが好ましい。好ましい実施態様では、工程段階(e)の熱分解装置で得られる第三級アミン(A1)は、工程段階(b3)の抽出装置に返送される。
前記抽出は、工程段階(b3)では、一般に、0〜150℃の範囲、好ましくは30〜100℃の範囲の温度、および0.1〜8MPaの範囲の圧力で行われる。この抽出は、水素圧力下に実施してもよい。
前記触媒の抽出は、あらゆる好適な、当業者に公知の装置で実施してよく、好ましくは、向流抽出塔、ミキサーセトラーカスケード、またはミキサーセトラーカスケードと向流抽出塔との組み合わせで実施してよい。
場合により、前記触媒の他に、抽出される下相(U1)からの極性溶剤の個々の成分の割合も、抽出剤、第三級アミン(A1)中に溶けている。これは、前記方法にとって欠点ではない、それというのは、極性溶剤のすでに抽出された量は、溶剤分離に供給する必要がなく、したがって、場合により、気化エネルギーを節約するからである。
工程段階(b2)による後処理
さらなる好ましい実施態様では、水素化混合物(H)は、工程(b2)によりさらに後処理される。
さらなる好ましい実施態様では、水素化混合物(H)は、工程(b2)によりさらに後処理される。
ここで、工程段階(a)で得られた水素化混合物(H)は、全体があらかじめ相分離されずに直接抽出装置に供給される。この抽出に関して、工程段階(b2)には、工程段階(b3)に対して記載された実施態様および好ましい実施態様が相応して適用される。
水素化混合物(H)は、ここで、抽出装置において、前記触媒を分離するため、抽出剤である第三級アミン(A1)により、ギ酸−アミン付加物(A2)および少なくとも1つの極性溶剤を含んでいるラフィネート(R2)ならびに第三級アミン(A1)および前記触媒を含んでいる抽出物(E1)の取得下に抽出される。
好ましい実施態様では、抽出剤として、工程段階(a)で反応混合物(Rg)中に含まれているのと同一の第三級アミン(A1)が使用されるため、第三級アミン(A1)に関して工程段階(a)に対して記載された実施態様および好ましい実施態様が、工程段階(b2)に相応して適用される。
工程段階(b2)で得られる抽出物(E1)は、好ましい実施態様では、工程段階(a)の水素化反応器に返送される。これにより、前記触媒の効率の良い回収が可能になる。ラフィネート(R1)は、好ましい実施態様では、工程段階(c)の第一蒸留装置に供給される。
抽出剤として、工程段階(b2)では、工程段階(e)の熱分解装置で得られる第三級アミン(A1)が使用されるのが好ましい。好ましい実施態様では、工程段階(e)の熱分解装置で得られる第三級アミン(A1)が工程段階(b2)の抽出装置に返送される。
前記抽出は、工程段階(b2)では、一般に、0〜150℃の範囲、好ましくは30〜100℃の範囲の温度、および0.1〜8MPaの範囲の圧力で行われる。この抽出は、水素圧力下に実施されてもよい。
前記触媒の抽出は、あらゆる好適な、当業者に公知の装置で実施してよく、好ましくは向流抽出塔、ミキサーセトラーカスケード、またはミキサーセトラーカスケードと向流抽出塔との組合せで実施してよい。
場合により、前記触媒の他に、抽出される水素化混合物(H)からの極性溶剤の個々の成分の割合も、抽出剤、第三級アミン(A1)中に溶けている。これは、前記方法にとって欠点ではない、それというのは、極性溶剤のすでに抽出された量は、溶剤分離に供給する必要がなく、したがって、場合により、気化エネルギーを節約するからである。
極性溶剤の分離;工程段階(c)
工程段階(c)では、下相(U1)から、ラフィネート(R1)から、またはラフィネート(2)から、極性溶剤が第一蒸留装置で分離される。第一蒸留装置では、蒸留物(D1)および2相の塔底混合物(S1)が得られる。蒸留物(D1)は、分離された極性溶剤を含んでいて、好ましい実施態様では、工程(a)の水素化反応器に返送される。塔底混合物(S1)は、第三級アミン(A1)を含んでいる上相(O2)と、ギ酸−アミン付加物(A2)を含んでいる下相(U2)とを含んでいる。本発明による方法の1つの実施態様では、工程段階(c)の第一蒸留装置において前記極性溶剤が部分的に分離されるため、塔底混合物(S1)は、まだ分離されていない極性溶剤を含んでいる。工程段階(c)では、それぞれ下相(U1)、ラフィネート(R1)、またはラフィネート(R2)に含まれている極性溶剤の総質量に対して、下相(U1)、ラフィネート(R1)またはラフィネート(R2)に含まれている極性溶剤の、例えば5〜98質量%、好ましくは50〜98質量%、さらに好ましくは80〜98質量%、特に好ましくは80〜90質量%を分離することができる。
工程段階(c)では、下相(U1)から、ラフィネート(R1)から、またはラフィネート(2)から、極性溶剤が第一蒸留装置で分離される。第一蒸留装置では、蒸留物(D1)および2相の塔底混合物(S1)が得られる。蒸留物(D1)は、分離された極性溶剤を含んでいて、好ましい実施態様では、工程(a)の水素化反応器に返送される。塔底混合物(S1)は、第三級アミン(A1)を含んでいる上相(O2)と、ギ酸−アミン付加物(A2)を含んでいる下相(U2)とを含んでいる。本発明による方法の1つの実施態様では、工程段階(c)の第一蒸留装置において前記極性溶剤が部分的に分離されるため、塔底混合物(S1)は、まだ分離されていない極性溶剤を含んでいる。工程段階(c)では、それぞれ下相(U1)、ラフィネート(R1)、またはラフィネート(R2)に含まれている極性溶剤の総質量に対して、下相(U1)、ラフィネート(R1)またはラフィネート(R2)に含まれている極性溶剤の、例えば5〜98質量%、好ましくは50〜98質量%、さらに好ましくは80〜98質量%、特に好ましくは80〜90質量%を分離することができる。
本発明による方法のさらなる実施態様では、工程段階(c)の第一蒸留装置において前記極性溶剤が完全に分離される。「完全に分離される」とは、本発明の範囲において、それぞれ下相(U1)、ラフィネート(R1)またはラフィネート(R2)に含まれている極性溶剤の総質量に対して、下相(U1)、ラフィネート(R1)またはラフィネート(R2)に含まれている極性溶剤の、98質量%超、好ましくは98.5質量%超、特に好ましくは99質量%超、特に99.5質量%超の分離と理解される。
第一蒸留装置で分離された蒸留物(D1)は、好ましい実施態様では、工程(a)の水素化反応器に返送される。
下相(U1)、ラフィネート(R1)またはラフィネート(R2)からの前記極性溶剤の分離は、例えば、蒸発器で、または蒸発器および塔からなる蒸留装置で行うことができ、前記塔は、充填物、不規則充填物および/またはトレイが充填されている。
前記極性溶剤の少なくとも部分的な分離は、所定の圧力にて、ギ酸−アミン付加物(A2)から遊離ギ酸が形成されない塔底温度で行われるのが好ましい。第一蒸留装置におけるギ酸−アミン付加物(A2)の係数Xiは、一般に、0.4〜3の範囲、好ましくは0.6〜1.8の範囲、特に好ましくは0.7〜1.7の範囲にある。
一般に、第一蒸留装置の塔底温度は、少なくとも20℃、好ましくは少なくとも50℃、特に好ましくは少なくとも70℃、ならびに一般に最大210℃、好ましくは最大190℃である。第一蒸留装置内の温度は、一般に、20〜210℃の範囲、好ましくは50〜190℃の範囲にある。第一蒸留装置の圧力は、一般に、少なくとも0.001MPa(絶対)、好ましくは少なくとも0.005MPa(絶対)、特に好ましくは少なくとも0.01MPa(絶対)、ならびに一般に最大1MPa(絶対)、好ましくは最大0.1MPa(絶対)である。第一蒸留装置内の圧力は、一般に、0.0001MPa(絶対)〜1MPa(絶対)の範囲、好ましくは0.005MPa(絶対)〜0.1MPa(絶対)の範囲、特に好ましくは0.01MPa(絶対)〜0.1MPa(絶対)の範囲にある。
第一蒸留装置における前記極性溶剤の分離では、第一蒸留装置の塔底で、ギ酸−アミン付加物(A2)ならびに遊離第三級アミン(A1)が生じることがある、それというのは、前記極性溶剤の除去で、アミン含有量が比較的少ないギ酸−アミン付加物(A2)が生じるからである。これにより、ギ酸−アミン付加物(A2)および遊離第三級アミン(A1)を含んでいる塔底混合物(S1)が形成する。塔底混合物(S1)は、前記極性溶剤の分離される量によって、ギ酸−アミン付加物(A2)ならびに場合により、第一蒸留装置の塔底で形成された遊離第三級アミン(A1)を含んでいる。塔底混合物(S1)は、さらなる後処理のために、場合により工程段階(d)でさらに後処理されて、引き続き工程段階(e)に供給される。工程段階(c)からの塔底混合物(S1)を直接、工程段階(e)に供給することも可能である。
工程段階(d)では、工程(c)で得られた塔底混合物(S1)を第二相分離装置において、上相(O2)と下相(U2)とに分離することができる。下相(U2)は、引き続き工程段階(e)によりさらに後処理される。好ましい実施態様では、第二相分離装置からの上相(O2)は、工程(a)の水素化反応器に返送される。さらなる好ましい実施態様では、第二相分離装置からの上相(O2)は、抽出装置に返送される。工程段階(d)および第二相分離装置には、第一相分離装置に対する前記実施態様および好ましい実施態様が相応して適用される。
1つの実施態様では、本発明による方法は、したがって工程(a)、工程(b1)、工程(c)、工程(d)および工程(e)を包含している。さらなる実施態様では、本発明による方法は、工程(a)、工程(b2)、工程(c)、工程(d)および工程(e)を包含している。さらなる実施態様では、本発明による方法は、工程(a)、工程(b3)、工程(c)、工程(d)および工程(e)を包含している。さらなる実施態様では、本発明による方法は、工程(a)、工程(b1)、工程(c)および工程(e)を包含している。さらなる実施態様では、本発明による方法は、工程(a)、工程(b2)、工程(c)および工程(e)を包含している。さらなる実施態様では、本発明による方法は、工程(a)、工程(b3)、工程(c)および工程(e)を包含している。
1つの実施態様では、本発明による方法は、工程(a)、工程(b1)、工程(c)、工程(d)および工程(e)からなっている。さらなる実施態様では、本発明による方法は、工程(a)、工程(b2)、工程(c)、工程(d)および工程(e)からなっている。さらなる実施態様では、本発明による方法は、工程(a)、工程(b3)、工程(c)、工程(d)および工程(e)からなっている。さらなる実施態様では、本発明による方法は、工程(a)、工程(b1)、工程(c)および工程(e)からなっている。さらなる実施態様では、本発明による方法は、工程(a)、工程(b2)、工程(c)および工程(e)からなっている。さらなる実施態様では、本発明による方法は、工程(a)、工程(b3)、工程(c)および工程(e)からなっている。
ギ酸−アミン付加物(A2)の分解;工程段階(e)
工程(c)により得られた塔底混合物(S1)または場合により工程(d)による後処理により得られた下相(U2)は、さらなる反応のために熱分解装置に供給される。
工程(c)により得られた塔底混合物(S1)または場合により工程(d)による後処理により得られた下相(U2)は、さらなる反応のために熱分解装置に供給される。
塔底混合物(S1)もしくは場合により下相(U2)に含まれているギ酸−アミン付加物(A2)は、前記熱分解装置において分解されてギ酸および相応の第三級アミン(A1)になる。
ギ酸は、前記熱分解装置から排出される。第三級アミン(A1)は、工程(a)の水素化反応器に返送される。前記熱分解装置からの第三級アミン(A1)は、直接、水素化反応器に返送されてよい。前記熱分解装置からの第三級アミン(A1)を、まず工程段階(b2)または工程段階(b3)の抽出装置に返送して、引き続き抽出装置から工程(a)の水素化反応器までさらに通すことも可能であり、この実施態様が好ましい。
好ましい実施態様では、前記熱分解装置は、第二蒸留装置および第三相分離装置を含んでおり、ギ酸−アミン付加物(A2)の分解は、第二蒸留装置において、ギ酸を含んでいて、第二蒸留装置から排出(除去)される蒸留物(D2)、および第三級アミン(A1)を含んでいる上相(U3)とギ酸−アミン付加物(A2)を含んでいる下相(U3)とを含んでいる2相の塔底混合物(S2)の取得下に行われる。
第二蒸留装置で得られるギ酸の、第二蒸留装置からの除去は、例えば(i)塔頂を介して、(ii)塔頂および側方排出流を介して、または(iii)側方排出流のみを介して行うことができる。ギ酸が塔頂を介して取り除かれる場合、純度99.99質量%までのギ酸が得られる。側方排出流を介して取り除かれる場合、水性のギ酸が得られ、ここで、ギ酸約85質量%を有する混合物が特に好ましい。前記熱分解装置に供給された塔底混合物(S1)もしくは場合により下相(U2)の含水量に応じて、ギ酸は、いっそう多く塔頂生成物として、またはいっそう多く側方排出流を介して取り除くことができる。必要に応じて、ギ酸を好ましくは約85質量%のギ酸含有量を有する側方排出流のみを介して取り出すことも可能であり、ここで、次に、場合により必要な水分量を第二蒸留装置に追加的に水を添加することにより調整することもできる。ギ酸−アミン付加物(A2)の熱分解は、一般に、圧力、温度ならびに装置の形態に関して、先行技術で公知の工程パラメーターにより行われる。これらは、例えば、EP0181078またはWO2006/021411に記載されている。第二蒸留装置として、例えば、一般に、不規則充填物、充填物および/またはトレイを含んでいる蒸留塔が好適である。
一般に、第二蒸留装置の塔底温度は、少なくとも130℃、好ましくは少なくとも140℃、特に好ましくは少なくとも150℃、ならびに一般に最大210℃、好ましくは最大190℃、特に好ましくは最大185℃である。第二蒸留装置内の圧力は、一般に少なくとも1hPa(絶対)、好ましくは少なくとも50hPa(絶対)、特に好ましくは少なくとも100hPa(絶対)、ならびに一般に最大500hPa、特に好ましくは最大300hPa(絶対)、特に好ましくは最大200hPa(絶対)である。
第二蒸留装置の塔底で得られる塔底混合物(S2)は、2相である。好ましい実施態様では、塔底混合物(S2)は、前記熱分解装置の第三相分離装置に供給されて、そこで第三級アミン(A1)を含んでいる上相(O3)と、ギ酸−アミン付加物(A2)を含んでいる下相(U3)とに分離される。上相(O3)は、前記熱分解装置の第三相分離装置から排出されて、工程(a)の水素化反応器に返送される。ここで、この返送は、直接、工程(a)の水素化反応器に対して行われてよい、または、上相(O3)は、まず工程(b2)または工程(b3)の抽出装置に供給されて、そこから工程(a)の水素化反応器にさらに通される。第三相分離装置で得られる下相(U3)は、その後再び、前記熱分解装置の第二蒸留装置に供給される。下相(U3)に含まれているギ酸−アミン付加物(A2)は、第二蒸留装置においてその後再び分解され、さらにまたギ酸および遊離第三級アミン(A1)が得られ、前記熱分解装置の第二蒸留装置の塔底中で、新たに2相の塔底混合物(S2)が形成し、この混合物は、その後再び、前記熱分解装置の第三相分離装置に供給されてさらに後処理される。
塔底混合物(S1)もしくは場合により下相(U2)の、工程段階(e)の熱分解装置への供給は、ここで、第二蒸留装置への供給、および/または第三相分離装置への供給が行われてよい。好ましい実施態様では、塔底混合物(S1)もしくは場合により下相(U2)の、前記熱分離装置の第二蒸留装置への送り込みが行われる。さらなる実施態様では、塔底混合物(S1)もしくは場合により下相(U2)の、前記熱分解装置の第三相分離タンクへの送り込みが行われる。
さらなる実施態様では、塔底混合物(S1)もしくは場合により下相(U2)の、前記熱分解装置の第二蒸留装置への送り込みも、前記熱分解装置の第三相分離装置への送り込みも行われる。そのために、塔底混合物(S1)もしくは場合により下相(U2)は、2つの部分流に分離され、1つの部分流は、前記熱分解装置の第二蒸留装置に、1つの部分流は、前記熱分解装置の第三相分離装置に供給される。
本発明を、以下の図および実施例により明らかにするが、本発明はこれに限定されない。
図1による実施態様では、二酸化炭素を含んでいる流1および水素を含んでいる流2が、水素化反応器I−1に供給される。第三級アミン(A1)または触媒の、場合により生じる損失を調整するために、この水素化反応器I−1にさらなる流(図示されていない)を供給することが可能である。
水素化反応器I−1において、二酸化炭素と水素とを、第三級アミン(A1)、極性溶剤および触媒である遷移金属錯体化合物の存在下に反応させる。ここで、前記触媒および第三級アミン(A1)を含んでいる上相(O1)、ならびに前記極性溶剤、前記触媒の残分およびギ酸−アミン付加物(A2)を含んでいる下相(U1)を含んでいる、2相の水素化混合物(H)が得られる。
下相(U1)は、流3として蒸留装置II−1に供給される。上相(O1)は、水素化反応器I−1内に残留する。図1による実施態様では、水素化反応器I−1は、同時に第一相分離装置として機能する。
第一蒸留装置II−1において、下相(U1)は、流5として水素化反応器I−1に返送される極性溶剤を含んでいる蒸留物(D1)と、第三級アミン(A1)を含んでいる上相(O2)およびギ酸−アミン付加物(A2)を含んでいる下相(U2)を含んでいる2相の塔底混合物(S1)とに分離される。
塔底混合物(S1)は、流6として前記熱分解装置の第三相分離装置III−1に供給される。
前記熱分解装置の第三相分離装置III−1では、第三級アミン(A1)を含んでいる上相(O3)およびギ酸−アミン付加物(A2)を含んでいる下相(U3)の取得下に、塔底混合物(S1)が分離される。
上相(O3)は、流10として水素化反応器I−1に返送される。下相(U3)は、流7として前記熱分解装置の第二蒸留装置IV−1に供給される。下相(U3)中に含まれているギ酸−アミン付加物(A2)は、第二蒸留装置IV−1においてギ酸と遊離第三級アミン(A1)とに分解される。第二蒸留装置IV−1において、蒸留物(D2)および2相の塔底混合物(S2)が得られる。
ギ酸を含んでいる蒸留物(D2)は、流9として蒸留装置IV−1から排出される。第三級アミン(A1)を含んでいる上相(O3)と、ギ酸−アミン付加物(A2)を含んでいる下相(U3)とを含んでいる2相の塔底混合物(S2)は、流8としてIII−1に返送される。第三相分離装置III−1において、塔底混合物(S2)は、上相(O3)と下相(U3)とに分離される。上相(O3)は、流10として水素化反応器I−1に返送される。下相(U3)は、流7として第二蒸留装置IV−1に返送される。
図2による実施態様では、二酸化炭素を含んでいる流11および水素を含んでいる流12が水素化反応器I−2に供給される。第三級アミン(A1)または触媒の、場合により生じる損失を調整するために、水素化反応器I−2にさらなる流(図示されていない)を供給することが可能である。
水素化反応器I−2において、二酸化炭素と水素とが、第三級アミン(A1)、極性溶剤および触媒である鉄錯体化合物の存在下に反応する。ここで、前記触媒および第三級アミン(A1)を含んでいる上相(O1)ならびに前記極性溶剤、前記触媒の残分およびギ酸−アミン付加物(A2)を含んでいる下相(U1)を含んでいる2相の水素化混合物(H)が得られる。
水素化混合物(H)は、流13aとして第一相分離装置V−2に供給される。第一相分離装置V−2において、水素化混合物(H)は、上相(O1)と下相(U1)とに分離される。
上相(O1)は、流22として水素化反応器I−2に返送される。下相(U1)は、流13bとして抽出装置VI−2に供給される。この抽出装置において、下相(U1)は、第三相分離装置III−2からの流20(上相(O3))として抽出装置VI−2に返送される第三級アミン(A1)によって抽出される。
抽出装置VI−2において、ラフィネート(R2)および抽出物(E2)が得られる。ラフィネート(R2)は、ギ酸−アミン付加物(A2)および極性溶剤を含んでいて、流13cとして第一蒸留装置II−2に供給される。抽出物(E2)は、第三級アミン(A1)および前記錯体触媒の残分を含んでいて、流21として水素化反応器I−2に返送される。
第一蒸留装置II−2において、ラフィネート(R2)は、流15として水素化反応器I−2に返送される極性溶剤を含んでいる蒸留物(D1)と2相の塔底混合物(S1)とに分離される。
塔底混合物(S1)は、第三級アミン(A1)を含んでいる上相(O2)、およびギ酸−アミン付加物(A2)を含んでいる下相(U2)を含んでいる。塔底混合物(S1)は、流16として第二蒸留装置IV−2に供給される。
塔底混合物(S1)中に含まれているギ酸−アミン付加物は、第二蒸留装置IV−2においてギ酸と遊離第三級アミン(A1)とに分解される。第二蒸留装置IV−2において、蒸留物(D2)および塔底混合物(S2)が得られる。
ギ酸を含んでいる蒸留物(D2)は、流19として第二蒸留装置IV−2から排出される。第三級アミン(A1)を含んでいる上相(O3)、およびギ酸−アミン付加物(A2)を含んでいる下相(U3)を含んでいる2相の塔底混合物(S2)は、流18として前記熱分解装置の第三相分離装置III−2に返送される。
前記熱分解装置の第三相分離装置III−2において、第三級アミン(A1)を含んでいる上相(O3)、およびギ酸−アミン付加物(A2)を含んでいる下相(U3)の取得下に、塔底混合物(S2)が分離される。
上相(O3)は、第三相分離装置III−2からの流20として抽出装置VI−2に返送される。下相(U3)は、流17として前記熱分解装置の第二蒸留装置IV−2に供給される。下相(U3)中に含まれているギ酸−アミン付加物(A2)は、第二蒸留装置IV−2において、ギ酸と遊離第三級アミン(A1)とに分解される。第二蒸留装置IV−2において、次に、上述の通り、再び蒸留物(D2)および塔底混合物(S2)が得られる。
実施例
キレートホスフィン配位子の合成:
ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン:ペンタデシルマグネシウムブロミド250mL(テトラヒドロフラン(THF)中の15%;119mmol)を、内部温度計、アルゴン被覆、金属製冷水器(Metall−Wasserkuehler)および撹拌器を有する四口フラスコ 1Lに装入して、−30℃に冷却する。引き続き、1,2−ビス(ジクロロホスフィノ)エタン5.5g(23.8mmol)の溶液をTHF 100mLに30分以内に滴加し、ここで、多数の固形物が沈殿する。次に、前記混合物を1時間以内に室温に加温して、引き続き2時間、内部温度50℃で後撹拌し、ここで、灰白色の懸濁液が生じる。これに、ゆっくりと、および氷による冷却下に、脱気した飽和NH4Cl溶液95mLを加えて、白色の懸濁液が得られる。これに再び、脱気した水65mLを加えて、沈殿物をガラスフィルターG2を介してアルゴン下に吸引ろ過する。この生成物を水で1回、およびTHF 20mLで2回洗浄して、真空で乾燥させる。白色の粉末形態の生成物22.2g(93.5%)が得られる。
キレートホスフィン配位子の合成:
ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン:ペンタデシルマグネシウムブロミド250mL(テトラヒドロフラン(THF)中の15%;119mmol)を、内部温度計、アルゴン被覆、金属製冷水器(Metall−Wasserkuehler)および撹拌器を有する四口フラスコ 1Lに装入して、−30℃に冷却する。引き続き、1,2−ビス(ジクロロホスフィノ)エタン5.5g(23.8mmol)の溶液をTHF 100mLに30分以内に滴加し、ここで、多数の固形物が沈殿する。次に、前記混合物を1時間以内に室温に加温して、引き続き2時間、内部温度50℃で後撹拌し、ここで、灰白色の懸濁液が生じる。これに、ゆっくりと、および氷による冷却下に、脱気した飽和NH4Cl溶液95mLを加えて、白色の懸濁液が得られる。これに再び、脱気した水65mLを加えて、沈殿物をガラスフィルターG2を介してアルゴン下に吸引ろ過する。この生成物を水で1回、およびTHF 20mLで2回洗浄して、真空で乾燥させる。白色の粉末形態の生成物22.2g(93.5%)が得られる。
ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタン:オクタデシルマグネシウムブロミド100mL(THF中の0.5M;50mmol)を、内部温度計、アルゴン被覆、金属製冷却器および撹拌器を有する四口フラスコ 1Lに装入して、−30℃に冷却する。引き続き、1,2−ビス(ジクロロホスフィノ)エタン2.3g(10mmol)の溶液をTHF 100mLに40分以内に滴加し、ここで、多数の固形物が沈殿する。次に、この混合物を1時間以内に室温に加温して、引き続き2時間、内部温度50℃で後撹拌し、ここで、灰白色の懸濁液が生じる。これにゆっくりと、および氷による冷却下に、脱気した飽和NH4Cl溶液50mLを加えて、白色の懸濁液が得られる。これに再び、脱気した水50mLを加えて、前記沈殿物をガラスフィルターG2を介してアルゴン下に吸引ろ過する。この生成物を水で1回、およびTHF 10mLで2回洗浄して、真空で乾燥させる。白色の粉末形態の生成物11.0g(88.0%)が得られる。
比較例(A1−aおよびA1−b)ならびに本発明による例(A2−a、A2−b、A3−aおよびA3−b)は、二酸化炭素(CO2)の水素化、および触媒として使用される遷移金属錯体化合物の再利用を示している。
回転翼撹拌器が設けられている、ハステロイC製オートクレーブ(水素化反応器)100mLもしくは250mLに、不活性条件下に、第三級アミン(A1)、極性溶剤および触媒を満たした。引き続き、前記オートクレーブを密閉して、室温で二酸化炭素を押し込んだ。次に、水素(H2)を押し込んで、前記反応器を撹拌しながら(1000rpm)加温した。反応時間後、前記オートクレーブを冷却して、水素化混合物(H)を減圧し、水を添加して10分、室温で撹拌した。
2相の水素化混合物(H)が得られ、ここで、上相(O1)は、遊離第三級アミン(A1)および触媒が富化されていて、下相(U1)は、極性溶剤および形成されたギ酸−アミン付加物(A2)が富化されていた。
前記相を引き続き分離した。下相(U1)の(ギ酸−アミン付加物(A2)の形態の)ギ酸含有量ならびに両方の相のルテニウム含有量(CRu)を、以下記載の方法により測定した。次に、ルテニウム触媒を含んでいる上相(O1)に、新しい第三級アミン(A1)を加えて85gにして、前記と同一の溶剤と一緒に、同一の反応条件下に再びCO2水素化のために使用した(A1−bおよびA2−bを参照)。反応および水の添加が完了した後、下相(U1)を分離して、不活性条件下に3回、同じ量(アミンの量は、下相の量に相等する)の新しい第三級アミン(A1)(10分間室温で撹拌し、引き続き相を分離)を触媒抽出のために加えた。
ギ酸−アミン付加物(A2)中のギ酸の総含有量は、「Mettler Toledo DL50」滴定装置で、MeOH中の0.1N KOHを用いる電位差滴定により測定した。ルテニウム含有量は、AASにより測定した。個々の試験のパラメーターおよび結果は、第1表に示されている。
比較例(A1−aおよびA1−b)ならびに本発明による例(A2−a、A2−b、A3−aおよびA3−b)は、前記触媒がCO2水素化に返送されて、そこで再利用されうることを示している。本発明による、触媒として使用される遷移金属錯体化合物は、相分離のみで1ppm以下にまで減少させることができる。
図1
I−1 水素化反応器
II−1 第一蒸留装置
III−1 (熱分解装置の)第三相分離装置
IV−1 (熱分解装置の)第二蒸留装置
1 二酸化炭素を含んでいる流
2 水素を含んでいる流
3 ギ酸−アミン付加物(A2)、触媒の残分、極性溶剤;(下相(U1))を含んでいる流
5 極性溶剤を含んでいる流;(蒸留物(D1))
6 第三級アミン(A1)を含んでいる流(上相(O2))およびギ酸−アミン付加物(A2)(下相(U2));塔底混合物(S1)
7 ギ酸−アミン付加物(A2)を含んでいる流;下相(U3)
8 第三級アミン(A1)を含んでいる流(上相(O3))ならびにギ酸−アミン付加物(A2)(下相(U3));塔底混合物(S2)
9 ギ酸を含んでいる流;(蒸留物(D2))
10 第三級アミン(A1)を含んでいる流;上相(O3)
図2
I−2 水素化反応器
II−2 第一蒸留装置
III−2 (熱分解装置の)第三相分離装置
IV−2 (熱分解装置の)第二蒸留装置
V−2 第一相分離装置
VI−2 抽出装置
11 二酸化炭素を含んでいる流
12 水素を含んでいる流
13a 水素化混合物(H)を含んでいる流
13b 下相(U1)を含んでいる流
13c ラフィネート(R2)を含んでいる流
15 蒸留物(D1)を含んでいる流
16 塔底混合物(S1)を含んでいる流
17 下相(U3)を含んでいる流
18 塔底混合物(S2)を含んでいる流
19 ギ酸を含んでいる流;(蒸留物(D2))
20 上相(O3)を含んでいる流
21 抽出物(E2)を含んでいる流
22 上相(O2)を含んでいる流
I−1 水素化反応器
II−1 第一蒸留装置
III−1 (熱分解装置の)第三相分離装置
IV−1 (熱分解装置の)第二蒸留装置
1 二酸化炭素を含んでいる流
2 水素を含んでいる流
3 ギ酸−アミン付加物(A2)、触媒の残分、極性溶剤;(下相(U1))を含んでいる流
5 極性溶剤を含んでいる流;(蒸留物(D1))
6 第三級アミン(A1)を含んでいる流(上相(O2))およびギ酸−アミン付加物(A2)(下相(U2));塔底混合物(S1)
7 ギ酸−アミン付加物(A2)を含んでいる流;下相(U3)
8 第三級アミン(A1)を含んでいる流(上相(O3))ならびにギ酸−アミン付加物(A2)(下相(U3));塔底混合物(S2)
9 ギ酸を含んでいる流;(蒸留物(D2))
10 第三級アミン(A1)を含んでいる流;上相(O3)
図2
I−2 水素化反応器
II−2 第一蒸留装置
III−2 (熱分解装置の)第三相分離装置
IV−2 (熱分解装置の)第二蒸留装置
V−2 第一相分離装置
VI−2 抽出装置
11 二酸化炭素を含んでいる流
12 水素を含んでいる流
13a 水素化混合物(H)を含んでいる流
13b 下相(U1)を含んでいる流
13c ラフィネート(R2)を含んでいる流
15 蒸留物(D1)を含んでいる流
16 塔底混合物(S1)を含んでいる流
17 下相(U3)を含んでいる流
18 塔底混合物(S2)を含んでいる流
19 ギ酸を含んでいる流;(蒸留物(D2))
20 上相(O3)を含んでいる流
21 抽出物(E2)を含んでいる流
22 上相(O2)を含んでいる流
Claims (15)
- ギ酸の製造方法であって、
(a)二酸化炭素、水素、少なくとも1つの、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノールおよび水からなる群から選択される極性溶剤、ならびに一般式(A1)
R1、R2、R3は、互いに独立して、それぞれ1〜16個の炭素原子を有する非分岐鎖または分岐鎖の、非環式または環式の、脂肪族基、芳香脂肪族基または芳香族基を表していて、ここで、個々の炭素原子は、互いに独立して、−O−基および>N−基から選択されるヘテロ基により置換されていてもよく、ならびに2つまたは3つのすべての基が、少なくともそれぞれ4個の原子を含んでいる鎖の形成下に互いに結合しあっていてもよい]
の第三級アミンを含んでいる反応混合物(Rg)を、
周期表第8族、第9族および第10族から選択される少なくとも1つの元素、ならびに少なくとも13個の炭素原子を有する少なくとも1つの有機基を有する少なくとも1つのホスフィン配位子を含んでいる、触媒である少なくとも1つの遷移金属錯体化合物の存在下に、
水素化反応器において、
前記触媒および第三級アミン(A1)を含んでいる上相(O1)、および、
前記少なくとも1つの極性溶剤、前記触媒の残分、ならびに一般式(A2)
xiは、0.4〜5の範囲にあり、および
R1、R2、R3は、前述の意味を有する]
のギ酸−アミン付加物を含んでいる下相(U1)
を含んでいる2相の水素化混合物(H)の、場合により水の添加後の、取得下に、
均一触媒により反応させる工程、
(b)工程(a)で得られた水素化混合物(H)を、以下の工程
(b1)工程(a)で得られた水素化混合物(H)を、第一相分離装置において上相(O1)と下相(U1)とに相分離する工程、
または、
(b2)前記触媒を、抽出装置において、第三級アミン(A1)を含んでいる抽出剤によって、
ギ酸−アミン付加物(A2)および前記少なくとも1つの極性溶剤を含んでいるラフィネート(R1)、ならびに
第三級アミン(A1)および前記触媒を含んでいる抽出物(E1)
の取得下に、工程(a)で得られた水素化混合物(H)から抽出する工程、
または、
(b3)工程(a)で得られた水素化混合物(H)を、第一相分離装置において、上相(O1)と下相(U1)とに相分離して、前記触媒の残分を抽出装置において第三級アミン(A1)を含んでいる抽出剤によって、
ギ酸−アミン付加物(A2)および前記少なくとも1つの極性溶剤を含んでいるラフィネート(R2)、ならびに
第三級アミン(A1)および前記触媒の残分を含んでいる抽出物(E2)
の取得下に、下相(U1)から抽出する工程、
のいずれか1つの工程により後処理する工程、
(c)前記少なくとも1つの極性溶剤を、下相(U1)から、ラフィネート(R1)から、またはラフィネート(R2)から、第一蒸留装置において、
工程(a)の水素化反応器に返送される前記少なくとも1つの極性溶剤を含んでいる蒸留物(D1)、ならびに
第三級アミン(A1)を含んでいる上相(O2)およびギ酸−アミン付加物(A2)を含んでいる下相(U2)
を含んでいる2相の塔底混合物(S1)
の取得下に、分離する工程、
(d)場合により、工程(c)で得られた塔底混合物(S1)を、第二相分離装置において上相(O2)と下相(U2)とに相分離することにより後処理する工程、
(e)塔底混合物(S1)もしくは場合により下相(U2)に含まれているギ酸−アミン付加物(A2)を、熱分解装置において、工程(a)の水素化反応器に返送される相応の第三級アミン(A1)および前記熱分解装置から排出されるギ酸の取得下に、分解する工程、
を含んでいる前記方法。 - 前記触媒として使用される遷移金属錯体化合物が、Ru、RhおよびPdからなる群から選択される少なくとも1つの元素、ならびに13〜30個の炭素原子、好ましくは14〜26個の炭素原子、さらに好ましくは14〜22個の炭素原子、特に好ましくは15〜22個の炭素原子、特に16〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの有機基を有する少なくとも1つのホスフィン配位子を含んでいる、請求項1に記載の方法。
- 前記触媒として使用される遷移金属錯体化合物が、一般式(I)
R11、R12、R13、R14は、互いに独立して、置換されていない、または少なくとも一置換されている−C13〜C30−アルキル、−(フェニル)−(C7〜C24−アルキル)、−(フェニル)−(C4〜C24−アルキル)2、−(フェニル)−(C3〜C24−アルキル)3、−(フェニル)−(O−C7〜C24−アルキル)、−(フェニル)−(O−C4〜C24−アルキル)2、−(フェニル)−(O−C3〜C24−アルキル)3、−(シクロヘキシル)−(C7〜C24−アルキル)、−(シクロヘキシル)−(C4〜C24−アルキル)2、−(シクロヘキシル)−(C3〜C24−アルキル)3、−(シクロヘキシル)−(O−C7〜C24−アルキル)、−(シクロヘキシル)−(O−C4〜C24−アルキル)2、または−(シクロヘキシル)−(O−C3〜C24−アルキル)3であり、
ここで、前記置換基は、−F、−Cl、−Br、−OH、−ORa、−COOH、−COORa、−OCORa、−CN、−NH2、−N(Ra)2および−NHRaからなる群から選択されていて;
R15、R16は、互いに独立して水素もしくは−C1〜C4−アルキルである、または、これらが結合している炭素原子と一緒に、1つの置換されていない、もしくは少なくとも一置換されているフェニル環もしくはシクロヘキシル環を形成していて、
ここで、前記置換基は、−OCORa、−OCOCF3、−OSO2Ra、−OSO2CF3、−CN、−OH、−ORa、−N(Ra)2、−NHRaおよび−C1〜C4−アルキルからなる群から選択されていて;
Raは、−C1〜C4−アルキルであり、ならびに
n、mは、互いに独立して0、1または2である]
の少なくとも1つの二座ホスフィン配位子を含んでいる、請求項1または2に記載の方法。 - 前記触媒として使用される遷移金属錯体化合物が、一般式(I)の1つの二座ホスフィン配位子、ならびに1〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの有機基を有する少なくとも1つの単座モノホスフィン配位子を含んでいる、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
- 前記二座ホスフィン配位子(I)が、1,2−ビス(ジテトラデシルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジペンタデシルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジヘキサデシルホスフィノ)エタンおよび1,2−ビス(ジオクタデシルホスフィノ)エタンからなる群から選択される、請求項3から5までのいずれか1項に記載の方法。
- 前記モノホスフィン配位子(Ia)が、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−n−ヘキシルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン、トリ−n−デシルホスフィンおよびトリ−n−ドデシルホスフィンからなる群から選択される、請求項4から6までのいずれか1項に記載の方法。
- 第三級アミンとして、一般式(A1)の第三級アミンが使用され、ここで、R1、R2、R3の基は、互いに独立して、C5〜C6−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、ベンジルおよびフェニルからなる群から選択される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
- 第三級アミン(A1)としてトリ−n−ヘキシルアミンが使用される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
- 極性溶剤として、水、メタノールまたは水とメタノールとからの混合物が使用される、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
- 前記熱分解装置が、第二蒸留装置および第三相分離装置を含んでいて、ギ酸−アミン付加物(A2)の分解が、第二蒸留装置において、第二蒸留装置から排出されるギ酸を含んでいる蒸留物(D2)、ならびに相応の第三級アミン(A1)を含んでいる上相(O3)およびギ酸−アミン付加物(A2)を含んでいる下相(U3)を含んでいる2相の塔底混合物(S2)の取得下に行われる、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
- 前記第二蒸留装置で得られた塔底混合物(S2)が、前記熱分解装置の第三相分離装置において上相(O3)と下相(U3)とに分離されて、上相(O3)が工程(a)の水素化反応器に返送され、下相(U3)が前記熱分解装置の第二蒸留装置に返送される、請求項11に記載の方法。
- 周期表第8族、第9族および第10族から選択される少なくとも1つの元素、および請求項3に記載の一般式(I)の少なくとも1つのホスフィン配位子を含んでいる、遷移金属錯体化合物。
- 請求項3に記載の一般式(I)の1つのホスフィン配位子、ならびに請求項5に記載の一般式(Ia)の少なくとも1つの単座ホスフィン配位子を含んでいる、請求項13に記載の遷移金属錯体化合物。
- 請求項13または14に記載の遷移金属錯体化合物の、ギ酸の製造方法における触媒としての使用。
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